説明

プロテアーゼを使用したフグ抽出物を含む組成およびその製造方法

【解決手段】本発明は、プロテアーゼを使用することにより生成したフグ抽出物、その製造方法、および活性成分としてフグ抽出物を含む、二日酔いの治療のための組成に関する。特に、プロテアーゼを使用することにより生成した本発明のフグ抽出物は、熱水およびアルコールにより生成した他のフグ抽出物よりも、より多くの活性成分を有している。アーティチョーク(Cynara scolymus)を含有するフグ抽出物は、個別のフグ抽出物またはアーティチョーク抽出物に比べて、二日酔いを治療するための有意の相乗効果を有している。
【効果】本発明の組成は、二日酔いを治療するための組成として有効に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテアーゼを使用することにより生成したフグ抽出物、その製造方法、および活性成分としてフグ抽出物を含む、二日酔いを治療するための組成に関する。
【背景技術】
【0002】
飲酒後の人体内で観察される二日酔いが、アルコール自体の毒性によってよりも、むしろアルコールの第1の代謝物であるアセトアルデヒドによって引き起こされている可能性が高いことは、一般に知られている。
[O] [O]
CH3CH2OH → CH3CH=O → CH3COOH
(EtOH) (アセトアルデヒド) (アセト酸)
↑ ↑
EtOHデヒドロゲナーゼ アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ
すなわち、アルコールはアルコールデヒドロゲナーゼにより分解されて、アセトアルデヒドに変えられ、アセトアルデヒドはアセト酸に分解される。高濃度の活性化合物であるアセトアルデヒドは、発汗、頻脈、皮膚の紅潮、吐き気および嘔吐を引き起こす場合がある。そのため、多くの研究者は、アルコールの代謝物であるアセトアルデヒドが二日酔いの原因であろうと考えていた。
【0003】
適量のアルコールは、円滑に働く酸化システムのおかげで、人体の機能不全または悪い現象を引き起こさない。しかし、アルコールの過剰摂取は代謝システムのバランスを破壊し、結果として、細胞中の定常性を維持することができなくなる。アルコールの過剰摂取によって最も容易に影響を受ける器官は、肝臓である。すなわち、過剰にアルコールを飲むと、長期的には、例えば脂肪肝、肝硬変などの肝臓の機能不全を引き起こし、短期的には、頭痛、頭の重さ、集中力の欠如、胸焼けおよび消化不良を引き起こす。
【0004】
二日酔いを治療するのに、乾燥させたポラック、もやしおよびフグを主材料として作られた食品が、広く使用されてきた。特に、フグは、中国で二日酔いに特別に効果のある食品と考えられていたため、常習的な飲酒者に好まれてきた。
フグは、多様なアミノ酸、ミネラルおよびビタミンとともに、多くのたんぱく質を含有しており、人体中のアルコールデヒドロゲナーゼを活性化して肝臓の解毒を促進し、アルコール中毒を防ぎ二日酔いを治療するのに効果的である。くわえて、フグは、コレステロールを減らし高い血圧を下げる効果があり、成人病の予防につながる。そのため、フグは、手術前もしくは手術後のまたは糖尿病もしくは腎臓病の患者などのための食事療法向けの人気の食品となっている。「Dongeuebogam」(韓国の書物)には、フグは体を温め、強壮作用があり、むくみを軽減し、腰および脚の痛みを治療するのに効果があり、痔疾の治療効果を有し、殺虫効果があると書かれている。
【0005】
二日酔いを治療する食品として、ヨーロッパではアーティチョーク(学名:Cynara scolymus)が使用されてきた。アーティチョークは、消化不良ならびに冠動脈疾患および高血糖を含む成人病を予防および治療する効果に加えて、二日酔い治療効果を持つことで知られてきた。ヨーロッパ諸国および日本は、アーティチョークの研究、特にアーティチョークおよびその成分の多様な生物学的機能に関する研究の中心となってきた。
【0006】
アーティチョークは、地中海地域に自生しており、アザミの花の形をした多年草であり、アザミの2〜3倍の大きさである。アーティチョークは高さ2メートルに成長し、幅1メートル四方に広がる。アーティチョークの花芽はやわらかくて、味にくせがなく、栄養価が高く、特にたんぱく質、ビタミンA、ビタミンC、カルシウム、鉄、リン酸塩、サッカリドおよびイヌリンを豊富に含んでいる。特に、アーティチョークは、糖尿病の患者に対しインシュリンのように機能するサッカリドを含んでおり、重要な医薬品となっている。葉または根に含まれるシナリン成分は、胆汁の分泌を促し、損なわれた肝機能および胃腸の疾患の治療ならびに血中コレステロールの調節に有効であるため、ヨーロッパでは動脈硬化用の治療薬として使用されてきた。また、これは、肝臓病および腎臓病の治療にも使用されており、その利尿作用および血液浄化作用のおかげで、尿のたんぱく質濃度が高い場合に特に有効である。
【0007】
アーティチョークのさまざまな機能は、その抽出物の高い抗酸化作用から来ている。この高い抗酸化作用により、特に、胆汁の分泌を促し肝細胞を保護する機能が高まる。くわえて、アーティチョークは、高い液体吸収抑制効果を持つことが証明されている。アーティチョークは、安全な物質であることが証明されており、米国のFDAによりGRAS(一般に安全と認められる)に分類されている。
【0008】
このように、本願発明者は、優れた二日酔い治療効果とともに、改善された健康増進効果を有しているが副作用のない、二日酔いを治療するための成分を生成するための方法を開発する研究を続けてきた。その結果、本願発明者は、プロテアーゼを使用して生成したフグ抽出物が、熱水またはアルコール抽出により生成したものよりも、より多くの有効成分を含んでいるという事実を発見した。さらに、本願発明者は、追加の成分としてアーティチョークを含有するフグ抽出物が、個別のフグ抽出物およびアーティチョーク抽出物それぞれと比較して、相乗効果により、より優れた二日酔い治療効果を有することを確認することにより、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、プロテアーゼを使用することにより生成したフグ抽出物、その製造方法、および活性成分としてフグ抽出物を含む二日酔いを治療するための組成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、プロテアーゼを使用したフグ抽出物の製造方法を提供する。
本発明はまた、上記方法により生成したフグ抽出物を提供する。
本発明はさらに、活性成分としてフグ抽出物を含む、二日酔いを治療するための製薬組成を提供する。
【0011】
本発明はまた、対象者にフグ抽出物を薬学的に有効に投与するステップを含む、二日酔いを治療するための方法を提供する。
本発明はまた、二日酔いを治療するための製薬組成の製造のための、フグ抽出物の使用を提供する。
本発明はまた、活性成分としてフグ抽出物を含む、二日酔いを治療するための健康食品を提供する。
【0012】
くわえて、本発明は、二日酔いを治療するための健康食品の製造のための、フグ抽出物の使用を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の、プロテアーゼにより生成したフグ抽出物は、熱水またはアルコールにより生成したフグ抽出物よりも、より多くの有効成分を含んでいる。アーティチョークを追加で含有するフグ抽出物は、単独のフグ抽出物またはアーティチョークよりも、より良い二日酔い治療効果を有しており、肝機能向上効果を有している。くわえて、本発明のフグ抽出物は、副作用のない安全な自然食品であり、優れた二日酔い治療効果および優れた健康増進効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】アーティチョークを含有するフグ抽出物を投与した後の、経時的な血中エタノール濃度を示すグラフである。
【図2】アーティチョークを含有するフグプロテアーゼ抽出物を投与した後の、経時的な血中アセトアルデヒド濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施形態の用途は、添付の図面を参照することにより、最もよく理解される。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において、「二日酔い」は、アルコールを飲んだあとに見られる一般的な症状、例えば、頭痛、下痢、食欲不振、吐き気、嘔吐などを指す。これらは一般に、認知力および歩行力の低下、血液およびホルモンの変化を伴う。本発明において、「酵素反応生成物」は、プロテアーゼを使用することによりフグ肉から抽出した、フグの活性成分を含有するフグ抽出物を指す。
【0016】
本発明は、
1)フグ肉をフグから分離するステップと、
2)ステップ1)のフグ肉を酵素と反応させるステップと、
3)ステップ2)の酵素反応生成物の蒸留により、蒸留物を得るステップとを含む、フグ抽出物の製造方法を提供する。
【0017】
上記方法において、ステップ1)のフグはトラフグ(Takifugu rubripes)またはシロサバフグ(Lagocephalus wheeleri Abe)のいずれであってもよい。これらは、天然のものを捕獲してもよいし、養殖してもよい。フグは致死的に有毒な魚であるため、適切に扱わない限り危険である。そのため、フグ調理の資格があり、専門家である調理士だけが、調理を許される。特に毒性の強い消化管は、頭および皮とともに除去せねばならない。フグ抽出物を生成するための材料として良好に使用できるのは、フグ肉だけである。
【0018】
上記方法において、ステップ2)の酵素はプロテアーゼである。
本発明において、フグを煮たりまたは煎じたりしない。むしろ、たんぱく質を分解する酵素であるプロテアーゼを使用してフグ肉を分解し、フグのあらゆる有効成分を抽出する。すなわち、フグ肉に含まれる有効成分を、できるだけ多くのプロテアーゼを使用することにより抽出する。そのために、温度調節器を備えた反応器の中にフグ肉を入れ、そこに同じ重量の水を加える。プロテアーゼ(酵素含有量:0.1〜0.2%)をそこに加えるのが好ましいが、水および酵素の量はこれに限定されない。好ましい酵素反応温度は約25〜50℃であり、特に37℃は、プロテアーゼの反応速度が最も速いため、より好ましいが、必ずしもこれに限定されない。好ましい酵素反応時間は約12〜36時間であるが、必ずしもこれに限定されない。
【0019】
上記方法において、ステップ3)の蒸留は、65〜100℃で行われるのが好ましい。蒸留の温度が100℃を超えると、酵素反応生成物の熱変性が起きる可能性がある。ゆえに、蒸留の温度は、100℃未満の温度であるのが好ましい。蒸留は、酵素反応生成物の体積が1/3〜1/2になるまで継続するのが好ましいが、必ずしもこれに限定されない。本発明において、フグは、煮たりまたは煎じたりせず、蒸留する。そして、蒸留後に残る固形物を除く蒸留物だけが使用される。このようにして、有毒な物質が自動的に排除され、フグ濃縮物中にフグの有効成分だけが残される。このとき、魚のにおいも除去することができる。
【0020】
好ましくは、アーティチョーク粉末が、上記方法により得られたフグ抽出物にさらに加えられ、ろ過およびエージングされる。フグ抽出物に占めるアーティチョーク粉末の含有量は、2〜8g/Lであるのが好ましいが、必ずしもこれに限定されない。アーティチョーク粉末の添加後に、1000〜1400メッシュの網を使用して、フグ抽出物を1〜3時間ろ過するのが好ましい。フグ抽出物を40〜60℃で5〜20時間エージングするのが好ましいが、必ずしもこれに限定されない。
【0021】
本発明はまた、本発明の方法により生成したフグ抽出物を提供する。
本発明はさらに、活性成分としてフグ抽出物を含む、二日酔いを治療するための製薬組成を提供する。
本発明において、本願発明者は、動物実験を通じ、熱水またはアルコールにより生成したフグ抽出物と比較して、プロテアーゼにより生成したフグ抽出物がどの程度血中アルコールおよびアセトアルデヒドを低減することができるか試験した。蒸留水、フグプロテアーゼ抽出物、フグ熱水抽出物およびフグエタノール抽出物を、それぞれ、ラットに経口投与し、次いで、アルコールをラットに経口投与した。血液試料を1時間ごとに採取し、血中のエタノールおよびアセトアルデヒド濃度を、キットを使用して測定した。その結果、フグ抽出物は、血中アルコールに対する統計的に有意な低減効果をまったく示さなかったが、しかしそれでも、何の対処もしなかったラットと比較して、血中アルコールを低下させることができた。一方、何の対処もしなかったラットと比較して、フグ抽出物は、血中アセトアルデヒドに対する統計的に有意な低減効果を示した。熱水またはエタノールにより生成した他のフグ抽出物と比較して、フグプロテアーゼ抽出物は、血中アルコールおよびアセトアルデヒドに対する統計的に有意な低減効果を有することが確認された。ゆえに、本発明の、プロテアーゼにより生成したフグ抽出物が、他に比べて、二日酔いを治療するための有効成分をより多く有していることが証明された。
【0022】
本発明において、本願発明者はまた、アーティチョークをさらに含有するフグプロテアーゼ抽出物が、単独のフグ抽出物またはアーティチョーク抽出物よりも、優れた二日酔いの治療効果を有するかどうかを調査した。アーティチョークを含有しないフグプロテアーゼ抽出物、アーティチョーク抽出物、およびアーティチョークを含有するフグプロテアーゼ抽出物の15%希釈溶液および未希釈溶液を、ラットに経口投与し、次いで、アルコールをラットに経口投与した。血液試料を1時間ごとに採取し、血中のエタノールおよびアセトアルデヒド濃度を、キットを使用することにより測定した。その結果、アーティチョークを含有するフグ抽出物の15%希釈溶液および100%未希釈溶液の血中アルコールおよび血中アセトアルデヒド低減効果は、アーティチョークを含有しないフグ抽出物未希釈溶液またはアーティチョーク抽出物未希釈溶液に比較して、統計的に有意であった。ゆえに、アーティチョークを追加で含有するフグ抽出物が、アーティチョークを含有しないフグ抽出物またはアーティチョーク抽出物よりも、より優れた二日酔い治療効果を有していることが確認された。
【0023】
本発明はまた、対象者にフグ抽出物を薬学的に効果的に投与するステップを含む、二日酔いを治療するための方法を提供する。
本発明はまた、二日酔いを治療するための製薬組成の製造のための、フグ抽出物の使用を提供する。
製薬組成は、フグ抽出物に加えて、フグ抽出物と同じまたは類似の機能を有する1つ以上の有効成分を含んでいてもよい。
【0024】
本発明の製薬組成は、経口的または非経口的に投与することができ、一般的な処方態様で使用することができる。本発明の組成は、一般的に使用される希釈剤と、または充填剤、顔料、結合剤、湿潤剤、崩壊剤および界面活性剤などの添加剤と混合することにより、経口的または非経口的な投与のために作成することができる。経口投与用の固体の処方には、錠剤、丸薬、粉末、顆粒およびカプセルがある。これらの固体の処方は、本発明の組成を、デンプン、炭酸カルシウム、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどの、1つ以上の適切な添加剤と混合することにより、作成できる。簡単な添加剤に加え、ステアリン酸マグネシウムおよびタルクなどの滑材を使用してもよい。経口投与のための液体処方には、懸濁液、溶液、乳濁液およびシロップがあり、上記の処方は、水および液体パラフィンなどの一般的に使用される簡単な希釈剤に加えて、湿潤剤、甘味料、香料および保存料などのさまざまな添加剤を含有していてもよい。非経口投与のための処方には、殺菌された水溶液、不水溶性添加剤、懸濁液、乳濁液、凍結乾燥調合物および座薬がある。不水溶性添加剤および懸濁液は、活性化合物に加えて、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルなどの注入可能なエステルなどを含有していてもよい。座薬は、活性化合物に加えて、ワイテプソル、マクロゴール、トゥイーン61、カカオバター、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどを含有していてもよい。本発明の治療薬は、皮下注射、静脈注射または筋肉注射により投与することができる。
【0025】
本発明はまた、活性成分としてフグ抽出物を含む、二日酔いを治療するための健康食品を提供する。
くわえて、本発明は、二日酔いを治療するための健康食品の製造のための、フグ抽出物の使用を提供する。
本発明のフグ抽出物は、食品添加物として使用することができる。その場合、フグ抽出物をそのまま、または、従来の方法に従って他の食品成分と混合して、添加することができる。活性成分の混合比率は、使用の目的(防止、健康増進または治療)に従って調節することができる。一般に、健康食品または飲料を製造するために、本発明の組成を、最大で15重量部添加するのが好ましく、最大で10重量部添加するのがさらに好ましい。しかし、健康および衛生または健康状態の調節のために、長期の投与が求められる場合、含有量は上記よりも低くてよいが、より高い含有量も同様に容認することができる。これは、フグ抽出物が非常に安全であることが証明されているためである。
【0026】
ここで食品は限定されていない。例えば、フグ抽出物は、肉、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ、スナック、クッキー、ピザ、ラーメン、小麦粉製品、ガム、アイスクリームを含む乳製品、スープ、飲料、茶、飲み物、アルコール飲料および複合ビタミン剤などに添加することができ、広い意味では、健康食品として製造できるほとんどあらゆる食品を含むことができる。
【0027】
本発明の健康飲料用の組成は、他の飲料と同様、さまざまな調味料または天然の炭水化物などを追加で含んでもよい。上記天然の炭水化物は、グルコースおよびフルクトースなどの単糖、マルトースおよびスクロースなどの二糖、デキストリンおよびシクロデキストリンなどの多糖、ならびにキシリトール、ソルビトールおよびエリスリトールなどの糖アルコールのうちの1つであってもよい。くわえて、タウマチンおよびステビア抽出物などの天然甘味料、ならびに、サッカリンおよびアスパルテームなどの人工甘味料が、甘味料として含まれていてもよい。
【0028】
上記成分に加えて、本発明のフグ抽出物は、さまざまな栄養素、ビタミン、ミネラル、調味料、着色料、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護コロイド増粘剤(原文:protective colloidal viscosfiers)、pH調整剤、安定剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、ソーダに添加するのに使用される炭化剤(原文:carbonators)などを含んでいてもよい。本発明のフグ抽出物はまた、天然果汁、果実飲料および/または野菜飲料に添加可能な果肉を含んでいてもよい。上記成分はすべて、単独で添加する、または一緒に添加することができる。
【0029】
本発明の実際のおよび現時点で好ましい実施形態を、以下の実施例において示す。
しかし、本開示を考察した当業者であれば、本発明の精神および請求の範囲内で、修正および改良を行えるであろうことを理解されたい。

実施例1:フグ抽出物の生成
<1-1> プロテアーゼにより生成したフグ抽出物
はらわたを除いたトラフグ(Takifugu rubripes)またはシロサバフグ(Lagocephalus wheeleri Abe)から、約5kgの肉を分離した。次いで、フグ肉を反応器に入れ、そこに精製水5Lおよびプロテアーゼ7g(枯草菌から作成したサブチリシン(タイター:16,000u/g))を加えた。反応器の温度を24時間にわたって37℃に維持し、次いで攪拌しながら酵素反応を行い、フグ溶液を作成した。酵素反応の終了後、反応器の温度を97℃に調整した。フグ溶液を、攪拌しながら、体積が1/2になるまで、約8時間蒸留した。この間、反応器の蓋を、蒸気を逃がすために開けておいた。蒸留後、反応器の電源を切り、温度が室温に低下するまで放置した。フグ抽出物(5L)を、蒸留液から得た。
<1-2> アーティチョークを含有するフグ抽出物
市販のアーティチョーク粉末を、実施例<1-1>で得たフグ抽出物に、0.2%加えた。混合物を反応器に入れてよく混合し、1,000メッシュの網によりろ過した。ろ過したフグ抽出物の温度を45〜50℃に調節し、12時間にわたってエージングした。その結果、フグ熱水抽出物5Lを得た。
<1-3> フグ熱水抽出物
分離したフグ肉5kgを均質化し、反応器に入れた。そこに精製水5Lを加え、90〜100℃で2回にわたり4時間ずつ熱水抽出を行った。その結果、フグ熱水抽出物5Lを得た。
<1-4> フグエタノール水溶液抽出物
分離したフグ肉5kgを均質化した。均質化したフグおよび95%エタノール水溶液5Lを抽出器に投入し、還流濃縮を行った(水槽の水温:80℃)。その結果、フグエタノール抽出物5Lを得た。
<1-5> アーティチョーク抽出物
乾燥したアーティチョーク5kgを粉砕し、そこに精製水5Lを加えた。このアーティチョーク溶液を2時間にわたり90〜100℃で加熱し、次いで室温まで冷却し、次いで加圧ろ過した。ろ過した溶液を減圧下で濃縮し、次いで熱風乾燥した。その結果、アーティチョーク抽出物5Lを得た。

実験例1: フグプロテアーゼ抽出物の二日酔い治療効果
スプラーグドーリーラット40匹を10匹ずつのグループに分け、動物実験により二日酔い治療効果を調査した。コントロールグループのラットには、蒸留水10mLを与えた。実験グループのラットには、実施例<1-1>で作成した100%フグ抽出物10mL、実施例<1-3>で作成した100%フグ抽出物10mL、または実施例<1-4>で作成した100%フグ抽出物10mLを与えた。
【0030】
スプラーグドーリーラット(雄)は、固形のえさおよび水道水を自由に摂取できるようにして、4日間放置した。18時間の絶食ののち、ラットに試験試料を与えた。30分後、ラットにアルコールを経口投与した(3g/kg)。血液試料を、1時間後および3時間後に眼窩から、ならびに5時間後に心臓から採取した。血液試料を3000rpmで20分間遠心分離し、血清を分離した。次いで、エタノールおよびアセトアルデヒド濃度を、キット(Roche)を使用することにより測定した。このとき測定された血中エタノールおよび血中アセトアルデヒドを、w/v%およびmg%で示した。濃度は経時的に変化し、スチューデントt検定(対、独立)により統計分析を行った。本発明の試料を与えられなかったコントロールグループの血中アルコール濃度が、アルコール摂取(3g/kg)の1時間後から、通常期待されるとおりに、経時的に減少したのを観察することにより、実験が成功したことが確認された。
【0031】
【表1】

表1に示すように、上記結果は、フグ熱水抽出物およびフグエタノール水溶液抽出物によるよりも、フグプロテアーゼ抽出物によるほうが、血中アルコールおよび血中アセトアルデヒドが、より有意に経時的に減少したことを示唆している。
【0032】
ゆえに、本発明のフグプロテアーゼ抽出物が、フグ熱水抽出物およびフグエタノール抽出物よりも、より良い二日酔い治療効果を有していることが証明された。

実験例2: アーティチョークを含有するフグプロテアーゼ抽出物の二日酔い治療効果
アーティチョークを含有するフグプロテアーゼ抽出物の二日酔い治療効果を調査するために、実験例1に記載したのと同様の仕方で、動物実験を行った。
【0033】
スプラーグドーリーラット40匹を10匹ずつのグループに分け、動物実験により二日酔い治療効果を調査した。試験に使用した試料は、実施例<1-1>の100%フグ抽出物(10mg/kg)、実施例<1-5>の100%アーティチョーク抽出物(10mg/kg)、実施例<1-2>の15%フグ抽出物(10mg/kg)、および実施例<1-2>の100%フグ抽出物(10mg/kg)(15%抽出物の6.7倍)である。
【0034】
【表2】

その結果、アーティチョークを含有する15%フグ抽出物を与えられたグループは、統計的に有意な二日酔い治療効果を示さなかったが、アーティチョークおよびアーティチョーク抽出物を含有しないフグ抽出物を与えられたグループに比べて、血中アルコール濃度が経時的に変化した。例えば、投与して1時間後の血中アルコール濃度は0.203±0.026w/v%であり、投与して3時間後の血中アルコール濃度は0.06±0.012w/v%であり、投与して5時間後の血中アルコール濃度は0.045±0.015w/v%であった。アーティチョークを含有する100%フグ抽出物を与えられたグループも、統計的に有意な効果を示さなかったが、アーティチョークおよびアーティチョーク抽出物を含有しないフグ抽出物を与えられたグループに比べて、血中アルコール濃度が経時的に変化した。例えば、投与して1時間後の血中アルコール濃度は0.220±0.023w/v%であり、投与して3時間後の血中アルコール濃度は0.071±0.014w/v%であり、投与して5時間後の血中アルコール濃度は0.074±0.022w/v%であった。これは、15%フグ抽出物を与えられたグループよりも低い濃度であった(表2および図1参照)。
【0035】
血中アセトアルデヒド濃度も、各グループで調査した。アーティチョーク含有する15%フグ抽出物を与えられたグループにおいて、投与して1時間後の血中アセトアルデヒド濃度は0.534±0.084w/v%であり、投与して3時間後の血中アセトアルデヒド濃度は0.249±0.050w/v%であり、投与して5時間後の血中アセトアルデヒド濃度は0.154±0.026w/v%であった。これは、アーティチョークおよびアーティチョーク抽出物を含有しないフグ抽出物を与えられたグループに比べて、より有意な減少(ダウンレギュレーション)であった。アーティチョークを含有する100%フグ抽出物を与えられたグループにおいて、投与して1時間後の血中アセトアルデヒド濃度は0.275±0.014w/v%であり、投与して3時間後の血中アセトアルデヒド濃度は0.158±0.039w/v%であり、投与して5時間後の血中アセトアルデヒド濃度は0.128±0.024w/v%であった。これは、アーティチョークおよびアーティチョーク抽出物を含有しないフグ抽出物を与えられたグループに比べて、より有意な低減効果であった(表2および図2参照)。
【0036】
ゆえに、本発明の、アーティチョークを含有するフグプロテアーゼ抽出物が、100%抽出物を与えられたグループにおいて、アルコール投与の1および3時間後に、約50%の二日酔い治療効果を有することが確認された。

活性成分として本発明のフグ抽出物を含有する組成の製造例を、以下に記載する。
製造例1: 製薬組成の作成
<1-1> 粉末の作成
実施例<1-2>の抽出物 2g
ラクトース 1g
上記成分すべてを、粉末を作成するための従来の方法に従って、気密のパックに充填し、混合することにより粉末を作成した。
<1-2> 錠剤の作成
実施例<1-2>の抽出物 100mg
コーンスターチ 100mg
ラクトース 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
上記成分すべてを、錠剤を作成するための従来の方法により混合することによって、錠剤を作成した。
<1-3> カプセルの作成
実施例<1-2>の抽出物 100mg
コーンスターチ 100mg
ラクトース 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
上記成分すべてを混合し、カプセルを作成するための従来の方法に従ってゼラチン製のカプセルに充填することにより、カプセルを作成した。
<1-4> 丸薬の作成
実施例<1-2>の抽出物 1g
ラクトース 1.5g
グリセリン 1g
キシリトール 0.5g
上記成分すべてを、丸薬を作成するための従来の方法に従って混合することにより、錠剤を作成した。各丸薬は、この混合物を4g含有していた。
<1-5> 顆粒の作成
実施例<1-2>の抽出物 150mg
大豆抽出物 50mg
グルコース 200mg
スターチ 600mg
上記成分すべてを混合し、30%エタノール100mgを加えた。この混合物を60℃で乾燥し、得られた顆粒をパックに充填した。

製造例2: 食品の作成
本発明のフグ抽出物を含有する食品を、以下のようにして作成した。
<2-1> 調味料の作成
実施例<1-1>のフグ抽出物20〜95重量部を、従来の方法に従って、調味料と混合することにより、健康を増進する調味料を作成した。
<2-2> 小麦粉製品の作成
実施例<1-1>のフグ抽出物0.5〜5.0重量部を小麦粉に加えた。パン、ケーキ、クッキー、クラッカーおよび麺などの健康を増進する食品を、従来の方法に従い、この小麦粉混合物により作成した。
<2-3> 乳製品の作成
実施例<1-1>のフグ抽出物5〜10重量部を牛乳に加えた。バターおよびアイスクリームなどの健康を増進する乳製品を、従来の方法に従い、この牛乳混合物により作成した。
<2-4> ソンシクの作成
玄米、大麦、餅米およびユルム(ヨブの涙)を、従来の方法に従ってゼラチン状にし、乾燥および粉砕して60メッシュの粉末を得た。
【0037】
黒大豆、黒胡麻および野生胡麻を、従来の方法に従い蒸して乾燥し、粉砕して60メッシュの粉末を得た。
実施例<1-1>のフグ抽出物を、減圧下で濃縮し、噴霧乾燥し、粉砕して60メッシュの乾燥粉末を得た。
穀粒、種子および実施例<1-1>のフグ抽出物の乾燥粉末を以下の比率に従って混合することにより、ソンシクを作成した。
【0038】
穀粒(玄米:30重量部、ヨルム:15重量部、大麦:20重量部)
種子(野生胡麻:7重量部、黒大豆:8重量部、黒胡麻:7重量部)
実施例<1-1>のフグ抽出物の乾燥粉末(3重量部)
ガノデルマルシダム(0.5重量部)
アカヤジオウ(0.5重量部)

製造例3: 飲料の作成
<3-1> 健康飲料の作成
実施例<1-2>の抽出物 1000mg
クエン酸 1000mg
オリゴ糖 100g
精製水 最大900mL
上記成分を、健康飲料を作成するための従来の方法に従って混合した。この混合物を、攪拌しながら85℃で1時間加熱し、次いでろ過した。このろ液を2リットルの殺菌した容器に充填し、容器を封止し、再度殺菌して、健康飲料用の組成の作成のために使用するまで冷蔵庫に保管した。
【0039】
人気のある飲料に適した成分を、好ましい混合比率に従って混合したが、組成比率は、地域および国民の嗜好などに従って調節することができる。

上記記載中に開示した概念および特定の実施形態を、本発明と同様の目的を実現するための他の実施形態を修正または考案するための基礎として容易に使用できることを、当業者は理解するであろう。当業者はまた、このような均等な実施形態が、添付の特許請求の範囲に説明された本発明の精神および請求の範囲から逸脱しないことも、理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)フグ肉をフグから分離するステップと、
2)ステップ1)の前記フグ肉を酵素と反応させるステップと、
3)ステップ2)の酵素反応生成物の蒸留により、蒸留物を得るステップとを含む、フグ抽出物の製造方法。
【請求項2】
ステップ2)の前記酵素がプロテアーゼである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
プロテアーゼ含有量が0.1〜0.2%であり、反応温度が25〜50℃であり、反応時間が12〜36時間である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
ステップ3)の蒸留のための温度が最高100℃であり、前記蒸留は、酵素反応生成物の体積が1/3〜1/2になるまで継続される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
ステップ3)の前記蒸留物にアーティチョーク粉末を加え、前記蒸留物をろ過した後に、前記ろ液をエージングするステップをさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ろ過を、1,000〜1,400メッシュの網を使用することにより行う、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記アーティチョーク粉末を2〜8g/L添加する、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
エージングの温度が40〜60℃であり、エージングの時間が5〜20時間である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1の方法により生成した、フグ抽出物。
【請求項10】
活性成分として請求項9に記載の前記フグ抽出物を含む、二日酔いを治療するための製薬組成。
【請求項11】
対象者に、請求項9に記載の前記フグ抽出物を薬学的に有効に投与するステップを含む、二日酔いを治療するための方法。
【請求項12】
二日酔いを治療するための製薬組成の生成のための、請求項9に記載の前記フグ抽出物の使用方法。
【請求項13】
活性成分として請求項9に記載の前記フグ抽出物を含有する、二日酔いを治療するための健康食品。
【請求項14】
二日酔いを治療するための健康食品の生成のための、請求項9に記載の前記フグ抽出物の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−516669(P2010−516669A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546322(P2009−546322)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際出願番号】PCT/KR2008/000296
【国際公開番号】WO2008/088174
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(509205490)
【Fターム(参考)】