説明

プロテインキナーゼ3の発現を阻害するための手段

本発明は、二本鎖構造を含む核酸分子に関し、二本鎖構造は、第1の鎖と第2の鎖とを含み、第1の鎖は、隣接するヌクレオチドからなる第1のストレッチを含み、該第1のストレッチは、少なくとも部分的に標的核酸と相補的であり、第2の鎖は、隣接するヌクレオチドからなる第2のストレッチを含み、該第2のストレッチは、少なくとも部分的に第1のストレッチと相補的であり、第1のストレッチは、少なくとも部分的に配列番号1(NM_013355)に記載の核酸配列のヌクレオチドコア配列、またはその一部分と相補的である核酸配列を含み、ヌクレオチドコア配列は、配列番号1のヌクレオチド位置482〜500(配列番号2);配列番号1のヌクレオチド位置1555〜1573(配列番号4);配列番号1のヌクレオチド位置1556〜1574(配列番号6);配列番号1のヌクレオチド位置1559〜1577(配列番号8);配列番号1のヌクレオチド位置1566〜1584(配列番号10);配列番号1のヌクレオチド位置2094〜2112(配列番号12);配列番号1のヌクレオチド位置2102〜2120(配列番号14);配列番号1のヌクレオチド位置2286〜2304(配列番号16);配列番号1のヌクレオチド位置2761〜2779(配列番号18);配列番号1のヌクレオチド位置2763〜2781(配列番号20);配列番号1のヌクレオチド位置2764〜2782(配列番号22);配列番号1のヌクレオチド位置2843〜2861(配列番号24);配列番号1のヌクレオチド位置2844〜2862(配列番号26);または配列番号1のヌクレオチド位置2846〜2864(配列番号28)の核酸配列を含み、好ましくは、ヌクレオチドコア配列は、配列番号1のヌクレオチド位置1555〜1573(配列番号4);配列番号1のヌクレオチド位置1556〜1574(配列番号6);配列番号1のヌクレオチド位置1559〜1577(配列番号8);配列番号1のヌクレオチド位置1566〜1584(配列番号10);配列番号1のヌクレオチド位置2094〜2112(配列番号12);または配列番号1のヌクレオチド位置2286〜2304(配列番号16)の核酸配列を含み、好ましくは、第1のストレッチは、さらに、ヌクレオチドコア配列の5’末端に先行する領域および/または前記ヌクレオチドコア配列の3’末端の後に続く領域と少なくとも部分的に相補的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテインキナーゼ3(PKN3)の発現を阻害するのに適した二本鎖核酸およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発癌は、多段階の生物学的プロセスとしてFouldsにより記載され(Foulds,1958)、それは現在、遺伝子の損傷の蓄積により起こることが知られている。分子レベルでは、多段階プロセスの腫瘍形成は正と負の両方の調節エフェクターの破壊を伴う(Weinberg,1989)。ヒト結腸癌腫の分子基盤には、多数の癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子および修復遺伝子が関与していることが、Vogelsteinおよび共同研究者らにより仮定されている(Fearon and Vogelstein,1990)。同様に、網膜芽細胞腫の発生を導く欠損は別の腫瘍抑制遺伝子に関連付けられている(Lee et al.,1987)。さらに他の癌遺伝子および腫瘍抑制因子が様々な他の悪性腫瘍において同定されている。残念ながら、治療可能な癌の数は依然として少なく、癌の作用は壊滅的である。米国だけでも毎年50万人を超える人が亡くなっている。
【0003】
癌は、基本的に細胞DNAへの損傷が細胞の増殖を制御する正常な機構の崩壊を導く遺伝病である。腫瘍抑制因子がゲノムの完全性を維持する作用機序の2つは、細胞停止によるものであり、それによって、損傷したDNAの修復またはアポトーシスにより損傷したDNAの除去を可能にする(Ellisen およびHaber,1998)。アポトーシスは別に「プログラムされた細胞死」とも呼ばれ、不可逆的に損傷した細胞を除去することを目的とする細胞の自殺プログラムとしてはたらく生化学的現象の綿密に調節されたネットワークである。アポトーシスは、腫瘍壊死因子の結合、DNA損傷、増殖因子の離脱、およびFas受容体の抗体架橋結合を含む、多数の方法で誘発され得る。アポトーシスのプロセスに役割を果たすいくつかの遺伝子が同定されているが、アポトーシスを導く経路はまだ完全に解明されていない。多くの研究者らは、このような遺伝子が新生細胞に選択的にアポトーシスを誘導し、患者において癌を治療する手段をもたらすという目的を持って、新規なアポトーシス促進遺伝子を同定しようと試みた。癌を治療するための代替的なアプローチは、エンドスタチン(商標)または抗VEGF抗体などの薬剤で血管新生を抑制するものである。このアプローチでは、目的はさらなる原発腫瘍の血管新生を防ぐこと、および転移病巣の大きさを実質的な血管の増殖がなくとも新生細胞の生存を支持することができるまでに潜在的に抑制することである。
【0004】
特定の群の癌疾患は、腫瘍の増殖速度、正常な組織への浸潤、化学療法または他の従来の治療に対する耐性、および全身への転移形成の点で攻撃的な癌疾患である。より攻撃的な癌の場合、癌組織は正常な組織とは一層異なり、腫瘍が拡大する可能性はより高い。そのために、現在の癌研究の1つの目的は、腫瘍増殖を阻害し、かつ/または、癌細胞の全身への拡大を抑制する薬剤を開発することである。
【0005】
侵襲性の癌疾患がどのようなものあるかに関する定義は、国立癌研究所(National Cancer Institute)のホームページ、http://www.cancer.gov/Templates/db_alpha.aspx?CdrID=46053から得てもよい。また。癌疾患の攻撃力の説明に関しては、典型的には、顕微鏡で調べた場合にそれらがどの程度異常であるかという点で癌細胞を分類するためのシステムである、段階化(grading)が用いられる。段階化システムの目的は、考えられる腫瘍の増殖速度およびその拡大傾向についての情報を提供することである。腫瘍を段階化するために用いるシステムは、各々の癌の種類によって異なる。段階化は、治療の決定に役割を果たす。
【0006】
このような段階化システムは、当業者に公知である。そのうちの1つが、グリーソンスコアで、前立腺癌組織が顕微鏡でどのように見えるかに基づいてそれを段階化するシステムである。グリーソンスコアは2〜10の範囲であり、腫瘍が広がる可能性がどの程度かを示す。低いグリーソンスコアは、その癌組織は正常な前立腺組織と同じようであり、腫瘍の広がる可能性は少ないことを意味し、高いグリーソンスコアは、その癌組織が正常とは大いに異なり、腫瘍の広がる可能性が高いことを意味する。
【0007】
PKN3は、プロテインキナーゼNベータまたはPKNベータとも呼ばれ、癌および腫瘍に関して価値のある標的である。国際特許出願第WO2004/019973号に記載されるように、プロテインキナーゼNベータは腫瘍形成および転移に関係のあるPI−3キナーゼ/PTEN経路の下流標的である。特に後者の効果は、抑制因子機能、より詳細にはPTEN腫瘍抑制因子機能の消失に強く関連しているように思われる。WO2004/019973号に示されるように、プロテインキナーゼNベータは、PI3キナーゼ経路に対する阻害剤であるPTENが活性化していない条件下で上方調節される。プロテインキナーゼNベータの上方調節に起因して、このような上方調節が生じる細胞は、転移挙動および遊走挙動の増加を示す。これは、プロテインキナーゼNベータの阻害剤が細胞の転移および遊走挙動を制御するのに適した手段であることを意味し、これは腫瘍および癌、より詳細には、転移性であり、その細胞が転移および/または遊走挙動を示す腫瘍および癌の治療に適した手段である。
【0008】
当技術分野において、腫瘍性疾患の治療のための手段に対して継続する必要性がある。より具体的には、攻撃的で、侵襲性の挙動を示す腫瘍性疾患に適した手段に対する必要性がある。
【0009】
また、血管新生、より具体的には、腫瘍性疾患の根本的な病理学的機序に関与する血管新生に影響を及ぼすのに適した手段に対する必要性がある。これらは、本発明の根本的な問題を定義する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の根本的な問題は、添付される独立請求項の主題により解決される。好ましい実施形態は、従属請求項から得てもよい。
【0011】
本発明の根本的な問題は、二本鎖核酸分子により解決され、
二本鎖構造は、第1の鎖と第2の鎖とを含み、
第1の鎖は、隣接するヌクレオチドからなる第1のストレッチを含み、上記第1のストレッチは、少なくとも部分的に標的核酸と相補的であり、かつ
第2の鎖は、隣接するヌクレオチドからなる第2のストレッチを含み、上記第2のストレッチは、少なくとも部分的に第1のストレッチと相補的であり、かつ
標的核酸は、PKN3をコードしているmRNAである。
【0012】
より具体的には、本発明の根本的な問題は、第1の態様において二本鎖構造を含む核酸分子により解決され、
二本鎖構造は、第1の鎖と第2の鎖とを含み、
第1の鎖は、隣接するヌクレオチドからなる第1のストレッチを含み、上記第1のストレッチは、少なくとも部分的に標的核酸と相補的であり、かつ
第2の鎖は、隣接するヌクレオチドからなる第2のストレッチを含み、上記第2のストレッチは、少なくとも部分的に第1のストレッチと相補的であり、
第1のストレッチは、少なくとも部分的に配列番号1(NM_013355)に記載の核酸配列のヌクレオチドコア配列またはその部分と相補的である核酸配列を含み、
ヌクレオチドコア配列は、ヌクレオチド配列
配列番号1のヌクレオチド位置482〜500(配列番号2)、
配列番号1のヌクレオチド位置1555〜1573(配列番号4)、
配列番号1のヌクレオチド位置1556〜1574(配列番号6)、
配列番号1のヌクレオチド位置1559〜1577(配列番号8)、
配列番号1のヌクレオチド位置1566〜1584(配列番号10)、
配列番号1のヌクレオチド位置2094〜2112(配列番号12)、
配列番号1のヌクレオチド位置2102〜2120(配列番号14)、
配列番号1のヌクレオチド位置2286〜2304(配列番号16)、
配列番号1のヌクレオチド位置2761〜2779(配列番号18)、
配列番号1のヌクレオチド位置2763〜2781(配列番号20)、
配列番号1のヌクレオチド位置2764〜2782(配列番号22)、
配列番号1のヌクレオチド位置2843〜2861(配列番号24)、
配列番号1のヌクレオチド位置2844〜2862(配列番号26)、または
配列番号1のヌクレオチド位置2846〜2864(配列番号28)を含み、
好ましくは、ヌクレオチドコア配列は、ヌクレオチド配列
配列番号1のヌクレオチド位置1555〜1573(配列番号4)、
配列番号1のヌクレオチド位置1556〜1574(配列番号6)、
配列番号1のヌクレオチド位置1559〜1577(配列番号8)、
配列番号1のヌクレオチド位置1566〜1584(配列番号10)、
配列番号1のヌクレオチド位置2094〜2112(配列番号12)、または
配列番号1のヌクレオチド位置2286〜2304(配列番号16)を含み、
好ましくは、第1のストレッチは、さらに、少なくとも部分的にヌクレオチドコア配列の5’末端に先行する領域と、かつ/またはヌクレオチドコア配列の3’末端の後に続く領域と相補的である。
【0013】
本発明の第1の態様の一実施形態では、核酸の第1のストレッチは、ヌクレオチドコア配列またはその部分と相補的である。
【0014】
本発明の第1の態様の一実施形態では、核酸の第1のストレッチは、さらに、ヌクレオチドコア配列の3’末端の後に続く領域と、かつ/またはヌクレオチドコア配列の5’末端に先行する領域と相補的である。
【0015】
本発明の第1の態様の一実施形態では、核酸の第1のストレッチは、18以上29までのヌクレオチド、好ましくは19〜25ヌクレオチド、より好ましくは19〜23ヌクレオチドの標的核酸と相補的である。
【0016】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、核酸のヌクレオチドは、連続したヌクレオチドである。
【0017】
本発明の第1の態様の一実施形態では、核酸の第1のストレッチおよび/または第2のストレッチは、18〜29の連続したヌクレオチド、好ましくは19〜25の連続したヌクレオチド、より好ましくは19〜23の連続したヌクレオチドを含む。
【0018】
本発明の第1の態様の一実施形態では、核酸の第1の鎖は、第1のストレッチからなり、かつ/または核酸の第2の鎖は、第2のストレッチからなる。
【0019】
本発明の根本的な問題は、第2の態様において核酸分子により解決され、好ましくは、第1の態様による核酸分子は二本鎖構造を含み、二本鎖構造は第1の鎖および第2の鎖により形成され、第1の鎖は隣接するヌクレオチドからなる第1のストレッチを含み、第2の鎖は隣接するヌクレオチドからなる第2のストレッチを含み、上記第1のストレッチは少なくとも部分的に上記第2のストレッチと相補的であり、
第1のストレッチは、配列番号3に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号2に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは配列番号5に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号4に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号7に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号6に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号9に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号8に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号11に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号10に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号13に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号12に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号15に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号14に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号17に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号16に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号19に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号18に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号21に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号20に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号23に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号22に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号25に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号24に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号27に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号26に記載のヌクレオチド配列からなり、または
第1のストレッチは、配列番号29に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号28に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号31に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号30に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号33に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号32に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号35に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号34に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号37に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号36に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号39に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号38に記載のヌクレオチド配列からなり、
好ましくは、
第1のストレッチは、配列番号5に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号4に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号7に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号6に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号9に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号8に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号11に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号10に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号13に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号12に記載のヌクレオチド配列からなり、
第1のストレッチは、配列番号17に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号16に記載のヌクレオチド配列からなり、または
第1のストレッチは、配列番号31に記載のヌクレオチド配列からなり、第2のストレッチは、配列番号30に記載のヌクレオチド配列からなる。
【0020】
本発明の第1および第2の態様の一実施形態では、核酸分子の第1のストレッチおよび/または第2のストレッチは、規則的な、好ましくは交互の位置パターンを形成する修飾を2’位に有する複数の群の修飾されたヌクレオチドを含み、ストレッチの内部では、修飾されたヌクレオチドの各群は片側または両側を1つの隣接するヌクレオチドの群によりフランクされ、隣接するヌクレオチドの群を形成する隣接するヌクレオチドは、修飾されていないヌクレオチドであるか、または修飾されたヌクレオチドの修飾とは異なる修飾を有するヌクレオチドである。
【0021】
本発明の第1および第2の態様の一実施形態では、核酸の第1のストレッチおよび/または核酸の第2のストレッチは、修飾されたヌクレオチドの群からなる1つのパターンおよび/または隣接するヌクレオチドの群からなる1つのパターンを含む。
【0022】
本発明の第1および第2の態様の一実施形態では、核酸の第1のストレッチおよび/または核酸の第2のストレッチは、3’末端にジヌクレオチドを含み、このようなジヌクレオチドは、好ましくはTTである。
【0023】
本発明の第1および第2の態様の好ましい実施形態では、核酸の第1のストレッチ長および/または核酸の第2のストレッチ長は、19〜21ヌクレオチドからなる。
【0024】
本発明の第1および第2の態様の一実施形態では、核酸の第1および/または第2のストレッチは、3’末端に1〜5ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【0025】
本発明の第1および第2の態様の好ましい実施形態では、核酸の二本鎖構造の長さは約16〜24ヌクレオチド対、好ましくは20〜22ヌクレオチド対である。
【0026】
本発明の第1および第2の態様の一実施形態では、核酸の第1の鎖および核酸の第2の鎖は相互に共有結合し、好ましくは第1の鎖の3’末端は第2の鎖の5’末端に共有結合している。
【0027】
本発明の第1および第2の態様の一実施形態では、核酸の分子は、次の2本の鎖の各々からなり、下線を引いたヌクレオチドは2’−O−メチルである。
【化1A】

【化1B】

好ましくは、
【化2】

である。
【0028】
本発明の根本的な問題は、第3の態様において第1または第2の態様による核酸を含むリポソーム製剤により解決される。
【0029】
本発明の根本的な問題は、第4の態様において第1または第2の態様による核酸を含むリポプレックス、およびリポソームにより解決される。
【0030】
本発明の第4の態様の好ましい実施形態では、リポプレックスのリポソームは、
a)約50モル%のβ−アルギニル−2,3−ジアミノプロピオン酸−N−パルミチル−N−オレイル−アミドトリヒドロクロリド、好ましくは、(β−(L−アルギニル)−2,3−L−ジアミノプロピオン酸−N−パルミチル−N−オレイル−アミドトリ−ヒドロクロリド);
b)約48〜49モル%の1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPhyPE);および
c)約1〜2モル%の1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−ポリエチレン−グリコール、好ましくは、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンナトリウム塩
からなる。
【0031】
本発明の第4の態様のより好ましい実施形態では、リポプレックスのゼータ電位は、約35〜60mV、好ましくは約45〜50mVである。
【0032】
本発明の第4の態様の一実施形態では、QELSにより測定されるリポプレックスのサイズは、約50〜400nm、好ましくは約100〜140nm、より好ましくは約110nm〜130nmである。
【0033】
本発明の根本的な問題は、第5の態様において、第1および第2の態様による核酸を含む、またはコードするベクター、好ましくは発現ベクターにより解決される。
【0034】
本発明の根本的な問題は、第6の態様において、先行する態様のいずれかに記載の核酸または先行する態様のいずれかに記載のベクターを含む細胞により解決される。
【0035】
本発明の根本的な問題は、第7の態様において、第1または第2の態様による核酸、第3の態様によるリポソーム製剤、第4の態様によるリポプレックス、第5の態様によるベクターおよび/または第6の態様による細胞を含む組成物、好ましくは医薬組成物により解決される。
【0036】
本発明の第7の態様の好ましい実施形態では、組成物は、場合により医薬品として許容されるビヒクルをさらに含む、医薬組成物である。
【0037】
本発明の第7の態様のより好ましい実施形態では、組成物は医薬組成物であり、上記医薬組成物は、血管形成依存性疾患、好ましくは、不十分、異常もしくは過剰な血管新生により特徴付けられるか、またはそれらに起因する疾患の治療のためのものである。
【0038】
本発明の第7の態様の最も好ましい実施形態では、組成物の血管新生は、脂肪組織、皮膚、心臓、眼、肺、腸、生殖器、骨および関節の血管新生である。
【0039】
本発明の第7の態様の一実施形態では、疾患は、感染症、自己免疫障害、血管奇形、アテローム性動脈硬化症、移植後動脈疾患(transplant arteriopathy)、肥満、乾癬、疣贅、アレルギー性皮膚炎、持続性過形成硝子体症候群(persistent hyperplastic vitrous syndrome)、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、加齢性黄斑疾患(age−related macular disease)、脈絡膜血管新生、原発性肺高血圧症、喘息、鼻茸、炎症性腸疾患および歯周病、腹水、腹膜癒着、子宮内膜症、子宮出血、卵巣嚢胞、卵巣(ovarian)、卵巣過剰刺激、関節炎、滑膜炎、骨髄炎、骨棘形成を含む群から選択される。
【0040】
本発明の第7の態様の一実施形態では、医薬組成物は、腫瘍性疾患、好ましくは癌疾患、より好ましくは固形腫瘍の治療のためのものである。
【0041】
本発明の第7の態様の一実施形態では、医薬組成物は、骨癌、乳癌、前立腺癌、消化器系の癌、結腸直腸癌、肝癌、肺癌、腎癌、泌尿生殖器癌、膵癌、下垂体癌、精巣癌、眼窩癌、頭頸部癌、中枢神経系の癌および呼吸器系の癌を含む群から選択される疾患の治療のためのものである。
【0042】
本発明の根本的な問題は、第8の態様において第1または第2の態様による核酸、第3の態様によるリポソーム製剤、第4の態様によるリポプレックス、第5の態様によるベクターおよび/または第6の態様による細胞の、薬剤の製造のための使用により解決される。
【0043】
本発明の第8の態様の一実施形態では、薬剤は、本発明の第7の態様に関連して定義されるいずれかの疾患の治療のためにも使用される。
【0044】
本発明の第8の態様の好ましい実施形態では、薬剤は、1種または数種類の他の治療法と併用して用いられる。
【0045】
本発明の第8の態様のより好ましい実施形態では、治療法は、化学療法、寒冷療法、温熱療法、抗体療法、放射線療法および抗血管新生療法(anti−angiogenesis therapy)を含む群から選択される。
【0046】
本発明の第8の態様の最も好ましい実施形態では、治療法は抗体療法であり、より好ましくは、抗VEGF抗体(例えば、Genentech−Rocheにより提供され、アバスチンの名称で販売されているものなど)または抗アンジオポエチン抗体を用いる抗体療法である。
【0047】
本発明の第8の態様の一実施形態では、抗血管新生療法はキナーゼ受容体阻害剤、好ましくはチロシンキナーゼ受容体阻害剤を使用し、このような受容体は、VEGF受容体、PDGF受容体、Tie−2、FGFRおよびEGFRを含む群から選択される。このような種類の阻害剤の例は、VEGF−RおよびPDGF−Rを標的にするソラフェニブ(Bayer)、ならびに、EGFRを標的にする抗体エルビタックス(Merck/serono)である。両薬剤は、抗血管新生療法(anti−angiogenic modalities)とされている。
【0048】
本発明の第8の態様の好ましい実施形態では、阻害剤は、siRNA、アンチセンス分子、アプタマー、スピーゲルマー(spiegelmers)、高親和性結合ペプチド、ペプチドアプタマー、アンチカリン(anticalines)および抗体を含む群から選択される。
【0049】
第8の態様の好ましい実施形態では、薬剤は、1種または数種類の他の治療法、好ましくは抗腫瘍療法もしくは抗癌治療と併用して用いられる。
【0050】
第8の態様のより好ましい実施形態では、治療法は、化学療法、寒冷療法、温熱療法、抗体療法および放射線療法を含む群から選択される。
【0051】
第8の態様のいっそうより好ましい実施形態では、治療法は、抗血管新生療法(antiagiogenic therapy)、より好ましくは抗VEGFまたは抗アンジオポエチン抗体を用いる抗体療法である。
【0052】
本発明の様々な態様のさらに好ましい実施形態では、mRNAは、PKN3のヒトmRNAである。いっそうより好ましい実施形態では、標的核酸は、配列番号1に記載の核酸配列を有するmRNAである。
【0053】
本明細書においてさらに詳細に概説されるように、それぞれ同じものを含有する核酸分子および薬剤および製剤は、侵襲性の癌、攻撃的な癌および悪性腫瘍を阻害、または予防または治療するために特に適している。
【0054】
本明細書において好ましく用いられるように、侵襲性の癌は、癌の生じた組織の層を超えて広がり、増殖して健康な組織を取り囲んでいる癌である。浸潤性の癌とも呼ばれる。
【0055】
本明細書において好ましく用いられるように、攻撃的な癌は、急速に増殖する癌である。
【0056】
本明細書において好ましく用いられるように、悪性腫瘍は、近傍の組織に侵入して破壊し、身体の他の部分へ広がることができる癌性の腫瘍である。
【0057】
配列番号1の核酸配列を有するmRNAに比べて、様々な個体または個体の群における、好ましくは集団におけるmRNAには1個または数個の単一ヌクレオチドの変化が起こる可能性があるということは当業者により認識される。配列番号1の核酸配列を有するmRNAに比べて、このような1個または数個の単一ヌクレオチドの変化を有するmRNAは、本明細書において好ましく用いられる標的核酸という用語によっても当然網羅される。なおさらなる実施形態では、本発明の様々な態様による核酸分子は、PKN3およびそれをコードするmRNAの発現を阻害するために適している。より好ましくは、このような発現は、RNA干渉または転写後遺伝子サイレンシングと呼ばれる機構により阻害される。したがって、本発明によれば、siRNA分子およびRNAi分子は、それぞれ好ましくは結果的に標的分子のmRNAのノックダウンをもたらす、RNA干渉応答を誘導するために適している。その程度において、この種類の核酸分子は、mRNAのレベルで発現を減少させることにより、標的分子の発現を減少させるために適している。それもまた本願により包含されるはずの、さらなるmRNAが存在してもよいことは当業者により認識される。より具体的には、配列番号1を参照して本明細書において確認された特定のヌクレオチド位置は、本明細書に提供される技術的教示に基づいて、当業者によってこのようなさらなるmRNAにおいて特定され得る。
【0058】
本発明の本態様による二本鎖核酸が、本明細書に記載されるデザインのいずれかをこの種類の核酸分子のために有してもよいこともまた認識されるはずである。さらに、上に記載される機構は、好ましい実施形態において、本明細書において代替的な態様としてみなされる様々な態様および設計原理に関連して、本明細書に開示される核酸にも適用できることも認識されるはずである。
【0059】
RNA干渉とは、動物において、短い干渉性RNA(siRNA)に媒介される配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングのプロセスをさす(Fire et al.,1998)。植物において相当するプロセスは、一般に転写後遺伝子サイレンシングまたはRNAサイレンシングと呼ばれ、真菌においてはクエリング(quelling)とも呼ばれる。転写後遺伝子サイレンシングのプロセスは、多様な植物相および種族により一般に共有される外来遺伝子の発現を防ぐために用いられる進化的に保存された細胞防御機構であると考えられる(Fire,1998 #263)。このような外来遺伝子発現からの保護は、ウイルス感染、またはトランスポゾンエレメントの宿主ゲノムへのランダム組込みから、相同一本鎖RNAまたはウイルスゲノムのRNAを特異的に破壊する細胞応答を介して誘導される、二本鎖RNA(dsRNA)の産生に応じて進化してきた可能性がある。細胞にdsRNAが存在すると、未だに十分にはキャラクタライズされていない機構を経てRNAi応答が誘導される。動物細胞に、特に哺乳類細胞にも存在するこの機構は、dsRNAに媒介されるプロテインキナーゼPKRおよび2’,5’−オリゴアデニル酸合成酵素の活性化に起因し、結果的にリボヌクレアーゼLによるmRNAの非特異的切断をもたらすインターフェロン応答とは異なるように思われる。
【0060】
主にサイズの点で異なる、siRNA分子またはRNAi分子の基本設計は、基本的に核酸分子が二本鎖構造を含むようにする。二本鎖構造は、第1の鎖と第2の鎖を含む。より好ましくは、第1の鎖は、隣接するヌクレオチドからなる第1のストレッチを含み、第2のストレッチは、隣接するヌクレオチドからなる第2のストレッチを含む。少なくとも第1のストレッチと第2のストレッチは本質的に相互に相補的である。このような相補性は典型的にはワトソン−クリック塩基対形成、または、限定されるものではないが、フーグスティーン塩基対形成および他を含む、当業者に公知の他の塩基対形成機構に基づく。このような二本鎖構造の長さにもよるが、塩基相補性の点から見て完全な一致が必ずしも必要ではないことは、当業者により認識される。しかし、このような完全な相補性は一部の実施形態において好ましい。特に好ましい実施形態では、相補性および/または同一性は少なくとも75%、80%、85%、90%または95%である。代替的な特に好ましい実施形態では、相補性および/または同一性は、その相補的なおよび/または同一な核酸分子が本発明に記載の核酸分子の鎖の1本とハイブリダイズし、より好ましくは、次の条件下で2つのストレッチのうちの1つとハイブリダイズし、次の条件下で標的遺伝子転写物の部分とハイブリダイズすることができ、その条件は、400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mM EDTA、50℃または70℃でのハイブリダイゼーションを12〜16時間、続いて洗浄、である。それぞれの反応条件は、中でも欧州特許EP1230375号に記載されている。
【0061】
ミスマッチも、主に、二本鎖構造がなおRNA干渉機構を誘導するために適し、かつ、好ましくはこのような二本鎖構造が細胞、組織および生物それぞれに行き渡っている、このような細胞、組織および器官を含むか、または原則として含む生理的条件下で、なお安定に形を成している条件下で許容される。より好ましくは、この二本鎖構造は、生理緩衝液中、37℃で安定である。この種類のミスマッチは、コア領域とは異なる、本発明に記載の核酸分子の内部の位置に含まれ得ることが好ましいことは、当業者により認識されるであろう。
【0062】
本明細書において好ましく用いられるように、核酸分子またはストレッチまたはその部分が標的核酸分子と部分的に相補的である、という用語は、好ましくは、このような標的核酸が直接または間接にRNA干渉(が媒介する)核酸により標的化される場合は、その標的核酸と、上記核酸、ストレッチまたはその部分、あるいは二本鎖構造との間の相補性が形成されたことを意味する。このような相補性はRNA干渉を誘導することができるためである。このような相補性の要件はRNA干渉機構に制限されていないが、例えば標的核酸によりコードされるポリペプチドなどの分子の活性の下方調節または低下をもたらす任意の機構に制限されることは、当然理解される。一実施形態では、別の核酸分子と部分的に相補的である核酸分子は、両方の核酸分子の塩基対形成の際に1、2、3、4または5のミスマッチを含む。より好ましくは、このようにして形成された二本鎖核酸分子は19〜25塩基対を含む。
【0063】
第1のストレッチは、典型的には少なくとも部分的に標的核酸と相補的であるかまたは少なくとも部分的に同一であり、第2のストレッチは、特に第1および第2のストレッチ間の関係を前提として、それぞれ、塩基の相補性に関して、少なくとも部分的に標的核酸と同一であるかまたは少なくとも部分的に相補的である。この標的核酸はmRNAであることが好ましいが、他の形態のRNA、例えばhnRNAも本明細書に開示される核酸分子の目的に適している。本明細書で好ましくは用いられるように、標的はPKN3であり、標的核酸は、より好ましくはPKN3をコードするDNAまたはRNA、あるいは、このような部分が好ましくは、なおもキナーゼとして作用するための全長PKN3の特徴を少なくとも有する場合は、その一部分である。
【0064】
RNA干渉は、それぞれ数十の、特には、さらに数百のヌクレオチドおよびヌクレオチド対を含む長い核酸分子を使用する際に観察することができる場合もあるが、より短いRNAi分子が一般に好ましい。第1のストレッチおよび/または第2のストレッチの長さのより好ましい範囲は、約18〜29の連続したヌクレオチド、好ましくは19〜25の連続したヌクレオチド、より好ましくは19〜23の連続したヌクレオチドである。第1のストレッチと第2のストレッチの両方が同じ長さであることがより好ましい。さらなる実施形態では、二本鎖構造は、好ましくは16〜29、好ましくは18〜25、より好ましくは19〜23、そして最も好ましくは、19〜21の塩基対を含む。
【0065】
本発明によれば、原則として、PKN3をコードしているmRNAのいずれの部分も、それぞれ、このようなsiRNA分子およびRNAi分子のデザインに使用することができるが、本発明者らは、驚くことに、配列番号1の核酸配列を有する配列番号1のmRNAのヌクレオチド位置1555、1556、1559、1566、2094、2286で始まる配列が、RNA干渉を媒介する分子として扱われるのに特に適していることを見出した。
【0066】
より具体的には、本発明者らは、驚くことに、これらの配列および出発点はPKN3の発現阻害のために特に好ましい標的配列であるが、ヌクレオチドのコアがこれらの配列の近傍にあり、それがその程度において特に効果的であることを見出した。このコアは、一実施形態では上に指定した核酸配列の最後の約9〜11ヌクレオチドからなる配列である。それから出発すると、コアは、機能的に活性のある二本鎖核酸分子が得られ、それにより、好ましくは、PKN3の発現阻害に作用するのに適した機能的に活性のある手段が得られるように伸長することができる。このような目的のため、mRNAの対応する部分、すなわちコア配列に本質的に同一な第2のストレッチを、5’末端の1つの、好ましくは数個のヌクレオチドにより長くし、それにより、このようにして付加されたヌクレオチドは、対応する位置の標的核酸中に存在するヌクレオチドと本質的に同一である。また、このような目的のため、標的核酸と本質的に相補的である第1の鎖を、3’末端の1つの、好ましくは数個のヌクレオチドにより長くし、それにより、このようにして付加されたヌクレオチドは、対応する位置、すなわち5’末端の標的核酸中に存在するヌクレオチドと相補的である。
【0067】
この設計原理によると、本発明によるコア配列を次のようにまとめることができる。
【化3】

【0068】
より好ましくは、この表示において、各二本鎖分子の上側の鎖はセンス鎖であるのに対し、下側の鎖はアンチセンス鎖であり、両方とも5’から3’の方向に示されている。
【0069】
いっそうより好ましくは、センス鎖において、2番目のヌクレオチドから始まる1つ置きのヌクレオチドは、2’位を修飾されて、好ましくは2’−O−Me修飾されたヌクレオチドとなり、アンチセンス鎖において、最初のヌクレオチドから始まる1つ置きのヌクレオチドは、2’位を修飾されて、好ましくは2’−O−Me修飾されたヌクレオチドとなる。この種類の修飾あるいは規則的または空間的な修飾パターンは、好ましい実施形態において本発明の任意の核酸分子で実現することができる。
【0070】
そのさらなる実施形態では、コア配列は、本発明の二本鎖核酸分子の第2のストレッチのヌクレオチド配列と同一であり、第1のストレッチはそれと本質的に相補的である。なおさらに好ましい実施形態では、本発明による二本鎖核酸分子の長さは、様々な態様および代替的な態様に関連して、それぞれ本明細書に開示される限度の範囲内である。
【0071】
siRNA分子およびRNAi分子の特定のデザインは、それぞれ、現在および将来の設計原理によると変動する可能性があることは、当業者により認識される。当分の間は、下記でより詳細に考察および開示される設計原理、及び代替的な態様または本発明による核酸分子の第1の態様の代替的な態様と称される設計原理が存在する。1つの特定の代替的な態様について説明される全ての特徴および実施形態、すなわち核酸のデザインは、本発明による核酸の任意の他の態様および代替的な態様にも適用でき、したがって、そのそれぞれの実施形態を形成することは、本発明の範囲内である。
【0072】
第1の代替的な態様は、本発明による核酸に関し、その第1のストレッチは、2’位が修飾された複数の群の修飾ヌクレオチドを含み、ストレッチの内部では、修飾ヌクレオチドの各群は片側または両側を1つの隣接するヌクレオチドの群により隣接され、隣接するヌクレオチドの群を形成する隣接するヌクレオチドは、非修飾ヌクレオチドであるか、または修飾ヌクレオチドの修飾とは異なる修飾を有するヌクレオチドである。このようなデザインは、中でも、国際特許出願第WO2004/015107号に記載されている。この態様による核酸は、好ましくはリボ核酸であるが、一部の実施形態に概説されるように、2’位の修飾により、それ自体、純粋に化学的な観点から、結果的に、もはやリボヌクレオチドでないヌクレオチドとなった。しかし、このような修飾されたリボヌクレオチドが本明細書においてリボヌクレオチドとみなされ、対処されるものとし、このような修飾されたリボヌクレオチドを含有する分子をリボ核酸とみなし、対処するものとすることは本発明の範囲内である。
【0073】
本発明の第1の代替的な態様によるリボ核酸の一実施形態では、リボ核酸は、二本鎖構造の片側または両側を平滑末端化されている。より好ましい実施形態では、二本鎖構造は、18〜25、好ましくは18〜23、より好ましくは19、21または23塩基対を含むかあるいはそれらからなり、それにより、二本鎖構造は、好ましくは平滑末端化されている。なおさらに一層好ましい実施形態では、核酸は、第1のストレッチおよび第2のストレッチのみからなる。
【0074】
本発明の第1の代替的な態様によるリボ核酸のさらなる実施形態では、上記第1のストレッチおよび/または上記第2のストレッチは、複数の修飾ヌクレオチドの群を含む。さらに好ましい実施形態では、第1のストレッチも複数の隣接するヌクレオチドの群を含む。好ましい実施形態では、複数の群とは、少なくとも2つの群を意味する。
【0075】
本発明の第1の代替的な態様によるリボ核酸の別の実施形態では、上記第2のストレッチは、複数の修飾ヌクレオチドの群を含む。さらに好ましい実施形態では、第2のストレッチも複数の隣接するヌクレオチドの群を含む。好ましい実施形態では、複数の群とは、少なくとも2つの群を意味する。
【0076】
さらに好ましい実施形態では、第1および第2の両方のストレッチは、修飾ヌクレオチドの群と隣接するヌクレオチドの群の両方を複数含む。より好ましい実施形態では、複数の、修飾ヌクレオチドの群と隣接するヌクレオチドの群の両方は、パターン、好ましくは規則的および/または反復型のパターンを、第1のストレッチおよび/または第2のストレッチのいずれかに形成するため、このようなパターンが第1および第2の両方のストレッチに形成されることがいっそうより好ましい。
【0077】
本発明の第1の代替的な態様によるリボ核酸の好ましい実施形態では、修飾ヌクレオチドの群および/または隣接するヌクレオチドの群は、多数のヌクレオチドを含み、その数は、1つのヌクレオチド〜10のヌクレオチドを含む群から選択される。本明細書中で指定される任意の範囲に関連して、それぞれの範囲が、上記範囲を画定する上記の2つの数字を含む、その範囲を画定するために用いられるそれぞれの数字の間の任意の個々の整数を開示することは当然理解される。この場合は、したがって、群は1つのヌクレオチド、2つのヌクレオチド、3つのヌクレオチド、4つのヌクレオチド、5つのヌクレオチド、6つのヌクレオチド、7つのヌクレオチド、8つのヌクレオチド、9つのヌクレオチドおよび10のヌクレオチドを含む。
【0078】
本発明の第1の代替的な態様によるリボ核酸の別の実施形態では、上記第1のストレッチの修飾ヌクレオチドのパターンは、上記第2のストレッチの修飾ヌクレオチドのパターンと同じである。
【0079】
本発明の第1の代替的な態様によるリボ核酸の好ましい実施形態では、上記第1のストレッチのパターンは、上記第2のストレッチのパターンと整列する。
【0080】
本発明の第1の代替的な態様によるリボ核酸の代替的な実施形態では、上記第1のストレッチのパターンは、第2のストレッチのパターンに対して1つ以上のヌクレオチドだけ移動されている。
【0081】
本発明の第1の代替的な態様によるリボ核酸の一実施形態では、2’位の修飾は、アミノ、フルオロ、メトキシ、アルコキシおよびアルキルを含む群から選択される。
【0082】
本発明の第1の代替的な態様によるリボ核酸の別の実施形態では、二本鎖構造は、平滑末端化されている。
【0083】
本発明の第1の代替的な態様によるリボ核酸の好ましい実施形態では、二本鎖構造は、二本鎖構造の両側で平滑末端化されている。
【0084】
本発明の第1の代替的な態様によるリボ核酸の別の実施形態では、二本鎖構造は、第1の鎖の5’末端および第2の鎖の3’末端により画定される二本鎖構造の側で平滑末端化されている。
【0085】
本発明の第1の代替的な態様によるリボ核酸のさらに別の実施形態では、二本鎖構造は、第1の鎖の3’末端および第2の鎖の5’末端により画定される二本鎖構造の側で平滑末端化されている。
【0086】
本発明の第1の代替的な態様によるリボ核酸の別の実施形態では、2本の鎖のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つのヌクレオチドの5’末端にオーバーハングを有する。
【0087】
本発明の第1の代替的な態様によるリボ核酸の好ましい実施形態では、オーバーハングは、少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチドからなる。
【0088】
本発明の第1の代替的な態様によるリボ核酸のさらなる実施形態では、鎖のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つのヌクレオチドの3’末端にオーバーハングを有する。
【0089】
第1の代替的な態様のリボ核酸の一実施形態では、二本鎖構造の長さは、約17〜23、より好ましくは、18または19塩基もしくは塩基対である。
【0090】
第1の代替的な態様のリボ核酸の別の実施形態では、上記第1の鎖の長さおよび/または上記第2の鎖の長さは、相互に独立に、約15〜約23塩基、17〜21塩基および18または19塩基もしくは18または19塩基対、より好ましくは、19、21または23塩基対の範囲を含む群から選択される。
【0091】
本発明の第1の代替的な態様によるリボ核酸の好ましい実施形態では、上記第1の鎖と標的核酸との間の相補性は完全である。
【0092】
第1の代替的な態様によるリボ核酸の一実施形態では、第1の鎖と標的核酸との間に形成された二重鎖は、少なくとも15のヌクレオチドを含み、この際、上記二本鎖構造を形成する上記第1の鎖と標的核酸との間には1つのミスマッチまたは2つのミスマッチがある。
【0093】
第1の代替的な態様によるリボ核酸の一実施形態では、第1の鎖と第2の鎖の両方は、それぞれ、修飾ヌクレオチドの少なくとも1つの群、およびヌクレオチドの少なくとも1つの隣接する群を含み、修飾ヌクレオチドの各群は少なくとも1つのヌクレオチドを含み、各群の隣接するヌクレオチドは少なくとも1つのヌクレオチドを含み、第1の鎖の修飾ヌクレオチドの各群は、第2の鎖上のヌクレオチドの1つの隣接する群と整列され、それにより、第1の鎖の最も末端の5’ヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドの群のヌクレオチドであり、かつ、第2の鎖の最も末端の3’ヌクレオチドは、隣接するヌクレオチドの群のヌクレオチドである。
【0094】
第1の代替的な態様によるリボ核酸の好ましい実施形態では、修飾ヌクレオチドの各群は、単一のヌクレオチドからなり、かつ/またはそれぞれの隣接するヌクレオチドの群は、単一のヌクレオチドからなる。
【0095】
第1の代替的な態様によるリボ核酸のさらなる実施形態では、第1の鎖上で、隣接するヌクレオチドの群を形成するヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドの群を形成するヌクレオチドに対して3’方向に配置された、非修飾ヌクレオチドであり、第2の鎖上で、修飾ヌクレオチドの群を形成するヌクレオチドは、隣接するヌクレオチドの群を形成するヌクレオチドに対して5’方向に配置された、修飾ヌクレオチドである。
【0096】
第1の代替的な態様によるリボ核酸の別の実施形態では、第1の鎖は8〜12、好ましくは9〜13の、修飾ヌクレオチドの群を含み、第2の鎖は7〜13、好ましくは8〜10の、修飾ヌクレオチドの群を含む。
【0097】
上に特定したことが、第1および第2のストレッチにも、それぞれ適用できることは、本発明の範囲内である。これは、鎖がストレッチのみからなる実施形態に特に該当する。
【0098】
このような第1の代替的な態様により設計され得るリボ核酸分子は、本明細書において遊離5’OH基とも称される、遊離5’ヒドロキシル基を第1の鎖に有する場合がある。遊離5’OH基とは、第1の鎖を形成する最も末端のヌクレオチドが存在し、したがって、特に末端修飾によって修飾されていないことを意味する。典型的には、第2の鎖の末端の5’−ヒドロキシ基は、それぞれ、修飾されていない様式でも存在する。より好ましい実施形態では、第1の鎖および第1のストレッチの3’末端も、それぞれ、本明細書において遊離3’OH基とも称される遊離OH基を呈するように、修飾されていない。それにより、5’末端のヌクレオチドのデザインは、前に記載した実施形態のいずれかの1つである。好ましくは、このような遊離OH基も第2の鎖の3’末端および第2のストレッチに、それぞれ存在する。本発明によれば、既に説明したリボ核酸分子の他の実施形態では、それぞれ、第1の鎖および第1のストレッチの3’末端、ならびに/または、それぞれ、第2の鎖および第2のストレッチの3’末端は、3’末端に末端修飾を有してもよい。
【0099】
本明細書において、遊離5’OH基および3’OH基という用語はまた、二本鎖構造を形成する、ポリヌクレオチドの5’末端および3’末端のそれぞれの最も末端のヌクレオチドがそれぞれ、すなわち、核酸あるいは鎖およびストレッチのいずれかがそれぞれ、OH基を呈することを示す。このようなOH基は、ヌクレオチドの糖部分、より好ましく5’OH基の場合には5’位から、さらに3’OH基の場合には3’位から、または、それぞれの末端のヌクレオチドの糖部分に結合しているリン酸基のいずれかから生じてもよい。このリン酸基は、原則としてヌクレオチドの糖部分のいずれのOH基にも結合してもよい。好ましくは、リン酸基は、本明細書において遊離5’または3’OH基と称されるものをなお提供する、遊離5’OH基の場合には5’OH基の糖部分、かつ/または遊離3’OH基の場合には3’OH基の糖部分に結合する。
【0100】
本明細書において第1の代替的な態様の任意の実施形態とともに用いられる、末端修飾という用語は、第1のおよび/または第2の鎖の最も多くの5’または3’ヌクレオチドに付加された化学的な部分を意味する。このような末端修飾の例としては、限定されるものではないが、中でも、欧州特許EP 0 586 520B1号またはEP 0 618 925B1号に記載される、逆方向(デオキシ)脱塩基、アミノ、フルオロ、クロロ、ブロモ、CN、CF、メトキシ、イミダゾール、カルボキシレート、チオエート、C−C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリルまたはアラルキル、OCF、OCN、O−、S−、もしくはN−アルキル;O−、S−、もしくはN−アルケニル;SOCH;SOCH;ONO;NO、N;ヘテロジクロアルキル(heterozycloalkyl);ヘテロジクロアルカリル(heterozycloalkaryl);アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノまたは置換シリルが挙げられる。
【0101】
本明細書において、アルキルまたは「アルキル」を含む任意の用語は、1〜12個、好ましくは1〜6個以上、好ましくは、1〜2個のC原子を含む任意の炭素原子鎖を意味する。
【0102】
さらなる末端修飾は、ビオチン基である。このようなビオチン基は、好ましくは、第1のおよび/または第2の鎖の最も末端の5’または最も末端の3’ヌクレオチドのいずれか、あるいは両方の末端に結合してもよい。より好ましい実施形態では、ビオチン基はポリペプチドまたはタンパク質に結合されている。ポリペプチドまたはタンパク質が、他の前述の末端修飾のいずれかによって結合されていることも本発明の範囲内である。ポリペプチドまたはタンパク質は、本発明の核酸分子にさらなる特徴を付与してもよい。中でも、ポリペプチドまたはタンパク質は別の分子へのリガンドとしての機能を果たしてもよい。上記他の分子が受容体である場合は、その受容体の機能および活性は結合リガンドにより活性化され得る。受容体は、本発明の核酸分子に結合したリガンドの効果的なトランスフェクションを可能にする、インターナリゼーション活性を示し得る。本発明の核酸分子に結合してもよいリガンドの例はVEGFであり、対応する受容体はVEGF受容体である。
【0103】
異なる種類の末端修飾を有する、本発明のRNAiの様々な可能性のある実施形態を次の表1に提示する。
【表1】

【0104】
本明細書に開示される様々な末端修飾は、リボ核酸のヌクレオチドのリボース部分に位置していることが好ましい。より詳細に、末端修飾は、このように修飾ヌクレオチドが末端のヌクレオチドであるという条件で、限定されるものではないが、2’OH、3’OHおよび5’OHの位置を含む、リボース部分のOH基のいずれかに結合または置換されてもよい。逆方向の脱塩基は、核酸塩基部分を含まない、デオキシリボヌクレオチド(desoxyribonucleotides)かまたはリボヌクレオチドのいずれかのヌクレオチドであり、この種類の化合物は、中でも、(Sternberger et al.,2002)に記載されている。
【0105】
前述の末端修飾のいずれもが、表1に示されるRNAiの様々な実施形態に関連して使用され得る。それと関連して、センス鎖が、好ましくは末端修飾を、より好ましくは5’末端に有することにより不活化されている、本明細書に開示されるRNAi形態または実施形態はいずれも特に有利であることは注目され、そうでなければその細胞中の関係のない一本鎖RNAに干渉する場合がある、本明細書に記載されるリボ核酸の第2の鎖に対応するセンス鎖の不活性化に起因する。したがって、細胞のトランスクリプトームの発現および、より詳細には、翻訳パターンは、さらに特異的に影響を受ける。この効果はオフターゲット効果とも称される。表1を参照すると、実施形態7および8に示される実施形態は、修飾により(第2の鎖である)RNAiの標的非特異的部分の不活性化がもたらされ、したがって、本発明によるRNAiが特異的なリボ核酸およびタンパク質を、それぞれノックダウンするために用いられる、細胞または類似の系において、第2の鎖と一本鎖RNAの任意の非特異的相互作用を減少させるため、上の意味において特に有利である。
【0106】
さらなる実施形態では、第1の代替的な態様による核酸は、そのリボ核酸の5’末端にオーバーハングを有する。より詳細には、このようなオーバーハングは、原則として本発明によるリボ核酸の第1の鎖および第2の鎖のいずれか、または両方に存在してもよい。上記オーバーハングの長さは、わずか1ヌクレオチド程度であってもよく、2〜8ヌクレオチド程度の長さであってもよく、好ましくは、2、4、6または8ヌクレオチドであってもよい。5’オーバーハングが本願のリボ核酸の第1の鎖および/または第2の鎖に位置してもよいことは、本発明の範囲内である。オーバーハングを形成するヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはその連続であってもよい。
【0107】
オーバーハングは、少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチドを含むことが好ましく、それにより、上記1つのデオキシリボヌクレオチドは、最も5’末端のそれであることが好ましい。本発明のリボ核酸のそれぞれの逆鎖の3’末端がオーバーハングを有さない、より好ましくはデオキシリボヌクレオチドオーバーハングを有さないことは、本発明の範囲内である。ここで再び、任意の本発明のリボ核酸は、表1に関連して概説される末端修飾スキームおよび/またはおよび本明細書に概説される末端修飾を含んでよい。
【0108】
連続したヌクレオチドのストレッチをパターンと考えると、好ましくは、ストレッチを形成するヌクレオチドの修飾の規則的および/または反復パターンは、標準的なホスホロジエステル結合を介して、または、少なくとも部分的に、ホスホロチオエート結合を通して相互に共有結合している、単一のヌクレオチドまたはヌクレオチドの群がこのような種類の修飾を示すような実施形態において実現されてもよい。本明細書において修飾ヌクレオチドの群とも称される、このようなヌクレオチドまたはヌクレオチドの群が、上記ストレッチの5’末端または3’末端を形成していない場合、ヌクレオチドまたはヌクレオチドの群は、先行するヌクレオチドまたはヌクレオチドの群が非修飾ヌクレオチドの両側に続く。しかし、この種類のヌクレオチドまたはヌクレオチドの群が、異なる修飾を有しともよいことに留意されたい。この種類のヌクレオチドまたはヌクレオチドの群は、本明細書において隣接するヌクレオチドの群とも称される。修飾ヌクレオチドおよび修飾ヌクレオチドの群それぞれと、修飾されていないかまたは異なって修飾されたヌクレオチドまたはヌクレオチドの群のこの配列は1回または数回反復されてもよい。この配列は1回より多く反復されることが好ましい。明確にするために、このパターンは、一般に修飾ヌクレオチドの群または非修飾ヌクレオチドの群(上記の群の各々は実際に少なくとも単一のヌクレオチドを含んでもよい)を参照して、以下でより詳細に考察される。本明細書で用いる非修飾ヌクレオチドとは、それぞれのヌクレオチドまたはヌクレオチドの群を形成するヌクレオチドに前述の修飾を有さないか、または、修飾ヌクレオチドおよびヌクレオチドの群のそれとは異なる修飾を有することをそれぞれ意味する。
【0109】
また、このような非修飾ヌクレオチドが、修飾ヌクレオチドの修飾とは異なる方法で実際に修飾されている、非修飾ヌクレオチドの修飾は、上記非修飾ヌクレオチドを形成する様々なヌクレオチド、または様々な隣接するヌクレオチドの群に対して同じであってもよく、異なっていてもよいことも本発明の範囲内である。
【0110】
修飾ヌクレオチドと非修飾ヌクレオチドのパターンは、鎖またはストレッチの5’末端のヌクレオチドが修飾ヌクレオチドの群から始まるか、あるいは、非修飾ヌクレオチドの群から始まるようなパターンであってもよい。しかし、代替的な実施形態では、5’末端のヌクレオチドが非修飾ヌクレオチドの群により形成されていてもよい。
【0111】
この種類のパターンは、干渉するRNAの第1のストレッチかまたは第2のストレッチで、あるいは両方のいずれかで実現されてもよい。留意されるべき点は、siRNA二重鎖の標的相補鎖の5’ホスフェートがsiRNA機能に必要である点で、細胞が(リン酸化されうる)遊離5’OHを通じてsiRNAの信頼性をチェックし、正真正銘のsiRNAだけに標的RNA破壊を指示させることが示唆される(Nykanen et al.,2001)。
【0112】
好ましくは、第1のストレッチは、修飾ヌクレオチドの群と非修飾ヌクレオチドの群の、すなわち修飾ヌクレオチドの群と隣接するヌクレオチドの群の、一種類のパターンを示し、それに対して第2のストレッチはこの種類のパターンを示さないか、またはパターンを全く示さない。これは、特異性の理由から、第2のストレッチが、RNA干渉を媒介する際に機能的ではないように化学的に修飾され得るように、第1のストレッチがRNAの干渉現象の根底にある標的特異的分解プロセスに対して実際により重要である限りにおいて、有用であり得る。
【0113】
しかし、第1のストレッチと第2のストレッチとの両方がこの種類のパターンを有することも本発明の範囲内である。好ましくは、修飾と非修飾のパターンは、第1のストレッチと第2のストレッチの両方について同じである。
【0114】
好ましい実施形態では、第2のストレッチを形成し、第1のストレッチの修飾ヌクレオチドの群に相当するヌクレオチドの群も修飾されるのに対し、第2のストレッチの非修飾ヌクレオチドの群または第2のストレッチを形成する非修飾ヌクレオチドの群は、第1のストレッチの非修飾ヌクレオチドの群または第1のストレッチを形成する非修飾ヌクレオチドの群に相当する。別の代替形態は、第2のストレッチおよび第2の鎖それぞれの修飾のパターンに対して、第1のストレッチおよび第1の鎖それぞれの修飾のパターンの相の移動がある点である。好ましくは、この移動は、第1の鎖の修飾ヌクレオチドの群が第2の鎖の非修飾ヌクレオチドの群に相当し、逆も同じとなるような移動である。修飾のパターンの相の移動が完全でなく、重複している場合も本発明の範囲内である。
【0115】
好ましい実施形態では、鎖およびストレッチそれぞれの末端の2番目のヌクレオチドは、非修飾ヌクレオチドであるか、または非修飾ヌクレオチドの群の先端である。好ましくは、この非修飾ヌクレオチドまたは非修飾ヌクレオチドの群は第1および第2の鎖それぞれの、いっそうより好ましくは第1の鎖の、5’末端に位置する。さらに好ましい実施形態では、非修飾ヌクレオチドまたは非修飾ヌクレオチドの群は、第1の鎖および第1のストレッチそれぞれの5’末端に位置する。好ましい実施形態では、このパターンは、交互に現れる単一の修飾ヌクレオチドと非修飾ヌクレオチドからなる。
【0116】
本発明のこの態様のさらに好ましい実施形態では、干渉するリボ核酸対象(subject)は2本の鎖を含み、それにより、2’−O−メチル修飾ヌクレオチドおよび非修飾ヌクレオチド、好ましくは2’−O−メチル修飾されていないヌクレオチドは、1つ置きのヌクレオチドが、それぞれ2’−O−メチル修飾ヌクレオチドと非修飾ヌクレオチドであることを意味する、交互に並ぶ様式で両方の鎖に組み込まれている。これは、第1の鎖の1つの2’−O−メチル修飾ヌクレオチドの後に、非修飾ヌクレオチドが続き、その後には順番に2’−O−メチル修飾ヌクレオチドが続き、その後も同様であることを意味する。2’−O−メチル修飾および非修飾からなる同一配列は第2の鎖に存在し、それにより、好ましくは、第1の鎖の塩基の2’−O−メチル修飾ヌクレオチドが第2の鎖の非修飾ヌクレオチドと対になり、逆も同じとなるような相の移動が存在する。この特定の配置、すなわち両方の鎖の2’−O−メチル修飾ヌクレオチドと非修飾ヌクレオチドの塩基対形成は短く、干渉するリボ核酸、すなわち短い塩基対形成二本鎖リボ核酸の場合には特に好ましい。本発明者らは特定の理論に拘束されることを望むものではないが、これは、二重鎖、好ましくは短い二重鎖を不安定化させ得るある一定の反発力が2つの塩基対を形成している2’−O−メチル修飾ヌクレオチド間に存在するとされているためである。特定の配置に関して、アンチセンス鎖が5’末端の2’−O−メチル修飾ヌクレオチドで始まるのであれば好ましく、それにより、その結果として2番目のヌクレオチドは非修飾であり、3番目、5番目、7番目などのヌクレオチドは、したがって、再び2’−O−メチル修飾され、それに対して2番目、4番目、6番目、8番目等のヌクレオチドは非修飾ヌクレオチドである。再び、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、特定の重要性は、修飾を含まないはずであるアンチセンス鎖の5’末端の2番目、および、場合により、4番目、6番目、8番目および/または同様の位置に属する場合があると考えられ、それに対してアンチセンス鎖の最も5’末端のヌクレオチド、すなわち最初の5’末端のヌクレオチドは、修飾されてもよいアンチセンス鎖の奇数の位置、例えば1番目、場合により、3番目、5番目等の位置のこのような修飾を示すことがある。さらなる実施形態では、修飾および非修飾ヌクレオチドそれぞれの修飾および非修飾は、それぞれ、本明細書に記載されるいずれのものであってもよい。さらに具体的な実施形態では、本発明の二本鎖核酸分子は、19、21または23の連続したヌクレオチドの第1の鎖と、19、21または23の連続したヌクレオチドの第2の鎖からなり、第1の鎖と第2の鎖は本質的に相互に相補的である。さらに、上記のさらに具体的な実施形態では、二本鎖構造は両方の末端が平滑末端化されている。標的核酸、すなわちPKN3をコードしているmRNAと本質的に相補的な第1の鎖は、5’末端で2’OH基がメチル化されて2’O−Me基を形成するヌクレオチドから始まる。この第1の鎖の1つ置きのヌクレオチドは同じ修飾を有する、すなわち2’OH基でメチル化されている。したがって、第1の鎖の1番目、3番目、5番目等の、すなわち任意の奇数のヌクレオチド位置は、そのような方法で修飾される。第1の鎖の偶数の位置のヌクレオチドは、非修飾ヌクレオチドか修飾ヌクレオチドのいずれかであり、その修飾は第1の鎖の奇数のヌクレオチド位置のヌクレオチドの修飾とは異なっている。第2の鎖はまた、好ましくは、19、21または23ヌクレオチドを含み、2番目、4番目、6番目等の位置に、すなわち任意の偶数のヌクレオチド位置に修飾されたヌクレオチドを有する。他のヌクレオチドのいずれかは非修飾ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドであり、その修飾は第1の鎖の偶数のヌクレオチド位置のヌクレオチドの修飾とは異なっている。したがって、第2の鎖は、上の意味において5’末端で非修飾ヌクレオチドから始まる。より好ましい実施形態では、第1および第2の鎖の修飾されたヌクレオチドの修飾は同じであり、第1および第2の鎖の非修飾ヌクレオチドの修飾も同じである。好ましい実施形態では、アンチセンス、すなわち第1の鎖の5’末端は、好ましくは、本発明の核酸分子が活性化または作動する細胞中で、好ましくは標的細胞中でリン酸化されてもよいOH基を有するか、またはリン酸基を有する。センス鎖、すなわち第2の鎖の5’末端も、好ましくは修飾され、より好ましくは本明細書に開示されるように修飾されている。3’末端のいずれかまたは両方は、一実施形態では末端にリン酸を有する。
【0117】
二本鎖構造が2つの別個の鎖、すなわち第1および第2の鎖により形成されることは、本発明の範囲内である。しかし、第1の鎖と第2の鎖が相互に共有結合していることも本発明の範囲内である。このような結合は、第1の鎖および第2の鎖をそれぞれ形成する任意のヌクレオチド間に起こる場合がある。しかし、両方の鎖間の結合が二本鎖構造の一方または両方の末端近くに作成されることが好ましい。このような結合は共有もしくは非共有結合により形成される場合がある。共有結合は、1回または数回、数箇所の位置で、それぞれ、メチレンブルーおよび二官能性基を含む群から選択される化合物により両方の鎖を結合することにより形成される。このような二官能性基は、好ましくは、ビス(2−クロロエチル)アミン、N−アセチル(acetly)−N’−(p−グリオキシルベンゾイル(glyoxylbenzoyl))シスタミン、4−チオウラシルおよびソラレンを含む群から選択される。
【0118】
任意の本発明の第1の代替的な態様によるリボ核酸のさらなる実施形態では、第1の鎖および第2の鎖は、ループ構造により連結されている。
【0119】
本発明の第1の代替的な態様によるリボ核酸の好ましい実施形態では、ループ構造は非核酸ポリマーで構成されている。
【0120】
その好ましい実施形態では、非核酸ポリマーはポリエチレングリコールである。
【0121】
任意の本発明の第1の代替的な態様によるリボ核酸の一実施形態では、第1の鎖の5’末端は第2の鎖の3’末端に連結されている。
【0122】
本発明の任意の態様によるリボ核酸のさらなる実施形態では、第1の鎖の3’末端は第2の鎖の5’末端に連結されている。
【0123】
一実施形態では、ループは核酸からなる。本明細書において、Elayadi and Coreyに記載されるLNA(Elayadi et al.,2001);(Orum and Wengel,2001);ならびにPNAは、核酸とみなされ、ループを形成するポリマーとして用いられてもよい。基本的に、第1の鎖の5’末端は第2の鎖の3’末端に連結されてもよい。代替形態として、第1の鎖の3’末端は、第2の鎖の5’末端に連結されてもよい。上記ループ構造を形成する核酸は、一般に決定的な意味を持たないとみなされる。しかし、このようなループを形成する核酸配列の長さは、立体的な理由で決定的な意味を持つと思われる。したがって、4個のヌクレオチドの最小の長さが、必要とされるループ構造を形成するために適当であると思われる。原則として、ヒンジあるいは、ハイブリダイズさせるストレッチまたは鎖の両方の間の結合を形成するヌクレオチドの最大数は限定されない。しかし、ポリヌクレオチドが長いほど、二次構造および三次構造が形成される可能性が高く、したがって、影響を受けるストレッチの必要とされる配向が多い。好ましくは、ヒンジを形成するヌクレオチドの最大数は、約12ヌクレオチドである。このことは、本願の開示の範囲内である。上に記載されるデザインのいずれもが、本明細書に開示され、当技術分野で公知の他のデザインのいずれともそれぞれ、すなわち、ループ構造または類似の構造を通じてバックフォールディング(back folding)が考えられるような方法で2本の鎖を共有結合することにより、組み合わせてもよい。
【0124】
本発明者らは、驚くことに、ループがアンチセンス鎖の3’、すなわち本発明によるリボ核酸の第1の鎖に配置された場合は、この種類のRNAiの活性は、アンチセンス鎖のループ5’の配置と比較して高いことを見出した。したがって、アンチセンス鎖およびセンス鎖、すなわち第1の鎖および第2の鎖それぞれに対するループの特定の配置は重大であり、したがって、配向は関連がないと言われる先行技術で表される理解とは対照的である。しかし、本明細書に示される実験結果を考慮するとこれは真実ではないと思われる。先行技術で表される理解は、いずれのRNAiもプロセッシングに供され、その間ループと連結されていないRNAiが生成されるという仮定に基づく。しかし、もしこれが真実である場合は、アンチセンスの3’に配置されたループを有する構造の活性が観察により明らかに増加したことは説明することができない。その範囲において、この種類の低分子干渉RNAiの5’→3’方向の好ましい配置は、第2の鎖、ループ、第1の鎖である。それぞれの構築物を適切なベクター系に組み込んでもよい。好ましくは、ベクターは、RNAiのためのプロモーターを含む。好ましくは、それぞれのプロモーターは、pol IIIであり、より好ましくは、プロモーターは、Good et al.により記載されるU6、H1、7SKプロモーターである(Good et al.,1997)。
【0125】
本発明の第1の態様の第2の代替的な態様は、本発明の核酸に関し、その第1のストレッチおよび/または第2のストレッチは、3’末端にジヌクレオチドを含み、このようなジヌクレオチドは、好ましくはTTである。好ましい実施形態では、第1のストレッチおよび/または第2のストレッチの長さは、19または21または23ヌクレオチドのいずれかからなり、より好ましくは、二本鎖構造は18〜22、より好ましくは19〜21塩基対を含む。この代替的な態様による核酸のデザインは、例えば、国際特許出願第WO01/75164号により詳細に記載されている。
【0126】
本発明の第1の態様の第3の代替的な態様は、本発明による核酸に関し、その第1および/または第2のストレッチは、3’末端に1〜5ヌクレオチドのオーバーハングを含む。この代替的な態様による核酸のデザインは、国際特許出願第WO02/44321号により詳細に記載されている。より好ましくは、このようなオーバーハングはリボ核酸である。好ましい実施形態では、鎖の各々、より好ましくは、本明細書に定義されるストレッチの各々の長さは、19〜25ヌクレオチドであり、より好ましくは、その鎖は、ストレッチからなる。好ましい実施形態では、本発明による核酸の二本鎖構造は、17〜25塩基対、好ましくは19〜23塩基対、より好ましくは、19、21または23塩基対を含む。
【0127】
本発明の第1の態様の第4の代替的な態様は、本発明による核酸に関し、その第1および/または第2のストレッチは、3’末端に1〜5ヌクレオチドのオーバーハングを含む。この代替的な態様による核酸のデザインは、WO02/44321号に記載されている。
【0128】
本発明の第1の態様の第5の代替的な態様では、本発明による核酸は、CD31 mRNAの開裂を、好ましくはRNA干渉を介して指示する、化学的に合成された二本鎖短干渉核酸(siNA)分子である二本鎖核酸であり、上記siNA分子の各鎖の長さは18〜27または19〜29ヌクレオチドであり、上記siNa分子は少なくとも1つの化学修飾されたヌクレオチド非ヌクレオチドを含む。この代替的な態様による核酸のデザインは、国際特許出願第WO03/070910号および英国特許2 397 062号により詳細に記載されている。
【0129】
その一実施形態では、siNA分子はリボヌクレオチドを含まない。別の実施形態では、siNA分子は1つ以上のヌクレオチドを含む。別の実施形態では、化学修飾されたヌクレオチドは、2’−デオキシヌクレオチドを含む。別の実施形態では、化学修飾されたヌクレオチドは、2’−デオキシ2’−フルオロヌクレオチドを含む。別の実施形態では、化学修飾されたヌクレオチドは、2’−O−メチルヌクレオチドを含む。別の実施形態では、化学修飾されたヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。さらなる実施形態では、非ヌクレオチドは脱塩基部分を含み、好ましくは、その脱塩基部分は逆方向デオキシ脱塩基部分を含む。別の実施形態では、非ヌクレオチドは、グリセリル部分を含む。
【0130】
さらなる実施形態では、第1の鎖および第2の鎖は、リンカー分子を介して連結されている。好ましくは、リンカー分子はポリヌクレオチドリンカーである。あるいは、リンカー分子は非ヌクレオチドリンカーである。
【0131】
第5の代替的な態様による核酸のさらなる実施形態では、第2の鎖中のピリミジンヌクレオチドは、2’−O−メチルピリミジンヌクレオチドである。
【0132】
第5の代替的な態様による核酸のさらなる実施形態では、第2の鎖中のプリンヌクレオチドは、2’−デオキシプリンヌクレオチドである。
【0133】
第5の代替的な態様による核酸のさらなる実施形態では、第2の鎖中のピリミジンヌクレオチドは、2’−デオキシ2’−フルオロピリミジンヌクレオチドである。
【0134】
第5の代替的な態様による核酸のさらなる実施形態では、第2の鎖は、5’末端に、3’末端に、または5’末端および3’末端の両方に末端キャップ部分を含む。
【0135】
第5の代替的な態様による核酸のさらなる実施形態では、第1の鎖中のピリミジンヌクレオチドは、2’−デオキシ2’フルオロピリミジンヌクレオチドである。
【0136】
第5の代替的な態様による核酸のさらなる実施形態では、第1の鎖中のプリンヌクレオチドは、2’−O−メチルプリンヌクレオチドである。
【0137】
第5の代替的な態様による核酸のさらなる実施形態では、第1の鎖中のプリンヌクレオチドは、2’−デオキシプリンヌクレオチドである。
【0138】
第5の代替的な態様による核酸のさらなる実施形態では、第1の鎖は、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合を第1の鎖の3’末端に含む。
【0139】
第5の代替的な態様による核酸のさらなる実施形態では、第1の鎖は、グリセリル修飾を第1の鎖の3’末端に含む。
【0140】
第5の代替的な態様による核酸のさらなる実施形態では、第1および第2の鎖の両方の約19〜23ヌクレオチドが塩基対を形成し、好ましくは少なくともsiNA分子の各鎖の2つの3’末端のヌクレオチドは他の鎖のヌクレオチドと塩基対を形成しない。好ましくは、siNA分子の各鎖の2つの3’末端のヌクレオチドの各々は、2’−デオキシ−ピリミジンである。より好ましくは、2’デオキシ−ピリミジンは2’デオキシ−チミジンである。
【0141】
第5の代替的な態様による核酸のさらなる態様では、第1の鎖の5’末端はリン酸基を含む。
【0142】
特に本発明による核酸の第5の代替的な態様の一実施形態では、本発明のsiNA分子は、RNAiを媒介する能力を維持しながら、修飾されたヌクレオチドを含む。修飾ヌクレオチドは、インビトロまたはインビボでの特徴、例えば安定性、活性、および/またはバイオアベイラビリティを改善するために用いることができる。例えば、本発明のsiNA分子は、そのsiNA分子中に存在するヌクレオチドの総数の一定の割合の修飾ヌクレオチドを含むことができる。そのように、本発明のsiNA分子は一般に約5%〜約100%の修飾ヌクレオチド(例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%の修飾ヌクレオチド)を含むことができる。所与のsiNA分子中に存在する修飾ヌクレオチドの実際の割合は、そのsiNA中に存在するヌクレオチドの総数によって決まることになる。そのsiNA分子が一本鎖である場合は、修飾パーセントは、一本鎖siNA分子中に存在するヌクレオチドの総数に基づき得る。同様に、siNA分子が二本鎖である場合は、修飾パーセントは、センス鎖、アンチセンス鎖、またはセンス鎖とアンチセンス鎖の両方に存在するヌクレオチドの総数に基づき得る。
【0143】
非限定的な例において、化学修飾したヌクレオチドの、特に本発明による核酸の第5の代替的な態様の核酸分子への導入は、インビボ安定性および外部から送達される天然のRNA分子に固有の生物学的利用能の潜在的な限界を克服する強力なツールを提供する。例えば、化学修飾された核酸分子は血清中の半減期を長くする傾向があるため、化学修飾された核酸分子を使用することにより、一定の治療効果のための特定の核酸分子の用量を減らすことを可能にすることができる。さらに、ある一定の化学修飾は、特定の細胞組織を標的化することおよび/または核酸分子の細胞取込みを改善することにより核酸分子の生物学的利用能を改善することができる。したがって、たとえ化学修飾された核酸分子の活性が、天然の核酸分子と比較して低下したとしても、例えば、全てRNAの核酸分子と比較した場合、修飾された核酸分子の全体的な活性は、改善された分子の安定性および/または送達に起因して天然の分子のものよりも大きくなる可能性がある。天然の修飾されていないsiNAとは異なり、化学修飾されたsiNAもまた、ヒトのインターフェロン活性を活性化する可能性を最小化することができる。
【0144】
好ましくは、本発明による核酸の第5の代替的な態様に関連して、本発明のsiNA分子のアンチセンス鎖、すなわち第1の鎖は、上記アンチセンス領域の3’末端にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含むことができる。アンチセンス鎖は、上記アンチセンス領域の5’末端に約1〜約5のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含むことができる。本発明のsiNA分子の3’末端ヌクレオチドオーバーハングは、核酸の糖、塩基または骨格で化学修飾されたリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドを含むことができる。3’末端ヌクレオチドオーバーハングは、1つ以上のユニバーサル塩基リボヌクレオチドを含むことができる。3’末端ヌクレオチドオーバーハングは、1つ以上の非環式ヌクレオチドを含むことができる。
【0145】
特にヌクレオチドから作成されたループを含む本発明の実施形態は、ベクターにより使用され、発現される場合に適していることは、当業者により認識される。好ましくは、このベクターは発現ベクターである。このような発現ベクターは、いずれの遺伝子治療的アプローチにおいても特に有用である。したがって、このようなベクターは、本明細書に開示される疾患の治療に使用することが好ましい薬剤の製造のために用いることができる。しかし、天然に存在しない修飾を含む本発明による核酸の任意の実施形態が、ベクターおよびこのようなベクターのための発現系、例えば、細胞、組織、器官および生物における発現に直ちに用いることができないことも、当業者より認識される。しかし、修飾が、典型的にベクターによる核酸の発現の後に、本発明によるベクター由来またはベクター発現核酸に付加されるか、または導入されてもよいことは、本発明の範囲内である。特に好ましいベクターは、プラスミドベクターまたはウイルスベクターである。siRNA分子およびRNAi分子を発現ベクター中でどのように使用すればよいかについての技術的教示は、例えば、国際特許出願第WO01/70949号に記載されている。このようなベクターは、本発明による核酸が持続的に存在することが好ましく有用である、治療または診断のいずれかの方法において、それぞれ有用であることが好ましいが、分子が一時的に存在することが望ましいあるいは有用である場合には、本発明による非ベクター核酸および特に本発明による化学修飾されたあるいは化学的に合成された核酸が特に有用であることは、当業者により認識される。
【0146】
本明細書に記載される核酸分子の合成のための方法は、当業者に公知である。このような方法は、中でも、(Caruthers et al.,1992)、Thompson et al.,PCT国際公開第WO99/54459号、(Wincott et al.,1995)、(Wincott and Usman,1997)、Brennan et al.,1998、Biotechnol Bioeng.,61,33−45、およびBrennan、米国特許第6,001,311号に記載されている。これらの参考文献はすべて、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0147】
さらなる態様において、本発明は、1個または数個の本発明による核酸分子を含む、より具体的には含有するリポソーム製剤に関する。好ましくは、このようなリポソーム製剤は、内部体積を画定する脂質からなる。このような内部体積は、本発明の核酸分子を含むことが好ましい。より好ましくは、このような製剤はリポソームを含み、好ましい実施形態では、リポソームは1種または数種類の陽イオン性脂質を含むかあるいは含有する。最も好ましい実施形態では、リポソーム製剤は、1個または数個の本発明の核酸分子を、その核酸分子がリポソームの外側の表面で検出できない、または外側の表面上に存在しないように含む。本明細書において好ましく用いられるように、リポソームの外側の表面は、リポソームの周囲の環境と接しているリポソームの表面であり、リポソームにより包含されている流体と接しているリポソームの表面とは特に対照的である。特に好ましい実施形態では、本発明による核酸分子は、上記リポソームおよびリポソーム製剤それぞれに充填または封入されている。
【0148】
さらなる態様において、本発明は、本発明による核酸を含むリポプレックスに関し、このようなリポプレックスは、1個または数個の核酸分子と1個または数個のリポソームとからなる。好ましい実施形態では、リポプレックスは、1つのリポソームと数個の核酸分子とからなる。
【0149】
リポプレックスは次の通り特徴付けることができる。本発明によるリポプレックスのゼータ電位は約40〜55mV、好ましくは約45〜50mVである。本発明によるリポプレックスの大きさは、動的光散乱(QELS)により、例えば、Beckman Coulter製のN5サブミクロン粒径アナライザーを製造業者の推奨に従って用いることにより測定して、約80〜200nm、好ましくは約100〜140nm、より好ましくは約110nm〜130nmである。
【0150】
本発明によるリポプレックスの形成部分としてのリポソームは、好ましくは、
a)約50モル%のβ−アルギニル−2,3−ジアミノプロピオン酸−N−パルミチル−N−オレイル−アミドトリヒドロクロリド、好ましくは、(β−(L−アルギニル)−2,3−L−ジアミノプロピオン酸−N−パルミチル−N−オレイル−アミド トリ−ヒドロクロリド)、
b)約48〜49モル%の1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPhyPE)、および
c)約1〜2モル%の1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−ポリエチレン−グリコール、好ましくは、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンナトリウム塩
からなる、正に荷電したリポソームである。
【0151】
リポプレックスおよびリポソームを形成する脂質組成物は、好ましくは、担体の中に含められている。しかし、リポプレックスは凍結乾燥した形態でも存在することができる。担体の中に含まれている脂質組成物は、通常分散体を形成する。より好ましくは、担体は、これも本明細書においてさらに特徴付けられる、水性媒質または水溶液である。脂質組成物は典型的に担体の中にリポソームを形成する。このようなリポソームも内部に担体を含むことが好ましい。
【0152】
個々に担体の中に含まれ、担体を含む脂質組成物の容量オスモル濃度は、約50〜600 mosmole/kg、好ましくは約250〜350 mosmole/kg、より好ましくは約280〜320 mosmole/kgであることが好ましい。
【0153】
リポソームは、好ましくは、第1の脂質成分と、任意選択的に第1のヘルパー脂質とによっても、好ましくは第1の脂質成分と組み合わせて形成され、好ましくは約20〜200nm、好ましくは約30〜100nm、より好ましくは約40〜80nmの粒径を示す。
【0154】
さらに、粒子のサイズがある一定の統計的分布に従うことは認識される。
【0155】
本発明による脂質組成物のさらなる任意選択的な特徴は、担体のpHが、好ましくは約4.0〜6.0である点である。しかし、他のpH範囲、例えば、4.5〜8.0、好ましくは約5.5〜7.5、より好ましくは約6.0〜7.0なども本発明の範囲内である。
【0156】
これらの特定の特徴を実現するために、様々な手段を取ってもよい。容量オスモル濃度を調節するためには、例えば、糖または糖の組合せが特に有用である。その程度において、本発明の脂質組成物は、1個または数個の次の糖、スクロース、トレハロース、グルコース、ガラクトース、マンノース、マルトース、ラクツロース、イヌリンおよびラフィノースを含んでよく、スクロース、トレハロース、イヌリンおよびラフィノースが特に好ましい。特に好ましい実施形態では、主に糖の添加により調節される容量オスモル濃度は、約300 mosmole/kgであり、270mMのスクロース溶液または280mMのグルコース溶液に相当する。好ましくは、担体は、このような脂質組成物の投与される体液に等張性である。本明細書において、容量オスモル濃度は主に糖の添加により調節されるという用語は、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%の容量オスモル濃度が上記糖または上記糖の組合せによりもたらされることを意味する。
【0157】
本発明の脂質組成物のpHが調節される場合、それ自体、基本的に当業者に公知の緩衝物質を用いることにより行われる。好ましくは、陽イオン性脂質、およびより具体的にはカチオン性ヘッドグループのアンモニウム基の塩基性の特徴を補うのに適した塩基性物質が使用される。塩基性物質、例えば、塩基性アミノ酸および弱塩基などをそれぞれ付加する場合、上記の容量オスモル濃度を考慮に入れる。このような脂質組成物およびこのような脂質組成物により形成されるリポソームの粒径は、動的光散乱により、例えば、Beckman Coulter製のN5サブミクロン粒径アナライザーを製造業者の推奨に従って用いることにより測定されることが好ましい。
【0158】
脂質組成物が1個または数個の核酸を含む場合は、このような脂質組成物は通常リポプレックス複合体、すなわちリポソームと核酸からなる複合体を形成する。好ましくは、等張性270mMスクロースまたは280mMグルコース中の、リポプレックス中の脂質含量全体のより好ましい濃度は、約0.01〜100mg/ml、好ましくは0.01〜40mg/ml、より好ましくは0.01〜25mg/mlである。この濃度は合理的なストックを調製するために、典型的に2〜3倍に増加させることができることは認識される。これに基づいて、希釈物が調製され、このような希釈物は典型的に容量オスモル濃度が上に指定した範囲内となるように作成されることも、本発明の範囲内である。より好ましくは、希釈物は、脂質組成物に関連して用いられる担体、または、脂質組成物が含められている担体と同一であるか、または、機能、より具体的には容量オスモル濃度に関してそれに類似する担体中に調製される。脂質組成物も核酸、好ましくは機能的な核酸、例えば、限定されるものではないが、siRNAなどを含む、本発明の脂質組成物の実施形態では、脂質組成物中のsiRNAの濃度は、約0.2〜0.4mg/ml、好ましくは0.28mg/mlであり、総脂質濃度は約1.5〜2.7mg/ml、好ましくは2.17mg/mlである。核酸分率と脂質分率との間のこの質量比は特に好ましく、電荷比に関してもこのように実現されることは、認識される。本発明の脂質組成物のさらなる濃度または希釈に関連して、この特定の実施形態で実現される質量比および電荷比がそれぞれ、好ましくはこのような濃度または希釈に拘わらずに維持されることは、好ましい。
【0159】
例えば、医薬組成物に用いられる濃度は、適切な量の媒質、好ましくは生理学的に許容される緩衝液または本明細書に記載されるに任意の担体中に脂質を分散させることにより得ることができるか、または適切な手段により濃縮することができる。このような適切な手段は、例えば、クロスフロー限外濾過を含む限外濾過法である。濾過膜は、1.000〜300.000Daの分子量カットオフ(MWCO)または5nm〜1μmの孔幅を示してもよい。特に好ましいものは、約10.000〜100.000Da MWCOの孔幅である。本発明による脂質組成物、より具体的にはリポプレックスは、凍結乾燥した形態で存在してもよく、ことも、当業者に認識される。このような凍結乾燥形態は、典型的に、リポプレックスの保存期間を増やすために適している。中でも、適切な容量オスモル濃度をもたらすために付加される糖は、それに関連して凍結保護物質として使用される。それに関連して、前述の特徴である、容量オスモル濃度、pHならびにリポプレックス濃度は、担体中の脂質組成物の溶解、懸濁または分散形態をさし、このような担体は、原則として本明細書に記載される任意の担体、一般に水性担体、例えば、水または生理学的に許容される緩衝液、好ましくは等張性緩衝液もしくは等張性溶液などであることは認識される。
【0160】
これらの特定の製剤を別として、本発明による核酸分子は、また当技術分野で公知の医薬組成物にも処方されてもよい。
【0161】
したがって、本発明による核酸分子は、好ましくは、単独で、または他の治療法と併用して、薬剤および診断としての使用に順応させることができる。例えば、本発明による核酸分子は、被験体への投与のためのリポソーム、担体および希釈剤ならびにそれらの塩を含む送達ビヒクルを含むことができ、かつ/または医薬品として許容される製剤中に存在することができる。核酸分子の送達のための方法は、(Agrawal and Akhtar,1995;Akhtar and Juliano,1992)、(Maurer et al.,1999);(Hofland and Huang,1995);およびLee et al.,2000,ACS Symp.Ser.,752,184−192に記載され、それら全ては引用することにより本明細書の一部をなすものとする。Beigelman et al.、米国特許第6,395,713号およびSullivan et al.、PCT WO94/02595号には、核酸分子の送達のための一般的な方法がさらに説明されている。これらのプロトコールは、事実上いずれの核酸分子の送達にも利用することができる。核酸分子はまた、当業者に公知の様々な方法により細胞に投与することができ、それらに限定されるものではないが、リポソームへのカプセル封入、イオン導入法によるもの、または他のビヒクル、例えばヒドロゲル、シクロデキストリン(例えば、Gonzalez et al.,1999参照)、生分解性ナノカプセル、および生体接着性ミクロスフェアなどへの取り込みによるもの、またはタンパク質性ベクターによるもの(O’Hare and Normand、PCT国際公開第WO00/53722号)が挙げられる。代替的には、核酸/ビヒクルの組合せは、直接注射によるか、または輸液ポンプを使用して局所に送達される。本発明の核酸分子の直接注射は、皮下、筋肉内、または皮内であろうと、標準的な針およびシリンジによる方法を用いて、または無針技術、例えば、(Conry et al.,1999)およびBarry ら、PCT国際公開第WO99/31262号に記載される方法等により行うことができる。本発明の分子は医薬品として使用することができる。好ましくは、医薬品は、被験体における疾患状態を予防し、発生を調節し、または治療する(症状をある程度まで、好ましくは症状のすべてを軽減する)。
【0162】
したがって、本発明はまた、本発明による1つ以上の核酸を、許容される担体中、例えば安定剤、緩衝剤等の中に含む医薬組成物を提供する。本発明のポリヌクレオチドまたは核酸(分子)は、安定剤、緩衝剤等を含むかあるいは含まずに、任意の標準的な手段により、投与され(例えば、RNA、DNAまたはタンパク質)、被験体に導入されて、医薬組成物を形成することができる。リポソーム送達機構を使用することを望む場合、リポソームの処方のための標準的なプロトコールに従い得る。本発明の組成物はまた、経口投与用の錠剤、カプセル剤またはエリキシル剤、直腸投与用の坐剤、注射投与用の無菌溶液、懸濁剤、および当技術分野で公知の他の組成物として処方され、使用されてもよい。
【0163】
さらに、本発明による核酸分子の医薬品として許容される製剤が提供される。これらの製剤には、上記の化合物の塩、例えば、酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、酢酸、およびベンゼンスルホン酸の塩が含まれる。
【0164】
薬理学的組成物もしくは製剤とは、例えばヒトを含む細胞または被験体への投与、例えば全身投与に適した形態の組成物または製剤をさす。適切な形態は、一部は、使用または導入経路、例えば経口、経皮、または注射によって決まる。このような形態は、組成物または製剤が標的細胞(すなわち、負に荷電した核酸を送達するために望ましい細胞)に到達することを妨げてはならない。例えば、血流に注入される薬理学的組成物は可溶性であるべきである。他の因子は当技術分野で公知であり、組成物または製剤がその効果を発揮することを妨げる毒性および形態などの考慮点が含まれる。
【0165】
「全身投与」は、好ましくは、血流中の薬剤のインビボ全身吸収または蓄積、その後全身の至る所への分布を意味する。全身吸収をもたらす投与経路としては、静脈内、皮下、腹腔内、吸入、経口、肺内および筋肉内が挙げられるが、これらには限定されない。これらの投与経路は各々、本発明のsiNA分子を到達できる罹患組織にさらす。循環中への薬剤の侵入率は、分子量または大きさの関数であることが示された。本発明による核酸を含むリポソームまたは他の薬剤担体を使用すると、例えば、ある一定の組織種、例えば新生物組織などに、薬剤を局在させる可能性がある。細胞、例えばリンパ球およびマクロファージの表面と薬剤の会合を促進することができるリポソーム製剤も有用である。このアプローチは、異常細胞、例えば新生物組織を形成する細胞などのマクロファージおよびリンパ球免疫認識の特異性を生かして、標的細胞への薬剤の送達の促進をもたらすことができる。
【0166】
「医薬品として許容される製剤」は、好ましくは、本発明による核酸分子を、それらの望ましい活性に最も適した身体的位置に効果的に分布することを可能にする組成物または製剤を意味する。本発明による核酸分子とともに処方に適した薬剤の非限定的な例としては:薬剤の中枢神経系への侵入を増強することができる、P糖タンパク質阻害剤(例えばプルロニックP85など)(Jolliet−Riant and Tillement,1999);大脳内移植後の徐放性送達のための生分解性ポリマー、例えばポリ(DL−ラクチド−コグリコリド)ミクロスフェア(Emerich et al.,1999)(Alkermes,Inc.Cambridge,MA);および、血液脳関門を通過して薬剤を送達することができ、ニューロンへの取り込み機構を変更することができる、負荷ナノ粒子、例えばポリブチルシアノアクリレートでできたものなど(Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry,23,941−949,1999)が挙げられる。本発明の核酸分子のための送達戦略の他の非限定的な例は、(Boado et al.,1998);Tyler et al.,1999,FEBS Lett.,421,280−284;pardridge et al.,1995,PNAS USA.,92,5592−5596;Boado,1995,Adv.Drug Delivery Rev.,15,73−107;Aldrian−Herrada et al.,1998,Nucleic Acids Res.,26,4910−4916;およびTyler et al.,1999,PNAS USA.,96,7053−7058に記載されている。
【0167】
本発明によれば、ポリ(エチレングリコール)脂質を含有する表面修飾されたリポソーム(PEG修飾された、あるいは長期血中滞留性リポソームまたはステルスリポソーム)を含む組成物の使用も提供される。これらの製剤は、標的組織において薬剤の蓄積を増大させるための方法を提供する。このクラスの薬剤担体は、オプソニン化に抵抗して単核食細胞系(MPSまたはRES)により排除され、それによって、より長い血液循環時間、およびカプセル封入された薬剤への組織の曝露を増強させることができる(Lasic et al.Chem.Rev.1995,95,2601−2627;Ishiwata et al.,Chem.Pharm.Bull.1995,43,1005−1011)。このようなリポソームは、推定上、血管外遊出により、および新血管形成した標的組織の捕獲により、選択的に腫瘍に蓄積されることが示されている、(Lasic et al.,Science 1995,267,1275−1276;Oku et al.,1995,Biochim.Biophys.Acta,1238,86−90)。長期血中滞留性リポソームは、特に、MPSの組織に蓄積することが公知の従来の陽イオン性リポソームと比較して、DNAおよびRNAの薬物動態学および薬動力学を増強する(Liu et al.,J.Biol.Chem.1995,42,24864−24780;Choi et al.,PCT国際公開第WO96/10391号;Ansell et al.,PCT国際公開第WO96/10390号;Holland et al.,PCT国際公開第WO96/10392号)。長期循環リポソームはまた、代謝的に攻撃的なMPS組織、例えば肝臓および脾臓などでの蓄積を回避するそれらの能力に基づいて、ヌクレアーゼ分解から薬剤を保護する可能性が陽イオン性リポソームと比較して非常に高い。
【0168】
投与を保存するために調製された組成物がさらに提供され、それには医薬有効量の所望の化合物が医薬品として許容される担体または希釈剤中に含まれる。治療用途に許容される担体または希釈剤は製薬分野で周知であり、例えば、引用することにより本明細書の一部をなすものとする、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro edit.1985)に記載されている。例えば、防腐剤、安定剤、染料および香味剤が規定され得る。これらには、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステルが含まれる。さらに、抗酸化剤および沈殿防止剤を用い得る。
【0169】
医薬有効量は、疾患状態の発生、または脅威を防ぎ、阻害する(症状をある程度、好ましくは、症状を全て軽減する)ために必要とされる用量である。医薬有効量は、疾患の種類、用いる組成物、投与の経路、治療される哺乳類の種類、考慮中の具体的な哺乳類の身体的特徴、同時に行われる薬剤治療、および医学分野の当業者の認める他の因子によって決まる。一般に、0.1mg/kg〜100mg/kg体重/日量の有効成分が、負に荷電したポリマーの有効性に依存して投与される。
【0170】
本発明による核酸分子およびその製剤は、従来の無毒の医薬品として許容される担体、アジュバントおよび/またはビヒクルを含有する投与単位製剤で、経口的に、局所に、非経口的に、吸入またはスプレーにより、または直腸に投与されてもよい。本明細書において非経口という用語には、経皮、皮下、血管内(例えば、静脈内)、筋肉内、またはくも膜下腔内の注射もしくは注入技術等が含まれる。さらに、本発明の核酸分子および医薬品として許容される担体を含む医薬製剤が提供される。本発明による1つ以上の核酸分子は、1つ以上の無毒の医薬品として許容される担体および/または希釈剤および/またはアジュバント、および所望により他の有効成分に付随して存在してもよい。本発明による核酸分子を含有する医薬組成物は、経口使用に適した形態で、例えば、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性懸濁剤、分散性粉末剤もしくは顆粒剤、乳濁液、硬もしくは軟カプセル剤、またはシロップ剤もしくはエリキシル剤として、存在してもよい。
【0171】
経口使用を対象とした組成物および特に医薬組成物は、医薬組成物の製造の分野で公知の任意の方法により調製することができ、このような組成物は、製薬上洗練された口当たりのよい調製物を提供するために、1つ以上のこのような甘味剤、香味剤、着色剤または防腐剤を含んでよい。錠剤は、有効成分を、錠剤の製造に適した無毒の医薬品として許容される賦形剤と混合して含む。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤;例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなど;造粒剤および崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン、またはアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチンまたはアラビアガム;ならびに潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであり得る。錠剤は、コーティングされていなくてもよく、公知の技法でコーティングすることもできる。いくつかの例では、このようなコーティングは、胃腸管での分解および吸収を遅延させるための公知の技法により調製することができ、それによって長期間にわたる持続作用がもたらされる。例えば、時間遅延物質、例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンなどを用いることができる。
【0172】
経口使用のための製剤はまた、有効成分が不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセル剤として、あるいは、有効成分が水また油の媒質、例えばピーナッツ油、流動パラフィンまたはオリーブ油と混合されている軟ゼラチンカプセル剤として存在し得る。
【0173】
水性懸濁剤は、水性懸濁剤の製造に適した賦形剤との混合物中に活性物質を含む。このような賦形剤は、沈殿防止剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアラビアガムである。分散剤または湿潤剤は天然に存在するホスファチド、例えばレシチンであるか、または酸化アルキレンと脂肪酸の縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレンであるか、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシオクタノールであるか、またはエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートなどであるか、またはエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルの縮合生成物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートであり得る。水性懸濁剤はまた、1つ以上の防腐剤、例えばエチル、またはn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエート、1つ以上の着色剤、1つ以上の香味剤、および1つ以上の甘味剤、例えばスクロースまたはサッカリンなどを含み得る。
【0174】
油性懸濁剤は、有効成分を植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油またはココナッツ油、あるいは鉱油、例えば、流動パラフィンなどに懸濁することにより処方することができる。油性懸濁剤は、増粘剤、例えば蜜蝋、固形パラフィンまたはセチルアルコールを含み得る。甘味剤および香味剤を加えて口当たりのよい経口調製物を得ることができる。これらの組成物は、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸などを添加することにより保存することができる。
【0175】
水を添加することによる水性懸濁剤の調製に適した分散性粉末剤および顆粒剤は、分散剤または湿潤剤、沈殿防止剤および1つ以上の防腐剤との混合物中に有効成分を提供する。適切な分散剤または湿潤剤あるいは沈殿防止剤は既に上記で述べたものにより例示される。さらなる賦形剤、例えば甘味剤、香味剤および着色剤も含まれ得る。
【0176】
本発明の医薬組成物はまた、水中油型エマルジョンの形態であり得る。油相は、植物油または鉱油あるいはこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤は、天然に存在するガム、例えばアラビアガムまたはトラガカントガム、天然に存在するホスファチド、例えばダイズ、レシチン、ならびに脂肪酸およびヘキシトールに由来するエステルもしくは部分エステル、無水物、例えばソルビタンモノオレエート、ならびに上記部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであり得る。乳濁液はまた、甘味剤および香味剤を含み得る。
【0177】
シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、グルコースまたはスクロースとともに処方され得る。このような製剤はまた、粘滑薬、防腐剤および香味剤および着色剤を含んでもよい。医薬組成物は、無菌注射用水性もしくは油性懸濁剤の形態であり得る。この懸濁剤は、上に述べた適切な分散剤または湿潤剤および沈殿防止剤を用いる既知の技術により処方することができる。無菌注射用製剤はまた、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液または懸濁剤、例えば1,3−ブタンジオール中溶液などであってもよい。許容されるビヒクルおよび溶媒の中で用いることができるものは、水、リンゲル液および等張食塩水溶液である。さらに、無菌の硬化油が溶媒または懸濁媒体として従来用いられている。この目的において、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性の硬化油を用い得る。さらに、脂肪酸、例えば、オレイン酸などは、注射液の調製において使用が見出される。
【0178】
本発明の核酸分子はまた、例えば、薬剤の直腸投与用の坐剤の形態で投与することができる。これらの組成物は、常温で固体であるが直腸温度で液体となり、したがって、直腸で溶けて薬剤を放出する、適切な非刺激性賦形剤と薬剤を混合することにより調製することができる。このような物質としては、カカオバターおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0179】
本発明の核酸分子は、無菌媒体中で非経口的に投与されてもよい。使用するビヒクルおよび濃度に依存して、薬剤を、ビヒクル中に懸濁するかまたはビヒクルに溶解することができる。有利には、アジュバント、例えば、局所麻酔薬、防腐剤および緩衝剤などをビヒクルに溶解させることができる。
【0180】
薬剤および医薬組成物に対する用量レベルは、それぞれ、常套的な実験法により当業者が決定し得る。
【0181】
どのような特定の被験体に対する特定の用量レベルも、用いる特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与回数、投与経路、および排泄速度、薬剤の併用および治療を受けている特定の疾患の重篤度を含む、様々な因子によって決まることは当然理解される。
【0182】
本発明による薬剤の非ヒト動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、マウス、ラット、ハムスターおよびモルモットなどへの投与のため、組成物を、好ましくは、動物飼料または飲用水に加え得る。動物が治療上適切な量の組成物をその食餌とともに摂取できるように動物飼料および飲用水組成物を処方することは便宜であり得る。組成物を飼料または飲用水に加えるためのプレミックスとして与えることも便宜であり得る。
【0183】
本発明の核酸分子はまた、全体的な治療効果を高めるために他の治療用化合物と組み合わせて被験体に投与することができる。適応症状を治療する複数の化合物を使用すると、副作用の存在を減らすと同時に有益な効果を増大させることができる。
【0184】
一実施形態では、核酸分子は、それらの様々な実施形態および製剤それぞれにおいて、他の治療法、例えば、化学療法、寒冷療法、温熱療法、抗体療法、放射線療法および抗血管新生療法などとともに用い得る。特に好ましい治療法は、抗血管新生療法である。抗血管新生療法に関連して特に好ましい標的は、VEGF受容体およびPDGF受容体である。抗血管新生療法は、一般に血管新生関連標的、例えば、VEGF受容体およびPDGF受容体などに対する阻害剤を使用することにより達成される。小分子は別として、このような標的に対する阻害剤として作用する他の種類の化合物も、生成または提供または使用され得る。したがって、次のクラスの化合物を用いてもよい。中でも、WO00/44895号またはWO01/75164号に記載されるsiRNA、中でも、米国特許第5,849,902号、同第5,989,912号に記載される、または遺伝子ブロックとして公知のアンチセンス分子;中でも、EP0533838 B1号に記載されるアプタマー;中でも、WO98/08856号に記載されるスピーゲルマー;アプタマーに類似の形で、それらのアミノ酸配列が異なる10〜1018ペプチドを含むランダム配列ペプチドライブラリーから識別され得る、したがって、時にはペプチドアプタマーと称される、高親和性結合ペプチド;中でも、DE19742706号に記載されるアンチカリン(anticalines)類;ならびに、中でも「Antibodies:A Laboratory Manual」,Cold Spring Harbor Laboratory (eds.Harlow,E.and Lane D.)に記載されている抗体である。
【0185】
一実施形態では、本発明による核酸分子を特定の細胞種に投与に適した組成物が提供され、このような組成物は、典型的に1個または数個の次の原則、および分子をそれぞれ組み込む。例えば、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPr)(Wu and Wu、1987,J.Biol.Chem.262,4429−4432)は、肝細胞に特有であり、分枝状のガラクトース末端の糖タンパク質、例えばアシアロオロソムコイド(ASOR)に結合する。別の例では、葉酸受容体が多くの癌細胞で過剰発現される。このような糖タンパク質、合成複合糖質、または葉酸の受容体との結合は、オリゴ糖鎖の分枝の程度に強く依存する親和性によって起こる、例えば、三分枝(tria−tennary)構造は、二分枝(biatenarry)または単分枝(monoatennary)鎖よりも高い親和性で結合する(Baenziger and Fiete,1980,Cell,22,611−620;Connolly et al,1982,J.Biol.Chem.,257,939−945)。Lee and Lee,1987.Glycoconjugate J.,4,317−328は、ガラクトースに比べて受容体に対する親和性が高いN−アセチル−D−ガラクトサミンを炭水化物部分として使用することによって、この高い特異性を得た。この「クラスター形成作用」は、マンノシル末端糖タンパク質または複合糖質の結合及び取り込みについても記載されている(Ponpipom et al,1981,J.Med.Chem.,24,1388−1395)。ガラクトース、ガラクトサミンまたは葉酸系の複合体を用いて、外因性化合物を、細胞膜を通過して輸送することにより、標的化送達手法を、例えば、肝疾患、肝癌、または他の癌の治療にもたらすことができる。バイオコンジュゲートの使用により、治療に必要な治療用化合物の所要量の削減ももたらされ得る。さらに、本発明の核酸バイオコンジュゲートの使用により、治療上の生物学的利用能、薬動力学、および薬物動態パラメータを調節することができる。このようなバイオコンジュゲートの非限定的な例は、2001年8月13日出願の、Vargeese et al.、米国特許第10/201,394号;および2002年3月6日出願の、Matulic−Adamic et al.、米国特許第60/362,016号に記載されている。
【0186】
本発明による、それらの様々な実施形態の核酸分子、それを含有するベクター、細胞、薬剤、組成物および特に医薬組成物、本発明によれば、このような核酸分子をそれぞれ含有する組織および動物は、治療用ならびに診断および研究分野の両方において使用され得る。
【0187】
以下の疾患に関与する様々な組織および血管内皮におけるPKN3の分布に起因して、本発明による核酸分子は、上記疾患、好ましくは、病理学的機序または罹患組織、細胞、好ましくはPTEN陰性である腫瘍細胞に好ましくは関与することを特徴とする疾患の治療および/または予防のために用いられてもよい。
【0188】
したがって、本明細書に開示される核酸分子ならびにそれを含む薬剤および医薬組成物は、血管新生促進療法(pro−angiogenic therapies)ならびに抗血管新生療法の両方に用いてもよく、それらは不十分、異常、もしくは過剰な血管新生により特徴付けられるか、またはそれらに起因する疾患を含む。このような疾患は、感染症、自己免疫障害、血管奇形、アテローム性動脈硬化症、移植後動脈疾患(transplant arteriopathy)、肥満、乾癬、疣贅、アレルギー性皮膚炎、持続性過形成硝子体症候群、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、加齢黄斑疾患(age−related macular disease)、脈絡膜血管新生、原発性肺高血圧症、喘息、鼻茸、炎症性腸疾患および歯周病、腹水、腹膜癒着、子宮内膜症、子宮出血、卵巣嚢胞、卵巣(ovarian)、卵巣過剰刺激、関節炎、滑膜炎、骨髄炎、骨棘形成および卒中(stroke)、潰瘍、アテローム性動脈硬化症、ならびに関節リウマチを含む。
【0189】
さらなる疾患は、腫瘍組織に関与するかまたは腫瘍組織により特徴付けられるものである。本明細書において好ましく用いられるように、腫瘍組織という用語は、生物、組織、あるいは生成させることを意図しないこのような生物の細胞により生成され、病的状態である、すなわちこのような各々の疾患を患わない被験体の中には存在しない、とみなされる組織をさす。また、本明細書において好ましく用いられる腫瘍性疾患は、直接的であれ間接的であれ、腫瘍組織の存在に起因するあらゆる疾患であり、好ましくは、このような腫瘍組織は、組織の調節不全あるいは制御不能、好ましくは、自主的増殖に起因する。腫瘍性疾患という用語は、好ましくは、悪性腫瘍性疾患だけでなく良性腫瘍性疾患も含む。より好ましくは、腫瘍性疾患は、例えば、骨、乳房、前立腺、消化器系、結腸直腸、肝臓、肺、腎臓、泌尿生殖器、膵臓、下垂体、睾丸、眼窩、頭頸部、中枢神経系、呼吸器などのいずれの癌を含む群から選択される。
【0190】
原則として、本発明による医薬組成物および薬剤を用いて処理することができるさらなる具体的な疾患は、このような脂質組成物およびリポプレックスをそれぞれ含み、次のリストから選択されてもよい。急性リンパ芽球性白血病(成人型)、急性リンパ芽球性白血病(小児型)、急性骨髄性白血病(成人型)、急性骨髄性白血病(小児型)、副腎皮質癌腫、副腎皮質癌腫(小児型)、エイズ関連癌、エイズ関連リンパ腫、肛門癌、星細胞腫(小児型)、小脳星細胞腫(小児型)、大脳(Cerebral,)、肝外胆管癌、膀胱癌、膀胱癌(小児型)、骨癌、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、脳幹神経膠腫(小児型)、脳腫瘍(成人型)、脳幹神経膠腫の脳腫瘍(Brain Tumor,Brain Stem Glioma)(小児型)、小脳星細胞腫の脳腫瘍(Brain Tumor,Cerebellar Astrocytoma)(小児型)、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫の脳腫瘍 (Brain Tumor,Cerebral Astrocytoma/Malignant Glioma)(小児型)、脳室上衣細胞腫(Brain Tumor,Ependymoma)(小児型)、髄芽細胞腫の脳腫瘍(Brain Tumor,Medulloblastoma)(小児型)、テント上原始神経外胚葉性腫瘍の脳腫瘍 (Brain Tumor,Supratentorial Primitive Neuroectodermal Tumors)(小児型)、視経路および視床下部神経膠腫の脳腫瘍 (Brain Tumor,Visual Pathway and Hypothalamic Glioma)(小児型)、脳腫瘍(小児型)、乳癌、乳癌(小児型)、男性の乳癌(Breast Cancer,Male)、気管支腺腫/カルチノイド(小児型)、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(小児型)、胃腸カルチノイド腫瘍(Carcinoid Tumor,Gastrointestinal)、原発不明の癌腫、原発性中枢神経系リンパ腫(Central Nervous System Lymphoma,Primary)、小脳星細胞腫(小児型)、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫(小児型)、子宮頸部癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸癌、結腸直腸癌、(小児型)、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜癌、脳室上衣細胞腫(小児型)、食道癌、食道癌(小児型)、ユーイングファミリー腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍(小児型)、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼球内黒色腫の眼癌(Eye Cancer,Intraocular Melanoma)、網膜芽細胞腫の眼癌(Eye Cancer,Retinoblastoma)、胆嚢癌、胃腸(胃)癌、胃腸(胃)癌(小児型)、胃腸カルチノイド腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍(Germ Cell Tumor,Extracranial)(小児型)、性腺外胚細胞腫瘍(Germ Cell Tumor,Extragonadal)、卵巣胚細胞腫瘍(Germ Cell Tumor,Ovarian)、妊娠性絨毛腫瘍、神経膠腫(成人型)、脳幹の神経膠腫(小児型)(Glioma,(Childhood),Brain Stem)、大脳星細胞腫の神経膠腫(小児型)(Glioma,(Childhood),Cerebral Astrocytoma)、視経路および視床下部の神経膠腫(小児型)(Glioma,(Childhood)Visual Pathway and Hypothalamic)、毛様細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌(成人型)(原発性)、肝細胞(肝臓)癌(小児型)(原発性)、ホジキンリンパ腫(成人型)、ホジキンリンパ腫(小児型)、下咽頭癌、視床下部および視経路神経膠腫(小児型)、眼球内黒色腫、島細胞癌腫(内分泌膵臓)、カポジ肉腫、腎臓(腎細胞)癌、腎癌(小児型)、喉頭癌、喉頭癌(小児型)、急性リンパ性白血病(Leukemia,Acute Lymphoblastic)(成人型)、急性リンパ性白血病(Leukemia,Acute Lymphoblastic)(小児型)、急性骨髄性白血病(Leukemia,Acute Myeloid)(成人型)、急性骨髄性白血病 (Leukemia,Acute Myeloid)(小児型)、慢性リンパ性白血病(Leukemia,Chronic Lymphocytic)、慢性骨髄性白血病(Leukemia,Chronic Myelogenous)、毛様細胞白血病(Leukemia,Hairy Cell)、口唇および口腔癌、肝癌(成人型)(原発性)、肝癌(小児型)(原発性)、非小細胞肺癌(Lung Cancer,Non−Small Cell)、小細胞肺癌(Lung Cancer,Small Cell)、エイズ関連リンパ腫(Lymphoma,AIDS−Related)、バーキットリンパ腫(Lymphoma,Burkitt’s)、皮膚T細胞リンパ腫(Lymphoma,Cutaneous T−Cell)、ホジキンリンパ腫(Lymphoma,Hodgkin’s)(成人型)、ホジキンリンパ腫(Lymphoma,Hodgkin’s)(小児型)、非ホジキンリンパ腫(Lymphoma,Non−Hodgkin’s)(成人型)、非ホジキンリンパ腫(小児型)(Lymphoma,Non−Hodgkin’s,(Childhood))、原発性中枢神経系リンパ腫(Lymphoma,Primary Central Nervous System)、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症(Macroglobulinemia,Waldenstrom’s)、骨の悪性線維性組織球腫/骨肉腫、髄芽細胞腫、(小児型)、黒色腫、眼内(目)黒色腫(Melanoma,Intraocular (Eye))、メルケル細胞癌、悪性中皮腫(成人型)(Mesothelioma,(Adult)Malignant)、中皮腫(小児型)、原発不明の転移性扁平上皮性頸部癌、多発性内分泌腺腫症候群(小児型)、多発性骨髄腫/血漿細胞新生物、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病(Myelogenous Leukemia,Chronic)、急性骨髄性白血病(成人型)(Myeloid Leukemia,(Adult)Acute)、急性骨髄性白血病(小児型)(Myeloid Leukemia,(Childhood)Acute)、多発性骨髄腫(Myeloma,Multiple)、慢性骨髄増殖性障害(Myeloproliferative Disorders,Chronic)、鼻腔および副鼻腔癌、上咽頭癌、上咽頭癌(小児型)、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫(成人型)、非ホジキンリンパ腫(小児型)、非小細胞肺癌、経口癌(小児型)、口腔癌、口唇および中咽頭癌、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、卵巣癌(小児型)、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性潜在性腫瘍、膵癌、膵癌(小児型)、膵癌、島細胞、副鼻腔および鼻腔癌、上皮小体癌、陰茎癌、褐色細胞腫、松果体芽腫およびテント上原始神経外胚葉性腫瘍(小児型)、下垂体腫瘍、血漿細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜胚芽腫、妊娠および乳癌、妊娠およびホジキンリンパ腫、妊娠および非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞(腎臓)癌、腎細胞(腎臓)癌(小児型)、腎盂および尿管の移行上皮癌(Renal Pelvis and Ureter,Transitional Cell Cancer)、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫(小児型)、唾液腺癌、唾液腺癌(小児型)、ユーイング肉腫(Sarcoma,Ewing’s)、カポジ肉腫(Sarcoma,Kaposi’s)、軟部組織肉腫(成人型)(Sarcoma,Soft Tissue,(Adult))、軟部組織肉腫(小児型)、子宮肉腫(Sarcoma,Uterine)、セザリー症候群、皮膚癌(非黒色腫)、皮膚癌(小児型)、皮膚癌(黒色腫)、皮膚癌腫、メルケル細胞、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫(成人型)、軟部組織肉腫(小児型)、扁平上皮癌、原発不明の転移性扁平上皮性頸部癌(Squamous Neck Cancer with Occult Primary,Metastatic)、胃(胃腸)癌、胃(胃腸)癌(小児型)、テント上原始神経外胚葉性腫瘍(小児型)、皮膚性T細胞リンパ腫(T−Cell Lymphoma,Cutaneous)、精巣癌、胸腺腫(小児型)、胸腺腫および胸腺癌、甲状腺癌、甲状腺癌(小児型)、腎盂および尿管の移行上皮癌、妊娠性絨毛性腫瘍(Trophoblastic Tumor,Gestational)、尿管および腎盂の移行上皮癌(Ureter and Renal Pelvis,Transitional Cell Cancer)、尿道癌、子宮体子宮癌(Uterine Cancer,Endometrial)、子宮肉腫、膣癌、視経路および視床下部神経膠腫(小児型)、外陰部癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍。
【0191】
血管新生に関与している、より具体的には腫瘍血管新生および腫瘍の遊走に寄与する内皮細胞の運動性阻害に関与している、より具体的には前立腺癌の場合に関与しているPKN3は別として(Leenders et al.,2004,EMBO J.23 (16):3303−3313参照)、PKN3はPI3キナーゼ経路の一部である。
【0192】
PI3キナーゼ経路は、成長因子誘導および平行シグナル伝達経路に対するPI3キナーゼ活性を特徴とする。細胞の成長因子を刺激すると、細胞膜での同族受容体の活性化がもたらされ、それらは順々に細胞内シグナル伝達分子、例えばPI3キナーゼなどと会合し、活性化する。PI3キナーゼ(調節サブユニットp85および触媒サブユニットp110からなる)を活性化すると、リン酸化によるAktの活性化が生じ、それにより、支持細胞の応答、例えば、増殖、生存、またはさらに下流への遊走などが引き起こされる。PTENは、したがって、ホスファチジルイノシトール(PI)3−キナーゼ経路に関与し、細胞増殖ならびに形質転換を調節するその役割についてこれまで広範囲に研究されてきた、腫瘍抑制因子である(概説については、Stein,R.C.and Waterfield,M.D.(2000).PI3−kinase inhibition:a target for drug development? Mol Med Today 6,347−357;Vazquez,F.and Sellers,W.R.(2000).The PTEN tumor suppressor protein:an antagonist of phosphoinositide 3−kinase signaling.Biochim Biophys Acta 1470,M21−35;Roymans,D.and Siegers,H.(2001).Phosphatidylinositol 3−kinases in tumor progression.Eur J Biochem 268,487−498を参照)。腫瘍抑制因子PTENは、PI3キナーゼ触媒反応を逆転させることによりPI3キナーゼの負の制御因子として機能し、それによって確実に経路の活性化が一時的で制御された方法で起こるようにする。PI3キナーゼシグナル伝達の慢性過活性化は、PTENの機能的不活化に起因する。PI3キナーゼ活性は、小分子阻害剤LY294002を加えることで阻止することができる。平行経路の中で作用するシグナル伝達キナーゼMEKの活性および下流応答は、例えば、小分子阻害剤PD98059によって阻害することができる。
【0193】
PTEN機能の消失によるPI3キナーゼ経路の慢性活性化は、腫瘍形成および転移の主な貢献者であり、この腫瘍抑制因子が制御された細胞増殖に関して重要なチェックポイントを表すことが示される。PTENノックアウト細胞は、PI3キナーゼの活性化形態を介して、PI3キナーゼ経路が慢性的に誘導されている細胞に似た特徴を示す(Di Cristofano,A.,Pesce,B.,Cordon−Cardo,C.and Pandolfi,P.P.(1998)。PTENは胚発生および腫瘍抑制に必須である。Nat Genet 19,348−355.Klippel,A.,Escobedo,M.A.,Wachowicz,M.S.,Apell,G.,Brown,T.W.,Giedlin,M.A.,Kavanaugh,W.M.and Williams,L.T.(1998)。ホスファチジルイノシトール3キナーゼの活性化は細胞周期エントリーに十分であり、発癌性形質転換に典型的な細胞変化を促進する。 Mol Cell Biol 18,5699−5711.Kobayashi,M.,Nagata,S.,Iwasaki,T.,Yanagihara,K.,Saitoh,I.,Karouji,Y.,Ihara,S.and Fukui,Y.(1999)。「ホスファチジルイノシトール3−キナーゼの活性化による腺癌の脱分化(Dedifferentiation of adenocarcinomas by activation of phosphatidylinositol 3−kinase)」。Proc Natl Acad Sci U S A 96,4874−4879)。
【0194】
PTENは、PTEN関連経路、例えば、PI3K/PTEN経路、Akt経路、EGF関連自己分泌ループおよびmTOR経路など、とも称されるいくつかの経路に関与する。PI3キナーゼ経路とは、実際、PI3キナーゼを直接あるいは間接のいずれかで伴う任意の経路である。PI3キナーゼは、このような経路においてインヒビターまたはアクチベーターのいずれかとして作用してもよく、あるいはそれ自体、経路の他の要素により調節されてもよい。
【0195】
PI3キナーゼ経路に関連する疾患及び症状を記載している先行技術は豊富に存在する。したがって、これらの症状及び疾患のいずれもが、本発明の方法および薬剤および診断薬により対処することができ、その設計、スクリーニングまたは製造法が本発明において教示される。限定ではなく説明の理由で、以下に言及される。子宮内膜癌、結腸直腸癌、神経膠腫、子宮内膜癌、腺癌、子宮内膜増殖症、カウデン症候群、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌、リー・フラウメニ症候群、乳−卵巣癌、前立腺癌(Ali,I.U.,Journal of the National Cancer Institute,Vol.92,no.11,June 07,2000,page 861−863)、バナヤン・ゾナナ(Bannayan−Zonana)症候群、LDD(レルミット・デュクロス(Lhermitte−Duclos’)症候群)(Macleod,K.,上記文献)、狂牛病(CD)およびバナヤン・ルバルカバ・ライリー(Bannayan−Ruvalcaba−Riley)症候群(BRR)を含む過誤腫−巨頭症、粘膜皮膚病変(例えば、外毛根鞘腫(trichilemmonmas))、巨頭症、精神発達遅滞、胃腸ハーマトマス(gastrointestinal harmatomas)、脂肪腫、甲状腺腺腫、乳房線維嚢胞性疾患、小脳異形成神経節細胞腫ならびに乳房及び甲状腺の悪性腫瘍(Vazquez,F.,Sellers,W.R.,上記文献)。
【0196】
この点から見て、PKN3は、PKN3の上流の標的に対する他の薬剤よりも副作用が少なくなる薬剤により対処することができる、PI3キナーゼ経路の価値のある下流の薬剤標的である。エフェクター分子のこの特定の部分、すなわち、タンパク質PKN3およびこの経路に関与する任意のさらに下流の分子を制御することにより、その非常に限定された数の平行分枝またはこのシグナル伝達カスケードのさらに上流の標的だけが、望ましくない効果を引き起こす傾向がある。したがって、細胞周期、DNA修復、アポトーシス、グルコース輸送、翻訳に関連するPI3キナーゼ/PTEN経路の他の活性は、影響を受けない。また、インスリンシグナル伝達は誘導されないが、これは、LY294002の使用に関連して観察される糖尿病性応答または他の副作用が実際に回避されることを意味する。LY294002(2−(4−モルホリニル)−8−フェニルクロモン)は、Lilly Research Laboratories(Indianapolis)によりPI−3Kのインヒビターとして開発された幾つかのクロモン誘導体の低分子インヒビターの1つである(Vlahos et al.1994,JBC 269,5241−5248)。これは、PI−3K分子の触媒サブユニットのp110を標的とし、触媒中心においてADP結合と競合することにより機能する。しかし、LY294002は、異なる細胞内機能を有することが示唆されている、p110の種々のイソ型(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ)を識別することができない。
【0197】
PKN3はまた、ラパマイシンにより対処されるmTORのさらに下流でもある。Raft又はFRAPとしても公知である、mTOR(ラパマイシンの哺乳類標的(mammalian Target Of Rapamycin))は、PI3−キナーゼの下流で作用して、細胞周期へのpp70 S6キナーゼ依存性エントリーなどのプロセスを調節する。mTORは、増殖因子および栄養物の利用可能性のセンサーとして作用して、pp70 S6キナーゼおよび開始因子4Eを活性化することにより翻訳を制御する。mTOR機能は、T細胞およびある一定の腫瘍細胞の増殖をブロックする、細菌性マクロライドのラパマイシンにより阻害される(Kuruvilla and Schreiber 1999,Chemistry & Biology 6,R129−R136)。
【0198】
ラパマイシンとその誘導体が、現在臨床で用いられている適切な薬剤であるという事実は、薬剤標的がより有用で、副作用が少ないほど、それが、例えば、Yu et al.により証明されたように特定の分子機構に対してより特異的であることを証明する(Yu,K.et al.(2001)Endocrine−Relat Canc 8,249)。
【0199】
PKN3は、それら全てがタンパク質−セリン/トレオニンキナーゼであると言われているプロテインキナーゼCファミリーのメンバーである。一般に、この種類のプロテインキナーゼは、1つの調節サブユニットと1つの触媒サブユニットを含み、カルシウムイオンとリン脂質をコファクターとして使用する。ジアシルグリセロールは、この種類のプロテインキナーゼファミリーのアクチベーターとして作用する。プロテインキナーゼCファミリーのメンバーは、ホルモン又は神経伝達物質につながっているいくつかのシグナル伝達経路に関与している。これらのプロテインキナーゼは、リン酸化によりその標的タンパク質の活性を調節する。プロテインキナーゼCの非生理的な連続した活性化の結果、癌の発生を引き起こす可能性がある形質転換細胞の表現型が生じることは、当技術分野で公知である。
【0200】
mRNAとしてのPKN3の完全な配列は、データバンクより、例えば、受託番号gi7019488またはNM_013355の下に入手可能である。遺伝暗号を用いて、このmRNAから特定のアミノ酸配列を推定してもよい。また、PKN3のアミノ酸配列は、データバンクより受託番号gi7019489又はNP_037487.1の下に入手可能である。
【0201】
ヒトPKN3に対する相同体は、中でも、ハツカネズミ(M.musculus)、ドブネズミ(R.norvegicus)、シロイヌナズナ(A.thaliana)、線虫(C.elegans)、キイロショウジョウバエ(D.melanogaster)及びサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)に見出され得る。同一性パーセントおよび整列領域の長さは、前述の様々な種について、それぞれ、67%および279アミノ酸、51%および866アミノ酸、38%および305アミノ酸、36%および861アミノ酸、63%および296アミノ酸ならびに44%および362アミノ酸である。このような相同体を用いて生成された薬剤が、ヒトプロテインキナーゼNベータまたは任意の他の意図されるプロテインキナーゼNベータとなお相互作用するものでない場合、これらまたは他の相同体はいずれも、原則として本発明の実践に適していることは、当業者により認識される。
【0202】
ヒトアミノ酸配列はまた、ProtEST、受託番号pir:JC7083から取ることができ、ここで、それぞれのプロテインキナーゼNベータは、JC7083プロテインキナーゼと称される。ヒトプロテインキナーゼNベータの遺伝子は、ヒト9番染色体上に位置する。プロテインキナーゼNベータのcDNA源は、一般に多数の癌および様々な胎児もしくは胚組織であり、より詳細には、中でも、胃癌、腺癌、脳腫瘍、乳癌、バーキット腫、リンパ腫、子宮頚癌、軟骨肉腫、結腸癌、胎児眼、胎児水晶体、胎児前眼部、胎児視神経、胎児網膜、胎児網膜中心窩、胎児黄斑、胎児脈絡膜、線維莢膜細胞腫(fibrotheoma)、生殖系、頭部、頚部、心臓、腎臓、大細胞癌、平滑筋肉腫、転移性軟骨肉腫、卵巣、副甲状腺、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、小細胞癌、扁平上皮癌、精巣、および子宮である。このリストから、本明細書において薬剤とも称される薬剤は、本明細書に開示される他の疾患のいずれか、および本明細書に開示される病的症状のいずれかに加えて、これらの疾患または特定の細胞、組織もしくは臓器を巻き込む任意の疾患のいずれかの治療および/または予防にも使用されてもよいことは明らかである。これらの疾患および病的症状もまた、「本明細書に記載される疾患」という用語に含まれるものとする。
【0203】
本発明の核酸分子およびそれを含有する薬剤により治療および/または予防することができる、本明細書に記載される疾患ならびに本明細書に記載される病的症状も、腫瘍形成および転移を含む可能性がある。これは、本明細書に記載される疾患および本明細書に記載される病的症状に特に該当し、その場合このような疾患または病的症状に関与する細胞は、腫瘍抑制PTENが活性でないか、または活性レベルが低下していることを意味するPTEN陰性である。これらの疾患はまた、一般にPI3キナーゼ経路が関わっている疾患を含む。転移性腫瘍に加えて特に、糖尿病がこの種類の疾患および病的症状のそれぞれに属する。したがって、細胞、特に本明細書に記載される疾患または病的症状に関与している細胞およびPTEN陰性の細胞は、薬剤による治療に感受性が高く、その作用様式は、それぞれの関与している細胞においてPKN3の活性を低下または除去する程度のものである。したがって、その腫瘍が、好ましくは、過剰活性化PI3キナーゼ経路(限定されるものではないが、PI3キナーゼ経路の成分をコードする遺伝子(p110、Akt)の増幅または突然変異による)を特徴とするか、あるいはPTEN陰性である患者、あるいはPTEN陰性の細胞を有する患者は、特にこれらの細胞が本明細書に記載される疾患または本明細書に記載される病的症状に関与している場合は、上記薬剤を用いて有利に治療することができる。このような活性の低下は、転写レベルまたは翻訳のレベル、すなわちPKN3の酵素活性の低下のいずれかから起こる場合がある。いかなる学説にも拘束されることを望むものではないが、後者の態様、すなわちPKN3の活性を修飾することもまた、PKN3の特徴に起因する、つまり、PKN3の酵素活性もまた、上方および下方調節、より好ましくは下方調節することができる。
【0204】
上記薬剤を用いて有利に治療することができる患者のさらなる群は、PTEN機能の消失の発生率の高い癌、特に後期腫瘍に罹患している患者である(Cantley and Neel,1999)。PTENの消失は、それぞれの腫瘍細胞の攻撃的および侵襲的挙動の増大に相関する。
【0205】
本発明の医薬組成物が使用され得る治療および予防のための本明細書に記載される様々な疾患はまた、本明細書に記載される薬剤を使用してもよい、予防および/または治療のための疾患であり、逆も同様であることは認識される。
【0206】
本明細書において、疾患の治療という用語は、このような疾患の予防も含むものとする。
【0207】
さらなる特徴、実施形態および利点は、以下の図から得る場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1】PI3経路へのPKN3の関与を示す概略図である。
【図2】ヒト細胞株(HeLa、HUVEC)およびマウス細胞株(EOMA)におけるPKN3特異的siRNAを用いるノックダウン実験のウエスタンブロット解析の結果を示す。
【図3】HeLaとHUVEC細胞の両方でsiRNA分子のIC50を測定するためにリポプレックスとして処方した、異なる濃度のPKN3特異的siRNA分子を用いるノックダウン実験の結果を示す。
【図4】ノックダウン効力の点で上記分子の有効性を異なる時点で検定した、PKN3特異的siRNA分子および対照としてPKN3特異的アンチセンス分子を用いる、ノックダウン実験のウエスタンブロット解析の結果を示す。
【図5】3’末端にリン酸基を提示したかまたは提示しない、異なる濃度のPKN3特異的siRNAリポプレックスを用いる、ノックダウン実験のウエスタンブロット解析の結果を示す。
【図6】異なるPKN3特異的siRNA分子を用いるノックダウン実験のウエスタンブロット解析の結果(図6A)および細胞外マトリックスでのHUVEC増殖のPKN3機能の消失を説明する顕微鏡写真(図6B)を示す。
【図7】PKN3特異的siRNA分子のインビボでの有効性を試験するための実験デザイン(図7A)、ならびに皮下PC−3異種移植腫瘍マウスモデルにおける、このような分子の腫瘍体積(図7B)および体重(図7C)への影響を示す。
【図8】PKN3特異的siRNA分子のインビボでの有効性を試験するための実験デザイン(図8A)、ならびに皮下PC−3異種移植腫瘍マウスモデルにおける、体重または腫瘍体積の割合として表される、異なる用量のこのようなsiRNA分子の影響(図8B)、および体重または腫瘍体積の割合として表される、このような分子を用いる異なる投与スケジュールの影響(図8C)を示す。
【図9】PKN3特異的siRNA分子のインビボでの有効性を試験するための実験デザイン(図9A)、ならびに前立腺内PC−3異種移植腫瘍マウスモデルにおける、上記分子の前立腺腫瘍体積およびリンパ節転移への影響(図9B)および上記分子の肺組織でのPKN−3およびTie2 mRNAの減少への影響(図9C)を示す。
【図10】全身投与にて特異的siRNA分子を用いる異なる治療スキームのインビボでの有効性を試験するための実験デザイン(図10A)、ならびに前立腺内PC−3異種移植腫瘍マウスモデルにおける、このような異なる治療スキームの前立腺腫瘍体積への影響(図10B)およびリンパ節転移体積への影響(図10C)を示す。
【図11】全身投与にて様々な用量のPKN3特異的siRNA分子のインビボでの有効性を試験するための実験デザイン(図11A)、ならびに上記様々な用量の前立腺腫瘍体積への影響(図11B)およびリンパ節転移体積への影響(図11C)を示す。
【図12】Aは、リポプレックスを形成する化合物を示す図である。Bは、本発明のリポプレックスの構造を、リポソームと比較して説明する概略図である。
【図13】19塩基対または23塩基対のいずれかを有するPKN3特異的siRNA分子を用いるノックダウン実験のウエスタンブロット解析の結果を示す。
【図14】異なるPKN3特異的siRNA分子を用いるノックダウン実験のウエスタンブロット解析の結果を示す。
【図15】3種類の異なる細胞株での、19塩基対または23塩基対のいずれかを有するsiRNA分子を用いるノックダウン実験のウエスタンブロット解析の結果を示す(siRNA分子は異なる濃度で使用される)。
【図16】PKN3特異的siRNA分子のインビボでの有効性を試験するための実験デザイン(図16A)、ならびに同所性前立腺癌マウスモデルにおける、このような19塩基対または23塩基対のいずれかを有するPKN3特異的siRNA分子の、前立腺腫瘍体積の減少への影響(図16B)、リンパ節転移体積への影響(図16C)およびリンパ節転移拡散への影響(図16D)を示す。
【図17】様々な用量の、23塩基対を含むPKN3特異的siRNA分子のインビボでの有効性を試験するための実験デザイン(図17A)ならびに同所性前立腺癌マウスモデルにおける、このような様々な用量の、前立腺腫瘍体積の減少への影響(図17B)、リンパ節転移体積への影響(図17C)およびリンパ節転移拡散への影響(図17D)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0209】
実施例1:材料および方法
[インビトロトランスフェクションおよび免疫ブロット法;抗体]
細胞株に、上に記載される陽イオン性リポソームを用いてsiRNAをトランスフェクトした。簡潔に述べると、細胞の播種から約12時間後、10%血清含有培地に希釈した異なる量のsiRNA−リポプレックス溶液を細胞に添加して、1〜50nM siRNAの範囲のトランスフェクション濃度を達成した。トランスフェクション後(48時間)、細胞を溶解させ、説明されるように免疫ブロット法に供した(Klippel et al.,1998)。タンパク質濃度をDCプロテインアッセイ(BioRad)で測定し、次の抗体:ウサギ抗PTEN(Ab−2、Neomarkers)、Akt−1、ウサギ抗PKN3(Leenders et al.,2004)を用いて、免疫ブロット(immunobot)分析のために等量を負荷した。
【0210】
[細胞株]
PC−2、HeLa、HUVEC(ヒト臍帯(umbical)静脈内皮細胞)、およびEOMA細胞株であり、ATCCの推奨に従って培養した。
【0211】
[腫瘍異種移植]
雄Hsd:NMRI−nu/nuマウス(8週齢)を本研究に使用した。定着腫瘍異種移植片での腫瘍治療実験のため、合計5.0×10腫瘍 細胞/100μl PBS)を皮下に移植した。キャリパーを用いて腫瘍体積を測定し、式:腫瘍体積=(長さ×幅)/2に従って算出した。腫瘍治療実験のため、siRNA−リポプレックス溶液を、低圧、少量の尾静脈注射により静脈内投与した。同所性腫瘍モデルにおいて、2.0×10PC−3細胞/30μl PBSを前立腺の左背側葉に全身麻酔下で注射した(Stephenson et al.,1992)。動物を手術後50日目に殺処分し、腫瘍(前立腺)および局所転移(尾部、腰部および腎リンパ節転移)の体積を上に述べたように測定した。
【0212】
静脈内投与のため、1.88mg/kgのsiRNAおよび14.5mg/kgの脂質の最終用量で、200μl溶液の単回尾静脈注射によってsiRNAリポプレックスを静脈内に投与することにより、または異なるスケジュールのその改変用量(示す通り)のためのsiRNA−リポプレックスを行った。
【0213】
統計解析
データは、平均値±平均値の標準誤差として表される。差異の統計的有意性は、マンホイットニーのU検定により判定した。P値<0.05を統計上有意であるとみなした。
【0214】
マトリゲルアッセイ
マトリゲルマトリックスでの細胞増殖を検定するため、HUVECに、siRNAを48時間トランスフェクトした。トリプシン処理の後、250μlマトリゲル基底膜マトリックスでプレコートした24ウェルプレート(110,000細胞/ウェル)に細胞を2通り播種し、リプレーティングから20時間後、Axiovert S100顕微鏡に接続されたAxiocamカメラを用いて1.25×または2.5×の倍率で顕微鏡写真を撮影した。
【0215】
実施例2:PKN3 siRNA分子
本明細書においてsiRNA分子とも称され(AtuRNAi、表1aおよび1b参照)、本研究で使用された、本発明による分子は記載される通りであり(Czauderna et al.,2003)、BioSpring(Frankfurt a.M.,Germany)により合成された。
【0216】
上記分子の二重鎖は、それぞれのセンス鎖およびアンチセンス鎖により形成され、それらは各々表1aおよび1bに5’→3’方向で示されている。したがって、二本鎖分子は、それぞれのセンスおよびアンチセンス鎖、例えば、特定の例では本明細書においてPKN3(1)とも称される、二本鎖構造を有する分子を形成しているPKN3−hm−1sとPKN3−hm−1asを組み合わせることにより形成される。これらの分子は平滑末端化されているが、しかし、二本鎖分子を形成している各鎖は、3’末端に、より具体的には末端の3’OH基に結合したホスフェートを有する。これらの分子は両方の鎖で2’−O−メチル糖修飾が交互に存在することにより化学的に安定化され、非修飾ヌクレオチドは、表1aからもわかるように、反対の鎖の修飾されたヌクレオチドと向かい合う。これらの二本鎖分子は、本発明による核酸分子の特に好ましい実施形態である。
【表2】

2’−O−メチル修飾されているヌクレオチドには下線が引かれている。このような下線から、1つ置きのヌクレオチドがこの種類の修飾を有し、このような修飾がアンチセンス鎖の1番目のヌクレオチドから始まり、センス鎖の2番目のヌクレオチドから始まることが(センス鎖とアンチセンス鎖の両方が左から右へ5’−3’の方向で表されている条件で)明らかである。
【0217】
sは、本明細書において第2の鎖とも称されるセンス鎖を表し、asは、本明細書において第1の鎖とも称されるアンチセンス鎖を表す。第1の鎖は、隣接するヌクレオチドからなる第1のストレッチを含み、上記第1のストレッチは、少なくとも部分的に標的核酸と相補的である。標的核酸は、本明細書において、好ましくは分解されるか解除された(destilized)核酸である。
【0218】
これらの分子は本明細書においてPKN3特異的siRNAとも称され、2つのヒト細胞株、すなわちHeLa、HUVEC、および1つのマウス細胞株(EOMA)でスクリーニングした。20nMのsiRNAをトランスフェクトし、実施例1に記載されるようにトランスフェクション後48時間に全細胞溶解物から免疫ブロッティングを行った。結果を図2に表す。図2からわかるように、特に好ましい核酸分子は、PKN3(2)、PKN3(3)、PKN3(4)、PKN3(5)、PKN3(6)、PKN3(8)である。
【0219】
いっそうより好ましい分子は、PKN3(3)であり、さらなる研究の対象とした。
【0220】
PKN3(3)に基づいて、さらなるsiRNA分子を設計し、それらを次の表1bに提示する。それらは、PKN3−hm−3A23v1分子およびPKN3−hm−3B23v1分子からなる分子に対して、PKN3−23−v1、すなわち二つの一本鎖、と注記され、PKN3−hm−3A23v2分子およびPKN3−hm−3B23v2分子からなる分子に対して、PKN3−23−v2、すなわち二つの一本鎖、と注記され、PKN3−hm−3A23v3分子およびPKN3−hm−3B23v3分子からなる分子に対して、PKN3−23−v3、すなわち二つの一本鎖、と注記され、PKN3−hm−3A23v4分子およびPKN3−hm−3B23v4分子からなる分子に対して、PKN3−23−v4、すなわち二つの一本鎖、と注記され、さらにPKN3−hm−3A23v5分子およびPKN3−hm−3B23v5分子からなる分子に対して、PKN3−23−v5、すなわち二つの一本鎖、と注記されている。
【0221】
これらのsiRNA分子を提示し、デザインする方法は、表1aに含められているsiRNA分子に関連して記載されるものと同じである。表1bからわかるように、PKN3(3)(表1b中ではPKN3−hm−3A19/PKN3−hm−3B19と称される)から出発して、合計4ヌクレオチドがセンス鎖の3’末端およびアンチセンス鎖の5’末端に付加され(PKN3−23−v1)、合計4ヌクレオチドがセンス鎖の5’末端に、合計4ヌクレオチドがアンチセンス鎖の3’末端に付加され(PKN3−23−v2)、1つのヌクレオチドがセンス鎖の5’末端に、3ヌクレオチドが3’末端に、3ヌクレオチドがアンチセンス鎖の5’末端に、1ヌクレオチドが3’末端に付加され(PKN3−23−v3)、2ヌクレオチドがセンス鎖の5’末端に、2ヌクレオチドが3’末端に、2ヌクレオチドがセンス鎖の5’末端に、2ヌクレオチドが3’末端に付加され(PKN3−23−v4)、かつ、3ヌクレオチドがセンス鎖の5’末端に、1ヌクレオチドが3’末端に、1ヌクレオチドがアンチセンス鎖の5’末端に、3ヌクレオチドが3’末端に付加される(PKN3−23−v5)。新しく付加されたヌクレオチドは、表1b中でイタリックで示される。
【表3】

【0222】
表1bのsiRNA分子をそれらのノックダウン有効性について試験し、長さ19ヌクレオチドのPKN3特異的siRNAの1つ、より具体的にはPKN3(3)と比較した。このような目的のため、HeLa B細胞を6ウェルにプレーティングし(40k)、16時間後に20nMでトランスフェクトし、トランスフェクションから48時間後にタンパク質抽出のために溶解させた。それとは逆のことが明示されていない場合、これらのsiRNA分子に関して使用される技法および手順は、本明細書の実施例部分に記載される、より具体的には実施例1に記載されるものである。
【0223】
抗PKN3抗体および抗PTEN抗体でプローブした溶解物のウエスタンブロットを(後者は負荷対照としての役割を果たす)、図13に表す。図13に記載されているように、PKN3−23−v1が特に効果的であり、その次に、有効性の点で、PKN3−23−v4、PKN3−23−v5、PKN3−23−v2およびPKN3−23−v3が続く。センス鎖としてLuc−siRNA−2B(ca、配列番号56)およびアンチセンス鎖としてLuc−siRNA−2A(、配列番号57)を含むルシフェラーゼ特異的siRNA分子を対照(KO)として用いた。
【0224】
さらに可能性のあるsiRNA分子をスクリーニングし、それらを表2に表す。提示および修飾の方法は、上の表1aおよび1bに示されるsiRNA分子に関して記載されるものと同じである。
【表4】

【0225】
表2に表したこれらのsiRNA分子を、上記のようにHUVEC細胞での一次スクリーニングにおいてスクリーニングした。細胞を6ウェルにプレーティングし(40k)、16時間後に20nM siRNAおよび1μg/mlのAtuFECT01でトランスフェクトし、トランスフェクションから72時間後にタンパク質抽出のために溶解させた。抗PKN3抗体および抗PTEN抗体でプローブした溶解物のウエスタンブロットを(後者は負荷対照としての役割を果たす)、図14に表す。utは未処理を表し、Luciは、上に定義されるルシフェラーゼsiRNAを表し、co3は、
【化4】

である。
【0226】
それとは逆のことが明示されていない場合、これらのsiRNA分子に関して使用される技法および手順は、本明細書の実施例部分に記載される、より具体的には実施例1に記載されるものである。
【0227】
実施例3:PKN3特異的siRNA分子のリポプレックス製剤
リポプレックス製剤を、本質的にSantelに記載されるように調製した(Santel et al.2006)。
【0228】
陽イオン性脂質AtuFECT01(β−L−アルギニル−2,3−L−ジアミノプロピオン酸−N−パルミチル−N−オレイル−アミドトリヒドロクロリド、Atugen AG)、中性のリン脂質1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPhyPE)(Avanti Polar Lipids Inc.,Alabaster,AL)およびPEG化脂質N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−エタノールアミンナトリウム塩(DSPE−PEG)(Lipoid GmbH,Ludwigshafen,Germany)を、RNアーゼを含まない滅菌スクロース溶液300mM中での脂質膜の再水和により50/49/1のモル比で混合して、総脂質濃度を4.34mg/mlとした。それとは逆のことが示されていない場合、典型的に、30gのマウスへの単回の静脈注射は、1.88mg/kg siRNAおよび14.5mg/kg脂質の標準用量で行った。また、それとは逆のことが示されていない場合、PKN3特異的siRNA分子は、実施例2に定義されるPKN3(3)分子である。PKN3(3)を含む、本発明によるリポプレックスを形成する様々な化合物は、図12Aに表されている。特異的siRNA分子が、原則として、本明細書に開示される任意のsiRNA分子、好ましくは表1aおよび1bに示される任意のsiRNA分子であってもよいことは当然理解される。
【0229】
図12Bは、siRNAリポプレックス、すなわち前述の脂質、すなわち陽イオン性脂質、ヘルパー脂質とも称されるDPhyPE、およびPG−脂質、すなわちDSPE−PEGとsiRNA分子との間に、またはそれらとともに形成される複合体を説明する概略図を示す。PKN3特異的siRNAのボールド体のヌクレオチドは、個々のヌクレオチドの2’−O−メチル修飾を示した。
【0230】
実施例4:IC50の測定
実施例3で特定された脂質とともにPKN3(3)分子により形成されるリポプレックス(siRNA−PKN3(3)−リポプレックスとも称される)のIC50を、HeLaおよびHUVEC細胞でのトランスフェクションの後に測定した。トランスフェクションの48時間後にタンパク質溶解物を調製し、PKN3およびPTEN特異的抗体で免疫ブロットする。
【0231】
リポプレックス化(リポプレックスに処方された)siRNA分子(「siRNA−PKN3(3)」)の濃度は、1、5、10および20nMであった。
【0232】
結果を図3に表す。
【0233】
図3から、HeLa細胞において、既に濃度が5nMのsiRNA−PKN3(3)は、タンパク質レベルでPKN3を有意にノックダウンするのに適していることがわかる。同じことがHUVEC細胞にも該当し、HeLa細胞でのノックダウンと全く同じ程度に達するためにはわずかに高い濃度が必要である。PTENを負荷対照として用いた。
【0234】
さらに、本明細書の表1bに示されるPKN3分子、より具体的にはPKN3−23−v1により形成されるリポプレックスを、細胞株HUVECおよびEOMAそれぞれにおいて、19塩基長のPKN3(3)と比較する用量滴定に供した。先行する実施例に記載されるように、細胞を6ウェルにプレーティングし(40k)、16時間後に示された濃度のsiRNAでトランスフェクトし、トランスフェクションから48時間後にタンパク質抽出のために溶解させた。抗PKN3抗体および抗PTEN抗体でプローブした溶解物のウエスタンブロットを(後者は負荷対照としての役割を果たす)、図15に表す。
【0235】
図15からわかるように、PKN3−23−v1 siRNAは有効性の点でPKN3(3)の1つに匹敵する。19塩基長および23塩基長分子のIC50は、細胞培養トランスフェクション実験に続いて半定量的免疫ブロットにより検定され、3つの異なる細胞株について同様の効力(IC50 約5nM)を示す。EOMAが、マウスおよびヒトの活性を示すマウス由来内皮細胞株であることは、指摘するに値する。
【0236】
実施例5:PKN3特異的siRNA分子の一時的効果
PKN3特異的siRNA分子、すなわちsiRNA−PKN−3(3)の、およびPKN3特異的アンチセンス分子(GB対照)(Leenders et al.,2004)のノックダウン効果の一時的な特徴を示すため、これらの分子をHeLa細胞にトランスフェクトした。タンパク質溶解物を48時間、96時間、144時間および192時間に調製した。いずれの場合も、細胞を、PKN3(3)分子を含有するsiRNAリポプレックスに実施例3に記載のように24時間曝露し、上記siRNAリポプレックスは上記24時間の後に除去した。
【0237】
結果を図4に表す。
【0238】
図4から、siRNA PKN3(3)のPKN3への効果は、タンパク質レベルで96時間まで観察してもよく、それによると、144時間後、特定のsiRNA分子の有効性は低下するように思われ、192時間後、本質的にノックダウン効果はもはや観察することができないことがわかる。GB対照と比較して、本発明によるsiRNA分子は、したがって、そのノックダウンは96時間後に既に有意に減少しているアンチセンス分子と比較して、より長い持続活性を示す。
【0239】
実施例6:本発明によるsiRNA分子の3’末端に結合したリン酸基の影響
この実施例では、本発明による二本鎖構造もしくは分子を形成するセンスおよびアンチセンス鎖の両方の3’末端での3’−ホスフェート修飾の影響を研究した。PKN3(3)をノックダウン介在性核酸分子として用い、調製された実施例3に記載されるそれぞれのリポプレックスが形成されるように上記核酸分子を処方した。このようにして得られたリポプレックスをHeLa細胞で試験し、異なる量の上記siRNA分子およびリポプレックスを、それぞれ、トランスフェクトし、トランスフェクション48h後にタンパク質溶解物を調製した。免疫ブロットを本明細書に記載されるように分析した。結果を図5に示す。
【0240】
図5からわかるように、ホスフェート修飾は事実上、siRNA分子およびそれを含有するリポプレックスの有効性に何ら影響を与えない。
【0241】
実施例7:細胞外マトリックスでのHUVEC増殖へのPKN3機能の消失
本発明による分子を用いるPKN3のノックダウンの際に、一部の生理学的かつ形態学的変化も存在することをさらに示すため、細胞外マトリックス増殖アッセイを用いた(Leenders et al.,2004)。
【0242】
より具体的には、HUVECに、個別にかつ分離して、PKN3(1)、PKN3(3)、PKN3(4)およびPKN3(5)をsiRNA分子として含有する、4つの異なるsiRNA−PKN3リポプレックスを、さらに対照としてsiRNA Luc−リポプレックス(20nM)をトランスフェクトした。細胞は、トランスフェクションの最初の48時間以内に培養密度まで増殖し続けた。48時間後、細胞をトリプシン処理し、等しい細胞数(110,000細胞)でリプレーティングし、24ウェルを含むマトリゲルにプレーティングした。
【0243】
代表的な顕微鏡写真を撮ってリプレーティング後20時間のHUVEC細胞増殖の変化をモニターした。結果を図6に表す。
【0244】
予測したとおり、有力なsiRNA PKN3リポプレックス、好ましくはPKN3(3)リポプレックスおよびPKN3(5)リポプレックスの場合には、顕著な増殖の阻害が観察された。
【0245】
実施例8:皮下注射PC−3異種移植腫瘍増殖の阻害
PC−3異種移植腫瘍モデルをPC3細胞の皮下注射により作成した。このようにして作成した腫瘍を、その後、実施例3に説明されるリポプレックスで処理した。このようなリポプレックスの中に含められたsiRNA分子はPKN3(3)であった。基本的な実験デザインを図7Aに表す。合計3つの異なる治療群を確立した(各群は6匹のマウスから構成される)。第1の群にはスクロースのみを投与し、第2の群にはルシフェラーゼに対するsiRNAを含有するリポプレックス(siRNALuc−リポプレックス(lipolex))を投与し、第3の群にはPKN3に特異的なsiRNAを含有するリポプレックス(siRNA PKN3−リポプレックス)を投与した。
【0246】
腫瘍細胞の接種後、25日から開始して30日まで様々な薬剤を投与した。注射は1日に8回静脈内に行った。siRNAリポプレックス用量は、siRNA1.88mg/kgおよび総脂質14.5mg/kgであった(Santel et al.,2006a;Santel et al.,2006b)。
【0247】
平行して、PKN3−23−v1 siRNA分子を、PKN3(3)と比較して検定した。それぞれの基本的な実験デザインを図16Aに表す。腫瘍細胞の接種後、様々な薬剤、すなわちスクロース、PKN3(3)およびPKN3−23−v1を、29日から開始して47日まで投与した。その投与は、10回の静脈注射を2日に1回(12匹のマウスの群において)行うというものであった。siRNAリポプレックス用量はsiRNA2.8mg/kgおよび総脂質21.7mg/kgであった(Santel et al.,2006a;Santel et al.,2006b)。
【0248】
このような治療スキームの結果を、PKN3(3)について図7Bおよび図7Cに、PKN3(3)と比較したPKN3−23−v1 siRNA分子について図16B〜16Dに表す。
【0249】
図7Bからわかるように、定着したPC−3異種移植片の増殖は、示されるようにsiRNA Luc−リポプレックス(三角)処理のもの(標準用量 1.88mg/kg/日 siRNA;14.5mg/kg/日 脂質;矢印)、または等張性スクロース(黒丸)と比較して、siRNA PKN3リポプレックス(菱形)を用いて有意に阻害された。図7Bに示される投与の間、体重の変化をモニターした。個々のデータは、毎日の腫瘍体積の平均値の標準誤差の平均値を表す。様々なリポプレックスの投与によって体重のわずかな減少だけが観察され、観察された場合でも、リポプレックスの脂質成分の動物の健康への影響は最小限のものにすぎないことが確認される。
【0250】
図16B、16Cおよび16Dからわかるように、試験した両方のsiRNA分子、すなわちPKN3(3)、すなわち「19塩基長」、およびPKN3−23−v1、すなわち「23塩基長」は、前立腺腫瘍体積の減少(図16B)、リンパ節転移体積の減少(図16C)およびリンパ節転移拡散(図16D)に表されるように、この前立腺腫瘍モデルにおいて同じ有効性を示す。
【0251】
実施例9:皮下PC−3異種移植腫瘍増殖の阻害:異なるリポプレックス用量の影響
異なるリポプレックス用量の皮下PC−3異種移植腫瘍増殖の阻害への影響を調査するために、基礎的実験を行った。より具体的には、siRNA PKN3(3)リポプレックスを使用した。これらのリポプレックスは実施例3に記載されるように調製された。実験デザインは図8Aから得ることができる。投与群は6匹のマウスからなり、一方の動物群は陰性対照としてスクロースを投与され、それに対してもう一方の群はsiRNA PKN3−リポプレックス、より具体的にはsiRNA PKN3(3)リポプレックスを投与された。皮下への腫瘍細胞接種後、動物に22日から38日まで11回の静脈内注射を毎日投与し、67日までの生存を検定した。
【0252】
siRNAリポプレックス製剤の処方は次の通りであった。1.88mg/kg siRNA+14.5mg/kg atuFect01/1% PEG。
異なるリポプレックス用量は次の通りであった。
−0.94mg/kg siRNA 毎日 22日〜32日
−1.88mg/kg siRNA 毎日 22日〜32日
−1.88mg/kg siRNA 1日2回(bidaily)50%用量 22日〜28日
−1.88mg/kg 2日に1回 22日〜38日
【0253】
結果を図8Bに表す。図8Bからわかるように、毎日1.88mg/kgの用量は、腫瘍体積の有意な減少をもたらした。体重はごくわずかに変化し、リポプレックス製剤自体についてマイナスの効果は観察されなかった。
【0254】
実施例10:皮下PC−3異種移植腫瘍増殖の阻害:異なる投与計画の影響
実験デザインは、実施例8に関して説明されるとおりであった。
【0255】
結果を図8Cに表す。より具体的には、図8Cからわかるように、この実施例で調査した投与スケジュールの効果は、腫瘍体積の影響の点で異ならなかった。しかし、1日2回、1日1回および2日に1回からなる投与スケジュールは同じ腫瘍増殖阻害を示し、PKN3−siRNAリポプレックスでの2日に1回の投与が治療効果を維持するために十分であることが示された。さらに、1日2回の投与の結果、体重が有意に減少し、さらなる治療上の利益のない用量制限用量が示唆される(Santel et al.,2006a)。
【0256】
実施例11:同所性異種移植腫瘍モデルにおけるsiRNA PKN3(3)リポプレックスを用いるマウスへの全身投与
この実験は、同所性異種移植腫瘍モデルにおける腫瘍増殖への、siRNA PKN3リポプレックス、より具体的にはsiRNA−PKN3(3)リポプレックスを用いる、マウスへの全身投与の影響を研究するために行われた。(実験の詳細については(Santel et al.,2006a)参照)。
【0257】
同所性PC−3前立腺腫瘍およびリンパ節転移モデルにおけるsiRNA PKN3リポプレックス投与の有効性を分析するための実験デザインを図9Aに表す。各々9匹のマウスからなる合計4つの投与群、すなわち、スクロース、siRNA Luc−リポプレックス、siRNA PKN3−リポプレックスおよびsiRNA Tie2−リポプレックスの投与される群を定めた。前立腺内腫瘍細胞接種の後、1.88mg/kg siRNAおよび14.5mg/kg atuFect01/1% PEGからなるsiRNAリポプレックス用量を、35日から49日まで2日に1回、8回の静脈内注射を注射した。35日に対照に前処理を行った。
【0258】
この実験から、より具体的に図9Bに表される(前立腺腫瘍の体積サイズおよびリンパ節転移の体積)スクロースまたはルシフェラーゼ特異的siRNA分子(siRNALuc)で処理した群と比較して、示されたsiRNAリポプレックスを用いる投与の後に、マウスにおいて前立腺PC−3腫瘍およびリンパ節転移の体積の減少が観察された。
【0259】
投与開始前の腫瘍転移体積は左に示される(35日対照)。統計的有意性はアスタリスクで示される。上記図からわかるように、PKN3特異的siRNA分子、より具体的にはそれを含有するリポプレックスは、前立腺腫瘍の体積およびリンパ節転移の体積の両方の減少に関して非常に効果的であった。
【0260】
PKN3−siRNAリポプレックスの静脈内投与によるインビボRNA干渉を実証するため、肺組織でのmRNAノックダウンを分析した。より具体的には、定量的TaqMan逆転写ポリメラーゼ連鎖反応により明らかとなった、対応するsiRNAリポプレックスで投与したマウス由来の肺組織でのPKN−3およびTie2 mRNAレベルの減少を図9Cに表す。インビボでリポプレックスに媒介される干渉をインビボで実証するために、CD34 mRNAに標準化した、肺でのTie2またはPKN3 mRNAレベルの相対平均量が示される。対照TIE−2受容体特異的siRNAリポプレックスを平行して試験し、同様に標的特異的mRNAの減少が証明された(図9、右パネル)、しかし、陰性のルシフェラーゼ特異的siRNA−リポプレックスと比較して、腫瘍増殖またはリンパ節転移の形成の有意な阻害を明らかにはならなかった。これらのデータは、PKN3−siRNA−リポプレックスを用いる標的遺伝子特異的治療効果を示す。
【0261】
実施例12:同所性異種移植腫瘍モデルにおけるsiRNA−PKN3(3)−リポプレックスを用いるマウスへの全身投与:投与スケジュールの影響
この実験は、同所性異種移植腫瘍モデルにおけるsiRNA−PKN3−リポプレックス、より具体的にはsiRNA−PKN3(3)リポプレックスを用いるマウスへの全身投与に関して異なる投与スケジュールを試験するために行った。
【0262】
実験用のセットアップは図10Aに表される。各群が9匹のマウスからなる2つの投与群があり、各群はスクロースまたはsiRNA PKN3リポプレックスのいずれかが投与された。前立腺内腫瘍細胞接種の後、35日から53日まで2日に1回または3日に1回、10/7回の静脈内注射を行った。2つの異なるsiRNAリポプレックス用量を次のとおり用いた。1.88/2.8mg/kg siRNA 14.5/21.7mg/kg atuFect01/1% PEG、すなわち14.5/21.7mg/kgの総脂質を含む。
【0263】
結果は、前立腺腫瘍の体積(図10B)およびリンパ節転移の体積(図10C)として表す。両方のパラメータ、腫瘍体積およびLN転移形成について、阻害が観察された、しかし、3日に1回の投与と比較した場合、2日に1回の投与で有効性の有意な増大は観察されなかった。しかし日用量が高くなると(2.8mg/kg siRNA)より顕著な転移形成の阻害が観察される。これらのデータは、siRNAに媒介される阻害が毎日の静脈内投与に制限されず、治療効果は2日に1回の投与で得ることができることを示す。
【0264】
実施例13:同所性異種移植腫瘍モデルにおけるsiRNA−PKN3(3)−リポプレックスを用いるマウスへの全身投与:異なる用量の影響
この実験は、同所性異種移植腫瘍モデルにおいて、異なる用量のsiRNA−PKN3リポプレックスを、このようなリポプレックス、より具体的にはsiRNA−PKN3(3)リポプレックス(図11)、さらにsiRNA−PKN3−23−v1(図17)を用いるマウスへの全身投与に関して試験するために行った。
【0265】
実験用のセットアップは図11Aに表される。各群が10匹のマウスからなる3つの投与群があり、各群はスクロース、siRNA−PKN3リポプレックスまたはリポプレックスのみのいずれかが投与された。前立腺内腫瘍細胞接種の後、28日から46日まで2日に1回、10回の静脈内注射を行った。siRNAリポプレックス用量は次のとおりであった。0.7/1.4/2.8mg/kg siRNA;5.4/10.9/21.7mg/kgの総脂質(リポプレックス中、3群全てを合計:atuFect01/ヘルパー脂質/1% PEG)。2日に1回の静脈内注射により3種類の投与計画を投与した。
【0266】
結果は、前立腺腫瘍の体積(図11B)およびリンパ節転移の体積(図11C)として表す。両方の場合において、1日用量2.8mgまたは1.4mgのsiRNA/kgで有意な阻害が観察され、これらのsiRNA分子に対する治療濃度域を示す。
【0267】
また、siRNA種としてPKN3(3)よりもPKN3−23−v1を含むsiRNA PKN3リポプレックスの場合、各群が7〜8匹のマウスからなる3つの異なる投与群があり、各群に、スクロース、siRNA−PKN3リポプレックスまたはリポプレックスのみが投与された。前立腺内腫瘍細胞接種の後、7日から63日まで、4日に1回、15回の静脈内注射を行った。siRNAリポプレックス用量は、それぞれ1.4mg/kg siRNA(総脂質10.9mg/kg)/および0.7mg/kg siRNA(総脂質5.4mg/kg)であった。
【0268】
結果は、前立腺腫瘍体積(図17B)およびリンパ節転移の体積(図17C)として表す。両方の場合において、用量1.4mgおよび0.7mgのsiRNA/kgでそれぞれ有意な阻害が観察され、これらのsiRNA分子用量に対する治療濃度域を示す。
【0269】
さらに、細胞接種後のマウスの体重が記録され、図17Dに表される。この図から、このような投与計画下ではマウスの体重は減少しないことがわかり、動物の健康の全般的指標である体重によって全体的な毒性効果のないことが示される。
【0270】
[参考文献]
先行技術の様々な文献が本明細書において言及される程度まで、その完全な文献データが次の通り記載されるこのような文献は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
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【0271】
本明細書、特許請求の範囲、配列表および/または図面に開示される本発明の特徴は、別々に、またはそれらの任意の組合せの両方で、本発明をそれらの様々な形態で実現するための材料となってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本鎖構造を含む核酸分子であって、
前記二本鎖構造は、第1の鎖と第2の鎖とを含み、
前記第1の鎖は、隣接するヌクレオチドからなる第1のストレッチを含み、前記第1のストレッチが、標的核酸と少なくとも部分的に相補的であり、かつ
前記第2の鎖は、隣接するヌクレオチドからなる第2のストレッチを含み、前記第2のストレッチが、少なくとも部分的に第1のストレッチと相補的であり、
前記第1のストレッチが、配列番号1(NM_013355)に記載の核酸配列のヌクレオチドコア配列またはその部分と少なくとも部分的に相補的である核酸配列を含み、
前記ヌクレオチドコア配列は、ヌクレオチド配列
配列番号1のヌクレオチド位置482〜500(配列番号2);
配列番号1のヌクレオチド位置1555〜1573(配列番号4);
配列番号1のヌクレオチド位置1556〜1574(配列番号6);
配列番号1のヌクレオチド位置1559〜1577(配列番号8);
配列番号1のヌクレオチド位置1566〜1584(配列番号10);
配列番号1のヌクレオチド位置2094〜2112(配列番号12);
配列番号1のヌクレオチド位置2102〜2120(配列番号14);
配列番号1のヌクレオチド位置2286〜2304(配列番号16);
配列番号1のヌクレオチド位置2761〜2779(配列番号18);
配列番号1のヌクレオチド位置2763〜2781(配列番号20);
配列番号1のヌクレオチド位置2764〜2782(配列番号22);
配列番号1のヌクレオチド位置2843〜2861(配列番号24);
配列番号1のヌクレオチド位置2844〜2862(配列番号26);または
配列番号1のヌクレオチド位置2846〜2864(配列番号28)を含み、
好ましくは、前記ヌクレオチドコア配列は、ヌクレオチド配列
配列番号1のヌクレオチド位置1555〜1573(配列番号4);
配列番号1のヌクレオチド位置1556〜1574(配列番号6);
配列番号1のヌクレオチド位置1559〜1577(配列番号8);
配列番号1のヌクレオチド位置1566〜1584(配列番号10);
配列番号1のヌクレオチド位置2094〜2112(配列番号12);または
配列番号1のヌクレオチド位置2286〜2304(配列番号16)を含み、
好ましくは、前記第1のストレッチが、さらに、前記ヌクレオチドコア配列の5’末端に先行する領域、および/または前記ヌクレオチドコア配列の3’末端の後に続く領域と少なくとも部分的に相補的である核酸分子。
【請求項2】
前記第1のストレッチが、前記ヌクレオチドコア配列またはその一部と相補的である、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記第1のストレッチが、さらに、前記ヌクレオチドコア配列の3’末端の後に続く領域、および/または前記ヌクレオチドコア配列の5’末端に先行する領域と相補的である、請求項1および2のいずれかに記載の核酸。
【請求項4】
前記第1のストレッチが、18を超え29までのヌクレオチド、好ましくは19〜25ヌクレオチド、より好ましくは19〜23ヌクレオチドの標的核酸と相補的である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項5】
前記ヌクレオチドが連続したヌクレオチドである、請求項4に記載の核酸。
【請求項6】
前記第1のストレッチおよび/または第2のストレッチが、18〜29の連続したヌクレオチド、好ましくは19〜25の連続したヌクレオチド、より好ましくは19〜23の連続したヌクレオチドを含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項7】
前記第1の鎖が、前記第1のストレッチからなり、および/または、前記第2の鎖が、前記第2のストレッチからなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項8】
二本鎖構造を含む核酸分子、好ましくは、請求項1〜7のいずれか一項に記載の核酸分子であって、前記二本鎖構造が、第1の鎖と第2の鎖とにより形成され、前記第1の鎖が、隣接するヌクレオチドからなる第1のストレッチを含み、前記第2の鎖が、隣接するヌクレオチドからなる第2のストレッチを含み、前記第1のストレッチが、前記第2のストレッチと少なくとも部分的に相補的であり、
前記第1のストレッチが、配列番号3に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号2に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号5に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号4に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号7に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号6に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号9に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号8に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号11に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号10に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号13に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号12に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号15に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号14に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号17に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号16に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号19に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号18に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号21に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号20に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号23に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号22に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号25に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号24に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号27に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号26に記載のヌクレオチド配列からなり;または
前記第1のストレッチが、配列番号29に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号28に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号31に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号30に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号33に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号32に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号35に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号34に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号37に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号36に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号39に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号38に記載のヌクレオチド配列からなり;
好ましくは、
前記第1のストレッチが、配列番号5に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号4に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号7に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号6に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号9に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号8に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号11に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号10に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号13に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号12に記載のヌクレオチド配列からなり;
前記第1のストレッチが、配列番号17に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号16に記載のヌクレオチド配列からなり、または
前記第1のストレッチが、配列番号31に記載のヌクレオチド配列からなり、前記第2のストレッチが、配列番号30に記載のヌクレオチド配列からなる核酸分子。
【請求項9】
前記第1のストレッチおよび/または前記第2のストレッチが、規則的な位置パターン、好ましくは交互の位置パターンを形成する修飾を2’位に有する複数の群の修飾されたヌクレオチドを含み、好ましくは、前記ストレッチの内部では、修飾されたヌクレオチドの各群が、片側または両側を1つの隣接するヌクレオチドの群によりフランクされ、前記隣接するヌクレオチドの群を形成する隣接するヌクレオチドが、修飾されていないヌクレオチドであるか、または修飾されたヌクレオチドの修飾とは異なる修飾を有するヌクレオチドである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項10】
前記第1のストレッチおよび/または前記第2のストレッチが、修飾されたヌクレオチドの群からなる1つのパターンおよび/または隣接するヌクレオチドの群からなる1つのパターンを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項11】
前記第1のストレッチおよび/または前記第2のストレッチが、3’末端にジヌクレオチドを含み、該ジヌクレオチドが、好ましくはTTである、請求項1〜10、好ましくは、請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項12】
前記第1のストレッチおよび/または前記第2のストレッチの長さが、19〜21ヌクレオチドからなる、請求項11に記載の核酸。
【請求項13】
前記第1のストレッチおよび/または前記第2のストレッチが、3’末端に1〜5ヌクレオチドのオーバーハングを含む、請求項1〜10、好ましくは、請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項14】
前記二本鎖構造の長さが、約16〜24ヌクレオチド対、好ましくは、20〜22ヌクレオチド対である、請求項13に記載の核酸。
【請求項15】
前記第1の鎖と前記第2の鎖とが、相互に共有結合し、好ましくは、前記第1の鎖の3’末端が前記第2の鎖の5’末端に共有結合している、請求項1〜14のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項16】
前記分子が、次の2本の鎖の各々
【化1A】

【化1B】

好ましくは、
【化2】

からなり、下線を引いたヌクレオチドが2’−O−メチルである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の核酸を含むリポソーム製剤。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の核酸と、リポソームとを含むリポプレックス。
【請求項19】
前記リポソームが、
a)約50モル%のβ−アルギニル−2,3−ジアミノプロピオン酸−N−パルミチル−N−オレイル−アミドトリヒドロクロリド、好ましくは、(β−(L−アルギニル)−2,3−L−ジアミノプロピオン酸−N−パルミチル−N−オレイル−アミドトリ−ヒドロクロリド);
b)約48〜49モル%の1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPhyPE);および
c)約1〜2モル%の1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−ポリエチレン−グリコール、好ましくは、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンナトリウム塩
からなる、請求項18に記載のリポプレックス。
【請求項20】
前記リポプレックスのゼータ電位が、約3540〜6055mV、好ましくは約45〜50mVである、請求項19に記載のリポプレックス。
【請求項21】
QELSにより測定されるリポプレックスのサイズが、約50〜400nm、好ましくは約100〜140nm、より好ましくは約110nm〜130nmである、請求項19または20に記載のリポプレックス。
【請求項22】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の核酸を含むまたはコードするベクター、好ましくは発現ベクター。
【請求項23】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の核酸、または請求項22に記載のベクターを含む細胞。
【請求項24】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の核酸、請求項17に記載のリポソーム製剤、18〜21のいずれか一項に記載のリポプレックス、請求項22に記載のベクターおよび/または請求項23に記載の細胞を含む組成物、好ましくは、医薬組成物。
【請求項25】
前記組成物が、任意選択的に、医薬品として許容されるビヒクルをさらに含む、医薬組成物である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が医薬組成物であり、前記医薬組成物が、血管新生依存性疾患、好ましくは、不十分、異常もしくは過剰な血管新生により特徴付けられるか、またはそれらに起因する疾患の治療のためのものである、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記血管新生が、脂肪組織、皮膚、心臓、眼、肺、腸、生殖器、骨および関節の血管新生である、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記疾患が、感染症、自己免疫障害、血管奇形、アテローム性動脈硬化症、移植後動脈疾患、肥満、乾癬、疣贅、アレルギー性皮膚炎、持続性過形成硝子体症候群、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、加齢性黄斑疾患、脈絡膜血管新生、原発性肺高血圧症、喘息、鼻茸、炎症性腸疾患および歯周病、腹水、腹膜癒着、子宮内膜症、子宮出血、卵巣嚢胞、卵巣、卵巣過剰刺激、関節炎、滑膜炎、骨髄炎、骨棘形成を含む群から選択される、請求項26または27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
腫瘍性疾患、好ましくはがん疾患、より好ましくは固形腫瘍の治療のための、請求項25〜28のいずれか一項、好ましくは、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項30】
骨癌、乳癌、前立腺癌、消化器系の癌、結腸直腸癌、肝癌、肺癌、腎癌、泌尿生殖器癌、膵癌、下垂体癌、精巣癌、眼窩癌、頭頸部癌、中枢神経系の癌および呼吸器系の癌を含む群から選択される疾患の治療のための、請求項25〜29のいずれか一項、好ましくは請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の核酸、請求項17に記載のリポソーム製剤、請求項18〜21のいずれか一項に記載のリポプレックス、請求項22に記載のベクターおよび/または請求項23に記載の細胞の、薬剤の製造のための使用。
【請求項32】
前記薬剤が、請求項26〜30のいずれか一項に定義されるいずれかの疾患の治療のためのものである、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記薬剤が、1種または数種類の他の治療と併用して用いられる、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記治療法が、化学療法、寒冷療法、温熱療法、抗体療法、放射線療法および抗血管新生療法を含む群から選択される、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記治療法が抗体療法であり、より好ましくは、抗VEGF抗体または抗アンジオポエチン抗体を用いる抗体療法である、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記抗血管新生療法が、キナーゼ受容体阻害剤、好ましくはチロシンキナーゼ受容体阻害剤を使用し、該受容体が、VEGF受容体、PDGF受容体、Tie−2、FGFRおよびEGFRを含む群から選択される、請求項34に記載の使用。
【請求項37】
前記阻害剤が、siRNA、アンチセンス分子、アプタマー、スピーゲルマー、高親和性結合ペプチド、ペプチドアプタマー、アンチカリンおよび抗体を含む群から選択される、請求項36に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2009−544281(P2009−544281A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519879(P2009−519879)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006492
【国際公開番号】WO2008/009477
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(505047256)サイレンス・セラピューティクス・アーゲー (13)
【氏名又は名称原語表記】SILENCE THERAPEUTICS AG
【Fターム(参考)】