説明

プロトン伝導体薄膜の形成方法

【課題】水素透過性金属であるPdとの界面に酸化膜を介在させずに、表面凹凸を抑えたプロトン伝導体薄膜を形成した構造を作製する方法を提供すること。
【解決手段】水素透過性電極101としてのパラジウム上へ塗布によって第一のプロトン伝導体膜102を塗布、乾燥、焼成を酸素雰囲気で行い結晶化させる第一のプロトン伝導体層102形成工程と、冷却後に塗布によって第二のプロトン伝導体層103を形成する工程とからなり、第二のプロトン伝導体層103を形成する工程は焼成温度に上昇後に酸化性ガスから不活性ガスに切り替えて行い、第二のプロトン伝導体層103を形成する工程における焼成温度が第一のプロトン伝導体層を形成する工程における焼成温度よりも低温で行われる。その結果Pdの酸化膜を介在することなく表面が平滑なプロトン伝導体膜を形成する事が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水素センサーやプロトンを用いる燃料電池やキャパシタ等のデバイスにおいて、プロトン伝導体薄膜を水素透過金属上に形成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロトン伝導体を用いた燃料電池が実用化されてきている。高分子固体電解質を用いた固体高分子形燃料電池(PEFC)や、リン酸をプロトン伝導体として用いたリン酸形燃料電池(PAFC)等が実用化されてきている。
【0003】
近年、プロトンを伝導キャリアとするABO3で表される構造の(A,Bは金属)ペロブスカイト型固体酸化物をプロトン伝導体として用いた、固体酸化物形の研究開発が進められてきている。高分子固体電解質やリン酸に較べて、高温でプロトン伝導するため燃料電池の効率動作化に向けて研究開発が行われてきている。一方で酸素イオンを伝導キャリアとした固体酸化物形燃料電池(SOFC)に較べて、動作温度の低温化が期待できるが、ペロブスカイト型(ABO3型:A,Bは金属)酸化物プロトン伝導体は発見されてからの歴史が浅く、まだ研究開発の途上である。
【0004】
またプロトン電解質の両端を電極で挟み込み、両端の水素濃度の濃淡に起因した起電力の発生を利用した水素センサーの研究開発も行われてきている。
【0005】
近年、このペロブスカイト型酸化物を薄膜化することによって、発電密度の向上と動作温度の低温化を図ったプロトン伝導体を用いた固体酸化物形の燃料電池の開発が行われてきており、プロトン伝導体を水素透過性の基板や電極上に形成する方法が開示されている(例えば特許文献1、2)。
【0006】
特許文献1および特許文献2によれば、パラジウムやバナジウムからなる水素透過性金属により基材を作製し、その後基材表面にプロトン伝導性酸化物のアモルファス性セラミックス成膜を行い、その後レーザーで表面を加熱している。
【0007】
このような方法をとることによって、基材とセラミックス膜との同時加熱を回避して、金属表面の微細な凹凸や膜の不均一化や応力発生やひび割れを回避するとしている。
【0008】
具体的には特許文献2によれば、水素透過性金属の基材を形成した後、アモルファス層を形成する。このプロトン伝導体酸化物のアモルファス層はCVD,PVD,ゾルゲル法により形成するとしている。
【0009】
このアモルファス層の形成は400℃までの温度で行う事が望ましい事が開示されている。
【0010】
その後アモルファス層のみにレーザー照射することによってアモルファス層を形成せしめ、水素透過性基材との界面にアモルファス層を残した状態と結晶化層からなるプロトン伝導層を形成している。
【0011】
このアモルファス層の存在が応力やクラックの発生を抑制するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−5088号公報
【特許文献2】特開2009−32701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前記従来の構成では、プロトン伝導性金属基材との界面にアモルファス層のプロトン伝導体層が存在することとなる。ABO3であらわされるプロトン伝導体(A,Bは金属)のプロトン伝導性は結晶性と密接な関係があり、アモルファス状態であるとプロトン伝導性は低下する。
【0014】
また、パラジウム等の金属は常圧の酸素存在下では、350℃程度から酸化が生じてしまい、水素透過性金属表面の凹凸および体積変化が生じ、プロトン伝導膜に応力が生じることとなるとともに、プロトン伝導体の形成プロセス条件が400℃程度以下あるいは酸素分圧が低い条件に限定されることとなる。このようなプロセス条件制限はプロトン伝導体の結晶性の向上を阻害する要因となる。
【0015】
ゾルゲル法や塗布法によるプロトン伝導体の形成では、常圧で行うために特にパラジウムの酸化とプロトン伝導体の結晶性向上が課題となる。
【0016】
特にパラジウムは水素透過性に優れるが、プロセス中の酸化による体積変化をいかに緩和するかが重要である。
【0017】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、水素透過性基材と強固に密着させた構造とプロトン伝導体の結晶性を向上させる作製方法を提供することを目的とする。特に水素透過性金属であるパラジウムを用いたときに、パラジウム酸化膜を介在させずにプロトン伝導体を形成した構造を得る方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記従来の課題を解決するために、本発明のプロトン伝導体薄膜の形成方法では、パラジウム膜を形成する工程、パラジウム膜上に塗布によってプロトン伝導体膜を塗布、乾燥、焼成を酸素雰囲気で行い結晶化させる第一のプロトン伝導体層形成工程と、冷却後に塗布によってプロトン伝導体層を形成する第二の工程とからなり、第二の工程は焼成温度に上昇後に酸化性ガスから不活性ガスに切り替えて行うことを特徴としており、第二の焼成温度が第一の焼成温度よりも低温であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明のプロトン伝導体膜の形成方法によれば、パラジウム膜を形成する工程、パラジウム膜上に塗布によってプロトン伝導体膜を塗布、乾燥、焼成を酸素雰囲気で行い結晶化させる第一のプロトン伝導体層形成工程と、冷却後に塗布によってプロトン伝導体層を形成する第二の工程とからなり、第二の工程は焼成温度に上昇後に酸化性ガスから不活性ガスに切り替えて行う。この時、第一のプロトン伝導体層形成工程における焼成温度が第二のプロトン伝導体層の形成工程の焼成温度よりも高いことを特徴としている。
【0020】
以上のプロトン伝導体薄膜の形成方法によって、結晶性の良いプロトン伝導体膜とパラジウム膜がパラジウム酸化膜の介在のない状態での接合体を形成することが可能となる。
【0021】
また、パラジウム、プロトン伝導体界面は微細な凹凸が形成された状態であるために、構造的に安定な接合体とすることが可能となるとともに、プロトン伝導体薄膜表面の凹凸は抑えられた状態となるため、燃料電池や水素センサー等のプロトン伝導体薄膜表面への電極形成が容易になり、電極の厚みを薄く抑えられることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1におけるプロトン伝導体薄膜の形成方法を示す工程図
【図2】本発明の実施例におけるプロトン伝導体薄膜およびPd電極のX線回折図
【図3】本発明の実施例において形成されたPd電極上のプロトン伝導体薄膜のX線回折図
【図4】従来の実施の形態を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるプロトン伝導体薄膜の形成方法を示す工程図である。
【0025】
図1において、101は水素透過性電極、102は第一のプロトン伝導体層である。103は第二のプロトン伝導体層である。
【0026】
水素透過性電極101として準備されたPd基材上に、塗布法によってプロトン伝導体層102を形成する第一の工程と、プロトン伝導体層102を形成した後、さらにプロトン伝導体層103を形成する第二の工程とから本発明のプロトン伝導体薄膜の形成方法は構成される。
【0027】
さらに詳細には、第一のプロトン伝導体層形成工程は、プロトン伝導体102の構成元素の有機化合物溶液を塗布する工程と、乾燥、予備焼成、本焼成からなっている。乾燥温度は有機化合物溶液に用いられる原料や溶媒によって決定されるが、通常100℃から200℃で実施される。また予備焼成は有機化合物の分解、脱離を生じさせる工程であり、400℃から500℃程度の温度で実施される。その後本焼成を酸素中700℃でおこなう。この第一のプロトン伝導体層形成工程において、乾燥、予備焼成は大気中でおこなった。
【0028】
次に冷却後、第二のプロトン伝導体層103形成工程として、第一のプロトン伝導体層102形成工程と同様に、塗布、乾燥、予備焼成、本焼成を行うことによって第二のプロトン伝導体層103を形成する。このとき、本焼成を第一のプロトン伝導体層102形成工程における本焼成温度よりも低い温度に設定する。さらに、本焼成時の雰囲気を酸素雰囲気から不活性雰囲気に変化させることによって実行する。
【0029】
以上のようなプロトン伝導体層の形成方法によれば、第一のプロトン伝導体層102の形成工程によって、水素透過性電極101であるPdは酸化されると同時に第一のプロトン伝導体層102が結晶化した状態で水素透過性電極上に形成される。この状態では、水素透過性電極101と第一のプロトン伝導体層102の界面および第一のプロトン伝導体層102の表面は非常に凹凸が大きな状態となる。
【0030】
その後第二のプロトン伝導体層103を第一のプロトン伝導体層102上に形成することになるが、非常に表面凹凸が大きな状態である第一のプロトン伝導体層102表面に原料溶液を塗布し第二のプロトン伝導体層103を形成するために自己整合的に表面粗さは低減した状態となる。さらに、第二のプロトン伝導体層103形成工程において本焼成温度を第一のプロトン伝導体層102形成工程における本焼成温度よりも低い温度に設定するために、第一のプロトン伝導体層102形成時の凹凸よりも大きくなる事はない。また、結晶化された第一のプロトン伝導体層102上に第二のプロトン伝導体層103を形成するために、結晶の成長の核となるため結晶化が起こりやすい状態となる。
【0031】
さらに、第二のプロトン伝導体層103形成工程における本焼成時に、酸化雰囲気から不活性雰囲気とすることによって、酸化していたPdが酸素を放出して第一のプロトン伝導体層102および第二のプロトン伝導体層103に酸素が移動することによって、最終的に第一のプロトン伝導体層102と第二のプロトン伝導体層103が結晶性よく形成された状態となると同時に、水素透過性電極101であるPdの酸化が無い状態での界面が形成されることとなる。
【0032】
以上のように本発明におけるプロトン伝導体薄膜の形成方法によれば、これまで、不可能であると考えられてきた、常圧酸化性雰囲気プロセスにおいてPd基材上へプロトン伝導体薄膜を、Pdの酸化膜の介在無しに形成することが可能になるとともに、プロトン伝導体薄膜表面の凹凸が小さい状態で形成する事が可能となるために、燃料電池や水素センサー等の薄膜デバイス実現に必要な水素透過性基板への密着性と表面平滑性を併せもつ構造が提供できることとなる。
【0033】
なお、本実施の形態では水素透過性電極としてPdを例にあげたが、Pd−Ag合金でも同様な効果が達成される。
【0034】
(実施例1)
以下に本発明におけるプロトン伝導体薄膜の形成方法について詳細に説明する。
【0035】
図1において、水素透過性電極を準備した。水素透過性電極101としてはPd金属箔を用いた。25ミクロン厚のPd箔をインコネル合金製支持板(図示なし)にロウ付けにて固定した。固定されたPd箔の表面は平坦にするためにシリカコロイドスラリーを用いて研磨した。
【0036】
得られたPd箔の表面粗さはRt=0.1ミクロン程度を有していた。
【0037】
以下に第一のプロトン伝導体層102の形成工程について説明する。
【0038】
表面が研磨されたPd箔上に、プロトン伝導体の前駆体として、高純度化学製MOD材料をスピンコート法にて塗布した。プロトン伝導体組成としてはSrZr0.9Y0.1O3となるように、構成金属量を調整したMOD材料を用いた。
【0039】
MOD材料の塗布条件は前駆体滴下後、毎分500回転で10秒、その後、毎分3000回転で30秒間回転させることによって形成された。これらの作業は大気中で行い、スピン塗布した後、直ちに150℃に加熱したホットプレート上で5分間乾燥させた。
【0040】
ホットプレート上で乾燥させた後、450℃に加熱したホットプレート上へ移動させ、予備焼成を大気中で10分間行った。このとき既に、Pdは酸化して銀白色の金属光沢から茶褐色がかった色へと変化し、X線回折による分析からもPdが酸化していることが確認された。
【0041】
このサンプルを高速熱処理炉(RTA)に移動し、本焼成を行った。本焼成条件は、焼成炉を真空脱気した後酸素で置換し、50℃毎秒のレートで700℃まで加熱して、1分保持することによって行った。加熱中は酸素フローで行った。
【0042】
得られたサンプルのX線回折分析から、Pdは酸化した状態で存在し、塗布によって形成された膜はペロブスカイト型の回折図形を示しており、結晶化が起こりSrZr0.9Y0.1O3組成のプロトン伝導性膜が形成されていた。
【0043】
またこの本焼成の温度を600℃から800℃まで変化させたところ、予備焼成温度である450℃ではペロブスカイト型の回折ピークは存在しないが、600℃焼成によって結晶化が生じている事が判明した。
【0044】
以上の工程から第一のプロトン伝導体層102の形成は完了した。
【0045】
本工程において、プロトン伝導体前駆体としてMOD材料を用いたが、溶液を利用するゾルゲル法でも同様な効果が発揮できる。
【0046】
次にこのサンプルを冷却した後、第二のプロトン伝導体層103の形成を行うが、その方法について以下に説明する。
【0047】
第一のプロトン伝導体層102の形成工程を経たサンプルは、Pdが酸化と第一のプロトン伝導体層102が結晶化することによって、水素透過性電極101として準備したPdの表面粗さRtと比較すると、大きなRtを持った状態であった。このサンプル上へMOD材料を用いて第一のプロトン伝導体層102の形成工程と同様の方法で第二のプロトン伝導体層103の形成を実施した。
【0048】
第一のプロトン伝導体層102の形成方法と異なる点は、本焼成時に次のような方法で結晶化を達成させた事にある。
【0049】
予備焼成まで実施されたサンプルをRTA装置にセットし、600℃で1分間の焼成を酸素中で行った。この時、第二のプロトン伝導体層103の本焼成温度は第一のプロトン伝導体層102の本焼成温度より低く設定した。第一のプロトン伝導体層102は既に結晶化した状態であるので、第一のプロトン伝導体層102の結晶化に必要な温度よりも低く設定できることを見出した。また低く本焼成温度を設定できるため、水素透過性電極101および第一のプロトン伝導体層102の凹凸が第一のプロトン伝導体層102の形成工程終了時より大きくなることは無く、第一のプロトン伝導体層102表面の凹凸に応じて自己整合的に表面凹凸がレべリングされるため、第二のプロトン伝導体層103形成工程によって表面凹凸Rt値は減少した。
【0050】
さらに600℃で保持したまま、酸素フローから窒素フローに切り替え、充分雰囲気ガスが入れ替わる時間として5分保持した後、降温した。
【0051】
得られたサンプルをX線回折によって測定したところ、PdOの酸素は放出されている事が判明し、Pd金属上にSrZr0.9Y0.1O3の薄膜が形成されている構造となっていることが判明した。
【0052】
以上の様に本発明におけるプロトン伝導体薄膜の形成方法によれば、PdOを介在させることなくペロブスカイト型プロトン伝導体薄膜を形成させる事が可能となる。
【0053】
なお、本実施例では、プロトン伝導体の組成としてSrZr0.9Y0.1O3を用いたが、AサイトがBa等のアルカリ土類金属、BサイトがZrやCe等の4価金属、置換元素としてYやIn等の三価金属等で置換した類似系であれば同様の効果が得られることとなる。
【0054】
また本発明における、プロトン伝導体薄膜103の表面凹凸の低減効果については次の比較例で説明する。
【0055】
(比較例)
次に本発明におけるプロトン伝導体薄膜の形成方法において、水素透過電極101として使用したPd金属およびプロトン伝導体薄膜103の表面凹凸を比較検討した結果について以下に詳述する。
【0056】
水素透過性電極101として用いたPdの凹凸の影響がわかりやすいように次のような比較実験を行った。酸化膜を100nm形成したSi基板上にTiを密着層としてPdをスパッタリング法によって形成した。Tiの膜厚は約3nmであり、Pd膜厚は100nm形成した。
【0057】
まず、Pd形成後の表面粗さを表面粗さ計によって測定したところ、Rtが4.6nmであった。
【0058】
次にこの基板を用いて第一のプロトン伝導体層の形成をMOD溶液によって行った。このとき、スピンコート法によってMOD溶液を実施例と同一条件でスピン塗布後、乾燥し、予備焼成を行った。
【0059】
第一例は次のようなレシピで行った。
【0060】
予備焼成後、サンプルを冷却した後、再度第二のプロトン伝導体層としてPd金属上へMOD溶液を塗布、乾燥、予備焼成して準備し、その後RTAによって本焼成を行った。本焼成温度は700℃酸素中1分とし、その後温度を維持したまま雰囲気を窒素雰囲気に変更して5分保持した後に冷却してサンプルを作製した。
【0061】
次に第二例は次のようなレシピで行った。
【0062】
第二例は本発明における実施例と同様であり、第一のプロトン伝導体層を形成する工程では、本焼成を700℃1分酸素中で行った後、第二のプロトン伝導体層を形成する工程を行った。第二のプロトン伝導体層の本焼成温度は600℃であり、酸素雰囲気で1分焼成した後、窒素雰囲気へと変更して5分保持した後冷却してサンプルを作製した。
【0063】
以上のように作製された、第一例および第二例は、X線回折分析からは、いずれもPdの酸化膜が無い状態でプロトン伝導体膜が形成されていることが判明した。
【0064】
しかしながら、第一例の表面粗さRtは26.5nmであり、非常に凹凸が激しい状態となっていることが判った。このような状態ではプロトン伝導体上部への電極形成に支障がでるだけでなく、プロトン伝導体のクラックやピンホールといった状態が懸念されることとなる。
【0065】
一方、第二例では、表面粗さRtは8.6nmに抑えられ、このRtは電極のみの場合に較べて若干増大しているものの、プロトン伝導体膜厚である150nmに較べて非常に低い値に抑えられている事が判った。
【0066】
【表1】

【0067】
以上のように、本発明におけるプロトン伝導体薄膜の形成方法では、二段階に本焼成を導入することによって、プロトン伝導体薄膜表面の凹凸を抑える事が可能となるとともに、第一のプロトン伝導体層形成時に形成された凹凸によって、Pd電極とプロトン伝導体は接着面積が大きくなった状態とする事が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明にかかるプロトン伝導体薄膜の形成方法は、プロトンを用いる燃料電池、水素センサー等の電気化学デバイスを形成する上で有用である。
【符号の説明】
【0069】
101 水素透過性電極
102 第一のプロトン伝導体層
103 第二のプロトン伝導体層
201 水素透過性基材
202 アモルファス層
203 電解質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素透過性基材として準備されたパラジウム膜上へのプロトン伝導体薄膜の形成方法に関しており、
パラジウム膜上に塗布によって第一のプロトン伝導体膜を塗布、乾燥、焼成を酸素雰囲気で行い結晶化させる第一のプロトン伝導体層形成工程と、
冷却後に塗布によって第二のプロトン伝導体層を形成する工程とからなり、第二のプロトン伝導体層を形成する工程は焼成温度に上昇後に酸化性ガスから不活性ガスに切り替えて行うことを特徴としており、第二のプロトン伝導体層を形成する工程における焼成温度が第一のプロトン伝導体層を形成する工程における焼成温度よりも低温で行われる事を特徴とする水素透過基材上へのプロトン伝導体薄膜の形成方法。
【請求項2】
請求項1記載のプロトン伝導体薄膜の形成方法に関しており、プロトン伝導体薄膜がABO3(A,Bともに金属)型で表記されるペロブスカイト型構造であることを特徴とするプロトン伝導体薄膜の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−198478(P2011−198478A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60585(P2010−60585)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】