説明

プロトン伝導性材料

高度にフッ素化されていてもよく、かつポリマーであってもよいビススルホニルイミド基を有する化合物を含む、イオノマー又はポリマーイオノマーとして有用であり得る材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本開示は、2008年4月24日に出願された米国特許仮出願第61/047643号の利益を主張する。
【0002】
(政府の権利)
本開示は、DOEにより付与された共同契約DE−FG36−07GO17006の下、政府の支援により行われた。政府は本開示における所定の権利を有する。
【0003】
(発明の分野)
本開示は、イオノマー又はポリマーイオノマーとして有用であり得る材料に関する。
【背景技術】
【0004】
自動車用途を含むいくつかの用途では、燃料セルを例えば120℃付近等のより高い温度で作動させることが所望されており、これは一部には、排熱を改善する一方で冷却システムを簡素化することを目的としている。より高い温度は、熱及び動力システムの組み合わせにおける廃熱の使用において効率の向上も提供し得る。より高い温度で作動させることにより、改良燃料を使用する際のCO被毒に対する触媒抵抗も改善され得る。いくつかの用途において、プロトン交換膜(PEM)における水和レベルを上昇させるために、流入する反応性ガス流の加湿が行われているが、加湿器はシステムの初期費用を加算し、また作動中の寄生動力損失(parasitic power loss)を増大させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加湿は高い温度で益々困難となり、それ故、水を殆ど又は全く有さずにプロトンを効率的に移動させる、本質的により高い伝導性を有する材料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
簡略的に、本開示は、式
(R−O−)−P(=O)−Ar−SONH−SO−R
(式中、各Rは、独立して、水素、ヘテロ原子を含んでもよくかつ置換されていてもよいアルキル、アルキレン又はアリール基、ポリマー類、金属、金属酸化物、金属リン酸塩、金属ホスホン酸塩及び無機粒子からなる群より選択され、mは0又は1であり、Arは、複素環及び多環を含んでもよくかつ置換されていてもよい芳香族基であり、Rは、ヘテロ原子を含んでもよくかつ置換されていてもよいアルキル、アルキレン又はアリール基、及びポリマー類からなる群より選択される)による化合物を提供する。いくつかの実施形態において、Arはフェニレンである。いくつかの実施形態において、Arはフェニレン−Rであり、ここでRは、水素、アルキル、複素環及び多環を含みかつ置換されていてもよいアルキレン又はアリール基、及びポリマー類からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、Rはフルオロポリマーである。いくつかの実施形態において、Rは、スルホン酸基及びホスホン酸基からなる群より選択される1つ以上の酸性基で置換されている。
【0007】
別の態様において、本開示は、式
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、各Rは、金属、金属酸化物、金属リン酸塩、金属ホスホン酸塩及び無機粒子からなる群より選択され、mは0又は1であり、Arは、複素環及び多環を含んでもよくかつ置換されていてもよい芳香族基であり、Rは、ヘテロ原子を含んでもよくかつ置換されていてもよいアルキル、アルキレン又はアリール基、及びポリマー類からなる群より選択される)による化合物を提供する。いくつかの実施形態において、Arはフェニレンである。いくつかの実施形態において、Arはフェニレン−Rであり、ここでRは、水素、アルキル、複素環及び多環を含みかつ置換されていてもよいアルキレン又はアリール基、及びポリマー類からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、Rはフルオロポリマーである。いくつかの実施形態において、Rは、スルホン酸基及びホスホン酸基からなる群より選択される1つ以上の酸性基で置換されている。いくつかの実施形態において、1つ以上の又は全部のRは金属又は金属酸化物であり、ここで金属は、Zr、Ti、Th、及びSnからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、1つ以上の又は全部のRは金属又は金属酸化物であり、ここで金属は、四価金属からなる群より選択される。
【0010】
別の態様において、本開示は、式
−Ar−SONH−SO−R
(式中、各Rは、独立して、水素、ヘテロ原子を含んでもよくかつ置換されていてもよいアルキル、アルキレン又はアリール基、ポリマー類、金属、金属酸化物、金属リン酸塩、金属ホスホン酸塩及び無機粒子からなる群より選択され、nは1、2又は3であり、Arは、複素環及び多環を含んでもよくかつ置換されていてもよい芳香族基であり、Rは、ヘテロ原子を含んでもよくかつ置換されていてもよいアルキル、アルキレン又はアリール基、及びポリマー類からなる群より選択される)による化合物を提供する。いくつかの実施形態において、Arはフェニレンである。いくつかの実施形態において、Arはフェニレン−Rであり、ここでRは、水素、ヘテロ原子を含んでもよくかつ置換されていてもよいアルキル、アルキレン又はアリール基、及びポリマー類からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、Rはフルオロポリマーである。いくつかの実施形態において、Rは、スルホン酸基及びホスホン酸基からなる群より選択される1つ以上の酸性基で置換されている。
【0011】
別の態様において、本開示は、高度にフッ素化された主鎖と、式
−SO−NH−SO−ArA
(式中、Arは、複素環及び多環を含んでもよくかつ置換されていてもよい、5〜24個の炭素原子からなる芳香族基であり、Aは、−SOH及びPOからなる群より選択され、nは1〜qであり、qは、Arの炭素数の半分である)による基を含む第1のペンダント基とを含むポリマー電解質を提供する。いくつかの実施形態において、ポリマー電解質は、過フッ素化主鎖を含む。いくつかの実施形態において、ポリマー電解質は、式−SOHによる基を含む第2のペンダント基を含む。いくつかの実施形態において、第1のペンダント基と第2のペンダント基との比はpであり、pは0.01〜100、0.1〜10、0.1〜1又は1〜10である。
【0012】
別の態様において、本開示は、更に多孔質担体を含み又は更に架橋されていてもよい、本発明のポリマー電解質を含むポリマー電解質膜又は膜電極アセンブリを提供する。
【0013】
本願において、
ポリマーの「当量」(又は「EW」)は、1当量の塩基を中和するポリマーの重量を意味する(燃料セル内でのポリマーの使用中に酸性官能基に変換されるハロゲン化スルホニル置換基又は他の置換基が存在する場合、「当量」はそれらの基が加水分解された後の当量を指すことができる)
「高度にフッ素化された」は、40重量%以上、典型的には50重量%以上、及びより典型的には60重量%以上の量でフッ素を含有することを意味し、並びに
「置換」は、化学種においては、所望の製品又はプロセスを干渉しない、従来の置換基によって置換されることを意味し、例えば、これらの置換基はアルキル、アルコキシ、アリール、フェニル、ハロ(F、Cl、Br、I)、シアノ、ニトロ等であってよい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、スルホンアミド、ビススルホニルイミド、及びホスホン酸結合を使用した材料の共有結合を介して酸含有物に結合されたポリマー類、粒子、及び小分子を含む材料の製造に関する。
【0015】
別の態様において、本開示は、増大された数の強力な酸性基を有する燃料セル膜材料に関し、いくつかの実施形態では、該材料はこれらの酸含有分子を酸含有有機分子、金属酸化物又はリン酸塩粒子、金属縁、ヘテロポリ酸等と反応させて形成される。
【0016】
本開示の別の態様は、これらの多官能性材料を使用して、機械特性の改善のため、又は構成成分の浸出を最小にするための架橋構造を作り上げることを含む。
【0017】
本開示に教示される材料は、例えばプロトン交換膜(PEM)の製造、又は触媒添加物として、又は燃料セルの過酷な環境内にて高温で作動される間に熱的及び化学的に頑強であり、かつ低い水和状態の間にプロトンを有意に高いレベルの結合酸性基により伝導するよう設計された結合層(tie layer)中での燃料セル用途に使用することができる。
【0018】
本開示は、芳香族基を有するビススルホニルイミド基にスルホン酸基を変換し、これを更なる酸性基(伝導性の改善のため)又はホスホン酸基若しくはシラン基(ヘテロポリ酸の結合、ジルコニア又はリン酸ジルコニル等の無機粒子の結合、又はシリカ粒子の結合のため)の結合により更に修飾してもよい、PFSAポリマー又は他のポリマーの修飾を記載する。
【0019】
この基は、架橋を形成するためにも使用することができる。架橋は、二官能性反応物の使用により達成することができる。例には、アンモニア、ベンゼンジスルホニルクロリド、ナフタレンジスルホニルクロリドスルホン酸ナトリウム塩、ビス(フェニルジスルホニル無水物)及びジスルホンアミド(例えば、ベンゼンジスルホンアミド)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
以下は、可能な結合反応を詳細する2つの概略図である。
【0021】
【化2】

【0022】
有用な反応性基には、ハロゲン化物、ハロゲン化スルホニル、ジスルホニル無水物(disulfonyl anhydrides)、スルホンアミド、アミン、ホスホン酸ジオール(phosphonic diols)、酸及びエステル、タングステンを含むジオール等が挙げられる。
【0023】
芳香族基は、任意の好適な方法によりスルホン化することができる。芳香族基は、NaSO、クロロスルホン酸、トリメチルシリルスルホン酸、硫酸、又は他のスルホン化剤の使用によりスルホン化することができる。
【0024】
本開示は更に、ビススルホニルイミドを含む小分子と、例えばHPA又は粒子等の無機部分との結合と、これらの化合物の合成方法とを記載する。
【0025】
本開示は、2008年12月23日に出願された米国特許出願第12/342,370号、2007年10月23日に発行された米国特許第7,285,349号、2008年3月25日に発行された米国特許第7,348,088号、2004年4月27日に発行された米国特許第6,727,386号、2005年3月8日に発行された米国特許第6,863,838号、及び2000年7月18日に発行された米国特許第6,090,895号の開示を参照により組み込む。
【0026】
本開示によるポリマー類は、2007年2月20日に発行された米国特許第7,179,847号、2009年4月7日に発行された米国特許第7,514,481号、2007年9月4日に発行された米国特許第7,265,162号、2006年7月11日に発行された米国特許第7,074,841号、2008年10月14日に発行された米国特許第7,435,498号、2007年8月21日に発行された米国特許第7,259,208号、2008年8月12日に発行された米国特許第7,411,022号、2006年6月13日に発行された米国特許第7,060,756号、2006年9月26日に発行された米国特許第7,112,614号、2006年6月13日に発行された米国特許第7,060,738号、2007年2月6日に発行された米国特許第7,173,067号、及び2008年2月5日に発行された米国特許第7,326,737号に開示された方法を含んでもよい任意の好適な方法により架橋されてもよい。
【0027】
本開示の範囲は、燃料セルでの使用以外の用途が想像され得るため、ポリマー電解質又は燃料セル用途のみに限定されるべきではない。
【0028】
本開示の目的及び利点は以下の実施例によって更に例証されるが、これらの実施例に引用された特定の物質及び量、並びにその他の条件及び詳細は、本開示を過度に制限すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0029】
他に言及のない限り、全ての試薬はMilwaukee,WIのAldrich Chemical Co.から得た若しくは入手可能であり、又は既知の方法によって合成してもよい。
【0030】
実施例1:スルホンアミド官能性ポリマー
以下に図で示すように、ペンダントフッ化スルホニル基を有するポリマーをアンモニアと反応させた後、イオン交換して、スルホンアミド官能性ポリマーを形成した。図示するように、スルホンアミドの第2の−SOF基との反応により、イミド架橋の形成を含む副反応が起こり得る。
【0031】
【化3】

【0032】
使用されたポリマーは、米国特許出願第10/322,254号、同第10/322,226号及び同第10/325,278号に記載されているテトラフルオロエチレン(TFE)とFSO−CFCFCFCF−O−CF=CFとのコポリマーであった。約23gの約680EWのポリマーと800EWのポリマーとの90/10ブレンドを、150gのアセトニトリルと共に600mLのParrボンベ内に配置した。ボンベを密封し、排気し、ゆっくり撹拌しながら−20Cに冷却した。アンモニアを275.8kPa(40psig)まで加え、温度を5C未満にて6時間保った。次いで、これを一夜で室温まで暖まらせた。
【0033】
容器を開放し、灰色固体ポリマーを分離し、適度に暖めながら108gのメタノール及び20gのDI水に溶解した。
【0034】
無色透明の溶液に、5.7gの水酸化リチウム一水和物と40gのDI水とを加え、適度に加熱しながらロール混合した。
【0035】
次いで、溶液を、酸性化し濯いだアンバーライトIR−120イオン交換ビーズに全6回暴露して、ポリマーを含有する溶液のpHを約3に低下させた。より低いpHを有する溶液のNMRスペクトルは、−115.7の小さいスルホン酸ピークを伴う実質的なスルホンアミドピークを−115.0に示し、ピーク積分比は12対1である。溶液を60℃で一夜乾燥して、12.1gの薄黄色固体を得た。次いで、ポリマーをアセトニトリルに再溶解し、静置し、沈降させた。溶解した部分を再度塗布し、乾燥し、8.7gの黄色がかった、僅かに濁った堅いフィルムを得た。
【0036】
実施例2:
【0037】
【化4】

【0038】
1.51gの実施例1のスルホンアミド官能性過フルオロポリマーを、13.7gの乾燥アセトニトリルに溶解した。0.85gの4−ブロモベンゼンスルホニルクロリドを加え、急速に溶解させた。バイアルを−10℃に冷却し、1.11gのトリエチルアミンを加え、撹拌した。このバイアルを油浴内にて70℃で2時間加熱した。2時間後、更なる0.49gのトリエチルアミンを加えた。水溶液中の6%のHSOを使用して、pHを約10から約3に低下させた。その間、濁ったポリマーが析出した。この固体をアセトニトリルに急速に再溶解し、更なる水溶液中6%のHSOを使用してpHを約0.5に低下させ、トリエチルアミンを使用してpHを約2.5に戻した。ポリマーを再析出させることを期待してテトラヒドロフランを加えたが、不成功であった。底部に沈降した微細材料を除いて、溶液を65℃で3時間乾燥した。1.6gの薄黄褐色フィルムを回収し、NMRスペクトルは−113.5に実質的なビススルホニルイミドピークを示し、約−115.0にスルホンアミドピークを示さず、−115.5に小さいスルホン酸ピークを示し、ピーク積分比は11対1であった。
【0039】
実施例3:
【0040】
【化5】

【0041】
実施例2で得られた、ビススルホニルイミド基を介してポリマーに結合した臭化フェニルを含むフルオロポリマー1gmを30mLのEtOH中に懸濁させた。これに49mgの酢酸パラジウム(II)と173mgのトリフェニルホスフィンを加えた後、0.35mLのN,N−ジシクロヘキシルメチルアミンと0.225mLの亜リン酸ジエチルを滴加した。反応混合物を70℃で30分間加熱した。ポリマーを溶解するため、4mLのN−メチルピロリドンを加えた。形成した透明物を、80℃で15時間還流させた。溶媒をロータリーエバポレーター中で除去した。得られた生成物は、δ16.2ppm(HPOを基準として)に31P NMRシグナルを示し、ホスホン酸エステルの形成が確認される。
【0042】
実施例4:ビスホスホフェニルビススルホニルイミド酸
【0043】
【化6】

【0044】
工程1.23.6gmの4−ブロモベンゼンスルホンアミドを、3口丸底フラスコ内の100mLの乾燥アセトニトリルに加えた。フラスコを0℃に冷却し、水冷した還流凝縮器をフラスコの中央の口に取り付けた。反応過程中、フラスコを窒素で連続的にパージした。30.3gmのトリエチルアミンを撹拌下でフラスコに加えた。25.6gmの4−ブロモベンゼンスルホニルクロリドを窒素でパージした箱内で計量し、一定した撹拌下で一部ずつフラスコに加えた。混合物に30mLのアセトニトリルを加えて、丸底フラスコの口に固着した残留4−ブロモベンゼンスルホニルクロリドを全て洗浄した。混合物を約24時間攪拌した。トリエチルアミン塩酸塩を濾過し、濾液を濃縮して、茶色のビススルホニルイミド生成物のトリエチルアミン塩を収率約50%で得た。ビススルホニルイミド生成物の形成は、H NMR及び13C NMRで確認した。
【0045】
工程2.炉で乾燥したフラスコを窒素下で冷却し、1gmの工程1の生成物、酢酸パラジウム(II)(8mg)及びトリフェニルホスフィン(30mg)を入れた。15mLのエタノールを針及び注射器を介してフラスコに導入した後、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン(1.25mL)及び亜リン酸ジエチル(0.61mL)を滴加した。反応混合物を80℃で15時間還流させた。溶媒をロータリーエバポレーター中で除去して、生成物をトリエチルアミン塩−茶色半固体として収率80%で得た。ホスホン化を31P NMRシグナルによりδ16.74ppm(HPOを基準として)にて確認した。
【0046】
工程3.工程2の生成物1gを20mLの12N HClと共に36時間還流させて、ホスホン酸エステルを加水分解した。得られた混合物をロータリーエバポレーターを用いて乾燥して、加水分解されたホスホン酸生成物を得た。ホスホン酸ジエチルの加水分解の完了は、最終生成物における3.99ppm、1.22ppmのエチルシグナルの不在と、31P NMR:δ12.06ppm(HPOを基準として)により確認した。
【0047】
実施例5:(4−ベンゼンビスルホンイミド−フェニル)−ホスホン酸
【0048】
【化7】

【0049】
工程1:(4−スルファモイル−フェニル)−ホスホン酸ジエチルエステル
炉で乾燥したフラスコに6.5gmの4−ブロモベンゼンスルホンアミド、112.2mgの酢酸パラジウム(II)及び392.5mgのトリフェニルホスフィンを入れた。100mLのエタノールを針及び注射器を介してフラスコに導入した後、8mLのN,N−ジシクロヘキシルメチルアミン及び3.87mLの亜リン酸ジエチルを滴加した。反応混合物を80℃で15時間還流させた。冷却時、白色固体としての生成物がゆっくり沈殿するのが観察された。溶媒の体積をロータリーエバポレーターにより半分に低下させ、固体沈殿を焼結漏斗(sintered funnel)により真空下で濾過した。生成物を白色固体として収率80%で得た。31P NMR:δ15.83ppm(HPOを基準として)、15N NMR:δ95.5ppm(液体アンモニアを0ppmの基準として、グリシンの第2の基準を介して)、
工程2:(4−ベンゼンジスルホンイミド−フェニル)−ホスホン酸ジエチルエステル
炉で乾燥したフラスコに2.5gの(4−スルファモイル−フェニル)−ホスホン酸ジエチルエステル(工程1の生成物)と100mLのアセトニトリルを入れた。フラスコを0℃に冷却し、そこに3.2mLのベンゼンスルホニルクロリドと、その後8.5mLのトリエチルアミンとを滴加した。反応物を3時間攪拌し、トリエチルアミン塩酸塩を濾去した。反応混合物に10gのLiOH.HOを加えることにより、生成物のリチウム塩を得た。固体を濾過し、濾液を濃縮して生成物を収率80%で得た。31P NMR:δ16.8ppm(HPOを基準として)。
【0050】
工程3:(4−ベンゼンジスルホンイミド−フェニル)−ホスホン酸。
【0051】
工程2の生成物18gを200mLの12N HClと共に36時間還流させて、ホスホン酸エステルを加水分解した。得られた混合物をロータリーエバポレーターを用いて乾燥して、加水分解されたホスホン酸生成物を収率95%で得た。ホスホン酸ジエチルの加水分解の完了は、エステルからの4.02ppm及び1.23ppmのエチルシグナルの不在と、31P NMR:δ11.36ppm(HPOを基準として)により確認した。リチウムを含まない生成物は、強酸性型のアンバーライト樹脂カラム上のイオン交換により得た。
【0052】
実施例6:Zr(OP−C−SONHSO−C
0.5gmのZrOCl.8HOをポリプロピレン瓶内の30gmの脱イオン水に溶解した。この溶液に、2gmの(50wt%)フッ化水素酸を撹拌下で加えた。5分後、上記の混合物に、実施例5で合成したホスホン酸HP−C−SONHSO−C 1.3gmを加えた。混合物を収容するポリプロピレン瓶を、油浴内にて撹拌下で80℃にて16時間加熱した。乾燥生成物をメタノールで洗浄し、遠心分離機にかけた。上澄みをデカントした。沈殿を熱風乾燥炉内にて110℃で15分間乾燥した。X線回折は層状のホスホン酸ジルコニウム固体のピークを示す(23.5Åの001反射、11.7Åの002反射、及び7.85Åの003反射)。
【0053】
実施例7(予言的)
【0054】
【化8】

【0055】
実施例5で合成したホスホン酸を、2008年11月7日に出願された米国特許出願第12/266,932号に記載されているようなラクナリーヘテロポリ酸(lacunary heterpolyacid)に、ホスホン酸を実施例6に記載された方法によりラクナリーヘテロポリ酸塩と反応させることにより結合させた。
【0056】
実施例8:式−O−(CF−SO−NH−SO−PhFによる側鎖を有する過フルオロポリマー
733EWのポリマー、及び5.6gのペンタフルオロベンゼンスルホニルクロリド(Alfa Aesar,Ward Hill,Mass.,USA製)を使用して、実施例1のプロセスに従って形成した10%固体の実質的なスルホンアミド官能性ポリマー10gを、45mLのAldrich密封アセトニトリルに溶解した。添加は窒素下で行った。混合物を1時間撹拌した後、(この時点で全固体は溶液中に溶解している)、4.25gのAldrich密封トリエチルアミンを混合物に加え、2時間攪拌した後、更に15分間穏やかに加熱(72℃)した。粗混合物からのサンプルを、NMRにより解析した。フッ素NMRは、ポリマーのペンタフルオロスルホニルイミドの硫黄に隣接するCF基に対応する−113.4ppmの強力なピークを示す。
【0057】
実施例9:式−O−(CF−SO−NH−SO−PhFによる側鎖を有する過フルオロポリマー
2gの3,5−ジフルオロベンゼンスルホニルクロリド(Alfa Aesar,Ward Hill,Mass.,USA製)と、10%固体のポリマー10gとを使用して、45mLのアセトニトリル中で実施例8に記載した反応を行った。
【0058】
実施例10:式−O−(CF−SO−NH−SO−Ph−SOH(オルト)による側鎖を有する過フルオロポリマー
1.36gの1,2ベンゼンジスルホニル無水物(その合成はJ.Org.Chem.,Vol.48,No.18,1983,pg 2943〜2949に見出すことができる)を、812EWのポリマーを使用して実施例1のプロセスに従って形成した、乾燥アセトニトリルに溶解した8.8%固体の実質的なスルホンアミド官能性ポリマー48gを収容する反応容器に加えた。次いで、溶液に2.1gのトリエチルアミンを加え、よく混合し、室温で一夜反応させた。溶液NMRは、ポリマーのペンタフルオロスルホニルイミドの硫黄に隣接するCFに対応する−113.1ppmの強力なピークを示す。次いで、1.1gの2M LiOHを加え、よく混合し、上部の溶液を65℃で乾燥して、主にビススルホニルイミドベンゼン−2スルホン酸基を含む側鎖を有するPFSAの透明な、僅かに黄褐色のフィルムを生成した。より小さいEWのイオノマーを、より大きいEWの前駆体ポリマーから構築すると、所定のEWにてより高い主鎖結晶化度が得られる可能性がある。
【0059】
実施例11:式−O−(CF−SO−NH−SO−Ph−SOH(メタ)による側鎖を有する過フルオロポリマー
1.46gの1,3ベンゼンジスルホニルクロリド(Morecambe,EnglandのLancasterから獲得)を5gのアセトニトリルと共に、812EWのポリマーを使用して実施例1のプロセスに従って形成した、アセトニトリルに溶解した10%固体の実質的なスルホンアミド官能性ポリマー1.57gに加えた。次いで、0.092gの脱イオン水を加え、窒素雰囲気を維持して、容器の中身を3口フラスコに空けた。容器を3.5gのアセトニトリルで濯ぎ、これもフラスコに加えた。3mLのトリエチルアミンを添加漏斗内の17mLのアセトニトリルに加え、室温で3時間かけてフラスコ内にゆっくり滴下する。溶液のNMRは、−113.1ppmに有意なピークを示す。2MのLiOH溶液を加えて非常に塩基性の溶液を形成し、茶色沈殿が形成する。固体を維持し、アセトニトリルで3回濯ぐ。固体を2MのLiOH溶液で濯いだ後、脱イオン水で5回濯ぐ。固体を10%のH2SO4/脱イオン水混合物で濯いでpHを低下させた後、5DI水で濯ぐ。15.8gのメタノールを加え、適度に加熱して固体を溶解する。フラスコを90/10のメタノール/水混合物で濯ぎ、全てをアンバーライトIR−120ビーズのイオン交換カラムに2回通過させ、90/10のメタノール/水混合物で希釈してフローを補助する。窒素フローを用いてポリマー溶液を乾燥して、フィルムを形成する。得られたポリマーは、計算により約550のEWを有したが、ポリマーはEW812を有する前駆体ポリマーから調製された。より小さいEWのイオノマーを、より大きいEWの前駆体ポリマーから構築すると、所定のEWにてより高い主鎖結晶化度が得られる可能性がある。
【0060】
実施例12〜15(予言的)
実施例8及び9で得られたポリマーをNaSOと反応させることによりスルホン化して、スルホニルイミド官能基を介して結合したペンダントジスルホン化芳香族基を有する酸性ポリマーを得る。実施例10及び11で得られたポリマーをスルホン化して、スルホニルイミド官能基を介して結合したペンダントジスルホン化芳香族基を有する酸性ポリマーを得る。かように得られたポリマーを更にスルホン化して、スルホニルイミド官能基を介して結合したペンダントポリスルホン化芳香族基を有する酸性ポリマーを得る。
【0061】
実施例16:プロトン伝導性
Bekktech Inc.,Loveland COから商業的に入手可能な、白金電極を有する標準的な面内4点プローブ伝導率装置を使用して、プロトン伝導性を測定した。セルをポテンショスタット(Model 273,Princeton Applied Research)及びインピーダンス/ゲインフェーズアナライザ(Impedance/Gain Phase Analyzer)(SI 1260,Schlumberger)に電気的に接続した。Zplot及びZviewソフトウェア(Scribner Associates)を使用してACインピーダンス測定を行った。一定湿度の炉(TestEquity Model 1000H)を用いて温度及び相対湿度を制御した。
【0062】
実施例10のポリマーと、実施例11のポリマーと、実施例10及び11のポリマーの形成に使用した前駆体ポリマーと基本的に類似した約800EWのポリマーとに関する伝導率を測定した。したがって、3種の全ポリマーは、類似する主鎖結晶化度を有することが期待され、EW約800を有するポリマーのポリマー主鎖を有したが、実施例10及び11のポリマーは、EW約550(計算により)を有することが期待された。約650EWの類似したポリマーの伝導性も測定した。実施例10及び11のポリマーは、50%以上の相対湿度にて、改善された伝導率を示した。65%以上の相対湿度にて、実施例10及び11のポリマーは、650EWのポリマーと同等の伝導率を示した。35%の相対湿度にて、実施例10及び11のポリマーは、800EWのポリマーと同等の伝導率を示した。50%の相対湿度にて、実施例10及び11のポリマーは、650EW〜800EWのポリマーと同等の伝導率を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

(R−O−)−P(=O)−Ar−SONH−SO−R
(式中、各Rは、独立して、水素、ヘテロ原子を含んでもよくかつ置換されていてもよいアルキル、アルキレン又はアリール基、ポリマー類、金属、金属酸化物、金属リン酸塩、金属ホスホン酸塩及び無機粒子からなる群より選択され、
mは0又は1であり、
Arは、複素環及び多環を含んでもよくかつ置換されていてもよい芳香族基であり、
は、ヘテロ原子を含んでもよくかつ置換されていてもよいアルキル、アルキレン又はアリール基、及びポリマー類からなる群より選択される)
による化合物。
【請求項2】
Arがフェニレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、ヘテロ原子を含んでもよくかつ置換されていてもよいアルキル、アルキレン又はアリール基、及びポリマー類からなる群より選択され、Arがフェニレン−Rであり、Rは、水素、ヘテロ原子を含んでもよくかつ置換されていてもよいアルキル、アルキレン又はアリール基、及びポリマー類からなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
がフルオロポリマーである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
が、スルホン酸基及びホスホン酸基からなる群より選択される1つ以上の酸性基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】

【化1】

(式中、Rは、金属、金属酸化物、金属リン酸塩、金属ホスホン酸塩及び無機粒子からなる群より選択され、
mは0又は1であり、
Arは、複素環及び多環を含んでもよくかつ置換されていてもよい芳香族基であり、
は、ヘテロ原子を含んでもよくかつ置換されていてもよいアルキル、アルキレン又はアリール基、及びポリマー類からなる群より選択される)
による化合物。
【請求項7】
Arがフェニレンである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
がArがフェニレン−Rであり、Rは、水素、ヘテロ原子を含んでもよくかつ置換されていてもよいアルキル、アルキレン又はアリール基、及びポリマー類からなる群より選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
任意のRが金属又は金属酸化物であり、前記金属がZr、Ti、Th及びSnからなる群より選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
全Rが金属又は金属酸化物であり、前記金属がZr、Ti、Th及びSnからなる群より選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項11】
任意のRが金属又は金属酸化物であり、前記金属が四価金属からなる群より選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項12】
全Rが金属又は金属酸化物であり、前記金属が四価金属からなる群より選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項13】
がフルオロポリマーである、請求項6に記載の化合物。
【請求項14】
が、スルホン酸基及びホスホン酸基からなる群より選択される1つ以上の酸性基で置換されている、請求項6に記載の化合物。
【請求項15】

−Ar−SONH−SO−R
(式中、各Rは、独立して、水素、ヘテロ原子を含んでもよくかつ置換されていてもよいアルキル、アルキレン又はアリール基、ポリマー類、金属、金属酸化物、金属リン酸塩、金属ホスホン酸塩及び無機粒子からなる群より選択され、
nは1、2又は3であり、
Arは、複素環及び多環を含んでもよくかつ置換されていてもよい芳香族基であり、
は、ヘテロ原子を含んでもよくかつ置換されていてもよいアルキル、アルキレン又はアリール基、及びポリマー類からなる群より選択される)
による化合物。
【請求項16】
Arがフェニレンである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
がArがフェニレン−Rであり、Rは、水素、ヘテロ原子を含んでもよくかつ置換されていてもよいアルキル、アルキレン又はアリール基、及びポリマー類からなる群より選択される、請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
がフルオロポリマーである、請求項15に記載の化合物。
【請求項19】
が、スルホン酸基及びホスホン酸基からなる群より選択される1つ以上の酸性基で置換されている、請求項15に記載の化合物。
【請求項20】
が、スルホン酸基及びホスホン酸基からなる群より選択される1つ以上の酸性基で置換されている、請求項15に記載の化合物。
【請求項21】
高度にフッ素化された主鎖と、

−SO−NH−SO−ArA
(式中、Arは、複素環及び多環を含んでもよくかつ置換されていてもよい、5〜24個の炭素原子からなる芳香族基であり、
Aは、−SOH及び−POからなる群より選択され、
nは1〜qであり、qはArの炭素数の半分である)
による基を含む第1のペンダント基と、を有するポリマー電解質。
【請求項22】
Aが−SOHである、請求項21に記載のポリマー電解質。
【請求項23】
nが1である、請求項21に記載のポリマー電解質。
【請求項24】
nが2である、請求項21に記載のポリマー電解質。
【請求項25】
ArがPhである、請求項21に記載のポリマー電解質。
【請求項26】
Arがフッ素化されている、請求項21に記載のポリマー電解質。
【請求項27】
Arが過フッ素化されている、請求項21に記載のポリマー電解質。
【請求項28】
n=1であり、Aが−SOHであり、Arが過フッ素化されている、請求項21に記載のポリマー電解質。
【請求項29】
n=1であり、Aが−SOHであり、ビススルホニルイミド(−SO−NH−SO−)及びスルホン酸(−SOH)が、隣接するArの炭素に結合されている、請求項21に記載のポリマー電解質。
【請求項30】
n=1であり、Aが−SOHであり、ビススルホニルイミド(−SO−NH−SO−)及びスルホン酸(−SOH)が、前記第1のペンダント基の少なくとも95%において、隣接するArの炭素に結合されている、請求項21に記載のポリマー電解質。
【請求項31】
n=1であり、Aが−SOHであり、ArがPhであり、ビススルホニルイミド(−SO−NH−SO−)とスルホン酸(−SOH)とが互いにオルトである、請求項21に記載のポリマー電解質。
【請求項32】
n=1であり、Aが−SOHであり、ArがPhであり、ビススルホニルイミド(−SO−NH−SO−)とスルホン酸(−SOH)とが、前記第1のペンダント基の少なくとも95%において互いにオルトである、請求項21に記載のポリマー電解質。
【請求項33】
n=1であり、Aが−SOHであり、ArがPhであり、ビススルホニルイミド(−SO−NH−SO−)とスルホン酸(−SOH)とが互いにメタである、請求項21に記載のポリマー電解質。
【請求項34】
n=1であり、Aが−SOHであり、ArがPhであり、ビススルホニルイミド(−SO−NH−SO−)とスルホン酸(−SOH)とが、前記第1のペンダント基の少なくとも95%において互いにメタである、請求項21に記載のポリマー電解質。
【請求項35】
過フッ素化主鎖を含む、請求項21に記載のポリマー電解質。
【請求項36】
式−SOHによる基を含む第2のペンダント基を有する、請求項21に記載のポリマー電解質。
【請求項37】
第2ペンダント基に対する第1ペンダント基の比がpであり、pが0.01〜100である、請求項36に記載のポリマー電解質。
【請求項38】
第2ペンダント基に対する第1ペンダント基の比がpであり、pが0.1〜10である、請求項36に記載のポリマー電解質。
【請求項39】
第2ペンダント基に対する第1ペンダント基の比がpであり、pが0.1〜1である、請求項36に記載のポリマー電解質。
【請求項40】
第2ペンダント基に対する第1ペンダント基の比がpであり、pが1〜10である、請求項36に記載のポリマー電解質。
【請求項41】
n=1であり、Aが−POであり、ArがPhであり、ビススルホニルイミド(−SO−NH−SO−)とホスホン酸(−PO)とが互いにパラである、請求項21に記載のポリマー電解質。
【請求項42】
n=1であり、Aが−POであり、ArがPhであり、ビススルホニルイミド(−SO−NH−SO−)とホスホン酸(−PO)とが、前記第1のペンダント基の少なくとも95%において互いにパラである、請求項21に記載のポリマー電解質。
【請求項43】
請求項21に記載のポリマー電解質を含む、ポリマー電解質膜。
【請求項44】
多孔質支持体を更に含む、請求項43に記載のポリマー電解質膜。
【請求項45】
架橋後の請求項21に記載のポリマー電解質であるポリマー電解質を含む、ポリマー電解質膜。
【請求項46】
前記第1のペンダント基のホスホネート基を無機粒子に結合させることによる架橋後の、Aが−POである請求項21に記載のポリマー電解質であるポリマー電解質を含むポリマー電解質膜。
【請求項47】
前記無機粒子がZrを含む、請求項46に記載のポリマー電解質膜。
【請求項48】
請求項21に記載のポリマー電解質を含む電極を有する燃料セル膜電極アセンブリ。
【請求項49】
スルホンアミド官能性ポリマーを芳香族ジスルホニル無水物と反応させる工程を含む、請求項29に記載の化合物の製造方法。
【請求項50】
スルホンアミド官能性ポリマーを1,2ベンゼンジスルホニル無水物と反応させる工程を含む、請求項31に記載の化合物の製造方法。

【公表番号】特表2011−523398(P2011−523398A)
【公表日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506471(P2011−506471)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/041614
【国際公開番号】WO2009/132241
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】