説明

プロパンからアクロレイン又はアクリル酸又はこれらの混合物を製造する方法

反応帯域A中でプロパンを不均一系触媒作用脱水素し、この際に生じるプロピレンを1反応帯域中で不均一系触媒作用部分酸化し、この際に、反応帯域Aをループ法で操作し、かつ反応帯域Aに供給された反応ガス混合物装入流Aに、この装入流にできるだけ遅れて添加されている水素分子を含有していることを特徴とする方法で、プロパンからアクロレイン、アクリル酸又はこれらの混合物を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロパンからアクロレイン又はアクリル酸又はこれらの混合物を製造する方法に関し、この方法は次の工程からなる:
A)第1反応帯域A中への取入口に、少なくとも4本の異なるガス状出発流1、2、3及び4を一緒に案内することにより得られた反応ガス混合物装入流Aを供給するが、但し、3本のガス状出発流1、2及び3がプロパンを含有し、ガス状出発流4が水素分子であり、かつガス状出発流3が新鮮プロパンであり、
この反応ガス混合物装入流Aを反応帯域A中で、少なくとも1つの触媒床に導通させ、それに接して、場合により更なるガス流の供給下にプロパンの不均一系触媒作用部分的脱水素によってプロパン及びプロピレンを含有している生成ガス混合物流Aを形成させ、
第1反応帯域Aからの排出口を通ってそこから生成ガス混合物流Aを排出させ、かつその際に、同じ組成を有する2つの生成ガス混合物A−分流1と2とに分割し、かつ第1の循環ガス運転において、生成ガス混合物A−分流1をガス状出発ガス流1として第1反応帯域A中に送り戻し、
生成ガス混合物A−分流2を、場合により、第1分離帯域A中で、中に含有されているプロパン及びプロピレンとは異なる成分から、一部分量又はそれ以上を分離し、かつそれにより残っているプロパン及びプロピレンを含有している生成ガス混合物A’を取得するために、第1分離帯域A中に導くこと、
B)生成ガス混合物A−分流2又は生成ガス混合物流A’を、第2反応帯域B中で、少なくとも1つの酸化反応器中へチャージするために使用し、かつ少なくとも1つの酸化反応器中で、生成ガス混合物A−分流2又は生成ガス混合物流A’中に含有されているプロピレンを、酸素分子での選択的な不均一系触媒作用部分気相酸化に供して、目的物質としてのアクロレイン又はアクリル酸又はこれらの混合物、反応しなかったプロパン及び場合により反応しなかったプロピレン並びに過剰の酸素分子を含有している生成ガス混合物流Bを生じさせ、
生成ガス混合物Bを反応帯域Bから排出させ、かつ第2分離帯域B中で、生成ガス混合物流B中に含有されている目的生成物を分離し、かつこの際に残っている、反応しなかったプロパン、酸素分子並びに場合により反応しなかったプロピレンを含有している残留ガスから、反応しなかったプロパン、酸素分子及び場合による反応しなかったプロピレンを含有している少なくとも一部分量を、第2の循環ガス運転において、ガス状出発ガス2として、反応帯域A中に送り戻すが、但し、ガス状出発流2、3及び4並びに場合により付加的な、ガス状出発流1とは異なるガス状出発流を一緒にしガス状推進噴射混合物流を生じさせ、引き続きこのガス状噴射混合流を推進噴射流として用いて、噴射ノズル、混合帯域及びディフューザー及び吸引ノズルを含有するジェットポンプを駆動させ、この際、噴射ノズルを通り混合帯域及びディフューザーを経て放圧される推進噴射流の第1反応帯域Aの取入口中への送り方向並びに吸引ノズルの吸引作用は、生成ガス混合物流Aを案内する第1反応帯域Aの排出口の方向を指し、かつこの場合にこの吸引ノズル内で生じる減圧によって、生成ガス混合物流Aを二つの分流1及び2に分割しながら生成ガス混合物A−分流1を吸引し、推進噴射流との混合と同時に混合帯域を通りディフューザーを経て搬送し、かつこの場合に生じる反応ガス混合物装入流Aを、第1反応帯域Aの取入口の中に放出させる。
【0002】
アクリル酸は、プロピレンの部分酸化生成物として、それ自体として又はそのアルキルエステルの形で、例えば接着剤として好適であるか又は水を超吸収するポリマーを得るために使用できる重要なモノマーである(例えば、WO 02/055469及びWO 03/078378参照)。アクロレインは、例えばグルタールジアルデヒド、メチオニン、葉酸及びアクリル酸の製造のための重要な中間体である。
【0003】
不均一系触媒作用部分的脱水素によりプロパンからプロピレンを得、部分酸化混合物の成分としての反応しなかった(不活性の)プロパンの存在下で、酸素分子を用いる不均一系触媒作用部分気相酸化に供して、アクロレイン及び/又はアクリル酸を含有する生成ガス混合物を生じさせることにより、アクロレイン及び/又はアクリル酸を製造する方法は公知である(例えばDE−A1024585及びこの刊行物中に引用されている技術水準を参照)。
【0004】
酸素の存在によって強制され、中間的に遊離の水素が形成されない(脱水素すべきプロパンから奪われる水素は直接水(HO)として奪われる)か又は検出可能でない、発熱性で進行する不均一系触媒作用オキシ脱水素とは異なり、この場合にこの明細書中で、不均一系触媒作用脱水素とは、(慣用の)脱水素であると理解すべきであり、その反応熱(Waermetoenung)は、オキシ脱水素とは異なり、吸熱性であり(後続工程として、発熱性水素燃焼が不均一系触媒作用脱水素内に包含されうる)、かつこの際、少なくとも中間的な遊離の水素分子が形成される。このために通例は、オキシ脱水素のためとは異なる反応条件及び他の触媒が必要である。
【0005】
相応して、この明細書中で、新鮮プロパンとは、反応帯域A中での脱水素にも、反応帯域B中のアクロレイン及び/又はアクリル酸までのプロピレンの部分酸化にも関与しなかったプロパンであると理解される。特に、これはなお全く化学反応に全く関与していなかった。通例これは、特にDE−A10246119及びDE−A10245585による詳細を満足し、通常、少量のプロパンとは異なる成分をも含有している、粗製−プロパンの形で供給される。このような粗製−プロパンは、例えばDE−A102005022798に記載の方法により得られている。通常、粗製−プロパンは、少なくとも≧90質量%、有利には少なくとも≧95質量%のプロパンを含有している。
【0006】
通常、前記の技術水準で請求されている方法は、部分酸化の生成ガス混合物からの目的生成物分離の後に残っている、反応しなかったプロパン、酸素分子並びに場合により反応しなかったプロピレンを含有している残留ガスから、反応しなかったプロパン、酸素分子及び場合により反応しなかったプロピレンを含有している少なくとも一部分量を、循環ガス法で、不均一系触媒作用脱水素に送り戻すように実施される。
【0007】
この場合に、水蒸気、新鮮プロパン及びそのような循環ガスからの混合物が反応ガス混合物装入ガスとしてプロピレンまでのプロパンの不均一系触媒作用脱水素に供給されることは既に提案されていた(例えばDE−A102004032129及びDE−A102005013039)。この場合には、この不均一系触媒作用プロパン脱水素は、適切には、その中に触媒床が最適に半径方向又は軸方向に連続して配置されているトレー反応器(Hordenreaktor)中で実現される。適切には、触媒固定床タイプのこのようなトレー反応器中で使用される。このようなトレー反応器中の触媒床トレーの数は3であるのが好ましい。この場合に、技術水準は、この不均一系触媒作用部分プロパン脱水素を自熱的に実施することを推奨している。このためには、第1通過触媒床の後及びその間の反応ガス混合物に、流れの方向で第1触媒(固定)床に引き続いている触媒(固定)床の上から、限られた範囲の酸素分子(例えば空気の形で)が添加される。従って通例は、この脱水素触媒自体の触媒作用で、不均一系触媒作用プロパン脱水素の過程で生じる水素分子(並びに最大でも僅かなプロパン)の限られた燃焼に作用することができ、その発熱性が脱水素化温度を実質的に保持する(断熱的反応器構造)。
【0008】
DE−A102004032129の比較例1、3及び4並びにDE−A102005010111の実施例中では、トレー反応器(3触媒床トレー)中での前記のような不均一系触媒作用部分的プロパン脱水素が、3個の連続して接続された脱水素反応管でシュミレートされている。しかしながら、反応管のこのような直列接続の代わりに、その比較例又はその実施例中では、添付の図1及び2におけるような(断熱的)トレー反応器(それぞれ3つの触媒固定床トレーを有する)を使用することもできる。
【0009】
図1によるトレー反応器タイプ中では、触媒床(2)は、それぞれ外側から内側に向かって流過されている。これに反して、図2によるトレー反応器タイプ中ではそれぞれ触媒床(2)が内側から外側に向かって流過されている。符合(1)はそれぞれ、反応ガス混合物装入ガスを表し、(3)は空気供給部を表し、(4)は混合素子を表している。
【0010】
更に、反応ガス混合物装入ガス中の72280kg/hのプロパン流及び3496kg/hの全空気供給に対して次の反応器データが適切である:
図1の反応器: 反応器中の触媒全質量 =30t
1トレー当たりの触媒質量 =10t
1トレー当たりの触媒床の高さ =5.47m
1触媒床当たりの嵩密度 =1200kg/m
触媒床の内径 =1.05m
触媒床の外径 =1.26m
1トレー当たりの触媒床の容積 =8.33m
入口管の直径 =1.4m
反応器内径 =3.2m
円筒部分の反応器高さ(蓋を除く) =21m
混合素子の数 =2
反応混合物装入ガスの入口圧力 =3.1バール(絶対)。
【0011】
この場合に触媒として、それぞれ、相応する比較例又は実施例の触媒を使用することができる。反応温度及び反応ガス混合物装入ガスの組成に関しても同じことが当て嵌まる。
【0012】
好ましい反応器構造材料は、全ての反応器部材のために、Si−含有特殊鋼又は鋼、例えば1.4841タイプの鋼が適切である。
【0013】
図2の反応器: 反応器中の触媒全質量 =30t
1トレー当たりの触媒質量 =10t
1トレー当たりの触媒床の高さ =4.84m
1触媒床当たりの嵩密度 =1200kg/m
触媒床の内径 =1.2m
触媒床の外径 =1.41m
1トレー当たりの触媒床の容積 =8.33m
入口管の直径 =1.4m
反応器内径 =3.4m
円筒部分の反応器高さ(蓋を除く) =19m
混合素子の数 =2
反応混合物装入ガスの入口圧力 =3.1バール(絶対)。
【0014】
この場合に触媒として、それぞれ、相応する比較例又は実施例の触媒を使用することができる。同じことが、反応温度及び反応混合物装入ガスの組成にも当て嵌まる。好ましい反応器構造材料は、全ての反応器材料のために、Si−含有特殊鋼又は鋼、例えばタイプ1.4841の鋼が適切である。
【0015】
この場合に、プロパンの不均一系触媒作用部分的脱水素を、実質的に3つの触媒トレー上に分けて、反応器中に供給されたプロパンの1回反応器通過に対する変換率が約20モル%になるように操作するのが適切である。この場合に、プロピレン形成の達成選択率は一様に90モル%である。個々のトレーの最大変換率貢献は、作動時間の増加に伴い流れ方向で前から後に移行する。通例は、流れ方向で第3のトレーが最大変換率貢献を示す前に触媒床は再生される。全てのトレーのコークス化が理論的範囲に達する場合にこの再生を行うのが有利である。
【0016】
プロパンの前記の不均一系触媒作用部分脱水素のためには、プロパンとプロピレンとの合計量での触媒全量(全ての床の合計)の負荷率(Belastung=loading)が≧500Nl/l・h及び≦20000Nl/l・hである(典型的な値は1500Nl/l・h〜2500Nl/l・hである)場合が全く一般的に好適である。この場合に、個々の触媒固定床内の最大反応温度を、500℃〜600℃に保持するのが有利である。トレー反応器中での前記の不均一系触媒作用部分的プロパン脱水素工程の場合の反応ガス混合物装入ガスは、脱水素触媒床の満足しうる耐用時間を得るために、単に新鮮プロパン及び部分的酸化から脱水素に送り戻される、部分酸化に由来する充分な量の水蒸気を含有している循環ガスから成ることが特別有利である。即ち、比較例及び実施例は、脱水素時に特別な水蒸気の添加が断念される場合にも前記のトレー反応器中でこのように実施可能である。他方、刊行物DE−A102005009885、DE−A102005010111、DE−A102005009891、DE−A102005013039及びDE−A102004032129中にものこのような方法に関する記載が存在する。この明細書中で、1つの反応工程に触媒作用する触媒床上の反応ガス混合物の負荷率とは、反応ガス混合物の標準リットル量(=Nl;容積リットル、これは標準条件(0℃、1バール)下で考慮される)で、1時間当たり触媒床(例えば触媒固定床)1リットルに導通される、相応する反応ガス混合物量であると理解される。しかしながら、この負荷率は、反応ガス混合物の1成分のみに関連することもありうる。従ってこれは、1時間当たりの触媒床1リットル上に導通される成分の量(Nl/l・h)である(純粋な不活性物質床は、触媒固定床に算入されない)。
【0017】
この負荷率は、不活性物質で希釈された特有の触媒を含有することのできる1触媒床中に含有されている触媒の量に対してのみ計算することもできる(この場合に、このことが明確である)。
【0018】
技術水準に記載の方法の欠点は、プロパンの脱水素に触媒作用する殆ど全ての触媒が、プロパン及びプロピレンの酸素分子での燃焼(一酸化炭素及び水蒸気までのプロパン及びプロピレンの完全酸化)にも触媒作用をするが、酸素分子は通常、プロパンの不均一系触媒作用部分的脱水素に送り戻される部分酸化からの循環ガス中に既に含有されていることである。このことは、不均一系触媒作用部分酸化の場合の高い触媒耐用時間の理由から、部分酸化の化学量論で測定される酸素分子が通常は過剰に使用されていることに基づく。この酸素分子と反応ガス混合物装入ガス中に存在するプロパン及び/又はプロピレンとの触媒作用燃焼反応は、不均一系触媒作用部分的プロパン脱水素の範囲内でのプロペン形成の選択率を低下させる。
【0019】
従って、プロパンからのアクロレイン及び/又はアクリル酸の多工程製造の分野で、不均一系触媒作用部分的プロパン脱水素を、脱水素帯域から取り出される生成ガスを同じ組成の2つの部分量に分け、双方の部分量の一方のみを部分酸化に供給し、他方の部分量を反応ガス混合物装入ガスの成分として脱水素に送り戻すように実施できることも既に提案されていた(DE−A10211275参照)。脱水素自体から生じる循環ガス中に含有されている水素分子は、反応ガス混合物装入ガス中に含有されているプロパン及び場合によるプロピレンを、この装入ガス中に同様に含有されている酸素分子から保護すべきである。この保護は、通例同じ触媒での水までの水素分子の不均一系触媒作用下で燃焼させることが、プロパン及び/又はプロピレンの完全燃焼に比べて動力学的に好ましいことに基づく。
【0020】
DE−A10211275中には、既にジェットポンプ原理を用いる脱水素循環ガス案内(これはループモードとも称される)も開示されている。更に、この刊行物中には、プロパン脱水素時の反応ガス混合物に付加的に水素分子を添加する可能性が言及されている。このDE−A10211275は、水素分子を、特定の供給体系でジェットポンプを得るための推進噴射流の中に配量供給する必要性に関しては言及していない。
【0021】
DE−A102004032129及びDE−A102005013039は、不均一系触媒作用部分酸化に由来する酸素分子を含有している循環ガスを、不均一系触媒作用部分的プロパン脱水素用の反応ガス混合物装入ガス中へ返還することを実施すべきではないことを提案している。むしろ、特定の脱水素変換率に達した後に初めて脱水素の反応ガス混合物中への返還を行うべきであると記載している。この場合に、DE−A102004032129中には、この返還に先立ち、脱水素の反応ガス混合物に付加的に外から水素分子を添加することも提案されている。更にDE−A102004032129中には、脱水素のためのループモードも言及されている。この場合に、推進噴射流は、専ら部分酸化から脱水素に戻された循環ガスである。
【0022】
しかしながらこの操作法は、外から配量供給された水素分子が、なお著しい部分量で、脱水素からの生成ガス混合物の成分として、その保護ポテンシャルを予め包括的に利用することなしに部分酸化中に導かれるかぎり不利である。更に、このジェットポンプは、部分的脱水素からの生成ガス混合物の部分量にも高い圧力をもたらし、これが部分酸化で放圧される。しかしながら、部分酸化の前に、通常はいずれの場合にも、部分酸化で生じる圧力損失を補償するために、別のコンプレッサーを用いる相応する反応ガス混合物出発ガスの付加的圧縮が必要である。通例は加圧下に、生成ガス混合物流A−分流2の生成ガス混合物流A’中への移行も実施される。このような背景から、前記のように付随するジェットポンプの圧力負荷は適切性が低い。
【0023】
このような背景から、DE−A102005009885は、実施例II中で、ループモードを推奨しており、ここで、プロパンの不均一系触媒作用部分的脱水素のための反応ガス混合物装入ガスは、部分酸化から送り戻される循環ガス、新鮮プロパン、外からの水素分子、外からの水蒸気の最小量及び脱水素から戻った循環ガス(外からの水蒸気は除外することもできる)からの組成を有する。推進噴射流として、新鮮プロパン、外からの水素分子、部分酸化からの循環ガス及び外からの水蒸気が使用される。DE−A102005009885は、推進噴射流取得の際に保持すべき供給順序に関しては言及していない。従ってその時点ではこのことは、出願人にとっては特殊鋼製の作動実験装置が新規であったことに基づいており、特別な供給順序の必要性の暗示は存在しなかった。しかしながら、長い作動時間の経過で、特殊鋼製又は通常鋼製(即ち一般的な鋼製)の装置中で、少量で付着する飛行錆(Flugrost)が酸素分子による水素分子の燃焼に触媒作用することは明らかになっている。このことは、その際に生じる燃焼熱は少なくとも部分的に、そこで必要なものと認められない、即ち吸熱性脱水素であるので、不利である。むしろ、これは所望の断熱的脱水素の場合ですら少なくとも部分的に爆発する、それというのも理想的な断熱反応装置は実現不可能であるからである。このことは、通例、熱伝導面上で内包炭化水素の不所望な分解プロセスを生じさせる外からの熱の供給を必要とするか、又は生じる脱水素変換率を著しく低下させることに基づく。双方とも欠点である。
【0024】
従って、本発明の課題は、前記の欠点をもはや有しないか又はいずれにせよ低下された形のみで有する、プロパンからアクロレイン又はアクリル酸又はそれらの混合物を製造するための改善された方法を提供することであった。
【0025】
相応して、次の工程:
A)第1反応帯域Aの取入口に、少なくとも4本の異なるガス状出発流1、2、3及び4を一緒に案内することにより得られた反応ガス混合物装入流Aを供給するが、但し、3本のガス状出発流1、2及び3はプロパンを含有し、ガス状出発流4は水素分子であり、ガス状出発流3は新鮮プロパンであり、
反応ガス混合物装入流Aを反応帯域A中で、少なくとも1つの触媒床に導びき、それに接して、場合により更なるガス流の供給下に、プロパンの不均一系触媒作用下での部分的脱水素によって、プロパン及びプロピレンを含有している生成ガス混合物流Aを形成させ、
第1反応帯域Aからの排出口を通って、そこから生成ガス混合物流Aを排出させ、かつその際に、同じ組成を有する2つの生成ガス混合物A−分流1と2とに分割し、かつ第1の循環ガス運転において、生成ガス混合物A−分流1を、ガス状出発ガス流1として、第1の反応帯域A中に送り戻し、
生成ガス混合物A−分流2を、場合により、第1分離帯域A中で、中に含有されているプロパン及びプロピレンとは異なる成分から1部分量又はそれ以上を分離し、かつそれにより残っているプロパン及びプロピレンを含有している生成ガス混合物A’を取得するために、第1分離帯域A中に導くこと、
B)生成ガス混合物流A−分流2又は生成ガス混合物流A’を、第2反応帯域B中で、少なくとも1つの酸化反応器のチャージのために使用し、少なくとも1つの酸化反応器中で、生成ガス混合物A−分流2又は生成ガス混合物流A’中に含有されているプロピレンを、酸素分子を用いる選択的な不均一系触媒作用部分気相酸化に供して、目的物質としてのアクロレイン又はアクリル酸又はこれらの混合物、反応しなかったプロパン及び場合により反応しなかったプロピレン並びに過剰の酸素分子を含有している生成ガス混合物Bを生じさせ、
生成ガス混合物Bを反応帯域Bから排出させ、かつ第2分離帯域B中で、生成ガス混合物流B中に含有されている目的生成物を分離し、かつこの際に残っている、反応しなかったプロパン、酸素分子並びに場合により反応しなかったプロピレンを含有している残留ガスから、反応しなかったプロパン、酸素分子及び場合により反応しなかったプロピレンを含有する少なくとも一部分量を、第2のガス循環運転において、ガス状出発ガス流2として、反応帯域A中に送り戻すが、但し、ガス状出発流2、3及び4並びに場合による付加的な、ガス状出発流1とは異なるガス状出発流を一緒にしてガス状推進噴射混合物流を生じさせ、かつ引き続きこのガス状推進噴射混合物流を推進噴射流として用いて、噴射ノズル、混合帯域及びディフューザー及び吸引ノズルを包含するジェットポンプを作動させ、この際、噴射ノズルにより混合帯域及びディフューザーを経て放出される推進噴射流の第1反応帯域Aの取入口への送り方向並びに吸引ノズルの吸引作用は、生成ガス混合物流Aを案内する第1反応帯域Aの排出口の方向を指し、かつこの場合に、吸引ノズル内で得られる減圧によって、生成ガス混合物流Aの二つの分流1と2とへの分割下に、生成ガス混合物A−分流1を吸引し、それを、混合帯域を通る推進噴射流との混合と同時に、ディフューザーを経て移送し、かつこの際に生じる反応ガス混合物装入流Aを、第1反応帯域Aの取入口中に放出させること;
により、プロパンからアクロレイン、アクリル酸又はこれらの混合物を製造する方法が発見され、これは、
差し当たりガス状出発流2及び3並びに場合によっては付加的な、ガス状出発流1及び4とは異なるガス状出発流を、任意の順番で一緒にして1本のガス状出発混合物流とし、次いで初めて、ガス状出発混合物流に、ガス状推進噴射混合物流の形成下にガス状出発流4を添加することを特徴としている。
【0026】
特徴部分を度外視すれば、本発明の方法は、刊行物EP−A117146、US−A3161670、DE−A3313573、WO01/96270、DE−A10316039、DE−A102005013039、DE−A102004032129、DE−A10211275、DE−A10245585、DE−A102005009891、DE−A102005010111、DE−A102005022798及びDE−A102005009885中の記載の相応する方法と同様に実施することができる。
【0027】
ガス状出発流4をガス状出発混合物流に添加導入する(推進噴射混合物流の形成下に)ことは、本発明によりできるだけ短時間内に行うのが有利である。更に、ガス状出発混合物流へのガス状出発流4の添加導入(推進噴射混合物流の形成下に)は、推進噴射混合物流の形成の時点から反応ガス混合物装入流Aが(流れ方向で)脱水素触媒を有する反応帯域Aの第1触媒床に達する時点までに30秒を越えない、有利には20秒又は10秒を越えない、有利には7秒を越えない、特別好ましくは5秒を越えない、全く特別好ましくは3秒を越えない、最良には1秒又は0.5秒又は0.1秒を越えないように行われる。
【0028】
本発明の方法のために、生成ガス混合物流B中に含有されている目的生成物の分離のための方法として、原則的には技術水準における関連する全ての公知方法が使用される。これらは本質的に、目的生成物を、例えば吸収性及び/又は凝縮性手段でガス相から凝縮相に移行させることを特徴としている。この場合に吸収剤としては、例えば水、水性溶液及び/又は有機溶剤がこれに該当する。目的生成物のこの凝縮の範囲内には、通常、生成ガス混合物流Bの比較的凝縮困難な成分を包含している、凝縮相に移行しない残留ガスが残る。これは、通常は特に、常圧(1バール)でのその沸点が≦−30℃である成分(その残留ガスの全割合は、大抵 ≧70容量%、屡々≧80容量%、多くの場合に≧90容量%である)である。これには第1に、反応しなかったプロパン、生成ガス混合物流B中に残っている過剰な酸素分子並びに場合により反応しなかったプロピレンが属する。付加的にこの残留ガスは、通例、不活性の希釈ガス、例えばN、CO、希ガス(He、Ne、Ar 等)、CO並びに僅かな量のアクリル酸、アクロレイン及び/又はHO(残留ガスに付いている水蒸気分は、25容量%まで、屡々20容量%まで又は10容量%までであるが、多くの場合には10容量%を下回る又は5容量%を下回っていることがありうる)を含有することができる。前記のこの残留ガス(その中に含有されているプロパンの量に対して)は、普通、分離帯域B中で生じる残留ガスの主要量(通常は少なくとも80%、又は少なくとも90%又は少なくとも95%又はそれ以上)を成しているから、この明細書中では、特に主残留ガスとも称される。
【0029】
本発明によれば、通常、反応しなかったプロパン、酸素分子並びに場合により反応しなかったプロピレンを含有している、この残留ガス(主残留ガス)の少なくとも一部分量が、循環ガス法でガス状出発流2として反応帯域A中に送り戻される。本発明によればむしろ、この残留ガスの全量が反応帯域A中にガス状出発流2として送り戻されるのが適切である。
【0030】
殊に、目的生成物の凝縮が有機溶剤を用いる吸収によって行われる場合には、分離帯域B中に、大抵は第2の反応しなかったプロパン並びに場合により反応しなかったプロピレンを含有している少なくとも第2の残留ガスが生じる(その中に含有されているプロパンに対して、その量は、主残留ガス量と比べて通常は著しく僅かである)。このことは、生じる凝縮相が、特定の範囲内で反応しなかったプロパン並びに場合により反応しなかったプロピレンをも吸収することに基づいている。
【0031】
凝縮相からの目的生成物の抽出、蒸留、結晶化及び/又は脱着的な分離の更なる経過で、この反応しなかったプロパン並びに場合によるプロピレンは、通常、少なくとももう一つの気相の成分として回収され、本発明の方法で有利に同様に反応帯域A中に戻される。
【0032】
このことは、例えば主残留ガスと混合することにより行うことができる(従ってこの明細書中で、全残留ガスと称する)。しかしながらこれは、独自の反応帯域A中に送り戻されるガス流の形で行うこともできる。当然、この反応帯域A中への送り戻しは、もう一つのガス状出発流として行うこともできる。この独自の送り戻すべきガス流は、酸素不含であるか又は酸素(副残留ガス)を含有していてもよい(例えば、これが空気を用いるストリッピングにより又は重合阻害剤としての空気でフラッシングされる精留塔の頭頂に生じる場合に)。
【0033】
主残留ガス、全残留ガスも、副残留ガスも、本発明の意味では、ガス状出発流2として反応帯域A中に送り戻し可能な、反応しなかったプロパン、酸素分子及び場合により反応しなかったプロピレンを含有している残留ガスを形成する。酸素分子不含でこの分離帯域B中に生じる反応しなかったプロパン並びに場合により反応しなかったプロピレンを含有している残留ガスは、本発明によれば、主残留ガス及び/又は副残留ガス(即ち、例えば全残留ガスの成分として)と混合して、例えばガス状出発流2の成分としても及び/又は独自にも(この場合にこれは、本発明の意味での反応帯域A中に送り戻される残留ガスではない)、反応帯域A中に送り戻すことができる。後者の場合に、この送り戻しは、限定なしに、即ちもう一つのガス状出発流として行うこともできる。本発明の方法で第1分離帯域A中で、生成ガス混合物A−分流2から、実質的にその中に含有されている、プロパン及びプロピレンとは異なる全ての成分を分離し、引き続きその際に生じる生成ガス混合物流A’を少なくとも1つの酸化反応器のチャージのために使用する場合に、本発明の方法では、殊に本質的に、分離帯域B中に生じる反応しなかったプロパン並びに場合により反応しなかったプロピレンを含有しているガス流の全量が反応帯域A中に送り戻され、これは有利に、全残留ガスの成分として、ガス状出発流分流2として送り戻される。一部分量(例えばDE−A102004032129に記載のように)は、場合により他の目的のために、例えばエネルギー取得及び/又は合成ガス製造のため及び/又は希釈ガスとして、反応帯域B中で更に使用することもできる。しかしながら通例、前記の場合には、少なくとも1/2又は2/3(即ち50容量%又は66.6容量%)、好ましくは少なくとも3/4の、かつ全く特別好ましくは前記の分離帯域B中に生じる(それぞれ、個々に主−及び/又は副−もしくは全−)残留ガスの全量が反応帯域A中に、本発明によれば好ましくはガス状出発流2の成分として送り戻される。分離帯域B中に、反応しなかったプロパン、酸素分子及び反応しなかったプロピレンを含有する残留ガスのみが生じる場合(これは屡々通常の場合である)には、これは殊に、本発明の方法で第1分離帯域A中で、生成ガス混合物A−分流2から、本質的に全てのその中に含有されている、プロパン及びプロピレンとは異なる全ての成分が分離され、引き続きその場合に生じる生成ガス混合物流A’が、少なくとも1つの酸化反応器のチャージのために使用される場合には、本発明により好ましくは完全に(場合によっては反応帯域B中に希釈ガスとして導入された同じ組成の一部分量を除いて)、ガス状出発流2として反応帯域A中に送り戻される。しかしながら、これを前記のように同じ組成の2つの分流に分けて、一部分量のみをガス状出発流2として反応帯域A中に送り戻し、他の部分量を他の方法で更に使用することもできる。分離帯域B中に1以上のそのような残留ガス流が生じる場合には、これら残留ガス流を(既に記載のように)本発明により一緒にして(例えば一緒に案内する)ガス状出発流2として、反応帯域A中に送り戻すことができる。当然、これら残留ガス流を反応帯域A中へ送り返すことは個々に行うこともできる。
【0034】
残留ガスの一部分量を、ガス状出発流2としてではなく、反応帯域A中でのプロパンの不均一系触媒作用脱水素の反応経路に沿って初めに反応帯域A中に送り戻すこともできる。この場合に第1反応帯域Aでのプロパンの不均一系触媒作用脱水素の反応経路とは、反応ガス混合物装入流A中に含有されているプロパンが、このプロパンの脱水素変換率(不均一系触媒作用脱水素での変換率)に依存して、反応帯域Aを通る流路であると理解すべきである。
【0035】
通常、ガス状出発流2として反応帯域A中に戻される残留ガスは、本発明の方法では成分の≧70容量%、屡々≧80容量%、多くの場合には≧90容量%、大抵は≧95容量%又は≧98容量%が、常圧(1バール)での沸点 ≦−30℃を有する成分から成っている。
【0036】
殊に、本発明の方法において、第1分離帯域A中で、生成ガス混合物A−分流2から、本質的にその中に含有されているプロパン及びプロピレンとは異なる全ての成分が分離され、かつ引き続きこの場合に生じる生成ガス混合物流A’が少なくとも1つの酸化反応器のチャージのために使用される場合に、このガス状出発流2の組成物は、典型的には次のものを包含する:
プロペン 0〜2容量%、多くの場合に0〜1容量%、屡々0〜0.5容量%;
アクロレイン 0〜2容量%、多くの場合に0〜1容量%、屡々0〜0.5容量%;
アクリル酸 0〜0.5容量%、多くの場合に0〜0.1容量%、屡々0〜0.05容量%;
CO 0〜4容量%、多くの場合に0〜2容量%、屡々0〜1.5容量%;
プロパン 10〜50容量%、多くの場合に20〜30容量%;
0〜70容量%、多くの場合に40〜70容量%;
1〜10容量%、多くの場合に2〜5容量%、屡々2.5〜3.5容量%;及び
O >0〜15容量% 。
【0037】
屡々、本発明の方法におけるガス状出発流2は、50〜200℃又は70〜130℃の温度及び1.5〜5バール、有利には3〜4バールの圧力を有する。
【0038】
3〜6バール又は4〜5バールの圧力でのガス状出発流3の典型的な温度は、0〜50℃、屡々5〜20℃である。
【0039】
本発明の方法によれば、ガス状出発流4は、「水素分子」であるべきである。この明細書中の以下において、これは、水素分子のみから又は少なくとも50容量%、有利には少なくとも60容量%、又は少なくとも70容量%又は少なくとも80容量%又は少なくとも90容量%又は少なくとも95容量%、もしくは少なくとも98容量%もしくは少なくとも99容量%が水素分子から成り、その都度の残量が不活性ガスから成っているガス流であると理解すべきである。本明細書中で不活性ガスとは、全く一般的に、相応する(不均一系触媒作用脱水素の前記の場合の)反応の条件下に、本質的に不活性挙動を示し、かつ−それぞれ不活性の反応ガス成分に関しては− 95モル%を上回って、有利には99モル%を上回って化学的に変化せずに留まっていることであると理解される。このような不活性ガスの例は、N、希ガス、CO又は水蒸気でもある。
【0040】
本発明によれば、本発明の方法でのガス状出発流4は、20〜100℃、屡々40〜60℃の温度及び1〜5バールの範囲の圧力を有することが有利である。
【0041】
本発明の方法で反応ガス混合物装入流A中に含有されている水素分子の60〜90モル%、有利には75〜85モル%が生成ガス混合物A−分流1(ガス状出発流1)に由来し、残りの10〜40モル%又は15〜25モル%がガス状出発流4に由来している、本発明の方法が適切である。
【0042】
ガス状出発流1〜4を経て出てくるガス状出発流としては、殊に水蒸気又は微細粒状水滴からの噴霧がこれに該当する。このような例えば水蒸気からのガス状出発流5は、適切には100〜200℃、屡々120〜160℃の温度及び1バール〜4バールの圧力を有する。
【0043】
本発明によれば、本発明の方法における水蒸気から成るこのようなガス状出発流5は、ガス状出発流中で、これにガス状出発流4が添加される前に統合される。
【0044】
この場合に前記の統合(integration)は、ガス状出発流2に差し当たりガス状出発流5を、かつこの場合に生じるガス状混合物にガス状出発流3を添加導入することにより行うのが適切である。
【0045】
この場合に得られる出発混合物流を、有利には先ず、生成ガス混合物A−分流2をその中で冷却し(例えば500〜600℃から150〜350℃まで)、かつ同時に出発流を加温する(例えば20〜200℃から350〜530℃まで)ための、間接的な熱交換器を通過させる。水蒸気の存在は、加熱により生じるコークス化の危険性を低下させる。その後で、本発明により必要なガス状出発流4と前記のような温度にされた出発混合物流とを一緒にして、推進噴射混合物流を形成させる。後者は、本発明によれば350〜550℃の温度及び2〜5バールの圧力を有するのが有利である。
【0046】
ガス状出発流5としての水蒸気の共用は、以下の記載のように、殊に不均一系触媒作用脱水素における触媒耐用時間のために特に好適である。しかしながら本発明によれば、このようなガス状出発流5の共用をできるだけ断念して、その際にガス状出発流2中に有利に含有されている、部分酸化の範囲内で行われる反応水形成により生じる水蒸気を放置するのが有利である。本発明によれば1〜20又は15もしくは10容量%、屡々4〜6容量%の反応ガス混合物装入流A中の水蒸気含有率が好適であると証明された。
【0047】
殊に、本発明の方法で生成ガス混合物A−分流2を、本発明による好適性の低い変法で、それ自体として少なくとも1つの酸化反応器のチャージのために使用する場合には、本発明によれば、分離帯域B中に生じる残留ガスから、その中に含有されているプロパン、酸素分子及び場合によるプロピレンとは異なる成分の少なくとも1部分量を、それがガス状出発流2の形成に利用される前に、分離することが好適である。
【0048】
相応する分離は、例えばEP−A117146、US−A3161670、DE−A3313573、DE−A10316039及びDE−A10245585中に記載されている。
【0049】
本発明の方法のためには、反応帯域A中で使用すべきループモードの範囲で、生成ガス混合物流Aの全量に対する生成ガス混合物A−分流1の量が25〜75容量%又は30〜70容量%、有利には40〜60容量%及び特別好ましくは50容量%である場合が好適である。
【0050】
本発明による好ましいガス状出発流1、2、3及び4並びに場合による水蒸気からのガス状出発流5から成っているだけの反応ガス混合物装入流Aの通過の際のプロパン変換率は、本発明の方法では(反応帯域Aを通る反応ガス混合物装入流Aの1回通過に対して、並びに反応ガス混合物装入流A中に含有されている新鮮プロパンとガス状出発流2から生じるプロパンとからの合計量に対して)、20〜30モル%であることができる。しかしながら本発明の方法は、前記のプロパン変換率が30〜60モル%、有利には35〜55モル%、特別好ましくは35〜45モル%である場合に、特別好適である。
【0051】
前記のプロパン変換率の実現化のためには、反応帯域A中での不均一系触媒作用部分的プロパン脱水素を0.3〜10バール又は有利には3バールまでの作動圧で実施することが好適である。水蒸気の存在は、水の熱容量を介して脱水素の吸熱作用の一部分を平衡化することができ、かつ他方で水蒸気での希釈は、出発物質分圧及び生成物分圧を低下させ、これが脱水素の平衡位置に好適に作用する。このような希釈作用は、更なるガス状出発流としての他の不活性ガス(例えばN、CO等)の共用によっても可能にすることができる。しかしながらこれに反して、水蒸気は、既に言及したように、付加的に反応帯域A中の触媒耐用時間に有利に作用する。
【0052】
図3は、このような反応帯域Aの可能な2つの実施形を示している(図3中に記載の直径は「mm」の次元を有する)。ここで数値は次のものを表す:
1 =推進噴射混合物流
2 =生成ガス混合物A−分流2
3 =触媒固定床
4 =噴射ノズル
5 =混合管
6 =ディフューザー。
【0053】
この場合に、推進噴射混合物流は、例えば148t/hであり、486℃の温度及び3.11バール又は3.51バールの圧力を有することができる。生成ガス混合物A−分流2は、相応して同様に148t/hであり、例えば典型的には600℃の温度及び2.3バールの圧力を有することができる。即ち、吸引側の圧力は2.3バールであってよい。これは、296t/hの全循環流に相応する。触媒としては、例えばDE−A10219879の実施例4による、1.5mmの直径及び典型的に3〜7mmの長さを有する押出成形体を使用することができる(全量:例えば30t)。触媒固定床中のそれの嵩密度は、例えば1200kg/m(緩い)〜1350kg/m(固い)でありうる。触媒床の直前は、典型的に2.71バールの圧力が存在した。
【0054】
反応ガス混合物装入流Aの主内容物は、典型的には次の通りである:
プロペン >0〜25、多くの場合に1〜10、屡々2〜7容量%;
アクロレイン 0〜1、多くの場合に0〜0.5、屡々0〜0.25容量%;
アクリル酸 0〜0.25、多くの場合に0〜0.05、屡々0〜0.03容量%;
CO 0〜5、多くの場合に0〜3、屡々0〜2容量%;
プロパン 5〜50、有利には10〜20容量%;
窒素 30〜80、有利には50〜70容量%;
酸素 >0〜5、有利には1.0〜2.0容量%;
O ≧0〜20、有利には5.0〜10.0容量%;
0.5〜10、有利には1〜5容量%。
【0055】
しかしながら既に言及したように一般には、反応ガス混合物装入流A中のできるだけ低い水蒸気含分が好ましく、かつ推奨される。反応帯域A中で求められるプロパン変換率の増加に伴い、脱水素化触媒の満足しうる耐用時間を保証するために、反応ガス混合物装入流A中の有意義な水蒸気量の存在の必要性が増加する。
【0056】
反応ガス混合物装入流A中の含有水素分子と含有酸素分子とのモル比が約2:1である場合が本発明の方法のために好適である。この場合に、反応ガス混合物装入流A中の含有プロパンに対する含有水素分子のモル比は、通例は同時に≦5である。反応ガス混合物装入流A中に含有されているプロパンに対するその中に含有されている水蒸気のモル比は、本発明の方法では、多くの場合に≧0.05〜2又は1までになる。
【0057】
本発明の方法では、生成ガス混合物流Aが反応しなかったプロパン及び所望のプロピレンを、プロパンに対するプロペンのモル比0.2又は0.3〜0.5(場合によっては0.66まで)で含有するように、反応帯域Aを構成することが有利である。
【0058】
反応ガス混合物装入流Aの反応帯域A1回通過に対して、反応帯域Aの外に導びかれる(流動性の、即ち液状又はガス状の)熱媒体による目標の熱交換によって、反応帯域Aを等温性に構成することができる。しかしながら、同じ基準で断熱的に、即ち本質的に反応帯域Aの外に導びかれる熱媒体でのそのような目標の熱交換なしに実施することもできる。後者の場合に、反応帯域Aに供給される反応ガス混合物装入流Aの反応帯域Aの1回通過に対する総反応熱(Brutwaermetoenung=gross thermal character)が、技術水準として評価されている文献の認識により推奨され、かつ以後に記載の手段で、吸熱的(負)にも又は自熱的(本質的に零)又は発熱的(正)にも構成することもできる。
【0059】
典型的には、プロピレンまでのプロパンの不均一系触媒作用部分的脱水素は、比較的高い反応温度を必要とする。この場合に達成可能な変換率は、通常は熱力学的平衡により可能とされる。典型的な反応温度は、300〜800℃又は400〜700℃である。この場合に、プロピレンまで脱水素されたプロパン1分子当たり水素1分子が生じる。
【0060】
高い温度及び反応生成物Hの除去は、不活性希釈による部分圧低下と同様に、目的生成物の方向へ平衡位置をシフトさせる。
【0061】
原則的に、反応帯域A中での不均一系触媒作用部分的プロパン脱水素は、(擬)断熱的に、かつこの場合には吸熱的に実施することができる。この場合に、450〜700℃(もしくは550〜650℃)の温度を有する反応ガス混合物装入流Aが少なくとも1つの触媒床に導かれる。それ(渦動床も固定床もこれに該当する;触媒固定床が本発明では好ましい)を通る断熱的通過の場合には、反応ガス混合物は通常、水素燃焼の結果として差し当たり発熱し、次いで反応及び希釈に応じて約30℃〜200℃だけ温度低下する。より低い反応温度は、使用触媒床の長い耐用時間を可能とする。より高い反応温度は高い変換率を助長する。
【0062】
使用技術的観点から、不均一系触媒作用プロパン脱水素をトレー反応器としての反応帯域A中で実現するのが有利である。
【0063】
これは、空間的に上下に連続している脱水素に触媒作用する1以上の触媒床を有するのが有利である。触媒床数は1〜20、適切には2〜8又は3〜6であることができる。トレー数の増加に伴い、プロパン変換率を容易に高めることができる。触媒床は、半径方向又は軸方向に連続的に配置されているのが有利である。使用技術的観点から、触媒固定床タイプをそのようなトレー反応器として使用するのが有利である。
【0064】
最も簡単な場合には、触媒固定床は、竪炉反応器中に軸方向で又は同心的に設置されている円筒状グリッドの環スリット中に配置されている。しかしながら、セグメント中に環スリットを重ねて配置して、ガスを、1セグメント中で半径方向通過の後に、次のその上に又はその下に存在するセグメント中に導びくこともできる。
【0065】
1つの触媒床から次の触媒床までのその経路上の反応ガス混合物装入流Aを、例えば、熱ガスで加熱された熱交換体表面(例えばリップ)上の導通又は熱い燃焼ガスで加熱された管に通すことによって、トレー反応器中で中間加熱に供するのが有利である(材料はSi−含有鋼、殊に例えばタイプ1.4841の特殊鋼が有利である)。
【0066】
更にトレー反応器が断熱的に作動される場合には、特にDE−A19937107中に記載の、殊に例示されている実施形の触媒の使用の場合に記載のようなプロパン変換率≦30モル%を得るためには、反応ガス混合物装入流Aを450〜550℃の温度まで予め加熱して脱水素反応器中に導き、かつトレー反応器中でこの温度を保持することで充分である。即ち、全体のプロパン脱水素を、極めて低い温度で実行することができ、このことは触媒固定床の耐用時間のために特別好適であることが立証されている。高いプロパン変換率を得るためには、反応ガス混合物装入流Aを、高い温度まで予熱して脱水素反応器中に導き(これは、700℃までであってよい)、かつトレー反応器内でこの高い温度を保持することが有利である。
【0067】
前記の中間加熱を直接的方法(自熱法)で実施することがなお一層好ましい。このために通常は、反応ガス混合物流に、第1触媒床(流れ方向に対して)の後にも、次の触媒床との間にも、限られた範囲の酸素分子が添加される。従って(通常は脱水素触媒自体が触媒作用をする)、反応ガス混合物中に含有されている、不均一系触媒作用プロパン脱水素の過程で生じかつ/又は反応ガス混合物に添加された水素分子(場合によっては小割合で次のプロパン燃焼を伴う)の限られた燃焼が惹起されうる(使用技術的観点から、トレー反応器中に、特別特異的に(選択的に)水素の燃焼に触媒作用をする触媒が充填されている触媒床を挿入することも有利でありうる。そのような触媒としては例えば、刊行物US4788371、US4886928、US5430209、US5530171、US5527979及びUS5563314に記載の任意ものがこれに該当し;例えばそのような触媒床は交互にトレー反応器中に収納して脱水素触媒を含有する床にすることができる)。本発明によれば、反応ガス混合物装入流Aの形成のためだけに、外から水素分子を添加することが好ましい。この場合に放出される反応熱は、擬自熱的方法(総反応熱は、実質的に零である)で、不均一触媒作用プロパン脱水素の殆ど等温的な操作法を可能とする。触媒床中の反応ガスの増加性滞留時間の選択により、低下性の又は実質的に一定温度でのプロパン脱水素が可能となり、このことは特別長い触媒耐用時間を可能とする。
【0068】
一般に前記のような酸素供給を、その中の水素分子含有量に対する反応ガス混合物の酸素含有率が0.5〜50容量%又は30容量%まで;有利には10〜25容量%になるように実施すべきである(この反応は、反応ガス混合物装入流A中の相応する含有率を得るためにも好適である)。この場合に酸素源としては、純粋な酸素分子又は不活性ガス例えばCO、CO、N及び/又は希ガスで希釈された酸素も、殊に空気もこれに該当する(酸素源として、専ら空気を使用するのが好ましい)。生じる燃焼ガスは、通例、付加的に希釈作用をし、かつこれにより不均一系触媒作用プロパン脱水素を促進する作用をする。このことは、殊に燃焼の範囲内で生じる水蒸気にも当て嵌まる。
【0069】
不均一系触媒作用プロパン脱水素の等温性は、トレー反応器中で、触媒床の間の空間内に閉鎖された、その充填の前に好適ではあるが必要ではない真空化されたビルトイン(例えば管状の)を取り付けることによって、更に改良することができる。このビルトイン(Einbauten)は、特定の温度以上で蒸発するか又は溶融して、この場合に熱を消費し、この温度を下回るところで、再び凝縮してその場合に熱を放出する、好適な固体又は液体を含有している。
【0070】
反応ガス混合物装入流Aは、殊に前記のような自熱的操作法の場合には、次のものを含有するのが有利である:
プロパン 15〜25容量%
プロピレン 2〜6容量%
水蒸気 5〜20容量%
水素分子 2〜10容量%
窒素分子 40〜75容量% 及び
酸素分子 >0〜3容量% 。
【0071】
本発明によれば、脱水素触媒全量(全ての床の合計)上への反応ガス混合物装入流Aの典型的な負荷率は、250〜5000h−1(高負荷法では40000h−1まで)、有利には10000〜25000Nl/l・h、特別好ましくは15000〜20000Nl/l・hである。プロパンでの相応する負荷率は、典型的には50〜1000h−1(高負荷法では40000h−1までも)、有利には2000〜5000Nl/l・h、特別好ましくは3000〜4000Nl/l・hである。
【0072】
本発明の方法は、反応帯域A中で高いプロパン変換率の場合にも、95モル%以上のプロピレン形成選択率を可能とする。
【0073】
反応帯域A(脱水素反応器)から取り出される生成ガス混合物A−分流2は、不均一系触媒作用プロパン脱水素のために選択される反応条件に相応して、通例、0.3〜10バール、有利には1〜3バールの圧力で、かつ屡々450〜650℃又は750℃までの温度、多くの場合には500〜600℃の温度を有する。これは、通例、プロパン、プロペン、H、N、HO、メタン、エタン(最後の2つは大抵、低いプロパン量の熱分解の結果として生じる)、エチレン、ブテン−1、その他のブテン、例えばイソ−ブテン、他のC−炭化水素、例えばn−ブタン、イソ−ブタン、ブタジエン等、CO及びCOを含有するが、通常の場合には酸素化物(Oxygenate)、例えばアルコール、アルデヒド及びカルボン酸(通例は≦9C−原子を有する)をも含有する。更に、少量のガス状出発流2に由来する成分を含有することができる。
【0074】
EP−A117146、DE−A3313573及びUS−A3161670は、生成ガス混合物A−分流2を少なくとも1つの酸化反応器のチャージのために使用することを推奨しているが、本発明の方法のためには、それから、必要なプロピレンを含有する生成ガス混合物A−分流2から、次のプロペン部分酸化のためのプロペン源としてのその使用の前に、その中に含有されているプロパン及びプロピレンとは異なる成分の少なくとも一部分量を分離除去することが有利であると考えられている。この場合に、DE−A10211275の要件を考慮すべきである。
【0075】
ここでは先ず最初に、本発明による不均一系触媒作用プロパン脱水素のために、原則的に技術水準で公知の全ての脱水素触媒が使用されることをなお書き留める。これは、大ざっぱに2つの群に分類することができる。即ち、酸化物(例えば酸化クロム及び/又は酸化アルミニウム)であるもの及び少なくとも1つの大抵は酸化性の担体上に沈着されている、通例は比較的貴なる金属(例えば白金)から成っているものに分類できる。従って特に、WO01/96270、EP−A731077、DE−A10211275、DE−A10131297、WO99/46039、US−A4788371、EP−A0705136、WO99/29420、US−A4220091、US−A5430220、US−A5877369、EP−A0117146、DE−A19937196、DE−A19937105並びにDE−A19937107で推奨されている全ての脱水素化触媒を使用することができる。DE−A19937107の例1、例2、例3及び例4による触媒も特別に使用することができる。
【0076】
この場合にこれは、二酸化ジルコニウム10〜99.9質量%、酸化アルミニウム、二酸化珪素及び/又は二酸化チタン0〜60質量%及び元素周期律表の第1又は第2主族の元素少なくとも1種、第3副族の元素、第8副族の元素、ランタン及び/又は錫0.1〜10質量%を含有する(但し質量%の合計は100質量%である)脱水素化触媒である。
【0077】
これらの刊行物の実施例及び比較例中で使用されている脱水素触媒も特別好適である。
【0078】
脱水素触媒は一般に、触媒ストランド(典型的な直径は1〜10mm、好ましくは1.5〜5mm;典型的な長さは1〜20mm、好ましくは3〜10mm)、タブレット(有利にはストランドにおけると同様な寸法)及び/又は触媒リング(典型的な外径及び長さは、2〜30mm又は10mmまで、有利な壁厚1〜10mm又は5mm又は3mmまで)である。渦動床(又は流動−又は運動床)中での不均一系触媒作用脱水素の実施のために、相応する微細粒状触媒が使用される。この触媒固定床は、本発明による反応帯域A中で好ましい。
【0079】
通例、脱水素化触媒(殊にこの明細書中の例で使用され、かつDE−A19937107中で推奨されている、殊にDE−Aの例示触媒)は、それらがプロパンの脱水素にもプロパンの及び水素分子の燃焼にも触媒作用をすることができる状態にある。この場合に、水素燃焼は、プロパンの脱水素に比べても、この触媒での競合状態の場合のその燃焼に比べても非常に迅速に進行する。
【0080】
更に、不均一系触媒作用下のプロパン脱水素のために、原則的に技術水準で公知の全てのタイプの反応器(Reactortype)及び変法が使用される。例えば脱水素触媒に関して引用されている技術水準並びにこの明細書の冒頭に引用されている技術水準の全ての文献がこのような変法の記載を含有している。
【0081】
Catalytica(R)Studies Division,Oxidative Dehydrogenation and Alternative Dehydrogenation Processes,Study Number 4192 OD、1993,430 Ferguson Drive,Mountain View,California, 94043−5272 U.S.A.も、本発明により好適な脱水素化法の比較的詳細な記載を含有している。
【0082】
本発明によれば、生成ガス混合物A−部分流2中に含有されているプロパン及びプロピレンとは異なる成分の少なくとも50容量%、有利には少なくとも75容量%、特別好ましくは少なくとも90容量%及び特別好ましくは少なくとも95容量%を、それが本発明の方法の部分酸化のためのプロペン源として使用される前に、分離除去することが有利である。このためには原則的に、刊行物DE−A102004032129、DE−A102005013039、DE−A102005009891、DE−A102005010111、DE−A102005009885、DE−A102005028798及びDE−A10245585中に記載の全ての分離変法を使用することができる。
【0083】
本発明による要件のために好適な可能性は、例えば有利に冷却された(有利には10〜100又は70℃の温度まで)生成ガス混合物A−分流2を、例えば0.1〜50バール、有利には5〜15バールの圧力で、かつ例えば0〜100℃、有利には20〜40℃の温度で、その中にプロパン及びプロピレン(生成ガス混合物A−分流2の他の成分に比べて目的のために好適である)が吸収される、(有利には高沸点を有する)有機溶剤(有利には疎水性の)と接触させる(例えば1回通過により)ことができる。後続の脱着、精留及び/又は後続のプロピレン−部分酸化に関して不活性に挙動し、かつ/又はこの部分酸化時に反応成分として必要であるガス(例えば空気又は酸素分子と不活性ガスとからの他の混合物)でのストリッピングによって、混合物としてのプロパン及びプロピレンは、精製された形で回収でき、かつこの混合物は、部分酸化のためにプロピレン源として使用することができる(有利には、ドイツ特許出願DE−A102004032129の比較例1中に記載のように処理される)。このような吸収の、場合により水素分子を含有している排ガスを、例えば圧力変動吸収−及び/又は膜分離(例えば、DE−A10235419のように)に供し、次いで、分離された水素を、反応ガス混合物装入流Aの成分として(ガス状出発流4として)共に使用することができる。
【0084】
しかしながら、前記の分離法におけるC−炭化水素/C−炭化水素分離係数は、比較的限られており、DE−A10245585中に記載の要件を屡々満足していない。
【0085】
従って吸収を介する前記の分離工程の変法として、本発明の目的にとっては、屡々圧力変動性吸収又は加圧精留が好ましい。
【0086】
前記の吸収分離のための吸収剤として、原則的に、プロパン及びプロピレンを吸収することのできる全ての吸収剤が好適である。吸収剤は、疎水性及び/又は高温沸騰性である有機溶剤が有利である。この溶剤は、低くても120℃、好ましくは低くても180℃、有利には200〜350℃の、殊に250〜300℃、より好適には260〜290℃の沸点(1atmの常圧で)を有することが有利である。110℃を上回る引火点(1バールの常圧で)を有するのが適切である。一般に吸収剤としては、比較的非極性の有機溶剤、例えば外側に活性極性基を含有しない脂肪族炭化水素も、芳香族炭化水素も好適である。一般に、この吸収剤は、プロパン及びプロピレンに関するできるだけ高い溶解度と同時にできるだけ高い沸点を有することが望ましい。吸収剤の例としては、脂肪族炭化水素、例えばC〜C20−アルカン又は−アルケン又は芳香族炭化水素、例えばO−原子に付いた嵩高な(立体的に嵩高な)基を有するパラフィン蒸留分又はエーテルからの中油フラクシヨン又はそれらの混合物が挙げられ、この際、これに極性溶剤、例えばDE−A4308087中に開示されている1,2−ジメチルフタレートが添加されていてもよい。更に、安息香酸及びフタル酸と炭素原子数1〜8を有するアルカノールとのエステル、例えば安息香酸−n−ブチルエステル、安息香酸メチルエステル、安息香酸エチルエステル、フタル酸ジメチルエステル、フタル酸ジエチルエステル並びにいわゆる熱媒油、例えばジフェニル、ジフェニルエーテル及びジフェニルとジフェニルエーテルとからの混合物又はこれらの塩素誘導体及びトリアリールアルケン、例えば4−メチル−4’−ベンジル−ジフェニルメタン及びその異性体2−メチル−2’−ベンジル−ジフェニル−メタン、2−メチル−4’−ベンジルジフェニル−メタン及び4−メチル−2’−ベンジル−ジフェニルメタン及びこのような異性体の混合物が挙げられる。好適な吸収剤は、好ましくは共沸組成でのジフェニルとジフェニルエーテルとからの、殊にジフェニル(ビフェニル)約25質量%とジフェニルエーテル、例えば市場で得られるDiphyl(R)(例えばBayer Aktiengesellschftからの)約75質量%とからの溶剤混合物である。この溶剤混合物は屡々、溶剤、例えばジメチルフタレートを、全溶剤混合物に対して0.1〜25質量%の量で添加されて含有している。特別好適な吸収剤は、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン及びオクタデカンでもあり、この際、殊にテトラデカンが特別好適であることが判明している。使用吸収剤が一方で前記の沸点を満足し、他方で同時に高すぎない分子量を有する場合が好適である。吸収剤の分子量が≦300g/モルであるのが有利である。DE−A3313573中に記載の炭素原子数8〜16を有するパラフィン油も好適である。好適な市販製品の例は、Firma Haltmannから提供されている製品、例えばHalpasolei、例えばHalpasol250/340i及びHalpasol 250/275i、並びにPKWF及びPrintosolなる名称の印刷インキ油である。芳香物不含の市販製品、例えばPKWFafタイプのものが好ましい。それが少量の残留芳香物含分を有する場合には、これを、その記載の使用に先立ち、精留及び/又は吸収によって減少させることができ、1000質量ppmを下回る値まで抑えることが重要である。他の好適な市販品はn−パラフィン(C13〜C17)又はErdoel-Raffinerie-Emsland GmbHのMihagol(R)5、Firma CONDEA Augusta S.p.A(Italien)又はSASOL Italy S.p.A.のLINPAR(R)14−17、SlowakeiのFirma SLONAFTのノルマルパラフィン(重質)C〜C18である。
【0087】
前記製品の線状炭化水素の含分(ガスクロマトグラフィ分析の面積百分率で記載)は典型的には次の通りである:
〜C13の合計:1%を下回る;C14:30〜40%;C15:20〜33%;
16:18〜26%;C17:18%まで;C≧18:<2%。
【0088】
Fa.SASOLの製品の典型的な組成:
13:0.48%;C14:39.8%;C15:20.8%;C16:18.9%;
17:17.3%;C18:0.91%;C19:0.21%。
【0089】
Fa.Haltermannの製品の典型的な組成:
13:0.58%;C14:33.4%;C15:32.8%;C16:25.5%;
17:6.8%;C≧18:<0.2%。
【0090】
連続的操作で、吸収剤の組成は、方法限定的に相応して変動される。
【0091】
吸収の実施は特別な限定を指示しない。当業者に慣用の全ての方法及び条件を使用することができる。生成ガス混合物−A−分流2は、1〜50バール、好ましくは2〜20バール、より好適には5〜15バールの圧力及び0〜100℃、殊に20〜50又は40℃の温度で、吸収剤と接触させるのが有利である。この吸収は、塔中でも急冷装置中でも行うことができる。この場合に、並流又は向流(これが好ましい)で操作することができる。好適な吸収塔は、例えば棚段塔(鐘−及び/又は篩棚を有する)、形状パッキン(例えば100〜1000又は750m/mまでの比表面積を有する金属板パッキン、例えばMellapak(R)250Y)を有する塔及び充填体塔(例えばラシッヒ−充填体で充填された)である。しかしながら、細流−及びスプレー塔、グラファイト−ブロック吸収体、表面吸収体、例えば厚層−及び薄層吸収体並びにプレートスクラバ(Teller-waescher)、クロススプレースクラバ(Kreuzschleierwaescher)及びロータリースクラバを使用することもできる。更に、ビルインを有するか又は有しない気泡塔中で吸収を行なわせることが好適でありうる。
【0092】
吸収剤からのプロパン及びプロピレンの分離は、ストリッピング、放圧蒸留(フラッシング)及び/又は蒸留によって行うことができる。
【0093】
吸収剤からのプロパン及びプロピレンの分離は、特にストリッピング及び/又は脱着によって行われる。脱着は、圧力−及び/又は温度変化による常法で、有利には0.1から10バールまで、殊に1から5バールまで、より好ましくは1から3バールまでの圧力及び0から200℃まで、殊に20から100℃まで、より好ましくは30から70℃まで、特別好ましくは30から50℃までの温度で実施することができる。ストリッピングのために好適であるガスは、例えば水蒸気であるが、殊に酸素−/窒素−混合物、例えば空気が好ましい。空気又は酸素含有率が10容量%を上回っている酸素−/窒素−混合物を使用する場合には、このストリッピング処理の前及び/又はその間に、爆発範囲を減少するガスを添加することが有意義である。そのために、20℃での比熱容量≧29J/モル・Kを有するガス、例えばメタン、エタン、プロパン(好ましい)、プロペン、ベンゼン、メタノール、エタノール並びにアンモニア、二酸化炭素及び水が特別好適である。本発明によれば、C−炭化水素は、そのような添加物として避けることが好ましい。ストリッピングのためには、ビルトインを有するか又は有しない気泡塔も特別好適である。
【0094】
吸収剤からのプロパン及びプロピレンの分離は、蒸留又は精留によって行うこともでき、この際には、パッキン、充填体又は適当なビルトインを有する当業者に慣用の塔を使用することができる。蒸留又は精留の場合の好適な条件は、0.01〜5バール、殊に0.1〜4バール、より好ましくは1〜3バールの圧力及び50〜300℃、殊に150〜250℃の温度(塔底の)である。
【0095】
この吸収剤からのストリッピングにより得られる本発明の方法の反応帯域Bのために原理的に好適であるプロピレン源は、部分酸化のチャージのためのその使用の前に、随伴ストリップされる吸収剤の損失(例えばデミスター及び/又は深部フィルター中の沈殿)を減少させ、本発明により実施すべき部分酸化を、同時に吸収剤の前で保護するか又はC/C−炭化水素間の分離作用を更に改良するために、もう一つの方法工程を実施することができる。吸収剤のこのような分離は、当業者に公知の全ての方法工程によって行うことができる。本発明の方法の分野で好ましいこのような分離の実施形は、例えば水を用いるストリッピング装置からの排出流の急冷である。この場合に、吸収剤はそれを負荷している排出流から水で洗出され、この排出流は同時に水で負荷される(少量の水は、本発明の部分酸化用の触媒の活性を助長する作用をする)。この洗浄又は急冷は、例えば液体補集缶の上の脱着塔の頭部で、水の向流スプレーによって又は特有の装置中で行うことができる。
【0096】
この分離効果を補助するために、急冷室中には例えば、当業者に、精留、吸収及び脱着で公知であるような急冷表面積を拡大するビルトインを取り付けることができる。
【0097】
その限りにおいて、水は好ましい洗浄剤である。それというのも、これは通常は、後続の部分酸化を本質的に妨げないからである。この水がプロパン及びプロピレンで負荷された排出流から吸収剤を洗出した後に、この水/吸収剤−混合物を相分離に供し、かつ処理された量の少ない排出流を本発明により実施すべき部分酸化に直接供給することができる。
【0098】
本発明の方法にとって有利な方法で、殊に空気を用いて吸収剤からプロピレン/プロパン−混合物がストリッピング除去される場合に、通例、部分酸化のために使用可能な反応出発混合物を直接取得することができる。そのプロパン含分が本発明にとってなお満足でない場合には、それに、含有プロピレンの本発明により実施すべき部分酸化のためのその使用の前に、なお新鮮プロパンを添加することができる。この残留ガス(ガス状出発流2)を介して、新鮮プロパンは適切に不均一系触媒作用脱水素に(反応ガス混合物供給流Aの成分として)送り戻される。従って、相応するプロパン量だけ、ガス状出発流3を介する新鮮プロパンの供給量は減少される。極端な場合には、プロピレンの部分酸化の実施の前の新鮮プロパンの供給が完全にこれに関連する反応ガス出発混合物中に行なわれ、次いでここから、残留ガス中に残留している成分として、本発明により実施すべき部分酸化の経過の後にはじめて不均一系触媒作用プロパン脱水素のための反応ガス混合物装入流Aに供給される場合に、不均一系触媒作用プロパン脱水素に必要な新鮮プロパンの供給を完全に省くことができる。場合によっては新鮮プロパンを、不均一系触媒作用脱水素とプロピレン部分酸化との間に存在するC−分離に(例えばストリッピングガスとして)供給することもできる。
【0099】
アクリル酸までのプロピレンの2工程部分酸化の場合には、新鮮プロパンの一部分又は全てを、この部分酸化の第2工程用の反応ガス出発混合物中に供給することもできる(いずれにせよ、この反応ガス出発混合物は、その評価を既に部分酸化の第1工程用の反応ガス出発混合物に当て嵌める場合にも、屡々爆発性ではない)。このことは特別有利である。それというのも、プロピオンアルデヒド及び/又はプロピオン酸までのプロパンの不所望な副反応が、特にその条件下での最初の部分酸化工程(プロピレン→アクロレイン)から生じるからである。新鮮プロパン供給を、第1及び第2部分酸化工程に実質的に平等に分けることも有利でありうる。
【0100】
新鮮プロパンを部分酸化工程用の反応ガス出発混合物中に供給するこの可能性によって、この反応ガス出発混合物の組成を確実に非爆発性に構成することができる。場合によっては、残留ガスの一部分量をこの目的のために、プロピレン−及び/又はアクロレイン部分酸化に直接送り戻すこともできる。必要な場合には、新鮮プロパンと残留ガスとからの混合物もこの目的のために使用することもできる。部分酸化工程のためのこの反応ガス出発混合物が爆発性であるか又は否かの疑問の回答にとって決定的なことは、特定の出発条件(圧力及び温度)下にある反応ガス出発混合物中で、局所的引火源(例えば灼熱白金線)により惹起される燃焼(引火、爆発)が拡がるか又は否かである(DIN51649及びWO04/007405中の実験記載を参照)。拡がる場合には、ここで混合物は爆発性であると称される。拡がらない場合には、この明細書中で混合物は、非爆発性として分類される。反応ガス出発混合物が非爆発性である場合には、このことはプロピレンの本発明による部分酸化の経過で生じる反応ガス混合物にも当て嵌まる(WO04/007405参照)。
【0101】
しかしながら、本発明の方法では、通例、反応ガス混合物装入流Aのみに新鮮プロパンが添加含有される。
【0102】
しかしながら本発明は、この方法のために必要である新鮮プロパンの最大でも一部分(例えば75%のみ又は50%のみ又は25%のみ)を、反応ガス混合物装入流Aに、かつ少なくとも一部分(通例は残量、場合によっては全量)を、部分酸化の反応ガス混合物出発ガスに供給する方法構成にも関する。その外は、この出願のインテグラルな部分を形成しているWO01/96170中に記載されているように実施することができる。
【0103】
自体公知の方法で、酸素分子を用いるアクリル酸までのプロピレンの不均一系触媒作用気相−部分酸化は、原則的に、反応軸に沿って連続している2つの工程で経過し、その第1工程はアクロレインまで、かつ第2工程はアクロレインからアクリル酸までに至る。
【0104】
2つの時間的に連続している工程でのこの反応経過は、自体公知のように、本発明の方法をアクロレインまでの工程(主としてアクロレインを形成する工程)で中断し、この工程で目的生成物分離を行なうか又は本発明の方法を、専らアクリル酸を形成するまで継続し、かつ目的生成物分離を初めて行う可能性を開示している。
【0105】
本発明により専らアクリル酸を形成するまで本発明の方法を実施する場合には、本発明ではこの方法を2工程で、即ち2つの前後に配置された酸化工程で実施することが有利であり、この際、目的に好適なように、双方の酸化工程の各々で、使用すべき触媒固定床及び有利にはその他の反応条件、例えば触媒固定床の温度を最適なように適合させることが有利である。
【0106】
第1酸化工程(プロピレン→アクロレイン)の触媒を得るために活性物質として特別好適である元素Mo、Fe、Biを含有している多金属酸化物は、一定の範囲内で第2酸化工程(アクロレイン→アクリル酸)にも触媒作用することできるが、第2酸化工程のために通常は、その活物質が少なくとも1個の元素Mo及びVを含有している多金属酸化物である触媒が好ましい。
【0107】
従って、本発明により実施すべき、その触媒が活物質として元素Mo、Fe及びBiを含有する多金属酸化物少なくとも1種を有する触媒固定床でのプロピレンの不均一系触媒作用部分酸化の方法は、殊にアクロレイン(並びに場合によりアクリル酸)の製造のための1工程法又はアクリル酸の2工程製造のための第1反応工程として好適である。
【0108】
この場合に、本発明により得られる反応ガス出発混合物の使用下での、アクロレイン並びに場合によってはアクリル酸までのプロピレンの不均一系触媒作用1工程部分酸化又はアクリル酸までのプロピレンの不均一系触媒作用2工程部分酸化の実現は、個々に、刊行物EP−A700714(第1反応工程;そこに記載のようであるが、管束反応器を通る塩浴及び反応ガス出発混合物の相応する向流法でも)、EP−A700893(第2反応工程;そこに記載のようであるが、相応する向流法でも)、WO04/085369(殊にこの刊行物は、この刊行物のインテグラルな部分として考慮される)(2工程法として)、WO04/85363、DE−A10313212(第1反応工程)、EP−A1159248(2工程法として)、EP−A1159246(第2反応工程)、EP−A1159247(2工程法として)、DE−A19948248(2工程法として)、DE−A10101695(1工程又は2工程)、WO04/085368(2工程法として)、DE−A102004021764(2工程)、WO04/085362(第1反応工程)、WO04/085370(第2反応工程)、WO04/085365(第2反応工程)、WO04/085367(2工程で)、EP−A990636、EP−A1007007及びEP−A1106598に記載のように実施することができる。
【0109】
このことは、殊にこれら刊行物中に含有されている全ての実施例に当て嵌まる。これはこれら刊行物中に記載のように実施することができるが、第1の反応工程(プロピレンからアクロレインまで)のための反応ガス出発混合物として、本発明により得られる反応ガス出発混合物2を使用する違いがある。他のパラメータに関しては、記載の刊行物の実施例中におけると同様である(殊に、触媒固定床及び触媒固定床の反応成分負荷率に関して)。技術水準の前記の実施例で2工程で処理され、双方の反応工程の間で2次酸素(2次空気)供給が行われる場合には、これらは適当な方法で行われるが、その量については、第2反応工程のチャージ混合物中の酸素分子とアクロレインとのモル比が記載の刊行物の実施例中のそれに一致するように適合させるような方法で行われる。不均一系触媒作用部分的気相酸化のための本発明による反応ガス出発混合物は、例えば簡単な方法で、生成ガス混合物A−分流2に又は生成ガス混合流A’に、部分酸化に必要である程度の量の酸素分子を添加することによって得られる。この供給は、純粋な酸素分子として又は酸素分子と不活性ガスとからの混合物(又は不活性ガスの存在下に)として行うことができる。このような混合物としては、本発明によれば空気が好ましい。本発明によれば、生成ガス混合物Bがなお反応しなかった酸素分子を含有するようにこの酸素供給を行うことが重要である。
【0110】
通例、部分酸化用の反応ガス出発混合物中に含有されているプロピレンに対する部分酸化用の反応ガス出発混合物中に含有されている酸素分子のモル比は、≧1及び≦3になる。
【0111】
それぞれの反応工程にとって特別好適である多金属酸化物触媒は、多くの場合に文献に記載されており、当業者に周知である。例は、EP−A253409、該当米国特許明細書の5頁に記載されている。
【0112】
DE−A4431957、DE−A102004025445及びDE−A4431949にも、それぞれの酸化工程のために好適な触媒が開示されている。このことは殊に、前記の双方の先行刊行物中の一般式Iのものに当て嵌まる。刊行物DE−A10325488、DE−A10325487、DE−A10353954、DE−A10344149、DE−A10351269、DE−A10350812及びDE−A10350822は、それぞれの酸化工程のために特別有利な触媒を開示している。
【0113】
アクロレイン又はアクリル酸又はそれら混合物までのプロピレンの不均一系触媒作用気相部分的酸化の本発明による反応工程のために、原則的には、Mo、Bi及びFeを含有する全ての多金属酸化物が活性物質として使用される。
【0114】
これは、殊にDE−A19955176の一般式Iの多金属酸化物活物質、DE−A19948523の一般式Iの多金属酸化物活物質、DE−A10101695の一般式I、II及びIIIの多金属酸化物活物質、DE−A19948248の一般式I、II及びIIIの多金属酸化物活物質及びDE−A19955168の一般式I、II及びIIIの多金属酸化物活物質並びにEP−A700714中に記載の多金属酸化物活物質である。
【0115】
更に、これら反応工程のために、2005年8月29日の文献Research Disclosure Nr.497012、DE−A10046957、DE−A10063162、DE−C3338380、DE−A19902562、EP−A15565、DE−C2380765、EP−A807465、EP−A279374、DE−A3300044、EP−A575897、US−A4438217、DE−A19855913、WO98/24746、DE−A19746210(一般式IIのもの)、JP−A91/294239、EP−A293224及びEP−A7000714中に開示されている、Mo、Bi、Feを含有している多金属酸化物触媒が好適である。これは、殊にこれら文献中の例示実施形に当て嵌まり、特にEP−A15565、EP−A575897、DE−A19746210及びDE−A19855913の各々中に記載されているものが特別有利である。この関連で、EP−A15565の例1cによる触媒並びに相応する方法で製造できる触媒が特別好適であるが、その活物質は、組成:
Mo12Ni6.5Zn2Fe2Bi10.00650.06x・10SiO2を有する。更に、DE−A19855913のシリアルNo.3を有する例(化学量論:Mo12Co7Fe3Bi0.60.08Si1.6x )が、寸法5mm×3mm×2mm(外径×高さ×内径)の中空円筒完全触媒として、並びにDE−A19746210の実施例1による多金属酸化物II−完全触媒が強調できる。更に、US−A4438217の多金属酸化物−触媒も挙げられる。後者は、殊に、その中空円筒が寸法5.5mm×3mm×3.5mm又は5mm×2mm×2mm又は5mm×3mm×2mm又は6mm×3mm×3mm又は7mm×3mm×4mm(それぞれ外径×高さ×内径)を有する場合に当て嵌まる。この関係で可能な他の触媒形状はストランド(例えば長さ7.7mm及び直径7mm;又は長さ6.4mm及び直径5.7mm)である。
【0116】
プロピレンからアクロレイン及び場合によってはアクリル酸までの工程のために好適である多くの多金属酸化物活物質は、一般式IVに包含されうる:
Mo12BiFe (IV)
[式中、変数は次のものを表す:
= ニッケル及び/又はコバルト、
= タリウム、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属、
= 亜鉛、燐、ヒ素、ホウ素、アンチモン、錫、セリウム、鉛及び/又はタングステン、
4= 珪素、アルミニウム、チタン及び/又はジルコニウム、
a=0.5〜5、 b=0.01〜5、有利に2〜4、c=0〜10、有利に3〜10、
d=0〜2、有利に0.02〜2、e=0〜8、有利に0〜5、f=0〜10及び
n= IV中の酸素とは異なる元素の原子価及び頻度によって決まる数 ]。
【0117】
これは、自体公知の方法で得られ(例えばDE−A4023239参照)、かつ通常は塊状で成形して、球、リング又はシリンダーにされているか又は、即ち活物質で被覆され、成形された不活性担体を有するシェル触媒の形状も使用される。当然これは、粉末形で触媒として使用することもできる。
【0118】
原則的に、一般式IVの活物質は、簡単な方法で、その元素成分の適当な源から、有利に微細粒状の、その化学量論に相応する組成を有する、できるだけ緊密な乾燥混合物を取得し、かつこれを350〜650℃の温度でか焼することによって製造することができる。か焼は、不活性ガス中でも酸化性雰囲気、例えば空気(不活性ガスと酸素とからの混合物)中、並びに還元性雰囲気(例えば不活性ガス、NH、CO及び/又はHからの混合物)中でも行うことができる。か焼時間は、数分〜数時間であってよく、通常は温度の上昇に伴い短縮することができる。多金属酸化物活物質IVの元素構成源として、既に酸化物であるか及び/又は少なくとも酸素の存在下での加熱によって酸化物に移行可能であるような化合物がこれに該当する。
【0119】
酸化物に加えて、そのような出発化合物としては、特にハロゲン化物、硝酸塩、蟻酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、アミン錯体、アンモニウム塩及び/又は水酸化物がこれに該当する(NHOH、(NHCO、NHNO、NHCHO、CHCOOH、NHCHCO及び/又は後のか焼時にガス状で逃出する化合物を生じるか及び/又は分解することがありうるシュウ酸アンモニウムを、付加的に緊密な乾燥混合物中に導入することができる)。
【0120】
多金属酸化物活物質IVの製造のための出発化合物の緊密混合は、乾燥形で又は湿潤形で行うことができる。乾燥形でそれを行う場合には、出発化合物を微細粒状粉末として使用し、混合及び場合による圧縮の後に、か焼に供することが適切である。しかしながら、湿潤形で緊密な混合を行うことが有利である。この場合に通常は、出発化合物を水溶液及び/又は懸濁液の形で相互に混合するのが有利である。前記の混合法で専ら溶解された形で存在する元素成分源から出発する場合には、特別緊密な乾燥混合物が得られる。溶剤としては、好ましくは水が使用される。引き続き、得られる水性組成物を乾燥させ、この際に乾燥処理は、有利に、水性混合物を出口温度100〜150℃でスプレー乾燥させることにより行われる。
【0121】
一般式IVの多金属酸化物活物質は、工程「プロピレン→アクロレイン(及び場合によってはアクリル酸)」のために、粉末形でも、特定の触媒形状に成形されても使用することができ、この際、この形状付与は引き続くか焼の前又は後に行うことができる。例えば、活物質の粉末形又はその未か焼の及び/又は部分的にか焼された前駆物質から、圧縮により所望の触媒形状(例えばタブレット化、押出成形又は射出成形により)にされた完全触媒を製造することができ、この際、場合によっては、助剤、例えば滑剤及び/又は成形助剤としてのグラファイト又はステアリン酸及び強化剤、例えばガラス、アスベスト、炭化珪素又はチタン酸カリウム製のマイクロ繊維を添加することができる。グラファイトの代わりに、六方晶窒化ホウ素も成形時の助剤として使用することができる(DE−A102005037678で推奨されているように)。好適な完全触媒形状は、例えば2〜10mmの外径及び長さを有する中実シリンダー又は中空円筒である。中空円筒の場合には、1〜3mmの壁厚が有利である。当然、完全触媒(Vollkatalysator;担体不含触媒)は球形を有することもでき、この際に、球直径は2〜10mmであることができる。
【0122】
殊に完全触媒の場合に特別好適な中空円筒形は、5mm×3mm×2mm(外径×長さ×内径)を有する。
【0123】
当然、粉末状活物質又はその粉末状の、未か焼の及び/又は部分的にか焼された前駆物質の形状付与は、予め成形された不活性触媒担体上に施与することによって行うこともできる。シェル触媒の製造のための担体の被覆は通例、例えばDE−A2909671、EP−A293859又はEP−A714700から公知のような好適な回転可能な容器中で実施される。担体の被覆のために施与すべき粉末物質を湿らせ、かつ、施与の後に例えば熱空気を用いて再び乾燥させることが適切である。担体上に施与された粉末物質の層厚は、10〜1000μmの範囲、好ましくは50〜500μmの範囲、特別好ましくは150〜250μmの範囲内にあるように選択するのが適切である。
【0124】
この場合に担体材料としては、通常の多孔質又は非孔質の酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化トリウム、二酸化ジルコニウム、炭化珪素又は珪酸塩、例えば珪酸マグネシウム又は珪酸アルミニウムを使用することができる。これらは、本発明の方法の基礎となっている目標反応に対して大抵は本質的に不活性である。担体は、規則的又は不規則な形状を有していてよく、この際、明らかに形成された粗面性を有する規則的に成形された担体、例えば球又は中空円筒が好ましい。その直径が1〜10mm又は8mmまで、好ましくは4〜5mmである、ステアタイト製の本質的に非孔質の、粗面性の球形担体の使用が好適である。しかしながら、その長さが2〜10mm、その外径が4〜10mmであるシリンダーを担体として使用することも好適である。更に、担体として本発明により好適なリングの場合には、壁厚は通常1〜4mmである。本発明により有利に使用されるリング状の担体は、長さ2〜6mm、外径4〜8mm及び壁厚1〜2mmを有する。本発明によれば、特に寸法7mm×3mm×4mm(外径×長さ×内径)のリングも担体として好適である。担体の表面上に施与されるべき触媒活性酸化物の微細性は、明らかに所望のシェル厚さに適合される(EP−A714700参照)。
【0125】
更に、プロピレンからアクロレイン(並びに場合によってはアクリル酸)までの工程のために使用すべき多金属酸化物活物質は、一般式V:
【化1】

[式中、変数は次のものを表す:
=ビスマスのみ、又はビスマスと元素テルル、アンチモン、錫及び銅の少なくとも1種、
=モリブデン又はタングステン、又はモリブデンとタングステン、
=アルカリ金属、タリウム及び/又はサマリウム、
=アルカリ土類金属、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、亜鉛、錫、カドミウム及び/又は水銀、
=鉄、又は鉄と元素クロム及びセリウムの少なくとも1種、
=燐、ヒ素、ホウ素及び/又はアンチモン、
=希土類金属、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、レニウム、ルテニウム、ロジウム、銀、金、アルミニウム、ガリウム、インジウム、珪素、ゲルマニウム、鉛、トリウム及び/又はウラン、
a’=0.01〜8、 b’=0.1〜30、 c’=0〜4、 d’=0〜20、
e’=>0〜20、 f’= 0〜6、 g’=0〜15、 h’=8〜16、
x’、y’=V中の酸素とは異なる元素の原子価及び頻度によって決められる数値 及び
p、q=それらの比p/qが0.1〜10である数値であり、
その局所的周辺とは異なる組成に基づき、その局所的周辺から3次元的に拡がって限定されている化学組成Ya’b’x’の範囲(その最大直径:この範囲の重心を通り、この範囲の表面(界面)上に存在する2点を通る最長直線距離;1nm〜100μm、屡々10nm〜500nm又は1μm〜50又は25μmである)を有している]の物質である。
【0126】
特別有利な本発明による好適な多金属酸化物Vは、式中のY1がビスマスのみである場合の化合物である。
【0127】
その内で、一般式VI:
【化2】

[式中、変数は次のものを表す:
=モリブデン又はタングステン、又はモリブデンとタングステン、
=ニッケル及び/又はコバルト、
=タリウム、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の一種、
=燐、ヒ素、ホウ素、アンチモン、錫、セリウム及び/又は鉛、
=珪素、アルミニウム、チタン及び/又はジルコニウム、
Z7=銅、銀及び/又は金、
a"=0.1〜1、 b"=0.2〜2、 c"=3〜10、 d"=0.02〜2、
e"=0.01〜5、有利に0.1〜3、 f"=0〜5、 g"=0〜10、
h"=0〜1、
x"、y"=VI中の酸素とは異なる元素の原子価及び頻度によって決められる数値及び
p"、q"=それらの比p"/q"が0.1〜5、有利には0.5〜2になる数値]に一致する物質が好ましく、この際、式中のZ"=(タングステン)"であり、
12=(モリブデン)12である物質VIが特別好ましい。
【0128】
更に、本発明により好適な多金属酸化物V(多金属酸化物VI)中の本発明により好適な多金属酸化物V(多金属酸化物VI)の
[Ya’b’x’(Bi"Z"O"]")の全部の少なくとも25モル%(好ましくは少なくとも50モル%、特別好ましくは100モル%)が、その局所的周辺とは異なるその化学的組成に基づき、その局所的周辺から3次元的に拡がって限定されている化学組成Ya’b’x’[Bi"Z"O"]の範囲の形(その最大直径は1nm〜100μmの範囲にある)で存在する場合が有利である。
【0129】
形状付与に関しては、多金属酸化物IV−触媒の場合の言及が、多金属酸化物V−触媒にも当て嵌まる。
【0130】
多金属酸化物V−活物質の製造は、例えばEP−A575897並びにDE−A19855913中に記載されている。
【0131】
先に推奨されている不活性担体材料は、特に、相応する触媒固定床の希釈及び/又は限定のための不活性材料としても、又はそれらを保護する及び/又はガス混合物を加熱する前床としても有用である。
【0132】
第2の工程(第2反応工程)、アクロレインからアクリル酸までの不均一系触媒作用気相−部分酸化のために、既に記載のように、原則的に、Mo及びVを含有する全ての多金属酸化物、例えばDE−A10046928のものが必要な触媒の活物質として考慮される。
【0133】
それらの多く、例えばDE−A19815281に記載のものは、一般式VIIに包括されうる:
Mo12 (VII)
[式中、変数は次のものを表す:
=W、Nb、Ta、Cr及び/又はCe、
=Cu、Ni、Co、Fe、Mn及び/又はZn、
=Sb及び/又はBi、
=アルカリ金属1種以上、
=アルカリ土類金属1種以上、
=Si、Al、Ti及び/又はZr、
a=1〜6、 b=0.2〜4、 c=0.5〜18、 d=0〜40、
e=0〜2、 f=0〜4、 g=0〜40 及び
n=VII中の酸素とは異なる元素の原子価及び頻度によって決められる数値]。
【0134】
活性の多金属酸化物VIIの内の本発明により好適な実施形は、一般式VIIの変数が次のものを表すものである:
=W、Nb及び/又はCr、
=Cu、Ni、Co及び/又はFe、
=Sb、
=Na及び/又はK、
=Ca、Sr及び/又はBa、
=Si、Al及び/又はTi、
a=1.5〜5、 b=0.5〜2、 c=0.5〜3、 d=0〜2、
e=0〜0.2、 f=0〜1 及び
n=VII中の酸素とは異なる元素の原子価及び頻度によって決められる数値]。
【0135】
しかしながら本発明によれば、全く特別好ましい多金属酸化物VIIは、一般式VIIIのものである:
Mo12a’b’c’f’g’n’ (VIII)
[式中、
=W及び/又はNb、
=Cu及び/又はNi、
=Ca及び/又はSr、
=Si及び/又はAl、
a’=2〜4、 b’=1〜1.5、 c’=1〜3、 f’=0〜0.5、
g’=0〜8 及び
n’=VIII中の酸素とは異なる元素の原子価及び頻度によって決められる数値]。
【0136】
本発明により好適な多金属酸化物活物質(VII)は、自体公知の、例えばDE−A4335973又はEP−A714700中に開示されている方法で得られる。
【0137】
原則的に、工程「アクロレイン→アクリル酸」のために好適である多金属酸化物活物質、殊に一般式VIIのものは、簡単な方法で次のようにして製造することができる:その好適な元素構成成分源から、できるだけ緊密な、有利には微細粒状の、その化学量論に相応する組成を有する乾燥混合物を取得し、かつこれを350〜600℃の温度でか焼することにより製造することができる。このか焼は、不活性ガス中でも酸化性雰囲気中、例えば空気(不活性ガスと酸素とからの混合物)中でも、並びに還元性雰囲気(例えば不活性ガスと還元性ガス、例えばH、NH、CO、メタン及び/又はアクロレイン又は記載の還元作用をするガス自体とからの混合物)中でも実施することができる。か焼時間は、数分〜数時間であってよく、通常は温度上昇に伴い短くなる。多金属酸化物活物質VIIの元素構成成分源としては、既に酸化物であるような化合物及び/又は少なくとも酸素の存在下での加熱によって酸化物に移行可能であるような化合物がこれに該当する。
【0138】
多金属酸化物VIIの製造のための出発化合物の緊密な混合は、乾燥形又は湿潤形で行うことができる。乾燥形で行われる場合には、出発化合物を、微細粉末として使用し、かつ混合及び場合による圧縮の後にか焼に供することが適切である。しかしながら、湿潤形で緊密な混合を行うのが有利である。
【0139】
この場合に通常は、出発化合物を水溶液及び/又は懸濁液の形で相互に混合させる。記載の混合法の場合に専ら溶解された形で存在する元素成分源から出発する場合には、特別緊密な乾燥混合物が得られる。溶剤としては好ましくは水が使用される。引き続き、得られた組成物を乾燥させ、この際にこの乾燥処理は、有利に水性混合物を出口温度100〜150℃の温度でスプレー乾燥することにより行われる。
【0140】
生じる多金属酸化物、殊に一般式VIIのそれは、アクロレイン酸化のために、粉末形でも、特定の触媒形に成形されても使用することができ、この際、形状付与は、最終のか焼の前又は後に行うことができる。例えば、活物質又はその未か焼前駆物質の粉末形から圧縮により(例えば、タブレット化、押出成形又は射出成形により)所望の触媒形状にすることによって完全触媒を製造することができ、この際、場合によっては助剤、例えば滑剤としてのグラファイト又はステアリン酸及び/又は成形助剤及び強化剤、例えばガラス、アスベスト、炭化珪素又はチタン酸カリウム製のマイクロ繊維を添加することができる。好適な完全触媒形状は、例えば2〜10mmの外径及び長さを有する中実シリンダー又は中空円筒である。中空円筒の場合には、1〜3mmの壁厚が有利である。当然、完全触媒は球形を有することもでき、この際、この球直径は、2〜10mm(例えば8.2mm又は5.1mm)であってよい。
【0141】
当然、粉末状活物質又はその粉末状のなお未か焼の前駆物質の形状付与は、予め成形された不活性触媒担体上への施与によって行うこともできる。シェル触媒の製造のための担体の被覆は、通例、例えばDE−A2909671、EP−A293859又はEP−A714700から公知であるような好適な回転可能な容器中で実施される。
【0142】
担体の被覆のために、施与すべき粉末物質を湿らせかつ施与の後に、例えば熱空気を用いて再び乾燥させるのが適切である。担体上に施与された粉末物質の層厚は、適切に10〜1000μmの範囲、好ましくは50〜500μmの範囲、特別好ましくは150〜250μmの範囲内で選択される。
【0143】
この場合に、担体材料として、慣用の多孔質又は非孔質の酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化トリウム、二酸化ジルコニウム、炭化珪素又は珪酸塩、例えば珪酸マグネシウム又は珪酸アルミニウムを使用することができる。担体は、規則的又は不規則な形を有していてよく、この際、明らかに形成された表面粗面性を有する規則的に成形された担体、例えば砕石被覆を有する球又は中空円筒が好適である。その直径が1〜10mm又は18mmまで、好ましくは4〜5mmであるステアタイト製の実質的に非孔質で、粗面性の球形担体の使用が好適である。即ち、好適な球形は8.2mm又は5.1mmの直径を有することができる。しかしながら、長さ2〜10mm及び外径4〜10mmを有するシリンダーを担体として使用することも好適である。担体としてのリングの場合には、更に壁厚は、通常1〜4mmである。好ましく使用されるリング状担体は、2〜6mmの長さ、4〜8mmの外径及び1〜2mmの壁厚を有している。特に、寸法7mm×3mm×4mm(外径×長さ×内径)のリングも担体として好適である。担体の表面上に施与すべき触媒活性酸化物の微細性は、明らかに所望のシェル厚さに適合される(EP−A714700参照)。
【0144】
更に、工程「アクロレイン→アクリル酸」のために使用すべき好適な多金属酸化物活物質は、一般式IX:
[D][E] (IX)
[式中、変数は次のものを表す:
D= Mo12"Z"Z"Z"Z"Z"Z"O"、
E= Z12Cu"H"O"、
=W、Nb、Ta、Cr及び/又はCe、
=Cu、Ni、Co、Fe、Mn及び/又はZn、
=Sb及び/又はBi、
=Li、Na、K、Rb、Cs及び/又はH、
=Mg、Ca、Sr及び/又はBa、
=Si、Al、Ti及び/又はZr、
=Mo、W、V、Nb及び/又はTa、有利にMo及び/又はW、
a"=1〜8、 b"=0.2〜5、 c"=0〜23、 d"=0〜50、
e"=0〜2、 f"=0〜5、 g"=0〜50、 h"=4〜30、
i"=0〜20及び
x"、y"=IX中の酸素とは異なる元素の原子価及び頻度によって決められる数 及び
p、q=零ではなく、それらの比p/qが160:1〜1:1になるような数である]の物質であり、これは、別に、多金属酸化物E:
12Cu"H"O" (E)
を微細形で予め形成させ(出発物1)、引き続きこの予め形成された固体出発物質1を、化学量論D:
Mo12"Z"Z"Z"Z"Z"Z" (D)で記載元素を含有している、元素源Mo、V、Z、Z、Z、Z、Z、Z(出発物質2)の水溶液、水性懸濁液又は微細乾燥混合物中に、所望の量比p:qで導入し、この際に、場合により生じる水性混合物を乾燥させ、かつこうして得られる乾燥前駆物質を、その乾燥の前又は後に、250〜600℃の温度でか焼して所望の触媒形状にすることによって得られている。
【0145】
多金属酸化物IXが好適であり、ここで、水性出発物質2中への予め形成された固体出発物質1の導入は、<70℃の温度で行われる。例えばEP−A668104、DE−A19736105、DE−A10046928、DE−A19740493及びDE−A19528646は、多金属酸化物VI−触媒の製造の詳細な記載を包含している。
【0146】
形状付与に関して、多金属酸化物VII−触媒の場合の記載が、関連多金属酸化物IX−触媒にも当て嵌まる。
【0147】
工程「アクロレイン→アクリル酸」のために極めて好適である多金属酸化物触媒は、DE−A19815281の、殊にこの刊行物の一般式Iの多金属酸化物活物質を有するものでもある。
【0148】
プロピレンからアクロレインまでの工程のためには完全触媒リングが、かつアクロレインからアクリル酸までの工程のためにはシェル触媒リングが有利に使用される。
【0149】
プロピレンからアクロレイン(場合によってはアクリル酸)までの本発明の方法の部分酸化の実施は、前記の触媒を用いて、例えばDE−A4431957に記載されているような1帯域−多触媒管−固定床反応器中で実施することができる。この場合には、反応ガス混合物及び熱媒体(熱交換媒体)を反応器に並流で又は向流で案内することができる。
【0150】
反応圧力は、通常1〜3バールの範囲であり、反応ガス(出発)混合物2での触媒固定床の全空間負荷率(Gesammtraumbelastung)は、有利に1500〜4000又は6000Nl/l・h又はそれ以上である。プロピレン処理量(触媒床のプロピレン負荷率)は、典型的には90〜200NL/l・h又は300Nl/l・hまで又はそれ以上である。135Nl/l・hを上回る、又は≧140Nl/l・h又は≧150Nl/l・h又は≧160Nl/l・hのプロピレン処理量が本発明では特別好ましい。それというのも本発明の反応ガス出発混合物は、反応しなかったプロパンの存在の結果として、好適なホットスポット特性(Heisspunktverhalten)を可能とするからである(前記の全ては、固定床反応器の特異的選択には無関係に当て嵌まる)。
【0151】
1帯域−多触媒管−固定床反応器にチャージガス混合物を上から流すのが有利である。熱交換媒体として、好ましくは硝酸カリウム(KNO)60質量%及び亜硝酸ナトリウム(NaNO)40質量%から又は硝酸カリウム(KNO)53質量%、亜硝酸ナトリウム(NaNO)40質量%及び硝酸ナトリウム(NaNO)7質量%から成る塩融液を使用するのが適切である。
【0152】
反応器の上から見て、既に記載のように、塩融液及び反応ガス混合物は、並流でも向流でも案内することができる。塩融液自体は、好ましくは触媒管の周りを曲折して案内される。
【0153】
触媒管の上から下方へ流過される場合には、触媒管に下から上方に次のように触媒を装填する(下から上方へ流過される場合には、装填順序を逆転するのが適切である)ことが有利である:
− 先ず触媒管長の40〜80又は60%の長さまでの、触媒のみ又は触媒と不活性物質とからの混合物(この際、後者は、混合物に対して30まで又は20質量%までの質量割合になる)(セクションC));
− これに引き続き、全管長の20〜50又は40%の長さまでの、触媒のみ又は触媒と不活性物質とからの混合物(この際、後者は、混合物に対して40質量%までの質量分になる)(セクションB));及び
− 引き続き、全管長の10〜20%の長さまでの、不活性物質から成る床(これは、有利に、それができるだけ僅かな圧力ロスの原因となるように選択される)(セクションA)。
【0154】
セクションCは未希釈であることが好ましい。
【0155】
前記の装填変法は、触媒として、2005年8月29日の文献Research Disclosure Nr.497012又はDE−A10046957の実施例1又はDE−A10046957の実施例3におけるようなもの、及び不活性物質として寸法7mm×7mm×4mm(外径×高さ×内径)を有するステアタイト製のリングを使用する場合に殊に有利である。塩浴温度に関しては、DE−A4431957中の言及が当て嵌まる。
【0156】
本発明によるプロピレンからアクロレイン(場合によってはアクリル酸)までの部分酸化の実施は、記載の触媒を用いるが、例えばDE−A19910506、DE−A102005009885、DE−A1020040432129、DE−A102005013039及びDE−A102005009891並びにDE−A102005010111に記載されているように、例えば2帯域−多触媒管−固定床反応器中で実施することもできる。前記の二つの場合(並びに全く一般的に本発明の方法の場合)に、1回通過時に達成されるプロペン変換率は、通常≧90モル%又は≧95モル%の値であり、アクロレイン形成の選択率は≧90モル%の値である。本発明によれば、プロペンからアクロレイン又はアクリル酸又はそれらの混合物までの本発明による部分酸化は、EP−A1159244中に及び全く特別好ましくはWO04/085363並びにWO04/085362中に記載のように行うのが有利である。
【0157】
刊行物EP−A1159244、WO04/085363及びWO04/085362は、この明細書のインテグラル部分として考慮される。
【0158】
即ち、本発明により実施すべきプロピレンの部分酸化は、少なくとも2つの温度帯域を有する触媒固定床を用いて特別有利に、高いプロピレン負荷率で実施することができる。
【0159】
これに関して、例えばEP−A1159244及びWO04/085362も参照される。
【0160】
本発明の方法でのプロピレンからアクロレインまでの部分酸化のための反応ガス出発混合物の典型的な組成物は、次のものを包含することができる:
プロピレン 5〜9容量%
酸素分子 8〜18容量%
プロパン 6〜30(又は35まで)容量% 及び
窒素分子 32〜72容量% 。
【0161】
プロピレンからアクロレインまでの2工程部分酸化の場合の第2工程の実施、即ちアクロレインからアクリル酸までの部分酸化は、記載の触媒を用いて、例えばDE−A4431949に記載のように1帯域−多触媒管−固定床反応器中で実施することができる。この場合に、反応ガス混合物及び熱媒体は、この反応器の上から並流で導びくことができる。大抵は、アクロレインまでの本発明による先行プロピレン部分酸化の生成ガス混合物は、原則的にそれ自体として(場合によってはその中間冷却(これは例えば2次空気添加により間接的又は直接的に行うことができる)の後に)、即ち、副成分を分離せずに、第2反応工程に、即ちアクロレイン部分酸化に供される。
【0162】
第2工程のアクロレイン部分酸化のために必要である酸素分子は、(この際)既に本発明によるアクロレインまでのプロピレン部分酸化用の反応ガス出発混合物中に含有されていてもよい。しかしながら、一部分又は全てを、第1反応工程、即ち本発明によるアクロレインまでのプロピレン部分酸化の生成ガス混合物に直接添加することもできる(このことは、有利には(2次)空気として行われるが、純粋酸素又は不活性ガス又は酸素からの混合物の形で行うこともできる)。前記の方法とは無関係に、アクリル酸までのアクロレインのこのような部分酸化のチャージガス混合物(反応ガス出発混合物)は、有利に次の内容物を有する:
アクロレイン 4〜8容量%
酸素分子 2.25又は4.5〜9容量%
プロパン 6〜30容量%
窒素分子 32〜72容量% 及び
水蒸気 5〜15容量% 。
【0163】
前記の反応ガス出発混合物は次の内容物を有するのが好ましい:
アクロレイン 5〜8容量%
酸素分子 2.75又は5.5〜9容量%
プロパン 10〜25容量%
窒素分子 40〜70容量% 及び
水蒸気 5〜15容量% 。
【0164】
前記の反応ガス出発混合物は次の内容物を有するのが全く特別好ましい:
アクロレイン 5〜8容量%(好ましくは6〜7容量%)
酸素分子 3又は6〜9容量%
プロパン 10〜20容量%(好ましくは10〜16容量%)
窒素分子 50〜65容量% 及び
水蒸気 7〜13容量%
この際、有利な範囲は、相互に無関係であるが、有利には同時に実現される。
【0165】
第1反応工程(プロピレン→アクロレイン)中と同様に、第2反応工程(アクロレイン→アクリル酸)中でも、反応圧は、通常1〜3バールの範囲であり、かつ触媒固定床の反応ガス(出発)混合物での全空間負荷率は、有利に1500〜4000又は6000Nl/l・h又はそれ以上である。アクロレイン処理量(触媒固定床のアクロレイン負荷率)は、典型的には90〜190Nl/l・h又は290Nl/l・hまで又はそれ以上である。135Nl/l・hを上回る又は≧140NL/l・h又は≧150Nl/l・h又は≧160Nl/l・hのアクロレイン処理量が特別好ましい。それというのも、本発明により使用すべき反応ガス出発混合物は、プロパンの存在の結果として、同様に好適なホットスポット特性を生じさせるからである。
【0166】
触媒固定床を通る反応ガス混合物の1回通過当たりのアクロレイン変換率は、適切には通常≧90モル%であり、それに伴って生じるアクリル酸形成の選択率は適切には≧90モル%である。
【0167】
1帯域−多触媒管−固定床反応器に、チャージガス混合物を同様に上方から流入させることが好ましい。第2工程でも、熱交換媒体として、適切には硝酸カリウム(KNO)60質量%と亜硝酸ナトリウム(NaNO)40質量%とから成るか又は硝酸カリウム(KNO)53質量%、亜硝酸ナトリウム(NaNO)40質量%及び硝酸ナトリウム(NaNO)7質量%から成る塩融液が使用される。反応器の上から見て、既に記載のように、塩融液及び反応ガス混合物は、並流でも向流でも案内される。塩融液自体は、触媒管の周りに曲折して案内されるのが好ましい。
【0168】
触媒管の上から下方に流過される場合に、触媒管は下から上方に次のように装填されているのが有利である:
− 先ず、触媒管長の50〜80又は70%の長さまでの、触媒のみ又は触媒と不活性物質とからの混合物(この際、後者は混合物に対して30(又は20)質量%までの質量部になる)(セクションC);
− それに引き続き、全管長の20〜40%の長さまでの、触媒のみ又は触媒と不活性物質とからの混合物(この際、後者は混合物に対して50質量%まで又は40質量%までの質量部になる)(セクションB);及び
− 最後に、全管長の5〜20%の長さまでの、不活性物質からの床(これは、有利にそれができるだけ僅かな圧力ロスの原因となるように選択される)(セクションA)。
【0169】
セクションCは未希釈であることが好ましい。アクロレインからアクリル酸までの不均一系触媒作用気相部分酸化の場合に全く一般的であるように(殊に、触媒床の高いアクロレイン負荷率及びチャージガス混合物の高い水蒸気含有率の場合に)、セクションBは2つの連続的な触媒希釈からなっていてもよい(ホットスポット温度及びホットスポット温度選択性を最小化する目的のため)。下から上方に、先ず、不活性物質30(又は20)質量%まで、それに引き続き、不活性物質>20質量%〜50質量%又は40質量%まで。従って、セクションCは未希釈であるのが好ましい。
【0170】
下から上方への触媒管の流過接触を得るためには、触媒管装填を逆転させるのが適切である。
【0171】
触媒として、DE−A10046928の製造例5によるもの又はDE−A19815281のものが、かつ不活性物質として寸法7mm×7mm×4mm又は7mm×7mm×3mm(それぞれ外径×高さ×内径)を有するステアタイト製のリングが使用される場合には、前記の装填変法が特別適切である。塩浴温度に関しては、DE−A4431949中の言及が当て嵌まる。これは通例、1回通過の場合の達成アクロレイン変換率が通常 ≧90モル%又は≧95モル%又は≧99モル%になるように選択される。
【0172】
アクリル酸までのアクロレインの部分酸化の実施は、前記の触媒を用いるが、例えばDE−A19910508に記載のように、2帯域−多触媒管−固定床反応器中で実施することもできる。アクロレイン変換率に関しては、前記のことが当て嵌まる。2帯域−多触媒管−固定床反応器中でのアクリル酸までの2工程プロピレン酸化の第2反応工程として前記のようなアクロレイン部分酸化を実施する場合でも、チャージガス混合物(反応ガス出発混合物)を得るために、直接、第1工程の方向の部分酸化の生成ガス混合物を(場合によってはその間接的又は直接的(例えば2次空気の装入による)中間冷却の後に)使用する(既に前記されたように)のが好適である。アクロレイン部分酸化のために必要な酸素を、有利には空気として(しかし、場合によっては純粋な酸素分子としても、酸素分子と不活性ガスとからの混合物としても)添加し、かつ例えば2工程部分酸化の第1工程(プロピレン→アクロレイン)の生成ガス混合物に直接加えるのが有利である。しかしながら、既に記載のように、既に第1反応工程のための反応ガス出発混合物中にこれが含有されていてもよい。
【0173】
部分酸化の第2工程のチャージのために部分酸化の第1工程の生成ガス混合物を直接的に更に使用してアクリル酸までプロピレンを2工程で部分酸化する場合に、通例は、2つの1帯域−多触媒管−固定床反応器(触媒床の高い反応成分負荷率の場合に全く一般的に慣用であるように、管束反応器を経る反応ガスと塩浴(熱媒体)との間の並流法が好ましいと考えられている)又は2つの2帯域−多触媒管−固定床反応器を直列接続する。混合直列接続(1帯域/2帯域又は逆転)も可能である。
【0174】
反応器の間には、場合によりフィルター機能を発揮させることのできる不活性床を含有していてよい中間冷却器が存在することができる。アクリル酸までのプロピレンの2工程部分酸化の第1工程のための多触媒管反応器の塩浴温度は、通例、300〜400℃である。アクリル酸までのプロピレンの部分酸化の第2工程、即ち、アクリル酸までのアクロレインの部分酸化のための多触媒管反応器の塩浴温度は、大抵は200〜350℃である。更に通常、熱交換媒体(好ましくは塩融液)が、その入口温度と出口温度との間の差が通例 ≦5℃になるような量で、この重要な多触媒管−固定床反応器に導びかれる。既に記載のようにアクリル酸までのプロピレンの部分酸化の2つの工程を、DE−A10121592に記載のように1反応器中で、装填物に接して実施することもできる。
【0175】
第1工程(プロピレン→アクロレイン)のための反応ガス出発混合物の一部分は、部分酸化から生じる残留ガスであってもよいこともなお記載する。
【0176】
ここで、既に記載のように、これは、部分酸化の生成ガス混合物から目的生成物分離(アクロレイン−及び/又はアクリル酸分離)の後に残り、かつ部分的に、不活性希釈ガスとして、アクロレイン及び/又はアクリル酸までのプロピレンの部分酸化の第1工程及び/又は第2工程のための装填物中へ送り戻されうる、酸素分子含有ガスであってよい。
【0177】
しかしながら、このようなプロパン、酸素分子及び場合により反応しなかったプロピレンを含有している残留ガスは、本発明によれば、専らガス状出発流2として、反応帯域A中での不均一系触媒作用プロパン脱水素に送り戻されるのが有利である。
【0178】
その中で触媒装填が個々の触媒管に沿って、第1反応工程の終了に相応して変動する管束反応器(EP−A911313、EP−A97813、EP−A990636及びDE−A2830765はいわゆる「単一反応器」中でのこのような2工程プロピレン部分酸化を教示している)は、全体として、プロピレンからアクリル酸までの2つの工程のための2つの酸化工程の最も簡単な実現形を構成している。この際に場合によっては、触媒での触媒管の装填が不活性物質床によって中断される。
【0179】
しかしながら、二つの酸化工程を二つの前後に接続された管束系の形で実現するのが有利である。これらは、1反応器中に存在することができ、この際、1つの管束から他の管束への移行は、触媒管中で中断されていない(適切には通過可能な)不活性物質製の1床により形成される。通例、触媒管は熱媒体で包囲循環されるが、これは前記のように取り付けられた不活性物質床には達しない。従って、二つの触媒管束は空間的に相互に分けられた反応器中に収納されるのが有利である。この場合に通例は、2つの管束反応器の間に、第1酸化帯域を出た生成ガス混合物中で場合により起こるアクロレイン後燃焼を最小化するために、中間冷却器が存在する。第1反応工程(プロピレン→アクロレイン)の反応温度は、通例、300〜450℃、好ましくは320〜390℃である。第2反応工程(アクロレイン→アクリル酸)の反応温度は、通例、200〜370℃、屡々220〜330℃である。双方の酸化帯域中の反応圧は、適切には0.5〜5、有利には1〜3バールである。反応ガスでの酸化触媒の負荷率(Nl/l・h)は、双方の酸化工程では、屡々1500〜2500Nl/l・hまで又は4000Nl/l・hまでである。この場合にプロピレンでの負荷率は、100〜200又は300Nl/l・hまで及びそれを上回ることがありうる。
【0180】
原則的に本発明の方法では、双方の酸化工程を、例えばDE−A19837517、DE−A19910506、DE−A19910508並びにDE−A19837519中に記載されているように構成することができる。
【0181】
この場合に双方の反応工程で、反応化学量論的に必要である量に比べて過剰の酸素分子が、それぞれの気相部分酸化の反応速度論並びに触媒耐用時間に有利に作用する。
【0182】
しかしながら原則的には、本発明により実施すべきアクリル酸までのプロピレンの不均一系触媒作用気相−部分酸化は、特有の1帯域管束反応器中で次のように実現可能である。双方の反応工程は、その活物質が双方の反応工程に触媒作用することができる元素Mo、Fe及びBiを含有する多金属酸化物である触媒1種以上で装填されている1酸化反応器中で行われる。明らかに、この触媒装填は、反応座標に沿って連続的に又は断続的に変動することもできる。勿論、本発明による2つの直列接続された酸化工程の形でのアクリル酸までのプロピレンの2工程部分酸化の実施形で、それから第1酸化工程を出る生成ガス混合物を、その中に含有されている、第1酸化工程中で副産物として生じる一酸化炭素及び水蒸気を、必要に応じて第2の酸化工程に更に導く前に、部分的又は完全に分離することができる。本発明によれば、そのような分離を意図しない方法を選択するのが有利である。
【0183】
双方の酸化工程の間で実施される酸素中間供給源として、既に言及したように、空気(好ましい)以外に、純粋な酸素分子も不活性ガス、例えばCO、CO、希ガス、N及び/又は飽和炭化水素で希釈された酸素分子も使用される。
【0184】
第1部分酸化工程の生成ガス混合物への冷空気の配量供給によって、本発明の方法の範囲で直接的な手段で、それが第2部分酸化工程のための反応ガス出発混合物の成分として共用される前に、それを冷却することもできる。
【0185】
本発明によれば、アクリル酸までのアクロレインの部分酸化を、EP−A1159246中に記載のように、かつ特別好ましくはWO04/085365並びにWO04/085370に記載のように行うのが有利である。しかしながらこの場合には、本発明によればアクロレイン含有反応ガス出発混合物として、アクロレインまでのプロピレンの本発明による第1工程部分酸化の生成ガス混合物であり、場合により、生じる反応ガス出発混合物中のアクロレインに対する酸素分子の比がいずれの場合にも0.5〜1.5であるような量の2次空気で補充された、反応ガス出発混合物を使用するのが有利である。刊行物EP−A1159246、WO04/08536及びWO04/085370は、この明細書のインテグラル部分として考慮される。
【0186】
即ち、アクリル酸までのアクロレインの本発明による部分酸化は、有利に少なくとも2つの熱処理帯域を有する触媒固定床で、高いアクロレイン負荷率で実施することができる。
【0187】
全体として、アクリル酸までのプロピレンの2工程部分酸化を、EP−A1159248又はWO04/085367又はWO04/085369中に記載のように実施するのが有利である。
【0188】
本発明により実施すべき部分酸化(第1及び/又は第2反応工程の後)を出る生成ガス混合物Bは、アクロレイン及び/又はアクリル酸の製造の場合には、通例、目的生成物アクロレイン又はアクリル酸又はこれらの混合物とアクロレイン、反応しなかった酸素分子(使用触媒の耐用時間の観点から、双方の部分酸化工程の生成ガス混合物中の酸素含有率がなお低くても1.5〜4容量%である場合が好適である)、プロパン、反応しなかったプロピレン、窒素分子、副産物として生じた及び/又は希釈ガスとして共用された水蒸気、副産物として生じた及び/又は希釈ガスとして共用された一酸化炭素、並びに少量のその他の低級アルデヒド、低級アルカンカルボン酸(例えば酢酸、蟻酸及びプロピオン酸)、並びに無水マレイン酸、ベンズアルデヒド、芳香族カルボン酸及び芳香族カルボン酸無水物(例えば無水フタル酸及び安息香酸)、場合による他の炭化水素、例えばC−炭化水素(例えばブテン−1及び場合によるその他のブテン)及び他の不活性希釈ガスとからの組成を有している。
【0189】
目的生成物は、生成ガス混合物Bから自体公知の方法で、第2分離帯域B中で分離することができる(例えば、部分的又は完全な、並びに場合によってはアクリル酸の分別凝縮により又は水中又は高沸点疎水性有機溶剤中へのアクリル酸の吸収により又は水中又は低級カルボン酸の水溶液中へのアクロレインの吸収並びに凝縮物及び/又は吸収物の引き続く後処理によって;本発明により好ましくは生成ガス混合物Bが分別凝縮される;例えばEP−A11388533、EP−A1388532、DE−A10235847、EP−A792867、WO98/01415、EP−A1015411、EP−A1015410、WO99/50219、WO00/53560、WO02/09839、DE−A10235847、WO03/041833、DE−A10223058、DE−A10243625、DE−A10336386、EP−A854129、US−A4317926、DE−A19837520、DE−A19606877、DE−A190501325、DE−A10247240、DE−A19740253、EP−A695736、EP−A982287、EP−A1041062、EP−A1174146、DE−A4308087、DE−A4335172、DE−A4436243、DE−A19924532、DE−A10332758並びにDE−A19924533参照)。アクリル酸分離は、EP−A982287、EP−A982289、DE−A10336386、DE−A10115277、DE−A19606877、DE−A19740252、DE−A19627847、DE−A920408、EP−A1068174、EP−A1066239、EP−A1066240、WO00/53560、WO00/53561、DE−A10053086及びEP−A982288に記載のように行うこともできる。WO/0196271の図7中に又はDE−A102004032129及びその同等な特許明細書中の記載のように分離するのが有利である。WO04/063138、WO04/35514、DE−A10243625及びDE−A10235847中に記載されている方法も好適な分離法である。この場合に得られる粗製アクリル酸の更なる後処理は、例えばWO01/77056、WO03/041832、WO02/055469、WO03/078378及びWO03/041833の明細書中に記載されているように行うことができる。
【0190】
前記の分離法の共通の特徴は(既に先に記載のように)、その下部に生成ガス混合物Bが通常は、その予めの直接的及び/又は間接的冷却の後に供給される、それぞれ分離作用をするビルトインを有している分離塔の塔頂に、通常、生成ガス混合物Bと本質的に同じ成分(常圧(1バール)でのその沸点は≦−30℃である)(即ち、凝縮困難であるか又は易揮発性の成分)を含有する残留ガス流が残ることである。
【0191】
分離塔の下部中に通常、その都度の目的生成物を包含する生成ガス混合物Bの難揮発性成分が、凝縮相として得られる。
【0192】
残留ガス成分は、第1に、プロパン、場合により部分酸化で反応されなかったプロピレン、酸素分子並びに屡々部分酸化時に共用された他の不活性希釈ガス、例えば窒素及び二酸化炭素である。適用分離法に応じて、残留ガス中には、なお水蒸気が痕跡量で、又は20容量%までの又はそれより多い量で含有されていることがありうる。
【0193】
本発明によれば、この主残留ガスから、通常、(有利には残留ガス組成を有する)プロパン、酸素分子及び場合により反応しなかったプロピレンを含有する少なくとも1部分量(有利には全量、場合によっては全量の半分又は2/3又は3/4のみ)が、ガス状出発流2として反応帯域A中に戻される。しかしながら、残留ガス部分量を、部分酸化の1工程又は双方の工程に送り戻しかつ/又はエネルギー取得の目的で燃焼させることもできる。
【0194】
勿論、この明細書中並びにEP−A117146、US−A3161670、DE−A3313573及びDE−A10316039に記載のように、ガス状出発流2としての残留ガスの使用の前にこの残留ガスから、殊にプロパン、プロピレン及び酸素分子とは異なる成分を部分的に又は完全に分離することもできる。
【0195】
凝縮された相の後処理(目的生成物の分離の目的のため)の場合に、更なる残留ガスを得ることがありうる。それというのも通常は、全体として生成ガス混合物B中に含有されている反応しなかったプロパンの量を反応帯域A中に送り戻し、目的生成物分離の範囲で回収することが試みられるからである。これは通例、なおプロパン並びに場合によるプロピレンを含有するが、屡々酸素分子をもはや含有しない。通常は、これは主残留ガスと一緒にされて、全残留ガスがガス状出発流2として反応帯域Aに送り戻される。しかしながら、そのような他の残っているガスの別の利用又は反応帯域A中への送り戻しも可能である。
【0196】
全残留ガスの有利な完全返還により、連続的な操作で、アクリル酸及び/又はアクロレインまでのプロパンの連続的な変換を行うことができる。
【0197】
この場合に重要なことは、記載の返還並びに反応帯域Aの本発明による操作法によって、反応帯域A中で、プロピレンまでの新鮮プロパンの移行が殆ど百パーセントの選択率で達成可能であることである。
【0198】
この場合に、低い(≦30モル%)又は高い(≧30モル%)脱水素変換率(反応帯域Aを通1回通過に対する)の場合にも、このような方法の利点が得られる。反応ガス混合物装入流A中の水素含分がその中に含有されている酸素量に対して少なくとも化学量論的割合(水までの酸素燃焼に対し)である場合が、一般に本発明にとって好適である。
【0199】
ここで、本発明により得られる生成ガス混合物Bからのアクリル酸の分離が、予め場合により直接的及び/又は間接的冷却により冷却された生成ガス混合物Bを、分離有効なビルトインを有する塔中で、粗製アクリル酸(例えばそれ自体として)の側面取り出し下に、傾斜分別凝縮させるか及び/又は水又は水溶液で吸収するようにして有利に行われること(例えばWO2004/035514及びDE−A10243625に例示されているように)が再度確認される。取り出された粗製アクリル酸を、引き続き好ましくは懸濁液結晶化に供し、この場合に形成されたアクリル酸懸濁液結晶を、洗浄塔を用いて残りの母液から分離するのが有利である。この場合に、洗浄液として、洗浄塔中で予め分離されたアクリル酸結晶の融液を使用するのが有利である。更に、この洗浄塔は、結晶床の強制的移送部を有するものであるのが好ましい。これは水力学的又は機械的洗浄塔であるのが特別好ましい。詳細には、WO01/77056、WO03/041832並びにWO03/041833の記載に従って行うことができる。即ち、残っている母液を分別凝縮に送り戻すのが有利である(EP−A1015410も参照)。副産物排出口は、通常パージ流としての粗製アクリル酸の側面流出口の下に存在する。
【0200】
1回のみの結晶化工程の使用下に、純度≧99.8質量%を有するアクリル酸が得られ、これは、ポリ−Na−アクリレートをベースとする超吸収剤の製造のために極めて好適である。
【0201】
実施例及び比較例(構造材料:タイプ1.4841の特殊鋼)
I.反応帯域Aの一般的実験構成及びその操作法
不均一系触媒作用部分プロパン脱水素を、図4によるトレーループ反応器中で実施する(この図中の数値符合は下記のものを表す)。
【0202】
垂直竪型反応管(11)(内径:80mm)は、断熱材(10)を備えているサポートヒーター(9)中に入れられている(反応管の充分な断熱を可能とする)。サポートヒーターの温度は、500℃である。反応管の中心に中心管(外径:20mm)が存在し、これは連続的熱電素子用のスリーブ及び段階的熱電素子用のスリーブを有している。付加的にこれは、反応管中に通じている導管を有し、これを経て反応管から反応ガス試料を取り出すことができ、並びに反応管中に通じているこの導管を経て、反応管中に空気を噴入することができる。
【0203】
反応管は、3個のトレー(5、6、7)を有し、これらは、特殊鋼線ネットの上に載せられた(流れ方向で記載の順番で配置されている)不活性材料製の同等の3つの床(床高さ:100mm;ステアタイト球直径1.5〜2.5mm)及び脱水素触媒とステアタイト球(直径1.5〜2.5mm)とからの混合物(床高さ:165mm)から、床容積比1:1で成っている。従って、それぞれの場合の合計床高さは265mmである。
【0204】
脱水素触媒は、酸化物形の元素Cs、K及びLaで促進されていて、ZrO・SiO混合酸化物担体ストランド(平均長さ(最大約6mmで、3mm〜12mmの範囲のガウス分布):6mm、直径:2mm)の外部及び内部表面上に、元素化学量論(担体を包含する質量割合):Pt0.3Sn0.6La3.0Cs0.50.2(ZrO288.3(SiO7.1で施与されている、Pt/Sn−合金である(DE−A10219879の例4のように触媒前駆体製造及び活性触媒まで活性化)。
【0205】
各々の触媒トレーの前に、混合素子が取り付けられている。
【0206】
最後のトレーから出てくる生成ガス混合物A(12)を、同じ組成で半分に分ける。1方の半分(2)(生成ガス混合物A−分流1の)を、反応ガス混合装入流A(4)の成分として脱水素に送り戻す。他の半分(1)(生成ガス混合物A−分流2の)を、脱水素帯域(反応帯域Aの)から排出させる。
【0207】
反応ガス混合物装入流A(4)は、ガス状出発流1(2)並びに水蒸気、部分酸化からの残留ガス、新鮮プロパン及び水素分子からの組成を有するガス状出発混合物流(3)から成っている。この出発混合物流(3)は、生成ガス混合物流A(12)を前記のように分割した、反応ガス混合物装入流A(4)を生じさせるジェットポンプの推進噴射流である。
【0208】
全トレーの触媒全量(不活性物質を算入せずに)上のプロパンでの負荷率は常に350Nl/l・hである。
【0209】
反応ガス混合物装入流Aの入口圧は、2.3バールである。その温度は500℃である。脱水素反応器を経る圧力損失は、約200mバールである。第2触媒床の前(それぞれの混合素子の前)及び第3触媒床の前(流れ方向で)で、反応ガス混合物に空気(500℃、反応圧)を吹き込む。その量は、それぞれ後続の触媒床中の最大温度が575〜580℃になるように計量される。
II.アクリル酸までのプロパンの不均一系触媒作用2工程部分酸化の一般的実験構成及びその操作法
実験装置
第1反応工程:
反応管(V2A鋼;外径30mm、壁厚2mm、内径28mm、長さ350cm並びに反応管中心に配置された、反応管中の温度をその全長に渡って測定することのできる熱電素子を収容するためのサーマル管(外径10mm))が、上から下方に次のように装填される:
セクション1:
長さ50cm
前床としての、寸法7mm×7mm×4mm(外径×長さ×内径)のステアタイトリング
セクシヨン2:
長さ140cm
寸法5mm×3mm×2mm(外径×長さ×内径)のステアタイトリング20質量%(選択的に30質量%)及びセクション3からの完全触媒80質量%(選択的に70質量%)からの均一混合物を有する触媒装填物
セクシヨン3:
長さ160cm
DE−A10046957の実施例1による、リング状完全触媒(5mm×3mm×2mm=外径×長さ×内径)(化学量論:[Bi229×2WO30.5[Mo12Co5.5Fe2.94Si1.590.08x1)を有する触媒装填物。ここでは選択的に、2005年8月2日のResearch Disclosure Nr.497012に記載の触媒、BVK1〜BVK11の1種を使用することもできる。
最初の175cmは、上から下方へ向流でポンプ導通される塩浴Aを用いて恒温保持される。第2の175cmは、向流でポンプ導通される塩浴Bを用いて恒温保持される。
【0210】
第2反応工程:
反応管(V2A鋼;外径30mm、壁厚2mm、内径28mm、長さ350cm並びに反応管中心に配置された、反応管中の温度をその全長に渡って測定することのできる熱電素子を収容するためのサーマル管(外径10mm))には、上から下方に次のように装填されている:
セクション1:
長さ20cm
前床としての、寸法7mm×7mm×4mm(外径×長さ×内径)のステアタイトリング
セクシヨン2:
長さ90cm
寸法7mm×3mm×4mm(外径×長さ×内径)のステアタイトリング25質量%(選択的に30質量%)及びセクション4からのシェル触媒75質量%(選択的に70質量%)からの均一混合物を有する触媒装填物
セクシヨン3:
長さ50cm
寸法7mm×3mm×4mm(外径×長さ×内径)のステアタイトリング15質量%(選択的に20質量%)及びセクション4からのシェル触媒85質量%(選択的に80質量%)からの均一混合物を有する触媒装填物
セクション4:
長さ190cm
DE−A10046928の製造例5によるリング状(7mm×3mm×4mm=外径×長さ×内径)のシェル触媒(化学量論:Mo1231.2Cu2.4x)を有する触媒装填物。
【0211】
上から下方へ、最初の175cmは、向流でポンプ輸送される塩浴Cを用いて恒温保持される。第2の175cmは、向流でポンプ導通される塩浴Dを用いて恒温保持される。
【0212】
III.新規実験装置中でプロパンからアクリル酸を製造する方法(定常作動状態を記載する)
Iに記載されているようなトレー反応器の第1触媒床に、次の内容物を有する(全ガスに対する容量%)反応ガス混合物装入流Aを供給する:
容量%
アクリル酸 0.01
酢酸 0.015
水 9.23
1−ブテン 0.01
イソ−ブテン 0.02
プロパン 18.46
プロピレン 3.98
エタン 1.16
エチレン 0.22
CO 2.34
CO 0.26
59.7
1.62
CH 0.12
2.83 。
【0213】
これは、順番に残留ガス(23℃、3.1バール)、新鮮プロパン(25℃、4バール)、水素(25℃、8バール)、水蒸気(200℃、2.5バール)、脱水素循環ガス(600℃、1.9バール)から得られる(含有している):
− 次の内容物を有する、部分酸化からの残留ガス(ガス状出発流2)41.9容量%:
容量%
アクリル酸 0.02
酢酸 0.04
O 2.73
イソ−ブテン 0.01
アクロレイン 0.05
プロパン 17.30
プロピレン 0.32
エタン 1.20
エチレン 0.22
CO 2.41
CO 0.61
71.21
3.87
− 次の内容物を有する新鮮プロパン(ガス状出発流3) 3.9容量%:
容量%
プロパン 98.91
イソ−ブタン 0.05
プロピレン 0.1
エタン 0.92
エチレン 0.01
− 水素分子(ガス状出発流4) 1.02容量%:
− 水蒸気(ガス状出発流5) 2.03容量%及び
− 脱水素循環ガス(生成ガス混合物A−分流1又はガス状出発流1)51.15容量%。
【0214】
この場合に、残留ガス、新鮮プロパン、水素及び水蒸気は、前記の順番で一緒にされて推進噴射混合物流にされ、かつ生成ガス混合物A−分流2での間接的熱交換によって、500℃、2.3バールにされる。
【0215】
生じる生成ガス混合物A−分流2は次の内容物を有する:
容量%
O 11.84
イソ−ブテン 0.01
プロパン 14.32
プロピレン 7.52
エタン 1.21
エチレン 0.26
CO 2.61
58.41
0.23
3.55 。
【0216】
生成ガス混合物A−分流2中に含有されているプロパン及びプロピレンは、吸収剤としてのFa.Haltermann DEの工業用テトラデカン タイプPKWF4/7af中の吸収によって吸収分離され、空気を用いるストリッピングにより再び放出され(この際、DE−A102004032129に記載のように処理される)、次の内容物を有する部分酸化用のチャージガスが得られる:
容量%
O 2.39
テトラデカン 0.01
イソ−ブテン 0.01
プロパン 15.15
プロピレン 7.95
エタン 1.10
エチレン 0.20
CO 1.05
56.99
15.16 。
【0217】
このチャージガス混合物(これは爆発範囲外にある)を、前記の第1部分酸化反応工程にチャージする。この固定床触媒装填物上のプロピレン負荷率を、185Nl/l・hに選択する。第1反応工程の入口の圧力は3.1バールである。TA=322℃;TB=328℃。
【0218】
第1反応工程を出た生成ガス混合物は次の内容物を有する:
容量%
アクリル酸 0.46
酢酸 0.14
O 10.65
1−ブテン 0.01
アクロレイン 6.99
プロパン 15.16
プロピレン 0.17
エタン 1.10
エチレン 0.20
CO 1.62
CO 0.23
57.02
6.25 。
【0219】
反応帯域Aの終点でのプロペン変換率 UAは64.5モル%である。
【0220】
反応帯域Bの終点でのプロペン変換率 UBは94.9モル%である。
【0221】
第1工程の生成ガス混合物に、生じる混合物中のモル比O:アクロレインが1.25になるような量の空気(25℃)を配量添加する。
【0222】
次いで、この混合物を第2反応工程に直接チャージする(T=231.7℃)。
【0223】
この触媒固定床のアクロレイン負荷率は、152Nl/l・hである。
【0224】
=263℃;T=269℃。 第2反応工程の入口の圧力は2.1バールである。
【0225】
第2反応工程を出る生成ガス混合物は次の内容物を有する:
容量%
アクリル酸 6.72
酢酸 0.22
O 11.06
ホルムアルデヒド 0.14
アクロレイン 0.05
蟻酸 0.03
無水マレイン酸 0.06
安息香酸 0.01
プロパン 14.62
プロピレン 0.28
エタン 1.02
エチレン 0.18
CO 2.03
CO 0.52
59.86
3.20
プロピオン酸 0.0032 。
【0226】
反応帯域Cの終点でのアクロレイン変換率 Uは68.1モル%である。
【0227】
反応帯域Dの終点でのアクロレイン変換率 Uは99.3モル%である。
【0228】
双方の反応工程で、反応ガス混合物は、双方の触媒管を上から下方に流過する。
【0229】
ガスクロマトグラフィ分析を用いて内容物分析を行なう。
【0230】
生成ガス混合物からアクリル酸を、DE−A102004032129の実施形と同様にして分離し、残留ガスをガス状出発流2として、不均一系触媒作用脱水素に送り戻す。
【0231】
この方法は、前記のようであるが、反応帯域A中で各触媒トレーに同量の脱水素触媒のみを装填するように変更して、即ち希釈の目的の不活性物質を共用せずに実施することもできる。
【0232】
IV.増加性操作時間を用いることによる、IIIの方法の変更
実験装置の操作時間の増加に伴い、脱水素触媒を再生させるか又は新製装填物で置換する場合でも、生成ガス混合物A中のプロピレン含有率は減少する。
【0233】
同時に、トレー反応器の第1触媒固定床中(流れ方向で)の最大温度の低下が確認できる。
【0234】
残留ガス、新鮮プロパン、水蒸気(次いで間接的熱交換)及び次いで最初の水素分子の順番で推進噴射混合物流を取得することにより、新規操作の場合の当初の結果を再び回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0235】
【図1】図1は、DE−A102004032129の比較例並びにDE−A102005010111の実施例で用いられているトレー反応器の1実施形を示す図を示している。
【図2】図2は、DE−A102004032129の比較例並びにDE−A102005010111の実施例で用いられているトレー反応器のもう一つの実施形を示す図を示している。
【図3】図3は、反応帯域Aの可能な2つの実施形を示す図を示している。
【図4】図4は、本発明の実施例1を実施する反応器を示す図を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程:
A)第1反応帯域A中への取入口に、少なくとも4本の異なるガス状出発流1、2、3及び4を一緒に案内することにより得られた反応ガス混合物装入流Aを供給するが、但し、3本のガス状出発流1、2及び3はプロパンを含有し、ガス状出発流4は水素分子であり、ガス状出発流3は新鮮プロパンであり、
この反応ガス混合物装入流Aを反応帯域A中で、少なくとも1つの触媒床に導き、それに接して、場合により更なるガス流の供給下に、プロパンの不均一系触媒作用部分的脱水素によってプロパン及びプロピレンを含有している生成ガス混合物流Aを形成させ、
第1反応帯域Aからの排出口を通って、そこから生成ガス混合物流Aを排出させ、かつその際に、同じ組成を有する2つの生成ガス混合物A−分流1と2とに分割し、かつ第1の循環ガス運転において、生成ガス混合物A−分流1をガス状出発ガス流1として第1反応帯域A中に送り戻し、
生成ガス混合物A−分流2を、場合により、第1分離帯域A中で、中に含有されているプロパン及びプロピレンとは異なる成分から1部分量又はそれ以上を分離し、かつそれにより残っているプロパン及びプロピレンを含有している生成ガス混合物A’を取得するために、第1分離帯域A中に導くこと、
B)生成ガス混合物流A−分流2又は生成ガス混合物流A’を、第2反応帯域B中で、少なくとも1つの酸化反応器のチャージのために使用し、かつ少なくとも1つの酸化反応器中で、生成ガス混合物A−分流2又は生成ガス混合物流A’中に含有されているプロピレンを、酸素分子での選択的な不均一系触媒作用部分的気相酸化に供して、目的物質としてのアクロレイン又はアクリル酸又はこれらの混合物、反応しなかったプロパン及び場合により反応しなかったプロピレン並びに過剰の酸素分子を含有している生成ガス混合物Bを生じさせ、
生成ガス混合物流Bを反応帯域Bから排出させ、かつ第2分離帯域B中で、生成ガス混合物流B中に含有されている目的生成物を分離し、かつこの際に残っている、反応しなかったプロパン、酸素分子並びに場合により反応しなかったプロピレンを含有している残留ガスから、反応しなかったプロパン、酸素分子及び場合により反応しなかったプロピレンを含有している少なくとも一部分量を、第2の循環ガス運転において、ガス状出発ガス流2として、反応帯域A中に送り戻すが、但し、ガス状出発流2、3及び4並びに場合による付加的な、ガス状出発流1とは異なるガス状出発流を一緒にしてガス状推進噴射混合物流を生じさせ、かつ引き続きこのガス状推進噴射混合物流を推進噴射流として用いて、噴射ノズル、混合帯域及びディフューザー及び吸引ノズルを包含するジェットポンプを作動させ、この際、噴射ノズルにより混合帯域及びディフューザーを経て放出される推進噴射流の第1反応帯域Aの取入口中への送り方向並びに吸引ノズルの吸引作用は、生成ガス混合物流Aを案内する第1反応帯域Aの排出口の方向を指し、かつこの場合に、吸引ノズル内で生じる減圧によって、生成ガス混合物流Aの二つの分流1と2とに分割下に、生成ガス混合物A−分流1を吸引し、推進噴射流との混合と同時に混合帯域を通りディフューザーを経て移送し、かつこの場合に生じる反応ガス混合物装入流Aを、第1反応帯域Aの取入口中に放出させること;
により、プロパンからアクロレイン又はアクリル酸又はそれらの混合物を製造する方法において、
差し当たり、ガス状出発流2及び3並びに場合によっては付加的な、ガス状出発流1及び4とは異なるガス状出発流を、任意の順番で一緒にして1本のガス状出発混合物流とし、次いで初めて、このガス状出発混合物流に、ガス状推進噴射混合物流の形成下にガス状出発流4を添加することを特徴とする、プロパンからアクロレイン又はアクリル酸又はそれらの混合物を製造する方法。
【請求項2】
5本の互いに異なるガス状出発流1、2、3、4及び5を一緒に案内することによって反応ガス混合物装入流Aを得たこと及びガス状出発流5は水蒸気であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ガス状出発流1及び4とは異なるガス状出発流を一緒にしてガス状出発混合物にすることを、ガス状出発流2、ガス状出発流5及び次いでガス状出発流3の順番で行うことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
推進噴射混合物流の形成の時点から反応ガス混合物装入流Aが流れ方向で反応帯域Aの第1触媒床に達する時点までに、30秒を越えないことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
推進噴射混合物流の形成の時点から反応ガス混合物装入流Aが流れ方向で反応帯域Aの第1触媒床に達する時点までに、10秒を越えないことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
反応帯域Aはトレー反応器であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
プロパンの不均一系触媒作用部分的脱水素を、反応帯域A中で自熱的に行うことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−511539(P2009−511539A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534997(P2008−534997)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067080
【国際公開番号】WO2007/042457
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】