説明

プロピレンの製造方法

【課題】炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを反応させてプロピレンを製造するにあたり、エチレンとプロピレンの生産バランスを変えると共に、精製工程を効率化して用役・設備投資費用の削減を図る。
【解決手段】炭素数4以上のオレフィン原料と、リサイクル流体(X)と、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを反応器11に供給し、反応器11の出口ガス(A)を、炭素数2以下の炭化水素およびプロピレンを含有した流体(B)と、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(Y)と、水に富んだ流体(P)とに分離し、流体(Y)の一部(X)を反応器11にリサイクルし、残部を抜き出す。流体(B)をスチームクラッキングプロセスに供給し、流体(P)をクラッカーの希釈水蒸気として利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルを含む原料混合物からプロピレンを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィンを製造する方法としては、従来からナフサやエタンのスチームクラッキング(非特許文献1)、減圧軽油の流動接触分解が一般的に実施されており、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを原料としたMTOプロセスも注目を浴びている。また、プロピレンを製造する方法としては、エチレンと2−ブテンを原料としたメタセシス反応、炭素数4以上のオレフィンの接触クラッキング、さらに炭素数4以上のオレフィンとメタノール等の含酸素化合物を原料としてプロピレンを製造する方法も知られている(特許文献2)。
【非特許文献1】HYDROCARBON PROCESSING,March 1999,112
【特許文献2】米国特許第6888038号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のオレフィン製造法の中で世界的に主流なのはスチームクラッキングによる方法である。既存のスチームクラッキングプロセスにおいてプロピレンを増産する方法としては、クラッカーへの原料供給量を増加させる方法が挙げられるが、この方法ではプロピレンよりもエチレンが多く生成するため、プロピレンだけを増産することは不可能であり、エチレンとプロピレンの生産比率を大きく変えることはできない。一方、炭素数4以上のオレフィンとメタノール等の含酸素化合物を原料としてプロピレンを製造するプロセス(以下、「プロピレン製造プロセス」と称す。)では、高いプロピレン/エチレン比でプロピレンを製造することが可能であることから、プロピレン製造プロセスをスチームクラッキングプロセスと統合することにより、エチレンとプロピレンの生産比率を大きく変えることが可能となり、実質的にプロピレンだけを増産することも可能となる。さらに、プロピレン製造プロセスはスチームクラッキングプロセスに比べて二酸化炭素の副生が少ないため、環境負荷の小さいプロピレン増産方法となる。
【0004】
また、このようにプロピレン製造プロセスとスチームクラッキングプロセスとの二つのプロセスを統合する場合、いくつかの利点が期待できる。一つは互いのプロセスで生成する低価値流体の有効利用である。例えば、スチームクラッキングプロセスで生成した炭素数4または5の炭化水素流体の一部は、通常水素添加によりパラフィンに富んだ流体に変換後クラッカーに戻されるが、水素添加前の該流体はプロピレン製造プロセスの原料として有効利用が可能である。一方、プロピレン製造プロセスで抜き出される流体の一部はスチームクラッキングプロセスのクラッカー原料として有効利用が可能である。
【0005】
他の利点としては精製工程の効率化が挙げられる。スチームクラッキングプロセスのクラッカー出口流体とプロピレン製造プロセスの反応器出口流体の組成は大きく異なるものの、エチレン、プロピレンを含め、その他共通の化合物が多く含まれるため、精製工程の共有化が期待できる。例えば、プロピレン製造プロセスで生成した流体を全てスチームクラッキングプロセスの精製工程に導入して精製することが可能であれば、プロピレン製造プロセスの設備投資を著しく削減することが可能である。
【0006】
しかしながら、必ずしもプロピレン製造プロセスで生成した流体の全てをスチームクラッキングプロセスにおいて精製できるとは限らず、例えば、精製工程の処理能力に大きな余裕の無い既存のスチームクラッキングプロセスに対してプロピレン製造プロセスを統合する場合などのように、困難な場合も多い。そのため、精製工程の処理能力に大きな余裕の無いスチームクラッキングプロセスに対するプロピレン製造プロセスの統合という制約がある条件で、用役費用と設備投資費用を著しく削減させる方法の確立が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを反応させてプロピレンを製造するプロセスにおける反応器出口流体の一部をスチームクラッキングプロセスに導入することにより、エチレンとプロピレンの生産バランスを大幅に変えると共に、精製工程の効率化により用役費用と設備投資費用を著しく削減した環境負荷の小さなプロセスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルを反応させてプロピレンを得るプロピレン製造プロセスにおいては、プロピレンと共にエチレンが炭素数2以下の低沸点副生物として生産される。炭素数2以下の低沸点副生物としては、エチレンの他にエタンやメタン等が微量含まれ、場合によっては水素や二酸化炭素が含まれる場合もある。そのため、製品として高純度のエチレンを得るためには、それらの化合物を除去する工程が必要となる。副生するエチレンの量はプロピレンに比べて少ないものの、これらの分離工程は極低温且つ高圧という厳しい条件が必要であるため、設備投資は大きくなってしまう。そのため、エチレンを含む炭素数2以下の低沸点副生物はスチームクラッキングプロセスにおける精製工程に導入して精製するのが好ましい。このとき、スチームクラッキングプロセスの精製工程の処理能力として、プロピレン製造プロセスで生成したエチレンを処理できるだけの余裕があれば、そのまま導入すれば良いし、処理能力に余裕が無い場合にはスチームクラッキングプロセスのクラッカー原料供給量を減らすか、クラッカー原料として重質原料を用いることによりスチームクラッキングプロセスで生成するエチレン量を減少させれば良い。その場合にも、スチームクラッキングプロセスとプロピレン製造プロセスで生成するエチレンの合計生産量は、これらのプロセスを統合する前のスチームクラッキングプロセスのエチレン生産量より減少することは無い。そのため、プロピレン製造プロセスにおけるエチレン精製工程を省略し、且つエチレン生産量を維持した状態でのプロピレンの増産が可能となる。
【0009】
本発明者らが、プロピレン製造プロセスにおいて生成するエチレンをスチームクラッキングプロセスに導入する方法を鋭意検討した結果、上記のエチレンが含まれる流体に特定の割合でプロピレンが含まれることにより、プロピレン製造プロセスにおける設備投資のさらなる削減および用役費用の削減が可能であることを見出した。
【0010】
一方、炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを反応させるプロピレン製造プロセスにおいては、原料となるメタノールやジメチルエーテルと等モルに近い水が副生する。通常、これらの水は廃水として処理されるが、プロピレン製造用の反応器において特定の反応条件を選定することにより、前記水に含まれる炭素数1〜5の酸の濃度を低くすることが可能であり、この副生水の少なくとも一部をスチームクラッキングプロセスに導入できることを見出した。この副生水をクラッカーの希釈蒸気源として利用することにより、スチームクラッキングプロセスで使用する水量の削減や廃水処理設備の省略あるいは小規模化が可能となり、用役費用と設備投資費用の両方を大幅に削減することが可能である。
【0011】
本発明は、このような知見に基づいて達成されたものであり、その要旨は以下のとおりである。
【0012】
[1] 炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを含む混合物を、触媒の存在下、反応器中で接触させてプロピレンを製造する方法において、以下の工程(1),(2),(3)および(4)を含むプロセスよりなることを特徴とするプロピレンの製造方法。
工程(1):炭素数4以上のオレフィン原料、工程(3)からリサイクルされた炭化水素流体(X)、並びに、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを反応器に供給し、反応器出口からプロピレン、エチレン、ブテン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有するガス(反応器出口ガス)(A)を得る工程
工程(2):前記工程(1)からの反応器出口ガス(A)を、炭素数2以下の炭化水素およびプロピレンを含有した流体(B)と、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(Y)と、および水に富んだ流体(P)とに分離する工程
工程(3):流体(Y)の一部(X)を反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
工程(4):流体(B)をスチームクラッキングプロセスに供給する工程
【0013】
[2] [1]において、前記工程(2)が、前記反応器出口ガス(A)から冷却および圧縮工程により水分を凝縮除去した後に、蒸留により、炭素数2以下の炭化水素およびプロピレンを含有した流体(B)と、炭素数3以上の炭化水素に富んだ流体とに分離し、炭素数3以上の炭化水素に富んだ流体を、蒸留により、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(Y)とに分離する工程を含むことを特徴とするプロピレンの製造方法。
【0014】
[3] [1]おいて、前記工程(2)が、前記反応器出口ガス(A)から冷却および圧縮工程により水分を凝縮除去した後に、蒸留により、炭素数3以下の炭化水素に富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(Y)とに分離し、炭素数3以下の炭化水素に富んだ流体を、蒸留により、炭素数2以下の炭化水素およびプロピレンを含有した流体(B)と、プロピレンに富んだ流体とに分離する工程を含むことを特徴とするプロピレンの製造方法。
【0015】
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、前記スチームクラッキングプロセスが以下の工程(5),(6),(7)および(8)を含むプロセスよりなることを特徴とするプロピレンの製造方法。
工程(5):クラッカー原料となる炭化水素を希釈水蒸気と共にクラッカーに供給し、加熱分解することによりクラッカー出口からエチレン、プロピレン、その他オレフィン、パラフィン、水素、芳香族化合物および水を含有したガス(クラッカー出口ガス)(C)を得る工程
工程(6):クラッカー出口ガス(C)を冷却した後、蒸留塔に導入し、塔底から燃料油を得ると共に、塔頂から燃料油が除去されたガス(D)を得る工程
工程(7):ガス(D)をクエンチ塔に導入し、塔底から分解ガソリンと水を含んだ流体(Q)を抜き出すと共に、塔頂からエチレン、プロピレン、その他オレフィン、パラフィン、水素、および芳香族化合物を含むガス(E)を得る工程
工程(8):ガス(E)を圧縮機で昇圧すると共に、アルカリ洗浄塔で硫化水素および/または二酸化炭素を除去したガス(F)を得る工程
【0016】
[5] [4]において、前記スチームクラッキングプロセスが、前記工程(8)に続いて以下の工程(9A),(10A),(11A)および(12A)を含むプロセスであることを特徴とするプロピレンの製造方法。
工程(9A):ガス(F)を深冷分離工程に導入し、水素と、それ以外の流体(G)とに分離する工程
工程(10A):流体(G)を脱メタン塔に導入し、メタンと、それ以外の流体(H)とに分離する工程
工程(11A):流体(H)を脱エタン塔に導入し、炭素数2の炭化水素に富んだ流体と、炭素数3以上の炭化水素に富んだ流体(I)とに分離する工程
工程(12A):流体(I)を脱プロパン塔に導入し、炭素数3の炭化水素に富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体とに分離する工程
【0017】
[6] [4]において、前記スチームクラッキングプロセスが、前記工程(8)に続いて以下の工程(9B),(10B),(11B)および(12B)を含むプロセスであることを特徴とするプロピレンの製造方法。
工程(9B):ガス(F)を脱プロパン塔に導入し、炭素数3以下の炭化水素および水素に富んだ流体(J)と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体とに分離する工程
工程(10B):流体(J)を深冷分離工程に導入し、水素と、炭素数1〜3の炭化水素に富んだ流体(K)とに分離する工程
工程(11B):流体(K)を脱メタン塔に導入し、メタンと、炭素数2〜3の炭化水素に富んだ流体(L)とに分離する工程
工程(12B):流体(L)を脱エタン塔に導入し、炭素数2の炭化水素に富んだ流体と、炭素数3の炭化水素に富んだ流体とに分離する工程
【0018】
[7] [4]において、前記スチームクラッキングプロセスが、前記工程(8)に続いて以下の工程(9C),(10C),(11C)および(12C)を含むプロセスであることを特徴とするプロピレンの製造方法。
工程(9C):ガス(F)を脱プロパン塔に導入し、炭素数3以下の炭化水素および水素に富んだ流体(J)と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体とに分離する工程
工程(10C):流体(J)を脱エタン塔に導入し、炭素数1〜2の炭化水素および水素に富んだ流体(M)と、炭素数3の炭化水素に富んだ流体とに分離する工程
工程(11C):流体(M)を深冷分離工程に導入し、水素と、炭素数1〜2の炭化水素に富んだ流体(N)とに分離する工程
工程(12C):流体(N)を脱メタン塔に導入し、メタンと、炭素数2の炭化水素に富んだ流体とに分離する工程
【0019】
[8] [4]において、前記スチームクラッキングプロセスが、前記工程(8)に続いて以下の工程(9D),(10D),(11D)および(12D)を含むプロセスであることを特徴とするプロピレンの製造方法。
工程(9D):ガス(F)を脱エタン塔に導入し、炭素数2以下の炭化水素および水素に富んだ流体(O)と、炭素数3以上の炭化水素に富んだ流体(I)とに分離する工程
工程(10D):流体(O)を深冷分離工程に導入し、水素と、炭素数1〜2の炭化水素に富んだ流体(N)とに分離する工程
工程(11D):流体(N)を脱メタン塔に導入し、メタンと、炭素数2の炭化水素に富んだ流体とに分離する工程
工程(12D):流体(I)を脱プロパン塔に導入し、炭素数3の炭化水素に富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体とに分離する工程
【0020】
[9] [4]ないし[8]のいずれかにおいて、前記流体(B)を、前記工程(6)におけるクラッカー出口から前記工程(8)におけるアルカリ洗浄塔の間のいずれかの箇所に供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
【0021】
[10] [9]において、前記流体(B)を、前記工程(7)におけるクエンチ塔の塔頂から前記工程(8)におけるアルカリ洗浄塔の間のいずれかの箇所に供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
【0022】
[11] [5]において、前記流体(B)を、前記工程(8)におけるアルカリ洗浄塔の塔頂から前記工程(10A)における脱メタン塔の間のいずれかの箇所に供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
【0023】
[12] [6]において、前記流体(B)を、前記工程(8)のアルカリ洗浄塔の塔頂から前記工程(11B)における脱メタン塔の間のいずれかの箇所に供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
【0024】
[13] [7]において、前記流体(B)を、前記工程(8)のアルカリ洗浄塔の塔頂から前記工程(10C)における脱エタン塔の間のいずれかの箇所に供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
【0025】
[14] [8]において、前記流体(B)を、前記工程(8)のアルカリ洗浄塔の塔頂から前記工程(9D)における脱エタン塔の間のいずれかの箇所に供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
【0026】
[15] [1]ないし[14]のいずれかにおいて、前記流体(B)におけるプロピレンの濃度が、流体(B)に含まれるエチレンの濃度に対して重量比で0.1〜1.0倍の範囲にあることを特徴とするプロピレンの製造方法。
【0027】
[16] 炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルを含む混合物を、触媒の存在下、反応器中で接触させてプロピレンを製造する方法において、以下の工程(1E),(2E),(3E)および(4E)を含むプロセスよりなることを特徴とするプロピレン製造方法。
工程(1E):炭素数4以上のオレフィン原料、工程(3E)からリサイクルされた炭化水素流体(Z)、並びに、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを反応器に供給し、反応器出口からプロピレン、エチレン、ブテン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有するガス(反応器出口ガス)(A)を得る工程
工程(2E):反応器出口ガス(A)を、炭化水素に富んだ流体(W)と、水に富んだ流体(P)とに分離する工程
工程(3E):炭化水素に富んだ流体(W)の一部(Z)を反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
工程(4E):流体(P)をスチームクラッキングプロセスに供給し、クラッカーの希釈水蒸気として利用する工程
【0028】
[17] [16]において、前記工程(2E)が、前記反応器出口ガス(A)から冷却および圧縮工程により水分を凝縮させて分離する工程を含むことを特徴とするプロピレンの製造方法。
【0029】
[18] [16]または[17]において、前記スチームクラッキングプロセスが以下の工程(5E),(6E),(7E),(8E),(9E)および(10E)を含むプロセスであることを特徴とするプロピレンの製造方法。
工程(5E):クラッカー原料となる炭化水素を希釈水蒸気と共にクラッカーに供給し、加熱分解することによりクラッカー出口からエチレン、プロピレン、その他オレフィン、パラフィン類、水素、芳香族化合物および水を含有したガス(クラッカー出口ガス)(C)を得る工程
工程(6E):クラッカー出口ガス(C)を冷却した後、蒸留塔に導入し、塔底から燃料油を得ると共に、塔頂から燃料油が除去されたガス(D)を得る工程
工程(7E):ガス(D)をクエンチ塔に導入し、塔底から水を含んだ流体(Q)を抜き出すと共に、塔頂からエチレン、プロピレン、その他オレフィン、パラフィン、水素、および芳香族化合物を含むガス(E)を得る工程
工程(8E):流体(Q)を油水分離器に導入し、水相(R)と油相を分離する工程
工程(9E):水相(R)をプロセス水ストリッパーに導入し、塔底から水相(R)より有機物濃度の低い水(S)を得る工程
工程(10E):水(S)を蒸気発生器に導入し、クラッカーの希釈水蒸気を発生させる工程
【0030】
[19] [16]ないし[18]のいずれかにおいて、前記流体(P)を、前記工程(5E)におけるクラッカー出口から前記工程(10E)における蒸気発生器の間のいずれかの箇所に供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
【0031】
[20] [19]において、前記流体(P)を、前記工程(7E)におけるクエンチ塔から前記工程(10E)における蒸気発生器の間のいずれかの箇所に供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
【0032】
[21] [19]において、前記流体(P)を、前記工程(7E)におけるクエンチ塔から前記工程(9E)におけるプロセス水ストリッパーの間のいずれかの箇所に供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
【0033】
[22] [16]ないし[21]のいずれかにおいて、前記流体(P)に含まれる炭素数1〜4の有機酸の濃度が100重量ppm以下であることを特徴とするプロピレンの製造方法。
【0034】
[23] [1]ないし[22]のいずれかにおいて、前記反応器出口の炭素数4以上のオレフィンのモル流量が、該反応器入口の該オレフィンのモル流量に対して20%以上70%未満になるような反応条件で前記混合物を触媒と接触させることを特徴とするプロピレンの製造方法。
【0035】
[24] [1]ないし[23]のいずれかにおいて、前記反応器に供給する炭素数4以上のオレフィンの量が、該反応器に供給するメタノールのモル数とジメチルエーテルのモル数の2倍との合計に対して、モル比で0.2以上10以下であることを特徴とするプロピレンの製造方法。
【0036】
[25] [1]ないし[24]のいずれかにおいて、前記反応器に供給する炭素数4以上のオレフィン原料が、スチームクラッキングプロセスで得られる炭素数4の炭化水素流体を含むことを特徴とするプロピレンの製造方法。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを反応させてプロピレンを製造するプロセスにおける生成物の一部をスチームクラッキングプロセスに導入することにより、エチレンとプロピレンの生産バランスを大幅に変えると共に、用役費用と設備投資費用を著しく削減した環境負荷の小さなプロセスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下に、本発明を実施するための代表的な態様を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の態様に限定されるものではない。
【0039】
本発明は前述したような4つの工程(1),(2),(3)および(4)、或いは、(IE),(2E),(3E)および(4E)を含むものであるが、本発明の課題を解決するという目的に従う限り、それ以外の工程の存在を排除するものではなく、4つの工程の前後に他の工程が存在していてもよく、各工程の間に他の工程が存在していてもよい。
同様に、工程(5),(6),(7),および(8)を含むプロセス、更に工程(8)に続く、工程(9A),(10A),(11A)および(12A)を含むプロセス、工程(9B),(10B),(11B)および(12B)を含むプロセス、工程(9C),(10C),(11C)および(12C)を含むプロセス、工程(9D),(10D),(11D)および(12D)を含むプロセス、工程(5E),(6E),(7E),(8E),(9E)および(10E)を含むプロセスにおいても、本発明の課題を解決するという目的に従う限り、それ以外の工程の存在を排除するものではなく、これらの工程の前後に他の工程が存在していてもよく、各工程の間に他の工程が存在していてもよい。
【0040】
また、本発明において「富んだ」とは、目的物の純度が90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上であることを意味する。例えば、「炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(Y)」とは、「炭素数4以上の炭化水素」を90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上含む流体である。
【0041】
[触媒]
まず、本発明で用いる触媒について説明する。
本発明に係る反応に用いられる触媒としては、ブレンステッド酸点を有する固体状のものであれば特に限定されず、従来公知の触媒が用いられ、例えば、カオリン等の粘土鉱物;粘土鉱物等の担体に硫酸、燐酸等の酸を含浸・担持させたもの;酸性型イオン交換樹脂;ゼオライト類;燐酸アルミニウム類;Al−MCM41等のメソポーラスシリカアルミナ等の固体酸触媒が挙げられる。
【0042】
これらの固体酸触媒のうちでも、分子篩効果を有するものが好ましく、また、酸強度があまり高くないものが好ましい。
【0043】
前記固体酸触媒のうち、分子篩効果を有するゼオライト類や燐酸アルミニウム類の構造としては、International Zeolite Association(IZA)が規定するコードで表すと、例えば、AEI、AET、AEL、AFI、AFO、AFS、AST、ATN、BEA、CAN、CHA、EMT、ERI、EUO、FAU、FER、LEV、LTL、MAZ、MEL、MFI、MOR、MTT、MTW、MWW、OFF、PAU、RHO、STT、TON等が挙げられる。その中でも触媒のフレームワーク密度が18.0T/nm以下である触媒が好ましいく、このようなものとしては、好ましくは、MFI、MEL、MOR、MWW、FAU、BEA、CHAで、より好ましくは、MFI、MEL、MOR、MWW、CHA、特に好ましくはMFI、MEL、MWW、CHAが挙げられる。
ここで、フレームワーク密度(単位:T/nm)とは、ゼオライトの単位体積(1nm)当たりに存在するT原子(ゼオライトの骨格を構成する原子のうち、酸素以外の原子)の個数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。
【0044】
更に、該固体酸触媒としてより好ましくは、細孔径が0.3〜0.9nmのミクロ細孔を有し、BET比表面積が200〜700m/g、細孔容積が0.1〜0.5g/ccである結晶性アルミノシリケート類、メタロシリケート類又は結晶性燐酸アルミニウム類等が好ましい。なお、ここで言う細孔径とは、International Zeolite Association(IZA)が定める結晶学的なチャネル直径(Crystallographic free diameter of the channels)を示し、細孔(チャネル)の形状が真円形の場合は、その直径をさし、細孔の形状が楕円形の場合は、短径をさす。
【0045】
また、アルミノシリケートの中では、SiO/Alのモル比が10以上のものが好ましい。SiO/Alモル比が低すぎると触媒の耐久性が低下するため好ましくない。SiO/Alのモル比の上限は通常10000以下である。SiO/Alのモル比がこれより高すぎると触媒活性が低下してしまうため好ましくない。上記モル比は、蛍光X線や化学分析法などの常法により求めることができる。
触媒中のアルミニウム含量は触媒調製の際の原料仕込み量でコントロールすることができ、また、調製後にスチーミング等によりAlを減らすこともできる。また、Alの一部をホウ素やガリウム等の他の元素に置き換えても良く、特にホウ素で置換することが好ましい。
【0046】
これらの触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
本発明においては、反応に不活性な物質やバインダーを用いて、造粒・成型して、或いはこれらを混合して反応に用いても良い。該反応に不活性な物質やバインダーとしては、アルミナまたはアルミナゾル、シリカ、シリカゲル、石英、およびそれらの混合物等が挙げられる。
【0048】
なお、上記した触媒組成は、これらの反応に不活性な物質やバインダー等を含まない触媒活性成分のみの組成である。しかして、本発明に係る触媒とは、これらの反応に不活性な物質やバインダー等を含む場合は、前述の触媒活性成分とこれらの反応に不活性な物質やバインダー等とを合わせて触媒と称し、これらの反応に不活性な物質やバインダー等を含まない場合は、触媒活性成分のみで触媒と称す。
【0049】
本発明で用いる触媒活性成分の粒径は合成時の条件により異なるが、通常、平均粒径として0.01μm〜500μmである。触媒の粒径が大き過ぎると、触媒活性を示す表面積が小さくなり、小さ過ぎると取り扱い性が劣るものとなり、いずれの場合も好ましくない。この平均粒径は、SEM観察等により求めることができる。
【0050】
本発明で用いる触媒の調製方法は特に限定されず、一般的に水熱合成と呼ばれる公知の方法により調製することが可能である。また、水熱合成後にイオン交換、脱アルミニウム処理、含浸や担持などの修飾により組成を変えることも可能である。
本発明で使用する触媒は、反応に供する際に、上記物性ないし組成を有しているものであれば良く、いずれの方法によって調製されたものであっても良い。
【0051】
[反応原料]
次に、本発明で反応原料とする炭素数4以上のオレフィン、メタノール、ジメチルエーテルについて説明する。
【0052】
<オレフィン原料>
反応の原料として用いる炭素数4以上のオレフィンとしては、特に限定されるものではない。例えば、石油供給原料から接触分解法またはスチームクラッキング等により製造されるもの(BB留分、C4ラフィネート−1、C4ラフィネート−2等)、石炭のガス化により得られる水素/CO混合ガスを原料としてFT(フィッシャートロプシュ)合成を行うことにより得られるもの、エチレンの二量化反応を含むオリゴマー化反応により得られるもの、炭素数4以上のパラフィンの脱水素法または酸化脱水素法により得られるもの、MTO反応によって得られるもの、アルコールの脱水反応によって得られるもの、炭素数4以上のジエン化合物の水素化反応により得られるもの等の、公知の各種方法により得られる、炭素数4以上、特に炭素数4〜10のオレフィンを任意に用いることができ、このとき各製造方法に起因する炭素数4以上のオレフィン以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したオレフィンを用いても良い。
【0053】
この中でも、炭素数4以上のパラフィン類を含んだオレフィン原料を使用する場合、パラフィンが希釈ガスの役割を果たすため反応温度の制御が容易になり、さらにパラフィン含有の原料は安価に入手可能であることが多いため好ましい。さらに好ましくはノルマルブタンおよび/またはイソブタンを含有したオレフィン原料である。
これらの好ましい原料としては上記のBB留分、C4ラフィネート−1やC4ラフィネート−2が挙げられる。なお、BB留分についてはブタジエンを多く含むため、水素添加触媒に接触させてブタジエン濃度を低下させた流体を原料とするのが好ましい。
【0054】
<メタノール、ジメチルエーテル>
反応の原料として用いるメタノールおよび/またはジメチルエーテルの製造由来は特に限定されない。例えば、石炭および天然ガス、ならびに製鉄業における副生物由来の水素/COの混合ガスの水素化反応により得られるもの、植物由来のアルコール類の改質反応により得られるもの、発酵法により得られるもの、再循環プラスチックや都市廃棄物等の有機物質から得られるもの等が挙げられる。このとき各製造方法に起因するメタノールおよびジメチルエーテル以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したものを用いても良い。
【0055】
[プロピレン製造プロセスの反応操作・条件:工程(1),(1E)]
以下に、前述の触媒および反応原料を用いる本発明のプロピレン製造反応の操作・条件について説明する。
【0056】
<反応器>
本発明における、炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとの反応は、気相反応である。この気相反応器の形態に特に制限はないが、通常、連続式の固定床反応器や流動床反応器から選ばれる。好ましくは固定床反応器である。
【0057】
なお、固定床反応器に前述の触媒を充填する場合には、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填しても良い。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量は特に制限はない。なお、この粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
【0058】
また、反応器は直列に接続された二つ以上の反応部からなるものであっても良い。この場合、一つの反応器内を複数の反応室に仕切ったものであっても良く、2以上の反応器を直列に連結したものであっても良い。
このように2以上の反応器を直列に連結したものである場合、反応に伴う発熱を除去することを目的として反応器と反応器の間に熱交換器を配置しても良い。
また、発熱を分散させることを目的に、反応基質(反応原料)を分割して供給しても良い。好ましくはメタノールおよび/またはジメチルエーテルを1段目の反応部(反応器または反応室)と2段目以降の反応部(反応器または反応室)に分割して供給する。
【0059】
本発明で用いる反応条件においては、触媒はコーキングが少なく、触媒劣化の速度は遅いが、1年以上の連続運転を行う場合には運転中に触媒再生を行う必要がある。
例えば、固定床反応器を選択する場合、反応器を少なくとも並列に二つ以上設置し、反応と再生を切り替えながら運転することが望ましい。固定床反応器の形態としては、多管式の反応器または断熱型の反応器が選ばれる。
一方、流動床反応器を選択する場合、触媒を連続的に再生槽に送り、再生槽において再生された触媒を連続的に反応器に戻しながら反応を行うことが好ましい。
【0060】
ここで、触媒の再生操作としては、コーキングにより劣化した触媒を、酸素を含有した窒素ガスや水蒸気などで処理することにより再生する方法が挙げられる。固定床反応器における再生操作としては、好ましくは窒素ガスで触媒に付着している揮発性有機化合物を除去した後、低濃度の酸素を含有する窒素ガスでコーク分を燃焼除去し、その後窒素ガスで処理することにより触媒層に含まれる分子状酸素を除去する方法が挙げられる。
【0061】
<反応器に供給するオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルの濃度比>
本発明においては、反応器に供給する炭素数4以上のオレフィンの量は、反応器に供給するメタノールのモル数とジメチルエーテルのモル数の2倍との合計に対して、モル比で0.2以上、好ましくは0.5以上であって、10以下、好ましくは5以下である。
即ち、炭素数4以上のオレフィンの供給モル量をMc4、メタノールの供給モル量をMm、ジメチルエーテルの供給モル量をMdmとした場合、Mc4は(Mm+2Mdm)の0.2〜10倍、好ましくは0.5〜5倍である。
この供給濃度比が低すぎても高すぎても反応が遅くなり好ましくなく、特に、この供給濃度比が低すぎると、原料のオレフィンの消費量が減少するため好ましくない。
【0062】
ここで、供給濃度比は、反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
なお、炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを反応器に供給する際には、これらを別々に供給しても、予め一部または全部を混合した後に供給してもよい。
【0063】
<反応器に供給する基質濃度>
本発明において、反応器に供給する全供給原料中の、炭素数4以上のオレフィンとメタノールとジメチルエーテルの合計濃度(基質濃度)は、好ましくは20体積%以上80体積%以下、より好ましくは30体積%以上70体積%以下である。
ここで基質濃度は、反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
【0064】
この基質濃度が高すぎると芳香族化合物やパラフィン類の生成が顕著になりプロピレンの選択率が低下する傾向がある。逆に、この基質濃度が低すぎると、反応速度が遅くなるため多量の触媒が必要となり、さらに生成物の精製コストや反応設備の建設費も大きくなり経済的でない。
本発明では、このような基質濃度となるように、以下に記載する希釈ガスで反応基質を希釈する。この場合において、基質濃度を制御する方法としては、プロセスから抜き出される流体の流量を制御する方法が挙げられる。即ち、プロセスから抜き出される流体の流量を変えることにより、反応器にリサイクルされる希釈ガスの流量が変化し、基質濃度を変えることが可能である。
【0065】
<反応器に供給するガス中の不純物濃度>
本発明において、炭素数4以上のオレフィン原料中および/またはリサイクルされる後述の炭化水素含有流体中にブタジエンを含有している場合があるが、反応器に供給される全供給原料中のブタジエンの濃度としては、2.0体積%以下が好ましい。原料中のブタジエン濃度が高いと触媒のコーキングによる劣化が速くなるため、好ましくない。
【0066】
ここでブタジエン濃度は、反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
原料中のブタジエン濃度を低下させる方法としては、該流体を水素添加触媒と接触させてオレフィン類に変換する部分水添法が挙げられる。
【0067】
また、反応器にリサイクルされる後述の炭化水素含有流体中に芳香族化合物を含有している場合があるが、反応器に供給される全原料に含まれる芳香族化合物の合計量が、反応器に供給される全原料に含まれる炭素数4以上のオレフィンの合計量に対してモル比で0.05未満であることが好ましい。原料中の芳香族化合物濃度が高いと、反応器内で芳香族化合物とメタノールおよび/またはジメチルエーテルとが反応し、必要以上にメタノールおよび/またはジメチルエーテルを消費してしまうため好ましくない。
【0068】
ここで上記の芳香族化合物の合計量と炭素数4以上のオレフィンの合計量の比は、反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
原料中の芳香族化合物濃度を低下させる方法としては、蒸留による分離法が挙げられる。
【0069】
<希釈ガス>
反応器内には、炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルの他に、パラフィン類、芳香族類、水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、および、それらの混合物といった、反応に不活性な気体を存在させることができる。なお、これらの希釈ガスのうち、パラフィン類や芳香族類は、反応条件によっては若干反応することがあるが、反応量が少ないことから、希釈ガスとして定義する。
このような希釈ガスとしては、反応原料に含まれている不純物をそのまま使用しても良いし、別途調製した希釈ガスを反応原料と混合して用いても良い。
また、希釈ガスは反応器に入れる前に反応原料と混合しても良いし、反応原料とは別に反応器に供給しても良い。
【0070】
<空間速度>
ここで言う空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの反応原料である炭素数4以上のオレフィンの流量であり、ここで触媒の重量とは触媒の造粒・成型に使用する不活性成分やバインダーを含まない触媒活性成分の重量である。また、流量は炭素数4以上のオレフィンの流量(重量/時間)である。
【0071】
空間速度は、0.1Hr−1から500Hr−1の間が好ましく、1.0Hr−1から100Hr−1の間が更に好ましい。空間速度が高すぎると原料のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルの転化率が低く、また、十分なプロピレン選択率が得られない。また、空間速度が低すぎると、一定の生産量を得るのに必要な触媒量が多くなり反応器が大きくなりすぎると共に、芳香族化合物やパラフィン等の好ましくない副生成物が生成し、プロピレン選択率が低下するため好ましくない。
【0072】
<反応温度>
反応温度の下限としては、反応器入口のガス温度として通常約300℃以上、好ましくは400℃以上であり、反応温度の上限としては、通常700℃以下、好ましくは600℃以下である。反応温度が低すぎると、反応速度が低く、未反応原料が多く残る傾向となり、更にプロピレンの収率も低下する。一方で反応温度が高すぎるとプロピレンの収率が著しく低下する。
【0073】
<反応圧力>
反応圧力の上限は通常2MPa(絶対圧、以下同様)以下好ましくは1MPa以下であり、より好ましくは0.7MPa以下である。また、反応圧力の下限は特に制限されないが、通常1kPa以上、好ましくは50kPa以上である。反応圧力が高すぎるとパラフィン類や芳香族化合物等の好ましくない副生成物の生成量が増え、プロピレンの収率が低下する傾向がある。反応圧力が低すぎると反応速度が遅くなる傾向がある。
【0074】
<反応による原料の消費量>
反応器に供給するメタノールのモル流量とジメチルエーテルのモル流量の2倍との合計に対して、反応器出口のメタノールのモル流量とジメチルエーテルのモル流量の2倍との合計は1%未満が好ましい。さらに好ましくは0.1%未満である。
反応器におけるメタノールとジメチルエーテルの消費量が少なく、反応器出口のメタノールやジメチルエーテルの量が増えすぎると、製品オレフィンの精製が困難になる。
メタノールとジメチルエーテルの消費量を多くする方法としては、反応温度を上げたり、空間速度を下げたりする方法が挙げられる。
【0075】
また、本発明において、反応器に供給する炭素数4以上のオレフィンのモル流量に対して、反応器出口の炭素数4以上のオレフィンのモル流量は20%以上70%未満とする。このモル流量割合は好ましくは25%以上60%未満である。反応器における炭素数4以上のオレフィンの消費量が少なすぎると、未反応のオレフィンが多くなり、反応器にリサイクルする流体の流量が大きくなりすぎて好ましくない。逆に消費量が多すぎると、パラフィンや芳香族化合物など望ましくない化合物が副生し、プロピレン収率が低下するため好ましくない。
反応器における炭素数4以上のオレフィンの消費量を調整する方法としては、反応温度や空間速度などを適切に設定する方法が挙げられる。
【0076】
ここで反応器に供給するメタノールとジメチルエーテルならびに炭素数4以上のオレフィンの流量は、反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量し、それぞれの流体の流量を測定することにより知ることができ、反応器出口のメタノールとジメチルエーテルならびに炭素数4以上のオレフィンの流量は、反応器出口流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な手法で定量し、反応器出口流体の流量を測定または計算することにより知ることができる。
【0077】
<反応生成物>
反応器出口ガス(反応器流出物)としては、反応生成物であるプロピレン、未反応原料、副生成物および希釈剤を含む混合ガスが得られる。該混合ガス中のプロピレン濃度は通常5〜95重量%である。
未反応原料は、通常炭素数4以上のオレフィンである。反応条件によってはメタノールおよび/またはジメチルエーテルが含まれるが、メタノールおよび/またはジメチルエーテルが残らないような反応条件で反応を行うのが好ましい。それにより、反応生成物と未反応原料との分離が容易になる。
副生成物としてはエチレン、炭素数が4以上のオレフィン類、パラフィン類、芳香族化合物および水が挙げられる。
【0078】
[プロピレン製造プロセスの分離工程]
本発明では、工程(1)からの反応器出口ガス(A)を、炭素数2以下の炭化水素およびプロピレンを含有した流体(B)と、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(以下「炭素数4以上の炭化水素流体」と称す場合がある。)(Y)と、水に富んだ流体(P)とに分離し(工程(2))、流体(Y)の一部(X)を反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出し(工程(3))、流体(B)をスチームクラッキングプロセスに供給する(工程(4))。或いは、反応器出口ガス(A)を炭化水素に富んだ流体(W)と、水に富んだ流体(P)とに分離し(工程(2E))、炭化水素に富んだ流体(W)の一部(Z)を反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出し(工程(3E))、流体(P)をスチームクラッキングプロセスに供給し、クラッカーの希釈水蒸気として利用する(工程(4E))。
【0079】
以下に、この工程(2)〜(4)ないし(2A)〜(4E)を図1を参照して説明する。
【0080】
図1において、11は反応器、12は分離精製工程である。101〜110はそれぞれ配管を示す。
【0081】
炭素数4以上のオレフィン原料、分離精製工程12からの炭素数4以上の炭化水素流体(X)、メタノールおよび/またはジメチルエーテルはそれぞれ配管101、102、103および配管104を経て反応器11に供給される。反応器11に供給される炭素数4以上のオレフィン原料には炭素数4以上のパラフィン類、例えばノルマルブタンやイソブタンなどが含まれていても良い。また、配管104を経て反応器11に供給される原料流体にはブタジエンや芳香族化合物が含まれていても良い。前述の如く、原料流体中のブタジエン濃度としては通常2.0体積%以下であり、芳香族化合物の合計量は配管104の原料流体に含まれる炭素数4以上のオレフィンの合計量に対してモル比で通常0.05未満であることが好ましい。なお、原料流体は、配管101、102および103を経て供給される流体の合計を意味しているが、これらは必ずしも反応器11に入る前に合流する必要は無く、別々に反応器11に供給されても良い。反応器11に供給された原料ガスは反応器11内で触媒と接触して反応し、プロピレン、その他のオレフィン、パラフィン類、芳香族化合物および水を含有した反応器出口ガス(A)が得られる。
反応器出口ガス(A)は配管105より、冷却、圧縮および蒸留等の一般的な分離精製工程(12)に送給され、炭素数2以下の炭化水素およびプロピレンを含有した流体(B)と、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(Y,W)と、水に富んだ流体(P)とに分離され、それぞれ配管106,107,108,110から取り出される。
【0082】
炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(Y,W)の一部は配管102より反応器11にリサイクルされ、残りの流体は該プロセスから抜き出される。また、水に富んだ流体(P)はスチームクラッキングプロセスに送給され、クラッカーの希釈水蒸気として利用される。
【0083】
分離精製工程12における一般的な分離工程の第1の態様として、配管105からの反応器出口ガス(A)を冷却および圧縮工程により水分を凝縮除去した後に、蒸留により、炭素数2以下の炭化水素およびプロピレンを含有した流体(B)と炭素数3以上の炭化水素に富んだ流体とに分離し、続いて炭素数3以上の炭化水素に富んだ流体を、蒸留により、プロピレンに富んだ流体と炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(Y)とに分離する工程を含む方法が適用される。
【0084】
また、第2の態様として、配管105からの反応器出口ガス(A)を、冷却および圧縮工程により水分を凝縮除去した後に、蒸留により、炭素数3以下の炭化水素に富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(Y)とに分離し、炭素数3以下の炭化水素に富んだ流体を、蒸留により、炭素数2以下の炭化水素およびプロピレンを含有した流体(B)と、プロピレンに富んだ流体とに分離する工程を含む方法が適用される。
【0085】
上記した第1および第2の態様において、必要に応じてクエンチ、アルカリ洗浄、脱水等の処理を行うのが好ましい。反応器出口ガスに含酸素化合物が含まれる場合にはクエンチ工程により、含酸素化合物の少なくとも一部が除去される。反応器出口ガスに二酸化炭素などの酸性ガスが含まれる場合にはアルカリ洗浄により酸性ガスの少なくとも一部が除去される。
水の分離は主に圧縮と冷却により凝縮することにより可能である。残った水分はモレキュラーシーブ等の吸着剤で除去するのが好ましい。
【0086】
第1の態様および第2の態様で得られた炭素数2以下の炭化水素およびプロピレンを含有する流体(B)の少なくとも一部は、後述するスチームクラッキングプロセスのいずれかの場所に供給され、スチームクラッキングプロセスにおいてエチレンやプロピレンが精製される。このことによりプロピレン製造プロセスの設備投資を著しく削減することが可能である。
【0087】
なお、第1の態様および第2の態様で得られた炭素数2以下の炭化水素およびプロピレンを含有する流体(B)に含まれるプロピレンの濃度は、同流体(B)に含まれるエチレンの濃度に対して重量比で0.1〜1.0倍の間であることが好ましい。このことにより、プロピレン製造プロセスにおいて同流体(B)を得るための蒸留塔の段数を減らし設備投資費用の削減が可能であると共に、同蒸留塔における用役費用も削減が可能である。
【0088】
また、プロピレンに富んだ流体はさらに蒸留等の分離工程において精製され、純度の高いプロピレンを得るのが好ましい。
プロピレンの純度としては95%以上であり、99%以上が好ましい。さらに好ましくは99.9%以上である。
【0089】
このようにして製造されたプロピレンは一般的に製造されるプロピレン誘導体すべてに使用でき、例えばアンモ酸化によりアクリロニトリルの製造に、選択酸化によりアクロレイン、アクリル酸およびアクリル酸エステルの製造に、オキソ反応によりノルマルブチルアルコール、2−エチルヘキサノール等のオキソアルコールの製造に、プロピレンの重合によりポリプロピレンの製造に、プロピレンの選択酸化によりプロピレンオキサイドおよびプロピレングリコール等の製造に適用することができる。また、ワッカー反応によりアセトンが製造でき、更にアセトンよりメチルイソブチルケトンを製造することができる。アセトンからはまたアセトンシアンヒドリンが製造でき、これは最終的にメチルメタクリレートに転換される。またプロピレン水和によりイソプロピルアルコールも製造できる。また、ベンゼンをアルキル化することにより製造したキュメンを原料に、フェノール,ビスフェノールA,ポリカーボネート樹脂を製造することができる。
【0090】
一方、第1の態様および第2の態様において分離除去された水(流体(P))の少なくとも一部は、後述するスチームクラッキングプロセスのいずれかの場所に供給され、クラッカーの希釈水蒸気のスチーム源として利用される。このことによりプロピレン製造プロセスにおける廃水処理設備の省略あるいは小規模化が可能となり設備投資を著しく削減することが可能である。
【0091】
配管108より取り出される炭素数4以上の炭化水素流体(Y),(W)の一部は配管102を経て反応器10にリサイクルされ、残りの流体は配管109を経てプロピレン製造プロセスから抜き出される。ここで、プロピレン製造プロセスから抜き出されるとは、該プロセスの反応器10にリサイクルされないことを意味しており、配管を通して他のプロセスに直接供給しても良いし、配管を通して一度タンクに貯蔵したものを他のプロセスに供給しても良い。また、他のプロセスに供給せずに燃料として使用しても良い。
【0092】
分離精製工程12からの炭素数4以上の炭化水素流体(Y),(W)は、蒸留等の分離工程に導入することなく反応器11にリサイクルされる流体(X),(Z)とプロセス外へ抜き出される流体に分割しても良いが、炭素数4以上の炭化水素流体(Y),(W)の少なくとも一部を更に蒸留等の分離工程に導入し、リサイクルされる流体と抜き出される流体との組成を望ましい範囲に調整するのが好ましい。
【0093】
必要に応じて組成を調整され、配管109から抜き出される流体は、スチームクラッキングプロセスに供給し、クラッカーの原料および/または分解ガソリンに混合されるのが特に好ましい。このことにより、プロピレン製造プロセスから抜き出される流体の有効利用が可能である。なお、ここでいう分解ガソリンとは、炭素数5以上の炭化水素に富んだ流体をいい、好ましくは、炭素数5以上10以下のパラフィン、オレフィン、ジエン、芳香族化合物を主に含む流体である。
【0094】
また、必要に応じて分解ガソリンから有効成分を回収することができる。有効成分としては、例えば炭素数5の炭化水素やベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物が挙げられる。
【0095】
上記のクラッカーの原料に混合される流体としては、芳香族化合物濃度の合計が5.0体積%未満であることが好ましく、さらに好ましくは3.0体積%未満である。芳香族化合物濃度が高いとクラッカーに供給した場合にカーボン析出が多いと共に、エチレン収率が低下する傾向があるため好ましくない。また、オレフィン濃度の高い流体をクラッカーに供給するとクラッカー内でカーボン析出が起こりやすいため、必要に応じて水素添加触媒と接触させ、パラフィン濃度を増加させた流体をクラッカーに供給するのが好ましい。
【0096】
上記の分解ガソリンに混合される流体としては、炭素数4の炭化水素は5重量%未満であることが好ましく、さらに好ましくは2重量%未満である。炭素数4の炭化水素が含まれていると、分解ガソリンから回収される炭素数5の炭化水素流体中に炭素数4の炭化水素が混入してしまうため好ましくない。
【0097】
また、スチームクラッキングプロセスに送給される流体(B)におけるプロピレンの濃度は、流体(B)に含まれるエチレンの濃度に対して重量比で0.1〜1.0倍の範囲であることが好ましい。この範囲よりプロピレンが多くエチレンが少なくても、プロピレンが少なくエチレンが多くても、スチームクラッキングプロセスとプロピレン製造プロセスにおける蒸留に必要なエネルギーの合計が大きくなり、用役コストが増大するという不都合がある。
【0098】
[スチームクラッキングプロセス]
以下にスチームクラッキングプロセスについて図2〜6を用いて説明する。
<クラッカーからアルカリ洗浄塔までの工程(工程(5)〜(8)および工程(5E)〜(10E)の説明)>
まず、クラッカーからアルカリ洗浄塔までの工程について図2を用いて説明する。
【0099】
図2において、21はクラッカー、22は蒸留塔、23はクエンチ塔、24は圧縮機、25はアルカリ洗浄塔、26は油水分離器、27はプロセス水ストリッパー、28は蒸気発生器であり、201〜214はそれぞれ配管を示す。
【0100】
クラッカー原料は配管201より、配管202からの希釈水蒸気と共にクラッカー(加熱分解炉)21に導入され、760〜900℃程度の温度で加熱分解されてクラッカー原料よりも平均分子量の低い加熱分解生成物が得られる。
ここで、クラッカー原料とは、加熱分解炉に供給される炭化水素流体のことであり、通常、エタン、ブタン、ナフサ、灯油、軽油などが用いられる。また、希釈水蒸気とは、クラッカー原料を希釈するために入れる水蒸気のことであり、これによりエチレンやプロピレンの収率を上げると共に、加熱分解炉内における炭素析出を抑制することが可能である。
【0101】
クラッカー21の加熱分解生成物は、エチレン、プロピレン、その他オレフィン、パラフィン、水素、芳香族化合物および水を含むガス(C)であり、このクラッカー出口ガス(C)は、熱交換器または流体(C)よりも低温の流体と接触混合することにより冷却された後配管203より蒸留塔22に供給され、塔底から高沸点の燃料油が配管205を経て抜き出され、塔頂から、燃料油が除去されたガス(D)が得られる。ここで、燃料油とは、クラッカー出口ガス(C)に含まれる炭素数の大きい炭化水素のことを示し、通常炭素数11以上の炭化水素に富んだ流体である。ガス(D)は配管204よりクエンチ塔23に送給されて急冷され、エチレン、プロピレン、その他オレフィン、パラフィン、水素、および芳香族化合物を含むガス(E)と、希釈水蒸気に由来する水を含む流体(Q)とに分離し、ガス(E)を配管206を経て取り出し、流体(Q)を配管207より油水分離器26に送給し、水相(R)と、主として炭素数6以上の炭化水素を含む油相とに分離する。油相は配管211より取り出す。水相(R)は、配管212を経てプロセス水ストリッパー27に供給され、揮発性炭化水素をストリッピングし塔頂より配管213を経て取り出し、塔底より、揮発性炭化水素の少なくとも一部が除去された水(S)を得る。水(S)は、配管214より取り出し、水蒸気発生器28に送給して、クラッカー21に供給する希釈水蒸気として再利用される。ただし、分離された水は不揮発性の炭化水素を含有するため、該不揮発性炭化水素を除去するために、水(S)の一部は図示しない配管より系外へ抜き出されて廃棄され、廃棄された分の新たな水が補給される。
【0102】
一方、クエンチ塔23で得られたガス(E)は、配管206を経て圧縮機24で昇圧され、次いで、配管208を経てアルカリ洗浄塔25に供給されて硫黄化合物および/または二酸化炭素が除去されたガス(F)が得られる。このガス(F)は配管209より取り出され、塔底成分は配管210より系外へ排出される。
【0103】
<アルカリ洗浄塔以降の工程>
アルカリ洗浄塔以降の工程としては、蒸留塔の配置によっていくつかの態様を採用し得る。代表的な態様について、図3〜6を用いて説明する。
図3〜6において、31は圧縮機、32は気液分離器、33は深冷分離工程、34は脱メタン塔、35は脱エタン塔、36は脱プロパン塔、37は凝縮液ストリッパーであり、301〜314はそれぞれ配管である。
【0104】
第1の態様としては、炭化水素流体の中のメタンを最初に分離するフロントエンド脱メタンプロセスが適用される。図3を用いて第1の態様について説明する。
【0105】
図2のアルカリ洗浄塔25で硫黄化合物および/または二酸化炭素が除去されたガス(F)は、配管301より圧縮機31に導入されてさらに圧縮された後、配管302を経て深冷分離工程33に供給され、水素に富んだ流体と、それ以外の流体(G)とに分離され、水素に富んだ流体は配管303より取り出される。水素が除去された流体(G)は、配管304より、脱メタン塔34に導入され、メタンに富んだ流体と、それ以外の流体(H)とに分離され、それぞれ配管305、配管306を経て塔の上部、塔底から取り出される。ここで、塔の上部とは、塔頂でも良いが、脱メタン塔34の蒸留塔の段数にして真中よりも上部であれば良い。脱メタン塔34の蒸留塔の段数は、トレイ塔の場合には実段数を示し、充填塔の場合には理論段数を示す。
【0106】
脱メタン塔34で分離された炭化水素流体(H)は配管306より脱エタン塔35に導入し、塔の上部からから炭素数2の炭化水素に富んだ流体を、塔底から炭素数3以上の炭化水素に富んだ流体(I)を得、それぞれ配管308と配管309より取り出す。炭素数3以上の炭化水素に富んだ流体(I)は配管309より脱プロパン塔36に導入して、塔の上部からから炭素数3の炭化水素に富んだ流体を得ると共に、塔底から炭素数4以上の炭化水素流体を得、それぞれ配管310と配管311より系外へ排出する。
【0107】
なお、上記の圧縮機31において流体の一部が凝縮する場合には、配管314よりその一部を気液分離器32で気相と液相に分離し、気相を配管315より配管302に戻し、液相を配管316より凝縮液ストリッパー37に供給しても良い。この場合、この液相に含まれる炭素数2以下の炭化水素を凝縮液ストリッパー37の塔頂から回収して配管312より圧縮機31の手前に戻すと共に、塔底から得られる炭素数3以上の炭化水素流体は配管313を経て脱プロパン塔36に供給するのが好ましい。
【0108】
第2、第3の態様としては、炭素数4以上の炭化水素を最初に分離するフロントエンド脱プロパンプロセスが適用される。まず図4を用いて第2の態様について説明する。
【0109】
図2のアルカリ洗浄塔25で硫黄化合物および/または二酸化炭素が除去されたガス(F)は、配管317より脱プロパン塔36に導入され、塔の上部から炭素数3以下の炭化水素および水素に富んだ流体(J)を得ると共に、塔底から炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体を得、それぞれ配管318と配管319より抜き出す。流体(J)は配管318より圧縮機31に送給されて圧縮された後、配管320を経て深冷分離工程33に供給され、水素に富んだ流体が配管321より除去される。水素の除去された流体(K)は、配管322を経て脱メタン塔34に導入され、塔の上部からメタンに富んだ流体を得ると共に、塔底から炭素数2〜3の炭化水素に富んだ流体(L)を得、それぞれ配管323と配管324を経て取り出す。流体(L)は、配管324より脱エタン塔35に導入し、塔の上部から炭素数2の炭化水素に富んだ流体を得ると共に、塔底から炭素数3の炭化水素に富んだ流体を得、それぞれ配管325、配管326を経て取り出す。
【0110】
次に図5を用いて第3の態様について説明する。
図2のアルカリ洗浄塔25で硫黄化合物および/または二酸化炭素が除去されたガス(F)は、配管327より脱プロパン塔36に導入され、塔の上部から炭素数3以下の炭化水素および水素に富んだ流体(J)を得ると共に、塔底から炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体を得、それぞれ配管328、配管329より取り出す。流体(J)は配管328より脱エタン塔35に導入し、塔の上部から炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(M)を得ると共に、塔底から炭素数3の炭化水素に富んだ流体を得、それぞれ配管330、配管331より取り出す。炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(M)は配管330より圧縮機31に送給して圧縮した後、配管332より深冷分離工程33に供給し、水素に富んだ流体を配管333より除去する。水素の除去された流体(N)は、配管334より脱メタン塔34に導入して、塔の上部からメタンに富んだ流体を得ると共に、塔底から炭素数2の炭化水素に富んだ流体を得、それぞれ配管335、配管336より取り出す。
【0111】
第4の態様としては、炭素数2以下の炭化水素に富む流体と、炭素数3以上の炭化水素に富む流体とを最初に分離するフロントエンド脱エタンプロセスが適用される。図6を用いて第4の態様について説明する。
【0112】
図2のアルカリ洗浄塔25で硫黄化合物および/または二酸化炭素が除去されたガス(F)は、配管337より脱エタン塔35に導入し、塔の上部から炭素数2以下の炭化水素および水素に富んだ流体(O)を得ると共に、塔底から炭素数3以上の炭化水素に富んだ流体(I)を得る。炭素数2以下の炭化水素および水素に富んだ流体(O)は配管338を経て深冷分離工程33に供給し、水素に富んだ流体を配管340から除去する。水素の除去された流体(N)は、配管341を経て脱メタン塔34に導入し、塔の上部からメタンに富んだ流体を得ると共に、塔底から炭素数2の炭化水素に富んだ流体を得、それぞれ配管342、配管343より取り出す。一方、脱エタン塔35の塔底から得られた炭素数3以上の炭化水素に富んだ流体(I)は配管339を経て脱プロパン塔36に導入し、塔の上部から炭素数3の炭化水素に富んだ流体を得ると共に、塔底から炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体を得、それぞれ配管344、配管345より取り出す。
【0113】
上記の第1から第4の態様において、得られた炭素数2の炭化水素に富んだ流体および炭素数3の炭化水素に富んだ流体の中には、それぞれエチレンおよびプロピレンが最も多く含まれるが、通常そのほかにパラフィンやアセチレン類などが含まれる。そのため、該流体を水添反応器に導入してアセチレン類の少なくとも一部を水素添加することによりアセチレン類の濃度を低下させ、その後に精留塔に導入することによって高純度のエチレンおよびプロピレンを得るのが好ましい。
【0114】
エチレンの純度としては95%以上であり、99%以上が好ましい。さらに好ましくは99.9%以上である。プロピレンの純度としては95%以上であり、99%以上が好ましい。さらに好ましくは99.9%以上である。
【0115】
このようにして得られるエチレンおよびプロピレンは一般的に製造されるエチレンおよびプロピレン誘導体すべてに使用でき、エチレンは例えば酸化反応によりエチレンオキサイド、エチレングリコール、エタノールアミン、グリコールエーテル等の製造に、塩素化により塩化ビニルモノマー、1,1,1−トリクロルエタン、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデンの製造に、また、エチレンの重合によりαオレフィン、低密度、或いは高密度のポリエチレンの製造に、ベンゼンのエチル化によりエチルベンゼン等の製造にそれぞれ用いることができる。
【0116】
エチレンから製造されたエチレングリコールからさらにこれを原料としてポリエチレンテレフタレートを製造することができ、αオレフィンを原料としてオキソ反応およびそれに続く水素化反応により高級アルコールが、エチルベンゼンを原料としてスチレンモノマー,ABS樹脂等が製造できる。また、酢酸との反応により酢酸ビニル、ワッカー反応によりアセトアルデヒドおよびその誘導品である酢酸エチル等も製造できる。
【0117】
また、プロピレンは例えばアンモ酸化によりアクリロニトリルの製造に、選択酸化によりアクロレイン、アクリル酸およびアクリル酸エステルの製造に、オキソ反応によりノルマルブチルアルコール、2−エチルヘキサノール等のオキソアルコールの製造に、プロピレンの重合によりポリプロピレンの製造に、プロピレンの選択酸化によりプロピレンオキサイドおよびプロピレングリコール等の製造に適用することができる。また、ワッカー反応によりアセトンが製造でき、更にアセトンよりメチルイソブチルケトンを製造することができる。アセトンからはまたアセトンシアンヒドリンが製造でき、これは最終的にメチルメタクリレートに転換される。またプロピレン水和によりイソプロピルアルコールも製造できる。また、ベンゼンをアルキル化することにより製造したキュメンを原料に、フェノール,ビスフェノールA,ポリカーボネート樹脂を製造することができる。
【0118】
[プロピレン製造プロセスとスチームクラッキングプロセスとの統合]
<プロピレン製造プロセスで得られた炭素数2以下の炭化水素と炭素数3の炭化水素を含んだ流体のスチームクラッキングプロセスにおける精製>
図1に示すプロピレン製造プロセスにおいて得られる炭素数2以下の炭化水素およびプロピレンを含んだ流体(B)は、前述したスチームクラッキングプロセスのいずれかの場所に供給される。供給される場所として好ましい箇所は、流体(B)に含まれる化合物の濃度および製品となるエチレンやプロピレンにおいて求められる性状によって異なる。
【0119】
流体(B)に含まれるエチレンに対して同流体に含まれる二酸化炭素がある特定の濃度以上含まれる場合には、図2に示すスチームクラッキングプロセスのクラッカー出口ガス(C)(配管203)からアルカリ洗浄塔25の間のいずれかの場所に供給されるのが好ましい。ここで特定の濃度とは、製品のエチレンに混入することが許容される二酸化炭素濃度であり、通常5.0モルppm、好ましくは1.0モルppmである。この二酸化炭素濃度は、ガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法により知ることができる。
流体(B)がアルカリ洗浄塔25より手前に供給された場合、流体(B)に含まれる二酸化炭素の少なくとも一部はアルカリ洗浄塔25において除去することが可能である。流体(B)がアルカリ洗浄塔25よりも後流側の場所に供給された場合には、二酸化炭素が製品のエチレンに混入してしまうため好ましくない。アルカリ洗浄塔25より手前で流体(B)を供給する場所としては、クエンチ塔23より後流側が好ましい。この場合、蒸留塔22およびクエンチ塔23の負荷が小さくなり、用役費用も減らすことが可能である。
【0120】
一方、流体(B)に含まれるエチレンに対して同流体に含まれる二酸化炭素が上記のある特定の濃度以下(通常0.5モルppm以下、好ましくは1.0モルppm以下)である場合には、アルカリ洗浄塔25よりも後流側に流体(B)を供給するのが好ましい。この場合、アルカリ洗浄塔25を含めて前流側の負荷が小さくなり、用役費用も減らすことが可能である。
【0121】
アルカリ洗浄塔25よりも後流側の好ましい流体(B)の供給場所はスチームクラッキングプロセスの態様によって異なる。
【0122】
例えば、図3に示したスチームクラッキングプロセスの第1の態様においては、アルカリ洗浄塔25において硫黄化合物および/または二酸化炭素が除去されたガス(F)の導入配管301から脱メタン塔34の間が好ましい。脱メタン塔34より後流側では、流体(B)に含まれるメタンが製品エチレンに混入してしまうため好ましくない。
【0123】
また、図4に示したスチームクラッキングプロセスの第2の態様においては、アルカリ洗浄塔25において硫黄化合物および/または二酸化炭素が除去されたガス(F)の導入配管317から脱メタン塔34の間が好ましい。この中でも、脱プロパン塔36から脱メタン塔34の間が特に好ましい。この場合には脱プロパン塔36の負荷が小さくなり、用役費用も減らすことが可能である。脱メタン塔34より後流側では、流体(B)に含まれるメタンが製品エチレンに混入してしまうため好ましくない。
【0124】
また、図5に示したスチームクラッキングプロセスの第3の態様においては、アルカリ洗浄塔25において硫黄化合物および/または二酸化炭素が除去されたガス(F)の導入配管327から脱エタン塔35の間が好ましい。この中でも、脱プロパン塔36から脱エタン塔35の間が特に好ましい。この場合には脱プロパン塔36の負荷が小さくなり、用役費用も減らすことが可能である。脱エタン塔35より後流側では、流体(B)に含まれる炭素数3の炭化水素が製品エチレンに混入してしまうため好ましくない。
【0125】
また、図6に示したスチームクラッキングプロセスの第4の態様においては、アルカリ洗浄塔25において硫黄化合物および/または二酸化炭素が除去されたガス(F)の導入配管337から脱エタン塔35の間が好ましい。脱エタン塔35より後流側では、流体(B)に含まれる炭素数3の炭化水素が製品エチレンに混入してしまうため好ましくない。
【0126】
<プロピレン製造プロセスで得られた水のスチームクラッキングプロセスにおける利用>
図1に示すプロピレン製造プロセスにおいて得られる水に富んだ流体(P)は、前述したスチームクラッキングプロセスのいずれかの場所に供給される。供給される場所としては、図2に示した蒸留塔22から蒸気発生器28の間が好ましく、蒸留塔22からプロセス水ストリッパー27の間がさらに好ましい。流体(P)をプロセス水ストリッパー27より手前に供給することにより、プロピレン製造プロセスにおいて得られる水に微量含まれる揮発性有機化合物をプロセス水ストリッパー27で除去することが可能である。
【0127】
この場合、プロピレン製造プロセスにおいて得られる流体(P)に含まれる炭素数1〜4の有機酸の濃度としては、100重量ppm以下が好ましく、50重量ppm以下がさらに好ましい。流体(P)中の有機酸濃度が高すぎると、蒸気発生器28における該有機酸の濃縮を防止するために行う水の排出量が多くなるため好ましくない。ここで流体(P)中の有機酸の濃度は、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーなどの一般的な分析手法により知ることができる。
【0128】
<その他の流体の有効利用>
スチームクラッキングプロセスにおいては、得られる炭素数4の炭化水素流体(BB留分)から必要成分を除去した価値の低い流体(主にC4ラフィネート−2)を水添してクラッカーに戻していることが多い。プロピレン製造プロセスでは、この価値の低い流体を原料とすることが可能である。一方、プロピレン製造プロセスにおいて抜き出される流体はスチームクラッキングプロセスのクラッカー原料または分解ガソリンに混合することにより有効利用が可能である。
【0129】
本発明では、このように、プロピレン製造プロセスとスチームクラッキングプロセスとで、各々の低価値流体を相互に有効利用することが可能となり、極めて効率の良いプロセスを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明のプロピレンの製造方法の実施の形態に係るプロピレン製造プロセスを示す系統図である。
【図2】本発明のプロピレンの製造方法の実施の形態に係るスチームクラッキングプロセスを示す系統図である。
【図3】本発明におけるスチームクラッキングプロセスのアルカリ洗浄塔以降の工程の第1の態様を示す系統図である。
【図4】本発明におけるスチームクラッキングプロセスのアルカリ洗浄塔以降の工程の第2の態様を示す系統図である。
【図5】本発明におけるスチームクラッキングプロセスのアルカリ洗浄塔以降の工程の第3の態様を示す系統図である。
【図6】本発明におけるスチームクラッキングプロセスのアルカリ洗浄塔以降の工程の第4の態様を示す系統図である。
【符号の説明】
【0131】
11 反応器
12 分離精製工程
21 クラッカー
22 蒸留塔
23 クエンチ塔
24 圧縮機
25 アルカリ洗浄塔
26 油水分離器
27 プロセス水ストリッパー
28 蒸気発生器
31 圧縮機
32 気液分離器
33 深冷分離工程
34 脱メタン塔
35 脱エタン塔
36 脱プロパン塔
37 凝縮液ストリッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを含む混合物を、触媒の存在下、反応器中で接触させてプロピレンを製造する方法において、以下の工程(1),(2),(3)および(4)を含むプロセスよりなることを特徴とするプロピレンの製造方法。
工程(1):炭素数4以上のオレフィン原料、工程(3)からリサイクルされた炭化水素流体(X)、並びに、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを反応器に供給し、反応器出口からプロピレン、エチレン、ブテン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有するガス(反応器出口ガス)(A)を得る工程
工程(2):前記工程(1)からの反応器出口ガス(A)を、炭素数2以下の炭化水素およびプロピレンを含有した流体(B)と、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(Y)と、および水に富んだ流体(P)とに分離する工程
工程(3):流体(Y)の一部(X)を反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
工程(4):流体(B)をスチームクラッキングプロセスに供給する工程
【請求項2】
請求項1において、前記工程(2)が、前記反応器出口ガス(A)から冷却および圧縮工程により水分を凝縮除去した後に、蒸留により、炭素数2以下の炭化水素およびプロピレンを含有した流体(B)と、炭素数3以上の炭化水素に富んだ流体とに分離し、炭素数3以上の炭化水素に富んだ流体を、蒸留により、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(Y)とに分離する工程を含むことを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項3】
請求項1おいて、前記工程(2)が、前記反応器出口ガス(A)から冷却および圧縮工程により水分を凝縮除去した後に、蒸留により、炭素数3以下の炭化水素に富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(Y)とに分離し、炭素数3以下の炭化水素に富んだ流体を、蒸留により、炭素数2以下の炭化水素およびプロピレンを含有した流体(B)と、プロピレンに富んだ流体とに分離する工程を含むことを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記スチームクラッキングプロセスが以下の工程(5),(6),(7)および(8)を含むプロセスよりなることを特徴とするプロピレンの製造方法。
工程(5):クラッカー原料となる炭化水素を希釈水蒸気と共にクラッカーに供給し、加熱分解することによりクラッカー出口からエチレン、プロピレン、その他オレフィン、パラフィン、水素、芳香族化合物および水を含有したガス(クラッカー出口ガス)(C)を得る工程
工程(6):クラッカー出口ガス(C)を冷却した後、蒸留塔に導入し、塔底から燃料油を得ると共に、塔頂から燃料油が除去されたガス(D)を得る工程
工程(7):ガス(D)をクエンチ塔に導入し、塔底から分解ガソリンと水を含んだ流体(Q)を抜き出すと共に、塔頂からエチレン、プロピレン、その他オレフィン、パラフィン、水素、および芳香族化合物を含むガス(E)を得る工程
工程(8):ガス(E)を圧縮機で昇圧すると共に、アルカリ洗浄塔で硫化水素および/または二酸化炭素を除去したガス(F)を得る工程
【請求項5】
請求項4において、前記スチームクラッキングプロセスが、前記工程(8)に続いて以下の工程(9A),(10A),(11A)および(12A)を含むプロセスであることを特徴とするプロピレンの製造方法。
工程(9A):ガス(F)を深冷分離工程に導入し、水素と、それ以外の流体(G)とに分離する工程
工程(10A):流体(G)を脱メタン塔に導入し、メタンと、それ以外の流体(H)とに分離する工程
工程(11A):流体(H)を脱エタン塔に導入し、炭素数2の炭化水素に富んだ流体と、炭素数3以上の炭化水素に富んだ流体(I)とに分離する工程
工程(12A):流体(I)を脱プロパン塔に導入し、炭素数3の炭化水素に富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体とに分離する工程
【請求項6】
請求項4において、前記スチームクラッキングプロセスが、前記工程(8)に続いて以下の工程(9B),(10B),(11B)および(12B)を含むプロセスであることを特徴とするプロピレンの製造方法。
工程(9B):ガス(F)を脱プロパン塔に導入し、炭素数3以下の炭化水素および水素に富んだ流体(J)と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体とに分離する工程
工程(10B):流体(J)を深冷分離工程に導入し、水素と、炭素数1〜3の炭化水素に富んだ流体(K)とに分離する工程
工程(11B):流体(K)を脱メタン塔に導入し、メタンと、炭素数2〜3の炭化水素に富んだ流体(L)とに分離する工程
工程(12B):流体(L)を脱エタン塔に導入し、炭素数2の炭化水素に富んだ流体と、炭素数3の炭化水素に富んだ流体とに分離する工程
【請求項7】
請求項4において、前記スチームクラッキングプロセスが、前記工程(8)に続いて以下の工程(9C),(10C),(11C)および(12C)を含むプロセスであることを特徴とするプロピレンの製造方法。
工程(9C):ガス(F)を脱プロパン塔に導入し、炭素数3以下の炭化水素および水素に富んだ流体(J)と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体とに分離する工程
工程(10C):流体(J)を脱エタン塔に導入し、炭素数1〜2の炭化水素および水素に富んだ流体(M)と、炭素数3の炭化水素に富んだ流体とに分離する工程
工程(11C):流体(M)を深冷分離工程に導入し、水素と、炭素数1〜2の炭化水素に富んだ流体(N)とに分離する工程
工程(12C):流体(N)を脱メタン塔に導入し、メタンと、炭素数2の炭化水素に富んだ流体とに分離する工程
【請求項8】
請求項4において、前記スチームクラッキングプロセスが、前記工程(8)に続いて以下の工程(9D),(10D),(11D)および(12D)を含むプロセスであることを特徴とするプロピレンの製造方法。
工程(9D):ガス(F)を脱エタン塔に導入し、炭素数2以下の炭化水素および水素に富んだ流体(O)と、炭素数3以上の炭化水素に富んだ流体(I)とに分離する工程
工程(10D):流体(O)を深冷分離工程に導入し、水素と、炭素数1〜2の炭化水素に富んだ流体(N)とに分離する工程
工程(11D):流体(N)を脱メタン塔に導入し、メタンと、炭素数2の炭化水素に富んだ流体とに分離する工程
工程(12D):流体(I)を脱プロパン塔に導入し、炭素数3の炭化水素に富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体とに分離する工程
【請求項9】
請求項4ないし8のいずれか1項において、前記流体(B)を、前記工程(6)におけるクラッカー出口から前記工程(8)におけるアルカリ洗浄塔の間のいずれかの箇所に供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項10】
請求項9において、前記流体(B)を、前記工程(7)におけるクエンチ塔の塔頂から前記工程(8)におけるアルカリ洗浄塔の間のいずれかの箇所に供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項11】
請求項5において、前記流体(B)を、前記工程(8)におけるアルカリ洗浄塔の塔頂から前記工程(10A)における脱メタン塔の間のいずれかの箇所に供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項12】
請求項6において、前記流体(B)を、前記工程(8)のアルカリ洗浄塔の塔頂から前記工程(11B)における脱メタン塔の間のいずれかの箇所に供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項13】
請求項7において、前記流体(B)を、前記工程(8)のアルカリ洗浄塔の塔頂から前記工程(10C)における脱エタン塔の間のいずれかの箇所に供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項14】
請求項8において、前記流体(B)を、前記工程(8)のアルカリ洗浄塔の塔頂から前記工程(9D)における脱エタン塔の間のいずれかの箇所に供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1項において、前記流体(B)におけるプロピレンの濃度が、流体(B)に含まれるエチレンの濃度に対して重量比で0.1〜1.0倍の範囲にあることを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項16】
炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルを含む混合物を、触媒の存在下、反応器中で接触させてプロピレンを製造する方法において、以下の工程(1E),(2E),(3E)および(4E)を含むプロセスよりなることを特徴とするプロピレン製造方法。
工程(1E):炭素数4以上のオレフィン原料、工程(3E)からリサイクルされた炭化水素流体(Z)、並びに、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを反応器に供給し、反応器出口からプロピレン、エチレン、ブテン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有するガス(反応器出口ガス)(A)を得る工程
工程(2E):反応器出口ガス(A)を、炭化水素に富んだ流体(W)と、水に富んだ流体(P)とに分離する工程
工程(3E):炭化水素に富んだ流体(W)の一部(Z)を反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
工程(4E):流体(P)をスチームクラッキングプロセスに供給し、クラッカーの希釈水蒸気として利用する工程
【請求項17】
請求項16において、前記工程(2E)が、前記反応器出口ガス(A)から冷却および圧縮工程により水分を凝縮させて分離する工程を含むことを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項18】
請求項16または17において、前記スチームクラッキングプロセスが以下の工程(5E),(6E),(7E),(8E),(9E)および(10E)を含むプロセスであることを特徴とするプロピレンの製造方法。
工程(5E):クラッカー原料となる炭化水素を希釈水蒸気と共にクラッカーに供給し、加熱分解することによりクラッカー出口からエチレン、プロピレン、その他オレフィン、パラフィン類、水素、芳香族化合物および水を含有したガス(クラッカー出口ガス)(C)を得る工程
工程(6E):クラッカー出口ガス(C)を冷却した後、蒸留塔に導入し、塔底から燃料油を得ると共に、塔頂から燃料油が除去されたガス(D)を得る工程
工程(7E):ガス(D)をクエンチ塔に導入し、塔底から水を含んだ流体(Q)を抜き出すと共に、塔頂からエチレン、プロピレン、その他オレフィン、パラフィン、水素、および芳香族化合物を含むガス(E)を得る工程
工程(8E):流体(Q)を油水分離器に導入し、水相(R)と油相を分離する工程
工程(9E):水相(R)をプロセス水ストリッパーに導入し、塔底から水相(R)より有機物濃度の低い水(S)を得る工程
工程(10E):水(S)を蒸気発生器に導入し、クラッカーの希釈水蒸気を発生させる工程
【請求項19】
請求項16ないし18のいずれか1項において、前記流体(P)を、前記工程(5E)におけるクラッカー出口から前記工程(10E)における蒸気発生器の間のいずれかの箇所に供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項20】
請求項19において、前記流体(P)を、前記工程(7E)におけるクエンチ塔から前記工程(10E)における蒸気発生器の間のいずれかの箇所に供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項21】
請求項19において、前記流体(P)を、前記工程(7E)におけるクエンチ塔から前記工程(9E)におけるプロセス水ストリッパーの間のいずれかの箇所に供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項22】
請求項16ないし21のいずれか1項において、前記流体(P)に含まれる炭素数1〜4の有機酸の濃度が100重量ppm以下であることを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項23】
請求項1ないし22のいずれか1項において、前記反応器出口の炭素数4以上のオレフィンのモル流量が、該反応器入口の該オレフィンのモル流量に対して20%以上70%未満になるような反応条件で前記混合物を触媒と接触させることを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項24】
請求項1ないし23のいずれか1項において、前記反応器に供給する炭素数4以上のオレフィンの量が、該反応器に供給するメタノールのモル数とジメチルエーテルのモル数の2倍との合計に対して、モル比で0.2以上10以下であることを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項25】
請求項1ないし24のいずれか1項において、前記反応器に供給する炭素数4以上のオレフィン原料が、スチームクラッキングプロセスで得られる炭素数4の炭化水素流体を含むことを特徴とするプロピレンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−81417(P2008−81417A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260808(P2006−260808)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】