説明

プロピレンの製造方法

【課題】本発明は、メタノール及び/又はジメチルエーテルを用いてプロピレンを製造するに際し、副生する低級炭化水素やプロピレンより沸点の高い炭化水素の余剰分を有効利用するプロピレンの製造技術を提供する。
【解決手段】炭化水素を含有する石炭由来の原料ガスからメタノールを製造し、そのメタノール及び/またはジメチルエーテルからプロピレンを製造するプロセスで、原料ガスから合成ガスを製造する改質工程に、プロピレンの製造時に副生する低級炭化水素やプロピレンより沸点の高い炭化水素化合物を供給する工程を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタノール及び/又はジメチルエーテルを用いてプロピレンを製造する方法に関し、より詳細には、炭化水素を含有する石炭由来の原料ガスを用いてメタノールを合成し、得られたメタノール及び/又はジメジルエーテルを用いてプロピレンを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロピレンを製造する方法としては、従来からナフサやエタンのクラッキング、減圧軽油の流動接触分解などが一般的に実施されている。近年では、この方法以外にもエチレンと2−ブテンを原料としたメタセシス反応、炭素数4以上のオレフィンの接触クラッキング、さらにメタノールおよび/またはジメチルエーテルを原料とした方法が知られている。
【0003】
上記のプロピレン製造法の中ではナフサやエタンのクラッキングによる方法が世界的に主流となっているが、近年のエチレン需要に対してプロピレン需要の割合が増加する傾向では、このクラッキングの方法では技術的に限界がある。
そこで、プロピレンを選択的に製造する有効な方法として、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを反応させてプロピレンを製造する方法、いわゆるMTOプロセス(メタノールからオレフィンを製造するプロセス)が注目を浴びている(特許文献1)。
【0004】
また、具体的なプロピレンの製造プロセスとして、エチレン、或いはエチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを原料として、触媒の存在下で反応させることにより炭素数4以上のオレフィンを含む流体を得て、その流体の少なくとも一部とメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを、更に別の触媒の存在下で反応させることによりプロピレンを含む流体を得る方法が開示されている(たとえば、特許文献2)。この方法によれば、設備費用ならびにエネルギーコストが低減できるが、低級炭化水素やプロピレンより沸点の高い炭化水素が余剰に副生し、余剰分は廃棄せざるを得なかった。また、使用するメタノール及び/またはジメチルエーテルを得る際の、具体的な製造工程についても開示されていない。
【0005】
一方で、メタノールを製造する方法としては、従来では、天然ガス由来の炭化水素からメタノールを製造する方法が主流であるが、天然ガスに変えて石炭ガス、石炭コークス炉ガスなどの石炭由来のガスを用いて、メタノールを製造する方法がある。
特許文献3に記載の方法は、石炭由来の炭化水素を含む原料ガスを用いたメタノールの製造であって、メタノールを合成する工程の前にある、石炭由来のガスから合成ガスを得るための改質工程で生成される合成ガス中の過剰な水素を有効利用してメタノールの増産を図り、かつ二酸化酸素を有効利用するために、改質工程の上流もしくは下流の流路から所定の水素を抜き取ることが記載されている。この方法によれば、従来は燃料ガスとして使用していた、石炭ガスや石炭コークス炉ガスをメタノール製造の原料として有効利用できるだけでなく、メタノール製造において、副生物を削減できることから経済的な運転が可能となる。しかし、石炭由来ガスは天然ガスに比べ水素が多く含まれており、メタノール増産の観点から、改質工程中の炭化水素が少ないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6888038号
【特許文献2】特開2008−106056号
【特許文献3】特開2007−217391号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、メタノール及び/又はジメチルエーテルを用いてプロピレンを製造するに際し、副生する低級炭化水素やプロピレンより沸点の高い炭化水素の余剰分を有効利用するプロピレンの製造技術、および石炭ガスや石炭コークス炉ガスなどの石炭由来の原料ガスからプロピレンを一環で製造する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、炭化水素を含有する石炭由来の原料ガスからメタノールを製造し、そのメタノール及び/またはジメチルエーテルからプロピレンを製造するプロセスで、プロピレンの製造用原料であるメタノールを、原料ガスとして石炭由来の炭化水素含有ガスを用いて製造し、さらに、原料ガスから合成ガスを製造する改質工程に、プロピレンの製造時に副生する低級炭化水素やプロピレンより沸点の高い炭化水素化合物を供給する工程を設けることで、副生物を有効利用でき、さらに、石炭ガスや石炭コークス炉ガスからプロピレンを製造する一環のプロセスを経済的に運転できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、要旨は、以下の[1]〜[11]に存する。
[1] 以下の(A)〜(E)の工程を有するプロピレンの製造方法。
(A)水素及び炭化水素を含有する原料ガスを第1の触媒を有する反応器に供給し、水蒸気と反応させて、主成分として、水素、及び炭素酸化物を含有する合成ガスを得る合成ガス生成工程
(B)工程(A)で得られる合成ガスを、第2の触媒を有する反応器に供給し、水素と炭素酸化物とを反応させてメタノールを合成し、該メタノールを含む粗メタノールを得るメタノール合成工程
(C)工程(B)より得られる粗メタノールとオレフィンを第3の触媒を有する反応器に供給し、第3の触媒の存在下で、プロピレンを生成させ、該プロピレンを主成分とする生成物流を得る工程
(D)工程(C)より得られる前記生成物流を蒸留し、プロピレンを分離回収する工程
(E)工程(D)で、前記生成物流からプロピレンが分離された残留物を前記工程(A)の反応器に供給する工程
【0010】
[2]以下の工程(F)を更に有する[1]に記載のプロピレンの製造方法。
(F)工程(B)より得られる粗メタノールを第4の触媒を有する反応器に供給し、該触媒の存在下、粗メタノール中の一部のメタノールを反応させてジメチルエーテルとする工程
[3]前記工程(F)において、反応により得られるジメチルエーテル及び/又はメタ
ノールを含む粗メタノールから水を分離することを特徴とする[2]に記載のプロピレンの製造方法。
【0011】
[4]前記工程(E)の前記残留物が、主として炭素原子数2以下の炭化水素を含むこ
とを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のプロピレンの製造方法。
[5]前記工程(E)の前記残留物が、主として炭素原子数4〜6の炭化水素を含むこ
とを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のプロピレンの製造方法。
[6]以下の工程(G)を更に有することを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記
載のプロピレンの製造方法。
【0012】
(G) 炭素原子数4以上の炭化水素混合物と水素とを、水素添加反応触媒を有する反
応器に供給し、炭素原子数4以上の炭化水素混合物中の共役ジエン濃度を低減し、前記工程(C)の反応器に供給する工程
[7]以下の工程(H)を更に有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記
載のプロピレンの製造方法。
【0013】
(H) 前記工程(E)の残留物から炭素原子数4以上の炭化水素混合物を分離し、該炭素原子数4以上の炭化水素混合物を、工程(G)に供給する工程
[8] 以下の工程(I)を更に有することを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに
記載のプロピレンの製造方法。
(I) 前記水素及び炭化水素を含有する原料ガスを前記工程(A)の反応器に供給する前に、予め該原料ガス中から一部の水素を分離する工程
[9] 以下の工程(J)を更に有することを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに
記載のプロピレンの製造方法。
【0014】
(J) 前記工程(A)の水素及び炭化水素を含有する原料ガスが、高沸点芳香族化合物を含有するガスであって、該原料ガスを前記工程(A)の反応器に供給する前に、予め該原料ガス中の高沸点芳香族化合物の濃度を低減する工程
[10] 以下の工程(K)を更に有することを特徴とする[1]〜[9]のいずれか
に記載のプロピレンの製造方法。
【0015】
(K) 前記工程(A)の水素及び炭化水素を含有する原料ガスが、硫黄化合物を含有するガスであって、該原料ガスを前記工程(A)の反応器に供給する前に、予め該原料ガス中の硫黄化合物を除去する工程
[11] 前記炭化水素を含有する原料ガスが、石炭由来のものであることを特徴とす
る[1]〜[10]のいずれかに記載のプロピレンの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、石炭ガスや石炭コークス炉ガスなどの石炭由来の原料ガスからプロピレンを製造するにあたり、副生する低級炭化水素やプロピレンより沸点の高い炭化水素の余剰分を有効利用することにより、プロセスの最適化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のプロピレンの製造プロセスの構成の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のプロピレンの製造方法の実施形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
本発明の原料ガスは、水素及び炭化水素を含有する。原料ガスにおける炭化水素の含有量は、改質用触媒への負荷軽減と改質ガスの製造量の観点から、6.0体積%以上であることが好ましく、15.0体積%以上であることがより好ましく、25.0体積%以上であることがさらに好ましい。
【0019】
前記炭化水素は、一種類でもよいし、二種以上であってもよい。前記炭化水素としては、例えば不飽和脂肪族炭化水素、飽和脂肪族炭化水素、及び芳香族炭化水素が挙げられる。
前記原料ガス中における不飽和脂肪族炭化水素の含有量は、反応平衡上の観点から、0.0〜10.0体積%であることが好ましく、1.0〜8.0体積%であることがより好ましく、2.0〜5.0体積%であることがさらに好ましい。また、前記原料ガス中における飽和脂肪族炭化水素の含有量は、改質用触媒負荷の最適化、及び水素ガスを含有するガスの製造量の増加の観点から、5.0〜80.0体積%であることが好ましく、10.0〜70.0体積%であることがより好ましく、20.0〜60.0体積%であることが
さらに好ましい。
【0020】
前記不飽和脂肪族炭化水素及び飽和脂肪族炭化水素としては、例えば炭素数1〜10のオレフィンやパラフィンが挙げられ、好ましくは炭素数1〜4のオレフィンやパラフィンが挙げられ、より具体的には、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、及びアセチレンが挙げられる。
【0021】
前記芳香族炭化水素としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン異性体、及び高沸点芳香族化合物が挙げられる。前記原料ガス中における、高沸点芳香族化合物を含む芳香族炭化水素の含有量は、改質用触媒への負荷の低減、及び改質触媒の劣化抑制の観点から、1.0体積%以下であることが好ましく、0.6体積%以下であることがより好ましく、0.4体積%以下であることがさらに好ましい。
【0022】
前記高沸点芳香族化合物としては、例えばナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、(1,2−、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,7−、1,8−、2,3−、2,5−、2,6−)ジメチルナフタレン、ビフェニル、アセナフテン、ジベンゾフラン、フルオレン、インドール、フェナンスレン、及びアントラセンが挙げられる。
【0023】
前記原料ガスは、水素及び前記炭化水素以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分も、一種類でもよいし、二種以上であってもよい。このような他の成分としては、例えば、炭素酸化物や硫黄化合物が挙げられる。前記炭素酸化物としては、例えば一酸化炭素及び二酸化炭素が挙げられる。これらの一酸化炭素や二酸化炭素は、原料ガスへの追加、及び原料ガスからの除去により調整することができる。このような原料ガスの組成の調整は、公知の技術によって行うことができる。例えば、二酸化炭素は、化学プラントにおける改質炉・燃焼炉の排ガスや大気中から回収して原料ガスに追加することでその含有量を調整することができる。
【0024】
前記原料ガス中に水素及び前記炭化水素以外の成分として、炭素酸化物が含まれている場合、この原料ガス中に含まれる水素、炭化水素、及び炭素酸化物の体積比率は、工程(A)で使用する触媒の表面上へのコークの析出を防止するために、より還元性の雰囲気を形成する観点から、水素:炭化水素:炭素酸化物で1:0.2〜8.0:0.01〜2.0であることが好ましく、1:0.4〜3.0:0.03〜0.75であることがより好ましく、1:0.6〜2.0:0.08〜0.3であることがさらに好ましい。
【0025】
前記原料ガスには、例えば、コークス炉ガス、石炭ガス化ガス、転炉ガス、高炉ガス、アスファルトガス化ガス、重質油残渣ガス化ガス、石油コークスガス化ガス、改質炉ガス、オキソガス、バイオガス、バイオマスガス化ガス、廃棄物ガス化ガス、天然ガス(LNG、NG)、LPG、メタンハイドレード、燃焼排ガス(主に二酸化炭素)、石油化学又は石油精製のオフガス、及びこれらのガスにおける成分の組成が調整されたガスを用いることができる。
【0026】
これらの原料ガスの中で、水素、炭化水素、炭素酸化物を一定割合で含有し、本発明のプロセスに安定して組み込めること、及び埋蔵量豊富な石炭由来のガスであることから、コークス炉ガス、石炭ガス化ガスを原料ガスとして利用することが好ましい。最も好ましくは、コークス炉ガスである。また、環境対策の一助となること、及び原料として豊富に存在することから、燃焼排ガスをこれらに組み合わせて原料ガスとして利用することがよ
り好ましい。
【0027】
本発明では、前記原料ガスを後述の工程(A)の反応器にそのまま供給してもよいが、工程(I)として、前記原料ガスを工程(A)の反応器に供給する前に、予め原料ガスから水素の一部を分離する工程を設け、原料ガス中の水素の一部を分離した後、その原料ガスを工程(A)に供給することが好ましい。
本発明の工程(I)に関して、原料ガス中の水素を分離する方法は、公知の方法であれば、特に限定されないが、例えば、深冷分離法、吸着分離法(PSA、TSA)、化学/物理吸収法、分離膜法を用いて、原料ガスから水素を分離することができる。本発明では、省エネルギーの観点から、分離膜法により水素を分離することが好ましい。
【0028】
工程(I)で、分離膜法により水素を分離する場合は、高分子系分離膜を用いて水素を分離することが好ましい。高分子系分離膜を用いて水素を分離する場合、その条件は用いる高分子系分離膜の素材や膜厚、膜面積、及び原料ガスから分離する水素の量等によって異なる。一般的には、ポリイミドやポリアラミド、ポリアミドでは、20〜200℃、ポリプロピレンでは、20〜180℃、ポリエチレンでは、20〜140℃、ポリカーボネートでは、20〜270℃、ポリエーテルスルホンでは、20〜225℃、パラジウム系及びシリカ・アルミナ・チタニア・ジルコニア等の酸化物及びそれらの複合酸化物では、50〜600℃、炭化ケイ素・窒化ケイ素・ゼオライトでは、50〜800℃、シリコンでは、20〜120℃の温度範囲で使用される。また、使用圧力は高分子系分離膜の膜厚を変化させたり、分離膜素材の構造を変化させることで変わってくるが、一般的にはどの高分子系分離膜に対しても入口原料ガス圧力と水素透過側圧力の差圧が0.1〜3.0MPaGの範囲で使用される。高分子系分離膜を使用する上での最適な温度及び圧力は、膜厚、膜面積及び高分子系分離膜の中空糸モジュールの本数を変更することによって決まるため、用いる原料ガスの状態や運転の操作性などによって最適な温度及び圧力を選定する、もしくは運転したい条件に合わせて高分子系分離膜を設計する必要がある。
【0029】
また、本発明では、前記原料ガスを後述の工程(A)の反応器にそのまま供給してもよいが、工程(J)として、前記原料ガスを工程(A)の反応器に供給する前に、予め原料ガス中の高沸点芳香族化合物の濃度を低減する工程を設け、原料ガス中の高沸点芳香族化合物の濃度を低減させた後、その原料ガスを工程(A)に供給することが好ましい。
本発明の工程(J)に関して、原料ガス中の高沸点芳香族化合物の濃度を調整する方法は、公知の方法であれば、特に限定されないが、例えば、原料ガスから高沸点芳香族化合物を除去する方法や、原料ガスへ高沸点芳香族化合物を添加する方法が挙げられる。原料ガスから高沸点芳香族化合物を除去する方法としては、例えば、原料ガスを吸着分離、ろ過分離、吸収分離、凝縮分離、又は化学反応等にかける方法が挙げられる。これらはどれか1つであってもよいし、複数の方法を用いてもよい。原料ガス中の高沸点芳香族化合物の濃度を低減する方法としては、高沸点芳香族化合物の濃度の調整が比較的容易な吸着分離、ろ過分離、吸収分離が好ましく、吸着剤や吸収剤が容易に再生可能であるといった経済面から吸着分離、吸収分離が特に好ましい。
【0030】
前記吸着剤としては、例えば活性炭、ゼオライト、及びシリカゲルが挙げられる。また前記吸収剤としては、例えば灯油、軽油、重油、組成ベンゼン、石炭系洗浄油、及び不飽和炭化水素油が挙げられる。また前記ろ過材としては、例えばセラミックフィルター、焼結金属フィルター、及びポリテトラフルオロエチレン等の有機高分子系のメンブレンフィルターが挙げられる。また前記凝縮分離は、例えば、低圧、高温の原料ガスを加圧冷却することによって、前記高沸点芳香族化合物を沸点以下にし、液状として原料ガス中から分離することによって行うことができる。また前記化学反応は、例えば、原料ガス中の前記高沸点芳香族化合物と水素と反応させて環状炭化水素もしくは脂肪族炭化水素に変換する水添反応によって行うことができる。
【0031】
また、本発明では、前記原料ガスを後述の工程(A)の反応器にそのまま供給してもよいが、工程(K)として、前記原料ガスを後述の工程(A)の反応器に供給する前に、予め原料ガス中の硫黄化合物を除去する工程を設け、原料ガス中の硫黄化合物を除去した後、その原料ガスを後述の工程(A)に供給することが好ましい。
工程(K)において、硫黄化合物の除去は、分解や吸着等の公知の技術によって行うことができる。原料ガスから除去すべき前記硫黄化合物としては、後述の工程(A)における触媒の性能を低下させる化合物が挙げられ、例えば硫化水素、硫化カルボニル、二硫化炭素、チオフェン、ジベンゾチオフェン、チオール類、チオアセタール類、及びチオシアン類が挙げられる。
【0032】
前記硫黄化合物の分解は、例えば、CoMo系やNiMo系の水素化触媒を用いた水素化分解反応によって行うことができ、前記硫黄化合物の吸着は、例えば酸化亜鉛や酸化鉄を用いた化学吸着によって行うことができる。
本発明において、上述の工程(I)〜(K)は、それぞれ単独でおこなっても、組み合わせておこなっても良い。後述の工程(A)の第1の触媒の劣化やコーキング等の抑制の観点から、原料ガスとして、工程(I)〜(K)を経たものを工程(A)の反応器に供給することが好ましい。また、これらの工程を組み合わせて行う、若しくは工程(I)〜(K)の工程を行う場合の順序は特に限定されないが、工程(K)の前に工程(J)を行うことが好ましい。
【0033】
[工程(A)の説明]
本発明における工程(A)は、上記のようにして得られる水素及び炭化水素を含有する原料ガスを第1の触媒を有する反応器に供給し、水蒸気と反応させて、主成分として、水素、及び炭素酸化物を含有する合成ガスを生成させる工程である。
本発明における工程(A)で生成される合成ガスとは、水素、及び炭素酸化物を含有するガスのことであるが、合成ガス中に水素、及び炭素酸化物以外の成分を含んでいてもよい。含んでいてもよい水素、及び炭素酸化物以外の成分として、好ましくは、メタン、エタン、プロパンなどの脂肪族炭化水素、及び、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素である。
【0034】
なお、工程(A)内で水素が消費され、炭素酸化物からメタンが生成したり、或いはメタンが消費され炭素酸化物が生成するため、それぞれの含有量は特に限定されない。
<第1の触媒>
本発明における「第1の触媒」とは、工程(A)で使用される触媒をいい、上記のようにして得られる原料ガスと水蒸気と反応させて、主成分として、水素、及び炭素酸化物を含有する合成ガスを製造できる触媒をいう。
【0035】
この反応に用いられる触媒としては、無機酸化物粒子の担体とこの担体に担持された活性金属とからなる固体状のものであれば、特に限定されず、原料ガスの種類や合成ガスの種類に基づいて、従来公知の触媒が用いられる。
前記無機酸化物としては、例えばアルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、酸化クロム、酸化セレン、及び酸化スズが挙げられる。前記無機酸化物は、安価で市販触媒での使用実績が多い観点から、アルミナであることが好ましい。
【0036】
前記活性金属には、原料ガスの合成において活性な金属及び金属酸化物を用いることができる。活性金属は一種で、又は二種以上を複合させて用いられる。このような活性金属としては、例えばNi、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Mo、Ln、Na、Mg、K、及びこれらの金属酸化物が挙げられる。前記活性金属は、価格も安価であり、汎用的である観点から、Niの金属又は金属酸化物であることが好ましい。
【0037】
本発明では、前記担体が安価なアルミナの粒子であり、前記活性金属が安価で一般的な使用実績の多いニッケルを含むことが、触媒コストの観点から設備の運転コストを低く抑えることができ、より一層効果的である。
前記第一の触媒としては、例えばズードケミー触媒(株)製のC11−PR、FCPR、ReforMax250、ReforMax260、NiSAT200、NiSAT300、NiSAT310、FCR−4−02、ReforMax330、ReforMax340、ReforMax400、ReforMax410、ReforMax420等が挙げられる。
【0038】
<水蒸気>
本発明において、工程(A)では、上述の合成ガスを生成させるために、水蒸気を用いて、原料ガスと反応させる。
水蒸気を供給する方法は、特に限定されないが、原料ガスと別々に反応器に供給しても、あらかじめ反応器の前段で水蒸気と原料ガスと混合して原料ガスとともに、反応器へ供給しても良い。
【0039】
水蒸気を供給する際は、(水蒸気)/(工程(A)に供されるガス中の炭素原子)のmol比(以下、S/C と略記する)が0.5〜5.0の範囲になるように、例えば原料ガスや水蒸気の流量、又は反応温度や反応圧力等の反応条件を操作することによって、改質工程に供されるガスに水蒸気を供給することが、改質工程における低級炭化水素のコーキングを防止する観点から好ましい。低級炭化水素のコーキングを防止する観点から、S/Cが1.0〜4.0程度であることがより好ましく、低級炭化水素のコーキングを防止し、更には使用水蒸気量を極力低減する観点から、S/Cは1.5〜3.5の範囲であることがより好ましい。
【0040】
<反応条件>
本発明において、工程(A)における反応温度は、第1の触媒の種類、及び、使用する触媒の機械的強度や反応の効率との両立の観点から決めることができる。
例えば、反応温度の範囲としては、通常は、400〜1000℃であるが、触媒効率を高める観点から、改質用触媒の種類に応じて反応温度を決定することができる。
【0041】
反応圧力は、反応平衡の観点と反応器容量の増加抑制の観点から、0.0〜3.5MPa(絶対圧、以下同様)であることが好ましく、0.2〜3.0MPaであることがより好ましく、0.5〜2.5MPaであることが更に好ましい。
原料ガス中に含まれる炭化水素がメタンの場合は、前記反応器内では下記式(1)の反応が進行し、原料ガス中に含まれる炭化水素がエタンの場合は、前記反応器内では下記式(2)の反応が進行する。また、反応器や触媒への炭化水素のコーキングを防止する観点から、S/C=1.0〜4.0程度で水蒸気を改質ガスに供されるガスに供給すことにより、反応器内では下記式(3)の反応を進行させることもできる。
【0042】
CH+HO→CO+3H−206kJ/mol (1)
+2HO→2CO+5H−347kJ/mol (2)
C+2HO→CO+2H−88kJ/mol (3)
<工程(A)の反応器>
本発明における、工程(A)の反応器で行われるのは気相反応である。この気相反応の反応器の形態については特に制限はないが、通常、連続式の固定床反応器や流動床反応器から選ばれる。好ましくは固定床反応器である。なお、固定床反応器に上述の第1の触媒を充填する場合には、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填しても良い。こ
の場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量は特に制限はない。なお、この粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
【0043】
なお、本発明の工程(A)の反応器内で起こる反応は吸熱反応である。このため、反応器を外周する加熱器を設けてもよい。加熱器に燃料ガスと空気とを供給し燃焼させ、反応器内を加熱し、反応熱を供給することにより効率的な反応を行うことができる。この場合に使用する燃料ガスとしては、原料ガスと同様の組成を持つガスを用いてもよいし、他の組成の燃料ガスを用いても良い。また、上述の工程(I)で原料ガスから水素を分離した場合、その水素を燃料ガスの一部として用いてもよい。
【0044】
[工程(B)の説明]
本発明における工程(B)は、上記の工程(A)から得られる合成ガスを第2の触媒を有する反応器に供給し、水素と炭素酸化物とを反応させて粗メタノールを合成する、メタノール合成工程である。
本発明における工程(B)で合成される粗メタノールとは、メタノールを含有するものであるが、粗メタノール中にメタノール以外の成分を含んでいてもよい。
【0045】
<第2の触媒>
本発明における「第2の触媒」とは、工程(B)で使用される触媒をいい、主として、上記のようにして得られる原料ガス中の水素と炭素酸化物を反応させて、主成分として、メタノールを含有する粗メタノールを製造できる触媒をいう。
この反応に用いられる触媒としては、例えば銅系触媒が用いられる。特に、高濃度の二酸化炭素雰囲気中で高い耐久性を有するCu,Zn,Al,GaおよびM(アルカリ土類金属元素および希土類元素から選ばれる少なくとも1つの元素)を含む酸化物からなり、前記Cu,Zn,Al,GaおよびMが原子比にてCu:Zn:Al:Ga:M=100:10〜200:1〜20:1〜20:0.1〜20の割合で配合された組成を有する触媒が好ましい。具体的には、Cu−Zn−Alの金属もしくは金属酸化物触媒が使用される。
【0046】
<工程(B)の反応器>
本発明における、工程(B)の反応器で行われるのは気相反応である。この気相反応の反応器の形態については特に制限はないが、通常、連続式の固定床反応器や流動床反応器から選ばれる。好ましくは固定床反応器である。なお、固定床反応器に上述の第2の触媒を充填する場合には、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填しても良い。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量は特に制限はない。なお、この粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
【0047】
<反応条件>
本発明において、工程(B)における反応温度は、第2の触媒の種類、及び、使用する触媒の機械的強度や反応効率との両立の観点から決めることができる。メタノール合成反応は、低温、高圧の条件ほど反応に有利となる。例えば、反応温度は通常150〜300℃の範囲で操作されるが、反応の効率を高める観点からは、180〜260℃の範囲が好ましい。
【0048】
反応圧力としては、通常1〜12MPaの範囲で操作される。好ましくは2〜11MPa、更に好ましくは4〜11MPaの範囲である。
工程(A)から得られる合成ガス中の炭素酸化物が、一酸化炭素や二酸化炭素の場合は、前記反応器内では、それぞれ、下記式(4)や(5)の反応が進行する。
CO+2H→CHOH+92kJ/mol (4)
CO+3H→CHOH+HO+50kJ/mol (5)
また、副反応によってジメチルエーテル及びエタノール等の不純物を生成する。これらの不純物及び水は、前記メタノールと共に液状の粗メタノール中に含まれる。
【0049】
このようにして、得られた粗メタノールは、後述の工程(C)に導入されるが、工程(C)に導入する前に、工程(F)として、この粗メタノールを第4の触媒を有する反応器に供給し、該触媒の存在下、粗メタノール中の一部のメタノールを反応させてジメチルエーテルとする工程を設けることが好ましい。
本発明における、工程(F)の反応器で行われるのは気相反応である。この気相反応の反応器の形態については特に制限はないが、通常、単数、あるいは複数の固定床反応器が選ばれる。使用される触媒は活性アルミナなどが使用される。
【0050】
また、上述の工程(F)において、反応により得られたジメチルエーテル及び/又はメタノールを含む粗メタノールから、副生物である水を分離することが好ましい。
[工程(C)の説明]
本発明において、工程(C)では、主に、上述の工程(B)で得られる粗メタノール、若しくは、工程(F)により、粗メタノール中の一部のメタノールをジメチルエーテルとした粗メタノールとオレフィンを原料として、第3の触媒を有する反応器に供給し、第3の触媒の存在下で、プロピレンを合成する工程である。
【0051】
本発明における工程(C)で生成されるプロピレンを主成分とする生成物流は、プロピレンを主成分として含有するが、この生成物流中にプロピレン以外の成分を含んでいてもよい。含んでいてもよいプロピレン以外の成分として、好ましくは、メタノール、ジメチルエーテル、などが挙げられる。
<第3の触媒>
本発明における「第3の触媒」とは工程(C)の反応器で用いる触媒をいい、オレフィンと(メタノールおよび/又は)ジメチルエーテルとを反応させてプロピレンおよび炭素数4以上のオレフィンを製造することができる触媒をいう。
【0052】
この反応に用いられる触媒としては、ブレンステッド酸点を有する固体状のものであれば特に限定されず、従来公知の触媒が用いられ、例えば、カオリン等の粘土鉱物;粘土鉱物等の担体に硫酸、燐酸等の酸を含浸・担持させたもの;酸性型イオン交換樹脂;ゼオライト類;燐酸アルミニウム類;Al−MCM41等のメソポーラスシリカアルミナ等の固体酸触媒が挙げられる。
【0053】
これらの固体酸触媒のうちでも、分子篩効果を有するものが好ましく、また、酸強度があまり高くないものが好ましい。
前記固体酸触媒のうち、分子篩効果を有するゼオライト類や燐酸アルミニウム類の構造としては、International Zeolite Association(IZA)が規定するコードで表すと、
例えば、AEI、AET、AEL、AFI、AFO、AFS、AST、ATN、BEA、CAN、CHA、EMT、ERI、EUO、FAU、FER、LEV、LTL、MAZ、MEL、MFI、MOR、MTT、MTW、MWW、OFF、PAU、RHO、STT、TON等が挙げられる。その中でも触媒のフレームワーク密度が18.0T/nm3以下である触媒が好ましいく、このようなものとしては、好ましくは、MFI、MEL、MOR、MWW、FAU、BEA、CHAで、より好ましくは、MFI、MEL、MOR、MWW、CHA、特に好ましくはMFI、MEL、MWW、CHAが挙げられる。
【0054】
ここで、フレームワーク密度(単位:T/nm)とは、ゼオライトの単位体積(1nm)当たりに存在するT原子(ゼオライトの骨格を構成する原子のうち、酸素以外の原子)の個数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。
更に、該固体酸触媒としてより好ましくは、細孔径が0.3〜0.9nmのミクロ細孔を有し、BET比表面積が200〜700m/g、細孔容積が0.1〜0.5g/ccである結晶性アルミノシリケート類、メタロシリケート類又は結晶性燐酸アルミニウム類等が好ましい。なお、ここで言う細孔径とは、International Zeolite Association(I
ZA)が定める結晶学的なチャネル直径(Crystallographic free diameter of the channels)を示し、細孔(チャネル)の形状が真円形の場合は、その直径をさし、細孔の形状が楕円形の場合は、短径をさす。
【0055】
また、アルミノシリケートの中では、SiO/Alのモル比が10以上のものが好ましい。SiO/Alモル比が低すぎると触媒の耐久性が低下するため好ましくない。SiO/Alのモル比の上限は通常10000以下である。SiO/Alのモル比がこれより高すぎると触媒活性が低下してしまうため好ましくない。上記モル比は、蛍光X線や化学分析法などの常法により求めることができる。
【0056】
触媒中のアルミニウム含量は触媒調製の際の原料仕込み量でコントロールすることができ、また、調製後にスチーミング等によりAlを減らすこともできる。また、Alの一部をホウ素やガリウム等の他の元素に置き換えても良い。
これらの触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の工程(C)においては、反応に不活性な物質やバインダーを用いて、造粒・成型して、或いはこれらを混合して反応に用いても良い。該反応に不活性な物質やバインダーとしては、アルミナまたはアルミナゾル、シリカ、シリカゲル、石英、およびそれらの混合物等が挙げられる。
【0057】
なお、上記した触媒組成は、これらの反応に不活性な物質やバインダー等を含まない触媒活性成分のみの組成である。しかして、本発明の工程(C)に係る触媒とは、これらの反応に不活性な物質やバインダー等を含む場合は、前述の触媒活性成分とこれらの反応に不活性な物質やバインダー等とを合わせて触媒と称し、これらの反応に不活性な物質やバインダー等を含まない場合は、触媒活性成分のみで触媒と称す。
【0058】
本発明の工程(C)で用いる触媒活性成分の粒径は合成時の条件により異なるが、通常、平均粒径として0.01μm〜500μmである。触媒の粒径が大き過ぎると、触媒活性を示す表面積が小さくなり、小さ過ぎると取り扱い性が劣るものとなり、いずれの場合も好ましくない。この平均粒径は、SEM観察等により求めることができる。
本発明の工程(C)で用いる触媒の調製方法は特に限定されず、一般的に水熱合成と呼ばれる公知の方法により調製することが可能である。また、水熱合成後にイオン交換、脱アルミニウム処理、含浸や担持などの修飾により組成を変えることも可能である。
【0059】
本発明の工程(C)で使用する触媒は、反応に供する際に、上記物性ないし組成を有しているものであれば良く、いずれの方法によって調製されたものであっても良い。
<オレフィン原料>
工程(C)において、原料としてのオレフィンは、特に限定されるものではない。例えば、石油供給原料から接触分解法またはスチームクラッキング等により製造されるもの、石炭のガス化により得られる水素/CO混合ガスを原料としてFT(フィッシャートロプシュ)合成を行うことにより得られるもの、エチレンの二量化反応を含むオリゴマー化反応により得られるもの、炭素数4以上のパラフィンの脱水素法または酸化脱水素法により得られるもの、MTO反応によって得られるもの、アルコールの脱水反応によって得られるもの、炭素数4以上のジエン化合物の水素化反応により得られるもの等の、公知の各種方法により得られる。
【0060】
本発明では、オレフィンの中でも、炭素数4以上、特に炭素数4〜10のオレフィンを
用いることが好ましい。このとき炭素数4以上のオレフィン以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したオレフィンを用いても良い。
この中でも、炭素数4以上のパラフィン類を含んだオレフィンを使用する場合、パラフィンが希釈ガスの役割を果たすため反応温度の制御が容易になり、さらにパラフィン含有の原料は安価に入手可能であることが多いため好ましい。さらに好ましくはノルマルブタンおよび/またはイソブタンを含有したオレフィン原料である。
【0061】
これらの好ましい原料としては、石油供給原料から接触分解法またはスチームクラッキング等により製造される、BB留分、BBSS留分、C4ラフィネート−1、及びC4ラフィネート−2等の炭素原子数4以上の炭化水素混合物が挙げられる。
尚、BBSS留分やBB留分などの炭素原子数4以上の炭化水素混合物を工程(C)のオレフィンとして使用する場合は、該混合物中の共役ジエンの濃度を低減するという観点から、オレフィンを工程(C)に供給する前に、工程(G)として、BBSS留分やBB留分などの炭素原子数4以上の炭化水素混合物と水素を、水素添加反応触媒を有する反応器に供給し、炭素原子数4以上の炭化水素混合物中の共役ジエン濃度を低減した後、工程(C)の原料のオレフィンとして供給することが好ましい。なお、水素添加反応触媒や反応条件等は公知の方法であれば、特に限定されない。
【0062】
<工程(C)の反応器>
本発明において、工程(C)の反応器で行われるのは気相反応である。この気相反応器の形態に特に制限はないが、通常、連続式の固定床反応器や流動床反応器から選ばれる。好ましくは固定床反応器である。なお、固定床反応器に前述の触媒を充填する場合には、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填しても良い。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量は特に制限はない。なお、この粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
【0063】
<反応条件>
反応温度の下限としては、工程(C)の反応器入口のガス温度として通常約300℃以上、好ましくは400℃以上であり、反応温度の上限としては、通常600℃以下、好ましくは500℃以下である。反応温度が低すぎると、反応速度が低く、未反応原料が多く残る傾向となり、更にプロピレンの収率も低下する。一方で反応温度が高すぎるとプロピレンの収率が著しく低下すると共にオレフィンの転化率が低下する傾向があるため好ましくない。
【0064】
反応圧力の上限は通常2MPa(絶対圧、以下同様)以下、好ましくは1MPa以下であり、より好ましくは0.7MPa以下である。また、反応圧力の下限は特に制限されないが、通常1kPa以上、好ましくは50kPa以上である。反応圧力が高すぎるとパラフィン類や芳香族化合物等の好ましくない副生成物の生成量が増え、プロピレンの収率が低下する傾向がある。反応圧力が低すぎると反応速度が遅くなる傾向がある。
【0065】
工程(C)の反応器に供給する全供給成分中の、オレフィンとメタノールとジメチルエーテルの合計濃度(基質濃度)は、全体の20体積%以上80体積%以下、好ましくは全体の30体積%以上70体積%以下である。
ここで基質濃度は、工程(C)の反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
【0066】
この基質濃度が高すぎると芳香族化合物やパラフィン類の生成が顕著になりプロピレンの選択率が低下する傾向がある。逆に、この基質濃度が低すぎると、反応速度が遅くなる
ため多量の触媒が必要となり、さらに生成物の精製コストや反応設備の建設費も大きくなり経済的でない。
また、工程(C)の反応器内には、オレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルの他に、パラフィン類、芳香族類、水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、および、それらの混合物といった、反応に不活性な気体を存在させることができる。なお、これらの希釈ガスのうち、パラフィン類や芳香族類は、反応条件によっては若干反応することがあるが、反応量が少ないことから、希釈ガスとして定義する。
【0067】
このような希釈ガスとしては、反応原料に含まれている不純物をそのまま使用しても良
いし、別途調製した希釈ガスを反応原料と混合して用いても良い。
また、希釈ガスは反応器に入れる前に反応原料と混合しても良いし、反応原料とは別に反応器に供給しても良い。
空間速度は、0.1Hr−1から500Hr−1の間が好ましく、1.0Hr−1から100Hr−1の間が更に好ましい。空間速度が高すぎると原料のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルの転化率が低くなる。また、空間速度が低すぎると、一定の生産量を得るのに必要な触媒量が多くなり反応器が大きくなりすぎると共に、芳香族化合物やパラフィン等の好ましくない副生成物が生成するため好ましくない。なお、ここで言う空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの反応原料であるオレフィンの流量であり、ここで触媒の重量とは触媒の造粒・成型に使用する不活性成分やバインダーを含まない触媒活性成分の重量である。また、流量はオレフィンの流量(重量/時間)である。
【0068】
[工程(D)の説明]
本発明において、工程(D)では、主に、上述の工程(C)で得られるプロピレンを主成分とする生成物流を蒸留により、プロピレンを分離回収する工程である。
工程(D)で得られるプロピレンは、プロピレンに富んだ流体のことであるが、この流体中にプロピレン以外の成分を含んでいてもよい。含んでいても良いプロピレン以外の成分として、好ましくは、プロパンなどである。この流体中のプロピレンの含有量としては、特に限定されないが、プロピレン用途の品質の観点から、通常、90vol%以上、好ましくは、95vol%以上、更に好ましくは、97vol%以上である。
【0069】
上述の工程(C)より得られるプロピレンを主成分とする生成物流は冷却、圧縮および蒸留の一般的な分離方法を利用して、プロピレンを回収することができる。また、回収されたプロピレンに富んだ流体はさらに蒸留等の精製工程により純度の高いプロピレンを得るのが好ましい。その精製された高純度のプロピレンの純度としては、通常、95.0%以上であり、99.0%以上が好ましい。さらに好ましくは99.9%以上である。
【0070】
また、本発明の工程(D)において、プロピレンを分離回収する際の蒸留方法は、特に限定されないが、通常は、蒸留塔を用いて蒸留する。蒸留塔は複数のトレイを有するものでも、規則充填物、不規則充填物などの充填物を充填したものであってもよい。充填物を充填する場合は、トレイ塔の実段数に相当する充填長を充填すれば良い。蒸留は単一の蒸留塔で行っても複数の蒸留塔で行ってもよい。
【0071】
また、工程(D)で、工程(C)より得られる前記生成物流を蒸留塔により蒸留してプロピレンを分離回収する際に、プロピレンに富んだ流体以外に、主成分として炭素原子数2以下の炭化水素を含む流体、主成分として炭素原子数4以上の炭化水素を含む流体、および水に富んだ流体を分離してもよい。本発明では、これらの各流体は、後述の工程(E)において、残留物として、上述の工程(A)の反応器に供給される。ここで、各流体は一つの流体とは限らず、複数の流体であっても良い。例えば、主成分として炭素原子数2以下の炭化水素を含む流体は、メタン、エチレン、エタンを含む一つの流体でも良いが、
メタンに富んだ流体とエチレンとエタンに富んだ流体の二つの流体でも良い。
【0072】
また、これらの各流体を蒸留で分離する順序は特に限定されないが、工程(C)から得られるプロピレンを主成分とする生成物流を第1の蒸留塔により蒸留し、まず、炭素原子数2以下の炭化水素を含む流体を分離し、炭素原子数2以下の炭化水素が分離された生成物流を第2の蒸留塔に供給し、プロピレンに富んだ流体と炭素原子数4以上の炭化水素及び水を含む流体とに分離するのが好ましい。また、炭素原子数4以上の炭化水素及び水を含む流体を、更に、第3の蒸留塔に供給し、炭素原子数4〜6の炭化水素を含む流体と水及び炭素原子数7以上の炭化水素を含む流体とに分離することが好ましい。
【0073】
また、工程(D)での蒸留をおこなう前に、必要に応じて、クエンチ、アルカリ洗浄、脱水等の処理を行うのが好ましい。
工程(C)より得られるプロピレンを主成分とする生成物流に含酸素化合物が含まれる場合にはクエンチ工程により、含酸素化合物の少なくとも一部が除去してもよい。また、二酸化炭素などの酸性ガスが含まれる場合にはアルカリ洗浄により酸性ガスの少なくとも一部が除去してもよい。水の分離は主に圧縮と冷却により凝縮することによっても可能である。
【0074】
残った水分はモレキュラーシーブ等の吸着剤で除去するのが好ましい。凝縮および/または吸着により除去した水は活性汚泥等の廃水処理に供しても良いが、プロセス水等に使用することもできる。本プロセスがスチームクラッキングプロセスの近くにある場合にはクラッカーのスチーム源として利用することが好ましい。また、工程(C)の反応器にリサイクルして希釈ガスとして用いても良い。
【0075】
また、工程(C)で得られるプロピレンを主成分とする生成物流を工程(D)に供給する前に、その一部を前記工程(A)の反応器に供給してもよい。
[工程Eの説明]
本発明において、工程(E)では、上述の工程(D)でプロピレンを主成分とする生成物流からプロピレンが分離された残留物を上述の工程(A)の反応器に供給する工程である。
【0076】
工程(E)における残留物は、工程(D)でプロピレンが分離された残りのものであればよく、特に限定されないが、具体的には、主成分として炭素原子数2以下の炭化水素を含む流体、主成分として炭素原子数4以上の炭化水素を含む流体、および水に富んだ流体などが挙げられる。この中でも、工程(E)の残留物としては、主成分として炭素原子数2以下の炭化水素を含む流体、及び主成分として炭素原子数4以上の炭化水素を含む流体が好ましい。
【0077】
工程(E)の残留物は、工程(A)の反応器に供給することで、これらの残留物が合成ガス生成のための原料として利用することができ、結果として合成ガスの収率が高くなり、工程(C)でのプロピレンの収率も高くなる、ことが期待できる。なお、この残留物は全ての工程(A)の反応器に供給しても、一部を反応器に供給してもよい。
工程(E)の残留物は上述の工程(A)の反応器に供給されるが、工程(A)の反応器への供給方法は特に限定されず、水素及び炭化水素を含有する原料ガスと混合して反応器に供給しても、原料ガスの供給ラインとは別に独立して工程(A)の反応器に供給してもよい。工程(E)の残留物が、主成分として炭素原子数2以下の炭化水素を含む流体、及び主成分として炭素原子数4以上の炭化水素を含む流体の場合は、それぞれ工程(A)の反応器に供給することが好ましい。
【0078】
[プロピレンの用途]
本発明で、製造されたプロピレンは例えばアンモ酸化によりアクリロニトリルの製造に、選択酸化によりアクロレイン、アクリル酸およびアクリル酸エステルの製造に、オキソ反応によりノルマルブチルアルコール、2−エチルヘキサノール等のオキソアルコールの製造に、プロピレンの重合によりポリプロピレンの製造に、プロピレンの選択酸化によりプロピレンオキサイドおよびプロピレングリコール等の製造に適用することができる。また、ワッカー反応によりアセトンが製造でき、更にアセトンよりメチルイソブチルケトンを製造することができる。アセトンからはまたアセトンシアンヒドリンが製造でき、これは最終的にメチルメタクリレートに転換される。またプロピレン水和によりイソプロピルアルコールも製造できる。また、ベンゼンをアルキル化することにより製造したキュメンを原料に、フェノール,ビスフェノールA,ポリカーボネート樹脂を製造することができる。
【0079】
これらの中でも、プロピレンの重合によりポリプロピレンの製造の原料として用いることが好ましい。また、前述の工程(D)で分離された高純度のプロピレンを得た後に、そのプロピレンを重合する工程を有することが更に好ましい。
[プロセスの実施形態]
以下に、図面を参照して、本発明のプロセスの実施形態について説明する。
【0080】
図1は本発明プロセスの実施の態様の一つである。
図1において、1は脱硫塔、2,7,13,及び22は圧縮機、3はナフタレン吸収塔、4及び5は油類・ダスト除去塔、6は水素分離塔、8は水添反応器、9は脱硫反応器、10は改質反応器、11は改質反応器用の加熱器、12及び15はドラム、14はメタノール合成用反応器、16は蒸留塔、17はジメチルエーテル合成用反応器、18は蒸留塔、19は水添反応器、20はプロピレン合成用反応器、21はクエンチ塔、23は気液分離器、24は脱エタン塔、25は脱プロパン塔、26は脱ヘキサン塔である。101〜142はそれぞれ配管を示す。なお、図1中で、「COG」はコークス炉から排出されるガス(コークス炉ガス)のことであり、「S」、「H」、「Air」、及び「Steam」はそれぞれ、硫黄化合物、水素ガス、空気、及び水蒸気のことである。
【0081】
炭化水素及び水素を含む原料ガスとしてのコークス炉ガスは、配管101を経て、脱硫塔1に供給され、そこで原料ガス中の硫黄化合物が除去される。脱硫塔1で処理された原料ガスは配管102を経て、圧縮機2で圧縮され、配管103を経てナフタレン吸収塔3に供給される。ここで、原料ガス中のナフタレン等の高沸点芳香族炭化水素の濃度が低減される。その後、ナフタレン吸収塔3から得られる原料ガスは、配管104、105を経て、油類・ダスト除去塔である4、5を通過して原料ガス中のダストや油分を除去する。配管106を経て水素分離塔6で原料ガス中の一部の水素を分離する。水素の一部が分離された原料ガスは配管107を経て、圧縮機7で圧縮され、配管108を経由して水添反応器8に供給され、水添反応器8の出口から得られる原料ガスは配管109を経て、脱硫反応器9に供給される。水添反応器8及び脱硫反応器9で、脱硫塔1やナフタレン吸収塔3で除去できなかった原料ガス中の硫黄化合物や芳香族炭化水素を、化学反応を利用して除去する。脱硫反応器9の出口から得られる原料ガスは配管110を経て改質反応器10に導入される。なお、図1では、配管110を経て導入される原料ガスは、改質反応器10に導入する前に、予め配管113を経て導入される水蒸気と合流して供給されるが、これらは必ずしも改質反応器10に導入される前に合流する必要は無く、別々に改質反応器10に供給しても良い。また、改質反応器10を加熱するための加熱器11の加熱用燃料として、配管112を経て供給される空気の他に、水素分離塔7で分離された水素の一部又は全量を、配管111を経て加熱器11に供給し燃料として利用する。
【0082】
改質反応器10の出口から水素及び炭素酸化物を含有する合成ガスを得て、その合成ガスは配管114を経てドラム12に供給される。そして、配管115から圧縮機13に供
給され、昇圧された合成ガスが配管116を経て、メタノール合成用反応器14に供給される。メタノール合成用反応器の出口から得られる粗メタノールは配管117を経てドラム15に導入される。そして、配管118を経由して蒸留塔16に供給され、蒸留塔16で粗メタノール中に残存する未反応の炭素酸化物や水素、及びメタンなどを塔頂から抜き出し、除去する(図示せず)。蒸留塔16の塔底から得られる粗メタノールは配管119を経由して、ジメチルエーテル合成用反応器17に供給される。ジメチルエーテル合成用反応器17の出口流体を蒸留塔18に供給し、水の一部を塔底から抜き出し、塔頂からジメチルエーテルとメタノールを含む粗メタノールを得る。この粗メタノールは配管122を経由して、プロピレン合成用反応器20に供給される。水添反応器19に配管123、124から、それぞれ水素とBBSSを供給し、水添反応器19中で、BBSS中の共役ジエン類を水添反応により、共役ジエンの一部をオレフィンに変換して、共役ジエン濃度が低減されたガスをオレフィンとして、配管125を経て粗メタノールと合流しプロピレン合成用反応器20に供給する。プロピレン合成用反応器の出口から得られる生成物流は配管126を経てクエンチ塔21に導入され水により冷却される。
【0083】
冷却されたプロピレンを含有する生成物流はクエンチ塔21の塔頂から留出される。また、冷却に使用された水はクエンチ塔21の塔底液として配管127を経て系外へ排出されるが、一部は配管129を経由して循環使用される。クエンチ塔21の塔頂から得られるプロピレンを含有する生成物流は、配管128を経由して圧縮機22で圧縮される。圧縮されたプロピレンを含有する生成物流は、配管130を経由して気液分離器23に導入され、水を分離し配管131を経由して配管127と合流し系外へ排出する。気液分離器23でプロピレンを含有する生成物流の気体と液体はそれぞれ、配管133と配管132を経由して合流し、配管134を経て脱エタン塔24に供給される。脱エタン24の塔頂からは、メタン、エタン、エチレンなどの炭素原子数2以下の炭化水素が分離される。これらは配管135を経て、改質反応器10に供給される原料ガス110の配管と合流して、改質反応器10に供給される。脱エタン塔の塔底液は配管136を経て、脱プロパン塔25に供給される。脱プロパン塔25の塔頂からはプロピレンを含む炭素原子数3の炭化水素が分離される。この塔頂留出液は配管137を経て、更に蒸留塔(図示せず)により、精製され高純度の製品プロピレンを得ることができる。脱プロパン塔25の塔底液は配管138を経て、脱ヘキサン塔26に供給される。脱ヘキサン塔26の塔頂からは炭素原子数4の炭化水素が留出し、塔底からは水と共に高沸物が流出される。塔底液は配管139を経て、系外へ排出される。塔頂から得られる流体のうち、一部は配管141より系外へパージ(排出)され、一部は配管140を経て水添反応器19へ供給されるBBSSの配管124と合流し、水添反応器19へ供給され、残りは、配管142を経由して、配管135と合流して、原料ガスと共に改質反応器10に供給される。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、プロピレンを石炭由来の原料ガスから一環で製造する際に、最適なプロセスの一つとして、変動費の低減を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0085】
1 脱硫塔
2,7,13,22 圧縮機
3 ナフタレン吸収塔
4,5 油類・ダスト除去塔
6 水素分離塔
8 水添反応器
9 脱硫反応器
10 改質反応器
11 加熱器
12,15 ドラム
14 メタノール合成用反応器
16 蒸留塔
17 ジメチルエーテル合成用反応器
18 蒸留塔
19 水添反応器
20 プロピレン合成用反応器
21 クエンチ塔
23 気液分離器
24 脱エタン塔
25 脱プロパン塔
26 脱ヘキサン塔
101〜142 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)〜(E)の工程を有するプロピレンの製造方法。
(A) 水素及び炭化水素を含有する原料ガスを第1の触媒を有する反応器に供給し、水蒸気と反応させて、主成分として、水素、及び炭素酸化物を含有する合成ガスを得る合成ガス生成工程
(B) 工程(A)で得られる合成ガスを、第2の触媒を有する反応器に供給し、水素と炭素酸化物とを反応させてメタノールを合成し、該メタノールを含む粗メタノールを得るメタノール合成工程
(C) 工程(B)より得られる粗メタノールとオレフィンを第3の触媒を有する反応器に供給し、第3の触媒の存在下で、プロピレンを生成させ、該プロピレンを主成分とする生成物流を得る工程
(D) 工程(C)より得られる前記生成物流を蒸留し、プロピレンを分離回収する工程
(E) 工程(D)で、前記生成物流からプロピレンが分離された残留物を前記工程(A)の反応器に供給する工程
【請求項2】
以下の工程(F)を更に有する請求項1に記載のプロピレンの製造方法。
(F) 工程(B)より得られる粗メタノールを第4の触媒を有する反応器に供給し、該触媒の存在下、粗メタノール中の一部のメタノールを反応させてジメチルエーテルとする工程
【請求項3】
前記工程(F)において、反応により得られるジメチルエーテル及び/又はメタノールを含む粗メタノールから水を分離することを特徴とする請求項2に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項4】
前記工程(E)の前記残留物が、主として炭素原子数2以下の炭化水素を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプロピレンの製造方法。
【請求項5】
前記工程(E)の前記残留物が、主として炭素原子数4〜6の炭化水素を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプロピレンの製造方法。
【請求項6】
以下の工程(G)を更に有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプロピレンの製造方法。
(G) 炭素原子数4以上の炭化水素混合物と水素とを、水素添加反応触媒を有する反応器に供給し、炭素原子数4以上の炭化水素混合物中の共役ジエン濃度を低減し、前記工程(C)の反応器に供給する工程
【請求項7】
以下の工程(H)を更に有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプロピレンの製造方法。
(H) 前記工程(E)の残留物から炭素原子数4以上の炭化水素混合物を分離し、該炭素原子数4以上の炭化水素混合物を、工程(G)に供給する工程
【請求項8】
以下の工程(I)を更に有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のプロピレンの製造方法。
(I) 前記水素及び炭化水素を含有する原料ガスを前記工程(A)の反応器に供給する前に、予め該原料ガス中から一部の水素を分離する工程
【請求項9】
以下の工程(J)を更に有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のプロピレンの製造方法
(J) 前記工程(A)の水素及び炭化水素を含有する原料ガスが、高沸点芳香族化合物を含有するガスであって、該原料ガスを前記工程(A)の反応器に供給する前に、予め該原料ガス中の高沸点芳香族化合物の濃度を低減する工程
【請求項10】
以下の工程(K)を更に有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のプロピレンの製造方法。
(K) 前記工程(A)の水素及び炭化水素を含有する原料ガスが、硫黄化合物を含有するガスであって、該原料ガスを前記工程(A)の反応器に供給する前に、予め該原料ガス中の硫黄化合物を除去する工程
【請求項11】
前記炭化水素を含有する原料ガスが、石炭由来のものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のプロピレンの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−84528(P2011−84528A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239464(P2009−239464)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】