説明

プロピレンの製造方法

【課題】本発明はプロピレン収率を長時間保持することのできるゼオライト触媒、及び前記触媒を使用したプロピレンの製造方法を提供することを課題としている。
【解決手段】
粒径<1μm;及び
粒径(μm)×[Si/(Si+Al+P)]×1000≦80;
(式中、[Si/(Si+Al+P)]はモル比である)
の条件を満たすリン酸塩系ゼオライト触媒により上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゼオライト触媒、及び前記触媒を使用したプロピレンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレンは、アクロレイン、アクリロニトリル、イソプロピルアルコール、アセトン、グリセリン、クメン、プロピレンオキシド、アリルアルコールなどの合成原料として大量に使用されている。また、プロピレンを重合することにより得られるポリプロピレンは、建築資材や食品容器などの幅広い分野で使用されている。
【0003】
従来からプロピレンを製造する方法は数多く知られており、ゼオライト触媒を使用してエタノールやエチレンからプロピレンを製造する方法が報告されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、金属イオンを導入したアルミノシリケート、及びリン酸塩系ゼオライトを使用してエタノールを連続的にプロピレンに変換する方法を開示している。特許文献2は、リン酸塩系ゼオライト(SAPO-34)の粒径、並びにSi、Al及びPの組成比を一定の範囲内に制御した触媒を使用してエチレン又はエタノールをプロピレンに変換する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−191444号公報
【特許文献2】特開2009−18247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エタノールやエチレンからプロピレンを製造する方法においては、8員環ゼオライト触媒、特にチャバサイト構造を有するゼオライト触媒を使用することが好ましい。しかしながら、これらの触媒は劣化しやすいため、プロピレンの収率を長時間保持することが困難であった。また、プロピレン以外の副生成物(例えば、高級炭化水素)が多く生成してしまうという問題もあった。
【0007】
そのため、本発明はプロピレン収率を長時間保持することのできるゼオライト触媒、及び副生成物の生成を抑え、プロピレンの収率を向上させることのできるゼオライト触媒、並びに前記触媒を使用したプロピレンの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために本発明者らが鋭意検討した結果、ゼオライト触媒の粒径、及びSi成分の割合を特定することによりプロピレン収率を長時間保持できることを見出した。また、ゼオライト触媒の外表面をシラン化合物又は金属塩で修飾することにより、副生成物の生成が抑えられることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下を包含する。
【0010】
(1)粒径<1μm;及び
粒径(μm)×[Si/(Si+Al+P)]×1000≦80;
(式中、[Si/(Si+Al+P)]はモル比である)
の条件を満たすリン酸塩系ゼオライト触媒。
【0011】
(2)0.07≦Si/(Si+Al+P)≦0.12
(式中、Si/(Si+Al+P)はモル比である)
の条件を満たす、(1)に記載のリン酸塩系ゼオライト触媒。
【0012】
(3)リン酸塩系ゼオライト触媒がSAPO-34である、(1)または(2)に記載のリン酸塩系ゼオライト触媒。
【0013】
(4)エタノール及び/又はエチレンをプロピレンに変換するための、(1)〜(3)のいずれかに記載のリン酸塩系ゼオライト触媒。
【0014】
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のリン酸塩系ゼオライト触媒の存在下でエタノール及び/又はエチレンをプロピレンに変換することを含む、プロピレンの製造方法。
【0015】
(6)酸素8員環で規定される細孔入口を有するゼオライト触媒であって、前記触媒の外表面がシラン化合物又は金属塩で修飾されているゼオライト触媒。
【0016】
(7)ゼオライト触媒がリン酸塩系ゼオライト触媒である、(6)に記載のゼオライト触媒。
【0017】
(8)ゼオライト触媒がチャバサイト型構造を有する、(6)又は(7)に記載のゼオライト触媒。
【0018】
(9)ゼオライト触媒がSAPO-34である、(6)〜(8)のいずれかに記載のゼオライト触媒。
【0019】
(10)外表面がシラン化合物で修飾されており、前記シラン化合物がメトキシトリメチルシラン又はテトラメトキシシランである、(6)〜(9)のいずれかに記載のゼオライト触媒。
【0020】
(11)外表面が金属塩で修飾されており、前記金属塩が硝酸ランタン又は硝酸イットリウムである、(6)〜(9)のいずれかに記載のゼオライト触媒。
【0021】
(12)粒径<1μm;及び
粒径(μm)×[Si/(Si+Al+P)]×1000≦80;
(式中、[Si/(Si+Al+P)]はモル比である)
の条件を満たす、(6)〜(11)のいずれかに記載のゼオライト触媒。
【0022】
(13)0.07≦Si/(Si+Al+P)≦0.12
(式中、Si/(Si+Al+P)はモル比である)
の条件を満たす、(12)に記載のゼオライト触媒。
【0023】
(14)メタノール、エタノール、及び/又はエチレンをプロピレンに変換するための、(6)〜(13)のいずれかに記載のゼオライト触媒。
【0024】
(15)(6)〜(14)のいずれかに記載のゼオライト触媒の存在下でメタノール、エタノール及び/又はエチレンをプロピレンに変換することを含む、プロピレンの製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、エタノールなどからプロピレンを安定した収率で長時間製造することができる。また、副生成物の生成を抑え、プロピレンの収率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.リン酸塩系ゼオライト触媒
「ゼオライト」とは、分子レベルの細孔を内包した含水アルミノケイ酸塩であり、M2/nO・Al2O3・xSiO2・yH2O(MはNa、K、Ca、Baなどの金属であり、nは原子価であり、x及びyは係数である)の一般式で表される。「リン酸塩系ゼオライト」とは、ゼオライトのSiO4四面体のSiの一部を3価のAlと5価のPとで置き換えた構造を有するものである。
【0027】
リン酸塩系ゼオライトとしては、例えば、SAPO-5、SAPO-11、SAPO-14、SAPO-17、SAPO-18、SAPO-34、SAPO-39、SAPO-42などを挙げることができる。本発明における好ましいリン酸塩系ゼオライトは、酸素8員環で規定される細孔入口を有するゼオライトであり、より好ましくはチャバサイト型のゼオライトであり、特に好ましくはSAPO-34である。
【0028】
リン酸塩系ゼオライト触媒は、Si及びAl以外に任意の金属原子を含んでいてもよい。例えば、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、鉛(Pb)などを含んでいてもよい。
【0029】
本発明の一実施形態において、リン酸塩系ゼオライト触媒の粒径は1μm未満である。更に、0.005μm<粒径<1μmであることが好ましく、0.01μm<粒径<1μmであることが特に好ましい。ここで、ゼオライト触媒の粒径とは平均粒径を意味する。粒径はSEMによって決定することができる。
【0030】
本発明の一実施形態において、リン酸塩系ゼオライト触媒は粒径及び触媒の構成成分が以下の条件:
粒径(μm)×[Si/(Si+Al+P)]×1000≦80
(式中、[Si/(Si+Al+P)]はモル比である)
を満たすものである。更に、以下の条件:
0.1≦粒径(μm)×[Si/(Si+Al+P)]×1000≦80
を満たすことが好ましく、以下の条件:
1≦粒径(μm)×[Si/(Si+Al+P)]×1000≦60
を満たすことが特に好ましい。
【0031】
更に、エタノール及び/又はエチレンからプロピレンを高収率で、且つ長時間安定して製造する観点から、リン酸塩系ゼオライト触媒の構成成分が以下の条件:
0.07≦Si/(Si+Al+P)≦0.12
(式中、Si/(Si+Al+P)はモル比である)
を満たすことが好ましい。
【0032】
2.修飾ゼオライト触媒
本発明は、酸素8員環で規定される細孔入口を有するゼオライト触媒であって、前記触媒の外表面がシラン化合物又は金属塩で修飾されているゼオライト触媒(以下、単に「修飾ゼオライト触媒」という)にも関する。
【0033】
酸素8員環で規定される細孔入口径はプロピレンの分子径に近いため、酸素8員環で規定される細孔入口を有するゼオライト触媒を使用することによりエタノールなどを選択的にプロピレンに変換することができる。しかし、ゼオライト触媒の外表面における活性点では細孔による形状選択性が発揮されないため、プロピレンへの変換反応が進行しにくい。そのため、ゼオライト触媒の比表面積に対する外表面の割合が大きいほどプロピレン収率が低下し、細孔径よりも大きな副生成物(例えば、炭素数が5以上の炭化水素や分岐のある炭化水素)が多く生成する。
【0034】
従って、本発明においてはゼオライト触媒の外表面の活性点をシラン化合物又は金属塩で修飾することにより、副生成物の生成を抑え、プロピレン選択性を向上させることによってその収率を向上させている。
【0035】
修飾ゼオライト触媒はリン酸塩系ゼオライト触媒であることが好ましく、チャバサイト型構造を有していることがより好ましく、SAPO-34であることが特に好ましい。
【0036】
シラン化合物としては、ゼオライト表面の酸性ヒドロキシル基との反応性を有するアルコキシル基を有するシラン化合物を使用することが好ましい。このようなシラン化合物を使用することによりゼオライトの比表面積を大幅に減少させることなく(つまり、ゼオライトの細孔を塞ぐことなく)、炭素数が5以上の炭化水素の生成を抑制し、プロピレンの選択率・収率を向上させることができる。
【0037】
シラン化合物として、以下の式:
Ra-Si-X4-a (I)
[式中、
Rはアルキル基(C1-6アルキル基など)、アリール基(フェニル基など)、又はビニル基であり、
Xはヒドロキシル基と反応する活性基、例えば、アルコキシル基(C1-6アルコキシル基など)であり、
aは0、1、2、又は3である]
で表される化合物を使用することが好ましい。より具体的にはアルコキシシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、エトキシトリエチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシエチルシラン、テトラメトキシシランなどを使用することが好ましい。
【0038】
シラン化合物で修飾したゼオライト触媒のBET比表面積は、修飾前のBET比表面積の70%以上であることが好ましい。
【0039】
金属塩としては、特に限定されないが、遷移金属の塩を使用することが好ましく、第3族金属(スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、及びアクチノイド)の塩を使用することが特に好ましい。塩の種類についても特に限定されず、無機酸塩、有機酸塩などが挙げられ、より具体的には硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩などが挙げられる。本発明においてはランタノイド(特にランタン)又はイットリウムの塩を使用することが好ましく、硝酸ランタン又は硝酸イットリウムを使用することが特に好ましい。
【0040】
金属塩を使用することにより、ゼオライト触媒の比表面積を大幅に減少させることなく(つまり、ゼオライトの細孔を塞ぐことなく)、炭素数が5以上の炭化水素の生成を抑制し、プロピレンの選択率・収率を向上させることができる。
【0041】
ゼオライト触媒の粒径が小さくなるにつれて外表面の割合が大きくなるため、粒径が小さいほどシラン化合物又は金属塩で修飾した際の効果が大きくなる。そのため、ゼオライト触媒の粒径は1μm未満であることが好ましく、0.005μm〜1μmであることがより好ましく、0.01μm〜1μmであることが特に好ましい。ここで、修飾ゼオライト触媒の粒径とは平均粒径を意味する。粒径はSEMによって決定することができる。
【0042】
修飾ゼオライト触媒は、粒径及び触媒の構成成分が以下の条件:
粒径(μm)×[Si/(Si+Al+P)]×1000≦80
(式中、[Si/(Si+Al+P)]はモル比である)
を満たすことが好ましく、以下の条件:
0.1≦粒径(μm)×[Si/(Si+Al+P)]×1000≦80
を満たすことがより好ましく、以下の条件:
1≦粒径(μm)×[Si/(Si+Al+P)]×1000≦60
を満たすことが特に好ましい。
【0043】
更に、メタノール、エタノール及び/又はエチレンからプロピレンを高収率で、且つ長時間安定して製造する観点から、修飾ゼオライト触媒の構成成分が以下の条件:
0.07≦Si/(Si+Al+P)≦0.12
(式中、Si/(Si+Al+P)はモル比である)
を満たすことが好ましい。
【0044】
3.ゼオライト触媒の合成
ケイ素源、アルミ二ウム源、(リン源)及び構造規定剤の混合物をステンレス鋼製の耐圧容器に仕込み、所定の温度で結晶化させることにより、ゼオライト触媒を合成することができる。
【0045】
また、混合物から水を除去した乾燥ゲルを水、又は構造規定剤を含む水と接触させないように耐圧容器に仕込み、蒸気を供給し結晶化させることにより、ゼオライト触媒を合成することも可能である。
【0046】
「ケイ素源」とは、ケイ素を含有する化合物であり、ゼオライトの構成成分となりうる原料を意味する。ケイ素源としてはゼオライトの構成成分となりうるものであれば特に限定されない。例えば、テトラアルキルオルソシリケート、シリカ、シリカゲル、熱分解法シリカ、沈降シリカ、コロイダルシリカ、水ガラス、湿式シリカ、無定形シリカ、ヒュームドシリカ、ケイ酸ナトリウム、カオリナイト、珪藻土、ケイ酸アルミニウムなどを挙げることができる。
【0047】
「アルミニウム源」とは、アルミニウムを含有する化合物であり、ゼオライトの構成成分となりうる原料を意味する。アルミニウム源としてはゼオライトの構成成分となりうるものであれば特に限定されない。例えば、アルミン酸塩、酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミニウム塩(塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなど)、アルミニウムアルコキシド(アルミ二ウムイソプロポキシドなど)、アルミナホワイト、フッ化アルミニウムなどを挙げることができる。
「リン源」とは、リンを含有する化合物であり、ゼオライトの構成成分となりうる原料を意味する。リン源としてはゼオライトの構成成分となりうるものであれば特に限定されない。例えば、リン酸、リン酸アルミニウムなどを挙げることができる。
【0048】
「構造規定剤」とは、ゼオライトの構造を決定するための化合物である。構造規定剤としては特に限定されず、公知の様々の構造規定剤を使用することができる。例えば、有機塩基、特に四級アンモニウム化合物、アミンなどを挙げることができる。より具体的には、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)並びにそのリン酸塩、フッ化物塩、塩化物塩、臭化物塩及び酢酸塩、ジプロピルアミン(DPA)、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、1-メチルアミダゾール、モルホリン、ピリジン、ピペリジン、ジエチルエタノールアミン(DEA)などを挙げることができる。
【0049】
4.プロピレンの製造
本発明における、粒径及び成分比率を規定したリン酸塩系ゼオライト触媒を使用することにより長時間にわたり安定した収率でエタノール及び/又はエチレン(特に、エタノール)からプロピレンを製造することができる。また、本発明における修飾ゼオライト触媒を使用することにより高い収率でメタノール、エタノール、及び/又はエチレン(特に、エタノール)からプロピレンを製造することができる。
【0050】
反応容器内には、エタノールなどに加えてヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水蒸気、パラフィン類、炭化水素類(例えば、メタン)、芳香族化合物類、及びこれらの混合物などの不活性な気体を希釈剤として存在させることができる。好ましくは水蒸気が希釈剤として使用される。このような希釈剤としては、反応原料に含まれている不純物をそのまま使用してもよいし、別途調製した希釈剤を反応原料と混合して用いてもよい。また、希釈剤は反応容器に入れる前に反応原料と混合してもよいし、反応原料とは別に反応容器に供給してもよい。
【0051】
空間速度は特に制限されないが、0.05〜500h-1であることが好ましく、0.1〜100h-1であることが特に好ましい。ここで、空間速度とは触媒活性成分の重量当たりのエタノールなどの流量(重量/時間)である。
【0052】
反応温度はエタノールなどが高選択的に、且つ速い反応速度でプロピレンに変換されれば特に制限されないが、300〜600℃が好ましく、350〜500℃が特に好ましい。
【0053】
反応圧力はエタノールなどが高選択的に、且つ速い反応速度でプロピレンに変換されれば特に制限されないが、0.01〜2MPaが好ましく、0.05〜1MPaが特に好ましい。
【0054】
エタノールなどからプロピレンへの変換は、反応後の生成ガスをガスクロマトグラフィーで分析することにより確認することができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0056】
1)リン酸塩系ゼオライト触媒の測定
触媒の粒径はSEM撮影により平均値を求めた。触媒中のSi、Al及びPの元素分析は誘導結合プラズマ(ICP)で確認した。SAPO-34について開示している米国特許第4,440,871号に示されているX線回折の構造パターンと比較することにより、SAPO-34が生成していることを確認した。
2)リン酸塩系ゼオライト触媒の合成
【0057】
実施例1
2.98 gのスノーテクスS(日産化学社より市販)、8.40 gの脱イオン水、及び80.69 gの水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)水溶液(水中35%、Aldrich社より市販)を含む溶液をテフロン(登録商標)ビーカーに調製した。この溶液に、20.07 gのアルミ二ウムイソプロポキシドを添加し、更に、22.12 gのリン酸(水中85%、Aldrich社より市販)を添加した。モル比で以下の組成:
0.3SiO2/Al2O3/2P2O5/4TEAOH/77H2O
を有する均質な混合物を得た。当該混合物を90℃の恒温槽に移し、水分を除去して乾燥ゲルを得た。乾燥ゲルと脱イオン水を互いに接触させないように、テフロン内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、180℃で72時間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、脱イオン水で洗浄を行い、100℃で12時間乾燥させ、粉末状の生成物を得た。当該試料は、XRD、SEM、ICPにより、平均粒子径0.1μm、Si/(Si+Al+P)=0.08の物性を有するSAPO-34であることを確認した。
【0058】
実施例2
6.85 gのLudox HS-30(Aldrich社より市販)、193.86 gの水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)水溶液(水中35%、Aldrich社より市販)を含む溶液をテフロン(登録商標)ビーカーに調製した。この溶液に、24.11 gのアルミニウムイソプロポキシドを添加し、更に、53.27 gのリン酸(水中85%、Aldrich社より市販)を添加した。モル比で以下の組成:
0.6SiO2/Al2O3/4P2O5/8TEAOH/133H2O
を有する均質な混合物を得た。当該混合物をテフロン内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、180℃で16時間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、脱イオン水で洗浄を行い、100℃で12時間乾燥させ、粉末状の生成物を得た。当該試料は、XRD、SEM、ICPにより、平均粒子径0.4μm、Si/(Si+Al+P)=0.09の物性を有するSAPO-34であることを確認した。
【0059】
実施例3
6.85 gのLudox HS-30(Aldrich社より市販)、193.86 gの水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)水溶液(水中35%、Aldrich社より市販)を含む溶液をテフロン(登録商標)ビーカーに調製した。この溶液に、24.11 gのアルミニウムイソプロポキシドを添加し、更に、53.27 gのリン酸(水中85%、Aldrich社より市販)を添加した。モル比で以下の組成:
0.6SiO2/Al2O3/4P2O5/8TEAOH/133H2O
を有する均質な混合物を得た。当該混合物をテフロン内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、200℃で16時間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、脱イオン水で洗浄を行い、100℃で12時間乾燥させ、粉末状の生成物を得た。当該試料は、XRD、SEM、ICPにより、平均粒子径0.7μm、Si/(Si+Al+P)=0.08の物性を有するSAPO-34であることを確認した。
【0060】
実施例4
6.85 gのLudox HS-30(Aldrich社より市販)、193.86 gの水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)水溶液(水中35%、Aldrich社より市販)を含む溶液をテフロン(登録商標)ビーカーに調製した。この溶液に、24.11 gのアルミニウムイソプロポキシドを添加し、更に、53.27 gのリン酸(水中85%、Aldrich社より市販)を添加した。モル比で以下の組成:
0.6SiO2/Al2O3/4P2O5/8TEAOH/133H2O
を有する均質な混合物を得た。当該混合物をテフロン内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、180℃で64時間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、脱イオン水で洗浄を行い、100℃で12時間乾燥させ、粉末状の生成物を得た。当該試料は、XRD、SEM、ICPにより、平均粒子径0.5μm、Si/(Si+Al+P)=0.13の物性を有するSAPO-34であることを確認した。
【0061】
実施例5
5.78 gのスノーテクスS(日産化学社より市販)、4.57 gの脱イオン水、及び80.7 gの水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)水溶液(水中35%、Aldrich社より市販)を含む溶液をテフロン(登録商標)ビーカーに調製した。この溶液に、20.03 gのアルミニウムイソプロポキシドを添加し、更に、22.11 gのリン酸(水中85%、Aldrich社より市販)を添加した。モル比で以下の組成:
0.6SiO2/Al2O3/2P2O5/4TEAOH/75H2O
を有する溶液を得た。当該溶液を90℃の恒温槽に移し、水分を除去して乾燥ゲルを得た。乾燥ゲルと脱イオン水を互いに接触させないように、テフロン内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、180℃で85時間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、脱イオン水で洗浄を行い、100℃で12時間乾燥させ、粉末状の生成物を得た。当該試料は、XRD、SEM、ICPにより、平均粒子径0.1μm、Si/(Si+Al+P)=0.15の物性を有するSAPO-34であることを確認した。
【0062】
実施例6
1.44 gのスノーテクスS(日産化学社より市販)、9.46 gの脱イオン水、及び80.7 gの水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)水溶液(水中35%、Aldrich社より市販)を含む溶液をテフロン(登録商標)ビーカーに調製した。この溶液に、20.03 gのアルミニウムイソプロポキシドを添加し、更に、22.11 gのリン酸(水中85%、Aldrich社より市販)を添加した。モル比で以下の組成:
0.15SiO2/Al2O3/2P2O5/4TEAOH/77H2O
を有する均質な混合物を得た。当該混合物を90℃の恒温槽に移し、水分を除去して乾燥ゲルを得た。乾燥ゲルと脱イオン水を互いに接触させないように、テフロン内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、180℃で72時間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、蒸留水で洗浄を行い、100℃で12時間乾燥させ、粉末状の生成物を得た。当該試料は、XRD、SEM、ICPにより、平均粒子径0.1μm、Si/(Si+Al+P)=0.06の物性を有するSAPO-34であることを確認した。
【0063】
比較例1
6.85 gのLudox HS-30(Aldrich社より市販)、193.86 gの水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)水溶液(水中35%、Aldrich社より市販)を含む溶液をテフロン(登録商標)ビーカーに調製した。この溶液に、24.11 gのアルミニウムイソプロポキシドを添加し、更に、53.27 gのリン酸(水中85%、Aldrich社より市販)を添加した。モル比で以下の組成:
0.6SiO2/Al2O3/4P2O5/8TEAOH/133H2O
を有する均質な混合物を得た。当該混合物をテフロン内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、200℃で40時間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、脱イオン水で洗浄を行い、100℃で12時間乾燥させ、粉末状の生成物を得た。当該試料は、XRD、SEM、ICPにより、平均粒子径0.7μm、Si/(Si+Al+P)=0.12の物性を有するSAPO-34であることを確認した。
【0064】
比較例2
5.78 gのLudox HS-30(Aldrich社より市販)、4.57 gの脱イオン水、及び80.7 gの水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)水溶液(水中35%、Aldrich社より市販)を含む溶液をテフロン(登録商標)ビーカーに調製した。この溶液に、20.03 gのアルミニウムイソプロポキシドを添加し、更に、22.11 gのリン酸(水中85%、Aldrich社より市販)を添加した。モル比で以下の組成:
0.6SiO2/Al2O3/2P2O5/4TEAOH/75H2O
を有する均質な混合物を得た。当該混合物をテフロン内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、180℃で40時間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、脱イオン水で洗浄を行い、100℃で12時間乾燥させ、粉末状の生成物を得た。当該試料は、XRD、SEM、ICPにより、平均粒子径1μm、Si/(Si+Al+P)=0.10の物性を有するSAPO-34であることを確認した。
【0065】
比較例3
3.18 gのLudox AS-40(Aldrich社より市販)、39.61 gの脱イオン水、及び35.58 gの水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)水溶液(水中35%、Aldrich社より市販)を含む溶液をテフロン(登録商標)ビーカーに調製した。この溶液に、29.44 gのアルミニウムイソプロポキシドを添加し、更に、35.57 gのリン酸(水中85%、Aldrich社より市販)を添加した。モル比で以下の組成:
0.3SiO2/Al2O3/P2O5/1.2TEAOH/55H2O
を有する均質な混合物を得た。当該混合物をテフロン内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、220℃で24時間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、脱イオン水で洗浄を行い、100℃で12時間乾燥させ、粉末状の生成物を得た。当該試料は、XRD、SEM、ICPにより、平均粒子径2.8μm、Si/(Si+Al+P)=0.10の物性を有するSAPO-34であることを確認した。
【0066】
比較例4
22.6 gのCondea Pural SBを60.9 gの脱イオン化水と混合してスラリーを生成した。このスラリーに19.8 gのリン酸(水中85%、Aldrich社より市販)を添加した。それらの添加は、撹拌しながら行い、均質な混合物を生成した。この均質な混合物に、10.3 gのLudox HS-30(Aldrich社より市販)を添加し、次に、26.2 gのトリエチルアミン(TEA)を、混合しながら添加し、均質な混合物を生成した。モル比で以下の組成:
0.6SiO2/Al2O3/P2O5/3TEA/50H2O
を有する混合物を得た。この均質な混合物を、テフロン内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、200℃で24時間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、脱イオン水で洗浄を行い、100℃で12時間乾燥させ、粉末状の生成物を得た。当該試料は、XRD、SEM、ICPにより、平均粒子径8μm、Si/(Si+Al+P)=0.08の物性を有するSAPO-34であることを確認した。
【0067】
3)触媒性能評価
反応には常圧固定層流通反応装置を用い、内径10mmの石英反応管に触媒500mgと石英砂500mgの混合物を充填した。エタノール及び窒素を、エタノールの空間速度0.5h-1でエタノール30体積%と窒素70体積%となるように蒸発器を通じて反応器に供給し、400℃、0.1MPaで反応を行った。反応管出口ガスをガスクロマトグラフィーで測定し、プロピレン収率(炭素モル%)を求めた。結果を表1に示す。表中には、反応開始3時間後のプロピレン収率、10時間後のプロピレン収率、及び3時間後に対する10時間後のプロピレン収率の保持率を示す。
【0068】
【表1】

【0069】
4)修飾ゼオライト触媒の測定
触媒の粒径はSEM撮影により平均値を求めた。触媒中のSi、Al及びPの元素分析は誘導結合プラズマ(ICP)で確認した。SAPO-34について開示している米国特許第4,440,871号に示されているX線回折の構造パターンと比較することにより、SAPO-34が生成していることを確認した。ゼオライト触媒の比表面積は窒素吸着により測定した。
5)修飾ゼオライト触媒の合成
【0070】
実施例A
6.85 gのLudox HS-30(Aldrich社より市販)、193.86 gの水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)水溶液(水中35%、Aldrich社より市販)を含む溶液をテフロン(登録商標)ビーカーに調製した。この溶液に、24.11 gのアルミニウムイソプロポキシドを添加し、更に、53.27 gのリン酸(水中85%、Aldrich社より市販)を添加した。モル比で以下の組成
0.6SiO2/Al2O3/4P2O5/8TEAOH/133H2O
を有する均質な混合物を得た。当該混合物をテフロン内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、180℃で60時間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、脱イオン水で洗浄を行い、100℃で12時間乾燥させ、粉末状の生成物を得た。当該試料は、XRD、SEM、ICPにより、平均粒子径0.4μm、Si/(Si+Al+P)=0.12の物性を有するSAPO-34であることを確認した。
【0071】
実施例7
実施例Aで得られたSAPO-34を以下の方法により、シラン化合物で処理した。すなわち、まず、1gのSAPO-34に13.4mLのトルエン、8.8mLのメトキシトリメチルシラン(MTMS)を添加し、温度80℃で6時間反応させた。その後、トルエン、エタノール、水で洗浄し、空気中600℃で5時間焼成した。上記の一連の作業を再度繰り返した。
【0072】
この粉末を16〜32メッシュに成型して、シリル化SAPO-34触媒を得た。触媒性能評価には、常圧固定層流通反応装置を用い、内径10mmの石英反応管に触媒500mgを充填した。エタノール及び窒素を、エタノールの空間速度1.5h-1でエタノール50体積%と窒素50体積%となるように、蒸発器を通じて反応器に供給し、400℃、0.1MPaで反応を行った。ガスクロマトグラフィーで生成物の分析を行った。反応開始1時間後のエチレン、プロピレン、ブテン、C1〜C4アルカン、C5以上の炭化水素の収率(炭素モル%)を表2に示す。
【0073】
実施例8
実施例Aで得られたSAPO-34を以下の方法により、金属塩で処理した。すなわち、まず、1.8gのSAPO-34を0.64gの硝酸ランタンを溶解したエタノール溶液30mLに添加し、温度50℃、減圧下でエタノールを留去した。その後、空気中550℃で10時間焼成した。この粉末を16〜32メッシュに成型して、La修飾SAPO-34触媒を得た。実施例7と同様の方法で触媒性能評価を行った。反応開始1時間後のエチレン、プロピレン、ブテン、C1〜C4アルカン、C5以上の炭化水素の収率(炭素モル%)を表2に示す。
【0074】
実施例9
実施例Aで得られたSAPO-34を以下の方法により、金属塩で処理した。すなわち、まず、1.97gのSAPO-34を0.57gの硝酸イットリウムを溶解したエタノール溶液30mLに添加し、温度50℃、減圧下でエタノールを留去した。その後、空気中550℃で10時間焼成した。この粉末を16〜32メッシュに成型して、Y修飾SAPO-34触媒を得た。実施例7と同様の方法で触媒性能評価を行った。反応開始1時間後のエチレン、プロピレン、ブテン、C1〜C4アルカン、C5以上の炭化水素の収率(炭素モル%)を表2に示す。
【0075】
比較例5
実施例Aで得られたSAPO-34の粉末を16〜32メッシュに成型して、SAPO-34触媒を得た。実施例7と同様の方法で触媒性能評価を行った。反応開始1時間後のエチレン、プロピレン、ブテン、C1〜C4アルカン、C5以上の炭化水素の収率(炭素モル%)を表2に示す。
【0076】
実施例B
5.78 gのスノーテクスS(日産化学社より市販)、4.57 gの脱イオン水、及び80.7 gの水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)水溶液(水中35%、Aldrich社より市販)を含む溶液をテフロンビーカーに調製した。この溶液に、20.03 gのアルミニウムイソプロポキシドを添加し、更に、22.11 gのリン酸(水中85%、Aldrich社より市販)を添加した。モル比で以下の組成
0.6SiO2/Al2O3/2P2O5/4TEAOH/75H2O
を有する溶液を得た。当該溶液を90℃の恒温槽に移し、水分を除去して乾燥ゲルを得た。乾燥ゲルと脱イオン水を互いに接触させないように、テフロン(登録商標)内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、180℃で72時間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、脱イオン水で洗浄を行い、100℃で12時間乾燥させ、粉末状の生成物を得た。当該試料は、XRD、SEM、ICPにより、平均粒子径0.1μm、Si/(Si+Al+P)=0.14の物性を有するSAPO-34であることを確認した。
【0077】
実施例10
実施例Bで得られたSAPO-34を以下の方法により、シラン化合物で処理した。すなわち、まず、1.12gのSAPO-34に6.7mLのトルエン、2.36mLのテトラメトキシシラン(TMOS)を添加し、温度80℃で6時間反応させた。その後、トルエン、エタノール、水で洗浄し、空気中600℃で5時間焼成した。上記の一連の作業を再度繰り返した。
【0078】
この粉末を16〜32メッシュに成型して、シリル化SAPO-34触媒を得た。触媒性能評価には、常圧固定層流通反応装置を用い、内径10mmの石英反応管に触媒500mgを充填した。エタノール及び窒素を、エタノールの空間速度0.5h-1でエタノール30体積%と窒素70体積%となるように、蒸発器を通じて反応器に供給し、400℃、0.1MPaで反応を行った。ガスクロマトグラフィーで生成物の分析を行った。反応開始3時間後のエチレン、プロピレン、ブテン、C1〜C4アルカン、C5以上の炭化水素の収率(炭素モル%)を表2に示す。
【0079】
比較例6
実施例Bで得られたSAPO-34の粉末を16〜32メッシュに成型して、SAPO-34触媒を得た。実施例10と同様の方法で触媒性能評価を行った。反応開始3時間後のエチレン、プロピレン、ブテン、C1〜C4アルカン、C5以上の炭化水素の収率(炭素モル%)を表2に示す。
【0080】
実施例C
6.85 gのLudox HS-30(Aldrich社より市販)、193.86 gの水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)水溶液(水中35%、Aldrich社より市販)を含む溶液をテフロン(登録商標)ビーカーに調製した。この溶液に、24.11 gのアルミニウムイソプロポキシドを添加し、更に、53.27 gのリン酸(水中85%、Aldrich社より市販)を添加した。モル比で以下の組成
0.6SiO2/Al2O3/4P2O5/8TEAOH/133H2O
を有する均質な混合物を得た。当該混合物をテフロン内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、180℃で16時間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、脱イオン水で洗浄を行い、100℃で12時間乾燥させ、粉末状の生成物を得た。当該試料は、XRD、SEM、ICPにより、平均粒子径0.5μm、Si/(Si+Al+P)=0.09の物性を有するSAPO-34であることを確認した。
【0081】
実施例11
実施例Cで得られたSAPO-34を以下の方法により、シラン化合物で処理した。すなわち、まず、2.00gのSAPO-34に26.8mL のトルエン、17.6mLのメトキシトリメチルシラン(MTMS)を添加し、温度80℃で6時間反応させた。その後、トルエン、エタノール、水で洗浄し、空気中600℃で5時間焼成した。上記の一連の作業を再度繰り返した。
【0082】
この粉末を16〜32メッシュに成型して、シリル化SAPO-34触媒を得た。実施例10と同様の方法で触媒性能評価を行った。反応開始3時間後のエチレン、プロピレン、ブテン、C1〜C4アルカン、C5以上の炭化水素の収率(炭素モル%)を表2に示す。
【0083】
比較例7
実施例Cで得られたSAPO-34の粉末を16〜32メッシュに成型して、SAPO-34触媒を得た。実施例10と同様の方法で触媒性能評価を行った。反応開始3時間後のエチレン、プロピレン、ブテン、C1〜C4アルカン、C5以上の炭化水素の収率(炭素モル%)を表2に示す。
【0084】
実施例D
2.98 gのスノーテクスS(日産化学社より市販)、8.40 gの脱イオン水、及び80.69 gの水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)水溶液(水中35%、Aldrich社より市販)を含む溶液をテフロン(登録商標)ビーカーに調製した。この溶液に、20.07 gのアルミニウムイソプロポキシドを添加し、更に、22.12 gのリン酸(水中85%、Aldrich社より市販)を添加した。モル比で以下の組成
0.3SiO2/Al2O3/2P2O5/4TEAOH/77H2O
を有する均質な混合物を得た。当該混合物を90℃の恒温槽に移し、水分を除去して乾燥ゲルを得た。乾燥ゲルと脱イオン水を互いに接触させないように、テフロン内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、180℃で72時間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、脱イオン水で洗浄を行い、100℃で12時間乾燥させ、粉末状の生成物を得た。当該試料は、XRD、SEM、ICPにより、平均粒子径0.1μm、Si/(Si+Al+P)=0.08の物性を有するSAPO-34であることを確認した。
【0085】
実施例12
実施例Dで得られたSAPO-34を以下の方法により、シラン化合物で処理した。すなわち、まず、1.3gのSAPO-34に17.4mLのトルエン、11.4mLのメトキシトリメチルシラン(MTMS)を添加し、温度80℃で6時間反応させた。その後、トルエン、エタノール、水で洗浄し、空気中600℃で5時間焼成した。上記の一連の作業を再度繰り返した。
【0086】
この粉末を16〜32メッシュに成型して、シリル化SAPO-34触媒を得た。触媒性能評価には、常圧固定層流通反応装置を用い、内径10mmの石英反応管に触媒500mgを充填した。エタノール及び窒素を、エタノールの空間速度0.6h-1でエタノール30体積%と窒素70体積%となるように、蒸発器を通じて反応器に供給し、400℃、0.1MPaで反応を行った。ガスクロマトグラフィーで生成物の分析を行った。反応開始3時間後のエチレン、プロピレン、ブテン、C1〜C4アルカン、C5以上の炭化水素の収率(炭素モル%)を表2に示す。
【0087】
比較例8
実施例Dで得られたSAPO-34の粉末を16〜32メッシュに成型して、SAPO-34触媒を得た。実施例12と同様の方法で触媒性能評価を行った。反応開始3時間後のエチレン、プロピレン、ブテン、C1〜C4アルカン、C5以上の炭化水素の収率(炭素モル%)を表2に示す。
【0088】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径<1μm;及び
粒径(μm)×[Si/(Si+Al+P)]×1000≦80;
(式中、[Si/(Si+Al+P)]はモル比である)
の条件を満たすリン酸塩系ゼオライト触媒。
【請求項2】
0.07≦Si/(Si+Al+P)≦0.12
(式中、Si/(Si+Al+P)はモル比である)
の条件を満たす、請求項1に記載のリン酸塩系ゼオライト触媒。
【請求項3】
リン酸塩系ゼオライト触媒がSAPO-34である、請求項1または2に記載のリン酸塩系ゼオライト触媒。
【請求項4】
エタノール及び/又はエチレンをプロピレンに変換するための、請求項1〜3のいずれかに記載のリン酸塩系ゼオライト触媒。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のリン酸塩系ゼオライト触媒の存在下でエタノール及び/又はエチレンをプロピレンに変換することを含む、プロピレンの製造方法。
【請求項6】
酸素8員環で規定される細孔入口を有するゼオライト触媒であって、前記触媒の外表面がシラン化合物又は金属塩で修飾されているゼオライト触媒。
【請求項7】
ゼオライト触媒がリン酸塩系ゼオライト触媒である、請求項6に記載のゼオライト触媒。
【請求項8】
ゼオライト触媒がチャバサイト型構造を有する、請求項6又は7に記載のゼオライト触媒。
【請求項9】
ゼオライト触媒がSAPO-34である、請求項6〜8のいずれかに記載のゼオライト触媒。
【請求項10】
外表面がシラン化合物で修飾されており、前記シラン化合物がメトキシトリメチルシラン又はテトラメトキシシランである、請求項6〜9のいずれかに記載のゼオライト触媒。
【請求項11】
外表面が金属塩で修飾されており、前記金属塩が硝酸ランタン又は硝酸イットリウムである、請求項6〜9のいずれかに記載のゼオライト触媒。
【請求項12】
粒径<1μm;及び
粒径(μm)×[Si/(Si+Al+P)]×1000≦80;
(式中、[Si/(Si+Al+P)]はモル比である)
の条件を満たす、請求項6〜11のいずれかに記載のゼオライト触媒。
【請求項13】
0.07≦Si/(Si+Al+P)≦0.12
(式中、Si/(Si+Al+P)はモル比である)
の条件を満たす、請求項12に記載のゼオライト触媒。
【請求項14】
メタノール、エタノール、及び/又はエチレンをプロピレンに変換するための、請求項6〜13のいずれかに記載のゼオライト触媒。
【請求項15】
請求項6〜14のいずれかに記載のゼオライト触媒の存在下でメタノール、エタノール及び/又はエチレンをプロピレンに変換することを含む、プロピレンの製造方法。

【公開番号】特開2012−20209(P2012−20209A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157881(P2010−157881)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 セルロース系バイオマスエタノールからプロピレンを製造するプロセス開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】