説明

プロピレン及びエチレンの製造方法

【課題】炭化水素を原料とし、プロピレン及びエチレンを製造する方法であって、触媒活性の持続性に優れたプロピレン及びエチレン製造方法を提供する。
【解決手段】炭化水素原料を接触改質反応させてプロピレン及びエチレンを生成するに当たり、SiO/Alモル比が20〜65である結晶性アルミノシリケートを、リン/アルミニウムの原子数比が0.4〜0.8となるようにリン化合物で修飾し、600℃〜850℃で焼成した、リン担持結晶性アルミノシリケート触媒の存在下で反応させることを特徴とするプロピレン及びエチレンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン及びエチレン製造方法に関するものである。更に詳しくは本発明は、ブタン等の気体状炭化水素或いはナフサ等の液状炭化水素を原料とし、効率良くプロピレン及びエチレンを製造することを可能とすると共に、触媒活性の持続性に優れたプロピレン及びエチレンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロピレン及びエチレンは、化学品原料として重要な物質である。従来、プロピレン及びエチレンは、ブタン等の気体状炭化水素或いはナフサ等の液状炭化水素を原料とし、反応温度800〜850℃で水蒸気雰囲気下加熱分解する方法(以下、熱分解法と記載する。)により広く製造されている。熱分解法では、プロピレン及びエチレンの合計収率が原料に含まれる炭素原子数を基準として約47%、また、プロピレン/エチレンの比がモル比で0.5〜0.6である。しかしながら、この方法では、高い反応温度を必要とするためエネルギーの消費が多く、また、プロピレン及びエチレンの合計収率向上及びプロピレン/エチレンの比の制御が困難である。
【0003】
化学産業において省エネルギーのために、熱分解法より低温で、ブタン等の気体状炭化水素或いはナフサ等の液状炭化水素からプロピレン及びエチレンを高い収率で製造することを可能とする技術の開発、また、需要変動に応じてプロピレン/エチレンの比を制御できる技術の開発が望まれている。このため、固体触媒を用いた炭化水素からのプロピレンおよびエチレン製造プロセスいわゆる接触分解法が種々検討されている。これまで、ゼオライト(結晶性アルミノシリケート)等の固体酸を触媒に用いると炭化水素の分解を、熱分解法に比べ、より低温で進行させることができるうえに、より高いプロピレン/エチレン比が得られることが分かっている。固体酸触媒の中でも、ZSM−5ゼオライトは高い触媒能を有し、分解温度を熱分解法に比べ約200℃も低温化することができる。
【0004】
しかしながら、ZSM−5等固体酸触媒には、反応の進行につれ触媒表面上に炭素が析出・堆積し、急激に失活するという大きな欠点がある。この炭素の析出・堆積の抑制には水蒸気の共存が効果的であることが知られており、このため工業的にはこの種の分解反応はスチーム流通下でなされるのが通常となっている。ところが、スチーム流通下ではZSM-5を始めとするゼオライトはその骨格からアルミニウムを脱離し、急激に失活し長時間使用できないという、工業的には致命的ともいえる大きな欠点がある。したがって、スチーム流通下でも長時間活性を維持し失活し難い、いわゆる長寿命のゼオライト触媒、とくにZSM−5触媒の開発が最重要課題となっている。
【0005】
特許文献1には、酸量およびZSM−5の結晶サイズを特定の範囲に制御した、ZSM−5触媒を用いたナフサの接触分解法が報告されている。この方法では、プロピレン及びエチレンの合計収率が約45質量%であり、必ずしも効率的にプロピレン及びエチレンを得ることができてはいない。加えて、一般にシリカ及びアルミナ以外の物質を担持していない、いわゆる無修飾のZSM−5触媒は、前記の炭素析出や水蒸気で急激に劣化することが知られており、触媒の長寿命化が重要な課題となっている。しかし長時間連続的にプロピレン及びエチレンが得られるかどうか、すなわち触媒寿命については一切報告されていない。
【0006】
特許文献2及び3には、希土類元素を担持したZSM−5によるプロピレン及びエチレンの製造方法が報告されている。ランタンやセリウム等の希土類元素を担持することにより、プロピレン収率約20重量%、エチレン収率約48重量%に向上することが報告されている。しかし触媒使用時間が数時間と短く、工業触媒に重要な長時間にわたる活性の持続性が報告されておらず、実用触媒開発の指標となっていない。
【0007】
特許文献4には、酸化マグネシウム、シュウ酸カルシウム等の非水溶性金属塩とリン酸化合物をふくむZSM−5を触媒としたプロピレン及びエチレンの製造方法が報告されている。原料転化率が80%以下であり、プロピレン及びエチレンの合計収率が40%未満と低い。
【0008】
特許文献5〜8には、アルカリ土類金属、希土類元素及びリンを担持したZSM−5によるプロピレン及びエチレンの製造方法が報告されている。カルシウム、ランタン、リンを担持することにより、反応時間15時間後の原料転化率85%、プロピレン収率約36%、エチレン収率約18%となることが報告されている。しかしながら、接触分解反応時における接触時間(W/F)が25触媒−g/反応物−mol・hrであり、反応物に対して、大量の触媒を使用している。触媒劣化の速い触媒でも反応時間14時間で原料転化率約75%である(特許文献6、図3参照)。該実験条件では、工業的に実施可能な触媒活性の持続性が確立されているとは言えない。
【0009】
非特許文献1〜3には、リン化合物を担持したZSM−5によるプロピレン及びエチレンの製造方法が報告されている。シリカ/アルミナモル比が70のZSM−5にリンを0.7〜3重量%担持した触媒を用いることにより、1−ブテンの接触分解における触媒安定性の向上が報告されている。しかしながら、連続反応時間が12時間であり、工業的に有効な触媒活性の持続性が報告されていない。また、反応物である1−ブテンを窒素で希釈しており、長時間連続的では炭素堆積による触媒失活および触媒体積膨張による触媒成形体の崩壊が問題となる。実際、後述の比較例から分かるように、このシリカ/アルミナ=70のリン化合物修飾ZSM−5触媒では、長時間使用でかなりの活性劣化が認められた。
【0010】
非特許文献4には、リン化合物を担持したZSM−5によるプロピレン及びエチレンの製造方法が報告されている。シリカ/アルミナ比が25のZSM−5にリンを0.1〜6重量%担持した後500℃で焼成した触媒を用いることにより、ブタンの接触分解における触媒安定性の向上が報告されている。しかしながら、連続反応時間が10時間であり、工業的に有効な触媒活性の持続性が報告されていない。そのうえ、この触媒では焼成温度が低いため長時間使用できる安定なリン酸修飾とはなっていない。このため、この触媒は、反応物であるブタンを窒素で希釈して、反応条件を温和にして用いているが、このような水蒸気非共存下では炭素析出が激しいことがよく知られているので、長時間連続運転時の炭素堆積による触媒失活および触媒体積膨張による触媒成形体の崩壊の問題に解決を与えるものとはなっていないことが分かる。
【0011】
非特許文献5には、シリカ/アルミナ比が168のZSM−5にリンを0.1〜6重量%担持した触媒を用いた、ノルマルヘキサンの接触分解反応が報告されている。しかしながら、連続反応における触媒活性の持続性が報告されていないうえに、後述の比較例からも明らかなように、この種の触媒では反応時間の経過とともに活性劣化が顕著になる。
【0012】
非特許文献1〜5にリン化合物を担持したZSM−5を用いたプロピレン及びエチレンの製造方法が報告されているが、ZSM−5のシリカ/アルミナ比(モル比)とリン/アルミニウムの原子数比を連動してのリン酸化物修飾ZSM−5の調製が行われていない、すなわちリン酸化物による修飾方法や修飾量に問題があるため、窒素希釈条件下では炭素堆積による触媒失活および触媒体積膨張による触媒成形体の崩壊が起こるうえ、水蒸気希釈条件下では触媒は活性劣化を起こしやすく、長時間の活性持続性に大きな問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平6−346062号公報
【特許文献2】特開平11−180902号公報
【特許文献3】特開平11−253807号公報
【特許文献4】米国特許公開2007/0082809A1号公報
【特許文献5】特開2010−042343号公報
【特許文献6】特開2010−042344号公報
【特許文献7】特開2010−104878号公報
【特許文献8】特開2010−104909号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】N.Xue, X.Chen, L.Nie, X.Guo, W.Ding, Y.Chen, M.Gu, Z.Xie, Journal of Catalysis, 248(2007)20−28.
【非特許文献2】N.Xue, L.Nie, D.Fang, X.Guo, J.Shen, W.Ding, Y.Chen, Applied Catalysis A, 352(2009)87−94.
【非特許文献3】N.Xue, N.Liu, L.Nie, Y.Yu, M.Gu, L.Peng, X.Guo, W.Ding, Jounal of Molecular Catalysis A, 327(2010)12−19.
【非特許文献4】G.Jiang, L.Zhang, Z.Zhao, X.Zhou, A.Duan, C.Xu, J.Gao, Applied Catalysis A, 340(2008)176−182.
【非特許文献5】H.Vinek, G.Rumplmayr, J.A.Lercher, Journal of Catalysis, 115(1989)291−300.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、炭化水素原料を転換させてプロピレン及びエチレンを製造する方法であって、高温水蒸気条件下で触媒活性の持続性に優れたプロピレン及びエチレンの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上述の諸問題を解決すべく、永年、鋭意研究を積み重ねた結果、ZSM−5のシリカ/アルミナモル比とリン/アルミニウムの原子数比を連動して考え、特定のリンとアルミニウムの原子比のリンを含有するゼオライト触媒を用いることによって、炭化水素化合物を原料として触媒活性の持続性に優れたプロピレン及びエチレンの製造を可能にすることを見出し、この知見に基づき本発明をなすに至った。
【0017】
上記課題は以下の手段により解決された。
(1)炭化水素原料を接触改質反応させてプロピレン及びエチレンを生成するに当たり、SiO/Alモル比が20〜65である結晶性アルミノシリケートを、リン/アルミニウムの原子数比が0.4〜0.8となるようにリン化合物で修飾し、600℃〜850℃で焼成した、リン担持結晶性アルミノシリケート触媒の存在下で反応させることを特徴とするプロピレン及びエチレンの製造方法。
(2)前記結晶性アルミノシリケートがZSM−5ゼオライトである(1)に記載のプロピレン及びエチレンの製造方法。
(3)前記炭化水素原料が、炭素数2〜30の炭化水素である(1)または(2)に記載のプロピレン及びエチレンの製造方法。
(4)前記炭化水素原料が、ナフサまたは軽油である(1)〜(3)のいずれか1項に記載の方法。
(5)水蒸気存在下で接触改質反応させることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法。
(6)SiO/Alモル比が20〜65である結晶性アルミノシリケートを、リン/アルミニウムの原子数比が0.4〜0.8となるようにリン化合物で修飾し、600℃〜850℃で焼成した、炭化水素接触改質反応によるプロピレン及びエチレン製造用触媒。
(7)前記結晶性アルミノシリケートがZSM−5ゼオライトである(6)に記載のプロピレン及びエチレン製造用触媒。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、炭化水素化合物を原料とした接触改質反応であって、工業的実施に好適である、触媒活性の持続性に優れたプロピレン及びエチレンの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例2での反応時間に対する原料転化率を示すグラフである。
【図2】実施例2での反応時間に対する各生成物収率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、特定のリンとアルミニウムの原子比のリンを含有する結晶性アルミノシリケートを特定の温度で焼成した触媒を用いて、炭化水素を原料としてプロピレン及びエチレンを製造する方法であって、接触分解反応器内で、炭化水素及び触媒を反応させて、炭化水素からプロピレン及びエチレンを製造することを特徴とするものである。
【0021】
本発明で使用する触媒としては、リン化合物を含む結晶性アルミノシリケートが使用できる。該結晶性アルミノシリケートとしては、MFI型構造ゼオライトであるZSM−5が好ましい。また、該結晶性アルミノシリケートのSiO/Alモル比(以下、シリカ/アルミナモル比ともいう)は20〜65であり、好ましくは25〜60である。
【0022】
本発明において触媒の性能発現には、触媒にリン化合物を含有させることが必須である。リンの含有量は、触媒に含まれるリン/アルミニウムの原子数比が、0.4〜0.8、好ましくは0.5〜0.7、特に好ましくは0.6である。これらの値よりリン含有量が多いと触媒活性が低下し、これらの値よりリン含有量が少ないと触媒活性の劣化が問題となる。リンの含有量とは、触媒調製時及び接触分解反応時における結晶性アルミノシリケートに担持されているリン担持量である。
【0023】
リン化合物を担持する方法としては、例えばリン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸等の水溶液或いは有機溶媒溶液に結晶性アルミノシリケートを含浸、或いは、結晶性アルミノシリケート上に噴霧することによりできる。リン化合物を含む水溶液と結晶性アルミノシリケートの含浸或いは噴霧の後、乾燥、焼成の工程により触媒を製造することができる。触媒焼成温度は、600〜850℃、好ましくは700〜800℃である。これらの焼成温度より低いと触媒活性の劣化が問題となり、これらの焼成温度より高いと結晶性アルミノシリケートの結晶性が消失することが問題となる。焼成時間は特に制限はないが、30分〜10時間が好ましい。
接触分解反応、高温水蒸気処理或いは触媒焼成等の工程によりリン担持量が減少することがある。接触分解反応、高温水蒸気処理或いは触媒焼成等の工程により、好適なリンとアルミニウムの原子比のリン化合物を含有する結晶性アルミノシリケートが調製可能である。
【0024】
本発明の触媒の形状は特に限定されず、粉末や成形品等いずれの形状のものでもよい。また、本発明の触媒は結晶性アルミノシリケートおよびリン以外の成分、例えば、希土類元素、遷移金属、貴金属、アルカリ土類金属、アルカリ元素、ハロゲン元素等を含んでいてもよい。各種バインダーを用いた触媒成形或いはシリカ、アルミナ、石英砂等の物理混合による希釈も可能である。
【0025】
本発明で使用する炭化水素原料としては、常温、常圧でガス状または液状の炭化水素が使用できる。炭化水素は、パラフィン類(低級炭化水素を含む)或いはナフサ、軽油等の軽質炭化水素留分が好ましく使用できる。パラフィン類は、好ましくは炭素数2〜30、更に好ましくは炭素数4〜10である。ナフサの主成分は炭素数5〜11のパラフィン類(炭化水素)であり、軽油の主成分は炭素数12〜20のパラフィン類である。特に、炭素数5〜7のパラフィン類を主成分とする軽質ナフサは炭化水素原料として好ましく使用できる。後述の実施例で用いた炭素数6のノルマルヘキサンは軽質ナフサのモデル化合物である。また、炭化水素原料は、飽和炭化水素に限定されるものではなく、不飽和結合を有する炭化水素を含有するものでも使用でき、更に、芳香族成分を含有するものでも使用可能である。
【0026】
本発明で使用する接触分解反応器の様式は特に限定しないが、固定床、移動床、流動床等の反応器を使用し、上記本発明の触媒を充填した触媒層へ炭化水素原料を供給することにより行われる。このとき炭化水素原料は水蒸気、窒素、水素、ヘリウム、メタン或いは二酸化炭素等で希釈されていてもよい。これらの希釈剤の中でも特に水蒸気は、コーク成分の触媒上での生成を抑制し、触媒の活性を持続する効果があり好ましい。水蒸気の供給量は炭化水素原料に対して質量比で好ましくは0.01〜2、更に好ましくは0.3〜1.5である。反応温度は、通常350〜800℃、好ましくは500〜750℃、更に好ましくは600℃〜700℃である。800℃を超える反応温度でも実施可能であるが、高い反応温度であるためエネルギーの消費が多い。また、炭化水素原料が熱分解し、熱分解法によるプロピレン及びエチレンが得られると共にメタン及びコーク生成が多い。350℃以下では、十分な活性が得られないため、プロピレン及びエチレン製造が極めて少ない。
接触分解反応における原料炭化水素の流通(供給)量は通常の方法と特に異ならないが、前記触媒に対し、重量空間速度(WHSV)で0.1〜50/hrが好ましい。
【実施例】
【0027】
以下に本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、以下の実施例は、本発明の好適な例を具体的に説明したものであり、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0028】
実施例1(P担持ZSM−5、リン/アルミニウム原子数比=0.6、シリカ/アルミナモル比=60、触媒焼成温度600℃)
粉末状のプロトン型ZSM-5ゼオライト(シリカ/アルミナモル比=60、日揮触媒化成株式会社製、商品名H−ZSM−5)20gを、リン酸水素二アンモニウム水溶液(リン酸水素二アンモニウム0.88g(ナカライテクス株式会社製、純度99%以上)をイオン交換水100gで溶解したもの)に含浸し、40℃で1時間撹拌した。生成したスラリーを減圧下40〜60℃で撹拌しながら約1時間かけて水分を蒸発させ、白色の粉末を得た。得られた粉末を空気中120℃、12時間乾燥した後、空気流通下4時間かけて600℃まで昇温し、600℃で5時間焼成した。得られた白色粉末を0.5〜1mmに成形したものを触媒とした。触媒のリン担持量は1質量%であり、リン/アルミニウムの原子数比は0.6である。この触媒0.2gと希釈剤として石英砂1gを均一になるように内径10mmの石英製反応管に充填した。触媒層の上下には石英ウールを充填した。この固定床接触分解反応器に窒素を流しながら触媒層の温度を650℃まで昇温した。炭化水素原料としてノルマルヘキサン3.3mL(25℃における液体の体積)/hr、水2.2mL(25℃における液体の体積)/hr、窒素13mL(25℃における気体の体積)/minの流量で供給し(重量空間速度11/hr)、反応温度650℃にてノルマルヘキサンの接触分解反応を行った。反応物及び生成物の分析をガスクロマトグラフィーによって行った。
【0029】
以下の本発明の実施例では、生成物の収率および原料の転化率を次式により算出した。
生成物収率(C%)=(単位時間当たりに生成する各生成物に含まれる炭素原子のmol数/単位時間当たりに供給する原料に含まれる炭素原子のmol数)×100
原料転化率(%)=(1−単位時間当たりの未反応原料のmol数/単位時間当たりに供給する原料のmol数)×100
【0030】
反応開始1、15、及び48時間後における原料転化率及び各生成物収率を表1に示す。
【0031】
実施例2(P担持ZSM−5、リン/アルミニウム原子数比=0.6、シリカ/アルミナモル比=60、触媒焼成温度700℃)
粉末状のプロトン型ZSM-5ゼオライト(シリカ/アルミナモル比=60、日揮触媒化成株式会社製、商品名H−ZSM−5)20gを、リン酸水素二アンモニウム水溶液(リン酸水素二アンモニウム0.88g(ナカライテクス株式会社製、純度99%以上)をイオン交換水100gで溶解したもの)に含浸し、40℃で1時間撹拌した。生成したスラリーを減圧下40〜60℃で撹拌しながら約1時間かけて水分を蒸発させ、白色の粉末を得た。得られた粉末を空気中120℃、12時間乾燥した後、空気流通下4.5時間かけて700℃まで昇温し、700℃で5時間焼成した。得られた白色粉末を0.5〜1mmに成形したものを触媒とした。触媒のリン担持量は1質量%であり、リン/アルミニウムの原子数比は0.6である。この触媒0.2gと希釈剤として石英砂1gを均一になるように内径10mmの石英製反応管に充填した。触媒層の上下には石英ウールを充填した。この固定床接触分解反応器に窒素を流しながら触媒層の温度を650℃まで昇温した。炭化水素原料としてノルマルヘキサン3.3mL(25℃における液体の体積)/hr、水2.2mL(25℃における液体の体積)/hr、窒素13mL(25℃における気体の体積)/minの流量で供給し(重量空間速度11/hr)、反応温度650℃にてノルマルヘキサンの接触分解反応を行った。反応物及び生成物の分析をガスクロマトグラフィーによって行った。
【0032】
反応開始1、15、及び48時間後における原料転化率及び各生成物収率を表1に示す。原料転化率及び各生成物の収率の経時変化を図1及び図2に示す。
【0033】
実施例3(P担持ZSM−5、リン/アルミニウム原子数比=0.6、シリカ/アルミナモル比=60、触媒焼成温度800℃)
粉末状のプロトン型ZSM-5ゼオライト(シリカ/アルミナモル比=60、日揮触媒化成株式会社製、商品名H−ZSM−5)20gを、リン酸水素二アンモニウム水溶液(リン酸水素二アンモニウム0.88g(ナカライテクス株式会社製、純度99%以上)をイオン交換水100gで溶解したもの)に含浸し、40℃で1時間撹拌した。生成したスラリーを減圧下40〜60℃で撹拌しながら約1時間かけて水分を蒸発させ、白色の粉末を得た。得られた粉末を空気中120℃、12時間乾燥した後、空気流通下4.5時間かけて800℃まで昇温し、800℃で5時間焼成した。得られた白色粉末を0.5〜1mmに成形したものを触媒とした。触媒のリン担持量は1質量%であり、リン/アルミニウムの原子数比は0.6である。この触媒0.2gと希釈剤として石英砂1gを均一になるように内径10mmの石英製反応管に充填した。触媒層の上下には石英ウールを充填した。この固定床接触分解反応器に窒素を流しながら触媒層の温度を650℃まで昇温した。炭化水素原料としてノルマルヘキサン3.3mL(25℃における液体の体積)/hr、水2.2mL(25℃における液体の体積)/hr、窒素13mL(25℃における気体の体積)/minの流量で供給し、反応温度650℃にてノルマルヘキサンの接触分解反応を行った。反応物及び生成物の分析をガスクロマトグラフィーによって行った。
【0034】
反応開始1、15、及び48時間後における原料転化率及び各生成物収率を表1に示す。
【0035】
比較例1(P担持ZSM−5、リン/アルミニウム原子数比=1.2、シリカ/アルミナモル比=60、触媒焼成温度600℃)
粉末状のプロトン型ZSM-5ゼオライト(シリカ/アルミナモル比=60、日揮触媒化成株式会社製、商品名H−ZSM−5)20gを、リン酸水素二アンモニウム水溶液(リン酸水素二アンモニウム1.76g(ナカライテクス株式会社製、純度99%以上)をイオン交換水100gで溶解したもの)に含浸し、40℃で1時間撹拌した。生成したスラリーを減圧下40〜60℃で撹拌しながら約1時間かけて水分を蒸発させ、白色の粉末を得た。得られた粉末を空気中120℃、12時間乾燥した後、空気流通下4時間かけて600℃まで昇温し、600℃で5時間焼成した。得られた白色粉末を0.5〜1mmに成形したものを触媒とした。触媒のリン担持量は2質量%であり、リン/アルミニウムの原子比は1.2である。この触媒0.2gと希釈剤として石英砂1gを均一になるように内径10mmの石英製反応管に充填した。触媒層の上下には石英ウールを充填した。この固定床接触分解反応器に窒素を流しながら触媒層の温度を650℃まで昇温した。炭化水素原料としてノルマルヘキサン3.3mL(25℃における液体の体積)/hr、水2.2mL(25℃における液体の体積)/hr、窒素13mL(25℃における気体の体積)/minの流量で供給し(重量空間速度11/hr)、反応温度650℃にてノルマルヘキサンの接触分解反応を行った。反応物及び生成物の分析をガスクロマトグラフィーによって行った。
【0036】
反応開始1時間後及び15時間後における原料転化率及び各生成物収率を表2に示す。
【0037】
比較例2(P担持ZSM−5、リン/アルミニウム原子数比=0.3、シリカ/アルミナモル比=60、触媒焼成温度600℃)
粉末状のプロトン型ZSM-5ゼオライト(シリカ/アルミナモル比=60、日揮触媒化成株式会社製、商品名H−ZSM−5)20gを、リン酸水素二アンモニウム水溶液(リン酸水素二アンモニウム0.44g(ナカライテクス株式会社製、純度99%以上)をイオン交換水100gで溶解したもの)に含浸し、40℃で1時間撹拌した。生成したスラリーを減圧下40〜60℃で撹拌しながら約1時間かけて水分を蒸発させ、白色の粉末を得た。得られた粉末を空気中120℃、12時間乾燥した後、空気流通下4時間かけて600℃まで昇温し、600℃で5時間焼成した。得られた白色粉末を0.5〜1mmに成形したものを触媒とした。触媒のリン担持量は0.5質量%であり、リン/アルミニウムの原子比は0.3である。この触媒0.2gと希釈剤として石英砂1gを均一になるように内径10mmの石英製反応管に充填した。触媒層の上下には石英ウールを充填した。この固定床接触分解反応器に窒素を流しながら触媒層の温度を650℃まで昇温した。炭化水素原料としてノルマルヘキサン3.3mL(25℃における液体の体積)/hr、水2.2mL(25℃における液体の体積)/hr、窒素13mL(25℃における気体の体積)/minの流量で供給し(重量空間速度11/hr)、反応温度650℃にてノルマルヘキサンの接触分解反応を行った。反応物及び生成物の分析をガスクロマトグラフィーによって行った。
【0038】
反応開始1時間後及び15時間後における原料転化率及び各生成物収率を表2に示す。
【0039】
比較例3(ZSM−5、シリカ/アルミナモル比=60)
粉末状のプロトン型ZSM-5ゼオライト(シリカ/アルミナモル比=60、日揮触媒化成株式会社製、商品名H−ZSM−5)を0.5〜1mmに成形したものを触媒とした。この触媒0.2gと希釈剤として石英砂1gを均一になるように内径10mmの石英製反応管に充填した。触媒層の上下には石英ウールを充填した。この固定床接触分解反応器に窒素を流しながら触媒層の温度を650℃まで昇温した。炭化水素原料としてノルマルヘキサン3.3mL(25℃における液体の体積)/hr、水2.2mL(25℃における液体の体積)/hr、窒素13mL(25℃における気体の体積)/minの流量で供給し(重量空間速度11/hr)反応温度650℃にてノルマルヘキサンの接触分解反応を行った。反応物及び生成物の分析をガスクロマトグラフィーによって行った。
【0040】
反応開始1時間後及び15時間後における原料転化率及び各生成物収率を表2に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
表2から、リンを担持していないZSM-5ゼオライト(シリカ/アルミナモル比=60、比較例3)では、15時間後の原料転化率が顕著に低下する。即ち、触媒失活が顕著である。また、P担持ZSM-5(リン/アルミニウム原子数比=1.2、シリカ/アルミナモル比=60、触媒焼成温度600℃、比較例1)では、リン/アルミニウムの原子比が0.8より大きく、リン担持量が多いため初期の原料転化率が充分でない。また、P担持ZSM-5(リン/アルミニウム原子数比=0.3、シリカ/アルミナモル比=60、触媒焼成温度600℃、比較例2)では、リン/アルミニウムの原子比が0.4より小さく、リン担持量が少ないため、15時間後の原料転化率が低下し、工業的に有効な触媒活性の持続性が得られない。これに対し、実施例1〜3(表1)の製造方法は、P担持ZSM-5(リン/アルミニウム原子数比=0.6、シリカ/アルミナモル比=60、触媒焼成温度600〜800℃)の存在下で反応させたことにより、触媒活性の持続性に優れ、高いプロピレン及びエチレン収率を示した。実施例1〜3の比較から、P担持ZSM-5の触媒焼成温度は700〜800℃が好ましい。焼成温度700及び800℃のP担持ZSM-5(実施例2及び3)では反応開始48時間後においても高い原料転化率を示す。図1および図2からP担持ZSM-5(リン/アルミニウム原子数比=0.6、シリカ/アルミナモル比=60、触媒焼成温度700℃、実施例2)では、反応時間48時間に及ぶ触媒活性の持続性に優れ、工業的に有効な触媒活性の持続性が得られた。非特許文献4に示されるP担持ZSM-5(リン担持量0.1〜6質量%、シリカ/アルミナモル比25、触媒焼成温度500℃)では、触媒焼成温度が600℃よりも小さいため、充分な触媒活性の持続性が得られていない。
【0044】
実施例4(P担持ZSM−5、リン/アルミニウム原子数比=0.6、シリカ/アルミナモル比=31、触媒焼成温度600℃)
粉末状のプロトン型ZSM-5ゼオライト(シリカ/アルミナモル比=31、日揮触媒化成株式会社製、商品名H−ZSM−5)20gを、リン酸水素二アンモニウム水溶液(リン酸水素二アンモニウム1.76g(ナカライテクス株式会社製、純度99%以上)をイオン交換水100gで溶解したもの)に含浸し、40℃で1時間撹拌した。生成したスラリーを減圧下40〜60℃で撹拌しながら約1時間かけて水分を蒸発させ、白色の粉末を得た。得られた粉末を空気中120℃、12時間乾燥した後、空気流通下4時間かけて600℃まで昇温し、600℃で5時間焼成した。得られた白色粉末を0.5〜1mmに成形したものを触媒とした。触媒のリン担持量は2質量%であり、リン/アルミニウムの原子比は0.6である。この触媒0.2gと希釈剤として石英砂1gを均一になるように内径10mmの石英製反応管に充填した。触媒層の上下には石英ウールを充填した。この固定床接触分解反応器に窒素を流しながら触媒層の温度を650℃まで昇温した。炭化水素原料としてノルマルヘキサン3.3mL(25℃における液体の体積)/hr、水2.2mL(25℃における液体の体積)/hr、窒素13mL(25℃における気体の体積)/minの流量で供給し、反応温度650℃にてノルマルヘキサンの接触分解反応を行った。反応物及び生成物の分析をガスクロマトグラフィーによって行った。
【0045】
反応開始1時間後及び15時間後における原料転化率及び各生成物収率を表3に示す。
【0046】
比較例4(P担持ZSM−5、リン/アルミニウム原子数比=0.9、シリカ/アルミナモル比=31、触媒焼成温度600℃)
粉末状のプロトン型ZSM-5ゼオライト(シリカ/アルミナモル比=31、日揮触媒化成株式会社製、商品名H−ZSM−5)20gを、リン酸水素二アンモニウム水溶液(リン酸水素二アンモニウム2.64g(ナカライテクス株式会社製、純度99%以上)をイオン交換水100gで溶解したもの)に含浸し、40℃で1時間撹拌した。生成したスラリーを減圧下40〜60℃で撹拌しながら約1時間かけて水分を蒸発させ、白色の粉末を得た。得られた粉末を空気中120℃、12時間乾燥した後、空気流通下4時間かけて600℃まで昇温し、600℃で5時間焼成した。得られた白色粉末を0.5〜1mmに成形したものを触媒とした。触媒のリン担持量は3質量%であり、リン/アルミニウムの原子比は0.9である。この触媒0.2gと希釈剤として石英砂1gを均一になるように内径10mmの石英製反応管に充填した。触媒層の上下には石英ウールを充填した。この固定床接触分解反応器に窒素を流しながら触媒層の温度を650℃まで昇温した。炭化水素原料としてノルマルヘキサン3.3mL(25℃における液体の体積)/hr、水2.2mL(25℃における液体の体積)/hr、窒素13mL(25℃における気体の体積)/minの流量で供給し、反応温度650℃にてノルマルヘキサンの接触分解反応を行った。反応物及び生成物の分析をガスクロマトグラフィーによって行った。
【0047】
反応開始1時間後及び15時間後における原料転化率及び各生成物収率を表3に示す。
【0048】
比較例5(P担持ZSM-5、リン/アルミニウム原子数比=0.2、シリカ/アルミナモル比=31、触媒焼成温度600℃)
粉末状のプロトン型ZSM-5ゼオライト(シリカ/アルミナモル比=31、日揮触媒化成株式会社製、商品名H−ZSM−5)20gを、リン酸水素二アンモニウム水溶液(リン酸水素二アンモニウム0.44g(ナカライテクス株式会社製、純度99%以上)をイオン交換水100gで溶解したもの)に含浸し、40℃で1時間撹拌した。生成したスラリーを減圧下40〜60℃で撹拌しながら約1時間かけて水分を蒸発させ、白色の粉末を得た。得られた粉末を空気中120℃、12時間乾燥した後、空気流通下4時間かけて600℃まで昇温し、600℃で5時間焼成した。得られた白色粉末を0.5〜1mmに成形したものを触媒とした。触媒のリン担持量は0.5質量%であり、リン/アルミニウムの原子比は0.2である。この触媒0.2gと希釈剤として石英砂1gを均一になるように内径10mmの石英製反応管に充填した。触媒層の上下には石英ウールを充填した。この固定床接触分解反応器に窒素を流しながら触媒層の温度を650℃まで昇温した。炭化水素原料としてノルマルヘキサン3.3mL(25℃における液体の体積)/hr、水2.2mL(25℃における液体の体積)/hr、窒素13mL(25℃における気体の体積)/minの流量で供給し、反応温度650℃にてノルマルヘキサンの接触分解反応を行った。反応物及び生成物の分析をガスクロマトグラフィーによって行った。
【0049】
反応開始1時間後及び15時間後における原料転化率及び各生成物収率を表3に示す。
【0050】
比較例6(ZSM-5、シリカ/アルミナモル比=31)
粉末状のプロトン型ZSM-5ゼオライト(シリカ/アルミナモル比=31、日揮触媒化成株式会社製、商品名H−ZSM−5)を0.5〜1mmに成形したものを触媒とした。この触媒0.2gと希釈剤として石英砂1gを均一になるように内径10mmの石英製反応管に充填した。触媒層の上下には石英ウールを充填した。この固定床接触分解反応器に窒素を流しながら触媒層の温度を650℃まで昇温した。炭化水素原料としてノルマルヘキサン3.3mL(25℃における液体の体積)/hr、水2.2mL(25℃における液体の体積)/hr、窒素13mL(25℃における気体の体積)/minの流量で供給し、反応温度650℃にてノルマルヘキサンの接触分解反応を行った。反応物及び生成物の分析をガスクロマトグラフィーによって行った。
【0051】
反応開始1時間後及び10時間後における原料転化率及び各生成物収率を表3に示す。
【0052】
比較例7(P担持ZSM-5、リン/アルミニウム原子数比=0.6、シリカ/アルミナモル比=88、触媒焼成温度600℃)
粉末状のプロトン型ZSM-5ゼオライト(シリカ/アルミナモル比=88、日揮触媒化成株式会社製、商品名H−ZSM−5)20gを、リン酸水素二アンモニウム水溶液(リン酸水素二アンモニウム0.66g(ナカライテクス株式会社製、純度99%以上)をイオン交換水100gで溶解したもの)に含浸し、40℃で1時間撹拌した。生成したスラリーを減圧下40〜60℃で撹拌しながら約1時間かけて水分を蒸発させ、白色の粉末を得た。得られた粉末を空気中120℃、12時間乾燥した後、空気流通下4時間かけて600℃まで昇温し、600℃で5時間焼成した。得られた白色粉末を0.5〜1mmに成形したものを触媒とした。触媒のリン担持量は0.75質量%であり、リン/アルミニウムの原子比は0.6である。この触媒0.25gと希釈剤として石英砂1gを均一になるように内径10mmの石英製反応管に充填した。触媒層の上下には石英ウールを充填した。この固定床接触分解反応器に窒素を流しながら触媒層の温度を650℃まで昇温した。炭化水素原料としてノルマルヘキサン3.3mL(25℃における液体の体積)/hr、水2.2mL(25℃における液体の体積)/hr、窒素13mL(25℃における気体の体積)/minの流量で供給し、反応温度650℃にてノルマルヘキサンの接触分解反応を行った。反応物及び生成物の分析をガスクロマトグラフィーによって行った。
【0053】
反応開始1時間後及び15時間後における原料転化率及び各生成物収率を表3に示す。
【0054】
【表3】

【0055】
表3から、リンを担持していないZSM−5ゼオライト(比較例6)では、10時間後の原料転化率が顕著に低下する。即ち、触媒失活が顕著である。また、P担持ZSM−5(リン/アルミニウム原子数比=0.9、シリカ/アルミナモル比=31、触媒焼成温度600℃、比較例4)では、リン/アルミニウムの原子比が0.8より大きく、リン担持量が多いため初期の原料転化率が充分でない。また、P担持ZSM−5(リン/アルミニウム原子数比=0.2、シリカ/アルミナモル比=31、触媒焼成温度600℃)では、リン/アルミニウムの原子比が0.4より小さく、リン担持量が少ないため、15時間後の原料転化率が低下し、工業的に有効な触媒活性の持続性が得られない。シリカ/アルミナモル比が65より大きいZSM-5を用いたP担持ZSM-5(リン/アルミニウム原子数比=0.6、シリカ/アルミナモル比=88、触媒焼成温度600℃、比較例7)では、好適なリン/アルミニウム原子数比のリンを担持しても15時間後の原料転化率が低下し、工業的に有効な触媒活性の持続性が得られない。
これに対し、実施例4の製造方法は、P担持ZSM−5(リン/アルミニウム原子数比=0.6、シリカ/アルミナモル比=31、触媒焼成温度600℃)の存在下で反応させたことにより、15時間後の原料転化率が維持され、高いプロピレン及びエチレン収率を示し、工業的に有効な触媒活性の持続性が得られた。
【0056】
表1〜3からシリカ/アルミナモル比が20〜65であるZSM−5に、リン/アルミニウムの原子比が0.4〜0.8となるようにリンを担持したP担持ZSM−5を600〜850℃の温度で焼成した触媒の存在下で接触改質反応させることにより、工業的に有効な触媒活性の持続性に優れたプロピレン及びエチレン製造方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のプロピレン及びエチレンの製造方法によれば、炭化水素を原料とし、工業的に効率良くプロピレン及びエチレンを製造することを可能とすると共に、触媒活性の持続性に優れる。エチレン及びプロピレンを利用する種々の分野において、極めて有用な技術として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素原料を接触改質反応させてプロピレン及びエチレンを生成するに当たり、SiO/Alモル比が20〜65である結晶性アルミノシリケートを、リン/アルミニウムの原子数比が0.4〜0.8となるようにリン化合物で修飾し、600℃〜850℃で焼成した、リン担持結晶性アルミノシリケート触媒の存在下で反応させることを特徴とするプロピレン及びエチレンの製造方法。
【請求項2】
前記結晶性アルミノシリケートがZSM−5ゼオライトである請求項1に記載のプロピレン及びエチレンの製造方法。
【請求項3】
前記炭化水素原料が、炭素数2〜30の炭化水素である請求項1または2に記載のプロピレン及びエチレンの製造方法。
【請求項4】
前記炭化水素原料が、ナフサまたは軽油である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
水蒸気存在下で接触改質反応させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
SiO/Alモル比が20〜65である結晶性アルミノシリケートを、リン/アルミニウムの原子数比が0.4〜0.8となるようにリン化合物で修飾し、600℃〜850℃で焼成した、炭化水素接触改質反応によるプロピレン及びエチレン製造用触媒。
【請求項7】
前記結晶性アルミノシリケートがZSM−5ゼオライトである請求項6に記載のプロピレン及びエチレン製造用触媒。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−193127(P2012−193127A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56575(P2011−56575)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(革新的部材産業創出プログラム)「グリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発/触媒を用いる革新的ナフサ分解プロセス基盤技術開発/高性能ゼオライト触媒を用いる革新的ナフサ分解プロセスの開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】