説明

プローブポリヌクレオチド固定化担体の再生方法

【課題】プローブポリヌクレオチドが固定化された担体を分析に使用した後、プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしたターゲットポリヌクレオチドを除去して、再生する手段を提供する。
【解決手段】プローブポリヌクレオチドが固定化された担体を用いてポリヌクレオチド試料を分析する方法において該担体を再生する方法であって、ターゲットポリヌクレオチドがプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズした担体に、保湿剤の少なくとも1種を含む水性分散液を塗布する工程、および該担体を洗浄する工程を含む、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブポリヌクレオチドが固定化された担体の再生方法、ならびにそのための試薬およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な生物の遺伝子構造を明らかにするのみならず、その遺伝子機能をゲノムスケールで解明しようとする試みが行われつつあり、遺伝子機能を効率的に解析するための技術開発も急速に進んでいる。マイクロアレイは、スライドガラス等の基板にDNAなどのポリヌクレオチドを所定の領域毎に多数整列固定させた高密度のアレイであり、核酸の塩基配列の決定、並びに遺伝子の発現、変異、多型性などの同時解析に非常に有用である。このマイクロアレイを用いた遺伝子情報の解析は、創薬研究、疾病の診断や予防法の開発などに極めて有用であるため、マイクロアレイの作製技術および得られたデータの解析システムにより一層の開発が望まれている。
【0003】
マイクロアレイを用いた検出に際しては、まず担体表面に高密度に整列したプローブポリヌクレオチドに対して、放射性同位体や蛍光色素で標識したポリヌクレオチド試料をハイブリダイズさせる。このとき、ターゲットポリヌクレオチド試料中の、プローブポリヌクレオチドと相補的な塩基配列をもつ分子は、プローブポリヌクレオチドと相補的にハイブリダイズする。次いで、このハイブリダイズしているターゲットポリヌクレオチド分子上の標識に由来するシグナルを測定し、ハイブリダイズされたプローブポリヌクレオチドを同定する。具体的には、RIや蛍光イメージスキャナーでマイクロアレイ上の放射線強度または蛍光強度を測定し、そして得られた画像データを解析処理する。従って、マイクロアレイによれば、数千〜数万個の分子を同時にハイブリダイズさせて検出することができ、微量の試料で短時間のうちに大量の遺伝子情報を得ることができる。
【0004】
マイクロアレイにおいてプローブポリヌクレオチドを高密度かつ強固に固定化するため、例えば、担体表面に、ポリヌクレオチドと共有結合を形成する活性エステル基等の反応活性基を導入して、プローブポリヌクレオチドを共有結合を介して固定化させること(特許文献1〜3参照)などが報告されている。
【0005】
マイクロアレイは高価であることから、ターゲットポリヌクレオチドをハイブリダイズさせて分析した後、ハイブリダイズしたポリヌクレオチドを除去して再生し、再利用することが望まれる。しかし、プローブポリヌクレオチドに一度ハイブリダイズしたポリヌクレオチドを完全に除去することは困難であり、従ってマイクロアレイの再利用は実質的に不可能であった。
【0006】
【特許文献1】WO 00/22108
【特許文献2】WO 01/75447
【特許文献3】WO 02/12891
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、プローブポリヌクレオチドが固定化された担体を分析に使用した後、プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしたターゲットポリヌクレオチドを除去して、再生する手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために検討を行った結果、プローブポリヌクレオチドが固定化された担体にポリヌクレオチド試料を接触させてターゲットポリヌクレオチドをハイブリダイズさせ、未反応のポリヌクレオチドを除去した後、保湿剤、好ましくはゲル化剤および糖質からなる群から選択される少なくとも1種を含む水性分散液を担体に塗布することにより、その後の担体洗浄工程においてターゲットポリヌクレオチドが効率的に除去されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)プローブポリヌクレオチドが固定化された担体を用いてポリヌクレオチド試料を分析する方法において該担体を再生する方法であって、
ターゲットポリヌクレオチドがプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズした担体に、保湿剤を含む水性分散液を塗布する工程、および
該担体を洗浄する工程
を含む、前記方法。
(2)保湿剤がゲル化剤および糖質からなる群から選択される少なくとも1種である、(1)記載の方法。
(3)担体上に固定化されたプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしたターゲットポリヌクレオチドを除去する方法であって、
ターゲットポリヌクレオチドがプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズした担体に、保湿剤を含む水性分散液を塗布する工程、および
該担体を洗浄する工程を含む、前記方法。
(4)保湿剤がゲル化剤および糖質からなる群から選択される少なくとも1種である、(3)記載の方法。
【0010】
(5)プローブポリヌクレオチドが固定化された担体を用いてポリヌクレオチド試料を分析する方法であって、
a)担体に固定化されたプローブポリヌクレオチドに、ポリヌクレオチド試料を接触させてポリヌクレオチド試料に含まれるターゲットポリヌクレオチドをプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズさせる工程、
b)未反応のポリヌクレオチドを除去する工程、
c)保湿剤を含む水性分散液を担体に塗布する工程、および
d)ハイブリダイゼーションに基づくシグナルを測定する工程
を含む前記方法。
(6)保湿剤がゲル化剤および糖質からなる群から選択される少なくとも1種である、(5)記載の方法。
(7)(5)または(6)に記載のd)の工程の後に担体を洗浄することにより、担体を再生する方法。
(8)プローブポリヌクレオチドが固定化された担体を用いてポリヌクレオチド試料を分析する方法において担体の再生を促進するための試薬であって、保湿剤を含む水性分散液からなる前記試薬。
(9)保湿剤がゲル化剤および糖質からなる群から選択される少なくとも1種である、(8)記載の試薬。
(10)担体に固定化されたプローブポリヌクレオチドにポリヌクレオチド試料を接触させ、ポリヌクレオチド試料に含まれるターゲットポリヌクレオチドをプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーションに基づくシグナルを測定することによりポリヌクレオチド試料を分析するためのキットであって、(8)または(9)に記載の試薬を含む前記キット。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、プローブポリヌクレオチドが固定化された担体を用いて分析を行った後、該担体を再生して再利用することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
一実施形態において本発明は、プローブポリヌクレオチドが固定化された担体を用いてポリヌクレオチド試料を分析する方法において該担体を再生する方法であって、
ターゲットポリヌクレオチドがプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズした担体を、保湿剤、好ましくはゲル化剤および糖質からなる群から選択される少なくとも1種を含む水性分散液を塗布する工程、および該担体を洗浄する工程を含む、前記方法に関する。
【0013】
本発明において担体、すなわちプローブポリヌクレオチドが固定化された担体を再生するとは、担体上に固定化されたプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしたターゲットポリヌクレオチドを除去することをさす。これにより担体を再度分析に使用することができる。
【0014】
従って一実施形態において、本発明は、担体上に固定化されたプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしたターゲットポリヌクレオチドを除去する方法であって、
ターゲットポリヌクレオチドがプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズした担体を、保湿剤、好ましくはゲル化剤および糖質からなる群から選択される少なくとも1種を含む水性分散液を塗布する工程、および該担体を洗浄する工程を含む、前記方法に関する。
【0015】
換言すれば本発明は、担体上に固定化されたプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしたターゲットポリヌクレオチドの除去を促進する方法であって、
ターゲットポリヌクレオチドがプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズした担体を、保湿剤、好ましくはゲル化剤および糖質からなる群から選択される少なくとも1種を含む水性分散液を塗布する工程を含む、前記方法に関する。
【0016】
本明細書においてポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチドも包含され、DNAおよびRNAを含む核酸、ならびに核酸誘導体も包含される。DNAには、一本鎖DNAおよび二本鎖DNAが包含される。核酸誘導体の例としては、リン酸ジエステル部位を修飾した人工核酸;フラノース部位のグリコシル結合やヒドロキシル基を修飾した人工核酸;核酸塩基部位を修飾した人工核酸;および糖・リン酸骨格以外の構造を利用した人工核酸などが挙げられ、より具体的には、リン酸部位の酸素原子を硫黄原子で置換したホスホロチオエート型、ホスホロジチオエート型、ホスホロジアミデート型、メチルホスホネート型またはメチルホスホノチオエート型の人工核酸;フラノース環上の置換基修飾型、糖環骨格が1炭素増炭したピラノース型、または多環式糖骨格型の人工核酸;ピリミジンC−5位修飾塩基型、プリンC−7位修飾塩基型、または環拡張修飾塩基型の人工核酸などが挙げられる。ならびにそれらに標識が付加されたもの、また、担体に固定化するために反応性の官能基が付加されたものも包含される。
【0017】
本明細書においてプローブポリヌクレオチドは、当技術分野で通常用いられる意味を有し、目的遺伝子を検出するために用いられるポリヌクレオチドであって、目的遺伝子に対応するポリヌクレオチドまたはその断片と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドをさす。プローブポリヌクレオチドとしては、通常、合成オリゴヌクレオチド、cDNAおよびゲノムDNA、それらの断片、ならびにそれらを変性させたもの(例えば、一本鎖を二本鎖に変性させたもの)等が用いられる。プローブポリヌクレオチドは、通常20〜5000塩基長、好ましくは20〜1500塩基長を有する。
【0018】
本明細書においてターゲットポリヌクレオチドは、当技術分野で通常用いられる意味を有し、検出対象であるポリヌクレオチドをさす。ターゲットは標的と称される場合もある。通常、プローブにハイブリダイズさせる被検試料由来のポリヌクレオチドおよびそれを基にして酵素的に合成されたポリヌクレオチド、具体的には、mRNA、cDNA、aRNA、それらの断片、ならびにそれらを変性させたもの等が用いられる。
【0019】
ハイブリダイズまたはハイブリダイゼーションは、当技術分野で通常用いられる意味を有し、相補的な配列を持つポリヌクレオチド同士、例えば、一本鎖のDNA同士、一本鎖のRNA同士、または一本鎖のDNAと一本鎖のRNAが適切な条件下で二本鎖を形成することをいう。
【0020】
プローブポリヌクレオチドが固定化された担体を用いてポリヌクレオチド試料を分析する方法は、当技術分野で慣用の分析方法をさし、通常、以下の工程によって実施される:
担体に固定化されたプローブポリヌクレオチドに、ポリヌクレオチド試料を接触させてポリヌクレオチド試料に含まれるターゲットポリヌクレオチドをプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズさせる工程、未反応のポリヌクレオチドを除去する工程、ハイブリダイゼーションに基づくシグナルを測定する工程。
【0021】
ポリヌクレオチド試料は、担体上に固定化されたプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズするターゲットポリヌクレオチドを含みうる試料であれば特に制限されない。例えば、血液、血清、尿、涙、細胞、器官、組織、骨、骨髄、リンパ、リンパ節、滑液組織、軟骨細胞、滑液マクロファージ、内皮細胞、皮膚、これらの抽出物および破砕物、ならびに培養細胞、胚細胞、幹細胞、動物細胞抽出物、植物抽出物、原核細胞抽出物および真核単細胞抽出物等の生物学的試料が挙げられる。ポリヌクレオチド試料には、上記の生物学的試料に由来する試料、例えば、特定の核酸が増幅された試料等も包含される。通常、ポリヌクレオチド試料として、含まれるポリヌクレオチドが標識されたものを用いることにより、ハイブリダイゼーションを検出する。上記生物学的試料およびこれに由来する試料を、SSC(saline-sodium citrate)などの水性媒体に溶解または分散することにより、ポリヌクレオチド試料(以下、ハイブリダイゼーション溶液と称する場合もある)を調製することができる。
【0022】
ハイブリダイゼーションに基づくシグナルを測定するとは、換言すれば、プローブポリヌクレオチドとターゲットポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを示すシグナル、通常、標識に基づくシグナルを測定することをさし、得られるシグナルおよびその強度は、検出方法、標識方法や標識の種類によって異なる。
【0023】
標識方法や標識の種類は、プローブポリヌクレオチドとターゲットポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを検出できるものであれば特に制限されず、当技術分野で公知である。例えば、ターゲットポリヌクレオチドを合成または増幅する際に放射能標識や蛍光標識などの標識を共有結合させた基質(主にUTP)を取り込ませ、その標識によって、ハイブリダイゼーションを検出することができる。標識としては、当技術分野で通常用いられるもの、例えば、放射能標識、蛍光標識、化学ルミネッサー、ルミネッサーおよび感光剤等を使用することもできる。蛍光標識としては、Cy3およびCy5などのCyDye、FITC、RITC、ローダミン、テキサスレッド、TET、TAMRA、FAM、HEX、ROXなどが挙げられ、放射能標識としては、α−32P、γ−32P、35Sなどが挙げられる。さらに、酵素、酵素断片、酵素阻害剤、抗体、触媒等を結合させてもよい。
【0024】
例えば、標識として蛍光標識を用いた場合は、蛍光シグナルを好適な検出器により検出する。検出器としては、例えば蛍光レーザー顕微鏡、冷却CCDカメラおよびコンピュータを連結した蛍光スキャニング装置が用いられ、担体上の蛍光強度を自動的に測定することができる。CCDカメラの代わりに共焦点型または非焦点型のレーザーを用いてもよい。これにより、画像データが得られる。得られたデータから、担体上に固定化されたプローブポリヌクレオチドに対して相補性を有するターゲットポリヌクレオチドを同定することができ、これに基づいて遺伝子発現プロファイルを作成したり、ポリヌクレオチド試料の塩基配列を決定することもできる。
【0025】
ターゲットポリヌクレオチドのプローブポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションは、プローブポリヌクレオチドを固定化した担体上に、上記ポリヌクレオチド試料をスポッティングした後インキュベートすることにより実施できる。例えば、スポッティングは、96穴または384穴等のプラスチックプレートに試料を分注し、スポット装置を用いて滴下することにより実施できる。インキュベーションは、室温〜100℃の範囲の温度で、1〜24時間の範囲の時間で実施することが好ましい。
【0026】
ハイブリダイゼーション終了後、未反応のポリヌクレオチドを除去することが好ましい。例えば、界面活性剤の溶液と緩衝液との混合溶液を用いて洗浄を行い、未反応のポリヌクレオチドを除去することができる。界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いることが好ましい。緩衝液としては、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、トリス緩衝液、またはグッド緩衝液等を用いることができるが、クエン酸緩衝液を用いることが好ましい。
【0027】
本発明の担体の再生方法は、上記のような分析方法において、ターゲットポリヌクレオチドがプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズした担体に、保湿剤、好ましくはゲル化剤および糖質からなる群から選択される少なくとも1種を含む水性分散液を塗布する工程を含むことを特徴とする。上記工程は、ハイブリダイゼーション反応後に実施する。好ましくは、ハイブリダイゼーション終了後、未反応のポリヌクレオチドを除去した後、シグナルを測定する前に実施するのが好ましい。
【0028】
本発明者らは、保湿剤の少なくとも1種、好ましくはゲル化剤および糖質からなる群から選択される少なくとも1種を含む水性分散液を担体に塗布することにより、分析終了後の担体の再生工程において、プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしたターゲットポリヌクレオチドの除去が促進されることを見出した。従って上記水性分散液は、プローブポリヌクレオチドが固定化された担体を用いてポリヌクレオチド試料を分析する方法において担体の再生を促進するための試薬として使用できる。
【0029】
上記水性分散液は、水を主成分とする溶媒に保湿剤の少なくとも1種、好ましくはゲル化剤および糖質からなる群から選択される少なくとも1種を分散または溶解することにより調製しうる。本発明において、水性分散液には水溶液も含まれる。溶媒として、水を70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上含むものを用いる。溶媒として、好ましくは純水、より好ましくは超純水を用いる。本発明の水性分散液は、保湿剤を飽和濃度以下で使用する。
【0030】
本明細書において保湿剤は、ある物質もしくは組織に対して、接触、浸透または結合することなどにより、物質もしくは組織に対して水分を与える効果を有する物質、または水分を保持する効果を有する物質と定義され、ゲル化剤および糖質が包含される。具体的には、グリセリン、キシリトール(キシリット)、ジグリセリン 、ジプロピレングリコール(DPG)、ソルビトール(ソルビット)、DL−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1、3−ブチレングリコール(1、3BG)、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(カーボワックス)、ポリグリセリンなどの多価アルコール、混合異性化糖、アミノ酸、L−アスパラギン酸、L−アスパラキン酸ナトリウム、DL−アラニン、L−アルギニン、L−イソロイシン、L−リジン、L−リジン塩酸塩、L−グリシン(アミノ酢酸)、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸ナトリウム、γ−アミノ酪酸(ピぺリジン酸)、L−スレオニン、L−セリン、L−チロシン、L−トリプトファン、L−バリン、L−ヒスチジン、L−ヒスチジン塩酸塩、L−ヒドロキシプロリン(L−オキシプロリン)、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−ロイシン、L−システイン、L−シスチン、L−メチオニン、DL−ピロリドンカルボン酸(PCA)、DL−ピロリドンカルボン酸ナトリウム液(PCAソーダ)、乳酸、乳酸ナトリウム(液)、尿素、尿酸、酸性ムコ多糖類、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、グルクロン酸、コラーゲン、可溶性コラーゲン(水溶性コラーゲン)、コラーゲン加水分解物(加水分解コラーゲン)、加水分解コラーゲン液、加水分解コラーゲン末、加水分解コラーゲンエチル、加水分解コラーゲンヘキサデシル、コラーゲンアミノ酸、アテロコラーゲン、ゼラチン、加水分解ゼラチン末、エラスチン、水溶性エラスチン、加水分解エラスチン(エラスチン加水分解物)、細胞間脂質、スフィンゴ脂質(セラミド)、ケラチン、加水分解ケラチン、ケラチンアミノ酸、核酸、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、グアノシン、グアニン、リン酸、ATP(アデノシン三リン酸)、リン酸リボフラビンナトリウム、リン脂質、レシチンなどの生体系保湿成分、アルブミン(乾燥脱糖卵白)、血清アルブミン、脱脂粉乳、ホエ一(乳清、乳酸菌発酵液)、乳糖、カゼイン、牛乳糖たんぱく、ラクトフェリン、加水分解シルク、シルクアミノ酸、シルク抽出液、シルクパウダー、セリシン、加水分解コンキオリン液(真珠たんぱく描出液)、コンキオリンパウダー、キチン、キトサン、グルコサミン(キトサミン)、ローヤルゼリー、ハチミツ、ブドウ糖(グルコース)、大豆たんぱく質、大豆たんぱく加水分解物、大豆リン脂質(大豆レシチン)、大豆リゾリン脂質(リゾレシチン)、卵黄レシチン(卵黄リン脂質)、納豆エキス(大豆発酵代謝液)、アルファヒドロキシ酸(AHA)、グリコール酸、リンゴ酸、海藻エキス、褐藻エキス、含硫ケイ酸アルミニウム(マリンクレイ)、塩化マグネシウム、マリンコラーゲン、酵母エキス、乾燥酵母、プルラン、サルファキニン、トレハロースなど動植物性成分からなる保湿成分があげられる。
【0031】
本明細書においてゲル化剤は、10〜90℃程度で固体から液体への相変化が、その物質自体もしくはその物質と溶媒の混合物において認められる物質であれば特に制限されない。ゲル化剤は通常その物質自体もしくはその物質と溶媒の混合物において保湿効果を有する。具体的には、ゼラチン、コラーゲン、寒天、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、マンナン、コンニャク、コンニャクマンナン、グルコマンナン、キトサン、キサンタンガム、タマリンド種子多糖類、ジェランガム、カラヤガム、アカシアガム、プルラン、カードラン、キシログルカン、グアーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロース多価金属塩、DPPC(Dipalmitoyl phosphatidylcholine)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ε−カプロラクトン)などが挙げられる。ゲル化剤は、単一で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。例えばゲル化剤がゼラチンであれば、本発明の水性分散液は、0.05%(W/V)以上3.0%(W/V)以下、好ましくは0.5%(W/V)以上2.0%(W/V)以下、より好ましくは1.0%(W/V)以上1.5%(W/V)以下のゲル化剤を含む。
【0032】
本明細書において糖質には、単糖、オリゴ糖(二糖、三糖および四糖など)および多糖、ならびにこれらの還元誘導体(糖アルコール、デオキシ糖、グリカール)、アルキル化誘導体(アルキル化糖)、硫酸化誘導体(硫酸化糖)、酸化誘導体(アルドン酸、ウロン酸、アルダル酸など)および脱水誘導体(グリコセエン、アンヒドロ糖など)が包含される。糖質は通常その物質自体もしくはその物質と溶媒の混合物において保湿効果を有する。糖質としては、好ましくは水溶性のものを用いる。また、室温で緩徐に溶媒中に溶解する性質を有するものが好ましい。糖質の具体例としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、リボース、フルクトース、キシロース、ソルボースなどの単糖、α,α-トレハロース(トレハロース)、アルキル化トレハロース、硫酸化トレハロース、β,β-トレハロース (イソトレハロース) 、α,β-トレハロース (ネオトレハロース) 、トレハロサミン、コウジビオース、ニゲロース、マルトース、マルチトール、マルツロース、イソマルトース、イソマルツロース(パラチノース)、ソホロース、ラミナラビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ガラクトスクロース、ラクトース、ラクトサミン、ラクトースジアミン、ラクトビオン酸、ラクチトール、ラクツロース、メリビオース、ネオラクトース、プリメベロース、ルチノース、シラビオース、スクラロース、スクロース(サッカロース)、ツラノース、ビシアノース、セロトリオース、カコトリオース、ゲンチアノース、イソマルトトリオース、イソパノース、マルトトリオース、マンニノトリオース、メレジトース、パノース、プランテオース、ラフィノース、ソラトリオース、ウンベリフェロース、リコテトラオース、マルトテトラオース、スタキオース、マルトペンタオース、ベルバスコース、マルトヘキサオース、α-シクロデキストリン(α-CD)、β-シクロデキストリン(β-CD)、γ-シクロデキストリン(γ-CD)、δ-シクロデキストリン(シクロマルトノナオース)などのオリゴ糖およびそれらの誘導体、澱粉加水分解物およびデキストランなどの多糖、ならびにエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、1,3―ブチレングリコール、エリトリトール、ペンチトール、ヘキシトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールなどの糖アルコールなどが挙げられる。糖質は、単一で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。例えば糖質がトレハロースであれば、本発明の水性分散液は、0.1%(W/V)以上30%(W/V)以下、好ましくは1.0%(W/V)以上25%(W/V)以下、より好ましくは5%(W/V)以上20%(W/V)以下の糖質を含む。
【0033】
本発明の水性分散液は、保湿剤の1種、好ましくはゲル化剤と糖質のうちのいずれか1つを含んでいてもよいし、複数のものを含んでいてもよい。本発明において水性分散液は、保湿剤以外の成分、例えば、緩衝剤や界面活性剤などを適宜含んでいてもよい。
【0034】
上記水性分散液を担体に塗布する方法は、プローブポリヌクレオチドが固定化された表面の全体に水性分散液を塗布できる方法であれば特に制限されない。例えば、担体を水性分散液に浸漬することにより塗布してもよい。その場合、浸漬した後、担体を遠心処理に付すことにより、水性分散液を担体表面に均一に塗布することができる。水性分散液を担体表面に滴下または噴霧することにより塗布してもよい。
【0035】
上記水性分散液を担体に塗布する方法は、プローブポリヌクレオチドが固定化された表面の全体に水性分散液を塗布できる方法で、担体表面に水分を保持させる方法であれば特に制限されない。
【0036】
上記水性分散液を塗布した担体についてハイブリダイゼーションに基づくシグナルを測定してポリヌクレオチド試料を分析した後、担体を洗浄することにより、担体を再生すること、すなわちプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしたポリヌクレオチドを除去することができる。この洗浄工程における条件は、使用した水性分散液の種類に基づき、適宜設定することができる。通常、水性洗浄液を用いて洗浄を行う。水性洗浄液は、水を主成分とする洗浄液をさし、界面活性剤や緩衝剤などを含んでいてもよい。水性洗浄液として、好ましくは超純水を用いる。具体的には、沸点以下、好ましくは30℃以上100℃以下、より好ましくは60℃以上100℃以下の水性洗浄液を用いることで洗浄することができる。
【0037】
洗浄時間は、ハイブリダイゼーションに基づくシグナルを測定する工程により、適宜、設定することができる。また、ハイブリダイゼーションに基づくシグナルは通常、標識に基づくシグナルを測定することをさし、シグナルを測定する工程は、プローブポリヌクレオチドとターゲットポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを検出できるものであれば特に制限されない。
【0038】
換言すれば本発明はまた、プローブポリヌクレオチドが固定化された担体を用いてポリヌクレオチド試料を分析する方法であって、
a)担体に固定化されたプローブポリヌクレオチドに、ポリヌクレオチド試料を接触させてポリヌクレオチド試料に含まれるターゲットポリヌクレオチドをプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズさせる工程、
b)未反応のポリヌクレオチドを除去する工程、
c)保湿剤の少なくとも1種、好ましくはゲル化剤および糖質からなる群から選択される少なくとも1種を含む水性分散液を担体に塗布する工程、および
d)ハイブリダイゼーションに基づくシグナルを測定する工程
を含む前記方法に関する。ポリヌクレオチド試料を分析する方法においてc)の工程を実施することにより、分析後に洗浄することにより担体を容易に再生することができる。
【0039】
プローブポリヌクレオチドを固定化するための担体としては、当技術分野で通常用いられるものを使用でき、その形状や材料は特に制限されない。例えば、マイクロアレイ等の平板状のもの、ビーズ等の粒子状のもの、および糸状のものが挙げられるが、好ましくはマイクロアレイ等の平板状のものを用いる。材料としては、例えば、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、タングステン、モリブデン、クロム、白金、チタン、ニッケル等の金属;ステンレス、ハステロイ、インコネル、モネル、ジュラルミン等の合金;上記金属とセラミックスとの積層体;シリコン;ガラス、石英ガラス、溶融石英、合成石英、アルミナ、サファイア、セラミクス、フォルステライトおよび感光性ガラス等のガラス材料;プラスチック(例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene 樹脂)、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂)が挙げられる。
【0040】
本発明においては、担体として、基板上にポリヌクレオチドを静電的に引き寄せるための静電層、およびポリヌクレオチドと共有結合しうる官能基を有するものが好ましく用いられる。ここで基板の材料としては、特に制限されないが、上記の材料が挙げられる。基板の形状およびサイズは特に限定されないが、形状としては、平板状、糸状、球状、多角形状、粉末状などが挙げられ、サイズは、平板状のものを用いる場合、通常は、幅0.1〜100mm、長さ0.1〜100mm、厚み0.01〜10mm程度である。
【0041】
基板には、表面処理を施してもよい。表面処理には、合成ダイヤモンド、高圧合成ダイヤモンド、天然ダイヤモンド、軟ダイヤモンド(例えば、ダイヤモンドライクカーボン)、アモルファスカーボン、炭素系物質(例えば、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ)のいずれか、それらの混合物、またはそれらを積層させたものを用いることが好ましい。また、炭化ハフニウム、炭化ニオブ、炭化珪素、炭化タンタル、炭化トリウム、炭化チタン、炭化ウラン、炭化タングステン、炭化ジルコニウム、炭化モリブデン、炭化クロム、炭化バナジウム等の炭化物を用いてもよい。ここで、軟ダイヤモンドとは、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(DLC:Diamond Like Carbon)等の、ダイヤモンドとカーボンとの混合体である不完全ダイヤモンド構造体を総称し、その混合割合は、特に限定されない。表面処理層の厚みは、1nm〜100μmであることが好ましい。
【0042】
表面処理された基板の一例としては、スライドガラスに軟ダイヤモンドを製膜した基板が挙げられる。このような基板は、ダイヤモンドライクカーボンが、水素ガス0〜99体積%、残りメタンガス100〜1体積%を含んだ混合ガス中で、イオン化蒸着法により作成したものであることが好ましい。
【0043】
基板の表面処理層の形成は、公知の方法、例えば、マイクロ波プラズマCVD(Chemical Vapor Deposit)法、ECRCVD(Electric Cyclotron Resonance Chemical Vapor Deposit)法、ICP(Inductive Coupled Plasma)法、直流スパッタリング法、ECR(Electric Cyclotron Resonance)スパッタリング法、イオンプレーティング法、アークイオンプレーティング法、EB(Electron Beam)蒸着法、抵抗加熱蒸着法、イオン化蒸着法、アーク蒸着法、レーザ蒸着法などにより行うことができる。
【0044】
本発明の担体には、ポリヌクレオチドを静電的に引き寄せるために静電層が設けられていることが好ましい。静電層としては、ポリヌクレオチドを静電的に引き寄せ、ポリヌクレオチドの固定化量を向上させるものであれば、特に制限はないが、例えば、アミノ基含有化合物など正荷電を有する化合物を用いて形成することができる。
【0045】
前記アミノ基含有化合物としては、非置換のアミノ基(−NH)、または炭素数1〜6のアルキル基等で一置換されたアミノ基(−NHR;Rは置換基)を有する化合物、例えばエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、n−プロピルアミン、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、アリルアミン、アミノアゾベンゼン、アミノアルコール(例えば、エタノールアミン)、アクリノール、アミノ安息香酸、アミノアントラキノン、アミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、シスチン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、アニリン、またはこれらの重合体(例えば、ポリアリルアミン、ポリリシン)や共重合体;4,4’,4”-トリアミノトリフェニルメタン、トリアムテレン、スペルミジン、スペルミン、プトレシンなどのポリアミン(多価アミン)が挙げられる。
【0046】
静電層は、基板または表面処理層と共有結合させずに形成してもよく、基板または表面処理層と共有結合させて形成してもよい。
【0047】
静電層を基板または表面処理層と共有結合させずに形成する場合には、例えば、表面処理層を製膜する際に前記アミノ基含有化合物を製膜装置内に導入することによって、アミノ基を含有する炭素系皮膜を製膜する。製膜装置内に導入する化合物として、アンモニアガスを用いてもよい。また、表面処理層は、密着層を形成した後にアミノ基を含有する皮膜を形成するといった、複層であってもよく、この場合もアンモニアガスを含んだ雰囲気で行ってもよい。
【0048】
また、静電層を基板または表面処理層と共有結合させずに形成する場合には、静電層と基板または表面処理層との親和性、即ち密着性を高める点で、基板上に、前記の非置換または一置換されたアミノ基を有する化合物および炭素化合物を蒸着させた後、ポリヌクレオチドと共有結合しうる官能基を導入することが好ましい。ここで用いる炭素化合物としては、気体として供給することができれば特に制限はないが、例えば常温で気体であるメタン、エタン、プロパンが好ましい。蒸着の方法としては、イオン化蒸着法が好ましく、イオン化蒸着法の条件としては、作動圧が0.1〜50Pa、そして加速電圧が200〜1000Vの範囲であることが好ましい。
【0049】
静電層を基板または表面処理層と共有結合させて形成する場合には、例えば、基板または表面処理層を施した基板に、塩素ガス中で紫外線照射して表面を塩素化し、次いで前記アミノ基含有化合物のうち、例えば、ポリアリルアミン、ポリリシン、4,4',4''-トリアミノトリフェニルメタン、トリアムテレン等の多価アミンを反応させて、基板と結合していない側の末端にアミノ基を導入することにより、静電層を形成することができる。基板表面を塩素化した後、アンモニアガス中でUV照射することにより、アミノ基を導入してもよい。
【0050】
また、静電層が施された基板にポリヌクレオチドと共有結合しうる官能基を導入する反応(例えば、ジカルボン酸または多価カルボン酸を用いるカルボキシル基の導入)を溶液中で行う場合には、基板を、前記の非置換または一置換されたアミノ基を有する化合物を含有する溶液中に浸漬した後、ポリヌクレオチドと共有結合しうる官能基を導入することが好ましい。前記溶液の溶媒としては、例えば水、N−メチルピロリドン、エタノールが挙げられる。
【0051】
静電層が施された基板に、ジカルボン酸または多価カルボン酸を用いてカルボキシル基を導入する場合には、予めN−ヒドロキシスクシンイミドおよび/またはカルボジイミド類で活性化させたり、あるいは、反応をN−ヒドロキシスクシンイミドおよび/またはカルボジイミド類の存在下に行うことが好ましい。
【0052】
基板を、非置換または一置換されたアミノ基を有する化合物を含有する溶液中に浸漬することにより、静電層を形成する場合に、アミノ基含有化合物としてポリアリルアミンを用いると、基板との密着性に優れ、ポリヌクレオチドの固定化量がより向上する。
【0053】
静電層の厚みは、1nm〜500μmであることが好ましい。
前記のようにして、静電層を施した基板表面には、ポリヌクレオチドと共有結合しうる官能基を導入するため、化学修飾を施すことが好ましい。
【0054】
前記官能基としては、例えばカルボキシル基、活性エステル基、ハロホルミル基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、チオール基、アミノ基が挙げられる。
【0055】
官能基としてカルボキシル基を導入するために用いられる化合物としては、例えば、式:X−R−COOH(式中、Xはハロゲン原子、Rは炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す。)で示されるハロカルボン酸、例えばクロロ酢酸、フルオロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、2−クロロプロピオン酸、3−クロロプロピオン酸、3−クロロアクリル酸、4−クロロ安息香酸;式:HOOC−R−COOH(式中、Rは単結合または炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す。)で示されるジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、トリメリット酸、ブタンテトラカルボン酸などの多価カルボン酸;式:R−CO−R−COOH(式中、Rは水素原子または炭素数1〜12の2価の炭化水素基、Rは炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す。)で示されるケト酸またはアルデヒド酸;式:X−OC−R−COOH(式中、Xはハロゲン原子、Rは単結合または炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す。)で示されるジカルボン酸のモノハライド、例えばコハク酸モノクロリド、マロン酸モノクロリド;無水フタル酸、無水コハク酸、無水シュウ酸、無水マレイン酸、無水ブタンテトラカルボン酸などの酸無水物が挙げられる。
【0056】
活性エステル基は、エステル基のアルコール側に酸性度の高い電子求引性基を有して求核反応を活性化するエステル群、すなわち反応活性の高いエステル基を意味するものとして、各種の化学合成、たとえば高分子化学、ペプチド合成等の分野で慣用されているものである。
【0057】
実際的には、エステル基のアルコール側に、電子求引性の基を有し、アルキルエステルよりも活性化されたエステル基である。さらに具体的には、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、シアノメチルエステル、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等がアルキルエステル等に比べてはるかに高い活性を有する活性エステル基として知られている。活性エステル基としては、具体的にはp−ニトロフェニル基、N−ヒドロキシスクシンイミド基、コハク酸イミド基、フタル酸イミド基、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド基等が挙げられる。
【0058】
例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド基は、前記のようにして導入されたカルボキシル基に、シアナミドやカルボジイミド(例えば、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド)などの脱水縮合剤とN−ヒドロキシスクシンイミドなどの化合物を反応させることにより生成することができる。
【0059】
官能基としてハロホルミル基を導入するために用いられる化合物としては、例えば、式:X−OC−R−CO−X(式中、Xはハロゲン原子、Rは単結合または炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す。)で示されるジカルボン酸のジハライド、例えばコハク酸クロリド、マロン酸クロリドが挙げられる。
【0060】
官能基として水酸基を導入するために用いられる化合物としては、例えば、式:HO−R−COOH(式中、Rは炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す。)で示されるヒドロキシ酸またはフェノール酸が挙げられる。
【0061】
官能基としてアミノ基を導入するために用いられる化合物としては、例えばアミノ酸が挙げられる。
【0062】
前記の化合物は、そのカルボキシル基が静電層のアミノ基と縮合してアミド結合を形成する。
【0063】
前記の化合物のうち、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、トリメリット酸、ブタンテトラカルボン酸などの多価カルボン酸は親水性を向上させるために使用することもできる。
【0064】
上記の工程において、アミノ基含有化合物による処理、官能基導入処理、活性エステル化処理は、数回繰り返して行うことが好ましい。
【0065】
プローブポリヌクレオチドを、適当な溶媒に溶解または分散して、担体上にスポッティングすることにより、ポリヌクレオチドを担体に固定化することができる。例えば、プローブポリヌクレオチドを含む溶液を、96穴または384穴等のプラスチックプレートに分注し、分注した溶液をスポット装置等を用いて担体上に滴下してスポッティングを行う。スポット装置としては、ピン方式、インクジェット方式、毛細管によるキャピラリ方式などを利用したスポット装置を用いることができる。
【0066】
本発明はまた、担体に固定化されたプローブポリヌクレオチドにポリヌクレオチド試料を接触させ、ポリヌクレオチド試料に含まれるターゲットポリヌクレオチドをプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーションに基づくシグナルを測定することによりポリヌクレオチド試料を分析するためのキットであって、ゲル化剤および糖質からなる群から選択される少なくとも1種を含む水性分散液からなる担体の再生を促進するための試薬を含む前記キットに関する。当該キットは、公知のポリヌクレオチド試料を分析するためのキットに加えて、担体の再生を促進するための試薬を含むことを特徴とする。本発明のキットは、上記担体の再生を促進するための試薬を含むことを除き、公知公用のキットに用いられている各要素によって構成することができる。例えば、ポリヌクレオチドを分解または断片化するための酵素、緩衝液、マトリックス溶媒、洗浄バッファー、試料希釈液、反応停止液、標準物質等を含みうる。更に本発明のキットには、アッセイ方法を説明するためのインストラクションマニュアルを組み合せることもできる。
【実施例】
【0067】
実施例1 蛍光ラベル化cDNA(ターゲットポリヌクレオチド)の調製
蛍光ラベル化cDNAの調製にはアマシャムバイオサイエンス社製のCyScribe First−Strand cDNA Labelling Kitを用いた。
【0068】
予め70℃、42℃、37℃のヒートブロック、もしくは恒温器を準備し、mRNA試料および各試薬類を溶かし氷上に準備した。次にmRNA試料を含め、以下の系を組んだ。この系は以後のハイブリダイゼーションを3回実施するのに充分な量であった。
【0069】
【表1】

【0070】
上記反応系を組んだ後、70℃にて5分間保温し、室温に移し10分間放置した。この反応液にさらに以下のように試薬を添加し、反応系を組んだ。また以後の操作はできる限り遮光条件下で行なった。
【0071】
【表2】

【0072】
上記反応系を組んだ後、42℃にて90分間保温し逆転写反応により蛍光ラベル化cDNAを合成した。次に2.5M NaOHを2μl添加し、37℃で15分間保温することで未反応mRNAを分解した。次に2M HEPESを10μl添加することで中和し、蛍光ラベル化cDNA溶液を得た。
【0073】
次にアマシャムバイオサイエンス社製のCyScribe GFX Purification Kitを用いて、蛍光ラベル化cDNAを精製した。コレクションチューブにGFXスピンカラムをセットし、GFXスピンカラム内にCapture buffer 500μlを添加し、蛍光ラベル化cDNA溶液をさらに添加し、ピペッティングにより混和した。13,000rpmにて30秒間遠心し、コレクションチューブ内の濾液を廃棄した。同じコレクションチューブにGFXスピンカラムを再度セットし、Wash buffer 600μlを添加した。13,000rpmにて30秒間遠心し、コレクションチューブ内の濾液を廃棄した。上記洗浄過程をさらに2回繰り返した。同じコレクションチューブにGFXスピンカラムを再度セットし、13,000rpmにて10秒間遠心し、カラムに付着したWash bufferを完全に除去した。新しい1.5ml容マイクロチューブにGFXスピンカラムをセットし、予め65℃に保温しておいたElution buffer 22μlをフィルターの中央部に添加し、10分間放置した。13,000rpmにて1分間遠心し、マイクロチューブ内に濾液を回収した。上記溶出過程をさらに2回繰り返し、同じマイクロチューブ内に回収した。上記操作により合計66μlの蛍光ラベル化cDNA溶液を得た。得られた蛍光ラベル化cDNA溶液を22μlずつ新しいマイクロチューブに分注し、スピードバック等で乾固し、−20℃、暗所にて保存した。
【0074】
実施例2 マイクロアレイ(プローブポリヌクレオチド固定化担体)の製造
25mm(幅)×75mm(長さ)×1mm(厚み)のスライドガラスを、ポリアリルアミン水溶液(0.1g/l)に浸漬することにより、静電層を形成した。その後、静電層のアミノ基に、多価カルボン酸としてのポリアクリル酸を、0.1Mの1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミドの存在下で縮合した。そして、0.1M リン酸緩衝液(pH6)300mlに0.1Mの1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド・塩酸塩と20mMのN−ヒドロキシスクシンイミドを溶解した活性化液中に30分間浸漬することによって活性化することにより、ガラス基板の表面に静電層およびN−ヒドロキシスクシンイミド基を有する担体を製造した。
【0075】
得られた担体に、上記で得られた蛍光ラベル化cDNAに対応するプローブポリヌクレオチドをそれぞれスポッティングすることにより、担体上にプローブポリヌクレオチドが固定化されたマイクロアレイを得た。
【0076】
実施例3 ゼラチンを用いた再生方法
(1)マイクロアレイの前処理
実施例2で製造したマイクロアレイを2×SSC/0.2%SDSに浸漬し、室温で15分放置した。その後、マイクロアレイをあらかじめ90℃に加温しておいた2×SSC/0.2%SDSに浸漬し5分間加熱後、超純水でリンスし、300rpmにて3分間遠心しマクロアレイ表面の水分を除去した。
【0077】
(2)ハイブリダイゼーション
乾固した蛍光ラベル化cDNAに18μlの5×SSC/0.5%SDSの溶液を加えハイブリダイゼーション溶液を調製した。前処理を施したマイクロアレイをハイブリダイゼーションカセット(ArrayIt)にセットし、スポット位置に合うように24×24mmのギャップ付きカバーグラスを載せ、ハイブリダイゼーション溶液を毛管現象により流し込んだ。カセット内の窪みに各々30μlの精製水とガラス上のカバーグラスと離れた位置2点に各々5μlの3×SSCを滴下しハイブリダイゼーション中の乾燥を防いだ。60℃にて16時間ハイブリダイゼーションを行った。
【0078】
(3)洗浄(未反応のポリヌクレオチドの除去)
マイクロアレイを2×SSC/0.2%SDSに浸漬してカバーグラスを洗い落とし、2×SSC/0.2%SDSで15分間洗浄した。これを2×SSCで洗浄し、300rpmにて3分間遠心しマクロアレイ表面の水分を除去した。コントロール実験は、この段階で下記(5)と同様に蛍光強度を測定した(図1a)。
【0079】
(4)ゼラチンコーティング
このマイクロアレイをあらかじめ50〜60℃に加温して溶解しておいた0.2×SSC/1mM EDTA/1.5%(W/V)ゼラチンに浸漬し、ただちに300rpmにて3分間遠心を行い、室温で遮光して放置し、ゼラチンをゲル化した。ゼラチンは、新田ゼラチン(株)社製「ゼラチン21」を使用した。
【0080】
(5)蛍光の測定および蛍光強度の数値化
このマイクロアレイ上のスポットにハイブリダイズした蛍光ラベル化cDNAの蛍光をマイクロアレイスキャナーGeneTAC UC−4(Genomic Solutions社製)で測定した。蛍光強度の数値化は、ScanAlyze ver.2.5を使用した(図1b)。
【0081】
(6)担体の再生
50mL容のファルコンチューブに入れた超純水(約50mL)を沸騰湯浴上で加熱したものをあらかじめ準備した。蛍光強度を測定したマイクロアレイをこの沸騰湯浴上で加熱しておいた超純水に浸漬し、15分間洗浄した。この操作を計4回繰り返してマイクロアレイ上のスポットにハイブリダイズした蛍光ラベル化cDNAを除去した。すなわち、超純水による加熱洗浄過程は、累計60分実施した。その後、マイクロアレイを300rpmにて3分間遠心し、マクロアレイ表面の水分を除去し、(5)と同様に蛍光をマイクロアレイスキャナーで測定した(図2)。
【0082】
8つのスポット、すなわちグリッド1のROW4 COL6、ROW4 COL7、ROW5 COL4、ROW5 COL5、ならびにグリッド2のROW4 COL6、ROW4 COL7、ROW5 COL4、ROW5 COL5(図7参照)について、ゼラチンコーティングを行った場合および行わなかった場合(コントロール)で、1回目のハイブリダイゼーションおよび1回目の再生後の蛍光強度を測定した結果を以下の表3および図1cに示す。
【0083】
【表3】

【0084】
(7)ゼラチンコーティングを行ったマイクロアレイについて、上記(1)〜(3)の工程を繰り返し、再生後の2回目のハイブリダイゼーションを行い、蛍光をマイクロアレイスキャナーで測定した(図3a)。再度担体の再生(6)を実施し、蛍光をマイクロアレイスキャナーで測定した(図3b)。
【0085】
結果:
(6)の再生工程の後、ゼラチンコーティングを行わなかった担体についてはハイブリダイズした蛍光ラベル化cDNAの残存がみられるのに対し(図2a)、ゼラチンコーティングを行った担体については、ハイブリダイズした蛍光ラベル化cDNAがほぼ完全に除去されたことがわかる(図2b)。さらに、再生工程の後、蛍光ラベル化cDNAが、担体上のプローブポリヌクレオチドに再度ハイブリダイズすること(図3a)、さらに再度再生できることも示された(図3b)。従って、本発明により、プローブポリヌクレオチド固定化担体を再生し、再利用できることが示された。
【0086】
実施例4 トレハロースを用いた再生方法
(1)マイクロアレイの前処理
実施例2で製造したマイクロアレイを2×SSC/0.2%SDSに浸漬し、室温で15分放置した。その後、マイクロアレイをあらかじめ90℃に加温しておいた2×SSC/0.2%SDSに浸漬し5分間加熱後、超純水でリンスし、300rpmにて3分間遠心しマクロアレイ表面の水分を除去した。
【0087】
(2)ハイブリダイゼーション
乾固した蛍光ラベル化cDNAに18μlの5×SSC/0.5%SDSの溶液を加えハイブリダイゼーション溶液を調製した。前処理を施したマイクロアレイをハイブリダイゼーションカセット(ArrayIt)にセットし、スポット位置に合うように24×24mmのギャップ付きカバーグラスを載せ、ハイブリダイゼーション溶液を毛管現象により流し込んだ。カセット内の窪みに各々30μlの精製水とガラス上のカバーグラスと離れた位置2点に各々5μlの3×SSCを滴下しハイブリダイゼーション中の乾燥を防いだ。60℃にて16時間ハイブリダイゼーションを行った。
【0088】
(3)洗浄(未反応のポリヌクレオチドの除去)
マイクロアレイを2×SSC/0.2%SDSに浸漬してカバーグラスを洗い落とし、2×SSC/0.2%SDSで15分間洗浄した。これを2×SSCで洗浄し、300rpmにて3分間遠心しマクロアレイ表面の水分を除去した。コントロール実験は、この段階で下記(5)と同様に蛍光強度を測定した(図4a)。
【0089】
(4)トレハロースコーティング
このマイクロアレイを2×SSC/20%(W/V)トレハロース溶液に浸漬し、ただちに300rpmにて3分間遠心を行い、室温で遮光して放置した。トレハロースは、Sigma社製D−(+)−Trehalose dehydrate(T9531):α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシドを使用した。
【0090】
(5)蛍光の測定および蛍光強度の数値化
このマイクロアレイ上のスポットにハイブリダイズした蛍光ラベル化cDNAの蛍光をマイクロアレイスキャナー GeneTAC UC−4(Genomic Solutions社製)で測定した。蛍光強度の数値化は、ScanAlyze ver.2.5を使用した(図4b)。
【0091】
(6)担体の再生
50mL容のファルコンチューブに入れた超純水(約50mL)を沸騰湯浴上で加熱したものをあらかじめ準備した。蛍光強度を測定したマイクロアレイをこの沸騰湯浴上で加熱しておいた超純水に浸漬し、15分間洗浄した。この操作を計4回繰り返してマイクロアレイ上のスポットにハイブリダイズした蛍光ラベル化cDNAを除去した。すなわち、超純水による加熱洗浄過程は、累計60分実施した。その後、マイクロアレイを300rpmにて3分間遠心し、マイクロアレイ表面の水分を除去し、(5)と同様に蛍光をマイクロアレイスキャナーで測定した(図5)。
【0092】
赤線で囲った8つのスポット、すなわちグリッド1のROW4 COL6、ROW4 COL7、ROW5 COL4、ROW5 COL5、ならびにグリッド2のROW4 COL6、ROW4 COL7、ROW5 COL4、ROW5 COL5、(図7参照)について、トレハロースコーティングを行った場合および行わなかった場合(コントロール)で、1回目のハイブリダイゼーションおよび1回目の再生後の蛍光強度を測定した結果を以下の表4および図4cに示す。
【0093】
【表4】

【0094】
(7)トレハロースコーティングを行ったマイクロアレイについて、上記(1)〜(5)の工程を繰り返し、再生後の2回目のハイブリダイゼーションを行い、蛍光をマイクロアレイスキャナーで測定した(図6a)。再度担体の再生(6)を実施し(2回目の再生においては15分間の洗浄を1回のみ実施した)、蛍光をマイクロアレイスキャナーで測定した(図6b)。
【0095】
結果:
(6)の再生工程の後、トレハロースコーティングを行わなかった担体についてはハイブリダイズした蛍光ラベル化cDNAの残存がみられるのに対し(図5a)、トレハロースコーティングを行った担体については、ハイブリダイズした蛍光ラベル化cDNAがほぼ完全に除去されたことがわかる(図5b)。さらに、再生工程の後、蛍光ラベル化cDNAが、担体上のプローブポリヌクレオチドに再度ハイブリダイズすること(図6a)、さらに再度再生できること(図6b)も示された。従って、本発明により、プローブポリヌクレオチド固定化担体を再生し、再利用できることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】ゼラチンコーティングを行った担体(b)と行わなかった担体(a)について1回目のハイブリダイゼーション後に測定した蛍光画像を示す。また、蛍光強度の測定結果を示す(c)。
【図2】ゼラチンコーティングを行った担体(b)と行わなかった担体(a)について1回目の再生処理後に測定した蛍光画像を示す。
【図3】ゼラチンコーティングを行った担体について、2回目のハイブリダイゼーション後(a)および2回目の再生処理後(b)に測定した蛍光画像を示す。
【図4】トレハロースコーティングを行った担体(b)と行わなかった担体(a)について1回目のハイブリダイゼーション後に測定した蛍光画像を示す。また、蛍光強度の測定結果を示す(c)。
【図5】トレハロースコーティングを行った担体(b)と行わなかった担体(a)について1回目の再生処理後に測定した蛍光画像を示す。
【図6】トレハロースコーティングを行った担体について、2回目のハイブリダイゼーション後(a)および2回目の再生処理後(b)に測定した蛍光画像を示す。
【図7】プローブポリヌクレオチドを固定化した担体におけるスポット位置を示す。グリッド1とグリッド2のスポット位置は同じである。なお、グリッド1および2とも、ROW1 COL6およびROW1 COL7は、Cy3オリゴヌクレオチドを固定化した対照スポットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブポリヌクレオチドが固定化された担体を用いてポリヌクレオチド試料を分析する方法において該担体を再生する方法であって、
ターゲットポリヌクレオチドがプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズした担体に、保湿剤を含む水性分散液を塗布する工程、および
該担体を洗浄する工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
保湿剤がゲル化剤および糖質からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
担体上に固定化されたプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしたターゲットポリヌクレオチドを除去する方法であって、
ターゲットポリヌクレオチドがプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズした担体に、保湿剤を含む水性分散液を塗布する工程、および
該担体を洗浄する工程を含む、前記方法。
【請求項4】
保湿剤がゲル化剤および糖質からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
プローブポリヌクレオチドが固定化された担体を用いてポリヌクレオチド試料を分析する方法であって、
a)担体に固定化されたプローブポリヌクレオチドに、ポリヌクレオチド試料を接触させてポリヌクレオチド試料に含まれるターゲットポリヌクレオチドをプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズさせる工程、
b)未反応のポリヌクレオチドを除去する工程、
c)保湿剤を含む水性分散液を担体に塗布する工程、および
d)ハイブリダイゼーションに基づくシグナルを測定する工程
を含む前記方法。
【請求項6】
保湿剤がゲル化剤および糖質からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載のd)の工程の後に担体を洗浄することにより、担体を再生する方法。
【請求項8】
プローブポリヌクレオチドが固定化された担体を用いてポリヌクレオチド試料を分析する方法において担体の再生を促進するための試薬であって、保湿剤を含む水性分散液からなる前記試薬。
【請求項9】
保湿剤がゲル化剤および糖質からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項8記載の試薬。
【請求項10】
担体に固定化されたプローブポリヌクレオチドにポリヌクレオチド試料を接触させ、ポリヌクレオチド試料に含まれるターゲットポリヌクレオチドをプローブポリヌクレオチドにハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーションに基づくシグナルを測定することによりポリヌクレオチド試料を分析するためのキットであって、請求項8または9に記載の試薬を含む前記キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−292596(P2007−292596A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120641(P2006−120641)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(390003193)東洋鋼鈑株式会社 (265)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【出願人】(591014710)千葉県 (49)
【Fターム(参考)】