説明

プーアル茶の葉が含まれたキムチ及びその製造方法

【課題】プーアル茶の葉が含まれたキムチを提供する。
【解決手段】野菜類で製造されたキムチにおいて、キムチの全体質量の0.001質量%ないし15質量%に相当するプーアル茶の葉を含むことを特徴とするキムチである。これにより、従来キムチに比べて、キムチのつかり過ぎなどの風味の変化及び型くずれ現象がないだけでなく、長い保存期間後にもキムチの味がそのまま維持され、発酵時に生じる異味、異臭がなく、さっぱりして淡白な味が維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プーアル茶の葉を含むキムチに関する。
【背景技術】
【0002】
プーアル茶は、中国南部の雲南省などの地で大葉種の茶葉から生産される茶である。プーアル茶は、微生物の発酵により作られる後発酵茶に属し、こし出せば紅茶のように赤褐色を帯び、茶味は、渋い味がなく、プーアル茶のみの独特な香りがする。
【0003】
最近、肉類など油っこい食べ物を多く摂取する中国の辺境の遊牧民族が健康であるということが分かり、その原因を疫学的に調べた結果、答は、彼らが飲むプーアル茶から発見された。
【0004】
プーアル茶の薬理的な特徴を文献で探せば、本草綱目拾遺に「プーアル茶の香りは独特であり、二日酔いを解消させ、消化をよく助け、痰を溶かす。体に有害な油気を除去し、内臓をきれいに洗い出し、体液を生成する」という記録がある。
【0005】
また、中医大辞書によれば、プーアル茶は、その成分が温気を呼び起こし、毒性を含有していないという。また、消化促進、唾液と体液分泌、体内のガス排出、飲酒後の二日酔い解消、痰を溶かし、喉頭の熱を冷やし、ショウガと共に摂取する場合、汗を出してからだの冷えを治療すると記録されている。
【0006】
「雲南省誌」、「百華経」などの記録によれば、“プーアル茶は、油気を除去し、内臓をきれいに洗い出し、二日酔いを解消させ、消化を助け、体液を生成させ、首の痛みを治す。また、ショウガ湯と共に使えば、てんかんを治療し、皮膚の出血を止める”という。
【0007】
最近、フランスのパリ医学院の臨床実験における実験証明によれば、プーアル茶は、ダイエットに非常にすぐれる効能を有するだけでなく、脂肪質形成を予防し、新陳代謝を円滑にし、消化能力を強化するとされている。
【0008】
また、中国で行った一臨床実験でも、プーアル茶は、人体の脂肪質及びコレステロールの含量をきわめて低くする薬効があると判明し、プーアル茶を飲み続ければ、1ケ月後にコレステロール数値が約22%減少したという。
【0009】
国立台湾大学の食品科学技術研究所は、‘プーアル茶が血管動脈硬化及び低密度の脂肪コレステロール酸化に及ぼす影響’についての研究を進めた。その研究報告書によれば、プーアル茶が緑茶や紅茶のように優れている理由は、微生物生成の過程を経るということにあり、保管する間に発酵されつつ、相異なる種類の香り及び独特な味を作るためであるという。
【0010】
また、プーアル茶は、癌細胞をなくし、抗癌作用を奏することも周知されている。プーアル茶は、癌細胞をなくす緑茶より抗癌効果がさらに強く、さらには、プーアル茶を癌細胞が含まれているビーカに落として見れば、癌細胞が減りつつ、変形されて細胞が壊死した。
【0011】
このように、プーアル茶は、単に香りのみを味わう茶ではなく、コレステロールを低くし、脂肪を分解し、免疫力を増加させるなど、強い薬理作用を奏する効能があるので、健康茶、ダイエット茶として広く認識されている。
【0012】
しかし、従来、このようなプーアル茶は、主に茶の葉をこし出た形態の茶としてのみ飲用され、その他の食品に利用した例は殆どなかった。
【0013】
また、プーアル茶について、前記のような薬理効果のみが周知されているだけであり、食品に利用されたとき、いかなる他の効果を奏するかについても知られていなかった。
【0014】
プーアル茶を利用した食品の例としては、特許文献1及び2がある。しかし、前記特許文献には、プーアル茶自体をそのまま利用した飲料が記載されているだけであり、その他の食品形態に応用したものではなく、また、前述したプーアル茶の薬理効果以外のプーアル茶の他の用途についても明らかにしたものではない。
【特許文献1】韓国特許公開2003−0084036号公報(抗肥満及び抗コレステロール効果を表すプーアル茶の組成物)
【特許文献2】韓国特許公開2001−0069898号公報(プーアル茶を利用した二日酔い解消飲料)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、プーアル茶の葉を食品、特にキムチに利用した時に現れるプーアル茶の新たな効果を明らかにし、さらに、このようなプーアル茶の葉を利用して製造したキムチ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、プーアル茶をキムチに添加する場合、キムチのつかり過ぎを遅延させる卓越した効果があるだけでなく、キムチの味をひきしめる等、風味を向上させる効果があるということを発見し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明のキムチは、野菜類で製造されたキムチにおいて、キムチの全体質量の0.001質量%ないし15質量%に相当するプーアル茶の葉を含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明のキムチの製造方法は、野菜類を塩水に漬けるステップ、前記野菜類に、プーアル茶の葉と通常のキムチ薬味とを混合するステップ、及び前記混合されたものを発酵させるステップを含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の一実施形態において、前記野菜類は、キムチの材料となることができる野菜であれば、特に限定されず、白菜、大根、若大根の葉、からし菜、キャベツ、青菜、キュウリ、イヌヤクシソウ、及びニラ等である。
【0020】
プーアル茶の葉は、市販されるものであれば、いかなるものを使用してもよく、同一の効果を奏する。
【0021】
また、本発明の一実施形態において、前記キムチは、漬けた野菜類を発酵させたものであれば、特に限定されず、例えば、白菜キムチ、大根角切キムチ、若大根の葉キムチ、からし菜キムチ、白キムチ、キャベツキムチ、青菜キムチ、トンチミ、白菜水キムチ、キュウリキムチ、イヌヤクシソウキムチ、ニラキムチ、及びキュウリ漬などである。
【発明の効果】
【0022】
本発明のプーアル茶の葉を含むキムチは、従来キムチに比べて、キムチのつかり過ぎなどの風味の変化及び型くずれ現象がないだけでなく、長い保存期間後にもキムチの味がそのまま維持され、発酵時に生じる異味、異臭がなく、さっぱりして淡白な味が維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明のキムチの製造方法は、通常のキムチの製造方法において、薬味類の混合時、プーアル茶の葉を共に混合することを特徴とする。したがって、本発明のキムチの製造方法は、通常の方法で野菜類を塩水に漬けた後、通常のキムチ薬味とプーアル茶の葉とを混合して発酵させる。通常のキムチ薬味は、塩、唐辛子の粉、細切り大根、ニンニク、ショウガ、海老塩辛葉、ねぎ、からし菜、塩辛液、唐辛子、及び水などから選択して使用できる。発酵温度は、0℃ないし10℃で、キムチにより適切に当業者が選択できる。また、漬ける時間は、所望の塩度により、一般のキムチと同様にすることもあるが、本発明のプーアル茶の葉を含むキムチは、一般のキムチより低い塩度で製造しても保存性が高いので、それを参酌して漬ける時間を決定する。
【0025】
プーアル茶の葉の混合比は、キムチにより、また所望の嗜好により適切に調節できる。よくつかったキムチを所望する場合には、プーアル茶の葉の量を少なく混合し、長い間つかりすぎることがなくて淡白な味のキムチを所望する場合には、プーアル茶の葉の量をさらに多く混合できる。望ましくは、最終のキムチ製品の総質量に対して0.001ないし15質量%となるように、プーアル茶の葉を混合できる。なぜならば、0.001質量%未満であれば、プーアル茶の所定の効果が得られず、15質量%を超えれば、キムチにプーアル茶の葉の味があまりに多くつくので、キムチ本体の味を変化させるためである。さらに望ましくは、0.01ないし10質量%、さらに望ましくは、0.01ないし5質量%の量で混合できる。
【0026】
従来、キムチのつかり過ぎを防止するために、キムチの塩度を高めて製造する方法を選択する場合が多かったが、このように製造する場合、キムチがあまりに塩辛くなって、味も良くなくなり、健康上にも良くないという問題があった。また、従来、キムチのつかり過ぎを防止するために殺菌する等の方法があったが、このような方法は、キムチ煮込みのような味がする等、キムチの味に良くない影響を及ぼす場合が多かった。
【0027】
しかし、本発明によりプーアル茶をキムチに添加すれば、塩度を高めなくても、また高温殺菌過程なしでも、長い間つかりすぎることなくて新鮮な味のキムチを維持できる。
【0028】
また、プーアル茶は、健康上でも有利な食品に属するため、どんなに多く添加しても問題がなく、かえって茶の味がキムチに加えられて、キムチの味を淡白にさっぱりとするだけでなく、つかり過ぎの防止はもとより、キムチの発酵時の味をひきしめる効果がある。
【0029】
すなわち、本発明のプーアル茶を含むキムチは、キムチの酸度(つかり具合)と味とを新鮮に維持させるにおいて、従来のいかなる方法でも達成できなかったはるかに優れた効果を奏する。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲がこれにより制限されるものではない。
【0031】
実施例1
プーアル茶を含む大根角切キムチの製造
約1.5kg前後の質量を有する大根10個を1.5cm×1.5cmほどのサイズにカットして、塩水に漬けた。漬けた大根に、唐辛子の粉500g、ニンニク300g、ショウガ300g、海老塩辛300gなどの通常のキムチ薬味と、中国・雲南省産のプーアル茶340gとを混合して、4℃で保管しつつ発酵させた。
【0032】
比較例1
一般の大根角切キムチの製造
実施例1と同一の方法で大根角切キムチを製造するが、プーアル茶は添加せずに製造した。
【0033】
実施例1と比較例1で製造した大根角切キムチそれぞれに対して、製造後の2日目、9日目、16日目、23日目、30日目、37日目、44日目にサンプルを取ってpH及び塩度を測定した。製造後、経時的なpH及び塩度を下記の表1に示した。
【表1】

【0034】
前記表1から分かるように、実施例1のプーアル茶を含む大根角切キムチは、製造初期のpHと44日目のpHとが大差なく酸化は激しくなかったが、比較例1の一般の大根角切キムチの場合には、pH値が初期に比べて顕著に低くなった。これから、プーアル茶が大根角切キムチの酸味つきを遅延させる優秀な効果を奏するということが分かった。同時に、前記表1に示すように、プーアル茶を含む大根角切キムチは、一般の大根角切キムチに比べて塩度が低くて、キムチの味を柔らかく維持させる効果も同時に有していた。
【0035】
実施例2
プーアル茶を含む白キムチの製造
約1.5〜2.0kgの質量を有する白菜20株を塩水に漬けた。漬けた白菜に、細切り大根3000g、ニンニク300g、ショウガ300g、葉ねぎ260g、からし菜600g、適当量の塩を入れ、中国・雲南省産のプーアル茶680gを混合して、通常の白キムチ製造方法で白キムチを製造した後、4℃で保管しつつ発酵させた。
【0036】
比較例2
一般の白キムチの製造
実施例2と同一の方法で白キムチを製造するが、プーアル茶は添加せずに製造した。
【0037】
実施例2と比較例2で製造した白キムチそれぞれに対して、製造後の2日目、9日目、16日目、23日目、30日目、37日目、44日目にサンプルを取ってpH及び塩度を測定した。製造後、経時的なpH及び塩度を下記の表2に示した。
【表2】

【0038】
前記表2から、実施例2のプーアル茶を含む白キムチのpHは、比較例2の一般の白キムチのpHに比べてその変化が小さいということが分かり、最終的に酸味が減少した。これから、プーアル茶が白キムチの酸味つきを遅延させる効果を奏するということが分かった。同時に、前記表2に示すように、プーアル茶を含む白キムチは、一般の白キムチに比べて酸度が低いにもかかわらず、一般の白キムチより塩度が高くなかった。したがって、塩度が高くない、かつすっぱくない白キムチの柔らかくて淡白な味を長く持続させる効果に優れる。
【0039】
実施例3
プーアル茶を含む白菜キムチの製造
約1.5〜2.0kgの質量を有する白菜20株を塩水に漬けた。漬けた白菜に、唐辛子の粉1200g、細切り大根3000g、ニンニク300g、ショウガ300g、葉ねぎ260g、からし菜600g、海老塩辛300gを入れ、中国・雲南省産プーアル茶1360gを混合して、通常のキムチ製造方法で白菜キムチを製造した後、4℃で保管しつつ発酵させた。
【0040】
実施例3−1
プーアル茶を含む白菜キムチの製造
前記実施例3と同一の方法でプーアル茶を含む白菜キムチを製造するが、プーアル茶は680g混合した。
【0041】
比較例3
一般の白菜キムチの製造
実施例3と同一の方法でキムチを製造するが、プーアル茶は添加せずに製造した。
【0042】
実施例3、実施例3−1、及び比較例3で製造した白菜キムチそれぞれに対して、製造後の2日目、9日目、16日目、23日目、30日目、37日目、44日目にサンプルを取ってpH及び塩度を測定した。製造後、経時的なpH及び塩度を下記の表3に示した。
【表3】

【0043】
前記表3から分かるように、プーアル茶の葉の量を異なって添加した実施例3と実施例3−1とを比較して見れば、プーアル茶の葉の量をさらに多く添加した実施例3の場合が、pHの減少がさらに小さかった。また、実施例3と実施例3−1とのプーアル茶を含むキムチのpHは、いずれも比較例3の一般のキムチのpHに比べてその変化が小さいということが分かった。これから、プーアル茶がキムチのつかり過ぎを遅延させる効果を奏するということが分かった。同時に、前記表3から分かるように、プーアル茶は、キムチの塩度はかえって低くする効果を奏する。すなわち、プーアル茶が含まれたキムチ(実施例3、実施例3−1)は、一般のキムチに比べて酸度が低いにもかかわらず、一般のキムチより塩度がかえって低くて、さっぱりして淡白な味となった。また、このように製造されたプーアル茶を含むキムチは、長い保存期間後にも、味がひきしまっており、新鮮なキムチの味を維持した。
【0044】
実施例4
プーアル茶を含むトンチミの製造
約1.5kg前後の質量を有する大根50個に、塩500g、ニンニク100g、ショウガ100g、葉ねぎ100g、からし菜100g、唐辛子100g、水20リットルを加え、中国・雲南省産プーアル茶680gを混合して、通常のトンチミ製造方法でトンチミを製造した後、4℃で保管しつつ発酵させた。
【0045】
比較例4
一般のトンチミの製造
実施例4と同一の方法でトンチミを製造するが、プーアル茶は添加せずに製造した。
【0046】
実施例4と比較例4で製造したトンチミそれぞれに対して、製造後の2日目、9日目、16日目、23日目、30日目、37日目、44日目にサンプルを取ってpH及び塩度を測定した。製造後、経時的なpH及び塩度を下記の表4に示した。
【表4】

【0047】
前記表4から分かるように、トンチミの製造においても、プーアル茶が有する効果ははるかに優れていた。プーアル茶のトンチミ及び一般のトンチミに対してそれぞれのpHを測定した結果、前記表4のように、プーアル茶を含むトンチミの場合、酸度が一般のトンチミに比べて顕著に低かった。また、プーアル茶は、塩度も低くする効果を奏した。
【0048】
前記実施例及び比較例でも分かるように、プーアル茶は、キムチの酸味つきを遅延させる効果にはるかに優れるだけでなく、キムチの塩度も低くする効果があった。これは、プーアル茶自体が有する中和作用によると考えられる。通常、キムチの塩度が低くなれば、容易に酸味がつくことが一般的な現象であるが、プーアル茶を含むキムチの場合は、塩度が低いにもかかわらず、長い間キムチの味が柔らかくてすっぱくなかった。
【0049】
実験例1
前記実施例及び比較例で得られたそれぞれの製品の酸度及び組織感を評価するために、製造42日目となる日、30名の一般人パネルを対象として、その酸味及び組織感嗜好度について官能検査を実施した結果、次の表5及び表6の通りであった。
【表5】

【表6】

【0050】
前記表5及び表6から分かるように、プーアル茶を含むキムチの場合、全般的な組織感及び味嗜好度が一般のキムチに比べて優れると現れた。これは、プーアル茶をキムチに添加する場合、すっぱさを抑制してキムチの組織感を維持させるだけでなく、プーアル茶自体の性質により味をひきしめて湿度を調節することによって、キムチの味を新鮮に維持させるためである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、キムチ製造関連の技術分野に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜類で製造されたキムチにおいて、キムチの全体質量の0.001質量%ないし15質量%に相当するプーアル茶の葉を含むことを特徴とするキムチ。
【請求項2】
前記キムチが、白菜キムチ、大根角切キムチ、若大根の葉キムチ、からし菜キムチ、白キムチ、キャベツキムチ、青菜キムチ、トンチミ、白菜水キムチ、四割りキュウリキムチ、イヌヤクシソウキムチ、ニラキムチ、及びキュウリ漬から構成された群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のキムチ。
【請求項3】
野菜類を塩水に漬けるステップと、
前記野菜類に、プーアル茶の葉と通常のキムチ薬味とを混合するステップと、
前記混合されたものを発酵させるステップと、を含むことを特徴とするキムチの製造方法。
【請求項4】
前記野菜類が、白菜、大根、若大根の葉、からし菜、キャベツ、青菜、キュウリ、イヌヤクシソウ、及びニラから構成された群から選択されることを特徴とする請求項3に記載のキムチの製造方法。
【請求項5】
前記発酵温度は、0℃ないし10℃であることを特徴とする請求項3に記載のキムチの製造方法。