説明

ヘアトリートメント組成物

ヘアトリートメント組成物は、水不溶性複合粒子の水性分散液を含み、粒子は、(i)正味表面電荷を有しているクレーと、(ii)少なくとも6個の炭素原子を含んでいる帯電有機分子と、(iii)帯電有機分子に不混和性の水不溶性毛髪有益物質と、を含み、帯電有機分子の電荷はクレーの正味表面電荷の反対符号であり、ヘアトリートメント組成物が更に、1種または複数の適当なヘアトリートメント成分を相溶性水性担体中に含んでいる。この組成物は毛髪及び頭皮への毛髪有益物質の付着を増進する。この複合粒子の調製方法が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水不溶性複合粒子の水性分散液とヘアトリートメント成分とを含むヘアトリートメント組成物、及び、それらの製造方法に関する。本発明の粒子は、コンディショナー組成物及びシャンプー組成物のような水基材のヘアトリートメント組成物に使用されたときに毛髪に明白な効果を与える。
【背景技術】
【0002】
ヘアケアの分野でよく知られた問題は、シャンプー及びコンディショナーのようなリンスオフ製品からどのようにして有益物質を毛髪に付着させるかという問題である。問題は単に、かなりの割合の有益物質がすすぎ水と共に洗い流されることにある。
【0003】
有益物質は、コンディショニング剤、色素、感触改善剤、艶出剤、日光遮断剤、栄養素、湿潤剤、スタイリング剤、及び、医薬剤(例えば、抗菌剤、フケ防止剤及び痒み防止剤)などの物質である。
【0004】
毛髪への有益物質の付着を増進するために2つの方法が常用である。
【0005】
1つの方法は、シャンプーまたはコンディショナーの基剤中に有益物質を担持している大粒の油滴を使用する方法である。この方法では、毛髪と油滴とを物理的に接触させ、油滴を毛髪表面に塗り拡げる。しかしながら、この方法では、毛髪が脂っぽい感触またはねばつくような感触になり、また、油が広範囲に付着し毛髪によって吸収されるので、毛髪の艶や生彩が失われる。
【0006】
第二の方法は、付着ポリマーを使用する方法である。付着ポリマーは通常はカチオン性付着ポリマーである。このようなポリマーの使用は当業界で公知である。このような系では、ポリマーと有益物質と他の何らかの不溶性材料とが毛髪に付着する。このため、毛髪の生彩が失われ、毛髪の光沢が失われ、また、毛髪のねばつきを感じる消費者もいる。
【0007】
これらの問題を解消するための従来技術の研究では、有益物質の適正な付着と官能性の低下の防止という双方の利点が得られるように調整を行うことが必要であると考えられていた。双方の基準を満たす付着系は業界で広い需要がありながらいまだ果たされていない目標であり、この目的に向かって多くの研究が続けられてきた。
【0008】
(従来技術)
日本特許JP05/246,824(Shiseido Co Ltd)は、有機的に改質された粘土鉱物(水膨潤性クレーを非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤で処理することによって調製したもの)と、水溶性高分子量物質と高分子量シリコーンとを含有する油中水型エマルジョンから成る毛髪化粧品を開示している。主張されている利点は、毛髪に滑らかな感触、つや、強さ及びしなやかさを与えることである。
【0009】
米国特許US 5786381(Franklinら)は、皮膚をトリートメントするための層状複水酸化物を含むヒドロキシ材料を含有し、シャンプーから配給され得る化粧組成物を記載している。水酸化物はアニオン形態の皮膚有益物質と併用される。皮膚有益物質は乳酸、グリコール酸またはアルファ−ヒドロキシカプリル酸でよい。
【0010】
国際特許WO 02 19976 A(Procter and Gamble Co)は、高融点脂肪化合物と、粒子と、(a)アミドアミンと酸、または、(b)カチオン性コンディショニング剤と低融点油、とを含有するヘアコンディショニング組成物を記載している。シリコーンは任意成分である。粒子は、マイカ、シリカ、泥土またはクレーでよい。主張されている利点は、塗り拡げたときに手及び/または毛髪に与える質感が改善されることである。
【0011】
欧州特許EP 0726246 A(Rheox International)は、液体希釈剤と第四アンモニウム化合物とのブレンドを含む第四アンモニウム組成物を記載している。示唆された1つの用途は、オルガノクレーの製造に反応材料として使用することである。該特許はまた、クレーと第四化合物/希釈剤混合物と水とを第四化合物がクレーと反応できる条件下で一緒に混合し、次いで濾過し、洗浄し、乾燥し、粉砕することによって形成される粒子を開示している。
【0012】
意外にも、正味表面電荷をもつクレーと帯電有機分子と帯電有機分子に不混和性の水不溶性毛髪有益物質とを含む複合粒子の水性分散液をシャンプーまたはコンディショナーのような水基材のヘアトリートメント組成物に含有させることによって、毛髪有益物質の毛髪への付着が増進され、これによって、清潔で軽いふんわりした毛髪の感触を維持しながら高いレベルの有益効果を与えることがここに知見された。本発明の別の利点は、すすぎ水と共に洗い流される毛髪有益物質が少ないほど毛髪有益物質の付着効率が向上することである。
【発明の開示】
【0013】
本発明の第一の目的によれば、水不溶性複合粒子の水性分散液を含み、前記粒子が、
(i)正味表面電荷をもつクレーと、
(ii)少なくとも6個、好ましくは少なくとも11個、より好ましくは少なくとも17個の炭素原子を含む帯電有機分子と、
(iii)帯電有機分子に不混和性の水不溶性毛髪有益物質と、
を含み、帯電有機分子の電荷が、クレーの正味表面電荷の反対符号であり、ヘアトリートメント組成物が更に1種または複数の適当なヘアトリートメント成分を相溶性水性担体中に含んでいるヘアトリートメント組成物が提供される。
【0014】
本発明の第二の目的によれば、
(i)水不溶性毛髪有益物質とクレーとを水に分散させてクレーと毛髪有益物質とが分散した予備混合物を形成する段階と、
(ii)予備混合物と帯電有機分子とを合わせる段階と、
を含む複合粒子の水性分散液の調製方法が提供される。
【0015】
本発明の第三の目的によれば、
(i)水不溶性毛髪有益物質と帯電有機分子とを水に分散させて帯電有機分子と毛髪有益物質とが分散した予備混合物を形成する段階と、
(ii)予備混合物とクレーとを合わせる段階と、
を含む複合粒子の水性分散液の調製方法が提供される。
【0016】
本発明の別の目的によれば、
(i)上述の方法の1つによって複合粒子の水性分散液を調製する段階と、
(ii)複合粒子の水性分散液を最初に乾燥させることなく、複合粒子の水性分散液と残りのヘアトリートメント成分とを相溶性水性担体中で合わせる段階と、
を含むヘアトリートメント組成物の製造方法が提供される。
【0017】
水基材のヘアトリートメント組成物
ヘアトリートメント組成物としては、シャンプー、コンディショナー、ジェル、ムース、シャワージェル、ローション及び清澄液(serum)のような組成物がある。このような組成物は水基材でなければならない。水基材という用語は、組成物が、全組成物の少なくとも20重量%、好ましくは35重量%、最も好ましくは50重量%の水を含有していることを意味する。ヘアトリートメント組成物はウォッシュオフ組成物が適当である。特に好ましい組成物の形態はシャンプー及び洗髪後コンディショナーである。
【0018】
水不溶性複合粒子
水不溶性複合粒子は本質的に、その層表面に正味電荷を有しているクレーと、帯電有機分子と毛髪有益物質とを含む。クレーと帯電有機分子とが複合体を形成し、この複合体の内部に毛髪有益物質が捕捉または内包されていると考えることができるが、この考え方に束縛されることはない。
【0019】
本発明の粒子は、体積基準で5−450ミクロン、好ましくは10−300ミクロン、最も好ましくは15−200ミクロンの粒径中央値(D0.5)を有しているのが好ましい。粒径はMalvern Mastersizer(Malvern Instruments,UK)を使用して適正に測定できる。
【0020】
クレー
本発明に使用されるクレーは当業界で公知のいかなる適当なクレーでもよい。一般に、クレーという用語は、少なくとも1つの表面に正味の静電荷(即ち、正電荷または負電荷)を有している微粒子を含む組成物を表す。好ましくは、クレーが、配位カチオンのシートを含む層構造を有しており、カチオンが、最密構造の酸素とヒドロキシル基とによって四面体または八面体を形成している。通常は、クレーの層間及び層縁端に通常は存在している電荷平衡イオン(ときには交換イオンと呼ばれる)によって表面電荷の平衡が維持されている。
【0021】
本発明に適当なクレーはアニオン性クレーである。本文中に使用したアニオン性クレーという用語及びその関連用語は、それらの層表面に負電荷を有しているクレーを意味する。この実施態様では、水不溶性複合粒子は、存在し得る電荷平衡カチオンに追加して使用されかつ該カチオンとは別のカチオン性帯電有機分子と共に形成される。
【0022】
クレーは、天然、合成または化学的に改質されたクレーでよい。好ましくは、クレーの層が八面体に配位したアルミニウム、マグネシウムもしくは鉄、または、四面体に配位したケイ素の含水シートを含む。クレーシート中の配位アニオンに対して八面体に配位したカチオンの構造は、ジオクタヘドラルまたはトリオクタヘドラルであろう。電荷平衡イオンは層表面のカチオン及び縁端のアニオンであり、クレー中で天然に生じたものでもよくまたはイオン交換技術を使用した交換によって生じたものでもよい。本発明の複合粒子に使用されるアニオン性クレーの電荷平衡カチオンは、プロトン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどのようなカチオン性対イオンを含むであろう。
【0023】
好ましいアニオン性クレーは、クレー層に1つの八面体シートに対して2つの四面体シートを含む2:1型フィロケイ酸塩である。好ましい2:1型フィロケイ酸塩はスメクタイトクレーである。
【0024】
別の適当なクレーは、クレー層に1つの四面体配位シートと1つの八面体配位シートとを含む1:1型フィロケイ酸塩構造を有している。洗濯用組成物に使用されるスメクタイトクレーは例えば、米国特許第3,862,058号、第3,948,790号、第3,954,632号及び第4,062,647号、欧州特許公開EP−A−299,575及びEP−A−313,146に開示されている。これらの特許はいずれもProcter & Gamble Company名義である。
【0025】
本文中に使用したスメクタイトクレーという用語は、シリケート格子中に酸化アルミニウムが存在しているクレー、及び、シリケート格子中に酸化マグネシウムが存在しているクレーの双方を含有する。典型的なスメクタイトクレー化合物としては、一般式Al(Si.(OH).nHOを有する化合物、及び、一般式Mg(Si(OH).nHOを有する化合物、及び、それらの誘導体、例えば、ある割合のアルミニウムイオンがマグネシウムイオンによって置換されているかまたはある割合のマグネシウムイオンがリチウムイオンによって置換されているか、及び/または、ある程度のヒドロキシルイオンがフッ化物イオンによって置換されている誘導体を包含する。誘導体は総電荷を平衡させるために別の金属イオンを含んでもよい。
【0026】
適当なスメクタイトクレーの特定例は、モンモリロナイト、ヘクトライト、ボルコンスコイト、ノントロナイト、サポナイト、ベイデライト及びサウコナイトなどのクラスから選択されたクレーであり、特に、結晶格子構造中にアルカリ金属またアルカリ土類金属のイオンを含むクレーである。ヘクトライト、モンモリロナイト、ノントロナイト、サポナイト、ベイデライト、サウコナイト及びそれらの混合物が特に好ましい。より好ましくはクレーが合成ヘクトライトである。
【0027】
クレーのカチオン交換容量(CEC)は公知のパラメーターであり、電気透析、アンモニウムイオンと交換し次いで滴定する方法、または、メチレンブルー処理のような十分に確立した分析技術によって測定し得る。これらの技術に関しては、Grimshaw,“The Chemistry and Physics of Clays”,pp.264−265,Interscience(1971)に詳細に記載されている。クレーのカチオン交換容量は100gの乾燥クレーあたりのミリ当量(meq/100g)に換算して測定するのが慣例である。
【0028】
本発明に使用するための好ましいアニオン性クレーは、0.7meq/100gから150meq/100gまでのカチオン交換容量を有している。30meq/100gから100meq/100gまでのカチオン交換容量を有しているクレーが特に好ましい。
【0029】
クレーの体積基準粒径中央値(D0.5)は、好ましくは0.001μm−300μm、より好ましくは0.01μm−100μm、例えば0.02μm−50μm、いっそう好ましくは0.02μm−20μmの範囲である。粒径はMalvern Mastersizer(Malvern Instruments,UK)を使用して適正に測定できる。
【0030】
本発明に有用な合成ヘクトライトの具体例は、商品名Laponite RD、Laponite RDS、Laponite XLG、Laponite XLS、Laponite D、Laponite DF、Laponite DS、Laponite S及びLaponite JSなどとして販売されている製品である(いずれもSouthern Clay products,Texas, USA,a subsidiary of Rockwoodから供給されている)。
【0031】
本発明に使用するための適当なモンモリロナイト(ベントナイトとしても知られる)の具体例は、Gelwhite GP、Gelwhite H、Gelwhite L、Mineral Colloid BP、Mineral Colloid MO、Gelwhite MAS 100(sc)、Gelwhite MAS 101、Gelwhite MAS 102、Gelwhite MAS 103、Bentolite WH、Bentolite L10、Bentolite H、Bentolite L、Permont SX10A、Permont SC20、及び、Permont HN24(Southern Clay Products,Texas,USA);Bentone EW及びBentone MA(Dow Corning);Bentonite USP BL 670及びBentolite H4430(Whitaker,Clarke & Daniels);Clarit 100 G1及びClarit 1100 G1(Sud Chemie AGのカルシウムベントナイト);及び、Volclay 2(Sud Chemie AGのナトリウムベントナイト)などである。
【0032】
本発明ではクレーを単独使用してもよくまたは1種もしくは複数の別のクレーと混用してもよい。けれども、クレーの混合物を使用する場合、全部のクレーがアニオン性であるかまたは全部のクレーがカチオン性であるのが好ましい。しかしながら、カチオン性クレーとアニオン性クレーとの混合物を使用してもよい。
【0033】
クレーは供給業者から得られた状態で使用されてもよく、また、例えば崩壊剤(解膠剤としても知られている)のような慣用の添加剤及び水和水を含有していてもよい。クレーは天然の状態で使用されてもよく、または、例えば不純物を除去することによって精製形態または半精製形態で使用されてもよい。
【0034】
本発明に適当な別のクレーはカチオン性クレーである。本文中に使用したカチオン性クレーという用語及びその関連用語は、それ自体がカチオン性であるクレー、即ち、層表面に正電荷を有しているクレーを意味する。この実施態様では、複合粒子は、クレー中に存在し得る電荷平衡アニオンに追加して使用されかつ該アニオンとは別のアニオン性帯電有機分子と共に形成される。
【0035】
カチオン性クレーの好ましい例は天然または合成の層状複水酸化物(LDH)クレーである。例えば、層状複水酸化物は式
[M(1−a)(OH)y+[Xx−y/x.zH
の化合物を包含し、式中の、Mは二価の金属イオン及びリチウムから選択され;Nは三価の金属イオンであり;Xは電荷x−のアニオンであり;y+は混合金属水酸化物カチオンの正味電荷であり;Mが二価の金属イオンであるときは“a”が0.17−0.5の数でy=aであり;Mがリチウムであるときは“a”が0.67−0.75の数でy=(2a−1)であり;zは0−10の範囲の数である。
【0036】
これらの構造においては、金属イオンが層状に発生し、これらの金属イオンは、金属イオン層間の中間層に局在しているOH基及びアニオンXによって互いに結合されている。Xがイオン交換によって別のアニオン例えば有機アニオンによって置換され得ることは公知である。これらの種類のヒドロキシ材料の種々の用途、特に化学触媒として使用される用途は科学文献に記載されている。
【0037】
好ましいLDHはハイドロタルサイトであり、式:
(Mg)(Al)(OH)12.(CO.4H
を有している。
【0038】
ハイドロタルサイトの種類のカチオン性クレーの具体例は、Pural MG30、Pural MG50、Pural MG70(Condea Chemie GmbH,Hamburg,Germany)などである。市販のハイドロタルサイトとしては、Sorbacid EXM 911及びHycite EM 713(Sud Chemie AG)がある。層状複水酸化物の別の具体例は、MgAl(OH)12(SO0.8.xHOMagaldrate(Guilini)及びMgAl(OH)12Cl.xHO混合金属水酸化物(Dow Chemicals)である。バイヤライトも適当なカチオン性クレーである。
【0039】
本発明に使用するために好ましいカチオン性クレーは、0.7meq/100gから250meq/100gまでの範囲のイオン交換容量を有している。30meq/100gから200meq/100gまでの範囲のイオン交換容量を有しているクレーが特に好ましい。
【0040】
クレーは本発明の組成物中に、クレー粒子の分散液(例えば、ゾルまたはゲル)または懸濁液の形態で存在するのが有利である。
【0041】
帯電有機分子
帯電有機分子は、クレー層の表面電荷の反対符号の電荷を有しており、有機イオン性化合物、例えば、塩から誘導される。任意の適当な帯電有機種を使用し得る。クレーの電荷のタイプ次第で帯電有機分子はカチオン性またはアニオン性であろう。即ち、カチオン性帯電有機分子はアニオン性クレーと共に使用され、アニオン性帯電有機分子はカチオン性クレーと共に使用される。
【0042】
帯電有機分子は、1つまたは複数の帯電置換基をもつ有機分子を含む。有機という用語は、炭素を含有する分子を意味する。帯電有機分子は、少なくとも6個、好ましくは少なくとも11個、より好ましくは少なくとも17個の炭素原子を含む。疑念が生じないように、帯電有機分子はクレー自体に天然に存在している電荷平衡イオンと同じではなく該イオン別であることを明記しておく。
【0043】
複合粒子を形成するためには、帯電有機分子をクレーと混合しなければならない。帯電有機分子を中性塩の形態で添加するのが適当であろう。
【0044】
帯電有機分子は好ましくは、少なくとも1つの直鎖状または分枝状のアルキル基または炭素主体の鎖を含んでおり、このアルキル基は好ましくは、3−22個、より好ましくは6−22個、最も好ましくは12−22個の炭素原子を含む。
【0045】
正電荷を有している有機分子は、カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、及び、酸と併用される脂肪アミンのカチオンから選択されるのが好ましい。負電荷を有している有機分子は、アニオン性界面活性剤、アニオン性ポリマー及びポリ電解質のアニオンから選択されるのが好ましい。
【0046】
帯電有機分子対クレーの重量比は、0.05:1−20:1、好ましくは0.1:1−10:1、最も好ましくは0.2:1−5:1である。疑念が生じないように、上記の比に関して言及した帯電有機分子の重量という用語は、帯電有機分子の重量を意味しており、帯電有機粒子の原料となる中性塩中の対イオンは除外されることを明記しておく。
【0047】
カチオン性帯電有機分子
好ましいカチオン性帯電有機分子は、カチオン性界面活性剤のカチオンである。
【0048】
本発明の組成物に有用なカチオン性界面活性剤は、水溶液中で正電荷を帯びるアミノまたは第四アンモニウム親水性部分を含有している。
【0049】
カチオン性界面活性剤の適例は一般式(I):
[N(R)(R)(R)(R)](X) (式I)
に対応し、式中の、R及びRは独立に、(a)炭素原子数1−22、好ましくは8−22、最も好ましくは16−22の脂肪族基、または、(b)22個以下の炭素原子を有している芳香族、アルコキシ、ポリオキシアルキレン、アルキルアミド、ヒドロキシアルキル、アリールまたはアルキルアリール基、から選択され;
及びRは独立に、(a)炭素原子数1−12、好ましくは1−6、最も好ましくは1−3の脂肪族基、または、(b)12個以下、好ましくは6個以下、最も好ましくは3個以下の炭素原子を有している芳香族、アルコキシ、ポリオキシアルキレン、アルキルアミド、ヒドロキシアルキル、アリールまたはアルキルアリール基、から選択され;
Xは、ハロゲン(例えば、クロリド、ブロミド)、アセテート、シトレート、ラクテート、グリコレート、ホスフェート、ニトレート、スルフェート及びアルキルスルフェートラジカルから選択されたアニオンのような塩形成性アニオンを表す。
【0050】
脂肪族基は、炭素原子及び水素原子に加えて、エーテル結合、及び、アミノ基のような別の基を含有できる。より長い鎖の脂肪族基、例えば、炭素数約12またはそれ以上の脂肪族基は飽和でも不飽和でもよい。
【0051】
好ましくは、式(I)のRが独立に、(a)炭素原子数1−22、好ましくは8−22、最も好ましくは16−22の脂肪族基、または、(b)22個以下の炭素原子を有している芳香族、アルコキシ、ポリオキシアルキレン、アルキルアミド、ヒドロキシアルキル、アリールまたはアルキルアリール基、から選択され;
、R及びRが独立に、(a)炭素原子数1−12、好ましくは1−6、最も好ましくは1−3の脂肪族基、または、(b)12個以下、好ましくは6個以下、最も好ましくは3個以下の炭素原子を有している芳香族、アルコキシ、ポリオキシアルキレン、アルキルアミド、ヒドロキシアルキル、アリールまたはアルキルアリール基、から選択され;
Xが、塩形成性アニオンを表す。
【0052】
より好ましくは、式(I)のRがC16−C22であり、R、R及びRがメチル基である。
【0053】
適当なカチオン性界面活性剤の例としては、第四アンモニウム化合物、特に、直鎖状または分枝状の単一アルキル鎖と3つのメチル基とを含み、このアルキル鎖が16−22個の炭素原子を含む第四アンモニウム化合物がある。
【0054】
適当な第四アンモニウム化合物は、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド(BTAC)、セチルピリジニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、デシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、タロウトリメチルアンモニウムクロリド、ココトリメチルアンモニウムクロリド、PEG−2オレイルアンモニウムクロリド、及び、クロリドがハロゲン(例えば、ブロミド)、アセテート、シトレート、ラクテート、グリコレート、ホスフェート、ニトレート、スルフェートまたはアルキルスルフェートによって置換されたこれらの塩がある。また別の適当なカチオン性界面活性剤としては、CTFA名称でクオタニウム−5、クオタニウム−31及びクオタニウム−18と呼ばれる材料がある。
【0055】
また別の適当なカチオン性界面活性剤としては、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド、及び、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリドがある。
【0056】
上記材料のいずれかの混合物も適当であろう。
【0057】
好ましい第四アンモニウム塩は、Clariantによって供給されているGenamin KDMPのようなベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド(BTAC)、及び、Akzo Nobelによって供給されているArquad 16/29のようなセチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)である。
【0058】
また別の適当なカチオン性の系は、カチオン性の種を与えるために酸と組合せて使用される第一級、第二級及び第三級の脂肪アミンである。このようなアミンのアルキル基は好ましくは12−22個の炭素原子を有しており、置換でも未置換でもよい。
【0059】
アミド置換された第三級脂肪アミン、より特定的にはC12−C22のアルキル鎖またはアルケニル鎖を一つ有している第三級アミンが特に有用である。本発明に有用なこのようなアミンとしては、ステアラミドプロピルジメチルアミン、ステアラミドプロピルジエチルアミン、ステアラミドエチルジエチルアミン、ステアラミドエチルジメチルアミン、パルミタミドプロピルジメチルアミン、パルミタミドプロピルジエチルアミン、パルミタミドエチルジエチルアミン、パルミタミドエチルジメチルアミン、ベヘナミドプロピルジメチルアミン、ベヘナミドプロピルジエチルアミン、ベヘナミドエチルジエチルアミン、ベヘナミドエチルジメチルアミン、アラキダミドプロピルジメチルアミン、アラキダミドプロピルジエチルアミン、アラキダミドエチルジエチルアミン、アラキダミドエチルジメチルアミン、ジエチルアミノエチルステアラミドがある。
【0060】
ジメチルステアラミン、ジメチルソイアミン、ソイアミン、ミリスチルアミン、トリデシルアミン、エチルステアリルアミン、N−タロウプロパンジアミン、(5モルのエチレンオキシドで)エトキシル化されたステアリルアミン、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、及び、アラキジルベヘニルアミンも有用である。
【0061】
前述のように、カチオン種を提供するためにこれらのアミンは典型的には酸と組合せて使用される。本発明に有用な好ましい酸は、L−グルタミン酸、乳酸、塩酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、L−グルタミン塩酸、及び、それらの混合物、などである。L−グルタミン酸、乳酸、クエン酸がより好ましい。本発明に有用なカチオン性アミン界面活性剤は、1981年6月23日に発行されたNachtigalらへの米国特許第4,275,055号に開示されている。
【0062】
プロトン付加可能なアミンと酸に由来のHとのモル比は、好ましくは約1:0.3−1:1.2、より好ましくは約1:0.5−約1:1.1の範囲である。
【0063】
本発明の複合粒子に使用するための別の適当なカチオン性帯電有機分子はカチオン性ポリマーである。
【0064】
これらはホモポリマーでもよく、または、2種以上のモノマーから形成されてもよい。ポリマーの分子量は、一般には5,000−10,000,000Daの範囲、典型的には少なくとも10,000Da、好ましくは100,000−約2,000,000Daの範囲であろう。ポリマーは、第四アンモニウムのようなカチオン性窒素含有基、または、プロトン付加アミノ基、またはそれらの混合物を有しているであろう。
【0065】
適当なカチオン性窒素含有ポリマーはCTFA Cosmetic Ingredient Directory,3rd editionに記載されている。
【0066】
カチオン性ポリマーは、アミン−及び/または第四アンモニウム−置換モノマー及び/または相溶性スペーサーモノマーに由来のモノマー単位の混合物を含み得る。
【0067】
適当なカチオン性ポリマーとしては、1−ビニル−2−ピロリジンと1−ビニル−3−メチル−イミダゾリウム塩とのコポリマー(CTFA名称ポリクオタニウム−16);1−ビニル−2−ピロリジンとジメチルアミノエチルメタクリレートとのコポリマー(CTFA名称ポリクオタニウム−11);カチオン性ジアリル第四アンモニウム含有ポリマー、より特定的にはCTFA名称ポリクオタニウム6及びポリクオタニウム7;米国特許第4,009,256号に記載されているような不飽和カルボン酸のホモ−及びコ−ポリマーのアミノ−アルキルエステルの無機酸塩;カチオン性ポリアクリルアミド(国際特許WO95/22311に記載)がある。
【0068】
本発明の組成物に使用するための適当なカチオン性多糖ポリマーとしては、デンプンまたはセルロースのような無水グルコース残基をもつポリマーがある。カチオン性セルロースはAmerchol Corp.(Edison,NJ,USA)から、それらのPolymer JR(商標)及びLR(商標)のポリマーシリーズで、トリメチルアンモニウム置換エポキシドと反応したヒドロキシエチルセルロースの塩として入手可能であり、業界(CTFA)でポリクオタニウム10と呼ばれている。別の種類のカチオン性セルロースとしては、ラウリルジメチルアンモニウム置換エポキシドと反応したヒドロキシエルセルロースの高分子第四アンモニウム塩があり、これは業界(CTFA)でポリクオタニウム24と呼ばれている。これらの材料は、Amerchol Corp.(Edison,NJ,USA)から商品名Polymer LM−200で入手可能である。
【0069】
別の適当なカチオン性多糖ポリマーとしては、第四窒素含有セルロースエーテル(例えば、米国特許第3,962,418号に記載されているような)、及び、エーテル化したセルロースとデンプンとのコポリマー(例えば、米国特許第3,958,581号に記載されているような)がある。
【0070】
使用できる特に適当な種類のカチオン性多糖ポリマーは、カチオン性グアーガム誘導体、例えば、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド(RhodiaからJAGUAR商標シリーズで市販されている)である。特に好ましいカチオン性ポリマーは、JAGUAR C13S、JAGUAR C14、JAGUAR C15、JAGUAR C17及びJAGUAR C16 Jaguar CHT及びJAGUAR C162である。
【0071】
アニオン性帯電有機分子
好ましいアニオン性帯電有機分子はアニオン性界面活性剤のアニオンである。
【0072】
アニオン性界面活性剤の適例は、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルカリールスルホネート、アルカノイルイセチオネート、アルキルスクシネート、アルキルスルホスクシネート、アルキルホスフェート、アルキルエーテルホスフェート、アルキルカルボキシレート、アルキルエーテルカルボキシレート、アルキルエステルカルボキシレート、N−アルキルサルコシネート、及び、アルファ−オレフィンスルホネート、特にそれらのナトリウム、マグネシウム、アンモニウム並びにモノ−、ジ−及びトリエタノールアミン塩である。アルキル基及びアシル基は、一般には8−22個、好ましくは12−22個の炭素原子を含んでおり、飽和でもまたは不飽和でもよく、炭素原子及び水素原子に加えて、エーテル結合、及び、アミノ基及びエステル基のような別の基を含有できる。アルキルエーテルスルフェート、アルキルエーテルホスフェート及びアルキルエーテルカルボキシレートは、1分子あたり1−10個のエチレンオキシド単位またはプロピレンオキシド単位を含有してもよい。
【0073】
本発明の組成物に使用するための典型的なアニオン性界面活性剤としては、オレイルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルスルホコハク酸アンモニウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ココイルイセチオン酸ナトリウム、ラウリルイセチオン酸ナトリウム及びN−ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(n)EO(ここにnは1−3)、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリルエーテル硫酸アンモニウム(n)EO(ここにnは1−3)、ヘプタデシル硫酸ナトリウム、及びテトラデシル硫酸ナトリウムがある。
【0074】
また別の適当なアニオン性帯電有機分子はアニオン性ポリマーである。
【0075】
アニオン性ポリマーの適例は、ポリアクリレート、架橋ポリアクリレート(例えば、Goodrichによって供給されているCarbopol ETD 2001)、疎水的に改質されたポリアクリレート(例えば、Goodrichによって供給されているCarbopol 2623)、ポリアルキルアクリレート(例えば、Goodrichによって供給されているCarbopol ETD 2020)、ポリメタクリレート、ポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸(PVM/MA)コポリマー(例えば、ISPによって供給されているGantrez ANシリーズ)、PVM/MAコポリマーのアルキルエステル(例えば、ISPによって供給されているGantrezシリーズ)、PVM/MAコポリマーのモノエステル樹脂(例えば、ISPによって供給されているGantrez ESシリーズ)、ポリメチルカルボキシレート、ポリスルホネート及びポリホスフェートである。また別の適当なポリマーは、Dow Corningによって供給されているDC Q2−5220のようなシリコーングリコールコポリマーである。
【0076】
その他の帯電有機分子
その他の帯電有機分子は両性または双イオン性の界面活性剤である。
【0077】
両性または双イオン性の界面活性剤の例としては、アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルスルホベタイン(スルタイン)、アルキルグリシネート、アルキルカルボキシグリシネート、アルキルアムホプロピオネート、アルキルアムホグリシネート、アルキルアミドプロピルヒドロキシスルタイン、アシルタウレート及びアシルグルタメートがあり、これらのアルキル基及びアシル基は8−19個の炭素原子を有している。本発明の複合粒子に使用するための典型的な両性または双イオン性の界面活性剤としては、ラウリルアミンオキシド、ココジメチルスルホプロピルベタイン、好ましくは、ラウリルベタイン、コカミドプロピルベタイン及びコカンホプロピオン酸ナトリウムがある。
【0078】
水不溶性毛髪有益物質
“水不溶性毛髪有益物質”という用語は、水に不溶性である適当な毛髪有益物質を意味するために使用され、この場合の“不溶性”という用語は好ましくは、物質が25℃の水(蒸留水または等価の水)に0.1%(w/w)の濃度で溶解しないことを意味する。
【0079】
毛髪有益物質という用語は、消費者の毛髪の感触を改善する材料を含意し、毛髪感触改善剤とも呼ばれる。この用語はまた、毛髪コンディショニング効果またはフケ防止作用のような頭皮に有益な効果を提供し得る固体材料も含意する。
【0080】
本発明の付着増進を得るためには、水不溶性毛髪有益物質が帯電有機分子に不混和性でなければならない。これは、100℃以下の温度で毛髪有益物質が帯電有機分子中に0.1%(重量/重量)未満の溶解度を有していることを意味する。毛髪有益物質中の帯電有機分子の溶解度にも同じ条件があてはまる。2つの成分のこの不混和性は、毛髪有益物質が帯電有機分子の希釈剤または溶媒でないことを意味する。はっきりさせるために、欧州特許EP 0 726 246に開示された第四化合物と希釈剤との組合せが本発明の範囲内に包含されないことをここに明記しておく。
【0081】
毛髪有益物質は電荷を有していないのが好ましい。
【0082】
本発明の好ましい実施態様では、水不溶性毛髪有益物質がシリコーンポリマーまたはシリコーン混合物である。水不溶性毛髪有益物質として使用し得るシリコーンの例を以下に挙げる:
シクロメチコーン及びポリジオルガノシロキサン、より特定的には、CTFA名称でジメチコーンと呼ばれているポリジメチルシロキサン。適当な市販のシクロメチコーン製品はDow CorningのDC 245である。ヒドロキシル末端基を有しているポリジメチルシロキサンも本発明の組成物に使用するために適当であり、CTFA名称でジメチコノールと呼ばれている。
【0083】
乳化シリコーンも本発明の組成物に使用することができ、組成物中で典型的には30ミクロン未満、好ましくは20ミクロン未満、より好ましくは10ミクロン未満、理想的には0.01−1ミクロンの平均シリコーン液滴直径を有しているであろう。0.15ミクロン以下の平均シリコーン液滴直径を有しているシリコーンエマルジョンは一般にマイクロエマルジョンと呼ばれている。
【0084】
予め形成されたエマルジョンの適例としては、エマルジョンDC2−1766、DC2−1784、DC−1785、DC−1786、及び、マイクロエマルジョンDC2−1865及びDC2−1870がある。これらはいずれもDow Corningから入手可能である。これらはすべてジメチコノールのエマルジョン/マイクロエマルジョンである。
【0085】
本発明の組成物に含有させるシリコーンの好ましいクラスはアミノ官能性シリコーンである。“アミノ官能性シリコーン”という用語は、少なくとも1個の第一級、第二級または第三級アミン基または第四アンモニウム基を含有しているシリコーンを意味する。アミノ官能性シリコーンの適例としては、CTFA名称で“アモジメチコーン”と呼ばれるポリシロキサンがある。
【0086】
本発明に使用するための適当なアミノ官能性シリコーンの特定例は、アミノシリコーン油DC2−8220、DC2−8166、DC2−8466及びDC2−8950−114(いずれもDow Corning製)、及び、GE 1149−75(General Electric Silicones製)である。適当な第四シリコーンポリマーは欧州特許公開EP−A−0 530 974に記載されている。好ましい第四シリコーンポリマーはGoldschmidt社のK3474である。
【0087】
非イオン性及び/またはカチオン性の界面活性剤とアミノ官能性シリコーン油とのエマルジョンも適当である。予め形成されたアミノ官能性シリコーンのエマルジョンもDow Corning及びGeneral Electricのようなシリコーン油の供給業者から入手可能である。特定例としては、DC929カチオン性エマルジョン、DC939カチオン性エマルジョン、及び、非イオン性エマルジョンDC2−7224、DC2−8467、DC2−8177及びDC2−8154がある(いずれもDow Corning製)。
【0088】
別の適当なシリコーンは、架橋及び非架橋のシリコーンエラストマーのようなシリコーンエラストマーである。好ましいシリコーンエラストマーの一例は、Dow Corningによって供給されているDC9509である。
【0089】
適当なシリコーンエラストマーは、国際特許WO99/63952、欧州特許EP 0958 804、米国特許US 5 871 761及び欧州特許EP0 855 178に開示されている。
【0090】
別の好ましい水不溶性毛髪有益物質は微粉固体である。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が特に好ましい。また別の適当な微粉固体は、不溶性粒状金属ピリチオン、特に亜鉛ピリチオン(本文中では以後ZnPTOと呼ぶ)である。微粉固体は懸濁形態で使用されるのが好ましい。懸濁化剤は、アニオン性、カチオン性または非イオン性の界面活性剤でよい。
【0091】
クレー対水不溶性毛髪有益物質の重量比は、0.05:1−1:1、好ましくは0.1:1−0.8:1、最も好ましくは0.2:1−0.6:1の範囲である。
【0092】
複合粒子の調製
本発明による複合粒子の水性分散液を調製するための適当な方法は、
(i)水不溶性毛髪有益物質とクレーとを水に分散させてクレーと毛髪有益物質とが分散した予備混合物を形成する段階と、
(ii)予備混合物と帯電有機分子とを合わせる段階と、
を含む。
【0093】
本発明による複合粒子の水性分散液を調製するための別の適当な方法は、
(i)水不溶性毛髪有益物質と帯電有機分子とを水に分散させて帯電有機分子と毛髪有益物質とが分散した予備混合物を形成する段階と、
(ii)予備混合物とクレーとを合わせる段階と、
を含む。
【0094】
好ましくは、毛髪有益物質と帯電有機分子との水性予備混合物にクレーを乾燥粉末として添加する。
【0095】
本発明によるヘアトリートメント組成物の適当な製造方法は、
(i)上述の方法の1つによって複合粒子の水性分散液を調製する段階と、
(ii)複合粒子の水性分散液を最初に乾燥することなく複合粒子の水性分散液と残りのヘアトリートメント成分とを相溶性水性担体中で合わせる段階と、
を含む。
【0096】
ヘアトリートメント組成物に組込む前に乾燥させないで複合粒子を水性分散液として維持することが極めて好ましい。これが粒子の構造を保持する。
【0097】
ヘアトリートメント組成物
複合粒子の水性分散液を1種または複数の適当なヘアトリートメント成分に添加してヘアトリートメント組成物を形成し得る。本発明の組成物は、毛髪及び/または頭皮をトリートメントしその後にすすぎ落とす製品として配合されるのが好ましい。
【0098】
本発明に従って形成され得るヘアトリートメント組成物の例は、ヘアコンディショニング剤のようなリンスオフコンディショナー、及び、洗浄用界面活性剤を含むシャンプーである。リンスオフコンディショナーという用語は、シャンプーでないリンスオフヘアコンディショナー製品を意味する。
【0099】
本発明の組成物中の複合粒子の重量は、組成物の全重量の好ましくは0.01−20重量%、より好ましくは0.05−10重量%、最も好ましくは0.05−5重量%である。
【0100】
別の目的によれば、本発明は、毛髪及び/または頭皮のトリートメント方法を提供する。該方法は、水不溶性複合粒子の水性分散液を含むヘアトリートメント組成物を毛髪及び/または頭皮に塗布し、その後に、水ですすぐ段階を含む。
【0101】
別の目的によれば、本発明は、毛髪有益物質を毛髪及び/または頭皮に付着させる方法を提供する。該方法は、水不溶性複合粒子の水性分散液を含むヘアトリートメント組成物を毛髪及び/または頭皮に塗布し、その後に、水ですすぐ段階を含む。
【0102】
別の目的によれば、本発明は、水不溶性毛髪有益物質を毛髪及び/または頭皮に付着させるために本発明のヘアトリートメント組成物を使用することを提案する。
【0103】
ヘアトリートメント組成物
本発明の組成物は好ましくは、毛髪をトリートメントしその後にすすぎ落とす製品として配合される。
【0104】
シャンプー組成物
シャンプー組成物は好ましくは、化粧品に許容され毛髪に局所的に使用するための適当な1種またはそれ以上の洗浄用界面活性剤を含む。別の界面活性剤が乳化剤として存在してもよい。
【0105】
適当な洗浄用界面活性剤は、アニオン性、両性及び双イオン性の界面活性剤及びそれらの混合物から選択される。洗浄用界面活性剤は乳化剤と同じ界面活性剤でもよく、または、異なる界面活性剤でもよい。
【0106】
アニオン性洗浄用界面活性剤
本発明のシャンプー組成物は典型的には、化粧品に許容され毛髪に局所的に使用するための適当な1種またはそれ以上の洗浄用界面活性剤を含むであろう。これらのアニオン性界面活性剤は、複合粒子の構成要素として使用され得るアニオン性界面活性剤と同じでもよいが、後者のアニオン性界面活性剤に追加して使用され該アニオン性界面活性剤とは別である。
【0107】
アニオン性洗浄用界面活性剤の適例は、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルカリールスルホネート、アルカノイルイセチオネート、アルキルスクシネート、アルキルスルホスクシネート、N−アルキルサルコシネート、アルキルホスフェート、アルキルエーテルホスフェート、アルキルエーテルカルボキシレート、アルキルエステルカルボキシレート及びアルファ−オレフィンスルホネート、特にそれらのナトリウム、マグネシウム、アンモニウム、並びに、モノ−、ジ−及びトリエタノールアミン塩である。アルキル基及びアシル基は一般に8−18個の炭素原子を含んでおり、未置換でもよい。アルキルエーテルスルフェート、アルキルエーテルホスフェート及びアルキルエーテルカルボキシレートは1分子あたり1−10個のエチレンオキシド単位またはプロピレンオキシド単位を含有し得る。
【0108】
本発明のシャンプー組成物に使用するための典型的なアニオン性界面活性剤としては、オレイルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルスルホコハク酸アンモニウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ココイルイセチオン酸ナトリウム、ラウリルイセチオン酸ナトリウム及びN−ラウリルサルコシン酸ナトリウムがある。最も好ましいアニオン性界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(n)EO(ここにnは1−3)、ラウリル硫酸アンモニウム及びラウリルエーテル硫酸アンモニウム(n)EO(ここにnは1−3)である。
【0109】
本発明のシャンプー組成物中のアニオン性洗浄用界面活性剤の全重量は、複合粒子中に存在し得るアニオン性界面活性剤を除いて、組成物の重量を基準として、一般には5−30重量%、好ましくは6−20重量%、より好ましくは8−16重量%である。
【0110】
補助界面活性剤
シャンプー組成物は場合によっては、補助界面活性剤、好ましくは両性または双イオン性の界面活性剤を含むことができ、これは組成物の0−約8重量%、好ましくは1−4重量%の量で含有され得る。これらは、複合粒子の構成要素となるために使用され得る両性または双イオン性の界面活性剤と同じでもよいが、これらに追加して使用されこれらとは別である。
【0111】
両性及び双イオン性の界面活性剤の例としては、アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルスルホベタイン(スルタイン)、アルキルグリシネート、アルキルカルボキシグリシネート、アルキルアムホプロピオネート、アルキルアムホグリシネート、アルキルアミドプロピルヒドロキシスルタイン、アシルタウレート及びアシルグルタメートがあり、そのアルキル基及びアシル基は8−19個の炭素原子を有している。本発明のシャンプーに使用するための典型的な両性及び双イオン性の界面活性剤としては、ラウリルアミンオキシド、ココジメチルスルホプロピルベタイン、好ましくは、ラウリルベタイン、コカミドプロピルベタイン及びコカムホプロピオン酸ナトリウムがある。
【0112】
別の好ましい補助界面活性剤は非イオン性界面活性剤であり、これは組成物の0−8重量%、好ましくは2−5重量%の量で含有され得る。
【0113】
例えば、本発明のシャンプー組成物に含有させ得る代表的な非イオン性界面活性剤としては、脂肪族(C−C18)の直鎖状または分枝状の第一または第二アルコールまたはフェノールとアルキレンオキシド、通常はエチレンオキシドとの縮合物があり、これらは一般に6−30個のエチレンオキシド基を有している。
【0114】
本発明のシャンプー組成物に含有させ得る別の非イオン性界面活性剤は、アルキルポリグリコシド(APG)である。典型的には、APGは、1つまたは複数のグリコシル基のブロックに(場合によっては架橋基を介して)結合したアルキル基を含む。好ましいAPGは以下の式:
RO−(G)n
によって定義され、式中の、Rは分枝状または直鎖状のC−C20のアルキル基またはアルケニル基であり、Gは糖基であり、nは1−10である。本発明のシャンプー組成物に含有させ得るその他の糖由来の非イオン性界面活性剤としては、例えば国際特許WO 92 06154及び米国特許US 5 194 639に記載されたC12−C18のN−メチルグルカミドのようなC10−C18のN−アルキル(C−C)ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、及び、C10−C18のN−(3−メトキシプロピル)グルカミドのようなN−アルコキシポリヒドロキシ脂肪酸アミドがある。
【0115】
シャンプー組成物はまた場合によっては、1種または複数のカチオン性補助界面活性剤を含有でき、これは、組成物の0.01−10重量%、より好ましくは0.05−5重量%、最も好ましくは0.05−1重量%の量で含まれる。有用なカチオン性界面活性剤は本文中のコンディショナー組成物に関する項で後述する。
【0116】
本発明のシャンプー組成物中の界面活性剤の全重量(補助界面活性剤及び/または乳化剤を含めるが、複合粒子中に存在し得る界面活性剤は除く)は、組成物の一般には5−50重量%、好ましくは5−30重量%、より好ましくは10−25重量%である。
【0117】
カチオン性ポリマー
シャンプー組成物は場合によっては、(1種または複数の)カチオン性ポリマーを含有し得る。これらは、複合粒子の構成要素となるために使用され得る上述のようなカチオン性ポリマーとは別である。本発明のシャンプー組成物に使用するための適当なカチオン性ポリマーは上述のものと同じである。
【0118】
カチオン性ポリマーは、複合粒子中に存在し得るカチオン性ポリマーを除いて組成物の一般には0.01−5重量%、好ましくは0.05−1重量%、より好ましくは0.08−0.5重量%のレベルで本発明の組成物中に存在するであろう。
コンディショナー組成物
コンディショニング界面活性剤
コンディショナー組成物は通常は、化粧品に許容され毛髪に局所的に使用するための適当な1種または複数のコンディショニング界面活性剤を含んでいる。
【0119】
適当なコンディショニング界面活性剤は、カチオン性界面活性剤から選択され、単独使用されるかまたは混用される。これらのカチオン性界面活性剤は、上述したような複合粒子の構成要素となるために使用され得るカチオン性界面活性剤と同じでもよいが、後者の界面活性剤に追加して使用され後者の界面活性剤とは別である。
【0120】
本発明の組成物に有用なカチオン性界面活性剤は、本発明の水性組成物に溶解したときに正電荷を帯びるアミノまたは第四アンモニウムの親水性部分を含有している。
【0121】
適当なカチオン性界面活性剤の例は一般式:
[N(R)(R)(R)(R)](X)
に対応し、式中の、R、R、R及びRは独立に、(a)炭素原子数1−22の脂肪族基、または、(b)22個以下の炭素原子を有している芳香族、アルコキシ、ポリオキシアルキレン、アルキルアミド、ヒドロキシアルキル、アリールまたはアルキルアリール基、から独立に選択され;Xは、ハロゲン(例えば、クロリド、ブロミド)、アセテート、シトレート、ラクテート、グリコレート、ホスフェート、ニトレート、スルフェート及びアルキルスルフェートラジカルから選択されるような塩形成性アニオンである。
【0122】
脂肪族基は、炭素原子及び水素原子に加えて、エーテル結合、及び、アミノ基のような別の基を含有できる。例えば炭素数約12の脂肪族基のようなより長い鎖をもつ脂肪族基またはもっと高級な脂肪族基は飽和でも不飽和でもよい。
【0123】
本発明のコンディショナー組成物に最も好ましいカチオン性界面活性剤は、C16−C22のアルキル鎖長をもつモノアルキル第四アンモニウム化合物である。
【0124】
カチオン性界面活性剤の適例としては、第四アンモニウム化合物、特にトリメチル第四化合物がある。
【0125】
好ましい第四アンモニウム化合物としては、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド(BTAC)、セチルピリジニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、デシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、タロウトリメチルアンモニウムクロリド、ココトリメチルアンモニウムクロリド、PEG−2オレイルアンモニウムクロリド、及び、クロリドがハロゲン(例えば、クロリド、ブロミド)、アセテート、シトレート、ラクテート、グリコレート、ホスフェート、ニトレート、スルフェート及びアルキルスルフェートによって置換されたそれらの塩がある。別の適当なカチオン性界面活性剤としてはCTFA名称でクオタニウム−5、クオタニウム−31及びクオタニウム−18と呼ばれる材料がある。上記材料のいずれかの混合物も適当であろう。本発明のヘアコンディショナーに使用するための特に有用な第四アンモニウムカチオン性界面活性剤は、例えばHoechst Celanese製のGENAMIN CTAC及びAkzo Nobelによって供給されているArquad 16/29のような市販のセチルトリメチルアンモニウムクロリド、並びに、Clariantによって供給されているGenamin KDM−Pのようなベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド(BTAC)である。これらは帯電有機分子として使用され得る第四アンモニウム化合物と同じでもよいが、後者の化合物に追加して使用され後者の化合物とは別である。
【0126】
別の適当なカチオン系は、第一級、第二級及び第三級の脂肪アミンであり、これらは酸と併用されてカチオン種を与える。これらは帯電有機分子として使用され得る第四アンモニウム化合物と同じでもよいが、後者の化合物に追加して使用され後者の化合物とは別である。このようなアミンのアルキル基は好ましくは12−22個の炭素原子を有しており、置換でも未置換でもよい。
【0127】
アミド置換第三級脂肪アミン、より特定的にはC12−C22のアルキル鎖またはアルケニル鎖を1つ有している第三級アミンが特に有用である。本発明に有用なこのようなアミンとしては、ステアラミドプロピルジメチルアミン、ステアラミドプロピルジエチルアミン、ステアラミドエチルジエチルアミン、ステアラミドエチルジメチルアミン、パルミタミドプロピルジメチルアミン、パルミタミドプロピルジエチルアミン、パルミタミドエチルジエチルアミン、パルミタミドエチルジメチルアミン、ベヘナミドプロピルジメチルアミン、ベヘナミドプロピルジエチルアミン、ベヘナミドエチルジエチルアミン、ベヘナミドエチルジメチルアミン、アラキダミドプロピルジメチルアミン、アラキダミドプロピルジエチルアミン、アラキダミドエチルジエチルアミン、アラキダミドエチルジメチルアミン、ジエチルアミノエチルステアラミドがある。
【0128】
ジメチルステアラミン、ジメチルソイアミン、ソイアミン、ミリスチルアミン、トリデシルアミン、エチルステアリルアミン、N−タロウプロパンジアミン、(5モルのエチレンオキシドで)エトキシルされたステアリルアミン、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、及び、アラキジルベヘニルアミンも有用である。
【0129】
前述のように、これらのアミンは典型的には、酸と併用されてカチオン種を生じる。本発明に有用な好ましい酸は、L−グルタミン酸、乳酸、塩酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、L−グルタミン塩酸及びそれらの混合物である。L−グルタミン酸、乳酸及びクエン酸がより好ましい。本発明に有用なカチオン性アミン界面活性剤に包含される界面活性剤は1981年6月23日にNachtigalらに許諾された米国特許第4,275,055号に開示されている。
【0130】
プロトン付加可能なアミンと酸から生じるHとのモル比は好ましくは約1:0.3−1:1.2、より好ましくは約1:0.5−約1:1.1の範囲である。
【0131】
本発明のコンディショナー中のカチオン性界面活性剤のレベルは、複合粒子中に存在し得るカチオン性界面活性剤を除いて、全組成物の重量を基準として、好ましくは0.01−10重量%、より好ましくは0.05−5重量%、最も好ましくは0.1−2重量%である。
【0132】
脂肪質
本発明のコンディショナー組成物は好ましくは更に脂肪質を含んでいる。コンディショニング組成物中で脂肪質とカチオン性界面活性剤とを併用することは特に有利であると考えられる。その理由はこれによってカチオン性界面活性剤が分散した構造化ラメラ相または液晶相が形成されるからである。
【0133】
“脂肪質”という用語は、脂肪アルコール、アルコキシル化脂肪アルコール、脂肪酸またはそれらの混合物を意味する。
【0134】
好ましくは、脂肪質のアルキル鎖が完全に飽和している。
【0135】
代表的な脂肪質は8−22個の炭素原子、より好ましくは16−22個の炭素原子を含んでいる。適当な脂肪アルコールの例は、セチルアルコール、ステアリルアルコール及びそれらの混合物である。これらの材料の使用はまた、本発明の組成物の総合的コンディショニング特性に寄与するという利点も有している。
【0136】
アルキル鎖に約12個−約18個の炭素原子を有しているアルコキシル化(例えば、エトキシル化またはプロポキシル化)脂肪アルコールを脂肪アルコール自体に代替または追加して使用することもできる。適例は、エチレングリコールセチルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(4)セチルエーテル及びそれらの混合物である。
【0137】
本発明のコンディショナー中の脂肪質のレベルは、全組成物の適正には0.01−15重量%、好ましくは0.1−10重量%、より好ましくは0.1−5重量%である。カチオン性界面活性剤対脂肪アルコールの重量比は、適正には10:1−1:10、好ましくは4:1−1:8、最適には1:1−1:7、例えば1:3である。
【0138】
任意成分
懸濁化剤
好ましい実施態様では、ヘアトリートメント組成物は、特にそれがシャンプー組成物である場合、全組成物の0.1−5重量%の懸濁化剤を更に含んでいる。適当な懸濁化剤は、ポリアクリル酸、アクリル酸の架橋ポリマー、アクリル酸と疎水性モノマーとのコポリマー、カルボン酸含有モノマーとアクリルエステルとのコポリマー、アクリル酸とアクリレートエステルとの架橋コポリマー、ヘテロ多糖ガム、及び、結晶質長鎖アシル誘導体から選択される。長鎖アシル誘導体は望ましくは、エチレングリコールステアレート、16−22個の炭素原子を有している脂肪酸のアルカノールアミド及びそれらの混合物から選択される。エチレングリコールジステアレート及びポリエチレングリコール3ジステアレートが好ましい長鎖アシル誘導体である。ポリアクリル酸はCarbopol 420、Carbopol 488またはCarbopol 493として市販されている。多官能剤で架橋したアクリル酸のポリマーも使用でき、これらは、Carbopol 910、Carbopol 934、Carbopol 941及びCarbopol 980として市販されている。モノマー含有カルボン酸とアクリル酸エステルとの適当なコポリマーの一例はCarbopol 1342である。すべてのCarbopol(商標)材料はGoodrichから入手可能である。
【0139】
アクリル酸とアクリレートエステルとの架橋ポリマーの適例はPemulen TR1またはPemulen TR2である。適当なヘテロ多糖ガムは、例えばKelzan muとして入手可能なキサンタンガムである。
【0140】
本発明の組成物は、シリコーン系または非シリコーン系の別のヘアコンディショニングオイルのような、ヘアトリートメント配合物に常用の任意の別の成分を含有し得る。これらの別の成分としては、粘度調製剤、保存剤、着色剤、グリセリン及びポリプロピレングリコールのようなポリオール、EDTAのようなキレート化剤、酸化防止剤、着香料、抗菌剤及び日光遮断剤がある。これらの成分の各々は、それぞれの目的を果たすために有効な量で存在するであろう。一般にはこれらの任意成分の各々は全組成物の5重量%以下のレベルで含有される。
【実施例】
【0141】
次に、以下の非限定実施例によって本発明をより詳細に説明する。異なる記述がない限り実施例中の部及びパーセンテージは重量基準の値である。
【0142】
実施例に使用した材料を以下に示す:
【0143】
【表1】

【0144】
以下の実施例で、高剪断速度、中剪断速度及び低剪断速度で撹拌という表現は以下の意味であることを理解されたい:
高剪断:Silverson社のSilverson L4RのようなSilversonミキサーで9−10に設定した速度;
中剪断:Silversonミキサーで3−4に設定した速度;
低剪断:Heidolph Instruments社のHeidolph RZR 2020のようなHeidolphミキサーを使用。
【0145】
(実施例1)
複合粒子の調製
シリコーン毛髪有益物質を含有している複合粒子P1、P2、P3及びP4を表1に示す原料から調製した。P4には2種類のシリコーン毛髪有益物質の混合物を含有させた。重量%は全組成物の重量を基準とした100%有効な原料の割合である。
【0146】
【表2】

シリコーン(エマルジョン及び/またエラストマー)を脱イオン水に分散させた(中剪断の撹拌を伴って3分間)。次に分散液を60℃に加熱した。ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド(BTAC)を加え、中剪断の撹拌を伴って完全に溶解するまで30分間混合した。得られたブレンドを30−35℃に放冷した。次いで粉末形態の冷却ブレンドにクレーを添加し、中剪断下で15分間撹拌した。得られた生成物は白色粒子が水に懸濁した懸濁液であった。
【0147】
Malvern Mastersizer(Malvern Instruments,UK)を使用して測定すると、白色粒子(P3)の体積基準の粒径中央値(D0.5)は57ミクロンであった。
【0148】
(実施例2−5)
複合粒子を含有しているヘアコンディショナー組成物
表2に示す原料からヘアコンディショナー基剤を調製した。重量%は全組成物の重量を基準とした100%有効な原料の割合である。
【0149】
【表3】

水を85℃よりも高温に加熱することによって基剤を調製した。高剪断速度で撹拌しながらメチルパラベンを加えて溶解させた。BTACとセテアリールアルコールとを合わせて融解させ、メチルパラベン水溶液に加えて高剪断下で3分間撹拌し、次いで室温に放冷した。
【0150】
実施例1で得られた複合粒子(それぞれP1、P2、P3またはP4)の懸濁液を十分に振盪してから表2の基剤に中剪断を伴って添加した。全組成物(懸濁液と基剤との合計)の10重量%の量の懸濁液を基剤に添加し、10分間撹拌した。このようにして、実施例2を複合粒子P1から、実施例3をP2から、実施例4をP3から、実施例5をP4から調製すると、以下の表3に示す組成物が得られた。比較例A(水中のシリコーンDC1784)、B(コンディショナー基剤中のシリコーンDC1784)及びC(コンディショナー基剤中のDC1766)も示す。
【0151】
表3
実施例2−5及び比較例A−Cの調製に使用した原料。重量%は全組成物の重量を基準とした供給原料の割合である。
【0152】
【表4】

【0153】
(実施例6)
複合粒子を含有している毛髪シャンプー組成物
表4に示す原料から毛髪シャンプー基剤を調製した。重量%は全組成物の重量を基準とした100%有効な原料の割合である。
【0154】
【表5】

中剪断を伴って成分を一緒に混合することによって基剤を調製した。
【0155】
実施例1で得られた複合粒子P1の懸濁液を十分に振盪してから表4の基剤に添加した。全組成物(懸濁液と基剤との合計)の10重量%の量の懸濁液を基剤に添加し、中剪断下で10分間撹拌した。このようにして実施例6を調製すると、以下の表5に示す組成物が得られた。また、比較例D(シャンプー基剤中のシリコーン)も調製した。重量%は全組成物の重量を基準とした供給原料の割合である。
【0156】
【表6】

【0157】
(実施例7)
コンディショナーから毛髪へのシリコーン付着の評価
XRF(X線蛍光)を使用してシリコーン付着を評価した。使用したXRF計器はエネルギー分散性X線蛍光分光光度計(ED−XRF)、SPECTRO X−LAB 2000であった。毛髪へのシリコーンの付着量をKアルファエネルギー1.744KeVで測定した。
【0158】
校正は、一連の既知レベルのシリコーンを毛髪に与えてXRFカウント数を測定することによって行った。実施例の組成物から毛髪へのシリコーンの付着量をこの校正に基づいて決定した。
【0159】
使用した毛髪は、褐色の人毛で作製した重量0.25g、長さ2インチのヘアピースであった。各評価に5個のヘアピースを使用した。処理に先立って以下の手順でヘアピースを清潔にした。ヘアピースを水道の流水(約12度FH及び約35℃)で10秒間濡らした。(全部の)ヘアピースに表4のシャンプー基剤(0.15g)を塗布し、30秒間マッサージした後で30秒間すすいだ。
【0160】
洗浄後の濡れたヘアピースにコンディショナー組成物(0.30g)を塗布して1分間マッサージした。揉むのをやめてコンディショナーの付いた毛髪を1分間静置した後、水道の流水で30秒間すすいだ。次にヘアピースを十分に乾燥させてから、XRFセルに固定し、シリコーン付着を分析した。
【0161】
このようにして、実施例3及び4、比較例A及びBの組成物からのシリコーン付着量を測定し、表6に示す。
【0162】
表6
XRFによって測定した比較例AとB及び実施例3と4からヘアピースへのSi付着量(ppm)(5個のヘアピースの平均)
【0163】
【表7】

本発明のコンディショナー組成物から毛髪へのシリコーンの付着量が劇的に増加したことが理解されよう。
【0164】
(実施例8)
シャンプー組成物から毛髪へのシリコーン付着の評価
実施例6または比較例Dのシャンプー組成物(0.15g)を5個のヘアピースに塗布し、30秒間マッサージし、水道の流水で30秒間すすいだ。
次にヘアピースを十分に乾燥させてから、XRFセルに固定し、XRFを使用してシリコーン付着を分析した(実施例7に記載の方法)。
【0165】
表7
XRFによって測定した比較例D及び実施例6からヘアピースへのSi付着量(ppm)(5個のヘアピースの平均)
【0166】
【表8】

本発明のシャンプーから毛髪へのシリコーンの付着量が劇的に増加したことが理解されよう。
【0167】
(実施例9)
消費者による毛髪の感触の評価
感触の評価に使用した毛髪は長さ約11インチ、重さ約10gのヘアピースに作製した暗褐色の人毛であった。使用の前に、評価すべきヘアピースの感触特性、即ち、滑らか感、しなやか感、潤い感、及び、サラサラ感/清潔感をバランスよく調整した。
【0168】
コンディショナー組成物でトリートメントする前に以下の手順でヘアピースを清潔にした。水道の流水(約12度FH及び35℃)でヘアピースを10秒間濡らした。表4のシャンプー基剤(毛髪1gあたりシャンプー0.12g)を各ヘアピースに塗布し、30秒間マッサージした後、30秒間すすいだ。
【0169】
洗浄後の濡れたヘアピースにコンディショナー組成物(毛髪1gあたりコンディショナー0.24g)を塗布し、1分間マッサージした。揉むのをやめてコンディショナーの付いた毛髪を1分間静置し、水道の流水で30秒間すすいだ。次いでヘアピースを乾燥させた。1種類のコンディショナー組成物あたり1個のヘアピースを使用した。
【0170】
このようにして、実施例4と5及び比較例Cでヘアピースを処理した後、これらのヘアピースの滑らか感、しなやか感、潤い感、及び、サラサラ感/清潔感を10名の消費者から成るパネルによって評価した。消費者は0−100の段階を使用して各組成物の各感触特性を評価した。
【0171】
評価結果を以下の表8に示す。これは10名の消費者の評価の平均である。
【0172】
表8
【0173】
【表9】

本発明のコンディショナー組成物でトリートメントした毛髪では感触特性が有意に改善されていたことが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性複合粒子の水性分散液を含み、前記粒子が、
(i)正味表面電荷をもつクレーと、
(ii)少なくとも6個の炭素原子を含む帯電有機分子と、
(iii)帯電有機分子に不混和性の水不溶性毛髪有益物質と、
を含み、帯電有機分子の電荷がクレーの正味表面電荷の反対符号であり、ヘアトリートメント組成物が更に1種または複数の適当なヘアトリートメント成分を相溶性水性担体中に含んでいるヘアトリートメント組成物。
【請求項2】
帯電有機分子対クレーの重量比が0.05:1から20:1の範囲である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
複合粒子の体積基準の粒径中央値が5から450ミクロンである請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
クレーが負の正味表面電荷を有しており、帯電有機分子が正の電荷を有している請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
クレーが合成ヘクトライトである請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
帯電有機分子が、アルキル鎖に12から22個の炭素原子を含んでいるアルキルトリメチルアンモニウムクロリドのカチオンである請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
帯電有機分子がカチオン性ポリマーである請求項4または5に記載の組成物。
【請求項8】
クレー対水不溶性毛髪有益物質の重量比が0.05:1から1:1の範囲である請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
水不溶性毛髪有益物質がシリコーンポリマーである請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
シリコーンポリマーがシリコーンエラストマーである請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
全組成物を基準とした水不溶性複合粒子の重量が、全組成物の0.01から20重量%である請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
リンスオフ型のヘアコンディショナーである請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
(i)水不溶性毛髪有益物質とクレーとを水に分散させてクレーと毛髪有益物質とが分散した予備混合物を形成する段階と、
(ii)予備混合物と帯電有機分子とを合わせる段階と、
を含む請求項1から11のいずれか一項に記載の複合粒子の水性分散液の調製方法。
【請求項14】
(i)水不溶性毛髪有益物質と帯電有機分子とを水に分散させて帯電有機分子と毛髪有益物質とが分散した予備混合物を形成する段階と、
(ii)予備混合物とクレーとを合わせる段階と、
を含む請求項1から11のいずれか一項に記載の複合粒子の水性分散液の調製方法。
【請求項15】
(i)請求項13または14に記載の方法によって複合粒子の水性分散液を調製する段階と、
(ii)複合粒子の水性分散液を最初に乾燥させることなく、複合粒子の水性分散液と残りの適当なヘアトリートメント成分とを相溶性水性担体中で合わせる段階と、
を含む請求項1から11のいずれか一項に記載のヘアトリートメント組成物の製造方法。
【請求項16】
請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物を毛髪及び/または頭皮に塗布し次いで水ですすぐ段階を含む毛髪及び/または頭皮のトリートメント方法。
【請求項18】
請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物を毛髪及び/または頭皮に塗布し次いで水ですすぐ段階を含む毛髪及び/または頭皮に毛髪有益物質を付着させる方法。
【請求項19】
毛髪及び/または頭皮に毛髪有益物質を付着させるための請求項1から12のいずれか一項に記載のヘアトリートメント組成物の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性複合粒子の水性分散液を含み、前記粒子が、
(i)正味表面電荷をもつクレーと、
(ii)少なくとも6個の炭素原子を含む帯電有機分子と、
(iii)帯電有機分子に不混和性であり、シリコーンポリマー、シリコーン混合物または微粉固体から成る水不溶性毛髪有益物質と、
を含み、帯電有機分子の電荷がクレーの正味表面電荷の反対符号であり、ヘアトリートメント組成物が更に1種または複数の適当なヘアトリートメント成分を相溶性水性担体中に含んでおり、組成物中の複合粒子の重量が組成物の全重量の0.05から10重量%の範囲であるヘアトリートメント組成物。
【請求項2】
帯電有機分子対クレーの重量比が0.05:1から20:1の範囲である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
複合粒子の体積基準の粒径中央値が5から450ミクロンである請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
クレーが負の正味表面電荷を有しており、帯電有機分子が正の電荷を有している請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
クレーが合成ヘクトライトである請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
帯電有機分子が、アルキル鎖に12から22個の炭素原子を含んでいるアルキルトリメチルアンモニウムクロリドのカチオンである請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
帯電有機分子がカチオン性ポリマーである請求項4または5に記載の組成物。
【請求項8】
クレー対水不溶性毛髪有益物質の重量比が0.05:1から1:1の範囲である請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
水不溶性毛髪有益物質がシリコーンポリマーである請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
シリコーンポリマーがシリコーンエラストマーである請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
リンスオフ型のヘアコンディショナーである請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
(i)水不溶性毛髪有益物質とクレーとを水に分散させてクレーと毛髪有益物質とが分散した予備混合物を形成する段階と、
(ii)予備混合物と帯電有機分子とを合わせる段階と、
を含む請求項1から10のいずれか一項に記載の複合粒子の水性分散液の調製方法。
【請求項13】
(i)水不溶性毛髪有益物質と帯電有機分子とを水に分散させて帯電有機分子と毛髪有益物質とが分散した予備混合物を形成する段階と、
(ii)予備混合物とクレーとを合わせる段階と、
を含む請求項1から10のいずれか一項に記載の複合粒子の水性分散液の調製方法。
【請求項14】
(i)請求項12または13に記載の方法によって複合粒子の水性分散液を調製する段階と、
(ii)複合粒子の水性分散液を最初に乾燥させることなく、複合粒子の水性分散液と残りの適当なヘアトリートメント成分とを相溶性水性担体中で合わせる段階と、
を含む請求項1から10のいずれか一項に記載のヘアトリートメント組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物を毛髪及び/または頭皮に塗布し次いで水ですすぐ段階を含む毛髪及び/または頭皮のトリートメント方法。
【請求項16】
請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物を毛髪及び/または頭皮に塗布し次いで水ですすぐ段階を含む毛髪及び/または頭皮に毛髪有益物質を付着させる方法。
【請求項17】
毛髪及び/または頭皮に毛髪有益物質を付着させるための請求項1から11のいずれか一項に記載のヘアトリートメント組成物の使用。

【公表番号】特表2006−501254(P2006−501254A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−533376(P2004−533376)
【出願日】平成15年8月20日(2003.8.20)
【国際出願番号】PCT/EP2003/009224
【国際公開番号】WO2004/022011
【国際公開日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】