説明

ヘアピン標識したプローブと使用方法

本発明では、標的結合領域を持ち、少なくとも一方の端に標識されたヘアピン構造を持つ、ハイブリダイゼーション用の核酸プローブを提供する。ヘアピン標識プローブには、オリゴヌクレオチド、デンドリマー、およびプライマーにより伸長された核酸が含まれる。プローブは、開示された方法に従って、標的の核酸の検出に用いることができる。さらに、オリゴヌクレオチドプローブは、プライマーを用いた伸長反応のための開示された方法(例えば、ランダムプライミングおよびPCR増幅)において用いて、プライマーにより伸長されたヘアピン標識プローブを作製する。また、ヘアピン標識されたオリゴヌクレオチドとデンドリマープローブを含むキットも開示する。さらに、本発明では、標識されたヘアピン構造に結合することで標識される生体分子(例えば、ペプチド、ポリペプチド、炭水化物、脂質等)も提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連した出願との相互参照)
本願は米国仮特許出願第60/485,471号(2003年7月7日出願)による利益を請求するものであり、この仮特許出願は、全体が本明細書に参考として援用される。
【0002】
(発明の背景)
核酸のハイブリダイゼーションは、標的核酸の検出における強力な手段である。しかし、現在の検出プローブおよび手法は、様々な適用において、低レベルの標的核酸の検出能力が損なわれているという、確かな欠点がある。例えば、オリゴヌクレオチドプローブは、サイズが小さいために、化合物(例えば、白金またはソラレン化合物)または酵素学的手法(例えば、ランダムプライマー標識、ポリメラーゼ連鎖反応標識、またはニックトランスレーション標識)を用いて標識することが容易には出来ない。最も一般的には、オリゴヌクレオチドの標識は3’末端の標識を用いた合成、またはこれに代えて、後の合成を通して行われ、3’末端の標識はオリゴヌクレオチドの3’末端への、標識されたヌクレオチドの付加を含む。1つ標識されたヌクレオチドは、「鎖終結」ヌクレオチドを使用することによって付加され得る。あるいは、非終結ヌクレオチドも用いられ得、その結果、複数のヌクレオチドが「尾」を形成するために付加される(図1A)。しかし、「テイリング」の欠点は、例えば、実験間での「尾」の長さの可変性、代表的に付加される標識が低量であること(「尾の付加された」オリゴヌクレオチドの多くは、1〜2個のみの標識しか付加されていない)、および、低量のオリゴヌクレオチドしか標識できないことを含む。
【0003】
標識を合成するためには、ほかの共通の手法では、標識されたヌクレオチド(例えば、ホスホラミダイトヌクレオチド)を、化学合成法を用いてオリゴヌクレオチドに取り込ませる。標識はオリゴヌクレオチドの5’末端、3’末端、または両端に付加され(図1B)(例えば、米国特許第5,082,830号参照)、あるいは、ODNの内部に位置する塩基に付加される(図1C)。しかし、かさ高い標識された分子の存在に起因する、オリゴヌクレオチドの標的核酸とのハイブリッドの安定性への悪影響により、内部標識は好ましくない。さらに、内部標識は、配列中に存在する同族のヌクレオチドの数によって制限される。
【0004】
最近のオリゴヌクレオチドプローブのいくつかは、ヘアピン構造を形成するヌクレオチド配列を含む(例えば、米国特許第5,674,683号、同5,808,036号、同6,114,121号を参照)。しかし、これらのプローブは上記と類似した欠点を持ち、その欠点は例えば、内部のヌクレオチドの標識か、または、オリゴヌクレオチドの5’末端での標識である。さらに、ヘアピン構造を持つ他のオリゴヌクレオチドが、捕捉プローブとして開発されてきた一方で(例えば、米国特許第5,770,365号、同6,380377号)、これらの構造は、検出感度が向上しているにもかかわらず、検出プローブとして使用するためには設計されてきていない。
【0005】
それゆえ、最近のハイブリダイゼーションプローブおよび方法は、核酸検出能力を限定しており、それによって、診断上の用途および分析用の用途を含む様々な手順における効果的な利用を限定している。例えば、最近のプローブおよび方法を用いて、例えば、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、エプスタイン−バー−ウィルス(EBV)またはサイトメガロウィルス(CMV)のウィルス負荷量を、無症状の患者から検出することはしばしば出来ず、それゆえ、疾患の初期段階の確認能力、または潜伏期間中に主に感染されている細胞種の評価能力を限定している。ウィルスの蓄積の、より正確な確認を含む、速く、感度の高い、ウィルス感染の評価方法は、治療処置の最適化のために必要である。
【0006】
それゆえ、当該分野において、改善された検出感度を持つように標識されたオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブの必要性がある。本明細書で提供される組成物および方法は、これらの、およびその他の要求に合致する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、(1)標的核酸と実質的に相補的な一本鎖標的結合セグメント、および(2)ステム領域とループ領域を含むヘアピン構造であって、そのヘアピン構造内の2個以上のヌクレオチドが検出可能な標識を持つヘアピン構造を含む、標識されたオリゴヌクレオチドを提供する。ある実施形態では、標識されたオリゴヌクレオチドは、標的結合セグメントとヘアピン構造との間にリンカーをも含む。様々な実施形態において、検出可能な標識を持つヘアピンヌクレオチドは、ループ領域、ステム領域、またはループ領域とステム領域の両方に存在する。個々の実施形態においては、少なくとも5つのヌクレオチド(例えば9つのヌクレオチド)が、検出可能に標識されている。さらに、本発明におけるある実施形態では、ヘアピン標識されたオリゴヌクレオチドは、例えば、60個以下、100個以下、または150個以下のヌクレオチドを持ち得る。その他の実施形態では、ループ領域は3〜10個のヌクレオチドを持ち、そして/または、ステム領域は16〜40個のヌクレオチドを持つ。検出可能に標識されたヌクレオチドは、隣接し得るか、または少なくとも2ヌクレオチド分(例えば2〜6ヌクレオチド分)間隔が空き得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、標的結合セグメントは所定のセグメント(すなわち、所定の核酸、例えばウィルス核酸(例えば、HIV核酸またはEBV核酸)に従って設計されている)である。その他の実施形態では、標的結合セグメントはランダムセグメントまたは縮重セグメントである。
【0009】
その他の実施形態では、検出可能な標識は間接的な標識であり、例えば、ビオチンまたはハプテン(例えば、ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール(DNP)、ビオチン、およびフルオレセイン)である。さらに他の実施形態では、検出可能な標識は直接的な標識であり、例えば蛍光物質(fluorophore)(例えば、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリトリン、Cy3,およびCy5)である。
【0010】
さらに他の実施形態では、本発明は、(1)標的核酸に実質的に相補的な一本鎖標的結合セグメント、(2)第1のステム領域および第1のループ領域を含む第1のヘアピン構造、ならびに(3)第2のステム領域および第2のループ領域を含む第2のヘアピン構造を持つ標識されたオリゴヌクレオチドを提供し、ここで、第1のヘアピン構造内の少なくとも1つのヌクレオチド、および第2のヘアピン構造内の少なくとも1つのヌクレオチドが検出可能な標識を持ち、そして、第1のヘアピン構造および第2のヘアピン構造は標的結合セグメントの対向する末端に結合されている。ある実施形態では、第1のヘアピン構造、第2のヘアピン構造、または、第1のヘアピン構造および第2のヘアピン構造の両方の中で、少なくとも2つのヌクレオチドが検出可能に標識されている。
【0011】
ある実施形態では、本発明はまた、(1)(a)標的核酸に実質的に相補的な一本鎖標的結合セグメント、および(b)ステム領域とループ領域を持つヘアピン構造で、ヘアピン構造内の2個以上のヌクレオチドが検出可能な標識を持つヘアピン構造、を含む2個以上の標識されたオリゴヌクレオチド、そして(2)オリゴヌクレオチドに結合する分枝した分子を含む、デンドリマープローブを提供する。
【0012】
さらに他の実施形態では、本発明は、(1)ステム領域とループ領域を含むヘアピン構造を形成するオリゴヌクレオチドであって、ヘアピン構造内の複数のヌクレオチドが検出可能な標識を持つオリゴヌクレオチド、および(2)オリゴヌクレオチドに生体分子を結合させるリンカーを含む、標識された生体分子を提供する。
【0013】
本発明はまた、サンプル内の標的核酸を検出する方法を提供する。その方法は、以下の工程を含む。(1)サンプルをオリゴヌクレオチドプローブと接触させる工程で、そのオリゴヌクレオチドプローブは、(a)標的核酸に実質的に相補的な一本鎖の標的結合セグメント、および(b)ステム領域とループ領域を含むヘアピン構造で、ヘアピン構造内の複数のヌクレオチドが検出可能な標識を持つヘアピン構造、を含むオリゴヌクレオチドプローブである、工程;(2)サンプルおよびオリゴヌクレオチドプローブを、標的結合セグメントが標的核酸にハイブリダイズするに十分な条件下でインキュベートする工程;(3)標的核酸を検出するために、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドプローブ上の標識を検出する工程。いくつかの実施形態では、上記の方法はさらに、標識の検出前に、ハイブリダイズしなかったオリゴヌクレオチドプローブを除去する工程を含む。さらに、様々な実施形態では、検出方法において用いられているオリゴヌクレオチドプローブは、上記のヘアピン標識されたオリゴヌクレオチドのいずれかである。もう1つの実施形態では、用いられるプローブは上記のヘアピン標識されたデンドリマープローブである。
【0014】
さらに、検出可能な標識が間接的な標識である方法における、ある実施形態では、検出は、間接的な標識を二次標識と接触させる工程を含む。例えば、間接的な標識がビオチンであるとき、二次標識は例えばストレプトアビジンであり得る。同様に、間接的な標識がハプテンであるとき、二次標識は例えば、標識した抗ハプテン抗体であり得る。
【0015】
検出方法における、さらに他の実施形態では、標的核酸は固体の基材に固定される。あるいは、その他の実施形態では、標的核酸は細胞サンプルまたは組織サンプル内にあり、標識されたオリゴヌクレオチドはインサイチュで標的核酸にハイブリダイズする。ある実施形態では、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドプローブ上の標識の検出は、液相アッセイ(例えば、フローサイトメトリーを含むアッセイ)を含む。
【0016】
本発明はまた、伸長したプライマーを生成するために、標的核酸がオリゴヌクレオチドプライマーからの伸長のためのテンプレートとして働く条件下で、標的核酸をオリゴヌクレオチドプライマーと接触させる工程を含む、プライマー伸長のための方法を提供し、上記のオリゴヌクレオチドプライマーは、(1)標的核酸と実質的に相補的な一本鎖標的結合セグメント、および(2)ステム領域とループ領域を含むヘアピン構造であり、ヘアピン構造内の2個以上のヌクレオチドが検出可能な標識を持つヘアピン構造を含む。ある実施形態では、上記の方法はさらに、標的核酸を上記の伸長したプライマーに実質的に相補的なプライミングセグメントを持つ第2のプライマーと、標的核酸が上記のオリゴヌクレオチドプライマーと第2のプライマーからの増幅のためのテンプレートとして働いて、増幅産物を生成する条件下で、接触させる工程を含む。第2のプライマーは、例えば、第2のステム領域と第2のループ領域を含む第2のヘアピン構造であって、第2のヘアピン構造内の少なくとも1つのヌクレオチドが検出可能な標識を持つ、第2のヘアピン構造を含み得る。2つのヘアピン標識されたプライマーの使用を含むある実施形態では、第1のプライマーと第2のプライマーそれぞれのヘアピン構造内の少なくとも1つのヌクレオチドが検出可能に標識される。
【0017】
プライマー伸長の方法におけるいくつかの実施形態では、増幅は未標識の遊離のヌクレオチドの存在下で行われる。その他の実施形態では、標的結合セグメントはランダムである(例えばランダムセグメントは、例えば3〜10個のヌクレオチドを持つ)。
【0018】
本発明はまた、標的核酸を検出するためのキットを提供し、そのキットは、(1)(a)標的核酸に実質的に相補的な一本鎖標的結合セグメント、および(b)ステム領域とループ領域を含むヘアピン構造であって、そのヘアピン構造内の2個以上のヌクレオチドが検出可能な標識を持つヘアピン構造、を含む標識されたオリゴヌクレオチド、または(2)(a)2個以上の(1)に記載の標識されたオリゴヌクレオチド、および(b)そのオリゴヌクレオチドに結合した分枝した分子、を含むデンドリマープローブ、のどちらかを提供する、少なくとも1つの容器を含む。ある実施形態では、上記の検出可能な標識は間接的な標識であって、そのキットはさらに、その間接的な標識を検出するための第2の因子を提供する、少なくとも1つの第2の容器を含む。
【0019】
本発明はさらに、オリゴヌクレオチドプライマーのプライマー伸長のためのキットをさらに提供し、そのキットは、(a)標的核酸に実質的に相補的な一本鎖標的結合セグメント、および(b)ステム領域とループ領域を含むヘアピン構造であって、そのヘアピン構造内の2個以上のヌクレオチドが検出可能な標識を持つヘアピン構造、を含む標識されたオリゴヌクレオチドプライマーを提供する、少なくとも1つの第1の容器を含み、そのオリゴヌクレオチドプライマーは上記のヘアピン構造が上記の標的結合セグメントの5’側に位置するオリゴヌクレオチドプライマーである。ある実施形態では、上記のキットはさらに、第2のプライマーを提供する少なくとも1つの第2の容器を含み、その第2のプライマーは、上記の標的核酸が上記の標識されたオリゴヌクレオチドプライマーからの伸長のためのテンプレートとして働く条件下で生成された伸長したプライマーと、実質的に相補的なプライミングセグメントを含む。さらに他の実施形態では、上記のキットはまた、標識されているかまたは未標識の遊離のヌクレオチドを提供する少なくとも1つの第3の容器、ポリメライゼーション薬剤を提供する少なくとも1つの第4の容器、およびプライマー伸長に適したバッファーを提供する少なくとも1つの第5の容器を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
別に定義されない限り、本明細書で用いられる技術的および科学的な全ての用語は、本発明が属する当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を持つ。本明細書で記述されたものと類似した、いかなる方法および物質も、本発明における実施または試験において用いられ得るが、模範的な方法および物質のみが記述される。本発明の目的のためには、以下の語を以下のように定義する。
【0021】
用語「ある」および「その」は、限定的ではなく、文脈が明らかに他を示していない限り、複数の対象を含む。
【0022】
用語「ヌクレオチド」は、天然に存在するリボヌクレオチド単量体またはデオキシリボヌクレオチド単量体への言及に加え、本明細書では、誘導体およびアナログを含む、それに関連する構造的な改変体へ言及すると理解されるものとし、その改変体は、ヌクレオチドが用いられている個々の文脈(例えば、ヘアピン構造の形成、相補的な塩基へのハイブリダイゼーション、または2つの隣接していない核酸セグメントの結合)について、その文脈が明らかに他を示していない限り、機能的に等価である。
【0023】
用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」は同義であり、複数のヌクレオチド単量体を持つ多量体をよぶ。核酸は一本鎖であっても二本鎖であってもよく、そしてDNA(cDNAまたはゲノム)、RNA、合成物、または混合された多量体であってもよく、そしてまた、化学的または生化学的に改変されてもよく、あるいは非天然または誘導体化されたヌクレオチド塩基を含んでいてもよい。こうした改変は例えば、メチル化、1つ以上の天然に存在するヌクレオチドのアナログでの置換、無電荷の連結(例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミドデート、カルバメートなど)、電荷を持つ連結(例えばホスホロチオネート、ホスホロジチオネートなど)、ぶら下がった基(例えばポリペプチド)、挿入剤(例えばアクリジン、ソラレンなど)、キレート剤、アルキル化剤、または修飾された連結(例えば、αアノマー核酸など)を含む。また、水素結合およびその他の化学的相互作用を介して設計された配列に結合する能力において、ポリヌクレオチドを模倣した合成分子も含まれる。核酸の合成物は他の連結(例えば、Nielsenら、前出、Science 254,1497−1500,1991に記載のペプチド核酸)を含んでもよいが、典型的には、ヌクレオチド単量体はホスホジエステル結合を介して連結される。「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、いかなる特定の長さの多量体をも言及するものではなく、それゆえ、実質的に任意の長さであってもよく、代表的には6個〜10個以上のヌクレオチドとなる。二本鎖多量体の場合には、「核酸」または「ポリヌクレオチド」はいずれかの鎖、または両方の鎖に言及してもよい。
【0024】
用語「オリゴヌクレオチド」は、長さにおいて6個〜175個以上のヌクレオチドのポリヌクレオチドの部分集合をよぶ。代表的なオリゴヌクレオチドは、長さにおいて100ヌクレオチドまでである。オリゴヌクレオチドは公知の方法を用いて(例えば、Applied BioSystems(Foster City,CA)製のものを例とする、自動オリゴヌクレオチド合成装置を用いて)合成され得る。
【0025】
用語「標的核酸」は、検出されることになっている核酸、またはプライミング(例えば、PCRまたはランダムプライミング)のためのテンプレートとして働くことになっている核酸を意味する。本明細書に記述されている使用のためには、二本鎖の標的は一般に、公知の方法を用いて一本鎖の標的にされるが、標的核酸は一本鎖であっても二本鎖であってもよい。標的核酸は,核酸を含む基本的に任意の天然の原料(例えば、細胞、組織、または生体体液)に由来する、例えば、原核生物、真核生物、またはウィルスのポリヌクレオチドを含み得る。
【0026】
「オリゴヌクレオチドプローブ」は、1つ以上の形式の化学的結合を介して、通常は相補的な塩基対合を介して、または通常は水素結合の形成を介して、実質的に相補的な標的核酸と結合する能力を持つオリゴヌクレオチドとして定義される。プローブは、天然の塩基(すなわち、A、G、C、またはT)または改変された塩基(例えば、7−デアザグアノシン、またはイノシン)を含み得る。さらに、プローブ内の塩基は、ハイブリダイゼーションの阻害をしない限り、ホスホジエステル結合以外の連結によって結合されてよい。例えばオリゴヌクレオチドプローブは、構成塩基がホスホジエステル連結以外のペプチド結合によって結合されている、ペプチド核酸であり得る。
【0027】
「標識されたオリゴヌクレオチド」は、プローブに結合された標識の存在の検出によってプローブの存在が検出され得るように、標識に、リンカーを介して共有結合的に、あるいは、イオン結合、ファンデルワールス結合、または水素結合を介してか、いずれかの方法によって結合されたオリゴヌクレオチドである。
【0028】
「間接的な標識」は、その間接的な標識に特異的に結合する、標識された第2の因子(「リガンド結合パートナー」)を用いて検出される、特異的に結合し得る分子(「リガンド」)である。逆に言えば、「直接的な標識」はリガンド結合パートナーとの相互作用無しに検出される。間接的な標識のためには、第2の因子が直接的な標識を代表的に有するか、または、代わりに第2の因子はまた間接的に標識されてもよい。代表的な「直接的な標識」としては、例えば蛍光物質(例えば、フルオレセイン、ローダミン、またはフタロシアニン色素)、発色団(例えばフィコビリンタンパク質)、発光物質(例えば、化学発光物質または生物発光物質)、ランタニドキレート(例えば、Eu3+の複合体、またはTb3+の複合体)、酵素(例えばアルカリホスファターゼ)、補因子、および放射性同位元素(例えば、H、35S、32P、125I、および14C)を含む残基が挙げられる。代表的な間接的な標識としては、例えばハプテン、ビオチン、またはその他の特異的に結合し得るリガンドが挙げられる。
【0029】
「ハプテン」は、単離されたエピトープ、すなわち抗原決定基を持つ分子を意味する。ハプテンの例としては、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニン、ビオチン、およびフルオレセインが挙げられる。間接的な標識として、ハプテンは、抗ハプテン抗体を前記のリガンド結合パートナーとして用いて、代表的に検出される。しかし、ハプテンはまた、代替のリガンド結合パートナー(例えば、ビオチンの場合には、例えば抗ビオチン抗体またはストレプトアビジンがリガンド結合パートナーとして利用できる)を用いて検出できる。さらに、ある実施形態では、ハプテンはまた直接的に検出できる(例えば、フルオレセインの場合には、抗フルオレセイン抗体または蛍光の直接的な検出を用いることができる)。
【0030】
「類似性」は、2つの核酸の文脈において、その2つの核酸が比較され、そして最大一致のために整列される(視覚的な点検、または、配列比較アルゴリズム(例えばPILEUPまたはBLAST)を用いた測定による)場合に、類似したヌクレオチド配列を有することを意味する。例えば、2つの核酸が比較され、そして最大一致のために整列化される場合に、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のヌクレオチドの同一性を共有している場合、これらは類似している。2つの核酸が少なくとも60%、代表的には少なくとも80%、より代表的には少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%のヌクレオチドの同一性を共有している場合、これらは「実質的に類似」または「実質的に同一」である。
【0031】
「所定の核酸」は、オリゴヌクレオチドプローブの標的結合領域を設計するため(すなわち、実質的な相補性のため)に用いられる核酸をよぶ。例えば、標的核酸または標的との類似性を持つ核酸は所定のものと言ってよい。所定の核酸に従って設計された標的結合領域は、本明細書では、オリゴヌクレオチドプローブの「所定の標的結合領域」または「所定のセグメント」である。
【0032】
オリゴヌクレオチドプローブの文脈において、「ランダムセグメント」および「ランダム標的結合領域」は、ランダムに順序付けられたヌクレオチドまたはその誘導体を持つ標的結合領域を言及し、それゆえ例えば、標的結合領域内の任意の部位を占める任意の4種の塩基に同等の可能性がある。
【0033】
「縮重標的結合領域」または「縮重セグメント」は、遺伝暗号の縮重に基づいた所定のペプチドまたはポリペプチドに従って設計された標的結合領域を言及する。それゆえ、縮重標的結合領域は、固定のヌクレオチド位置および縮重ヌクレオチド位置の双方を持つ。「縮重」ヌクレオチド位置は、対応するアミノ酸およびコドン位置に依存して、2種の、3種の、または4種のいずれかの塩基によって占められる、同等の可能性を持つ。
【0034】
用語「サンプル」は、一般に生物由来の物質をよぶ。サンプルとして、例えば組織;細胞;血漿;血清;髄液;リンパ液;涙液;唾液;血球;毛髪;腫瘍;器官;皮膚、呼吸器、腸管および尿生殖器路の外部切片が挙げられる。サンプルはまた、インビトロでの、上記の細胞培養成分を含み得る。サンプルは、ある成分(例えば、非ポリヌクレオチドまたはその他の非標的成分)を除くために、精製または部分精製され得る。
【0035】
「実質的に相補的」とは、核酸鎖が標的核酸鎖にハイブリダイズする能力があることを意味する。「ハイブリダイゼーション」は十分な水素結合を意味し、それは例えば、核酸鎖間で安定および特異的な結合が生じるような相補的なヌクレオシドまたはヌクレオチド塩基間の、ワトソン・クリック型水素結合、フーグスティーン型水素結合または逆フーグスティーン型水素結合であり得る。ハイブリダイゼーション能力はストリンジェントな条件に従って決定され、その条件は、完全な、または部分的な相補性を持つ領域を有する標的核酸と特異的なハイブリダイゼーションをし得る、適したバッファー濃度および温度を含む。このように、その核酸の全てのヌクレオチドが相補性を要求されるのではない。さらに、核酸鎖がその標的核酸の全ての領域、部分領域、または重複した領域にハイブリダイズする場合、その核酸鎖は「実質的に相補的」である。本発明に従うオリゴヌクレオチドの設計のためのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を確立するための質的および量的な考慮事項は、当該分野で公知である(例えば、Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology(第4版、John Wiley&Sons 1999);Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press 2001);Nucleic Acid Hybridisation: A Practical Approach(B.D.Hames&S.J.Higgins編、IRL Press 1985)参照)。ストリンジェントなハイブリダイゼーション状態は、ハイブリダイゼーション工程のために、例えば6×NaCl/クエン酸ナトリウム(SSC)で45℃、続いて2×SSCで50℃の洗浄を含み得、または代わりに、例えば、5×SSC,20mM NaPO,pH 6.8,50%ホルムアミド中42℃でのハイブリダイゼーション、続いて0.2×SSCで42℃の洗浄を含み得る。代表的には、例えばそれぞれの塩基の少なくとも90%が相補的である場合、より代表的にはそれぞれの塩基の少なくとも95%が相補的である場合、好ましくはそれぞれの塩基の100%が相補的である場合、2つの核酸領域は実質的に相補的である。
【0036】
「T」は、完全に一致するプローブに標的配列の50%が、(定義されたイオン強度およびpH条件下で)ハイブリダイズする温度として定義される。
【0037】
用語「プライマー」は、適したバッファーおよび適した温度の、適した条件(すなわち、4つの異なるヌクレオシドトリホスフェートおよびポリメライゼーションのための因子(例えば、DNAまたはRNAのポリメラーゼ、あるいは逆転写酵素)の存在下)において、テンプレート指向性の核酸合成の開始点として働き得るポリヌクレオチドをよぶ。それゆえ、プライマーは標的核酸(テンプレート)にハイブリダイズする標的結合領域を含む。プライマーは代表的にはオリゴヌクレオチドであり一本鎖であるが、二本鎖セグメントを有するポリヌクレオチド(例えば、下記に示すような、一本鎖領域およびヘアピン領域を有するオリゴヌクレオチド)に言及してもよい。プライマーのための標的結合領域の適した長さは、そのプライマーの使用目的に依存するが、代表的には6〜40ヌクレオチドの範囲である。短いプライマー分子は一般に、テンプレートと十分に安定なハイブリッド複合体を形成するためには、より低い温度条件を必要とする。プライマーは、テンプレートの正確な配列を反映する必要はないが、テンプレートとハイブリダイズするために十分に相補的でなければならない。用語「プライマー部位」は、プライマーがハイブリダイズする標的核酸の領域をよぶ。用語「プライマー対」は、増幅される核酸配列の5’末端にハイブリダイズする5’上流プライマー、および、増幅されるその配列の3’末端の相補体にハイブリダイズする3’下流プライマーを含む、プライマーのセットを意味する。
【0038】
用語「ヘアピン構造」は、二本鎖の「ステム」領域および一本鎖の「ループ」領域を有する核酸をよび、ステム領域およびループ領域は、(1)ステムを含む二本鎖セグメントを形成する(すなわち、相補的な塩基対合を介して)ように、相互に、実質的に相補的な2つの領域、ならびに(2)2つの相互に相補的な領域間に差し挟まれた、ループを形成する第3の領域、を有する一本鎖の核酸から形成される。ヘアピン構造は、例えば、Varani,Annu.Rev.Biophys.Biomol.Struct.24:379−404, 1995に記載される。
【0039】
用語「隣接する」は、核酸の2つのセグメントに関して、そのセグメントが重複せず、そして介在性セグメントによって間隔を空けられていないことを意味する。
【0040】
用語「リンカー」は、核酸の、2つの隣接していない、かつ重複していないセグメントの付着に関する文脈において、隣接していないセグメント間に挿入され、そして、その隣接していないセグメント群と隣接している分子(単量体または多量体の)を意味する。このリンカーは、ヌクレオチドリンカー(すなわち、隣接していないセグメント間に存在し、そして、その隣接していないセグメント群と隣接している核酸のセグメント)または非ヌクレオチドのリンカーであり得る。
【0041】
用語「液相アッセイ」は、標的核酸が、溶液内または懸濁液内において検出される(例えば、プローブが懸濁細胞内にてインサイチュで標的核酸にハイブリダイズする際に、例としてフローサイトメトリー解析を用いて、検出される場合)、任意のアッセイをよぶ。
【0042】
「単離された核酸」は、その本来の環境(例えば、天然に存在する場合、天然の環境)から取り除かれた核酸をよぶ。例えば、生きている動物内の天然に存在する核酸は単離されていないが、同一の核酸は、天然の系内に共存するいくつかの、または全ての物質を除いた場合には、単離されている。このような核酸はベクターの一部であってよく、および/または、このような核酸は組成物の一部であってよく、そして、このようなベクターまたは組成物は、その天然の環境の一部でないという点においては、なお単離されている。
【0043】
(II.ヘアピン標識プローブ)
本発明は、標的核酸配列の検出のための新規のハイブリダイゼーションプローブを提供する。上記のハイブリダイゼーションプローブは、熱力学的に安定なヘアピン構造を形成する能力のある一方の末端または両端を有する、合成的に生成されたオリゴヌクレオチドを含む。上記のヘアピン構造内には、検出可能な分子に連結された、2個以上のヌクレオチドが存在する(例えば、図2を参照)。複数のヌクレオチドを、それぞれのオリゴヌクレオチドプローブのヘアピン構造で標識することは、プローブ−標識ハイブリッドの安定性を維持すると同時に、検出感度を上昇させ、それにより、低レベルの標的核酸の検出を可能にする。複数の標識されたヘアピンオリゴヌクレオチドの分枝を有するデンドリマープローブもまた提供される。ヘアピン標識されたオリゴヌクレオチド、またはヘアピン標識されたデンドリマーは、例えば、インサイチュハイブリダイゼーションおよび組織アレイを含む様々な形態において、核酸の検出に用いることができ、同様に、標的核酸をテンプレートとして用いたプライマー伸長法による、標識された核酸の調製に用いることができる。
【0044】
オリゴヌクレオチドは公知の方法(例えば、GlickおよびPasternak,Molecular Biotechnology:Principles and Applications of Recombinant DNA(ASM Press 1998)参照)を用いて、合成することができる。溶液または固相での技術を用いることができる。合成法は代表的には自動化されており、例えば、ホスホラミダイト法、亜リン酸トリエステル法、水素−ホスフェイト法、またはリン酸トリエステル法が挙げられ得る。オリゴヌクレオチドは、長さにおいて、代表的には少なくとも25個のヌクレオチドまたは少なくとも30個のヌクレオチドであり、100個以下、125個以下、150個以下、175個以下、またはより多くのヌクレオチドからなることができる。代表的には、標識されたオリゴヌクレオチドは90個以下または80個以下のヌクレオチドを有し、より代表的には、60個以下または50個以下のヌクレオチドを有する。用いられる合成法は、オリゴヌクレオチドの望ましい長さに依存し得る。
【0045】
そのヘアピン領域は、代表的には約18〜50個のヌクレオチドを含み、より代表的には約25〜約40個のヌクレオチドを含む。ヘアピン構造の形成は、実質的に逆平行の相補性を有する2つの小領域の設計を介して達成され、すなわち、ストリンジェントな条件のもとで特異的にハイブリダイズするために反対方向に向かい、それゆえステム領域を形成する、十分な相補性である。実質的に相互に相補的な領域の間には非相補的な配列が挿入されており、それは分子内でハイブリダイズせず、それゆえ、二本鎖のステム領域の形成に一本鎖のループ配置を有する。ループ領域内のヌクレオチドの数および塩基組成は、ステムの相互に相補的な小領域がハイブリダイズするように選択される。例えば、ループ領域は、ステム領域のいずれかの鎖との実質的な相補性を持たないように設計され、代表的には3〜20個のヌクレオチドを有し、より代表的には3〜10個のヌクレオチドを有し、最も代表的には5〜8個のヌクレオチドを有する。前記に示したように、ステム領域内のヌクレオチドの数および塩基組成は、反対方向に向かう2つの領域が、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の下で、望ましい相対的安定性を持つ二本鎖ハイブリッドが形成されるように、実質的に相補的であるように選択される。代表的には、ステム領域は代表的には14〜46個のヌクレオチドを有し(すなわち、ステムのそれぞれの鎖は7〜23個のヌクレオチド)、より代表的には16〜40個のヌクレオチドを有し(すなわち、ステムのそれぞれの鎖は8〜20個のヌクレオチド)、最も代表的には20〜32個のヌクレオチドを有する(すなわち、ステムのそれぞれの鎖は10〜16個のヌクレオチド)。
【0046】
標的結合領域はヘアピン領域と重複せず、長さにおいて、代表的には少なくとも3個のヌクレオチドまたは少なくとも6個のヌクレオチドであり、より代表的には少なくとも10個のヌクレオチドであり、より一層代表的には少なくとも14個のヌクレオチドまたは少なくとも17個のヌクレオチドであり、なおさらに代表的には少なくとも25個のヌクレオチドまたは少なくとも30個のヌクレオチドである。長さにおいて20塩基をこえる広がりを持つ相補的な配列を有する標的結合領域が、一般に好ましい。標的結合領域の長さと塩基組成は、一般に、接続されたヘアピン構造の形成を妨げないように、および、標的核酸の特異的な検出に適したハイブリダイゼーション条件下で、標識されたステム−ループ構造と同等またはより大きな熱安定性を持つステム−ループ構造を、標的結合領域自身の中で形成しないように、選択される。
【0047】
標的結合領域のヌクレオチド配列は、例えば、所定の、ランダムの、または縮重のものであってよい。例えば、所定の標的結合領域は、所定のポリヌクレオチド(例えば、感染性因子に関連した核酸(例えば、例としてHIV核酸またはEBV核酸のようなウィルス核酸))との実質的な相補性を有するように設計され得る。ランダムな標的結合領域の場合、ランダムセグメントを有するプローブは、例えば、ヘアピン標識されたプローブのランダムなライブラリーに由来し得る。例えば、ランダムな標的結合領域を有する標識されたオリゴヌクレオチドのライブラリーは、長さN(Nは正の整数)の全ての可能性のある配列を表す標的結合配列を有するライブラリーを含み得るか、または全ての可能性のある配列の部分集合を含み得る。ある実施形態では、ランダムな標的結合セグメントは、長さにおいて3〜10個のヌクレオチドである。同様に、縮重した標的結合領域のためには、プローブは例えば、所与のペプチドまたはポリペプチドのための全ての可能性のあるコード配列を表す標的結合領域を有するヘアピン標識されたオリゴヌクレオチドのライブラリーに由来し得る。
【0048】
本発明におけるある実施形態では、標識されたオリゴヌクレオチドはさらに、ヘアピン領域と標的結合領域の間に挿入され、それらの領域に隣接するリンカーを含み得る。上記のリンカーは、代表的には1個以上のヌクレオチドであり、非天然の、または誘導体化されたヌクレオチドを含む。ヌクレオチドリンカーの塩基の数および組成は、ヘアピン構造の形成、またはその標的への、標的結合領域のハイブリダイゼーションを妨げないように選択される。ヌクレオチドリンカーは代表的には、長さにおいて1〜20個のヌクレオチドであり、より代表的には長さにおいて1〜10個のヌクレオチドであり、さらにより代表的には長さにおいて1〜5個のヌクレオチドである。あるいは、様々な長さの非ヌクレオチドのリンカーが使用され得る。適した非ヌクレオチドのリンカーは当該分野で公知であり、例えば、スペーサーホスホラミダイトC3、9、および18(それぞれ、Glenn Research, #10−1913,10−1909または10−1918)が挙げられる。
【0049】
上記のオリゴヌクレオチドは、ヘアピン構造内で、検出可能な標識に連結されたステム−ループ領域内の2個以上のヌクレオチドにおいて、内部的に標識される。ヘアピン構造内での標識は、オリゴヌクレオチドへの複数の標識の導入を、標的核酸とのハイブリッド形成に加わるヌクレオチドを含むことなく可能にする。ある実施形態では、ヘアピン構造内の少なくとも5個の、または少なくとも8個のヌクレオチドが標識され;1つの模範的な実施形態では、検出可能な標識を有するヌクレオチドの数は9個である。標識されたヌクレオチドは隣接してもよく、または隣接しなくてもよい。代表的には、標識されたヌクレオチドは、ヘアピン構造内全体にわたって隣接しておらず、間隔が空いている。例えば、間接的な標識の場合には、標識の間隔の度合いは、標識と第2の因子(例えば、ビオチンとストレプトアビジン)との、リガンド−リガンド結合パートナーの相互作用の立体障害を最小化するように設計される。代表的な実施形態では、標識されたヌクレオチドは、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも6ヌクレオチド、または少なくとも8ヌクレオチド、間隔が空けられる。さらに、標識されたヌクレオチドの間隔は、ヘアピン構造にしたがって変化し得る。ある実施形態では、間隔は、2または3〜4、6、8、またはそれ以上の数のヌクレオチドに変化する。さらに、なお他の実施形態では、ループ領域内の少なくとも1個のヌクレオチド、ステム領域内の少なくとも1つのヌクレオチド、またはループ領域およびステム領域のそれぞれに含まれる少なくとも1つのヌクレオチドが標識される。
【0050】
検出可能な標識は直接的であってもよく、または間接的であってもよい。本発明に従った使用に適した標識は当該分野で公知であり、そして一般的には、その化学的な性質によって、および直接的な手段によるものであれ、間接的な手段によるものであれ、プローブの検出を可能とする識別可能なシグナルを提供する任意の分子を含む。好ましい直接的な標識としては、蛍光物質(例えばフルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリトリン、およびフタロシアニン色素(例えばCy3またはCy5))が挙げられる。その他の直接的な標識としては、例えば放射性核種および酵素(例えばアルカリホスファターゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、またはβ−ガラクトシダーゼ)が挙げられる。あるいは、間接的な標識が用いられてもよい。例えば、間接的な標識はビオチンであり得る。このビオチンは、例えば標識されたストレプトアビジン(例えば、フルオレセインと結合体化したストレプトアビジン)を用いて検出され得る。その他の実施形態では、間接的な標識は、抗ハプテン抗体を用いて検出されるハプテンである。本発明に従った使用のために適した代表的なハプテンとしては、例えばビオチン、ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール(DNP)、およびフルオレセインが挙げられる。
【0051】
検出可能な標識は、公知の方法を用いてヘアピン構造内に取り込まれ得る。代表的には、標識は、例えば、標識されたホスホラミダイトヌクレオチドのような標識されたヌクレオチドまたはその誘導体を用いて、化学合成の間にオリゴヌクレオチド内に取り込まれる。例えば、フルオレセイン色素(例えば、6−FAMTM、HEXTM、またはTETTM)に連結されたビオチンホスホラミダイトまたはホスホラミダイトが使用され得る。あるいは、標識は、ヌクレオチドまたはその誘導体にリンカー部を介して接続されてもよい。例えば、標識の接続のためのリンカー部を有するヌクレオチド誘導体(例えばホスホラミダイト)は、合成を介して用いられ、標識をリンカー部に付与する標識反応が続けられ得る。あるいは、標識の接続のためのリンカー部を有する非ヌクレオチド単量体は、合成の間にオリゴヌクレオチドへ導入され得る(ヌクレオチドプローブのための非ヌクレオチド連結試薬の解説については、例えば米国特許第5,585,481号を参照)。リンカー部は保護されていてもよく、または保護されていなくてもよく、そして検出可能な標識は、(例えば、リンカー部の脱保護に続く)多量体合成に先立って、または引き続いて接続され得る。さらにリンカー部は、種々の化学的構造物のいずれかと連結されるように設計され得、これらの化学構造物としては、例えば生体分子(例えば、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、脂質など)が挙げられる。接続のための生体分子またはその他の化学的構造物は、例えば、直接的な標識または間接的な標識(例えば、蛍光物質、酵素、またはそれとして、本明細書内で提供される方法に従って、間接的な標識として使用され得る特異的結合性を持つ分子(例えば、ハプテン、ビオチン、あるいは、特定の受容体または他のリガンド結合パートナーを有する、他のリガンド))であり得る。あるいは、リンカー部に接続された化学的構造物それ自体が、検出可能に標識され得る。例えば、例として蛍光物質またはビオチンによって標識されたペプチドは、リンカー部に接続され得る。
【0052】
一般に、標識された部位またはリンカーの接続部位は、いずれかの特異的な場所に限定されない。例えば、標識は、ヌクレオチドまたはその誘導体に、検出も望ましいヘアピン構造の形成も妨げない、任意の位置に接続されてよい。有用な標識試薬の塩基部分は、天然に存在する、またはそれらが置かれた目的を妨害しない様式で改変されているものを含み得る。改変された塩基としては、例えば、7−デアザAおよび7−デアザG,7−デアザ−8−アザAおよび7−デアザ−8−アザG、ならびにその他の複素環部分が挙げられる。
【0053】
蛍光標識の場合には、蛍光物質は一種類の有機分子に限られるものではなく、しかし、無機分子、有機分子および/または無機分子の多分子混合体、結晶、ヘテロ多量体などを含む。例えば、シリカ殻に封入されたCdSe−CdSコアシェルナノ結晶は、生体分子と結合されるために、容易に誘導体化され得る(Bruchezら,Science,281:2013−2016,1998)。同様に、高度に蛍光を発する量子点(硫化亜鉛でキャップされたセレン化カドミウム)は、超高感度生物学的検出における使用のために、生体分子と共有結合的に結合されてきた(WarrenおよびNie,Science,281:2016−2018,1998)。
【0054】
本発明のある実施形態では、オリゴヌクレオチドの両端は、ヘアピン構造で、それぞれのヘアピン構造内の少なくとも1つのヌクレオチドが検出可能な標識を有するヘアピン構造を持つ。好ましい実施形態では、それぞれのヘアピンの2個以上のヌクレオチドが標識されており、より好ましくは、それぞれのヘアピンにおいて少なくとも5個のヌクレオチドであり、さらに好ましくはそれぞれのヘアピンにおいて少なくとも8個のヌクレオチドである。ある実施形態では、末端のヌクレオチド(5’および3’)は検出可能に標識されていない。
【0055】
(デンドリマープローブ)
その他の局面において、上記のハイブリダイゼーションプローブはデンドリマーである。用語「デンドリマー」は、中核の分子から広がる重合体の「腕」を持つ、分枝した高分子をよぶ。こうして、本発明におけるデンドリマーのハイブリダイゼーションプローブは、中央の分枝した分子に連結された、2個以上のヘアピン標識されたオリゴヌクレオチドの腕を持つ。「オリゴヌクレオチドデンドリマー」を生成するための方法は、一般に当該分野において公知である(例えば、米国特許第6,455,071号;同第6,274,723号;Azhayevaら,Nucleic Acids Res. 23:1170−1176,1995;HornおよびUrdea,Nucleic Acids Res. 17:6959−6967,1989を参照)。
【0056】
「分枝した分子」は単量体であってもよく、または多量体であってもよく、分枝した分子への連結は共有結合を介してもよく、または非共有結合を介してもよい。このように、本発明に従うデンドリマーとしては、例えば、分枝した分子に共有結合的に連結された複数のオリゴヌクレオチド(例えば、ヌクレオシド誘導体(例えば、例としてAzhayevaら,上記、HornおよびUrdea,上記に記述)、またはホスホラミダイトシントン(例えば、Shchepinovら,Nucleic Acids Res. 25:4447−4454,1997を参照))が挙げられ得る。他の実施形態では、オリゴヌクレオチドは分枝した分子(例えば、核酸多量体)に、例えば実質的に相補的な領域のハイブリダイゼーションによって非共有結合的に連結している。例えば、この分枝した分子は、2個の部分的に一本鎖の核酸の二量体であって、この二量体は、相補的な塩基対合によって内部領域で連結されており、そして、ヘアピン標識されたオリゴヌクレオチドに連結できる4個の一本鎖領域を有し得る(例えば、米国特許第6,274,723号を参照)。
【0057】
代表的には、それぞれのオリゴヌクレオチド分枝のヘアピン構造は、少なくとも1個の検出可能な標識を有する。好ましい実施形態では、それぞれのヘアピン構造は2個以上の標識を有し、より好ましくは、それぞれのヘアピンに少なくとも5個のヌクレオチドを有し、さらにより好ましくは、それぞれのヘアピンに少なくとも8個のヌクレオチドを有する。
【0058】
(ヘアピン標識された生体分子)
他の局面において、本発明は、(1)ステム領域とループ領域を含むヘアピン構造を形成し、そのヘアピン構造は、検出可能な分枝と連結されたヌクレオチドを2個以上有する、標識されたオリゴヌクレオチド、および(2)このオリゴヌクレオチドと生体分子を接続するリンカーを含む、標識された生体分子を提供する。この生体分子と連結された標識されたヘアピン構造は、基本的には上記で述べられた通りである。「生体分子」は、生物系内に存在する、および/または、生物系から提供され得る分子のクラス、およびこのような分子から誘導された構造に、言及する。適した生体分子としては、代表的には、例えば、ペプチド、ポリペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、およびそれらの誘導体、それらの構造的アナログ、またはそれらの組み合わせが挙げられる。代表的な実施形態では、この標識された生体分子は、非核酸生体分子(例えば、ペプチド、ポリペプチド、炭水化物、または脂質)である。
【0059】
さらに、代表的な実施形態では、その生体分子は結合パートナー(「標的分子」)と、非共有結合を介して(例えば、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、または疎水的相互作用を介して)特異的に結合する能力を持つ。このように、標識された生体分子は、例えば、その生体分子に対して特異的結合親和性を持つ、特定の標的分子の検出において、有用である。「標的分子」としては、例えば、可溶性タンパク質、サイトカイン、ケモカイン、細胞膜タンパク質、細胞受容体、糖タンパク質、またはその他の高分子が挙げられ得る。標的分子は、例えば、細胞質ゾル内、細胞表面上、単離された細胞内オルガネラの表面上、溶液内、または細胞外間隙内に局在し得る。例えば、標識した抗体または標識したレクチンは、例えば組織サンプル内、または細胞の表面上にて、それぞれ、抗原または炭水化物(例えば、腫瘍関連抗原)の存在を検出するために用いることができる。ヘアピン構造による2個以上の検出可能な標識の存在は、増加した検出感度を提供し、それによって、低レベルの標的分子(例えば、比較的微量の細胞上の腫瘍関連抗原の存在)の検出を可能にする。
【0060】
オリゴヌクレオチドと生体分子を接続するリンカーは、ヌクレオチドリンカーであっても、非ヌクレオチドリンカーであってもよく、そして、基本的に任意の長さで、ヘアピン構造の形成も、生体分子と標的分子との相互作用も妨げない、任意の組成であり得る。リンカーはオリゴヌクレオチドヘアピン構造の5’末端に接続されていてもよく、または3’末端に接続されていてもよく、または代わりに、内部のヌクレオチドに接続されていてもよい。ヌクレオチドリンカーは、生体分子の接続のためのリンカー部を含み得る。例えば、オリゴヌクレオチドはポリアミドの骨格を持つ構成塩基(例えば、Nielsenらを参照)を含み得て、それは、ペプチド連結を介してペプチドまたはポリペプチドに結合体化され得る。(例えば、AwasthiおよびNielsen,Methods Mol.Biol.208:43−52,2002;AwasthiおよびNielsen,Comb.Chem.High Throughput Screen 5:253−9,2002;Balasundaramら,Bioorg.Med.Chem.9:1115−21,2001;Goodら,Nat.Biotechnol.19:360−4,2001を参照。)あるいは、リン酸ジエステル基が置換された、その他のヌクレオチド誘導体(例えばホスホラミダイト誘導体)もまた用いられ得る。非ヌクレオチドリンカーの例としては、多糖類、ペプチド、ポリペプチド、および、核酸との水素結合を可能とするヌクレオチドの窒素性塩基を欠失した、糖リン酸ヌクレオチドの骨格が挙げられる。非ヌクレオチドリンカーのさらなる例は、米国特許第5,585,481号および同第5,696,251号(双方とも、Arnold,Jr.らによる)において提供される。
【0061】
(III.標的核酸の検出)
本発明のその他の局面において、サンプル中の標的核酸を検出するための方法が提供される。その方法は、(1)ヘアピン構造を1個以上有し、そのヘアピン構造内に1個以上の検出可能に標識されたヌクレオチドを有するハイブリダイゼーションプローブをサンプルと接触させる工程、(2)このサンプルおよびこのプローブを、このプローブがこのサンプル内の標的核酸とハイブリダイズし得る条件下にてインキュベートする工程、ならびに(3)この標的核酸を検出するために、ハイブリダイズしたプローブ上の標識を検出する工程を含む。
【0062】
(ハイブリダイゼーションプローブ)
本明細書にて提供される方法にて用いられるプローブは、上記の第II節(ヘアピン標識プローブ)にて記載されたような、ヘアピン標識されたハイブリダイゼーションプローブを含み、それは、一方の、または両方の末端に標識されたヘアピン構造を有するオリゴヌクレオチド、および、1つ以上のヘアピン標識されたオリゴヌクレオチド分枝を有するデンドリマーを含む。さらに、上記のプローブはまた、下記の第IV節(ヘアピン標識されたオリゴヌクレオチドのプライマー伸長)にて記載されたような、ヘアピン標識されたオリゴヌクレオチドのプライマー伸長により(例えば、PCRまたはランダムプライミングにより)生成される、ヘアピン標識核酸プローブも含み得る。
【0063】
プローブ集団は、その標的結合領域に関して均質であり得る。あるいは、プローブ集団は、異なる標的結合領域を有する2個以上のプローブを含み得る。ある実施形態では、異なるプローブの大きな集団が用いられる。さらに2個以上の異なるプローブ(すなわち、異なる標的結合領域を持つプローブ)が用いられる場合、この異なるプローブは異なる検出可能な標識を持ち得る。
【0064】
代表的な実施形態では、プローブは、染色体、細胞、組織、および核酸の無細胞混合物などに含まれる核酸を検出するために用いられる。プローブの標的結合領域は、例えば、例として目的のタンパク質の部分アミノ酸配列に従って縮重していてもよい。その他の代表的な実施形態では、標的結合領域は所定のもの(すなわち、所定の核酸(例えば、標的核酸、または標的に対して実質的同一性を有する核酸)に従う)である。例えば、標的結合領域は、特定の組織または細胞に関連した核酸、あるいは目的の生理的条件に(例えば、細胞機能(例えば、増殖、アポトーシス、細胞間相互作用、およびタンパク質分泌など)に;細胞内または細胞外情報伝達系に;例えば、癌、免疫疾患または炎症性疾患、神経変性疾患、およびウィルス感染に関連する疾患などを含む疾患また障害に)関連した核酸との実質的な相補性を有するように設計され得る。標的核酸はDNAを含んでもよく、またはRNAを含んでもよく、そして、例えば、生理的条件下における異常(例えば、増加または減少した)発現(例えば、異常発現したRNA)と;感染性因子(例えばウィルス核酸(例えばHIV核酸またはEBV核酸))と;および、疾患または障害に関連するような変異(例えば、変異体細胞の遺伝子または染色体)などに関連した核酸を含んでもよい。
【0065】
(サンプル)
本明細書にて提供された方法に従って用いられるサンプルは、標的核酸を含むと推測される任意のサンプルを含む。サンプルとしては、例えば、細胞、オルガネラ(例えば、核)、ミトコンドリアおよび葉緑体;染色体およびその断片;ならびにウィルスを含むサンプルが挙げられ得る。サンプルは、例えば、哺乳動物、魚類、両生類、鳥類、昆虫、原生動物、細菌、真正細菌、および植物を含む任意の種に由来し得る。好ましい哺乳動物としては、霊長類(例えばヒトを含む)、ウシ、およびげっ歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、およびモルモット)を含む。ある方法では、複数のサンプル(例えば、1をこえる被験体に由来するサンプル)が、分析前に貯蔵され得る。さらに、一次組織由来の細胞は、例えば、標的核酸の存在を直接的に解析されるか、または解析の前に増殖される。その他の実施形態では、サンプルは均一な細胞株に由来する。さらに他の実施形態では、サンプルはヒトの被験体の組織から得られる。
【0066】
ある実施形態では、単離された核酸は、固体の支持体(すなわち、固体の基材、または固体の「マトリックス」)に固定される。上記の固体の支持体は、表面に結合されたDNAが機能的および接近可能なままで、DNAを効果的に、および均一に結合させ得る、任意の材料を含み得る。代表的には、適した固体の支持体は、化学的に不活性であり;高密度で、DNAを安定して結合させ、そして、蛍光で標識されたプローブの検出に用いるために、広いダイナミックレンジを持つ強いシグナル強度を提供する一方で、自家蛍光が低い。本明細書で提供される方法と併せた使用に適した、固体のマトリックス基材としては、例えば、ガラスおよび濾過膜が挙げられる。例えば、界面化学的にアミンまたはアルデヒドで覆われたガラススライドが、Corning Microarray Technology(CMT)、Cel、およびTeleChem Internationalから利用可能である。アミンで覆われたガラススライドはまた、ガラススライドをポリリジンで処理することで自家生産することができ、ポリリジンスライドの調製の詳細は、Brown Laboratory Web Siteで閲覧可能である。さらに、多孔性の膜材料(例えば、ニトロセルロース、ナイロン、およびアクリルアミドなど)もまた使用できる。
【0067】
ある実施形態では、異なる組織型または異なる細胞型から単離された核酸が、固体の支持体上にアレイとしてスポットされ、それにより、標的核酸の、組織型または細胞型に特異的な解析が可能となる。例えば、組織サンプルまたは細胞サンプルのセットに存在するmRNAに対応したcDNAが、公知の方法(例えば、定量的PCR)を用いて定量的に増幅され得て、そして固体の基材上にスポットされ得る。結果としてできたスポット群は、それぞれのサンプル内の遺伝子の相対的な分布および相対的な発現の量的表現であり、そして、上記のアレイは、例えば、組織または細胞内の差次的発現を解析することができる。組織または細胞は、例えば、異なる型の組織または細胞(例えば、腎臓、脾臓、胸腺、または肺)であってよく、または、同じ型であるが、異なる生理条件(例えば、異なる薬理学的因子の存在)に曝されていた組織または細胞であってもよい。
【0068】
さらに他の実施形態では、組織サンプルが固体の支持体上にスポットされる。その組織サンプルは、例えば、組織サンプルのアレイとして固体の支持体上にスポットされ得る。こうした組織アレイは、例えば、ハイスループットな発現の調査、組織型特異性の調査、および動物モデル解析のためには、特に有用である。組織アレイを構築するための組織サンプルをスポットする方法は、当該分野で公知である。例えば、組織アレイは、例として、標準のガラススライド上にスポットされ得、30〜120個の直径0.6〜2mmのスポットされた組織サンプルを含む。このアレイは、例えば、組織をホルマリン固定または亜鉛固定してパラフィンに包埋することで、作製され得る。このアレイを構築するための組織は、例えば、単離された正常な動物であってよく、遺伝的に改変された動物(例えば、遺伝子ノックアウトのような遺伝子組み換え)であってよく、または他の点で異常な生理条件(例えば、動物の疾患モデル、および/または、異なる薬理学的因子で処理した動物)にある動物であってよい。
【0069】
(ハイブリダイゼーション条件)
本明細書にて記載される検出プローブの使用に適したハイブリダイゼーション条件は、当該分野にて公知である(例えば、Sambrookら,上記;Ausubelら,上記を参照。また、Tijssen,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Vol.24:Hybridization with Nucleic Acid Probes (Elsevier,NY 1993)も参照)。ハイブリダイゼーションは、核酸の実質的に相補的な鎖の、安定な特異的結合を形成し得るストリンジェンシー条件下で、および、非特異的に結合したプローブを除去する任意の洗浄条件下で行われる。一般にストリンジェンシーは、プローブの融解温度(T)より約5℃低い温度から、Tmより約20℃〜25℃低い温度の範囲で生じる。ストリンジェンシーは、100%の相補性を持つ標的核酸を特異的に検出するために、あるいは、100%未満の相補性を持つ関連したヌクレオチド配列もまた検出するために、上げられてもよく、または下げられてもよい。ある方法では、特定のプローブのTと一致するように、非常にストリンジェントな条件が選択される。配列の長さおよび性質(DNA、RNA、塩基組成)、標的の性質(DNA、RNA、塩基組成、溶液内に存在するか、または固定されているか)、ならびに、塩およびその他の構成成分(例えば、ホルムアミド、デキストラン硫酸、および/またはポリエチレングリコールの存在または非存在)の濃度といった要因が考慮され、そして、ハイブリダイゼーション溶液は、低いストリンジェンシー、中間のストリンジェンシー、高いストリンジェンシーのいずれかの条件を生じるように変化され得る。洗浄条件は、代表的には室温〜60℃の範囲である。
【0070】
例えば、高いストリンジェンシー条件は、例えば、ハイブリダイゼーション工程のために6×NaCl/クエン酸ナトリウム(SSC)で45℃、それに続き、2×SSCで50℃にて洗浄するか、または、これに代わって、例えば、5×SSC、20mM NaPO4、pH 6.8、50%ホルムアミドで42℃でのハイブリダイゼーション、それに続いて、0.2×SSCで42℃での洗浄を含み得る。これらの条件は、ヌクレオチドの塩基組成および長さ、または使用状況に従い、経験的にか、またはこうした変動を決定する公式(例えば、Sambrookら,上記;Ausubelら,上記を参照)に従って変化し得る。標的核酸の塩基組成、出所、および濃度に依存して、その他のストリンジェンシー条件が用いられ、それは例えば、低いストリンジェンシー条件(例えば、4〜6×SSC/0.1〜0.5% w/v SDSで37〜45℃にて2〜3時間)または中間のストリンジェンシー条件(例えば、1〜4×SSC/0.25〜0.5% w/v SDSで45℃にて2〜3時間)を含む。
【0071】
一般に、ハイブリダイゼーションの特異性(ストリンジェンシー)とシグナル強度との間でバランスをとる必要がある。ある実施形態では、ハイブリダイズされたサンプルはより高いストリンジェンシーの溶液で連続的に洗浄され、そしてそれぞれの洗浄の間に読まれ得る。それにより作成されたデータセットの解析からはある洗浄ストリンジェンシーが明らかになり、その洗浄ストリンジェンシーを超えると、ハイブリダイゼーションパターンが感知できるほどには変化せず、目的の特定のプローブのための適切なシグナルを提供する。
【0072】
(ハイブリダイズしたプローブの検出)
ハイブリダイゼーションに続き、プローブ−標的のハイブリッドは、ヘアピン構造に存在する検出可能な標識の種類に従って、適切な任意の方法を用いて検出される。第II節にて上記に記載したように、標識は直接的であるか、または間接的であるかのいずれかであり得る。代表的な直接的な標識としては、蛍光物質(例えば、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリトリン、Cy3、およびCy5)が挙げられる。間接的な方法は、検出に結合パートナーの相互作用を利用する。オリゴヌクレオチドプローブは一般に、第2の因子に親和性を持つ分子で標識される。例えば、ビオチンおよびハプテン(例えば、ジゴキシゲニン(DIG)、DNP、またはフルオレセイン)は、第2の因子としてのストレプトアビジン(ビオチンの場合に)または抗体との相互作用を介して検出され得る、代表的な標識である。ハイブリダイゼーション工程に続いて、標的−プローブのハイブリッドは、例えば、直接的に標識されたストレプトアビジンまたは抗体を用いて検出され得る。あるいは、未標識の第2の因子が、この第2の因子に特異的に結合する、直接的に標識された「第3の」因子とともに用いられ得る(例えば、未標識の抗DIG抗体を用いることができ、それは、1次抗体の種およびクラスに特異的な、標識された2次抗体によって検出され得る)。第2の因子の標識は、代表的には非同位体の標識であるが、放射性同位体の標識もまた使用し得る。代表的な非同位体の標識としては、例えば、酵素または蛍光物質が挙げられ、それらは第2の因子または第3の因子と結合体化され得る。DNA診断にて一般に用いられる酵素は、例えば、西洋わさびペルオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼを含む。
【0073】
プローブ標識の検出は、特定の標識に適した任意のアプローチを用いて達成され得る。例えば蛍光物質標識は、用いられている特定の蛍光物質の発光波長を検出するための、当該分野で公知の、任意の適した手段を用いて検出され得る。蛍光シグナルを検出するための代表的な方法としては、例えば、分光蛍光分析、共焦点顕微鏡、およびフローサイトメトリー分析が挙げられる。蛍光標識はバックグラウンドが低い一方、非常に強いシグナルを生成するので、一般に低レベルの標的核酸の検出に好ましい。また、それは速い走査手順で、高い解像度および高い感度にて、光学的に検出可能であり、そして、異なる発光波長の蛍光物質(例えば、フルオレセインおよびローダミン)を有する、異なるハイブリダイゼーションプローブを、単一のサンプルのために用いることができる。
【0074】
さらに、酵素標識を用いる場合、検出には、例えば、色または色素沈着(例えば、アルカリホスファターゼのためにp−ニトロフェニルホスフェートまたは5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム、/および西洋わさびペルオキシダーゼのために3,3’−ジアミノベンジジン−NiCl)、蛍光物質(例えば、アルカリホスファターゼのために4−メチルウンベリフェリルホスフェート)、または化学発光(例えば、Lumigen Inc.、Detroit Mich.製のアルカリホスファターゼジオキセタンの基質、またはTropix,Inc.製のAMPPDおよびCSPD)を用いることができる。化学発光検出は、X線フィルムまたはポラロイドフィルムを用いるか、または単一光子計測照度計を用いて実行され得る。これは、アルカリホスファターゼ標識されたプローブのための代表的な検出形式である。
【0075】
本方法のある実施形態では、検出アッセイは液相アッセイである。例えば、懸濁液内の細胞(例えば血球)内の標的核酸は、蛍光標識されたプローブにインサイチュでハイブリダイズし得る。そして、個々の細胞のインサイチュハイブリダイゼーションのシグナルは、フローサイトメーター(例えば、FACScan単一レーザーフローサイトメーター)を用いて、標的核酸の存在が解析され得る。
(IV.ヘアピン標識オリゴヌクレオチドのプライマー伸長)
本発明のさらに他の局面では、プライマーにより伸長されたヘアピン標識プローブおよび、ヘアピン標識プローブのプライマー伸長の方法が提供される。プライマー伸長の方法は一般に、上記の第II節(ヘアピン標識プローブ)に記載したように、標的核酸をオリゴヌクレオチドヘアピン標識プローブと接触させる工程を含み、このオリゴヌクレオチドヘアピン標識プローブではヘアピン構造が標的結合セグメントの5’側に位置しており、上記の接触させる工程は、標的核酸がヘアピン標識プローブのプライマー伸長のためのテンプレートとして働き得るような条件下で行われる。
【0076】
プライマー伸長に適した条件は、一般に当該分野で公知である(例えば、Sambrookら,上記、Ausubelら,上記を参照)。ヘアピン標識プローブ(上記プライマー)は、プライマー−テンプレート複合体を形成するために、標的核酸にアニール、すなわちハイブリダイズされる。そして、プライマー−テンプレート複合体は、熱安定性の、または他のポリメライゼーション薬剤(例えばDNAポリメラーゼ)に曝され、そして、ヘアピン標識プライマーの3’末端に1個以上のヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体を付加させ得るために、適した環境下でヌクレオチドまたはその誘導体に曝され、それによって、標的核酸に相補的な伸長されたプライマーを生成する。プライマー伸長反応は、二本鎖ポリヌクレオチドを変性させるために、高い温度を利用し得る(PCRプライマー伸長反応におけるように)。
【0077】
いくつかの実施形態では、プライマー伸長は、4種類の未標識の遊離ヌクレオチドの存在下で行われる。他の実施形態では、1種類以上の遊離ヌクレオチドが標識される。標識は、上記に記載したように、直接的であってもよく、または間接的であってもよい。
【0078】
ある実施形態では、標的核酸はランダムにプライミングされる(例えば、FeinbergおよびVogelstein,Anal.Biochem.137:266−7,1984;GlickおよびPasternak,Molecular Biotechnology:Principles and Applications of Recombinant DNA(ASM Press,第2版 1998)を参照。また図3Bも参照)。これらの方法のためには、ヘアピン標識されたプライマーの標的結合領域は代表的にはランダムセグメント(例えば、長さにおいて3〜10個のヌクレオチドのランダムセグメント(例えば、ランダムな六量体(例えば、FeinbergおよびVogelstein,上記を参照)))である。例えば、ランダムな標的結合領域を有するヘアピン標識されたプライマーは、4種類のヌクレオチド全ておよびDNAポリメラーゼ(例えばクレノー断片)とともに、変性DNAのサンプルに加えられる。ランダムな六量体の使用は、結果として4096種類の可能性のある六量体種を得て、それらは、ランダムな標的結合領域内のヌクレオチドの位置の数に従って、標的核酸の実質的に相補的な領域に、確率論的に結合する。いったん結合すると、DNAポリメラーゼは、伸長されたプライマーを生成するために、相補的なヌクレオチドを取り込む。
【0079】
ある実施形態では、プライマー伸長の方法はさらに、標的核酸を、伸長されたプライマーのあるセグメントに実質的に相補的な領域を有する第2のプライマーと、標的核酸が増幅のためのテンプレートとして働き得る条件下で接触させる工程を含む(図3Aを参照)。プライマー対(すなわち、5’上流プライマーおよび3’下流プライマー)を用いた標的核酸の増幅に適した条件は、当該分野にて公知である(例えば、PCR増幅方法)(例えば、Sambrookら,上記;Ausubelら,上記;PCR Applications:Protocols for Functional Genomics(Innisら編,Academic Press 1999);GlickおよびPasternak,上記を参照)。これらのプライマーの1つ、または双方はヘアピン標識され得る。こうして、増幅産物の一方または双方の鎖がそれぞれ、ヘアピン標識され得る。
【0080】
上記の方法を用いて、伸長された標的結合領域を有するヘアピン標識プローブ(本明細書内では「プライマーにより伸長されたヘアピン標識プローブ」)が生成される。ヘアピン標識された増幅産物を含む、プライマーにより伸長されたヘアピン標識プローブ、および、本明細書の上記に記載された検出方法において、これらのプローブを使用するための方法はまた、本発明に包含される。
【0081】
(V.ハイブリダイゼーション検出アッセイまたはプライマー伸長のためのキット)
本発明におけるハイブリダイゼーションプローブを標的核酸の検出のために使用するためのキット、またはそれに代えて、プライマー伸長のためのキットがまた提供される。代表的には、上記のキットは使用し易いように区切られて、そして、本明細書で記載されるオリゴヌクレオチドプローブまたはデンドリマープローブを提供する、少なくとも1つの第1の容器を含む。ヘアピン標識されたオリゴヌクレオチドプローブもしくはヘアピン標識されたデンドリマープローブを検出するための試薬、および/または、ヘアピン標識されたオリゴヌクレオチドプライマーのプライマー伸長のための試薬を提供する、さらなる容器もまた、上記のキットに含まれ得る。こうしたさらなる容器は、本明細書にて提供される方法に従う、ハイブリダイゼーション検出アッセイまたはプライマー伸長手順で使用する、当業者に認知された任意の試薬、または他の要素を含み得る。例えば、その検出可能な標識が間接的である(例えばビオチン)実施形態では、その間接的な標識を検出するための第2の因子を提供する、少なくとも1つの容器(例えば、蛍光物質で標識されたストレプトアビジンを提供する容器)が含まれ得る。また、プライマー伸長のためのキットはまた、ポリメライゼーション試薬(例えばDNAポリメラーゼ(例えばクレノー断片))を提供する少なくとも1つの容器;適切なバッファー(すなわち、プライマー伸長に適したバッファー)を提供する少なくとも1つの容器;標識された遊離ヌクレオチド、または未標識の遊離ヌクレオチドを提供する、少なくとも1つの容器;および/または、第2のプライマー(例えば、標的核酸のPCR増幅のための第2のヘアピン標識されたオリゴヌクレオチドプライマー)を提供する少なくとも1つの容器を含み得る。
【0082】
特定の実施形態では、標的核酸の検出のためのキットは、特定の標的核酸に関連する疾患または障害の診断に有用である。例えば、診断に有用な標的核酸としては、異常発現した遺伝子;感染性因子(例えばHIVまたはEBV)に関連した核酸;変異細胞の遺伝子または染色体;余剰の、または欠落した、遺伝子または染色体;などが挙げられる。
【0083】
本発明の更なる理解は、下記の、例示的実施形態を示す記載を参照することにより得られる。
【実施例】
【0084】
(実施例1:ヘアピン標識されたオリゴヌクレオチドを用いたEBV EBER−1 RNAの検出)
他に明確に規定されない限り、全ての試薬は、Sigma−Aldrich Chemical,St.Louis,MO製である。本明細書に収載されたものの他の出所に由来する、相当する試薬もまた使用され得る。
【0085】
(細胞株および細胞の培養条件)
EBV陽性のヒトRAJI細胞、ならびに、EBV陰性のヒトRL細胞株およびヒトHL−60細胞株を、ATCC(Rockville,MD)から取得し、そして、2.0〜4.5g/lのグルコース、2mMのL−グルタミンおよび10%〜15%のウシ胎児血清を補われたRPMI 1640培地中で培養した。PCR解析を用いて、RL株およびHL−60株がEBVを含まないことを確認した。Raji細胞は、約50コピーのエピソームのEBVを含み、そしてEBER−1 RNAを発現する(Stevensら,J.Clin.Microbiol.37:2852−2857,1999)。
【0086】
(細胞の固定)
細胞の固定は、細胞組織の維持に必要であり、そして標的核酸を保持する。細胞固定液(HistoChoice−MB)は、分子生物学的な用途(蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH))のために設計されており、そして市販されている(Amresco Inc.,Solon,OH)。細胞は遠心分離(200×g)によって集められ、PBS内で一度洗浄され、そしてHistoChoice−MB細胞固定液に再懸濁される。細胞は、即時にハイブリダイゼーションのために処理されるか、または4℃で保存される。
【0087】
(プローブおよびプローブの標識)
高コピー数のEBER(小さな核RNA)が、EBVが潜在的に感染している細胞に存在し(約10コピー/細胞、Clemens,Mol.Biol.Reports 17:81−92,1993;Crouchら,Cytometry 29:50−57,1997)、非常に望ましいハイブリダイゼーション標的となる。関連した研究では、EBER−1 RNAは、5’末端および3’末端にてビオチン化された単一のオリゴヌクレオチドプローブ(図6C)を用いて、EBVを有する細胞内で首尾よく検出された。ビオチン化された30塩基のランダム配列(ランダマー(randomer))および、ビオチン化されたrDNAセンス鎖(rDNA−センス)オリゴヌクレオチド(例えば、5’−ACGCTCATCAGACCCCAGAAAAGGT−3’)を、ネガティブコントロールとして供した。先に論ぜられたITS−1アンチセンス プレリボソームRNAオリゴヌクレオチドプローブを、ポシティブコントロールとして供した。図6に図示されたオリゴヌクレオチドプローブを、Oligos Etc.(Wilsonville,OR)から取得した。
【0088】
(サイトスピンスライドの調製、およびインサイチュハイブリダイゼーション)
固定された細胞(2.5×10細胞)を、CytospinTMIII細胞遠心機(ThermoShandon Corp.,Pittsburgh,PA)を用いて、100×gにて5分間、ガラススライド上に細胞遠心する。空気乾燥の後、細胞を2×SSCにて短時間洗浄し、そして70%および95%のエタノールで脱水する。3〜5μlの従来の、またはヘアピン標識されたプローブの溶液(2×SSC/5%w/vのポリエチレングリコール8000MW/10〜50%のホルムアミド/0.5%w/vのウシ血清アルブミン[BSA]/5%v/vのバナジルリボヌクレオシド複合体[VRC]/2000nmolの未標識のランダムな30マーオリゴヌクレオチド内に、25〜250nmolのプローブ)が、細胞遠心された細胞スポット上にピペットで移され、ParafilmTMで覆われ、そして加湿チャンバー内で37℃にて30分間インキュベートされる。ハイブリダイゼーション後、ParafilmTMが除かれ、そして、細胞スポットに、100μlのCy3結合体化されたストレプトアビジン(4×SSC/0.5%w/vのBSA/0.025%のTriton X−100内にて10μg/ml)を、室温にて20分間重層する。このスライドを、4×SSC/0.5%のTriton X−100、2×SSC、およびPBSにて短時間洗浄する。総DNAはDAPI(ジアミジノフェニルインドール;PBS内で2μg/ml)を用いて30秒間、対比染色し、PBSでリンスし、そして抗褪色封入液を用いて、ガラス製カバーガラスを取り付ける。スライドを、下記に記載するように、スライド走査サイトメトリーを用いて解析する。
【0089】
(液相インサイチュハイブリダイゼーション)
固定された細胞(1.0×10細胞)を、400×gの遠心分離にてペレットにし、2×SSCへの再懸濁により洗浄し、そして遠心分離にて回収する。ハイブリダイゼーションのために、上記の細胞ペレットを、50μlの従来の、またはヘアピン標識されたプローブの溶液(2×SSC/5%w/vのポリエチレングリコール8000MW/10%〜50%のホルムアミド/0.5%w/vのウシ血清アルブミン[BSA]/5%v/vのバナジルリボヌクレオシド複合体[VRC]/2000nmolの未標識のランダムな30マーのオリゴヌクレオチド内に、25〜250nmolのプローブ)に再懸濁し、振盪恒温攪拌機内で37℃にて1時間インキュベートする。インキュベート後、細胞を上記のようにペレットにし、そして洗浄する。細胞ペレットを250μlのCy3結合体化されたストレプトアビジン(4×SSC/0.5%w/vのBSA/0.025%のTriton X−100内にて10μg/ml)に再懸濁し、そして室温にて20分間インキュベートする。細胞を、4×SSC/0.5%のTriton X−100および2×SSCにて2回洗浄し、そしてPBSに再懸濁する。サンプルは、下記に詳細を示すように、フローサイトメトリーにて解析する。
【0090】
(スライド解析、画像走査サイトメトリー、およびフローサイトメトリー)
デジタル画像化を、落射蛍光を装備したNikon E600顕微鏡上にて、IPLab Spectrumソフトウェア(Scanalytics,Inc.,Fairfax,VA)を用いて行う。フローサイトメトリー解析のためには、サンプルを、CellQuest取得および解析ソフトウェア(Becton Dickinson Immunocytometry Systems,San Jose,CA;ver.3.2.1)を用い、FACScan単一レーザーフローサイトメーターを用いて解析する。Cy3で標識されたサンプルのシグナルは、FL3チャンネルを用いて取得され、そして、陽性のサンプルおよび陰性のサンプルのドットプロット解析を用いて、結果の制御を決定する。
【0091】
(EBV EBER−1 RNAのインサイチュ検出)
図に示すように、EBV EBER−1 RNAを、フローサイトメトリー液相インサイチュハイブリダイゼーション手順、およびスライドに基づくハイブリダイゼーション手順の双方を用いて、首尾よく検出した(図4、5)。EBER−1 RNAは、潜在的に感染された細胞(Clemens,上記;Crouchら,上記;Stoweら,J.Vir.Meth.75:83−91,1998)内、およびリンパ球増殖性疾患に罹患した、実質的に全ての感染されたB細胞(Baumforthら,Mol.Pathol.52:307−322,1999)内にて大量(1×10コピー/細胞以下)であるために、EBVを検出するために好ましいハイブリダイゼーション標的である。結果としてそれは、新しいプローブ設計を評価するために適したモデル系であり、同時に、臨床での有意性の正真正銘の標的である。フローサイトメトリーを用いたとき、EBV陰性の細胞のバックグラウンドの中のEBV陽性の細胞が、陽性の細胞と陰性の細胞とが明らかに区別された状態で、検出された(図4)。従来のスライドに基づいたFISHもまた、画像走査サイトメトリーと併せて、EBV陽性の細胞を検出するために用いた(図5)。標的のコピー数が多いことに起因して、陽性細胞の明白な検出を行うことができた(図5)。速度の速いスライド走査は、多量の細胞を解析するための鍵となる必要条件である。本明細書にて用いられた以上の、走査速度の実質的な増加は、より短い画像取得時間が用いられ得る場合に、達成される。これは、ヘアピン標識されたオリゴヌクレオチドプローブを用いての、ハイブリダイゼーションシグナル強度の増加によって達成される。
【0092】
(ヘアピン標識されたオリゴヌクレオチドプローブを用いたインサイチュハイブリダイゼーション)
ヘアピン標識されたオリゴヌクレオチドプローブを、RNAのインサイチュハイブリダイゼーション検出のために首尾よく用いることができるかどうかを評価するために、リボソームRNAの介在性転写配列−1(ITS−1)領域を認識する、ループ標識されたプローブを合成した。比較の目的で、同じ配列を、従来の3’末端、5’末端のビオチン化を用いて標識した。同一の条件下でのハイブリダイゼーション、続いて、スライドに基づいたハイブリダイゼーション方法および液相ハイブリダイゼーション方法の双方を用いて、Cy3結合体化ストレプトアビジンを用いた検出の後に、ハイブリダイゼーションシグナル強度およびその特異性を、従来の落射蛍光顕微鏡およびフローサイトメトリーを用いて評価した。示すように、ハイブリダイゼーションシグナルの特異性は、双方の型のプローブについて同一であり、そして、立証されたリボソーム遺伝子の転写部位である、核小体に限定されていた(図4A、4B)。ハイブリダイゼーションシグナルを、ハイブリダイゼーション前のRNA分解酵素処理によって、および、高モル濃度の未標識の同一配列オリゴヌクレオチドの存在下でのハイブリダイゼーションによって完全に除去したが、これらは双方ともハイブリダイゼーション特異性を確認するための鍵となる方法である(データは示さず)。ハイブリダイゼーションシグナル強度は、従来の標識プローブ(図4A)に比べて、ヘアピン標識プローブの場合に著しく明るくなった(図4B)。液相ハイブリダイゼーションのフローサイトメトリー解析を用いた場合、ヘアピン標識プローブを用いて行われたハイブリダイゼーションは、従来のプローブを用いた場合(図5;ヒストグラムC)に比べて、さらに高い蛍光強度を示した(図5;ヒストグラムD)ことが明らかに示された。
【0093】
(実施例2:ヘアピン標識されたオリゴヌクレオチドを用いたHIV RNAの検出)
(材料と方法)
他に記述されない限り、全ての試薬はSigma−Aldrich Chemical,St.Louis,MO製である。本明細書に収載されたものの他の出所に由来する、相当する試薬もまた使用され得る。
【0094】
(細胞)
HIV−1に潜在的に感染されたOM10.1細胞を、細胞内で発現したHIV−RNAを検出するために用いる。HL−60は、ヒトの前骨髄性白血病細胞で、OM10.1細胞を産生するために使用され、これをコントロール細胞として使用する。OM10.1細胞内でのHIV RNAの発現を、20U/mlのTNFαの16時間処理にて誘導する。末梢血単核細胞を、Ficoll−Paque Plus(Amersham Biosciences)密度勾配を用いて、K3EDTAチューブまたはクエン酸バキュテイナー(Becton and Dickinson)チューブのどちらかに集められた、ヒトの血液から単離する。HIV感染したヒト由来の血液を、Massachusetts General Hospital(Boston,MA)またはResearch Sample Bank(Pompano Beach,FL)から取得する。新鮮な血液を用いない場合には、RosetteSepTM(StemCell Technologies)法の使用が、顆粒球の完全な除去の助けとなる。この方法は、四量体複合体を適用する、顆粒球と赤血球との架橋に依存する。密度勾配分離によるPBMCの収率は40〜60%の範囲にすぎないので、HIV感染した細胞は、この手順の間に優先的に失われ得る。それゆえ、赤血球の選択的溶解後の全血の利用がまた、審査される。全血1mlに、蛍光標識された抗CD4抗体または抗CD14抗体100μlを加え、そして、ボルテックス操作後に、その混合物を室温で15分間保つ。それから、その血液に、PBS中の4%のパラホルムアルデヒドを加え、15分後に、0.1mlのリボヌクレオシドバナジル複合体(RVC,New England Biolabs,Beverly,MA)を含む10mlのPBSを加える。混合後、300×gにて5分間の遠心処理で血球をペレットにする。上清を捨て、そして細胞を10mlのPBSで2回洗浄する。洗浄工程の後、0.1%のサポニンを含む2mlのPBS、および20μlのRVCを、ペレットにされた血球に加える。白血球(WBC)を透過化処理し、赤血球(RBC)を、この10分間の工程の間に溶解する。透過化処理されたWBCを、遠心処理および、RVCを含むPBSを用いた2回の洗浄工程によって、溶解したRBCから分離する。ペレットにされた細胞は、即時、インサイチュハイブリダイゼーションに用いる。
【0095】
(プローブ)
HIV RNAの検出のために、HIVゲノムのgag領域およびpol領域を包む、以下の、ヘアピンビオチン標識されたオリゴヌクレオチドプローブの反応混液を用いる。
【0096】
【化1】

図7に示すように、HIV−1プローブに連結された4種の異なるヘアピン構造を用いる。
【0097】
(溶液内でのインサイチュハイブリダイゼーション)
細胞を、4%パラホルムアルデヒドにて30分間の処理で固定し、血球計数器を用いて定量する。2×10個の細胞を解析に用いる。細胞を、0.1%のサポニンおよび100U/mlのSUPERase(AMBION,Austin,TX製のRNA分解酵素インヒビター)を含むPBS内で透過化処理し、2×SSC、10mMのMES pH6.7、1%のウシ血清アルブミン、25%のホルムアミド、1mg/mlの子ウシ胸腺DNAおよび1mg/mlの子ウシ胸腺tRNAの双方、および0.1%のプルロニックアシッド(pluronic acid)内に、プローブ反応混液を0.2μg/ml含む溶液内でハイブリダイズする。48℃にて1時間のハイブリダイズ後、細胞をペレットにし、2×SSC、25%のホルムアミド、0.1%のプロニックアシッド内で一回、4×SSC、0.5%のウシ血清アルブミン内で一回洗浄し、後者の溶液に分散されたストレプトアビジン−フィコエリトリン(2μg/ml、Molecular Probes,Eugene,OR)内で15分間染色する。洗浄後、細胞のDNAをDRAQ5(20μM)で染色する。
【0098】
(免疫型決定)
臨床の血液サンプルの解析の間、末梢血の細胞を、0.5%のウシ血清アルブミンおよび0.1%のアジ化ナトリウムを含むPBS内で、蛍光標識された抗CD4抗体または抗CD14抗体(Beckman−Coulter,Miami,FL)で免疫型決定する。15分間の染色後、細胞をこの溶液で洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで固定する。細胞を、インサイチュハイブリダイゼーションを行うまで、少なくとも15分間、0.1%のプルロニックアシッド(遊離アルデヒド基をブロックする溶液)を含む0.15Mの硫酸アンモニウム内で保存する。
【0099】
(フローサイトメトリー解析)
個々の細胞のインサイチュハイブリダイゼーションシグナルを、CellQuest取得および解析ソフトウェア(Becton Dickinson Immunocytometry Systems,San Jose,CA)を装備したFACScan単一レーザーフローサイトメーターを用いて解析する。CD4シグナルまたはCD14シグナル、およびHIV RNAを、それぞれFL1チャンネルおよびFL2チャンネルにて、適切な補正を施した後、収集する。DNAシグナルをFL3チャンネルにて収集する。本発明者らは、FL2チャンネル(フィコエリトリン)とFL3チャンネル(DRAQ5)との間の補正が必要ないことを決定した。ポアソン統計を10%の信頼度で用いて、100個の陽性の事象を得る。HIV−RNAを含む細胞の部分集団が0.02%以上を表したと仮定すると、統計学的に有意な解析のためには、約1×10個の事象の解析が必要となる。
【0100】
前述の実施例は例証のために提供されるが、本願発明の範囲を限定するものではない。本発明の他の改変は当業者に容易に明らかであり、そして添付の特許請求の範囲に含まれる。本明細書にて引用された、全ての刊行物、特許、特許出願、およびその他の参考は、本明細書に参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1Aおよび図1Bは、オリゴヌクレオチドプローブの異なる種類の例を示す:(A)3’−ビオチンテイルのオリゴヌクレオチド;(B)3’,5’−ビオチン化オリゴヌクレオチド;および(C)内部ビオチン化オリゴヌクレオチド。
【図2】図2は、ヘアピン標識したオリゴヌクレオチドの例を示し、標的領域に相補的な配列、短いリンカー、およびステム領域とループ領域を持つ標識されたヘアピンを示す。
【図3】図3Aおよび図3Bは、ヘアピン標識されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いた、(A)PCRによる標識されたプローブの生成、および(B)ランダムプライミングによる標識されたプローブの生成の、模式図を示す。
【図4】図4Aおよび図4Bは、ヘアピン標識されたオリゴヌクレオチドを用いた、新生のリボソームRNAの検出を示す。蛍光インサイチュハイブリッド形成法(FISH)は、新生のリボソームRNAの介在性転写配列−1(ITS−1)内の配列を標的として、ヘアピン標識されたオリゴヌクレオチドか、または従来の3’末端および5’末端をビオチン化したオリゴヌクレオチドを用いて行われた。ハイブリダイゼーション後、結合したプローブはCy3結合体化ストレプトアビジンを用いて検出され、サンプルはデジタル形式で同様に画像化された。(A)従来のビオチン標識を用いたITS−1 RNAの検出。ハイブリダイゼーションシグナルは核小体の中のみに特異的であり、新生のリボソームRNAの予測される局在と矛盾しない。(B)ヘアピン標識されたオリゴヌクレオチドプローブを用いたITS−1の検出では、(A)と同様の標識特異性を示すが、著しく強いハイブリダイゼーションシグナルを示す。
【図5】図5は、異なるオリゴヌクレオチドプローブを用いたハイブリダイゼーションシグナル強度の、フローサイトメトリーによる比較を示す。新生リボソームRNAの介在性転写配列−1(ITS−1)内の配列を標的とした合成オリゴヌクレオチドプローブは、(C)従来の3’末端および5’末端のビオチン化か、または(D)ヘアピン標識によって標識された。液相でのハイブリダイゼーション後、シグナル強度がフローサイトメトリーによって測定され、結果としてできたヒストグラムの追跡をプロットした。比較のために、(A)プローブを含まない、または(B)無関係のプローブを含むサンプルもまた解析された。ヘアピン標識(緑)は、従来の標識(C)よりもシグナル強度において約50%の増加が見られる結果となった。
【図6】図6A〜図6Fは、新生のリボソームRNAおよびエプスタイン−バー−ウィルスのEBER−1RNAのための、代表的なオリゴヌクレオチドプローブの図表および配列を示す。(A)ITS−1新生リボソームRNAの従来のプローブ。(B)ITS−1のヘアピン標識プローブ。(C)EBER−1 RNAの従来のプローブ。(D)EBER−1 RNAのヘアピン標識プローブ。(E)ビオチン化ヘアピン標識したステムおよびループの構造および配列。(黒菱形)はビオチン標識の印である。パネル(B)およびパネル(D)内の下線を引いた配列は、標的領域に相補的な配列の印である。
【図7】図7A〜図7Dは、標識方法において異なるビオチン分布を示す、4つの異なる標識されたヘアピン構造を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標識されたオリゴヌクレオチドであって、
標的とする核酸に実質的に相補的な一本鎖標的結合セグメント、および
ステム領域およびループ領域を含むヘアピン構造であって、ここで、該ヘアピン構造内の複数のヌクレオチドが検出可能な標識を持つ、ヘアピン構造
を含む、標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
さらに、前記標的結合セグメントと前記ヘアピン構造との間にリンカーを含む、請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記ループ領域中の少なくとも1つのヌクレオチドが前記検出可能な標識を持つ、請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
前記ステム領域中の少なくとも1つのヌクレオチドが前記検出可能な標識を持つ、請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記ループ領域中の少なくとも1つのヌクレオチドが前記検出可能な標識を持つ、請求項4に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記検出可能な標識を持つ前記複数のヌクレオチドが少なくとも5つである、請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
前記検出可能な標識を持つ前記複数のヌクレオチドが9つである、請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
前記標識されたオリゴヌクレオチドが60個以下のヌクレオチドを含む、請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
前記標識されたオリゴヌクレオチドが100個以下のヌクレオチドを含む、請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
前記標識されたオリゴヌクレオチドが150個以下のヌクレオチドを含む、請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
前記ループ領域が3〜10個のヌクレオチドを有する、請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
前記ステム領域が16〜40個のヌクレオチドを有する、請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
前記検出可能な標識を有する少なくとも2つのヌクレオチドが隣接している、請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
前記検出可能な標識を有するヌクレオチドが少なくとも2ヌクレオチド分間隔が空いている、請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
前記検出可能な標識を有するヌクレオチドが2〜6ヌクレオチド分間隔が空いている、請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
前記標的結合セグメントが所定のセグメントである、請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項17】
前記標的とする核酸がウィルス核酸である、請求項16に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項18】
前記ウィルス核酸がHIVの核酸あるいはEBVの核酸である、請求項17に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項19】
前記標的結合セグメントがランダムなセグメントである、請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項20】
前記標的結合セグメントが縮重セグメントである、請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項21】
前記検出可能な標識が間接的な標識である、請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項22】
前記間接的な標識がビオチンである、請求項21に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項23】
前記間接的な標識がハプテンである、請求項21に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項24】
前記ハプテンが、ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール(DNP)、ビオチンおよびフルオレセインからなる群から選択される、請求項23に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項25】
前記検出可能な標識が直接的な標識である、請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項26】
前記直接的な標識が蛍光物質である、請求項25に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項27】
前記蛍光物質が、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリトリン、Cy3およびCy5からなる群から選択される、請求項26に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項28】
第2のステム領域および第2のループ領域を含む第2のヘアピン構造であり、ここで、該第2のヘアピン構造内の少なくとも1つのヌクレオチドが、検出可能な標識を有する第2のヘアピン構造をさらに含み、
ここで前記ヘアピン構造および該第2のヘアピン構造が前記標的結合セグメントの対向する末端に結合されている、請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項29】
標識されたオリゴヌクレオチドであって、
標的とする核酸に実質的に相補的な一本鎖標的結合セグメント、
第1のステム領域および第1のループ領域を含む第1のヘアピン構造、ならびに
第2のステム領域および第2のループ領域を含む第2のヘアピン構造
を含む標識されたオリゴヌクレオチドであって、ここで
該第1のヘアピン構造内の少なくとも1つのヌクレオチドおよび該第2のヘアピン構造内の少なくとも1つのヌクレオチドが検出可能な標識を持ち、ならびに
該第1のヘアピン構造および該第2のヘアピン構造が該標的結合セグメントの対向する末端に結合されている
標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項30】
デンドリマープローブであって、
複数の、請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド、および該オリゴヌクレオチドに結合する分枝した分子を含む、デンドリマープローブ。
【請求項31】
標識された生体分子であって、
ステム領域とループ領域を含むヘアピン構造を形成するオリゴヌクレオチドであって、該ヘアピン構造内の複数のヌクレオチドが検出可能な標識を持つオリゴヌクレオチド、ならびに
該オリゴヌクレオチドと該生体分子を結合するリンカー
を含む生体分子。
【請求項32】
サンプル内の標的核酸を検出する方法であって、
1)該サンプルとオリゴヌクレオチドプローブとを接触させる工程であって、該オリゴヌクレオチドプローブは
a)該標的核酸に実質的に相補的な一本鎖標的結合セグメント;および
b)ステム領域およびループ領域を含むヘアピン構造で、該ヘアピン構造内の複数のヌクレオチドが検出可能な標識を持つヘアピン構造;
を含む、工程、
2)該サンプルおよび該オリゴヌクレオチドプローブを、該標的結合セグメントが該標的核酸にハイブリダイズするに十分な条件下でインキュベートする工程、
3)該標的核酸を検出するために、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドプローブ上の該標識を検出する工程
を含む方法。
【請求項33】
ハイブリダイズしなかったオリゴヌクレオチドプローブを、前記標識の検出前に除去する工程をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記オリゴヌクレオチドプローブがさらに、前記標的結合セグメントと前記ヘアピン構造との間にリンカーを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記ループ領域内の少なくとも1つのヌクレオチドが前記検出可能な標識を持つ、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記ステム領域内の少なくとも1つのヌクレオチドが前記検出可能な標識を持つ、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記ループ領域内の少なくとも1つのヌクレオチドが前記検出可能な標識を持つ、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記検出可能な標識を持つ前記複数のヌクレオチドが、少なくとも5つである、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記検出可能な標識を持つ前記複数のヌクレオチドが9つである、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記オリゴヌクレオチドプローブが60個以下のヌクレオチドを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
前記オリゴヌクレオチドプローブが100個以下のヌクレオチドを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項42】
前記オリゴヌクレオチドプローブが150個以下のヌクレオチドを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項43】
前記ループ領域が3〜10個のヌクレオチドを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項44】
前記ステム領域が16〜40個のヌクレオチドを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項45】
前記検出可能な標識を有するヌクレオチドが少なくとも2ヌクレオチド分間隔が空いている、請求項32に記載の方法。
【請求項46】
前記検出可能な標識を有する少なくとも2つのヌクレオチドが隣接している、請求項32に記載の方法。
【請求項47】
前記検出可能な標識を有するヌクレオチドが2〜6ヌクレオチド分間隔が空いている、請求項32に記載の方法。
【請求項48】
前記標的結合セグメントが所定のセグメントである、請求項32に記載の方法。
【請求項49】
前記所定の核酸がウィルス核酸である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ウィルス核酸がHIVの核酸またはEBVの核酸である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記標的結合セグメントが縮重セグメントである、請求項32に記載の方法。
【請求項52】
前記検出可能な標識が間接的な標識であり、検出が該間接的な標識と二次標識との接触を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項53】
前記間接的な標識がビオチンである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記二次標識が標識されたストレプトアビジンである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記間接的な標識がハプテンである、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記ハプテンが、ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール(DNP)、ビオチンおよびフルオレセインからなる群から選択された、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記二次標識が標識された抗ハプテン抗体である、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記検出可能な標識が直接的な標識である、請求項32に記載の方法。
【請求項59】
前記直接的な標識が蛍光物質である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記蛍光物質が、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリトリン、Cy3およびCy5からなる群から選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記オリゴヌクレオチドプローブが、第2のステム領域と第2のループ領域を含む第2のヘアピン構造をさらに含み、該第2のヘアピン構造内の少なくとも1つのヌクレオチドが前記検出可能な標識を持ち、前記第1のヘアピン構造および該第2のヘアピン構造が前記標的結合セグメントの対向する末端に結合された、請求項32に記載の方法。
【請求項62】
前記標的核酸が固体の基材に固定された、請求項32に記載の方法。
【請求項63】
前記標的核酸が細胞サンプルまたは組織サンプル内にあり、前記標識されたオリゴヌクレオチドが該標的核酸にインサイチュでハイブリダイズする、請求項32に記載の方法。
【請求項64】
ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドプローブの前記標識の前記検出が、液相アッセイを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記液相アッセイがフローサイトメトリーを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
サンプル内の標的核酸を検出する方法であって、
1)該サンプルとオリゴヌクレオチドプローブとを接触させる工程であって、該オリゴヌクレオチドプローブは
a)該標的核酸に実質的に相補的な一本鎖標的結合セグメント;
b)第1のステム領域と第1のループ領域を含む第1のヘアピン構造;
c)第2のステム領域と第2のループ領域を含む第2のヘアピン構造;
を含み、
該第1のヘアピン構造内の少なくとも1つのヌクレオチドおよび該第2のヘアピン構造内の少なくとも1つのヌクレオチドが検出可能な標識を持ち;ならびに
該第1のヘアピン構造および該第2のヘアピン構造が該標的結合セグメントの対向する末端に結合されているオリゴヌクレオチドプローブである
工程、
2)該サンプルおよび該オリゴヌクレオチドプローブを、該標的結合セグメントが該標的核酸にハイブリダイズするに十分な条件下でインキュベートする工程、
3)該標的核酸を検出するために、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドプローブ上の該標識を検出する工程
を含む方法。
【請求項67】
サンプル内の標的核酸を検出する方法であって、
1)該サンプルと、請求項30に記載のデンドリマープローブとを接触させる工程、
2)該サンプルおよび該デンドリマープローブを、該デンドリマープローブの標的結合セグメントが該標的核酸にハイブリダイズするに十分な条件下でインキュベートする工程、および
3)該標的核酸を検出するために、ハイブリダイズしたデンドリマープローブ上の前記標識を検出する工程
を含む方法。
【請求項68】
プライマー伸長を行う方法であって、
標的核酸を請求項1に記載のオリゴヌクレオチドプライマーに、伸長したプライマーを生成するために、該標的核酸が該プライマーからの伸長のためのテンプレートとして働く条件下で接触させる工程を含み、該オリゴヌクレオチドプライマーのヘアピン構造は標的結合セグメントの5’側に位置する、
方法。
【請求項69】
前記標的核酸と第2のプライマーを、増幅産物を生成するために、前記オリゴヌクレオチドプライマーと該第2のプライマーから増幅するためのテンプレートとして該標的核酸が働く条件下で、接触する工程であり、該第2のプライマーが前記伸長したプライマーに実質的に相補的なプライミングセグメントを含む、工程をさらに含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記増幅が、未標識の遊離のヌクレオチドの存在下で行われる、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記標的結合セグメントがランダムである、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
前記ランダムな標的結合セグメントが3〜10個のヌクレオチドからなる、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記第2のオリゴヌクレオチドプライマーが、前記プライミングセグメントの5’側に、第2のステム領域および第2のループ領域を含む第2のヘアピン構造をさらに含み、該第2のヘアピン構造内の少なくとも1つのヌクレオチドが検出可能な標識を持つ、請求項69に記載の方法。
【請求項74】
核酸増幅産物を生成する方法であって、標的核酸を以下のオリゴヌクレオチドプライマーと接触させる工程を含み、該オリゴヌクレオチドプライマーは、
a)第1のオリゴヌクレオチドプライマーであって
i)標的核酸に実質的に相補的な一本鎖標的結合セグメント;および
ii)該標的結合セグメントの5’側に位置し、第1のステム領域および第2のループ領域を含む第1のヘアピン構造であって、該第1のヘアピン構造内の少なくとも1つのヌクレオチドが検出可能な標識を持つ、ヘアピン構造
を含み、該接触する工程は、該標的核酸が、伸長したプライマーを生成するために該第1のプライマーから伸長させるためのテンプレートとして働く条件を含む、第1のオリゴヌクレオチドプライマー;
b)第2のオリゴヌクレオチドプライマーであって、
i)該伸長したプライマーに実質的に相補的なプライミングセグメント;および
ii)該プライミングセグメントの5’側に位置し、第2のステム領域および第2のループ領域を含む第2のヘアピン構造であって、該第2のヘアピン構造内の少なくとも1つのヌクレオチドが該検出可能な標識を持つ、ヘアピン構造
を含み、該接触する工程はさらに、該標的核酸が、増幅産物を生成するために該第1のオリゴヌクレオチドプライマーおよび第2のオリゴヌクレオチドプライマーからの増幅のためのテンプレートとして働く条件を含む、第2のオリゴヌクレオチドプライマー
である、方法。
【請求項75】
標的核酸の検出のためのキットであって、
請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチド、または請求項30に記載のデンドリマープローブの一方を提供する少なくとも1つの第1の容器
を含むキット。
【請求項76】
前記検出可能な標識が間接的な標識であり、該間接的な標識を検出するための第2の因子を提供する少なくとも1つの第2の容器をさらに含む、請求項75に記載のキット。
【請求項77】
オリゴヌクレオチドプライマーのプライマー伸長のためのキットであって、
請求項1に記載の標識されたオリゴヌクレオチドプライマーを提供する少なくとも1つの第1の容器であって、標識されたオリゴヌクレオチドプライマーのヘアピン構造が標識されたオリゴヌクレオチドプライマーの標的結合セグメントの5’側に位置する、第1の容器
を含むキット。
【請求項78】
第2のプライマーを提供する少なくとも1つの第2の容器であり、該第2のプライマーは、前記標的核酸が、前記標識されたオリゴヌクレオチドプライマーからの伸長のためのテンプレートとして働く条件下で生成された、伸長されたプライマーに実質的に相補的なプライミングセグメントを含む、第2の容器をさらに含む、請求項77に記載のキット。
【請求項79】
標識された、または未標識の遊離のヌクレオチドを提供する少なくとも1つの第3の容器、ポリメライゼーション薬剤を提供する少なくとも1つの第4の容器、およびプライマー伸長に適したバッファーを提供する少なくとも1つの第5の容器をさらに含む、請求項78に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−529994(P2007−529994A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518840(P2006−518840)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/021582
【国際公開番号】WO2005/007815
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ポラロイド
【出願人】(503433741)ワン セル システムズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】