説明

ヘッドカバーガスケット

【課題】 エンジンのシリンダブロックとその上端側に取り付けられているシリンダヘッドとにタイミングチェーンを覆うチェーンカバーが取り付けられているブロック部材の上側にヘッドカバーガスケットを介してヘッドカバーが締め付け固定される際に、前記複数部材の組み付け物たるブロック部材における組み付け誤差等によってヘッドカバーとのシール面に段差が生じた場合でも、段差の存在による面圧不足を防ぎ、シール性能が損なわれることなく十分なシール性能を発揮できるヘッドカバーガスケットを提供する。
【解決手段】 シリンダヘッドの上端側とチェーンカバーの上端側との接合部に対応する部位へ凹凸面部を設け、前記凹凸面部へ不定形ガスケットを配置したことによって課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等のエンジンにおける二つの部材間、例えば、シリンダブロックの上端側に取り付けられているシリンダヘッドと、その上側に配置され、当該シリンダヘッドの上端開口部を密封するヘッドカバーとの間に介装されるヘッドカバーガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車等のエンジンにおける二つの部材間を密封するとき、その両部材間に弾性材からなるガスケットを介在させ、二つの部材を締付け固定し、密着なさしめて密封を図る構造が一般的に採用されている。例えば、エンジンのシリンダブロック上端側に取り付けられているシリンダヘッドの上側にヘッドカバーを配置してシリンダヘッドの上端開口を密封するとき、シリンダヘッドとヘッドカバーとの問に弾性材製のヘッドカバーガスケットを介在させ、シリンダヘッドとヘッドカバーとを締付け、密着なさしめて密封を図る密封構造が一般的に採用されている。
【0003】
昨今では、エンジンのシリンダブロックとその上端側に取り付けられているシリンダヘッドとにタイミングチェーンを覆うチェーンカバーが取り付けられたブロック部材を、当該ブロック部材の上側にヘッドカバーガスケットを介してヘッドカバーを配置し、当該ブロック部材の上端開口を密封する構造が採用され始めている,
【0004】
このようにエンジンのシリンダブロックとその上端側に取り付けられているシリンダヘッドとにタイミングチェーンを覆うチェーンカバーが取り付けられたブロック部材の上側にヘッドカバーガスケットを介してヘッドカバーを配置し、当該ブロック部材の上端開口を密封する場合、前記のようにブロック部材が複数部材の組み付け物であるため、取付けに関する公差バラつきにより、シリンダヘッドの上端面の高さとチェーンカバー上端面の高さとの間に段差が生じることがある。この段差が生じるとその面圧が不足するおそれがあり、面圧が不安定になる。
【0005】
これに対応するため、ヘッドカバーガスケットをボリュームの大きい多肉形状に形成することが多い。
しかし、このようにヘッドカバーガスケットを多肉形状に形成すると、重量が増加してしまう。
【特許文献1】特開平8−100705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、シリンダブロックとその上端側に取り付けられているシリンダヘッドとにタイミングチェーンを覆うチェーンカバーが取り付けられているブロック部材と、当該複数部材の組み付け物たるブロック部材の上側に配置され、当該ブロック部材の上端開口を密封するヘッドカバーとの間に介装されるヘッドカバーガスケットにおける前述した課題を解決することを目的としている。
【0007】
すなわち、エンジンのシリンダブロックとその上端側に取り付けられているシリンダヘッドとにタイミングチェーンを覆うチェーンカバーが取り付けられているブロック部材の上側にヘッドカバーガスケットを介してヘッド力バーが取り付け固定される構造において、前記シリンダヘッドの上端側とチェーンカバーの上端側との接合部に対応する部位へ凹凸面部を形成し、該凹凸面部へ不定形ガスケットを配したことを特徴とする。
前記ブロック部材における組み付け誤差等によってヘッドカバーとのシール面に段差が生じた場合、例えば、シリンダヘッド上端面の高さとチェーンカバー上端面の高さとに段差が生じた場合でも、該段差の存在による面圧変化を防ぎ、シール性能が損なわれることなく充分なシール性能を発揮できるヘッドカバーガスケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、この発明は以下に述べるヘッドカバーガスケットを提案する。
【0009】
特許請求の範囲の請求項1に記載されている本発明のヘッドカバーガスケットは、エンジンのシリンダブロックとその上端側に取り付けられているシリンダヘッドとにタイミングチェーンを覆うチェーンカバーが取り付けられたブロック部材と、当該ブロック部材の上側に配置され当該ブロック部材の上端開口を密封するヘッドカバーとの間に介装されるヘッドカバーガスケットであって、前記シリンダヘッドの上端側とチェーンカバーの上端側との接合部に対応する部位へ凹凸面部を設け、前記凹凸面部へ不定形ガスケットを配置したことを特徴とするものである。
【0010】
請求項2に記載されている本発明のヘッドカバーガスケットは、前記シリンダヘッドの上端側とチェーンカバーの上端側との接合部に対応する部位へ設けられた前記凹凸面部を、網目形状、多突没形状あるいは多円形状としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、以下に述べる優れた効果が発揮される。
【0012】
請求項1に係る発明によれば、エンジンのシリンダブロックとその上端側に取り付けられているシリンダヘッドとにタイミングチェーンを覆うチェーンカバーが取り付けられているブロック部材の上側にヘッドカバーガスケットを介してヘッド力バーが取り付け固定される構造において、前記ブロック部材における組み付け誤差等によってヘッドカバーとのシール面に段差が生じた場合、具体的には、シリンダヘッド上端面の高さとチェーンカバー上端面の高さとに段差が生じた場合でも、段差の存在による面圧不足を防ぎ、シール性能が損なわれることなく十分なシール性能を発揮できるヘッドカバーガスケットを提供できる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、圧縮にあって不定形ガスケット8の保持性の高いヘッドカバーガスケットを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0015】
図1は本発明のヘッドカバーガスケットのー実施例を表す一部を省略した斜視図である。
【0016】
本発明のヘッドカバーガスケット4は、図2(a)図示のように、エンジンのシリンダブロックlaとその上端側に取り付けられているシリンダヘッドlbとにタイミングチェーンを覆うチェーンカバー2が取り付けられたブロック部材3と、このブロック部材3の上側に配置されブロック部材3の上端開口を密封するヘッドカバー5との問に介装されるものである。
【0017】
本発明のヘッドカバーガスケット4は、自動車等のエンジン等の二つの部材間を密封する際に両部材間に介装される従来公知のガスケットと同じく、弾性変形量に優れる合成ゴム材などから成形される。例えば、価格的及び成形性に優れる二トリルゴムあるいは耐熱性、耐油性に優れるアクリルゴム、更にはシリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、またはフッ素ゴムなどを用いて成形される。
【0018】
特に昨今は耐熱性が求められるので、アクリルゴム、フッ素ゴム、あるいは水素添加二トリルゴム等を用いて成形することが望ましい。
【0019】
シリンダブロックlaとシリンダヘッドlbとは、この技術分野で公知のようにして組み合わされており、例えば、両者の間に所定の弾性材料からなるガスケットを介在させ、ボルト等の締め具(不図示)によって締め付け固定されている。
【0020】
チェーンカバー2は、図2(a)図示のように、シリンダブロックla、シリンダヘッドlbに対してその側面から取り付けられる。この取付け形態にも従来公知の種々の形態を採用できる。
【0021】
ブロック部材3と、ヘッドカバー5とは、例えば、図2(a)図示の状態で、ヘッドカバー5の下端面に備えられているシール面と、ブロック部材3の上端面、すなわち、シリンダヘッドlbの上端面及びチェーンカバー2の上端面との間にヘッドカバーガスケット4を介在させて固定され、こうして、ブロック部材3の上端開口が密封される。
【0022】
このブロック部材3とヘッドカバー5とのヘッドカバーガスケット4を介在させての固定は、例えば、図2(b)、(c)図示のように、複数の締結ボルト10で締結して締め付け固定することができる。
【0023】
図2(b)、(c)は、シリンダヘッドlbに複数の締結ボルト10、l0a、l0aが配備されており、この複数の締結ボルト10、 l0a、l0aとナット11とによってヘッドカバー5が縮め付け固定される形態を説明する斜視図である。
【0024】
なお、図示していないが、ヘッドカバー5がシリンダヘッドlbとの間にのみ締結部を備えている図2(b)図示の形態とは異なり、チェーンカバー2の方にも締結ボルト10が配備されていて、ヘッドカバー5がチェーンカバー2との間でも締結部を備えている締め付け固定形態にされることもある。
【0025】
前記のようにしてブロック部材3とヘッドカバー5とがヘッドカバーガスケット4を介在させて固定される際に、ヘッドカバーガスケット4は、図1に矢印6、6で示される方向から圧縮される。
【0026】
本発明のヘッドカバーガスケット4はこの圧縮される方向の面(すなわち、圧縮方向面)の特定の位置に、特定の形態の凹凸面部4aを備えていることを特徴としている。
【0027】
本発明のヘッドカバーガスケット4の実施形態において、この凹凸面部4aが配備されている特定の位置は、前記シリンダヘッドlbの上端側とチェーンカバー2の上端側との接合部7に対応する部位の圧縮方向面である。
【実施例1】
【0028】
図1、図3、図4、及び図5は、前述した本発明のヘッドカバーガスケット4の実施形態における凹凸面部4aの形態を説明するものである。
【0029】
図3の形態では、チェーンカバー2の上端側の方がシリンダヘッドlbの上端側より低くなっており、この接合部7に対応した箇所へ凹凸面部4aを配置し、その上に不定形ガスケット8を併用している。
【0030】
図1、図4及び図5の形態では、凹凸面部4aの実施例を示しており、図1では前記凹凸面部4aを形成の容易な網目形状に造形し、図4では凹部あるいは凸部の突没形状を多数千鳥状に配置している。
また、図5の形態では、多数の円形状を配して凹凸面部4aを構成しており、いずれも成形性に優れ、不定形ガスケット8の保持能力の高い形状となっている。このとき凹部と凸部はそれぞれ単独で用いられても良いし組み合わせて用いられても差し支えない。
【0031】
かかる実施形態のヘッドカバーガスケット4によれば、組み付け誤差等によってヘッドカバー5とのシール面に段差が生じた場合、具体的には、シリンダヘッドlbの上端面の高さとチェーンカバー2の上端面の高さとに接合部7で段差が生じた場合でも、図3図示のように、該段差に対して不定形ガスケット8がその形状に沿って充填され、平面部はヘッドカバーガスケット4の弾性で十分な面圧を確保し満足できるシール性を得ることができる。ここでは不定形ガスケット8の保持が凹凸面部4aによってなされるもので、圧接状態にあってその凹凸の間隙部にシールするに必要な質量を収容確保する。
【0032】
このように、シリンダヘッドlbと、チェーンカバー2と、ヘッドカバー5とが合わさる三面合わせ部の接合部7などには、不定形ガスケット8(例えば、スリーボンド社製の液体パッキン 商品番号TB1215のように、この技術分野で公知の液体パッキン)が併用される。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々の形態に変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上詳しく説明した通り、本発明によって、ヘッドカバーとのシール面に段差が生じても、その段差の存在による面圧変化を防ぎ、シール性能が損なわれることなく充分なシール性能を発揮できるヘッドカバーガスケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のヘッドカバーガスケットのー実施例を表す一部を省略した斜視図。
【図2】(a)本発明のヘッドカバーガスケットが装着される環境の一例を説明する斜視図、(b)本発明のヘッドカバーガスケットが装着される環境の他の例を説明する一部を省略した斜視図、(c)図2(b)の形態においてヘッドカバーとシリンダヘッドとが締付け固定された状態を説明する一部を省略した断面図。
【図3】シリンダヘッド及びチェーンカバーの上端側と本発明のヘッドカバーガスケットとの配置関係を説明する一部を省略した側面図。
【図4】本発明の他のヘッドカバーガスケットの実施形態を説明する一部を省略した拡大平面図。
【図5】本発明の他のヘッドカバーガスケットの実施形態を説明する一部を省略した拡大平面図。
【符号の説明】
【0036】
la シリンダブロック
lb シリンダヘッド
2 チェーンカバー
3 ブロック部材
4 ヘッドカバーガスケット
4a 凹凸面部
5 ヘッドカバー
7 接合部
8 不定形ガスケット
9 液体パッキン収容部
10 締結ボルト
11 ナット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのシリンダブロックとその上端側に取り付けられているシリンダヘッドとにタイミングチェーンを覆うチェーンカバーが取り付けられたブロック部材と、当該ブロック部材の上側に配置され当該ブロック部材の上端開口を密封するヘッドカバーとの間に介装されるヘッドカバーガスケットであって、
前記シリンダヘッドの上端側とチェーンカバーの上端側との接合部に対応する部位へ凹凸面部を設け、前記凹凸面部へ不定形ガスケットを配置したことを特徴とするヘッドカバーガスケット。
【請求項2】
前記ヘッドカバーガスケットであって、
前記凹凸面部を網目形状、多突没形状あるいは多円形状としたことを特徴とする請求項1のヘッドカバーガスケット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−132485(P2006−132485A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324504(P2004−324504)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000225359)内山工業株式会社 (204)
【Fターム(参考)】