説明

ヘッドカバーガスケット

【課題】ヘッドカバーをシリンダヘッドに組付ける際に、倒れたり脱落したりすることなく、両者の被シール対象部位間に的確に介在させることができるヘッドカバーガスケットを提供する。
【解決手段】シリンダヘッド1及びヘッドカバー2の夫々の環状被シール対象部位1a,2a間に介在されるヘッドカバーガスケット3であって、弾性部材の成型体からなり、前記ヘッドカバーの前記被シール対象部位に形成される環状の凹溝2bに嵌装される環状のガスケット本体部5と、該ガスケット本体部に一体に形成され、前記シリンダヘッドの被シール対象部位に形成される切欠凹部1bに嵌合されるプラグ部6とを備え、前記プラグ部は、板金加工された芯金と、該芯金を埋設し前記ガスケット本体部と一体的に成型された前記弾性部材による外装部8とよりなり、前記外装部における前記ヘッドカバーの被シール対象部位に対応する部位には、該被シール対象部位を幅方向より弾性的に挟装する挟持片81,82,83が突設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドカバーガスケットに関し、詳しくは、カムシャフト取付の為に不可避的に形成される半円形の切欠凹部を備えるシリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとの合体面(被シール対象部位)に介在し、両者をシールする為に用いられるヘッドカバーガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用やバイク(自動2輪車)用や産業機械用等のエンジンのシリンダヘッドにおいては、カムシャフト取付けの為に、その上端のヘッドカバーとの合体面、即ち、シリンダヘッドの被シール対象部位に、半円形の切欠凹部(セミサーキュラー)が不可避的に形成される。その為、シリンダヘッドとヘッドカバーとの合体部に介在して両者をシールする為のヘッドカバーガスケットとしては、ガスケット本体部と、該ガスケット本体部に一体に形成され上記切欠凹部に嵌合されるプラグ部(プラグセミサーキュラー)とを有するゴム等の弾性部材による一体成型体からなるものが用いられている。ヘッドカバーの被シール対象部位には環状の凹溝が形成されており、前記ガスケット本体部は、この凹溝に嵌装し得る形状とされる。このようなヘッドカバーガスケットを用いた場合、プラグ部を除くガスケット本体部がシリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとの合せ面に弾性密着し、プラグ部が切欠凹部に密着的に嵌合することによって上記合体部のシールがなされる。特許文献1及び2は、このようなヘッドカバーガスケットの例を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−167148号公報
【特許文献2】実公平6−20937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2のヘッドカバーガスケットは、上記プラグ部に芯金を埋設することによってプラグ部を補強し、シンリンダヘッド内からの内圧(正圧及び負圧)に耐え得るように構成されている。このような構成のカバーガスケットを介在させてヘッドカバーをシリンダヘッドに組付ける際、先ず、ヘッドカバーをその被シール対象部位が上向きとなるように作業台の上に置き、前記凹溝にガスケット本体部を嵌装させる。そして、ヘッドカバーを反転させて、シリンダヘッドの上に被せるように載せ、前記プラグ部を前記切欠凹部に上から嵌合させた上で、前記被シール対象部位同士を合体させた状態でヘッドカバーをシリンダヘッドに締結させる。
【0005】
而して、プラグ部には芯金が埋設されているから、プラグ部の比重が他の部位に比べて大きい。また、前記凹溝にガスケット本体部を嵌装させた状態では、プラグ部が上方に起立した状態となる。その為、プラグ部が、比重が他の部位に比べて大きいが故に、不安定となり、傾いたり或いは倒れたりすることがある。また、ヘッドカバーを反転させてシリンダヘッドの上に被せる際、プラグ部の重量の為、この部分のガスケット本体部が凹溝から外れて脱落することがある。このように、ヘッドカバーをシリンダヘッドに組付ける過程で、プラグ部が倒れたり、ガスケットがヘッドカバーから脱落したりすると、ヘッドカバーの組付け作業の効率が著しく低下する。特許文献1及び特許文献2に開示されたガスケットは、このような倒れや脱落を防止する手段を有さず、その抜本的な改善が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、ヘッドカバーをシリンダヘッドに組付ける際に、倒れたり脱落したりすることなく、両者の被シール対象部位間に的確に介在させることができるヘッドカバーガスケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るヘッドカバーガスケットは、シリンダヘッド及びヘッドカバーの夫々の環状被シール対象部位間に介在されるヘッドカバーガスケットであって、弾性部材の成型体からなり、前記ヘッドカバーの前記被シール対象部位に形成される環状の凹溝に嵌装される環状のガスケット本体部と、該ガスケット本体部に一体に形成され、前記シリンダヘッドの被シール対象部位に形成される切欠凹部に嵌合されるプラグ部とを備え、前記プラグ部は、板金加工された芯金と、該芯金を埋設し前記ガスケット本体部と一体的に成型された前記弾性部材による外装部とよりなり、前記外装部における前記ヘッドカバーの被シール対象部位に対応する部位には、該被シール対象部位を幅方向より弾性的に挟装する挟持片が突設されていることを特徴とする。
【0008】
本発明において、前記挟持片の前記挟装側の面に突起部を形成しても良い。また、前記芯金が、前記切欠凹部の形状と相似形に形成され、その外形状部には前記挟持片の厚み内に及ぶ舌片部を備えているものとしても良い。この場合、舌片部が切り起こしによって形成され、当該切り起こしによる切り起こし孔を介して、前記弾性部材が芯金の両面間で相互に連繋しているようにしても良い。
【0009】
本発明において、前記ガスケット本体部の側部に、該ガスケット本体部が前記凹溝に嵌装された際に、該凹溝の内壁との間に圧縮状態で介在される小突起が形成されているものとしても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明のヘッドカバーガスケットは、シリンダヘッド及びヘッドカバーの夫々の環状被シール対象部位間に介在されて、両被シール対象部位間がシールされる。このヘッドカバーガスケットは、弾性部材の成型体からなり、前記ヘッドカバーの前記被シール対象部位に形成される環状の凹溝に嵌装される環状のガスケット本体部を有しており、ガスケット本体部が、前記凹溝に嵌装されることにより、所定のシールラインに沿った位置に保持されると共に、弾性部材からなることにより、両被シール対象部位間が的確にシールされる。また、本ヘッドカバーガスケットは、前記ガスケット本体部に一体に形成され、前記シリンダヘッドの被シール対象部位に形成される切欠凹部に嵌合されるプラグ部も備えているから、切欠凹部においては、両被シール対象部位間にガスケット本体部とプラグ部とが介在されることになり、この部分も確実にシールされる。
【0011】
更に、前記プラグ部は、板金加工された芯金と、該芯金を埋設し前記ガスケット本体部と一体的に成型された前記弾性部材による外装部とよりなるから、芯金によって補強され、シリンダヘッド内から加わる圧力にも耐えることができる。そして、前記外装部における前記ヘッドカバーの被シール対象部位に対応する部位には、該被シール対象部位を幅方向より弾性的に挟装する挟持片が突設されているから、ヘッドカバーをシリンダヘッドに組付ける際に、挟持片をヘッドカバーの被シール対象部位に対して弾性的に挟装させておくことにより、本ヘッドカバーガスケットが倒れたり、ヘッドカバーを反転させた場合でも脱落したりすることが少なく、前記両被シール対象部位間の所定位置に的確に介在される。また、この組付け作業の効率化も図られる。
【0012】
前記挟持片の前記挟装側の面に突起部を形成すれば、この挟持片によってヘッドカバーの被シール対象部位を幅方向より弾性的に挟装する際、突起部の存在により、プラグ部がより強固にヘッドカバーに保持され、前記倒れや脱落の防止がより効果的になされる。また、前記芯金が、前記切欠凹部の形状と相似形に形成されているものとすれば、プラグ部がほぼ全体に亘って均等に強化される。加えて、その外形状部に前記挟持片の厚み内に及ぶ舌片部を備えているものとすれば、挟持片がこの舌片部によって強化され、前記挟装の際に挟持片が変形する懸念がなく、前記弾性的な挟装が確実に発現される。この場合、舌片部が切り起こしによって形成され、当該切り起こしによる切り起こし孔を介して、前記弾性部材が芯金の両面間で相互に連繋しているようにすれば、この連繋のアンカー効果により芯金と外装部との強固な一体化が図られる。
【0013】
更に、前記ガスケット本体部の側部に、前記凹溝の内壁との間に圧縮状態で介在される小突起が形成されているものとすれば、ガスケット本体部を前記凹溝に嵌装した際に、ガスケット本体部や前記凹溝の寸法精度(加工公差)の影響を受けず、ガスケット本体部が凹溝に安定的に保持され、前記シリンダヘッドに対する組付け時においてヘッドカバーを反転した際に、この凹溝によるガスケット本体部の保持力が加わり、プラグ部の重さによるヘッドカバーガスケットの脱落の可能性をより少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るヘッドカバーガスケットを用いたシリンダヘッドとヘッドカバーとの組付構造を示す部分切欠分解斜視図である。
【図2】同ヘッドカバーガスケットの拡大平面図である。
【図3】(a)は図2におけるA部の拡大平面図であり、(b)は同拡大正面図である。
【図4】図3におけるB−B線に対応する矢視断面図である。
【図5】図4の例のヘッドカバーガスケットを構成する芯金のみを図4の矢印C方向より見た概略図である。
【図6】他の実施形態の図4と同様図である。
【図7】図6の例のヘッドカバーガスケットを構成する芯金のみを図6の矢印D方向より見た概略図である。
【図8】(a)は更に別の実施形態の図3(a)と同様図であり、(b)は図3(b)と同様図である。
【図9】図1乃至図5に示す例のヘッドカバーガスケットの変形例であって、その要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1〜図5は本発明のヘッドカバーガスケットの一実施形態を示す。図1に示すシリンダヘッド1及びヘッドカバー2は、例えば、バイク(自動2輪車)用エンジンを構成するものであり、両者の合体面となる環状被シール対象部位1a,2aの間に本発明に係るヘッドカバーガスケット3が圧縮状態で介在される。シリンダヘッド1の環状被シール対象部位1aは、内部に支承されるカムシャフト(不図示)の取付の為に不可避的に形成される半円形の切欠凹部1bを備えている。また、ヘッドカバー2の環状被シール対象部位2aには、全周に亘る環状の凹溝2bが形成されている。
【0016】
ヘッドカバーガスケット3は、シリンダヘッド1及びヘッドカバー2の夫々の環状被シール対象部位1a,2aの全体形状に合致する帯板形状の環状ガスケット基部4と、該環状ガスケット基部4の上面にシールラインに沿って形成された断面山形の環状ガスケット本体部5と、該環状ガスケット基部4及び環状ガスケット本体部5に一体に形成され、上記切欠凹部1bに弾性嵌合されるプラグ部6とを備える。ここに、シールラインとは、シリンダヘッド1及びヘッドカバー2の合体部にあって、相互にシールされるべき所定幅の略中央部に沿った環状のラインを指す。環状ガスケット本体部5は、前記ヘッドカバー2の凹溝2bに嵌装し得る形状とされ、環状ガスケット基部4と共に、ゴム或いはゴム弾性を備える合成樹脂等(エラストマー)の弾性部材の成型体からなる。プラグ部6の上部は、ガスケット基部4及びガスケット本体部5の一部を構成する。プラグ部6は、板金加工された芯金7と、該芯金7を埋設し前記ガスケット基部4及びガスケット本体部5と一体的に成型された前記弾性部材による外装部8とよりなる。
【0017】
前記外装部8は、前記ヘッドカバー2の被シール対象部位2aに対応する部位となる上面に、該被シール対象部位2aを幅方向(厚み方向)より弾性的に挟装するよう突設された挟持片81,82,83を備えている。挟持片81は、前記ガスケット本体部5の長手方向に沿って横長に形成され、また、挟持片82,83は、ガスケット本体部5の長手方向に沿って隔設された短寸形状とされ、挟持片81と、挟持片82,83とは、前記被シール対象部位2aの厚みと略等しい間隔をもって対向するよう配置されている。そして、挟持片81の挟持片82,83に対向する面(挟装側の面)の2個所には、突起部81a,81aが、挟持片82,83の挟持片81に対向する面(挟装側の面)の各1個所には、突起部82a,83aが、夫々形成されている。
尚、図4は図3(b)のB−B線に対応する矢視断面図であるが、両図は概略図であり、各部の寸法関係は必ずしも一致しない。
【0018】
芯金7は、図5にも示すように、上記切欠凹部1bの形状と相似形で且つ該切欠凹部内に填り込み得る外形状及び大きさ(切欠凹部1bよりやや小)の断面略コ字形に絞り加工された芯金本体部70を備える。該芯金本体部70の外形状部における上辺部で、シリンダヘッド1の外側に位置する部位には、前記挟持片81の厚み内に及ぶ舌片部71が、切り起こしによって折り返すように形成されている。芯金本体部70にはこの舌片部71の切り起こしによって切り起こし孔71aが形成され、該切り起こし孔71aを介して、前記外装部8を構成する弾性部材が芯金7の両面間で相互に連繋している。このように、切り起こし孔71aを介して、外装部8の弾性部材が芯金7の両面間で相互に連繋し、この連繋部分のアンカー効果により、芯金7と外装部8との強固な一体化が図られる。また、該芯金本体部70の外形状部における上辺部で、シリンダヘッド1の内側に位置する部位には、前記挟持片82,83の厚み内に及ぶ舌片部72,73が屈曲形成されている。更に、芯金本体部70の外形状部における下辺縁部から前記切欠凹部1bの周縁部におけるシリンダヘッド1の内壁部1baに沿った形状の幅狭の舌片部74が屈曲連成されている。
【0019】
前記外装部8は、芯金7の全体を埋設するよう形成され、前記切欠凹部1bの周縁部に対応する部位の外形は半円形とされている。この半円形状部には、前記舌片部74を含んでシリンダヘッド1の内壁部1baに密着する鍔部84と、切欠凹部1bの周縁部におけるシリンダヘッド1の外壁部1bbに密着する鍔部85とにより、凹部86が形成されている。この凹部86には、前記切欠凹部1bの周縁部が嵌装される。そして、該凹部86の底部には、その周方向に沿った3条の小突条86aが形成され、切欠凹部1bの周縁部を嵌装した状態ではこの小突条86aが切欠凹部1bの内周面に弾接して、この部分が密封される。
【0020】
前記ガスケット本体部5には、その側部に、該ガスケット本体部5が前記ヘッドカバー2の凹溝2bに嵌装された際に、該凹溝2bの内壁との間に圧縮状態で介在される複数の小突起5a…がその周方向に沿って適宜間隔毎に形成されている。また、前記プラグ部6における外装部8の上辺部略中央には位置決め突起87が形成されている。ヘッドカバー2の被シール対象部位2aには、この位置決め突起87を受容する位置決め穴(不図示)が形成される。ヘッドカバーガスケット3をヘッドカバー2に装着する際、位置決め突起87を位置決め穴に受容させることによって、プラグ部6の相対位置が定まり、シリンダヘッド1にヘッドカバー2を取付ける際に、プラグ部6が切欠凹部1bに的確に嵌合されることになる。この場合、位置決め突起87の形状及びその形成位置は図例のものに限定されるものではない。例えば、断面形状が図例のような半円形以外の形状であっても良く、また、形成位置は挟持片81、或いは、挟持片82,83に沿った位置であっても良い。従って、ヘッドカバー2の位置決め穴の形状及び位置もこれに整合するよう形成される。
尚、図示では、小突起5a…をガスケット本体部5の両側部に形成した例を示しているが、内外側部のいずれか一方のみに形成ようにしても良い。
【0021】
ヘッドカバーガスケット3を構成する弾性部材は、前記のようにゴム或いはゴム弾性を備える合成樹脂等からなるが、更に具体的には、ゴム材としてNBR,H−NBR,ACM,AEM,FKM等が、弾性合成樹脂としてSBS,TPO,TPVC,TPV,TPEE,TPAE等の熱可塑性エラストマー(TPE)が用いられる。また、芯金7は、SPCC、SECC、SUS系等の鋼板材の板金加工によって得られる。
【0022】
前記のように構成されたヘッドカバーガスケット3は、図1及び図4に示すように、シリンダヘッド1と、ヘッドカバー2の夫々の環状被シール対象部位1a,2aの間に配置され、シリンダヘッド1と、ヘッドカバー2を不図示のボルト等により締結一体とすることにより、シリンダヘッド1及びヘッドカバー2の被シール対象部位1a,2a間に介在一体とされる。この締結一体に先立ち、ヘッドカバー2をその被シール対象部位2aが上に向くよう作業台の上に置き、前記位置決め突起87と位置決め穴とによってプラグ部6の位置決めをしながら、プラグ部6の前記挟持片81と挟持片82,83との間に、ヘッドカバー2における前記切欠凹部1bに対応する被シール対象部位2bを圧入させ、挟持片81と挟持片82,83とによって当該被シール対象部位2bを幅方向より弾性的に挟装する。挟持片81,82,83の各挟装側の面には、突起部81a,81aと、突起部82a,83aとがそれぞれ対向するよう形成されているから、これら突起部81a,82a,83aの弾性復元弾力が加わり、前記挟装がより強固になされる。また、各挟持片81,82,83の厚み内には、芯金7の舌片部71,72,73が埋設されているから、この部分が強化され、弾性反力を抑えて前記挟持片81と挟持片82,83との挟装による強固な挟持力が発現される。
【0023】
次いで、ガスケット本体部5を凹溝2bに嵌装させるが、この時、ガスケット本体部5の側部に、その周方向に沿って適宜間隔毎に形成された複数の小突起5a…が、凹溝2bの内壁との間に圧縮状態で介在されるようガスケット本体部5の嵌装がなされるから、ガスケット本体部5は凹溝2bにしっかり保持された状態とされる。従って、プラグ部6が芯金7を埋設して重量が大となっているにも拘わらず、起立状態が挟持片81及び挟持片82,83による強固な挟持によって維持され、また、ガスケット本体部5が凹溝2bにしっかり保持されることとも相俟って、プラグ部6が安定化され、ヘッドカバーガスケット3のヘッドカバー2に対する装着過程で傾いたり倒れたりすることがない。
【0024】
このようにヘッドカバーガスケット3が被シール対象部位2aに装着された状態のヘッドカバー2を天地反転させ、シリンダヘッド1の上に被せるように位置づけ、プラグ部6をシリンダヘッド1の切欠凹部1bに嵌合させる。この反転の際にも、挟持片81及び挟持片82,83による強固な挟持状態及びガスケット本体部5の凹溝2bでの保持状態によって、プラグ部6と共にヘッドカバーガスケット3が脱落したりすることがない。プラグ部6の切欠凹部1bに対する嵌合は、前記外装部8の鍔部84,85が、切欠凹部1bの周縁部における前記内外壁部1ba,1bbに沿い且つ当接し、前記凹部86の底部に形成された小突条86aが切欠凹部1bの内周面に弾接するようになされる。芯金7は外装部8に完全に埋設されているから、切欠凹部1bに対する嵌合や、前記内外壁部1ba,1bbに対する当接は、芯金7との間に介在するゴム外装部8によって弾性的になされる。
【0025】
このように、ヘッドカバーガスケット3のヘッドカバー2に対する装着から、プラグ部6の切欠凹部1bに対する嵌合に至る過程において、プラグ部6が倒れたり、プラグ部6と共にヘッドカバーガスケット3が脱落したりすることがないから、次の締結工程にスムースに移行することができる。そして、不図示のボルト等によりヘッドカバー2をシリンダヘッド1に締結することにより、ガスケット本体部5が両被シール対象部位1a,2a間に圧縮状態で介在され、また、切欠凹部1bとヘッドカバー2の被シール対象部位2aとの間がプラグ部6によって閉塞され、シリンダヘッド1とヘッドカバー2との密封構造が確立される。
【0026】
プラグ部6は、外装部8が埋設一体とされた芯金7によって補強され、剛性が付与されているから、内外圧等の外力が付加されてもへたり等の変形を生じず、その閉塞機能が維持される。特に、シリンダヘッド1の内部に位置する挟持片82,83及び鍔部84には芯金7の一部をなす舌片部72,73,74がその厚み内に及ぶよう形成されているから、シリンダヘッド1に内圧がかかっても、プラグ部6の外側への飛び出しが阻止される。
【0027】
図6は他の実施形態のヘッドカバーガスケットを示し、図7は同ヘッドカバーガスケットに適用される芯金を概念的に示している。この実施形態では、外装部8における外側に位置する挟持片81の厚み内には、前記実施形態のような舌片部71が及んでおらず、従って、前記のような切り起こし孔71aも存在しない。また、芯金本体部70の外形状部における周縁部に屈曲形成される舌片部74が、前記実施形態のものより広角の扇形に形成されている。そして、この舌片部74は前記と同様に、シリンダヘッド1の内壁部1baに密着する鍔部84の厚み内に及ぶように形成されている。この実施形態の場合、前記実施形態の場合のような舌片部71や切り起こし孔71aの存在による効果はないが、芯金7の板金加工がし易いという利点がある。また、舌片部74が大きいので、該舌片部74による前記効果がより顕著となる。尚、前記実施形態の舌片部74をこのように大きくすることは可能である。
その他の構成は、前記実施形態と同様であるから、共通部分に同一の符号を付しその説明を割愛する。
【0028】
図8(a)(b)は更に別の実施形態を示し、シリンダヘッド1の外側に位置する挟持片81が、図1〜図3に示す例より、ガスケット本体部5の長手方向に沿って更に幅広に形成されている。即ち、挟持片81は、前記外装部8の上辺部よりガスケット本体部5の長手方向に沿って突出するよう延出され、この延出部81b、81bが挟持片81の同長手方向両端部に形成されている。挟持片81をこのような形状とすることにより、シリンダヘッド1に形成される切欠部1bの切欠角部1bc,1bc(図1も参照)に塗られる液状ガスケット(不図示)のシリンダヘッド1の外壁部に沿った滲出部を、延出部81b、81bによって覆うことができる。前記切欠角部1bc,1bc及びその周辺部位は、形状的特性からシール構造が複雑で、ヘッドカバーガスケット3だけではシール性が充分発揮されないこともある。その為、シール性をより確実とする為、液状ガスケットを塗布した上で前記プラグ部6の嵌合がなされるが、塗られた液状ガスケットの一部がシリンダヘッド1の外壁部に沿って滲出することは不可避である。これを延出部81b、81bで両側より挟むように覆うことにより、液状ガスケットの漏出を防いでこの部分のシール性を維持すると共に、見栄えの低下を防ぎ、或いは使用者の衣服等が汚れることを防止することができる。
その他の構成は、前記実施形態と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、ここでもその説明を割愛する。
【0029】
図9は、図1乃至図5に示す例のヘッドカバーガスケットの変形例であって、その要部の斜視図である。この例では、前記と同様の外装部8において、シリンダヘッド1の外側に位置する挟持片81がシリンダヘッド1の内側に位置する一方の挟持片82と同幅の短寸形状とされて、該挟持片82と対向する位置に設けられている。また、シリンダヘッド1の内側に位置する他方の挟持片83と対向する位置には、当該挟持片81と同形・同寸の挟持片81´が設けられている。これら、挟持片81,81´,82,83には、前記と同様の突起部81a,81a´と、突起部82a,83aが形成されている。そして、外装部8には、前記と同油の外形状をなす芯金7が完全に埋設され、該芯金7は、これら挟持片81,81´,82,83の厚み内に及ぶ舌片部71,71´,72,73を備えている。舌片部71,71´は、前記と同様に芯金本体部70を切り起こして形成され、この切り起こしによる切り起こし孔71a,孔71a´を介して、前記外装部8を構成する弾性部材が芯金7の両面間で相互に連繋している。
【0030】
また、外装部8は前記同様に鍔部84,85を備え、前記芯金7は、これら鍔部84,85の厚み内に及ぶ舌片部74,75を有している。舌片部74は、図3〜図5に示すものと同様であるが、舌片部75は芯金本体部70を切り起こして形成され、この切り起こしによる切り起こし孔75aを介して、前記外装部8を構成する弾性部材が芯金7の両面間で相互に連繋している。
【0031】
この例のヘッドカバーガスケット3の場合も前記と同様の効果を奏するが、特に、鍔部85の厚み内にも及ぶ舌片部75を形成しているから、シリンダヘッド1内の負圧に対する耐圧強度がより強化される。そして、対象とするシリンダヘッド1の切欠部1bが小さい場合に、図1〜図5に示すような幅広の挟持片81及び鍔部85に舌片部を切り起こしによって形成せんとすると、これらの切り起こし孔が重なり、芯金7の補強効果が減退する。そこで、外側に位置する挟持片を、例示のように短寸の挟持片81,81´から構成されるものとすれば、切り起こし孔81a,81a´と切り起こし75とが重ならず、芯金7の強度の低下を抑えると共に、芯金7の加工も容易になし得る。
その他の構成は、前記と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。
【0032】
尚、切欠凹部1bの形状は半円形に限らず、長円、楕円、方形、他の多角形の一部をなす形状であっても良く、プラグ部6および芯金7の外形状は、これらの形状に合うよう設定される。また、図1〜図5に示す例において、挟持片81と挟持片82,83の関係を、例示とは逆とすることも可能である。そして、挟持片81(81´),82,83の形状(大きさ、幅を含む)や個数等は適宜設計的事項として変更が可能である。加えて、外装部8の鍔部84,85に及ぶ舌片部74,75の形状等は図例のものに限定されず、幅狭のものを複数放射状に形成することも可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 シリンダヘッド
1a 被シール対象部位
1b 切欠凹部
2 ヘッドカバー
2a 被シール対象部位
2b 凹溝
3 ヘッドカバーガスケット
5 ガスケット本体部
5a 小突起
6 プラグ部
7 芯金
71,72,73 舌片部
71a 切り起こし孔
8 外装部
81,82,83 挟持片
81a,82a,83a 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッド及びヘッドカバーの夫々の環状被シール対象部位間に介在されるヘッドカバーガスケットであって、
弾性部材の成型体からなり、前記ヘッドカバーの前記被シール対象部位に形成される環状の凹溝に嵌装される環状のガスケット本体部と、該ガスケット本体部に一体に形成され、前記シリンダヘッドの被シール対象部位に形成される切欠凹部に嵌合されるプラグ部とを備え、
前記プラグ部は、板金加工された芯金と、該芯金を埋設し前記ガスケット本体部と一体的に成型された前記弾性部材による外装部とよりなり、
前記外装部における前記ヘッドカバーの被シール対象部位に対応する部位には、該被シール対象部位を幅方向より弾性的に挟装する挟持片が突設されていることを特徴とするヘッドカバーガスケット。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドカバーガスケットにおいて、
前記挟持片の前記挟装側の面に、突起部が形成されていることを特徴とするヘッドカバーガスケット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のヘッドカバーガスケットにおいて、
前記芯金は、前記切欠凹部の形状と相似形に形成され、その外形状部には前記挟持片の厚み内に及ぶ舌片部を備えていることを特徴とするヘッドカバーガスケット。
【請求項4】
請求項3に記載のヘッドカバーガスケットにおいて、
前記舌片部が切り起こしによって形成され、当該切り起こしによる切り起こし孔を介して、前記弾性部材が芯金の両面間で相互に連繋していることを特徴とするガスケット。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のヘッドカバーガスケットにおいて、
前記ガスケット本体部の側部に、該ガスケット本体部が前記凹溝に嵌装された際に、該凹溝の内壁との間に圧縮状態で介在される小突起が形成されていることを特徴とするヘッドカバーガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−12794(P2011−12794A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159541(P2009−159541)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000225359)内山工業株式会社 (204)
【Fターム(参考)】