説明

ヘッドクリーニング液及びクリーニング方法

【課題】インクジェット記録ヘッドのクリーニング性に優れ、連続出射を行っても優れた吐出安定性が実現できるヘッドクリーニング液及びそれを用いたクリーニング方法を提供する。
【解決手段】水溶性染料を含有する水系インクジェットインクを吐出するインクジェット記録ヘッドのノズル面をクリーニングするのに用いるヘッドクリーニング液において、キレート剤を0.01質量%以上、1.0質量%以下含有することを特徴とするヘッドクリーニング液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色材として水溶性染料を用いた水系インクジェットインクを用いるインクジェット記録装置において、インクの出射に用いるインクジェット記録ヘッドをクリーニングするクリーニング機構に使用するヘッドクリーニング液及びそれを用いたクリーニング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録装置で画像を印刷することが急速に広まり、それに伴いインクジェット記録装置に使用するインクジェット記録ヘッドの高解像度化が求められ得てきている。また、そのインクジェット記録ヘッドに使用するインクジェット用インクとしては、発色の鮮やかさなどの観点から水溶性染料を含有する水系インクジェットインクが多く用いられており、その水系インクジェットインクを数十ミクロンオーダーの微小なインク液滴としてインクジェット記録ヘッドのノズルから吐出させて、画像形成を行っている。
【0003】
しかしながら、水系インクジェットインクの溶媒は水が主成分であるため、空気に触れると揮発しやすく、インク液滴の残りがノズル表面部に付着すると、その部分にインク固化物が堆積して、インクの目詰まりや出射不良を引き起こすことが指摘されていた。そこで、従来からインクジェット記録ヘッドのノズル表面部には、撥水処理をしてノズル表面への付着を防ぐ方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているような方法を施しても、長期間にわたるインクジェット記録ヘッドから安定したインクの吐出を確保することは困難であり、そのため、ノズルプレート面を物理的に清掃するクリーニング手段がインクジェット記録装置のシステム内に設けられている。例えば、ノズルプレート面に吸引手段を接合してノズルを強制的に吸引する手段や、ブレードでノズルプレート面を掻き取る方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2等で提案されている方法では、インクジェット記録ヘッドのノズルプレート面に発生する固着物による故障には効果があるが、固着物はこのようなノズルプレート面だけでなく、ノズル内部(オリフィス部)に固着物が堆積・固着して目詰まりや液滴の斜め射出という故障が発生するため、上記技術だけでは解決には至っていなかった。
【0006】
上記課題に対し、ノズルプレートをふき取る際に用いるヘッドクリーニング液でノズル面や内部(オリフィス部)を浸すことにより、ノズル内部の固着物を溶解して、ノズル内部の固着物発生による目詰まりを防止する方法が提案され、更には、インクジェットヘッドのクリーニング液としては、インクジェットインク組成物から水溶性染料のみを除いた成分で構成する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
また、使用方法としては上記の方法とは異なるが、メンテナンス液としてアルコール類と陰イオン界面活性剤、および水を含むインクジェット記録ヘッド用のメンテナンス液を長期間にわたりノズル部に充填する方法が提案されている。これにより、ノズルに付着した染料固着物を上記溶剤を含むメンテナンス液で溶解してノズルの状態を最適に保つ方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
更に、水系インクジェットインクを用いた場合には、インクジェット記録ヘッドのノズル端部でカビや細菌が繁殖することによる印字の乱れを防止し、かつクリーニング時に発生する気泡のインクジェット記録ヘッドへの付着を防止する目的で、消泡剤、防薇剤を添加した水を主成分とするクリーニング液が提案されている(例えば、特許文献5、6参照)。
【0009】
また、クリーニング液を長期間にわたり保存することによって生じる黴対策として、クリーニング液製造時に限外濾過と粘度調整を行い、生菌数を出荷時に制限する方法も開示されている(例えば、特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−8416号公報
【特許文献2】特開2003−191480号公報
【特許文献3】特公平6−8437号公報
【特許文献4】特公平8−30200号公報
【特許文献5】特開2000−303372号公報
【特許文献6】特開2000−328093号公報
【特許文献7】特開平11−152499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記各特許文献により提案されている技術を持ってしても達成しえない課題があった。すなわち、インクジェット記録ヘッドのノズル部は、インクが常時一定位置にインク界面があるわけではなく、絶えずその位置界面が微妙に変動している。このため、ノズル内部でも、端部に近い領域では外部空気と接触する機会が多いため、ノズル内部の端部はインクが付着すると乾燥しやすくなると考えられる。
【0012】
インクが乾燥する過程では、インク中の溶媒が揮発していくことになるが、同時に染料の水溶性基に不純物である金属イオンが付着しやすくなり、インクの乾燥物が非水溶性化することが判明した。この様な状況下では、記録ヘッドのノズル内部で固着物が多く発生しており、上記提案されている従来技術を適用しても、発生した固着物を物理的にふき取り、あるいはクリーニング溶媒で再溶解して除去することが困難であった。
【0013】
また、上記提案されている各クリーニング液にアルカリ剤を添加してpHを調整して強力に固着物を溶解する方法も考えられるが、アルカリ液はインクヘッドのノズル端部にコートされている撥水層までも溶解してしまうため、ノズル端部の撥水性が低下し、かえってノズル部にインク液滴が付着しやすく、その残インクが再び乾燥してノズル部に固着してしまうという不具合があると考えられる。
【0014】
これにより、従来提案されている各技術のクリーニング液を適用してインクジェット記録ヘッドの清掃をやっても、水溶性基に金属イオンが付着した固着物は容易に水に溶解しないため十分にクリーニングできず、ノズル内に堆積していくと推定される。この堆積物があることで、インクを吐出する際の障害となり、インクが斜めに射出されて定位置に印字されないという課題があった。
【0015】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、インクジェット記録ヘッドのクリーニング性に優れ、インクジェット記録ヘッドを用いて連続出射を行っても優れた吐出安定性が実現できるヘッドクリーニング液及びそれを用いたクリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0017】
1.水溶性染料を含有する水系インクジェットインクを吐出するインクジェット記録ヘッドのノズル面をクリーニングするのに用いるヘッドクリーニング液において、キレート剤を0.01質量%以上、1.0質量%以下含有することを特徴とするヘッドクリーニング液。
【0018】
2.前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、L−アスパラギン酸二酢酸(GLDA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン六酢酸(HEDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)及びジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記1に記載のヘッドクリーニング液。
【0019】
3.更に、消泡剤及び防黴剤を含有することを特徴とする前記1または2に記載のヘッドクリーニング液。
【0020】
4.前記水溶性染料を含有する水系インクジェットインクを吐出する前記インクジェット記録ヘッドのノズル面のクリーニング機構を有するインクジェット記録装置に用いることを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載のヘッドクリーニング液。
【0021】
5.前記1から4のいずれか1項に記載のヘッドクリーニング液を装備したクリーニング機構により、水溶性染料を含有する水系インクジェットインクを吐出した後のインクジェット記録ヘッドのノズル面をクリーニングすることを特徴とするクリーニング方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、インクジェット記録ヘッドのクリーニング性に優れ、連続出射を行っても優れた吐出安定性が実現できるヘッドクリーニング液及びそれを用いたクリーニング方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】クリーニング機構を備えたインクジェット記録装置の構成の一例を示す概略ライン図である。
【図2】本発明のヘッドクリーニング液を貯留したクリーニング機構によるヘッドクリーニングの状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0025】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、水溶性染料を含有する水系インクジェットインクを吐出するインクジェット記録ヘッドのノズル面をクリーニングするのに用いるヘッドクリーニング液において、キレート剤を0.01質量%以上、1.0質量%以下含有することを特徴とするヘッドクリーニング液により、インクジェット記録ヘッドのクリーニング性に優れ、連続出射を行っても優れた吐出安定性が実現できるヘッドクリーニング液を実現することができることを見出し、本発明に至った次第である。
【0026】
以下、本発明のヘッドクリーニング液の構成と、その使用方法について、その詳細を説明する。
【0027】
《ヘッドクリーニング液》
本発明のヘッドクリーニング液は、少なくとも反応性染料、酸性染料などの水溶性染料を含有し、更にはイオン交換水、有機溶剤、界面活性剤、防黴剤、消泡剤等から構成される水系インクジェットインク(以下、単にインクともいう)を、インクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッドあるいは単にヘッドともいう)から吐出して印字するインクジェット記録装置に装着されている記録ヘッドのクリーニング機構に用いる。
【0028】
本発明に係るインクジェット記録装置には、記録ヘッドのメンテナンス部が装備されており、インクの保湿キャップ、吸引キャップ、またワイパーブレードなどによる通常のメンテナンスに加えて、本発明のヘッドクリーニング液を用いてインクジェット記録ヘッドのノズル面、あるいはノズル内部の洗浄を行うためのクリーニング機構を備える。
【0029】
〔キレート剤〕
本発明のヘッドクリーニング液では、ヘッドクリーニング液全質量に対して、キレート剤を0.01質量%以上、1.0質量%以下含有することを特徴とする。本発明のヘッドクリーニング液において、キレート剤を含有することにより本願発明の目的効果が達成される理由は、以下の通りである。
【0030】
本発明に係る水系インクジェットインクを構成する水溶性染料には、反応性染料、酸性染料などが挙げられるが、水溶性染料はその染料骨格の中に水溶性官能基を有しており、この水溶性官能基が水分子と会合して水溶性になる。しかしながら、この水溶性官能基は、インクの乾燥過程あるいは加熱などにより染料骨格から外れやすくなるため、特に、インクの乾燥あるいは加熱には、これらを抑制するための注意が必要とされている。
【0031】
一方、水溶性染料を含有するインクは、インクジェット記録ヘッドのノズルから吐出される際、ノズル端面や内部に接液するため、どうしてもノズル端面やノズル内部にインクが残留しやすくなる。この残留したインクが乾燥されると、水溶性染料がノズル周辺部に固着して、不溶化すると考えられる。
【0032】
現在のインクジェットプリントシステムでは、インクジェット記録ヘッドのノズル端面を、物理的手段により定期的に清掃する機構が付いているが、ノズル内部はクリーニングすることができない。このため、定常的にインクを非印字部でノズルから排出してノズル内部が乾燥しないようにするシステムを取ることが多い。しかし、非印字部におけるノズルからの排出は、インク量ロスを軽減することも必要であり、一定の長時間の間隔をおいてノズルから排出される。このため、ノズル内部では、インクが排出されるまでにノズル内部とインク界面から乾燥が生じることになる。また、接液しているインク液溜まりの位置は、常に一定に保たれているわけではなく、たえず接液部の位置が変化している。この動作がくり返されることにより、ノズル内部の接液部に固着物が堆積してくると推定され、この堆席物の剥離等により、ノズル部で目詰まりを起こし、インク吐出の際の障害となってインクが斜めに射出されて定位置に印字されなくなる現象となっていたと考えられる。
【0033】
本発明者は、これらのインク成分の乾燥等に起因する固着物について、その組成を定量分析により確認した結果、インクに使用している水溶性染料の元素成分の他に、本来は水溶性染料の成分としては含まれない金属イオンが検出されていた。これら金属イオンとしては、Mg、Fe、Ca、Niなどであり、これらの金属イオンが固着物の形成を促進していることが判明した。
【0034】
そこで、この固着物の除去方法について鋭意検討した結果、固着物の不溶性を促進している金属物を溶解することにより、水溶性化が達成でき、水に溶解すると考察した。具体的には、このような金属物は金属錯体で取り囲むことにより可溶化できるとの推測のもと、クリーニング液に金属キレート剤を添加して、その固形物に対する溶解性を確認した結果、特定範囲のキレート剤をクリーニング液に添加することにより、すみかに固形物を溶解できることが判明し、本発明に至った次第である。
【0035】
以下、本発明のヘッドクリーニング液が含有するキレート剤の詳細について説明する。
【0036】
本発明のヘッドクリーニング液に適用可能なキレート剤としては、特に制限はないが、キレート安定度定数が8以上であるキレート剤を含有することが、本発明の目的効果の観点から好ましい。ここでいうキレート安定度定数とは、L.G.Sillen,A.E.Marttell著“Stability Constants of Metal−ion Complexes”The Chemical Society,London(1964)、S.Chaberek,A.E.Martell著“Organic Sequestering Agents” Wiley(1959)等により一般に知られた定数を意味する。
【0037】
キレート安定度定数が8以上、具体的には、鉄イオンとのキレート安定度定数が8以上であるキレート剤としては、有機カルボン酸キレート剤、有機リン酸キレート剤、無機リン酸キレート剤、ポリヒドロキシ化合物等が挙げられる。なお、上記鉄イオンとは、第2鉄イオン(Fe3+)を意味する。
【0038】
第2鉄イオンとのキレート安定度定数が8以上であるキレート剤の具体的化合物例としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンジオルトヒドロキシフェニル酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン六酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸、イミノ二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ジアミノプロパノール四酢酸、トランスシクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、1,1−ジホスホノエタン−2−カルボン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、1−ヒドロキシ−1−ホスホノプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、カテコール−3,5−ジホスホン酸、ピロリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、L−アスパラギン酸二酢酸、ヒドロキシエチルグリシンや、2つの酸性基をもった配位子としては、例えば、マロン酸、シュウ酸、フタル酸、グリコール酸、サリチル酸がある。一つの酸性基と一つの非酸性配位基をもった配位子として、例えば、8−キノリノール、アセチルアセトン、トリフルオロアセトン、ジメチルグリオキシム、ジチゾン、サリチルアルデヒドがある。二つの非酸性配位基をもった配位子としてエチレンジアミン、2,2′−ビピリジン、1,10−フェナントロリン等が挙げられる。
【0039】
本発明においては、その中でも、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、L−アスパラギン酸二酢酸(GLDA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン六酢酸(HEDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)及びジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0040】
本発明のヘッドクリーニング液においては、本発明に係るキレート剤を、ヘッドクリーニング液全質量の0.01質量%以上、1.0質量%以下含有させることを特徴とし、本発明で規定する範囲でキレート剤を含有させることにより、発生した固着物中に存在する金属イオンに対し配位結合によりキレート錯体を形成し、可溶化する。
【0041】
本発明のヘッドクリーニング液におけるキレート剤の含有量が0.01質量%以上であれば、キレート効果を十分に発揮させることができ、1.0質量%以下であれば、キレート剤自身の析出等による影響を排除することができる。
【0042】
〔その他の添加剤〕
本発明のヘッドクリーニング液においては、本発明に係るキレート剤と共に、本発明の目的効果を損なわない範囲で、消泡剤あるいは防黴剤を含有させることが好ましい。
【0043】
(消泡剤)
本発明のヘッドクリーニング液を適用するクリーニング機構においては、ヘッドクリーニング液を貯留するクリーニング液貯部で気泡が発生しやすく、その気泡を含むクリーニング液でインクジェット記録ヘッドのクリーニングを行うと、ノズル部での気泡付着により、出射不良等のノズル欠を発生する。あるいは、クリーニング液でインクジェット記録ヘッドのノズル端面を擦るため、どうしてもインクと接液することになり、インク中に含まれている界面活性剤により、ワイピング時にノズル面で泡を発生する。この気泡がノズル面に残っているとノズル欠に繋がる故障となる。
【0044】
上記のような各状況下での気泡の発生を防止する観点から、本発明のヘッドクリーニング液は、消泡剤を含有することが好ましい。
【0045】
本発明に適用可能な消泡剤としては、特に制限はないが、ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、有機変性ポリシロキサン、フッ素シリコーン等のシリコーン系消泡剤、ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油等の油脂系消泡剤、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸系消泡剤、イソアミルステアリン酸、ジグリコールラウリン酸、ジステアリルコハク酸、ジステリン酸、ソルビタンモノラウリン酸、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ブチルステアレート、ショ糖脂肪酸エステル、スルホン化リチノール酸のエチル酢酸アルキルエステル、天然ワックス等の脂肪酸エステル系消泡剤、ポリオキシアルキレングリコールとその誘導体、ポリオキシアルキレンアルコール水和物、ジアミルフェノキシエタノール、3−ヘプタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール系消泡剤、3−ヘプチルセルソルブ、ノニルセルソルブ−3−ヘプチルカルビトール等のエーテル系消泡剤、トリブチルホスフェート、オクチルリン酸ナトリウム、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート等のリン酸エステル系消泡剤、ジアミルアミン等のアミン系消泡剤、ポリアルキレンアマイド、アシレイトポリアミン、ジオクタデカノイルピペリジン等のアマイド系消泡剤、Alステアリン酸、Caステアリン酸、Kオレイン酸、ウールオレインのCa塩等の金属セッケン系消泡剤、Naラウリルスルホン酸、Naドデシルスルホン酸等のスルホン酸エステル系消泡剤、フッ素系消泡剤(例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸やパーフルオロアルキルカルボン酸などのパーフルオロアルキル基を有する有機酸のアンモニウム又はアルカリ金属との塩からなるアニオン系消泡剤、パーフルオロアルキル基を有する4級アンモニウムハライド等のカチオン系消泡剤、パーフルオロアルキル含有オリゴマー、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルアルコキシレート、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルアミンオキシド等のノニオン系消泡剤等)が利用可能である。
【0046】
これらの消泡剤のなかで、効果及び安定性の観点から、シリコーン系消泡剤またはフッ素系消泡剤が好適に用いられる。
【0047】
更に、これらの消泡剤は市販品としても入手可能であり、脂肪酸エステル系消泡剤としては、例えば、NopcoChem.Co製のNopco KF等が挙げられる。エーテル系消泡剤としては、例えば、竹本油脂(株)製バイオニンK−17、バイオニンK−25、サンノプコ(株)製SNデフォーマー777等が挙げられる。金属石鹸系消泡剤としては、例えば、サンノプコ(株)製ノプコDF122−NS等が挙げられる。シリコーン系消泡剤としては、例えば、サンノプコ(株)製のSNデフォーマー381、SNデフォーマー5016、デヒドラン1513、東レダウコーニングシリコーン(株)製のSM−5513、シリコーン系消泡剤としては、例えば、東レダウコーニング社製のFSアンチフォーム90、FSアンチフォーム92、信越化学工業社製のKS508、KS537、KS538、七福化学社製のF100等が挙げられる。
【0048】
本発明のヘッドクリーニング液における消泡剤の添加量としては、ヘッドクリーニング液全質量の0.01質量%以上、0.1質量%以下含有させることが好ましい。0.01質量%以上であれば消泡剤としての効果を発現することができ、0.1質量%であれば消泡剤による析出等の悪影響を抑制することができる。
【0049】
(防黴剤)
本発明のヘッドクリーニング液を適用するクリーニング機構においては、ヘッドクリーニング液を貯留するクリーニング液貯部では、空気中に存在する黴等が混入し易く、その黴を含むクリーニング液でインクジェット記録ヘッド部のクリーニングを行うと、ノズル部で黴等が付着、増殖して、これらが異物となってインクジェットプリンタ内のヘッドノズルやインク流路内を詰まらせ、出射不良等の故障を発生させる。
【0050】
上記のような各状況下での黴による出射不良を防止する観点から、本発明のヘッドクリーニング液は、防黴剤を含有することが好ましい。
【0051】
本発明に適用可能な防黴剤としては、例えば、フェノール又はその誘導体、o−フェニルフェノール、p−クロロメタクレゾール、ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体等が挙げられ、更には、イソチアゾリン誘導体、例えば、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン等、具体的には、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの他、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等が好ましく挙げられる。
【0052】
更に、これらの防黴剤は市販品としても入手可能であり、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリジン−3−オン(アビシア社のプロキセルCRL、プロキセルBD、プロキセルGXL、プロキセルTN、プロキセルXL−2、プロキセルGXL−S等)、4−クロロ−3−メチルフェノール(バイエル社のプリベントールCMK等)が挙げられる。
【0053】
本発明のヘッドクリーニング液における防黴剤の添加量としては、ヘッドクリーニング液全質量の0.01質量%以上、0.1質量%以下含有させることが好ましい。0.01質量%以上であれば十分な防黴効果を発現することができ、0.1質量%であれば防黴剤による析出等の悪影響を抑制することができる。
【0054】
〔水系インクジェットインク〕
本発明のヘッドクリーニング液を用いたインクジェット記録装置に用いるインクジェットインクとしては、色材として少なくとも水溶性染料を含有する水系インクジェットインクであることを特徴とする。
【0055】
本発明に適用可能な水系インクジェットインクの構成について、その概略を説明する。
【0056】
(水溶性染料)
水溶性染料の例としては、例えば、アゾ染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料などを挙げることができ、直接染料、酸性染料、反応性染料、塩基性染料等の水溶性染料の一例を以下に示す。
【0057】
直接染料としては、C.I.ダイレクトイエロー1、4、8、11、12、24、26、27、28、33、39、44、50、58、85、86、100、110、120、132、142、144;C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、47、48、51、62、63、75、79、80、81、83、89、90、94、95、99、220、224、227、243;C.I.ダイレクトブルー1、2、6、8、15、22、25、71、76、78、80、86、87、90、98、106、108、120、123、163、165、192、193、194、195、196、199、200、201、202、203、207、236、237;C.I.ダイレクトブラック2、3、7、17、19、22、32、38、51、56、62、71、74、75、77、105、108、112、117、154等が挙げられ、
酸性染料としては、C.I.アシッドイエロー2、3、7、17、19、23、25、29、38、42、49、59、61、72、99;C.I.アシッドオレンジ56、64;C.I.アシッドレッド1、8、14、18、26、32、37、42、52、57、72、74、80、87、115、119、131、133、134、143、154、186、249、254、256;C.I.アシッドバイオレット11、34、75;C.I.アシッドブルー1、7、9、29、87、126、138、171、175、183、234、236、249;C.I.アシッドグリーン9、12、19、27、41;C.I.アシッドブラック1、2、7、24、26、48、52、58、60、94、107、109、110、119、131、155等が挙げられ、
反応性染料としては、C.I.リアクティブイエロー1、2、3、13、14、15、17、37、42、76、95、168、175;C.I.リアクティブレッド2、6、11、21、22、23、24、33、45、111、112、114、180、218、226、228、235;C.I.リアクティブブルー7、14、15、18、19、21、25、38、49、72、77、176、203、220、230、235;C.I.リアクティブオレンジ5、12、13、35、95;C.I.リアクティブブラウン7、11、33、37、46;C.I.リアクティブグリーン8、19;C.I.リアクティブバイオレット2、4、6、8、21、22、25;C.I.リアクティブブラック5、8、31、39等が挙げられ、
塩基性染料としては、C.I.ベーシックイエロー11、14、21、32;C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13;C.I.ベーシックバイオレット3、7、14;C.I.ベーシックブルー3、9、24、25等が挙げられる。
【0058】
これら列挙した染料は、「染色ノート第21版」(出版;色染社)等に記載されている。
【0059】
(その他の構成要素)
本発明に適用可能な水系インクジェットインクに含有できる溶剤としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンアジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)が挙げられる。
【0060】
本発明に適用可能な水系インクジェットインクには、その表面張力を制御するため、界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、両性、ノニオン系のものが使用され、代表的には、アニオン系の界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等、カチオン系の界面活性剤としては、アミン塩、テトラアルキル4級アンモニウム塩、トリアルキル4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルキノリニウム塩等、ノニオン系の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド付加物、アセチレングリコール、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0061】
また、本発明に適用可能な水系インクジェットインクには、吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジへの適合性、保存安定性、その他諸特性向上を目的として、それぞれの目的に適合する、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤、pH調整剤、染料溶解助剤、消泡剤、金属キレート剤等を添加することもできる。
【0062】
防腐剤、防黴剤の好ましい具体例としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンズイソチアゾリジン−3−オン(アビシア社のプロキセルCRL、プロキセルBD、プロキセルGXL、プロキセルTN、プロキセルXL−2等)、4−クロロ−3−メチルフェノール(バイエル社のプリベントールCMK等)が挙げられる。
【0063】
pH調整剤の例としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリン等のアミン類及びそれらの変性物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の無機塩類、水酸化アンモニウム、4級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウム等)、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩類その他リン酸塩等が挙げられる。
【0064】
染料溶解助剤の例としては、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素等の尿素類が挙げられる。
【0065】
《インクジェット記録装置》
ついで、本発明のヘッドクリーニング液を適用するクリーニング機構を有するインクジェット記録装置について説明する。
【0066】
図1は、クリーニング機構を備えたインクジェット記録装置の構成の一例を示す概略ライン図であり、その一例として、布帛に印字を行うインクジェット捺染記録方法について説明する。
【0067】
図1においては、ヘッド7aを下面に保持したキャリッジ7は、不図示のガイドに沿って、記録媒体である布帛CLを保持する保持台4に対し左右方向に移動可能となっている。保持台の左右方向に延在するように、その全体にわたってリニアエンコーダ11が配置されている。
【0068】
リニアエンコーダ11は、長手方向に沿って微少等間隔に複数の刻線11aが形成されており、キャリッジ7には、リニアエンコーダ11の刻線11aを読み取り可能な、例えば、光学式の読取部(不図示)が設けられている。
【0069】
図1において、保持台4の右方には、ヘッド7aをクリーニングするためのクリーニング部が設けられている。クリーニング部は、吐出インク受容容器13と、クリーニング機構14及びサッキングユニット15とから構成されている。
【0070】
クリーニング部におけるヘッドクリーニングの動作について、以下に説明する。
【0071】
まず、ヘッド7aの底部であるノズル部7bのクリーニングを行う場合、制御装置(不図示)の制御下で、キャリッジ7は、ゼロ番地より更に右方に移動する。ヘッド7aは、吐出インク受容容器13上を通過する際に、クリーニングの前作業として、ノズルよりインクを出射して、ノズルを空にする。
【0072】
次いで、ヘッド7aは、ヘッドクリーニング液14bに約半分漬けられた状態で回転可能なローラ14aを備えたヘッドクリーニング液保持容器14cから構成されるクリーニング機構14の上部に移動する。
【0073】
図2は、本発明のヘッドクリーニング液を貯留したクリーニング機構によるヘッドクリーニングの状態を示す模式図である。
【0074】
図2のa)においては、ヘッド7aは、イエローインク吐出用のヘッドY、マゼンタインク吐出用のヘッドM、シアンインク吐出用のヘッドC及びブラックインク吐出用のヘッドKの4つから構成され、キャリッジ7に保持されている。
【0075】
クリーニング機構14は、ヘッドクリーニング液保持容器14c中に、少なくともキレート剤を0.01質量%以上、1.0質量%以下含有する本発明のヘッドクリーニング液14bが貯留されている。このヘッドクリーニング液14bに約1/2浸漬した状態で、回転可能なローラ14aが設置され、ローラ14aをモータ等で回転させながら、ヘッドクリーニング液14bを、ノズル部を有するヘッド底部7b面に供給すると共に、ローラ14aによりヘッド底部7bに付着した金属イオンを含有するインク固着物を除去する。なお、ローラ14aの表面は、金属等を芯金とし、その表面をスポンジ、ゴム等の軟質材質で被覆されている構成とすることができる。
【0076】
図2のb)は、図2のa)で示した構成をA方向から見たときの断面図である。
【0077】
図2のb)において、ヘッド7aのヘッド底部7bにローラ14aが接する様に配置され、このローラ14aは、ローラ保持具18を介して、ローラ14aをヘッド7aの長手方向に移動させるエアーシリンダー17に接続されている。
【0078】
印字開始の前後で上記クリーニング機構7によりクリーニングされたキャリッジ7に搭載されたヘッド7aは、右方へと移動し、ヘッドの数だけサッキングキャップ15bを備えたサッキングユニット15の上方に至る。サッキングキャップ15bは、サッキングポンプ15aに、ポンプチューブ15cを介して接続されており、上方に来たヘッド7aに密封的に当接して、ノズル7b内の洗浄液やインクを吸い出すことができるようになっている。
【0079】
このようにして洗浄されたヘッド7aは、キャリッジ7の移動と共に、再び保持台4の上方へと搬送され、画像のプリントを行うようになっている。
【0080】
通常、インクジェット記録装置においては、プリント終了後におけるヘッドの取り扱いが問題となる。すなわち、ヘッドのノズル径は約40μmと細いため、水不溶成分を含んだ捺染用インクが詰まりやすくなっており、インクを出射したヘッドのノズルを空気中に放置すると、ノズル詰まりによりヘッドが使用不能となる恐れがある。そこで、インクジェット記録装置を停止した場合には、ヘッドをキャッピングするという作業が必要となる。
【0081】
図1において、保持台4の左方には、ヘッド7aをキャッピングするためのキャッピング機構16が設けられている。キャッピング機構16は、キャッピング液を貯留した、底壁を有する円筒状部材であるキャップ16aと、キャッピング液を補充するためのキャッピング袋16cとから構成されている。なお、キャッピング袋16cと、ヘッド7aの数だけ設けられたキャップ16aとは、その底部においてチューブによって連結されている。キャッピング機構16の上方には、キャリッジ7がキャッピング位置に来た場合、これを検出してその駆動を停止すべく制御装置に検出信号を送信するセンサが配置されている。
【0082】
プリントが終了し、ヘッド7aが、キャップ16aの上方に位置したときに、キャップ16aは、対応するか各ヘッド7aの下面に密封的に当接して、その下面を外界に対して遮断し、かつその内部空間をキャッピング液の飽和蒸気で満たすことによって、ノズルの詰まりを防止するようになっている。かかる場合、キャッピング液16bが水と防黴剤とを含み、もしくはキャッピング液16bが、水と、水よりも蒸発しやすい材料(例えばアルコール)を含むことにより、キャッピング液16bの蒸気をヘッド7aの下面に接触させることができるため、黴などの発生を防止しつつ、ヘッド7aを良好な状態で保管することができる。
【0083】
なお、上記説明では、インクジェット捺染記録方法で用いるインクジェット記録装置に装填するクリーニング機構を一例として説明したが、水溶性染料インクを用い、インクジェット専用紙、インク吸収性記録媒体、あるいは非インク吸収性記録媒体に印字するインクジェット記録方式についても、同様に適用することができる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0085】
《ヘッドクリーニング液の調製》
〔ヘッドクリーニング液1の調製〕
消泡剤:シリコーン系消泡剤、東レダウコーニング社製、FSアンチフォーム92
0.30%
防黴剤:アーチケミカル社製、プロキセルGXL−S 0.10%
イオン交換水(総量を100質量%とするに必要な量) 99.60%
上記各添加剤を混合、攪拌して、ヘッドクリーニング液1を調製した。
【0086】
〔ヘッドクリーニング液2の調製〕
キレート剤:ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(以下、HIDAと略記)0.005%
消泡剤:シリコーン系消泡剤、東レダウコーニング社製、FSアンチフォーム92
0.30%
防黴剤:アーチケミカル社製、プロキセルGXL−S 0.10%
イオン交換水(総量を100質量%とするに必要な量) 99.595%
上記各添加剤を混合、攪拌して、ヘッドクリーニング液2を調製した。
【0087】
〔ヘッドクリーニング液3〜27の調製〕
上記ヘッドクリーニング液2の調製において、キレート剤の種類と添加量、消泡剤の有無、防黴剤の有無を、表1に記載のように変更した以外は同様にして、ヘッドクリーニング液3〜27を調製した。なお、それぞれのイオン交換水の添加量は、総量が100質量%となるよう適宜調整した。
【0088】
なお、表1に略称で記載した各キレート剤の詳細は以下の通りである。
【0089】
HIDA:ヒドロキシエチルイミノ二酢酸
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
NTA:ニトリロ三酢酸
DTPA:ジエチレントリアミン五酢酸
GLDA:L−アスパラギン酸二酢酸
HEDTA:ヒドロキシエチルエチレンジアミン六酢酸
GEDTA:グリコールエーテルジアミン四酢酸
TTHA:トリエチレンテトラミン六酢酸
DHEG:ヒドロキシエチルグリシン
《ヘッドクリーニング液の評価》
〔インクジェット記録装置〕
図1に記載の構成からなるインクジェット記録装置を用い、記録ヘッドとしてはコニカミノルタ製のインクジェットヘッド(HA−1024)を装備し、インクジェットインクとしては、コニカミノルタ製のナッセンジャーV用シアンインク(反応性シアン染料インク 1L入り)を用いた。また、クリーニング機構は、図1、図2の構成を用いた。
【0090】
〔インク連続吐出及びクリーニング操作〕
上記インクジェット記録装置に、シアンインクを装填し、540dpi×720dpiの解像度、駆動電圧12.4Vの条件で、全ノズル(512ノズル)から連続30分間射出し、その後10分間休止した。この作業を1日に12回繰り返して行った。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cmあたりのドット数を表す。
【0091】
次いで、1日当たり12回の出射を行った後、図2に示す構成からなるクリーニング機構を用いて、各ヘッドクリーニング液を用いて、記録ヘッドのクリーニングを行った。
【0092】
上記12回の出射とクリーニングとを1日で行い、この操作を連続して7日間行った。
【0093】
〔出射安定性の評価〕
上記方法に従って、1日当たり12回の出射及びクリーニング操作を連続7日間行った後、記録ヘッド(512ノズル)からシアンインクを540dpi×720dpiの解像度、駆動電圧12.4Vの条件で吐出したとき、ノズル欠を起こしているノズル数をカウントし、それを出射安定性の尺度とした。
【0094】
〔印字濃度の測定〕
上記方法に従って、7日間の出射操作を行った後、布帛としてA4サイズの綿を用いてシアンベタ画像を印字し、75℃で乾燥させてから発色し、さらに洗濯、アイロンがけを行って、試料1〜27を作製した。
【0095】
作製した布帛の濃度を、CIE 1976(L,a,b)color space(CIELAB)規格に基づき、938 Spectrodensitometer(X−rite社製)を用いて測定し、色濃度(L)を測定した。
【0096】
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
表1の記載の結果より明らかなように、キレート剤を0.01質量%以上、1.0質量%以下含有する本発明のヘッドクリーニング液を用いることにより、比較例に対し、連続出射を行った際の記録ヘッドのクリーニング性に優れ、ヘッド欠の発生を抑制し、連続出射後でも所望の画像濃度を安定して得ることができることが分かる。
【符号の説明】
【0099】
4 保持台
6 バキュームポンプ
7 キャリッジ
7a ヘッド
7b ノズル部
11 リニアエンコーダ
13 吐出インク受容容器
14 クリーニング機構
14a ローラ
14b ヘッドクリーニング液
14c ヘッドクリーニング液保持容器
15 サッキングユニット
16 キャッピング機構
17 エアーシリンダー
18 ローラ保持金具
CL 布帛
Y イエローインク吐出用のヘッド
M マゼンタインク吐出用のヘッド
C シアンインク吐出用のヘッド
K ブラックインク吐出用のヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性染料を含有する水系インクジェットインクを吐出するインクジェット記録ヘッドのノズル面をクリーニングするのに用いるヘッドクリーニング液において、キレート剤を0.01質量%以上、1.0質量%以下含有することを特徴とするヘッドクリーニング液。
【請求項2】
前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、L−アスパラギン酸二酢酸(GLDA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン六酢酸(HEDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)及びジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のヘッドクリーニング液。
【請求項3】
更に、消泡剤及び防黴剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のヘッドクリーニング液。
【請求項4】
前記水溶性染料を含有する水系インクジェットインクを吐出する前記インクジェット記録ヘッドのノズル面のクリーニング機構を有するインクジェット記録装置に用いることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のヘッドクリーニング液。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のヘッドクリーニング液を装備したクリーニング機構により、水溶性染料を含有する水系インクジェットインクを吐出した後のインクジェット記録ヘッドのノズル面をクリーニングすることを特徴とするクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−93216(P2011−93216A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249937(P2009−249937)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】