説明

ヘッドマウントディスプレイ

【課題】コンパクトな構成でピント調整を可能とし、さらに防塵対策ができるヘッドマウントディスプレイを提供する。
【解決手段】HMD1では、レンズホルダ15に対して液晶ホルダ17を同軸上に移動させるので、使用者の視力に応じてハーフミラー8で視認できる画像のピント調整を容易に行うことができる。レンズホルダ15と液晶ホルダ17は互いに同軸上にオーバーラップしてスライド可能に連結されている。故に液晶ホルダ17の内部に埃等の異物が侵入するのを防止できるので、液晶装置101に埃等の異物が付着するのを防止できる。また液晶装置101を液晶ホルダ17に内蔵し、接眼光学系120をレンズホルダ15に内蔵し、これらをオーバーラップさせる構成であるので、HMD1をコンパクトにできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の眼の前方に画像として視認されるように画像を表示するヘッドマウントディスプレイ(以下HMDという)が知られている。HMDは、画像光発生部、接眼光学系、及び偏向部材を備えている。画像光発生部は画像情報に基づいた画像光を発生する。接眼光学系は画像光発生部が発生した画像光を一定方向に導く。偏向部材は接眼光学系から出射された画像光を反射して利用者の眼に入射する。ところが人間の視力には個人差があるので、入射した画像光に対して、眼球内でピント調整が容易に出来る人と出来ない人がいる。眼球内でのピント調整が不十分であると、画像を明確に視認することができない。そこで表示器を光軸方向に移動させることにより、画像のピント調整ができる情報表示装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−16099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の情報表示装置は、少なくとも表示器、光学系、及び表示器を移動させる移動機構等を一つの本体内に収納している。そのような本体内で表示器が露出しているので、その表面に本体内の埃が付着して画像上に表示されてしまう可能性があった。またこれらを一つの本体内に収納していることから、本体が大きくなってしまい、使用者の頭部に装着するHMDとして適用するのは困難であった。
【0005】
本発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであり、コンパクトな構成でピント調整を可能とし、さらに防塵対策ができるヘッドマウントディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係るヘッドマウントディスプレイは、使用者の頭部に装着される装着部材に取り付けられ、画像情報に基づいて前記使用者の眼に画像光を入射して前記使用者に画像を認識させるヘッドマウントディスプレイにおいて、画像光を発生する画像光発生部と、前記画像光発生部を内蔵する筒状の第1ホルダと、少なくとも1枚以上のレンズを有し、前記画像光発生部が発生した画像光を一定方向に導く接眼光学系と、前記接眼光学系を内蔵する筒状の第2ホルダとを備え、前記第1ホルダの軸方向の一端側は前記画像光発生部によって塞がれ、かつ他端側は開放され、前記第2ホルダの軸方向の一端側は前記レンズによって塞がれ、かつ他端側は開放され、前記第1ホルダの前記他端、及び前記第2ホルダの前記他端のうち何れか一方が、他方の内側に摺動可能な状態で挿入され、前記第1ホルダと前記第2ホルダとが互いにオーバーラップして移動可能に連結されていることを特徴とする。
【0007】
第1態様に係るヘッドマウントディスプレイでは、第1ホルダと第2ホルダとが互いにオーバーラップして移動可能に連結されている。これにより画像光発生部と接眼光学系との離間する距離を調製できるので、使用者の視力に応じて画像のピント調整が可能である。さらに第1ホルダの一端側、及び第2ホルダの一端側は塞がれ、第1ホルダの他端、及び第2ホルダの他端のうち何れか一方が、他方の内側に摺動可能な状態で挿入されている。それ故、第1ホルダ及び第2ホルダの内部に埃等の異物が侵入するのを防止できるので、画像光発生部に埃等の異物が付着するのを防止できる。また画像光発生部を内蔵する第1ホルダと、接眼光学系を内蔵する第2ホルダとをオーバーラップさせて連結する構成であるので、ヘッドマウントディスプレイ全体をコンパクトにできる。
【0008】
また第1態様において、前記第2ホルダを前記装着部材に位置決め保持する位置決め保持部を備えていてもよい。接眼光学系の位置が使用者の頭部に対して移動すると、使用者の瞳孔と接眼光学系との相対位置が変化する。その結果、例えば、アイレリーフ長の変化に伴う画像光のけられが生じる可能性がある。そこで本態様の構成によれば、第2ホルダに保持される接眼光学系の位置が使用者の頭部に対して位置決めされている。それ故、ピント調整を行う際は、画像光発生部の位置のみが変更されるので、使用者の瞳孔位置と接眼光学系との相対位置は変化しない。従って本態様はピント調整に起因する画像光のけられを防止できる。
【0009】
また第1態様において、前記第1ホルダの前記他端の内側に、前記第2ホルダの前記他端が摺動可能な状態で挿入され、前記第1ホルダの前記他端側の外周に設けられた螺旋溝と、前記螺旋溝に係合する係合部を有し、当該係合部を前記他端側の周方向に移動させる移動調整部とを備えてもよい。第1ホルダの他端側の外周に設けられた螺旋溝に係合する係合部を、第1ホルダの他端側の周方向に移動させる。これにより第1ホルダを第2ホルダに対して移動させることができる。係合部の周方向への移動量を調整することで、第1ホルダと第2ホルダとの距離を調整できるので、ピント調整が容易である。
【0010】
また第1態様において、前記螺旋溝は溝カムであって、前記移動調整部は前記第1ホルダの前記他端側を内挿するリング状に形成され、前記係合部は前記リングの内周面に設けられ、前記移動調整部と前記第1ホルダとの相対位置関係を規定する位置規定部をさらに備えてもよい。移動調整部を回転させることにより螺旋溝に係合する係合部を回転させることができる。螺旋溝は溝カムになっているので、移動調整部を回転させるだけで第1ホルダを第2ホルダに対して移動させることができる。螺旋溝は溝カムであることから、移動調整部の回転力を第1ホルダを移動させる応力に容易に変換できる。位置規定部は移動調整部と第1ホルダとの相対位置を規定しているので、第1ホルダに対して移動調整部がずれてしまうのを防止できる。
【0011】
また第1態様において、前記第1ホルダの前記一端側とは反対側の他端側には、前記画像光発生部を当該他端側に固定する為の金属製部材が設けられていてもよい。画像光発生部は金属製部材で第1ホルダの他端側に固定されているので、画像光発生部に影響を及ぼす静電気を逃がすことができる。
【0012】
また第1態様において、前記第1ホルダ及び前記移動調製部はポリアセタール樹脂で形成されていてもよい。これにより第1ホルダと移動調整部との摺動性を向上できるので、移動調整部を周方向へ移動する際に大きな力を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】HMD1を取り付けた眼鏡フレーム91の斜視図である。
【図2】HMD1の平面図である。
【図3】図2のI−I線矢視方向断面図である。
【図4】左斜め前方から見た投影ユニット10の分解斜視図である。
【図5】右斜め前方から見た投影ユニット10の分解斜視図である。
【図6】投影ユニット10の斜視図(アジャスタ16省略)である。
【図7】投影ユニット10の斜視図(アジャスタ16搭載)である。
【図8】液晶ホルダ17が右方に移動した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態であるヘッドマウントディスプレイ1(以下HMD1という)について、図面を参照して説明する。以下説明において、図1の上下方向、右斜め下方向、左斜め上方向、右斜め上方向、左斜め下方向が、夫々、HMD1の上下方向、前方向、後ろ方向、右方向、左方向である。図2の下方向、上方向、右方向、左方向が、夫々、HMD1の前方向、後ろ方向、右方向、左方向である。図3の上方向、下方向、右方向、左方向が、夫々、HMD1の上方向、下方向、右方向、左方向である。図4の右斜め下方向、左斜め上方向、上下方向、右斜め上方向、左斜め下方向が、夫々、投影ユニット10の前方向、後ろ方向、上下方向、右方向、左方向である。図5の左斜め下方向、右斜め上方向、上下方向、右斜め下方向、左斜め上方向が、夫々、投影ユニット10の前方向、後ろ方向、上下方向、右方向、左方向である。
【0015】
先ず、HMD1の概要について説明する。図1に示すように、HMD1は、眼鏡フレーム91に着脱可能に取り付けられる。眼鏡フレーム91は使用者の頭部に装着される。図1,図2に示すように、HMD1は筐体2を備える。筐体2は四角筒状の樹脂部材であり、平面視L字型に形成されている。筐体2は投影ユニット10(図3,図7参照)を内蔵する。投影ユニット10は画像光を生成し、筐体2の左端側の開口を介して左方向に出射する。筐体2の左端にはミラーホルダ5が固定されている。ミラーホルダ5は上下一対の挟み板6,7を備える。挟み板6,7はハーフミラー8を上下方向から保持する。ハーフミラー8は投影ユニット10の出射光の少なくとも一部を反射して使用者の左の眼球(図示略)に入射する。使用者は自己の視野において実像に重畳して画像を視認できる。
【0016】
本実施形態では、筐体2の前面における左右方向中央部にスリット9Aが設けられている。スリット9Aは上下方向に長い長孔である。スリット9Aではアジャスタ16の一部が露出している。使用者はアジャスタ16を指で上下方向に回転させる。これによりハーフミラー8で視認できる画像のピント調整ができる。
【0017】
次に、眼鏡フレーム91について説明する。図1に示すように、眼鏡フレーム91は、左フレーム部92、右フレーム部93、中央フレーム部94、及びHMD支持部96を備える。左フレーム部92は使用者の左耳に掛けられる部分である。右フレーム部93は使用者の右耳に掛けられる部分である。中央フレーム部94は、左フレーム部92の前端部と、右フレーム部93の前端部との間に渡設されている。中央フレーム部94は長手方向中央部に一対の鼻当て部95(図1では一方のみ図示)を備えている。HMD支持部96は使用者側から見て中央フレーム部94の上面左端側に設けられている。HMD支持部96は下方延出部98を備えている。
【0018】
なお、図1,図2に示すように、HMD1の筐体2の眼鏡フレーム91に対向する部分には被保持部49が設けられている。被保持部49は上下方向に沿ったU字溝49A(図2参照)を内側に備える。U字溝49Aの底部には摩擦部49Bが設けられている。U字溝49Aには、眼鏡フレーム91のHMD支持部96に設けられた下方延出部98が内挿される。摩擦部49Bと下方延出部98との間に摩擦を生じる。それ故、HMD1は下方延出部98に沿って上下方向に移動可能に取り付けることができるHMD1は使用者の頭部における上下方向の所定範囲内において位置決め可能となる。
【0019】
次に、HMD1の筐体2の構成について説明する。図1〜図3に示すように、筐体2は、左側から右側に向かって順に、第1筐体11、第2筐体12、及び第3筐体13を備える。第1筐体11及び第2筐体12は投影ユニット10を主に収容する。第3筐体13は投影ユニット10の各種配線及び各種制御基板等(図示略)を主に収容する。第1筐体11、第2筐体12、及び第3筐体13は何れも樹脂部材である。
【0020】
先ず、第1筐体11の構造について説明する。図4,図5に示すように、第1筐体11は本体21を備える。本体21は左右方向に延出する筒体である。本体21の開口する左端には上述のミラーホルダ5が取り付けられる。本体21は上面部22及び下面部23を備える。上面部22及び下面部23は略水平かつ板状に各々形成されている。上面部22には上側隆起部24が設けられている。上側隆起部24は上面部22の左右方向中央から右斜め上方に傾斜して一段高くなっている。下面部23には下側隆起部25が設けられている。下側隆起部25は下面部23の左右方向中央から右斜め下方に傾斜して一段低くなっている。本体21の開口する右端において前後方向の前側の部分には、左方に落ち込んだ矩形状のスリット9Aが設けられている。他方、後ろ側の部分にも、左方に落ち込んだ矩形状のスリット9Bが設けられている。スリット9A,9Bはアジャスタ16の一部を外部に露出させる。
【0021】
図5に示すように、上側隆起部24の内側上部には、一対の筒状の固定部31が右方に突出して設けられている。その間には筒状の固定部32が固定部31よりも右方にさらに突出して設けられている。さらにそれらの下方であって上側隆起部24の傾斜部分に相当する内面には、一対の筒状のホルダ固定部(図示略)が右方に突出して設けられている。その間には突起部34(図3参照)が右方に突出して設けられている。下側隆起部25の内側下部には、一対の筒状の固定部33が右方に突出して設けられている。さらにそれらの上方であって下側隆起部25の傾斜部分に相当する内面には、一対の筒状のホルダ固定部35が右方に突出して設けられている。その間には突起部36が右方に突出して設けられている。なお後述するが、固定部31,32,33は、第1筐体11に第2筐体12を固定する為の部位である。上側の一対のホルダ固定部(図示略)、突起部34、下側のホルダ固定部35、突起部36は、第1筐体11に対して後述するレンズホルダ15を固定する為の部位である。
【0022】
次に、第2筐体12の構造について説明する。図4,図5に示すように、第2筐体12は本体41を備える。本体41は左右方向に延出する筒体である。本体41の開口する右端の後方部分には板部42が設けられている。板部42は本体41の軸方向に対して略直角かつ後方に延設されている。板部42の右方に対向する裏面には一対の固定部48が右方に突出して設けられている。本体41は上面部43及び下面部44を備える。上面部43及び下面部44は略水平に各々形成されている。図4に示すように、上面部43の左端には前後方向に一対の筒状の固定部45が左方に突出して設けられている。その間には固定孔46が設けられている。下面部44の左端には一対の筒状の固定部47が設けられている。なお後述するが、固定部45,47、固定孔46は、第2筐体12に第1筐体11を固定する為の部位である。
【0023】
次に、第3筐体13の構造について説明する。図2,図3に示すように、第3筐体13は断面凹状のカバー部材である。第3筐体13は、第2筐体12の板部42の裏面に設けられた一対の固定部48(図5参照)に固定される。第1筐体11と第2筐体12とを同軸上に固定し、さらに第2筐体12の開口する右端側に第3筐体13を固定することにより筐体2が完成する。筐体2は左端側が開口する平面視略L字型の筒体となる。
【0024】
次に、投影ユニット10の構成について説明する。図4,図5に示すように、投影ユニット10は、左側から右側に向かって順に、レンズホルダ15、アジャスタ16、液晶ホルダ17を備える。レンズホルダ15は接眼光学系120(図3参照)を内側に保持する。液晶ホルダ17は液晶装置101(図3参照)を保持する。液晶装置101は画像光を出射する。接眼光学系120は、少なくとも1枚以上のレンズ(図示略)を収容し、液晶装置101から出射される画像光を筐体2の左端側の開口に導く。アジャスタ16は自己の回転によって液晶ホルダ17を左右方向に移動させる。以下、各部材の構造について詳細に説明する。なお図4,図5では、レンズホルダ15及び液晶ホルダ17によって保持される接眼光学系120及び液晶装置101については省略している。
【0025】
先ず、レンズホルダ15の構造について説明する。図4,図5に示すように、レンズホルダ15はポリカーボネート樹脂で形成されている。レンズホルダ15は左側本体51及び右側本体52を同軸上に備える。左側本体51及び右側本体52は筒状である。右側本体52は左側本体51よりも縮径している。左側本体51及び右側本体52は何れも上面と下面とが略水平に形成され、かつ互いに平行である。左側本体51と右側本体52との連結部分には、上側フランジ部54及び下側フランジ部55が設けられている。上側フランジ部54は上方に延出する鍔状に形成されている。下側フランジ部55は下方に延出する鍔状に形成されている。上側フランジ部54の長手方向の両側には一対の固定孔58が設けられている。その間には貫通孔57が設けられている。固定孔58及び貫通孔57は上側フランジ部54の板厚方向に貫通する。下側フランジ部55の長手方向の両側には一対の固定孔60が設けられている。固定孔60は下側フランジ部55の板厚方向に貫通する。その間には引っ掛け溝59が設けられている。引っ掛け溝59は下側フランジ部55の下端から上方に逆U字状に窪んでいる。
【0026】
右側本体52の上面及び下面は略水平に形成されている。右側本体52の上面にはホルダガイド61が設けられている。ホルダガイド61はレール状である。ホルダガイド61は右側本体52の上面の幅方向中央に沿って延設されている。右側本体52の下面にはホルダガイド62が設けられている。ホルダガイド62はレール状である。ホルダガイド62は右側本体52の下面の幅方向中央に沿って延設されている。ホルダガイド61,62は、液晶ホルダ17をレンズホルダ15の軸方向に沿ってガイドする。図3に示すように、レンズホルダ15の左側本体51内には接眼光学系120が装着される。右側本体52内は液晶装置101から出射される画像光を通過させる為の空洞領域である。
【0027】
次に、図4,図5を用いて、液晶ホルダ17の構造について説明する。液晶ホルダ17はポリアセタール樹脂で形成されている。液晶ホルダ17は本体71を備える。本体71は左右方向に延出する筒体である。本体71の右端には円形板状の液晶保持部72が設けられている。液晶保持部72は開口76、保持枠77、及び固定部81を備える。開口76は長方形状である。開口76は本体71の内側中央に挿通する。保持枠77は上部が開放された長方形状の枠体である。保持枠77は板状の液晶装置101を内側に保持する。保持枠77に保持された液晶装置101は、後記する押さえ板110によって固定される。この押さえ板110が固定される固定部81は、保持枠77の下部の直下に位置する。固定部81は筒状に形成され、右方に突出して設けられている。固定部81にはネジ102(図3参照)が締結される。ネジ102は押さえ板110を液晶ホルダ17に固定する。押さえ板110は保持枠77に保持した液晶装置101を右方から押さえる。なお押さえ板110は金属製である。それ故、押さえ板110は液晶装置101に影響を及ぼす静電気を逃がすことができる。
【0028】
本体71の内周面上部には、一対の上側ガイドレール74が液晶ホルダ17の軸方向に対して平行に延設されている。本体71の内周面下部には、一対の下側ガイドレール75が液晶ホルダ17の軸方向に対して平行に延設されている。さらに本体71の外周面には溝カム85が設けられている。溝カム85の長手方向に沿った断面は凹状である。溝カム85は開始端85Aと終端85Bとを備える。開始端85Aは本体71の外周面の右端側、終端85Bは本体71の外周面の左端側に位置する。溝カム85は開始端85Aから終端85Bまで延設され、本体71を螺旋状に取り囲むようにして形成されている。
【0029】
次に、アジャスタ16の形状について説明する。図4,図5に示すように、アジャスタ16はリング状である。アジャスタ16の外周面には滑り止め用の凹凸面が刻設されている。アジャスタ16の内周面には径方向に突出する係合部16Aが設けられている。係合部16Aは液晶ホルダ17の溝カム85に係合し、溝カム85に沿って移動可能である。アジャスタ16の幅と、第1筐体11のスリット9A,9Bの幅とは略同一に調整されている。なお、アジャスタ16はポリアセタール樹脂で形成されている。
【0030】
次に、HMD1の組み立て工程について説明する。図4,図5に示すように、作業者は、先ず、アジャスタ16を液晶ホルダ17の本体71に外挿して取り付ける。このとき、アジャスタ16の係合部16Aを、液晶ホルダ17の溝カム85に係合させる。係合部16Aは溝カム85に沿って移動可能となる。それ故、アジャスタ16は液晶ホルダ17に対して、溝カム85の開始端85A〜終端85Bまでの範囲内で回動自在となる。
【0031】
次いで、アジャスタ16を取り付けた液晶ホルダ17の本体71側を、レンズホルダ15の右側本体52の一端側に向けて、レンズホルダ15と同軸上に配置する。さらに液晶ホルダ17の一対の上側ガイドレール74(図4参照)の間に、レンズホルダ15のホルダガイド61を挿入する。一対の下側ガイドレール75の間に、レンズホルダ15のホルダガイド62を挿入する。そして液晶ホルダ17をレンズホルダ15に対して押し込む。液晶ホルダ17はホルダガイド61,62に沿って移動する。液晶ホルダ17の本体71の内側に、レンズホルダ15の右側本体52が挿入され、互いにオーバーラップした状態で連結される。こうして、レンズホルダ15、アジャスタ16、及び液晶ホルダ17が一体となり、図7に示す投影ユニット10の組み立て工程が完了する。
【0032】
次いで、投影ユニット10を第1筐体11の右端側から内側に嵌め込んで固定する。このとき、投影ユニット10のレンズホルダ15の上側フランジ部54と、下側フランジ部55とを、第1筐体11の内周面に固定する。具体的に言うと、上側フランジ部54の中央の貫通孔57に、第1筐体11の上側の突起部34を挿入する。さらに第1筐体11の上側の一対のホルダ固定部(図示略)に対して、上側フランジ部54の一対の固定孔58を合わせてネジ留めする。下側フランジ部55の中央の引っ掛け溝59を、第1筐体11の下側の突起部36上に引っ掛ける。さらに第1筐体11の下側の一対のホルダ固定部35に対して、下側フランジ部55の一対の固定孔60を合わせてネジ留めする。こうして投影ユニット10が第1筐体11の内側に固定される。
【0033】
次いで、投影ユニット10を内側に固定した第1筐体11に対して、第2筐体12を同軸上に固定する。このとき、第2筐体12の一対の固定部45と、第1筐体11の一対の固定部31とをネジ留めする。第2筐体12の固定孔46にはネジを挿入して、第1筐体11の固定部32に締結する。第2筐体12の一対の固定部47と、第1筐体11の一対の固定部33とをネジ留めする。こうして第2筐体12に対して第1筐体11が固定される。さらに第2筐体12の開口する右端側を閉塞するように第3筐体13を固定する。最後に、第1筐体11の開口する左端にミラーホルダ5を固定する。ミラーホルダ5にはハーフミラー8が予め保持されている。こうしてHMD1の組み立て工程が完了し、図3の状態となる。
【0034】
ここで、図3に示すように、アジャスタ16の上下部位は、第1筐体11の上側隆起部24の内側、及び下側隆起部25の内側にそれぞれ覆われている。他方、アジャスタ16の前後方向にそれぞれ対向する各部位は、第1筐体11のスリット9A,9Bから外部に露出している。アジャスタ16は、上側隆起部24及び下側隆起部25によって、筐体2に対して上下方向に位置決めされている。アジャスタ16は、スリット9A,9B及び第2筐体12の左端に挟まれることによって、筐体2に対して左右方向に位置決めされている。それ故、アジャスタ16は筐体2に対して移動せずにその位置で回転する。
【0035】
次に、HMD1のピント調節方法について説明する。図3に示すように、HMD1では、投影ユニット10が筐体2の内側に収納されている。図1,図2に示すように、スリット9A,9Bでは、アジャスタ16の一部が露出している。使用者はHMD1の前側のスリット9Aから露出するアジャスタ16を指で上下方向に回転させる。上述したように、アジャスタ16は筐体2に対して位置決めされている。アジャスタ16はその位置で回転する。アジャスタ16の回転によって、アジャスタ16の内周面に設けた係合部16Aが回転する。ここで係合部16Aは液晶ホルダ17の溝カム85に沿って移動するが、アジャスタ16は左右方向には動かない。それ故、係合部16Aは溝カム85の左右両側にある一対の内壁面のうち一方を摺動する。
【0036】
アジャスタ16の回転方向によって、係合部16Aが摺動する溝カム85の内壁面が決まる。図3に示す例では、アジャスタ16を上方向に回転させると、溝カム85における右側の内壁面に摺動するので、液晶ホルダ17は右方向に移動する(図8参照)。アジャスタ16を下方向に回転させると、溝カム85における左側の内壁面に摺動するので、液晶ホルダ17は左方向に移動する。アジャスタ16の回動量に応じて、液晶ホルダ17の左右方向の位置が調整されるので、液晶装置101と接眼光学系120との離間距離を自由に調整できる。これにより使用者はハーフミラー8によって視認する画像のピント調整を容易に行うことができる。
【0037】
以上説明において、図1に示す眼鏡フレーム91が本発明の「フレーム」の一例である。図3に示す液晶装置101が本発明の「画像光発生部」の一例である。接眼光学系120が本発明の「接眼光学系」の一例である。図4に示す液晶ホルダ17が本発明の「第1ホルダ」の一例である。レンズホルダ15が本発明の「第2ホルダ」の一例である。図1,図2に示す被保持部49が本発明の「位置決め保持部」の一例である。図3に示すアジャスタ16が本発明の「移動調整部」の一例である。図3に示すスリット9A,9Bが本発明の「位置規定部」の一例である。
【0038】
以上説明したように、本実施形態のHMD1では、レンズホルダ15に対して液晶ホルダ17を同軸上に移動させるので、使用者の視力に応じてハーフミラー8で視認できる画像のピント調整を容易に行うことができる。さらにレンズホルダ15と液晶ホルダ17とは互いに同軸上にオーバーラップしてスライド可能に連結されている。それ故、レンズホルダ15と液晶ホルダ17とが連結された状態において、内部に埃等の異物が侵入するのを防止できる。よって、液晶装置101に埃等の異物が付着するのを防止できる。また液晶装置101を液晶ホルダ17に内蔵し、接眼光学系120をレンズホルダ15に内蔵し、これらをオーバーラップさせる構成であるので、HMD1をコンパクトにできる。
【0039】
また本実施形態では特に、レンズホルダ15に対して液晶ホルダ17を同軸上に移動させている。例えば、接眼光学系120の位置が使用者の頭部に対して移動すると、使用者の瞳孔と接眼光学系120との相対位置が変化する。その結果、例えば、アイレリーフ長の変化に伴う画像光の「けられ」が生じる可能性がある。本実施形態は、レンズホルダ15に対して液晶ホルダ17を同軸上に移動させているので、接眼光学系120の位置が使用者の頭部に対して位置決めされている。それ故、画像のピント調整を行う際には、液晶装置101の位置のみが変更される。そのため使用者の瞳孔位置と接眼光学系120との相対位置は変化しない。従って、ピント調整に起因する画像光のけられを防止できる。
【0040】
また本実施形態では特に、液晶ホルダ17の一端に設けられた溝カム85に係合する係合部16Aを、アジャスタ16の回転によって、液晶ホルダ17の一端側の周方向に移動させている。これにより液晶ホルダ17をレンズホルダ15に対して同軸上に移動させることができる。係合部16Aの周方向への移動量を調整するだけで、液晶ホルダ17とレンズホルダ15との距離を調整できるので、ピント調整が容易となる。
【0041】
また本実施形態では特に、アジャスタ16を回転させることにより溝カム85に係合する係合部16Aを回転させることができる。溝カム85を採用することにより、アジャスタ16の回転力を、液晶ホルダ17を移動させる応力に容易に変換できる。スリット9A,9Bはアジャスタ16と液晶ホルダ17との相対位置を規定する。それ故、アジャスタ16が液晶ホルダ17の軸方向に移動してしまうのを防止できる。
【0042】
また本実施形態では特に、液晶装置101は金属製の押さえ板110によって液晶ホルダ17に固定されている。それ故、液晶装置101に影響を及ぼす静電気を逃がすことができる。
【0043】
また本実施形態では特に、レンズホルダ15と液晶ホルダ17とは、何れもポリアセタール樹脂で形成されている。それ故、レンズホルダ15と液晶ホルダ17との摺動性が向上する。レンズホルダ15と液晶ホルダ17とはオーバーラップして連結されているが、グリス等を使うことができない。そこで本実施形態のように、レンズホルダ15と液晶ホルダ17とをポリアセタール樹脂で形成することで、レンズホルダ15に対する液晶ホルダ17の移動性を向上できる。
【0044】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態のHMD1では、本発明の「画像光発生部」の一例として液晶装置101を説明したが、DMD、有機EL等の二次元表示素子を用いたものでも適用可能である。さらに、2次元的に走査された光をユーザの網膜上に投影する網膜走査型の投影装置(Retinal Scanning Display)でも適用可能である。
【0045】
また上記実施形態では、液晶ホルダ17の本体71の外周面に溝カム85を設け、該溝カム85に係合部16Aを係合させたアジャスタ16を回動させることにより、レンズホルダ15に対して液晶ホルダ17を移動させているが、液晶ホルダの本体71の外周面に設ける螺旋の溝は溝カムに限らない。例えば、ネジ山を形成し、そのネジ山に螺合するネジ山をアジャスタの内周面に刻設してもよい。ネジ山は溝カムに比べてピッチが狭くなるので、液晶ホルダ17の移動量は小さくなるので、画像のピントを微調整することもできる。
【0046】
また上記実施形態では、液晶ホルダ17の内部にレンズホルダ15が挿入されているが、液晶ホルダ17がレンズホルダ15の内部に挿入される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 ヘッドマウントディスプレイ(HMD)
2 筐体
9A スリット
9B スリット
10 投影ユニット
11 第1筐体
12 第2筐体
15 レンズホルダ
16 アジャスタ
16A 係合部
17 液晶ホルダ
49 被保持部
61,62 ホルダガイド
74 上側ガイドレール
75 下側ガイドレール
85 溝カム
91 眼鏡フレーム
101 液晶装置
110 押さえ板
120 接眼光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の頭部に装着される装着部材に取り付けられ、画像情報に基づいて前記使用者の眼に画像光を入射して前記使用者に画像を認識させるヘッドマウントディスプレイにおいて、
画像光を発生する画像光発生部と、
前記画像光発生部を内蔵する筒状の第1ホルダと、
少なくとも1枚以上のレンズを有し、前記画像光発生部が発生した画像光を一定方向に導く接眼光学系と、
前記接眼光学系を内蔵する筒状の第2ホルダと
を備え、
前記第1ホルダの軸方向の一端側は前記画像光発生部によって塞がれ、かつ他端側は開放され、
前記第2ホルダの軸方向の一端側は前記レンズによって塞がれ、かつ他端側は開放され、
前記第1ホルダの前記他端、及び前記第2ホルダの前記他端のうち何れか一方が、他方の内側に摺動可能な状態で挿入され、前記第1ホルダと前記第2ホルダとが互いにオーバーラップして移動可能に連結されていることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項2】
前記第2ホルダを前記装着部材に位置決め保持する位置決め保持部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項3】
前記第1ホルダの前記他端の内側に、前記第2ホルダの前記他端が摺動可能な状態で挿入され、
前記第1ホルダの前記他端側の外周に設けられた螺旋溝と、
前記螺旋溝に係合する係合部を有し、当該係合部を前記他端側の周方向に移動させる移動調整部と
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項4】
前記螺旋溝は溝カムであって、
前記移動調整部は前記第1ホルダの前記他端側を内挿するリング状に形成され、
前記係合部は前記リングの内周面に設けられ、
前記移動調整部と前記第1ホルダとの相対位置関係を規定する位置規定部をさらに備えていることを特徴とする請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項5】
前記第1ホルダの前記一端側には、前記画像光発生部を当該他端側に固定する為の金属製部材が設けられていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項6】
前記第1ホルダ及び前記移動調製部はポリアセタール樹脂で形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のヘッドマウントディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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