説明

ヘッドライト用照明装置

【課題】
単一又は少数の光源を使用して複数の機能を実現する簡単且つ安価な構成の車両等のヘッドライト用照明装置を提供する。
【解決手段】
ヘッドライト用照明装置は、第1焦点、第2焦点4及びこれら第1及び第2焦点を通過する光学軸2を有する楕円状の反射器1と、反射器1の第1焦点の近傍に配置され発射される光線を第2焦点4へ向けて反射するLEDタイプの光源3と、反射器1の第2焦点4の近傍に配置される焦点及び反射器1の光学軸と略一致させた光学軸を有する投射レンズ5と、反射器1の第2焦点4の近傍に配置され、横断的に移動させられるタブ状であり、複数の異なる光学ゾーンを有する第2光学素子6とを備えている。このタブの移動により、ヘッドライトに、例えばハイビーム、ロービーム又はDRL(昼間走行ライト)等の複数の異なる機能を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置に関し、特に単一光源により複数の又は変化する照明機能を有する車両等のヘッドライト用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関する車両用ヘッドライトは、発光ダイオード(LED)タイプの1以上の点光源を備えている。この種の光源は、ハロゲンランプやキセノンランプ等の従来の光源と比較して、消費電力の点で極めて高効率である。車両用ヘッドライトに適用されるLEDタイプの光源の電力は、現在20〜30ワットであるのに対し、これと同等の照度を有するハロゲンランプの場合には、120ワット程度である。また、これと同じ程度の照度を有するLEDモジュールが、近い将来には5〜10ワットの電力で可能になると信じうる合理性がある。更に、ヨーロッパの新たな法令は、車両には、昼間走行照明(以下、DRLという)タイプのヘッドライト、即ち、昼間でも常時機能させるように設計された照明装置を備えるべく新たな義務規定を設けている。この照明による燃料消費が増加するインパクトは大きいので、ヨーロッパ指令の案によると、2012年から、車両メーカは、環境に放出する1km当たり、120グラムを超える二酸化炭素に対し、1グラム当たり税金の支払いが必要となる。ハロゲン製ヘッドランプの消費電力が、120ワット程度である場合に、100km当たり、約0.15リットルの燃料に相当すると仮定すると、これは、1km当たり5〜6グラム程度の二酸化炭素になるので、車両のヘッドライトにLEDタイプの光源を使用することは、将来益々魅力的になると思われる。
【0003】
しかし、LEDタイプの光源は、従来の光源と比較してまだ極めて高い。ヘッドライトには、例えば「ハイビーム(HB)」、「ロービーム(LB)」及びDRL等の複数の機能を持たせる必要があり、複数の光源を使用すると、LED光源を使用するコストが高くなるという課題を有する。
【0004】
更に、LED光源を使用するには、各光源に対して、電子制御モジュールが必要になる。従って、ヘッドライトのケーシングは大変複雑になり、嵩張ると共に高価になる。
【0005】
特許文献1は、LED光源及びハーフスペースに、2個の焦点を有する楕円形の反射器を備える照明装置を開示している。LED光源は、反射器の近傍で、かつその第1焦点のレベルに配置されている。このLED光源から放射された光は、反射器により、その第2焦点へ反射され、この第2焦点には、ベンダと称される反射面が配置されている。この反射面は、反射側に1つのエッジ及び反射器の反対側に、別の1つのエッジを有する。これらのエッジは、「カットオフエッジ」と呼ばれている。反射器により反射された光ビームの一部は、反射面で合い、この面により、入射角で反射される。光ビームの他の部分は、カットオフエッジを越えて通過し、反射面で反らされることはない。従って、カットオフエッジは、光ビームの反射されて、すなわち反らされた部分と、反射されない部分との境界を定める。レンズが反射面の背後に配置され、その焦点は、楕円反射器の焦点と対応している。そのカットオフエッジを有する反射面は、ベンダと称され、レンズから出たビームのレベルでカットオフを形成するように、ビームの一部を反らせるか、又は「ベンド」、即ち曲げる。このベンダは、反射器の光学軸と平行な軸に沿って移動する。この移動性により、単一光源を使用して、ハイビーム機能及びロービーム機能を発揮させることができる。
【0006】
一方、特許文献2は、上述したものと類似する装置を開示し、「ベンダ」が、楕円反射器の光学軸に垂直な軸及び平行な軸に沿って移動可能である。これら2つの移動により、単一光源を使用して、ハイビーム機能及びロービーム機能を可能にしている。
【0007】
また、特許文献3は、上述したものと類似する装置を開示しており、「ベンダ」は垂直方向へ移動可能であり、かつ垂直スクリーンも、同様に垂直方向へ移動可能に構成されている。この装置によると、単一光源を使用して、ハイビーム機能及びロービーム機能が可能であり、垂直スクリーンの移動により、光の強度を、ヘッドライトビームの下部で変化させることができる。
【0008】
上述した特許文献1〜3によるものは、ロービーム機能で必要なカットオフレベルでのみ動作する。実質的に、これらはカットオフをアクティブするため、又はしないために、カットオフエッジを移動させ、その結果、ハイビーム機能からロービーム機能、又はその逆への変化を可能にする。例えば、近い将来必要になるであろうDRL機能等の他の機能を保証できず、また同じ光源により、近づいて来る車両の存在などの外部パラメータによって、ビームの広がりを変化させる機能を保証できない。
【0009】
また、特許文献4及び特許文献5は、垂直マスクについて開示している。
【先行文献】
【0010】
【特許文献1】ドイツ特許公開第10 2006 042 749号公報
【特許文献2】ドイツ特許公開第10 2006 051 029号公報
【特許文献3】ドイツ特許公開第10 2006 042 750号公報
【特許文献4】ドイツ特許第103 05 624号
【特許文献5】米国特許第4,868,726号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のような従来技術においては、単一又は少数の光源を使用して、多くの機能を実現することが不可能又は困難である。
【0012】
本発明は、上述の如き従来技術の課題に鑑みなされたものであり、単一又は限られた個数の光源を使用して、現在の技術では達成し得ない多くのオプション機能を実現可能にするヘッドライト用照明装置を提供することを、主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の照明装置は、特に車両のヘッドライト用照明装置であり、第1焦点、第2焦点、及びこれら第1及び第2焦点を通る光学軸を有する反射器と、この反射器の第1焦点の近傍に配置され、放射する光ビームを反射器の第2焦点の近傍へ反射する光源と、反射器の第2焦点の近傍に位置する焦点及び光学軸を有し、光源からの光線を投射すると共に、反射器により光学軸に沿って第1ビームとして反射する第1光学素子と、好ましくはほぼ平面であり、反射器の第2焦点の近傍に配置された1つのゾーンを有し、入射角で光源から放射された光線、及び反射器により反射された光線を受ける第2光学素子とを備え、第2光学素子は、好ましくは水平であり、その面内を特に反射器の光学軸を横切るように移動可能であり、上述したゾーンを光線外へ移せるようにする。
【発明の効果】
【0014】
上述の如き特徴的な構成を有する本発明の照明装置によると、幾つかの装置を並列に取り付けておけば、単一光源又は所定数の光源を使用するのみで、カットオフエッジの単なる移動以外の多くの照明機能を実現可能である。ここに提案されたトランスバーサル構成により、機能の数を極めて高くすることができるという特有の効果が奏せられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1a】本発明によるヘッドライト用照明装置の第1実施例の横断平面図である。
【図1b】図1aに示すヘッドライト用照明装置の第1実施例の拡大断面図である。
【図2】図1a及び図1bに示すヘッドライト用照明装置のモバイル又は可動光学素子の拡大図である。
【図3】図2に示す光学素子のゾーン6aの光学動作原理を示す説明図である。
【図4】図2に示す光学素子のゾーン6bの光学動作原理を示す説明図である。
【図5】図2に示す光学素子のゾーン6cの光学動作原理を示す説明図である。
【図6】図2に示す光学素子のゾーン6dの光学動作原理を示す説明図である。
【図7】本発明によるヘッドライト用照明装置の第2実施例を示す拡大断面図である。
【図8a】図7に示すヘッドライト用照明装置の「ハイビーム」位置における動作原理を示す説明図である。
【図8b】図7に示すヘッドライト用照明装置の「セレクティブ」位置における動作原理を示す説明図である。
【図8c】図7に示すヘッドライト用照明装置の「ツーリズム」位置における動作原理を示す説明図である。
【図8d】図7に示すヘッドライト用照明装置の「ロービーム」位置における動作原理を示す説明図である。
【図8e】図7に示すヘッドライト用照明装置のモバイル光学素子を位置決めする基準点を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のヘッドライト用照明装置(以下、単に照明装置ともいう)の好適な実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本発明の種々の実施形態を、添付図に示すと共に、照明装置を車両のヘッドライトへの取付位置との関係を説明する。尚、この応用例は一般的ではあるが、必ずしも本発明を限定するものではない。ここで使用する、例えば「水平」、「垂直」、「頂部」、「底部」、「上」、「下」等の位置関係を説明する用語は絶対的ではなく、図示されている各構成要素の図中における相対位置関係を示しているに過ぎないものである。この照明装置は、他の位置関係で取り付け、及び/又は他の応用が可能である。更に、光源、反射器、及びレンズ等の異なる構成要素の相対位置は、便宜のために光学軸又は焦点に対応付けて表しているが、これは厳格に必須事項ではなく、特に、特性の不完全性、何らかの光学素子の省略又は何らかの付加的な効果を得るには、多少のバリエーションは可能であり、また好ましいものである。
【0017】
図1aは、本発明による照明装置の第1実施形態の横断平面図である。この照明装置は、車両のヘッドライト用であり、光学軸2を中心に回転対称である楕円形の反射器1を備えている。この反射器1は、反射性の内面12を有する。この内面12は、光学軸2を通過する平面で楕円の一部をなしている。また、この内面12は、図1a中に示す楕円の一部に対応し、光学軸かつ回転対称軸2を中心とするハーフスペースを示す。このハーフスペースは、光学軸2及び水平を含む平面により制限されている。この反射器1は、その光学軸2に沿って2個の焦点を有する。光源3は、第1焦点の近傍に配置され、第2焦点には参照番号4が付与されている。
【0018】
反射器1の反射性内面12は、完全な楕円形である必要はなく、光ビームの光散乱を最適化するために、1以上の又は複合断面形状であってもよいことに留意されたい。これは、反射器1が完全な回転対称でなくてもよいことを意味している。
【0019】
発光ダイオード(以下、LEDという)タイプの光源3は、その光エネルギーの大部分を、反射器1の反射性内面12に向けて放射する。この種の光源の特徴は、それが特別小型であり、その結果、それを点光源とみなすことが可能である。しかし、他の既知のタイプの光源を使用してもよい。
【0020】
光源3から放射された光線の大部分は、反射器1の反射面12により反射される。この光源3が、反射器1の第1焦点に配置された点光源であり、かつ反射器1が完全な楕円形の反射器であるとすれば、反射器1で反射された光線は、全て第2焦点4で収束する。実際には、光源3は完全な点光源ではなく、また反射器1も、必ずしも完全な楕円形ではないので、反射器1の反射面12で反射された光線の全てが第2焦点で収束することはなく、第2焦点4の近傍へ向かうことになる。
【0021】
移動光学素子6が、反射器1の光学軸及び対称軸2を含む水平面の第2焦点4の近傍に配置されている。この光学素子6を、図1bに示す。図1bは、図1aにおける素子の拡大図である。この断面は、光学軸2を含む水平面に沿う断面図である。光学素子6は、光学軸2と直交し、かつ水平面を含む長手軸11へ移動可能である。この光学素子6は、実質的に平坦面を有し、その面内に、光学的に異なる複数のゾーンを含んでおり、この照明装置の異なる機能を保証する。この光学素子6は、アクチュエータ10によりX軸方向へ、かつアクチュエータ14によりZ軸方向へ駆動される。これらアクチュエータ10及び14は、例えば電気モータ等の電気タイプ、圧電モータ又は当業者に周知であるその他の任意タイプであり、光学素子6を移動させる。光学素子6の異なる光学ゾーンは、反射タイプ、透過タイプ、透過着色タイプ、拡散タイプ、レンズタイプその他これら異なるタイプの空間的な組み合わせ等であってもよい。
【0022】
好ましくは、光学素子6は、単一の圧電モータ、及び適切な駆動周波数の制御により、光学軸2と直交方向、及び光学軸2と平行方向の組み合わせで、ほぼ水平面内で移動可能である。
【0023】
光学素子6の制御手段は、図示しないが、当業者に周知である任意の方法で行うことが可能である。
【0024】
反射器1で反射された光線7は、第2焦点4に向けて収束して、光学素子6の表面に入射し、そこで、入射位置の光学素子6の光学特性により、反射又は透過される。反射光線の入射位置の光学特性が反射であれば、光線7は、図1aに示す如く、光学軸2に対して上方へ反射される。光学素子6の表面に入射しない反射面12からの反射光線9は、図1aに示す如く、光学軸2に対して下方へ進む。
【0025】
照明装置の光学路には、レンズ5が設けられている。このレンズ5は、片側平面で他側凸面である凸レンズであり、反射器1の第2焦点4に対応する焦点を有し、その光学軸は、反射器1の光学軸2と一致しているので、第2焦点4からの光線は、光学軸2と略平行に進む。例えば両凸面レンズ、又は収束凹凸タイプの如き他の集束レンズを使用してもよい。また、パラボロイドミラータイプの反射器も可能である。この場合には、その光学軸は、光学軸2と実質的に直交するか、又は少なくとも部分的にトランスバーサルであり、その焦点は、反射器1の第2焦点4とほぼ合体している。このタイプの反射器は、光線をその口軸とほぼ平行方向、即ち光学軸2とほぼトランスバース、又は直交方向に反射する。
【0026】
図1a及び図1bから理解されるように、反射器1から反射される光線7は、第2焦点4及び光学素子6を通過後、垂直面及び水平面に関して反転される。X、Y及びZ軸の基準方向は、図1a及び図1bに示してあり、Z軸方向は、光学軸2に対応し、かつ照明光の投射方向とほぼ一致している。X軸方向は、このZ軸方向と直交し、かつ反射器1の切断面、及び光学素子6の移動軸11を含んでいる。Y軸方向は、上述したX及びY軸と直交する方向である。図1bに示す如く、反射器1で反射された光線7は、光学素子6のレベルで光学軸2と交差し、垂直面の他側へ通過するか、又は再度光学軸2を含み、Y軸と平行な面を通過する。光学軸2及びX軸に平行な面に関しても同じ現象が起きる。図1aは、反射器1により反射された光線7は、問題の面と交差し、光学素子6により反射されなかった光線9は、その面の他側へ通過することを示している。この現象は、光学素子6による面のレベルで反射されなかった光線7には適用されず、それは面の同じ側に留まる。
【0027】
光学素子6は、4個以上の明確に区別可能な光学ゾーンにより構成してもよい。これについては、図2〜図6を参照して後に詳述する。
【0028】
第1ゾーン6aは、平‐凹レンズタイプであり、入射する光線を拡散させる。この現象の原理を図3に示している。光学素子6が、反射器1から反射される光線に対して、第1ゾーン6aに入射するように配置されていると、このトラバースゾーン6aにより光線を屈折して拡散させ、レンズの大部分を照らすようにする。これは拡張したビームパスを生じ、光源の消費電力を低減することと組み合わせれば、上述したDRL(昼間走行照明)機能に対応する。尚、第1ゾーン6aの拡散機能は、例えば拡散表面処理、又は発散マイクロレンズのネットワーク等の簡単な他の種々の周知技術により達成することも可能である。
【0029】
光学素子6の第2ゾーン6bは、「ベンダ」と称される反射面である。このゾーン6bの光学的な動作原理を、図4に示している。即ち、反射器1からこの面6bに入射される光線は、この面と垂直面に対する入射角と等しい角度で反射される。従って、これらの入射光線は、レンズの上部分へ送り返される。一方、反射面6bに入射しなかった光線は、水平面を通過して、レンズのように外れることなく、下半分の空間へ進む。光線を反射するゾーン6bと、光線を外すことなく通過させる水平面のゾーンとの境界は、前面及び/又は、もし適当であればゾーン6bのカットオフエッジと称される後部エッジにより、物理的に形成される。これは、反射光線及び非反射光線の境界を定め、この照明装置により投射される光ビームの面積に影響する。
【0030】
事実、図1aに示す如く、ベンダにより反射された光ビーム8は、レンズ5の上部で屈折される。ベンダにより反射された光ビームは、レンズ5により投射される光線を生じ、それらの面積は、ベンダにより反射されなかった場合の光線により生じる面積とは異なる。反射された光線は、レンズ5の上部分により、光学軸に対して少し下向きに傾斜するように投射され、他方レンズ5の下部分により投射される光線は、反射されることなく進んだ場合に、光学軸に対して少し上向きに傾斜する。また、この効果は、例えば光学軸に対してベンダを少し傾斜させるか、ベンダを複雑な非平面とするか、レンズ(又はレンズの代わりに楕円形反射器)の形状を複雑にするか、及び/又はベンダを光学軸に対してY軸方向に少しオフセットすることにより、強化又は影響を与えることが可能である。
【0031】
光学素子6は、アクチュエータ14により、光学軸に対してZ軸方向へ移動させてもよい。この移動により、カットオフエッジを前後に移動させて、照明装置により投射されるビームのカットオフ高さを変調する。この機能は、例えばこの照明装置を搭載している車両の姿勢等の如き照明装置の傾斜の変化を保証する場合に特に適している。この適用を臨機応変に行い、例えば重い荷物の積載時の補償には、車両の始動時に、また例えばブレーキ操作中、或いは加速中における長手面の姿勢の変化を補償するために走行中に行う。更に、カットオフエッジは、必ずしも直線かつ光学軸に対して直交する必要はない。事実、それは傾斜し、かつ複雑なプロファイルであり、投射の面積を最適化するか、及び/又は特定の光学素子に本質的なバラツキを補償してもよい。反射光学ゾーン6bは、ロービームと称される機能に対応し、対向方向から近づいてくる他の社車両に出合う場合に使用し、投射ビームの面積は、その上部分が遮断される。カットオフエッジ(図示せず)の傾斜により、その上部分の面積を、X軸方向において変化するようにすることが可能である。
【0032】
光学素子6の第3ゾーン6cは、部分的に透過面であり、かつ部分的に反射面である(図5参照)。それはL字状であり、このLの両脚部は、透過ゾーンであり、残りの部分は、反射ゾーンである。図2では、反射性部分にはハッチングを施してある。このゾーン6cは、「選択性」と称される機能に対応し、X軸に沿って投射面積が変化し、カット部分を反対車線から近づいて来る車両に対応させる。反射面は、反射器1からの光線を反射し、その後、レンズ5により屈折される。よって、第3ゾーン6cの反射面は、左側のビームの高さを制限する。図2に示すゾーン6cは、車両のヘッドライトに対応する。反対側のヘッドライトは、Z軸に対して対称的なゾーン6cを有する。従って、この機能における各ヘッドライトは、それぞれ他のヘッドライト側の上に暗いゾーンを有し、2個のヘッドライト照明面積に極めて暗いウインド、即ち窓を形成する。これら2個のゾーン6cは、近づいて来る車両の位置に応じて、制御可能な方法で連続的に移動可能であり、このウインドを、X軸に沿って横断的に移動させる。この「選択」機能における2個のヘッドライトの光学素子の移動は、必ずしも同じである必要はない。事実、近づいてくる車両に応じて、このウインドを拡げ、2個のヘッドライトの光学素子を異なる方法で移動させることが、好ましいか又は必要である。
【0033】
或いは、ヘッドライトの光学素子6を連続的に移動させるために、ヘッドライトの光学素子全体を、Y軸とほぼ平行な軸の周りに旋回させてもよい。また、Y軸に沿うウインドの移動は、光学軸又はZ軸による移動であってもよい。このような移動は、近づいてくる車両にウインドを追従させるために、好ましいか又は必要である。反射性部分の形状は、図2に示すものと異なっていてもよい。このゾーン6cの光学的な動作原理を、図5に示す。光線のゾーン6cへの入射部位により、光線の一部は、そのまま、全く又は進路を変更することなく、表面を横切り、他の光線は反射される。
【0034】
光学素子6の第4ゾーン6dは、透明な面又は光学機能を全く生じさせない面である。その光学的動作原理を、図6に示す。全ての光線は、全く又は殆ど変化させられることなく進む。この位置は、ハイビーム、即ちナチュラルと称される機能に対応し、光学素子のノンカット部である。
【0035】
上述した照明装置は、単一光源により、4つの照明機能を保証する。1つの機能から他の機能へのトランジションは、アクチュエータ10によりなされる。 このアクチュエータ10は、対応するゾーンの長手方向が、光学素子の焦点4の中心位置に来るまで、光学素子6を移動させる。
【0036】
次に、図7及び図8a〜図8dは、本発明の照明装置の第2実施形態を示す。この照明装置の構成は、上述した第1実施形態の構成と同様であり、楕円反射器1は、ハーフスペース、光源3は、反射器1の実質的にハーフスペースを照明し、かつ反射器1の第1焦点3のレベルに配置され、光学素子6´は、反射器1の第2焦点4のレベルで横断方向及び長手方向へ移動可能であり、レンズ5は、反射器1の第2焦点4の位置に配置されている。しかし、第2実施形態の照明装置は、光学素子6´が第1実施形態の光学素子6とは異なっている。この光学素子6´は、第1透明ゾーン6a´及びメジャな反射部6b、及びマイナな透過部6c´を含む第2ゾーンの2つの光学ゾーンを備えている。反射部6b´と透過部6c´との境界は、カットオフエッジに対応する。この装置は、図8a〜図8dに模式的に示す4つの機能を有する。図8a〜図8dでは、明瞭にするために、光学素子6´を拡大して示している。
【0037】
図8aに示す第1機能は、透明ゾーン6a´が反射器1の第2焦点4のレベルへ横断方向に移動することにより動作する。この第1機能は、ハイビームと称され、照明装置はナチュラル投射面積を生じる。
【0038】
図8bに示す第2機能では、反射器1からの入射光線が通過する第2焦点4は、ゾーン6a´及び6b´に跨る。この機能は、「選択」と称され、投射面積をX軸方向に変化させ、カット部を反対方向カル向かってくる車両に対応させる。光学素子の横断方向の位置を連続的に変化させ、反対方向から近づいてくる車両に「追従」させる。現実的には、反射器で反射された光線の一部は、反射面6b´で反射される。ベンダと称される反射面による反射は、投射面積の対応部分の高さを下げる。従って、この面積の高さは、左側で低くなる。光学素子6´を更に左へ移動させると、作用する反射面が増加し、右側への高さの下げを増加させ、投射ビームの面積を変更させる。この機能は、第2対称(選択ビームの形成に使用される光学素子の部分に関し)ヘッドライトとの組み合わせにより、カットオフの適用による暗いウインドを形成し、対向車両へのビームを下げることが可能であり、その角度位置は、照明装置により照らされる車両に対して変化させる。上述の例と同様に、Y軸に沿うウインドの移動は、光学軸又はZ軸に沿う移動と組み合わせてもよい。近づいてくる車両にウインドを追従させるために、この移動は、好ましいか又は必要である。
【0039】
第3機能は、図8cに示し、ゾーン6c´の反射性三角形部が作用する。それは、投射面積の全体幅に渡りカットを生じる。これは「ツーリスト」と称される機能であり、車両が左車線を通常通り走行し、かつ人が右折する領域へ走行する場合である。投射されるビームは、その幅全体に渡りカットされ、左側のドライバに対し、ロービーム又は「通過」タイプの照明で目くらましするのを避ける。
【0040】
第4機能は、図8dに示し、透明ゾーン6c´を部分的に作用させている。この位置では、反射器1の右部分から来る光線の一部は、透明部6c´に出会い、かつそれを横切り、ビームの左上部に向けて屈折及び投射される。反射器の左部分から来る対応する光線は、反射面6b´により反射される。光線の一部は、反射面の前エッジを越えて通過するかも知れない。その結果、投射光線の面積は、反射面の前カットオフエッジにより高さが制限され、これは反転される。傾斜エッジより前のカットオフエッジの部分は、投射面積の右部分の高さを制限し、傾斜エッジは、投射面積の左部分の高さを、より小さく、かつ順次増加するように制限する。これは、左走行用の車両に対するロービーム機能である。
【0041】
この照明装置により、極めて簡単に、4つの機能を有する車両用のヘッドライトが実現可能である。光学素子としては、単に透明面及び反射部を備えるのみでよい。反射部は、裏面をメタライズ、即ち金属化するのみで、極めて簡単に実現可能である。そのために、反射面として、同時に幾つかの光学位置基準マーカ13を生成するのが有用である。これらのマーカ13を、図8eに示している。光学基準マーカ13は、この用途に有効であり、かつ製造が極めて簡単である。
【0042】
尚、これらの照明機能の種々の組み合わせも可能であることに留意されたい。更に、光学素子のレベルに透明カラーゾーンを設けることにより、例えばフラッシュライト等の他の機能も可能である。この場合、高原の電力を低下させる必要があるかも知れない。また、例えば大きな反射ゾーンを設け、即ち(レンズに向けて)一層高度なカットオフエッジを有し、投射ビームを更に下向きとすることにより「フォグ」機能も可能である。更にまた、反射面は必要でないことに注目されたい。その場合には、例えばDRL機能用にダイバージェントゾーン及びハイビーム機能用に透明ゾーン透明ゾーンを有する光学素子を設ける。
【0043】
また、光学素子の移動は、トランスバーサル、即ち横断的でなくてはならないが、トランスレーショナル、即ち平行移動である必要はない。事実、例えば利用可能な空間、及び提供可能な機能の数等の種々のパラメータにより、その表面の面内で、多少カーブする光学素子を設け、かつ例えば反射器及び光源の背後に設けて、回転中心の周りで回転させてもよい。
【0044】
更に、異なる複数の光学ゾーンにより構成される光学素子の表面は、必ずしも平面である必要はない。むしろ、希望する光学的効果により、少し複雑な表面であってもよい。
【0045】
光学素子のトランスバーサル移動は、光学軸に対して、正確に直交方向である必要はなく、かつ必ずしも反射器のハーフスペースを定める面内である必要はない。例えば最大スペース等の種々のパラメータにより、トランスバーサルであり、かつ非直交方向の移動、例えば反射器のハーフスペースを定める面と所定の角度をなす面内の移動でもよい。また、光学素子を、例えば異なる不完全さ、及び/又は光学素子のバラツキにより、反射器のハーフスペースを定める面から少し離して配置してもよい。
【0046】
上述した実施形態では、単一光源を使用している。移動可能な光学素子が相互に機械的にリンクされ、かつ単一アクチュエータにより移動される場合には、複数の光源を使用するか、又は複数の同様装置を並列に使用してもよい。
【0047】
以下に、本発明によるヘッドライト用照明装置の可能な実施例及び効果的な特徴を列記する。先ず、第2光学素子の表面には、少なくとも2つのゾーンが、反射器の光学軸に対してトランスバーサル方向に並べて配置され、各ゾーンは、反射性、透明、着色、拡散性又は発散性レンズ、又はこれらの空間的組み合わせの少なくとも1つのタイプである。
【0048】
本発明の効果的な特徴によると、第2移動光学素子は、ほぼ水平面内で、好ましくは光学軸と直交方向、及び平行方向の合成方向へ移動する。
【0049】
また、本発明の効果的な特徴によると、第2光学素子の表面は細長い形状であり、好ましくは長手軸を有する長方形であり、長手方向に沿って分布した少なくとも2つのゾーンを有する。これらのゾーンの光学特性は異なり、反射性、透明、着色、拡散又は発散レンズ或いはこれらの組み合わせから選択されるタイプである。
【0050】
本発明の効果的な特徴によると、第2光学素子は、平行移動可能であり、その方向は、反射器の光学軸とほぼ直交する方向であるのが好ましい。
【0051】
また、本発明の効果的な特徴によると、第2光学素子の表面は、細長い形状であり、その主面に沿って、好ましくは僅かに円弧状にカーブし、そのカーブ面に沿って、反射性、透明、着色、拡散又は発散レンズ、或いはこれらの組み合わせの中から選択される異なるタイプの光学特性を有する。
【0052】
本発明の効果的な特徴によると、第2光学素子は、十分大きな半径で回転移動され、異なるゾーンが、反射器の光学軸に対してトランスバーサル移動するのを保証する。
【0053】
本発明の効果的な特徴によると、第2光学素子の表面は、反射器の光学軸と交差するカットオフエッジと称されるエッジを、好ましくは反射器の反対側に有する反射ゾーンを備えている。
【0054】
本発明の効果的な特徴によると、カットオフエッジは、第1反射器の光学軸とほぼ直交する方向の可変断面を有する。
【0055】
本発明の効果的な特徴によると、カットオフエッジは、第1反射器の光学軸に略直交方向に一定の断面を有する。
【0056】
本発明の効果的な特徴によると、反射器は、平面により境界をなすハーフスペースの好ましくは円弧状のカーブした反射面よりなり、この反射器の第1及び第2焦点は、その平面の近傍に位置し、第2光学素子はこの平面内でその平面と平行に移動される。
【0057】
本発明の効果的な特徴によると、第2光学素子は、少なくとも2つのインデックス位置へ移動させられる。
【0058】
本発明の効果的な特徴によると、第2光学素子は、好ましくは2つのインデックス位置間を連続的に移動させられる。
【0059】
本発明の効果的な特徴によると、第2光学素子の表面は、上述したインデックス位置に対応する少なくとも2つの光学基準点を備え、これら基準点は、好ましくはメタライズにより実現される。
【0060】
本発明の効果的な特徴によると、第2光学素子は、例えばステッピングモータ、圧電モータ又はソレノイドである電気モータにより、平行及び/又は回転移動され、好ましくはステッピングモータ、圧電モータ、又はソレノイドタイプである2個のアクチュエータの組み合わせ、又は駆動周波数の適当に制御される単一の圧電モータによる。
【0061】
本発明の効果的な特徴によると、第2光学素子は、反射器の光学軸と好ましくは直角に交差する光学軸を有する。
【0062】
本発明の効果的な特徴によると、第1光学素子は、反射器の光学軸とほぼ対応する光学軸を有するレンズである。
【0063】
本発明の効果的な特徴によると、第2光学素子は、反射器の光学軸と同じ方向に、好ましくはアクチュエータにより平行移動させられる。
【0064】
本発明の効果的な特徴によると、第2光学素子のアクチュエータを、光学軸方向へ制御するデバイスを備え、好ましくはダイナミックに移動可能にし、第2光学素子の反射面により、車両の姿勢の変化を補償する。
【0065】
本発明によるベンダは、好ましくは平面状かつ水平であり、必要に応じて透明ゾーンを備えている。
【0066】
上述したベンダは、水平方向へ移動可能である。
【0067】
上述したベンダは、離れた垂直軸の周りで回転して移動可能であるのが好ましい。
【0068】
また本発明は、上述の如きデバイスを備える車両のヘッドライト又はリアライトにも関する。
【0069】
さらに、本発明は、上述の如きヘッドライト又はリアライトを備える車両にも関する。
【符号の説明】
【0070】
1 反射器
2 光学軸
3 光源(反射器の第1焦点位置)
4 反射器の第2焦点
5 第1光学素子(レンズ)
6、6´ 第2光学素子
6a、6b、6c、6d ゾーン
10 アクチュエータ(電気モータ)
12 反射面
14 アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1焦点、第2焦点、及び前記第1及び第2焦点を通過する光学軸を有する反射器と、前記反射器の第1焦点近傍に配置され発射される光線を前記第2焦点の近傍へ反射する光源と、前記反射器の第2焦点の近傍に位置する焦点及び光学軸を有し、前記光源から発射され前記反射器により反射された光線を前記光学軸に沿うビームとする第1光学素子と、ほぼ平坦面を有し、前記反射器の第2焦点の近傍に配置した時に、前記光源から発射され前記反射器で反射された光線が入射角で入射する第2光学素子とを備えるヘッドライト用照明装置において、
前記第2光学素子は、面内で前記反射器の光学軸に対して少なくとも横断方向へ移動して、前記ゾーンを前記光線外へ移動させるようになっていることを特徴とするヘッドライト用照明装置。
【請求項2】
前記第2光学素子の表面は、前記反射器の光学軸に対して、横断方向に横並びされた少なくとも2つのゾーンを有し、前記各ゾーンは、反射性、透明、着色、拡散又は発散レンズ、或いはこれらの組み合わせから選択された少なくとも1つのタイプであることを特徴とする請求項1に記載のヘッドライト用照明装置。
【請求項3】
前記第2光学素子の表面は、ほぼ矩形の細長い形状であり、その長手軸には、反射性、透明、着色、拡散、又は発散レンズ或いはこれらの組み合わせから選択された少なくとも2つのゾーンを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のヘッドライト用照明装置。
【請求項4】
前記第2光学素子は、ほぼ水平であり、前記反射器の光学軸と平行及び直交方向の合成方向である面に平行移動しうることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のヘッドライト用照明装置。
【請求項5】
前記第2光学素子は、前記反射器の光学軸とほぼ直交方向に平行移動しうることを特徴とする請求項4に記載のヘッドライト用照明装置。
【請求項6】
前記第2光学素子の表面は、細長くかつ長手方向にほぼ円弧状にカーブし、反射性、透明、着色、拡散、又は発散レンズ、或いはこれらの組み合わせから選択された少なくとも2個の光学特性の異なるゾーンが、前記カーブに沿って分布されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のヘッドライト用照明装置。
【請求項7】
前記第2光学素子は、大きい半径で回転移動され、前記反射器の光学軸に対して横断方向へ前記ゾーンを移動させるようになっていることを特徴とする請求項6に記載のヘッドライト用照明装置。
【請求項8】
前記第2光学素子の表面は、前記反射器の光学軸と交差するカットオフエッジと称されるエッジを、好ましくは反射ゾーン反射器の反対側に有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のヘッドライト用照明装置。
【請求項9】
前記カットオフエッジは、前記反射器の光学軸に対して、ほぼ直交方向に可変プロファイルを有することを特徴とする請求項8に記載のヘッドライト用照明装置。
【請求項10】
前記カットオフエッジは、前記反射器の光学軸とほぼ直交方向に、一定プロファイルを有することを特徴とする請求項8に記載のヘッドライト用照明装置。
【請求項11】
前記反射器は、平面を境界とするハーフスペースのほぼ楕円形のカーブした反射面を備え、前記反射面の第1及び第2焦点は、前記平面の近傍に位置し、前記第2光学素子は、前記平面内、又は前記平面と平行に移動しうることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のヘッドライト用照明装置。
【請求項12】
前記第2光学素子は、少なくとも2つのインデックス位置に移動しうることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のヘッドライト用照明装置。
【請求項13】
前記第2光学素子は、その光学軸が、前記反射器の光学軸と、好ましくは直角に交差する反射タイプであることを特徴とする請求項12に記載のヘッドライト用照明装置。
【請求項14】
前記第1光学素子は、前記反射器の光学軸とほぼ対応する光学軸を有するレンズであることを特徴とする請求項13に記載のヘッドライト用照明装置。
【請求項15】
前記第2光学素子は、更に前記反射器の光学軸に沿ってアクチュエータにより平行移動されることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のヘッドライト用照明装置。
【請求項16】
前記第2光学素子は、ステッピングモータ、圧電モータ、ソレノイド等の電気モータ、好ましくは駆動周波数で制御される単一圧電モータにより平行及び/又は回転移動させられることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のヘッドライト用照明装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図8e】
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【公開番号】特開2010−147025(P2010−147025A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−287821(P2009−287821)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(391011607)ヴァレオ ビジョン (133)
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
【Fターム(参考)】