説明

ヘッドランプ

【課題】可動シェードの姿勢を切り替える際の作動音の減少を図るとともに、ソレノイドのコンパクト化、ヘッドランプの組み立て時間や製造コストの減少を図ることができるヘッドランプを提供することを目的とする。
【解決手段】可動シェード4の姿勢をロービーム位置からハイビーム位置に切り替える際に、円錐台形状のコイルスプリング7のばね特性により、ハイビーム位置に可動シェード4が移動する終端においては、コイルスプリングの弾性力が急激に増加し、ソレノイド6の押出力あるいは吸引力を急激に減衰させるように作用する。従って、可動シェード4の姿勢を切り替える際の作動音の減少を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、可動シェードの姿勢を切り替えることにより、1個の光源ですれ違い時における配光パターンと走行時における配光パターンを得るヘッドランプに関し、更に詳しくは、可動シェードの姿勢の切り替えにソレノイドとスプリングとを用いるヘッドランプに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、乗用車などの自動車に搭載され、一つの光源(メタルハイドランプ等の高圧金属蒸気放電灯、高輝度放電灯(HID)などの放電灯)からの光をすれ違い用の配光パターンと走行用の配光パターンに形成するヘッドランプが提案されている(例えば、特許文献1)。この種のヘッドランプは、1つの光源(2)と、この光源(2)からの光を反射することで、すれ違い用の配光パターンと走行用の配光パターンのそれぞれを得るリフレクタ(3)、このリフレクタ(3)に光源(2)からの光が照射される範囲を切り替える可動シェード(5)と、この可動シェード(5)の姿勢を切り替える、すなわちすれ違い用の配光パターンを得るロービーム位置と走行用の配光パターンを得るハイビーム位置のいずれかに移動させるソレノイド(6)およびスプリング(5a)と、を備えるものである。
【0003】
上記従来のヘッドランプの動作は、まず光源(2)を点灯すると、光源(2)からの光は、リフレクタ(3)に照射される。このとき、光源(2)からの光は可動シェード(5)がロービーム位置あるいはハイビーム位置することにより、リフレクタ(3)に照射される範囲が切り替えられる。従って、可動シェード(5)がロービーム位置の場合は、リフレクタ(3)に照射された光源(2)からの光が、このリフレクタ(3)を介してすれ違い用の配光パターンを形成する。一方、ソレノイド(6)のコイルに通電することにより、可動シェード(5)がロービーム位置からハイビーム位置に移動した場合は、リフレクタ(3)に照射された光源(2)からの光が、このリフレクタ(3)を介して走行用の配光パターンを形成する。なお、可動シェード(5)がハイビーム位置において、ソレノイド(6)の通電を遮断するとソレノイドの吸引力がなくなり、可動シェード(5)はスプリング(5a)の弾性力により、ロービーム位置に復帰することができる。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−319506号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のヘッドランプでは、可動シェード(5)をロービーム位置やハイビーム位置に確実に停止させるためにストッパ機構が設けられている。このストッパ機構としては、可動シェード(5)あるいはソレノイド(6)のプランジャ(6b)などの可動側と、この可動側が当接することで可動シェード(5)を停止させるストッパ部材などの固定側と、で構成されている。可動シェード(5)の姿勢を切り替える際には、可動側が固定側に当接するため作動音が発生する。この作動音は、自動車に乗っている人に耳障りな音となり不快感を与える。特に、静粛性の高い自動車においては、上記作動音が問題となる。そこで、従来では、可動側と固定側との間に樹脂ナット(8)などの緩衝部材を介在させることで、上記可動シェード(5)の作動音の減少を図っている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、上記従来のヘッドランプでは、例えば、可動側であるプランジャ(6b)と固定側であるボビン(6a)に緩衝部材である樹脂ナット(8)を介在させた場合は、ソレノイド(6)のプランジャ(6b)は、可動シェード(5)の姿勢を切り替えるストローク量に対応する長さよりも長いプランジャ(6a)が必要となる。従って、ソレノイド(6)全体は、プランジャの移動方向に長くなるため、可動シェード(5)の姿勢の切り換えに必要なストローク量を有するソレノイド(6)のコンパクト化を図ることができない。また、上記従来のヘッドランプでは、緩衝部材を可動側と固定側との間に組み込む必要があるため、ヘッドランプの部品点数が多くなり、ヘッドランプの組み立て時間や製造コストが増加するという問題もある。
【0007】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、可動シェードの姿勢を切り替える際の作動音の減少を図るとともに、ソレノイドのコンパクト化、ヘッドランプの組み立て時間や製造コストの減少を図ることができるヘッドランプを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明では、光源と、姿勢を切り替えることにより光源からの光を所定のすれ違い用の配光パターンと所定の走行用の配光パターンにリフレクタを介して形成する可動シェードと、可動シェードをすれ違い用の配光パターンを得るロービーム位置から走行用の配光パターンを得るハイビーム位置に移動させるソレノイドと、可動シェードをロービーム位置およびハイビーム位置に停止させるストッパ機構と、可動シェードを走行用の配光パターンを得るハイビーム位置からすれ違い用の配光パターンを得るロービーム位置に復帰させる円錐台形状のコイルスプリングと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、可動シェードの姿勢をロービーム位置からハイビーム位置あるいはハイビーム位置からロービーム位置に切り替える際に、円錐台形状のコイルスプリングのばね特性(すなわちコイルスプリングは縮み始めで弾性力が緩やかに増加し、縮み終わりで弾性力が急激に増加する特性)により、ロービーム位置あるいはハイビーム位置のいずれかの位置に可動シェードが移動する終端においては、コイルスプリングの弾性力が急激に増加し、ソレノイドの押出力あるいは吸引力を急激に減衰させるように作用し、可動シェードの姿勢を切り替える際の作動音の減少を図ることができる。つまり、可動側であるソレノイドのプランジャや可動シェードが固定側であるストッパ部材などに当接する際に、この可動側がゆっくりと固定側に当接することとなるので、可動シェードの姿勢を切り替える際の作動音の減少を図ることができる。また、可動シェードを走行用の配光パターンを得るハイビーム位置からすれ違い用の配光パターンを得るロービーム位置に復帰させる円錐台形状のコイルスプリングが緩衝部材としての機能を有するので、可動側と固定側との間に新たに緩衝部材を設ける必要がなくなり、ソレノイドのコンパクト化、ヘッドランプの組み立て時間や製造コストの減少を図ることができる。また、ロービーム位置あるいはハイビーム位置のいずれかの位置に可動シェードが移動する初期には、コイルスプリングの弾性力が緩やかに増加し、ソレノイドの押出力あるいは吸引力をあまり減衰させないように作用するので、可動シェードは移動しやすくなる。
【0010】
また、この発明では、請求項1に記載のヘッドランプにおいて、ストッパ機構は、可動シェードの可動シェードステーに設けられた幅方向に突出する突出部と、可動シェードがロービーム位置あるいはハイビーム位置に移動した際に、当該突出部に当接する突起部を有するストッパ部材と、で構成されていることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、可動シェードの姿勢を切り替える際には、ソレノイドおよびコイルスプリングにより可動シェードを水平方向に移動させ、ソレノイドの押出力または吸引力あるいはコイルスプリングの弾性力により可動シェードステーの突出部をストッパ部材の突出部に押さえつけて当接させるので、可動ストッパ機構として複雑な機構、例えば可動シェードの回転方向を規制するためのピンやブッシュなどを必要とせず簡単な構成で可動シェードをロービーム位置あるいはハイビーム位置に停止させることができる。これにより、ヘッドランプの組み立て時間や製造コストの減少をさらに図ることができる。
【0012】
また、この発明では、請求項2に記載のヘッドランプにおいて、突出部は可動シェードステーの幅方向に対して傾斜角を有する当接面を有し、且つ突起部は当接面と平行に設けられていることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、可動シェードステーに設けられた突出部の当接面とこの当接面に平行に設けられた突起部がそれぞれハの字状に設けられていることにより、可動シェードをロービーム位置あるいはハイビーム位置に移動する際に、可動シェードが予定している移動方向とずれて移動しても、突出部の当接面が突起部にガイドされ、可動シェードはロービーム位置あるいはハイビーム位置に補正されて確実に停止することができる。
【0014】
また、この発明では、請求項2または3に記載のヘッドランプにおいて、ストッパ部材は、少なくとも突起部が弾性を有することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、突起部の弾性により、可動シェードステーの突出部あるいはこの突出部の当接面が突起部に当接する際の当接音を減少することができ、可動シェードの姿勢を切り替える際の作動音の減少をさらに図ることができる。
【0016】
また、この発明では、請求項1〜4のいずれか一つに記載のヘッドランプにおいて、ソレノイドは、プル式ソレノイドであることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、可動シェードをロービーム位置あるいはハイビーム位置に移動させるソレノイドとして、ソレノイドのプランジャの移動方向に突起物がないプル式ソレノイドを使用するので、ソレノイドのコンパクト化をさらに図ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0019】
図1はこの発明にかかるヘッドランプの概略構成例を示す図、図2は可動シェード、ストッパ部材、ソレノイド、コイルスプリングの斜視図である。ここで、本実施形態においては、左側通行区分の自動車用のヘッドランプについて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、右側通行区分の自動車用のヘッドランプについても用いることができ、この場合はその構造が左右逆となる。同図に示すように、ヘッドランプ1は、少なくとも光源2と、リフレクタ3と、可動シェード4と、ストッパ部材5と、ソレノイド6と、コイルスプリング7とから構成されている。なお、8はハウジング、9はハウジング8内を保護するためのレンズ、10はインナーパネルである。
【0020】
光源2は、例えばメタルハイドランプ等の高圧金属蒸気放電灯、高輝度放電灯(HID)などの放電灯であり、リフレクタ3に着脱可能に取り付けられている。また、この光源2は、リフレクタ3に取り付けることにより、このリフレクタ3に対して所定の位置となるように配置される。また、光源2は、コネクタ11が着脱可能に接続されており、このコネクタ11は後述するバラスト12からの電源を光源2に供給するものである。ここで、12は、光源2である放電灯の始動に必要な高電圧を供給し、且つ放電灯の点灯時には安定した電圧を供給するバラストである。
【0021】
リフレクタ3は、その内凹面がアルミ蒸着あるいは銀塗装などが施されており、回転放物面を基準に変形させた自由曲面で構成される反射面を有する。この反射面は、光源2から光を後述する所定のすれ違い用の配光パターンに形成する第1反射面3aと光源2から光を後述する所定の走行用の配光パターンに形成する第2反射面3bが設けられている。なお、3cは可動シェード4やソレノイド6などをヘッドランプ1の前方から視認できないようにするエクステンションであり、リフレクタ3と一体に成形されている。なお、このエクステンション3cは、リフレクタ3とは、別個に設けて良い。また、このリフレクタ3は、図示しない光軸調整手段を介してハウジング8に取り付けられている。
【0022】
ここで、エクステンション3cには、SUSなどの薄鋼板からなる前方側が閉塞し且つ後方側が開口した筒状の固定シェード13がスクリューなどの固定手段により取り付けられている。この固定シェード13は、化粧板3cに取り付けられることで、光源2の前方に配置され、光源2からの光のうち第1反射面3aおよび第2反射面3bに照射される照射光以外の前方に直接照射される直射光を遮光するものである。
【0023】
可動シェード4は、図2に示すように、SUSなどの薄鋼板からなる可動シェード本体4a、可動シェードステー4bから構成されている。可動シェード本体4aは、略円筒形状であり、その外径は上記固定シェード13の内径よりも小さく、その内径は光源2と接触しない大きさとなっている。また、可動シェード本体4aには、可動シェードステー4bに取り付けるための脚部4cが設けられている。一方、可動シェードステー4bは、その長手方向の前方側(図2では、左上側)に、この可動シェードステー4bの幅方向に突出する突出部4dが2箇所設けられ、この突出部4dに可動シェード本体4aの脚部4cが取り付けられている。また、可動シェードステー4bの長手方向の後方側(図2では、右下側)は、その一部が垂直方向に折り曲げられている。この垂直方向に折り曲げられた可動シェードステー4bの所定個所に可動シェード4を後述するソレノイド6のプランジャ6aに固定するための固定穴4eが設けられている。また、突出部4dは、可動シェードステー4bの長手方向の前方側および後方側のそれぞれに可動シェードステー4bの幅方向に対して傾斜角(例えば、45度)を有する2つのハイビーム側当接面4f、2つのロービーム側当接面4gが設けられている。つまり、ハイビーム側当接面4fとロービーム側当接面4gは、可動シェードステー4bにハの字状に設けられている。なお、4hは、後述するコイルスプリング7を可動シェード4とソレノイド6との間に取り付けるための可動シェード側取付穴である。ここで、可動シェード4は、脚部4cにより可動シェード本体4aを可動シェードステー4bに取り付けているが、可動シェード本体4aおよび可動シェードステー4bを一体に成形しても良い。
【0024】
ストッパ部材5は、図2に示すように、SUSなどの薄鋼板からなる長方形状であり、その四隅に可動シェードステー4bの突出部4dのハイビーム側当接面4f、ロービーム側当接面4gにそれぞれ平行なハイビーム側突起部5a、ロービーム側突起部5bが上方に突設されている。つまり、ハイビーム側突起部5aとロービーム側突起部5bは、ストッパ部材5にハの字状に設けられている。また、ストッパ部材5の一部が鉛直方向に折り曲げられており、その折り曲げられたストッパ部材5の一部に後述するソレノイド6の係止穴6eに対応するように2つの係止突起部5cが設けられている。ここで、ストッパ部材5の長手方向の長さh2は、可動シェード4がロービーム位置からハイビーム位置まで移動する距離、すなわちソレノイド6のプランジャ6aのストローク量と可動シェード4の突出部4dの長手方向の長さh1を合わせた長さとなっている。なお、ハイビーム側突起部5a、ロービーム側突起部5bは、弾性を有することが好ましい。これにより、可動シェードステー4bのハイビーム側当接面4f、ロービーム側当接面4gがそれぞれハイビーム側突起部5a、ロービーム側突起部5bに当接する際の当接音を減少することができるからである。
【0025】
図3は、ソレノイドの要部断面図であり、同図(a)はコイルに通電していない状態、同図(b)はコイルに通電している状態を示す図である。ソレノイド6は、プル式ソレノイドであり、図2および図3(a)に示すように、プランジャ6a、コイル6b、ソレノイドヨーク6cにより構成されている。プランジャ6aは、円柱形状であり、その先端部に可動シェード4の可動シェードステー4bを固定する固定穴6dが設けられている。コイル6bは、ソレノイドヨーク6c内にプランジャ6aを取り囲むように設けられている。このソレノイド6は、コイル6bに通電することにより、コイル6bの磁力により同図(b)に示すように、プランジャ6aが矢印B方向に移動する。このときのプランジャ6aのストローク量は、可動シェード4がロービーム位置とハイビーム位置との間を移動できる長さに設定されている。なお、ソレノイド6には上記ストッパ部材5の係止突起部5cに対応する位置に2つの係止穴6eが設けられている。また、6fは、後述するコイルスプリング7をソレノイド6と可動シェード4との間に取り付けるためのソレノイド側取付穴である。また、図示は省略するが、ソレノイド6はハウジング8に取り付けられている。
【0026】
コイルスプリング7は、図2に示すように、弾性を有する線材を円錐台形状に巻いたものである。このコイルスプリング7には、それぞれ可動シェードステー4bの可動シェード側取付穴4hおよびソレノイド6のソレノイド側取付穴6fに挿入される先端部7a、7bが設けられている。ここで、コイルスプリングの軸方向の長さは、ソレノイド6のプランジャ6aのストローク量よりも若干長めである。これは、コイルスプリング7を可動シェード4とソレノイド6との間に付勢した状態で取り付けるためである。なお、コイルスプリング7は、コイルスプリング7が縮んだ際に線材が互いに接触しないように線材が円錐台形状に巻かれていることが好ましい。これにより、コイルスプリング7が縮んだ際にその軸方向の長さが円筒状のコイルスプリングと比較して小さくなり、ソレノイド6のプランジャ6aの長さを極力プランジャ6aがストロークするのに必要な長さとすることができ、ソレノイド6のコンパクト化を図ることができるからである。
【0027】
次に、可動シェード4、ストッパ部材5、ソレノイド6、コイルスプリング7の組み立てについて説明する。図4は、可動シェード、ストッパ部材、ソレノイド、コイルスプリングの組立斜視図である。図2および図4に示すように、まず、ストッパ部材5の係止突起部5cをソレノイド6の係止穴6eに挿入することで、ストッパ部材5は、ソレノイド6の上部に係止される。次に、ソレノイド6のプランジャ6aの外周にコイルスプリング7を配置する。このとき、コイルスプリング7の先端部7bをソレノイド6のソレノイド側取付穴6fに挿入する。
【0028】
次に、可動シェード4を可動シェードステー4bの2つの突出部4dが、ストッパ部材5の突起部5a、5b内に位置するようにストッパ部材5の上部に配置し、可動シェードステー4bの可動シェード側取付穴4hにコイルスプリング7の先端部7aを挿入する。そして、ボルト14を可動シェード4の固定穴4eを介してソレノイド6のプランジャ6aの固定穴6dと締結することで、可動シェード4をプランジャ6aに固定する。以上により、可動シェード4とストッパ部材5とソレノイド6とコイルスプリング7を組み立て、ソレノイド6をハウジング8に固定することで、可動シェード4を光源2や固定シェード13に対して所定の位置に配置する。なお、可動シェード4をソレノイド6のプランジャ6aに固定するためにボルト14を用いたが、本発明これに限定されるものではなく、リベットやスポット溶接などで固定しても良い。
【0029】
次に、本発明にかかるヘッドランプの動作について説明する。図5および図6は、本発明にかかるヘッドランプの動作説明図であり、図5(a)は可動シェードがロービーム位置の状態の側面図、図5(b)は可動シェードがハイビーム位置の状態の側面図、図6(a)は可動シェードがロービーム位置の状態の平面図、図6(b)は可動シェードがロービーム位置の状態の平面図を示す図である。また、図7は、この発明にかかるヘッドランプの配光パターンを示す図であり、同図(a)はすれ違い用の配光パターン、同図(b)は走行用の配光パターンを示す図である。ここで、同図に示す配光パターンは、この発明にかかるヘッドランプ1から10m先のスクリーンに投影されたものであり、HL−HRはスクリーンの左右の水平線、VU−VDはスクリーンの上下の垂直線を示すものである。
【0030】
可動シェード4は、ソレノイド6のコイル6bに通電されていない状態では、ストッパ機構である可動シェードステー4bの2つロービーム側当接面4gとストッパ部材5の2つのロービーム側突起部5bが当接することでロービーム位置に停止している。ここで、コイルスプリング7は可動シェードステー4bとソレノイド6との間に付勢された状態で取り付けられているため、ロービーム側当接面4gはロービーム側突起部5bに押し付けられた状態で当接している。従って、可動シェードステー4bはその長手方向のいずれにも移動せず、またロービーム側当接面4gとロービーム側突起部5bがハの字状であるため、その幅方向のいずれにも移動しないので、自動車の振動などにより可動シェード4がロービーム位置からずれることはない。ここで、図1に示すバラスト12に電量を供給することで光源2を点灯する。点灯された光源2からの光は、その一部がロービーム位置に停止している可動シェード4の可動シェード本体4aにより遮光される。遮光されない光源2からの光は、リフレクタ3の第1反射面3aに照射光L1として照射される。第1反射面は、照射光L1により反射光L11を前方に照射する。この反射光L11により、図7(a)に示すような所定のすれ違い用の配光パターンLPを得る。この配光パターンLPは、眩惑光を制限するように、明暗境界線LP1を有し、このLP1は対向車に眩惑光を与えないための水平線部分LP2と左側路肩歩行者に眩惑光を与えずに且つ左側路肩歩行者を視認できるための緩傾斜線部分LP3とから構成されている。
【0031】
次に、ソレノイド6のコイル6bに通電すると、図3(b)に示すように、プランジャ6aは、コイルから発生する磁力により矢印B方向に移動する、すなわちソレノイド6にプランジャ6aを吸引する吸引力が発生し、プランジャ6aに固定された可動シェード4が図5(a)および図6(a)に示すように矢印A方向に移動し始める。ここで、可動シェード4とソレノイド6との間に取り付けられたコイルスプリング7には弾性力が発生する。このコイルスプリング7の弾性力は、上記ソレノイド6の吸引力を減衰する方向に作用する。
【0032】
図8は、ソレノイドに発生する力およびコイルスプリングに発生する力とプランジャのストロークとの関係を示す図である。ここで、同図に示すストローク量は、ソレノイド6のプランジャ6aが吸引される方向を+とする。同図に示すように、ソレノイド6の吸引力(同図では、点線)は、プランジャ6aのストローク量に比例して増加する。一方、コイルスプリング7の弾性力(同図では、実線)は、このコイルスプリング7が円錐台形状をしているため、プランジャ6aがソレノイド6内に吸引され初めには、緩やかに増加する。つまり、同図の矢印Cに示すように、ソレノイド6の吸引力とコイルスプリング7の弾性力との差は、ソレノイド6の吸引力と円筒状のコイルスプリング7の弾発力(同図では、二点鎖線)との差と比較して緩やかに縮まる。従って、コイルスプリング7の弾性力がソレノイド6の吸引力をあまり減衰させないように作用するので、プランジャ6aに取り付けられた可動シェード4はロービーム位置からハイビーム位置へと移動しやすくなる。
【0033】
また、コイルスプリング7の弾性力は、プランジャ6aがソレノイド6内に吸引され終わりには、急激に増加する。つまり、同図の矢印Dに示すように、ソレノイド6の吸引力とコイルスプリング7の弾性力との差は、ソレノイド6の吸引力と円筒状のコイルスプリングの弾発力との差と比較して急激に縮まる。従って、コイルスプリング7の弾性力がソレノイド6の吸引力を急激に減衰させるように作用するので、プランジャ6aに取り付けられた可動シェード4がロービーム位置からハイビーム位置に近づくにつれて、可動シェード4の移動速度が低下する。移動速度が低下した状態でストッパ機構である可動シェードステー4bの2つのハイビーム側当接面4fとストッパ部材5の2つのハイビーム側突起部5aが当接する。これにより、ハイビーム側当接面4fがハイビーム側突起部5aに当接する際の当接音の減少を図ることができる。
【0034】
なお、可動シェード4がロービーム位置からハイビーム位置に移動する際に、自動車の振動や、ソレノイド6のプランジャ6aとコイル6bとの隙間などにより、予定している移動方向ずれた状態で移動する場合がある。図9は、可動シェードの停止位置を補正するための動作説明図であり、同図(a)はハイビーム側当接面がずれてハイビーム側突出部に当接した状態、同図(b)はハイビーム側当接面が補正されてハイビーム側突出部に当接した状態を示す図である。同図(a)に示すように、可動シェード4が予定している移動方向である矢印E方向とずれた方向である矢印F方向に移動した場合は、可動シェードステー4bのハイビーム当接面4fはずれた状態でストッパ部材5のハイビーム側突起部5aに当接する。このとき、2つのハイビーム側当接面4fのいずれか一方が先に一方のハイビーム側突起部5aと当接する。
【0035】
さらに、可動シェード4が矢印F方向に移動しようとすると、ハイビーム側当接面4fは可動シェードステー4bの幅方向に対して傾斜角と有するため、ハイビーム側当接面4fは、ハイビーム側突起部5aに沿って矢印G方向に摺動する。これは、2つのハイビーム側当接面4fおよび2つのハイビーム側突起部5aがそれぞれハの字状に可動シェードステー4bとストッパ部材5に設けられているためである。従って、可動シェード4は、矢印F方向に移動しようとする力と矢印G方向に移動しようとする力の合力により、予定している移動方向である矢印E方向に移動するように補正される。可動シェード4がさらに矢印F方向に移動しようとすると、同図(b)に示すように、他方のハイビーム側当接面4fの他方がハイビーム側突起部5bと当接し、ハイビーム位置に確実に停止することができる。
【0036】
ここで、ソレノイド6のコイル6bに通電し続けることで、可動シェードステー4bのハイビーム側当接面4fがストッパ部材5のハイビーム側突起部5aに押し付けられ当接した状態を維持でき、可動シェード4はハイビーム位置に停止する。従って、可動シェードステー4bはその長手方向のいずれにも移動せず、またハイビーム側当接面4fとハイビーム側突起部5aがハの字状であるため、その幅方向のいずれにも移動しないので、自動車の振動などにより可動シェード4がハイビーム位置からずれることはない。このとき、可動シェード4がロービーム位置の状態のときに、可動シェード本体4aにより遮光されていた光源2からの光は、リフレクタ3の第2反射面3bに照射光L2として照射される。第2反射面3bは、照射光L2により反射光L21を前方に照射する。この反射光L21および反射光L11により、図7(b)に示すような所定の走行用の配光パターンHPを得る。この配光パターンHPは、最大光度値や最大光度帯が考慮されたパターンであり、その中央部分にホットゾーンHZ(最大光度点を含む最大光度帯)が形成される。
【0037】
可動シェード4がハイビーム位置に停止している状態では、コイルスプリング7の軸方向の長さは、図5に示すように、H1からH2まで短く、つまり縮んでいる。ここで、ソレノイド6のコイル6bに通電をやめると、可動シェード4は軸方向の長さがH2まで縮んだ状態のコイルスプリング7の弾性力により、ロービーム位置に復帰する。このとき、ソレノイド6には、図7に示すように、プランジャ6aの位置を保持する保持力(同図では、一点鎖線)が発生する。このソレノイド6の保持力は、コイルスプリング7の弾性力を減衰するように作用するので、プランジャ6aに取り付けられた可動シェード4がハイビーム位置からロービーム位置に近づくにつれて、可動シェード4の移動速度が低下する。移動速度が低下した状態でストッパ機構である可動シェードステー4bの2つのロービーム側当接面4gとストッパ部材5の2つのロービーム側突起部5bが当接する。これにより、ロービーム側当接面4gがロービーム側突起部5bに当接する際の当接音の減少を図ることができる。
【0038】
以上により、可動シェード4は図1に示すようにロービーム位置とハイビーム位置のいずれにもその姿勢を切り替えることができる。これにより、可動側である可動シェード4のハイビーム側当接面4f、ロービーム側当接面4gがそれぞれ固定側であるストッパ部材のハイビーム側突起部5a、ロービーム側突起部5bに当接する際に、この可動側がゆっくりと固定側に当接することとなるので、可動シェード4の姿勢を切り替える際の作動音の減少を図ることができる。また、コイルスプリング7が緩衝部材としての機能を有するので、可動側と固定側との間に新たに緩衝部材を設ける必要がなくなり、ソレノイド6のコンパクト化、ヘッドランプの組み立て時間や製造コストの減少を図ることができる。
【0039】
なお、上記実施形態では、可動シェード4の駆動手段としてプル式のソレノイドを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、プッシュ式のソレノイドを用いて良い。この場合は、プランジャ6aが押し出された際に、このプランジャ6aが押し出される方向にコイルスプリング7が縮むように、コイルスプリング7を可動シェード4と別途設けた固定部材(例えば、ハウジング8)との間に取り付ければ良い。
【0040】
また、本発明では、ハイビーム側当接面4f、ロービーム側当接面4gは、可動シェードステー4bの幅方向に対して傾斜角を有し、且つハイビーム側突起部5a、ロービーム側突起部5bは、ハイビーム側当接面4f、ロービーム側当接面4gと平行に設けられているが、可動シェード4がその姿勢の切り替え時において、可動シェードステー4bの幅方向にずれる恐れがない場合は、上記ハイビーム側当接面4f、ロービーム側当接面4g、ハイビーム側突起部5a、ロービーム側突起部5bを可動シェードステー4bの幅方向と平行に設けても良い。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、可動シェードの姿勢をロービーム位置からハイビーム位置あるいはハイビーム位置からロービーム位置に切り替える際に、円錐台形状のコイルスプリングのばね特性により、ロービーム位置あるいはハイビーム位置のいずれかの位置に可動シェードが移動する終端においては、コイルスプリングの弾性力が急激に増加し、ソレノイドの押出力あるいは吸引力を急激に減衰させるように作用し、可動シェードの姿勢を切り替える際の作動音の減少を図ることができる。また、可動シェードを走行用の配光パターンを得るハイビーム位置からすれ違い用の配光パターンを得るロービーム位置に復帰させる円錐台形状のコイルスプリングが緩衝部材としての機能を有するので、可動側と固定側との間に新たに緩衝部材を設ける必要がなくなり、ソレノイドのコンパクト化、ヘッドランプの組み立て時間や製造コストの減少を図ることができる。また、ロービーム位置あるいはハイビーム位置のいずれかの位置に可動シェードが移動する初期には、コイルスプリングの弾性力が緩やかに増加し、ソレノイドの押出力あるいは吸引力をあまり減衰させないように作用するので、可動シェードは移動しやすくなる。
【0042】
また、請求項2に記載の発明によれば、可動シェードの姿勢を切り替える際には、ソレノイドおよびコイルスプリングにより可動シェードを水平方向に移動させ、ソレノイドの押出力または吸引力あるいはコイルスプリングの弾性力により可動シェードステーの突出部をストッパ部材の突出部に押さえつけて当接させるので、可動ストッパ機構として複雑な機構、例えば可動シェードの回転方向を規制するためのピンやブッシュなどを必要とせず簡単な構成で可動シェードをロービーム位置あるいはハイビーム位置に停止させることができ、ヘッドランプの組み立て時間や製造コストの減少をさらに図ることができる。
【0043】
また、請求項3に記載の発明によれば、可動シェードステーの設けられた突出部の当接面とこの当接面に平行に設けられた突起部がそれぞれハの字状に設けられていることにより、可動シェードをロービーム位置あるいはハイビーム位置に移動する際に、可動シェードが予定している移動方向とずれて移動しても、突出部の当接面が突起部にガイドされ、可動シェードはロービーム位置あるいはハイビーム位置に補正されて確実に停止することができる。
【0044】
また、請求項4に記載の発明によれば、突起部の弾性により、可動シェードステーの突出部あるいはこの突出部の当接面が突起部に当接する際の当接音を減少することができ、可動シェードの姿勢を切り替える際の作動音の減少をさらに図ることができる。
【0045】
また、請求項5に記載の発明によれば、可動シェードをロービーム位置あるいはハイビーム位置に移動させるソレノイドとして、ソレノイドのプランジャの移動方向に突起物がないプル式ソレノイドを使用するので、ソレノイドのコンパクト化をさらに図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかるヘッドランプの概略構成例を示す図である。
【図2】可動シェード、ストッパ部材、ソレノイド、コイルスプリングの斜視図である。
【図3】ソレノイドの要部断面図であり、同図(a)はコイルに通電していない状態、同図(b)はコイルに通電している状態を示す図である。
【図4】可動シェード、ストッパ部材、ソレノイド、コイルスプリングの組立斜視図である。
【図5】本発明にかかるヘッドランプの動作説明図であり、同図(a)は可動シェードがロービーム位置の状態の側面図、同図(b)は可動シェードがハイビーム位置の状態の側面図である。
【図6】本発明にかかるヘッドランプの動作説明図であり、同図(a)は可動シェードがロービーム位置の状態の平面図、同図(b)は可動シェードがハイビーム位置の状態の平面図である。
【図7】この発明にかかるヘッドランプの配光パターンを示す図であり、同図(a)はすれ違い用の配光パターン、同図(b)は走行用の配光パターンを示す図である。
【図8】ソレノイドに発生する力およびコイルスプリングに発生する力とプランジャのストロークとの関係を示す図である。
【図9】可動シェードの停止位置を補正するための動作説明図であり、同図(a)はハイビーム側当接面がずれてハイビーム側突出部に当接した状態、同図(b)はハイビーム側当接面が補正されてハイビーム側突出部に当接した状態を示す図である。
【符号の説明】
1 ヘッドランプ
2 光源
3 リフレクタ
3a 第1反射面
3b 第2反射面
4 可動シェード
4a 可動シェード本体
4b 可動シェードステー
4d 突出部
4f ハイビーム側当接面
4g ロービーム側当接面
5 ストッパ部材
5a ハイビーム側突起部
5b ロービーム側突起部
6 ソレノイド
6a プランジャ
7 コイルスプリング
8 ハウジング
9 レンズ
10 インナーパネル
11 コネクタ
12 バラスト
13 固定シェード
14 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
姿勢を切り替えることにより前記光源からの光を所定のすれ違い用の配光パターンと所定の走行用の配光パターンにリフレクタを介して形成する可動シェードと、
前記可動シェードを前記すれ違い用の配光パターンを得るロービーム位置から前記走行用の配光パターンを得るハイビーム位置に移動させるソレノイドと、
前記可動シェードをロービーム位置およびハイビーム位置に停止させるストッパ機構と、
前記可動シェードを前記走行用の配光パターンを得るハイビーム位置から前記すれ違い用の配光パターンを得るロービーム位置に復帰させる円錐台形状のコイルスプリングと、
を備えたことを特徴とするヘッドランプ。
【請求項2】
前記ストッパ機構は、
前記可動シェードの可動シェードステーに設けられた幅方向に突出する突出部と、
前記可動シェードがロービーム位置あるいはハイビーム位置に移動した際に、当該突出部に当接する突起部を有するストッパ部材と、
で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドランプ。
【請求項3】
前記突出部は前記可動シェードステーの幅方向に対して傾斜角を有する当接面を有し、且つ前記突起部は前記当接面と平行に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のヘッドランプ。
【請求項4】
前記ストッパ部材は、少なくとも突起部が弾性を有することを特徴とする請求項2または3に記載のヘッドランプ。
【請求項5】
前記ソレノイドは、プル式ソレノイドであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のヘッドランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2004−179078(P2004−179078A)
【公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−346323(P2002−346323)
【出願日】平成14年11月28日(2002.11.28)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】