説明

ヘッドレスト保持フレーム、ヘッドレスト保持フレームの製造方法

【課題】部品点数を削減できる新規なヘッドレスト保持フレームおよびヘッドレスト保持フレームの製造方法を提供する。
【解決手段】ヘッドレスト保持フレーム4は、使用者の頭部を支えるヘッドレストを保持する保持フレーム部40を有する。保持フレーム部40は、中央域に配置され横方向に沿って延設された横方向中央延設部20と、端領域に配置され横方向に沿って延設された横方向端延設部21と、横方向中央延設部20と横方向端延設部21とを繋ぐと共に下方向または上方向に向けて延設された縦方向延設部22Bとを備えている。縦方向延設部22Bはヘッドレストの差込部を差し込む差込開口3を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の頭部を支えるヘッドレストを保持するヘッドレスト保持フレームおよびヘッドレスト保持フレームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の頭部を支えるヘッドレストを保持する保持フレーム部を有するヘッドレスト保持フレームが提供されている。特許文献1には、図18に示すように、差込開口203を有する角筒形状をなす別体のブラケット200を用い、ブラケット200のフランジ部201を保持フレーム部110に溶接により固定し、ヘッドレスト300の差込部301を治具302を介してブラケット200の差込開口203に差し込むことにより、ヘッドレスト300を保持フレーム部110に取り付ける技術が開示されている。特許文献2にも同様に、差込開口を有する角筒形状をなす別体のブラケットを保持フレーム部に溶接により固定する構造の技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−315649号公報
【特許文献2】特開2002−337585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記した技術によれば、差込開口203を有する筒形状をなす別体のブラケット200を保持フレーム部110に溶接により固定しているため、部品点数が増加する。
【0004】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、上記した構造とは異なり、部品点数を削減できる新規なヘッドレスト保持フレームおよびヘッドレスト保持フレームの製造方法を提供することを課題とするにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るヘッドレスト保持フレームは、使用者の頭部を支えるヘッドレストを保持する保持フレーム部を有するヘッドレスト保持フレームにおいて、
保持フレーム部は、中央域に配置され横方向に沿って延設された横方向中央延設部と、横方向中央延設部の両側に配置され横方向に沿って延設された横方向端延設部と、横方向中央延設部と横方向端延設部とを繋ぐと共に下方向または上方向に向けて延設された縦方向延設部とを曲げ加工により一体成形して備えており、縦方向延設部は、ヘッドレストの差込部を差し込む差込開口を有することを特徴とするものである。
【0006】
本発明に係るヘッドレスト保持フレームによれば、保持フレーム部の縦方向延設部の差込開口にヘッドレストの差込部を差し込むことにより、ヘッドレストが保持フレーム部に保持される。縦方向延設部は従来のブラケットに相当する機能を奏するものであるが、保持フレーム部の横方向中央延設部および横方向端延設部と共に曲げ加工により一体的に成形されているため、部品点数が削減される。
【0007】
本発明に係るヘッドレスト保持フレームの製造方法は、直状の素材パイプを用意する第1工程と、素材パイプを曲げ加工することにより、中央域に配置され横方向に沿って延設された横方向中央延設部と、端領域に配置され横方向に沿って延設された横方向端延設部と、横方向中央延設部と横方向端延設部とを繋ぐと共に下方向または上方向に向けて延設された縦方向延設部とを備える曲成パイプを形成する第2工程と、曲成パイプの縦方向延設部にヘッドレストの差込部を差し込む差込開口を形成する第3工程とを順に実施することを特徴とするものである。本発明に係る製造方法によれば、直状の素材パイプから、横方向中央延設部、横方向端延設部および縦方向延設部を備える前記した曲成パイプを曲げ加工により形成することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るヘッドレスト保持フレームによれば、縦方向延設部は従来のブラケットに相当する機能を奏するものであるが、保持フレーム部に横方向中央延設部および横方向端延設部と共に曲げ加工により一体的に成形されている。このため、従来の別体のブラケットを削減でき、部品点数が削減される。
【0009】
本発明に係る製造方法によれば、本発明のヘッドレスト保持フレームを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係るヘッドレスト保持フレームは、使用者の頭部を支えるヘッドレストを保持する保持フレーム部を有するものである。保持フレーム部はヘッドレストを保持する機能を有するものであり、横方向中央延設部と横方向端延設部と縦方向延設部とを備えている。横方向中央延設部は、保持フレーム部の中央域に配置されており、横方向に沿って延設されている。横方向端延設部は、横方向中央延設部の両側に位置するように、横方向中央延設部よりも保持フレーム部の端領域に配置されており、横方向に沿って延設されているものである。
【0011】
縦方向延設部は、横方向中央延設部と横方向端延設部とを繋ぐと共に、下方向または上方向に向けて延設されている。縦方向延設部の縦方向とは、鉛直方向でも良いし、鉛直方向に対して多少傾斜していても良い。保持フレーム部としては、金属または硬質樹脂を基材とするパイプで形成されている形態を例示することができる。保持フレーム部としては、金属パイプを曲げ加工することにより形成されている形態を例示することができる。縦方向延設部は、ヘッドレストの差込部を差し込む差込開口を有する。縦方向延設部としては、これの断面において非円形状であることが好ましい。差込開口も非円形状であることが好ましい。非円形状としては、三角形状、四角形状、五角形状、六角形状等の多角形状またはほぼ多角形状を例示することができる。
【0012】
ヘッドレストの差込部を差込開口に差し込んだとき、ヘッドレストの差込部の空回転を防止し、ヘッドレストの差込部と縦方向延設部の差込開口との係合性を高めるためである。但し、縦方向延設部および差込開口の横断面形状としては円形状とすることもできる。
【0013】
差込開口としては、縦方向延設部の上部にのみ設けられた上差込開口とすることができる。この場合には、ヘッドレストの差込部が縦方向延設部に貫通しない構造となる。また、差込開口としては、縦方向延設部の上部に設けられた上差込開口と、上差込開口に連通すると共に縦方向延設部の下部に設けられた下差込開口とを有する形態を例示することができる。これによりヘッドレストの差込部を上下方向に沿って差込開口に差し込むことができる。この場合には、ヘッドレストの差込部が縦方向延設部を貫通する構造とすることができる。
【0014】
本発明によれば、保持フレーム部の横方向中央延設部は、横方向端延設部よりも下側に配置されている形態を例示することができる。この場合、横方向中央延設部の軸芯に沿った断面において、保持フレーム部の縦方向延設部の上部側の曲成輪郭のうち横方向中央延設部側の端は、横方向端延設部の軸芯またはこれの延長線よりも上側に位置している形態を例示することができる。
【0015】
また、横方向中央延設部の軸芯に沿った断面において、保持フレーム部の縦方向延設部の下部側の曲成輪郭のうち横方向端延設部側の端は、横方向中央延設部の軸芯またはこれの延長線よりも下側に位置している形態を例示することができる。
【0016】
本発明によれば、横方向中央延設部の周長をL1とし、横方向端延設部の周長をL2とし、縦方向延設部の周長をL3とすると、L1/L2=0.75〜1.25、L2/L3=0.75〜1.25,L1/L3=0.75〜1.25に設定されている形態を例示することができる。このようにL1,L2,L3はほぼ対応する大きさとなるようにされている。これにより横方向中央延設部のパイプ部分の肉厚、横方向端延設部のパイプ部分の肉厚、縦方向延設部のパイプ部分の肉厚の変動が抑制され、過剰な薄肉化が抑制されている。
【0017】
本発明に係るヘッドレスト保持フレームの製造方法によれば、第2工程では、素材パイプを曲げ加工することにより曲成パイプを形成する。曲成パイプは、中央域に配置され横方向に沿って延設された横方向中央延設部と、端領域に配置され横方向に沿って延設された横方向端延設部と、横方向中央延設部と横方向端延設部とを繋ぐと共に下方向または上方向に向けて延設された縦方向延設部とを備える。第2工程において、曲成パイプの軸長方向の両端部は直状にされている形態を例示することができる。この場合、直状にされている両端部の肉材料を曲げ加工部分に補充し易く、曲げ加工部分の肉厚が確保され易い。次に第3工程では、曲成パイプの縦方向延設部に、ヘッドレストの差込部を差し込む差込開口を形成する。
【0018】
本発明に係る製造方法によれば、第2工程の後または第3工程の後に、曲成パイプの軸長方向の両端部を下方向に曲げる形態を例示することができる。このように曲成パイプの両端部を下方向に曲げれば、ヘッドレスト保持フレームを車両等の座席に対して搭載させる搭載性が確保される。
【実施例1】
【0019】
以下、本発明の実施例を図1〜図6を参照して説明する。まず、第1工程では、図1に示すように、軸長方向に貫通する中空部1aをもつ直状をなす円筒形状の金属製の素材パイプ1を用意する。金属としては鋼系(ステンレス鋼を含む)、アルミニウム合金系、マグネシウム合金系、チタン合金系等の塑性変形容易なものを採用できる。
【0020】
次に、第2工程では、プレス型を用い、素材パイプ1の軸長方向の中央部分をプレス加工またはハイドロフォーミング加工により曲げ加工して曲成部2m,2nを形成することにより、図2に示すようなクランク形状に曲成された曲成パイプ2を形成する。ハイドロフォーミング加工は水等の流体圧を利用する加工方法である。
【0021】
図2に示すように、曲成パイプ2は、軸長方向の中央域に配置され横方向に沿って延設されたパイプ状の横方向中央延設部20と、軸長方向の端領域に配置され横方向に沿って延設されたパイプ状の横方向端延設部21と、横方向中央延設部20と横方向端延設部21とを繋ぐと共にパイプ状の縦方向延設部22とを備えている。縦方向延設部22は、横方向端延設部21の中央寄りの端21eから下方向に向けて延設されている。つまり、縦方向延設部22は、横方向中央延設部20の両端20eから上方向に向けて延設されている。第2工程では、図2に示すように、曲成パイプ2の軸長方向の両方の端部24は直状にされている。このように両方の端部24が直状であると、両方の端部24がL字形状に曲成されている場合に比較して、両方の端部24を構成する肉材料を曲げ加工部分に向けて矢印M1方向に補充し易くなり、曲げ加工部分の肉厚、殊に、縦方向延設部22付近の肉厚が確保され易い。
【0022】
第3工程では、図3に示すように、曲成パイプ2の縦方向延設部22のうち上部に上差込開口31を形成すると共に、下部に下差込開口32を形成する。上差込開口31および下差込開口32は互いに連通している。この場合、図4に示すように、打抜型70により、縦方向延設部22の上部および下部の壁を打ち抜くことで、縦方向延設部22に上差込開口31および下差込開口32を形成する。
【0023】
第3工程を実施した後に、図5に示すように、曲成部2kを形成し、曲成パイプ2の軸長方向における両方の端部24を下方向(矢印K1方向)にLの字形状に曲げる。このように曲成パイプ2の端部24を下方向に曲げれば、ヘッドレスト保持フレーム4を車両等の座席に対して搭載させる搭載性が確保される。なお、曲成パイプ2の端部24に他の部材を接合させても良い。
【0024】
図5および図6は上記したように製造されたヘッドレスト保持フレーム4を示す。ヘッドレスト保持フレーム4は、曲げ加工により一体的に成形されており、単一物とされている。ヘッドレスト保持フレーム4は、使用者の頭部を支えるヘッドレスト6を保持する保持フレーム部40を有する。保持フレーム部40は、横方向中央延設部20と横方向端延設部21と縦方向延設部22とを一体的に備えている。横方向中央延設部20は、保持フレーム部40の中央域に配置されており、横方向に沿って延設されている。横方向端延設部21は、横方向中央延設部20よりも保持フレーム部40の端領域に配置されており、横方向に沿って延設されているものである。横方向中央延設部20は横方向端延設部21よりも相対的に下側に位置している。
【0025】
縦方向延設部22は、横方向中央延設部20の端20eと横方向端延設部21の端21eとを繋ぐと共に、上下方向に沿って延設されている。縦方向延設部22は差込開口3を有する。差込開口3は、縦方向延設部22の上部に設けられた上差込開口31と、縦方向延設部22の下部に設けられた下差込開口32とで形成されている。これにより図6に示すように、ヘッドレスト6の差込部60を治具62を介して、保持フレーム部40の縦方向延設部22の差込開口3に上下方向(矢印Y1方向)に沿って差し込むことができる。
【0026】
図5に示すように、縦方向延設部22は、これの断面において楕円形状、長円形状等の円形状とされている。故に、上差込開口31および下差込開口32は楕円形状、長円形状等の円形状とされている。
【0027】
本実施例によれば、保持フレーム部40において、横方向中央延設部20の周長をL1とし、横方向端延設部21の周長をL2とし、縦方向延設部22の周長をL3とすると、L1,L2,L3はほぼ対応する大きさとなるようにされている。これにより横方向中央延設部20のパイプ部分の肉厚、横方向端延設部21のパイプ部分の肉厚、縦方向延設部22のパイプ部分の肉厚の変動が抑制され、過剰な薄肉化が抑制されている。従って、L1/L2=0.75〜1.25(殊に0.85〜1.15),L2/L3=0.75〜1.25(殊に0.85〜1.15),L1/L3=0.75〜1.25(殊に0.85〜1.15)とされている。なお、周長は周方向における最短距離の長さを意味する。
【0028】
図4は、差込開口3を打抜加工する前における保持フレーム部40の横方向中央延設部20の軸芯P1(および横方向端延設部21の軸芯P2)に沿った断面に相当する図を示す。図4において、保持フレーム部40の縦方向延設部22の上部側には曲成輪郭27が形成されている。縦方向延設部22の下部側には曲成輪郭28が形成されている。
【0029】
図4に示すように、軸芯P1,P2に沿った方向において、曲成輪郭27のうち一方の端27uは横方向中央延設部20側に位置している。曲成輪郭27のうち他方の端27xは横方向端延設部21側に位置している。また、軸芯P1,P2に沿った方向において、曲成輪郭28のうち一方の端28dは横方向端延設部21側に位置しており、曲成輪郭28のうち他方の端28yは横方向中央延設部20側に位置している。
【0030】
図4に示すように、曲成輪郭27は端27u,27xを有する。端27uは、横方向端延設部21の軸芯P2よりも上側(矢印U方向、即ち、横方向中央延設部20の軸芯P1から遠ざかる側)に位置している。これにより曲成輪郭27の端27uと横方向中央延設部20の軸芯P1との間の距離L1が確保される。
【0031】
また図4に示すように、曲成輪郭28は端28d,28yを有する。端28dは、横方向中央延設部20の軸芯P1よりも下側(矢印D方向、即ち、横方向端延設部21の軸芯P2から遠ざかる側)に位置している。これにより曲成輪郭28の端28dと横方向端延設部21の軸芯P2との間の距離L2が確保される。この結果、図4に示すように、縦方向延設部22の上部側の曲成輪郭27の端27uと縦方向延設部22の下部側の曲成輪郭28の端28dとの間における軸直角方向の距離をLWとすると、距離LWが長めに確保される。このため、ヘッドレスト6の差込部60を縦方向延設部22内に差し込む距離が確保され易くなり、ヘッドレスト6の姿勢の安定性を高めることができる。
【0032】
更に本実施例によれば、図4に示すように、縦方向延設部22の上部側の曲成輪郭27の他方の端27xは、軸芯P1,P2の方向において、縦方向延設部22の外壁面22s(つまり、横方向端延設部21に対面する側の外壁面)の延長線PAに対して矢印PE方向ではなく、矢印PB方向つまり横方向中央延設部20側に位置している。また、縦方向延設部22の下部側の曲成輪郭28の他方の端28yは、軸芯P1,P2の方向において、縦方向延設部22の外壁面22t(つまり、横方向中央延設部20に対面する側の外壁面)の延長線PCに対して矢印PF方向ではなく、矢印PD方向つまり横方向端延設部21側に位置している。この意味においても、前記した距離LWが長めに確保され、ヘッドレスト6の姿勢の安定性を高めることができる。更に、上差込開口31および下差込開口32を形成する部分の平坦化が進むため、上差込開口31および下差込開口32を打ち抜きで形成し易くなる。このような円弧を有する曲成輪郭27、曲成輪郭28を形成するには、プレス型の型面の曲率を調整して行うことができる。
【0033】
また、図4に示す曲成輪郭27、曲成輪郭28付近は曲げ加工の度合が高いので、曲成輪郭27、曲成輪郭28を構成する肉材料に対して矢印M2方向の引張力が作用し、曲成輪郭27、曲成輪郭28付近における肉厚が薄くなる傾向がある。この点本実施例によれば、曲成輪郭27、曲成輪郭28付近は上差込開口31および下差込開口32の形成により打ち抜かれて除去されるため、特に支障はない。
【0034】
以上説明したように本実施例によれば、保持フレーム部40の縦方向延設部22は、従来のブラケット200に相当する機能を奏するものであるが、保持フレーム部40に横方向中央延設部20および横方向端延設部21と共に一体的に曲げ加工により形成されているため、部品点数が削減される。更に、図18に示す従来技術と異なり、ブラケット200に相当する縦方向延設部22を保持フレーム部40に溶接で取り付けずとも良いため、溶接部における溶接欠陥および溶接歪みの問題が解消される。
【0035】
また本実施例によれば、縦方向延設部22はパイプの曲げ加工を経て形成されるため、加工硬化による強度増加を期待できる。同様に、横方向中央延設部20および横方向端延設部21についても、パイプの曲げ加工を経て形成されるため、加工硬化による強度増加を期待でき、保持フレーム部40を薄肉化したときであっても、ヘッドレスト6の姿勢の安定性を高めることができる。
【0036】
保持フレーム部40の縦方向延設部22では、上差込開口31の上方からヘッドレスト6の差込部60が差し込まれるため、上差込開口31の周縁部の強度を確保するために、上差込開口31の周縁部の薄肉化が抑制されることが好ましい。この点本実施例によれば、第2工程を実施する際に、曲成パイプ2の軸長方向の両方の端部24は直状にされている(図2参照)。この場合、直状にされている両方の端部24の肉材料を曲げ加工部分に矢印M1方向に向けて縦方向延設部22側に補充し易くなり、この結果、曲げ加工部分である縦方向延設部22の曲成輪郭27,28付近の肉厚が確保され易くなり、上差込開口31の周縁部の強度が確保される。
【0037】
なお、各工程は常温領域で行うことができるが、温間領域、熱間領域で行っても良い。素材パイプ1の中空部1aに粉末状または粒状の充填材を装填した状態で、曲げ加工しても良い。
【実施例2】
【0038】
図7〜図11は実施例2を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成および作用効果を有するため、図1および図2を準用する。以下、相違する部分を中心として説明する。第1工程では、図1に示すように、軸長方向に貫通する中空部1aをもつ直状をなす円筒形状の金属製の素材パイプ1を用意する。次に、第2工程では、プレス型を用い、素材パイプ1の軸長方向の中央部分をプレス加工またはハイドロフォーミング加工により曲げ加工して曲成部2m,2nを形成することにより、図2に示す曲成パイプ2を形成する。図2に示すように、曲成パイプ2は、軸長方向の中央域に配置され横方向に沿って延設されたパイプ状の横方向中央延設部20と、軸長方向の端領域に配置され横方向に沿って延設されたパイプ状の横方向端延設部21と、横方向中央延設部20と横方向端延設部21とを繋ぐと共にパイプ状の縦方向延設部22とを備えている。
【0039】
次に、保持フレーム部40の円筒形状の縦方向延設部22を、縦方向延設部22の断面において、非円形状つまり四角形状またはほぼ四角形状にプレス加工し、縦方向延設部22B(図7参照)とする。縦方向延設部22Bの上部および下部は閉鎖壁22iを有する。縦方向延設部22Bを有する曲成パイプ2の両方の端部24は直状とされている。
【0040】
第3工程では、図8に示すように、打抜型により、縦方向延設部22Bの閉鎖壁22iを打ち抜き、曲成パイプ2の縦方向延設部22Bのうち上部に上差込開口31を形成すると共に、下部に下差込開口32を形成する。上差込開口31および下差込開口32は互いに連通している。
【0041】
第3工程を実施した後に、図9に示すように、曲成部2kを形成し、曲成パイプ2の軸長方向の両方の端部24を下方向(矢印K1方向)に曲げる。このように曲成パイプ2の両方の端部24を曲げれば、ヘッドレスト保持フレーム4を車両等の座席に対して搭載させる搭載性が確保される。曲成パイプ2の両方の端部24に他の部材を接合させても良い。
【0042】
本実施例によれば、縦方向延設部22Bは断面で四角形状またはほぼ四角形状とされており、上差込開口31および下差込開口32は非円形状、つまり四角形状またはほぼ四角形状とされている。この結果、ヘッドレスト6の差込部60を上差込開口31及び下差込開口32に差し込んだとき、ヘッドレスト6の差込部60の断面形状または治具62の断面形状を四角形状とすれば、ヘッドレスト6の差込部60の空回転が防止され易くなり、ヘッドレスト6の差込部60と差込開口3との係合性が高められる。なお横方向中央延設部20の軸芯P1は横方向端延設部21の軸芯P2に対して側方にオフセットされて偏芯位置とされている。
【0043】
上記したように円筒形状の縦方向延設部22を、これの断面において非円形状、つまり四角形状またはほぼ四角形状にプレス加工し、縦方向延設部22Bとするにあたり、次のようにできる。この場合、図10および図11に示す曲げ加工装置72を用いる。曲げ加工装置72は、下型720と上型750とを備えている。下型720は、基体721と、基体721に対して挟持面723を有すると共に移動可能な2個一組の挟持型722と、曲成パイプ2から挟持型722を離す方向に付勢するバネで形成された付勢要素724とを有する。
【0044】
上型750は、パンチ面752をもつパンチ型753と、案内傾斜面754および係合面756を備える案内型755とを有する。図10に示すように、曲成パイプ2の円筒パイプ状の縦方向延設部22を挟持型722間に配置し、その状態で、上型750を下降することにより上型750と下型720とを接近させる。すると、曲成パイプ2の円筒形状の縦方向延設部22はパンチ型753のパンチ面752で加圧され、図11に示すように、四角パイプ形状の縦方向延設部22Bとして整形される。
【0045】
ここで、円筒パイプ状の縦方向延設部22の周長をLaとし、四角パイプ形状の縦方向延設部22Bの周長をLcとすると、LaはLcとほぼ同じになるように設定することが好ましい。Lc/La=0.8〜1.2の範囲内、0.85〜1.15の範囲内、殊に、0.9〜1.1の範囲内に設定することが好ましい。ヘッドレスト6の差込部60が差し込まれる四角パイプ形状の縦方向延設部22Bの肉厚が過剰に薄くなることを避けるためである。
【0046】
仮に、Lc/La=1とすると共に縦方向延設部22Bが正方形状である場合には、曲成パイプ2の円筒形状の縦方向延設部22の直径をDaとし、四角パイプ形状の縦方向延設部22Bの辺の長さをDcすると、基本的には、La=3.14×Daであり、Lc=4×Dcが成立する。従って、基本的には、Dc=(3.14/4)×Da=0.785×Daが成立する。従って、Lc/La=1とすると共に縦方向延設部22Bが正方形状である場合には、案内型755の傾斜案内面754の案内作用により、2個一組の挟持型722はこれの間隔Leが狭くなるように矢印X1方向に移動する。係合面756が挟持型722の規制面726に当接して規制するため、2個一組の挟持型722の間隔Leは一定に維持される。整形終了後に上型750を下型720から退避させると、付勢要素724のバネ力により、2個一組の挟持型722はこれの間隔Leが広くなるように矢印X2方向に移動する。
【0047】
なお本実施例によれば、場合によっては、円筒パイプ状の縦方向延設部22の周長Laよりも、四角パイプ形状の縦方向延設部22Bの周長Lcが短くなるように整形することもできる。この場合、縦方向延設部22Bを構成する壁部の肉厚を厚くさせるのに貢献できる。従ってLc/La=0.6〜0.99の範囲内、殊に0.8〜0.95の範囲内に設定することもできる。
【実施例3】
【0048】
図12〜15は実施例3を示す。本実施例は実施例2と基本的には同様の構成および作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図12に示すように、保持フレーム部40は、断面ほぼ四角形状の横方向中央延設部20と、断面円形状の横方向端延設部21と、断面ほぼ四角形状の縦方向延設部22Bとを備えている。図13に示すように、横方向中央延設部20は断面がほぼ四角形状であり、2個の第1辺部20aと、第1辺部20aに隣設する第2辺部20cとを有する。本実施例によれば、図14に示すように、縦方向延設部22Bの軸芯P3は上方に向かうにつれて座席の着座者側WKから離れるように角度θ傾斜している。
【0049】
図15に示すように、縦方向延設部22Bは断面がほぼ四角形状であり、2個の第1辺部22aと、第1辺部22aに隣設する第2辺部22cとを有する。差込開口3は、縦方向延設部22Bの上部に設けられた上差込開口31と、上差込開口31に連通するように縦方向延設部22Bの下部に設けられた下差込開口32とで形成されている。これによりヘッドレスト6の差込部60を矢印Y1方向に沿って差込開口3に差し込むことができる(図14参照)。図15に示すように、上差込開口31および下差込開口32は断面がほぼ四角形状とされている。
【実施例4】
【0050】
図16は実施例4を示す。本実施例は実施例2と基本的には同様の構成および作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図16に示すように、保持フレーム部40は、横方向中央延設部20と横方向端延設部21と縦方向延設部22Bとを備えている。横方向中央延設部20は横方向端延設部21よりも相対的に上側に位置している。
【実施例5】
【0051】
本実施例は実施例2と基本的には同様の構成および作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図17に示すように、保持フレーム部40は、横方向中央延設部20と横方向端延設部21と縦方向延設部22Bとを備えている。横方向端延設部21の両端部24は座席の座部側に延びるように、下方向に向けて長く延設されている。これによりヘッドレスト保持フレーム4の座席への搭載性が確保されている。
【実施例6】
【0052】
本実施例は実施例1,2,3と基本的には同様の構成および作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図5,図9,図12を準用する。本実施例によれば、保持フレーム部40は、横方向中央延設部20と横方向端延設部21と縦方向延設部22,22Bとを備えており、硬質樹脂で一体的に形成されている。
【0053】
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更して実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は車両等の座席等に装備されるヘッドレスト装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1に係り、素材パイプの斜視図である。
【図2】素材パイプを曲成した曲成パイプの斜視図である。
【図3】曲成パイプの縦方向延設部に差込開口を形成した状態の斜視図である。
【図4】曲成パイプの縦方向延設部に差込開口を形成する過程を示す構成図である。
【図5】ヘッドレスト保持フレームの斜視図である。
【図6】ヘッドレスト保持フレームにヘッドレストを取り付ける状態を示す斜視図である。
【図7】実施例2に係り、素材パイプを曲成した曲成パイプの斜視図である。
【図8】曲成パイプの縦方向延設部に差込開口を形成した状態の斜視図である。
【図9】ヘッドレスト保持フレームの斜視図である。
【図10】曲げ加工装置により曲成パイプに断面四角形状の縦方向延設部を整形する前の状態の断面図である。
【図11】曲げ加工装置により曲成パイプに断面四角形状の縦方向延設部を整形した後の状態の断面図である。
【図12】実施例3に係り、曲成パイプの主要部を示す正面図である。
【図13】図12の切断線W13−W13に沿った断面を示し、曲成パイプの横方向中央延設部の断面図である。
【図14】曲成パイプの主要部を示す側面図である。
【図15】図14の切断線W15−W15に沿った断面を示し、曲成パイプの縦方向延設部の断面図である。
【図16】実施例4に係り、ヘッドレスト保持フレームの斜視図である。
【図17】実施例5に係り、ヘッドレスト保持フレームの斜視図である。
【図18】従来技術に係り、ヘッドレスト保持フレームにヘッドレストを取り付ける状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
図中、1は素材パイプ、2は曲成パイプ、20は横方向中央延設部、21は横方向端延設部、22,22Bは縦方向延設部、3は差込開口、31は上差込開口、32は下差込開口、4はヘッドレスト保持フレーム、40は保持フレーム部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の頭部を支えるヘッドレストを保持する保持フレーム部を有するヘッドレスト保持フレームにおいて、
前記保持フレーム部は、中央域に配置され横方向に沿って延設された横方向中央延設部と、前記横方向中央延設部の両側に配置され横方向に沿って延設された横方向端延設部と、前記横方向中央延設部と前記横方向端延設部とを繋ぐと共に下方向または上方向に向けて延設された縦方向延設部とを曲げ加工により一体成形して備えており、
前記縦方向延設部は、ヘッドレストの差込部を差し込む差込開口を有することを特徴とするヘッドレスト保持フレーム。
【請求項2】
請求項1において、前記差込開口は、前記縦方向延設部の上部に設けられた上差込開口と、前記上差込開口に連通すると共に前記縦方向延設部の下部に設けられた下差込開口とを有することを特徴とするヘッドレスト保持フレーム。
【請求項3】
請求項1または2において、前記縦方向延設部は断面で円形状または非円形状をなしていることを特徴とするヘッドレスト保持フレーム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項において、前記保持フレーム部の前記横方向中央延設部は前記横方向端延設部よりも下側に配置されており、前記横方向中央延設部の軸芯に沿った断面において、前記保持フレーム部の前記縦方向延設部の上部側の曲成輪郭のうち前記横方向中央延設部側の端は、前記横方向端延設部の軸芯またはこれの延長線よりも上側に位置していることを特徴とするヘッドレスト保持フレーム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項において、前記保持フレーム部の前記横方向中央延設部は前記横方向端延設部よりも下側に配置されており、前記横方向中央延設部の軸芯に沿った断面において、前記保持フレーム部の前記縦方向延設部の下部側の曲成輪郭のうち前記横方向端延設部側の端は、前記横方向中央延設部の軸芯またはこれの延長線よりも下側に位置していることを特徴とするヘッドレスト保持フレーム。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項において、前記横方向中央延設部の周長をL1とし、前記横方向端延設部の周長をL2とし、前記縦方向延設部の周長をL3とすると、L1/L2=0.75〜1.25、L2/L3=0.75〜1.25,L1/L3=0.75〜1.25に設定されていることを特徴とするヘッドレスト保持フレーム。
【請求項7】
直状の素材パイプを用意する第1工程と、
前記素材パイプを曲げ加工することにより、中央域に配置され横方向に沿って延設された横方向中央延設部と、端領域に配置され横方向に沿って延設された横方向端延設部と、前記横方向中央延設部と前記横方向端延設部とを繋ぐと共に下方向または上方向に向けて延設された縦方向延設部とを備える曲成パイプを形成する第2工程と、
前記曲成パイプの前記縦方向延設部にヘッドレストの差込部を差し込む差込開口を形成する第3工程とを順に実施することを特徴とするヘッドスト保持フレームの製造方法。
【請求項8】
請求項7において、前記第2工程において、前記曲成パイプの軸長方向の両端部は直状にされていることを特徴とするヘッドレスト保持フレームの製造方法。
【請求項9】
請求項7または8において、前記第2工程の後または前記第3工程の後に、前記曲成パイプの軸長方向の両端部を下方向に曲げることを特徴とするヘッドレスト保持フレームの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−334118(P2006−334118A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162135(P2005−162135)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】