説明

ヘッドレスト

【課題】ヘッドレストフレームの剛性を向上させ、ヘッドレストを一体発泡成形するときに発泡剤が漏れるのを防止できるヘッドレストを提供する。
【解決手段】
本発明のヘッドレストHRは、シートバック20上方に配設されるもので、ヘッドレストHR内にヘッドレストフレーム30を設けたものにおいて、ヘッドレストフレーム30にヘッドレストステーガイド33の保持部34を設けたものである。また、ヘッドレストステーガイド33と、ヘッドレストフレーム30で、ヘッドレスト表皮35を挟み込むように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレストに係り、特にヘッドレスト内部にヘッドレストフレームを備えたヘッドレストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からヘッドレスト内部にヘッドレストフレームを備えた技術が知られている(例えば特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−155981号公報(図1、図12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の技術は、ヘッドレスト内部にヘッドレストフレームを備えた技術であるが、パッド部材を一体に発泡成形するときに、発泡樹脂がヘッドレストフレームに入り込むのを防止することが開示されているものである。つまり、ヘッドレストの剛性向上については、言及するところがなく、例えば、剛性向上のために、ヘッドレストフレームを肉厚にすると、ヘッドレストの乗員フィーリングが悪化する恐れがあり、ヘッドレストフレームの大きさを変えずに剛性を高める技術が望まれていた。
【0005】
本発明の目的は、内部にヘッドレストフレームを備えたヘッドレストにおいて、ヘッドレストフレームの剛性を向上させたヘッドレストを提供することにある。
本発明の他の目的は、ヘッドレスト表皮とパッド部材とヘッドレストフレームを一体発泡成形するときに発泡剤が漏れるのを防止できるシール性を確保した構造のヘッドレストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明のヘッドレストによれば、車両用座席のシートバック上方に配設されるヘッドレストであって、該ヘッドレスト内にヘッドレストフレームを設けたものにおいて、前記ヘッドレストフレームにヘッドレストステーガイドの保持部を設けたことを特徴とすること、により解決される。
このように、ヘッドレストフレームにヘッドレストステーガイドの保持部を設けたので、ヘッドレストフレームの剛性を向上させることが可能となる。
【0007】
また、前記ヘッドレストはパッド部材と該パッド部材を被覆するヘッドレスト表皮が備わっており、前記ヘッドレストステーガイドと、前記ヘッドレスト内部の前記ヘッドレストフレームで、前記ヘッドレスト表皮を挟み込むように構成すると好適である。
このように、前記ヘッドレストステーガイドと、前記ヘッドレスト内部の前記ヘッドレストフレームで、前記ヘッドレスト表皮を挟み込むことで、特別な部材や追加部品を用いないで、ヘッドレスト表皮とパッド部材とヘッドレストフレームを一体発泡するときに、発泡剤の漏れるのを防止できるシール構造とすることが可能となる。
【0008】
このとき、前記ヘッドレストフレームは2部材で構成され、2部材からなる前記ヘッドレストフレームの合せ面と前記ヘッドレストステーガイドの挿入用の開口が交差するように構成され、前記挿入用の開口を形成する面をシール面として、シール面全体が一体成形された構成であると好適である。
このように、前記ヘッドレストフレームの合せ面と前記ヘッドレストステーガイドの挿入用の開口が交差するように構成され、前記挿入用の開口を形成する面をシール面として、シール面全体が一体成形された構成としているので、前記ヘッドレストステーガイドと前記ヘッドレストフレームで、前記ヘッドレスト表皮を挟み込むことが密にできるので、ヘッドレスト表皮とパッド部材とヘッドレストフレームを一体発泡するときに、発泡剤がヘッドレスト表皮外に漏れるのを防止するためのシール性をより向上させることが可能となる。
【0009】
また上記いずれの場合にも、前記ヘッドレストフレームは2部材で構成され、2部材のうち前記ヘッドレストの後ろ側は金属で構成され、前記ヘッドレストの前側は樹脂で構成され、前記ヘッドレストステーガイドの前記保持部は前記ヘッドレストフレームの後ろ側の金属側に形成され、前記ヘッドレストフレームのヘッドレストステーガイドの挿入用の開口の周囲を環状にして、全周一体形成されるように構成されると、より好適である。
このように構成すると、後側の金属フレームにヘッドレストステーガイドの保持部を取り付けたことで、剛性が向上する構成とすることができ、同時に、前側は樹脂で構成しているため、乗員のフィーリングの低減を抑制し、ヘッドレストステーガイドの挿入口を環状にして、全周一体形成したため、前側フレームの剛性も向上させることが可能となる。
【0010】
また、前記ヘッドレストフレームは、開口が形成された自由端を下向きの逆U字形状とされ、前記開口に段部を設けた構成にすると好適である。
このように逆U字形状に構成すると、ヘッドレストフレームの剛性の向上を図ることが可能であると共に、ヘッドレスト表皮とパッド部材とヘッドレストフレームを一体発泡成形するときにおいて、発泡剤が回り込み易く、生産性向上する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載のヘッドレストによれば、内部にヘッドレストフレームを備えたヘッドレストにおいて、ヘッドレストフレームの剛性を向上させることが可能となる。
請求項2に記載のヘッドレストによれば、ヘッドレスト表皮とパッド部材とヘッドレストフレームを一体発泡成形するときに、特別な部材や追加部材を用いないで、ヘッドレスト表皮外に発泡剤が漏れるのを防止するためのシール性を確保することが可能となる。
請求項3に記載のヘッドレストによれば、ヘッドレスト表皮とパッド部材とヘッドレストフレームを一体発泡成形するときに、発泡剤がヘッドレスト表皮外に漏れるのを防止するためのシール性をより向上させることが可能となる。
請求項4に記載のヘッドレストによれば、ヘッドレストフレームの剛性が向上すると同時に、乗員のフィーリングの低減を抑制することが可能となる。
請求項5に記載のヘッドレストによれば、ヘッドレストフレームの剛性の向上を図ることが可能であると共に、ヘッドレスト表皮とパッド部材とヘッドレストフレームを一体発泡成形するときにおいて、発泡剤が回り込み易く、生産性向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るヘッドレストを用いた車両用シートの斜視図である。
【図2】本発明に係るヘッドレストを説明する概略正面図である。
【図3】本発明に係るヘッドレストを説明する概略側面図である。
【図4】ヘッドレストフレームを分解した概略斜視図である。
【図5】ヘッドレストフレームの概略斜視図である。
【図6】ヘッドレストフレームの一方の内側からみた説明図である。
【図7】ヘッドレストフレームの他方の内側からみた説明図である。
【図8】ヘッドレストの組み付けを説明する概略分解斜視図である。
【図9】ヘッドレストの底面からいた説明図である。
【図10】ヘッドレストを支持するヘッドレストステー及び機構を説明する要部説明図である。
【図11】ヘッドレストを支持する機構を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることはもちろんである。
【0014】
図1乃至図11は、本発明に係るヘッドレストを示すもので、図1はヘッドレストを用いた車両用シートの斜視図、図2はヘッドレストを説明する概略正面図、図3はヘッドレストを説明する概略側面図、図4はヘッドレストフレームを分解した概略斜視図、図5はヘッドレストフレームの概略斜視図、図6はヘッドレストフレームの一方の内側からみた説明図、図7はヘッドレストフレームの他方の内側からみた説明図、図8はヘッドレストの組み付けを説明する概略分解斜視図、図9はヘッドレストの底面からいた説明図、図10はヘッドレストを支持するヘッドレストステー及び機構を説明する要部説明図、図11はヘッドレストを支持する機構を示す斜視図である。
【0015】
先ずヘッドレストHRを取り付けた車両用シートS1の構成について説明すると、本実施形態では、右側(運転席側)の車両用シートS11と、左側(助手席側)の車両用シートS12とに分かれており、各車両用シートS11,12は、シートクッション10と、シートバック20と、ヘッドレストHRとを備えている。右側の車両用シートS11と左側の車両用シートS12とは相違するものの、ヘッドレストHRに関して言えば、両車両用シートS11,S12は共通する。そのため、以下の説明では、右側の車両用シートS11のヘッドレストHRのみを例に挙げて説明する。
【0016】
本実施形態に係るヘッドレストHRは、シートバック20の上方に設けられており、図2〜図8に示すように、後述する開口が形成された自由端を下向きとした逆U字状のヘッドレストフレーム30(後フレーム31,前フレーム32)と、ヘッドレスト表皮35との間にパッド部材38が充填されて形成されている。このように、ヘッドレストフレーム30(後フレーム31,前フレーム32)を逆U字形状に構成すると、ヘッドレストフレーム30の剛性の向上を図ることが可能であり、ヘッドレスト表皮35とパッド部材38とヘッドレストフレームを一体発泡成形するときにおいて、発泡剤が回り込み易く、生産性向上する。
【0017】
ヘッドレスト表皮35は袋状に形成されており、その底面には、液状の発泡樹脂を注入する発泡注入口である開口35aと、後述するヘッドレストステー37を挿着するための2つの穴35b,35bが形成されている。ヘッドレスト表皮35の材質は、織布、不織布、合成樹脂その他公知の材料からなるものである。このように、ヘッドレスト表皮35には、ヘッドレストステーガイド33の末端部が、ヘッドレスト表皮35の外側に位置するように配設されるものである。
【0018】
また、ヘッドレストHRは、ヘッドレスト表皮35内に、ヘッドレスト表皮35に設けられた開口35aからヘッドレストフレーム30(後フレーム31,前フレーム32)を配置して、不図示の型に配置し、開口35aから発泡剤を充填して一体成形するもので、ヘッドレストHRは、ヘッドレスト表皮35とヘッドレストフレーム30(後フレーム31,前フレーム32)と、ウレタン等からなるパッド部材38が一体として成形されている。
【0019】
本実施形態のヘッドレストフレーム30(後フレーム31,前フレーム32)は、図4〜図7で示されるように、2つの部材(後フレーム31,前フレーム32)から構成されており、これら2つの部材(後フレーム31,前フレーム32)は後述するように、合わせ面(図5参照)である縦壁を用いて接合面及び嵌合して、接合されるように構成されている。
【0020】
つまり、ヘッドレストフレーム30を構成する2部材(後フレーム31,前フレーム32)のうちヘッドレストHRの後ろ側は金属で構成された後フレーム31、ヘッドレストHRの前側は合成樹脂で構成された前フレーム32とから構成され、2つの部材である後フレーム31と前フレーム32で中空の最中状にして形成されている。このため、剛性と軽量化を図ることができる。そして、逆U字状のヘッドレストフレーム30の両側にある脚部31b,32bを構成する部分は中空状となっており、この内部には中空棒状のヘッドレストガイド33を収容する空間が形成されている。ヘッドレストガイド33は、後述する保持部34で保持されて収容され、ヘッドレストフレーム30の自由端側から挿入されて、進退自在に構成されている。
【0021】
後フレーム31は、公知の金属製からなるもので、図4及び図6で示すように、上部の支持面部31aと、支持面部31aから両側に伸びた脚部31b,31bとから形成され、自由端を下向きとした逆U字状をしており、自由端を除いて外周には合わせ面である縦壁31cが形成されている。図6において支持面部31aの両側で脚部31bの基端より支持面部31a側には、次に説明する前フレーム32と接合するためのビス孔31dが形成されている。このビス孔31dは周囲が内側に盛り上がった盛り上がり部31eを備えている。
【0022】
換言すれば、後フレーム31のビス孔31dは、外面からみると、図5で示すように、凹部31fとなっている。このように、ヘッドレストフレーム30の後フレーム31に形成されたビス孔31dに、ビス等の接合部材36を取り付ける面が凹部31fになっていることにより、ビス等の接合部材36がパッド部材38側に張り出さず、ビス等の接合部材36によってパッド部材38の損傷を抑制することが可能となる。
【0023】
上記ヘッドレストフレーム30には、ヘッドレストステー37を挿着するときのヘッドレストステーガイド33が配設されるが、このヘッドレストステーガイド33はヘッドレストフレーム30内に設けられた保持部34で保持されるように構成されている。この保持部34は、図4及び図6で示すように、金属製の板体を折り曲げて断面ロ字状の筒のような形状となっており、ヘッドレストフレーム30の後フレーム31(金属から構成)に溶接等の固着部34aにより固着されて形成されている。このため保持部34が後フレーム31と溶接等の固着部34aで接合されることで、ヘッドレストフレーム30自体の剛性を向上させることが可能となる。また、ヘッドレストステーガイド33の保持部34の溶接面は、折り曲げてロ字状にしており、平らに形成しているので、溶接を行い易く、後フレーム31と保持部材34とが強固に溶接されて剛性を向上させることが可能となる。
【0024】
一方、ヘッドレストフレーム30の前フレーム32は、ポリプロピレン等の合成樹脂製のものであり、上部の支持面部32aと、この支持面部32aから両側に伸びた脚部32b,32bとから形成されて、自由端を下向きとした逆U字状をしており、自由端を除いて外周には嵌合面としての縦壁32cが形成されている。U字状を形成している前フレーム32の外周側の合わせ面である当接面32nには、図7で示すように、上述した後フレーム31の縦壁31cと当接するように外周平面状に形成されている。また脚部32bを形成する内周側の縦壁32cは、支持面部32a側の縦壁32c1と、この縦壁32c1から若干の距離を離して形成された縦壁32c2とから構成されており、これら縦壁32c1と縦壁32c2との間に、後フレーム31の脚部31bの内側の縦壁31cが嵌め込まれるように構成されている。
【0025】
そして、前フレーム32の支持面部32aには、上記後フレーム31のビス孔31dに整合する位置に、後フレーム31と接合するための接合部である接合リブ部32dが形成されている。この接合リブ部32dには、後フレーム31のビス孔31dからビス等の接合部材36を入れて組み付けるためのものであり、本実施形態では誘導穴32eが形成されている。
【0026】
本実施形態では、前フレーム32の脚部32bの端部(下端部)には、図7で示すように、前フレーム32と一体成形されたシール面32hが形成されている。このシール面32hには、ヘッドレストステーガイド33の挿入用の開口32iが形成され、この開口32iを形成する面の周囲を環状にして形成されている。これにより、開口32iの周囲で、ヘッドレストステーガイド33との間でヘッドレスト表皮35を挟み、シールすることを確実に行えるように構成できる。また全周一体形成にしたため、前側フレーム32の剛性も向上させることが可能となる。
【0027】
また、ヘッドレストフレーム30の合せ面である縦壁32c及び当接面32nとヘッドレストステーガイド33の挿入用の開口32iは、交差するように構成されている。そして、開口32iは段部32jを形成している。つまり、前フレーム32の自由端部にはシール面32hを形成し、同時に開口32iが形成されるが、これらは段部32jに設けられることになる。このように、段部32jを設けることにより、ヘッドレストフレーム30としての剛性を向上させることが可能となる。
【0028】
本実施形態では、前フレーム32の脚部32bの自由端側で、シール面32hの上部に、図4及び図7で示すように、脚部の内側に向けた突出壁32kを形成し、嵌合誘導部としている。このように構成する、嵌合の際に精密に位置合わせを行なわないでも、概略の適当な位置で嵌合するときの補助とすることが可能となる。
【0029】
また、図4で示すように、前フレーム32の段部32jの内側上面で、後フレーム31との嵌合面に対して直交する方向にリブ32mを設けている。このように、リブ32mを設けると、後フレーム31と前フレーム32との嵌合の際に、後フレーム31の嵌合部でリブ32mを潰すことが可能となり、誤差を吸収することができるだけでなく、ガタツキ防止とすることができる。
【0030】
そして、本実施形態では、後フレーム31に合わせて接合リブ部32dを2箇所設けており、この2箇所の接合リブ部32dが、図4及び図7で示すように、連結リブ32fで連結されている。このように、前フレーム32と後フレーム31を、それぞれの縦壁31c、32cで嵌合させるが、樹脂からなる前フレーム32に接合リブ部32dを複数設け、接合リブ部32dを連結リブ32fで連結しているので、接合リブ部32dの取り付け位置という剛性の高い箇所を、連結リブ32fで連結することができ、ヘッドレストフレーム30自体の剛性の向上を図ることが可能である。なお、本実施形態では、接合リブ部32dを2箇所としたが、これにこだわる必要はなく、適宜、複数としてもよい。
【0031】
また本実施形態では、支持面部32aには、上述した連結リブ32fと直交するように、直交リブ32gが少なくとも一つ形成されている。本実施形態では、直交リブ32gを4本設けているが、1本以上あればよく、これに限ることはない。このように構成することにより、よりヘッドレストフレーム30の剛性を向上させることができる。
【0032】
そして、ヘッドレストフレーム30を構成する後フレーム31と前フレーム32の嵌合による組付けは、前フレーム32の内側にボスからなる接合リブ部32dを設け、内側に突出させ、ヘッドレストフレーム30の接合部材36を取り付ける方向を後フレーム31から取り付けるようにしている(つまり後フレーム31から前フレーム32に向かって接合する)。このように構成することにより、乗員頭部側に接合部材36などの突起物があることによるフィーリング悪化を抑制することが可能となる。
【0033】
ヘッドレストガイド33は、図8で示されるように、保持部34で保持される中空状の摺動体33aと、端部側に形成された下端フランジ部33bとから構成されている。本実施形態の摺動体33aは、保持部34の形状に合わせるように、保持部より若干小さい断面ロ字状に形成されている。このように、摺動部33aの形状は、保持部34の形状に合わせることが好ましい。
【0034】
本実施形態によれば、金属からなる後フレーム31にヘッドレストステーガイド33の保持部34を取り付けたことで、剛性が向上する構成とすることができ、同時に、前側は樹脂からなる前フレーム32で構成しているため、乗員のフィーリングの低減を抑制することが可能となる。
【0035】
一体発泡で、ヘッドレストHRを成形するには、前記したようにヘッドレストフレーム30を形成し、開口35aから逆U字状のヘッドレストフレーム30の両側にある脚部31b,32bを構成する部分から袋状のヘッドレストフレームに配置する。そしてヘッドレストステーガイド33の下端フランジ部33bと、ヘッドレストHR内部のヘッドレストフレーム30のシール面32hで、ヘッドレスト表皮35を挟み込むようにする。このようにすると、特別な部材や追加部品を用いないで、ヘッドレスト表皮35とパッド部材38とヘッドレストフレーム30を一体発泡するときに、発泡剤がヘッドレスト表皮35から漏れるのを防止できる。特に、シール面32hと下端フランジ部33bでヘッドレスト表皮30を挟み込むことを密にすることができるので、発泡剤がヘッドレスト表皮外に漏れるのを防止するためのシール性をより向上させることが可能となる。
【0036】
以上のような構成のヘッドレストHRにおいて、ヘッドレストガイド33がヘッドレストフレーム30の脚部31b,32bで構成される部分内で最も後退した位置に位置している状態(つまり、ヘッドレストHR内に収納された状態)では、ヘッドレストHRのヘッドレスト表皮35のうち穴35b,35bの周りの部分が、ヘッドレストフレーム30のシール面32hとヘッドレストガイド33の下端フランジ部33bとに挟まれるようになっている。
【0037】
また、本実施形態において、ヘッドレストHRは、金属棒からなる一対のヘッドレストステー37(図10及び図11参照)がヘッドレストガイド33内に挿入された状態でヘッドレストステー37に支持され、さらに、各ヘッドレストステー37は、後述のヘッドレスト回動機構50のケーシング51に回動自在に支持されている。そして、ヘッドレストHRは、ヘッドレスト回動機構50により、シートバック20の上方で起立した状態から前方に約90度倒れた状態になるまで回動することが可能である。
【0038】
次に、ヘッドレスト回動機構50について説明する。
ヘッドレスト回動機構50は、図11に示すように、ケーシング51と、付勢バネ52と、ロック部材53と、スライド部材54と、を有する。
ヘッドレスト回動機構50は、ヘッドレストステー37を前方に回動させることにより、ヘッドレストHRを前方に倒す機構である。このヘッドレスト回動機構50は、不図示の樹脂カバーに覆われた状態でシートバックフレーム40の前側上部に設けられている。
【0039】
ケーシング51は、ヘッドレスト回動機構50の筐体をなし、本実施形態では略矩形状の金属プレートを重ね合せて構成されており、その内部にはロック部材53やスライド部材54が収容されている。ケーシング51には、穴55aが形成された複数の取付部55が外側に延出して形成されており、この取付部55とシートバックフレーム40がビスBSで固定されている。また、ケーシング51は、上部にて、ヘッドレストステー37を回動可能に支持している。付勢バネ52は、ヘッドレストステー37を前方に付勢する付勢部材の一例であり、ケーシング51の裏面(後面)側に設けられている。
【0040】
ロック部材53は、付勢バネ52の付勢力に抗してヘッドレストステー37を起立状態で維持しておくためにヘッドレストステー37と係合する金属片部材である。ここで、起立状態とは、ヘッドレストHRが起立してシートバック20の上方に位置している際のヘッドレストステー37の配置状態を意味している。
【0041】
ロック部材53の構成についてより詳しく説明すると、図11に示すように、ヘッドレストステー37は、車両用シートS1の高さ方向(換言すると、シートバック20の上下方向)に沿って伸びた鉛直部37aと、鉛直部37aの下部に隣接し左右方向(換言すると、シートバック20の幅方向)に沿って延びた水平部37bと、水平部37bの端部には略扇状のピラー側係合部37cを有する。そして、ロック部材53は、ヘッドレストステー37側係合部37cに形成された切欠き37dに嵌まり込むことで、ヘッドレストステー37と係合してヘッドレストステー37を起立状態に維持する。
【0042】
さらに、ロック部材53は、ケーシング51内で揺動自在に支持されており、ケーシング51の外に一部を露出させてヘッドレストステー37側係合部37cの切欠き37dに嵌め込むことが可能な位置(係合位置)と、露出させていた部分をケーシング51内に収めて切欠き37dから脱した位置(解除位置)との間を移動する。
【0043】
スライド部材54は、ケーシング51内に収容された長尺体であり、ロック部材53を揺動させるためにシートバック20の幅方向に沿ってスライド移動するものである。スライド部材54は、通常時には、ロック部材53を係合位置に至らせるポジションにある。そして、スライド部材54がその長手方向一端側にスライドすると、ロック部材53を解除位置に至らせるようになる。
【0044】
以上のような構成のヘッドレスト回動機構50において、ロック部材53が係合位置にてヘッドレストステー37のヘッドレストステー37側係合部37cと係合している間は、付勢バネ52の付勢力に抗してヘッドレストステー37を起立状態で維持し、これにより、ヘッドレストHRが着座位置に保持されるようになる。
一方、スライド部材54のスライド移動によってロック部材53が係合位置から解除位置へ揺動すると、ロック部材53とヘッドレストステー37側係合部37cとの係合が解除されると、付勢バネ52の付勢力によりヘッドレストステー37が前方に回動し、これに伴ってヘッドレストHRが前方に倒れるようになる。
【符号の説明】
【0045】
S1 車両用シート
S11 車両用シート
S12 車両用シート
10 シートクッション
20 シートバック
HR ヘッドレスト
30 ヘッドレストフレーム
31 後フレーム
31a 支持面部
31b 脚部
31c 縦壁
31d ビス孔
31e 盛り上がり部
31f 凹部
32 前フレーム
32a 支持面部
32b 脚部
32c 縦壁
32c1 縦壁
32c2 縦壁
32d 接合リブ部
32e 誘導穴
32f 連結リブ
32g 直交リブ
32h シール面
32i 開口
32j 段部
32k 突出壁
32m リブ
32n 当接面
33 ヘッドレストステーガイド
33a 摺動体
33b 下端フランジ部
34 保持部
34a 固着部
35 ヘッドレスト表皮
35a 開口
35b 穴
36 接合部材
37 ヘッドレストステー
37a 鉛直部
37b 水平部
37c 係合部
37d 切欠き
38 パッド部材
40 シートバックフレーム
50 ヘッドレスト回動機構
51 ケーシング
52 付勢バネ
53 ロック部材
54 スライド部材
55 取付部
55a 穴
BS ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用座席のシートバック上方に配設されるヘッドレストであって、該ヘッドレスト内にヘッドレストフレームを設けたものにおいて、
前記ヘッドレストフレームにヘッドレストステーガイドの保持部を設けたことを特徴とするヘッドレスト。
【請求項2】
前記ヘッドレストはパッド部材と該パッド部材を被覆するヘッドレスト表皮が備わっており、前記ヘッドレストステーガイドと、前記ヘッドレスト内部の前記ヘッドレストフレームで、前記ヘッドレスト表皮を挟み込むことを特徴とする請求項1記載のヘッドレスト。
【請求項3】
前記ヘッドレストフレームは2部材で構成され、2部材からなる前記ヘッドレストフレームの合せ面と前記ヘッドレストステーガイドの挿入用の開口が交差するように構成され、前記挿入用の開口を形成する面をシール面として、シール面全体が一体成形された構成であることを特徴とする請求項2記載のヘッドレスト。
【請求項4】
前記ヘッドレストフレームは2部材で構成され、2部材のうち前記ヘッドレストの後ろ側は金属で構成され、前記ヘッドレストの前側は樹脂で構成され、前記ヘッドレストステーガイドの前記保持部は前記ヘッドレストフレームの後ろ側の金属側に形成され、
前記ヘッドレストフレームのヘッドレストステーガイドの挿入用の開口の周囲を環状にして、全周一体形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のヘッドレスト。
【請求項5】
前記ヘッドレストフレームは、開口が形成された自由端を下向きの逆U字形状とされ、前記開口に段部を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のヘッドレスト。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−214127(P2012−214127A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81070(P2011−81070)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【Fターム(参考)】