説明

ヘッド・サスペンションの配線構造及び製造方法

【課題】インターリーブ配線でありながら全体の配線幅増を抑制し、設計の自由度を確保することを可能とするヘッド・サスペンションの配線構造及び製造方法を提供する。
【解決手段】記録媒体に対して情報の記録・再生を行うためのヘッド部21に負荷荷重を与えるロード・ビーム3に取り付けられヘッド部21に接続した記録側及び再生側の記録側配線19a及び再生側配線を有しヘッド部21を支持するフレキシャ7を備えている。フレキシャ7は、記録側配線19a及び再生側配線19bを導電性薄板の基材17にベース絶縁層35を介して積層配索したものである。記録側配線19aは、両極の配線部27,29に両端側が導通して相互に他極の配線部29,27に対し、ベース絶縁層35に積層した中間絶縁層37を介して積層され、交互配置された対向部43a,45aを有する両極間の積層交互配線部31を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ等の情報処理装置に内蔵されるハード・ディスク・ドライブのヘッド・サスペンションに供されるヘッド・サスペンションの配線構造及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハード・ディスク・ドライブ(HDD「Hard Disk Drive」)は高容量化、高転送速度化の一途をたどり、さらに低消費電力化が強く求められている
ここで高速制御に重要な広帯域化要求に対応する手法としてはインターリーブ配線(交互配線)化が特許文献1として開示されている。このインターリーブ配線は、例えば図22、図23のように、例えば記録側配線101に適用され、ベース絶縁層に対して交互配置された両極の第1,第2の交互配線部101aa,101ab,101ba,101bbを有している。第1,第2の交互配線部101aa,101ab,101ba,101bbは、同幅に形成されている。第1,第2の交互配線部101aa,101ab,101ba,101bbの各一方の端部は、迂回配線101c,101dにより相互に接続され、各他方の端部は、ブリッジ101e,101fにより交互配線部101aa,101ab間、交互配線部101ba,101bb間を跨ぐように接続されている。
【0003】
このようなインターリーブ配線は、同一平面で交互配置されるため、全体の配線幅が極端に広くなり、設計の自由度が制限されるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−124837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、インターリーブ配線は、全体の配線幅が極端に広くなるため、設計の自由度が制限される点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のヘッド・サスペンションの配線構造は、インターリーブ配線でありながら全体の配線幅増を抑制し、設計の自由度を確保することを可能とするため、記録媒体に対して情報の記録・再生を行うためのヘッド部に負荷荷重を与えるロード・ビームに取り付けられ、前記ヘッド部に接続した記録側及び再生側の記録側配線及び再生側配線を有し前記ヘッド部を支持するフレキシャを備え、少なくとも前記記録側配線は、両極の配線部に両端側が導通して相互に他極の配線部に対し電気絶縁層を介し積層されて交互配置された対向部を有する両極間の積層交互配線部を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明のヘッド・サスペンションの配線構造の製造方法は、前記両極の配線部を配索する配線配索工程と、前記配線部に対し電気絶縁層を積層すると共に前記電気絶縁層を貫通してその表面に露出する導体部を前記両極の配線部側に形成する絶縁積層工程と、前記電気絶縁層に対し前記両極間の積層交互配線部側を積層配索して前記各配線部側の導体部にそれぞれ導通接続させる交互配線配索工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のヘッド・サスペンションの配線構造は、上記構成であるから、インターリーブ配線を積層により得ることができ、全体の配線幅増を抑制し、設計の自由度を確保することができる。
【0009】
本発明のヘッド・サスペンションの配線構造の製造方法は、上記構成であるから、積層構造のインターリーブ配線を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ヘッド・サスペンションの平面図である。(実施例1)
【図2】図1のII−II線矢視に対応し、記録側配線を積層交互配線部と共に示す積層構造の断面図である。(実施例1)
【図3】記録側配線を積層交互配線部と共に示す積層構造の概念的な斜視図である。(実施例1)
【図4】記録側配線の積層交互配線部の製造過程を示し、(A)は、配線配索工程、(B)は、絶縁層積層工程、(C)は、交互配線配索工程、(D)は、カバー絶縁層積層工程の断面図である。(実施例1)
【図5】記録側配線の積層交互配線部の製造過程を示し、(A)は、配線配索工程、(B)は、絶縁層積層工程、(C)は、交互配線配索工程、(D)は、カバー絶縁層積層工程を示す配線のみの斜視図である。(実施例1)
【図6】記録側配線の積層交互配線部の製造過程を示す変形例であり、(A)は、配線配索工程、(B)は、絶縁層積層工程、(C)〜(E)は、交互配線配索工程、(F)は、カバー絶縁層積層工程を示す断面図である。
【図7】記録側配線の積層交互配線部の製造過程を示す変形例であり、(A)は、配線配索工程、(B)は、絶縁層積層工程、(C)は、交互配線配索工程、(D)は、カバー絶縁層積層工程を示す断面図である。
【図8】(A)は、配線の伝送損失の周波数特性を示す特性図、(B)は、(A)の一部を拡大して示す特性図である。(実施例1)
【図9】図2に対応し、記録側配線を積層交互配線部と共に示す積層構造の断面図である。(実施例1の変形例1)
【図10】積層交互配線部及び配線部の配線幅の比率と部分的な周波数の落ち込みの大きさとの関係を示す特性図である。(実施例1の変形例1)
【図11】図2に対応し、記録側配線を積層交互配線部と共に示す積層構造の断面図である。(実施例1の変形例2)
【図12】積層交互配線部及び配線部の配線幅の比率と部分的な周波数の落ち込みの大きさとの関係を示す特性図である。(実施例1の変形例2)
【図13】図2に対応し、記録側配線を積層交互配線部と共に示す積層構造の断面図である。(実施例1の変形例3)
【図14】積層交互配線部及び配線部の配線幅の比率と部分的な周波数の落ち込みの大きさとの関係を示す特性図である。(実施例1の変形例3)
【図15】ウインドウの有無に係り、(A)は、ウインドウ無し、(B)は、50%レシオ・ウインドウ、(C)は、100%レシオ・ウインドウの存在を示す斜視図である。(実施例1)
【図16】ウインドウ・レシオと部分的な周波数の落ち込みの大きさとの関係を示す特性図である。(実施例1)
【図17】配線比率とバンド幅との関係のグラフである。(実施例1)
【図18】配線比率とインピーダンスとの関係のグラフである。(実施例1)
【図19】インピーダンスとバンド幅との関係のグラフである。(実施例1)
【図20】図2に対応して示し、記録側配線を積層交互配線部と共に示す積層構造の断面図である。(実施例2)
【図21】記録側配線の積層交互配線部の製造過程を示し、(A)は、配線配索工程及び絶縁層積層工程、(B)〜(D)は、交互配線配索工程を示す断面図である。
【図22】積層交互配線部を示す斜視図である。(従来例)
【図23】積層交互配線部の回路図である。(従来例)
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
インターリーブ配線でありながら全体の配線幅増を抑制し、設計の自由度を確保することを可能にするという目的を、積層構造により実現した。
【実施例1】
【0012】
[ヘッド・サスペンション]
図1は、本発明実施例1を適用したヘッド・サスペンションの平面図である。
【0013】
図1のように、ヘッド・サスペンション1は、ロード・ビーム3と、ベース部5と、フレキシャ7とを備えている。
【0014】
前記ロード・ビーム3は、記録媒体に対して情報の記録・再生を行うためのヘッド部21に負荷荷重を与えるもので、剛体部9とばね部11とを備えている。剛体部9は、例えばステンレス鋼で形成され、その厚みは比較的厚く、例えば100μm程度に設定されている。
【0015】
ばね部11は、剛体部9とは別体に形成されたもので、例えばばね性のある薄いステンレス鋼圧延板からなり、剛体部9よりもそのばね定数が低く、精度の高い低ばね定数を有している。このばね部11の板厚は、例えば、t=40μm程度に設定されている。ばね部11は、その一端部が前記剛体部9の後端部にレーザ溶接などによって固着されている。ばね部11の他端部には、補強プレート13が一体に設けられている。
【0016】
ベース部5は、ベース・プレート15を有している。このベース・プレート15は補強プレート13に重ね合わされ、レーザ溶接などによって相互に固着されている。
【0017】
従って、ベース・プレート15が補強プレート13により補強されてベース部5が構成されている。このベース部5が、キャリッジのアームに取り付けられ、軸回りに回転駆動される。
【0018】
フレキシャ7は、ばね性を有する薄いステンレス鋼圧延板(SST)などの厚さ15〜30μm程度の導電性薄板で形成した基材17上に、後述するベース絶縁層を介して配線パターン19を形成している。
【0019】
配線パターン19は、記録側及び再生側の記録側配線19a及び再生側配線19bを備えている。記録側配線19a及び再生側配線19b共に両極の配線部を備え、記録側配線19aは、基材17上に、記録側配線19a及び後述する積層交互配線部を備えてインターリーブ配線としている。
【0020】
このフレキシャ7は、レーザ溶接などによってロード・ビーム3の剛体部9に固着して取り付けられている。配線パターン19の一端は、ヘッド部21に導通接続され、他端はベース部5側外に延設されている。
【0021】
フレキシャ7には、タング23が片持ち状に設けられ、このタング23に、ヘッド部21のスライダが装着支持されている。
【0022】
ヘッド部21の記録用の素子は、例えば一般的な誘導型磁気変換素子である。同再生用の素子は、MR素子、GMR素子、或いはTuMR素子等が用いられ、再生読み取り感度が高くなっている。
【0023】
[フレキシャの積層構造]
図2は、図1のII−II線矢視に対応し、記録側配線を積層交互配線部と共に示す積層構造の断面図、図3は、記録側配線を積層交互配線部と共に示す積層構造の概念的な斜視図である。
【0024】
本実施例のヘッド・サスペンション1の配線構造において、フレキシャ7の記録側配線19aは、基材17上に、積層構造の両極の配線部27,29及び積層交互配線部31を備えている。
【0025】
基材17には、幅H、長さL(図13)の窓(ウインドウ)33が貫通形成されている。窓33は、インピーダンスを高め、広帯域とするためのものである。窓33の幅Hは、記録側配線19aの配線幅よりも大きく設定され、配線方向の長さLは、積層交互配線部31に対応した位置に備えられている。この窓33の積層交互配線部31に対する開口率の調整によりインピーダンスと帯域幅との調整を行うことができる他、後述の周波数の部分的な落ち込み(Dip)を調整することができる。本実施例では、開口率100%(図13)に設定されている。
【0026】
基材17には、ベース絶縁層35が積層されている。ベース絶縁層35は、電気絶縁層である可撓性絶縁樹脂のポリイミドで形成され、厚さ5〜20μm程度に形成されている。このベース絶縁層35を介して両極の配線部27,29が基材17に積層配索されている。
【0027】
ベース絶縁層35には、中間絶縁層37が積層されている。中間絶縁層37は、電気絶縁層である可撓性絶縁樹脂のポリイミドで形成されている。両極間の積層交互配線部31は、中間絶縁層37を介して積層されている。この積層交互配線部31の配線幅は、両極の配線部27,29の配線幅と同一に形成されている。積層交互配線部31は、両極の配線部27,29側に両端側がそれぞれ導通され、対向部43a,45aが他極の配線部29,27に対し交互配置されている。
【0028】
両極間の積層交互配線部31の両端側の導通は、中間絶縁層37を貫通する導体部39a,39b、41a,41bにより行われている。
【0029】
両極間の積層交互配線部31は、対向部43a,45aと一対の横断部43b,43cと一対の横断部45b,45cとを備えている。対向部43a,45aは、前記のように、他極の配線部29,27にそれぞれ対向配置されている。横断部43b,43cと横断部45c,45bとは、対向部43a,45aの両端部と同極の配線部27,29との間に渡って形成され、対向部43a,45aの両端において横断部43b,45c相互と横断部43c,45b相互とは、両極間で斜めに交差している。
【0030】
なお、積層交互配線部31の交差形態は、適宜設定することができる。
【0031】
交差する両極の一方の横断部43b,45bは、同極の配線部27,29に導体部39a,41aにより導通接続されている。
【0032】
交差する両極の他方の横断部43c,45cは、対向側連結腕部43ca,45caと配線側連結腕部43cb,45cbとを備えている。対向側連結腕部43ca,45caは、中間絶縁層37上に積層形成された同極の対向部43a,45aにそれぞれ一体に形成され、配線側連結腕部43cb,45cbは、ベース絶縁層35上に積層形成された両極の配線部27,29側にそれぞれ一体に形成されている。
【0033】
対向側連結腕部43ca,45caと配線側連結腕部43cb,45cbとは、各端部が導体部39b,41bにより導通接続され、両極間の横断部43b,45c、横断部43c,45bの交差を行わせている。
【0034】
中間絶縁層37には、カバー絶縁層47が積層されている。カバー絶縁層47は、電気絶縁層である可撓性絶縁樹脂のポリイミドで形成され、積層方向での厚みが、1〜20μm程度に形成されている。カバー絶縁層47は、積層交互配線部31の表面をカバーし、外力などから保護している。
【0035】
[ヘッド・サスペンションの配線構造の製造方法]
図4は、記録側配線の積層交互配線部の製造過程を示し、(A)は、配線配索工程、(B)は、絶縁層積層工程、(C)は、交互配線配索工程、(D)は、カバー絶縁層積層工程を示す断面図、図5は、記録側配線の積層交互配線部の製造過程を示し、(A)は、配線配索工程、(B)は、絶縁層積層工程、(C)は、交互配線配索工程、(D)は、カバー絶縁層積層工程を示す配線のみの斜視図である。
【0036】
(配線配索工程)
図4(A)、図5(A)のように、配線配索工程S1では、両極の配線部27,29を、銅メッキ等によりベース絶縁層35に対して積層配索する。このとき、各配線部27,29に、配線側連結腕部43cb,45cbが一体に形成される。
【0037】
(絶縁層積層工程)
図4(B)、図5(B)のように、絶縁積層工程S2では、配線部27,29に対して中間絶縁層37を積層し、中間絶縁層37に形成した穴39aa,41aa等(図4では、導体部39a,41aに対応した穴のみ示しているが、導体部39b,41bに対応した穴も形成する。)に銅メッキ等により図5で示す導体部39a,39b,41a,41bを形成する。導体部39a,39b,41a,41bは、両極の配線部27,29及び配線側連結腕部43cb,45cbに形成され、中間絶縁層37の表面にほぼ面一に露出する。
【0038】
(交互配線配索工程)
図4(C)、図5(C)のように、交互配線配索工程S3では、中間絶縁層37に対して両極間の積層交互配線部31側の対向部43a,45a、一方の横断部43b,45b及び対向側連結腕部43ca,45caを銅メッキ等により積層配索する。各一方の横断部43b,45bは、各配線部側の導体部39a,41aにそれぞれ接続され、各対向側連結腕部43ca,45caは、配線側連結腕部41cb,43cbの導体部39b,41bに同極相互で接続される。
【0039】
なお、図4(C)は、横断部43b,45b及び導体部39a,41aの導通を示す断面を示しており、図2の配線部27,29と対向部43a,45aとの積層断面とは異なった位置となっている。
【0040】
(カバー絶縁層積層工程)
図4(D)、図5(D)のように、カバー絶縁層積層工程S4では、中間絶縁層37に対し、カバー絶縁層47を積層し、積層交互配線部31の表面をカバーする。
【0041】
[製造方法の変形例]
図6は、記録側配線の積層交互配線部の製造過程を示す変形例であり、(A)は、配線配索工程、(B)は、絶縁層積層工程、(C)〜(E)は、交互配線配索工程、(F)は、カバー絶縁層積層工程を示す断面図である。
【0042】
図6の変形例では、図6(A)の配線配索工程S11、図6(B)の絶縁層積層工程S12、図6(C)〜(E)の交互配線配索工程S13〜S15、図6(F)のカバー絶縁層積層工程S16が、図4の配線配索工程S1、絶縁層積層工程S2、交互配線配索工程S3、カバー絶縁層積層工程S4に対応し、配線配索工程S11及びカバー絶縁層積層工程S16は、図4の配線配索工程S1及びカバー絶縁層積層工程S4とほぼ同一である。
【0043】
図6(B)の絶縁層積層工程S12では、穴は形成せず、図6(D)の工程S14において、横断部43b,45b及び対向側連結腕部43ca,45ca(図5参照)と中間絶縁層37とを、配線部27,29、配線側連結腕部41cb,43cb上まで貫通する穴39ab,41ab等を形成し(図6では、導体部39a,41aに対応した穴のみ示しているが、導体部39b,41bに対応した穴も形成する。)、図6(E)の工程S15で銅メッキ等により図5で示す導体部39a,39b,41a,41bを形成する。
【0044】
図7は、記録側配線の積層交互配線部の製造過程を示す他の変形例であり、(A)は、配線配索工程、(B)は、絶縁層積層工程、(C)は、交互配線配索工程、(D)は、カバー絶縁層積層工程を示す断面図である。
【0045】
図7の変形例では、図7(A)の配線配索工程S21、図7(B)の絶縁層積層工程S22、図7(C)の交互配線配索工程S23、図7(D)のカバー絶縁層積層工程S24が、図4の配線配索工程S1、絶縁層積層工程S2、交互配線配索工程S3、カバー絶縁層積層工程S4に対応し、配線配索工程S21及びカバー絶縁層積層工程S24は、図4の配線配索工程S1及びカバー絶縁層積層工程S4とほぼ同一である。
【0046】
図7(B)の絶縁層積層工程S22では、中間絶縁層37に穴39ac,41ac等を形成し(図7では、導体部39a,41aに対応した穴のみ示しているが、導体部39b,41bに対応した穴も形成する。)、図7(C)の工程S23で、銅メッキ等による配線形成と共に図5で示す導体部39a,39b,41a,41bを形成する。
【0047】
すなわち、工程S23において、中間絶縁層37に対して両極間の積層交互配線部31の対向部43a,45a、一方の横断部43b,45b及び対向側連結腕部43ca,45caを銅メッキ等により積層配索すると、同時に穴39ac,41ac等に図5で示す導体部39a,39b,41a,41bが形成される。
【0048】
[作用効果]
本発明実施例のヘッド・サスペンション1の配線構造は、記録媒体に対して情報の記録・再生を行うためのヘッド部21に負荷荷重を与えるロード・ビーム3に取り付けられ、ヘッド部21に接続した記録側及び再生側の記録側配線19a及び再生側配線19bを有しヘッド部21を支持するフレキシャ7を備えている。
【0049】
フレキシャ7は、記録側配線19a及び再生側配線19bを導電性薄板の基材17にベース絶縁層35を介して積層配索したものである。記録側配線19aは、両極の配線部27,29に両端側が導通して相互に他極の配線部29,27に対し、ベース絶縁層35に積層した中間絶縁層37を介して積層され、交互配置された対向部43a,45aを有する両極間の積層交互配線部31を備えた。
【0050】
このため、インターリーブ配線を積層により得ることができ、全体の配線幅増を抑制し、設計の自由度を確保することができる。
【0051】
本発明のヘッド・サスペンション1の配線構造の製造方法は、図4、図5のように、配線側連結腕部43cb,45cbをそれぞれ一体に形成した両極の配線部27,29を配索する配線配索工程S1と、配線部27,29に対して中間絶縁層37を積層すると共に中間絶縁層37を貫通してその表面に露出する導体部39a,39b,41a,41bを両極の配線部27,29及び配線側連結腕部43cb,45cbに形成する絶縁積層工程S2と、中間絶縁層37に対して両極間の積層交互配線部31の対向部43a,45a、一方の横断部43b,45b、及び対向側連結腕部43ca,45caを積層配索して各一方の横断部43b,45bを各配線部27,29側の導体部39a,41aにそれぞれ接続させると共に、各対向側連結腕部43ca,45caを配線側連結腕部43cb,45cbの導体部39b,41bに同極相互で接続させる交互配線配索工程S3と、中間絶縁層37に対しカバー絶縁層47を積層するカバー絶縁層積層工程S4とを備えた。
【0052】
このため、積層構造のインターリーブ配線を得ることができる。
【0053】
一方、本実施例では、積層交互配線部31の配線幅が、両極の配線部27,29の配線幅と同一に形成されている。このため、伝搬損失の周波数特性を見ると、図6のようになった。
【0054】
図8(A)は、配線の伝送損失の周波数特性を示す特性図、(B)は、(A)の一部を拡大して示す特性図である。図8の縦軸は伝搬損失であり横軸は周波数であり、配線部27,29のみからなる一般的な配線の特性49に対し、本実施例では、特性51となった。
【0055】
図8のように、一般的な配線の特性49は、なだらかな曲線を描くのに対し、本実施例の特性51では、各周波数にて部分的な落ち込み(Dip)51aが発生している。
【0056】
このような部分的な落ち込みは、意図しないフィルターとして機能し、或いは帯域幅を狭める原因になる恐れがある。
【0057】
本実施例では、かかる点を考慮した変形例1〜3をさらに説明する。
【0058】
[実施例1の変形例1〜3]
図9は、変形例1に係り、図2に対対応し、記録側配線を積層交互配線部と共に示す積層構造の断面図、図10は、積層交互配線部及び配線部の配線幅の比率と部分的な周波数の落ち込みの大きさとの関係を示す特性図である。
【0059】
図11は、変形例2に係り、図2に対応し、記録側配線を積層交互配線部と共に示す積層構造の断面図、図12は、積層交互配線部及び配線部の配線幅の比率と部分的な周波数の落ち込みの大きさとの関係を示す特性図である。
【0060】
図13は、変形例3に係り、図2に対応し、記録側配線を積層交互配線部と共に示す積層構造の断面図、図14は、積層交互配線部及び配線部の配線幅の比率と部分的な周波数の落ち込みの大きさとの関係を示す特性図である。
【0061】
なお、対応する構成には、A,B,又はCを付して説明する。
【0062】
図9、図11、図13の何れの変形例においても、両極間の積層交互配線部31の対向部43Aa,45Aa、43Ba,45Ba、43Ca,45Caの配線幅は、両極の配線部27,29の配線幅よりも幅が狭くなっている。
【0063】
図9の変形例1は、積層交互配線部31Aの対向部43Aa,45Aaが、両極の配線部27,29の幅方向中央に積層配置されている。
【0064】
図11の変形例2は、積層交互配線部31Bの対向部43Ba,45Baが、両極の配線部27,29の幅方向内側に積層配置されている。
【0065】
図13の変形例3は、積層交互配線部31Cの対向部43Ca,45Caが、両極の配線部27,29の幅方向外側に積層配置されている。
【0066】
その他の構成は、図1〜図3と同様である。
【0067】
各変形例において配線幅の比率と部分的な落ち込み(Dip)の発生との関係を見ると、図10、図12、図14のようになった。図10、図12、図14の縦軸は、落ち込み(Dip)の大きさを示し、横軸は、配線幅の比率を示している。
【0068】
落ち込み(Dip)の大きさが、0.1dB以下であるときを好適であるとみると、図9の変形例1は、比率45〜70%、図11の変形例2は、比率30〜65%、図13の変形例3は、比率50〜70%とするのが良い。
【0069】
なお、落ち込み(Dip)の大きさが、ある程度許容されるときは、さらに広げた比率を採用することもできる。
【0070】
落ち込み(Dip)の発生は、窓33の積層交互配線部31に対する開口率(ウインドウ・レシオ)によっても調整することができる。図15は、ウインドウの有無に係り、(A)は、ウインドウ無し、(B)は、50%レシオ・ウインドウ、(C)は、100%レシオ・ウインドウの存在を示す斜視図である。
【0071】
図16は、ウインドウ・レシオと部分的な周波数の落ち込みの大きさを示す特性図である。
【0072】
図15、図16のように、ウインドウ・レシオ100%での周波数の部分的な落ち込み(Dip)が最も小さかった。したがって、要求特性によるウインドウ・レシオを選択する。
【0073】
変形例1〜3は、対向部の配線幅方向の位置によってバンド幅等の変化に相違があった。
【0074】
図17は、配線比率とバンド幅との関係のグラフ、図18は、配線比率とインピーダンスとの関係のグラフ、図17は、インピーダンスとバンド幅との関係のグラフである。図17の縦軸は、バンド幅、横軸は、配線幅の比率、図18の縦軸は、インピーダンス、横軸は、配線幅の比率、図19の縦軸は、バンド幅、横軸は、インピーダンスを示している。
【0075】
図17のように、バンド幅に関しては、図11の変形例2の内側配置に係る特性53、図9の変形例1の中央配置に係る特性55、図13の変形例3の外側配置に係る特性57の順で広くなった。
【0076】
図18のように、インピーダンスに関しては、図11の変形例2の内側配置に係る特性53、図13の変形例3の外側配置に係る特性57、図9の変形例1の中央配置に係る特性55の順で低くなった。
【0077】
図19のように、同一インピーダンスで見ると、図13の変形例3の外側配置に係る特性57が最も広帯域となった。
【0078】
配線間のアライメントずれを考慮すると、図9の変形例1の中央配置に係る特性55を選択するのが良い。
【0079】
したがって、要求特性により、対向部43Aa,45Aa、43Ba,45Ba、43Ca,45Caの配置を選択することになる。
【実施例2】
【0080】
図20は、実施例2に係り、図2に対応して示し、記録側配線を積層交互配線部と共に示す積層構造の断面図である。なお、実施例1と対応する構成には、Dを付して説明する。
【0081】
本実施例のヘッド・サスペンションの配線構造は、フレキシャ7Dに設ける記録側配線19aDの両極の配線部27D,29Dを、導電性薄板の基材17Dの一部で形成した。
【0082】
積層交互配線部31Dは、両極の配線部27D,29Dに両端が導通して相互に他極の配線部29D,27Dに対し、基材17Dに積層された電気絶縁層であるベース絶縁層35Dを介して積層され交互配置された対向部43Da,45Da等を、実施例1同様に有している。
【0083】
すなわち、本実施例は、実施例1に対し、基材17Dの一部を利用して配線部27D,29Dを形成し、実施例1の中間絶縁層37を省略してベース絶縁層35D介して積層交互配線部31Dを構成したものである。
【0084】
その他の構成は、図1〜図3と同様である。
【0085】
本実施例の製造方法も、実施例1と同様に行うことができ、基材17Dに対してベース絶縁層35D及び導体部39Da,41Daの積層形成、ベース絶縁層35Dに対する積層交互配線部31Dの積層形成を行わせる。
【0086】
したがって、本実施例でも、実施例1と同様な作用効果を奏することができる。また、中間絶縁層を省略することで、より薄型とし、且つ構造をより簡単にすることができる。
【0087】
図21は、実施例2に係る記録側配線の積層交互配線部の製造過程を示し、(A)〜(C)は、配線配索工程、(D)は、交互配線配索工程を示す断面図である。絶縁層積層工程及びカバー絶縁層積層工程は省略されている。
【0088】
図21では、図21(A)〜(C)の配線配索工程S31〜S33、図21(D)の交互配線配索工程S34が、図4の配線配索工程S1、交互配線配索工程S3に対応している。
【0089】
図21(A)の配線配索工程S31において、基材17Dに配線部27D,29Dを形成し、図21(B)の工程S32において、穴39Daa,41Daa等を形成し(図21(B)では、導体部39Da,41Daに対応した穴のみ示しているが、図5で示す導体部39b,41bに相当する他の導体部に対応した穴も形成する。)、図21(C)の工程S33において、銅メッキ等により導体部39Da,41Da等を形成する。
【0090】
したがって、本実施例の製造方法も、実施例1とほぼ同様に行うことができ、基材17Dに対してベース絶縁層35D及び導体部39Da,41Da等の積層形成、ベース絶縁層35Dに対する積層交互配線部31Dの積層形成を行わせることができる。
【0091】
導体部39Da,41Da等は、図6、図7の製法によっても形成することもできる。
【0092】
すなわち、図6の方法を採るときは、工程S32で、穴39Daa,41Daa等を形成せず、工程S34で積層交互配線部31D側(一方の横断部43Db,45Db等)を銅メッキ等により積層配索する。この積層交互配線部31D側とベース絶縁層35Dとを貫通する穴を図6の工程S14と同様に形成し、この穴に銅メッキ等により導体部を形成して積層交互配線部31D側と配線部27D,29D側との導通を行わせる。
【0093】
図7の方法を採るときは、工程S32での穴39Daa,41Daaの形成後、工程S33を省略し、工程S34での導体部39Da,41Da等の積層形成を積層交互配線部31D側(一方の横断部43Db,45Db等)の銅メッキ等による形成で同時に一体形成する。
【0094】
なお、実施例2を、上記とは逆の積層構造とし、積層交互配線部31D側の対向部43Da,45Da等を基材17Dの一部を利用して形成し、配線部27D,29D側をベース絶縁層35Dを介して銅メッキ等により積層形成することもできる。導体部の形成も、上記のようにして行わせることができる。
【符号の説明】
【0095】
1 ヘッド・サスペンション
3 ロード・ビーム
7 フレキシャ
19a,19Da 記録側配線
19b 再生側配線
21 ヘッド部
27,27D,29,29D 配線部
31,31D 積層交互配線部
35,35D ベース絶縁層
37 中間絶縁層
39a,39Da,41a、41Da,39b,41b 導体部
43a,43Aa,43Ba,43Ca,43Da,45a,45Aa,45Ba,45Ca,45Da 対向部
43b,45b 一方の横断部
43c,45c 他方の横断部
43ca,45ca 対向側連結腕部
43cb,45cb 配線側連結腕部
S1,S11,S21,S31〜S33 配線配索工程
S2,S12,22 絶縁積層工程
S3,S13〜S15,S23,S34 交互配線配索工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して情報の記録・再生を行うためのヘッド部に負荷荷重を与えるロード・ビームに取り付けられ、前記ヘッド部に接続した記録側及び再生側の記録側配線及び再生側配線を有し前記ヘッド部を支持するフレキシャを備え、
少なくとも前記記録側配線は、両極の配線部に両端側が導通して相互に他極の配線部に対し電気絶縁層を介し積層されて交互配置された対向部を有する両極間の積層交互配線部を備えた、
ことを特徴とするヘッド・サスペンションの配線構造。
【請求項2】
請求項1記載のヘッド・サスペンショの配線構造であって、
前記フレキシャは、前記記録側配線及び再生側配線を導電性薄板の基材にベース絶縁層を介して積層配索したものであり、
前記電気絶縁層は、前記ベース絶縁層に積層した中間絶縁層である、
ことを特徴とするヘッド・サスペンションの配線構造。
【請求項3】
請求項2項記載のヘッド・サスペンションの配線構造であって、
前記基材は、前記両極間の積層交互配線部に対応した位置に窓部を備え、
前記窓部の前記積層交互配線部に対する開口率を設定する、
ことを特徴とするヘッド・サスペンションの配線構造。
【請求項4】
請求項1記載のヘッド・サスペンショの配線構造であって、
前記フレキシャは、少なくとも前記記録側配線の両極の配線部を導電性薄板の基材の一部で形成し、
前記少なくとも前記記録側配線は、両極の配線部に両端が導通して相互に他極の配線部に対し前記基材に積層された前記電気絶縁層であるベース絶縁層を介し積層されて交互配置された対向部を有する両極間の積層交互配線部を備えた、
ことを特徴とするヘッド・サスペンションの配線構造。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項記載のヘッド・サスペンショの配線構造であって、
前記両極間の積層交互配線部は、前記電気絶縁層を貫通する導体部により前記配線部側に導通接続された、
ことを特徴とするヘッド・サスペンションの配線構造。
【請求項6】
請求項5記載のヘッド・サスペンションの配線構造であって、
前記積層交互配線部は、他極の配線部にそれぞれ対向する一対の対向部と、この各対向部の両端部と同極の配線部との間に渡って配索された各一対の横断部とを備え、
前記両対向部の端部の横断部相互は、両極間で交差し、
前記交差する両極の一方の横断部は、同極の配線部に前記導体部により導通接続され、
前記交差する両極の他方の横断部は、前記中間絶縁層上と前記ベース絶縁層上とに積層形成され同極の対向部と配線部とにそれぞれ形成されて各端部が前記導体部により導通接続された対向側連結腕部と配線側連結腕部とを備えて前記交差を行わせる、
ことを特徴とするヘッド・サスペンションの配線構造。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項記載のヘッド・サスペンションの配線構造であって、
前記積層交互配線部の配線幅は、前記両極の配線部の配線幅よりも幅が狭い、
ことを特徴とするヘッド・サスペンションの配線構造。
【請求項8】
請求項7記載のヘッド・サスペンションの配線構造であって、
前記対向部は、前記配線部の幅方向中央、又は幅方向内側、又は幅方向外側の何れかに積層配置された、
ことを特徴とするヘッド・サスペンションの配線構造。
【請求項9】
請求項5記載のヘッド・サスペンションの配線構造の製造方法であって、
前記両極の配線部を配索する配線配索工程と、
前記配線部に対し電気絶縁層を積層すると共に前記電気絶縁層を貫通してその表面に露出する導体部を前記両極の配線部側に形成する絶縁積層工程と、
前記電気絶縁層に対し前記両極間の積層交互配線部側を積層配索して前記各配線部側の導体部にそれぞれ導通接続させる交互配線配索工程と、
を備えたことを特徴とするヘッド・サスペンションの配線構造の製造方法。
【請求項10】
請求項5記載のヘッド・サスペンションの配線構造の製造方法であって、
前記両極の配線部を配索する配線配索工程と、
前記配線部に対し電気絶縁層を積層する絶縁積層工程と、
前記電気絶縁層に対し前記両極間の積層交互配線部側を積層配索すると共に前記積層交互配線部側及び前記電気絶縁層を貫通して前記積層交互配線部側及び前記両極の配線部側を導通させる導体部を形成する交互配線配索工程と、
を備えたことを特徴とするヘッド・サスペンションの配線構造の製造方法。
【請求項11】
請求項5記載のヘッド・サスペンションの配線構造の製造方法であって、
前記両極の配線部を配索する配線配索工程と、
前記配線部に対し電気絶縁層を積層すると共に前記配線部側に対し前記電気絶縁層を貫通する穴を形成する絶縁積層工程と、
前記電気絶縁層に対し前記両極間の積層交互配線部側を積層配索して前記積層交互配線部側及び各配線部側を導通接続させる導体部を前記穴に形成する交互配線配索工程と、
を備えたことを特徴とするヘッド・サスペンションの配線構造の製造方法。
【請求項12】
請求項9〜11の何れか1項記載のヘッド・サスペンションの配線構造の製造方法であって、
前記導体部は、銅メッキにより形成された、
ことを特徴とするヘッド・サスペンションの配線構造の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−97845(P2013−97845A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241693(P2011−241693)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】