説明

ヘッド位置制御方法、ヘッド位置制御装置およびディスク装置

【課題】外乱抑圧機能を持つオブザーバ制御による位置決め制御装置において、オブザーバの制御特性を損なうことなく、ヘッド位置に応じた外乱抑圧機能を付加する。
【解決手段】アクチュエータのモデルと外乱のモデル(50)をからなる外乱抑圧機能有するオブザーバと、ヘッドの位置に応じたオブザーバの推定ゲインを格納するテーブル(22)を有し、ヘッドの位置に応じて、テーブルから推定ゲインを引き出し、オブザーバの推定ゲインを変更し、外乱抑圧周波数特性を変更する。ヘッドの半径方向やディスク間の位置に応じて、外乱抑圧特性を最適化でき、高密度化しても、ヘッドの振動を防止でき、位置決め精度を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク装置のヘッド位置制御方法、ヘッド位置制御装置及びディスク装置に関し、特に、オブザーバ制御を用いて、外乱(NRRO)による位置ずれを抑制するためのヘッド位置制御方法、ヘッド位置制御装置及びディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク装置、例えば、磁気ディスク装置や光ディスク装置において、ヘッドを目標トラックに正確に位置決めすることが記録密度向上のために極めて重要である。
【0003】
この位置決め制御において、外乱が、位置決め精度へ影響することが、知られている。このような外乱を制御系で抑圧するため、従来、図26乃至図28の制御系が提案されている。図26の第1の従来技術は、目標位置rと、プラント108の現在位置yとの位置誤差eを演算ブロック100で演算し、コントローラ102に入力し、コントローラ102が、位置誤差eを低減するような制御量を演算し、プラント108を駆動するフィードバック制御系に、並列に、ノッチフィルタの逆特性形態のフィルタ104を付与して、位置誤差の特定の周波数近傍の成分(RRO成分)を抑圧する(特許文献1参照)。
【0004】
第2の従来技術は、図27に示すように、図26のフィードバックループのコントローラ102に直列に、フィルタ104を設け、コントローラ102の制御量の特定の周波数近傍の成分を抑圧する(非特許文献1参照)。
【0005】
更に、第3の従来技術は、図28に示すように、図26のフィードバックループに、外乱オブザーバと称して、現在位置yをブロック110で、プラント108の伝達関数Pで割った値、即ち、位置誤差の2階微分値と,演算ブロック106からの指令電流値との差分を、演算ブロック112でとり、バンドパスフィルタ(Qフィルタとも呼ぶ)114を通して、演算ブロック106にフィードバックする(非特許文献1参照)。
【0006】
又、この周期性外乱(RRO)であるディスクの偏心に対応するために、偏心推定オブザーバを用いて、偏心を補正する方法が提案されている(例えば、特許文献2または特許文献3)。
【0007】
このような偏心推定オブザーバは、状態推定ゲインA,B,C,F,Lを使用して、実際の位置誤差と、推定した位置誤差との誤差から、アクチュエータの制御値を計算し、次サンプルの状態量(位置、速度、バイアス値、偏心量を計算する。
【0008】
ここで、推定ゲインLは、位置推定ゲインL1,速度推定ゲインL2,バイアス推定ゲインL3,偏心推定ゲインL4,L5からなる。そして、L1,L2,L3は、コントローラ自体の特性であり、L4,L5は、周期性外乱である偏心に対する応答特性を示す。
【特許文献1】USP 6,487,028B1公報
【非特許文献1】R. J. Bickel and M. Tomizuka, 論文“Disturbance observer based hybrid impedance control”(Proceedings of the American Control Conference 1995, pp.729-733)
【特許文献2】特開平7−50075号公報
【特許文献3】特開2000−21104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このようなオブザーバを利用して、偏心成分(RRO成分)以外の外乱に追従するような位置決め制御が望まれている。即ち、ディスク装置の記録密度の高密度化に伴い、微小な振動によるヘッドの位置決め精度への影響が無視できなくなっている。特に、媒体の振動や、媒体の回転でヘッドが受ける風圧が、ヘッドのNRRO(Non Repeatable Run Out)外乱として、無視できなくなり、ヘッドの位置決め精度に影響する。
【0010】
前述の従来技術の外乱抑圧方法では、偏心補正など、特定の周波数域を選択的に抑圧する補償器を付加する場合に、抑圧域の幅を極めて狭くすることにより、元の制御系の特性に影響を与えず、実装できる。しかしながら、近年の種々の外乱周波数に適応するという要求に対し、抑圧幅を広くとる場合や、パラメータに応じて、抑圧周波数を変更する場合には、元のコントローラの特性に影響を与え、所望の外乱抑圧機能を付加するのが、困難である。
【0011】
又、従来技術では、1つのオブザーバを設計した後、後から外乱抑圧機能を付与する場合には、制御系全体の特性、例えば、極配置が大きくずれてしまい、オブザーバ全体の再設計が必要となる。即ち、従来は、外乱モデルを決めてから、コントローラと外乱抑圧機能を含めたオブザーバを設計するため、後で、特定の外乱抑圧機能を付与する場合には、全体に影響し、再設計が必要である。このため、抑圧特性を変更する系の構成は、設計での試行錯誤を繰り返す必要があり、極めて困難である。
【0012】
従って、本発明の目的は、オブザーバの制御特性を損なうことなく、NRRO外乱を抑圧するためのヘッド位置制御方法、ヘッド位置制御装置及びディスク装置を提供することにある。
【0013】
又、本発明の他の目的は、制御特性を損なうことなく、ヘッド位置に応じて、変動するNRRO外乱を有効に抑圧して、ヘッドの振動を防止するためのヘッド位置制御方法、ヘッド位置制御装置及びディスク装置を提供することにある。
【0014】
更に、本発明の他の目的は、オブザーバの制御特性を損なうことなく、NRRO外乱の抑圧特性を変更して、ヘッドの追従性能を向上するためのヘッド位置制御方法、ヘッド位置制御装置及びディスク装置を提供することにある。
【0015】
更に、本発明の他の目的は、オブザーバの制御特性を損なうことなく、ヘッドが受ける風圧によるNRRO外乱の抑圧特性を変更して、ヘッドのリード/ライト特性を改善するためのヘッド位置制御方法、ヘッド位置制御装置及びディスク装置を提供することにある。
【0016】
更に、本発明の他の目的は、オブザーバの制御特性を損なうことなく、媒体やサスペンションの振動によるNRRO外乱の抑圧特性を変更して、ヘッドのリード/ライト特性を改善するためのヘッド位置制御方法、ヘッド位置制御装置及びディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のヘッド位置制御方法は、ディスク記憶媒体の所定位置に、アクチュエータによりヘッドを位置決め制御するヘッド位置決め制御方法において、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算するステップと、前記位置誤差とオブザーバの推定位置との推定位置誤差を演算するステップと、前記推定位置誤差に従い、前記オブザーバの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するステップと、前記ヘッドの目標位置に対応する推定ゲインをテーブルから引き出し、前記オブザーバに設定して、外乱抑圧周波数を変更するステップとを有する。
【0018】
又、本発明のディスク装置は、ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドと、前記ディスク記憶媒体の所定位置に、前記ヘッドを位置決めするアクチュエータと、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算し、前記位置誤差とオブザーバの推定位置との推定位置誤差を演算し、前記推定位置誤差に従い、前記オブザーバの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算する制御ユニットと、前記ヘッドの目標位置に対応する推定ゲインを格納するテーブルとを有し、前記制御ユニットは、前記テーブルから前記目標位置に対応する前記推定ゲイン引き出し、前記オブザーバに設定して、外乱抑圧周波数を変更する。
【0019】
又、本発明のヘッド位置制御装置は、ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドを、アクチュエータを制御して、前記ディスク記憶媒体の所定位置に位置決めするヘッド位置制御装置において、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから推定位置誤差を演算し、前記位置誤差とオブザーバの推定位置との推定位置誤差に従い、オブザーバの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算する制御ユニットと、前記ヘッドの目標位置に対応する推定ゲインを格納するテーブルとを有し、前記制御ユニットは、前記テーブルから前記目標位置に対応する前記推定ゲイン引き出し、前記オブザーバに設定して、外乱抑圧周波数を変更する。
【0020】
更に、本発明は、好ましくは、前記変更ステップは、NRRO(Non Repeatable Run Out)外乱の抑圧周波数特性を変更するステップからなる。
【0021】
更に、本発明は、好ましくは、前記変更ステップは、前記ヘッドの前記ディスクの半径方向の位置に対応する推定ゲインをテーブルから引き出し、前記オブザーバの風外乱の抑圧周波数特性を変更するステップからなる。
【0022】
更に、本発明は、好ましくは、前記変更ステップは、前記ヘッドの前記ディスク面の位置を示すヘッド番号に対応する推定ゲインをテーブルから引き出し、前記オブザーバの抑圧周波数のピークを変更するステップからなる。
【0023】
更に、本発明は、好ましくは、前記制御値を演算するステップは、コントローラの推定ゲインと、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一のフィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルの推定ゲインとを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を含む前記制御値を演算するステップからなる。
【0024】
更に、本発明は、好ましくは、前記制御値を演算するステップは、前記推定位置誤差に従い、前記コントローラの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するステップと、前記推定位置誤差に従い、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一のフィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値外乱抑圧値を演算するステップと、前記制御値と前記外乱抑圧値とを加算して、前記アクチュエータの駆動値を演算するステップを有する。
【0025】
更に、本発明は、好ましくは、前記外乱抑圧値を演算するステップは、前記感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形するフィルタの前記分子の零点を極に持つ外乱モデルの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算するステップからなる。
【0026】
更に、本発明は、好ましくは、前記外乱抑圧値を演算するステップは、感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形する1次又は2次のフィルタの前記分子を分母とした外乱モデルの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算するステップからなる。
【発明の効果】
【0027】
外乱抑圧機能有するオブザーバの推定ゲインを、ヘッドの位置に応じて変更し、外乱抑圧周波数特性を変更するため、ヘッドの半径方向やディスク間の位置に応じて、外乱抑圧特性を最適化でき、高密度化しても、ヘッドの振動を防止でき、位置決め精度を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を、ディスク装置、位置決め制御系の第1の実施の形態、位置決め制御系の設計、第1の実施の形態のテーブルの説明、位置決め制御系の第2の実施の形態、他の実施の形態の順で説明するが、本発明は、この実施の形態に限られない。
【0029】
(ディスク装置)
図1は、本発明の一実施の形態のディスク装置の構成図、図2は、図1の磁気ディスクの位置信号の配置図、図3は、図1及び図2の磁気ディスクの位置信号の構成図、図4は、図1のシーク動作の遷移図、図5は、図1の位置決め制御系のブロック図である。
【0030】
図1は、ディスク装置として、磁気ディスク装置を示す。図1に示すように、磁気記憶媒体である磁気ディスク4が、スピンドルモータ5の回転軸2に設けられている。スピンドルモータ5は、磁気ディスク4を回転する。アクチュエータ(VCM)1は、先端に磁気ヘッド3を備え、磁気ヘッド3を磁気ディスク4の半径方向に移動する。
【0031】
アクチュエータ1は、回転軸を中心に回転するボイスコイルモータ(VCM)で構成される。図では、磁気ディスク装置に、2枚の磁気ディスク4が搭載され、4つの磁気ヘッド3が、同一のアクチュエータ1で同時に駆動される。
【0032】
磁気ヘッド3は、リード素子と、ライト素子とからなる。磁気ヘッド3は、スライダに、磁気抵抗(MR)素子を含むリード素子を積層し、その上にライトコイルを含むライト素子を積層して、構成される。
【0033】
位置検出回路7は、磁気ヘッド3が読み取った位置信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。リード/ライト(R/W)回路10は、磁気ヘッド3の読み取り及び書込みを制御する。スピンドルモータ(SPM)駆動回路8は、スピンドルモータ5を駆動する。ボイスコイルモータ(VCM)駆動回路6は、ボイスコイルモータ(VCM)1に駆動電流を供給し、VCM1を駆動する。
【0034】
マイクロコントローラ(MCU)14は、位置検出回路7からのデジタル位置信号から現在位置を検出(復調)し、検出した現在位置と目標位置との誤差に従い、VCM駆動指令値を演算する。即ち、位置復調と図5以下で説明する外乱抑圧を含むサーボ制御を行う。リードオンリーメモリ(ROM)13は、MCU14の制御プログラム等を格納する。ランダムアクセスメモリ(RAM)12は、MCU14の処理のためのデータ等を格納する。
【0035】
ハードディスクコントローラ(HDC)11は、サーボ信号のセクタ番号を基準にして,1周内の位置を判断し,データを記録・再生する。バッファ用ランダムアクセスメモリ(RAM)15は、リードデータやライトデータを一時格納する。HDC11は、USB,ATAやSCSI等のインターフェイスIFで、ホストと通信する。バス9は、これらを接続する。
【0036】
図2に示すように、磁気ディスク4には、外周から内周に渡り、各トラックにサーボ信号(位置信号)16が、円周方向に等間隔に配置される。尚、各トラックは、複数のセクタで構成され、図2の実線は、サーボ信号16の記録位置を示す。図3に示すように、位置信号は,サーボマークServo Markと、トラック番号Gray Codeと、インデックスIndexと、オフセット情報(サーボバースト)PosA,PosB,PosC,PosDとからなる。尚、図3の点線は、トラックセンターを示す。
【0037】
図3の位置信号をヘッド3で読み取り、トラック番号Gray Codeとオフセット情報PosA,PosB,PosC,PosDを使い,磁気ヘッドの半径方向の位置を検出する。さらに、インデックス信号Indexを元にして,磁気ヘッドの円周方向の位置を把握する。
【0038】
例えば,インデックス信号を検出したときのセクタ番号を0番に設定し、サーボ信号を検出する毎に、カウントアップして、トラックの各セクタのセクタ番号を得る。このサーボ信号のセクタ番号は,データの記録再生を行うときの基準となる。尚、インデックス信号は、1周に1つである、又、インデックス信号の代わりに、セクタ番号を設けることもできる。
【0039】
図1のMCU14は、位置検出回路7を通じて、アクチュエータ1の位置を確認して,サーボ演算し、適切な電流をVCM1に供給する。即ち、図4に示すように、シーク制御は、コアース制御、整定制御及びフォローイング制御と遷移することで,目標位置まで移動させることができる。いずれも、ヘッドの現在位置を検出する必要がある。
【0040】
このような,位置を確認するためには,前述の図2のように、磁気ディスク上にサーボ信号を事前に記録しておく。即ち、図3に示したように、サーボ信号の開始位置を示すサーボマーク,トラック番号を表すグレイコード,インデックス信号,オフセットを示すPosA〜PosDといった信号が記録されている。この信号を磁気ヘッドで読み出し、このサーボ信号を、位置検出回路7が、デジタル値に変換する。
【0041】
図5に示すように、図1のMCU14が実行する位置決め制御系は、演算ブロック30と、外乱抑圧機能を持つコントローラ20と、目標位置に対応して、外乱抑圧コントローラ20の内部変数を変更するテーブル22とを有する。
【0042】
演算ブロック30は、ヘッド3が読み取った前述のサーボ情報を復調して得た観測位置y[k]から目標位置rを差し引き、実位置誤差er[k]を演算する。外乱抑圧コントローラ20は、内部変数に応じて、実位置誤差から、プラント26(図1のアクチュエータ1)の制御量を演算し、プラント26を駆動する。
【0043】
本発明では、目標位置(ヘッドのシリンダ位置又はヘッド番号)に対応した内部変数を格納するテーブル(変換手段)22を設け、目標位置に応じて、テーブル22から外乱抑圧コントローラ20の外乱抑圧内部変数を変更する構成を有する。即ち、コントローラ20は、内部変数に応じて、外乱抑圧特性を変更できるように構成され、且つ目標位置に応じて、コントローラ20の内部変数を変更する変更手段22を有する。
【0044】
(位置決め制御系の第1の実施の形態)
図6は、図5の外乱を抑圧する位置決め制御系の第1の実施の形態のブロック図である。この位置決め制御系は、外乱周波数を検出し、外乱を適応制御により、抑圧するためのオブザーバ制御系である。
【0045】
図6に示すオブザーバは、下記式(1)、(2)、(3)で示されるバイアス補償を含む現在オブザーバである。
【0046】
【数1】

【0047】
【数2】

【0048】
【数3】

即ち、この実施の形態は、コントローラのモデルと外乱モデルを含むオブザーバによる位置決め制御系の例である。図6において、図5で示したものと同一のものは、同一の記号で示してある。図6において、第1の演算ブロック30は、ヘッド3が読み取った前述のサーボ情報を復調して得た観測位置y[k]から目標位置rを差し引き、実位置誤差er[k]を演算する。第2の演算ブロック32は、実位置誤差er[k]からオブザーバの推定位置x[k]を差し引き、推定位置誤差e[k]を演算する。
【0049】
状態推定ブロック34は、この推定位置誤差e[k]と、内部変数である推定ゲインL(L1,L2、L3,L4,L5)を用いて、推定修正値(式(1)の右辺)を、演算する。そして、加算ブロック36は、この推定修正値と、遅延ブロック46から状態量(式(1)の左辺)x[k],v[k]、b[k],z1[k],z2[k]とを加算し、式(1)のように、推定位置x[k],推定速度v[k]、推定バイアス値b[k],推定外乱抑圧値z1[k],z2[k]を得る。尚、式(1)では、推定位置誤差e[k]を、(y[k]−x[k])で表示する。
【0050】
この推定値は、第4の演算ブロック38で、状態フィードバックゲイン(一Fa=F1,F2,F3,F4,F5)を乗算され、式(2)のように、アクチュエータ1の駆動値u[k]を得る。一方、加算ブロック36からの式(1)の推定値は、第5の演算ブロック42で、推定ゲインAa(式(3)の左辺の行列)を乗じられ、第4の演算ブロック38の駆動値u[k]は、第6の演算ブロック40で、推定ゲインB(式(3)のu[k]に乗じる値)を乗じられる。両乗算結果は、加算ブロック44で、加算され、式(3)の次のサンプルの推定状態量x[k+1],v[k+1]、b[k+1],z1[k+1],z2[k+1]を得る。
【0051】
この次のサンプルの推定状態量は、前述のように、遅延ブロック46に入力し、状態推定ブロック34で、推定修正値で、修正される。そして、加算ブロック36からの式(1)の推定値は、第7の演算ブロック48で、推定位置x[k]が取り出され、前述の第2の演算ブロック32に入力する。
【0052】
一方、目標位置rは、変換テーブル22に入力する。図17以下で説明するように、変換テーブル22は、目標位置rに対応する、推定ゲインL、A行列、フィードバックゲインFを、格納する。そして、変換テーブル22は、目標位置rに対応する推定ゲインL、A行列、フィードバックゲインFを、引き出し、且つブロック34,42,38に設定する。これにより、オブザーバの外乱抑圧特性を、位置に応じて、変更する。
【0053】
このオブザーバは、外乱推定ゲインを変更しても、元のコントローラの特性に影響を与えない構成である。以下、その設計手法を説明する。
【0054】
(位置決め制御系の設計方法)
次に、この外乱モデルを含むオブザーバの設計方法を、図7及び図8を用いて、説明する。
【0055】
先ず、図7により、第1の設計方法を説明する。
【0056】
(S10)元となるコントローラを、オブザーバ制御にて,設計する。即ち、制御対象のモデルを設定する。
【0057】
(S12)その上で,整形したいフィルタ形状を決める。即ち、整形フィルタの個数と、個々のフィルタの極、零点を設定する。ただし、整形したいフィルタ形状は、1次または2次フィルタで、分子と分母の次数が同一であることが必要である。
【0058】
(S14)次に,整形フィルタの零点を用い、フィルタの分子の式を,分母に持つ外乱モデルを構成する。
【0059】
(S16)この外乱モデルを、ステップS10のオブザーバのモデルに付加する。この外乱モデルを付加することは,感度関数の零点を指定することになる。
【0060】
(S18)次に,オブザーバ制御系全体の極を指定する。この極は,元々の設計で用いていた極と,整形するためのフィルタの極とを含めたものである。即ち、整形フィルタの極を含めて、拡大モデル(全体モデル)の極配置を行い、オブザーバの推定ゲインL1〜L5,A行列を設計する。
【0061】
(S20)制御対象モデルのみの極配置を行い、状態フィードバックゲインFを設計する。
【0062】
(S22)状態フィードバックゲインに外乱モデルの出力ゲインを付加し、統合モデルのフィードバックゲインを設計する。このようにして外乱モデルを含むオブザーバを設計する。
【0063】
即ち、本発明では、位置外乱や外部の振動、打撃を抑圧する性能を、感度関数や加速度外乱特性により、判断する。このため、感度関数や加速度外乱特性の形状を設計することにより、所望の外乱抑圧機能を付与する。
【0064】
以下、例を挙げて設計手順を説明する。先ず、アクチュエータ1を2重積分モデルとしたときの、オブザーバ制御系は、次式(4)のアナログ式で示される。
【0065】
【数4】

式(4)において、sは、ラプラス演算子、xは、推定位置、vは、推定速度、yは、現在位置、rは、目標位置、L1,L2は、各々位置、速度の推定ゲイン、uは、駆動電流、Bl/mは、アクチュエータ1の力定数である。
【0066】
次に、この制御系は、1/(1+CP)の感度関数を持つが、この感度関数に対して、外乱抑圧を、次式(5)の1次フィルタで定義し、この1次フィルタで感度関数を、整形する。
【0067】
【数5】

即ち、このフィルタを与えた時の感度関数は、1/(1+CP)に、式(5)を乗じた形状となる。
【0068】
このとき、外乱モデルとして、上記(5)式のフィルタの分子を、分母として持つとなる下記式(6)の伝達関数のモデルをオブザーバに実装する。
【0069】
【数6】

一方、式(5)のフィルタの分母(ω2)は、極配置に用いる。
【0070】
この外乱モデルを式(4)のオブザーバに実装することにより、式(4)から、次式(7)が得られる。
【0071】
【数7】

上記の式(7)のbは、外乱推定値であり、ここでは、定常バイアス推定値のパラメータで示している。式(7)において、オブザーバの推定ゲインL1,L2,L3を設計するには、式(4)の元のオブザーバの設計に用いた極とともに,式(5)の整形フィルタの極(分母):−ω2を指定する。
【0072】
また,式(7)において、フィードバックゲインは、(Fx,Fv)のみ設計する。外乱モデルは、可観測ではあるが、可制御ではないため,外乱モデルのフィードバックゲインは変更できない。外乱モデルとしてオブザーバの推定ゲイン設計に用いたものと同じものを指定することになる。式(7)では、外乱モデルのフィードバックゲイン(出力ゲイン)は、K=m/Blである。
【0073】
このように、元となるコントローラをオブザーバ制御で設計し、抑圧する外乱周波数に応じた整形したいフィルタ形状を決める。ここで、整形フィルタは、1次又は2次のフィルタであり、分子と分母の次数が同一であることが必要である。
【0074】
フィルタの分子と分母の次数が異なる場合には、例えば、分母の次数が、分子の次数より大きい場合(ω1/(s+ω2))には、このフィルタの周波数特性は、高域程、ゲインが低下し、元の感度関数に乗じた場合には、元の感度関数(即ち、コントローラの特性)が、大幅に変わってしまうからである。
【0075】
そして、フィルタの分子の式を、分母に持つ外乱モデルを構成し、オブザーバのモデルに付加する(式(7))。この外乱モデルを付加することは、感度関数の零点を指定することになる。
【0076】
次に、前述のように、オブザーバ制御系全体の極を指定する。この極は、元のコントローラのモデルで用いた極と、整形するためのフィルタの極(−ω2)を含めたものとなる。
【0077】
換言すれば、外乱抑圧のため、導入したい周波数特性を、整形フィルタで定義し、整形フィルタの分子の式を分母に持つ外乱モデルを構成し、元のオブザーバのモデルに付加する。これにより、外乱抑圧機能を、抑圧幅を広くとる場合や高い周波数域の外乱を抑圧する場合でも、元のコントローラの特性に影響を与えず、実装できる。
【0078】
又、1つのオブザーバを設計した後、後から外乱抑圧機能を付与する場合でも、制御系全体の特性のずれが小さく、オブザーバ全体の再設計も必要ない。
【0079】
次に,整形フィルタを、2次フィルタとした場合を、説明する。2次フィルタとして,下記(8)式で定義する。
【0080】
【数8】

前述のように、外乱モデルは、整形フィルタの分子の式を分母に持つため、次式(9)で表される。
【0081】
【数9】

次に、この外乱モデルを、元のコントローラのオブザーバ(式(4))に実装する方法として3通りの方法が考えられる。
【0082】
第1の方法は、式(7)と同様に、式(9)の外乱モデルをそのまま実装する。即ち、2次フィルタのため、外乱の状態推定量をz1,z2とし、外乱の推定ゲインをL3,L4とすると、式(10)で表される。
【0083】
【数10】

次に、第2の方法は、ω1の二乗の項を、分散させ、式(10)を変形して、式(11)を得る。
【0084】
【数11】

第3の方法は、式(11)のω1の符号を反転したものであり、式(12)で表される。
【0085】
【数12】

いずれの方法を採用しても、設計が可能になる。第2の方法及び第3の方法は、特にデジタル制御系へ上記モデルを変換したときに有効である。即ち、2つの状態変数z1,z2のバランスがとれ,2つの状態変数用のオブザーバの推定ゲインL3、L4の大きさが離れすぎずに、実装できる。
【0086】
このときに,極は、式(8)の整形フィルタの極(式(8)の分母=0から導かれる)と,もとのオブザーバ制御系の設計に用いた極とをあわせて,指定して、推定ゲインL1、L2、L3、L4の値を設計する。
【0087】
更に、この2次フィルタ整形と、従来の定常バイアス推定とをあわせたオブザーバ制御系は、次式(13)で表される。
【0088】
【数13】

このように,最初に整形したいフィルタ形状を考えた上で,外乱モデルをオブザーバに付加し,設計することが可能になる。したがって,元々の外乱モデルの物理的応答特性に拘束されることなく,自由な形状の整形が可能になった。
【0089】
図7は、アナログ設計における説明であった。一方,デジタル制御系を設計するには、図8の設計フローに従う。
【0090】
図8において、図7で示したステップと同一のステップは、同一の記号で示してある。図8に示すように、ステップS16で、外乱モデルをアナログ空間にてモデル化して拡大モデルを構成する。次に,ステップS30で、拡大モデルをデジタル空間に変換した(離散化した)後、ステップS18の極配置を、デジタル空間で指定する。
【0091】
更に、2次フィルタの特性を外乱モデルとして持つ場合に、拡大モデルを離散系に変換すると,オブザーバの推定ゲインを設計するためのA行列の中に、外乱モデルの2変数z1,z2ともに、アクチュエータ1に影響を与える形となってしまう。
【0092】
そこで,外乱モデルの一方の変数のみが、アクチュエータ1に影響を及ぼすように、具体的には、アナログ設計と同じ変数のみが、アクチュエータ1に影響を及ぼすように修正する。即ち、離散化した後、ステップS32で、拡大モデルを修正する。
【0093】
具体的に説明すると、2次フィルタを使用した式(11)の形のアナログモデルを離散化(所謂、z変換して、SI単位に変換)すると、次式(14)の形になる。
【0094】
【数14】

式(14)において、zは、Z変換子、Tは、サンプリング周期である。ここで,着目すべきは、A行列であるA13,A14,A23,A24である。離散化しただけでは、A14,A24は,いずれも「0」にはならない。即ち、オブザーバの推定ゲインを設計するためのA行列の中に、外乱モデルの2変数z1,z2ともに、アクチュエータ1に影響を与える形となってしまう。
【0095】
そこで,アナログモデルを離散化した上で,さらに、A行列中の外乱モデルの状態変数z1,z2が、アクチュエータ1に影響を与える係数を置換する。
【0096】
式(14)の例では、A行列を、下記式(15)のように、修正する。
【0097】
【数15】

また,デジタル制御系においては,距離の単位がトラック,電流値は最大電流を「1」と正規化,さらに、速度や加速度も秒ではなく、サンプル周波数で正規化することも必要になる.
同様にして、式(13)のアナログ形式のオブザーバを、現在オブザーバの形式に変換すると、前述の式(1)、(2)、(3)となり、図6の構成が得られる。
【0098】
このように,最初に整形したいフィルタ形状を考えた上で,外乱モデルをオブザーバに付加し,設計することが可能になる。したがって,オブザーバは、元々の外乱モデルの物理的応答特性に拘束されることなく,自由な形状の整形が可能になった。
【0099】
次に、具体的な構成例を説明する。図9及び図12は、本発明の第1の実施例の説明図であり、図9は、整形フィルタの特性図、図10は、開ループ特性図、図11は、感度関数の特性図、図12は、加速度外乱特性図である。
【0100】
図9乃至図12は、1600Hzをノッチ状に抑圧する例である。このような高域を抑圧する必要性は、ディスク媒体の振動や、ヘッドサスペンションの振動により、高域の周波数が外乱として、印加される場合である。特に、ディスク媒体の回転数が高速化すると、トラック密度が高い装置では、このような高域の周波数外乱による影響が顕著である。
【0101】
このような高域では、コントローラにノッチフィルタの逆特性を直列に挿入しても、実現が難しい。又、位相特性で明らかなように、下げた後上げるという特性を実現するには、フィルタ係数の調整に試行錯誤が必要となる。
【0102】
本実施の形態では、図9に示すように、特定周波数のみを抑圧する整形フィルタを設計する。この整形フィルタは、式(8)で示した2次フィルタで設計する。式(8)において、ω1=2π*1600,ω2=ω1、ζ1=0.025、ζ2=0.05としたものである。
【0103】
この整形フィルタの周波数特性については、図9の上段に、周波数対ゲイン特性、下段に周波数対位相特性に示すように、ゲインは、1600Hz付近で抑圧され、位相は、1600Hz付近で、一旦下がり、その後上がる特性である。
【0104】
このように設計された整形フィルタを用いて、前述のオブザーバを構成する。この時のオブザーバで構成される制御系の開ループ特性については、図10の上段に、周波数対ゲイン特性、下段に周波数対位相特性に示すように、ゲインを、1600Hzで下げ、位相を1600Hz付近で上げる操作を行う。
【0105】
このため、制御系の感度関数については、図11の周波数対ゲイン特性に示すように、ゲインは、1600Hz付近で抑圧される。又、制御系の加速度外乱特性についても、図12の周波数対ゲイン特性に示すように、ゲインは、1600Hz付近で抑圧される。
【0106】
図13及び図16は、本発明の第2の実施例の説明図であり、図13は、整形フィルタの特性図、図14は、開ループ特性図、図15は、感度関数の特性図、図16は、加速度外乱特性図である。
【0107】
図13乃至図16は、低域を一律に抑圧する例である。このような低域を一律に抑圧する必要性は、ディスク媒体の偏心に加え、ディスク媒体のインナーとアウターとの風圧による影響がある場合である。特に、低域の外部振動成分は多く存在し、その影響が顕著である。このような低域の抑圧幅を広くすることは、従来のオブザーバでは、実現が難しい。
【0108】
本実施の形態では、図13に示すように、低域を広範囲で抑圧する整形フィルタを設計する。この整形フィルタは、式(8)で示した2次フィルタで設計する。式(8)において、ω1=2π*200,ω2=2π*400、ζ1=0.5、ζ2=0.5としたものである。
【0109】
この整形フィルタの周波数特性については、図13の上段に、周波数対ゲイン特性、下段に周波数対位相特性に示すように、ゲインは、低域の下限(100Hz)を越えると徐々に増加し、低域の上限(ここでは、500Hz近傍)でほぼ一定となり、位相は、低域の下限(100Hz)から低域の上限(ここでは、500Hz近傍)の間で山を形成する特性である。
【0110】
このように設計された整形フィルタを用いて、前述のオブザーバを構成する。この時のオブザーバで構成される制御系の開ループ特性については、図14の上段に、周波数対ゲイン特性、下段に周波数対位相特性の太線に示すように、ゲインを、低域で上げ、位相を低域付近で上げる操作を行う。
【0111】
このため、制御系の感度関数については、図15の周波数対ゲイン特性の太線に示すように、ゲインは、低域付近で抑圧される。又、制御系の加速度外乱特性についても、図16の周波数対ゲイン特性の太線に示すように、ゲインは、低域で抑圧される。
【0112】
この実施例のように、従来困難であった高域の抑圧や、低域の広い幅の外乱抑圧オブザーバを容易に実現できる。
【0113】
(第1の実施の形態のテーブルの説明)
図17は、本発明の一実施例の説明図、図18は、その周波数対NRROパワーの関係図である。図17に示すように、矢印B方向に回転するディスク4に対し、ヘッド3は、アクチュエータにより、ディスク4の半径方向に移動する。ディスク4は、その回転により、風を発生し、その風は、ヘッド3に外乱として、影響する。即ち、ディスク4のインナー側の風圧WIとアウター側の風圧WOとで異なり、ヘッド位置による風外乱の増減がある。ヘッド3が、ディスク4の内周側に位置するときには,アクチュエータ1が受ける風の影響が大きくなる。これは,低い周波数成分にあらわれる。
【0114】
次に,ヘッド3を支持するサスペンションや、ディスク4は、振動している。この振動は、位置誤差として観測され、回転周波数には同期しないNRROとして現れ、各ヘッドにより、特性は異なる。
【0115】
これらのNRROの様子を図示すると,おおむね、図18のように示される。図18に示すように、NRROパワーは、風外乱により、低周波域で、インナー側のNRRO(点線)は、アウター側のNRRO(実線)より大きい。
【0116】
又、図18に示すように、サスペンションやディスク4の振動も、ヘッド毎に、変化する。即ち、ピーク状のNRROのピークの変化や周波数の変化として表れ、点線は、第1のヘッド、実線は第2のヘッドを示す。
【0117】
このような問題に対応するために,本発明は、ヘッド番号やトラック位置(即ち、目標位置)に応じて、コントローラの周波数特性を最適化し、変化した外乱を抑圧する。このため、目標位置に応じて、コントローラの周波数特性パラメータを格納するテーブル22を設け、コントローラの周波数特性を変更する。
【0118】
図19は、低域の風外乱を、位置に応じて抑圧するためのテーブル22の構成例を示す図、図20は、その開ループ特性図、図21は、その感度関数の特性図である。
【0119】
まず、低域の風外乱を抑圧する例として、図18に示すように、インナー側が、アウター側より、NRROパワーが大きいとし、NRROに対するインナー側の低域ゲインを、アウター側の低域ゲインより落とす。先ず、整形フィルタとして、式(8)の2次モデルを使う。そして、アウター側のモデルを、モデル1とし、インナー側のモデルをモデル2とし、式(8)のパラメータを、下記のように、設定する。
【0120】
モデル1 ζ1=ζ2=0.5, ω1=2π・100, ω2=2π・300
モデル2 ζ1=ζ2=0.5, ω1=2π・100, ω2=2π・400
この場合のテーブル22の内容は、図19のようになる。ここでは、モデル1と2の式(8)の分子を同じとしている(ζ1, ω1)としたため、A行列は一致しており、ゲインFも共通であるが、推定ゲインLが、インナー及びアウターで異なる。即ち、A行列およびFは共通とし、Lのみが値を違えることで,図18の低域ゲインの増減に対応できる。
【0121】
この推定ゲインLによる開ループ特性および感度関数は、図20及び図21に示される。図20及び図21において、細線が、モデル1(アウター側),太線がモデル2(インナー側)である。
【0122】
詳細に説明すると、前述の整形フィルタを用いて、前述のオブザーバを構成する。この時のオブザーバで構成される制御系の開ループ特性を、図14と同様に、図20の上段の、周波数対ゲイン特性図、下段の周波数対位相特性図に示す。開ループ特性では、モデル1の細線より、モデル2の太線の場合には、ゲインが、低域で大きくなっている。
【0123】
このため、制御系の感度関数については、図15と同様に、図21の周波数対ゲイン特性の太線(モデル2:インナー側)、細線(モデル1:アウター側)に示すように、ゲインは、低域付近で、アウター側よりインナー側がより抑圧される。
【0124】
従って、図19に示すように、テーブル22に、インナー及びアウターの推定ゲインを格納し、目標位置rにより、テーブル22を参照して、目標位置rが、インナーかアウターかにより、いずれかの対応ゲインを、オブザーバに設定することにより、図18に示した低域の風外乱を抑圧する図20、図21の周波数特性をオブザーバに設定することができる。
【0125】
次に、高域のヘッドの振動を防止する例を説明する。図18に示したように、NRROに対する第1のヘッドと第2のヘッドの周波数が異なる場合に、第1のヘッドと第2のヘッドの抑圧周波数を変える。先ず、整形フィルタとして、式(8)の2次モデルを使う。そして、第1のヘッドのモデルを、モデル1とし、第2のヘッドのモデルをモデル2とし、式(8)のパラメータを、下記のように、設定する。
【0126】
モデル1 ζ1=0.01 ζ2=0.1, ω1=2π・1500, ω2=2π・1500
モデル2 ζ1=0.015 ζ2=0.15, ω1=2π・1200, ω2=2π・1200
この場合のテーブル22の内容は、図22のようになる。ここでは、モデル1(第1のヘッド)の抑圧周波数を1500Hz,モデル2(第2のヘッド)の抑圧周波数を1200Hzとして、異なる抑圧周波数を設定しているため、ゲインFは共通であるが、推定ゲインLとA行列が、第1のヘッドと第2のヘッドとで異なる。即ち、Fは共通とし、行列Aと推定ゲインLの値を違えることで,図18の高域の周波数の変化に対応できる。
【0127】
この推定ゲインL及び行列Aによる開ループ特性および感度関数は、図23及び図24に示される。図23及び図24において、細線が、モデル1(第1のヘッド),太線がモデル2(第2のヘッド)である。
【0128】
詳細に説明すると、前述の整形フィルタを用いて、前述のオブザーバを構成する。この時のオブザーバで構成される制御系の開ループ特性を、図14と同様に、図23の上段の、周波数対ゲイン特性図、下段の周波数対位相特性図に示す。開ループ特性では、モデル1(第1のヘッド)の細線より、モデル2(第2のヘッド)の太線の場合には、抑圧周波数のピークが、低くなっている。
【0129】
このため、制御系の感度関数については、図15と同様に、図23の周波数対ゲイン特性の太線(モデル2:第2のヘッド)、細線(モデル1:第1のヘッド)に示すように、抑圧周波数は、第2のヘッドの方が、第1のヘッドより低くなり、低い周波数で抑圧される。
【0130】
従って、図22に示すように、テーブル22に、第1のヘッド及び第2のヘッドの推定ゲインL,行列Aを格納し、目標位置r(ここでは、ヘッド番号)により、テーブル22を参照して、目標位置(ヘッド番号)rが、第1のヘッドか第2のヘッドかにより、いずれかの対応ゲイン、行列Aを、オブザーバに設定することにより、図18に示した高域の異なるNRROのピーク周波数を抑圧するような、図23、図24の周波数特性をオブザーバに設定することができる。
【0131】
(位置決め制御系の第2の実施の形態)
図25は、図1のMCU14が実行する外乱を抑圧する位置決め制御系の第2の実施の形態のブロック図である。この位置決め制御系は、外乱を適応制御により、抑圧するためのオブザーバ制御系であり、図6の外乱モデルを、コントローラから分離して、実装した適応制御系である。
【0132】
図25において、図6で示したものと同一のものは、同一の記号で示してある。このオブザーバは、外乱モデルを分離可能な構成に設計した場合であり、式(1)、(2)、(3)を変形して、下記式(16)、(17)、(18)、(19)、(20)で表したものである。
【0133】
【数16】

【0134】
【数17】

【0135】
【数18】

【0136】
【数19】

【0137】
【数20】

即ち、式(16)乃至式(20)と式(1)乃至(3)を比較すると、式(3)のコントローラのモデルを独立させたものが、式(19)であり、外乱モデル50を分離した式が、式(20)となる。又、式(16)と式(1)は、同じであるが、式(19)と式(20)を分離したため、式(3)の出力式は、式(17)と式(18)に分離される。
【0138】
図25で説明すると、この実施の形態は、コントローラのモデルから外乱モデル50を分離した適応制御系の例である。図25において、第1の演算ブロック30は、ヘッド3が読み取った前述のサーボ情報を復調して得た観測位置y[k]から目標位置rを差し引き、実位置誤差er[k]を演算する。第2の演算ブロック32は、実位置誤差er[k]からオブザーバの推定位置x[k]を差し引き、推定位置誤差e[k]を演算する。
【0139】
コントローラモデルでは、この推定位置誤差e[k]は、状態推定ブロック34に入力され、コントローラの推定ゲインLa(L1,L2)を用いて、推定修正値(式(16)の右辺)が、演算される。そして、遅延ブロック46から状態量(式(16)の左辺)x[k],v[k]と加算ブロック36で加算され、式(16)のように、推定位置x[k],推定速度v[k]を得る。尚、式(16)では、推定位置誤差e[k]を、(y[k]−x[k])で表示する。
【0140】
この推定値のx[k],v[k]は、第4の演算ブロック38で、状態フィードバックゲイン(一Fa=F1,F2)を乗算され、式(17)のように、アクチュエータ1の第1の駆動値u[k]を得る。一方、加算ブロック36からの式(1)の推定値x[k],v[k]は、第5の演算ブロック42で、推定ゲインAa(式(19)の2×2の(1,0)の行列)を乗じられ、第4の演算ブロック38の駆動値u[k]は、第6の演算ブロック40で、推定ゲインBa(式(19)のu[k]に乗じる値)を乗じられる。両乗算結果は、加算ブロック44で、加算され、式(19)の次のサンプルの推定状態量x[k+1],v[k+1]を得る。
【0141】
この次のサンプルの推定状態量は、前述のように、遅延ブロック46に入力し、状態推定ブロック34で、推定修正値で、修正される。そして、加算ブロック36からの式(16)の推定値は、第7の演算ブロック48で、推定位置x[k]が取り出され、前述の第2の演算ブロック32に入力する。
【0142】
一方、外乱モデル50では、推定位置誤差e[k]が、外乱の状態推定ブロック51に入力され、推定ゲインLd1(L3,L4,L5)を用いて、推定修正値(式(16)の右辺)が、演算される。そして、遅延ブロック52から状態量(式(16)の左辺)と、加算ブロック56で加算され、式(16)のように、推定バイアス値b[k],推定外乱抑圧値z1[k],z2[k]を得る。
【0143】
この推定値b[k],z1[k],z2[k]は、第8の演算ブロック58で、状態フィードバックゲイン(Fd1=F3,F4,F5)を乗算され、式(18)のように、アクチュエータ1の外乱抑圧駆動値を得る。一方、加算ブロック56からの式(16)の推定値のb[k],z1[k],z2[k]は、第9の演算ブロック54で、推定ゲインAd1(式(20)のb[k]のゲイン及び2×2のA行列のゲイン)を乗じられ、遅延ブロック52に入力し、次のサンプルの推定値b[k+1],z1[k+1],z2[k+1]を得る。
【0144】
そして、加算ブロック60で、駆動値u[k]に、外乱抑圧駆動値を差し引き、式(18)の出力駆動値uout[k]を得る。
【0145】
即ち、推定ゲインLを、コントローラモデルと外乱モデルで分離し、且つフィードバックゲインFを、コントローラモデルと外乱モデルで分離し、コントローラモデルと外乱モデルを分離して、設計する。
【0146】
この例でも、図6乃至図24で示したように、各外乱モデルを整形フィルタで設計して、同様に、拡大モデルを設計し、同様に、テーブル22により、ヘッド位置に応じて、推定ゲインL,行列A,フィードバックゲインを変更して、周波数特性を位置に応じて、最適化する。
【0147】
(他の実施の形態)
前述の実施の形態では、外乱オブザーバ制御を、磁気ディスク装置のヘッド位置決め装置の適用の例で説明したが、光ディスク装置等の他のディスク装置にも適用できる。又、図19の例では、位置を、インナーとアウターに分類しているが、ディスクの半径方向の3つ以上の領域(ゾーン)に分類して、外乱抑圧周波数特性をテーブル22に設定しても良い。
【0148】
同様に、図22の例では、1台の装置に2つのヘッドを搭載する例で説明したが、3つ以上のヘッドを搭載する場合には、各ヘッドの外乱抑圧周波数特性をテーブル22に設定しても良い。更に、図22のものと、図19のものを組み合わせることもできる。
【0149】
更に、外乱周波数の数は、必要に応じて、適宜採用でき、それに応じて、外乱モデルの数も適宜採用できる。同様に、2次フィルタで実施例を説明したが、1次フィルタや、1次フィルタと2次フィルタの組み合わせを、必要な抑圧周波数に応じて、使用することもできる。
【0150】
以上、本発明を、実施の形態で説明したが、本発明は、その趣旨の範囲内で種々の変形が可能であり、これを本発明の範囲から排除するものではない。
【0151】
(付記1)ディスク記憶媒体の所定位置に、アクチュエータによりヘッドを位置決め制御するヘッド位置決め制御方法において、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算するステップと、前記位置誤差とオブザーバの推定位置との推定位置誤差を演算するステップと、前記推定位置誤差に従い、前記オブザーバの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するステップと、前記ヘッドの目標位置に対応する推定ゲインをテーブルから引き出し、前記オブザーバに設定して、外乱抑圧周波数を変更するステップとを有することを特徴とするヘッド位置決め制御方法。
【0152】
(付記2)前記変更ステップは、NRRO(Non Repeatable Run Out)外乱の抑圧周波数特性を変更するステップからなることを特徴とする付記1のヘッド位置決め制御方法。
【0153】
(付記3)前記変更ステップは、前記ヘッドの前記ディスクの半径方向の位置に対応する推定ゲインをテーブルから引き出し、前記オブザーバの風外乱の抑圧周波数特性を変更するステップからなることを特徴とする付記2のヘッド位置決め制御方法。
【0154】
(付記4)前記変更ステップは、前記ヘッドの前記ディスク面の位置を示すヘッド番号に対応する推定ゲインをテーブルから引き出し、前記オブザーバの抑圧周波数のピークを変更するステップからなることを特徴とする付記2のヘッド位置決め制御方法。
【0155】
(付記5)前記制御値を演算するステップは、コントローラの推定ゲインと、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一のフィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルの推定ゲインとを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を含む前記制御値を演算するステップからなることを特徴とする付記1のヘッド位置決め制御方法。
【0156】
(付記6)前記制御値を演算するステップは、前記推定位置誤差に従い、前記コントローラの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するステップと、前記推定位置誤差に従い、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一のフィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値外乱抑圧値を演算するステップと、前記制御値と前記外乱抑圧値とを加算して、前記アクチュエータの駆動値を演算するステップを有することを特徴とする付記5のヘッド位置決め制御方法。
【0157】
(付記7)前記外乱抑圧値を演算するステップは、前記感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形するフィルタの前記分子の零点を極に持つ外乱モデルの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算するステップからなることを特徴とする付記6のヘッド位置決め制御方法。
【0158】
(付記8)前記外乱抑圧値を演算するステップは、感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形する1次又は2次のフィルタの前記分子を分母とした外乱モデルの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算するステップからなることを特徴とする付記6のヘッド位置決め制御方法。
【0159】
(付記9)ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドと、前記ディスク記憶媒体の所定位置に、前記ヘッドを位置決めするアクチュエータと、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算し、前記位置誤差とオブザーバの推定位置との推定位置誤差を演算し、前記推定位置誤差に従い、前記オブザーバの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算する制御ユニットと、前記ヘッドの目標位置に対応する推定ゲインを格納するテーブルとを有し、前記制御ユニットは、前記テーブルから前記目標位置に対応する前記推定ゲイン引き出し、前記オブザーバに設定して、外乱抑圧周波数を変更することを特徴とするディスク装置。
【0160】
(付記10)前記制御ユニットは、前記オブザーバのNRRO(Non Repeatable Run Out)外乱の抑圧周波数特性を変更することを特徴とする付記9のディスク装置。
【0161】
(付記11)前記制御ユニットは、前記ヘッドの前記ディスクの半径方向の位置に対応する推定ゲインを前記テーブルから引き出し、前記オブザーバの風外乱の抑圧周波数特性を変更することを特徴とする付記10のディスク装置。
【0162】
(付記12)前記制御ユニットは、前記ヘッドの前記ディスク面の位置を示すヘッド番号に対応する推定ゲインをテーブルから引き出し、前記オブザーバの抑圧周波数のピークを変更することを特徴とする付記10のディスク装置。
【0163】
(付記13)前記制御ユニットは、コントローラの推定ゲインと、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一のフィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルの推定ゲインとを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を含む前記制御値を演算することを特徴とする付記9のディスク装置。
【0164】
(付記14)前記制御ユニットは、前記推定位置誤差に従い、前記コントローラの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算し、前記推定位置誤差に従い、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一のフィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値外乱抑圧値を演算し、前記制御値と前記外乱抑圧値とを加算して、前記アクチュエータの駆動値を演算することを特徴とする付記13のディスク装置。
【0165】
(付記15)前記制御ユニットは、前記感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形するフィルタの前記分子の零点を極に持つ外乱モデルの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記14のディスク装置。
【0166】
(付記16)前記制御ユニットは、感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形する1次又は2次のフィルタの前記分子を分母とした外乱モデルの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記14のディスク装置。
【0167】
(付記17)ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドを、アクチュエータを制御して、前記ディスク記憶媒体の所定位置に位置決めするヘッド位置制御装置において、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから推定位置誤差を演算し、前記位置誤差とオブザーバの推定位置との推定位置誤差に従い、オブザーバの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算する制御ユニットと、前記ヘッドの目標位置に対応する推定ゲインを格納するテーブルとを有し、前記制御ユニットは、前記テーブルから前記目標位置に対応する前記推定ゲイン引き出し、前記オブザーバに設定して、外乱抑圧周波数を変更することを特徴とするヘッド位置制御装置。
【0168】
(付記18)前記制御ユニットは、前記オブザーバのNRRO(Non Repeatable Run Out)外乱の抑圧周波数特性を変更することを特徴とする付記17のヘッド位置制御装置。
【0169】
(付記19)前記制御ユニットは、前記ヘッドの前記ディスクの半径方向の位置に対応する推定ゲインを前記テーブルから引き出し、前記オブザーバの風外乱の抑圧周波数特性を変更することを特徴とする付記18のヘッド位置制御装置。
【0170】
(付記20)前記制御ユニットは、前記ヘッドの前記ディスク面の位置を示すヘッド番号に対応する推定ゲインをテーブルから引き出し、前記オブザーバの抑圧周波数のピークを変更することを特徴とする付記18のヘッド位置制御装置。
【0171】
(付記21)前記制御ユニットは、コントローラの推定ゲインと、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一のフィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルの推定ゲインとを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を含む前記制御値を演算することを特徴とする付記17のヘッド位置制御装置。
【0172】
(付記22)前記制御ユニットは、前記推定位置誤差に従い、前記コントローラの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算し、前記推定位置誤差に従い、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一のフィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値外乱抑圧値を演算し、前記制御値と前記外乱抑圧値とを加算して、前記アクチュエータの駆動値を演算することを特徴とする付記2のヘッド位置制御装置。
【0173】
(付記23)前記制御ユニットは、前記感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形するフィルタの前記分子の零点を極に持つ外乱モデルの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記21のヘッド位置制御装置。
【0174】
(付記24)前記制御ユニットは、感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形する1次又は2次のフィルタの前記分子を分母とした外乱モデルの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記21のヘッド位置制御装置。
【産業上の利用可能性】
【0175】
外乱抑圧機能有するオブザーバの推定ゲインを、ヘッドの位置に応じて変更し、外乱抑圧周波数特性を変更するため、ヘッドの半径方向やディスク間の位置に応じて、外乱抑圧特性を最適化でき、高密度化しても、ヘッドの振動を防止でき、位置決め精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】本発明の一実施形態を示すディスク装置の構成図である。
【図2】図1のディスクの位置信号の説明図である。
【図3】図2の位置信号の詳細説明図である。
【図4】図1のシーク制御の遷移図である。
【図5】本発明の位置決め制御系のブロック図である。
【図6】本発明の位置決め制御系の第1の実施の形態のブロック図である。
【図7】図6の外乱オブザーバのアナログ設計手順の説明図である。
【図8】図6の外乱オブザーバのデジタル設計手順の説明図である。
【図9】図6の実施の形態の第1の実施例の整形フィルタの特性図である。
【図10】図6の実施の形態の第1の実施例の開ループ特性図である。
【図11】図6の実施の形態の第1の実施例の感度関数の特性図である。
【図12】図6の実施の形態の第1の実施例の加速度外乱特性図である。
【図13】図6の実施の形態の第2の実施例の整形フィルタの特性図である。
【図14】図6の実施の形態の第2の実施例の開ループ特性図である。
【図15】図6の実施の形態の第2の実施例の感度関数の特性図である。
【図16】図6の実施の形態の第2の実施例の加速度外乱特性図である。
【図17】図6の実施の形態の外乱抑圧周波数特性の変更のための説明図である。
【図18】図17のNRRO特性の説明図である。
【図19】図6の実施の形態のテーブルの説明図である。
【図20】図19のテーブルの開ループ特性図である。
【図21】図19の実施の形態の感度関数の特性図である。
【図22】図6の実施の形態の他のテーブルの説明図である。
【図23】図22のテーブルの開ループ特性図である。
【図24】図22の実施の形態の感度関数の特性図である。
【図25】本発明の第2の実施の形態の位置決め制御系のブロック図である。
【図26】第1の従来技術の説明図である。
【図27】第2の従来技術の説明図である。
【図28】第3の従来技術の説明図である。
【符号の説明】
【0177】
1 アクチュエータ
2 スピンドルモータの回転軸
3 ヘッド
4 ディスク
5 スピンドルモータ
6 アクチュエータのVCM駆動回路
7 位置復調回路
8 スピンドルモータの駆動回路
9 バス
10 データの記録再生回路
11 ハードディスクコントローラ
12 MCUのRAM
13 MCUのROM
14 マイクロコントローラユニット
15 ハードディスクコントローラのRAM
16 位置信号
50 外乱オブザーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク記憶媒体の所定位置に、アクチュエータによりヘッドを位置決め制御するヘッド位置決め制御方法において、
前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算するステップと、
前記位置誤差とオブザーバの推定位置との推定位置誤差を演算するステップと、
前記推定位置誤差に従い、前記オブザーバの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するステップと、
前記ヘッドの目標位置に対応する推定ゲインをテーブルから引き出し、前記オブザーバに設定して、外乱抑圧周波数を変更するステップとを有する
ことを特徴とするヘッド位置決め制御方法。
【請求項2】
前記変更ステップは、NRRO(Non Repeatable Run Out)外乱の抑圧周波数特性を変更するステップからなる
ことを特徴とする請求項1のヘッド位置決め制御方法。
【請求項3】
前記変更ステップは、前記ヘッドの前記ディスクの半径方向の位置に対応する推定ゲインをテーブルから引き出し、前記オブザーバの風外乱の抑圧周波数特性を変更するステップからなる
ことを特徴とする請求項2のヘッド位置決め制御方法。
【請求項4】
ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドと、
前記ディスク記憶媒体の所定位置に、前記ヘッドを位置決めするアクチュエータと、
前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算し、前記位置誤差とオブザーバの推定位置との推定位置誤差を演算し、前記推定位置誤差に従い、前記オブザーバの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算する制御ユニットと、
前記ヘッドの目標位置に対応する推定ゲインを格納するテーブルとを有し、
前記制御ユニットは、前記テーブルから前記目標位置に対応する前記推定ゲイン引き出し、前記オブザーバに設定して、外乱抑圧周波数を変更する
ことを特徴とするディスク装置。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記オブザーバのNRRO(Non Repeatable Run Out)外乱の抑圧周波数特性を変更する
ことを特徴とする請求項4のディスク装置。
【請求項6】
前記制御ユニットは、コントローラの推定ゲインと、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一のフィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルの推定ゲインとを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を含む前記制御値を演算する
ことを特徴とする請求項4のディスク装置。
【請求項7】
前記制御ユニットは、前記推定位置誤差に従い、前記コントローラの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算し、前記推定位置誤差に従い、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一のフィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値外乱抑圧値を演算し、前記制御値と前記外乱抑圧値とを加算して、前記アクチュエータの駆動値を演算する
ことを特徴とする請求項6のディスク装置。
【請求項8】
ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドを、アクチュエータを制御して、前記ディスク記憶媒体の所定位置に位置決めするヘッド位置制御装置において、
前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから推定位置誤差を演算し、前記位置誤差とオブザーバの推定位置との推定位置誤差に従い、オブザーバの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算する制御ユニットと、
前記ヘッドの目標位置に対応する推定ゲインを格納するテーブルとを有し、
前記制御ユニットは、前記テーブルから前記目標位置に対応する前記推定ゲイン引き出し、前記オブザーバに設定して、外乱抑圧周波数を変更する
ことを特徴とするヘッド位置制御装置。
【請求項9】
前記制御ユニットは、前記オブザーバのNRRO(Non Repeatable Run Out)外乱の抑圧周波数特性を変更する
ことを特徴とする請求項8のヘッド位置制御装置。
【請求項10】
前記制御ユニットは、前記ヘッドの前記ディスク面の位置を示すヘッド番号に対応する推定ゲインをテーブルから引き出し、前記オブザーバの抑圧周波数のピークを変更する
ことを特徴とする請求項9のヘッド位置制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2008−41147(P2008−41147A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212225(P2006−212225)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】