説明

ヘテロ芳香族化合物及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】発光層内において電子輸送性と正孔輸送性のバランスを取る化合物の提供。また、これを利用することで低電圧かつ長寿命な有機エレクトロルミネッセンス素子の提供。
【解決手段】下記式(A)で表される化合物。式(A)中、Acは特定のアクリジン誘導体、L及びLは、それぞれ、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜18のヘテロ芳香族環であり、Aは、置換もしくは無置換のジベンゾフラン環、又は置換もしくは無置換のジベンゾチオフェン環であり、Arは、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜18のヘテロ芳香族環であり、nは1又は2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロ芳香族化合物、特にジヒドロアクリジン誘導体、それを含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、及びそれを含む有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子には、蛍光型及び燐光型があり、それぞれの発光メカニズムに応じ、最適な素子設計が検討されている。燐光型の有機EL素子については、その発光特性から、蛍光素子技術の単純な転用では高性能な素子が得られないことが知られている。その理由は、一般的に以下のように考えられている。
まず、燐光発光は、三重項励起子を利用した発光であるため、発光層に用いる化合物のエネルギーギャップが大きくなくてはならない。何故なら、ある化合物のエネルギーギャップ(以下、一重項エネルギーともいう。)の値は、通常、その化合物の三重項エネルギー(本発明では、最低励起三重項状態と基底状態とのエネルギー差をいう。)の値よりも大きいからである。
【0003】
従って、燐光発光性ドーパント材料の三重項エネルギーを効率的に発光層内に閉じ込めるためには、まず、燐光発光性ドーパント材料の三重項エネルギーよりも大きい三重項エネルギーのホスト材料を発光層に用いなければならない。さらに、発光層に隣接する電子輸送層、及び正孔輸送層を設け、電子輸送層、及び正孔輸送層に燐光発光性ドーパント材料の三重項エネルギーよりも大きい化合物を用いなければならない。
このように、従来の有機EL素子の素子設計思想に基づく場合、蛍光型の有機EL素子に用いる化合物と比べて大きなエネルギーギャップを有する化合物を燐光型の有機EL素子に用いることにつながり、有機EL素子全体の駆動電圧が上昇する。
【0004】
また、蛍光素子で有用であった酸化耐性や還元耐性の高い炭化水素系の化合物はπ電子雲の広がりが大きいため、エネルギーギャップが小さい。そのため、燐光型の有機EL素子では、このような炭化水素系の化合物が選択され難く、酸素や窒素等のヘテロ原子を含んだ有機化合物が選択され、その結果、燐光型の有機EL素子は、蛍光型の有機EL素子と比較して寿命が短いという問題を有する。
【0005】
さらに、燐光発光性ドーパント材料の三重項励起子の励起子緩和速度が一重項励起子と比較して非常に長いことも素子性能に大きな影響を与える。即ち、一重項励起子からの発光は、発光に繋がる緩和速度が速いため、発光層の周辺層(例えば、正孔輸送層や電子輸送層)への励起子の拡散が起きにくく、効率的な発光が期待される。一方、三重項励起子からの発光は、スピン禁制であり緩和速度が遅いため、周辺層への励起子の拡散が起きやすく、特定の燐光発光性化合物以外からは熱的なエネルギー失活が起きてしまう。つまり、電子、及び正孔の再結合領域のコントロールが蛍光型の有機EL素子よりも重要である。
【0006】
以上のような理由から燐光型の有機EL素子の高性能化には、蛍光型の有機EL素子と異なる材料選択、及び素子設計が必要になっている。
特に、青色発光する燐光型の有機EL素子の場合、緑〜赤色発光する燐光型の有機EL素子と比べて、発光層やその周辺層に三重項エネルギーが大きい化合物を使用する必要がある。具体的に、効率の損失無く青色の燐光発光を得るためには、発光層に使用するホスト材料の三重項エネルギーは概ね3.0eV以上が必要である。このような高い三重項エネルギーを有しながら、その他、有機EL材料として求められる性能を満たす化合物を得るためには、複素環化合物等の三重項エネルギーの高い分子パーツを単純に組み合わせるのではなく、π電子の電子状態を考慮した新たな思想による分子設計が必要になる。
【0007】
このような状況下、青色発光する燐光型の有機EL素子の材料として、種々の化合物が検討されている。例えば、特許文献1にはジヒドロアクリジン、及びジベンゾチオフェン又はカルバゾールを組み合わせたホスト材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−180204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、発光層内において電子輸送性と正孔輸送性のバランスを取る化合物を提供することである。また、これを利用することで低電圧かつ長寿命な有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、以下の化合物等が提供される。
1.下記式(A)で表される化合物。
【化1】

(式(A)中、Acは下記式(1)〜(5)のいずれかであり、
及びLは、それぞれ、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜18のヘテロ芳香族環であり、
Aは、置換もしくは無置換のジベンゾフラン環、又は置換もしくは無置換のジベンゾチオフェン環であり、
Arは、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜18のヘテロ芳香族環であり、
nは1又は2であり、
nが1の場合、Acは下記式(1)又は(2)であり、nが2の場合、Acは下記式(3)〜(5)のいずれかであり、nが2の場合、複数のL、L、A及びArは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【化2】

(式(1)〜(5)中、X11〜X18は、それぞれ、CR、Lと結合する炭素原子、又は窒素原子であり、
〜Rは、それぞれ、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜20のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜20のシクロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18の芳香族炭化水素環、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜18のヘテロ芳香族環、置換もしくは無置換のアミノ基、フッ素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のフルオロアルキル基、又はシアノ基である。
*は、Lとの結合位置を示す。))
2.X11〜X18が、それぞれ、CR、又はLと結合する炭素原子である1に記載の化合物。
3.R及びRが、それぞれ、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、又はフェニル基である1又は2に記載の化合物。
4.R及びRが、共にメチル基である1〜3のいずれかに記載の化合物。
5.Aが、置換もしくは無置換のジベンゾフラン環である1〜4のいずれかに記載の化合物。
6.Arが、水素原子、置換もしくは無置換のベンゼン環、置換もしくは無置換のカルバゾール環、置換もしくは無置換のアザカルバゾール環、置換もしくは無置換のジヒドロアクリジン環、置換もしくは無置換のジベンゾフラン環、又は置換もしくは無置換のジベンゾチオフェン環である1〜5のいずれかに記載の化合物。
7.L及びLの一方又は両方が単結合である1〜6のいずれかに記載の化合物。
8.1〜7のいずれかに記載の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
9.陰極と陽極の間に発光層を含む一層以上の有機薄膜層を有し、前記有機薄膜層のうち少なくとも1層が8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
10.前記発光層が前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料をホスト材料として含む9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
11.前記発光層が燐光発光材料を含有する9又は10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
12.前記燐光発光材料がイリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、白金(Pt)から選択される金属原子のオルトメタル化錯体である11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
13.前記陰極と前記発光層の間に電子注入層を有し、前記電子注入層が含窒素環誘導体を含む9〜12のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
14.前記陰極と前記発光層の間に有機薄膜層を有し、前記有機薄膜層が前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む9〜13のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
15.前記陽極と前記発光層の間に有機薄膜層を有し、前記有機薄膜層が前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む9〜13のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発光層内において電子輸送性と正孔輸送性のバランスを取る化合物を提供できる。また、これを利用することで低電圧かつ長寿命な有機エレクトロルミネッセンス素子が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の有機EL素子の一実施形態を示す図である。
【図2】本発明の有機EL素子の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の化合物は下記式(A)で表される。
【化3】

(式(A)中、Acは下記式(1)〜(5)のいずれかである。
及びLは、それぞれ、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜18のヘテロ芳香族環である。
Aは、置換もしくは無置換のジベンゾフラン環、又は置換もしくは無置換のジベンゾチオフェン環である。
Arは、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜18のヘテロ芳香族環である。
nは1又は2であり、nが1の場合、Acは下記式(1)又は(2)であり、nが2の場合、Acは下記式(3)〜(5)のいずれかであり、nが2の場合、複数のL、L、A及びArは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【化4】

(式(1)〜(5)中、X11〜X18は、それぞれ、CR、Lと結合する炭素原子、又は窒素原子である。
〜Rは、それぞれ、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜20のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜20のシクロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18の芳香族炭化水素環、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜18のヘテロ芳香族環、置換もしくは無置換のアミノ基、フッ素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のフルオロアルキル基、又はシアノ基である。
*は、Lとの結合位置を示す。))
【0014】
本発明の化合物は、カルバゾールと比較してイオン化ポテンシャルが浅く、かつ正孔注入性に優れるジヒドロアクリジン骨格と、電子耐性及び電子輸送性能を有するジベンゾフラン又はジベンゾチオフェンを組み合わせて有することにより、電荷バランスに優れる。
【0015】
上記L及びLは、好ましくは一方又は両方が単結合であり、より好ましくは、一方が環形成炭素数6〜18の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環)、又はカルバゾール環であり、他方が単結合である。このようにすると、三重項エネルギー(T1)を大きく保てるので好ましい。また、連結基(L、L)が長くなると、T1が小さくなる場合がある。
【0016】
上記Aは、好ましくは置換又は無置換のジベンゾフラン環である。置換又は無置換のジベンゾフラン環は、電子耐性を有し、かつ電子輸送性能により優れるため好ましい。
【0017】
上記Arは、好ましくは置換もしくは無置換のベンゼン環、置換もしくは無置換のカルバゾール環、置換もしくは無置換のアザカルバゾール環、置換もしくは無置換のジヒドロアクリジン環、置換もしくは無置換のジベンゾフラン環、又は置換もしくは無置換のジベンゾチオフェン環である。これらの基は電子耐性に優れ、かつT1が大きいため好ましい。
【0018】
上記式(1)〜(5)において、X11〜X18は好ましくはそれぞれCR、又はLと結合する炭素原子であり、X11〜X18がそれぞれCRである場合、Rは好ましくは水素原子、フェニル基又は炭素数1〜6のアルキル基である。
及びRは、好ましくはそれぞれ水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、又はフェニル基であり、より好ましくはそれぞれ炭素数1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくは共にメチル基である。R及びRが共にメチル基であると、T1が大きく保てるため好ましい。
は、好ましくは水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18の芳香族炭化水素環であり、より好ましくはフェニル基である。
【0019】
以下、上述した式(A)の各基の例について説明する。
炭素数1〜20のアルキル基としては、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基があり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基である。
【0020】
環形成炭素数3〜20のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−ノルボルニル基、2−ノルボルニル基等が挙げられ、好ましくはシクロペンチル基、シクロヘキシル基である。
【0021】
炭素数1〜20のアルコキシ基は、−OYと表され、Yの例として上記のアルキルの例が挙げられる。アルコキシ基は、例えばメトキシ基、エトキシ基である。アルコキシ基はフッ素原子で置換されていてもよく、この場合、トリフルオロメトキシ基等が好ましい。
【0022】
環形成炭素数3〜20のシクロアルコキシ基は、−OYと表され、Yの例として上記のシクロアルキル基の例が挙げられる。シクロアルコキシ基は、例えばシクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基である。
【0023】
環形成炭素数6〜18の芳香族炭化水素環は、好ましくは環形成炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。尚、「環形成炭素」とは飽和環、不飽和環、又は芳香環を構成する炭素原子を意味する。
芳香族炭化水素環の一価の基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ナフタセニル基、ピレニル基、クリセニル基、ベンゾ[c]フェナントリル基、ベンゾ[g]クリセニル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、ビフェニルイル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基、フルオランテニル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基である。
芳香族炭化水素環が置換基を有する場合、置換基としては上記のアルキル基が好ましく、置換の芳香族炭化水素環としては9,9−ジメチルフルオレニル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素環の二価以上の基としては、上述した基の二価以上の基が挙げられる。
【0024】
環形成炭素数6〜18のアリールオキシ基は、−OYと表され、Yの例として上記の芳香族炭化水素環の例が挙げられる。アリールオキシ基は、例えばアリールオキシ基は、例えばフェノキシ基である。
【0025】
環形成原子数5〜18のヘテロ芳香族環は、好ましくは環形成原子数5〜12のヘテロ芳香族環である。
ヘテロ芳香族環の一価の基の具体例としては、ピロリル基、ピラジニル基、ピリジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、インドリル基、イソインドリル基、イミダゾリル基、フリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、カルバゾリル基、アザカルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ジヒドロアクリジニル基、ジヒドロアザアクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、ベンゾチオフェニル基、キナゾリル基等が挙げられ、好ましくは、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、アザカルバゾリル基である。
ヘテロ芳香族環の二価以上の基としては、上述した基の二価以上の基が挙げられる。
【0026】
置換又は無置換のアミノ基としては、アミノ基、炭素数1〜10(好ましくは炭素数1〜6)のアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基、炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜10)のアリールアミノ基又はジアリールアミノ基等が挙げられる。
好ましくは、ジフェニルアミノ基である。
【0027】
フルオロアルキル基としては、上述した炭素数1〜20のアルキル基に1つ以上のフッ素原子が置換した基が挙げられる。具体的には、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、トリフルオロメチルメチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。好ましくは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基である。
【0028】
上述した各基の「置換もしくは無置換の・・・」の置換基としては、上記R〜Rの基が挙げられ、即ち、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜20のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜20のシクロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18の芳香族炭化水素環、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜18のヘテロ芳香族環、置換もしくは無置換のアミノ基、フッ素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のフルオロアルキル基、シアノ基等が挙げられる。
本発明において、水素原子とは、中性子数が異なる同位体、即ち、軽水素(protium)、重水素(deuterium)、三重水素(tritium)を包含する。
【0029】
上記式(A)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【化5】

【化6】

【化7】

【0030】
本発明の化合物は、有機EL素子を構成する有機薄膜層の材料として好適に使用できる。
本発明の有機EL素子用材料は、有機EL素子の発光層や、発光層に隣接する層、例えば、正孔輸送層、電子輸送層、正孔障壁層又は電子障壁層の材料等として特に好ましい。
【0031】
続いて、本発明の有機EL素子について説明する。
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極の間に、発光層を含む一層以上の有機薄膜層を有する。そして、有機薄膜層の少なくとも一層が、本発明の有機EL素子用材料を含有する。
【0032】
図1は、本発明の有機EL素子の一実施形態の層構成を示す概略図である。
有機EL素子1は、基板10上に、陽極20、正孔輸送帯域30、燐光発光層40、電子輸送帯域50及び陰極60を、この順で積層した構成を有する。正孔輸送帯域30は、正孔輸送層又は正孔注入層等を意味する。同様に、電子輸送帯域50は、電子輸送層又は電子注入層等を意味する。これらは形成しなくともよいが、好ましくは1層以上形成する。この素子において有機薄膜層は、正孔輸送帯域30に設けられる各有機層、燐光発光層40及び電子輸送帯域50に設けられる各有機層である。これら有機薄膜層のうち、少なくとも1層が本発明の有機EL素子用材料を含有する。これにより、有機EL素子の駆動電圧を低くできる。
尚、本発明の有機EL素子用材料を含有する有機薄膜層に対するこの材料の含有量は、好ましくは1〜100重量%である。
【0033】
本発明の有機EL素子においては、燐光発光層40が本発明の有機EL素子用材料を含有することが好ましく、特に、発光層のホスト材料として使用することが好ましい。本発明の材料は、3重項エネルギーが十分に大きいため、青色の燐光発光性ドーパント材料を使用しても、燐光発光性ドーパント材料の三重項エネルギーを効率的に発光層内に閉じ込めることができる。尚、青色発光層に限らず、より長波長の光(緑〜赤色等)の発光層にも使用できる。
【0034】
燐光発光層は、燐光発光性材料(燐光ドーパント)を含有する。燐光ドーパントとしては、金属錯体化合物が挙げられ、好ましくはIr,Pt,Os,Au,Cu,Re及びRuから選択される金属原子と、配位子とを有する化合物である。配位子は、オルトメタル結合を有すると好ましい。
燐光量子収率が高く、発光素子の外部量子効率をより向上させることができるという点で、燐光ドーパントは、Ir,Os及びPtから選ばれる金属原子を含有する化合物であると好ましく、イリジウム錯体、オスミウム錯体、白金錯体等の金属錯体であるとさらに好ましく、中でもイリジウム錯体及び白金錯体がより好ましく、オルトメタル化イリジウム錯体が最も好ましい。ドーパントは、1種単独でも、2種以上の混合物でもよい。
【0035】
燐光発光層における燐光ドーパントの添加濃度は特に限定されるものではないが、好ましくは0.1〜30重量%(wt%)、より好ましくは0.1〜10重量%(wt%)である
【0036】
また、燐光発光層40に隣接する層に本発明の材料を使用することも好ましい。例えば、正孔輸送帯域30又は電子輸送帯域50が本発明の材料を含むと好ましい。
また、図1の素子の正孔輸送帯域30と燐光発光層40の間に、本発明の材料を含有する層(陽極側隣接層)を形成した場合、該層は電子障壁層としての機能や励起子阻止層としての機能を有する。
一方、燐光発光層40と電子輸送帯域50の間に本発明の材料を含有する層(陰極側隣接層)を形成した場合、該層は正孔障壁層としての機能や励起子阻止層としての機能を有する。
尚、障壁層(阻止層)とは、キャリアの移動障壁、又は励起子の拡散障壁の機能を有する層である。発光層から正孔輸送帯域へ電子が漏れることを防ぐための有機層を主に電子障壁層と定義し、発光層から電子輸送帯域へ正孔が漏れることを防ぐための有機層を正孔障壁層と定義することがある。また、発光層で生成された三重項励起子が、三重項エネルギーが発光層よりも低い準位を有する周辺層へ拡散することを防止するための有機層を励起子阻止層(トリプレット障壁層)と定義することがある。
また、本材料は、燐光発光層40に隣接する層に接合する他の有機薄膜層に用いることもできる。
【0037】
さらに、発光層を2層以上形成する場合、発光層間に形成するスペース層としても好適である。
図2は、本発明の有機EL素子の他の実施形態の層構成を示す概略図である。
有機EL素子2は、燐光発光層と蛍光発光層を積層したハイブリッド型の有機EL素子の例である。
有機EL素子2は、燐光発光層40と電子輸送帯域50の間にスペース層42と蛍光発光層44を形成した他は、上記有機EL素子1と同様な構成を有する。燐光発光層40及び蛍光発光層44を積層した構成では、燐光発光層40で形成された励起子を蛍光発光層44に拡散させないため、蛍光発光層44と燐光発光層40の間にスペース層42を設けることがある。本発明の材料は、三重項エネルギーが大きいため、スペース層として機能できる。
【0038】
有機EL素子2において、例えば、燐光発光層を黄色発光とし、蛍光発光層を青色発光層とすることにより、白色発光の有機EL素子が得られる。尚、本実施形態では燐光発光層及び蛍光発光層を1層ずつとしているが、これに限らず、それぞれ2層以上形成してもよく、照明や表示装置等、用途に合わせて適宜設定できる。例えば、白色発光素子とカラーフィルタを利用してフルカラー発光装置とする場合、演色性の観点から、赤、緑、青(RGB)、赤、緑、青、黄(RGBY)等、複数の波長領域の発光を含んでいることが好ましい場合がある。
【0039】
上述した実施形態の他に、本発明の有機EL素子は、公知の様々な構成を採用できる。また、発光層の発光は、陽極側、陰極側、あるいは両側から取り出すことができる。
【0040】
本発明の有機EL素子は、陰極と有機薄膜層との界面領域に電子供与性ドーパント及び有機金属錯体の少なくともいずれかを有することも好ましい。
このような構成によれば、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
電子供与性ドーパントとしては、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、希土類金属、及び希土類金属化合物等から選ばれた少なくとも一種類が挙げられる。
有機金属錯体としては、アルカリ金属を含む有機金属錯体、アルカリ土類金属を含む有機金属錯体、及び希土類金属を含む有機金属錯体等から選ばれた少なくとも一種類が挙げられる。
【0041】
アルカリ金属としては、リチウム(Li)(仕事関数:2.93eV)、ナトリウム(Na)(仕事関数:2.36eV)、カリウム(K)(仕事関数:2.28eV)、ルビジウム(Rb)(仕事関数:2.16eV)、セシウム(Cs)(仕事関数:1.95eV)等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。これらのうち好ましくはK、Rb、Cs、さらに好ましくはRb又はCsであり、最も好ましくはCsである。
アルカリ土類金属としては、カルシウム(Ca)(仕事関数:2.9eV)、ストロンチウム(Sr)(仕事関数:2.0eV以上2.5eV以下)、バリウム(Ba)(仕事関数:2.52eV)等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。
希土類金属としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、テルビウム(Tb)、イッテルビウム(Yb)等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。
以上の金属のうち好ましい金属は、特に還元能力が高く、電子注入域への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が可能である。
【0042】
アルカリ金属化合物としては、酸化リチウム(LiO)、酸化セシウム(CsO)、酸化カリウム(K2O)等のアルカリ酸化物、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カリウム(KF)等のアルカリハロゲン化物等が挙げられ、フッ化リチウム(LiF)、酸化リチウム(LiO)、フッ化ナトリウム(NaF)が好ましい。
アルカリ土類金属化合物としては、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)及びこれらを混合したストロンチウム酸バリウム(BaxSr1-xO)(0<x<1)、カルシウム酸バリウム(BaxCa1-xO)(0<x<1)等が挙げられ、BaO、SrO、CaOが好ましい。
希土類金属化合物としては、フッ化イッテルビウム(YbF)、フッ化スカンジウム(ScF)、酸化スカンジウム(ScO)、酸化イットリウム(Y)、酸化セリウム(Ce)、フッ化ガドリニウム(GdF)、フッ化テルビウム(TbF)等が挙げられ、YbF、ScF、TbFが好ましい。
【0043】
有機金属錯体としては、上記の通り、それぞれ金属イオンとしてアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、希土類金属イオンの少なくとも1つを含有するものであれば特に限定はない。また、配位子にはキノリノール、ベンゾキノリノール、アクリジノール、フェナントリジノール、ヒドロキシフェニルオキサゾール、ヒドロキシフェニルチアゾール、ヒドロキシジアリールオキサジアゾール、ヒドロキシジアリールチアジアゾール、ヒドロキシフェニルピリジン、ヒドロキシフェニルベンゾイミダゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシフルボラン、ビピリジル、フェナントロリン、フタロシアニン、ポルフィリン、シクロペンタジエン、β−ジケトン類、アゾメチン類、及びそれらの誘導体等が好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0044】
電子供与性ドーパント及び有機金属錯体の添加形態としては、界面領域に層状又は島状に形成することが好ましい。形成方法としては、抵抗加熱蒸着法により電子供与性ドーパント及び有機金属錯体の少なくともいずれかを蒸着しながら、界面領域を形成する発光材料や電子注入材料である有機物を同時に蒸着させ、有機物中に電子供与性ドーパント及び有機金属錯体還元ドーパントの少なくともいずれかを分散する方法が好ましい。分散濃度は通常、モル比で有機物:電子供与性ドーパント及び/又は有機金属錯体=100:1〜1:100であり、好ましくは5:1〜1:5である。
【0045】
電子供与性ドーパント及び有機金属錯体の少なくともいずれかを層状に形成する場合は、界面の有機層である発光材料や電子注入材料を層状に形成した後に、電子供与性ドーパント及び有機金属錯体の少なくともいずれかを単独で抵抗加熱蒸着法により蒸着し、好ましくは層の厚み0.1nm以上15nm以下で形成する。
【0046】
電子供与性ドーパント及び有機金属錯体の少なくともいずれかを島状に形成する場合は、界面の有機層である発光材料や電子注入材料を島状に形成した後に、電子供与性ドーパント及び有機金属錯体の少なくともいずれかを単独で抵抗加熱蒸着法により蒸着し、好ましくは島の厚み0.05nm以上1nm以下で形成する。
【0047】
また、本発明の有機EL素子における、主成分と、電子供与性ドーパント及び有機金属錯体の少なくともいずれかの割合としては、モル比で、主成分:電子供与性ドーパント及び/又は有機金属錯体=5:1〜1:5であると好ましく、2:1〜1:2であるとさらに好ましい。
【0048】
本発明の有機EL素子では、上述した本発明の有機EL素子用材料を使用した層以外の構成については、特に限定されず、公知の材料等を使用できる。以下、実施形態1の素子の層について簡単に説明するが、本発明の有機EL素子に適用される材料は以下に限定されない。
【0049】
[基板]
基板としてはガラス板、ポリマー板等を用いることができる。
ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等が挙げられる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン等を挙げることができる。
【0050】
[陽極]
陽極は例えば導電性材料からなり、4eVより大きな仕事関数を有する導電性材料が適している。
上記導電性材料としては、炭素、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム等及びそれらの合金、ITO基板、NESA基板に使用される酸化スズ、酸化インジウム等の酸化金属、さらにはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂が挙げられる。
陽極は、必要があれば2層以上の層構成により形成されていてもよい。
【0051】
[陰極]
陰極は例えば導電性材料からなり、4eVより小さな仕事関数を有する導電性材料が適している。
上記導電性材料としては、マグネシウム、カルシウム、錫、鉛、チタニウム、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン、アルミニウム、フッ化リチウム等及びこれらの合金が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、上記合金としては、マグネシウム/銀、マグネシウム/インジウム、リチウム/アルミニウム等が代表例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。合金の比率は、蒸着源の温度、雰囲気、真空度等により制御され、適切な比率に選択される。
陰極は、必要があれば2層以上の層構成により形成されていてもよく、陰極は上記導電性材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。
【0052】
発光層からの発光を陰極から取り出す場合、陰極の発光に対する透過率は10%より大きくすることが好ましい。
また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1μmであり、好ましくは50〜200nmである。
【0053】
[発光層]
本発明の有機EL素子層材料以外の材料で燐光発光層を形成する場合、燐光発光層の材料として公知の材料が使用できる。具体的には、特願2005−517938等を参照すればよい。
本発明の有機EL素子は、図2に示す素子のように蛍光発光層を有していてもよい。蛍光発光層としては、公知の材料が使用できる。
【0054】
発光層は、ダブルホスト(ホスト・コホストともいう)としてもよい。具体的に、発光層において電子輸送性のホストと正孔輸送性のホストを組み合わせることで、発光層内のキャリアバランスを調整してもよい。
また、ダブルドーパントとしてもよい。発光層において、量子収率の高いドーパント材料を2種類以上入れることによって、それぞれのドーパントが発光する。例えば、ホストと赤色ドーパント、緑色のドーパントを共蒸着することによって、黄色の発光層を実現することがある。
発光層は単層でもよく、また、積層構造でもよい。発光層を積層させると、発光層界面に電子と正孔を蓄積させることによって再結合領域を発光層界面に集中させることができる。これによって、量子効率を向上させる。
【0055】
[正孔注入層及び正孔輸送層]
正孔注入・輸送層は、発光層への正孔注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギーが通常5.6eV以下と小さい層である。
正孔注入・輸送層の材料としては、より低い電界強度で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、さらに正孔の移動度が、例えば10〜10V/cmの電界印加時に、少なくとも10−4cm/V・秒であれば好ましい。
【0056】
正孔注入・輸送層の材料としては、具体的には、トリアゾール誘導体(米国特許3,112,197号明細書等参照)、オキサジアゾール誘導体(米国特許3,189,447号明細書等参照)、イミダゾール誘導体(特公昭37−16096号公報等参照)、ポリアリールアルカン誘導体(米国特許3,615,402号明細書、同第3,820,989号明細書、同第3,542,544号明細書、特公昭45−555号公報、同51−10983号公報、特開昭51−93224号公報、同55−17105号公報、同56−4148号公報、同55−108667号公報、同55−156953号公報、同 56−36656号公報等参照)、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体(米国特許第3,180,729号明細書、同第4,278,746号明細書、特開昭55−88064号公報、同55−88065号公報、同49−105537号公報、同55−51086号公報、同56−80051号公報、同56−88141号公報、同57−45545号公報、同54−112637号公報、同55−74546号公報等参照)、フェニレンジアミン誘導体(米国特許第3,615,404号明細書、特公昭51−10105号公報、同46−3712号公報、同47−25336号公報、同54−119925号公報等参照)、アリールアミン誘導体(米国特許第3,567,450号明細書、同第3,240,597号明細書、同第3,658,520号明細書、同第4,232,103号明細書、同第4,175,961号明細書、同第4,012,376号明細書、特公昭49−35702号公報、同39−27577号公報、特開昭55−144250号公報、同56−119132号公報、同56−22437号公報、西独特許第1,110,518号明細書等参照)、アミノ置換カルコン誘導体(米国特許第3,526,501号明細書等参照)、オキサゾール誘導体(米国特許第3,257,203号明細書等に開示のもの)、スチリルアントラセン誘導体(特開昭56−46234号公報等参照)、フルオレノン誘導体(特開昭54−110837号公報等参照)、ヒドラゾン誘導体(米国特許第3,717,462号明細書、特開昭54−59143号公報、同55−52063号公報、同55−52064号公報、同55−46760号公報、同57−11350号公報、同57−148749号公報、特開平2−311591号公報等参照)、スチルベン誘導体(特開昭61−210363号公報、同第61−228451号公報、同61−14642号公報、同61−72255号公報、同62−47646号公報、同62−36674号公報、同62−10652号公報、同62−30255号公報、同60−93455号公報、同60−94462号公報、同60−174749号公報、同60−175052号公報等参照)、シラザン誘導体(米国特許第4,950,950号明細書)、ポリシラン系(特開平2−204996号公報)、アニリン系共重合体(特開平2−282263号公報)等を挙げることができる。
また、p型Si、p型SiC等の無機化合物も正孔注入材料として使用することができる。
【0057】
正孔注入・輸送層の材料には架橋型材料を用いることができ、架橋型の正孔注入輸送層としては、例えば、Chem.Mater.2008,20,413-422、Chem.Mater.2011,23(3),658-681、WO2008108430、WO2009102027、WO2009123269、WO2010016555、WO2010018813等の架橋材を、熱、光等により不溶化した層が挙げられる。
【0058】
[電子注入層及び電子輸送層]
電子注入・輸送層は、発光層への電子の注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、電子移動度が大きい層である。
有機EL素子は発光した光が電極(例えば陰極)により反射するため、直接陽極から取り出される発光と、電極による反射を経由して取り出される発光とが干渉することが知られている。この干渉効果を効率的に利用するため、電子注入・輸送層は数nm〜数μmの膜厚で適宜選ばれるが、特に膜厚が厚いとき、電圧上昇を避けるために、10〜10V/cmの電界印加時に電子移動度が少なくとも10−5cm/Vs以上であることが好ましい。
【0059】
電子注入・輸送層に用いる電子輸送性材料としては、分子内にヘテロ原子を1個以上含有する芳香族ヘテロ環化合物が好ましく用いられ、特に含窒素環誘導体が好ましい。また、含窒素環誘導体としては、含窒素6員環もしくは5員環骨格を有する芳香族環、又は含窒素6員環もしくは5員環骨格を有する縮合芳香族環化合物が好ましく、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ベンズイミダゾール環、フェナントロリン環を骨格に含む化合物が挙げられる。
【0060】
その他、ドナー性材料のドーピング(n)、アクセプター材料のドーピング(p)により、半導体性を備えた有機層を形成してもよい。Nドーピングの代表例は、電子輸送性材料にLiやCs等の金属をドーピングさせるものであり、Pドーピングの代表例は、正孔輸送性材料にF4TCNQ等のアクセプター材をドープするものである(例えば、特許3695714参照)。
【0061】
本発明の有機EL素子の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディッピング、フローコーティング等の湿式成膜法等の公知の方法を適用することができる。
各層の膜厚は特に限定されるものではないが、適切な膜厚に設定する必要がある。膜厚が厚すぎると、一定の光出力を得るために大きな印加電圧が必要になり効率が悪くなる。膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生して、電界を印加しても充分な発光輝度が得られない。通常の膜厚は5nm〜10μmの範囲が適しているが、10nm〜0.2μmの範囲がさらに好ましい。
【実施例】
【0062】
[化合物の合成]
合成例1[化合物Aの合成]
(1)中間体Aの合成
以下の工程により中間体Aを合成した。
【化8】

アルゴン雰囲気下、国際公開第2009−008100号パンフレットに記載の方法に従って合成した2,8−ジブロモジベンゾフラン32.6g(100mmol)、3−(N−カルバゾリル)フェニルボロン酸28.7g(100mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液100ml、1,2−ジメトキシエタン(DME)100ml、トルエン100mlを加え、次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム2.31g(2mmol)を加えて、10時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣に、トルエン1000mlを加えて120℃に加熱し、不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン=4/1)で精製することにより、中間体A19.5g(収率40%)を白色固体として得た。
【0063】
(2)化合物Aの合成
以下の工程により化合物Aを合成した。
【化9】

アルゴン雰囲気下、中間体A19.5g(40mmol)、特開2010−180204号公報に記載の方法に従って合成した中間体B8.4g(40mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.37g(0.4mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩0.46g(1.6mmol)、t−ブトキシナトリウム5.4g(56mmol)、無水トルエン100mlを順次加えて8時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=3/1)で精製することにより、化合物A16.0g(収率65%)を白色固体として得た。
FD−MS分析の結果、分子量616に対してm/e=616であった。
【0064】
合成例2[化合物Bの合成]
(1)中間体Cの合成
以下の工程により中間体Cを合成した。
【化10】

アルゴン雰囲気下、中間体B20.9g(100mmol)、3−ブロモヨードベンゼン28.3g(100mmol)、ヨウ化銅19.0g(100mmol)、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン11.4g(100mmol)、リン酸三カリウム42.4g(200mmol)を脱水1,4−ジオキサン150mlに加えて、96時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣に、トルエン500mlを加えて120℃に加熱し、不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=3/1)で精製することにより、中間体C29.1g(収率80%)を淡黄色固体として得た。
【0065】
(2)中間体Eの合成
以下の工程により中間体Eを合成した。
【化11】

アルゴン雰囲気下、国際公開第2009−008100号パンフレットに記載の方法に従って合成した中間体D4.1g(10mmol)に脱水テトラヒドロフラン(THF)50mlを加え、−70℃で攪拌した。次いで、1.6Mのn−ブチルリチウムn−ヘキサン溶液6.25mlを滴下装入した。−70℃で1時間攪拌した後、ホウ酸トリイソプロピル5.6g(30mmol)を加え、−70℃で1時間攪拌した後、室温で5時間攪拌した。反応液を濃縮後、ジクロロメタン400mlと1N塩酸50mlを加えて、氷水浴下で、1時間攪拌した。有機相を分取して、無水硫酸マグネシウムで乾燥してから濾液を濃縮した。得られた固体をヘキサン−トルエンの混合溶媒で懸濁洗浄することにより、中間体E2.3g(収率60%)を白色固体として得た。
【0066】
(3)化合物Bの合成
以下の工程により化合物Bを合成した。
【化12】

アルゴン雰囲気下、中間体C2.2g(6mmol)、中間体E2.3g(6mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液6ml、1,2−ジメトキシエタン(DME)6ml、トルエン20mlを加え、次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.21g(0.18mmol)を加えて、8時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣に、トルエン200mlを加えて120℃に加熱し、不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン=3/1)で精製することにより、化合物B2.6g(収率70%)を白色固体として得た。
FD−MS分析の結果、分子量616に対してm/e=616であった。
【0067】
合成例3[化合物Cの合成]
(1)中間体Fの合成
以下の工程により中間体Fを合成した。
【化13】

アルゴン雰囲気下、2,8−ジブロモジベンゾフラン32.6g(100mmol)、ジベンゾフラン−2−ボロン酸21.2g(100mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液100ml、1,2−ジメトキシエタン(DME)100ml、トルエン100mlを加え、次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム2.31g(2mmol)を加えて、15時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣に、トルエン1000mlを加えて120℃に加熱し、不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン=3/1)で精製することにより、中間体F14.5g(収率35%)を白色固体として得た。
【0068】
(2)化合物Cの合成
以下の工程により化合物Cを合成した。
【化14】

中間体F4.1g(10mmol)を出発原料として、合成例2(2)の方法に従って、8−(ジベンゾフラン−2−イル)ジベンゾフラン−2−ボロン酸を合成し、中間体Cと合成例2(3)の方法に従って反応させることにより、化合物C2.8g(収率45%、2工程)を白色固体として得た。
FD−MS分析の結果、分子量617に対してm/e=617であった。
【0069】
合成例4[化合物Dの合成]
(1)中間体Gの合成
【化15】

アルゴン雰囲気下、2−ヨードジベンゾフラン38g(154mmol)、3−ブロモカルバゾール45.4g(154mmol)、ヨウ化銅8.8g(46.3mmol)、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン17.6g(154mmol)、リン酸三カリウム68.8g(324mmol)を脱水1,4−ジオキサン700mlに加えて、14時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣に、テトラヒドロフラン500mlを加えて撹拌し、シリカゲルを通して不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮して得られた残渣をトルエンに溶解してシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン100%)で精製することにより、中間体G38g(収率59%)を白色固体として得た。
【0070】
(2)化合物Dの合成
【化16】

アルゴン雰囲気下、中間体G2.5g(6.1mmol)、中間体B1.4g(6.1mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.11g(0.12mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩0.14g(0.48mmol)、t−ブトキシナトリウム0.82g(8.5mmol)、無水トルエン50mlを順次加えて8時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=2/3)で精製することにより、化合物D1.5g(収率45%)を白色固体として得た。
FD−MS分析の結果、分子量540に対してm/e=540であった。
【0071】
合成例5[化合物Eの合成]
【化17】

アルゴン雰囲気下、中間体F3.0g(7.3mmol)、中間体B1.5g(7.3mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.13g(0.14mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩0.17g(0.59mmol)、t−ブトキシナトリウム0.98g(10.2mmol)、無水トルエン60mlを順次加えて8時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン=1/2)で精製することにより、化合物E3.6g(収率91%)を白色固体として得た。
FD−MS分析の結果、分子量541に対してm/e=541であった。
【0072】
また、H−NMR測定の結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz、CDCl)δ1.74(6H、s)、6.31−6.34(2H、m)、6.91−6.99(4H、m)、7.34−7.38(1H、m)、7.43−7.50(4H、m)、7.58−7.66(2H、m)、7.71−7.75(2H、m)、7.80−7.85(2H、m)、7.98−8.01(1H、m)、8.02(1H、d、J=2.0Hz)、8.18(2H、dd、J=1.6Hz、6.0Hz)
【0073】
合成例6[化合物Fの合成]
(1)中間体Hの合成
【化18】

アルゴン雰囲気下、ジベンゾフラン−2−ボロン酸21.2g(100mmol)、3−ブロモカルバゾール24.6g(100mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液100ml、1,2−ジメトキシエタン(DME)100ml、トルエン100mlを加え、次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム2.31g(2mmol)を加えて、20時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣に、トルエン1000mlを加えて120℃に加熱し、不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエンのみ)で繰り返し精製することにより、中間体H17.0g(収率51%)を白色固体として得た。
【0074】
(2)中間体Iの合成
【化19】

アルゴン雰囲気下、中間体H10.0g(30mmol)、2−ブロモジベンゾフラン7.4g(30mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.55g(0.60mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩0.70g(2.4mmol)、t−ブトキシナトリウム4.1g(42mmol)、無水トルエン150mlを順次加えて8時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタンのみ)で精製し、さらに濃縮して得られた固体を1,2−ジメトキシエタンで洗浄することにより、中間体I9.5g(収率64%)を白色固体として得た。
【0075】
(3)中間体Jの合成
【化20】

アルゴン雰囲気下、中間体I9.5g(19mmol)、N−ブロモコハク酸イミド3.4g(19mmol)、無水N,N−ジメチルホルムアミド40mlを順次加えて5時間室温で攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=9/1〜1/9)で精製することにより、中間体J5.2g(収率47%)を白色固体として得た。
【0076】
(4)化合物Fの合成
【化21】

アルゴン雰囲気下、中間体J2.66g(4.6mmol)、中間体B1.0g(4.78mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム84mg(0.092mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩0.11g(0.38mmol)、t−ブトキシナトリウム0.62g(6.45mmol)、無水トルエン50mlを順次加えて8時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン=1/1)で精製することにより、化合物F2.5g(収率76%)を白色固体として得た。
FD−MS分析の結果、分子量706に対してm/e=706であった。
【0077】
[有機EL素子]
実施例1
[有機EL素子の作製]
25mm×75mm×1.1mmのITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック社製)に、イソプロピルアルコール中での5分間の超音波洗浄を施し、さらに、30分間のUV(Ultraviolet)オゾン洗浄を施した。
このようにして洗浄した透明電極付きガラス基板を、真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず、ガラス基板の透明電極ラインが形成されている側の面上に、透明電極を覆うようにして、化合物Iを厚さ20nmで蒸着し、正孔注入層を得た。次いで、この膜上に、化合物IIを厚さ60nmで蒸着し、正孔輸送層を得た。
【0078】
この正孔輸送層上に、燐光ホスト材料として化合物Aと燐光発光材料である化合物D−1とを厚さ50nmで共蒸着し、燐光発光層を得た。燐光発光層内における化合物Aの濃度は80質量%、化合物D−1の濃度は20質量%であった。
【0079】
続いて、この燐光発光層上に化合物H−1を厚さ10nmで蒸着し、第一電子輸送層を得た。さらに、化合物IIIを厚さ10nmで蒸着して第二電子輸送層を得た後、厚さ1nmのLiF、厚さ80nmの金属Alを順次積層し、陰極を得た。尚、電子注入性電極であるLiFについては、1Å/minの速度で形成した。
以下に、実施例及び比較例で使用した化合物を示す。
【化22】

【0080】
[有機EL素子の発光性能評価]
上記のように作製した有機EL素子を直流電流駆動により発光させ、輝度、電流密度を測定し、電流密度1mA/cmにおける電圧及び発光効率(外部量子効率)を求めた。さらに初期輝度3,000cd/mにおける輝度70%寿命(輝度が70%まで低下する時間)を求めた。結果を表1に示す。
【0081】
実施例2
燐光ホスト材料として化合物Aの代わりに化合物Bを用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0082】
実施例3
第一電子輸送層材料として化合物H−1の代わりに化合物Aを用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0083】
実施例4
燐光ホスト材料として化合物Aの代わりに化合物Bを用いて、第一電子輸送層材料として化合物H−1の代わりに化合物Bを用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0084】
実施例5
燐光ホスト材料として化合物Aの代わりに化合物Dを用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0085】
実施例6
燐光ホスト材料として化合物Aの代わりに化合物Eを用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0086】
実施例7
燐光ホスト材料として化合物Aの代わりに化合物Fを用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0087】
比較例1
燐光ホスト材料として化合物Aの代わりに化合物H−2を用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
本発明の化合物は、正孔注入性に優れるジヒドロアクリジン骨格を有するため、実施例1〜7の素子は、発光層への正孔注入量が増加し、比較例の素子より低電圧化した。また、実施例1〜7で用いた化合物は、電子耐性及び電子輸送性能を有するジベンゾフラン骨格と組み合わせたことで電荷バランスが向上し、発光効率が高く長寿命化する素子が得られた。
【0090】
実施例8
実施例1において、正孔輸送層を、化合物IIを厚さ50nmで蒸着し、その上に化合物Aを厚さ10nmで蒸着して作製し、発光層において燐光ホスト材料として化合物Aの代わりに化合物H−1を用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、実施例1と同様にして電圧と外部量子効率を評価した。結果を表2に示す。
【0091】
実施例9
正孔輸送層において化合物Aの代わりに化合物Bを用いた他は、実施例8と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0092】
実施例10
正孔輸送層において化合物Aの代わりに化合物Dを用いた他は、実施例8と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0093】
実施例11
正孔輸送層において化合物Aの代わりに化合物Eを用いた他は、実施例8と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0094】
実施例12
正孔輸送層において化合物Aの代わりに化合物Fを用いた他は、実施例8と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0095】
比較例2
燐光ホスト材料として化合物Aの代わりに化合物H−1を用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0096】
【表2】

【0097】
本発明の化合物は正孔注入性に優れているため、正孔輸送層としても用いることができる。また、高い三重項エネルギーを有する本発明の化合物は、青色燐光発光に必要な高い三重項エネルギーを発光層内に閉じ込められるので、高効率な青色燐光発光素子が得られた。
【0098】
正孔輸送層として用いた本発明の化合物、及び化合物IIの三重項エネルギーを表3に示す。
【0099】
【表3】

【0100】
尚、三重項エネルギー(E(eV))は、下記方法で評価した。
まず、試料をEPA溶媒(ジエチルエーテル:イソペンタン:エタノール=5:5:2(容積比))に10μmol/Lで溶解させ、燐光測定用試料とした。この燐光測定用試料を石英セルに入れ、温度77Kで励起光を照射し、放射される燐光スペクトルを測定した。これを基に換算式E(eV)=1239.85/λedgeによって求めた値を三重項エネルギーと定義した。
上記「λedge」とは、縦軸に燐光強度、横軸に波長をとって、燐光スペクトルを表したときに、燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸の交点の波長値(単位:nm)を意味する。
燐光スペクトルの測定には、(株)日立ハイテクノロジー製のF−4500型分光蛍光光度計本体と低温測定用オプション部品を用いた。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の有機EL素子は、壁掛けテレビのフラットパネルディスプレイ等の平面発光体、複写機、プリンター、液晶ディスプレイのバックライト又は計器類等の光源、表示板、標識灯等に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)で表される化合物。
【化23】

(式(A)中、Acは下記式(1)〜(5)のいずれかであり、
及びLは、それぞれ、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜18のヘテロ芳香族環であり、
Aは、置換もしくは無置換のジベンゾフラン環、又は置換もしくは無置換のジベンゾチオフェン環であり、
Arは、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜18のヘテロ芳香族環であり、
nは1又は2であり、
nが1の場合、Acは下記式(1)又は(2)であり、nが2の場合、Acは下記式(3)〜(5)のいずれかであり、nが2の場合、複数のL、L、A及びArは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【化24】

(式(1)〜(5)中、X11〜X18は、それぞれ、CR、Lと結合する炭素原子、又は窒素原子であり、
〜Rは、それぞれ、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜20のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜20のシクロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18の芳香族炭化水素環、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜18のヘテロ芳香族環、置換もしくは無置換のアミノ基、フッ素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のフルオロアルキル基、又はシアノ基である。
*は、Lとの結合位置を示す。))
【請求項2】
11〜X18が、それぞれ、CR、又はLと結合する炭素原子である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
及びRが、それぞれ、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、又はフェニル基である請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
及びRが、共にメチル基である請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
Aが、置換もしくは無置換のジベンゾフラン環である請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
Arが、水素原子、置換もしくは無置換のベンゼン環、置換もしくは無置換のカルバゾール環、置換もしくは無置換のアザカルバゾール環、置換もしくは無置換のジヒドロアクリジン環、置換もしくは無置換のジベンゾフラン環、又は置換もしくは無置換のジベンゾチオフェン環である請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
及びLの一方又は両方が単結合である請求項1〜6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項9】
陰極と陽極の間に発光層を含む一層以上の有機薄膜層を有し、前記有機薄膜層のうち少なくとも1層が請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記発光層が前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料をホスト材料として含む請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記発光層が燐光発光材料を含有する請求項9又は10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
前記燐光発光材料がイリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、白金(Pt)から選択される金属原子のオルトメタル化錯体である請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
前記陰極と前記発光層の間に電子注入層を有し、前記電子注入層が含窒素環誘導体を含む請求項9〜12のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
前記陰極と前記発光層の間に有機薄膜層を有し、前記有機薄膜層が前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む請求項9〜13のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
前記陽極と前記発光層の間に有機薄膜層を有し、前記有機薄膜層が前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む請求項9〜13のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−75890(P2013−75890A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−198801(P2012−198801)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代高効率・高品質照明の基盤技術開発/有機EL照明の高効率・高品質化に係る基盤技術開発」プロジェクトの委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】