説明

ヘパリン−誘導オリゴ糖混合物、その製造およびその混合物を含有する医薬組成物

本発明は、1800〜2400ダルトンの平均分子量を有し、かつ高いaXa活性によりおよびaIIa活性の欠如により特徴付けられる、ヘパリン誘導オリゴ糖混合物に関する。当該発明はまた、その製造方法およびその混合物を含有する医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い抗−Xa(aXa)活性および抗−IIa(aIIa)活性の欠如により特徴付けられ、1800〜2400ダルトンの平均分子量を有する、ヘパリンから誘導されるオリゴ糖混合物、それらを製造する方法およびそれらを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘパリンは動物起源の硫酸化ムコ多糖の混合物であり、特にその抗凝血および抗血栓特性のために使用される。
【0003】
しかし、ヘパリンはその使用条件を制限する欠点を有する。特に、その実質的な抗凝血活性(aIIa)は出血を引き起こす(Seminars in Thrombosis and Hemostasis, vol 5 sup.
3(1999))。
【0004】
現在販売されるヘパリンエステルの塩基性解重合により特に得られる低分子ヘパリン、例えばエノキサパリン(Enoxaparin)はまた、実質的にaIIa活性を示す。
【0005】
より最近、超低分子ヘパリン(very low molecular weight heparin)が、先行技術において記載されている。例えば、米国特許6 384 021において、生成物は100〜120 IU/mgの間の抗−Xa活性および2〜8IU/mgの間の抗−IIa活性を示す。国際出願WO 02/08295およびWO 2004/033503において、生成物は5 IU/mg未満の抗−IIa活性について特に100〜190 IU/mgの間である抗−Xa活性を有する。しかし、これらの超低分子ヘパリンは、抗−IIa活性を有しないかまたは実質的に有しない一方、190 IU/mgより大きい抗−Xa活性を有効に有しない。(IU=国際単位)
【0006】
表現「実質的に抗−IIa活性を有しない」(換言すれば、実質的に抗−IIa活性を示さない)は、0.2 IU/mg未満の活性を意味する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一つの主題は、活性化因子X(Xa因子)に対する非常に選択的な活性を有するが、同時に抗−IIa活性を示さないかまたは実質的に示さないオリゴ糖混合物である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の一つの主題は、ヘパリンの成分多糖の一般的構造を有し、かつ以下の特性を有するオリゴ糖混合物である:
−平均分子量1800〜2400ダルトン、190 IU/mgから450 IU/mgの間の抗−Xa活性を有し、抗−IIa活性を有しないかまたは実質的に有さず、
−上記混合物の成分オリゴ糖類は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の形態で、
−2〜16糖単位を含み、
−末端の一方に4,5−不飽和ウロン酸2−O−硫酸単位を有し、
−以下の式:
【化1】

の六糖を含む。
【0009】
本発明に記載されるオリゴ糖混合物中に含まれる六糖ΔIIa−IIs−Isは、ATIIIに対して高い親和性を有する配列であり、そして740IU/mgより大きいaXa活性により特徴付けられる。
好ましいアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩である。
【0010】
平均分子量は、連続して2つのカラムを用いて高圧液体クロマトグラフィー、例えばTSK G3000 XLおよびTSK G2000 XLの名称で販売されるものにより測定される。検出は屈折計法により行われる。用いられる溶離剤は硝酸リチウムであり、そして流速は0.6 ml/分である。この系はアガロース−ポリアクリルアミドゲル(IBF)のクロマトグラフィーによるエノキサパリンの分画により製造された標準品で調整される。この製造は、Barrowcliffe他, Thromb. Res., 12, 27-36(1977-78)またはD.A. Lane他, Thromb. Res., 12, 257-271(1977-78)により記載される技術にしたがって行われる。この結果はGPC6ソフトウェア(Perkin Elmer)を用いて算出される。
【0011】
抗−Xa活性は、Teien他, Thromb. Res., 10, 399-410(1977)により記載される原理にしたがって、発色基質によるアミド分解法を介して測定される。このアッセイは、再構成緩衝液を除き、施行されているヨーロッパ薬局方の低分子ヘパリンに関するモノグラフに記載の方法にしたがって実施され:トリス−NaCl緩衝液、pH 7.4中のアルブミンをポリエチレングリコール 6000(PEG 6000)に替えた。抗Xa活性は、140〜180 U/mg(乾燥質量)である標準超低分子ヘパリン(VLMWH)と比較して測定される。
【0012】
標準VLMWHの活性は、国際低分子ヘパリン標準と比較して測定される。この標準VLMWHを特許出願WO、WO 02/08 295および特にWO 2004/033503の教示にしたがって製造した。標準VLMWHの活性は、国際低分子ヘパリン標準と比較して測定される。
【0013】
抗−IIa活性は、施行されているヨーロッパ薬局方の低分子ヘパリンに関するモノグラフに記載される方法にしたがって、発色基質によるアミド分解法を介して測定される。AIIa活性は、2.1 IU/mgの測定活性を有する標準超低分子ヘパリン(VLMWH)と比較して測定される。標準VLMWHの活性は、国際低分子ヘパリン標準と比較して測定される。
【0014】
一つの好ましい実施形態にしたがって、本発明によるオリゴ糖混合物は20%〜100%の六糖画分を含む。特に、この混合物は30%〜60%の六糖画分を含む。
さらに、本発明による混合物は、オリゴ糖混合物の六糖画分中に20%〜70%の六糖ΔIIa−IIs−Isを含む。特に、この画分ΔIIa−IIs−Isは、25%〜50%の割合で六糖画分中に存在する。
六糖画分の割合は、TSK G3000 XLおよびTSK G2000 XLカラムの高圧液体クロマトグラフィーにより、または六糖画分の予備分離により、分析的に決定され得る。
【0015】
この場合、混合物をポリアクリルアミドアガロースタイプのゲルで満たされたカラムのクロマトグラフィーにかける。この混合物を炭酸水素ナトリウム溶液で溶出する。好ましくは、炭酸水素ナトリウム溶液は、0.1 mol/L〜1mol/Lの溶液である。さらにより好ましくは、1 mol/Lの濃度における分離が好ましい。検出はUV分光分析(254 nm)により行う。画分後、炭酸水素ナトリウム溶液中の六糖画分を氷酢酸で中和する。次いで、溶液を減圧下で濃縮し、30質量%より大きい酢酸ナトリウム濃度を得る。六糖画分を3〜5容量のメタノールの添加により沈殿させる。六糖画分をNo.3焼結漏斗による濾過により回収する。得られる六糖混合物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析し、六糖(IIa−IIs−Isのその含有量を決定することができる。六糖(IIa−IIs−Isを、分取HPLCにより、または当業者により用いられる技術にしたがって抗トロンビンIIIセファロースカラムの親和性クロマトグラフィーにより単離することができる(M. Hook, I.Bjork, J. Hopwood and U. Lindahl, F.E.B.S letters, vol 656(1)(1976))。
【0016】
好ましくは、本発明による混合物は、1900〜2200ダルトンの間、特に1950〜2150ダルトンの平均分子量を有する。
【0017】
一つの好ましい実施形態にしたがって、本発明によるオリゴ糖混合物は、190 IU/mgから410 IU/mgの間の抗−Xa活性を有し、かつ抗−IIa活性を有しないかまたは実質的に有しない点で特徴づけられる。もっとも具体的には、抗−Xa活性は200〜300 IU/mgの間である。
【0018】
したがって、本発明の主題は、もっとも具体的には以下の特性を有する混合物である:
−1950〜2150ダルトンの間の平均分子量、
−190 IU/mgから410 IU/mgの間の抗−Xa活性および抗−IIa活性を有しないかまたは実質的に有さず、
−30〜60%の六糖画分を含み、この画分は25%〜55%の(IIa−IIs−Is画分を含む。
【0019】
本発明によるオリゴ糖混合物の活性は、以下の記載の特に具体的な方法により得られる。多糖混合物の物理化学特性およびそれに由来する活性が生産方法に関連することは当業者に周知である(J. Med. Chem. 33(6) 1639-2093(1990))。
【0020】
本発明によるオリゴ糖混合物は、有機媒体中における超低分子ヘパリン(VLMWH)のベンジルエステルの第4級アンモニウム塩の解重合により製造され、これ(VLMWH)自体は特許出願WO 02/08295およびWO 2004/033503の教示にしたがって製造される。一般的に、これは超低分子ヘパリンを再解重合する問題であり、とくにこれ自体、強塩基の存在下、好ましくはジクロロメタン中、および3%未満のある割合の水の存在下で、エステル化ヘパリンの解重合により得られた。
【0021】
本発明において出発物質として使用されるVLMWHは、特に、特許出願WO 02/08295およびWO 2004/033503に記載される方法にしたがって製造した。
【0022】
特に、出発物質として用いられるVLMWHは、140 IU/mgより大きいaXa活性、5 IU/mg未満のaIIa活性および2000〜3000ダルトンの間の平均分子量を有する。このaXa活性は、158 IU/mgの測定活性を有する標準VLMWHと比較して測定される。標準VLMWHの活性は、国際低分子ヘパリン標準と比較して測定される。
【0023】
上記方法にしたがって得られる出発VLMWHは、好ましくは20より大きいpKa値を有する強有機塩基を用いて再解重合される(例えばSchwesinger他, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 26, 1167-1169(1987)又はR. Schwesinger他, Angew. Chem. 105, 1420(1993)により定義される好ましいホスファゼン−ファミリー−関連特性)。次に、解重合VLMWHのベンジルエステルの第4級アンモニウム塩を、ナトリウム塩に交換し、残留エステルを鹸化し、そして得られた生成物を場合により精製する。以下の反応スキームは本発明を例示する:
【化2】

【0024】
したがって、本発明の主題はまた、上記で定義されるオリゴ糖混合物を製造する方法であり、ここで140 IU/mgより大きいaXa活性、5 IU/mg未満のaIIa活性および2000〜3000ダルトンの間の平均分子量を有する超低分子ヘパリンは、以下の反応に供される:
a)ベンゼトニウムヘパリネート(benzethonium heparinate)を得るための塩化ベンゼトニウムの作用による塩交換(transsalification)、
b)塩化ベンジルの作用により得られたベンゼトニウムヘパリネートのエステル化、および超低分子ヘパリンのベンジルエステルのナトリウム塩を得るためのアルコール性酢酸ナトリウム溶液による処理、
c)得られたベンジルエステルの塩交換および第4級アンモニウム塩、好ましくはベンゼトニウム、セチルピリジニウムまたはセチルトリメチルアンモニウム塩としての生成、
d)解重合超低分子ヘパリンを得るための、好ましくは20より大きいpKa値を有する強有機塩基による解重合、
e)解重合超低分子ヘパリンの第4級アンモニウム塩のナトリウム塩への交換、
f)残留エステルの鹸化および場合により精製。
【0025】
本発明において、解重合工程(工程d)中のホスファゼン塩基の高い選択性は、特になによりも、ATIIIに対する親和性を有する配列におけるオリゴ糖混合物を予期せず富化するために用いられる。好ましくは、強塩基/エステルモル比は0.2〜5の間およびより特に0.6〜2の間である。
【0026】
ATIIIに対する親和性を有する配列の最適な選択性および最大の保存性のために、VLMWHのベンジルエステル、ベンゼトニウム塩に対して1モル当量のホスファゼン塩基を用いて行う場合0.3%未満の水含有量で行うことが好ましい。
【0027】
ホスファゼンファミリーの塩基は、好ましくは式:
【化3】

(式中、基R1〜R7は、同一または異なって、1〜6個の炭素原子を含む直鎖、分枝鎖または環状アルキル基を示し、これは適当な場合、R3およびR4が、これらを担持する−N−P−N−基と共に6−員複素環を形成できる)の塩基である。特に、本発明の一つの主題は、上記で定義される方法であり、ここで解重合工程d)に用いられる塩基は、2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチルペルヒドロ−1,3,2−ジアザホスホリン(正式な標準名称):1,3,2−ジアザホスホリン−2−アミン, 2−[(1,1−ジメチルエチル)イミノ]−N,N−ジエチル−1,2,2,2,3,5,6−オクタヒドロ−1,3−ジメチル)である。
【0028】
好ましくは、塩交換工程a)の反応は、15〜25℃の範囲の温度における過剰の塩化ベンゼトニウムのナトリウムVLMWHに対する作用により行われる。有利なことには、塩/ナトリウムヘパリンモル比は2.5〜3.5の間である。
【0029】
好ましくは、エステル化工程b)は、25〜45℃の間および好ましくは30〜40℃の間の温度で、有機塩素化溶媒(例えばクロロホルムまたはジクロロメタン)中で行われる。次いで、ナトリウム塩形態のエステルは、アルコール、例えばメタノール中の酢酸ナトリウム10質量%を用いた沈殿により回収される。一般的に、1容量の反応媒体当たり1〜1.2容量のアルコールを用いる。塩化ベンジルの量および反応時間を、40%〜100%の間、および好ましくは70%〜90%の間のエステル化度を得るために適合させる。好ましくは、1質量部のヘパリンのベンゼトニウム塩当たり0.5〜1.5質量部の塩化ベンジルを用いる。同様に、好ましくは、反応時間は10〜35時間の間である。
【0030】
結果的に、本発明による方法は、40%〜100%の間、および好ましくは70%〜90%の間の、ヘパリンのベンジルエステルの第4級アンモニウム塩のエステル化度を用いる。
【0031】
一般的に、解重合ヘパリンのベンジルエステルの第4級アンモニウム塩のナトリウム塩への交換は、15〜25℃の間の温度で、反応媒体をアルコール性酢酸ナトリウム溶液を用いておよび好ましくはメタノール中の酢酸ナトリウム10%溶液(質量/容量)を用いて処理することにより行う。
【0032】
添加された酢酸の質量当量(weight equivalent)は、好ましくは、後に解重合反応に用いられるヘパリンのベンジルエステルの第4級アンモニウム塩の質量より3倍大きい。得られるVLMWHのベンジルエステルの第4級アンモニウム塩は、好ましくは、ベンゼトニウム、セチルピリジニウムまたはセチルトリメチルアンモニウム塩である。
【0033】
塩交換工程c)は、第4級塩化アンモニウムを用いて、好ましくは、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウムまたは塩化セチルトリメチルアンモニウムを用いて、水性媒体中、10〜25℃の間の温度で行われる。有利には、第4級塩化アンモニウム/ヘパリンのベンジルエステルのナトリウム塩モル比は、2.5〜3.5の間である。
【0034】
一般的に、鹸化は、水性媒体中、0〜20℃の間および好ましくは0〜10℃の間の温度で、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化リチウムを用いて行う。一般的に、1〜5モル当量のアルカリ金属水酸化物を用いる。好ましくは、鹸化は、1〜2モル当量のアルカリ金属水酸化物の存在下で行う。
【0035】
最終生成物を、場合により、解重合ヘパリンを精製する任意の公知の方法により精製し得る(例えばEP 0 037 319 B1)。好ましくは、精製は、水性媒体中、過酸化水素を用いて、10〜50℃の温度で行う。好ましくは、この操作は20〜40℃の間の温度で行う。
【0036】
ナトリウム塩形態における本発明による混合物は、別のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩に交換され得る。場合により、ある塩から他の塩への交換は、特許FR 73/13580に記載の方法を用いて行う。
【0037】
本発明は、特に、六糖(IIa−IIs−Isを高濃度にすることを可能にする。低分子ヘパリンをそれを生成する方法により再解重合する場合、得られた生成物の抗−Xa活性は、活性がゼロになるまで大きく減少することが当業者に周知である。エノキサパリン、フラキシパリン、フラグミン、インノヘップ(またはロギパリン)、ノルミフロ、エンボレックス(またはサンドパリン)、フルクサム(またはミニダルトン)、クリバリンおよびヒボールを得る方法が用いられる場合、この現象はこれらのLMWHがそれらの元々の方法を用いて再解重合される場合に観察され得る。このことはATIII部位の保護に関するこれらの方法の低い選択性の結果である。
【0038】
本発明において、ホスファゼン解重合方法に由来するVLMWHが出発物質として用いられる場合、正確には逆の現象が起きる。オリゴ糖混合物のaXa活性が増加し、そしてVLMWHを製造するために用いられるヘパリンのaXa活性を上回りさえする。これはATIIIに対する親和性を有する配列の保護におけるホスファゼン塩基の顕著な選択性の十分に考えられる結果である。
【0039】
この方法の特徴はまた、得られたオリゴ糖混合物の平均分子量を通して観察される。一例として、2400ダルトンの平均分子量を有するVLMWHが解重合される場合、2000 Daの平均分子量を有するオリゴ糖混合物が得られる。ATIIIに対する親和性を有する配列(六糖類および八糖類)はホスファゼン塩基の作用から保護され、これは他の配列の破壊および脱離を生じ、そして結果的に、非解重合性種の平均分子量、すなわち六糖(IIa−IIs−Is(1834 g/mol)の傾向の平均分子量を生じることが見出される。ホスファゼン塩基を用いるヘパリン解重合の工程において、平均分子量は約15000 Da〜約2400 Daに変化することが指摘されるべきである。
【0040】
代替方法として、Xa因子に対する活性および選択性を増加させる本発明による方法はまた、一般的に低分子ヘパリンに応用できる。一例として、例えばエノキサパリン、フラキシパリン、フラグミン、インノヘップ(またはロギパリン)、ノルミフロ、エンボレックス(またはサンドパリン)、フルクサム(またはミニダルトン)、クリバリンおよびヒボールが挙げられる。それらはまた、140IU/mg未満の抗−Xa活性を有するUS 6 384 021(2000−4000 Da)またはWO 02/08295(1500〜3000 Da)に記載される特定の超低分子ヘパリンであり得る(特に100〜140 IU/mgの間)。
【0041】
この方法の特徴は、オリゴ糖混合物の平均分子量に関して予期されない抗−Xa活性の産生により示される(190 IU/mg < aXa < 450 IU/mg; 1800 Da < MW < 2400 Da)。
【0042】
本発明の特定の実施形態にしたがって、オリゴ糖混合物のXa因子に対する選択性は、二糖および四糖画分(ATIIIに特異的に結合しない画分)を除去することによりさらに増加し得る。この場合、混合物はポリアクリルアミドアガロースタイプのゲルまたはポリアクリルアミドゲルで満たされたカラムのクロマトグラフィーにかける。この混合物は炭酸水素ナトリウム溶液で溶出される。好ましくは、炭酸水素ナトリウム溶液は0.1 mol/L〜1mol/Lの溶液である。さらにより好ましくは、分離は1 mol/Lの濃度で行われる。検出はUV分光分析(254 nm)により行われる。二糖および四糖画分の除去後、炭酸水素ナトリウム溶液中のオリゴ糖混合物を、氷酢酸で中和する。次いで、この溶液を減圧下で濃縮し、20質量%より大きい酢酸ナトリウム濃度を得る。このオリゴ糖混合物を3〜5容量のメタノールの添加により沈殿させる。高い親和性のオリゴ糖混合物を濾過により回収する。必要に応じて、適当なカラムにおける脱塩により精製してもよい。実施例6はこの代替の方法を例示し、そして400 IU/mgより大きい抗−Xa活性を有する超低分子ヘパリンを得ることを可能にする。
【0043】
したがって、本発明の主題はまた、オリゴ糖混合物のXa因子に対する増大した選択性を有するオリゴ糖混合物を製造する上記定義される方法であり、ここで二糖および四糖画分はまた、特にポリアクリルアミドアガロースタイプのゲルで満たされたカラムのクロマトグラフィーにより除去される。
本発明による混合物は医薬品として用いられ得る。
【0044】
本発明のオリゴ糖混合物は抗血栓剤として用いられ得る。特に、それらは静脈および動脈血栓症、深部静脈血栓、肺塞栓症、不安定狭心症、心筋梗塞、心臓虚血、末梢動脈の閉塞性疾患および心房性細動を治療または予防するために有用である。それらはまた、平滑筋細胞増殖、アテローム性動脈硬化症および動脈硬化を予防および治療することにおいて、血管形成および成長因子を変化させることにより癌を治療および予防するため、および糖尿病疾患、例えば糖尿病性網膜症および糖尿病性ネフロパシーを治療および予防するために有用である。
【0045】
本発明はまた、有効成分として、式(I)の混合物を、場合により1またはそれ以上の不活性賦形剤と組み合わされて含む医薬組成物に関する。
医薬組成物は、例えば、皮下または静脈内注射用の溶液である。本発明による他の医薬組成物はまた、経肺投与(吸入)または経口投与に用いられる。
投薬量は、患者の年齢、体重および健康状態に応じて変動し得る。成人に対して、それは一般的に、筋内または皮下経路を介して一日当たり20〜100 mgの間である。
以下の実施例は本発明を例示するが、しかし本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0046】
製造例1: 158.8 IU/mgに相当するaXa活性を有する出発超低分子ヘパリンの製造
実施例1の出発材料として用いられる超低分子ヘパリン(VLMWH)は、ナトリウムヘパリンから、特許出願WO 2004/033503にしたがって、上記で定義される工程a〜fを行うことにより製造され、解重合工程は0.6%未満の割合の水の存在下、2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチルペルヒドロ−1,3,2−ジアザホスホリンの存在下において行われる。
【0047】
得られた超低分子ヘパリンの特性
こうして得られた解重合ヘパリンの特性は以下のとおりである:
平均分子量: 2400ダルトン
抗−Xa活性: 158.8 IU/mg
抗−IIa活性: 3.1 IU/mg
抗−Xa活性/抗−IIa活性比: 51
【0048】
製造例2: 158IU/mgに相当するaXa活性を有する出発超低分子ヘパリンの製造
実施例2、3、4および5の出発材料として用いられる超低分子ヘパリン(VLMWH)は、ナトリウムヘパリンから、特許出願WO 2004/033503にしたがって、上記工程a〜fを行うことにより製造され、解重合工程は0.6%未満の割合の水の存在下、2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチルペルヒドロ−1,3,2−ジアザホスホリンの存在下において行われる。
【0049】
得られた超低分子ヘパリンの特性
こうして得られた解重合ヘパリンの特性は以下のとおりである:
平均分子量: 2450ダルトン
抗−Xa活性: 158 IU/mg
抗−IIa活性: 2.1 IU/mg
抗−Xa活性/抗−IIa活性比: 75
【0050】
製造例3: VLMWH、ベンゼトニウム塩
ベンゼトニウム塩へのVLMWHの塩交換(上記方法の工程a)に対応):
製造例1にしたがって得られたVLMWH ナトリウム塩12.53 g(20.7 mmol)を、500 ml三角フラスコAに入れ、そして水85 mlに溶解した(黄色溶液)。
塩化ベンゼトニウム31.62 g(70.5 mmol)を水250 mlの入った100 ml三角フラスコBに入れた(無色溶液)。
Bの内容物をAに注ぎ、そして混合物を約1時間、室温で撹拌した。生じた混合物を約1時間放置して沈殿させた。上清を捨て、次いで同容量の水(250 ml)と交換した。混合物を約15分間撹拌し、そして約30分間放置して沈殿させた。上清を捨て、次いで同容量の水(250 ml)と交換した。この混合物を約15分間撹拌し、次いで濾過した。ケーキを水200 mlで3回洗浄した。湿ったベージュ色固体を吸引により排液し、次いで80℃で約18時間、オーブンにおいて減圧下(6 kPa)で乾燥させた。VLMWHベンゼトニウム塩35.56 gを得た。
得られた収率は89%であった。
【0051】
製造例4
ベンゼトニウム塩へのVLMWHの塩交換(上記方法の工程a)に対応):
製造例2にしたがって得られたVLMWH ナトリウム塩17.93 g(30.2 mmol)を、1L三角フラスコAに入れ、そして水120 mlに溶解した(黄色溶液)。
塩化ベンゼトニウム45 g(0.1 mol)を水360 mlの入った500 ml三角フラスコBに入れた(無色溶液)。
Bの内容物をAに注ぎ、そして混合物を約1時間、室温で撹拌した。生じた混合物を約1時間放置して沈殿させた。上清を捨て、次いで同容量の水(500 ml)と交換した。混合物を約15分間撹拌し、そしておよそ30分間放置して沈殿させた。上清を捨て、次いで同容量の水(500 ml)と交換した。この混合物を約15分間撹拌し、次いで濾過した。ケーキを水200 mlで3回洗浄した。湿ったベージュ色固体を吸引により排液し、次いで80℃で約48時間、オーブンにおいて減圧下(6 kPa)で乾燥させた。VLMWHベンゼトニウム塩49.5 gを得た。
得られた収率は87%であった。
【0052】
実施例1:
77%エステル化の工程および無水媒体中でのホスファゼンに由来する塩基による解重合の工程からなる本発明による方法によって得られる超低分子ヘパリン(VLMWH)
【0053】
VLMWHのエステル化(上記方法の工程b)):
製造例3にしたがって得られたVLMWHベンゼトニウム塩35.39 g(18.3 mmol)(0.20%の水含有量を伴う)を乾燥ジクロロメタン183.3 gに溶解し、そして500 ml三頸フラスコに入れた。塩化ベンジル29.5 ml(25.7mmol)を30℃の温度で添加した。エステル化度は、30℃での約23時間の反応後に77%であった。室温(22±3℃)に冷却した後、反応混合物をメタノール中の酢酸ナトリウム10%溶液490 mlに注いだ。この混合物を約1時間撹拌し、次いで約1時間放置して沈殿させた。上清を捨て、次いで同容量のメタノール(250 ml)と交換した。この混合物を約30分間撹拌し、次いで約45分間放置して沈殿させた。上清を捨て、次いで同容量のメタノール(250ml)と交換した。この混合物を約16時間放置して沈殿させた。上清を捨て、次いで同容量のメタノール(350 ml)と交換した。混合物を約5分間撹拌し、そして懸濁液を濾過した。ケーキをメタノール50 mlで2回洗浄し、吸引により排液し、次いで40℃で減圧下(6 kPa)、約18時間乾燥させた。77%のエステル化度の粗製VLMWHベンジルエステルナトリウム塩34.48 gを得た。
【0054】
VLMWHベンジルエステルナトリウム塩の精製(上記方法の工程b)):
粗製VLMWHベンジルエステルナトリウム塩34.48 gを、10% NaCl水溶液350 mlに溶解した。この溶液をメタノール1.57 Lに注いだ。懸濁液を約40分間撹拌し、次いで約16時間放置して沈殿させた。上清を捨て、そして同容量のメタノール(1.5 L)と交換した。この混合物を約1時間撹拌し、そして約1.5時間放置して沈殿させた。上清を捨て、そして同容量のメタノール(1.2 L)と交換した。この混合物を約15分間撹拌し、次いで濾過した。ケーキをメタノール50 mlで3回洗浄した。湿った白色固体を吸引により排液し、次いで40℃で減圧下(6 kPa)で、約18時間乾燥させた。VLMWHベンジルエステルナトリウム塩6.07gを得た。
エステル化収率は50%であった。
【0055】
ベンゼトニウム塩へのVLMWHベンジルエステルナトリウム塩の塩交換(上記方法の工程c)):
VLMWHベンジルエステルナトリウム塩6 g(9.14 mmol)を、250 ml三角フラスコA中の水40 mlに溶解した。
並行して、塩化ベンゼトニウム13.93 g(31 mmol)を、250 ml三角フラスコB中の水110 mlに入れた。
Bの内容物をAに注いだ。懸濁液を室温(22±3℃)で、約1時間撹拌し、次いで1時間放置して沈殿させた。上清を捨て、そして同容量の水(140 ml)と交換した。この混合物を約15分間撹拌し、そして1時間放置して沈殿させた。上清を捨て、そして同容量の水(140 ml)と交換した。この混合物を約15分間撹拌し、そして約30分間放置して沈殿させた。上清を捨て、そして同容量の水(140 ml)と交換した。この混合物を約5分間撹拌し、次いで濾過した。ケーキを水50 mlで3回洗浄し、吸引により排液し、次いで80℃で減圧下(6 kPa)、約18時間乾燥させた。VLMWHベンジルエステル、ベンゼトニウム塩17.43 gを得た。
収率は、100%であった。
【0056】
無水媒体: 検知されない水含有量 < 0.01%でのVLMWHベンジルエステル、ベンゼトニウム塩の解重合(上記方法の工程d))
製造例2によるVLMWH 17.43 g(9.14 mmol)を、乾燥ジクロロメタン122mlの入った250 ml三頸フラスコに入れた。4Åモレキュラーシーブ17.4 gを添加した。この混合物を約18時間、室温(22±3℃)、アルゴン雰囲気下で撹拌した。
このシーブは、溶液を250 ml三頸フラスコに移すことにより混合物から分離した。2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチルペルヒドロ−1,3,2−ジアゾホスホリン2.64 ml(9.14 mmol)を添加し、そして混合物を24時間、22±3℃、アルゴン雰囲気下で撹拌した。
【0057】
ナトリウム塩への第4級アンモニウム塩の交換(上記方法の工程e))
並行して、10%酢酸ナトリウムメタノール溶液730 mlを2L三角フラスコで製造した。Hyflo supercel Celite 8.71 gを溶液に添加した。この反応混合物をメタノール溶液に注ぎ、一方約4℃の温度に維持した。懸濁液をこの温度で約15分間撹拌した。この混合物を約45分間、室温で放置して沈殿させ、次いで上清を捨て、そして同量のメタノール(450 ml)と交換した。この混合物を15分間撹拌し、そして約45分間放置して沈殿させた。上清を再び捨て、そして同量のメタノール(420 ml)と交換した。この混合物を約15分間撹拌し、次いでNo.3焼結漏斗で濾過した。ケーキをメタノール70 mlで2回洗浄し、吸引により排液し、次いで約18時間、50℃、減圧下(6 kPa)で乾燥させた。Celite(8.71 g)において粗製解重合VLMWH(ナトリウム塩)4.35gを得た。
収率は72.5%であった。
【0058】
粗製解重合VLMWH、ナトリウム塩の鹸化(上記方法の工程f1)):
Celite中の粗製解重合VLMWH(ナトリウム塩)4.35 g(6.63 mmol)を、水46 mlに溶解し、次いでNo.3焼結漏斗で濾過した。Celite を水30 mlで2回リンスした。濾液を500 ml三角フラスコに入れた。35%水酸化ナトリウム溶液823μl(9.94 mmol)を約4℃の温度で導入した。この混合物を約3時間、この温度で撹拌した。媒体を、1N HCL溶液を添加して中和、引き続きNaCl 11.5 gおよびメタノール80mlを添加した。約15分間撹拌後、メタノール210 mlを添加した。懸濁液を約1時間撹拌し、次いで30分間放置して沈殿させた。上清を捨て、そして同量のメタノール(230ml)と交換した。この混合物を約15分間撹拌し、そして30分間放置して沈殿させた。上清を捨て、そして同量のメタノール(210 ml)と交換した。この混合物を約15分間撹拌し、次いで濾過した。ケーキをメタノール9 mlで2回洗浄し、吸引により排液し、次いで約18時間、50℃、減圧下(6 kPa)で乾燥させた。粗製解重合VLMWH(ナトリウム塩) 2.95 gを得た。
収率は73.7%であった。
【0059】
f)粗製解重合VLMWH、ナトリウム塩の精製(上記方法の工程f2)):
粗製解重合VLMWH、ナトリウム塩1.5 gを水16 mlの入った50 ml三頸フラスコに入れた。溶液を40℃で約10分間維持した。pHを0.1N水酸化ナトリウム溶液の添加により約9.7にした。この溶液を0.45 μm膜で濾過し、次いで30% 過酸化水素水溶液84μlを添加した。この混合物を2時間、室温で撹拌する一方、0.1N 水酸化ナトリウム溶液の添加によりpHを9.7 ± 0.1として一定に保った。次いで、この反応混合物を0.1N HCLで中和し、次いでNaCl(2g)を添加した。約10分間撹拌後、この溶液を0.45 μm膜で濾過した。メタノール14 mlを約4℃の温度で添加した。この溶液を約15分間、室温で撹拌した。次いで、メタノール36 mlを添加し、そして懸濁液を約1時間撹拌した。次いで、撹拌を止め、そしてこの混合物を約30分間放置して沈殿させた。次いで上清を取り、そして捨てた(40 ml)。メタノール40 mlを堆積した沈殿物に添加し、そしてこの混合物を約10分間撹拌した。沈殿物を約30分間放置して再沈殿させた。上清を取り、そして捨てた(45 ml)。メタノール45 mlを添加し、次いで懸濁液中の沈殿物を濾別した。次いで、得られた白色ケーキをメタノール3 mlで2回洗浄した。湿った固体を吸引により排液し、次いで減圧下(6 kPa)、約50℃の温度で乾燥させた。約18時間乾燥後、純粋な解重合VLMWH(ナトリウム塩)1.303 gを得た。
得られた収率は86.8%であった。
【0060】
g)こうして得られた解重合VLMWHの特性
平均分子量: 1950ダルトン
多分散性指数: 1.1
抗−Xa活性: 283 U/mg
aIIa活性: 検知されない(<0.2 U/mg)
【0061】
実施例2:
49%エステル化の工程および無水媒体中でのホスファゼンに由来する塩基による解重合の工程からなる本発明による方法によって得られる超低分子ヘパリン(VLMWH)
【0062】
VLMWHのエステル化(上記方法の工程b)):
製造例4にしたがって得られたVLMWHベンゼトニウム塩13.29 g(7.6 mmol)を無水ジクロロメタン70.43 gに溶解し、そして100 ml三頸フラスコに入れた(反応媒体の水含有量は0.073%である)。塩化ベンジル12.3 ml(107 mmol)を30℃の温度で添加した。エステル化度は、30℃での約7時間の反応後に49%であった。冷却後、反応混合物をメタノール中の酢酸ナトリウム12%溶液160 mlに注いだ。この混合物を1時間、室温で撹拌し、次いで約16時間放置して沈殿させた。上清を捨て、次いで同容量のメタノール(100 ml)と交換した。この混合物を約1時間撹拌し、そして約1時間放置して沈殿させた。上清を再び捨て、そして同容量のメタノール(100 ml)と交換した。この混合物を約5分間撹拌し、次いで濾過した。ケーキをメタノール2×40 mlで洗浄し、吸引により排液し、次いでオーブンで、40℃、減圧下(6 kPa)、約18時間乾燥させた。49%のエステル化度の粗製VLMWHベンジルエステルナトリウム塩3.90 gを得た。
【0063】
VLMWHベンジルエステル(49%エステル化された)ナトリウム塩の精製(上記方法の工程b)):
粗製VLMWHベンジルエステルナトリウム塩3.90 gを10% NaCl水溶液39 mlに溶解した。この溶液をメタノール176 mlに注いだ。懸濁液を約15分間撹拌し、次いで2時間放置して沈殿させた。混合物を濾過した。このケーキをメタノール175 ml中に再懸濁し、そして10分間撹拌した。この混合物を濾過し、そしてケーキをメタノール10 mlで2回洗浄した。湿った白色固体を吸引により排液し、そしてオーブンで、40℃、減圧下(6 kPa)、約18時間乾燥させた。VLMWHベンジルエステルナトリウム塩2.62 gを得た。
エステル化相の全収率は57.3%であった。
【0064】
ベンゼトニウム塩へのVLMWHベンジルエステルの塩交換(上記方法の工程c)):
VLMWHベンジルエステルナトリウム塩2.62 g(4.37 mmol)を水20 mlに溶解した(三角フラスコ「A」)。並行して、塩化ベンゼトニウム5.92 g(13.2 mmol)を三角フラスコ「B」中の水60 mlに入れた。
「B」の内容物を「A」に注いだ。懸濁液を約1時間、室温で撹拌し、次いで1時間放置して沈殿させた。上清を捨て、そして同容量の水(70ml)と交換した。この混合物を約15分間撹拌し、そして1時間放置して沈殿させた。上清を捨て、そして同容量の水(70ml)と交換した。この混合物をさらに約5分間撹拌し、そして濾過した。ケーキを水50 mlで3回洗浄し、吸引により排液し、次いでオーブンで、80℃、減圧下(6 kPa)、約18時間乾燥させた。VLMWHベンジルエステルベンゼトニウム塩6.85 gを得た。
収率は99%であった。ベンゼトニウム塩の水含有量は0.6%であった。
【0065】
VLMWHベンジルエステル、ベンゼトニウム塩の解重合:
VLMWH(6.80 g)(4.3 mmol)を、乾燥ジクロロメタン54 mlの入った100 ml三頸フラスコに入れた。この混合物を30℃にし、次いで撹拌して完全に溶解させた。反応混合物の推定される水含有量は約0.05%であった。2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチルペルヒドロ−1,3,2−ジアザホスホリン1.25 ml(4.3 mmol)を添加し、そして混合物を24時間、30℃、不活性雰囲気下で撹拌した。
【0066】
ナトリウム塩への第4級アンモニウム塩の交換(上記方法の工程e))
並行して、10%酢酸ナトリウムメタノール溶液270 mlを1L三角フラスコで製造した。この反応混合物をメタノール溶液に注ぎ、一方約4℃の温度に維持した。懸濁液を約1時間、室温で撹拌した。この混合物を1時間放置して沈殿させた。上清を捨て、次いで同量のメタノール(165 ml)と交換した。この混合物を約1時間撹拌し、そして1時間放置して沈殿させた。上清を再び捨て、そして同量のメタノール(170 ml)と交換した。この混合物を約15分間撹拌し、そして濾過した。ケーキをメタノール40 mlで3回洗浄し、吸引により排液し、次いで約18時間、オーブンで、50℃、減圧下(6 kPa)で乾燥させた。粗製解重合VLMWH、ナトリウム塩2.29 gを得た。
収率は89%であった。
【0067】
粗製解重合VLMWH、ナトリウム塩の鹸化(上記方法の工程f1)):
粗製解重合VLMWH、ナトリウム塩2.29 g(3.8 mmol)を水23 mlに溶解した。この溶液を0.8 μm膜で濾過し、次いで100 ml三頸フラスコに入れた。30%水酸化ナトリウム溶液575μl(5.73 mmol)をおよそ3℃の温度で導入した。この混合物を約2時間、この温度で撹拌した。
反応混合物の半分を氷酢酸の添加により中和し、引き続き固体酢酸ナトリウム367 mgおよびメタノール13 mlを添加した。この溶液を約15分間撹拌し、次いでメタノール65 mlを添加した。得られた懸濁液を約30分間撹拌し、次いで約16時間放置して沈殿させた。上清を捨て、そして同量のメタノール(36 ml)と交換した。この混合物をさらにおよそ30分間撹拌し、そして約30分間放置して沈殿させた。上清を捨て、そして同量のメタノール(16 ml)と交換した。この混合物を約15分間撹拌し、そして0.22 μm膜で濾過した。ケーキをメタノール5 mlで2回洗浄し、吸引により排液し、次いで減圧下(6 kPa)、約18時間、オーブンにおいて50℃で乾燥させた。粗製解重合VLMWH(ナトリウム塩)563 mgを得た。
収率は52.6%であった。
【0068】
NaOAcで沈殿させた粗製解重合VLMWH(ナトリウム塩)の精製(上記方法の工程f2)):
粗製解重合VLMWH(ナトリウム塩)560 mgを水5.6 mlの入った100 ml三頸フラスコに入れた。褐色溶液を40℃で10分間維持した。pHを0.1N水酸化ナトリウム溶液の添加により9.7にした。この溶液を0.45 μm膜で濾過し、そして30% 過酸化水素水溶液28μlを添加した。混合物を2時間、室温で撹拌し、一方0.1N 水酸化ナトリウム溶液の添加によりpHを9.5 ± 0.1として一定に保った。反応混合物を0.1N HCLで中和し、そしてNaCl(620 mg)を添加した。10分間撹拌後、この溶液を0.45 μm膜で濾過した。メタノール4.35 mlを約4℃の温度で添加した。溶液を15分間、室温で撹拌した。メタノール11.2 mlを添加した。懸濁液を1時間撹拌した。次いで、撹拌を止め、そしてこの混合物を1時間放置して沈殿させた。次いで上清を取り、そして捨てた(13.5 ml)。メタノール13.5 mlを堆積した沈殿物に添加し、そして混合物を15分間撹拌した。沈殿を約30分間放置して再沈殿させた。上清を取り、そして捨てた(13 ml)。メタノール13 mlを添加し、次いで懸濁液中の沈殿物を濾別した。次いで、得られた白色ケーキをメタノール5mlで2回洗浄した。湿った固体を吸引により排液し、次いで減圧下(6 kPa)、約50℃の温度で乾燥させた。18時間乾燥後、純粋な解重合VLMWH(ナトリウム塩)376 mgを得た。収率は67%であった。
【0069】
こうして得られた解重合VLMWHの特性
抗−Xa活性: 191 IU/mg
平均分子量: 2100 Da
【0070】
実施例3:
73%エステル化の工程および無水媒体中でのホスファゼンに由来する塩基による解重合の工程からなる本発明による方法によって得られる超低分子ヘパリン(VLMWH)
【0071】
VLMWHのエステル化(上記方法の工程b)):
製造例4にしたがって得られたVLMWHベンゼトニウム塩13.7 g(7.3 mmol)を無水ジクロロメタン73.67 gに溶解し、そして100 ml三頸フラスコに入れた(反応媒体の水含有量は0.23%と示された)。塩化ベンジル13 ml(113 mmol)を30℃の温度で添加した。エステル化度は、30℃での約20時間の反応後に73%であった。室温まで冷却した後、反応混合物をメタノール中の酢酸ナトリウム12%溶液210 mlに注いだ。この混合物を30分間、室温で撹拌し、次いで約1.5時間放置して沈殿させた。上清を捨て、次いで同容量のメタノール(140 ml)と交換した。この混合物を15分間撹拌し、そして懸濁液を濾過した。ケーキをメタノール100 mlで2回洗浄し、吸引により排液し、次いで約18時間、オーブンで、40℃、減圧下(6 kPa)で乾燥させた。73%のエステル化度の粗製VLMWHベンジルエステルナトリウム塩13.3 gを得た。
【0072】
VLMWHベンジルエステル(73%エステル化された)、ナトリウム塩の精製(上記方法の工程b)):
粗製VLMWHベンジルエステルナトリウム塩13.3 gを10% NaCl水溶液133 mlに溶解した。この溶液をメタノール600 mlに注いだ。懸濁液を約15分間撹拌し、次いで約1時間放置して沈殿させた。上清を捨て、次いで同容量のメタノール(400 ml)と交換した。この混合物を約5分間撹拌し、次いで濾過した。ケーキをメタノール100 mlで3回洗浄した。湿った白色固体を吸引により排液し、次いで約18時間、オーブンで、40℃、減圧下(6 kPa)で乾燥させた。VLMWHベンジルエステルナトリウム塩2.33 gを得た。
エステル化収率は49.6%であった。
【0073】
VLMWHベンジルエステル、ベンゼトニウム塩の塩交換(上記方法の工程c)):
VLMWHベンジルエステルナトリウム塩2.27 g(3.53 mmol)を100 ml三角フラスコ「A」において水15 mlに溶解した。並行して、塩化ベンゼトニウム5.22 g(11.6 mmol)を100 ml三角フラスコ「B」中の水55 mlに入れた。
「B」の内容物を「A」に注いだ。懸濁液を約1時間、室温で撹拌し、次いで約1時間放置して沈殿させた。上清を捨て、そして同容量の水(50 ml)と交換した。この混合物を約15分間撹拌し、そして約1時間放置して沈殿させた。上清を捨て、そして同容量の水(50 ml)と交換した。この混合物をさらに5分間撹拌し、次いで濾過した。ケーキを水50 mlで3回洗浄し、吸引により排液し、次いで約18時間、オーブンで、80℃、減圧下(6 kPa)で乾燥させた。VLMWHベンジルエステルベンゼトニウム塩5.67 gを得た。
収率は98%であった。得られた生成物の水含有量は1%であった。
【0074】
VLMWHベンジルエステル、ベンゼトニウム塩の解重合(上記方法の工程d)):
VLMWH(5.45 g)(3.3 mmol)を乾燥ジクロロメタン40 mlの入った100 ml三頸フラスコに入れた。混合物の推定される水含有量は約0.1%であった。この混合物を30℃にした。2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチルペルヒドロ−1,3,2−ジアザホスホリン958μl(3.3mmol)を添加し、そして混合物を24時間、30℃、アルゴン雰囲気下で撹拌した。
【0075】
ナトリウム塩への第4級アンモニウム塩の交換(上記方法の工程e))
並行して、10%酢酸ナトリウムメタノール溶液200 mlを500 ml三角フラスコで製造した。この反応混合物をメタノール溶液に注ぎ、一方約4℃の温度に維持した。懸濁液を約1時間、室温で撹拌した。この混合物を約1時間放置して沈殿させた。上清を捨て、次いで同量のメタノール(150ml)と交換した。この混合物を約30分間撹拌し、そして約30分間放置して沈殿させた。上清を再び捨て、そして同量のメタノール(150 ml)と交換した。この混合物を約15分間撹拌し、次いで濾過した。ケーキをメタノール50 mlで3回洗浄し、吸引により排液し、次いで約18時間、50℃、減圧下(6 kPa)で乾燥させた。粗製解重合VLMWH、ナトリウム塩1.40 gを得た。得られた収率は65.8%であった。
【0076】
粗製解重合VLMWH、ナトリウム塩の鹸化(上記方法の工程f1)):
粗製解重合VLMWH(ナトリウム塩)1.40 g(2.18 mmol)を水14 mlに溶解した。この溶液を100 ml三頸丸底フラスコに入れた。30%水酸化ナトリウム溶液351μl(3.5 mmol)を約4℃の温度で導入した。この混合物を約2時間、この温度で撹拌した。この溶液を氷酢酸(100%)の添加により中和した。次いで、固体酢酸ナトリウム7 gおよびメタノール130 mlを添加した。懸濁液を30分間撹拌し、次いで約1時間放置して沈殿させた。上清を捨て、そして同量のメタノール(80 ml)と交換した。この混合物をさらに約30分間撹拌し、そして約16時間放置して沈殿させた。上清を捨て、そして同量のメタノール(80 ml)と交換した。この混合物を約15分間撹拌し、次いで0.45 μm膜で濾過した。ケーキをメタノール10 mlで2回洗浄し、吸引により排液し、次いで約18時間、50℃、減圧下(6 kPa)で乾燥させた。粗製解重合VLMWH(ナトリウム塩)1.15 g(収率: 89.4%)を得た。
収率は89.4%であった。
【0077】
粗製解重合VLMWH、ナトリウム塩の精製(上記方法の工程f2)):
粗製解重合VLMWH(ナトリウム塩)373 mgを水3.7 mlの入った10 ml三頸フラスコに入れた。溶液を40℃で10分間維持した。pHを1N水酸化ナトリウム溶液の添加により約9.5にした。この溶液を0.45 μm膜で濾過し、次いで30% 過酸化水素水溶液18μlを添加した。この混合物を約2時間、室温で撹拌し、一方0.1N水酸化ナトリウム溶液の添加によりpHを9.5 ± 0.1として一定に保った。反応混合物を0.1N HCLで中和し、次いでNaCl(430 mg)を添加した。約10分間撹拌後、この溶液を0.45 μm膜で濾過した。メタノール3 mlを約4℃の温度で添加した。この溶液を15分間、室温で撹拌した。次いで、メタノール7.7 mlを添加した。懸濁液を約1時間撹拌した。次いで撹拌を止め、そしてこの混合物を約40分間放置して沈殿させた。次いで上清を取り、そして捨てた(10 ml)。メタノール10 mlを堆積した沈殿物に添加し、そしてこの混合物を15分間撹拌した。沈殿を約30分間放置して再沈殿させた。上清を取り、そして捨てた(10 ml)。メタノール10 mlを添加し、次いで懸濁液中の沈殿物を0.45 μm膜で濾別した。得られた白色ケーキをメタノール5 mlで4回洗浄した。湿った固体を吸引により排液し、次いで減圧下(6 kPa)、約50℃の温度で乾燥させた。約18時間乾燥後、純粋な解重合VLMWH(ナトリウム塩)199 mgを得た。得られた収率は54%であった。
【0078】
こうして得られた解重合VLMWHの特性
平均分子量: 2000ダルトン.
多分散性指数: 1.1
抗−Xa活性: 252 IU/mg
【0079】
実施例4:
96%エステル化の工程およびBEMPによる解重合の工程からなる本発明による方法によって得られるVLMWH
【0080】
VLMWHのエステル化(上記方法の工程b))
製造例4にしたがって得られたVLMWHベンゼトニウム塩14.45 g(7.7 mmol)を無水ジクロロメタン75.79 gに溶解し、そして250 ml三頸フラスコに入れた(反応媒体の水含有量は0.20%であった)。塩化ベンジル12.4 ml(108 mmol)を30℃の温度で添加した。エステル化度は、30℃での約26時間の反応後に96%であった。室温まで冷却した後、反応混合物をメタノール中の酢酸ナトリウム12%溶液180 mlに注いだ。この混合物を約30分間、室温で撹拌し、次いで約30分間放置して沈殿させた。上清を捨て、次いで同容量のメタノール(150 ml)と交換した。この混合物を約15分間撹拌し、次いで濾過した。ケーキをメタノール100 mlで2回洗浄し、吸引により排液し、次いで約18時間、40℃、減圧下(6 kPa)で乾燥させた。96%のエステル化度の粗製VLMWHベンジルエステル、ナトリウム塩3.67 gを得た。
【0081】
VLMWHベンジルエステル(96%エステル化された)ナトリウム塩の精製(上記方法の工程b)):
粗製VLMWHベンジルエステル、ナトリウム塩3.67 gを10% NaCl水溶液37 ml (水37ml中にNaCl 3.7g)に溶解した。この溶液をメタノール167 mlに注いだ。懸濁液を約15分間撹拌し、次いで約1時間放置して沈殿させた。上清を捨て、次いで同容量のメタノール(38ml)と交換した。この混合物を約5分間撹拌し、そして濾過した。ケーキをメタノール30 mlで2回洗浄した。湿った白色固体を吸引により排液し、そして約18時間、40℃、減圧下(6 kPa)で乾燥させた。VLMWHベンジルエステル、ナトリウム塩2.76 gを得た。
エステル化収率は54.4%であった。
【0082】
ベンゼトニウム塩へのVLMWHベンジルエステルの塩交換(上記方法の工程c)):
VLMWHベンジルエステル、ナトリウム塩2.83 g(4.29 mmol)を100 ml三角フラスコ「A」において水20 mlに溶解した。並行して、塩化ベンゼトニウム6.35 g(14.2 mmol)を100 ml三角フラスコ「B」中の水50 mlに入れた。
「B」の内容物を「A」に注いだ。懸濁液を約1時間、室温で撹拌し、次いで約1時間放置して沈殿させた。上清を捨て、そして同容量の水(60 ml)と交換した。この混合物を約15分間撹拌し、そして約1時間放置して沈殿させた。上清を捨て、そして同容量の水(60 ml)と交換した。この混合物をさらに5分間撹拌し、次いで濾過した。ケーキを4回、水50 mlで洗浄し、吸引により排液し、次いで約18時間、80℃、減圧下(6 kPa)で乾燥させた。VLMWHベンジルエステル、ベンゼトニウム塩7.0 gを得た。
観察された収率は約100%であった。水含有量は0.23%であった。
【0083】
VLMWHベンジルエステル、ベンゼトニウム塩の解重合(上記方法の工程d)):
VLMWH(3.67 g)(2.3 mmol)を乾燥ジクロロメタン27 mlの入った50 ml三頸丸底フラスコに入れた。この混合物を30℃にした。2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチルペルヒドロ−1,3,2−ジアザホスホリン676μl(2.3 mmol)を添加し、そしてこの混合物を24時間、30℃で撹拌した。
【0084】
ナトリウム塩への第4級アンモニウム塩の交換(上記方法の工程e)):
並行して、10%酢酸ナトリウムメタノール溶液150 mlを250 ml三角フラスコで製造した。この反応混合物をメタノール溶液に注ぎ、一方約4℃に温度を維持した。懸濁液を約1時間、室温で撹拌した。この混合物を約1時間放置して沈殿させた。上清を捨て、次いで同量のメタノール(100ml)と交換した。この混合物を30分間撹拌し、そして30分間放置して沈殿させた。上清を再び捨て、そして同量のメタノール(100 ml)と交換した。この混合物を15分間撹拌し、そして濾過した。ケーキをメタノール40 mlで3回洗浄し、吸引により排液し、そして約18時間、50℃、減圧下(6 kPa)で乾燥させた。解重合VLMWH、ナトリウム塩966 mgを得た。
収率は64%であった。
【0085】
VLMWHベンジルエステル、ナトリウム塩の鹸化(上記方法の工程f1)):
解重合VLMWHナトリウム塩942 mg(1.43 mmol)を水9.5 mlに溶解した。この溶液を100 ml三頸丸底フラスコに入れた。30%水酸化ナトリウム溶液236μl(2.35 mmol)を、約4℃の温度で導入した。この混合物を約2時間、室温で撹拌した。この溶液を氷酢酸(100%)の添加により中和した。次いで、固体酢酸ナトリウム4.5 gおよびメタノール85 mlを添加した。懸濁液を約30分間撹拌し、次いで約1時間放置して沈殿させた。上清を捨て、そして同量のメタノール(40 ml)と交換した。この混合物をさらに約30分間撹拌し、そして約16時間放置して沈殿させた。上清を捨て、そして同量のメタノール(40 ml)と交換した。この混合物を約30分間撹拌し、そして0.45 μm膜で濾過した。ケーキをメタノール10 mlで2回洗浄し、吸引により排液し、次いで約18時間、50℃、減圧下(6 kPa)で乾燥させた。粗製解重合VLMWH(ナトリウム塩)776 mgを得た。
収率は91.4%であった。
【0086】
粗製解重合VLMWH、ナトリウム塩の精製(上記方法の工程f2)):
粗製解重合VLMWH(ナトリウム塩)758 mgを水7.6 mlの入った25 ml三頸フラスコに入れた。この溶液を40℃で10分間維持した。pHを0.1N水酸化ナトリウム溶液の添加により約9.5にした。この溶液を0.45 μm膜で濾過し、次いで30% 過酸化水素水溶液38μlを添加した。この混合物を約2時間、室温で撹拌し、一方0.1N水酸化ナトリウム溶液の添加によりpHを9.5 ± 0.1として一定に保った。この反応混合物を1N HCLで中和し、そしてNaCl 880 mgを添加した。約10分間撹拌後、この溶液を0.45 μm膜で濾過した。メタノール6.2mlを約4℃の温度で添加した。この溶液を約15分間、室温で撹拌した。メタノール16 mlを添加し、そして懸濁液を約1時間撹拌した。次いで、撹拌を止め、そして懸濁液を濾過した。ケーキをメタノール15 mlで2回洗浄した。湿った固体を吸引により排液し、次いで減圧下(6 kPa)、約50℃の温度で乾燥させた。約18時間の乾燥後、純粋な解重合VLMWH(ナトリウム塩)490mgを得た。得られた収率は65%であった。
【0087】
こうして得られた解重合VLMWHの特性
平均分子量: 2000ダルトン
多分散性指数: 1.1
抗−Xa活性: 205 IU/mg
【0088】
実施例5:
96%エステル化の工程およびtert−ブチルイミノトリス(ジメチルアミノ)ホスホランによる解重合の工程からなる本発明による方法によって得られるVLMWH
【0089】
VLMWHベンジルエステル、ベンゼトニウム塩の解重合(上記方法の工程d)):
0.23%の水含有量を伴う実施例4にしたがって得られたVLMWHベンジルエステル、ベンゼトニウム塩3.67 g(2.3 mmol)(96%エステル化されている)を、乾燥ジクロロメタン30 mlの入った50 ml三頸フラスコに入れた。この混合物を30℃にした。tert−ブチルイミノトリス(ジメチルアミノ)ホスホラン595μl(2.3 mmol)を添加し、そしてこの混合物を24時間、30℃で撹拌した。
【0090】
ナトリウム塩への第4級アンモニウム塩の交換(上記方法の工程e)):
並行して、10%酢酸ナトリウムメタノール溶液160 mlを250 ml三角フラスコで製造した。この反応混合物をメタノール溶液に注ぎ、一方約4℃に温度を維持した。懸濁液を約1時間、室温で撹拌した。この混合物を約1時間放置して沈殿させた。上清を捨て、次いで同量のメタノール(120 ml)と交換した。この混合物を約30分間撹拌し、そして30分間放置して沈殿させた。上清を再び捨て、そして同量のメタノール(125 ml)と交換した。この混合物を約15分間撹拌し、そして濾過した。ケーキをメタノール40 mlで3回洗浄し、吸引により排液し、そして約18時間、約50℃の温度で、減圧下(6 kPa)において乾燥させた。粗製解重合VLMWH、ナトリウム塩982 mgを得た。収率は65%であった。
【0091】
粗製解重合VLMWH、ナトリウム塩の鹸化(上記方法の工程f1)):
粗製解重合VLMWH、ナトリウム塩980 mg(1.49 mmol)を水10 mlに溶解した。この溶液を100 ml三頸丸底フラスコに入れた。30%水酸化ナトリウム溶液246μl(2.45 mmol)を、約4℃の温度で導入した。この混合物を約2時間、この温度で撹拌した。この溶液を氷酢酸(100%)の添加により中和した。次いで、固体酢酸ナトリウム4.9 gおよびメタノール95 mlを添加した。懸濁液を30分間撹拌し、次いで約1時間放置して沈殿させた。上清を捨て、次いで同量のメタノール(60ml)と交換した。この混合物をさらに約30分間撹拌し、次いで約16時間放置して沈殿させた。上清を捨て、次いで同量のメタノール(60 ml)と交換した。この混合物を約30分間撹拌し、そして0.45 μm膜で濾過した。ケーキをメタノール10 mlで2回洗浄し、吸引により排液し、次いで約18時間、50℃、減圧下(6 kPa)で乾燥させた。粗製解重合VLMWH、ナトリウム塩809 mgを得た。
反応収率は91.6%であった。
【0092】
粗製解重合VLMWH、ナトリウム塩の精製 (上記方法の工程f2)):
粗製解重合VLMWH(ナトリウム塩)792 mgを水8 mlの入った25 ml三頸フラスコに入れた。この溶液を40℃で、10分間維持した。pHを0.1N水酸化ナトリウム溶液の添加により約9.5にした。この溶液を0.45 μm膜で濾過し、次いで30%過酸化水素水溶液39.6μlを添加した。この混合物を2時間、室温で撹拌し、その間0.1N 水酸化ナトリウム溶液の添加によりpHを9.5 ± 0.1として一定に保った。この反応混合物を1N HCLで中和し、そしてNaCl 1.04 gを添加した。約10分間撹拌後、この溶液を0.45 μm膜で濾過した。メタノール7.3 mlを約4℃の温度で添加した。この溶液を15分間、室温で撹拌した。メタノール18.8 mlを添加し、そして懸濁液を約1時間撹拌した。次いで、撹拌を止め、そしてこの混合物を濾過した。ケーキをメタノール15 mlで3回洗浄した。湿った固体を吸引により排液し、次いで減圧下(6 kPa)、約50℃の温度で乾燥させた。18時間乾燥後、純粋な解重合VLMWH(ナトリウム塩)538 mgを得た。得られた収率は67.9%であった。
【0093】
こうして得られた解重合VLMWHの特性
平均分子量: 2100ダルトン
多分散性指数: 1.1
抗−Xa活性: 209 IU/mg
【0094】
実施例6:
二糖および四糖画分を除去するためのクロマトグラフィーによる分離のさらなる工程からなる本発明による方法によって得られるVLMWH
実施例1に記載のオリゴ糖混合物(286mg)を移動相(0.2mol/Lの濃度の重炭酸ナトリウム水溶液)20 mlに溶解した。
クロマトグラフィー条件は以下のとおりである:
−移動相: 0.2mol/Lの濃度の重炭酸ナトリウム溶液
−固定相: biogel P6ゲル
−カラム: 長さ1m、直径5 cm
−検出波長: 240 nm
【0095】
六糖より大きいか等しい画分を回収し、そしてプールした。これらを酢酸で中和し、次いで濃縮して、酢酸ナトリウム200 g/lを含む溶液を得た。5容量のメタノールを、得られた溶液に撹拌しながら添加した。懸濁液を約18時間撹拌し、次いで0.45 μm膜で濾過した。ケーキを約6時間、約40℃の温度で、減圧下(6 kPa)において乾燥させた。得られた生成物を再沈殿させ、次いで最低限の量の水に溶解し、そしてSephadex G10カラムで脱塩化した(desalified)。脱塩化された画分を濃縮し、次いで凍結乾燥後、生成物109 mgを得た。収率は38%であった。
【0096】
こうして得られたオリゴ糖混合物の特性は以下の通りである:
抗−Xa活性: 403 IU/mg
【0097】
オリゴ糖の割合は以下の通りである:
【表1】

【0098】
本発明による化合物の薬理学的活性:
【表2】

【0099】
本発明による化合物中の六糖(IIa−IIs−Isの割合:
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘパリンの成分多糖の一般的構造を有し、かつ以下の特性:
−1800〜2400ダルトンの平均分子量、
−190 IU/mgから450 IU/mgの間の抗−Xa活性、
−抗−IIa活性を有しないかまたは実質的に有さず、
−上記混合物の成分オリゴ糖類は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の形態で、
−2〜16糖単位を含み、
−末端の一方に4,5−不飽和ウロン酸2−O−硫酸単位を有し、
−以下の式:
【化1】

の六糖を含むことが理解される、
を有するオリゴ糖混合物。
【請求項2】
アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩がナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩である、請求項1記載のオリゴ糖混合物。
【請求項3】
20%〜100%および特に30%〜60%の六糖画分を含む、請求項1または2記載のオリゴ糖混合物。
【請求項4】
六糖画分が請求項1に定義される六糖ΔIIa−IIs−Isを20%〜70%および特に25%〜50%含む、請求項3記載のオリゴ糖混合物。
【請求項5】
1900〜2200の間および特に1950〜2150ダルトンの平均分子量を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のオリゴ糖混合物。
【請求項6】
190 IU/mgから410 IU/mgの間および特に200〜300 IU/mgの間の抗−Xa活性を有するが、同時に抗−IIa活性を有しないかまたは実質的に有しない、請求項1〜5のいずれか1項に記載のオリゴ糖混合物。
【請求項7】
以下の特性:
−1950〜2150ダルトンの間の平均分子量、
−190 IU/mgから410 IU/mgの間の抗−Xa活性および抗−IIa活性を有しないかまたは実質的に有さず、
−30〜60%の六糖画分を含み、これは25%〜55%のΔIIa−IIs−Is画分を含む、
を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のオリゴ糖混合物。
【請求項8】
140 IU/mgより大きいaXa活性、5 IU/mgより大きいaIIa活性および2000〜3000ダルトンの間の平均分子量を有する超低分子ヘパリンが以下の化学反応:
a)ベンゼトニウムヘパリネートを得るための塩化ベンゼトニウムの作用による塩交換、
b)塩化ベンジルの作用により得られたベンゼトニウムヘパリネートのエステル化、および超低分子ヘパリンのベンジルエステルのナトリウム塩を得るための処理、
c)得られたベンジルエステルの塩交換および第4級アンモニウム塩の製造、
d)解重合超低分子ヘパリンを得るための、好ましくは20より大きいpKa値を有する強有機塩基による解重合、
e)ナトリウム塩への解重合超低分子ヘパリンの第4級アンモニウム塩の交換、
f)残留エステルの鹸化および場合により精製
に供される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のオリゴ糖混合物を製造する方法。
【請求項9】
解重合工程d)中に用いられる強塩基/エステルモル比が0.2〜5の間および好ましくは0.6〜2の間である、請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
解重合工程d)が塩基としてホスファゼン誘導体を用いて行われる、請求項8または9記載の製造方法。
【請求項11】
製法をVLMWH、ベンゼトニウム塩のベンジルエステルに対して1モル当量のホスファゼン塩基を用いて行う場合、解重合工程d)を0.3%未満の水含有量で行う、請求項8〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
解重合工程d)中に用いられるホスファゼンファミリーの塩基が好ましくは、式:
【化2】

(式中、基R1〜R7は、同一または異なって、1〜6個の炭素原子を含む直鎖、分枝鎖または環状アルキル基を示し、これは適当な場合、R3およびR4が、これらを担持する−N−P−N−基と共に6−員複素環を形成できる)
の塩基である、請求項8〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
解重合工程に用いられるホスファゼンのファミリーの塩基が2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチルペルヒドロ−1,3,2−ジアザホスホリンである、請求項8〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
工程b)中のヘパリンのベンジルエステルの第4級アンモニウム塩のエステル化度が40%〜100%の間および好ましくは70%〜90%の間である、請求項8記載の製造方法。
【請求項15】
請求項8記載の製法の工程b)にしたがって製造される超低分子ヘパリンのベンジルエステルの第4級アンモニウム塩のナトリウム塩への交換が、15〜25℃の間の温度で、反応媒体をアルコール性酢酸ナトリウム溶液を用いておよび好ましくはメタノール中の酢酸ナトリウム10%溶液(質量/容量)を用いて処理することにより行われる、請求項8記載の製造方法。
【請求項16】
エステル化工程b)中に添加される酢酸ナトリウムの質量当量が、解重合反応に用いられるヘパリンのベンジルエステルの第4級アンモニウム塩の質量より3倍大きい、請求項15記載の製造方法。
【請求項17】
工程c)中に得られる超低分子ヘパリンのベンジルエステルの第4級アンモニウム塩が、好ましくは、ベンゼトニウム、セチルピリジニウムまたはセチルトリメチルアンモニウム塩である、オリゴ糖混合物を製造する請求項8記載の方法。
【請求項18】
工程f)による鹸化が、水性媒体中、0〜20℃の間および好ましくは0〜10℃の間の温度で、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化リチウムを用いて行われる、請求項8記載の製造方法。
【請求項19】
1〜5モル当量のアルカリ金属水酸化物およびより特に1〜2モル当量のアルカリ金属水酸化物が用いられる、請求項18記載の製造方法。
【請求項20】
二糖および四糖画分もまた、特にポリアクリルアミドアガロースタイプのゲルで満たされたカラムのクロマトグラフィーにより除去される、オリゴ糖混合物のXa因子に対する増大した選択性を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のオリゴ糖混合物を製造する請求項8〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
低分子ヘパリンが出発物質として用いられるか、または請求項8に定義される超低分子ヘパリンの代わりに100〜140 IU/mgの間の抗−Xa活性を有する超低分子ヘパリン(1500〜3000 Da)が用いられる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のオリゴ糖混合物を製造する請求項8〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
100〜140 IU/mgの間の抗-Xa活性を有する超低分子ヘパリン(1500〜4000 Da)が、請求項8に定義される超低分子ヘパリンの代わりに出発物質として用いられる、請求項1〜7のいずれか1項記載のオリゴ糖混合物を製造する請求項8〜20のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
低分子ヘパリンがエノキサパリン、フラキシパリン、フラグミン、インノヘップ(またはロギパリン)、ノルミフロ、エンボレックス(またはサンドパリン)、フルクサム(またはミニダルトン)、クリバリンおよびヒボールから選択される、請求項21記載の製造方法。
【請求項24】
請求項7〜23のいずれか1項に記載の方法により得ることができる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のオリゴ糖混合物。
【請求項25】
医薬品としての請求項1〜7のいずれか1項に記載のオリゴ糖混合物。
【請求項26】
抗血栓活性を有する医薬品としての請求項1〜7のいずれか1項に記載のオリゴ糖混合物。
【請求項27】
静脈および動脈血栓症、深部静脈血栓、肺塞栓症、不安定狭心症、心筋梗塞、心臓虚血、末梢動脈の閉塞性疾患および心房性細動、平滑筋細胞増殖、アテローム性動脈硬化症および動脈硬化、血管形成および成長因子を変化させることによる癌、ならびに糖尿病疾患、例えば糖尿病性網膜症および糖尿病性ネフロパシーを治療および予防するための、請求項25または26記載の医薬品。
【請求項28】
請求項25記載の少なくとも1つの医薬品および1またはそれ以上の製薬上不活性な賦形剤またはビヒクルまたは添加剤を含有する医薬組成物。
【請求項29】
皮下または静脈内注射用の溶液からなる、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項30】
吸入のための肺用製剤からなる、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項31】
経口製剤からなる、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項32】
アミド分解法が発色基質において使用され、ここで再構成緩衝液がポリエチレングリコール6000(PEG 6000)である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のオリゴ糖混合物の抗−Xa活性を決定する方法。

【公表番号】特表2006−528614(P2006−528614A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520862(P2006−520862)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001943
【国際公開番号】WO2005/010051
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(598006222)アベンティス・ファーマ・ソシエテ・アノニム (30)
【Fターム(参考)】