説明

ヘマトクリットおよび分析対象物濃度の決定

抗凝固処理した血漿に対応する血液と液体試薬との混合物に少なくとも2の異なる測定を行うことによる抗凝固処理した血漿の分析対象物濃度を決定する方法であって、以下の工程:(a)所定容量の該血液試料を5倍またはそれ以上の容量の該液体試薬と混合し、(b)該混合物に該少なくとも2の測定を行い、そのうち少なくとも1は該血液試料のヘマトクリットと相関関係を有し、少なくとも1は該分析対象物濃度と相関関係を有する、ついで(c)(a)の容量が精密かつ正確な場合または(b)の該血液試料のヘマトクリットが知られている場合に測定から得られた結果をコンピューター計算して該抗凝固処理した血漿の該分析対象物濃度を決定することを含む方法。さらに、血液、抗凝固処理した血液および/または抗凝固処理した血漿試料で測定を行うための測定および決定デバイス、および装置キットが記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘマトクリットおよび分析対象物濃度の決定の分野に関する。さらに正確には、本発明は、抗凝固処理した(anticoagulated)血漿に対応する血液試料と液体試薬との混合物に対して少なくとも2の異なる測定を行うことによる該抗凝固処理した血漿の分析対象物濃度を決定する方法に関する。本発明はまた、血液、抗凝固処理した血液および/または抗凝固処理した血漿試料で測定を行うための測定および決定デバイス、および装置キットを包含する。
【背景技術】
【0002】
すでに記載したように、本発明は、血液と液体試薬との混合物の測定による抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度の決定に関する。そのような決定の結果は、医学的診断を行うために、および医学的治療の効果をモニターするために必要である。
【0003】
医学目的の分析対象物濃度の決定は、伝統的に患者から離れた実験室で行われている。これら決定の結果は、しばしば患者の身近で介護施設にて必要とされる。この場所的な状況は、分析対象物濃度の決定を患者の近くで行う衝動に駆り立てる。抗凝固処理した血液のみが介護施設から実験室に運ぶことが可能である。実験室では分析対象物の決定は、抗凝固処理した血液または抗凝固処理した血液から調製した抗凝固処理した血漿で行われる。抗凝固処理した血漿が扱いが容易で貯蔵も容易であるため、分析対象物濃度の決定は可能な限度で抗凝固処理した血漿で行われる。近患者(near-patient)施設では状況は異なる。血液は容易に入手可能であるが、抗凝固処理した血漿は調製するのが不便であるかまたは調製することができない。このことが、分析対象物濃度の実験室での決定は抗凝固処理した血漿で行われるが、近患者での決定は血液で行われるという状況を生じさせる。この状況は満足のいくものではない、なぜなら合理的な医学診療は、ある所定の時点での分析対象物濃度と所定の患者との間の関連を必要とするからである。選択をするのであれば、臨床医は抗凝固処理した血漿での分析対象物濃度の値を好むであろう、なぜならこれら値はより多量の臨床参照データと関連付けられるからである。試料の性質は別として、本発明は分析対象物濃度の決定の正確さおよび信頼性に関する。正確さおよび信頼性は、分析対象物濃度の決定の医学的な有用性にとって基本的なものであることが認識される。
【0004】
定義により、分析方法は、それが参照方法の結果と一致する結果を生成するときは正確である。このことはまた、分析対象物濃度を決定する近患者法にも当てはまる。正確な近患者法を得るための合理的な戦略デザインは、参照方法または上記により正確であると確認された方法の化学およびアッセイ条件を採用することである。この直裁的な戦略は遂行するのが困難である。参照方法とは、実験室環境で研究者が長年にわたり共同の努力をしてきた頂点を表す方法である。これら環境および臨床実験室の環境は比較的似たものである。これら環境の一つで達成できるアッセイ条件は他の環境でも達成することができる。近患者の濃度決定が行われる環境は著しく異なる。典型的な実験室法の既に第一の手順である、正確な容量の抗凝固処理した血漿を正確な容量の試薬と混合することは、近患者のアッセイ現場では殆ど克服しがたい障壁である。外科的場面、プライマリーケアセンター、診療所および患者の家庭では、抗凝固処理した血漿は調製が不便であり、正確な容量は達成するのが困難である。それゆえ、近患者の方法の第一の手順は、典型的に、不正確に定めた容量の血液を乾燥試薬と混合することである。近患者アッセイ法の設計者は、正確な実験室法のアッセイ条件から意図的に逸脱させているわけではない;そのようにせざるを得ないのである。それでも、実験室アッセイ条件からの逸脱は近患者アッセイ法において正確さの欠陥を負わしている。このことは懸念や不安を引き起こし、医学的な診断および治療の安全性および有効性を損なわしている。それゆえ、近患者の分析対象物濃度の決定の正確さを改善する賢明な戦略は、(1)正確さを促進する実験室法のアッセイ条件の側面を同定すること、および(2)近患者法のデザインにおいて該同定した側面に根気強く固執することである。
【0005】
上記のように、参照方法、および正確な実験室法は、しばしば湿化学(wet-chemistry)法である。湿化学法の成功の主たる理由は、マトリックス作用に対処するうえでのその普遍的な効力である。小容量の試料を大容量の試薬と混合すると試料が希釈される。このことが試料のあらゆる作用を弱め、分析対象物の作用に選択的に有利なアッセイ条件の場面を設定する。かくして試料の非分析対象物の作用、すなわちマトリックス作用は、避けられ、アッセイの正確さは促進される。
【0006】
湿化学法による分析対象物濃度の定量決定は、意図した容量の精密な割り当て、精密に近患者アッセイ部位で行うのが困難なものを必要とする。割り当ては充分に精密であるかもしれないが、容量測定装置をチェックするための系、適切に訓練された実験室員および充分に管理された実験室の他の側面を欠く場合、近患者部位での容量の割り当ては不正確になりがちであり、たとえば、意図したものと許容できないほどに異なる。課題を解決するための従来技術のアプローチは、近患者法を実施することのできる「ユーザーフレンドリー」で、高価でなく、正確かつ精密な容量測定デバイスを発明することである。そのようなアプローチは、限られた成功しか来していない。
【0007】
上記の古典的近患者アッセイ部位とは別に、近患者アッセイはまた小さな実験室および大きな実験室の部門でも行われている。近患者アッセイはすべて抗凝固処理した血漿の調製という嫌忌を共通に有するが、定められた容量を正確に達成する能力において差違を示す。以下に近患者アッセイ部位と小さな実験室とで差違がある。それらは血液を優先するという点で共通するが、血液および試薬の意図した容量を正確に割り当てる能力において異なる。
【0008】
小さな実験室と近患者アッセイ部位とはまた、分析対象物濃度の決定の信頼性に関する懸念をともに有する。大きな実験室は信頼性を標準に設定する。大きな実験室では、所定の種類の分析対象物の何千もの分析対象物濃度が行われている。24時間作動、備え付け、自動、かつ信頼性のある測定および決定デバイスが意図した容量の抗凝固処理した血漿および試薬を割り当て、測定を行い、分析対象物濃度を決定する。分析対象物濃度値を割り当てた対照試料を規則的に分析し、活性を専門のよく訓練された技術者により管理する。測定および決定デバイスは定期的なメンテナンスを行う。全体の手順装備を含む検量を、とりわけ手順の変更をしたとき、たとえば新たなロットの試薬を導入したときに必要に応じて行う。これら全てのゆえに、高レベルの信頼性が大きな実験室では達成される。匹敵するアッセイの信頼性を小さな実験室や近患者アッセイ部位で達成することは決して簡単な仕事ではない。信頼性を改善するための戦略は、大きな実験室では行われるが小さな実験室では行われない信頼性を高めるルーチン(機械的作業)を同定すること、およびこれらルーチンまたは等価物を後者の部位でも行うことを可能にする方法を見出すことを含む。測定および決定デバイスの定期的なメンテナンスは、一つのそのような手段である。手順変更を導入した場合の全体の手順装備の検量は他の手段である。対照試料の規則的な分析は第三の手段である。
【0009】
伝統的な理由により、および反応の速度を早めるため、実験室の方法は典型的に37℃で行われる。正確さに関しては、温度それ自体は典型的であって重大ではない。近患者アッセイを法をデザインするうえでの利点が測定した周囲温度でアッセイを行うことによって得ることができ、測定を決定に斟酌できるなら、このことを考慮すべきである。その理由は、温度を測定することは温度を定められたレベルに保持することを殆ど全く要求しないからである。近患者法における37℃に対する要求は、不精密および不正確のもとでありうる。小さな実験室や近患者部位では、所定の種類の分析対象物濃度の決定はばらばらに行われる。このことのため、測定デバイスは一定の作動状態にない。37℃に対する要求は、測定デバイスと決定に直接関連する試薬との温度平衡を必要とする。このことは、貴重な時間を消費することとは別に誤差のもととなる。時間は正確であるため、平衡時間は常に最小であり、若干不十分であろう。若干不十分な温度平衡時間は不正確な温度規定という結果となり、アッセイの不正確さを引き起こすであろう。若干不十分な温度平衡時間はまた、意図した温度よりも低い温度を与え、アッセイの不正確さを引き起こしやすいであろう。アッセイ時間、不精密さおよび不正確さは、温度平衡が回避されれば低減する。さらに、サーモスタット加熱ブロックを忘却に割り当てることは、明らかに測定デバイスの複雑さおよびコストを低減し、その動力消費を著しく低減させる。このことは、それ自体、使い捨てまたは半使い捨てで、軽量で、持ち運びに便利で、製造業者が検量および維持できるアッセイ装置であって、近患者分析対象物濃度の決定の正確さおよび信頼性を高めコストを低減するものへの道を開く。
【0010】
本発明の背景のさらなる記載は、例示として、プロトロンビン時間(PT)の決定である。
【0011】
従来技術によれば、PT決定に2つの方法がある。一つはQuick A., The prothrombin time in hemophilia and obstructive jaundice, Journal of Biological Chemistry 1935;109:73-74に記載されている。もう一つはOwren P., Thrombotest. A new method for controlling anticoagulant therapy, Lancet 1959; ii: 754-758に記載されている。両方法は、細胞膜に結合した組織因子によって誘発される血液凝固に基づいている。それゆえ、両方法の試薬はトロンボプラスチンを含む。しかしながら、重要な差違が存在する。Quick PT試薬はトロンボプラスチンのみを含むのに対し、Owren PT試薬はBaSO4に結合するタンパク質が枯渇した血漿をも含んでいる。特に、枯渇血漿は、血液凝固因子II、VIIおよびXは枯渇しているが、血液凝固に必要な他の2つのタンパク質成分である血液凝固因子Vおよびフィブリノゲンは枯渇していない。Quick PT法は、フィブリノゲンおよび血液凝固因子V源として試料に依存しており、これらの不足および異常によって大きな影響を受ける。それゆえ、Owren PT法は、目的因子に対して一層特異的である。血液凝固因子Vおよびフィブリノゲンではなく、血液凝固因子II、VIIおよびXは、ビタミンKアンタゴニストを用いた医療処置の影響を受けるため、Owren PT法はそのような処置の影響に対して一層特異的である。これら処置は血栓症や他の凝固障害を防ぐうえで極めて有効であり、PTアッセイはこれら処置をモニターしてその安全性および有効性を確認するうえで確固として確立されている。
【0012】
フィブリノゲンはPTアッセイにおいて重要である。それは血餅を形成する物質である。フィブリノゲンが存在しないことは、血餅が存在しないこと、凝固時間が存在しないこと、およびPTアッセイが存在しないことを意味する。フィブリノゲンレベルが試料および試薬の混合物中で約0.1g/L未満になると、血餅形成は著しく障害され、凝固の終点は怪しげなものとなる。フィブリノゲン範囲の血漿レベルは1g/Lまで下がるので、1:10未満の試薬に対する血漿比はQuick PT法では禁止される。Owren PT法ではそのような制限はない、なぜなら試薬はフィブリノゲンを含んでおり、試薬に対する血漿比は1:10よりも遙かに下げることができるからである。
【0013】
Quick PT法では、1容量の抗凝固処理した血漿および2容量の試薬からなる反応混合物が特定される。Owren PT法では、1容量の抗凝固処理した血漿および20容量の試薬が特定される。Owren PT法での一層高い試料希釈はマトリックス効果を低減させる。このことはOwren PT法をQuick PT法よりも正確なものにする。
【0014】
実験室PT法を小さな実験室および近患者アッセイ部位の必要性に適合させるには、抗凝固処理した血漿の代わりに血液を使用することが必要である。従来技術によれば、PT分析対象物は抗凝固処理した血液の血漿フラクションでのみ見出され、血球フラクションでは見出されない。このことのため、抗凝固処理のプロセスおよびヘマトクリットに依存して、1容量の抗凝固処理した血漿中のPTは1.5容量の血液中のPTとほぼ同じと想定される。それゆえ、従来技術によれば、Quick PT法またはOwren PT法のアッセイ条件の支持(upholding)には、1.5容量の血液を、それぞれ、2容量または20容量の試薬と混合する必要がある。
【0015】
ビタミンK依存性血液凝固因子に対する良好な特異性および良好な正確さは、Quick PT法と比較したOwren PT法の利点である。このことにも拘わらず、近患者PT法の従来技術の設計者は、Owren法よりもQuick法の影響を多く受けてきた。さらに、殆どの近患者Quick PT法の設計者は、血液を乾燥PT試薬と混合することによりQuick PTアッセイ条件に明らかに違反してきた。このことは技術的な課題を相当低減させたが、正確さがさらに低減するというリスクのうえであった。近患者Quick PT法の従来技術および発明的側面は、McMorrowの米国特許第6,402,704B1号、Yassinzadehらの米国特許第6,103,196号、Cusackらの米国特許第5,302,348号およびOberhardtの米国特許第4,849,340号に記載されている。
【0016】
近患者PT法における一般的なデザイン傾向に対する例外は、November AG(エアランゲン、ドイツ)のnovi quickR PT法である。novi quickR PT法は、その名称とはうらはらに、Owren PT法のアッセイ条件に固執する試みを代表するものである。正確な容量という近患者の課題を解決するため、novi quickR法はBertlingらのPCT/DE99/00351およびPCT/DE99/01052に開示された2つの新規な液体取り扱い装置を含む。これらのうちの一つは、組み合わせたガラス毛管およびフックであり、これを用いて正確な容量の血液を試薬に加えることができる。毛管フックはまた、血液と試薬を混合するのにも用いられ、フックで留める(hooking)手順により凝固時間の決定にも用いられる。novi quickR PT法のデザインは、正確な実験室法への徹底した固執の哲学に従うものである。しかしながら、発明的努力にも拘わらず、正確な容量の要求は広範な使用を妨げている。
【0017】
QuickおよびOwrenの方法によるPT決定の結果は、一般に国際正規化比(International Normalized Ratio (INR))で表される。血漿のINRは、凝固時間を標準凝固時間(NCT)で除した商で得られる。INRを得るには、この商をアッセイ手順に特徴的な羃指数にて累乗する。羃指数はNCTとともに検量により決定される。この羃指数は、国際感度指数(International Sensitivity Index (ISI))と呼ばれる。別のやり方として、PTは正常血漿のPTに関して表すことができる(本明細書でPT%と称する)。PT%とINRとの相互変換の式:PT%=1/(0.028INR−0.018)およびINR=[(1/PT%)+0.018]/0.028は、Lindahlら、INR calibration of Owren type prothrombin time based on the relationship between PT% and INR utilizing normal plasma samples, Submitted to Thrombosis and Haemostasisに記載されている。同様の情報は、Gogstad G. The reporting of thrombotest in international normalized ratio (INR). Farmakoterapi 1984; 40: 88-92に見出される。
【0018】
血液でのPT決定の結果と抗凝固処理した血漿でのPT決定とを一致させようとする試みにおいて遭遇する困難の幾つかは、ヘマトクリットの変動により引き起こされる。従来技術によれば、これら結果は1またはそれ以上の計量因子(scaling factors)の使用により一致される。このことは、ヘマトクリットが正常範囲にある場合は妥当な結果をもたらすが、ヘマトクリットが極値にある場合はそうではない。
【0019】
ヘマトクリットは、血球を構成する血液量のフラクション(fraction)である。ヘマトクリットは、血液を入れた容器を遠心力に曝すことにより決定することができる。ついで、容器の底に血球が密な塊を形成するので、その容積を測定してヘマトクリットを決定する。個々の血球の容積を測定し合計することはヘマトクリットを決定する他の方法である。光学的な方法もある。これら方法は、血球の大部分が赤色タンパク質であるヘモグロビンで満たされた赤血球であるという事実に基づくものであり、ヘモグロビンの光吸収を光学的方法により測定してヘマトクリットを決定することができる。ヘマトクリットを決定するための光学的方法は便利であり、特別の注目に値する。ヘマトクリットの光学決定の背景および発明的側面は、以下の刊行物に記載されている:Leeらの米国特許第6,064,474号およびMendelsonらの米国特許第5,277,181号。第一の文献は、1またはそれ以上の波長、たとえば、815nmおよび915nmを用いた血液のヘマトクリットおよびヘモグロビン含量の非侵襲的測定法を開示している。波長は、ヘモグロビン濃度および血漿光散乱に関する情報が得られるように選択する。第二の文献も2つの波長の使用を開示しており、一つは約500nmであり、他は約800nmである。これら波長を選択するのは、これら波長ではヘモグロビンの主要な2つの形態である酸素枯渇型と酸素飽和型とがおよそ同じ光吸収を示すからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
小さな実験室や近患者アッセイ部位では、対応血液で分析を行うことによって抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度を決定するための正確な湿化学法の必要性が存在する、すなわち、抗凝固処理した血漿の分析対象物濃度を同血漿を調製する必要なく−その存在およびその関連する特性を想像または仮定するのみで−決定することの必要性が存在する。近患者アッセイ部位では、正確に定められた容量の血液および試薬の必要を回避する仕方で方法を行う必要がある。良好なアッセイ信頼性のためには、方法は、通例の対照物質、典型的には分析対象物濃度が既知または決定された対照血漿および対照血清を試験することができるようなものでなければならない。さらに、方法は、対照試料の分析により規則的にチェックされる検量化分析装備で行うべきであり、使用する測定および決定デバイスは定期的に保守、すなわち修理およびチェックすべきである。上記のことが可能となる方法の必要性もまた存在する。そのような方法を信頼性をもって行うことのできる測定および決定デバイスの必要性も存在し、そのための装置キットの必要性も存在する。とりわけ、以上のすべてのことは、ビタミンKアンタゴニストを用いた抗凝固療法をモニターするのに用いるPT決定において必要である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明の簡単な説明
対応する血液と液体試薬との混合物に少なくとも2の測定を行うことにより抗凝固処理した血漿の分析対象物濃度を決定する方法が提供される。該方法の実施はまた、もしも正確に定めた容量の該血液および該試薬を混合するなら、該血液のヘマトクリットの決定をも可能にする。正確に定めた容量で実施する該方法は、対照血漿および/または対照血清での試験を可能にする。該発明の実施は、もしも血液のヘマトクリットが知られているなら、不正確に定めた該容量を混合する場合でも該分析対象物濃度の決定を可能にする。
【0022】
血液と試薬との混合物で2またはそれ以上の測定を行うための測定および決定デバイスが提供される。当該デバイスは、2またはそれ以上の測定を行うための手段、データ処理装置、およびコンピューター計算に必要なデータセットを貯蔵するための読出し専用記憶装置を含む。
【0023】
装置キットが提供される。当該装置キットは、試薬および当該方法を実施するための当該デバイスを含む。各当該装置キットは識別標識を有しており、使用期限をマークしておくのが好ましい。装置キットに含まれる試薬および当該デバイスは、当該装置キットの識別標識と関連する識別標識を有する。当該装置キットに含まれる試薬および当該デバイスは、当該装置キットの使用期限と関連する使用期限を有する。
【0024】
発明の詳細な説明
本発明は、抗凝固処理した血漿の分析対象物濃度を決定する方法であって、該抗凝固処理した血漿に対応する血液試料と液体試薬との混合物に少なくとも2の異なる測定を行うことによる方法を提供する。該方法は、以下の工程:
(a)所定容量の該血液試料を5倍またはそれ以上の容量の該液体試薬と混合し、
(b)該混合物に該少なくとも2の測定を行い、そのうち少なくとも1は該血液試料のヘマトクリットと相関関係を有し、少なくとも1は該分析対象物濃度と相関関係を有する、ついで
(c)(a)の容量が精密かつ正確な場合または(b)の該血液試料のヘマトクリットが知られている場合に測定から得られた結果をコンピューター計算して該抗凝固処理した血漿の該分析対象物濃度を決定する
を含む。
【0025】
本発明のこの側面の一つの態様では、該混合物中の血液の容量は意図した容量の血液の50%〜150%の範囲であり、(b)該混合物中の試薬の容量は意図した容量の試薬の70%〜120%の範囲であり、および(c)血液試料のヘマトクリットが知られている場合に結果をコンピューター計算して分析対象物濃度を決定する。
【0026】
本発明のこの側面の他の態様では、(a)における血液の該意図した容量は5〜40μLの範囲であり、試薬の該意図した容量は100〜1000μLの範囲である、すなわち、測定は精密かつ正確に行わなくてよい、好ましくは(a)における血液の該容量は5〜20μLの範囲であり、試薬の該容量は150〜600μLの範囲である。
【0027】
本発明のこの側面のさらに他の態様では、(b)における該測定は、少なくとも4mmの最小の断面寸法、好ましくは5mm〜15mmの範囲の最小の断面寸法を有する管状容器で行う。
【0028】
本発明のこの側面のさらに他の態様では、該方法を抗凝固処理した血漿で検量または品質保証し、該抗凝固処理した血漿は、抗凝固剤(クエン酸、イソクエン酸、EDTA、シュウ酸、ヘパリンおよびヒルジンのナトリウム塩、カリウム塩およびリチウム塩よりなる群から選ばれる)の添加により抗凝固プロセスに付した対照血漿であってよい。
【0029】
本発明のこの側面のさらに他の態様では、該抗凝固処理した血漿は対照血漿、対照血清または他の対照物質であってよいが、血液、または細胞、酵母または細菌培養液に由来する液体であり、血清、ヘパリン処理した血漿、ヒルジン処理した血漿、シュウ酸処理した血漿、クエン酸処理した血漿、イソクエン酸処理した血漿、EDTA−血漿、熱処理した血漿、および細胞、酵母または細菌の培養液からなる血液由来の液体よりなる群から選ばれる。
【0030】
本発明のこの側面のさらに他の態様では、分析対象物濃度の該決定は、抗凝固剤(クエン酸、イソクエン酸、EDTA、シュウ酸、ヘパリンおよびヒルジンのナトリウム塩、カリウム塩およびリチウム塩よりなる群から選ばれる)の添加により抗凝固プロセスに付した、抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度が知られた抗凝固処理した血液で検量する。
【0031】
本発明のこの側面のさらに他の態様では、該分析対象物は、プロトロンビン時間(PT)、フィブリノゲン、フィブリノゲン分解産物、フィブリン分解産物(D−二量体)、活性化部分プロトロンビン時間(APTT)、活性化凝固時間(ACT)、C−反応性タンパク質(CRP)、コレステロール、およびグルコースよりなる群から選ばれる。
【0032】
本発明のこの側面のさらに他の態様では、(b)における該ヘマトクリットと相関関係を有する該測定は、800nm〜1100nmの範囲の波長の光の1またはそれ以上の測定に基づく。
【0033】
本発明のこの側面のさらに他の態様では、(b)における該2またはそれ以上の測定を18℃〜40℃の範囲の周囲温度で行う。
【0034】
本発明のこの側面のさらに他の態様では、(a)における該試薬は0.1g/Lまたはそれ以上のフィブリノゲンを含む。
【0035】
本発明のこの側面のさらに他の態様では、該分析対象物濃度はINRで表されたPTであり、その際、抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度の該決定の前に、分析対象物濃度をPT%で再度表す。
【0036】
本発明のこの側面のさらに他の態様では、(a)における該混合物の凝固時間は、(b)における該分析対象物濃度と相関関係を有する少なくとも1の測定の1つである。
【0037】
本発明の方法に使用する血液試料は、天然の血液に加えて、抗凝固剤、殺菌剤および薬物などの添加剤を含むようにした、または赤血球のヘモグロビン以外の血球成分を枯渇させた、天然の血液の操作物であってよいことを理解すべきである。
【0038】
本発明の他の側面は、好ましくは収納箱中に以下を含む、血液、抗凝固処理した血液および/または抗凝固処理した血漿で測定を行うための測定および決定デバイスに関する:
(a)特定のロットからの液体試薬を含む容器を収容するためのホルダーであって、該容器は該デバイスの操作の際に該液体試薬との混合のために該試料の1つを収容するもの、
(b)エネルギー源、
(c)データ処理装置、
(d)該血液、抗凝固処理した血液および/または抗凝固処理した血漿試料混合物の1またはそれ以上のためのコンピューター計算データセットを含む読出し専用記憶装置であって、各コンピューター計算データセットは該特定のロットに適合したもの、
(e)各混合物で2またはそれ以上の測定を行うための測定手段、
(f)ユーザーに説明および(d)および(e)からのデータに基づくコンピューター計算した結果を示すディスプレイ、および
(g)デバイスのユーザー制御のための制御手段、好ましくはボタン。
【0039】
本発明のさらに他の側面は、識別標識を備えた装置キットであって、血液、抗凝固処理した血液および/または抗凝固処理した血漿試料で測定を行うための測定および決定デバイス、および該装置キットの該識別標識と関連する識別標識をそれぞれ備えた容器中の1または幾つかの液体試薬を含む装置キットに関する。
【0040】
図面の詳細な説明
図1:ヘマトクリットの決定。血液ヘマトクリット(HCT)を光吸収、すなわち、試薬のみ(lo)および血液と試薬との混合物(l)を透過した光の商に対してプロットしてある。データは表1からのものである。黒方形は、既知のHCTを有する種々の血液10μLをPT試薬350μLに添加したときのものである。黒三角は、44.0%の既知のHCTを有する種々の容量の血液を同PT試薬に添加したときのものである。
【0041】
図2:血液の血球容量フラクション(式9のb)と同じくらい高いPT活性を含む血漿容量を確立してPTの仮定分析対象物容量の決定を可能とすべく、bについて種々の値を使用して本発明の方法に従って決定した抗凝固処理した血漿のINRと、正確な実験室法により決定した抗凝固処理した血漿の既知のINRとの差をbに対してプロットしてある。示してあるのは2群の抗凝固処理した血液試料、すなわち低HCT群(黒三角)および高HCT群(白方形)の結果である。この差は、コンピューター計算における不完全さのための、本発明による方法における誤りと考察される。約0.29のb値のときに両群の誤りは最小である。抗凝固処理した血液での仮定分析対象物容量は、血漿容量の合計および29%の血球容量として確立される。
【0042】
図3a:抗凝固処理した血液とPT試薬との混合物の凝固時間により、抗凝固処理した血漿のPT(IRNで表してある)を従来技術に従って決定した。抗凝固処理した血液の40の試料のセット(すべて、その抗凝固処理した血漿の既知のINRを有する)を考慮した。試料のHCTもまた既知であり、これにより該セットが3群に分けることができる:低HCT群、高HCT群および中HCT群。中HCT群を検量に用いた。決定したINRを既知の血漿INRに対してプロットし、線形回帰分析に供してある。低HCT群は低い血液INRを示し(黒方形)、高HCT群は高い血液INRを示し(黒三角)、中HCT群は中間の血液INRを示す(白丸)。
【0043】
図3b:抗凝固処理した血漿のPTを本発明の方法によっても、すなわち本発明に従っても決定した。抗凝固処理した血漿の既知のINRを有する抗凝固処理した血液試料の40の試料の同じセットを分析した。2つの測定、凝固時間および光吸収を、血液とPT試薬との各混合物で行った。凝固時間の値および亜群は図3aと同様である。本発明の方法によるINR値を、抗凝固処理した血漿の既知のINR値に対してプロットしてある。3群すべてについて、決定したINR値は今や既知のINR値とほぼ同じであり、このことは本発明の方法の有用性を示している。
【0044】
図4:本発明による測定および決定デバイスの現在好ましい態様の模式図を示す。図面の特徴:(1A)デバイスの容器ホルダーに角度をつけて挿入した容器(直径10mmのポリスチレン管)の側面図;(1B)血液を添加し、血液と試薬を混合し、およびフックで留めて血液凝固を検出するための開口を有する容器の平面図;(2)940nm LEDからの光線の断面図であり、該光線は容器壁およびその内容物を透過してフォトダイオード検出器に到達する;(3)外部まで拡がる模型生地(model dough)によって囲まれた、容器ホルダー中の空隙であり、該空隙は周囲温度を測定するためのサーミスターを収容するもの;(4)ドリルで穴を開けて容器ホルダーおよび光路を形成した木片;(5)オペレーターがデバイスと相互作用する、すなわち、光の測定の開始、タイマーの開始および停止、および計算の開始および決定した値にアクセスする、電気スイッチのボタン。装置の内部には、9V電池、電子回路およびプログラム可能な集積コンピューター(PIC)がある。PICは液晶ディスプレイ(LCD)と相互作用してオペレーターと仲介する(inter-phase)。PICは計時し、測定した光強度および温度のアナログからデジタル変換する。PICはまた、すべての必要なコンピューター計算を、本発明により提唱された抗凝固処理した血液で血液のPTを決定するための計算とする。
【0045】
図5aおよび図5bは、本発明による測定および決定デバイスの一つの態様の写真を示す。図5aは、容器ホルダー中の容器内の試薬への試料の添加を示す。図5bは、ディスプレイ上の決定の結果を示す。デバイスはこれが事実であると自動的に表し、試料が血液であれば、これが示されるであろう。試料の区別は、ヘマトクリットと相関関係を有する混合物での測定の結果に基づく。
【0046】
ある範囲の値が提供される場合は、そうでないとの明確な断りのない限り、該範囲の上限と下限との間の各値(下限の単位の1/10まで)および言及した範囲の他の言及したまたは間の値が本発明の範囲に含まれることを理解すべきである。
【0047】
特に断りのない限り、本明細書で用いる技術および科学術語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または等価ないかなる方法または材料をも本発明の実施または試験に用いることができるが、好ましい方法および材料を以下に記載する。本明細書に言及する刊行物はすべて、該刊行物が引用された関連において方法および/または材料を開示すべく本明細書中に参照のため引用する。
【0048】
本明細書で検討する刊行物は、本願の出願日前のその開示のためにのみ提供される。本明細書中のいずれも、本発明が従来の発明のためにそのような刊行物に先立つ資格がないことを許容するものと解釈してはならない。さらに、提供される刊行物の日付は実際の刊行日と異なるかもしれず、このことは個々に確認する必要がある。
【0049】
本発明をさらに説明するに際し、本発明の方法をまず説明する。つぎに、本発明のデバイスの説明が提供され、ついで本発明のキット(本発明のデバイスを含む)が説明される。
【0050】
方法
本発明の方法を考察する仕方は以下のとおりである。血漿中の分析対象物濃度を、対応血液と液体試薬との混合物での2またはそれ以上の測定を行うことにより決定する。これら測定の少なくとも1は血液のヘマトクリットと相関関係を有していなければならず、少なくとも1の測定は血液の分析対象物濃度と相関関係を有していなければならない。抗凝固処理した血漿の分析対象物濃度はコンピューター計算により決定する、すなわち、抗凝固処理した血漿が血液から調製され、この抗凝固処理した血漿が参照法かまたは正確な実験室法のいずれかによる分析対象物濃度決定に供されておれば得られたであろう結果を測定値が与えるような仕方で測定値は数学的にコンバインされる。以下の記載の殆どは、いかにして測定(測定値)がコンバインされて所望の結果(抗凝固処理した血漿の分析対象物濃度)を与えるかについての説明である。
【0051】
もしも測定した値がヘマトクリットの変化とともに変化するなら、該測定は血液のヘマトクリットと相関関係を有する。ヘマトクリットの異なる2つの血液試料は異なる測定の少なくとも1の値において差違を示す傾向があるだろうし、分析対象物濃度の異なる2つの血液試料でも同様であろう。必要とされる相関関係は線形である必要はなく、完全である必要もない。強い線形の相関関係は測定値の数学的な組み合わせを容易にして抗凝固処理した血液の分析対象物濃度の良好な決定または推定値を与えるであろうが、非線形で強くない相関関係もまた本発明の有用な実施を可能とし、確実に本発明の範囲に包含される。上記の当然の帰結として、ヘマトクリットと相関関係を有するいかなる血液分析対象物濃度またはレベル、たとえば、ヘモグロビン濃度または細胞膜濃度は、本発明の精神から離れることなく本発明の方法の実施においてヘマトクリットと入れ替えることができる。
【0052】
本発明の方法は、小さな実験室かまたは近患者部位のいずれかで実施される。本発明の方法を実施する環境に依存して、本発明の方法の実施の必要条件が異なるゆえに本発明の実施に好ましい手順は変わるであろう。それゆえ、本発明の方法の説明において関連する場合にはいつでも実施が小さな実験室で行われるのかあるいは近患者部位で行われるのかが指摘されるであろう。以下に、本発明の方法の実施に関連する事項として、分析対象物濃度の決定に対する抗凝固処理プロセスの影響および血液の情報をまず記載する。つぎに、抗凝固処理した血液中での分析対象物の挙動の情報を記載する。これに続いて小さな実験室および近患者部位での本発明の方法の実施の一般的説明、および本発明の方法のさらなる詳細な説明を記載する。対応血液の混合物で測定を行うことにより抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度を決定するには、抗凝固処理した血液中での分析対象物の挙動の情報と同様に血液に対する抗凝固処理プロセスの影響の情報が有用である。
【0053】
血液と試薬との混合物での測定に対する関連量の抗凝固剤の影響は無視できるものでなければならない。血液と試薬との混合物での測定は、血液と試薬との混合物であって該試薬に関連量の抗凝固剤を添加した以外は同じである混合物での測定と同じ結果を与えなければならない。このことは本発明の実施にとって絶対的な要件ではないが、本発明の好ましい実施を可能とするものであり、参照法または正確な実験室法により知られた生物学的流体の分析対象物濃度を用いて本発明の方法を検量し、抗凝固処理した血液試料、抗凝固処理した血漿試料などで品質保証することができる。関連量の抗凝固剤に対する感度の無さ(insensitivity)はまた抗凝固処理した血漿試料を対照として使用することを可能にし、その定期的な分析は本発明の方法の実施の信頼性のある性能を確実にするのに重要である。
【0054】
本発明の方法の実施に際して、分析対象物は抗凝固処理した血液の血球容量と血漿容量との間に分布するものとして考察できる。抗凝固処理した血液の仮定分析対象物容量の概念はこの分布を説明する。仮定分析対象物容量(Vh)は血液または抗凝固処理した血液の想像上のまたは提唱した容量であり、すべての分析対象物を含み抗凝固処理した血漿と同じ分析対象物濃度を有するものである。Vhは典型的に血液または抗凝固処理した血液の血漿容量よりも大きい、なぜなら抗凝固処理した血液の血球容量は0よりも大きな分析対象物濃度を有するからである。本発明の方法を実施するに際して、Vhは、前もって既知であるかまたは本発明の方法の実施により決定された血液の特性から決定される。これら血液の特性は、容量およびヘマトクリットであり、およびおそらく分析対象物濃度である。Vhと血液の既知のまたは決定された特性との関係は別途決定され、本発明の実施の前にはわかっている。分析対象物濃度PT(本発明を説明する一例として用いられる)に関しては、Vhは、抗凝固処理した血液の血漿容量と血球容量の29%との合計として確立される(実施例2参照)。本発明の方法の実施に際して、抗凝固処理した血液の血漿容量および血球容量は、血液容量および血液ヘマトクリットにより決定される。
【0055】
本発明の方法の小さな実験室での実施に際しては、意図した容量の血液と意図した容量の試薬とを良好な正確さで割り当てる。血液容量は意図した血液容量であり、試薬容量は意図した試薬容量である。それゆえ、決定した血液ヘマトクリットの値および血液分析対象物濃度の値は真実の値である。抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度は、以下に詳細に説明するように、血液中の分析対象物濃度および抗凝固処理した血液のVhから決定することができる。
【0056】
本発明の方法の近患者部位での実施に際しては、意図した容量の血液と意図した容量の試薬とを良好な正確さで割り当てない。血液容量は意図した血液容量ではなく、試薬容量は意図した試薬容量ではない。それゆえ、決定した血液ヘマトクリットの値および血液分析対象物濃度の値は真実の値ではない;それゆえ、それらは見かけの値として言及される。未知の血液容量および見かけの分析対象物濃度を真実のものに変換するには、血液のヘマトクリットを知らなければならない。血液の真実のヘマトクリットがわかっていることは、本発明の方法の近患者部位での実施の必要条件である。既知の見かけのヘマトクリット値を用いて真実の血液容量を決定する。真実の血液容量および真実のヘマトクリットを用いてVhを決定する。提唱した抗凝固処理した血漿の分析対象物濃度は、Vhおよび決定した(見かけの)分析対象物濃度を用いて決定される。あるいは、真実の分析対象物濃度を決定し、ついでこの値、真実の(既知の)ヘマトクリットおよび意図した血液容量を用いて、提唱した抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度を決定する。
【0057】
意図した血液容量および意図した試薬容量の文脈で用いる「意図した」なる語は、試験プロトコールに従って、互いに混合すべき血液の理想的な容量および試薬の理想的な容量が存在することを意味する。小さな実験室の環境では、意図した容量は十分な正確さで達成される。近患者の環境では、血液の容量および試薬の容量は、意図した値のおそらく50%〜150%の範囲内である。この範囲は、両容量で必ずしも同じでなくてもよく、意図した範囲に対して必ずしも対称的でなくてもよい。混合物の組成は常に多かれ少なかれ充分には定められないので、混合物の分析によって決定されたヘマトクリットおよび分析対象物濃度は、常に、それぞれ血液の見かけのヘマトクリットおよび血液の見かけの分析対象物濃度として言及することができる。本発明の方法の実施者が答えなければならない問題は、血液および試薬の意図した容量が十分な正確さで達成されているか否かということである。答えが否であれば、本発明の方法に従って分析対象物濃度の決定をするために血液のヘマトクリット値が必要である。本明細書の説明では、本発明の方法の小さな実験室での実施では意図した容量が達成されたと仮定し、近患者の実施では達成されていないと仮定する。
【0058】
本発明の方法の実施に際して、血液と試薬との混合物の組成の変動は、血液容量の変動による変動として考察される。試薬容量は意図したものであると仮定される。この仮定は、本発明の方法の近患者での実施における真実の血液容量の決定において重要である。この仮定の根拠は、血液と試薬との混合物中の血液濃度のみが分析対象物濃度の決定に影響を及ぼすということである。このことは2つの側面の理由から真実である。一つは、試薬濃度は使用したアッセイ条件下で比較的一定であるということである。他は、試薬は、反応混合物中でのその濃度がアッセイ応答に対して、それゆえ決定した分析対象物濃度に対して、殆どまたは全く影響を及ぼさないようにデザインされるということである。本発明によれば、試薬容量は血液容量の5倍またはそれより多い。下限では反応混合物中の試薬濃度は5/(5+1)すなわち0.83(83%)である。試薬容量が意図した容量の50%まで下がると、試薬濃度は2.5/(2.5+1)すなわち0.71(71%)となる。それゆえ、5倍の下限においては、試薬容量の50%の低下は試薬濃度の14%の低下となるにすぎない。意図した血液容量に対する意図した試薬容量の比がさらに高いときは、効果はさらに小さくなる。さらに、試薬は過剰の活性物質を有しており、反応混合物での反応は試薬濃度によって殆ど影響されない。意図した容量からの試薬容量のずれは、反応混合物に対して3つの仕方で影響を及ぼすであろう。それは、混合物の試薬濃度を変え、混合物の全容量を変え、混合物の血液濃度を変えるであろう。これら変化のうちの2つ;試薬濃度の変化および全容量の変化、は重要ではない。重要性のある唯一の変化は、血液濃度の変化である。血液と試薬との混合物の全容量の変動は、もう少し注意に値する。理論上は全容量は分析対象物濃度の決定に影響を及ぼさない。組成が同じであれば小容量も大容量も同じ分析対象物濃度を有する。しかしながら、実際には限界がある。非常に大きな容量では容器は溢れ出すであろう。非常に小さな容量では測定を行うことはできない。決定に影響を及ぼすことなく変わりうる全容量の限界は、本発明の方法の個々の方法ごとに確立しなければならない。
【0059】
血液と液体試薬との混合物で行う2またはそれ以上の測定は、従来技術に包含されるいかなる種類のものであってもよい。測定は、電磁的、電気的、磁気的、流動学的、熱量測定的、化学量論的または一時的であってよい。電磁測定法としては、あらゆる種類の電磁放射(可視光、紫外線、赤外線、マイクロ波、ラジオ波など)の測定法が挙げられる。電気測定法としては、抵抗、インピーダンス、電位、電流および最大出力(capacity)などのあらゆる種類の電気現象の測定が挙げられる。熱測定法としては、温度および関連する分析対象物が挙げられる。化学量論的測定法としては、あらゆる種類の計数(細胞の計数、および放射核種崩壊の計数など)が挙げられる。好ましい実施においては、各分析対象物について一つの測定が選択されるが、これは全く必要ない。2つの光学測定、たとえば2つの波長での測定を線形的にコンバインして2つの分析対象物濃度の決定を得ることができる。別のやり方として、同じ波長でだが時間を隔てた2またはそれ以上の光学測定を用いて2つの分析対象物濃度を決定することができる。混合物での2つの事象間の時間はそのような手段である。2つの分析対象物濃度を決定するには2またはそれ以上の測定が必要であり、3つの分析対象物濃度を決定するには3またはそれ以上の測定が必要である等々。本発明の方法の現在の実施では、流動学的事象に基づき、1の光学測定および時間測定を混合物で行う。光学測定はヘマトクリットを決定するのに用い、流動学的測定はPTを決定するのに用いる。流動学的測定を用い、凝固時間を決定する。凝固時間は、活性化部分プロトロンビン時間(APTT)や活性化凝固時間(ACT)などのように凝固性分析対象物の濃度を決定するのに用いることができる。
【0060】
本発明の方法において、「分析対象物濃度」なる語は、単位容量当たりの観察可能なまたは想像上の存在のコピー数に関係する物質の特性に関する。それゆえ、分析対象物濃度はその性質が化学量論的である。血液での分析対象物濃度の決定は、血液の単位容量当たりのそのような存在のコピー数の決定に関連する。もしも血液を希釈したなら、分析対象物濃度は下がる。このことは、所定の表示による分析対象物濃度には必ずしも当てはまらない。所定の表示による分析対象物濃度は、観察可能なまたは想像上の存在の濃度に必ずしも比例するわけではない。一例は酸度である。酸度は、容量当たりの想像上のHイオンの数と関連する分析対象物濃度である。酸度は一般にpHで表示される。pHによる酸度は、明らかにHイオンの濃度とは比例しない。非比例表示による分析対象物濃度は、比例的となるように再表示することができる。たとえば、pHによる酸度は、10の−pH累乗による酸度として再表示しておそらく比例的にすることができる。分析対象物濃度の他の例はプロトロンビン時間(PT)である。この分析対象物は、血液凝固因子、とりわけ血液凝固因子II、VIIおよびXの濃度と関連する。それゆえ、PTの決定は分析対象物濃度の決定として考察することができる。一般的に用いられるPTの表示は、血液凝固時間およびINRである。血液凝固時間によりまたはINRにより表示した場合、PT濃度は血液凝固因子の濃度と比例しない。本発明の方法を実施するうえで、ヘマトクリットを比例的表示によるものとすることは重要である。本発明の方法の実施に際して決定される他の分析対象物濃度は、比例的であろうとなかろうと、いかなる表示によっても表示してよい。本明細書に記載するある種の決定手順、とりわけコンピューター計算は、分析対象物濃度が比例的表示によるものであることを必要とする。分析対象物濃度が比例的表示によるものであることを確実にするため、決定した見かけの分析対象物濃度が反応混合物中の血液濃度に比例することをチェックすべきである。表1の実験データは、ヘマトクリットでのそのようなチェックを可能にする。
【0061】
本発明の近患者での実施では、比例的表示による分析対象物濃度は血液中の分析対象物濃度の直截的決定を可能にする。血液中の見かけのおよび真実の分析対象物濃度がそれぞれAtおよびAaであると、見かけのおよび真実の(既知の)ヘマトクリットはそれぞれHCTaおよびHCTtである。以下の式が当てはまる:
At=AaHCTt/HCTa 式1
【0062】
血液中の真実の分析対象物濃度および真実のヘマトクリットは、抗凝固処理した血液中の分析対象物濃度を決定するのに充分である、なぜならその場合、血液容量は意図したものであると仮定することができるからである。
【0063】
分析対象物濃度が比例的表示によるものでない場合、計算は次式に従って真実の血液容量を決定することにより進めることができる:
Vbt=VbiR/(R−K+1) 式2
【0064】
真実の血液容量および意図した血液容量は、それぞれVbtおよびVbiである。KはHCTtに対するHCTaの比であり、Rは意図した血液容量Vbiに対する意図した試薬容量Vriの比である。
【0065】
分析対象物濃度が比例的表示によるものであるか否かをチェックするには、血液と試薬との混合物中の血液濃度が必要である。この濃度、および混合物中の他の濃度は、以下の式により決定することができる:
X=(Q+QR)/(Q+R) 式3
【0066】
式3において、Rは式2と同様にVri/Vbiであり、QはVb/Vbiである。式3は、正規化濃度値、すなわち、Qが1であるときに単一である(100%)濃度値を与える。式3は、Rが無限大に向かうときにXがQに等しくなることを知らせている。式3は、わずかなカリブレーター(calibrators)血液試料の種々の容量を使用して広範な範囲のヘマトクリット値をカバーすることを可能にすることにより、ヘマトクリットの検量に便利である(実施例1参照)。本発明の方法の現在のところ好ましい実施において、Rは35である。この条件では、XとQとの差違はQ値が高い場合にのみ表明される。
【0067】
提唱した抗凝固処理した血漿(APP)中の分析対象物濃度を決定するための一つの一般的方法は、以下に詳細に説明する仮定分析対象物容量(Vh)の概念の使用によるものである。血液中の分析対象物濃度は、抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度として表された抗凝固処理した血液中の分析対象物濃度に関して決定される。このことを行うため、抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度が既知である適当な容量の抗凝固処理した血液カリブレーターを用いて、分析対象物濃度の決定を検量する。これらカリブレーターは、既知の平均仮定分析対象物容量(Vhm)を有する。カリブレーターの適当な容量は、提唱した抗凝固プロセスに供した後の血液の意図した容量である。Vhに対する決定した分析対象物濃度の従属性は、微分dA/dVhとして確立される。血液中の分析対象物濃度(Ab)およびその関連するVhが決定される。提唱した抗凝固処理した血漿中の所望の分析対象物濃度(App)は、以下の式により得られる:
App=Ab+∫(dA/dVh)dVh 式4
【0068】
積分はVhからVhmまでである。実施例3において、Appは式4に従って決定されている。この実施例において、微分はおよそΔA/ΔVhによる、すなわち、Vhの巨視的な変化(Vh2−Vh1)で除したAの巨視的な変化(A2−A1)による。
【0069】
分析対象物濃度は、ある程度、その決定に使用した方法に依存する。このことのため、方法の特徴的な特性をしばしば示してある。一つの例は分析対象物濃度ヘマトクリットである。ヘマトクリットは、赤血球の容量を測定することにより、または光を測定することにより決定する。使用した方法に応じて、分析対象物濃度はそれぞれ容積ヘマトクリットまたは測光ヘマトクリットと呼ばれる。使用した方法について何も言及されていない場合は、解釈は広くても狭くてもよい。狭い解釈は参照法を使用したというものである。広い解釈は既知の方法を使用したというものである。本発明の方法においては、「分析対象物濃度」なる語は最も広義に、非制限的に解釈しなければならない。本発明の方法の文脈にいて、「提唱した抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度」なる語は、血液を提唱した抗凝固プロセスに供し、分析対象物濃度を抗凝固処理した血漿中で決定したのであれば、いずれかの方法によって得られる分析対象物濃度をいう。上記における「提唱した」なる語は、物質が手元にないこと、調製していないこと、想像しただけであることを示すにすぎない。本明細書の多くの箇所においてそれを省略してある。それは明確のために加えたものであるが、おそらくその意図を打ち負かしている。本発明の方法の精密さおよび正確さをチェックする好ましい実施において、抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度を正確な実験室法により決定する。本発明の方法の実施により決定された、提唱した抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度は、必ずしもこの値と同一である必要はない。本発明の方法の精神または本質は、本発明の方法の実施により抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度の決定により得られる値が、もしも実際に抗凝固処理した血漿で決定を実際に行ったならば得られたであろう値に近接していることである。
【0070】
本発明の方法では、ヘマトクリットは、ヘマトクリットを決定できることが知られている多くの方法のいずれによっても決定される。好ましい実施においては、ヘマトクリットは、800〜1100nmの範囲の波長の透過光の測定により決定される。ヘマトクリット決定は、既知のヘマトクリット値を有する血液試料で検量される。ヘマトクリット値は、正確な実験室法によって知られている。上記に記載したように、本発明を実施するには、測定はヘマトクリットに翻訳する必要はなく、ヘマトクリットと相関関係を有する幾つかの他の分析対象物濃度またはレベルに翻訳してよく、あるいは全く翻訳する必要がない。
【0071】
本発明の方法において、「(提唱した)抗凝固プロセスの血液容量およびヘマトクリットに対する影響」は、典型的なまたは平均的なプロセスの影響に属する。
【0072】
臨床診断法では、3つのタイプの抗凝固プロセスが一般に用いられている、すなわち、EDTA、ヘパリンまたはクエン酸を用いた抗凝固処理。これらプロセスのうちの2つ、EDTAによる抗凝固処理およびヘパリンを用いた抗凝固処理は、血液容量およびヘマトクリットに対してわずかな影響しか及ぼさない。一般に実施されるクエン酸抗凝固プロセスは、著しい影響を及ぼす。典型的なクエン酸抗凝固プロセスは、1容量の0.11Mまたは0.13Mクエン酸三ナトリウムを9容量の血液に加えることからなる。このことは全血液容量およびヘマトクリットに影響を及ぼす。クエン酸溶液は高張であり、赤血球の縮みが予想され、考慮に入れる必要がある。容量VbでヘマトクリットHCTの血液にクエン酸抗凝固処理を適用した場合、抗凝固処理した血液の容量およびそのヘマトクリット(それぞれ、VbcitおよびHCTcit)は、それぞれ、以下の式により与えられる:

【0073】
提唱した抗凝固処理した血液の血漿容量および血球容量(それぞれ、Vpcit and Vccit)は、それぞれ、以下の式により与えられる:

【0074】
もしも血球のx%の縮みの起こることが知られているなら、ヘマトクリットはx%低下し、血漿の容量は血球が縮んだ容量だけ増加する。
【0075】
本発明の好ましい実施において、抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度が既知である適当な容量の抗凝固処理した血液カリブレーターを用いて、血液中の分析対象物濃度の決定を検量する。検量手順において、カリブレーターのヘマトクリットを決定することのできる各カリブレーターの対応血液についてヘマトクリット値を得る。このヘマトクリット値は、以下に詳記するように、各カリブレーターの仮定分析対象物容量の決定を可能にする。たとえば、本発明の方法を10μLの意図した血液容量および350μLの意図した試薬容量で行い、提唱した抗凝固プロセスがクエン酸抗凝固処理であるなら、式4に従い、この方法を11.11μLのクエン酸抗凝固処理した血液の使用により検量する。カリブレーターの見かけのヘマトクリットが得られる。意図した10μLの代わりに11.11μLを使用しているので、カリブレーターのヘマトクリットは見かけのヘマトクリットを1.111で除したものに非常に近くなる。最高の正確さのためには、見かけのヘマトクリットを式3の正規化濃度で除すべきである。Qとして1.111およびRとして35を挿入して、1.108の正規化濃度、X値が得られる。
【0076】
仮定分析対象物容量の決定は、別の実験により得られる情報を必要とする。抗凝固処理した血液の仮定分析対象物容量(Vh)は、すべての分析対象物を含み、抗凝固処理した血漿と同じ濃度を有する容量である。本発明の好ましい実施において、Vhのモデルは、抗凝固処理した血液の血漿容量と血球容量のフラクションとの合計である。該フラクションがbであり、抗凝固処理した血液の容量がVabであり、抗凝固処理した血液のヘマトクリットがHCTabであるなら、Vhは以下の式により与えられる:
Vh=Vab(1−HCTab+bHCTab) 式9
【0077】
クエン酸抗凝固処理の場合、VabおよびHCTは、式5および6に従って、血液容量(Vb)および血液ヘマトクリットから得られる。フラクションbは別の実験で確立される。実施例2は、クエン酸抗凝固処理した血液および分析対象物濃度PTを用いたそのような実験を記載している。この場合、bは0.29であることがわかった。
【0078】
もしも、上記のように、血液中の分析対象物濃度の決定が抗凝固処理した血漿中の既知の分析対象物濃度を有する適当な容量の抗凝固処理した血液カリブレーターで検量してあるなら、血液中の分析対象物濃度(Ab)の決定は、Vhがカリブレーターの平均Vh(Vhm)に等しいことを条件として、提唱した抗凝固処理した血液中の分析対象物濃度に等しい。もしもVhがVhmと異なり、分析対象物濃度が比例的表示によるものであるなら、提唱した抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度(App)は以下の式により決定される:
App=AbVhm/Vh 式10
【0079】
それゆえ、もしも分析対象物濃度が比例的表示によるものであり、仮定分析対象物容量の概念が意味で満たされるなら、所望の結果(App)が便利に得られる。もしも分析対象物濃度が比例的表示によるものでないなら、比例的となるよう再表示することができる。ついで、式9を適用することができ、その後、そう望むなら分析対象物濃度を再び最初の表示に再表示することができる。上記に記載した、提唱した抗凝固処理した血液中の分析対象物濃度を得るための手順は、本発明の方法を実施することにより提唱した抗凝固処理した血漿で分析対象物濃度を得ることのできる多くの可能な手順のうちの一つの例にすぎない。本発明の方法の実施は、ある種の表示による血液ヘマトクリットおよび血液分析対象物濃度の決定という結果となる。上記から、表示の様式は検量手順およびカリブレーターに依存することが明らかである。表示がどうあれ、本発明の方法の実施は、抗凝固処理した血漿を調製する必要なく、抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度を決定できる方法を提供する。
【0080】
比例的な表示が常にある分析対象物濃度範囲にわたって得ることができることに注意することは重要である。血液中の分析対象物濃度、あるいは血漿中の既知の分析対象物濃度を有するより良好な抗凝固処理した血液は、常にある表示にて利用できる、さもないと抗凝固処理した血液中の分析対象物濃度を決定することは意味のないことになる。抗凝固処理した血液の容量を変えていき、抗凝固処理した血液の濃度(式3のX)を分析対象物濃度の表示に対してプロットすることにより、抗凝固処理した血液の濃度を分析対象物濃度の関数として所定の表示により表示することができる。抗凝固処理した血液濃度1を含み、抗凝固処理した血液濃度が分析対象物濃度に応じて連続的に上昇するかまたは下降する分析対象物濃度の範囲では、分析対象物濃度の関数は定義により分析対象物濃度の比例的な表示である。
【0081】
本発明の方法を小さな実験室で実施する場合は、血液容量はわかっている、なぜならそれは意図した血液容量だからである。決定した見かけのヘマトクリットおよび見かけの分析対象物濃度は、血液の真実のヘマトクリットおよび真実の分析対象物濃度である。これら血液の真実の値により、抗凝固処理した血液中の分析対象物濃度を決定する。本発明の方法の好ましい実施に際しては、抗凝固処理した血漿中の既知の分析対象物濃度を有する抗凝固処理した血液カリブレーターを用い、正確な実験室法により決定したように分析対象物濃度の決定を検量する。これらカリブレーターのヘマトクリットは、検量と関連して決定する。決定した血液の分析対象物濃度、血液のヘマトクリットおよびカリブレーターの平均ヘマトクリットを用いることにより、提唱した抗凝固処理した血液中の所望の分析対象物濃度を決定する。仮定分析対象物容量の概念は決定において重要である。血液の分析対象物濃度および血液のヘマトクリットから所望の結果を得ることのできる無数の手順の変更がある。これらの可能性の観念を与えるため、例示を示す。さもなければ、既知の分析対象物濃度および血液のヘマトクリットを提唱した抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度に変換するのに必要な情報は、多くの形態、たとえば、表の形態または2またはそれ以上の変量関数(variable functions)の形態であってよい。
【0082】
本発明の方法を近患者で実施する場合は、(提唱した)抗凝固処理した血液中の分析対象物濃度の決定は小さな実験室で実施する場合と同様にして行う。違いは、血液および試薬の意図した容量を達成することができないという事実にある。このことのため、血液と試薬との混合物の組成は明確に定められない。この不完全さを埋め合わせるため、血液のヘマトクリットが知られていなければならない。既知のまたは真実のヘマトクリット(HCTt)および決定した見かけのヘマトクリット(HCTa)を用い、真実の血液容量を式2を使用して決定する。真実の血液容量および真実のヘマトクリット値および対応の(見かけの)分析対象物濃度を用い、提唱した抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度を決定する。この決定を行うのに好ましい仕方は、上記に記載したような仮定分析対象物濃度の概念を用いることによるものである。上記で指摘したように、操作を行うには多数の方法がある。式3は、一つの可能性を示す;表および多変量関数は他の可能性である。もしも分析対象物濃度が比例的表示によるものであれば、提唱した抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度の決定は直接的に得られる。式3は真実の分析対象物濃度を与える。真実の分析対象物濃度値、真実の(意図した)血液容量および真実の(既知の)ヘマトクリットを用い、式9および仮定分析対象物容量の概念の使用により、提唱した抗凝固処理した血液の所望の分析対象物濃度を決定する。本発明の方法の近患者での実施に際して、血液と試薬との同じ混合物での2またはそれ以上の測定による見かけのヘマトクリットおよび見かけの分析対象物濃度の決定は重要である。共通する混合物は見かけのヘマトクリット値と見かけの分析対象物濃度値とを関連付け、これにより所望の決定が可能となる。必要性とは別に、この決定は行うのが便利である。
【0083】
本発明の方法により決定するのに適した多くの医学診断用分析対象物濃度がある。これら分析対象物濃度としては、これらに限られるものではないが、プロトロンビン時間(PT)、フィブリノゲン、フィブリノゲン分解産物、D−二量体、活性化部分プロトロンビン時間(APTT)、C−反応性タンパク質(CRP)、コレステロール、およびグルコースを含む一群の分析対象物濃度が挙げられる。
【0084】
抗凝固処理した血漿は、広義に解釈すべきである。それは、分析対象物濃度の決定のための試料として用いられる、血液から得られた全てのタイプの非凝固性の液体を含む。該液体は以下の液体群に包含されるが、該群の成員に限られるものではない。この群は、血清、ヘパリン処理した血漿、ヒルジン処理した血漿、シュウ酸処理した血漿、クエン酸処理した血漿、イソクエン酸処理した血漿、EDTA−血漿および熱処理した血漿からなる。
【0085】
本発明の方法の実施に際して、血液を供することになる(提唱した)抗凝固処理プロセスは、クエン酸、イソクエン酸、EDTA、シュウ酸、ヘパリンおよびヒルジンのナトリウム塩、カリウム塩およびリチウム塩よりなる群から選ばれる抗凝固剤の添加を含む。
【0086】
血液と試薬との混合物で行う2またはそれ以上の測定は、18℃〜40℃の範囲の周囲温度で行うことが、本発明の方法の範囲に包含されると解釈される。このことを行うため、上記範囲内の幾つかの温度で検量を行い、検量パラメーターを温度の関数として確立する。
【0087】
本発明の方法の小さな実験室での実施に際して、提唱した抗凝固処理した血液中の所望の分析対象物濃度とは別に、血液のヘマトクリットを得る。このヘマトクリット値は、分析対象物濃度の決定の信頼性を高めるために用いることができる。この値を参照値または前もって決定した値と比較することができる。もしもヘマトクリット値が妥当でなければ、このことを分析対象物濃度の決定を失格とする基準として用いることができる。
【0088】
近患者部位では、既知のヘマトクリット値に含まれる情報の殆どは、意図した容量の試薬と混合した血液の容量および/または真実の分析対象物濃度を定めるのに費やされる。それでも、HCTaとHCTtとの間の最大差違で幾つかの限界が確立される。そのような限界は、分析対象物濃度の決定の信頼性を高めるのに用いることができる。限界を超える差違は、分析対象物濃度の決定を失格とすることができたであろう。また、経時的な繰り返し決定は、患者のヘマトクリットが浮動したこと、および更新した決定の必要があることの指標を与えることができる。
【0089】
PTは、本発明の方法の実施により提唱した抗凝固処理した血漿で決定することのできる分析対象物濃度である。PT(INRで表示される)は、血液と試薬との混合物での1またはそれ以上の測定により決定される。この決定は、非比例的表示INRによるPTを比例的表示PT%によるPTに再表示することにより容易なものにすることができる。このことは、式:PT%=1/(INR0.028−0.018)で行うことができる。ついで、提唱した抗凝固処理した血漿でのPT%をある選択した手順により決定する。提唱した抗凝固処理した血漿でのPTを報告する前に、PT%によるPTをINRによるPTに再表示することができる。このことは、上記関数の逆関数:INR=[(1/PT%)+0.018]/0.028を用いて行う。PTの再表示は必要ない。本発明の実施の好ましい手順では、PTの再表示は行わない。提唱した抗凝固処理した血漿でのPTをINRによるPTおよび血液ヘマトクリットを用いて決定する。そのような手順が好ましい、なぜなら計算が少なくてすむからである。
【0090】
本発明の課題の主題は、性能の良い湿化学法を近患者試験の必要性に適合させることである。定義により、湿化学決定は試料を試薬中で希釈することを必要とする。本発明の方法の全ての実施において、試料は血液であり、最小希釈は5倍である。光透過によりヘマトクリットを決定するには、短光路長(short optical path length)を回避するために血液の希釈が必要である。短光路長は、血液と試薬との混合物の容器の小さな内径を意味し、本発明の方法の実施を妨げるものである。本発明の方法の意図した実施は、手動の処理、たとえば、血液と試薬との接触および混合を含むため、試料容器の大きさはこれを収容できなければならない。4mmよりも小さな容器の内径は、手動の処理を実施できないものにし、実施を不可能にさえする。本発明の方法の好ましい実施においては、8mmの円断面を有する管状容器を用いる。管状容器において許容しうる断面、すなわち光路は、4〜16mmの範囲である。血液試料の容量にも実施上の限界がある。本発明の方法の実施に際して意図した血液の採取源は、針で刺した指先であり、血液を手動で拾い上げて容器内の試薬に移す。血液試料は、5μL〜40μLの範囲でなければならない。容器の大きさおよび血液容量に対する試薬容量の比は、血液容量を100μL〜1100μLの範囲に制限する。以下に説明するように、限られた波長範囲内、800〜1100nm内の光のみが許容できる。最も好ましい実施においては、管状容器の断面長は5mm〜15mmの範囲であり、血液容量は5μL〜20μLの範囲であり、試薬容量は150μL〜600μLの範囲である。
【0091】
本発明の方法の好ましい実施において、血液と試薬との混合物を透過した光の強度を測定することによりヘマトクリットを決定する。現在のところ最も好ましい実施においては、試薬のみを透過した光の強度も測定し、試薬を透過した光の測定強度と血液と試薬との混合物を透過した光の測定強度との商から血液のヘマトクリットを決定する。この好ましい実施により、実験的な変動は取り消されやすい。変動の原因は、光源、試薬の光学的特性および容器の光学的特性である。好ましい実施においては、光の波長は800nm〜1100nmの範囲である。この光は光スペクトルの近赤外部にあり、ヒトの目によっては殆ど検出できない。この波長範囲の光が好ましい、なぜならそれがヘモグロビンの酸素飽和型および酸素枯渇型によりほぼ等しく、かつ比較的小さな程度で吸収されるからである。低吸収が重要である、なぜならそれが比較的長い光路長、たとえば、本発明の現在のところ最も好ましい実施において容器として使用する透明なプラスチック管の直径である8mmの使用を可能とするからである。約1100nmを超える波長では、水による光吸収は劇的に増加してヘマトクリットの決定が困難になる。800nm未満の波長、600nm〜800nmの範囲では、上記ヘモグロビンの2つの型の吸収が異なり、それによって誤りの原因が導入される。さらに短い波長では、ヘモグロビンによる光吸収は非常に強い。このことは、4mmまたはそれ以上という好ましい光路長を排除するか、または試薬中の血液の過度の希釈を必要とさせる。
【0092】
本発明の方法の実施に際し、意図した容量の血液と意図した容量の試薬との混合物は多くの異なる仕方で達成することができる。最初に血液をたとえば9g/Lの塩化ナトリウム中で希釈し、ついで試薬と混合することが本発明の範囲に包含されると了解される。あるいは、試薬は幾つかの成分、たとえば、第一の成分、第二の成分等々にあってよい。本発明の方法の実施に際して、重要なのは血液容量に対する試薬容量の最終比である。血液と試薬との接触は、血液と試薬との反応に必要な最後の成分を加えるときである。
【0093】
プロトロンビン時間(PT)は、本発明の方法の実施により提唱した抗凝固処理した血漿で決定することのできる分析対象物濃度である。好ましい実施においては、以下の点が適用される。血液とPT試薬との接触は、血液とPT試薬との混合物において凝固反応を開始するのに必要な最後の成分の添加を意味する。この接触は、凝固反応の開始および時間測定の開始を定める。凝固が最初に検出されたときに時間測定を停止し、凝固時間を得る。従来技術による凝固時間を決定するために使用されるいかなる方法も、本発明の実施に際して凝固時間を決定するのに用いることができることが了解される。これら方法としては、流動学的手段、機械的手段および光学的手段による凝固の検出が挙げられる。好ましい実施においては、血餅をフックで留めること(hooking)により検出する。この手段による凝固の検出は、凝固の検出の簡単な自動化を可能にする。血餅がフックロッドに付着し、光線が容器を透過するところから除去されると、検出器に到達する光の強度は劇的に増大する。この光強度の急騰は容易に検出され、凝固時間を自動的に記録するのに用いることができる。血漿INR値がわかっている抗凝固処理した血液を用いてPT決定の検量をするのが好ましい。血漿INR値は、正確なOwren PT実験室法によるものであるのが好ましい。Quick PT実験室法による血漿INR値をも用いることができるが、その場合は匹敵する正確さを得るにはより多数の試料が必要である。
【0094】
デバイス
本発明の方法を行うための測定および決定デバイスが提供される。本発明のデバイスは、(1)データ処理装置、(2)読出し専用記憶装置、(3)ヘマトクリットについての検量データであって、該ヘマトクリット検量データが該読出し専用記憶装置に貯蔵されるもの、(4)該分析対象物についての検量データであって、該分析対象物検量データが該読出し専用記憶装置に貯蔵されるもの、(5)血液と試薬との混合物について2またはそれ以上の測定を行う手段を含む。
【0095】
データ処理装置は、提唱した抗凝固処理した血漿で血液ヘマトクリット、血液分析対象物濃度および分析対象物濃度を決定するのに必要なすべての計算を行うであろう。血液ヘマトクリットおよび血液分析対象物濃度を決定するのに必要な検量データは、処理装置と連結した読出し専用記憶装置に貯蔵される。読出し専用記憶装置は、読出し専用記憶装置に貯蔵されたものをオペレーターが変更できないという意味で機能的な読出し専用記憶装置である。製造業者のみが読出し専用記憶装置にデータを挿入することができる。1種のデータは、ユーザーにより、またはユーザーが関連する医療センターの職員により、入れることができる。このデータは、ある個人の血液、該血液が所属する該個人の同定および日付および時間と場所の情報に関するものである。
【0096】
本発明のデバイスの好ましい態様は、その中に血液と試薬との混合物を入れた管状容器を挿入した容器ホルダーを特徴とする。正しい位置にあるとき、管状容器の長軸と地球の重力の方向とは25〜65度の範囲の角度を形成するであろう。好ましい実施においては、容器はプラスチック管であり、その中で凝固時間をフック留めにより測定することができる。血餅がフックロッドに付着しているとき、容器が傾いているなら血餅はより容易に除去される。血餅は、容器が垂直である場合と同じくらい地球の重力場に対して少し高く持ち上げるだけでよい。このことは、凝固時間のより信頼性の高い手動または自動測定に役立つ。好ましい態様では、管状容器を地球の重力場の方向に対して25〜65度傾ける。
【0097】
キット
提唱した抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度の決定のための装置キットが提供される。本発明のキットは個々に識別標識を付してあり、これが個々のキットが所属するロットを示す。本発明のキットの各キットは、本発明の方法を実施するための試薬を含む。本発明のキットにおける各容器は、本発明のキットの識別標識と関連する識別標識を有する。本発明の各キットは、1またはそれ以上の本発明のデバイスを含む。本発明の一つのキットにおける本発明の各デバイスは、本発明のキット上の識別標識と関連する識別標識を有する。本発明のキットの各々は、使用期限を有する。本発明の個々のキットに含まれる試薬および本発明のデバイスには同じ使用期限が適用される。ここで「関連する識別標識」とは、識別標識が何か共通していることを意味する。識別標識は同一であってもよいし、または一緒に属することを示す共通の特徴を有していてもよい。キットの識別標識は、そのロット番号、またはその機能的等価物である。関連する識別標識は、キットの識別標識と試薬の識別標識および本発明のデバイスの識別標識が一緒に使用すべきユニットを構成することを示すべく、キットのものと同じロット番号またはその機能的等価物であってもよいし、または同一の一続きのディジットおよび文字を含むロット番号、またはその等価物などであってよい。関連する識別標識は、全く異なっていてもよく、それらが連結していることを示す情報のみによって連結されていてよい。この情報は、ユーザーがアクセスできる記録表示器に表示することもできるし、キット上またはキットの内部、たとえば使用説明書に示すこともできる。関連する識別標識はまた、純粋に機能的なものであってもよい。デバイスは、デバイスと同じキットロットの試薬を用いたときにのみ機能するであろう。
【0098】
キットは使用期限を有する。同じ使用期限が、該キットの一部である試薬およびデバイスに適用される。使用期限が過ぎればキットを使用することはできないし、試薬およびデバイスを使用することもできない。
【0099】
関連する識別標識および共通する使用期限の機能は、デバイスがメンテナンスを受けたこと、すなわち、デバイスが機能性に関してある定められた期間内でチェックされたことを確実にすることである。デバイスは、キットが製造業者によって販売された時点で品質保証手順を受けている。その時点から使用期限に至るまで、デバイスを使用することができる。
【0100】
本発明のデバイスは、読出し専用記憶装置を有しており、その中に本発明のデバイスと同じ本発明のキットの一部である試薬を用いたヘマトクリットおよび分析対象物濃度の決定のための検量データが入っている。このメカニズムにより、本発明のデバイスと試薬とは一緒に検量される。
【0101】
本発明のキットは、定期的にメンテナンスを受ける本発明のデバイスが、一緒に検量された試薬とともに用いることを可能にする特性を有する。すなわち、大きな実験室には典型的な信頼性を高める手段が近患者アッセイ部位に備えられている。
【0102】
近患者アッセイ部位と小さな実験室(大きな実験室の部門を含む)との情報交換(interaction)を含む本発明のキットの使用が想定される。ある患者の血液または抗凝固処理した血液に対して本発明のデバイスおよび本発明のキットの試薬を用いた本発明の方法の最初の実施は、小さな実験室におけるものである。提唱した抗凝固処理した血液での分析対象物濃度とは別に、小さな実験室での本発明の方法の実施は該患者の血液のヘマトクリットを与える。このヘマトクリットは、患者の同定、日時および時間とともに本発明の装置の記憶装置に入力される。かくして本発明のキットは、該患者の分析対象物濃度の近患者分析のための準備ができる。当該患者の血液の近患者分析は、ヘマトクリットの変化が穏やかであることを条件として、血液および試薬の容量を正確に割り当てることができないことによって殆ど影響を受けない分析対象物濃度の決定を可能とするであろう。典型的に、重度の出血および輸血の場面以外はヘマトクリットの変化はゆっくりとしたものである。所定の個人のヘマトクリットは、時間がたっても安定である傾向がある。ヘマトクリットをチェックするため、および他の理由から、本発明の方法の実施者と小さな実験室との間での定期的な情報交換が推奨される。
【0103】
本発明の側面の要約
所定量の血液と意図した容量の試薬との混合物を分析することによる抗凝固処理した血漿の分析対象物濃度の決定方法が提供される。該提唱した抗凝固処理した血漿は、提唱した抗凝固プロセスに供した血液からのものである。該本発明の方法は、(a)該意図した容量の試薬は該意図した容量の血液よりも5倍またはそれ以上多い、(b)2またはそれ以上の測定を該混合物で行う、(d)該血液のヘマトクリットを決定する、(e)該血液の該分析対象物濃度を決定することを特徴とする。
【0104】
測定および決定デバイスが提供される。測定および決定デバイスは、血液と試薬との混合物で2またはそれ以上の測定を行い、提唱した抗凝固処理した血漿での分析対象物濃度を決定するため必要な計算を行うであろう。本発明のデバイスは、(1)データ処理装置、(2)読出し専用記憶装置、(3)ヘマトクリットの決定のための検量データであって、該ヘマトクリット検量データが該読出し専用記憶装置に貯蔵されるもの、(3)該分析対象物濃度の決定のための検量データであって、該分析対象物検量データが該読出し専用記憶装置に貯蔵されるもの、(4)血液と試薬との混合物について2またはそれ以上の測定を行う手段を含む。
【0105】
提唱した抗凝固処理した血漿での分析対象物濃度の決定のための装置キットが提供される。本発明のキットのロットの各個々のものは、該個々のキットが属するロットの識別標識および使用期限の特徴を有する。本発明のキットは、(1)試薬、該試薬は識別標識を有し、該識別標識は該装置キットの該識別標識と関連しており、該試薬は該装置キットの該使用期限と同一の使用期限を有する、(2)測定および決定デバイス、該測定および決定デバイスは識別標識を有し、該識別標識は該装置キットの該識別標識と関連しており、該測定および決定デバイスは該装置キットの該使用期限と同一の使用期限を有する。
【0106】
本発明は、記載した特定の実施および態様に限られるものではないが理解されるべきである、なぜなら、そのようなものは勿論変わりうるからである。また、本明細書に記載した技術用語は特定の実施および態様を説明する目的のためのみのものであって本発明を限定するものでないことも理解されるべきである、なぜなら、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲のみによって限定されるからである。
【0107】
実施例
材料および方法
測定および決定デバイス、本発明による当該デバイスを構築した。模式図については図4を参照。デバイスは容器ホルダーを有しており、その中に、容器(外径10mm、長さ65mmのポリスチレン管)を斜めに挿入することができる。挿入したとき、底端の約22mmが容器ホルダーの内部にある。容器ホルダーの内部、挿入した容器の底から約8mmに、光放射ダイオード(940nmLED、Everlight IR204)からの光線を、挿入した容器に直角に、その直径の一つに沿って、フォトダイオード検出器(900nmピーク感度フォトダイオード、Infineon SFH 2030F)に向ける。フォトダイオードは操作増幅器(operation amplifier)(光/電圧変換器Burr-Brown OPT 101のピン2および8の間、その光領域は暗くしてある)に連結されている。増幅器は、入射光の強度に比例した電圧をプログラム可能な集積コンピューター(Microchip PIC16F873-201/SO)の10−ビットアナログ−デジタルコンバーター(A/Dコンバーター)入力に適用する。電圧、光の測定のデジタル表示は、液晶ディスプレイ(LCD,Seiko L167100J)に表示される。デバイスハ、オペレーターがPICおよびそのソフトウエアと相互作用する1つのボタンを有する。ボタンを押すと、処理装置の作動がソフトウエアの一つの部分から他の部分に動き、または作動が開始および停止する。プログラムの一つの部分では、ボタンはPICのタイマー機能を開始および停止させ、これが血液凝固時間を決定する。周囲温度に比例した電圧をPICの他のA/Dコンバーターに送達するための回路が存在する。プログラムの関連部分を実行するに際し、PICは光および血液凝固時間の測定をLCD上に表示するようにプログラムされている。PICは、18〜40℃の温度範囲でPTの決定のための検量値;温度の関数としてのNCTおよびISIを貯蔵している。決定の終わりに、血液のヘマトクリットおよび抗凝固処理した血液のPT活性が表示される。実施例5では、本発明による測定および決定デバイスを再デザインし、改良ソフトウエアに適合させた。デバイスには、血液試料を添加し混合したときに時間測定を自動的に開始する能力が付与された。血液凝固時間を光学手段により自動的に検出した。デバイスは血液凝固検出の時点で必要なコンピューター計算を自動的に行い、分析対象物濃度の決定の結果をLCD上に自動的に表示する。
【0108】
本発明の好ましい実施において、350μLのPT試薬を入れた容器を試料ホルダーに入れた。PT試薬を透過した光の強度(Io)を測定する。血液を試薬に加え、すなわち、試薬と接触させ、混合する。接触の時点で時間測定を開始する。混合物を透過し検出器に到達した光の強度(I)を再び測定する。血液凝固検出の時点で時間測定を停止する。実施例1および3では、正確に定めた容量の血液をPT試薬に加えた。このことは、2μL〜20μLの範囲で調節可能なピペットで行った。実施例2では、添加は半定量容量測定デバイス、プラチネウス(platineuse)を用いて行った。すべての実施例において、正確に定めた350μLのPT試薬を用いた。すべての実施例において、血液と試薬との混合、および血液凝固を検出するためにフックで留めることはプラチネウスを用いて行った。実施例5では、20μLの血液、または検量のためには抗凝固処理した血漿を、400μLのPT試薬に加え、混合した。
【0109】
10μLのループを有するプラスチックのプラチネウス(Sevant Oy、ヘルシンキ、フィンランド)は、Labora AB(Upplands Vasby、スウェーデン)により商品番号007-2510にて配達された。
【0110】
Owren PT試薬GHI 131は、Global Hemostasis Institute MGR AB(Linkoping、スウェーデン)からのものであった。
【0111】
復号した(decoded)血液試料、ヘマトクリットおよびヘモグロビン濃度のためにEDTA抗凝固処理したかまたはPT決定のためにクエン酸抗凝固処理した試料のいずれかは、決定のためにCentral Laboratory of the University Hospital(Linkoping、スウェーデン)に送達された患者血漿試料であった。EDTA試料のヘマトクリットおよびヘモグロビンおよびクエン酸試料のPT活性は、上記中央研究所の常法である正確な研究所法により知られていた。
【0112】
臨床実験、復号した患者試料を含む実験を、Tomas Lindahl教授の協力のもと、上記大学病院の地元倫理委員会の了承を得て行った。
【0113】
実施例1
正確な研究所法により決定して既知のまたは真実のヘマトクリット値(HCTt)を有するEDTA抗凝固処理した血液の6の試料を、本発明のデバイスを用いて分析した。各試料の血液容量(Vb)を350μLの意図した容量のPT試薬に加え、混合した。意図した血液容量は10μLであった。血液の添加および混合の前および後に、試薬を透過した光の強度(Io)および混合物を透過した光の強度(I)を測定した。これら6の試料の一つ、44.0%のHCTを有する試料6ASから、種々の血液容量、4、6、8、12、14、16および18μLでの実験をも行う。これら血液試料(それぞれ、4S〜18Sと称する)に式3による血液の希釈に基づいてHCT値を割り当てる。それゆえ、たとえば、4SのHCTは、44.0%に式3中のXを乗じた17.9%である。既知のHCT値をI/Ioに対してプロットし、線形回帰分析に供する。これにより、回帰式:HCT=2.03(Io/I)+9.37[r=0.98]が得られた。データを表1に、プロットを図1に示す。表1中のIo/I値を回帰式に挿入して見かけのHCT値を得た。HCTa値および既知のまたは真実のヘマトクリット値(HCTt)を用い、血液容量を式2の使用により決定した。決定した血液容量(Vbd)を、既知の容量の添加した血液(Vb)と比較する。決定した血液容量は既知の血液容量の101%±7%(平均±CV)であったことがわかる。同じことがHCTaとHCTtとを比較した場合にもわかる。試料のヘモグロビン値もまた知られており、Io/Iに対してプロットしたヘモグロビン(Hb;g/l)の線形回帰分析によりHb=7.17(Io/I)+29.8[r=0.99]が得られた(データは示していない)。式:HCT=2.03(Io/I)+9.37を用いて実施例2および実施例3において見かけのHCT値が得られる。意図したよりも小さなまたは大きな容量の血液の使用、および正規化濃度を決定するための式3の使用は、実際的である。それは、限られた数の試料を使用するだけで広いHCT範囲にアクセスするのを可能にする。
【0114】
実施例2
本発明の方法の近患者実施の例を示す。既知のHCT値を有する2つのクエン酸抗凝固処理した血液試料、試料1および試料2を、本発明による分析対象物濃度決定に供した。分析対象物濃度はPTである。決定は21.5℃の周囲室温で行う。試料1および試料2は、それぞれ、5回および6回分析する。血液を採り、半定量デバイスであるプラチネウスを用いてPT試薬と接触および混合した。このように血液の容量を不正確に割り当てた。試薬の意図した容量は350μLであった。プラチネウスはまた、血液凝固時間を決定すべくフックに留めるのにも用いた。試料2では、血液の採取の作業は、近患者アッセイ部位で経験されるように、わざと杜撰に行って血液容量の大きな変動を誘導した。抗凝固処理した血液の抗凝固処理した血漿のPT(INRにより)およびそのヘマトクリットは、正確な実験室法により既知であった。その値は、試料1についてはINR1.00および55.3%、および試料2についてはINR2.44であった。反応混合物の組成は十分に定められていなかったので、抗凝固処理した血漿のPTの決定のためにはHCT値が必要である。既知のINRは比較のためのみであった。本発明による抗凝固処理した血漿でのPTの決定には、血液と試薬との混合物での2またはそれ以上の測定が必要である。本実施例では、これらは2つの光学測定および流動学的測定であった。後者は血液凝固時間を与えた。光学測定は、表1に詳述する見かけのヘマトクリットHCTaの決定を可能にした。流動学的測定はPTの決定を可能にした。PT決定を、正確な実験室法によって既知のPT(INRにより)を有する抗凝固処理した血液のカリブレーターを用いて検量した。周囲温度では、ISIは1.17秒で、NCTは55.2秒である。カリブレーターの平均ヘマトクリットは37.1%であった。抗凝固処理した血液の細胞容積の分析対象物濃度は、実施例2において確立されたように、血漿容量の分析対象物濃度の29%と想定された。それゆえ、仮定の分析対象物容量は、抗凝固処理した血液の容量に(1 HCT+0.29*HCT)を乗じたものである。それゆえ、カリブレーターの平均Vh(Vhm)と試料1のVhとの比は、(1−0.368+0.290.368)/(1−0.553+0.290.553)または1.23である。試料2の対応値は1.07である。提唱した抗凝固処理した血漿でのINRによるPTは、以下のようにして決定する。見かけのINR値(INRa)を、Lindahlらの式:PT%=1/(INR0.028−0.018)の使用によりPT%によって再表示する。PT%tによる血液の真実のPTを式1の使用により得る。提唱したクエン酸抗凝固処理した血漿のPTを、PT%pcit=PT%tVhm/Vhとして決定する。本発明の値は試料2での決定により明らかに示される。決定において血液容量はかなり変動し、それゆえ見かけの血液PTも変動し、(aINR±CV)は4.21±37.1%であった。本発明によれば、提唱した抗凝固処理した血漿のPTはINR2.43±2.2%である。これは正確な実験室法によるINR2.44とよく一致する。試料1のPTもまた本発明により正確かつ精密に決定された。本実施例は、ある意味で本発明の実施のモックアップ(mock-up)である。実験を簡単にする理由のため、試験した血液試料はクエン酸抗凝固処理した血液であった。本発明の真正の実施においては、血液を試験したであろう。10μLのクエン酸抗凝固処理した血液試料の代わりに、9μLの血液を使用したであろう。血液の容量を減らしたのは、クエン酸抗凝固プロセスによって引き起こされる容量の拡張を補償するためである。あるいは、PT決定は11.11μLのクエン酸抗凝固処理した血漿で検量し、10μLの血液を試験したであろう。クエン酸抗凝固処理プロセスは、それ自体、PT決定に影響を及ぼさないことがわかっている。
【0115】
実施例3
40のクエン酸抗凝固処理した血液の試料のセットを、前日の間に通常の凝固分析のためにthe Central Laboratory of the University Hospital Linkopingに送付された完全に分析され廃棄されるべき試料からランダムに選択した。試料を遠心分離して血球を血液試料管の底にペレット化し、血漿が上部となるようにした。分析の2時間以内に、血漿試料のINRを中央研究所の正確な実験室法により決定した。試験管の蓋をし、数回上下逆さまにして血球を再懸濁した。再懸濁の5分以内に、各血液試料10μL(ピペット)を室温(21.5℃)にて350μLのOwren PT試薬と接触させることにより分析した。混合およびフックに留めることはプラチネウスを用いて行った。2つの測定を混合物で行った、すなわち、ヘマトクリット(HCT)を決定する光学測定、および血液凝固時間(CT)を決定する流動学的(フックで留めること)測定。このセットを3群に分けた。第一は、24.8%の平均HCTを有する6つの試料からなる低HCT群である。第二は、52.9%の平均HCTを有する8つの試料からなる高HCT群である。第三は、33.6%の平均HCTを有する23の試料からなる中程度のHCT群である。中程度の群は、本発明の方法のPT決定を検量するのに用いる。これは、1.11秒のISIおよび48.5秒のNCTという結果となった。低HCT群および高HCT群の平均血漿INRおよび血液INRは、それぞれ、1.81および1.71、および1.68および1.89であった。血漿INRと比較した血液INRは、低HCT群で5.8%低く、高HCT群で12.5%高かった。仮定の分析対象物容量(Vh)のサイズを確立するため、高HCT群および低HCT群の平均血液INR値をPT%、比例PT表示に変換する。各群の平均血漿PT%を、平均血漿PT%にカリブレーターの平均Vhと該群の平均Vhとの商を乗ずることによって平均血液PT%を決定するのに用いる。Vhは、血漿容量と抗凝固処理した血液の細胞容積のフラクションとの合計と想定される。フラクションは、0.1ごとに0から1までの間で変わる。各フラクションレベルで平均INRを決定し、既知の平均血漿INRと比較する。フラクション0、血漿容量でのすべてのPTでは、血漿INRは、低HCT群および高HCT群でそれぞれ既知の血漿INRに比べて2.5%高く、9.1%低かった。0の差違は、低HCT群および高HCT群でそれぞれ0.24および0.33の細胞容量フラクションで見出される。図2を参照。細胞容量フラクションの最適値は、0.29(29%)で確立される。血液PTの分析による提唱した血漿PTの決定における本発明の実施は、ヘマトクリットが高い場合に正確さの相当の改善に導く。58.8%(抗凝固処理した血液での52.9%と等価)のヘマトクリットのとき、小さな実験室での本発明の実施は従来技術による血液の分析によるPTの決定において12%の系統誤差をなくすであろう。55%、60%、65%および70%のヘマトクリットでは、本発明の実施によってなくされるであろう系統誤差は、2.5の治療INR範囲において、それぞれ11%、17%、23%および29%である。低ヘマトクリットでの系統誤差もまた、若干穏やかではあるが、本発明の実施によってなくされるであろう。本実施例では、実験上の理由から、本発明の実施において9μLの血液の代わりに10μLのクエン酸抗凝固処理した血液をPT試薬に加えた。この点、本実施例における本発明の実施はモックアップである。しかしながら、血液の使用によって結果が違っていたであろうと信じる理由はない。
【0116】
実施例4
実施例3と同じデータセットを用い、式4を含む手順工程により本発明を実施する。実施例3と同じ3群:低HCT群、高HCT群および中程度HCT群を使用する。実施例3で確立した細胞容量フラクションを用い、各試料のVhを10(1−HCT+0.29HCT)として決定する。低HCT群、高HCT群および中程度HCT群の平均Vh(Vhm)は、それぞれ、8.24μL、6.25μLおよび7.62μLである。PT決定の検量は実施例3と同様であった。各群について1つずつ、既知の血漿PT(INRp)に対する血液PT(INRb)の3つのプロットを作成する(図3a参照)。線形最小二乗回帰は、低HCT群および高HCT群について、それぞれ、回帰式:INRb=0.935INRp+0.011およびINRb=1.108INRp+0.021を生成した。これから差違を計算した:ΔINRb=−0.173INRp+0.099。平均Vh(Vhm)の対応の差違は、1.99μLと決定された。それゆえ、dINRb/dVhの推定値と考えられるΔINRb/ΔVhmが0.086INRb+0.005として確立された。これを用いて式11に従い、低HCT群および高HCT群で試料の血漿INRを決定した(図3b参照)。平均誤差(INRb−INRp)/INRpを補正の前および後で各試料について決定した。低HCT群では誤差は−4.8%から0.2%に変わり、高HCT群では12.1%から0.8%に変わった。非比例的表示、式4の使用により分析対象物濃度を決定するに際して、本発明を実施すべくここで使用した手順は、以前に記載された別の手順、すなわち、非比例による分析対象物濃度を比例表示による分析対象物濃度に再表示する手順に比べて、より少なく、より簡単な計算を必要とする。ここで記載したより少ない計算を必要とする手順は、処理能力の限られたマイクロプロセッサーの使用により本発明の方法を実施する場合に有利である。
【0117】
実施例5
以下に、抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度が本発明に従っていかにして決定されるかを示す。とりわけ、それは、いかにしてコンピューター計算を行うかの例である。本実施例の分析対象物濃度はプロトロンビン時間PTである。分析対象物濃度はINRで表される。
【0118】
正確な実験室法により決定した対応の抗凝固処理した血漿の既知のINR値を有する59の血液試料のセットの各試料を、本発明による方法により分析した。時間0、周囲温度にて、20μLの血液試料をポリスチレンの管状容器中で400μLのPT試薬に加え、混合した。該管状容器は、本発明の測定および決定デバイスの容器ホルダーに入れられていた。混合物について2を超える異なる測定を行った。混合物を透過した940nmLEDからの光の量(I)、混合物が凝固した時間(CT)および混合物の温度(t)を測定した。血液を添加する前の試薬のみを透過した光の量(Io)も測定した。当業者には明らかなように、また実施例1および表1に示すように、異なる測定のうちの1つ、I、はI/Ioがそうであるように、血液のヘマトクリットと相関関係を有する。また、当業者には明らかなように、また表2のデータに反映されているように、異なる測定のうちの1つ、CT、は抗凝固処理した血液のPTと相関関係を有する。混合物の温度は環境と熱的平衡状態にあるが、周囲温度を測定することにより測定した。本発明によれば、抗凝固処理した血液のPTは混合物の異なる測定の値から計算する、すなわち、それはI、CTおよびtの数学的関数FI1(I,CT,t)により計算する。59の血漿試料の各々に対応する抗凝固処理した血漿のPTは、本発明に従って関数FI((I/Io),CT,t)により計算した。従来技術によれば、PTはCTとtのみの関数FPA(CT,t)として計算された。standardization organization EQUALIS(ウプサラ、スウェーデン)により組織化されたmulti-centra exercisesによる既知のINR値を有する2つの抗凝固処理した血漿試料、カリブレーターを用いた検量により、良好な関数が達成された。検量は、19〜27℃の範囲の種々の温度で行った。このことにより、標準凝固時間NCTおよび国際感度指数ISIを、それぞれ温度の関数、NCT(t)およびISI(t)として決定することができた。時間および温度は、コンピューターにより内部で用いられた不定の単位、それぞれ、timeUおよびtempUである。1tmuは約0.0665秒であり、tepuは関係:t=80.90.109tempUにより摂氏度(t)に変換される。これら変換はヒトに対してのみのものであり、コンピューター計算とは関係ない。関数は以下のとおりであった:
NCT(t)=−23299.547tempU+0.0113tempUtempU
ISI(t)=0.8785+0.0007tempU
【0119】
特定した温度範囲において、NCT(t)はコンピューター温度単位の二次多項式によって記載され、ISI(t)は一次多項式として記載される。抗凝固処理した血漿を分析するに際して、コンピューター計算は直截的である:
INR=(CT/NCT(t))expISI(t)
【0120】
抗凝固処理した血液の試料および対応の抗凝固処理した血漿試料を温度範囲内の種々の温度で分析することにより、血液のNCTおよびISIはそれぞれ関数1.17NCT(t)および0.775ISI(t)を有することがわかった。抗凝固処理した血漿のPTは、クエン酸抗凝固処理した血液と液体PT試薬との混合物の血液凝固時間CTを測定することにより決定することができる。従って、もしも抗凝固処理した血液が試料であるなら、抗凝固処理した血漿のINR(ここでは、INRcbという(なぜならクエン酸処理した血液が試料なので))は、以下のとおりである:
INRcb={CT/[1.17NCT(t)]}exp[0.775ISI(t)]
【0121】
これは、抗凝固処理した血液のヘマトクリットが、表示を得るのに用いた抗凝固処理した血液試料のヘマトクリットの平均である場合にのみ、厳密に有効であった。
【0122】
もしも、抗凝固処理した血液の代わりに血液を液体試薬と同じ比率で混合し、1.11倍より多くの血液試料を加えるなら、NCTおよびISIに対する効果は、仮定容量の概念およびPT%とINRとの関係(上記Lindahlらに記載)を用いて計算することができる。NCTは95.4%に減少し、ISIは103.4%に増加した。10%減少した試薬容量を用いた実験決定は、本質的に同じ結果を与えた。それゆえ、抗凝固処理した血漿のPTは、同じプロトコールに従い、以下のようにして血液およびPT試薬の血液凝固時間を測定することにより決定することができる。このようにして決定した抗凝固処理した血漿のINRはINRbと称し、以下のようであった:
INRb=[CT/1.116NCT(t)]exp0.801ISI(t)
【0123】
ここでも、同じプロトコールを用いて抗凝固処理した血液または血液を混合することにより決定した抗凝固処理した血漿のPTは、上記関係によって与えられたが、ヘマトクリットが当該コンピューター計算の平均レベルにある場合のみにそうであった。本発明によれば、ヘマトクリットと相関関係のある少なくとも1の測定を血液と試薬との混合物に対して行う。混合物を透過した光(I)の測定は、そのような測定である。技術的理由、容器のサイズおよび特性の変動、容器ホルダー中の容器の位置、光源のエネルギー源、および最も重要なことにデバイスの所定のロット間での個々の差違のため、血液試料のヘマトクリットと相関関係を有する混合物の測定としては、Iよりも商I/Ioを用いる方がよい。本発明に従い、試料のヘマトクリットの変動の影響について補正すべく、I/Ioに対するINRの依存を確立した。これを行うため、上記のようにして得た59のINRcbを、抗凝固処理した血漿についての既知の対応するINR値のフラクションとして表した。この商はKと称し、59の試料の間で0.85〜1.23の範囲であった。I/Ioに対するKの依存、ヘマトクリットの測定を線形回帰により演繹し、有意の相関関係が見出された。回帰曲線の式はK=0.032(I/Io)+0.745であった。これにより、INRcbiのコンピューター計算が本発明により可能となった:
INRcbi={CT/[1.17NCT(t)]}exp[0.775ISI(t)]/[0.032(I/Io)+0.745]
【0124】
洞察は、既知の値からの59のPT決定の平均絶対偏差が8%であることを示し、観察された最大の偏差は、従来技術に従って決定したPTについての23%であった。本発明によるPT決定の対応値は、6%および14%であった。明らかに、本発明による決定は、従来技術と比較して正確さにおける相当の改善という結果となった。上記関係:K=0.032(I/Io)+0.745から、平均ヘマトクリットは7.969のI/Ioにあると思われる。もしも血液が試料であったなら、平均ヘマトクリットは8.846に現れ、それゆえ、関係はK=0.032(Io/I)+0.717となる。それゆえ、本発明に従い、2またはそれ以上の測定を血液と液体PT試薬との混合物に行うことによる抗凝固処理した血漿でのPTの決定に以下のコンピューター計算を用いた。決定したPTはINRbiと称した:
INRbi={CT/[1.116NCT(t)]}exp[0.801ISI(t)]/[0.032(I/Io)+0.717]
【0125】
上記実施例は、本発明がいかにして実施されるかを示すために記載したものである。もちろん、本発明の範囲から逸脱することなく、測定およびコンピューター計算をいかに行うかについて多くの変更が可能であり、ここで本発明は、抗凝固処理した血漿の調製が不都合であるかまたは不可能である多くの小さな医学センターで抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度を決定するための方法、デバイスおよびキットを提供するものである。
【0126】

表1:種々のヘマトクリットHCTを有する6つのEDTA抗凝固処理した試料、1A〜6ASを、本発明を実施する分析装置により分析する。血液容量Vbを350μLのPT試薬に加える。試料の1つ、試料6ASから、種々の容量で実験を行う。正規化血液濃度を式3の使用により決定する。HCTとI/Ioとの関係を確立する。この相関関係および商Io/Iを用い、見かけのヘマトクリットHCTdを各実験について決定する。式2の使用により、添加した血液容量Vbdを決定する。

【0127】
表2:本発明の方法の近患者実施、その際、分析対象物濃度PTを2つの血液試料、試料1および試料2でそれぞれ5回および6回決定した。正確な実験室法により、試料1および試料2の血漿PTおよびHCTは、それぞれ、INR1.00および55.3%、およびINR2.44および43.5%であった。IoおよびIは、試薬単独を透過したまたは血液と試薬との混合物を透過した光の強度である。HCTaおよびINRaは、それぞれ、見かけのヘマトクリットおよび見かけのPTである。PT%aは、PT%による見かけのPTである。PT%tは、血液の真実のPT%である。PT%pおよびINRpは、提唱した抗凝固処理した血漿でのPT%によるおよびINRによるPTである。INRaおよびINRpの平均およびCVも示してある。



【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、ヘマトクリットの決定を示す図表であり、血液ヘマトクリット(HCT)を光吸収に対してプロットしてある。黒方形は、既知のHCTを有する種々の血液10μLをPT試薬350μLに添加したときのものである。黒三角は、44.0%の既知のHCTを有する種々の容量の血液を同PT試薬に添加したときのものである。
【0129】
【図2】図2は、PTの仮定分析対象物容量の血球容量フラクションを示す図表であり、血球容量分数を、2群の抗凝固処理した血液試料、すなわち低HCT群(黒三角)および高HCT群(白方形)についての提唱した抗凝固処理した血漿INR(%)における誤りに対してプロットしてある。
【0130】
【図3a】図3aは、従来技術によるPTを示す図表であり、決定した血液INRを既知の血漿INRに対してプロットし、線形回帰分析に供してある。このセットは3群に分けられる:低HCT群、高HCT群および中HCT群。中HCT群をカリブレーターとして用いた。
【0131】
【図3b】図3bは、本発明によるPTを示す図表であり、提唱した抗凝固処理した血漿においてINRによる決定したPTを決定し、抗凝固処理した血漿のINRによる既知のPTに対してプロットしてある。凝固時間の値および亜群は図3aと同様である。
【0132】
【図4】図4は、本発明による測定および決定デバイスの一つの態様の模式図である。1Aはデバイスの容器ホルダーに角度をつけて挿入した容器の側面図、1Bは容器の平面図であり、血液を添加し、血液と試薬を混合し、およびフックで留めて血液凝固を検出するための開口を有する。2は940nm LEDからの光線の断面図であり、3は容器ホルダー中の空隙であり、該空隙は周囲温度を測定するためのサーミスターを収容するもの、4はドリルで穴を開けて容器ホルダーおよび光路を形成した木片、5は電気スイッチのボタン。装置の内部には、9V電池、電子回路およびプログラム可能な集積コンピューター(PIC)がある。
【0133】
【図5a】図5aは、本発明による測定および決定デバイスの一つの態様の写真を示す。
【0134】
【図5b】図5bは、本発明による測定および決定デバイスの一つの態様の写真を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗凝固処理した血漿に対応する血液試料と液体試薬との混合物に少なくとも2の異なる測定を行うことによる抗凝固処理した血漿の分析対象物濃度を決定する方法であって、以下の工程:
(d)所定容量の該血液試料を5倍またはそれ以上の容量の該液体試薬と混合し、
(e)該混合物に該少なくとも2の測定を行い、そのうち少なくとも1は該血液試料のヘマトクリットと相関関係を有し、少なくとも1は該分析対象物濃度と相関関係を有する、ついで
(f)(a)の容量が精密かつ正確な場合または(b)の該血液試料のヘマトクリットが知られている場合に測定から得られた結果をコンピューター計算して該抗凝固処理した血漿の該分析対象物濃度を決定する
を含む方法。
【請求項2】
(g)該混合物中の血液の容量が意図した容量の血液の50%〜150%の範囲であり、
(b)該混合物中の試薬の容量が意図した容量の試薬の70%〜120%の範囲であり、および
(c)血液試料のヘマトクリットが知られている場合に結果をコンピューター計算して分析対象物濃度を決定する
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)における血液の該意図した容量が5〜40μLの範囲であり、試薬の該意図した容量が100〜1000μLの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(a)における血液の該容量が5〜20μLの範囲であり、試薬の該容量が150〜600μLの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(b)における該測定を、少なくとも4mmの最小の断面寸法を有する管状容器で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
(b)における該測定を、5mm〜15mmの範囲の最小の断面寸法を有する管状容器で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該方法が、クエン酸、イソクエン酸、EDTA、シュウ酸、ヘパリンおよびヒルジンのナトリウム塩、カリウム塩およびリチウム塩よりなる群から選ばれる抗凝固剤の添加により抗凝固プロセスに付した抗凝固処理した血漿で検量される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該抗凝固処理した血漿が、血清、ヘパリン処理した血漿、ヒルジン処理した血漿、シュウ酸処理した血漿、クエン酸処理した血漿、イソクエン酸処理した血漿、EDTA−血漿および熱処理した血漿よりなる群から選ばれる血液由来の液体である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
分析対象物濃度の該決定が、クエン酸、イソクエン酸、EDTA、シュウ酸、ヘパリンおよびヒルジンのナトリウム塩、カリウム塩およびリチウム塩よりなる群から選ばれる抗凝固剤の添加により抗凝固プロセスに付した、抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度が知られた抗凝固処理した血液で検量される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
該分析対象物が、プロトロンビン時間(PT)、フィブリノゲン、フィブリノゲン分解産物、フィブリン分解産物(D−二量体)、活性化部分プロトロンビン時間(APTT)、活性化凝固時間(ACT)、C−反応性タンパク質(CRP)、コレステロール、およびグルコースよりなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
(b)における該ヘマトクリットと相関関係を有する該測定が、800nm〜1100nmの範囲の波長の光の1またはそれ以上の測定に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
(b)における該2またはそれ以上の測定を18℃〜40℃の範囲の周囲温度で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
(a)における該試薬が、0.1g/Lまたはそれ以上のフィブリノゲンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
該分析対象物濃度がINRで表されたPTであり、その際、抗凝固処理した血漿中の分析対象物濃度の該決定の前に、分析対象物濃度をPT%で再度表す、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
(a)における該混合物の凝固時間が、(b)における該分析対象物濃度と相関関係を有する少なくとも1の測定の1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
血液、抗凝固処理した血液および/または抗凝固処理した血漿試料で測定を行うための測定および決定デバイスであって、
(a)特定のロットからの液体試薬を含む容器を収容するためのホルダーであって、該容器は該デバイスの操作の際に該液体試薬との混合のために該試料の1つを収容するもの、
(b)エネルギー源、
(c)データ処理装置、
(d)該血液、抗凝固処理した血液および/または抗凝固処理した血漿試料混合物の1またはそれ以上のためのコンピューター計算データセットを含む読出し専用記憶装置であって、各コンピューター計算データセットは該特定のロットに適合したもの、
(e)各混合物で2またはそれ以上の測定を行うための測定手段、
(f)ユーザーに説明および(d)および(e)からのデータに基づくコンピューター計算した結果を示すディスプレイ、および
(g)デバイスのユーザー制御のための制御手段
を含むデバイス。
【請求項17】
識別標識を備えた装置キットであって、血液、抗凝固処理した血液および/または抗凝固処理した血漿試料で測定を行うための測定および決定デバイス、および該装置キットの該識別標識と関連する識別標識をそれぞれ備えた容器中の1または幾つかの液体試薬を含む装置キット。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2007−513348(P2007−513348A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542537(P2006−542537)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001798
【国際公開番号】WO2005/054847
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(506188921)ザフェナ・アクチボラグ (1)
【氏名又は名称原語表記】ZAFENA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】