ヘモグロビン及び細胞分析のためのシアン化物不含溶解試薬組成物及び方法
【課題】血液サンプル中の全ヘモグロビン濃度の計測のための、白血球の数の計数のための、そしてリンパ球、単球、及び顆粒球を含む3つの白血球サブ集団の示差的計数のための、シアニド不含溶解試薬組成物及び方法の提供。
【解決手段】上記シアニド不含溶解試薬組成物は、赤血球を溶解し、そしてヘモグロビンを放出するための、第4アンモニウム塩、ピリジニウム塩、有機ホスフェート・エステル、及びアルキル・スルホネートから成る群から選ばれる溶血性界面活性剤、並びにヘモグロビンとの安定性色素原を形成するための、トリアゾール及びその誘導体、テトラゾール及びその誘導体、オキソ酸のアルカリ金属塩、メラミン、アニリン−2−スルホン酸等から選ばれる有機リガンドを含む。
【解決手段】上記シアニド不含溶解試薬組成物は、赤血球を溶解し、そしてヘモグロビンを放出するための、第4アンモニウム塩、ピリジニウム塩、有機ホスフェート・エステル、及びアルキル・スルホネートから成る群から選ばれる溶血性界面活性剤、並びにヘモグロビンとの安定性色素原を形成するための、トリアゾール及びその誘導体、テトラゾール及びその誘導体、オキソ酸のアルカリ金属塩、メラミン、アニリン−2−スルホン酸等から選ばれる有機リガンドを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の背景
本発明の分野
本発明は、手動又は自動で、血液サンプル中の全ヘモグロビン濃度の計測における使用のための、そして同時白血球計数又は白血球サブ集団の示差的計数との組合せにおける使用のための、溶解試薬組成物、希釈剤及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の討議
全ヘモグロビンの測定は、全血の酸素運搬能力を示す。 300を超える異常なヘモグロビンが、臨床徴候をもつ患者の検査の間に、そして臨床的に正常な集団の電気泳動調査により、発見されてきた。これらの異常の多くは、変更されたヘモグロビン・レベル又は変更された、酸素に結合する能力をもつヘモグロビンをもつ臨床的病状をもたらす。これらの病気の中には、鎌状赤血球貧血、両α及びβ−サラセミア及びヘモグロビンMがある。
【0003】
血液サンプル中のヘモグロビン(Hgb) を計測する能力は、診断的分析に不可欠な部分であり、そしてヘモグロビンに影響を及ぼす疾患に向けられた療法に、そして他の疾患に向けられているが、ヘモグロビン・レベルに対する悪い副作用をもつことができる療法に対する応答性をモニタリングするためにも重要である。
【0004】
正常な被験体の末梢血液中の白血球は、5つのタイプ、すなわち、リンパ球、単球、好中球、好酸球、及び好塩基球から成る。後者の3つのタイプの白血球は、まとめて、顆粒球といわれる。
【0005】
異なるタイプの白血球は、異なる生物学的な機能をもつ。血液サンプル中の異なるタイプの白血球の計類及び区別は、臨床診断のために貴重な情報を提供する。例えば、単球の増加した数は、感染性疾患を患う患者の回復期の間に又は単球性白血病のような病気において生じる。
【0006】
白血球の分類及び計数は、手動方法ともいわれる示差的計数法(differential counting method)により、最も一般に、行われてきた。自動血液アナライザーも、白血球を計数するために一般に使用されており、これは、赤血球を溶解するための溶血性試薬を使用し、そして、白血球だけを含むサンプルを調製する。その後、そのサンプル混合物が、インピーダンス方法(imdepance method)により分析される。より高機能の装置であって、単球、リンパ球、及び顆粒状を含む異なるタイプの白血球を計数する(示差的に計数する)ものが開発された。理想的には、単一の自動化工程における、多数診断分析、例えば、ヘモグロビン計測と、白血球の数の計数又は白血球サブ集団の示差的計数を達成することが望まれる。
【0007】
多くの周知のヘモグロビン測定方法の中で、シアン化物ヘモグロビン方法が、 the International Committee for Standardization in Hematologyにより標準として推奨されてきた。 Matsubara and Okuzonoによるこの方法の修飾は、臨床実験におけるその広い用い方を導いた。この方法においては、赤血球のヘモグロビンの全形態におけるヘム基の鉄イオンが、フェリシアン化カリウムによりメトヘモグロビンに酸化される。次に、このメトヘモグロビンは、シアニド・アニオンと錯体を形成し、これは、ヘム基の鉄イオンに対してひじょうに高いアフィニティーをもち、シアンメトヘモグロビン色素原を形成する。この極めて安定な色素原は、 540nmにおいて最大吸収をもち、これは、手動でUVスペクトロメトリーにより計測される。
【0008】
しかしながら、上記の標準シアンメトヘモグロビン法及びその修飾された自動方法により形成された安定な色素原にも拘らず、使用されるシアン化カリウムのために、その試薬廃棄物は、大きな環境問題を引き起こしてきた。最近10年間、シアン化物を使用しない自動化ヘモグロビン分析方法の開発に途方もない努力が払われてきた。
【0009】
Oshiro et al., Clin.Biochem. 1583 (1982)は、中性pH (7.2)におけるラウリル硫酸ナトリウム(SLS) とTriton X-100(ノニオン界面活性剤)を含む、ヘモグロビン分析のための試薬の使用を教示している。 SLSは、赤血球を溶解させるために使用され、そして 539nmに最大吸収を、そして 572nmに肩をもつ SLS−ヘモグロビン錯体をさらに作り出すと信じられている。この反応は、5〜10分以内に完結し、そして全ヘモグロビン計測は定量的である。しかしながら、(Sakataへの)米国特許第 5,242,832号中にその後に説明されたように、Oshiro' 法により、ヘモグロビン計測と同時に白血球を分析することはできない。
【0010】
(Sakataへの)米国特許第 5,242,832号は、血液サンプル中の白血球を計数し、そしてヘモグロビン濃度を計測するための、シアン化物不含溶解性試薬を開示している。この溶解試薬は、第4アンモニウム塩である少なくとも1の第1界面活性剤、カチオン界面活性剤と両性界面活性剤を含む少なくとも1の第2の界面活性剤、及び Tiron、8−ヒドロキシキノリン、ビピリジン、1−10−フェナントロリン、フェノール性化合物、ビスフェノール、ピラゾール及び誘導体、第2フェニル5−ピラゾン及び誘導体、フェニル3−ピラゾロン、及びイミダゾール及びその誘導体を含む群から選ばれる少なくとも1のヘモグロビン安定剤を含む。Sakataは、リンパ球の集合体、単球、好酸球及び好塩基球の集合体、及び好中球の集合体を含む2又は3群への白血球の分画は、少なくとも2つの好適な界面活性剤を使用し、そしてその界面活性剤の濃度を厳密に制御することによってのみ達成されることができるということを教示している。Sakataは、上記溶解試薬の好ましいpHレンジが 5.0〜8.0 であるということも教示している。そのpH値が 3.0未満である場合、白血球に対する損傷が増加し、これにより白血球の計測を困難にし、そしてそのpHが 9.0以上である場合、ヘモグロビンの安定性は、時間と共に悪化する。
【0011】
PCT/US95/02897 (Kim) は、全血サンプル中のヘモグロビンを測定するためのシアン化物不含方法及び試薬を開示している。この試薬は、イミダゾール及び誘導体、N−ヒドロキシアセトアミド、オキサゾール、チアゾール、H−ヒドロキシルアミン、ピリジン、ピラゾール、ピリミジン、プリン、キノリン、及びイソキノリンから成る群から選ばれたリガンド、及びラウリル・ジメチルアミン・オキシド及びオクチルフェノキシ・ポリエトキシエタノールから成る群から選ばれた強い赤血球溶解能力をもつ界面活性剤を含む。この分析方法は、速く、10秒未満である。しかしながら、この試薬は、極端なアルカリ条件、pH11〜14の下でのみ働く。さらに、白血球を計数し、又は白血球のサブ集団を区別する能力は、 Kimにより全く教示されていない。
【0012】
上記シアン化物不含ヘモグロビン計測法のいずれも、ヘモグロビン計測と同時に、単球及び全顆粒球のカウントを提供することができない;しかしながら、両パラメーターは、さまざまな疾患の臨床診断のための貴重な道具である。より融通が利くシアン化物不含ヘモグロビン計測法、及び単一の自動化工程において多数の診断的分析を達成することができる多機能試薬についての必要性が生じる。
【発明の開示】
【0013】
本発明の要約
以上の討議に照らして、本発明の目的は、血液サンプル中に存在する合計ヘモグロビン濃度を計測するためのシアン化物不含溶解試薬組成物を提供することである。本シアン化物不含溶解試薬組成物は、第4アンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキル・スルホン酸、又はアルキル・スルホネートのアルカリ金属塩、及び有機リン酸エステル、又は有機リン酸エステルのアルカリ金属塩から成る群から選ばれた、赤血球を溶血し、そしてヘモグロビンを放出することができるために十分な量における少なくとも1の界面活性剤;及びトリアゾール及びその誘導体、テトラゾール及びその誘導体、オキソ酸のアルカリ金属塩、メラミン、アニリン−2−スルホン酸、キナルジン酸(quinaldic acid)、2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール、トリアジン及びその誘導体、ウラゾール、DL−ピペコリン酸、イソニコチンアミド、アントラニロニトリル、6−アザ−2−チオチミン、アデニン、3−(2−チエニル)アクリル酸、安息香酸並びに安息香酸のアルカリ金属及びアンモニウム塩、及びピラジン及びその誘導体から成る群から選ばれた、ヘモグロビンを含む安定性色素原を形成するために十分な量における有機リガンドの、水性溶液を含む。この溶解試薬組成物は、約1〜約13の範囲にあるpHをもつ。
【0014】
好ましいモードにおいては、開示した有機リガンドと、第4アンモニウム塩(単複)の組合せが、DCインピーダンス計測法による、同時の、全ヘモグロビン濃度の計測と、血液サンプル中の白血球の数の計数を、提供するために使用される。
【0015】
最も好ましいモードにおいては、白血球の示差的分析と適合性である有機リガンドと、第4アンモニウム塩(単複)の組合せが、同時の、全ヘモグロビン濃度の計測と、白血球の数の計数と、その白血球がリンパ球、単球及び顆粒球を含む3つのサブ集団に分化している場合、血液サンプルの白血球サブ集団の示差的計数を、提供するために使用される。
【0016】
以下の好ましい態様の詳細な説明からよりよく理解されるであろうが、本発明は、それが、広いpHレンジ内でのヘモグロビン計測のためのシアン化物不含溶解試薬を提供する点で、従来技術に比較して特に有利である。
【0017】
本発明の他の目的は、血液のヘモグロビン濃度を計測するために、又は同時の、白血球数の計測又は白血球サブ集団の示差的計算との組合せにおいて、好適な血液希釈剤を含む、溶解試薬組成物を使用する方法を提供することである。
【0018】
1の側面においては、本法は、好適な血液希釈剤で血液サンプルを希釈し、十分な量の溶解試薬組成物を上記希釈サンプルと混合し、次にDCインピーダンス計測装置を備えた血液分析装置上で、ヘモグロビン濃度のための所定の波長で分光光度測定により上記サンプルを計測し、そして同時に、白血球の数を計数し又は白血球サブ集団を示差的に計測することを含む。
【0019】
あるいは、開示された有機リガンドが溶解試薬と共に使用されるとき、安定性のヘモグロビン色素原を形成するために好適な血液希釈剤に添加されることもできる。さらなる側面においては、本発明は、ヘモグロビン計測のための、並びに白血球の数と白血球サブ集団の示差的計数のための、血液希釈剤及びそれを使用する方法を提供する。本発明の他の重要な利点は、それが特別の産物の要求に依存して、溶解試薬又は希釈剤中のヘモグロビンの使用に対するフレキシビリティーを設計者に提供するということである。
【0020】
本発明及びそのさまざまな利点は、以下の好ましい態様の説明、そして添付図面を参照することからよりよく理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
好ましい態様の詳細な説明
一般に、血液サンプル中の全ヘモグロビン濃度を分光光度測定により計測するためには、溶血試薬を使用して赤血球を溶解させ、そしてヘモグロビンを放出させ、次に所定の波長でのUVスペクトロスコピーにより検出され、かつ、計測されることができる安定した色素原にそのヘモグロビンを変換させることが必要である。定量的、かつ、正確である計測のためには、形成される色素原は、安定である、少なくとも、その計測の時間枠内で安定であることが必要である。赤血球の溶解は、酸溶解、浸透圧溶解、及び各種天然及び合成界面活性剤の使用により達成されることができる。放出されたヘモグロビンは、さまざまな形態、例えば、オキシヘモグロビン、デオキシヘモグロビン、メトヘモグロビン、カルボキシヘモグロビンその他を含む。
【0022】
ヘモグロビンを安定した色素原に変換するための最も効率的な方法は、安定性ヘモグロビン錯体を形成させるために、そのヘム鉄に対する高いアフィニティーをもつリガンドを提供することである。これは、そのシアニド・アニオンがそのヘム鉄に対して極めて高いアフィニティーをもつところの、シアンメトヘモグロビン法により首尾よく証明されてきた。ヘモグロビン錯体及びヘモグロビン色素原という用語は、本文脈において互換使用される。通常、高アフィニティー・リガンドの非存在下では、形成されたヘモグロビン色素原は、ひじょうに安定性ということはない。その吸収は変化し、そしてほとんどの場合、時間と共に分解する。この条件下では、上記分析方法は、その分解反応の速度がよくモニターされ、かつ、校正される場合でさえも信頼性がない。なぜなら、上記色素原は、温度及びサンプル調製条件等の如き環境に対して極めて感受性であることができるからである。適当なヘモグロビン・リガンドが提供されるとき、そのヘモグロビン変換は、定量的であることができ、その分析方法の信頼性は、形成されたヘモグロビン錯体の安定性により保証される。
【0023】
リガンドの選択は、例えば、ヘモグロビン計測だけのために、又は多数診断分析、例えば、ヘモグロビン計測と共に白血球の数を計数し又は白血球サブ集団の示差的計数のために、達成されるべき分析に依存する。ヘモグロビン計測のために完全であるリガンドは、そのリガンドが他の分析に適合性でない場合に、後者の適用のために好適であることができない。(米国 5,242,832中)Sakataにより教示された例は、赤血球の溶解及び Hgb-SLS色素原の形成のために使用される SLSが白血球計測のために使用されることができないということである。
【0024】
本発明は、血液サンプル中に存在する全ヘモグロビン濃度の計測のための、又は同時の、白血球の数の計数又は白血球サブ集団の示差的計数との組合せにおける、シアン化物不含溶解試薬組成物に向けられている。
【0025】
上記シアン化物不含溶解試薬組成物は:
(I)以下の分子構造:
【化1】
{式中、R1 は、10〜18炭素原子をもつアルキル、アルケニル又はアルキニル基であり;R2 ,R3 とR4 は、1〜4炭素原子をもつアルキル基であり、そしてX- は、クロリド及びブロミド・アニオンである。}により表される、第4アンモニウム塩;
以下の分子構造:
【化2】
{式中、nは、7〜12の整数であり、そしてX- は、アニオン基である。}により表されるピリジニウム塩;
アルキル・スルホン酸、又はアルキルスルホネートのアルカリ金属塩;
有機リン酸エステル、又は有機リン酸エステルのアルカリ金属塩;
から成る群から選ばれた、ヘモグロビン濃度の測定のための、赤血球を溶血させ、そしてヘモグロビンを放出するために十分な量における少なくとも1の界面活性剤;並びに
【0026】
(II)以下の:
(a)トリアゾール、例えば、1,2,3−トリアゾール及び1,2,4−トリアゾール、及びトリアゾール誘導体、例えば、1,2,4−トリアゾール−3−チオール、1,2,4−トリアゾール・ナトリウム誘導体、トリアゾール・ジカルボン酸及びトリアゾールの複素環誘導体;
(b)テトラゾール及びその誘導体、例えば、5−アミノ・テトラゾール;
(c)以下のオキソ酸のアルカリ金属塩:
【化3】
{式中、Mはアルカリ金属カチオンである。}
(d)メラミン
【化4】
(e)アニリン−2−スルホン酸
【化5】
(f)キナルジン酸
【化6】
(g)2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール
【化7】
【0027】
(h)トリアジン及びその誘導体
【化8】
{式中、R1 ,R2 とR3 は、−H,−OH,−SH,−COOH及びトリアジンの複素環誘導体である。};
(i)ウラゾール
【化9】
(j)DL−ピペコリン酸
【化10】
(k)イソニコチンアミド
【化11】
(l)アントラニロニトリル
【化12】
【0028】
(m)6−アザ−2−チオチミン
【化13】
(n)アデニン
【化14】
(o)3−(2−チエニル)アクリル酸
【化15】
(p)安息香酸、及び安息香酸のアルカリ金属及びアンモニウム塩
【化16】
{式中、Rは、−H,NH4 + 及びアルカリ金属カチオンである。};
【0029】
(q)ピラジン及びその誘導体
【化17】
{式中、R1 ,R2 ,R3 及びR4 は、−H,−CN,−OH,−SH,−COOH、又は−CONH2 である。}
から成る群から選ばれた、ヘモグロビンと安定性色素原を形成するために十分な量における有機リガンド、から成る水性溶液を含む。
【0030】
上記溶解試薬組成物のpHは、1〜13の範囲にある。
上記溶血界面活性剤の中では、第4アンモニウム塩がより好ましい。上記溶解試薬組成物中の界面活性剤の濃度は、白血球の核容量を保存しながら、赤血球を溶解させ、そしてヘモグロビンを放出するために十分な量にあることが必要である。白血球をカウントするために、上記白血球の膜を無傷で保つ必要はない。一般に、赤血球が完全に溶解され、そして破壊されるとき、本発明の溶解試薬組成物中の上記溶血性界面活性剤を使用して、白血球膜を部分的に溶解させる。白血球の残存核が、上記DCインピーダンス法を使用した、白血球数の計数、及びリンパ球、単球、及び顆粒球への白血球サブ集団の分別を可能にする。上記溶解試薬組成物中の界面活性剤の濃度は、約2g/L〜約 250g/L、好ましくは約4g/L〜約80g/Lの範囲にある。
【0031】
上記溶解試薬組成物中の有機リガンドの濃度は、安定性ヘモグロビン色素原を形成するために十分なものであることが必要である。上記濃度は、上記リガンドのヘモグロビンに対するアフィニティーに依存して、そのリガンドのタイプにより変化する。一般に、溶解試薬組成物中のリガンドの量が十分でない場合、形成されたヘモグロビン色素原は、不安定であることができる。本発明の溶解試薬組成物中の有機リガンドの濃度は、約1g/L〜約30g/L、好ましくは約2g/L〜約15g/Lの広いレンジ内で有効であることが発見されている。
【0032】
上記溶解試薬組成物中の化学成分の濃度は、ヘモグロビン及び白血球計測値が、慣用の血液分析装置の便宜のために好適な血液希釈剤の使用により達成されるような条件下での濃度である。しかしながら、上記化学成分の濃度は、上記溶解試薬組成物と上記希釈剤の間の容量比に依存して変えられることができる。
【0033】
その上、装置が、血液希釈剤による事前希釈を伴わずに、単一の溶解試薬組成物を使用する場合、上記溶解試薬組成物の化学成分の濃度を低下させ、そしてインピーダンス計測のためのその使用を可能にする上記溶解試薬組成物の導電率を調整することができる。導電率は、アルカリ金属塩の好適な量の添加により調整されることができる。このタイプの単一試薬方法においては、上記溶解試薬組成物の化学成分の濃度は、希釈剤と溶解試薬組成物の両者を含む、本発明の最終サンプル混合物中に含まれる濃度と同じでなければならない。
【0034】
任意的添加物も、それらの存在が上記溶解試薬組成物の主要な機能性成分と適合性である濃度において上記溶解試薬組成物中に含まれることができる。これらの添加物の中には、その組成物の保存寿命を延ばすための抗酸化剤特性をもち、そして抗−微生物特性をもつ保存料がある。
【0035】
本発明は、血液サンプル中に存在する全ヘモグロビン濃度を計測するための、又は同時の、白血球の数の計数又は白血球サブ集団の示差的計数との組合せにおいて、上記シアン化物不含溶解試薬組成物を使用する方法にも向けられている。
【0036】
抗凝血剤添加血液サンプルを、好適な血液希釈剤により希釈し、次に、十分な量の上記溶解試薬組成物を、手動又は機械混合により上記希釈サンプルと混合する。上記血液の希釈比は、約 125:1〜約 500:1の合計試薬容量対血液である。このサンプル混合物を、UVスペクトロメーター又は全ヘモグロビン計測のための所定の吸収波長におけるUV検出器を備えた自動血液アナライザー上で、上記溶解試薬組成物の添加から8〜60秒後に、分光光度測定する。上記サンプル混合物を、血液サンプル中のヘモグロビン濃度を計測するために、そして白血球の数を計数するために、又は得られた集団分布ヒストグラムに基づき白血球サブ集団をさらに分別するために、UV検出器及びDCインピーダンス計測装置を備えた血液アナライザーに導入することもできる。後者の場合、白血球は、リンパ球、単球、及び顆粒球を含む3つのサブ集団に分別される。
【0037】
DCインピーダンス計測装置を備えた血液アナライザーによる白血球計数のために使用される検出方法は、一般に、(Wallace H.Coulterへの)米国特許第 2,656,508号中に記載されており、これを全体として引用により本明細書中に取り込む。DCインピーダンス計測を使用した白血球サブ集団の分別方法は、米国特許第 4,485,175号及び第 4,528,274号中に記載されている。
【0038】
上記の有機リガンド、例えば、トリアゾール及びメラミンは、ヘモグロビンと安定性色素原を形成するだけでなく、処理されたサンプル混合物中の白血球を安定化させる。白血球安定化効果は、白血球が過剰溶解し核収縮することを妨げ、それらの核容量に基づき白血球サブ集団の分離を容易にし、そして広いpHレンジを用いて、3つのサブ集団への白血球の分化を可能にする。実施4は、本発明の溶解試薬組成物中の白血球安定化リガンドを使用した上記の首尾よい実施例を説明する。
【0039】
他方においては、上記の有機リガンドのいくつか、例えば、アニリン−2−スルホン酸及びキナルジン酸が、白血球サブ集団の核サイズに基づき、中程度〜強い効果を示す。これらのリガンドがヘモグロビン計測のために使用されるとき、白血球サブ集団の崩壊は、1又は2のクラスターに崩壊し、その白血球の分別を困難にする。しかしながら、これらのリガンドを用いてさえも、その白血球核サイズは、上記溶解試薬組成物により処理された後に、上記サンプルの細胞死骸のはるか上に、そして慣用のDCインピーダンス計測装置の検出限界の上に残り、これにより、正確な白血球計数が、実施例3中の応用により説明されるように商業的血液アナライザー上で便利に達成されることができる。
【0040】
一般に、上記有機リガンドと上記界面活性剤を含む本発明の溶解試薬組成物は、ひじょうに広いpHレンジにおいて血液サンプルの全ヘモグロビン濃度を計測することができる。好ましくは、有機リガンドのいずれかとの、第4アンモニウム塩(単複)の組合せが、DCインピーダンス計測法による、同時の、全ヘモグロビン濃度の計測、及び血液サンプル中の白血球の数の計測を提供するために使用される。より好ましくは、白血球分別分析も適合性である有機リガンドと第4アンモニウム塩との組合せは、血液サンプルの、同時の、全ヘモグロビン濃度の計測、白血球の数の計数、及び白血球サブ集団の示差的計数を提供するために使用される。最も好ましいモードにおいては、白血球は、リンパ球、単球、及び顆粒球を含む3つのサブ集団に分別される。
【0041】
上記シアン化物不含溶解試薬組成物及びその使用方法は、従来技術のヘモグロビン計測の方法を超えるいくつかの利点を提供する。本発明は、全白血球数の測定又はリンパ球、単球、及び顆粒球への白血球サブ集団の分別と共に、シアン化物の非存在下で血液サンプルのヘモグロビン濃度の正確な測定を許容する。上記溶解試薬組成物は、迅速な自動化分析のために、使用される有機リガンドと希釈剤に依存して、約8秒〜60秒で、血液サンプル中に存在するヘモグロビンを安定性色素原に速やかに変換する。一旦形成されたヘモグロビン色素原は、計測時間の間、安定である。
【0042】
図2は、ヘモグロビン・リガンドとしてテトラゾールを、そして希釈剤として COULTER(登録商標)ISOTON(登録商標)II(商業的な血液希釈剤)を含む、式1aの溶解試薬組成物を使用して実施例1の手順に従って処理された血液サンプルの一連の吸収スペクトルを示す。図2は、1時間の間隔で上記溶解試薬組成物の添加から12秒〜12時間後に得られた全部で12のスペクトルを示す。 Hgb−テトラゾール色素原のスペクトルは、ひじょうに安定であり、そして12時間のデータ採取時間の間、シフト又は崩壊を示さない。
【0043】
特別なヘモグロビン色素原の性質は、上記溶解試薬組成物中で使用される有機リガンドに依存する。上記有機リガンドを使用して本発明の溶解試薬組成物による上記血液サンプルの処理により形成された色素原のほとんどは、約 510nm〜約 560nmの間にそれらの最大吸収をもつ。それ故、それら色素原は、特別な色素原の吸収係数の取り込みにより、ほとんどの商業的血液アナライザーにより計測されることができる。
【0044】
本発明の溶解試薬組成物は、多くの好適な血液希釈剤と共に使用されることができる。図3は、テトラゾールを含む溶解試薬組成物(実施例2)を使用した、そして希釈剤として、標準的なホスフェート緩衝液化生理食塩水及び商業的な血液希釈剤、 COULTER(登録商標)ISOTON(登録商標)III を使用した、上記の手順により処理された全血サンプルのスペクトルを示す。両希釈剤により、基本的に、 540nmにおいて計測されることができる、同一のヘモグロビン色素原が形成される。
【0045】
従来の試薬とは異なり、本発明の溶解試薬組成物は、1〜13の広いpHレンジをもつ。これは、ヘモグロビン・リガンドとして使用されることができる化学物質の範囲を広げる。オキソ酸(oxonic acid) のカリウム塩は、 538nmにおいて強い吸収をもつヘモグロビンと安定性の色素原を形成する。しかしながら、オキソ酸のカリウム塩は、pH3未満の、低pHにおいてのみ、水に容易に可溶性である。従来の中性及びアルカリ性試薬は、ヘモグロビン計測のための上記化学物質の使用を排除する。Sakataは、米国特許第 5,242,843号中に、pH値が 3.0以下である場合、白血球への損傷が増加し、これ故、白血球の計測を困難にするということを教示している。図4は、 0.5%の、オキソ酸のカリウム塩を含み、そして 2.3のpH、そして希釈剤として COULTER(登録商標)ISOTON(登録商標)III をもつ、実施例4の溶解試薬組成物を使用した本発明の手順後に得られた白血球サブ集団分布ヒストグラムを示す。図4cと4dにより示されるように、白血球は、リンパ球、単球、及び顆粒球に明確に分別される。図6bは、商業的な自動化された血液アナライザー、 COULTER(登録商標)STKS上で得られた白血球の数と、上記溶解試薬組成物のpHがほんの1.67であるとき、同一の装置上で実施例3の溶解試薬組成物の中の1(処方3b)を使用して得られた結果との間の、すばらしい線形相関を示す。
【0046】
本発明の溶解試薬組成物とその使用方法は、正確なヘモグロビン計測、白血球の正確な計数、及び白血球サブ集団の示差的計数を提供する。図5aと6aは、慣用の溶解試薬を使用して COULTER(登録商標)STKS上で得られたヘモグロビン濃度と、実施例3の溶解試薬組成物(処方3aと3b)を使用して得られたヘモグロビン濃度の間の優れた線形相関を証明する。図5bと6bは、 COULTER(登録商標)STKS上で得られた白血球カウントと、同一装置上で処方3aと3bを使用して得られた結果との間の優れた相関を説明する。
【0047】
本発明の溶解試薬組成物は、一般的な妨害材料の存在下で正確なヘモグロビン計測を提供する。全部で72の全血サンプルを、 COULTER(登録商標)STKS上で実施例3の式3aを使用して分析した。上記サンプルの70%は、鎌状赤血球危機及びC型肝炎の如きさまざまな病気を含む臨床サンプルである。これらの異常な血液が、異常なヘモグロビン及びヘモグロビン計測のための妨害材料を含むということが知られている。しかしながら、本発明の溶解試薬組成物及び方法を使用した計測結果は、図5と6により説明するように、慣用のシアニド−Hgb 法と優しい相関を示し、このことは、さまざまな臨床サンプルの全ヘモグロビン濃度は、本発明の溶解試薬組成物を使用することにより、計測されることができるということを示している。
【0048】
上記有機リガンドの、ヘモグロビン安定化官能基を使用する他のモードは、上記溶解試薬組成物の代わりの血液希釈剤に上記有機リガンドを添加することである。上記の方法に従って、血液サンプルを、上記溶解試薬と混合する前に、上記血液希釈剤により事前に希釈する。希釈剤が上記有機リガンドを含むとき、溶解試薬により赤血球から放出された後のサンプル混合物中のヘモグロビン分子は、安定性ヘモグロビン色素原を形成するための、上記有機リガンドとじかに接触するようになるであろう。それ故、別のモードは、血液サンプルのヘモグロビン計測のための同一目的に役立つ。しかしながら、それは、試薬設計者に、それらの特別な要求、例えば、溶解試薬又は希釈剤がヘモグロビン計測と並んで行われる必要があるところの他のテストに対する有機性リガンドの適合性、又は溶解試薬又は希釈剤中の他の化学試薬に対する有機リガンドの適合性、に基づき最も適切なモードを選ぶためのオプションを提供する。実施例5は、溶解試薬が溶血性界面活性剤だけを含むような、安定性ヘモグロビン色素原を形成するための血液希釈剤中の有機リガンドの上記のような応用を説明する。図9aは、ヘモグロビン・リガンドとしてトリアゾールを含むリガンドを使用して、実施例6の手順に従って処理された血液サンプルのスペクトルを示す。この色素原の特徴は、図1a中に示すものと同一のリガンドを含む溶解試薬組成物を使用して得られたものと同一である。図9bは、溶解試薬が界面活性剤だけを含むところの、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上で実施例6の希釈剤を使用することにより得られた血液サンプルの白血球分布ヒストグラムを示す。本実施例は、それが他のモードにおいて使用されるとき、白血球分別分析に対する上記有機リガンドの適合性を示す。
【0049】
以下の実施例は、本発明を説明するものであり、そしていかなる方法においても、請求の範囲において定められるように、本発明の範囲を限定すると解釈されてはならない。以上の開示に従って、さまざまな他の成分及び割合を使用することができるということが理解されるであろう。
【実施例】
【0050】
実施例1
以下の組成の試薬を調製した。
処方1a
テトラゾール 5.0g
テトラデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド 15.0g
1リッターまでの蒸留水
pH 2.77
【0051】
処方1b
トリアゾール 10.0g
ドデシルトリメチルアンモニウム・クロリド(50%溶液) 35.0ml
テトラデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド 3.5g
1リッターまでの蒸留水
pH 6.19
【0052】
処方1c
キナルジン酸 5.0g
ドデシルトリメチルアンモニウム・クロリド(50%溶液) 50.0ml
1リッターまでの蒸留水
pH 2.55
【0053】
処方1d
メラミン 5.0g
テトラデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド 3.6g
ドデシルトリメチルアンモニウム・クロリド(50%溶液) 36.0ml
1リッターまでの蒸留水
pH 4.55
【0054】
処方1e
テトラゾール 5.0g
Chemfac NB-104
(Chemax, Inc.により製造されたホスフェート錯体) 30.0g
1リッターまでの蒸留水
pH 7.11
【0055】
11.6μlの全血サンプルを、2500μlのISOTONRIIにより希釈し、次に 403μlの、上記溶解試薬組成物の中の1を、手動で、事前に希釈されたサンプルと混合した。このサンプルの吸収スペクトルを、 Beckman DU 7500スペクトロフォトメーター上で直ちに計測した。図1a〜1bは、処方1aと1cを使用して上記手順に従って処理された血液サンプルのスペクトルを示す。図2は、処方1aを使用して上記手順に従って処理された血液サンプルから得られた合計12のスペクトルを示す。これらのスペクトルは、1時間の間隔で、上記溶解試薬組成物を添加してから12秒〜12時間後に得られた。
【0056】
実施例2
以下の組成の試薬を調製した。
テトラゾール 5.0g
ドデシルトリメチルアンモニウム・クロリド(50%溶液) 36.0ml
テトラデシルアンモニウム・ブロミド 3.6g
蒸留水 1リッター
pH 2.73
【0057】
11.6μlの全血サンプルを2500μlの血液希釈剤により希釈し、次に 403μlの上記処方物を手動で、事前希釈サンプルと混合した。このサンプルの吸収スペクトルを、 Beckman DU 7500スペクトロフォトメーター上で直ちに計測した。5つの商業的血液希釈剤、すなわち、 COULTER(登録商標)ISOTON(登録商標)III , COULTER(登録商標)ISOTON(登録商標)II, Technicon HTM Systems RBC DIL (Technicon Instruments Corp. の商業的製品)、標準的なホスフェート緩衝液化生理食塩水、及び標準的な塩化ナトリウム生理食塩水を、上記ヘモグロビン計測のために使用した。形成された色素原は、約 540nmに最大吸収ピークを、そして約 565nmに肩をもつ。上記色素原の最大吸収は、ヘモグロビン計測のために異なる希釈剤が使用されるとき、ほんの僅かに相違する。すなわち、ISOTON(登録商標)III により 540nm、ISOTON(登録商標)II Technicon HTM Systems RBC DIL、及び標準的なホスフェート緩衝液化生理食塩水により 539nm、そして標準的な塩化ナトリウム生理食塩水により 538nmである。上記色素原は、使用された血液希釈剤に依存して、上記溶解試薬組成物の添加後直ちに、8秒〜約35秒に、形成した。図3は、希釈剤として、標準的なホスフェート緩衝液化生理食塩水及びISOTON(登録商標)III を使用して、上記手順に従って得られたスペクトルを示す。
【0058】
実施例3
以下の組成の試薬を調製した。
処方3a
テトラゾール 5.0g
テトラデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド 15.0g
1リッターまでの蒸留水
pH 12.06
【0059】
処方3b
アニリン−2−スルホン酸 5.0g
テトラデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド 10.0g
セチルトリメチルアンモニウム・ブロミド 4.0g
蒸留水 1リッター
pH 1.67
【0060】
処方3c
キナルジン酸 5.0g
ドデシルトリメチルアンモニウム・クロリド(50%溶液) 40.0ml
蒸留水 1リッター
pH 2.58
【0061】
そのヘモグロビン濃度が6〜17g/dLの範囲にあり、そして白血球カウントが 1,000/μL〜40,000/μLの範囲にある、約70の血液サンプルを、標準的な装置の配置の下、換算された COULTER(登録商標)STKS装置上で分析した。但し、溶解試薬、LYSE S(登録商標)III diff を、上記処方により置き替えた。各処方について、サンプルの約半分は、さまざまな疾患を含む臨床サンプルであった。処方3aの場合、サンプルの70%が臨床サンプルである。図5は、参照試薬、LYSE S(登録商標)III diff を使用することにより得られた、ヘモグロビン濃度と(103/μLにおける WBCとして報告された)白血球の数と、同一装置上で処方3aを使用して得られた結果との間の相関を示す。図6は、LYSE S(登録商標)III diff 溶解試薬を使用することにより得られた、ヘモグロビン濃度と白血球の数と、同一装置上で処方3bを使用して得られた結果との間の相関を示す。
【0062】
図5と6は、ヘモグロビン濃度と WBC計測における、本発明の溶解試薬組成物と慣用のシアニド含有溶解試薬との間のすばらしい線形相関を証明する。
【0063】
実施例4
以下の組成の試薬を調製した。
溶解試薬
処方4a
トリアゾール 10.0g
ドデシルトリメチルアンモニウム・クロリド(50%溶液) 35.0ml
テトラデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド 3.5g
1リッターまでの蒸留水
pH 6.39
【0064】
処方4b
オキソ酸カリウム塩 5.0g
ドデシルトリメチルアンモニウム・クロリド(50%溶液) 35.0ml
テトラデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド 3.5g
1リッターまでの蒸留水
pHを HClにより 2.3に調整した。
希釈剤
硫酸ナトリウム 9.7g
塩化ナトリウム 4.0g
1リッターまでの蒸留水
pHを1% NaOH により7.14に調整した。
【0065】
そのヘモグロビン濃度が6〜約17g/dLの範囲にあり、そして白血球カウントが 1,500/μL〜45,000/μLの範囲にある85の血液サンプルを、参照試薬、LYSE S(登録商標)III diff とISOTON(登録商標)III を使用して標準的な装置配置の下で、換算された COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上で分析した。次に、同一のサンプルを、同一の装置上で再び分析した。但し、溶解試薬、LYSE S(登録商標)III diff を上記溶解試薬組成物により置き替え、そしてISOTON(登録商標)III を、上記希釈剤により置き替えた。図4は、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上で得られた上記血液サンプルの中の4つからの白血球サブ集団の分布ヒストグラムを示す。図4aと4bを、処方4aと上記希釈剤を使用して得た。ここで、図4aは、正常血液のヒストグラムを示し、そして図4bは上昇単球をもつ血液サンプルのヒストグラムを示す。図4cと4dを、処方4bとISOTON(登録商標)III を使用して得た。ここで、図4cは、正常血液のヒストグラムを示し、そして図4dは、90%を超える顆粒球をもつ臨床サンプルのヒストグラムを示す。図7a〜7eは、参照試薬を使用することにより得られた、(103/μLにおいて WBCとして報告された、図7a)白血球の数、リンパ球%(図7b)、単球%(図7c)、顆粒球%(図7d)、及びヘモグロビン濃度(図7e)、と処方4aと上記希釈剤を使用して得られたものとの間の相関を示す。その相関係数、並びにその回帰線の勾配及び交点を、ヘモグロビン濃度、 WBC、リンパ球%及び顆粒球%についての極めてすばらしい線形相関、及び単球%についての良好な相関を示す。
【0066】
実施例5
溶解試薬
ドデシルトリメチルアンモニウム・クロリド(50%溶液) 36.0ml
テトラデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド 3.6g
1リッターまでの蒸留水
pH 6.88
希釈剤
処方5a
テトラゾール 5g
標準ホスフェート緩衝液化生理食塩水 1リッター
pH 3.86
【0067】
処方5b
2−アミノ−1,3,4−チアゾール 5.0g
硫酸ナトリウム 9.7g
塩化ナトリウム 4.0g
1リッターまでの蒸留水
pH 6.04
【0068】
11.6μlの全血サンプルを、2500μlの、上記希釈剤処方の中の1により希釈し、次に 403μlの上記溶解試薬処方物を、事前希釈されたサンプルと手動で混合した。上記サンプルの吸収スペクトルを、 Beckman DU 7500スペクトロフォトメーター上で直ちに計測した。図8a〜8bは、それぞれ、処方5aと5bを使用して上記手順に従って処理された血液サンプルのスペクトルを示す。
【0069】
実施例6
溶解試薬
ドデシルトリメチルアンモニウム・クロリド(50%溶液) 36.0ml
テトラデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド 3.6g
1リッターまでの蒸留水
pH 6.88
希釈剤
トリアゾール 5.0g
硫酸ナトリウム 9.7g
塩化ナトリウム 4.0g
1リッターまでの蒸留水
pH 6.06
【0070】
10の血液サンプルを、上記溶解試薬と希釈剤を使用して、換算 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上で分析した。図9aは、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上で得られた血液サンプルのリンパ球サブ集団分布ヒストグラムを示す。これらのサンプルも、上記溶解試薬と希釈剤を使用して、実施例5中に記載した手順に従ってスペクトロメーター上で、処理し、そして計測した。図9aは、図9b中で使用された同一血液サンプルのスペクトルを示す。スペクトルと白血球サブ集団分布ヒストグラムの両者が、トリアゾールが溶解試薬組成物中で使用されるときに得られたものと同一の特徴をもつ。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1a】図1aと1bは、本発明の実施例1の溶解試薬組成物(処方1bと1c)を使用した、実施例1中に記載した手順に従って処理された全血サンプルの吸収スペクトルである。
【図1b】図1aと1bは、本発明の実施例1の溶解試薬組成物(処方1bと1c)を使用した、実施例1中に記載した手順に従って処理された全血サンプルの吸収スペクトルである。
【図2】図2は、式1a溶解試薬組成物を使用した実施例1の手順に従って処理された血液サンプルの一連の吸収スペクトルを示す。12のスペクトルの全てが、1時間の間隔をもって12時間目に得られた。
【図3a】図3aと3bは、実施例2の溶解試薬組成物、及び希釈剤としての、標準ホスフェート緩衝液化生理食塩水及び商業的な血液希釈剤、 COULTER(登録商標)ISOTON(登録商標)III を使用した、実施例2中に記載する手順に従って処理された全血サンプルのスペクトルを示す。
【図3b】図3aと3bは、実施例2の溶解試薬組成物、及び希釈剤としての、標準ホスフェート緩衝液化生理食塩水及び商業的な血液希釈剤、 COULTER(登録商標)ISOTON(登録商標)III を使用した、実施例2中に記載する手順に従って処理された全血サンプルのスペクトルを示す。
【図4a】図4a,4b,4c、及び4dは、商業的血液分析装置、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上での本発明の実施例4の溶解試薬組成物を使用することにより得られた4つの全血サンプルの白血球サブ集団の分布ヒストグラムを示す。
【図4b】図4a,4b,4c、及び4dは、商業的血液分析装置、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上での本発明の実施例4の溶解試薬組成物を使用することにより得られた4つの全血サンプルの白血球サブ集団の分布ヒストグラムを示す。
【図4c】図4a,4b,4c、及び4dは、商業的血液分析装置、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上での本発明の実施例4の溶解試薬組成物を使用することにより得られた4つの全血サンプルの白血球サブ集団の分布ヒストグラムを示す。
【図4d】図4a,4b,4c、及び4dは、商業的血液分析装置、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上での本発明の実施例4の溶解試薬組成物を使用することにより得られた4つの全血サンプルの白血球サブ集団の分布ヒストグラムを示す。
【図5a】図5aと5bは、慣用の溶解試薬、 COULTER(登録商標)LYSE(登録商標)III diff を使用した自動化された商業的血液分析装置、 COULTER(登録商標)STKS上で得られた、ヘモグロビン濃度と白血球数と、同一装置上での本発明の実施例3の溶解試薬組成物(処方3a)を使用して得られた結果との間の、相関を示す。
【図5b】図5aと5bは、慣用の溶解試薬、 COULTER(登録商標)LYSE(登録商標)III diff を使用した自動化された商業的血液分析装置、 COULTER(登録商標)STKS上で得られた、ヘモグロビン濃度と白血球数と、同一装置上での本発明の実施例3の溶解試薬組成物(処方3a)を使用して得られた結果との間の、相関を示す。
【図6a】図6aと6bは、 COULTER(登録商標)LYSE S(登録商標)III diff 溶解試薬を使用した、自動化された商業的血液分析装置、 COULTER(登録商標)STKS上で得られたヘモグロビン濃度と白血球の数と、同一装置上で本発明の溶解試薬組成物(処方3b)を使用して得られた結果との間の相関を示す。
【図6b】図6aと6bは、 COULTER(登録商標)LYSE S(登録商標)III diff 溶解試薬を使用した、自動化された商業的血液分析装置、 COULTER(登録商標)STKS上で得られたヘモグロビン濃度と白血球の数と、同一装置上で本発明の溶解試薬組成物(処方3b)を使用して得られた結果との間の相関を示す。
【図7a】図7a,7b,7c,7d、及び7eは、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上で得られた、白血球の数、白血球の示差的計測、とヘモグロビン濃度と、同一の商業的装置上での本発明の実施例4の溶解試薬組成物(式4aと希釈剤)を使用して得られた結果との相関を示す。
【図7b】図7a,7b,7c,7d、及び7eは、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上で得られた、白血球の数、白血球の示差的計測、とヘモグロビン濃度と、同一の商業的装置上での本発明の実施例4の溶解試薬組成物(式4aと希釈剤)を使用して得られた結果との相関を示す。
【図7c】図7a,7b,7c,7d、及び7eは、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上で得られた、白血球の数、白血球の示差的計測、とヘモグロビン濃度と、同一の商業的装置上での本発明の実施例4の溶解試薬組成物(式4aと希釈剤)を使用して得られた結果との相関を示す。
【図7d】図7a,7b,7c,7d、及び7eは、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上で得られた、白血球の数、白血球の示差的計測、とヘモグロビン濃度と、同一の商業的装置上での本発明の実施例4の溶解試薬組成物(式4aと希釈剤)を使用して得られた結果との相関を示す。
【図7e】図7a,7b,7c,7d、及び7eは、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上で得られた、白血球の数、白血球の示差的計測、とヘモグロビン濃度と、同一の商業的装置上での本発明の実施例4の溶解試薬組成物(式4aと希釈剤)を使用して得られた結果との相関を示す。
【図8a】図8aと8bは、本発明の実施例5の溶解試薬と希釈組成物(処方5aと5b)を使用して、実施例5中に記載された手順に従って処理された2つの全血サンプルの吸収スペクトルである。
【図8b】図8aと8bは、本発明の実施例5の溶解試薬と希釈組成物(処方5aと5b)を使用して、実施例5中に記載された手順に従って処理された2つの全血サンプルの吸収スペクトルである。
【図9a】図9aと9bは、実施例6の溶解試薬と希釈組成物を使用して、実施例6中に記載された手順に従って処理された全血サンプルのスペクトルと白血球サブ集団の分布ヒストグラムを示す。
【図9b】図9aと9bは、実施例6の溶解試薬と希釈組成物を使用して、実施例6中に記載された手順に従って処理された全血サンプルのスペクトルと白血球サブ集団の分布ヒストグラムを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明の背景
本発明の分野
本発明は、手動又は自動で、血液サンプル中の全ヘモグロビン濃度の計測における使用のための、そして同時白血球計数又は白血球サブ集団の示差的計数との組合せにおける使用のための、溶解試薬組成物、希釈剤及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の討議
全ヘモグロビンの測定は、全血の酸素運搬能力を示す。 300を超える異常なヘモグロビンが、臨床徴候をもつ患者の検査の間に、そして臨床的に正常な集団の電気泳動調査により、発見されてきた。これらの異常の多くは、変更されたヘモグロビン・レベル又は変更された、酸素に結合する能力をもつヘモグロビンをもつ臨床的病状をもたらす。これらの病気の中には、鎌状赤血球貧血、両α及びβ−サラセミア及びヘモグロビンMがある。
【0003】
血液サンプル中のヘモグロビン(Hgb) を計測する能力は、診断的分析に不可欠な部分であり、そしてヘモグロビンに影響を及ぼす疾患に向けられた療法に、そして他の疾患に向けられているが、ヘモグロビン・レベルに対する悪い副作用をもつことができる療法に対する応答性をモニタリングするためにも重要である。
【0004】
正常な被験体の末梢血液中の白血球は、5つのタイプ、すなわち、リンパ球、単球、好中球、好酸球、及び好塩基球から成る。後者の3つのタイプの白血球は、まとめて、顆粒球といわれる。
【0005】
異なるタイプの白血球は、異なる生物学的な機能をもつ。血液サンプル中の異なるタイプの白血球の計類及び区別は、臨床診断のために貴重な情報を提供する。例えば、単球の増加した数は、感染性疾患を患う患者の回復期の間に又は単球性白血病のような病気において生じる。
【0006】
白血球の分類及び計数は、手動方法ともいわれる示差的計数法(differential counting method)により、最も一般に、行われてきた。自動血液アナライザーも、白血球を計数するために一般に使用されており、これは、赤血球を溶解するための溶血性試薬を使用し、そして、白血球だけを含むサンプルを調製する。その後、そのサンプル混合物が、インピーダンス方法(imdepance method)により分析される。より高機能の装置であって、単球、リンパ球、及び顆粒状を含む異なるタイプの白血球を計数する(示差的に計数する)ものが開発された。理想的には、単一の自動化工程における、多数診断分析、例えば、ヘモグロビン計測と、白血球の数の計数又は白血球サブ集団の示差的計数を達成することが望まれる。
【0007】
多くの周知のヘモグロビン測定方法の中で、シアン化物ヘモグロビン方法が、 the International Committee for Standardization in Hematologyにより標準として推奨されてきた。 Matsubara and Okuzonoによるこの方法の修飾は、臨床実験におけるその広い用い方を導いた。この方法においては、赤血球のヘモグロビンの全形態におけるヘム基の鉄イオンが、フェリシアン化カリウムによりメトヘモグロビンに酸化される。次に、このメトヘモグロビンは、シアニド・アニオンと錯体を形成し、これは、ヘム基の鉄イオンに対してひじょうに高いアフィニティーをもち、シアンメトヘモグロビン色素原を形成する。この極めて安定な色素原は、 540nmにおいて最大吸収をもち、これは、手動でUVスペクトロメトリーにより計測される。
【0008】
しかしながら、上記の標準シアンメトヘモグロビン法及びその修飾された自動方法により形成された安定な色素原にも拘らず、使用されるシアン化カリウムのために、その試薬廃棄物は、大きな環境問題を引き起こしてきた。最近10年間、シアン化物を使用しない自動化ヘモグロビン分析方法の開発に途方もない努力が払われてきた。
【0009】
Oshiro et al., Clin.Biochem. 1583 (1982)は、中性pH (7.2)におけるラウリル硫酸ナトリウム(SLS) とTriton X-100(ノニオン界面活性剤)を含む、ヘモグロビン分析のための試薬の使用を教示している。 SLSは、赤血球を溶解させるために使用され、そして 539nmに最大吸収を、そして 572nmに肩をもつ SLS−ヘモグロビン錯体をさらに作り出すと信じられている。この反応は、5〜10分以内に完結し、そして全ヘモグロビン計測は定量的である。しかしながら、(Sakataへの)米国特許第 5,242,832号中にその後に説明されたように、Oshiro' 法により、ヘモグロビン計測と同時に白血球を分析することはできない。
【0010】
(Sakataへの)米国特許第 5,242,832号は、血液サンプル中の白血球を計数し、そしてヘモグロビン濃度を計測するための、シアン化物不含溶解性試薬を開示している。この溶解試薬は、第4アンモニウム塩である少なくとも1の第1界面活性剤、カチオン界面活性剤と両性界面活性剤を含む少なくとも1の第2の界面活性剤、及び Tiron、8−ヒドロキシキノリン、ビピリジン、1−10−フェナントロリン、フェノール性化合物、ビスフェノール、ピラゾール及び誘導体、第2フェニル5−ピラゾン及び誘導体、フェニル3−ピラゾロン、及びイミダゾール及びその誘導体を含む群から選ばれる少なくとも1のヘモグロビン安定剤を含む。Sakataは、リンパ球の集合体、単球、好酸球及び好塩基球の集合体、及び好中球の集合体を含む2又は3群への白血球の分画は、少なくとも2つの好適な界面活性剤を使用し、そしてその界面活性剤の濃度を厳密に制御することによってのみ達成されることができるということを教示している。Sakataは、上記溶解試薬の好ましいpHレンジが 5.0〜8.0 であるということも教示している。そのpH値が 3.0未満である場合、白血球に対する損傷が増加し、これにより白血球の計測を困難にし、そしてそのpHが 9.0以上である場合、ヘモグロビンの安定性は、時間と共に悪化する。
【0011】
PCT/US95/02897 (Kim) は、全血サンプル中のヘモグロビンを測定するためのシアン化物不含方法及び試薬を開示している。この試薬は、イミダゾール及び誘導体、N−ヒドロキシアセトアミド、オキサゾール、チアゾール、H−ヒドロキシルアミン、ピリジン、ピラゾール、ピリミジン、プリン、キノリン、及びイソキノリンから成る群から選ばれたリガンド、及びラウリル・ジメチルアミン・オキシド及びオクチルフェノキシ・ポリエトキシエタノールから成る群から選ばれた強い赤血球溶解能力をもつ界面活性剤を含む。この分析方法は、速く、10秒未満である。しかしながら、この試薬は、極端なアルカリ条件、pH11〜14の下でのみ働く。さらに、白血球を計数し、又は白血球のサブ集団を区別する能力は、 Kimにより全く教示されていない。
【0012】
上記シアン化物不含ヘモグロビン計測法のいずれも、ヘモグロビン計測と同時に、単球及び全顆粒球のカウントを提供することができない;しかしながら、両パラメーターは、さまざまな疾患の臨床診断のための貴重な道具である。より融通が利くシアン化物不含ヘモグロビン計測法、及び単一の自動化工程において多数の診断的分析を達成することができる多機能試薬についての必要性が生じる。
【発明の開示】
【0013】
本発明の要約
以上の討議に照らして、本発明の目的は、血液サンプル中に存在する合計ヘモグロビン濃度を計測するためのシアン化物不含溶解試薬組成物を提供することである。本シアン化物不含溶解試薬組成物は、第4アンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキル・スルホン酸、又はアルキル・スルホネートのアルカリ金属塩、及び有機リン酸エステル、又は有機リン酸エステルのアルカリ金属塩から成る群から選ばれた、赤血球を溶血し、そしてヘモグロビンを放出することができるために十分な量における少なくとも1の界面活性剤;及びトリアゾール及びその誘導体、テトラゾール及びその誘導体、オキソ酸のアルカリ金属塩、メラミン、アニリン−2−スルホン酸、キナルジン酸(quinaldic acid)、2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール、トリアジン及びその誘導体、ウラゾール、DL−ピペコリン酸、イソニコチンアミド、アントラニロニトリル、6−アザ−2−チオチミン、アデニン、3−(2−チエニル)アクリル酸、安息香酸並びに安息香酸のアルカリ金属及びアンモニウム塩、及びピラジン及びその誘導体から成る群から選ばれた、ヘモグロビンを含む安定性色素原を形成するために十分な量における有機リガンドの、水性溶液を含む。この溶解試薬組成物は、約1〜約13の範囲にあるpHをもつ。
【0014】
好ましいモードにおいては、開示した有機リガンドと、第4アンモニウム塩(単複)の組合せが、DCインピーダンス計測法による、同時の、全ヘモグロビン濃度の計測と、血液サンプル中の白血球の数の計数を、提供するために使用される。
【0015】
最も好ましいモードにおいては、白血球の示差的分析と適合性である有機リガンドと、第4アンモニウム塩(単複)の組合せが、同時の、全ヘモグロビン濃度の計測と、白血球の数の計数と、その白血球がリンパ球、単球及び顆粒球を含む3つのサブ集団に分化している場合、血液サンプルの白血球サブ集団の示差的計数を、提供するために使用される。
【0016】
以下の好ましい態様の詳細な説明からよりよく理解されるであろうが、本発明は、それが、広いpHレンジ内でのヘモグロビン計測のためのシアン化物不含溶解試薬を提供する点で、従来技術に比較して特に有利である。
【0017】
本発明の他の目的は、血液のヘモグロビン濃度を計測するために、又は同時の、白血球数の計測又は白血球サブ集団の示差的計算との組合せにおいて、好適な血液希釈剤を含む、溶解試薬組成物を使用する方法を提供することである。
【0018】
1の側面においては、本法は、好適な血液希釈剤で血液サンプルを希釈し、十分な量の溶解試薬組成物を上記希釈サンプルと混合し、次にDCインピーダンス計測装置を備えた血液分析装置上で、ヘモグロビン濃度のための所定の波長で分光光度測定により上記サンプルを計測し、そして同時に、白血球の数を計数し又は白血球サブ集団を示差的に計測することを含む。
【0019】
あるいは、開示された有機リガンドが溶解試薬と共に使用されるとき、安定性のヘモグロビン色素原を形成するために好適な血液希釈剤に添加されることもできる。さらなる側面においては、本発明は、ヘモグロビン計測のための、並びに白血球の数と白血球サブ集団の示差的計数のための、血液希釈剤及びそれを使用する方法を提供する。本発明の他の重要な利点は、それが特別の産物の要求に依存して、溶解試薬又は希釈剤中のヘモグロビンの使用に対するフレキシビリティーを設計者に提供するということである。
【0020】
本発明及びそのさまざまな利点は、以下の好ましい態様の説明、そして添付図面を参照することからよりよく理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
好ましい態様の詳細な説明
一般に、血液サンプル中の全ヘモグロビン濃度を分光光度測定により計測するためには、溶血試薬を使用して赤血球を溶解させ、そしてヘモグロビンを放出させ、次に所定の波長でのUVスペクトロスコピーにより検出され、かつ、計測されることができる安定した色素原にそのヘモグロビンを変換させることが必要である。定量的、かつ、正確である計測のためには、形成される色素原は、安定である、少なくとも、その計測の時間枠内で安定であることが必要である。赤血球の溶解は、酸溶解、浸透圧溶解、及び各種天然及び合成界面活性剤の使用により達成されることができる。放出されたヘモグロビンは、さまざまな形態、例えば、オキシヘモグロビン、デオキシヘモグロビン、メトヘモグロビン、カルボキシヘモグロビンその他を含む。
【0022】
ヘモグロビンを安定した色素原に変換するための最も効率的な方法は、安定性ヘモグロビン錯体を形成させるために、そのヘム鉄に対する高いアフィニティーをもつリガンドを提供することである。これは、そのシアニド・アニオンがそのヘム鉄に対して極めて高いアフィニティーをもつところの、シアンメトヘモグロビン法により首尾よく証明されてきた。ヘモグロビン錯体及びヘモグロビン色素原という用語は、本文脈において互換使用される。通常、高アフィニティー・リガンドの非存在下では、形成されたヘモグロビン色素原は、ひじょうに安定性ということはない。その吸収は変化し、そしてほとんどの場合、時間と共に分解する。この条件下では、上記分析方法は、その分解反応の速度がよくモニターされ、かつ、校正される場合でさえも信頼性がない。なぜなら、上記色素原は、温度及びサンプル調製条件等の如き環境に対して極めて感受性であることができるからである。適当なヘモグロビン・リガンドが提供されるとき、そのヘモグロビン変換は、定量的であることができ、その分析方法の信頼性は、形成されたヘモグロビン錯体の安定性により保証される。
【0023】
リガンドの選択は、例えば、ヘモグロビン計測だけのために、又は多数診断分析、例えば、ヘモグロビン計測と共に白血球の数を計数し又は白血球サブ集団の示差的計数のために、達成されるべき分析に依存する。ヘモグロビン計測のために完全であるリガンドは、そのリガンドが他の分析に適合性でない場合に、後者の適用のために好適であることができない。(米国 5,242,832中)Sakataにより教示された例は、赤血球の溶解及び Hgb-SLS色素原の形成のために使用される SLSが白血球計測のために使用されることができないということである。
【0024】
本発明は、血液サンプル中に存在する全ヘモグロビン濃度の計測のための、又は同時の、白血球の数の計数又は白血球サブ集団の示差的計数との組合せにおける、シアン化物不含溶解試薬組成物に向けられている。
【0025】
上記シアン化物不含溶解試薬組成物は:
(I)以下の分子構造:
【化1】
{式中、R1 は、10〜18炭素原子をもつアルキル、アルケニル又はアルキニル基であり;R2 ,R3 とR4 は、1〜4炭素原子をもつアルキル基であり、そしてX- は、クロリド及びブロミド・アニオンである。}により表される、第4アンモニウム塩;
以下の分子構造:
【化2】
{式中、nは、7〜12の整数であり、そしてX- は、アニオン基である。}により表されるピリジニウム塩;
アルキル・スルホン酸、又はアルキルスルホネートのアルカリ金属塩;
有機リン酸エステル、又は有機リン酸エステルのアルカリ金属塩;
から成る群から選ばれた、ヘモグロビン濃度の測定のための、赤血球を溶血させ、そしてヘモグロビンを放出するために十分な量における少なくとも1の界面活性剤;並びに
【0026】
(II)以下の:
(a)トリアゾール、例えば、1,2,3−トリアゾール及び1,2,4−トリアゾール、及びトリアゾール誘導体、例えば、1,2,4−トリアゾール−3−チオール、1,2,4−トリアゾール・ナトリウム誘導体、トリアゾール・ジカルボン酸及びトリアゾールの複素環誘導体;
(b)テトラゾール及びその誘導体、例えば、5−アミノ・テトラゾール;
(c)以下のオキソ酸のアルカリ金属塩:
【化3】
{式中、Mはアルカリ金属カチオンである。}
(d)メラミン
【化4】
(e)アニリン−2−スルホン酸
【化5】
(f)キナルジン酸
【化6】
(g)2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール
【化7】
【0027】
(h)トリアジン及びその誘導体
【化8】
{式中、R1 ,R2 とR3 は、−H,−OH,−SH,−COOH及びトリアジンの複素環誘導体である。};
(i)ウラゾール
【化9】
(j)DL−ピペコリン酸
【化10】
(k)イソニコチンアミド
【化11】
(l)アントラニロニトリル
【化12】
【0028】
(m)6−アザ−2−チオチミン
【化13】
(n)アデニン
【化14】
(o)3−(2−チエニル)アクリル酸
【化15】
(p)安息香酸、及び安息香酸のアルカリ金属及びアンモニウム塩
【化16】
{式中、Rは、−H,NH4 + 及びアルカリ金属カチオンである。};
【0029】
(q)ピラジン及びその誘導体
【化17】
{式中、R1 ,R2 ,R3 及びR4 は、−H,−CN,−OH,−SH,−COOH、又は−CONH2 である。}
から成る群から選ばれた、ヘモグロビンと安定性色素原を形成するために十分な量における有機リガンド、から成る水性溶液を含む。
【0030】
上記溶解試薬組成物のpHは、1〜13の範囲にある。
上記溶血界面活性剤の中では、第4アンモニウム塩がより好ましい。上記溶解試薬組成物中の界面活性剤の濃度は、白血球の核容量を保存しながら、赤血球を溶解させ、そしてヘモグロビンを放出するために十分な量にあることが必要である。白血球をカウントするために、上記白血球の膜を無傷で保つ必要はない。一般に、赤血球が完全に溶解され、そして破壊されるとき、本発明の溶解試薬組成物中の上記溶血性界面活性剤を使用して、白血球膜を部分的に溶解させる。白血球の残存核が、上記DCインピーダンス法を使用した、白血球数の計数、及びリンパ球、単球、及び顆粒球への白血球サブ集団の分別を可能にする。上記溶解試薬組成物中の界面活性剤の濃度は、約2g/L〜約 250g/L、好ましくは約4g/L〜約80g/Lの範囲にある。
【0031】
上記溶解試薬組成物中の有機リガンドの濃度は、安定性ヘモグロビン色素原を形成するために十分なものであることが必要である。上記濃度は、上記リガンドのヘモグロビンに対するアフィニティーに依存して、そのリガンドのタイプにより変化する。一般に、溶解試薬組成物中のリガンドの量が十分でない場合、形成されたヘモグロビン色素原は、不安定であることができる。本発明の溶解試薬組成物中の有機リガンドの濃度は、約1g/L〜約30g/L、好ましくは約2g/L〜約15g/Lの広いレンジ内で有効であることが発見されている。
【0032】
上記溶解試薬組成物中の化学成分の濃度は、ヘモグロビン及び白血球計測値が、慣用の血液分析装置の便宜のために好適な血液希釈剤の使用により達成されるような条件下での濃度である。しかしながら、上記化学成分の濃度は、上記溶解試薬組成物と上記希釈剤の間の容量比に依存して変えられることができる。
【0033】
その上、装置が、血液希釈剤による事前希釈を伴わずに、単一の溶解試薬組成物を使用する場合、上記溶解試薬組成物の化学成分の濃度を低下させ、そしてインピーダンス計測のためのその使用を可能にする上記溶解試薬組成物の導電率を調整することができる。導電率は、アルカリ金属塩の好適な量の添加により調整されることができる。このタイプの単一試薬方法においては、上記溶解試薬組成物の化学成分の濃度は、希釈剤と溶解試薬組成物の両者を含む、本発明の最終サンプル混合物中に含まれる濃度と同じでなければならない。
【0034】
任意的添加物も、それらの存在が上記溶解試薬組成物の主要な機能性成分と適合性である濃度において上記溶解試薬組成物中に含まれることができる。これらの添加物の中には、その組成物の保存寿命を延ばすための抗酸化剤特性をもち、そして抗−微生物特性をもつ保存料がある。
【0035】
本発明は、血液サンプル中に存在する全ヘモグロビン濃度を計測するための、又は同時の、白血球の数の計数又は白血球サブ集団の示差的計数との組合せにおいて、上記シアン化物不含溶解試薬組成物を使用する方法にも向けられている。
【0036】
抗凝血剤添加血液サンプルを、好適な血液希釈剤により希釈し、次に、十分な量の上記溶解試薬組成物を、手動又は機械混合により上記希釈サンプルと混合する。上記血液の希釈比は、約 125:1〜約 500:1の合計試薬容量対血液である。このサンプル混合物を、UVスペクトロメーター又は全ヘモグロビン計測のための所定の吸収波長におけるUV検出器を備えた自動血液アナライザー上で、上記溶解試薬組成物の添加から8〜60秒後に、分光光度測定する。上記サンプル混合物を、血液サンプル中のヘモグロビン濃度を計測するために、そして白血球の数を計数するために、又は得られた集団分布ヒストグラムに基づき白血球サブ集団をさらに分別するために、UV検出器及びDCインピーダンス計測装置を備えた血液アナライザーに導入することもできる。後者の場合、白血球は、リンパ球、単球、及び顆粒球を含む3つのサブ集団に分別される。
【0037】
DCインピーダンス計測装置を備えた血液アナライザーによる白血球計数のために使用される検出方法は、一般に、(Wallace H.Coulterへの)米国特許第 2,656,508号中に記載されており、これを全体として引用により本明細書中に取り込む。DCインピーダンス計測を使用した白血球サブ集団の分別方法は、米国特許第 4,485,175号及び第 4,528,274号中に記載されている。
【0038】
上記の有機リガンド、例えば、トリアゾール及びメラミンは、ヘモグロビンと安定性色素原を形成するだけでなく、処理されたサンプル混合物中の白血球を安定化させる。白血球安定化効果は、白血球が過剰溶解し核収縮することを妨げ、それらの核容量に基づき白血球サブ集団の分離を容易にし、そして広いpHレンジを用いて、3つのサブ集団への白血球の分化を可能にする。実施4は、本発明の溶解試薬組成物中の白血球安定化リガンドを使用した上記の首尾よい実施例を説明する。
【0039】
他方においては、上記の有機リガンドのいくつか、例えば、アニリン−2−スルホン酸及びキナルジン酸が、白血球サブ集団の核サイズに基づき、中程度〜強い効果を示す。これらのリガンドがヘモグロビン計測のために使用されるとき、白血球サブ集団の崩壊は、1又は2のクラスターに崩壊し、その白血球の分別を困難にする。しかしながら、これらのリガンドを用いてさえも、その白血球核サイズは、上記溶解試薬組成物により処理された後に、上記サンプルの細胞死骸のはるか上に、そして慣用のDCインピーダンス計測装置の検出限界の上に残り、これにより、正確な白血球計数が、実施例3中の応用により説明されるように商業的血液アナライザー上で便利に達成されることができる。
【0040】
一般に、上記有機リガンドと上記界面活性剤を含む本発明の溶解試薬組成物は、ひじょうに広いpHレンジにおいて血液サンプルの全ヘモグロビン濃度を計測することができる。好ましくは、有機リガンドのいずれかとの、第4アンモニウム塩(単複)の組合せが、DCインピーダンス計測法による、同時の、全ヘモグロビン濃度の計測、及び血液サンプル中の白血球の数の計測を提供するために使用される。より好ましくは、白血球分別分析も適合性である有機リガンドと第4アンモニウム塩との組合せは、血液サンプルの、同時の、全ヘモグロビン濃度の計測、白血球の数の計数、及び白血球サブ集団の示差的計数を提供するために使用される。最も好ましいモードにおいては、白血球は、リンパ球、単球、及び顆粒球を含む3つのサブ集団に分別される。
【0041】
上記シアン化物不含溶解試薬組成物及びその使用方法は、従来技術のヘモグロビン計測の方法を超えるいくつかの利点を提供する。本発明は、全白血球数の測定又はリンパ球、単球、及び顆粒球への白血球サブ集団の分別と共に、シアン化物の非存在下で血液サンプルのヘモグロビン濃度の正確な測定を許容する。上記溶解試薬組成物は、迅速な自動化分析のために、使用される有機リガンドと希釈剤に依存して、約8秒〜60秒で、血液サンプル中に存在するヘモグロビンを安定性色素原に速やかに変換する。一旦形成されたヘモグロビン色素原は、計測時間の間、安定である。
【0042】
図2は、ヘモグロビン・リガンドとしてテトラゾールを、そして希釈剤として COULTER(登録商標)ISOTON(登録商標)II(商業的な血液希釈剤)を含む、式1aの溶解試薬組成物を使用して実施例1の手順に従って処理された血液サンプルの一連の吸収スペクトルを示す。図2は、1時間の間隔で上記溶解試薬組成物の添加から12秒〜12時間後に得られた全部で12のスペクトルを示す。 Hgb−テトラゾール色素原のスペクトルは、ひじょうに安定であり、そして12時間のデータ採取時間の間、シフト又は崩壊を示さない。
【0043】
特別なヘモグロビン色素原の性質は、上記溶解試薬組成物中で使用される有機リガンドに依存する。上記有機リガンドを使用して本発明の溶解試薬組成物による上記血液サンプルの処理により形成された色素原のほとんどは、約 510nm〜約 560nmの間にそれらの最大吸収をもつ。それ故、それら色素原は、特別な色素原の吸収係数の取り込みにより、ほとんどの商業的血液アナライザーにより計測されることができる。
【0044】
本発明の溶解試薬組成物は、多くの好適な血液希釈剤と共に使用されることができる。図3は、テトラゾールを含む溶解試薬組成物(実施例2)を使用した、そして希釈剤として、標準的なホスフェート緩衝液化生理食塩水及び商業的な血液希釈剤、 COULTER(登録商標)ISOTON(登録商標)III を使用した、上記の手順により処理された全血サンプルのスペクトルを示す。両希釈剤により、基本的に、 540nmにおいて計測されることができる、同一のヘモグロビン色素原が形成される。
【0045】
従来の試薬とは異なり、本発明の溶解試薬組成物は、1〜13の広いpHレンジをもつ。これは、ヘモグロビン・リガンドとして使用されることができる化学物質の範囲を広げる。オキソ酸(oxonic acid) のカリウム塩は、 538nmにおいて強い吸収をもつヘモグロビンと安定性の色素原を形成する。しかしながら、オキソ酸のカリウム塩は、pH3未満の、低pHにおいてのみ、水に容易に可溶性である。従来の中性及びアルカリ性試薬は、ヘモグロビン計測のための上記化学物質の使用を排除する。Sakataは、米国特許第 5,242,843号中に、pH値が 3.0以下である場合、白血球への損傷が増加し、これ故、白血球の計測を困難にするということを教示している。図4は、 0.5%の、オキソ酸のカリウム塩を含み、そして 2.3のpH、そして希釈剤として COULTER(登録商標)ISOTON(登録商標)III をもつ、実施例4の溶解試薬組成物を使用した本発明の手順後に得られた白血球サブ集団分布ヒストグラムを示す。図4cと4dにより示されるように、白血球は、リンパ球、単球、及び顆粒球に明確に分別される。図6bは、商業的な自動化された血液アナライザー、 COULTER(登録商標)STKS上で得られた白血球の数と、上記溶解試薬組成物のpHがほんの1.67であるとき、同一の装置上で実施例3の溶解試薬組成物の中の1(処方3b)を使用して得られた結果との間の、すばらしい線形相関を示す。
【0046】
本発明の溶解試薬組成物とその使用方法は、正確なヘモグロビン計測、白血球の正確な計数、及び白血球サブ集団の示差的計数を提供する。図5aと6aは、慣用の溶解試薬を使用して COULTER(登録商標)STKS上で得られたヘモグロビン濃度と、実施例3の溶解試薬組成物(処方3aと3b)を使用して得られたヘモグロビン濃度の間の優れた線形相関を証明する。図5bと6bは、 COULTER(登録商標)STKS上で得られた白血球カウントと、同一装置上で処方3aと3bを使用して得られた結果との間の優れた相関を説明する。
【0047】
本発明の溶解試薬組成物は、一般的な妨害材料の存在下で正確なヘモグロビン計測を提供する。全部で72の全血サンプルを、 COULTER(登録商標)STKS上で実施例3の式3aを使用して分析した。上記サンプルの70%は、鎌状赤血球危機及びC型肝炎の如きさまざまな病気を含む臨床サンプルである。これらの異常な血液が、異常なヘモグロビン及びヘモグロビン計測のための妨害材料を含むということが知られている。しかしながら、本発明の溶解試薬組成物及び方法を使用した計測結果は、図5と6により説明するように、慣用のシアニド−Hgb 法と優しい相関を示し、このことは、さまざまな臨床サンプルの全ヘモグロビン濃度は、本発明の溶解試薬組成物を使用することにより、計測されることができるということを示している。
【0048】
上記有機リガンドの、ヘモグロビン安定化官能基を使用する他のモードは、上記溶解試薬組成物の代わりの血液希釈剤に上記有機リガンドを添加することである。上記の方法に従って、血液サンプルを、上記溶解試薬と混合する前に、上記血液希釈剤により事前に希釈する。希釈剤が上記有機リガンドを含むとき、溶解試薬により赤血球から放出された後のサンプル混合物中のヘモグロビン分子は、安定性ヘモグロビン色素原を形成するための、上記有機リガンドとじかに接触するようになるであろう。それ故、別のモードは、血液サンプルのヘモグロビン計測のための同一目的に役立つ。しかしながら、それは、試薬設計者に、それらの特別な要求、例えば、溶解試薬又は希釈剤がヘモグロビン計測と並んで行われる必要があるところの他のテストに対する有機性リガンドの適合性、又は溶解試薬又は希釈剤中の他の化学試薬に対する有機リガンドの適合性、に基づき最も適切なモードを選ぶためのオプションを提供する。実施例5は、溶解試薬が溶血性界面活性剤だけを含むような、安定性ヘモグロビン色素原を形成するための血液希釈剤中の有機リガンドの上記のような応用を説明する。図9aは、ヘモグロビン・リガンドとしてトリアゾールを含むリガンドを使用して、実施例6の手順に従って処理された血液サンプルのスペクトルを示す。この色素原の特徴は、図1a中に示すものと同一のリガンドを含む溶解試薬組成物を使用して得られたものと同一である。図9bは、溶解試薬が界面活性剤だけを含むところの、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上で実施例6の希釈剤を使用することにより得られた血液サンプルの白血球分布ヒストグラムを示す。本実施例は、それが他のモードにおいて使用されるとき、白血球分別分析に対する上記有機リガンドの適合性を示す。
【0049】
以下の実施例は、本発明を説明するものであり、そしていかなる方法においても、請求の範囲において定められるように、本発明の範囲を限定すると解釈されてはならない。以上の開示に従って、さまざまな他の成分及び割合を使用することができるということが理解されるであろう。
【実施例】
【0050】
実施例1
以下の組成の試薬を調製した。
処方1a
テトラゾール 5.0g
テトラデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド 15.0g
1リッターまでの蒸留水
pH 2.77
【0051】
処方1b
トリアゾール 10.0g
ドデシルトリメチルアンモニウム・クロリド(50%溶液) 35.0ml
テトラデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド 3.5g
1リッターまでの蒸留水
pH 6.19
【0052】
処方1c
キナルジン酸 5.0g
ドデシルトリメチルアンモニウム・クロリド(50%溶液) 50.0ml
1リッターまでの蒸留水
pH 2.55
【0053】
処方1d
メラミン 5.0g
テトラデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド 3.6g
ドデシルトリメチルアンモニウム・クロリド(50%溶液) 36.0ml
1リッターまでの蒸留水
pH 4.55
【0054】
処方1e
テトラゾール 5.0g
Chemfac NB-104
(Chemax, Inc.により製造されたホスフェート錯体) 30.0g
1リッターまでの蒸留水
pH 7.11
【0055】
11.6μlの全血サンプルを、2500μlのISOTONRIIにより希釈し、次に 403μlの、上記溶解試薬組成物の中の1を、手動で、事前に希釈されたサンプルと混合した。このサンプルの吸収スペクトルを、 Beckman DU 7500スペクトロフォトメーター上で直ちに計測した。図1a〜1bは、処方1aと1cを使用して上記手順に従って処理された血液サンプルのスペクトルを示す。図2は、処方1aを使用して上記手順に従って処理された血液サンプルから得られた合計12のスペクトルを示す。これらのスペクトルは、1時間の間隔で、上記溶解試薬組成物を添加してから12秒〜12時間後に得られた。
【0056】
実施例2
以下の組成の試薬を調製した。
テトラゾール 5.0g
ドデシルトリメチルアンモニウム・クロリド(50%溶液) 36.0ml
テトラデシルアンモニウム・ブロミド 3.6g
蒸留水 1リッター
pH 2.73
【0057】
11.6μlの全血サンプルを2500μlの血液希釈剤により希釈し、次に 403μlの上記処方物を手動で、事前希釈サンプルと混合した。このサンプルの吸収スペクトルを、 Beckman DU 7500スペクトロフォトメーター上で直ちに計測した。5つの商業的血液希釈剤、すなわち、 COULTER(登録商標)ISOTON(登録商標)III , COULTER(登録商標)ISOTON(登録商標)II, Technicon HTM Systems RBC DIL (Technicon Instruments Corp. の商業的製品)、標準的なホスフェート緩衝液化生理食塩水、及び標準的な塩化ナトリウム生理食塩水を、上記ヘモグロビン計測のために使用した。形成された色素原は、約 540nmに最大吸収ピークを、そして約 565nmに肩をもつ。上記色素原の最大吸収は、ヘモグロビン計測のために異なる希釈剤が使用されるとき、ほんの僅かに相違する。すなわち、ISOTON(登録商標)III により 540nm、ISOTON(登録商標)II Technicon HTM Systems RBC DIL、及び標準的なホスフェート緩衝液化生理食塩水により 539nm、そして標準的な塩化ナトリウム生理食塩水により 538nmである。上記色素原は、使用された血液希釈剤に依存して、上記溶解試薬組成物の添加後直ちに、8秒〜約35秒に、形成した。図3は、希釈剤として、標準的なホスフェート緩衝液化生理食塩水及びISOTON(登録商標)III を使用して、上記手順に従って得られたスペクトルを示す。
【0058】
実施例3
以下の組成の試薬を調製した。
処方3a
テトラゾール 5.0g
テトラデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド 15.0g
1リッターまでの蒸留水
pH 12.06
【0059】
処方3b
アニリン−2−スルホン酸 5.0g
テトラデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド 10.0g
セチルトリメチルアンモニウム・ブロミド 4.0g
蒸留水 1リッター
pH 1.67
【0060】
処方3c
キナルジン酸 5.0g
ドデシルトリメチルアンモニウム・クロリド(50%溶液) 40.0ml
蒸留水 1リッター
pH 2.58
【0061】
そのヘモグロビン濃度が6〜17g/dLの範囲にあり、そして白血球カウントが 1,000/μL〜40,000/μLの範囲にある、約70の血液サンプルを、標準的な装置の配置の下、換算された COULTER(登録商標)STKS装置上で分析した。但し、溶解試薬、LYSE S(登録商標)III diff を、上記処方により置き替えた。各処方について、サンプルの約半分は、さまざまな疾患を含む臨床サンプルであった。処方3aの場合、サンプルの70%が臨床サンプルである。図5は、参照試薬、LYSE S(登録商標)III diff を使用することにより得られた、ヘモグロビン濃度と(103/μLにおける WBCとして報告された)白血球の数と、同一装置上で処方3aを使用して得られた結果との間の相関を示す。図6は、LYSE S(登録商標)III diff 溶解試薬を使用することにより得られた、ヘモグロビン濃度と白血球の数と、同一装置上で処方3bを使用して得られた結果との間の相関を示す。
【0062】
図5と6は、ヘモグロビン濃度と WBC計測における、本発明の溶解試薬組成物と慣用のシアニド含有溶解試薬との間のすばらしい線形相関を証明する。
【0063】
実施例4
以下の組成の試薬を調製した。
溶解試薬
処方4a
トリアゾール 10.0g
ドデシルトリメチルアンモニウム・クロリド(50%溶液) 35.0ml
テトラデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド 3.5g
1リッターまでの蒸留水
pH 6.39
【0064】
処方4b
オキソ酸カリウム塩 5.0g
ドデシルトリメチルアンモニウム・クロリド(50%溶液) 35.0ml
テトラデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド 3.5g
1リッターまでの蒸留水
pHを HClにより 2.3に調整した。
希釈剤
硫酸ナトリウム 9.7g
塩化ナトリウム 4.0g
1リッターまでの蒸留水
pHを1% NaOH により7.14に調整した。
【0065】
そのヘモグロビン濃度が6〜約17g/dLの範囲にあり、そして白血球カウントが 1,500/μL〜45,000/μLの範囲にある85の血液サンプルを、参照試薬、LYSE S(登録商標)III diff とISOTON(登録商標)III を使用して標準的な装置配置の下で、換算された COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上で分析した。次に、同一のサンプルを、同一の装置上で再び分析した。但し、溶解試薬、LYSE S(登録商標)III diff を上記溶解試薬組成物により置き替え、そしてISOTON(登録商標)III を、上記希釈剤により置き替えた。図4は、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上で得られた上記血液サンプルの中の4つからの白血球サブ集団の分布ヒストグラムを示す。図4aと4bを、処方4aと上記希釈剤を使用して得た。ここで、図4aは、正常血液のヒストグラムを示し、そして図4bは上昇単球をもつ血液サンプルのヒストグラムを示す。図4cと4dを、処方4bとISOTON(登録商標)III を使用して得た。ここで、図4cは、正常血液のヒストグラムを示し、そして図4dは、90%を超える顆粒球をもつ臨床サンプルのヒストグラムを示す。図7a〜7eは、参照試薬を使用することにより得られた、(103/μLにおいて WBCとして報告された、図7a)白血球の数、リンパ球%(図7b)、単球%(図7c)、顆粒球%(図7d)、及びヘモグロビン濃度(図7e)、と処方4aと上記希釈剤を使用して得られたものとの間の相関を示す。その相関係数、並びにその回帰線の勾配及び交点を、ヘモグロビン濃度、 WBC、リンパ球%及び顆粒球%についての極めてすばらしい線形相関、及び単球%についての良好な相関を示す。
【0066】
実施例5
溶解試薬
ドデシルトリメチルアンモニウム・クロリド(50%溶液) 36.0ml
テトラデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド 3.6g
1リッターまでの蒸留水
pH 6.88
希釈剤
処方5a
テトラゾール 5g
標準ホスフェート緩衝液化生理食塩水 1リッター
pH 3.86
【0067】
処方5b
2−アミノ−1,3,4−チアゾール 5.0g
硫酸ナトリウム 9.7g
塩化ナトリウム 4.0g
1リッターまでの蒸留水
pH 6.04
【0068】
11.6μlの全血サンプルを、2500μlの、上記希釈剤処方の中の1により希釈し、次に 403μlの上記溶解試薬処方物を、事前希釈されたサンプルと手動で混合した。上記サンプルの吸収スペクトルを、 Beckman DU 7500スペクトロフォトメーター上で直ちに計測した。図8a〜8bは、それぞれ、処方5aと5bを使用して上記手順に従って処理された血液サンプルのスペクトルを示す。
【0069】
実施例6
溶解試薬
ドデシルトリメチルアンモニウム・クロリド(50%溶液) 36.0ml
テトラデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド 3.6g
1リッターまでの蒸留水
pH 6.88
希釈剤
トリアゾール 5.0g
硫酸ナトリウム 9.7g
塩化ナトリウム 4.0g
1リッターまでの蒸留水
pH 6.06
【0070】
10の血液サンプルを、上記溶解試薬と希釈剤を使用して、換算 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上で分析した。図9aは、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上で得られた血液サンプルのリンパ球サブ集団分布ヒストグラムを示す。これらのサンプルも、上記溶解試薬と希釈剤を使用して、実施例5中に記載した手順に従ってスペクトロメーター上で、処理し、そして計測した。図9aは、図9b中で使用された同一血液サンプルのスペクトルを示す。スペクトルと白血球サブ集団分布ヒストグラムの両者が、トリアゾールが溶解試薬組成物中で使用されるときに得られたものと同一の特徴をもつ。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1a】図1aと1bは、本発明の実施例1の溶解試薬組成物(処方1bと1c)を使用した、実施例1中に記載した手順に従って処理された全血サンプルの吸収スペクトルである。
【図1b】図1aと1bは、本発明の実施例1の溶解試薬組成物(処方1bと1c)を使用した、実施例1中に記載した手順に従って処理された全血サンプルの吸収スペクトルである。
【図2】図2は、式1a溶解試薬組成物を使用した実施例1の手順に従って処理された血液サンプルの一連の吸収スペクトルを示す。12のスペクトルの全てが、1時間の間隔をもって12時間目に得られた。
【図3a】図3aと3bは、実施例2の溶解試薬組成物、及び希釈剤としての、標準ホスフェート緩衝液化生理食塩水及び商業的な血液希釈剤、 COULTER(登録商標)ISOTON(登録商標)III を使用した、実施例2中に記載する手順に従って処理された全血サンプルのスペクトルを示す。
【図3b】図3aと3bは、実施例2の溶解試薬組成物、及び希釈剤としての、標準ホスフェート緩衝液化生理食塩水及び商業的な血液希釈剤、 COULTER(登録商標)ISOTON(登録商標)III を使用した、実施例2中に記載する手順に従って処理された全血サンプルのスペクトルを示す。
【図4a】図4a,4b,4c、及び4dは、商業的血液分析装置、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上での本発明の実施例4の溶解試薬組成物を使用することにより得られた4つの全血サンプルの白血球サブ集団の分布ヒストグラムを示す。
【図4b】図4a,4b,4c、及び4dは、商業的血液分析装置、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上での本発明の実施例4の溶解試薬組成物を使用することにより得られた4つの全血サンプルの白血球サブ集団の分布ヒストグラムを示す。
【図4c】図4a,4b,4c、及び4dは、商業的血液分析装置、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上での本発明の実施例4の溶解試薬組成物を使用することにより得られた4つの全血サンプルの白血球サブ集団の分布ヒストグラムを示す。
【図4d】図4a,4b,4c、及び4dは、商業的血液分析装置、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上での本発明の実施例4の溶解試薬組成物を使用することにより得られた4つの全血サンプルの白血球サブ集団の分布ヒストグラムを示す。
【図5a】図5aと5bは、慣用の溶解試薬、 COULTER(登録商標)LYSE(登録商標)III diff を使用した自動化された商業的血液分析装置、 COULTER(登録商標)STKS上で得られた、ヘモグロビン濃度と白血球数と、同一装置上での本発明の実施例3の溶解試薬組成物(処方3a)を使用して得られた結果との間の、相関を示す。
【図5b】図5aと5bは、慣用の溶解試薬、 COULTER(登録商標)LYSE(登録商標)III diff を使用した自動化された商業的血液分析装置、 COULTER(登録商標)STKS上で得られた、ヘモグロビン濃度と白血球数と、同一装置上での本発明の実施例3の溶解試薬組成物(処方3a)を使用して得られた結果との間の、相関を示す。
【図6a】図6aと6bは、 COULTER(登録商標)LYSE S(登録商標)III diff 溶解試薬を使用した、自動化された商業的血液分析装置、 COULTER(登録商標)STKS上で得られたヘモグロビン濃度と白血球の数と、同一装置上で本発明の溶解試薬組成物(処方3b)を使用して得られた結果との間の相関を示す。
【図6b】図6aと6bは、 COULTER(登録商標)LYSE S(登録商標)III diff 溶解試薬を使用した、自動化された商業的血液分析装置、 COULTER(登録商標)STKS上で得られたヘモグロビン濃度と白血球の数と、同一装置上で本発明の溶解試薬組成物(処方3b)を使用して得られた結果との間の相関を示す。
【図7a】図7a,7b,7c,7d、及び7eは、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上で得られた、白血球の数、白血球の示差的計測、とヘモグロビン濃度と、同一の商業的装置上での本発明の実施例4の溶解試薬組成物(式4aと希釈剤)を使用して得られた結果との相関を示す。
【図7b】図7a,7b,7c,7d、及び7eは、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上で得られた、白血球の数、白血球の示差的計測、とヘモグロビン濃度と、同一の商業的装置上での本発明の実施例4の溶解試薬組成物(式4aと希釈剤)を使用して得られた結果との相関を示す。
【図7c】図7a,7b,7c,7d、及び7eは、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上で得られた、白血球の数、白血球の示差的計測、とヘモグロビン濃度と、同一の商業的装置上での本発明の実施例4の溶解試薬組成物(式4aと希釈剤)を使用して得られた結果との相関を示す。
【図7d】図7a,7b,7c,7d、及び7eは、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上で得られた、白血球の数、白血球の示差的計測、とヘモグロビン濃度と、同一の商業的装置上での本発明の実施例4の溶解試薬組成物(式4aと希釈剤)を使用して得られた結果との相関を示す。
【図7e】図7a,7b,7c,7d、及び7eは、 COULTER COUNTER(登録商標) Model S-Plus IV上で得られた、白血球の数、白血球の示差的計測、とヘモグロビン濃度と、同一の商業的装置上での本発明の実施例4の溶解試薬組成物(式4aと希釈剤)を使用して得られた結果との相関を示す。
【図8a】図8aと8bは、本発明の実施例5の溶解試薬と希釈組成物(処方5aと5b)を使用して、実施例5中に記載された手順に従って処理された2つの全血サンプルの吸収スペクトルである。
【図8b】図8aと8bは、本発明の実施例5の溶解試薬と希釈組成物(処方5aと5b)を使用して、実施例5中に記載された手順に従って処理された2つの全血サンプルの吸収スペクトルである。
【図9a】図9aと9bは、実施例6の溶解試薬と希釈組成物を使用して、実施例6中に記載された手順に従って処理された全血サンプルのスペクトルと白血球サブ集団の分布ヒストグラムを示す。
【図9b】図9aと9bは、実施例6の溶解試薬と希釈組成物を使用して、実施例6中に記載された手順に従って処理された全血サンプルのスペクトルと白血球サブ集団の分布ヒストグラムを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)(a)以下の分子構造:
【化1】
{式中、R1 は、10〜18炭素原子をもつアルキル、アルケニル又はアルキニル基であり;R2 ,R3 とR4 は、1〜4炭素原子をもつアルキル基であり、そしてX- は、クロリド及びブロミド・アニオンである。}により表される、第4アンモニウム塩;
(b)以下の分子構造:
【化2】
{式中、nは、7〜12の整数であり、そしてX- は、アニオン基である。}により表されるピリジニウム塩;
(c)アルキル・スルホン酸、又はアルキルスルホネートのアルカリ金属塩;及び
(d)有機リン酸エステル、又は有機リン酸エステルのアルカリ金属塩;
から成る群から選ばれたヘモグロビン濃度の測定のための、赤血球を溶血し、そしてヘモグロビンを放出するために十分な量における少なくとも1の界面活性剤;並びに
(II)以下の:
(a)トリアゾール及びその誘導体、
(b)テトラゾール及びその誘導体、
(c)以下のオキソ酸のアルカリ金属塩:
【化3】
{式中、Mはアルカリ金属カチオンである。}
(d)メラミン
【化4】
(e)アニリン−2−スルホン酸
【化5】
(f)キナルジン酸
【化6】
(g)2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール
【化7】
(h)トリアジン及びその誘導体
【化8】
{式中、R1 ,R2 とR3 は、−H,−OH,−SH,−COOH及びトリアジンの複素環誘導体である。};
(i)ウラゾール
【化9】
(j)DL−ピペコリン酸
【化10】
(k)イソニコチンアミド
【化11】
(l)アントラニロニトリル
【化12】
(m)6−アザ−2−チオチミン
【化13】
(n)アデニン
【化14】
(o)3−(2−チエニル)アクリル酸
【化15】
(p)安息香酸、及び安息香酸のアルカリ金属及びアンモニウム塩
【化16】
{式中、Rは、−H,NH4 + 及びアルカリ金属カチオンである。};
(q)ピラジン及びその誘導体
【化17】
{式中、R1 ,R2 ,R3 及びR4 は、−H,−CN,−OH,−SH,−COOH、又は−CONH2 である。}
から成る群から選ばれた、ヘモグロビンと安定性色素原を形成するために十分な量における有機リガンド、から成る水性溶液を含み、そしてこれによりその溶解試薬組成物のpHは、1〜13の範囲にあるシアニド不含溶解試薬組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤が、約2g/L〜約 250g/Lの範囲にある濃度をもつ第4アンモニウム塩を含む、請求項1に記載の溶解試薬組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤が、約2g/L〜約 130g/Lの範囲にある濃度をもつピリジニウム塩を含む、請求項1に記載の溶解試薬組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤が、約8g/L〜約30g/Lの範囲にある濃度をもつアルキル・スルホン酸、又はアルキル・スルホネートのアルカリ金属塩を含む、請求項1に記載の溶解試薬組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤が、約15g/L〜約70g/Lの範囲にある濃度をもつ有機リン酸エステル、又は有機ホスフェート・エステルのアルカリ金属塩を含む、請求項1に記載の溶解試薬組成物。
【請求項6】
前記有機リガンドが、約1g/L〜約30g/Lの範囲内の濃度をもつ、請求項1に記載の溶解試薬組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤が:
(a)以下の分子構造:
【化18】
{式中、R1 は、10〜18炭素原子をもつアルキル、アルケニル又はアルキニル基であり;R2 ,R3 とR4 は、1〜4炭素原子をもつアルキル基であり、そしてX- は、クロリド及びブロミド・アニオンである。}により表される、第4アンモニウム塩;及び
(b)以下の分子構造:
【化19】
{式中、nは、7〜12の整数であり、そしてX- は、アニオン基である。}により表されるピリジニウム塩;
から成る群から選ばれ、そしてこれにより、上記界面活性剤が、ヘモグロビン濃度の測定のために、赤血球を溶血し、そしてヘモグロビンを放出するために、かつ、白血球カウントの測定のために、白血球の核を保存するために十分な量にある、請求項1に記載のシアニド不含溶解試薬組成物。
【請求項8】
前記界面活性剤が、約4g/L〜約 150g/Lの範囲にある濃度をもつ第4アンモニウム塩を含む、請求項7に記載の溶解試薬組成物。
【請求項9】
前記界面活性剤が、約2g/L〜約 130g/Lの範囲にある濃度をもつピリジニウム塩を含む、請求項7に記載の溶解試薬組成物。
【請求項10】
前記有機リガンドが、約1g/L〜約30g/Lの範囲内の濃度をもつ、請求項7に記載の溶解試薬組成物。
【請求項11】
(I)前記界面活性剤が、以下の分子構造:
【化20】
{式中、R1 は、10〜18炭素原子をもつアルキル、アルケニル又はアルキニル基であり;R2 ,R3 とR4 は、1〜4炭素原子をもつアルキル基であり、そしてX- は、クロリド及びブロミド・アニオンである。}により表される、第4アンモニウム塩;であり、これによりその界面活性剤が、ヘモグロビン濃度の測定のために、赤血球を溶血し、そしてヘモグロビンを放出するために、かつ、白血球の分別分析のために、白血球サブ集団の核を保存するために、十分な量にあり;そして
(II)ヘモグロビンと安定性色素原を形成するために十分な量における有機リガンドが、以下の:
(a)トリアゾール及びその誘導体
(b)メラミン
【化21】
(c)以下のオキソ酸のアルカリ金属塩:
【化22】
{式中、Mはアルカリ金属カチオンである。}
(d)2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール
【化23】
(e)トリアジン及びその誘導体
【化24】
{式中、R1 ,R2 とR3 は、−H,−OH,−SH,−COOH及びトリアジンの複素環誘導体である。};
(f)ウラゾール
【化25】
(g)DL−ピペコリン酸
【化26】
(h)イソニコチンアミド
【化27】
(i)ピラジン及びその誘導体
【化28】
{式中、R1 ,R2 ,R3 及びR4 は、−H,−CN,−OH,−SH,−COOH、又は−CONH2 である。}
から成る群から選ばれ、そしてこれにより、その溶解試薬組成物のpHが2〜10の範囲にある、請求項7に記載のシアニド不含溶解試薬組成物。
【請求項12】
前記第4アンモニウム塩が、約4g/L〜約50g/Lの範囲にある濃度をもつ、請求項11に記載の溶解試薬組成物。
【請求項13】
前記有機リガンドが、約1g/L〜約30g/Lの範囲内の濃度をもつ、請求項11に記載の溶解試薬組成物。
【請求項14】
請求項1に記載のシアニド不含溶解試薬組成物を使用した血液サンプルの全ヘモグロビン濃度の計測方法であって:
(a)血液サンプルを血液希釈剤で希釈し;
(b)上記希釈された血液サンプルを、請求項1に記載のシアニド−不含溶解試薬組成物と混合して、赤血球を溶解し、そして、安定性ヘモグロビン色素原を形成し;
(c)所定の波長における上記形成されたヘモグロビン色素原の吸光度を計測し;
(d)上記ヘモグロビン色素原の計測された吸光度から、上記血液サンプルの全ヘモグロビン濃度を測定し;そして
(e)上記血液サンプルの全ヘモグロビン濃度を報告する、
ことを含む、前記方法。
【請求項15】
前記血液サンプルの吸光度が、約 510nm〜約 560nmの間で計測される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記溶解試薬組成物中の界面活性剤が、
(a)以下の分子構造式:
【化29】
{式中、R1 は、10〜18炭素原子をもつアルキル、アルケニル又はアルキニル基であり;R2 ,R3 とR4 は、1〜4炭素原子をもつアルキル基であり、そしてX- は、クロリド及びブロミド・アニオンである。}により表される、第4アンモニウム塩;及び
(b)以下の分子構造:
【化30】
{式中、nは、7〜12の整数であり、そしてX- は、アニオン基である。}により表されるピリジニウム塩;
から成る群から選ばれ、そしてこれにより、上記界面活性剤が、ヘモグロビン濃度の測定のために、赤血球を溶血し、そしてヘモグロビンを放出するために、かつ、白血球カウントの測定のために、白血球の核を保存するために十分な量にあり;
そしてさらに、以下の工程:
DCインピーダンス計測を使用した、自動化血液アナライザー内で白血球の数を計数し;そして
上記血液サンプルについて白血球の数を報告する、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
(I)前記界面活性剤が、以下の分子構造:
【化31】
{式中、R1 は、10〜18炭素原子をもつアルキル、アルケニル又はアルキニル基であり;R2 ,R3 とR4 は、1〜4炭素原子をもつアルキル基であり、そしてX- は、クロリド及びブロミド・アニオンである。}により表される、第4アンモニウム塩;であり、これによりその界面活性剤が、ヘモグロビン濃度の測定のために、赤血球を溶血し、そしてヘモグロビンを放出するために、かつ、白血球の分別分析のために、白血球サブ集団の核を保存するために、十分な量にあり;そして
(II)ヘモグロビンと安定性色素原を形成するために十分な量における有機リガンドが、以下の:
(a)トリアゾール及びその誘導体
(b)メラミン
【化32】
(c)以下のオキソ酸のアルカリ金属塩:
【化33】
{式中、Mはアルカリ金属カチオンである。}
(d)2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール
【化34】
(e)トリアジン及びその誘導体
【化35】
{式中、R1 ,R2 とR3 は、−H,−OH,−SH,−COOH及びトリアジンの複素環誘導体である。};
(f)ウラゾール
【化36】
(g)DL−ピペコリン酸
【化37】
(h)イソニコチンアミド
【化38】
(i)ピラジン及びその誘導体
【化39】
{式中、R1 ,R2 ,R3 及びR4 は、−H,−CN,−OH,−SH,−COOH、又は−CONH2 である。}
から成る群から選ばれ、そしてこれにより、その溶解試薬組成物のpHが2〜10の範囲にあり;
そしてさらに、以下の工程:
DCインピーダンス計測を使用した自動化血液アナライザー内で白血球の数を計数し;
集団分布ヒストグラムに従って、白血球サブ集団を分別し;そして
白血球の数と白血球サブ集団を報告する、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
(I)以下の:
(a)トリアゾール及びその誘導体
(b)テトラゾール及びその誘導体
(c)以下のオキソ酸のアルカリ金属塩:
【化40】
{式中、Mはアルカリ金属カチオンである。}
(d)メラミン
【化41】
(e)アニリン−2−スルホン酸
【化42】
(f)キナルジン酸
【化43】
(g)2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール
【化44】
(h)トリアジン及びその誘導体
【化45】
{式中、R1 ,R2 とR3 は、−H,−OH,−SH,−COOH及びトリアジンの複素環誘導体である。};
(i)ウラゾール
【化46】
(j)DL−ピペコリン酸
【化47】
(k)イソニコチンアミド
【化48】
(l)アントラニロニトリル
【化49】
(m)6−アザ−2−チオチミン
【化50】
(n)アデニン
【化51】
(o)3−(2−チエニル)アクリル酸
【化52】
(p)安息香酸、及び安息香酸のアルカリ金属及びアンモニウム塩
【化53】
{式中、Rは、−H,NH4 + 及びアルカリ金属カチオンである。};
(q)ピラジン及びその誘導体
【化54】
{式中、R1 ,R2 ,R3 及びR4 は、−H,−CN,−OH,−SH,−COOH、又は−CONH2 である。}
から成る群から選ばれた、ヘモグロビンと安定性色素原を形成し、かつ、白血球の核を保存するために十分な量における有機リガンド;及び
(II)その重量オスモル濃度を約 250〜400mOsm に調整するための塩(単複)、
の水性溶液を含む、ヘモグロビン計測及び白血球計数のために有用な血液希釈剤。
【請求項19】
前記有機リガンドが、約 0.5g/L〜約20g/Lの範囲内の濃度をもつ、請求項18に記載の希釈剤。
【請求項20】
血液サンプルの全ヘモグロビン濃度を計測するために血液を分析する方法であって:
(a)血液サンプルを、請求項18に記載の血液希釈剤で希釈し;
(b)上記希釈された血液サンプルを、溶解試薬と混合して、赤血球を溶解し、そして、安定性ヘモグロビン色素原を形成し;
(c)所定の波長における上記形成されたヘモグロビン色素原の吸光度を計測し;
(d)上記ヘモグロビン色素原の計測された吸光度から、上記血液サンプルの全ヘモグロビン濃度を測定し;そして
(e)上記血液サンプルの全ヘモグロビン濃度を報告する、
ことを含む、前記方法。
【請求項21】
血液サンプル中の白血球の数を測定するための血液の分析方法であって:
(a)血液サンプルを請求項18に記載の血液希釈剤で希釈し;
(b)上記希釈された血液サンプルを、溶解試薬と混合して、赤血球を溶解し、そして、白血球の核容量を保存し;
(c)DCインピーダンス計測を使用して自動化血液アナライザー内で上記白血球を計数し;そして
(d)上記血液サンプル中の白血球の数を報告する、
ことを含む、前記方法。
【請求項22】
ヘモグロビン計測及び白血球サブ集団の示差的計数のための方法であって:
(1)(I)以下の:
(a)トリアゾール及びその誘導体
(b)メラミン
【化55】
(c)2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール
【化56】
(d)トリアジン及びその誘導体
【化57】
{式中、R1 ,R2 とR3 は、−H,−OH,−SH,−COOH及びトリアジンの複素環誘導体である。};
(e)DL−ピペコリン酸
【化58】
(f)イソニコチンアミド
【化59】
(g)ピラジン及びその誘導体
【化60】
{式中、R1 ,R2 ,R3 及びR4 は、−H,−CN,−OH,−SH,−COOH、又は−CONH2 である。}
から成る群から選ばれた、ヘモグロビンと安定性色素原を形成するために十分な量における有機リガンド;及び
(II)上記希釈剤の重量オスモル濃度を 250〜400mOsm 内に調整するための塩(単複)、
の水性溶液を含む血液希釈剤組成物で、血液サンプルを希釈し;
(2)上記事前希釈された血液サンプルを溶解試薬と混合して、赤血球を溶解させ、かつ、安定性ヘモグロビン色素原を形成し、そして上記白血球サブ集団の核容量を保存し;
(3)DCインピーダンス計測を使用して自動化血液アナライザー上で白血球を計数し、そして形成されたヘモグロビン色素原のもの所定の波長において上記サンプル混合物の吸光度を計測し;
(4)上記の計測された吸光度から上記サンプルの全ヘモグロビン濃度を計算し;
(5)上記集団分布ヒストグラムに従って上記白血球サブ集団を分別し;そして
(6)上記白血球の数及び白血球サブ集団の数を報告する、
を含む、前記方法。
【請求項23】
前記白血球が、リンパ球、単球、及び顆粒球を含む3つのサブ集団に分別される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記有機リガンドが、約 0.5g/L〜約20g/Lの範囲内の濃度をもつ、請求項22に記載の方法。
【請求項1】
(I)(a)以下の分子構造:
【化1】
{式中、R1 は、10〜18炭素原子をもつアルキル、アルケニル又はアルキニル基であり;R2 ,R3 とR4 は、1〜4炭素原子をもつアルキル基であり、そしてX- は、クロリド及びブロミド・アニオンである。}により表される、第4アンモニウム塩;
(b)以下の分子構造:
【化2】
{式中、nは、7〜12の整数であり、そしてX- は、アニオン基である。}により表されるピリジニウム塩;
(c)アルキル・スルホン酸、又はアルキルスルホネートのアルカリ金属塩;及び
(d)有機リン酸エステル、又は有機リン酸エステルのアルカリ金属塩;
から成る群から選ばれたヘモグロビン濃度の測定のための、赤血球を溶血し、そしてヘモグロビンを放出するために十分な量における少なくとも1の界面活性剤;並びに
(II)以下の:
(a)トリアゾール及びその誘導体、
(b)テトラゾール及びその誘導体、
(c)以下のオキソ酸のアルカリ金属塩:
【化3】
{式中、Mはアルカリ金属カチオンである。}
(d)メラミン
【化4】
(e)アニリン−2−スルホン酸
【化5】
(f)キナルジン酸
【化6】
(g)2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール
【化7】
(h)トリアジン及びその誘導体
【化8】
{式中、R1 ,R2 とR3 は、−H,−OH,−SH,−COOH及びトリアジンの複素環誘導体である。};
(i)ウラゾール
【化9】
(j)DL−ピペコリン酸
【化10】
(k)イソニコチンアミド
【化11】
(l)アントラニロニトリル
【化12】
(m)6−アザ−2−チオチミン
【化13】
(n)アデニン
【化14】
(o)3−(2−チエニル)アクリル酸
【化15】
(p)安息香酸、及び安息香酸のアルカリ金属及びアンモニウム塩
【化16】
{式中、Rは、−H,NH4 + 及びアルカリ金属カチオンである。};
(q)ピラジン及びその誘導体
【化17】
{式中、R1 ,R2 ,R3 及びR4 は、−H,−CN,−OH,−SH,−COOH、又は−CONH2 である。}
から成る群から選ばれた、ヘモグロビンと安定性色素原を形成するために十分な量における有機リガンド、から成る水性溶液を含み、そしてこれによりその溶解試薬組成物のpHは、1〜13の範囲にあるシアニド不含溶解試薬組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤が、約2g/L〜約 250g/Lの範囲にある濃度をもつ第4アンモニウム塩を含む、請求項1に記載の溶解試薬組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤が、約2g/L〜約 130g/Lの範囲にある濃度をもつピリジニウム塩を含む、請求項1に記載の溶解試薬組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤が、約8g/L〜約30g/Lの範囲にある濃度をもつアルキル・スルホン酸、又はアルキル・スルホネートのアルカリ金属塩を含む、請求項1に記載の溶解試薬組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤が、約15g/L〜約70g/Lの範囲にある濃度をもつ有機リン酸エステル、又は有機ホスフェート・エステルのアルカリ金属塩を含む、請求項1に記載の溶解試薬組成物。
【請求項6】
前記有機リガンドが、約1g/L〜約30g/Lの範囲内の濃度をもつ、請求項1に記載の溶解試薬組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤が:
(a)以下の分子構造:
【化18】
{式中、R1 は、10〜18炭素原子をもつアルキル、アルケニル又はアルキニル基であり;R2 ,R3 とR4 は、1〜4炭素原子をもつアルキル基であり、そしてX- は、クロリド及びブロミド・アニオンである。}により表される、第4アンモニウム塩;及び
(b)以下の分子構造:
【化19】
{式中、nは、7〜12の整数であり、そしてX- は、アニオン基である。}により表されるピリジニウム塩;
から成る群から選ばれ、そしてこれにより、上記界面活性剤が、ヘモグロビン濃度の測定のために、赤血球を溶血し、そしてヘモグロビンを放出するために、かつ、白血球カウントの測定のために、白血球の核を保存するために十分な量にある、請求項1に記載のシアニド不含溶解試薬組成物。
【請求項8】
前記界面活性剤が、約4g/L〜約 150g/Lの範囲にある濃度をもつ第4アンモニウム塩を含む、請求項7に記載の溶解試薬組成物。
【請求項9】
前記界面活性剤が、約2g/L〜約 130g/Lの範囲にある濃度をもつピリジニウム塩を含む、請求項7に記載の溶解試薬組成物。
【請求項10】
前記有機リガンドが、約1g/L〜約30g/Lの範囲内の濃度をもつ、請求項7に記載の溶解試薬組成物。
【請求項11】
(I)前記界面活性剤が、以下の分子構造:
【化20】
{式中、R1 は、10〜18炭素原子をもつアルキル、アルケニル又はアルキニル基であり;R2 ,R3 とR4 は、1〜4炭素原子をもつアルキル基であり、そしてX- は、クロリド及びブロミド・アニオンである。}により表される、第4アンモニウム塩;であり、これによりその界面活性剤が、ヘモグロビン濃度の測定のために、赤血球を溶血し、そしてヘモグロビンを放出するために、かつ、白血球の分別分析のために、白血球サブ集団の核を保存するために、十分な量にあり;そして
(II)ヘモグロビンと安定性色素原を形成するために十分な量における有機リガンドが、以下の:
(a)トリアゾール及びその誘導体
(b)メラミン
【化21】
(c)以下のオキソ酸のアルカリ金属塩:
【化22】
{式中、Mはアルカリ金属カチオンである。}
(d)2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール
【化23】
(e)トリアジン及びその誘導体
【化24】
{式中、R1 ,R2 とR3 は、−H,−OH,−SH,−COOH及びトリアジンの複素環誘導体である。};
(f)ウラゾール
【化25】
(g)DL−ピペコリン酸
【化26】
(h)イソニコチンアミド
【化27】
(i)ピラジン及びその誘導体
【化28】
{式中、R1 ,R2 ,R3 及びR4 は、−H,−CN,−OH,−SH,−COOH、又は−CONH2 である。}
から成る群から選ばれ、そしてこれにより、その溶解試薬組成物のpHが2〜10の範囲にある、請求項7に記載のシアニド不含溶解試薬組成物。
【請求項12】
前記第4アンモニウム塩が、約4g/L〜約50g/Lの範囲にある濃度をもつ、請求項11に記載の溶解試薬組成物。
【請求項13】
前記有機リガンドが、約1g/L〜約30g/Lの範囲内の濃度をもつ、請求項11に記載の溶解試薬組成物。
【請求項14】
請求項1に記載のシアニド不含溶解試薬組成物を使用した血液サンプルの全ヘモグロビン濃度の計測方法であって:
(a)血液サンプルを血液希釈剤で希釈し;
(b)上記希釈された血液サンプルを、請求項1に記載のシアニド−不含溶解試薬組成物と混合して、赤血球を溶解し、そして、安定性ヘモグロビン色素原を形成し;
(c)所定の波長における上記形成されたヘモグロビン色素原の吸光度を計測し;
(d)上記ヘモグロビン色素原の計測された吸光度から、上記血液サンプルの全ヘモグロビン濃度を測定し;そして
(e)上記血液サンプルの全ヘモグロビン濃度を報告する、
ことを含む、前記方法。
【請求項15】
前記血液サンプルの吸光度が、約 510nm〜約 560nmの間で計測される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記溶解試薬組成物中の界面活性剤が、
(a)以下の分子構造式:
【化29】
{式中、R1 は、10〜18炭素原子をもつアルキル、アルケニル又はアルキニル基であり;R2 ,R3 とR4 は、1〜4炭素原子をもつアルキル基であり、そしてX- は、クロリド及びブロミド・アニオンである。}により表される、第4アンモニウム塩;及び
(b)以下の分子構造:
【化30】
{式中、nは、7〜12の整数であり、そしてX- は、アニオン基である。}により表されるピリジニウム塩;
から成る群から選ばれ、そしてこれにより、上記界面活性剤が、ヘモグロビン濃度の測定のために、赤血球を溶血し、そしてヘモグロビンを放出するために、かつ、白血球カウントの測定のために、白血球の核を保存するために十分な量にあり;
そしてさらに、以下の工程:
DCインピーダンス計測を使用した、自動化血液アナライザー内で白血球の数を計数し;そして
上記血液サンプルについて白血球の数を報告する、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
(I)前記界面活性剤が、以下の分子構造:
【化31】
{式中、R1 は、10〜18炭素原子をもつアルキル、アルケニル又はアルキニル基であり;R2 ,R3 とR4 は、1〜4炭素原子をもつアルキル基であり、そしてX- は、クロリド及びブロミド・アニオンである。}により表される、第4アンモニウム塩;であり、これによりその界面活性剤が、ヘモグロビン濃度の測定のために、赤血球を溶血し、そしてヘモグロビンを放出するために、かつ、白血球の分別分析のために、白血球サブ集団の核を保存するために、十分な量にあり;そして
(II)ヘモグロビンと安定性色素原を形成するために十分な量における有機リガンドが、以下の:
(a)トリアゾール及びその誘導体
(b)メラミン
【化32】
(c)以下のオキソ酸のアルカリ金属塩:
【化33】
{式中、Mはアルカリ金属カチオンである。}
(d)2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール
【化34】
(e)トリアジン及びその誘導体
【化35】
{式中、R1 ,R2 とR3 は、−H,−OH,−SH,−COOH及びトリアジンの複素環誘導体である。};
(f)ウラゾール
【化36】
(g)DL−ピペコリン酸
【化37】
(h)イソニコチンアミド
【化38】
(i)ピラジン及びその誘導体
【化39】
{式中、R1 ,R2 ,R3 及びR4 は、−H,−CN,−OH,−SH,−COOH、又は−CONH2 である。}
から成る群から選ばれ、そしてこれにより、その溶解試薬組成物のpHが2〜10の範囲にあり;
そしてさらに、以下の工程:
DCインピーダンス計測を使用した自動化血液アナライザー内で白血球の数を計数し;
集団分布ヒストグラムに従って、白血球サブ集団を分別し;そして
白血球の数と白血球サブ集団を報告する、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
(I)以下の:
(a)トリアゾール及びその誘導体
(b)テトラゾール及びその誘導体
(c)以下のオキソ酸のアルカリ金属塩:
【化40】
{式中、Mはアルカリ金属カチオンである。}
(d)メラミン
【化41】
(e)アニリン−2−スルホン酸
【化42】
(f)キナルジン酸
【化43】
(g)2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール
【化44】
(h)トリアジン及びその誘導体
【化45】
{式中、R1 ,R2 とR3 は、−H,−OH,−SH,−COOH及びトリアジンの複素環誘導体である。};
(i)ウラゾール
【化46】
(j)DL−ピペコリン酸
【化47】
(k)イソニコチンアミド
【化48】
(l)アントラニロニトリル
【化49】
(m)6−アザ−2−チオチミン
【化50】
(n)アデニン
【化51】
(o)3−(2−チエニル)アクリル酸
【化52】
(p)安息香酸、及び安息香酸のアルカリ金属及びアンモニウム塩
【化53】
{式中、Rは、−H,NH4 + 及びアルカリ金属カチオンである。};
(q)ピラジン及びその誘導体
【化54】
{式中、R1 ,R2 ,R3 及びR4 は、−H,−CN,−OH,−SH,−COOH、又は−CONH2 である。}
から成る群から選ばれた、ヘモグロビンと安定性色素原を形成し、かつ、白血球の核を保存するために十分な量における有機リガンド;及び
(II)その重量オスモル濃度を約 250〜400mOsm に調整するための塩(単複)、
の水性溶液を含む、ヘモグロビン計測及び白血球計数のために有用な血液希釈剤。
【請求項19】
前記有機リガンドが、約 0.5g/L〜約20g/Lの範囲内の濃度をもつ、請求項18に記載の希釈剤。
【請求項20】
血液サンプルの全ヘモグロビン濃度を計測するために血液を分析する方法であって:
(a)血液サンプルを、請求項18に記載の血液希釈剤で希釈し;
(b)上記希釈された血液サンプルを、溶解試薬と混合して、赤血球を溶解し、そして、安定性ヘモグロビン色素原を形成し;
(c)所定の波長における上記形成されたヘモグロビン色素原の吸光度を計測し;
(d)上記ヘモグロビン色素原の計測された吸光度から、上記血液サンプルの全ヘモグロビン濃度を測定し;そして
(e)上記血液サンプルの全ヘモグロビン濃度を報告する、
ことを含む、前記方法。
【請求項21】
血液サンプル中の白血球の数を測定するための血液の分析方法であって:
(a)血液サンプルを請求項18に記載の血液希釈剤で希釈し;
(b)上記希釈された血液サンプルを、溶解試薬と混合して、赤血球を溶解し、そして、白血球の核容量を保存し;
(c)DCインピーダンス計測を使用して自動化血液アナライザー内で上記白血球を計数し;そして
(d)上記血液サンプル中の白血球の数を報告する、
ことを含む、前記方法。
【請求項22】
ヘモグロビン計測及び白血球サブ集団の示差的計数のための方法であって:
(1)(I)以下の:
(a)トリアゾール及びその誘導体
(b)メラミン
【化55】
(c)2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール
【化56】
(d)トリアジン及びその誘導体
【化57】
{式中、R1 ,R2 とR3 は、−H,−OH,−SH,−COOH及びトリアジンの複素環誘導体である。};
(e)DL−ピペコリン酸
【化58】
(f)イソニコチンアミド
【化59】
(g)ピラジン及びその誘導体
【化60】
{式中、R1 ,R2 ,R3 及びR4 は、−H,−CN,−OH,−SH,−COOH、又は−CONH2 である。}
から成る群から選ばれた、ヘモグロビンと安定性色素原を形成するために十分な量における有機リガンド;及び
(II)上記希釈剤の重量オスモル濃度を 250〜400mOsm 内に調整するための塩(単複)、
の水性溶液を含む血液希釈剤組成物で、血液サンプルを希釈し;
(2)上記事前希釈された血液サンプルを溶解試薬と混合して、赤血球を溶解させ、かつ、安定性ヘモグロビン色素原を形成し、そして上記白血球サブ集団の核容量を保存し;
(3)DCインピーダンス計測を使用して自動化血液アナライザー上で白血球を計数し、そして形成されたヘモグロビン色素原のもの所定の波長において上記サンプル混合物の吸光度を計測し;
(4)上記の計測された吸光度から上記サンプルの全ヘモグロビン濃度を計算し;
(5)上記集団分布ヒストグラムに従って上記白血球サブ集団を分別し;そして
(6)上記白血球の数及び白血球サブ集団の数を報告する、
を含む、前記方法。
【請求項23】
前記白血球が、リンパ球、単球、及び顆粒球を含む3つのサブ集団に分別される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記有機リガンドが、約 0.5g/L〜約20g/Lの範囲内の濃度をもつ、請求項22に記載の方法。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図1b】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【公開番号】特開2008−32750(P2008−32750A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272306(P2007−272306)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【分割の表示】特願平10−534457の分割
【原出願日】平成10年1月13日(1998.1.13)
【出願人】(504431234)コールター インターナショナル コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【分割の表示】特願平10−534457の分割
【原出願日】平成10年1月13日(1998.1.13)
【出願人】(504431234)コールター インターナショナル コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]