説明

ヘリカルアンテナ及び無線機

【課題】螺旋状に巻かれた導体をカバー内部で容易に固定できる構造のヘリカルアンテナ及びヘリカルアンテナを用いた無線機を提供する。
【解決手段】
螺旋状に巻かれた導体1と、給電コネクタ3と、導体1に被せるカバー2と、から構成されているヘリカルアンテナにおいて、螺旋状の導体1の先端部とカバー2との間に不織布15を配置する。不織布15の弾性により、導体1をカバー2の内壁に押しつけて、導体1とカバー2を固定する。給電部2に支持部4を配置し、支持部4をカバーの開放端に嵌合して固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機等に使用されるヘリカルアンテナ及び無線機に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘリカルアンテナの放射特性は、波長に対する導体1巻きの半径(ヘリカル半径)、線間ピッチ等によって定まる。
例えば、励振モードは導体1巻きの長さが波長より十分小さい場合はノーマルモードとなり、導体1巻きの長さが波長と同じ程度であれば螺旋状の軸方向に最大放射が得られる軸モードとなる。また、線間ピッチを変えると共振特性が変化する。ヘリカルアンテナは、ヘリカル半径、線間ピッチ、その他巻き数等の諸定数から、所望の特性を得られるように設計されている。
【0003】
アンテナの特性を安定させるためには、これらの諸定数は固定されていなければならない。そのためアンテナ素子を保護するための様々な工夫が試みられている。
【0004】
電話機や携帯型無線機などに使われるヘリカルアンテナは、図4(a)に示すヘリカルアンテナ40のように、螺旋状に巻かれた導体41に柔軟性のある合成樹脂等(例えばエストラマー)のカバー42を被せてあるものがある。
【0005】
カバー42は給電コネクタ43のカバー44と接着剤等で固定されている。ヘリカルアンテナ40は、カバー42と導体41の間に隙間(0.1〜0.3mm)があり、ヘリカルアンテナ40が外部からの振動や衝撃を受けると、導体41はカバー42の内部で動いてしまう。
【0006】
導体1が動いてしまうと、導体1のヘリカル半径や線間ピッチに変動が生じてしまう。ヘリカルアンテナ40は、ヘリカル半径やピッチに変動が生じてしまうと電圧定在波比が変動してしまい、アンテナとしての特性が安定しなくなる。
また振動や衝撃でカバー42と導体41が衝突すると、耳障りな異音が発生してしまい、製品としての品位が落ちてしまう。
【0007】
このため、このような、電話機や携帯型無線機などに使われるヘリカルアンテナでは、図4(b)に示すように、接着剤を使用してカバー42と導体41とを固定している。
【0008】
しかし、カバー42と導体41とを接着すると、導体41の接着剤が付着した部分は、接着剤の凝固によって必要以上に動きを制約されてしまい、アンテナの屈曲性能が落ちてしまう。また、アンテナの弾性が落ちてしまう。更に、組立工程において、各種接着剤を不要な場所に付着させないように注意する必要があるため、作業性能が悪くなる。
【0009】
更に、導体41をカバー42の内部に組み込むと、カバー42の内部は密閉されてしまう。このため、溶剤が入っていないタイプの接着剤を使用する必要があり、一般には、2液性のエポキシ型接着剤が使用されている。例えば、しかし、2液の混合は、組立工程で行われるため混合比にバラツキがでてしまい、その結果、接着強度のバラツキがでる。また、混ぜ合わせた瞬間から効果が出始めるため接着剤自体の管理が困難である。
【0010】
このように、接着剤を用いた固定方法では、螺旋状に巻かれた導体41をカバー42に固定する作業が困難である。また、固定されたアンテナの性能がばらつくおそれがあった。さらに、ヘリカルアンテナからカバーを取り外すことが困難であり、故障時等に対応が困難であった。
【0011】
これらの問題に鑑みて、カバーの内側壁の形状を凹凸にして、凸部で、螺旋状に巻かれた導体を抑えて固定しているヘリカルアンテナが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−34709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に開示されるヘリカルアンテナは、カバーの加工、特に、裏面に備えられている凸部の厚みの調整が難しく、製造が困難である。さらに、凸部の高さや形状のばらつきにより、アンテナの性能がばらついたり、ガタが発生するおそれがあった。さらに、ヘリカルアンテナからカバーを取り外すことが難しく、故障時等に対応が困難であった。
【0014】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、螺旋状に巻かれた導体をカバー内部で容易に固定できる構造のヘリカルアンテナを提供することを目的とする。
また、本発明は、カバーが容易に脱着が可能な構造のヘリカルアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明のヘリカルアンテナは、螺旋状に巻かれた導体と、前記導体に被せられるカバーと、前記導体と前記カバーとの隙間に配置され、前記導体の端部に固定された第1の部分と、前記導体には固定されず、前記導体の長手方向に伸びる第2の部分とを有する弾性部材と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の無線機は、螺旋状に巻かれた導体と、前記導体に被せられるカバーと、前記導体と前記カバーとの隙間に配置され、前記導体の端部に固定された第1の部分と、前記導体には固定されず、前記導体の長手方向に伸びる第2の部分とを有する弾性部材と、を有するヘリカルアンテナを用いた。
【発明の効果】
【0017】
このような構成を採用したことにより、弾性部材によりカバーと導体との間がうめられることにより、導体がカバー内部で容易に固定される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るヘリカルアンテナを示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るヘリカルアンテナを示す図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るヘリカルアンテナを示す図である。
【図4】従来のヘリカルアンテナを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態に係るヘリカルアンテナを図面を参照して説明する。
【0020】
図1(a)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るヘリカルアンテナ10は、螺旋状に巻かれた導体1と、カバー2と、給電コネクタ3と、支持部4と、リボン状の不織布15と、から構成されている。
【0021】
螺旋状に巻かれた導体1の一端部には給電コネクタ3が接続されている。給電コネクタ3は導体1に電力を供給する。カバー2は導体1を保護するために導体1全体を覆うように被せられている。給電コネクタ3には支持部4が形成されている。支持部4は、カバー2を導体1に被せた際に、カバー2の基部内面と嵌合して、カバー2内部を密閉する。
【0022】
不織布15は、導体1の先端部とカバー2の内壁との間隙に配置されており、弾力性を有し、カバー2の内壁と導体1とを押圧することにより、摩擦力により、導体1の先端部をカバー2に固定する。不織布15は、「カバー2の内径と螺旋状の導体1の外径の差」より厚く、導体1をカバー2の内壁に押しつけて導体1を固定する。
【0023】
不織布15の一端は、導体1の先端に両面テープなどの接着剤により固定されている。これは、導体1をカバー2内に押し込む際に、不織布15がずれないようにするためである。不織布15の長さは、カバー2内部で導体1の先端部分を押さえておくのに十分な長さであればよく、例えば、螺旋の5 ピッチ分程度の長さがあればよい。
【0024】
このような構成において、カバー2 先端部の内部は図1(a)に示すように、不織布15が導体1とカバー2の内側壁を押圧力により押さえつけている状態にあり、所謂ガタが防止されている。不織布15には弾力性があるため導体1を変形させるほど押しつけるようなことはない。このため導体1が描く螺旋の半径や線間ピッチが設計で予定する値が大きくずれることがなく、アンテナの特性に影響はない。
また、不織布15の押圧力により、カバー2と導体1との摩擦力、カバー2と不織布15及び不織布15と導体1との摩擦力により、カバー2は導体1から容易に抜けないようになっている。更に、不織布15は柔らかい素材であるためアンテナ自身の屈曲性能にも影響を与えない。
【0025】
ヘリカルアンテナ10が、外部からの衝撃を受けると、不織布15はクッションとして働き、導体1の螺旋の形状を確保したままカバー2内部で導体1を押さえつつ衝撃を緩和する。そのためアンテナの特性は安定している。更に、導体1がカバー2内壁に衝突することによる異音も発生しない。
【0026】
このヘリカルアンテナ10の組立方法を図を参照して説明する。
図1(b)に示すように、不織布15の一端部を導体1の先端部に両面テープのような粘着剤で装着する。不織布15の一端部以外の部分は接着剤等を使用せず、導体1の螺旋の外側に沿うような状態にしておく。そして、図1(c)に示すように、この状態を保ったままで螺旋状に巻かれた導体1をカバー2に挿入する。不織布15は粘着剤により導体1の先端部に引っ張られる状態でカバー2の内部に収まる。
【0027】
すると、図1(a)に示すように、カバー2と螺旋状に巻かれた導体1との間に、不織布15が挟まれた状態となる。不織布15は、カバー2と導体1に挟まれて、不織布15とカバー2と導体1とはそれぞれ互いに抑え合う状態になり、導体1はカバー2の内部で固定され、カバー2は、容易に外れないようになる。また、支持部4は、カバー2の基部内面と嵌合し、カバー2の内部を密閉すると共に導体1の基部を固定する。
なお、カバー2は、接着剤などを使用せずに、押圧力により導体1に装着されているため、支持部4(導体1の基部)をおさえた状態でカバー2を引き抜くことにより、カバー2の取り外しは可能である。
【0028】
このようにして、カバー2を螺旋状に巻かれた導体1に、不織布15によって固定することできる。不織布15の押圧による固定であるため、導体1の線間ピッチの変動等を避けることができ、電圧定在波比は安定し、その結果アンテナとしての性能が安定する。
【0029】
また、外部からの振動や衝撃により螺旋状に巻かれた導体1がカバー2の壁面に衝突することによる異音も無くなる。
更に、粘着剤は導体1の先端部の一部分で使っているのみであり、また、導体1と不織布15とは、お互いの動きを抑制することはない。このためヘリカルアンテナ10自体の屈曲性には殆ど影響が出ない。
【0030】
さらに、故障などにより、カバー2を導体1から取り外す必要が生じた場合、支持部4(導体1の基部)をおさえてカバー2を引き抜き抜くことができ、簡単に修正することができる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、螺旋状に巻かれた導体1をカバー2内部で容易に固定して、動作特性の安定した、更に品質の高いヘリカルアンテナを実現できる。
【0032】
尚、本発明を実施するにあたっては、上記実施の形態に限られるものではない。
【0033】
不織布15は一枚に限らず、複数枚使用してもかまわないし、筒状にするなど形状を変えてもかまわない。また、同様の効果を得られる素材であればそれを代用してもかまわない。例えば樹脂シート、ゴムシートなどの弾性を有する素材でも同様の効果を得られる。さらに、不織布15の一端部を含む複数箇所を導体1に固定してもよい。
【0034】
(第2の実施の形態)
図2(a)に示すように、不織布15の代わりに熱収縮チューブ25を使用することも可能である。
【0035】
図2(a)に示すヘリカルアンテナ20は、螺旋状に巻かれた導体1と、カバー2と、給電コネクタ3と、熱収縮チューブ25と、支持部4とで構成されている。
【0036】
熱収縮チューブ25のサイズは、収縮する前の状態で、その内径が、螺旋状に巻かれた導体1の外径よりやや大きめのサイズを有する。また、熱収縮チューブ25の厚みは、収縮した状態で、カバー2と導体1の隙間を埋めるのに適した厚さ、ほぼ[{熱収縮チューブ25の厚さ=(カバー2の内径− 螺旋状に巻かれた導体1の外径)/2}±α2]となるように調整されている。
【0037】
アンテナを組み立てる際には、熱収縮チューブ25を、図2(b)に示すように、導体1の先端部に装着する。続いて、熱収縮チューブ25を熱により収縮させる。続いて、図2(c)に示すように、熱収縮チューブ25を装着した導体1にカバー2を被せる。
【0038】
すると、図2(a)に示すように、熱収縮チューブ25は、導体1とカバー2の隙間を埋め、導体1をカバー2内部でガタを防止して固定する。
【0039】
このように、熱収縮チューブ25を使用することによっても、製造が容易で動作特性が安定し、更に、品質の高いヘリカルアンテナを実現できる。
【0040】
(第3の実施形態)
図3(a)に示すヘリカルアンテナ30は、螺旋状に巻かれた導体1と、カバー2と、給電コネクタ3と、クッション材35と、支持部4とで構成されている。
【0041】
クッション材35は図3(b)に示すように、導体1が形成する螺旋の内部に埋め込まれている。
クッション材35は、導体1のヘリカル半径や線間ピッチに影響を与えない程度の柔らかさの素材である。
クッション材35のサイズと柔軟度は、図3(c)のように導体1に組み込んだ状態でクッション材35のはみ出している部分がカバー2と導体1の隙間を埋め、カバー2の内壁を押圧する程度[{(カバー2の内径−導体1が描く螺旋の外径)/2}+α3]に調整しておく。
ヘリカルアンテナ30は、図3(a)に示すように、このクッション材35の導体1からはみ出した部分でカバー2と導体1の隙間を埋められていて、ガタを防止して、導体1の位置を固定する等、前述の不織布15や熱収縮チューブ25を使用した場合と同様の効果を得られる。
【0042】
以上の実施の形態では、螺旋状に巻かれた導体1の先端部に弾性部材を配置した。これにより、カバー2の先端部は導体1の先端部に固定される。一方、カバー2の基部は、支持部4により導体1の基部に固定される。従って、弾性部材を一部にのみ配置しているにもかかわらず、カバー2全体を導体1に固定することができる。
【0043】
なお、この発明は上記実施の形態に限定されない。例えば、上記実施の形態では、導体1が描く螺旋の直径が一定の例を示したが、導体1が描く螺旋の直径は変化させてもよい。例えば、螺旋の直径を先細のテーパー状としてもよい。
また、弾性部材はカバー2の内面を押圧する必要はなく、カバー2内の空隙をうめて、導体1の位置を固定することにより、そのがたつきや振動を押さえる程度でもよい。
【0044】
以上のように本発明によって、螺旋状に巻かれた導体をカバー内部で容易に固定でき、動作特性が安定していて、且つ、品質のよいヘリカルアンテナを提供することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 導体
2 カバー
3 給電コネクタ
4 支持部
15 不織布
25 熱収縮チューブ
35 クッション材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状に巻かれた導体と、
前記導体に被せられるカバーと、
前記導体と前記カバーとの隙間に配置され、前記導体の端部に固定された第1の部分と、
前記導体には固定されず、前記導体の長手方向に伸びる第2の部分とを有する弾性部材と、
を備えることを特徴とするヘリカルアンテナ。
【請求項2】
螺旋状に巻かれた導体と、
前記導体に被せられるカバーと、
前記導体と前記カバーとの隙間に配置され、前記導体の端部に固定された第1の部分と、
前記導体には固定されず、前記導体の長手方向に伸びる第2の部分とを有する弾性部材と、
を有するヘリカルアンテナを用いた、無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−24273(P2011−24273A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247643(P2010−247643)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【分割の表示】特願2005−300655(P2005−300655)の分割
【原出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】