ヘリコバクター属の微生物由来の核酸を特異的に増幅するためのプライマーセット、前記微生物を検知および/または分類するための方法
【課題】ヘリコバクター属の微生物由来の核酸を特異的に増幅するためのプライマーセット、前記微生物を検知および/または分類するための方法を提供する。
【解決手段】ヘリコバクター属の微生物由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットからなる。LAMP増幅用核酸プライマーセットはFIP、F3、BIPおよびB3を具備し、これらのプライマーはF1、F2、F3、B1c、B2cおよびB3c領域をそれぞれ複数の特定の配列からなるポリヌクレオチドを含む。
【解決手段】ヘリコバクター属の微生物由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットからなる。LAMP増幅用核酸プライマーセットはFIP、F3、BIPおよびB3を具備し、これらのプライマーはF1、F2、F3、B1c、B2cおよびB3c領域をそれぞれ複数の特定の配列からなるポリヌクレオチドを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリコバクター属に分類される微生物の検知および/または遺伝子型分類と、それに基づく属レベル以下での生物分類するための核酸プライマー配列およびそれを用いた方法、それに使用されるプライマーセット、それを使用する増幅方法、およびそれを具備するアッセイキットに関する。
【背景技術】
【0002】
カンピロバクター目(Order Campylobacterales)に分類される微生物は、グラム陰性螺旋菌であり、大部分のものは微好気性から嫌気性を示す。その代表例としては、アルコバクター(Arcobacter)属、カンピロバクター(Campylobacter)属などを含むカンピロバクター科(Family Campylobacteraceae)や、フレキシスピラ(Flexispira)属、ヘリコバクター(Helicobacter)属、ウォリネラ(Wolinella)属などを含むヘリコバクター科(Family Helicobacteraceae)が挙げられる。また、近年、微好気性好熱水素細菌として注目を浴びているヒドロゲニモナス・テロモフィラ(Hydrogenimonas. thermophila)もヒドロゲニモナス科(Family Hydrogenimonaceae)として、ヘリコバクター属の一員として分類されている(参考URL;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?mode=Undef&id=29547&lvl=3&keep=1&srchmode=1&unlock)。
【0003】
これらの細菌は、培養が難しく、また一般的な生化学検査では検出しにくい。そのようなことが災いし、20世紀初頭の発見以来、幾多の分類学的改変を経ており、その分類については極めて混乱した状況が続いてきた。しかしながら近年の分子生物学の進歩に伴い、遺伝子配列からのアプローチにより上記ヘリコバクター属に属する細菌が他のプロテオバクテリア(Proteobacteria)の中で他の細菌とは遺伝的に異なる1集団を形成するとともに、カンピロバクター科、ヘリコバクター科などに更に細かなグループとして分類できる事が明らかとなってきた。
【0004】
これらカンピロバクター目に分類される微生物は、環境中に広く分布していることが知られており、それらは、動物界、植物界をはじめ幅広い範囲の生物界から検出される。特に、アルコバクター(Arcobacter)属、カンピロバクター(Campylobacter)属、ヘリコバクター(Helicobacter)属等については、ヒトを含む各種動物に対する様々な病原性が明らかになってきており、注目を集めている。中でも、慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のみならず、胃癌やMALTリンパ腫などの発生につながることが報告されているヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)の感染は有名である。
【0005】
一方、マウスなどを用いた動物実験は、生命科学研究には必要不可欠である。再現性の高い動物実験を行うためには、病原微生物等を対象とした定期的な微生物モニタリングが必須であり、それにより品質管理された実験動物が提供される。そのような状況において、マウスなどの実験動物では、最も重要な病原微生物の1つとしてヘリコバクター(Helicobacter)属菌を対象とした微生物モニタリングが定期的に実施されている。更に近年では、それまで実験動物モニタリングの対象であったヘリコバクター・ヘパティカス(H.hepaticus)や、ヘリコバクター・ビリス(H.bilis)が、ヒトにおいて検出された例が報告されている。また、それらの微生物とヒトの疾病との関連性についての指摘も数多くなされてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ヘリコバクター属の微生物由来の核酸を特異的に増幅するためのプライマーセット、前記微生物を検知および/または分類するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための手段は、
(1)ヘリコバクター属の微生物由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットであって、前記LAMP増幅用核酸プライマーセットはFIPプライマー、F3プライマー、BIPプライマーおよびB3プライマーを具備し、これらのプライマーはF1、F2、F3、B1c、B2cおよびB3c領域を次の配列とすることを特徴とするプライマーセット:
当該F1領域は配列番号1またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含み、
当該F2領域は配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含み、
当該F3領域は配列番号7またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含み、
当該B1c領域は配列番号8またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含み、
当該B2c領域は配列番号9またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含み、および
当該B3c領域は配列番号10またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含む;
(2)ヘリコバクター属の微生物を検知および/または分類する方法であって、
試料に含まれる核酸を(1)に記載のプライマーセットを用いてLAMP増幅することと、
前記LAMP増幅により生じた反応産物と、
配列番号31、32、33、34、35、36および37並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
配列番号38、39、40、41、42、43、44および45並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
配列番号46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65および66並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
配列番号67、68、69、70、71、72および73並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
配列番号74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84および85並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、および/または
配列番号86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118および119並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と
を反応することと、
前記反応の結果から、試料に存在するヘリコバクター属の微生物を検知および/または分類することと
を具備する方法;
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヘリコバクター属の微生物由来の核酸を特異的に増幅するためのプライマーセット、前記微生物を検知および/または分類するための方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
1.プライマー
本発明の1態様に従うと、ヘリコバクター属の微生物由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットが提供される。
【0010】
本発明で用いる増幅法「LAMP法」は、等温遺伝子増幅法の1種で、2種若しくは4領域または4種若しくは6領域のプライマーを用いる点がPCR法とは異なっている。LAMP法は、PCR法に比べ増幅効率が優れていると共に、サンプル中の不純物の影響も受けにくいと報告されている。そのため、簡便なサンプルの前処理で微量なヘリコバクター属に分類される微生物を検知することが可能である。
【0011】
ここで、LAMP法におけるプライマー設計および得られる増幅産物について、図1および図2を参照して説明する。図1は、検知しようとする二本鎖DNAを示している。合計4種類のプライマー配列(FIPプライマー、F3プライマー、BIPプライマー、B3プライマー)を設定する。FIPプライマーおよびBIPプライマーは、各々二つの領域(FIPはF1cとF2、BIPはB2とB1c)を含んでいる。F3プライマーはF3領域を含んでいる。B3プライマーはB3領域を含んでいる。ここでF3、F2、F1、B1c、B2c、B3c領域は、前記二本鎖DNAのうちの一本鎖DNAの5’→3’方向にかけてこの順で設定された領域である。またB3、B2、B1、F1c、F2c、F3c領域は、その相補鎖の一本鎖DNAの5’→3’方向にかけてこの順で設定された領域である。このときB3とB3c、B2とB2c、B1とB1c、F1cとF1、F2cとF2、F3cとF3はそれぞれ相補鎖である。
【0012】
これらの領域から構成される4種類のプライマー、即ち、FIPプライマー、F3プライマー、BIPプライマー、B3プライマーを用いてLAMP増幅を行なうと、図1の二本鎖DNAの夫々の鎖から、図2に示すようなダンベル型のステム・アンド・ループ構造の増幅産物が得られる。その増幅機構については説明を省略するが、必要であれば、例えば特開2002−186781号公報を参照されたい。また、この4種のプライマーのほかにループプライマーを併せて用いてもよい。
【0013】
本発明では、一本鎖のループ部分にターゲット配列が位置するようにプライマーを設計する。即ち、図3に示すように、本発明においては、プローブにハイブリダイゼーションさせるべきターゲット配列(図3ではFPc、FP、BP、BPcの何れか)が、領域F1とF2との間(この領域はF2領域を含んでもよい)、領域F2cとF1cとの間(この領域はF2c領域を含んでもよい)、領域B1とB2との間(この領域はB2領域を含んでもよい)、および/または領域B2cとB1cとの間(この領域はB2c領域を含んでもよい)の何れかに対応して位置するように、6つのプライマー領域を設定する。ターゲット配列は、上記それぞれの領域間に形成される一本鎖のループ部分のいずれの部位に位置するように設計されてよい。ここで、プライマー領域F1とF2との間のループ部分には、F2領域自体も含まれてよい。こうして設定された6つのプライマー領域に基づいて4種類のプライマーを作製し、これらプライマーを用いてLAMP増幅を行なう。それにより、図4に示すようなLAMP増幅産物の一部が得られる。このLAMP増幅産物中においては、ターゲット配列FPc、FP、BP、BPcが増幅産物のダンベル構造における一本鎖ループの中に位置することとなる。
【0014】
一方、プライマー領域F1cとF1、およびB1cとB1は、もともと相補的な配列を有しているので、相互に自己ハイブリダイゼーションを生じて二本鎖を形成する。このように増幅産物中に含まれるターゲット配列は、図4に示すような一本鎖の状態のものが存在することから、変性操作を行なうことなく、図示のように各ターゲット配列に対して相補的なプローブ核酸(FP、FPc、BP、BPc)との特異的ハイブリダイゼーションにより検知することができる。
【0015】
特異的ハイブリダイゼーションとは、一塩基多型(Single Nucleotide PolymorpHisms:SNPs)または変異が存在する場合、その僅かの違いも検知することが可能であることを意味している。
【0016】
上述したとおり、本発明に従う好ましいプライマーセットの例において、当該LAMP増幅用核酸プライマーセットは、F1、F2、F3、B1c、B2cおよびB3c領域を元に設計される。
【0017】
好ましい領域の例を表1に示す。
【表1】
【0018】
表1の領域が、ヘリコバクター属の微生物のゲノムにおいてどのような位置に対応する配列であるのかを表2に示した。
【表2−1】
【0019】
【表2−2】
【0020】
【表2−3】
【0021】
【表2−4】
【0022】
【表2−5】
【0023】
表2には、ヘリコバクター属の微生物としてヘリコバクター・ヘパティカス(アクセッションNo.L39122)、ヘリコバクター・ビリス・(アクセッションNo.U18766)、ヘリコバクター・タイフォロニウス(アクセッションNo.AF127912)、ヘリコバクター・ピロリ(アクセッションNo.M88157)、ヘリコバクター・コレシスツス(アクセッションNo.U46129)、ヘリコバクター・シナエヂ・(アクセッションNo.M88150)、ヘリコバクター・フェリス(アクセッションNo.M57398)、ヘリコバクター・フレキシスピラ(アクセッションNo.M88138株)、ヘリコバクター・MIT 95−2011(アクセッションNo.U96298)、ヘリコバクター・ムリダルム・(アクセッションNo.M80205)およびヘリコバクター・ロデンチウム(アクセッションNo.U96297)の11株と、比較のためのアルコバクター(アクセッションNo.L14626)、カンピロバクター(アクセッションNo.L04312)、ウォリネラ(アクセッションNo.M88159)を示した。当該プライマーとして選択した領域は、カンピロバクター属において高度に保存された領域である。また、当該プライマーにより増幅される領域は、ヘリコバクター属の微生物を特定するために特徴的な領域である。
【0024】
好ましいプライマーセットにおいて、当該F1領域は配列番号1またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでなってもよい。また、当該F1領域は、配列番号1またはその相補配列で示されるポリヌクレオチドの何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、配列番号120、121およびその相補配列でそれぞれ示されるポリヌクレオチドである。また、配列番号1若しくは配列番号120、121およびその相補配列の何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが、混合ヌクレオチドとして調製されてもよい。または配列番号1、配列番号120、121およびその相補配列の何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが、ユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0025】
ここで、ユニバーサルなヌクレオチドの例は、これらに限定するものではないが、デオキシイノシン(deoxyinosine;dI)や、Gren Research社の3−ニトロピロール(Nitropyrrole)、5-ニトロインドール(Nitroindole)、デオキシリボルラノシル(deoxyribofuranosyl ;dP)、デオキシ-5'-ジメトキシトリチル-D-リボフラノシル(deoxy-5'-dimethoxytrityl-D-ribofuranosyl ;dK)が含まれる。
【0026】
またここで、プライマーの各配列間またはその末端側には、1〜100ヌクレオチド、好ましくは2〜30ヌクレオチド程度の配列(例えば、スペーサーとして使用される配列)が含まれていてもよい。当該プライマーの長さは30〜200ヌクレオチド程度であってよく、好ましくは35〜100ヌクレオチド、更に好ましくは43〜60ヌクレオチドであってよい。
【0027】
好ましいプライマーセットにおいて、当該F2領域は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでなってもよい。このようなF2領域に好ましい各配列は、その何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、配列番号122および123並びにその相補配列でそれぞれ示されるポリヌクレオチドである。また、配列番号2、3、4、5、6、122および123並びにその相補配列の何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0028】
好ましいプライマーセットにおいて、当該F3領域は配列番号7またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでなってもよい。このようなF3領域に好ましい各配列は、その何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、配列番号124およびその相補配列でそれぞれ示されるポリヌクレオチドである。また、配列番号7、124およびその相補配列の何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0029】
好ましいプライマーセットにおいて、当該B1c領域は配列番号8およびその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでなってもよい。このようなB1c領域に好ましい各配列はその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、配列番号125およびその相補配列でそれぞれ示されるポリヌクレオチドである。また、配列番号8、125およびその相補配列の何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0030】
好ましいプライマーセットにおいて、当該B2c領域は配列番号9およびその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでなってもよい。このようなB2c領域に好ましい各配列はその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、配列番号126およびその相補配列で示されるポリヌクレオチドである。また、配列番号9、126およびその相補配列の何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0031】
好ましいプライマーセットにおいて、当該B3c領域は配列番号10およびその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでなってもよい。このようなB3c領域に好ましい各配列はその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、配列番号128およびその相補配列で示されるポリヌクレオチドである。また、配列番号10、128およびその相補配列の何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0032】
上記のような領域を使用したプライマーを用いて、ヘリコバクター属に分類される微生物あるいはその遺伝子を含有する検体試料に対してLAMP法による増幅を行うと、図4で説明したように、ステム・アンド・ループ構造が形成され、一本鎖のループ構造内に含まれるヘリコバクター属に分類される微生物由来のターゲット配列が得られる。
【0033】
本発明は、上記のようなプライマーセットをヘリコバクター属に分類される微生物に対して適用すれば、ヘリコバクター属に特徴的な遺伝子型を反映する核酸が増幅される。得られる増幅産物の存在を検知することにより、ヘリコバクター属の微生物を検知することが可能である。従って、試料におけるヘリコバクター属の微生物の検知は、検出対象である試料について、当該プライマーセットを用いて増幅反応を行えばよい。
【0034】
増幅反応の条件は、それ自身公知の何れかの条件を利用すればよい。また、当該増幅反応を行った結果を基に当該試料はヘリコバクター属の微生物が含まれていると判定すればよい。そのような判定により試料中のヘリコバクター属の微生物を検知することが可能である。
【0035】
例えば、上記増幅反応は、1チューブ当たり1プライマーセットで行ってもよく、あるいは1チューブに各種遺伝子型に対応した複数のプライマーセットを用いて行ってもよい。複数の遺伝子型を特定する必要がある場合は、後者の方法で行う方が効率的である。
【0036】
また、上記増幅反応は、これに限定するものではないが、例えば、表3に示すような組成のバッファー中で行ってよい。
【表3】
【0037】
ここで「試料」とは、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、フェレット、オナガザル、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、アザラシ、ネズミイルカなどの哺乳類、鳥類などの体液、組織、細胞、便、並びに水、湖水、川水、海水および土壌などの環境に存在する何れかの物質であってもよい。また、当該試料は、ヘリコバクター属に分類される微生物あるいはその遺伝子が含まれている可能性の疑われる物質であってよい。そのような物質をそれ自身公知の手段により、核酸の増幅に適した状態に前処理したものであってもよく、何れの前処理もなされなくてもよい。例えば、そのような前処理の例は、変性、濾過、核酸抽出および不純物除去などを含む。
【0038】
また、本発明プライマーセットは、FIPプライマーとF3プライマーとBIPプライマーとB3プライマーを具備するが、そのようなプライマーセットの例は、当該FIPプライマーが、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28および配列番号29並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドからなり、当該F3プライマーは配列番号7またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなり、当該BIPプライマーは、配列番号30またはそれらの相補配列により示されるポリヌクレオチドからなり、当該B3cプライマーは配列番号10またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなってもよい。また、これらのプライマーのいずれか、または全ての配列について、その何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。
【表4】
【0039】
以上のようなプライマーセットを用いて核酸の増幅を行うことにより、簡便、安価、高速に、特異的にヘリコバクター属の微生物を増幅することが可能である。これを利用して、試料に含まれる核酸を、当該プライマーまたはプライマーセットを用いるLAMP増幅反応に供し、増幅反応の結果生じた増幅産物の有無を判定することにより、当該試料にヘリコバクター属の微生物を特異的に検知することが可能である。
【0040】
従来の方法では、特異性を配列検知の際の特異性は、一般的にPCR法で増幅した目的遺伝子産物をDNAチップにより検知している。この場合、PCRにより生成される産物は2本鎖であるため、プローブとハイブリダイゼーション反応させると、相補鎖がプローブに対するコンペティターとなりハイブリ効率が低く検知感度が悪い。そのような方法において、また従来では、ターゲットを1本鎖にするために、相補鎖を分解する、または分離するといった方法も取られている。これらの場合、酵素の使用、磁気ビーズの使用などによる高価な価格となったり、操作が煩雑性になったりする。また、ヘリコバクター属に分類される微生物は、培養が難しく、適切な培養条件を整えたとしても、時間がかかる。このような問題も本発明を用いることにより解決される。
【0041】
これまで、迅速診断法としては特異的な抗体を使って抗原−抗体反応を介して検知する方法や、DNA配列中の特徴的な配列を含む領域をポリメラーゼチェインリアクション(PCR)で増幅し、電気泳動法により検知する方法などが知られていた。しかしながら、前者の方法では近縁株等との区別が難しいことや、感染初期には抗体が検出できないことが知られている。また、後者のPCRを利用する方法は、サーマルサイクラーのような複雑な温度制御装置が必要なことや簡便性に課題があるなどの不利点がある。またPCR法では、万が一誤って相補鎖合成が行われてしまった場合にはその生成物が鋳型となり増幅してしまい、誤った判定をしてしまう可能性がある。実際に、プライマーの末端の1塩基相違のみでは特異的な増幅を制御することは困難である。
【0042】
2.プローブ
本発明は更に、上述のポリペプチドプライマーにより増幅されたヘリコバクター属の微生物に由来する核酸を検知および/または分類するためのプローブおよびプローブセットを提供する。
【0043】
本発明に従うプローブの例は、配列番号31、32、33、34、35、36および37並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1であってもよい。これらのプローブセットにより、ヘリコバクター属に分類される微生物をユニバーサルに検出することが可能である。そのようなユニバーサルプローブの例を表5に示した。
【表5】
【0044】
表5に示すように、ヘリコバクターをユニバーサルに検出可能なプローブの例は、配列番号31、32、33、34、35、36および37並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群のプローブは、当該プローブ群の中の1つが選択されて使用されてもよい。或いは、2種以上のプローブが組み合わされて選択されて使用されてもよく、それぞれの配列からなる全てのプローブが一緒に使用されてもよい。また、これらの配列を構成する何れかの1以上の塩基がミックス塩基に設計されてもよい。ここで、「ミックス塩基」とは、ミックス塩基としたい所望の箇所の塩基を「アデニン」、「チミン」、「シトシン」および「グアニン」に設計したプローブを2以上または全て混合して使用するプローブセットをいう。また、複数種類の塩基に対して対合可能な修飾塩基で置換するように設計されてもよい。
【0045】
また、当該プローブは、所望の種を検出するためのプローブであってもよい。そのようなプローブは、例えば、上述のプライマーにより増幅されたステム・アンド・ループ構造を有するポリヌクレオチドの一本鎖のループ部分の領域に対して結合するように設定されればよい。また、当該プライマーは好ましくは、約10〜60塩基長、約12〜40塩基長などであればよい。
【0046】
例えば、好ましいプローブの例は、図3に示すようなステム・アンド・ループ構造のプライマー領域F1とF2との間(この領域はF2領域を含んでもよい)、プライマー領域F2cとF1cとの間(この領域はF2c領域を含んでもよい)、プライマー領域B1とB2との間(この領域はB2領域を含んでもよい)、および/またはプライマー領域B2cとB1cとの間(この領域はB2c領域を含んでもよい)の何れかの位置に対応するように選択されてよい。この選択は検知しようとする菌種に特異的な配列が適宜選択されるように行えばよい。
【0047】
例えば、ヘリコバクター・ヘパティカス(H. hepaticus)、ヘリコバクター・ムリダルム(H.muridarum)、ヘリコバクター・タイフォロニウス(H.typhlonius)およびヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)を、それぞれ種特異的に検出するためのプローブの例を表6に示す。
【表6】
【0048】
表6に示す通り、ヘリコバクター・ヘパティカスは、例えば、配列番号38またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなるプローブにより検出され、ヘリコバクター・ムリダルムは、例えば、配列番号39またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなるプローブにより検出され、ヘリコバクター・タイフォロニウスは、例えば、配列番号40またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなるプローブにより検出され、ヘリコバクター・ピロリは、例えば、配列番号41、42、43、44および45、並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群により検出されてもよい。
【0049】
更なるプローブの例を表7〜表10に示す。表7−1〜表7−3には第一の領域のプローブ(表中、プローブ領域1)の配列を示す。
【表7−1】
【0050】
【表7−2】
【0051】
【表7−3】
【0052】
表8−1〜8−3には第二の領域のプローブ(表中、プローブ領域2)の配列を示す。
【表8−1】
【0053】
【表8−2】
【0054】
【表8−3】
【0055】
表9−1〜9−4には第三の領域のプローブ(表中、プローブ領域3)の配列を示す。
【表9−1】
【0056】
【表9−2】
【0057】
【表9−3】
【0058】
【表9−4】
【0059】
表10−1〜10−4には第四の領域のプローブ(表中、プローブ領域4)の配列を示す。
【表10−1】
【0060】
【表10−2】
【0061】
【表10−3】
【0062】
【表10−4】
【0063】
また、何れのプローブも、例えば、ヘリコバクター・ピロリの場合などのように、同一種内での配列変異が明らかになっているなどの場合には、同一種内の配列変異に対応するために異なる配列からなるプローブを複数使用してよい。
【0064】
従って、好ましいプローブは、配列番号46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118および119並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群に含まれるプローブであってよい。
【0065】
また、検知したい菌種のためのプローブを所望に応じて表7〜表10から選択し、それらを組み合わせて、プローブセットとして使用してもよい。
【0066】
例えば、プローブセットの例は、これに限定するものではないが、前記プライマーを用いて得られた増幅産物からヘリコバクター・へパティクス、ヘリコバクター・ムリダルム、ヘリコバクター・タイフォロニウスおよびヘリコバクター・ピロリを特異的に検出するためのプローブセットなどを含み、そのようなプローブセットの例は、配列番号38、39、40、41、42、43、44および45並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群を含む。
【0067】
また、更なる好ましいプローブセットは、配列番号46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65および66および/またはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブセット、配列番号67、68、69、70、71、72および73および/またはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブセット、配列番号74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84および85および/またはそれらの相補配列により示されるポリヌクレオチドからなるプローブセット、並びに配列番号86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118および119および/またはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブセットであってよい。
【0068】
これらのプローブセットから2種以上のプローブが選択され組み合わされて使用されてもよく、それぞれの配列からなる全てのプローブが一緒に使用されてもよい。また、これらの配列を構成する何れかの1以上の塩基がミックス塩基に設計されてもよい。また、複数種類の塩基に対して対合可能な修飾塩基で置換するように設計されてもよい。
【0069】
当該プローブは、所望の種を特異的に検出するためのプローブであってもよく、また、幾つかの種を特異的に検出するためのプローブであってもよい。このようなプローブは、例えば、上述のプライマーにより増幅されたステム・アンド・ループ構造を有するポリヌクレオチドの一本鎖のループ部分の領域に対して結合するように設定されればよい。また、当該プライマーは好ましくは、約10〜60塩基長、約12〜40塩基長などであればよい。
【0070】
何れのプローブおよびプローブセットも、上述した増幅産物を所望に応じて検出するために使用されてよい。当該プローブは、固相基体表面に固定化されたものであってもよく、典型的にはDNAチップとして構成されたものが用いられてよく、また他のマイクロアレイを構成するプローブとして用いられてもよい。当該増幅産物を検出するためのプローブは、検知する細菌株の保持する遺伝的多型や変異などに応じて変化させてもよい。
【0071】
上述したプローブは、何れも各表に示した配列の任意の位置の塩基が1つまたは数個置換あるいは欠失あるいは塩基を挿入された配列からなってもよい。
【0072】
また、核酸プローブの構造も特に限定されるものではなく、DNA、RNA、PNA、LNA、メチルホスホネート骨格の核酸、その他の人工核酸鎖を用いることが可能である。また、これらのキメラ核酸でもよい。
【0073】
核酸プローブを固相に固定化する場合は、末端にアミノ基、チオール基、ビオチン、などの官能基を導入してもよく、更に、官能基とヌクレオチドの間にスペーサーを導入してもよい。ここで用いられるスペーサーの種類は特に限定されないが、例えばアルカン骨格、エチレングリコール骨格などを用いてよい。また、一部の塩基がユニバーサルなヌクレオチドに置換されてもよい。本発明使用可能なユニバーサルなヌクレオチドの例は、deoxyinosine(dI)や、Gren Research社の3-Nitropyrrole、5-Nitroindole、deoxyribofuranosyl (dP)、deoxy-5'-dimethoxytrityl-D-ribofuranosyl (dK)などを含む。
【0074】
本発明で使用する検知法は、これらに特に限定されるものではないが、濁度、可視光、蛍光、化学発光、電気化学発光、化学蛍光、蛍光エネルギー転移法、ESRなどの光学的な手法や、電流、電圧、周波数、伝導度、抵抗などの電気的な性質を利用することも可能である。
【0075】
本発明で用いるプローブを固定化するための表面は、特に限定されるものではないが、樹脂ビーズ、磁気ビーズ、金属微粒子、マイクロタイタープート、ガラス基板、シリコン基板、樹脂製基板、電極基板などを用いることができる。
【0076】
本発明で使用する基板材料は、特に限定されるものではない。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素、等の無機絶縁材料を使用できる。また、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。
【0077】
電極材料は特に限定されるものではない。例えば、金、金の合金、銀、プラチナ、水銀、ニッケル、パラジウム、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム、タングステン等の金属単体及びそれらの合金、あるいはグラファイト、グラシーカーボン等の炭素等、またはこれらの酸化物、化合物を用いる事ができる。更に、酸化珪素等の半導体化合物や、CCD、FET、CMOSなど各種半導体デバイスを用いることが可能である。電極は、メッキ、印刷、スパッタ、蒸着などでも作製することができる。蒸着を行う場合は、抵抗加熱法、高周波加熱法、電子ビーム加熱法により電極膜を形成することができる。また、スパッタリングを行う場合は、直流2極スパッタリング、バイアススパッタリング、非対称交流スパッタリング、ゲッタスパッタリング、高周波スパッタリングで電極膜を形成することが可能である。更に、ポリピロール、ポリアニリンなどの電解重合膜や導電性高分子も用いることが可能である。電極を以外の部分を絶縁するための材料は特に限定されるものではないが、フォトポリマー、フォトレジスト材料であることが好ましい。レジスト材料としては、光露光用フォトレジスト、遠紫外用フォトレジスト、X線用フォトレジスト、電子線用フォトレジストが用いられる。光露光用フォトレジストには、主原料が環化ゴム、ポリけい皮酸、ノボラック樹脂があげられる。遠紫外用フォトレジストには、環化ゴム、フェノール樹脂、ポリメチルイソプロペニルケトン(PMIPK),ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が用いられる。また、X線用レジストには、COP、メタルアクリレートほか、薄膜ハンドブック(オーム社)に記載の物質を用いることができる、更に電子線用レジストには、PMMA等上記文献に記載の物質を用いることが可能である。ここで用いるレジストは100Å以上1mm以下であることが望ましい。フォトレジストで電極を被覆し、リソグラフィーを行うことで、面積を一定にすることが可能になる。これにより、核酸プローブの固定化量がそれぞれの電極間で均一になり、再現性に優れた測定を可能にする。従来、レジスト材料は最終的には除去するのが一般的であるが、遺伝子検知用電極ではレジスト材料は除去することなく電極の一部として用いることも可能である。この場合は、用いるレジスト材料に耐水性の高い物質を使用する必要がある。電極上部に形成する絶縁層にはフォトレジスト材料以外でも用いることが可能である。例えば、Si、Ti、Al、Zn、Pb、Cd、W、Mo、Cr、Ta、Ni等の酸化物、窒化物、炭化物、その他合金を用いることも可能である。これらの材料をスパッタ、蒸着あるいはCVD等を用いて薄膜を形成した後、フォトリソグラフィーで電極露出部のパターニングを行い、面積を一定に制御する。電極は1つの素子上に幾つかの電極部を構成し、異なったプローブを固定化することで、一度に数種類の標的に対して検査を行うことができる。また、1つの素子上に幾つかの電極部を構成し、同じプローブを固定化することで、一度に数検体の検査を行うことも可能である。この場合、フォトリソグラフィーを利用して、あらかじめ基板上複数の電極をパターニングしておく。この際、隣同士の電極が接触しないように、絶縁膜で仕切りを付けることは有効である。仕切りの高さは0.1ミクロンから100ミクロン程度が望ましい。
【0078】
本発明が対象とする検体は上述したとおり、特に限定されるものではなく、例えば、血液、血清、白血球、尿、便、精液、唾液、組織、バイオプシー、口腔内粘膜、培養細胞、喀痰等であってもよい。これら検体試料から核酸成分の抽出を行ってよい。
【0079】
抽出方法は特に限定される物ではなく、フェノール−クロロホルム法等の液−液抽出法や担体を用いる固液抽出法を用いることができる。また、市販の核酸抽出方法QIAamp(QIAGEN社製)、(社製)等を利用することも可能である。次に、抽出した核酸成分を鋳型にLAMP増幅を行った後、遺伝子検知用電極とでハイブリダイゼーション反応を行う。反応溶液は、イオン強度0.01〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液中で行う。この溶液中にはハイブリダイゼーション促進剤である硫酸デキストランや、サケ精子DNA、牛胸腺DNA、EDTA、界面活性剤などを添加することが可能である。ここに抽出・増幅した核酸成分を添加の上、核酸プローブとのハイブリダイゼーション反応に供与する。反応中は、撹拌、あるいは振とうなどの操作で反応速度を高めることもできる。反応温度は10℃〜90℃の範囲で、また反応時間は1分以上1晩程度行う。ハイブリダイゼーション反応後の洗浄には、イオン強度0.01〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液を用いる。
【0080】
抽出・増幅したサンプル核酸は、あらかじめFITCやCy3、Cy5、ローダミンなどの蛍光色素やビオチン、ハプテン、オキシダーゼやポスファターゼ等の酵素や、フェロセンやキノン類等の電気化学的に活性な物質で標識するか、あるいは前述した物質で標識したセカンドプローブを用いることで検知が可能になる。
【0081】
電気化学的に活性な核酸結合物質を用いた検知を行う場合は、以下のような手順で検知を行う。基板は洗浄後、電極表面に形成した二本鎖部分に選択的に結合する核酸結合物質を作用させ、電気化学的な測定を行う。ここで用いられる核酸結合物質は特に限定される物ではないが、例えば、ヘキスト33258、アクリジンオレンジ、キナクリン、ドウノマイシン、メタロインターカレーター、ビスアクリジン等のビスインターカレーター、トリスインターカレーター、ポリインターカレーター等を用いることが可能である。更に、これらのインターカレーターを電気化学的に活性な金属錯体、例えば、フェロセン、ビオロゲン等で修飾しておくことも可能である。核酸結合物質の濃度は、その種類によって異なるが、一般的には1ng/ml〜1mg/mlの範囲で使用する。この際、イオン強度0.001〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液を用いる。電極を核酸結合物質と反応させた後、電気化学的な測定を行う。電気化学的な測定は、3電極タイプ、すなわち参照電極、対極、作用極、あるいは2電極タイプ、すなわち対極、作用極で行う。測定では、核酸結合物質が電気化学的に反応する電位以上の電位を印加し、核酸結合物質に由来する反応電流値を測定する。この際、電位は定速で掃引するか、あるいはパルスで印加するか、あるいは、定電位を印加することができる。測定には、ポテンショスタット、デジタルマルチメーター、ファンクションジェネレーター等の装置を用いて電流、電圧を制御する。得られた電流値を基に、検量線から標的遺伝子の濃度を算出する。遺伝子検知用電極を用いた遺伝子検知装置は、遺伝子抽出部、遺伝子反応部、核酸結合物質反応部、電気化学測定部、洗浄部等から構成される。
【0082】
3.アッセイキット
本発明に従うと、ヘリコバクター属の微生物の検知および/または分類するためのアッセイキットが提供されてもよい。そのようなアッセイキットは、上述のプライマーまたはプライマーセットとプローブまたはプローブセットとを含めばよい。当該アッセイキットは、当該プライマーまたはプライマーセットおよびプローブまたはプローブセットに加えて、LAMP増幅に必要なバッファーを含んでもよく、ハイブリダイゼーションに必要なバッファー、並びにそこにおいて当該増幅および/またはハイブリダイゼーションを行うための容器を具備してもよい。
【0083】
4.ヘリコバクター属の分類方法
本発明に従うと、更に、ヘリコバクター属の微生物を検知および/または分類する方法が提供される。当該検知および/または分類する方法は、上記したプライマー、プローブおよび増幅方法を利用することによって、更に、ヘリコバクター属に分類される微生物の検知および属レベルまたは種レベルで遺伝子型分類を行う方法である。
【0084】
そのような方法は、試料に含まれる核酸を上述の何れかのプライマーセットを用いてLAMP増幅する工程と、前記LAMP増幅により生じた増幅産物と上述の何れかのプローブとを反応することと、前記反応の結果から試料に存在するヘリコバクター属の微生物を検知および/または分類することを具備すればよい。
【0085】
また、上述の何れかのプライマーセットを用いて、試料についてLAMP増幅反応を行うことと、当該増幅反応により生じた増幅産物と、上述の何れかのプローブとを反応し、それにより生じるハイブリダイズの有無を検出することにより試料におけるヘリコバクター属の微生物の存在の有無を判定する、および/または試料におけるヘリコバクター属の微生物を分類することを具備する方法であってもよい。
【0086】
また、例えば、そのようなヘリコバクター属に分類される微生物の感染や存在を検知する方法は、
本発明に従うプライマーから任意に選択される少なくとも1つのプライマーを含む複数のプライマーを使用して、LAMP反応により試料について核酸鎖増幅反応を行う工程と、
前記増幅反応後に増幅産物の有無を検知する工程と、
を具備すればよい。当該試料は、予め核酸を抽出する工程に供されてもよい。
【0087】
ここにおける「LAMP増幅」とは、LAMP反応により増幅対象の核酸を増幅することをいう。当該LAMP増幅は、上述の何れかのプライマーを用いて増幅対象の核酸を増幅可能なそれ自身公知の何れの条件で行ってよい。
【0088】
当該増幅産物と当該プローブとの反応は、上述の何れかのプローブを用いてハイブリダイズが可能なそれ自身公知の何れかの条件で行ってよい。
【0089】
LAMP産物に特徴的な複雑な高次構造が、ハイブリダイゼーション反応時においてプローブが結合した基体と物理的な障害を起こす要因となり、その結果ハイブリダイゼーション効率に悪影響を及ぼすことが見出されている(たとえば、特開2005-95043を参照されたい)。そのような悪影響を受けないようにするために、本発明に従うプローブは、従来のターゲット配列の位置とは異なり、一本鎖のループ部分にヘリコバクター属に分類される微生物由来のターゲット配列が位置するようにプライマーを設計している。
【0090】
本発明によれば、簡便、安価、高速にヘリコバクター属に分類される微生物の検知および属レベルまたは種レベルで遺伝子型を分類する方法が提供される。
【0091】
例
以下に、本発明による核酸検知方法について例を用いて具体的に説明する。
【0092】
(1)合成プライマー
LAMP反応用プライマーとして、上記表4に記載された配列を合成により準備した。即ち、FIP−1プライマーとして配列番号25、FIP−2プライマーとして配列番号26、FIP−3プライマーとして配列番号27、FIP−4プライマーとして配列番号28、FIP−4プライマーとして配列番号29およびBIPプライマーとして配列番号30により示されるポリヌクレオチドを合成した。
【0093】
(2)LAMP反応溶液
LAMP反応溶液は以下の表3の組成の溶液に前記合成プライマーと以下に記す増幅のためのテンプレートを添加して調製した。
【0094】
LAMP増幅の鋳型核酸には、ヘリコバクター属に分類される微生物、即ち、ヘリコバクター・ヘパティカス(H. hepaticus)、ヘリコバクター・ムリダルム(H.muridarum)、ヘリコバクター・タイフォロニウス(H.typhlonius)、ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)から抽出した核酸サンプルを使用した。
【0095】
(3)LAMP法による核酸増幅
温度は63℃、時間は1時間として核酸増幅を行った。この時、鋳型核酸の代わりに滅菌水を添加したものをネガティブコントロール(negative control)として用いた。増幅したLAMP産物をアガロースゲル電気泳動で確認した。その結果、LAMP産物に典型的なラダー状のパターンが現れた(図7)。一方、鋳型核酸を含まない場合、或いは、比較対照としてヘリコバクター属以外の生物種、例えば、ウォリネラ(Wolinela)、カンピロバクター.フェタス(C.fetus)、カンピロバクター.コリ(C.coli)、カンピロバクター.ジュジュニ(C.jujuni)、アルコバクター(Arcobacter)に由来する核酸を添加した場合には全く増幅が見られなかった。以上より、選択したプライマーセットを用いて、配列特異的にヘリコバクター属の増幅が可能である事が示された。
【0096】
(4)核酸プローブ固定化スライドガラスの作製
図5に示すような核酸プローブ固定化スライドガラスを作製した。スライドガラス6の第一の面に、表5に示した塩基配列により示されるポリヌクレオチドからなり、且つ3’末端がアミノ基で修飾されたプローブを、配列毎にスポットした。また、同様にネガティブコントロールプローブもスポットした。その後、超純水で洗浄し、風乾した。これにより、固定化領域に配列毎に固定化されたプローブ1〜プローブ5を含むプローブ群を具備する核酸プローブ固定化スライドガラス7を得た。
【0097】
(5)核酸プローブへのLAMP産物のハイブリダイゼーション
上記(3)で増幅したLAMP産物を用いてハイブリダイゼーションを行った。なお、後述する蛍光検出に使用する場合には、基質としてCy5標識dCTPを適量混合したdNTPsを使用して増幅反応を行うことによって得られたCy5標識LAMP産物を使用した。(4)で作製した核酸チップに対し1/9容の20×SSCを添加したCy5標識LAMP産物を滴下、35℃で60分間静置することによってハイブリダイゼーション反応を行った。その後、超純水で軽く洗浄した。蛍光強度は、アマシャム社のTyhoonを用いて検知した。
【0098】
(6)結果
蛍光測定の結果、ヘリコバクター属に分類される微生物を含む試料を当該プライマーで増幅したときの増幅産物を適用した場合、ヘリコバクター属をユニバーサルに検出可能な特異的なプローブを固定化したスポットから有意な蛍光が検知された。また、ヘリコバクター・ヘパティカス(H. hepaticus)、ヘリコバクター・ムリダルム(H.muridarum)、ヘリコバクター・タイフォロニウス(H.typhlonius)、ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)を含む試料を当該プライマーで増幅したときの増幅産物を適用した場合には、それぞれの微生物種に特異的なプローブを固定化したスポットからとユニバーサルなプローブを固定化したスポットから有意な蛍光が検知された。なお、鋳型核酸を含まない系で増幅反応を行って得られた反応産物を適用した場合と、比較対照であるヘリコバクター属以外の生物種、ウォリネラ(Wolinela)、カンピロバクターフェタス(C.fetus)、カンピロバクター.コリ(C.coli)、カンピロバクタージュジュニ(C.jujuni)、アルコバクター(Arcobacter)由来の核酸を含む試料を増幅反応に供して得られた反応産物を適用した場合には優位な信号は全く得られなかった。
【0099】
以上のことから、本発明に従うプライマーは、ヘリコバクター属の微生物由来の核酸を特異的に増幅することが可能であると伴に、本発明に従うプローブは、LAMP反応後に得られた反応産物をヘリコバクター属特異的、および/または種特異的に検出することが可能であることが明らかになった。
【0100】
(7)核酸プローブ固定化電極の作製
図6に示すような核酸プローブ固定化電極を作製した。基板10に配置された金電極11に対して、表8に示す各塩基配列からなり、その3’末端がチオール修飾されたプローブをスポットすることにより配列毎に固定化した。また、同様にネガティブコントロールプローブもスポットした。その後、超純水で洗浄し、風乾し、電流検知型の核酸チップを作製した。
【0101】
(8)核酸プローブへのLAMP産物のハイブリダイゼーション
(7)で作製した核酸チップを2×SSCの塩を添加したLAMP産物に浸漬し、35℃で60分間静置することによってハイブリダイゼーション反応を行った。更に、この電極を挿入剤であるヘキスト33258溶液を50μM含むリン酸緩衝液中に15分間浸漬した後、ヘキスト33258分子の酸化電流応答を測定した。
【0102】
(9)結果
電流測定の結果、ヘリコバクター属に分類される微生物を含む試料を当該プライマーで増幅したときの増幅産物を適用した場合、ヘリコバクター属をユニバーサルに検出可能な特異的なプローブを固定化したスポットから有意な電流信号が検知された。また、ヘリコバクター・ヘパティカス(H. hepaticus)、ヘリコバクター・ムリダルム(H.muridarum)、ヘリコバクター・タイフォロニウス(H.typhlonius)、ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)を含む試料を当該プライマーで増幅したときの反応産物を適用した場合、それぞれの微生物種に特異的なプローブを固定化した電極からのみ有意な電流信号が検知された。結果を図8に示す。図8A〜Fにおいて「nega」は、ネガティブコントロールプローブを表す。
【0103】
図8Aは、検体としてヘリコバクター・ヘパティカスを含む試料を表4に示す塩基配列からなるプライマーにより増幅反応を行い、その反応産物を当該チップに適用したときの電流信号を測定した結果である。ヘリコバクター・ヘパティカスを検出するためのプローブが固定化されている領域のみにおいて電流信号が有意に増大した。
【0104】
図8Bは、検体としてヘリコバクター・ムリダルムを含む試料を表4に示す塩基配列からなるプライマーにより増幅反応を行い、その反応産物を当該チップに適用したときの電流信号を測定した結果である。ヘリコバクター・ムリダルムを検出するためのプローブが固定化されている領域のみにおいて電流信号が有意に増大した。
【0105】
図8Cは、検体としてヘリコバクター・タイフォロニウスを含む試料を表4に示す塩基配列からなるプライマーにより増幅を行い、その反応産物を当該チップに適用したときの電流信号を測定した結果である。ヘリコバクター・タイフォロニウスを検出するためのプローブが固定化されている領域のみにおいて電流信号が有意に増大した。
【0106】
図8Dは、検体としてヘリコバクター・ピロリを含む試料を表4に示す塩基配列からなるプライマーにより増幅反応を行い、その反応産物を当該チップに適用したときの電流信号を測定した結果である。ヘリコバクター・ピロリを検出するためのプローブが固定化されている領域のみにおいて電流信号が有意に増大した。
【0107】
図8Eは、検体としてウォリネラを含む試料について、表4に示す塩基配列からなるプライマーにより増幅反応を行い、その反応産物を当該チップに適用したときの電流信号を測定した結果である。何れの電極においても顕著な電流信号は観察されなかった。
【0108】
図8Fは、検体としてカンピロバクター.フェタス(C.fetus)を含む試料について、表4に示す塩基配列からなるプライマーにより増幅反応を行い、その反応産物を当該チップに適用したときの電流信号を測定した結果である。何れの電極においても顕著な電気信号は観察されなかった。
【0109】
なお、鋳型核酸を含まない試料について増幅反応を行った結果得られた反応産物を当該チップに適用した場合には、何れの電極においても有意な電気信号は観察されなかった。また、ネガティブコントロールプローブについても、どのような検体を含む試料を増幅した場合についても有意な電気信号は観察されなかった。更に、カンピロバクター.コリ(C.coli)、カンピロバクター.ジュジュニ(C.jujuni)、アルコバクター(Arcobacter)を検体として含む試料について増幅反応を行い、得られた反応産物を当該チップに適用した場合についても有意な電気信号は観察されなかった。
【0110】
以上のことから、本発明に従うプライマーは、ヘリコバクター属の微生物由来の核酸を特異的に増幅することが可能であると伴に、本発明に従うプローブは、LAMP反応後に得られた反応産物をヘリコバクター属特異的、および/または種特異的に検出することが可能であることが明らかになった。
【0111】
なお、上記において、ヘリコバクター属の微生物の核酸を増幅および/またはユニバーサルに検知および/または種特異的に検知した例を示したが、ヘリコバクター・ヘパティカス(H. hepaticus)、ヘリコバクター・ムリダルム(H.muridarum)、ヘリコバクター・タイフォロニウス(H.typhlonius)およびヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)以外の微生物種についてもLAMP増幅および/または検知を行った。その結果、当該プライマーにより、ヘリコバクター属の微生物の核酸は特異的に増幅された。また、ユニバーサルなプローブにより共通に検知され、且つ対象となった微生物の種に応じた種特異的なプローブにより種特異的に検知された。
【0112】
微生物と、その検知のために使用するプライマーおよびプローブの組合せの例を表11に示した。
【表11−1】
【0113】
【表11−2】
【0114】
【表11−3】
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】従来のLAMP法による増幅方法を説明するための模式図。
【図2】従来のLAMP法を用いて得られる増幅産物を説明するための模式図。
【図3】本発明の測定用核酸の製造における増幅方法を説明するための模式図。
【図4】本発明の測定用核酸を説明するための模式図。
【図5】ヘリコバクター属に分類される微生物遺伝子型判定用核酸チップ。
【図6】ヘリコバクター属に分類される微生物遺伝子型判定用核酸チップ。
【図7】LAMP増幅の電気泳動写真の一例を示す図。
【図8A】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【図8B】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【図8C】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【図8D】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【図8E】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【図8F】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【符号の説明】
【0116】
1・・・プローブ
2・・・プローブ
3・・・プローブ
4・・・プローブ
5・・・プローブ
6・・・スライドガラス
10・・・基板
11・・・金電極
12・・・接続部
13・・・プローブ
14・・・プローブ
15・・・プローブ
16・・・プローブ
17・・・プローブ
18・・・核酸プローブ固定化電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリコバクター属に分類される微生物の検知および/または遺伝子型分類と、それに基づく属レベル以下での生物分類するための核酸プライマー配列およびそれを用いた方法、それに使用されるプライマーセット、それを使用する増幅方法、およびそれを具備するアッセイキットに関する。
【背景技術】
【0002】
カンピロバクター目(Order Campylobacterales)に分類される微生物は、グラム陰性螺旋菌であり、大部分のものは微好気性から嫌気性を示す。その代表例としては、アルコバクター(Arcobacter)属、カンピロバクター(Campylobacter)属などを含むカンピロバクター科(Family Campylobacteraceae)や、フレキシスピラ(Flexispira)属、ヘリコバクター(Helicobacter)属、ウォリネラ(Wolinella)属などを含むヘリコバクター科(Family Helicobacteraceae)が挙げられる。また、近年、微好気性好熱水素細菌として注目を浴びているヒドロゲニモナス・テロモフィラ(Hydrogenimonas. thermophila)もヒドロゲニモナス科(Family Hydrogenimonaceae)として、ヘリコバクター属の一員として分類されている(参考URL;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?mode=Undef&id=29547&lvl=3&keep=1&srchmode=1&unlock)。
【0003】
これらの細菌は、培養が難しく、また一般的な生化学検査では検出しにくい。そのようなことが災いし、20世紀初頭の発見以来、幾多の分類学的改変を経ており、その分類については極めて混乱した状況が続いてきた。しかしながら近年の分子生物学の進歩に伴い、遺伝子配列からのアプローチにより上記ヘリコバクター属に属する細菌が他のプロテオバクテリア(Proteobacteria)の中で他の細菌とは遺伝的に異なる1集団を形成するとともに、カンピロバクター科、ヘリコバクター科などに更に細かなグループとして分類できる事が明らかとなってきた。
【0004】
これらカンピロバクター目に分類される微生物は、環境中に広く分布していることが知られており、それらは、動物界、植物界をはじめ幅広い範囲の生物界から検出される。特に、アルコバクター(Arcobacter)属、カンピロバクター(Campylobacter)属、ヘリコバクター(Helicobacter)属等については、ヒトを含む各種動物に対する様々な病原性が明らかになってきており、注目を集めている。中でも、慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のみならず、胃癌やMALTリンパ腫などの発生につながることが報告されているヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)の感染は有名である。
【0005】
一方、マウスなどを用いた動物実験は、生命科学研究には必要不可欠である。再現性の高い動物実験を行うためには、病原微生物等を対象とした定期的な微生物モニタリングが必須であり、それにより品質管理された実験動物が提供される。そのような状況において、マウスなどの実験動物では、最も重要な病原微生物の1つとしてヘリコバクター(Helicobacter)属菌を対象とした微生物モニタリングが定期的に実施されている。更に近年では、それまで実験動物モニタリングの対象であったヘリコバクター・ヘパティカス(H.hepaticus)や、ヘリコバクター・ビリス(H.bilis)が、ヒトにおいて検出された例が報告されている。また、それらの微生物とヒトの疾病との関連性についての指摘も数多くなされてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ヘリコバクター属の微生物由来の核酸を特異的に増幅するためのプライマーセット、前記微生物を検知および/または分類するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための手段は、
(1)ヘリコバクター属の微生物由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットであって、前記LAMP増幅用核酸プライマーセットはFIPプライマー、F3プライマー、BIPプライマーおよびB3プライマーを具備し、これらのプライマーはF1、F2、F3、B1c、B2cおよびB3c領域を次の配列とすることを特徴とするプライマーセット:
当該F1領域は配列番号1またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含み、
当該F2領域は配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含み、
当該F3領域は配列番号7またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含み、
当該B1c領域は配列番号8またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含み、
当該B2c領域は配列番号9またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含み、および
当該B3c領域は配列番号10またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含む;
(2)ヘリコバクター属の微生物を検知および/または分類する方法であって、
試料に含まれる核酸を(1)に記載のプライマーセットを用いてLAMP増幅することと、
前記LAMP増幅により生じた反応産物と、
配列番号31、32、33、34、35、36および37並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
配列番号38、39、40、41、42、43、44および45並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
配列番号46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65および66並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
配列番号67、68、69、70、71、72および73並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
配列番号74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84および85並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、および/または
配列番号86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118および119並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と
を反応することと、
前記反応の結果から、試料に存在するヘリコバクター属の微生物を検知および/または分類することと
を具備する方法;
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヘリコバクター属の微生物由来の核酸を特異的に増幅するためのプライマーセット、前記微生物を検知および/または分類するための方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
1.プライマー
本発明の1態様に従うと、ヘリコバクター属の微生物由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットが提供される。
【0010】
本発明で用いる増幅法「LAMP法」は、等温遺伝子増幅法の1種で、2種若しくは4領域または4種若しくは6領域のプライマーを用いる点がPCR法とは異なっている。LAMP法は、PCR法に比べ増幅効率が優れていると共に、サンプル中の不純物の影響も受けにくいと報告されている。そのため、簡便なサンプルの前処理で微量なヘリコバクター属に分類される微生物を検知することが可能である。
【0011】
ここで、LAMP法におけるプライマー設計および得られる増幅産物について、図1および図2を参照して説明する。図1は、検知しようとする二本鎖DNAを示している。合計4種類のプライマー配列(FIPプライマー、F3プライマー、BIPプライマー、B3プライマー)を設定する。FIPプライマーおよびBIPプライマーは、各々二つの領域(FIPはF1cとF2、BIPはB2とB1c)を含んでいる。F3プライマーはF3領域を含んでいる。B3プライマーはB3領域を含んでいる。ここでF3、F2、F1、B1c、B2c、B3c領域は、前記二本鎖DNAのうちの一本鎖DNAの5’→3’方向にかけてこの順で設定された領域である。またB3、B2、B1、F1c、F2c、F3c領域は、その相補鎖の一本鎖DNAの5’→3’方向にかけてこの順で設定された領域である。このときB3とB3c、B2とB2c、B1とB1c、F1cとF1、F2cとF2、F3cとF3はそれぞれ相補鎖である。
【0012】
これらの領域から構成される4種類のプライマー、即ち、FIPプライマー、F3プライマー、BIPプライマー、B3プライマーを用いてLAMP増幅を行なうと、図1の二本鎖DNAの夫々の鎖から、図2に示すようなダンベル型のステム・アンド・ループ構造の増幅産物が得られる。その増幅機構については説明を省略するが、必要であれば、例えば特開2002−186781号公報を参照されたい。また、この4種のプライマーのほかにループプライマーを併せて用いてもよい。
【0013】
本発明では、一本鎖のループ部分にターゲット配列が位置するようにプライマーを設計する。即ち、図3に示すように、本発明においては、プローブにハイブリダイゼーションさせるべきターゲット配列(図3ではFPc、FP、BP、BPcの何れか)が、領域F1とF2との間(この領域はF2領域を含んでもよい)、領域F2cとF1cとの間(この領域はF2c領域を含んでもよい)、領域B1とB2との間(この領域はB2領域を含んでもよい)、および/または領域B2cとB1cとの間(この領域はB2c領域を含んでもよい)の何れかに対応して位置するように、6つのプライマー領域を設定する。ターゲット配列は、上記それぞれの領域間に形成される一本鎖のループ部分のいずれの部位に位置するように設計されてよい。ここで、プライマー領域F1とF2との間のループ部分には、F2領域自体も含まれてよい。こうして設定された6つのプライマー領域に基づいて4種類のプライマーを作製し、これらプライマーを用いてLAMP増幅を行なう。それにより、図4に示すようなLAMP増幅産物の一部が得られる。このLAMP増幅産物中においては、ターゲット配列FPc、FP、BP、BPcが増幅産物のダンベル構造における一本鎖ループの中に位置することとなる。
【0014】
一方、プライマー領域F1cとF1、およびB1cとB1は、もともと相補的な配列を有しているので、相互に自己ハイブリダイゼーションを生じて二本鎖を形成する。このように増幅産物中に含まれるターゲット配列は、図4に示すような一本鎖の状態のものが存在することから、変性操作を行なうことなく、図示のように各ターゲット配列に対して相補的なプローブ核酸(FP、FPc、BP、BPc)との特異的ハイブリダイゼーションにより検知することができる。
【0015】
特異的ハイブリダイゼーションとは、一塩基多型(Single Nucleotide PolymorpHisms:SNPs)または変異が存在する場合、その僅かの違いも検知することが可能であることを意味している。
【0016】
上述したとおり、本発明に従う好ましいプライマーセットの例において、当該LAMP増幅用核酸プライマーセットは、F1、F2、F3、B1c、B2cおよびB3c領域を元に設計される。
【0017】
好ましい領域の例を表1に示す。
【表1】
【0018】
表1の領域が、ヘリコバクター属の微生物のゲノムにおいてどのような位置に対応する配列であるのかを表2に示した。
【表2−1】
【0019】
【表2−2】
【0020】
【表2−3】
【0021】
【表2−4】
【0022】
【表2−5】
【0023】
表2には、ヘリコバクター属の微生物としてヘリコバクター・ヘパティカス(アクセッションNo.L39122)、ヘリコバクター・ビリス・(アクセッションNo.U18766)、ヘリコバクター・タイフォロニウス(アクセッションNo.AF127912)、ヘリコバクター・ピロリ(アクセッションNo.M88157)、ヘリコバクター・コレシスツス(アクセッションNo.U46129)、ヘリコバクター・シナエヂ・(アクセッションNo.M88150)、ヘリコバクター・フェリス(アクセッションNo.M57398)、ヘリコバクター・フレキシスピラ(アクセッションNo.M88138株)、ヘリコバクター・MIT 95−2011(アクセッションNo.U96298)、ヘリコバクター・ムリダルム・(アクセッションNo.M80205)およびヘリコバクター・ロデンチウム(アクセッションNo.U96297)の11株と、比較のためのアルコバクター(アクセッションNo.L14626)、カンピロバクター(アクセッションNo.L04312)、ウォリネラ(アクセッションNo.M88159)を示した。当該プライマーとして選択した領域は、カンピロバクター属において高度に保存された領域である。また、当該プライマーにより増幅される領域は、ヘリコバクター属の微生物を特定するために特徴的な領域である。
【0024】
好ましいプライマーセットにおいて、当該F1領域は配列番号1またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでなってもよい。また、当該F1領域は、配列番号1またはその相補配列で示されるポリヌクレオチドの何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、配列番号120、121およびその相補配列でそれぞれ示されるポリヌクレオチドである。また、配列番号1若しくは配列番号120、121およびその相補配列の何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが、混合ヌクレオチドとして調製されてもよい。または配列番号1、配列番号120、121およびその相補配列の何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが、ユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0025】
ここで、ユニバーサルなヌクレオチドの例は、これらに限定するものではないが、デオキシイノシン(deoxyinosine;dI)や、Gren Research社の3−ニトロピロール(Nitropyrrole)、5-ニトロインドール(Nitroindole)、デオキシリボルラノシル(deoxyribofuranosyl ;dP)、デオキシ-5'-ジメトキシトリチル-D-リボフラノシル(deoxy-5'-dimethoxytrityl-D-ribofuranosyl ;dK)が含まれる。
【0026】
またここで、プライマーの各配列間またはその末端側には、1〜100ヌクレオチド、好ましくは2〜30ヌクレオチド程度の配列(例えば、スペーサーとして使用される配列)が含まれていてもよい。当該プライマーの長さは30〜200ヌクレオチド程度であってよく、好ましくは35〜100ヌクレオチド、更に好ましくは43〜60ヌクレオチドであってよい。
【0027】
好ましいプライマーセットにおいて、当該F2領域は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでなってもよい。このようなF2領域に好ましい各配列は、その何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、配列番号122および123並びにその相補配列でそれぞれ示されるポリヌクレオチドである。また、配列番号2、3、4、5、6、122および123並びにその相補配列の何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0028】
好ましいプライマーセットにおいて、当該F3領域は配列番号7またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでなってもよい。このようなF3領域に好ましい各配列は、その何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、配列番号124およびその相補配列でそれぞれ示されるポリヌクレオチドである。また、配列番号7、124およびその相補配列の何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0029】
好ましいプライマーセットにおいて、当該B1c領域は配列番号8およびその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでなってもよい。このようなB1c領域に好ましい各配列はその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、配列番号125およびその相補配列でそれぞれ示されるポリヌクレオチドである。また、配列番号8、125およびその相補配列の何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0030】
好ましいプライマーセットにおいて、当該B2c領域は配列番号9およびその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでなってもよい。このようなB2c領域に好ましい各配列はその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、配列番号126およびその相補配列で示されるポリヌクレオチドである。また、配列番号9、126およびその相補配列の何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0031】
好ましいプライマーセットにおいて、当該B3c領域は配列番号10およびその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでなってもよい。このようなB3c領域に好ましい各配列はその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、配列番号128およびその相補配列で示されるポリヌクレオチドである。また、配列番号10、128およびその相補配列の何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0032】
上記のような領域を使用したプライマーを用いて、ヘリコバクター属に分類される微生物あるいはその遺伝子を含有する検体試料に対してLAMP法による増幅を行うと、図4で説明したように、ステム・アンド・ループ構造が形成され、一本鎖のループ構造内に含まれるヘリコバクター属に分類される微生物由来のターゲット配列が得られる。
【0033】
本発明は、上記のようなプライマーセットをヘリコバクター属に分類される微生物に対して適用すれば、ヘリコバクター属に特徴的な遺伝子型を反映する核酸が増幅される。得られる増幅産物の存在を検知することにより、ヘリコバクター属の微生物を検知することが可能である。従って、試料におけるヘリコバクター属の微生物の検知は、検出対象である試料について、当該プライマーセットを用いて増幅反応を行えばよい。
【0034】
増幅反応の条件は、それ自身公知の何れかの条件を利用すればよい。また、当該増幅反応を行った結果を基に当該試料はヘリコバクター属の微生物が含まれていると判定すればよい。そのような判定により試料中のヘリコバクター属の微生物を検知することが可能である。
【0035】
例えば、上記増幅反応は、1チューブ当たり1プライマーセットで行ってもよく、あるいは1チューブに各種遺伝子型に対応した複数のプライマーセットを用いて行ってもよい。複数の遺伝子型を特定する必要がある場合は、後者の方法で行う方が効率的である。
【0036】
また、上記増幅反応は、これに限定するものではないが、例えば、表3に示すような組成のバッファー中で行ってよい。
【表3】
【0037】
ここで「試料」とは、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、フェレット、オナガザル、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、アザラシ、ネズミイルカなどの哺乳類、鳥類などの体液、組織、細胞、便、並びに水、湖水、川水、海水および土壌などの環境に存在する何れかの物質であってもよい。また、当該試料は、ヘリコバクター属に分類される微生物あるいはその遺伝子が含まれている可能性の疑われる物質であってよい。そのような物質をそれ自身公知の手段により、核酸の増幅に適した状態に前処理したものであってもよく、何れの前処理もなされなくてもよい。例えば、そのような前処理の例は、変性、濾過、核酸抽出および不純物除去などを含む。
【0038】
また、本発明プライマーセットは、FIPプライマーとF3プライマーとBIPプライマーとB3プライマーを具備するが、そのようなプライマーセットの例は、当該FIPプライマーが、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28および配列番号29並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドからなり、当該F3プライマーは配列番号7またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなり、当該BIPプライマーは、配列番号30またはそれらの相補配列により示されるポリヌクレオチドからなり、当該B3cプライマーは配列番号10またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなってもよい。また、これらのプライマーのいずれか、または全ての配列について、その何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入を有していてもよい。
【表4】
【0039】
以上のようなプライマーセットを用いて核酸の増幅を行うことにより、簡便、安価、高速に、特異的にヘリコバクター属の微生物を増幅することが可能である。これを利用して、試料に含まれる核酸を、当該プライマーまたはプライマーセットを用いるLAMP増幅反応に供し、増幅反応の結果生じた増幅産物の有無を判定することにより、当該試料にヘリコバクター属の微生物を特異的に検知することが可能である。
【0040】
従来の方法では、特異性を配列検知の際の特異性は、一般的にPCR法で増幅した目的遺伝子産物をDNAチップにより検知している。この場合、PCRにより生成される産物は2本鎖であるため、プローブとハイブリダイゼーション反応させると、相補鎖がプローブに対するコンペティターとなりハイブリ効率が低く検知感度が悪い。そのような方法において、また従来では、ターゲットを1本鎖にするために、相補鎖を分解する、または分離するといった方法も取られている。これらの場合、酵素の使用、磁気ビーズの使用などによる高価な価格となったり、操作が煩雑性になったりする。また、ヘリコバクター属に分類される微生物は、培養が難しく、適切な培養条件を整えたとしても、時間がかかる。このような問題も本発明を用いることにより解決される。
【0041】
これまで、迅速診断法としては特異的な抗体を使って抗原−抗体反応を介して検知する方法や、DNA配列中の特徴的な配列を含む領域をポリメラーゼチェインリアクション(PCR)で増幅し、電気泳動法により検知する方法などが知られていた。しかしながら、前者の方法では近縁株等との区別が難しいことや、感染初期には抗体が検出できないことが知られている。また、後者のPCRを利用する方法は、サーマルサイクラーのような複雑な温度制御装置が必要なことや簡便性に課題があるなどの不利点がある。またPCR法では、万が一誤って相補鎖合成が行われてしまった場合にはその生成物が鋳型となり増幅してしまい、誤った判定をしてしまう可能性がある。実際に、プライマーの末端の1塩基相違のみでは特異的な増幅を制御することは困難である。
【0042】
2.プローブ
本発明は更に、上述のポリペプチドプライマーにより増幅されたヘリコバクター属の微生物に由来する核酸を検知および/または分類するためのプローブおよびプローブセットを提供する。
【0043】
本発明に従うプローブの例は、配列番号31、32、33、34、35、36および37並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1であってもよい。これらのプローブセットにより、ヘリコバクター属に分類される微生物をユニバーサルに検出することが可能である。そのようなユニバーサルプローブの例を表5に示した。
【表5】
【0044】
表5に示すように、ヘリコバクターをユニバーサルに検出可能なプローブの例は、配列番号31、32、33、34、35、36および37並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群のプローブは、当該プローブ群の中の1つが選択されて使用されてもよい。或いは、2種以上のプローブが組み合わされて選択されて使用されてもよく、それぞれの配列からなる全てのプローブが一緒に使用されてもよい。また、これらの配列を構成する何れかの1以上の塩基がミックス塩基に設計されてもよい。ここで、「ミックス塩基」とは、ミックス塩基としたい所望の箇所の塩基を「アデニン」、「チミン」、「シトシン」および「グアニン」に設計したプローブを2以上または全て混合して使用するプローブセットをいう。また、複数種類の塩基に対して対合可能な修飾塩基で置換するように設計されてもよい。
【0045】
また、当該プローブは、所望の種を検出するためのプローブであってもよい。そのようなプローブは、例えば、上述のプライマーにより増幅されたステム・アンド・ループ構造を有するポリヌクレオチドの一本鎖のループ部分の領域に対して結合するように設定されればよい。また、当該プライマーは好ましくは、約10〜60塩基長、約12〜40塩基長などであればよい。
【0046】
例えば、好ましいプローブの例は、図3に示すようなステム・アンド・ループ構造のプライマー領域F1とF2との間(この領域はF2領域を含んでもよい)、プライマー領域F2cとF1cとの間(この領域はF2c領域を含んでもよい)、プライマー領域B1とB2との間(この領域はB2領域を含んでもよい)、および/またはプライマー領域B2cとB1cとの間(この領域はB2c領域を含んでもよい)の何れかの位置に対応するように選択されてよい。この選択は検知しようとする菌種に特異的な配列が適宜選択されるように行えばよい。
【0047】
例えば、ヘリコバクター・ヘパティカス(H. hepaticus)、ヘリコバクター・ムリダルム(H.muridarum)、ヘリコバクター・タイフォロニウス(H.typhlonius)およびヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)を、それぞれ種特異的に検出するためのプローブの例を表6に示す。
【表6】
【0048】
表6に示す通り、ヘリコバクター・ヘパティカスは、例えば、配列番号38またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなるプローブにより検出され、ヘリコバクター・ムリダルムは、例えば、配列番号39またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなるプローブにより検出され、ヘリコバクター・タイフォロニウスは、例えば、配列番号40またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなるプローブにより検出され、ヘリコバクター・ピロリは、例えば、配列番号41、42、43、44および45、並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群により検出されてもよい。
【0049】
更なるプローブの例を表7〜表10に示す。表7−1〜表7−3には第一の領域のプローブ(表中、プローブ領域1)の配列を示す。
【表7−1】
【0050】
【表7−2】
【0051】
【表7−3】
【0052】
表8−1〜8−3には第二の領域のプローブ(表中、プローブ領域2)の配列を示す。
【表8−1】
【0053】
【表8−2】
【0054】
【表8−3】
【0055】
表9−1〜9−4には第三の領域のプローブ(表中、プローブ領域3)の配列を示す。
【表9−1】
【0056】
【表9−2】
【0057】
【表9−3】
【0058】
【表9−4】
【0059】
表10−1〜10−4には第四の領域のプローブ(表中、プローブ領域4)の配列を示す。
【表10−1】
【0060】
【表10−2】
【0061】
【表10−3】
【0062】
【表10−4】
【0063】
また、何れのプローブも、例えば、ヘリコバクター・ピロリの場合などのように、同一種内での配列変異が明らかになっているなどの場合には、同一種内の配列変異に対応するために異なる配列からなるプローブを複数使用してよい。
【0064】
従って、好ましいプローブは、配列番号46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118および119並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群に含まれるプローブであってよい。
【0065】
また、検知したい菌種のためのプローブを所望に応じて表7〜表10から選択し、それらを組み合わせて、プローブセットとして使用してもよい。
【0066】
例えば、プローブセットの例は、これに限定するものではないが、前記プライマーを用いて得られた増幅産物からヘリコバクター・へパティクス、ヘリコバクター・ムリダルム、ヘリコバクター・タイフォロニウスおよびヘリコバクター・ピロリを特異的に検出するためのプローブセットなどを含み、そのようなプローブセットの例は、配列番号38、39、40、41、42、43、44および45並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群を含む。
【0067】
また、更なる好ましいプローブセットは、配列番号46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65および66および/またはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブセット、配列番号67、68、69、70、71、72および73および/またはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブセット、配列番号74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84および85および/またはそれらの相補配列により示されるポリヌクレオチドからなるプローブセット、並びに配列番号86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118および119および/またはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブセットであってよい。
【0068】
これらのプローブセットから2種以上のプローブが選択され組み合わされて使用されてもよく、それぞれの配列からなる全てのプローブが一緒に使用されてもよい。また、これらの配列を構成する何れかの1以上の塩基がミックス塩基に設計されてもよい。また、複数種類の塩基に対して対合可能な修飾塩基で置換するように設計されてもよい。
【0069】
当該プローブは、所望の種を特異的に検出するためのプローブであってもよく、また、幾つかの種を特異的に検出するためのプローブであってもよい。このようなプローブは、例えば、上述のプライマーにより増幅されたステム・アンド・ループ構造を有するポリヌクレオチドの一本鎖のループ部分の領域に対して結合するように設定されればよい。また、当該プライマーは好ましくは、約10〜60塩基長、約12〜40塩基長などであればよい。
【0070】
何れのプローブおよびプローブセットも、上述した増幅産物を所望に応じて検出するために使用されてよい。当該プローブは、固相基体表面に固定化されたものであってもよく、典型的にはDNAチップとして構成されたものが用いられてよく、また他のマイクロアレイを構成するプローブとして用いられてもよい。当該増幅産物を検出するためのプローブは、検知する細菌株の保持する遺伝的多型や変異などに応じて変化させてもよい。
【0071】
上述したプローブは、何れも各表に示した配列の任意の位置の塩基が1つまたは数個置換あるいは欠失あるいは塩基を挿入された配列からなってもよい。
【0072】
また、核酸プローブの構造も特に限定されるものではなく、DNA、RNA、PNA、LNA、メチルホスホネート骨格の核酸、その他の人工核酸鎖を用いることが可能である。また、これらのキメラ核酸でもよい。
【0073】
核酸プローブを固相に固定化する場合は、末端にアミノ基、チオール基、ビオチン、などの官能基を導入してもよく、更に、官能基とヌクレオチドの間にスペーサーを導入してもよい。ここで用いられるスペーサーの種類は特に限定されないが、例えばアルカン骨格、エチレングリコール骨格などを用いてよい。また、一部の塩基がユニバーサルなヌクレオチドに置換されてもよい。本発明使用可能なユニバーサルなヌクレオチドの例は、deoxyinosine(dI)や、Gren Research社の3-Nitropyrrole、5-Nitroindole、deoxyribofuranosyl (dP)、deoxy-5'-dimethoxytrityl-D-ribofuranosyl (dK)などを含む。
【0074】
本発明で使用する検知法は、これらに特に限定されるものではないが、濁度、可視光、蛍光、化学発光、電気化学発光、化学蛍光、蛍光エネルギー転移法、ESRなどの光学的な手法や、電流、電圧、周波数、伝導度、抵抗などの電気的な性質を利用することも可能である。
【0075】
本発明で用いるプローブを固定化するための表面は、特に限定されるものではないが、樹脂ビーズ、磁気ビーズ、金属微粒子、マイクロタイタープート、ガラス基板、シリコン基板、樹脂製基板、電極基板などを用いることができる。
【0076】
本発明で使用する基板材料は、特に限定されるものではない。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素、等の無機絶縁材料を使用できる。また、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。
【0077】
電極材料は特に限定されるものではない。例えば、金、金の合金、銀、プラチナ、水銀、ニッケル、パラジウム、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム、タングステン等の金属単体及びそれらの合金、あるいはグラファイト、グラシーカーボン等の炭素等、またはこれらの酸化物、化合物を用いる事ができる。更に、酸化珪素等の半導体化合物や、CCD、FET、CMOSなど各種半導体デバイスを用いることが可能である。電極は、メッキ、印刷、スパッタ、蒸着などでも作製することができる。蒸着を行う場合は、抵抗加熱法、高周波加熱法、電子ビーム加熱法により電極膜を形成することができる。また、スパッタリングを行う場合は、直流2極スパッタリング、バイアススパッタリング、非対称交流スパッタリング、ゲッタスパッタリング、高周波スパッタリングで電極膜を形成することが可能である。更に、ポリピロール、ポリアニリンなどの電解重合膜や導電性高分子も用いることが可能である。電極を以外の部分を絶縁するための材料は特に限定されるものではないが、フォトポリマー、フォトレジスト材料であることが好ましい。レジスト材料としては、光露光用フォトレジスト、遠紫外用フォトレジスト、X線用フォトレジスト、電子線用フォトレジストが用いられる。光露光用フォトレジストには、主原料が環化ゴム、ポリけい皮酸、ノボラック樹脂があげられる。遠紫外用フォトレジストには、環化ゴム、フェノール樹脂、ポリメチルイソプロペニルケトン(PMIPK),ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が用いられる。また、X線用レジストには、COP、メタルアクリレートほか、薄膜ハンドブック(オーム社)に記載の物質を用いることができる、更に電子線用レジストには、PMMA等上記文献に記載の物質を用いることが可能である。ここで用いるレジストは100Å以上1mm以下であることが望ましい。フォトレジストで電極を被覆し、リソグラフィーを行うことで、面積を一定にすることが可能になる。これにより、核酸プローブの固定化量がそれぞれの電極間で均一になり、再現性に優れた測定を可能にする。従来、レジスト材料は最終的には除去するのが一般的であるが、遺伝子検知用電極ではレジスト材料は除去することなく電極の一部として用いることも可能である。この場合は、用いるレジスト材料に耐水性の高い物質を使用する必要がある。電極上部に形成する絶縁層にはフォトレジスト材料以外でも用いることが可能である。例えば、Si、Ti、Al、Zn、Pb、Cd、W、Mo、Cr、Ta、Ni等の酸化物、窒化物、炭化物、その他合金を用いることも可能である。これらの材料をスパッタ、蒸着あるいはCVD等を用いて薄膜を形成した後、フォトリソグラフィーで電極露出部のパターニングを行い、面積を一定に制御する。電極は1つの素子上に幾つかの電極部を構成し、異なったプローブを固定化することで、一度に数種類の標的に対して検査を行うことができる。また、1つの素子上に幾つかの電極部を構成し、同じプローブを固定化することで、一度に数検体の検査を行うことも可能である。この場合、フォトリソグラフィーを利用して、あらかじめ基板上複数の電極をパターニングしておく。この際、隣同士の電極が接触しないように、絶縁膜で仕切りを付けることは有効である。仕切りの高さは0.1ミクロンから100ミクロン程度が望ましい。
【0078】
本発明が対象とする検体は上述したとおり、特に限定されるものではなく、例えば、血液、血清、白血球、尿、便、精液、唾液、組織、バイオプシー、口腔内粘膜、培養細胞、喀痰等であってもよい。これら検体試料から核酸成分の抽出を行ってよい。
【0079】
抽出方法は特に限定される物ではなく、フェノール−クロロホルム法等の液−液抽出法や担体を用いる固液抽出法を用いることができる。また、市販の核酸抽出方法QIAamp(QIAGEN社製)、(社製)等を利用することも可能である。次に、抽出した核酸成分を鋳型にLAMP増幅を行った後、遺伝子検知用電極とでハイブリダイゼーション反応を行う。反応溶液は、イオン強度0.01〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液中で行う。この溶液中にはハイブリダイゼーション促進剤である硫酸デキストランや、サケ精子DNA、牛胸腺DNA、EDTA、界面活性剤などを添加することが可能である。ここに抽出・増幅した核酸成分を添加の上、核酸プローブとのハイブリダイゼーション反応に供与する。反応中は、撹拌、あるいは振とうなどの操作で反応速度を高めることもできる。反応温度は10℃〜90℃の範囲で、また反応時間は1分以上1晩程度行う。ハイブリダイゼーション反応後の洗浄には、イオン強度0.01〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液を用いる。
【0080】
抽出・増幅したサンプル核酸は、あらかじめFITCやCy3、Cy5、ローダミンなどの蛍光色素やビオチン、ハプテン、オキシダーゼやポスファターゼ等の酵素や、フェロセンやキノン類等の電気化学的に活性な物質で標識するか、あるいは前述した物質で標識したセカンドプローブを用いることで検知が可能になる。
【0081】
電気化学的に活性な核酸結合物質を用いた検知を行う場合は、以下のような手順で検知を行う。基板は洗浄後、電極表面に形成した二本鎖部分に選択的に結合する核酸結合物質を作用させ、電気化学的な測定を行う。ここで用いられる核酸結合物質は特に限定される物ではないが、例えば、ヘキスト33258、アクリジンオレンジ、キナクリン、ドウノマイシン、メタロインターカレーター、ビスアクリジン等のビスインターカレーター、トリスインターカレーター、ポリインターカレーター等を用いることが可能である。更に、これらのインターカレーターを電気化学的に活性な金属錯体、例えば、フェロセン、ビオロゲン等で修飾しておくことも可能である。核酸結合物質の濃度は、その種類によって異なるが、一般的には1ng/ml〜1mg/mlの範囲で使用する。この際、イオン強度0.001〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液を用いる。電極を核酸結合物質と反応させた後、電気化学的な測定を行う。電気化学的な測定は、3電極タイプ、すなわち参照電極、対極、作用極、あるいは2電極タイプ、すなわち対極、作用極で行う。測定では、核酸結合物質が電気化学的に反応する電位以上の電位を印加し、核酸結合物質に由来する反応電流値を測定する。この際、電位は定速で掃引するか、あるいはパルスで印加するか、あるいは、定電位を印加することができる。測定には、ポテンショスタット、デジタルマルチメーター、ファンクションジェネレーター等の装置を用いて電流、電圧を制御する。得られた電流値を基に、検量線から標的遺伝子の濃度を算出する。遺伝子検知用電極を用いた遺伝子検知装置は、遺伝子抽出部、遺伝子反応部、核酸結合物質反応部、電気化学測定部、洗浄部等から構成される。
【0082】
3.アッセイキット
本発明に従うと、ヘリコバクター属の微生物の検知および/または分類するためのアッセイキットが提供されてもよい。そのようなアッセイキットは、上述のプライマーまたはプライマーセットとプローブまたはプローブセットとを含めばよい。当該アッセイキットは、当該プライマーまたはプライマーセットおよびプローブまたはプローブセットに加えて、LAMP増幅に必要なバッファーを含んでもよく、ハイブリダイゼーションに必要なバッファー、並びにそこにおいて当該増幅および/またはハイブリダイゼーションを行うための容器を具備してもよい。
【0083】
4.ヘリコバクター属の分類方法
本発明に従うと、更に、ヘリコバクター属の微生物を検知および/または分類する方法が提供される。当該検知および/または分類する方法は、上記したプライマー、プローブおよび増幅方法を利用することによって、更に、ヘリコバクター属に分類される微生物の検知および属レベルまたは種レベルで遺伝子型分類を行う方法である。
【0084】
そのような方法は、試料に含まれる核酸を上述の何れかのプライマーセットを用いてLAMP増幅する工程と、前記LAMP増幅により生じた増幅産物と上述の何れかのプローブとを反応することと、前記反応の結果から試料に存在するヘリコバクター属の微生物を検知および/または分類することを具備すればよい。
【0085】
また、上述の何れかのプライマーセットを用いて、試料についてLAMP増幅反応を行うことと、当該増幅反応により生じた増幅産物と、上述の何れかのプローブとを反応し、それにより生じるハイブリダイズの有無を検出することにより試料におけるヘリコバクター属の微生物の存在の有無を判定する、および/または試料におけるヘリコバクター属の微生物を分類することを具備する方法であってもよい。
【0086】
また、例えば、そのようなヘリコバクター属に分類される微生物の感染や存在を検知する方法は、
本発明に従うプライマーから任意に選択される少なくとも1つのプライマーを含む複数のプライマーを使用して、LAMP反応により試料について核酸鎖増幅反応を行う工程と、
前記増幅反応後に増幅産物の有無を検知する工程と、
を具備すればよい。当該試料は、予め核酸を抽出する工程に供されてもよい。
【0087】
ここにおける「LAMP増幅」とは、LAMP反応により増幅対象の核酸を増幅することをいう。当該LAMP増幅は、上述の何れかのプライマーを用いて増幅対象の核酸を増幅可能なそれ自身公知の何れの条件で行ってよい。
【0088】
当該増幅産物と当該プローブとの反応は、上述の何れかのプローブを用いてハイブリダイズが可能なそれ自身公知の何れかの条件で行ってよい。
【0089】
LAMP産物に特徴的な複雑な高次構造が、ハイブリダイゼーション反応時においてプローブが結合した基体と物理的な障害を起こす要因となり、その結果ハイブリダイゼーション効率に悪影響を及ぼすことが見出されている(たとえば、特開2005-95043を参照されたい)。そのような悪影響を受けないようにするために、本発明に従うプローブは、従来のターゲット配列の位置とは異なり、一本鎖のループ部分にヘリコバクター属に分類される微生物由来のターゲット配列が位置するようにプライマーを設計している。
【0090】
本発明によれば、簡便、安価、高速にヘリコバクター属に分類される微生物の検知および属レベルまたは種レベルで遺伝子型を分類する方法が提供される。
【0091】
例
以下に、本発明による核酸検知方法について例を用いて具体的に説明する。
【0092】
(1)合成プライマー
LAMP反応用プライマーとして、上記表4に記載された配列を合成により準備した。即ち、FIP−1プライマーとして配列番号25、FIP−2プライマーとして配列番号26、FIP−3プライマーとして配列番号27、FIP−4プライマーとして配列番号28、FIP−4プライマーとして配列番号29およびBIPプライマーとして配列番号30により示されるポリヌクレオチドを合成した。
【0093】
(2)LAMP反応溶液
LAMP反応溶液は以下の表3の組成の溶液に前記合成プライマーと以下に記す増幅のためのテンプレートを添加して調製した。
【0094】
LAMP増幅の鋳型核酸には、ヘリコバクター属に分類される微生物、即ち、ヘリコバクター・ヘパティカス(H. hepaticus)、ヘリコバクター・ムリダルム(H.muridarum)、ヘリコバクター・タイフォロニウス(H.typhlonius)、ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)から抽出した核酸サンプルを使用した。
【0095】
(3)LAMP法による核酸増幅
温度は63℃、時間は1時間として核酸増幅を行った。この時、鋳型核酸の代わりに滅菌水を添加したものをネガティブコントロール(negative control)として用いた。増幅したLAMP産物をアガロースゲル電気泳動で確認した。その結果、LAMP産物に典型的なラダー状のパターンが現れた(図7)。一方、鋳型核酸を含まない場合、或いは、比較対照としてヘリコバクター属以外の生物種、例えば、ウォリネラ(Wolinela)、カンピロバクター.フェタス(C.fetus)、カンピロバクター.コリ(C.coli)、カンピロバクター.ジュジュニ(C.jujuni)、アルコバクター(Arcobacter)に由来する核酸を添加した場合には全く増幅が見られなかった。以上より、選択したプライマーセットを用いて、配列特異的にヘリコバクター属の増幅が可能である事が示された。
【0096】
(4)核酸プローブ固定化スライドガラスの作製
図5に示すような核酸プローブ固定化スライドガラスを作製した。スライドガラス6の第一の面に、表5に示した塩基配列により示されるポリヌクレオチドからなり、且つ3’末端がアミノ基で修飾されたプローブを、配列毎にスポットした。また、同様にネガティブコントロールプローブもスポットした。その後、超純水で洗浄し、風乾した。これにより、固定化領域に配列毎に固定化されたプローブ1〜プローブ5を含むプローブ群を具備する核酸プローブ固定化スライドガラス7を得た。
【0097】
(5)核酸プローブへのLAMP産物のハイブリダイゼーション
上記(3)で増幅したLAMP産物を用いてハイブリダイゼーションを行った。なお、後述する蛍光検出に使用する場合には、基質としてCy5標識dCTPを適量混合したdNTPsを使用して増幅反応を行うことによって得られたCy5標識LAMP産物を使用した。(4)で作製した核酸チップに対し1/9容の20×SSCを添加したCy5標識LAMP産物を滴下、35℃で60分間静置することによってハイブリダイゼーション反応を行った。その後、超純水で軽く洗浄した。蛍光強度は、アマシャム社のTyhoonを用いて検知した。
【0098】
(6)結果
蛍光測定の結果、ヘリコバクター属に分類される微生物を含む試料を当該プライマーで増幅したときの増幅産物を適用した場合、ヘリコバクター属をユニバーサルに検出可能な特異的なプローブを固定化したスポットから有意な蛍光が検知された。また、ヘリコバクター・ヘパティカス(H. hepaticus)、ヘリコバクター・ムリダルム(H.muridarum)、ヘリコバクター・タイフォロニウス(H.typhlonius)、ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)を含む試料を当該プライマーで増幅したときの増幅産物を適用した場合には、それぞれの微生物種に特異的なプローブを固定化したスポットからとユニバーサルなプローブを固定化したスポットから有意な蛍光が検知された。なお、鋳型核酸を含まない系で増幅反応を行って得られた反応産物を適用した場合と、比較対照であるヘリコバクター属以外の生物種、ウォリネラ(Wolinela)、カンピロバクターフェタス(C.fetus)、カンピロバクター.コリ(C.coli)、カンピロバクタージュジュニ(C.jujuni)、アルコバクター(Arcobacter)由来の核酸を含む試料を増幅反応に供して得られた反応産物を適用した場合には優位な信号は全く得られなかった。
【0099】
以上のことから、本発明に従うプライマーは、ヘリコバクター属の微生物由来の核酸を特異的に増幅することが可能であると伴に、本発明に従うプローブは、LAMP反応後に得られた反応産物をヘリコバクター属特異的、および/または種特異的に検出することが可能であることが明らかになった。
【0100】
(7)核酸プローブ固定化電極の作製
図6に示すような核酸プローブ固定化電極を作製した。基板10に配置された金電極11に対して、表8に示す各塩基配列からなり、その3’末端がチオール修飾されたプローブをスポットすることにより配列毎に固定化した。また、同様にネガティブコントロールプローブもスポットした。その後、超純水で洗浄し、風乾し、電流検知型の核酸チップを作製した。
【0101】
(8)核酸プローブへのLAMP産物のハイブリダイゼーション
(7)で作製した核酸チップを2×SSCの塩を添加したLAMP産物に浸漬し、35℃で60分間静置することによってハイブリダイゼーション反応を行った。更に、この電極を挿入剤であるヘキスト33258溶液を50μM含むリン酸緩衝液中に15分間浸漬した後、ヘキスト33258分子の酸化電流応答を測定した。
【0102】
(9)結果
電流測定の結果、ヘリコバクター属に分類される微生物を含む試料を当該プライマーで増幅したときの増幅産物を適用した場合、ヘリコバクター属をユニバーサルに検出可能な特異的なプローブを固定化したスポットから有意な電流信号が検知された。また、ヘリコバクター・ヘパティカス(H. hepaticus)、ヘリコバクター・ムリダルム(H.muridarum)、ヘリコバクター・タイフォロニウス(H.typhlonius)、ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)を含む試料を当該プライマーで増幅したときの反応産物を適用した場合、それぞれの微生物種に特異的なプローブを固定化した電極からのみ有意な電流信号が検知された。結果を図8に示す。図8A〜Fにおいて「nega」は、ネガティブコントロールプローブを表す。
【0103】
図8Aは、検体としてヘリコバクター・ヘパティカスを含む試料を表4に示す塩基配列からなるプライマーにより増幅反応を行い、その反応産物を当該チップに適用したときの電流信号を測定した結果である。ヘリコバクター・ヘパティカスを検出するためのプローブが固定化されている領域のみにおいて電流信号が有意に増大した。
【0104】
図8Bは、検体としてヘリコバクター・ムリダルムを含む試料を表4に示す塩基配列からなるプライマーにより増幅反応を行い、その反応産物を当該チップに適用したときの電流信号を測定した結果である。ヘリコバクター・ムリダルムを検出するためのプローブが固定化されている領域のみにおいて電流信号が有意に増大した。
【0105】
図8Cは、検体としてヘリコバクター・タイフォロニウスを含む試料を表4に示す塩基配列からなるプライマーにより増幅を行い、その反応産物を当該チップに適用したときの電流信号を測定した結果である。ヘリコバクター・タイフォロニウスを検出するためのプローブが固定化されている領域のみにおいて電流信号が有意に増大した。
【0106】
図8Dは、検体としてヘリコバクター・ピロリを含む試料を表4に示す塩基配列からなるプライマーにより増幅反応を行い、その反応産物を当該チップに適用したときの電流信号を測定した結果である。ヘリコバクター・ピロリを検出するためのプローブが固定化されている領域のみにおいて電流信号が有意に増大した。
【0107】
図8Eは、検体としてウォリネラを含む試料について、表4に示す塩基配列からなるプライマーにより増幅反応を行い、その反応産物を当該チップに適用したときの電流信号を測定した結果である。何れの電極においても顕著な電流信号は観察されなかった。
【0108】
図8Fは、検体としてカンピロバクター.フェタス(C.fetus)を含む試料について、表4に示す塩基配列からなるプライマーにより増幅反応を行い、その反応産物を当該チップに適用したときの電流信号を測定した結果である。何れの電極においても顕著な電気信号は観察されなかった。
【0109】
なお、鋳型核酸を含まない試料について増幅反応を行った結果得られた反応産物を当該チップに適用した場合には、何れの電極においても有意な電気信号は観察されなかった。また、ネガティブコントロールプローブについても、どのような検体を含む試料を増幅した場合についても有意な電気信号は観察されなかった。更に、カンピロバクター.コリ(C.coli)、カンピロバクター.ジュジュニ(C.jujuni)、アルコバクター(Arcobacter)を検体として含む試料について増幅反応を行い、得られた反応産物を当該チップに適用した場合についても有意な電気信号は観察されなかった。
【0110】
以上のことから、本発明に従うプライマーは、ヘリコバクター属の微生物由来の核酸を特異的に増幅することが可能であると伴に、本発明に従うプローブは、LAMP反応後に得られた反応産物をヘリコバクター属特異的、および/または種特異的に検出することが可能であることが明らかになった。
【0111】
なお、上記において、ヘリコバクター属の微生物の核酸を増幅および/またはユニバーサルに検知および/または種特異的に検知した例を示したが、ヘリコバクター・ヘパティカス(H. hepaticus)、ヘリコバクター・ムリダルム(H.muridarum)、ヘリコバクター・タイフォロニウス(H.typhlonius)およびヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)以外の微生物種についてもLAMP増幅および/または検知を行った。その結果、当該プライマーにより、ヘリコバクター属の微生物の核酸は特異的に増幅された。また、ユニバーサルなプローブにより共通に検知され、且つ対象となった微生物の種に応じた種特異的なプローブにより種特異的に検知された。
【0112】
微生物と、その検知のために使用するプライマーおよびプローブの組合せの例を表11に示した。
【表11−1】
【0113】
【表11−2】
【0114】
【表11−3】
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】従来のLAMP法による増幅方法を説明するための模式図。
【図2】従来のLAMP法を用いて得られる増幅産物を説明するための模式図。
【図3】本発明の測定用核酸の製造における増幅方法を説明するための模式図。
【図4】本発明の測定用核酸を説明するための模式図。
【図5】ヘリコバクター属に分類される微生物遺伝子型判定用核酸チップ。
【図6】ヘリコバクター属に分類される微生物遺伝子型判定用核酸チップ。
【図7】LAMP増幅の電気泳動写真の一例を示す図。
【図8A】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【図8B】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【図8C】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【図8D】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【図8E】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【図8F】電流検知型核酸チップによる検知結果の一例を示す図。
【符号の説明】
【0116】
1・・・プローブ
2・・・プローブ
3・・・プローブ
4・・・プローブ
5・・・プローブ
6・・・スライドガラス
10・・・基板
11・・・金電極
12・・・接続部
13・・・プローブ
14・・・プローブ
15・・・プローブ
16・・・プローブ
17・・・プローブ
18・・・核酸プローブ固定化電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリコバクター属の微生物由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットであって、前記LAMP増幅用核酸プライマーセットはFIPプライマー、F3プライマー、BIPプライマーおよびB3プライマーを具備し、これらのプライマーはF1、F2、F3、B1c、B2cおよびB3c領域を次の配列とすることを特徴とするプライマーセット:
当該F1領域は配列番号1またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含み、
当該F2領域は配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含み、
当該F3領域は配列番号7またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含み、
当該B1c領域は配列番号8またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含み、
当該B2c領域は配列番号9またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含み、および
当該B3c領域は配列番号10またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含む。
【請求項2】
ヘリコバクター属の微生物由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットであって、前記LAMP増幅用核酸プライマーセットは、FIPプライマー、F3プライマー、BIPプライマーおよびB3プライマーを具備し、
当該FIPプライマーは、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28および配列番号29並びにそれらの相補配列からなる群より少なくとも1選択される配列により示されるポリヌクレオチドからなり、
当該F3プライマーは配列番号7またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなり、
当該BIPプライマーは、配列番号30またはそれらの相補配列により示されるポリヌクレオチドからなり、
当該B3cプライマーは配列番号10またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなる
プライマーセット。
【請求項3】
ヘリコバクター属の微生物の検知および/または分類するためのアッセイキットであって、
請求項1または2の何れか1項に記載のプライマーセットと、
前記プライマーセットを用いて得られた増幅産物からヘリコバクター属の微生物を特異的に検出するためのプローブであり、配列番号31、32、33、34、35、36および37並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
を含むことを特徴とするアッセイキット。
【請求項4】
ヘリコバクター属の微生物の検知および/または分類するためのアッセイキットであって、
請求項1または2の何れか1項に記載のプライマーセットと、
前記プライマーセットを用いて得られた増幅産物からヘリコバクター・へパティクス、ヘリコバクター・ムリダルム、ヘリコバクター・タイフォロニウスおよびヘリコバクター・ピロリを特異的に検出するためのプローブであり、配列番号38、39、40、41、42、43、44および45並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
を含むことを特徴とするアッセイキット。
【請求項5】
ヘリコバクター属の微生物の検知および/または分類するためのアッセイキットであって、
請求項1または2の何れか1項に記載のプライマーセットと、
前記プライマーセットを用いて得られた増幅産物から所望の種を検出するためのプローブであり、配列番号46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65および66並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
を含むことを特徴とするアッセイキット。
【請求項6】
ヘリコバクター属の微生物の検知および/または分類するためのアッセイキットであって、
請求項1または2の何れか1項に記載のプライマーセットと、
前記プライマーセットを用いて得られた増幅産物から所望の種を検出するためのプローブであり、配列番号67、68、69、70、71、72および73並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
を含むことを特徴とするアッセイキット。
【請求項7】
ヘリコバクター属の微生物の検知および/または分類するためのアッセイキットであって、
請求項1または2の何れか1項に記載のプライマーセットと、
前記プライマーセットを用いて得られた増幅産物から所望の種を検出するためのプローブであり、配列番号74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84および85並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
を含むことを特徴とするアッセイキット。
【請求項8】
ヘリコバクター属の微生物の検知および/または分類するためのアッセイキットであって、
請求項1または2の何れか1項に記載のプライマーセットと、
前記プライマーセットを用いて得られた増幅産物から所望の種を検出するためのプローブであり、配列番号86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118および119並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
を含むことを特徴とするアッセイキット。
【請求項9】
ヘリコバクター属の微生物に由来する核酸を特異的に増幅する方法であって、試料を請求項1または2の何れか1項に記載のプライマーセットを用いてLAMP増幅することを具備する方法。
【請求項10】
ヘリコバクター属の微生物を検知する方法であって、
試料に含まれる核酸を請求項1または請求項2の何れか1項に記載のプライマーセットを用いてLAMP増幅することと、
前記LAMP増幅により生じた増幅産物の有無に基づいて、前記試料中のヘリコバクター属の微生物の存在の有無を判定することと
を具備する方法。
【請求項11】
ヘリコバクター属の微生物を検知および/または分類する方法であって、
試料に含まれる核酸を請求項1または請求項2の何れか1項に記載のプライマーセットを用いてLAMP増幅することと、
前記LAMP増幅により生じた反応産物と、
配列番号31、32、33、34、35、36および37並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
配列番号38、39、40、41、42、43、44および45並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
配列番号46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65および66並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
配列番号67、68、69、70、71、72若しくは73またはその相補配列で示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
配列番号74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84および85並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、および/または
配列番号86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118および119並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と
を反応することと、
前記反応の結果から、試料に存在するヘリコバクター属の微生物を検知および/または分類することと
を具備する方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記プローブ群が基体に固定されていることを特徴とする方法。
【請求項1】
ヘリコバクター属の微生物由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットであって、前記LAMP増幅用核酸プライマーセットはFIPプライマー、F3プライマー、BIPプライマーおよびB3プライマーを具備し、これらのプライマーはF1、F2、F3、B1c、B2cおよびB3c領域を次の配列とすることを特徴とするプライマーセット:
当該F1領域は配列番号1またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含み、
当該F2領域は配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含み、
当該F3領域は配列番号7またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含み、
当該B1c領域は配列番号8またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含み、
当該B2c領域は配列番号9またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含み、および
当該B3c領域は配列番号10またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含む。
【請求項2】
ヘリコバクター属の微生物由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットであって、前記LAMP増幅用核酸プライマーセットは、FIPプライマー、F3プライマー、BIPプライマーおよびB3プライマーを具備し、
当該FIPプライマーは、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28および配列番号29並びにそれらの相補配列からなる群より少なくとも1選択される配列により示されるポリヌクレオチドからなり、
当該F3プライマーは配列番号7またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなり、
当該BIPプライマーは、配列番号30またはそれらの相補配列により示されるポリヌクレオチドからなり、
当該B3cプライマーは配列番号10またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなる
プライマーセット。
【請求項3】
ヘリコバクター属の微生物の検知および/または分類するためのアッセイキットであって、
請求項1または2の何れか1項に記載のプライマーセットと、
前記プライマーセットを用いて得られた増幅産物からヘリコバクター属の微生物を特異的に検出するためのプローブであり、配列番号31、32、33、34、35、36および37並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
を含むことを特徴とするアッセイキット。
【請求項4】
ヘリコバクター属の微生物の検知および/または分類するためのアッセイキットであって、
請求項1または2の何れか1項に記載のプライマーセットと、
前記プライマーセットを用いて得られた増幅産物からヘリコバクター・へパティクス、ヘリコバクター・ムリダルム、ヘリコバクター・タイフォロニウスおよびヘリコバクター・ピロリを特異的に検出するためのプローブであり、配列番号38、39、40、41、42、43、44および45並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
を含むことを特徴とするアッセイキット。
【請求項5】
ヘリコバクター属の微生物の検知および/または分類するためのアッセイキットであって、
請求項1または2の何れか1項に記載のプライマーセットと、
前記プライマーセットを用いて得られた増幅産物から所望の種を検出するためのプローブであり、配列番号46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65および66並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
を含むことを特徴とするアッセイキット。
【請求項6】
ヘリコバクター属の微生物の検知および/または分類するためのアッセイキットであって、
請求項1または2の何れか1項に記載のプライマーセットと、
前記プライマーセットを用いて得られた増幅産物から所望の種を検出するためのプローブであり、配列番号67、68、69、70、71、72および73並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
を含むことを特徴とするアッセイキット。
【請求項7】
ヘリコバクター属の微生物の検知および/または分類するためのアッセイキットであって、
請求項1または2の何れか1項に記載のプライマーセットと、
前記プライマーセットを用いて得られた増幅産物から所望の種を検出するためのプローブであり、配列番号74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84および85並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
を含むことを特徴とするアッセイキット。
【請求項8】
ヘリコバクター属の微生物の検知および/または分類するためのアッセイキットであって、
請求項1または2の何れか1項に記載のプライマーセットと、
前記プライマーセットを用いて得られた増幅産物から所望の種を検出するためのプローブであり、配列番号86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118および119並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
を含むことを特徴とするアッセイキット。
【請求項9】
ヘリコバクター属の微生物に由来する核酸を特異的に増幅する方法であって、試料を請求項1または2の何れか1項に記載のプライマーセットを用いてLAMP増幅することを具備する方法。
【請求項10】
ヘリコバクター属の微生物を検知する方法であって、
試料に含まれる核酸を請求項1または請求項2の何れか1項に記載のプライマーセットを用いてLAMP増幅することと、
前記LAMP増幅により生じた増幅産物の有無に基づいて、前記試料中のヘリコバクター属の微生物の存在の有無を判定することと
を具備する方法。
【請求項11】
ヘリコバクター属の微生物を検知および/または分類する方法であって、
試料に含まれる核酸を請求項1または請求項2の何れか1項に記載のプライマーセットを用いてLAMP増幅することと、
前記LAMP増幅により生じた反応産物と、
配列番号31、32、33、34、35、36および37並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
配列番号38、39、40、41、42、43、44および45並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
配列番号46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65および66並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
配列番号67、68、69、70、71、72若しくは73またはその相補配列で示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、
配列番号74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84および85並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と、および/または
配列番号86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118および119並びにその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1と
を反応することと、
前記反応の結果から、試料に存在するヘリコバクター属の微生物を検知および/または分類することと
を具備する方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記プローブ群が基体に固定されていることを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【公開番号】特開2010−130931(P2010−130931A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309082(P2008−309082)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成2008年11月20日 第31回日本分子生物学会年会・第81回日本生化学会大会 合同大会 発行の「BMB2008 講演要旨集」に発表
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(390016470)財団法人実験動物中央研究所 (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成2008年11月20日 第31回日本分子生物学会年会・第81回日本生化学会大会 合同大会 発行の「BMB2008 講演要旨集」に発表
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(390016470)財団法人実験動物中央研究所 (12)
【Fターム(参考)】
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