説明

ヘルメットのフェースシールド装着装置

【課題】ヘルメットの使用状況やヘルメット装着者の好みに応じて、ヘルメット本体前面のフェースシールドと顔面との間の空間距離を適切な状態に保持できるようにする。
【解決手段】ヘルメットのフェースシールド12は、図示しないヘルメット本体の前部内面に装着されたフェースシールド装着装置13のフェースシールドガイド板14に沿って上下方向に進退出可能に取り付けられている。フェースシールド12を下方へ引き出して前方へ押し出したとき、フェースシールドの左右上端部付近の内面側に付設されたフェースシールド内側突部31と、フェースシールドガイド板14の左右下端部付近の外面側に穿設されたフェースシールドガイド板凹部32とを契合させることにより、フェースシールド12は、真下方向に対する俯角を示す所望のチルト角を保持することができる。これにより、フェースシールド12はヘルメット装着者の顔面から所望の空間距離を保持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘルメットのフェースシールド装着装置に関するものであり、特に、フェースシールドがヘルメット本体の前部内面に沿って上下方向へ進退出可能に取り付けられたヘルメットのフェースシールド装着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の頭部を保護するヘルメットには、略半球状のヘルメット本体と、該ヘルメット本体内に設けられ、該ヘルメット本体の内面との間に隙間を設けて該ヘルメット本体に支持されるハンモックと、該ヘルメット本体の前部内面に装着されたフェースシールド装着装置と、該フェースシールド装着装置のフェースシールドガイド板に沿って進退出可能に設けられ、かつ、進出位置で使用者の顔面を保護するフェースシールドと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
前記ヘルメットに装着されるフェースシールドは、一般的に、透明その他の光透過性の素材の合成樹脂を成形して形成されたものであり、また、ヘルメット装着者の顔面に合うように顔面中央を頂部として湾曲している。そして、ヘルメット装着者が、作業時において顔面の保護が必要であると感じたとき、該フェースシールドを使用位置に下降スライドさせて所望の使用状態の位置におき、不使用時には、該フェースシールドを上昇スライドさせてヘルメット本体の格納位置に維持しておくことができるようになっている。
【0004】
また、従来におけるヘルメットのフェースシールドは、予め、フェースシールド装着装置のガイド部材(フェースシールドガイド板)にスライド可能に取り付けられてセット状態で用意され、該フェースシールドが取り付けられている該ガイド部材をヘルメット本体に取り付けることにより、フェースシールドは該ガイド部材と共にヘルメット本体に取り付けられている。なお、該ガイド部材への該フェースシールドの取り付けはカシメ等で分離不能に固定され、該ガイド部材と該ヘルメット本体との間の結合はクリップ等で着脱可能に取り付けられている。また、ヘルメット本体にフェースシールドとガイド部材とを取り付けた後は、該ガイド部材及び該フェースシールドの一部を覆って、ハンモック等の内装材が該ヘルメット本体の内面に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−13517号公報。
【特許文献2】特開2009−203569号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ヘルメットのフェースシールドはガイド部材(フェースシールドガイド板)にスライド可能に取り付けられているため、ヘルメットの装着者は必要に応じてフェースシールドを下方へ引き出して顔面を覆うことができるが、フェースシールドを下方へ引き出したときの使い勝手において種々の問題点がある。すなわち、下方へ引き出されたフェースシールドは、ヘルメットの装着者の顔面にほぼ密着するような状態になっているので、例えば、ヘルメット装着者のメガネが邪魔になったり、息苦しくなったり、あるいは吐息によってフェースシールドが曇ったりすることがある。また、フェースシールドがヘルメット装着者の口の部分に接近しているため、吐息が顔面に戻ってきて不快に感じることもあるし、ヘルメット装着者が声を出して作業指示を行うときに、その声が外部に通り難いこともある。さらには、ヘルメット装着者の顔の大きさや形状などによって、フェースシールドと顔面との間の空間距離が適切でないこともある。
【0007】
そこで、ヘルメットの使用状況やヘルメット装着者の好みに応じて、ヘルメット本体の前面のフェースシールドと顔面との間の空間距離を適切な状態に保持することができるようにするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、ヘルメット本体の前部内面に沿ってフェースシールドを上下方向に進退出可能に取り付けたヘルメットのフェースシールド装着装置であって、前記フェースシールドを下方へ引き出して前方へ押し出したとき、該フェースシールドの左右上端部付近の内面側に付設されたフェースシールド内側突部と、フェースシールドガイド板の左右下端部付近の外面側に穿設されたフェースシールドガイド板凹部とを契合させることにより、該フェースシールドは真下方向に対する俯角を示す所望のチルト角を保持することを特徴とするヘルメットのフェースシールド装着装置を提供する。
【0009】
この構成によれば、フェースシールドを下方へ引き出して前方へ押し出したとき、該フェースシールドの左右上端部付近の内面側に付設されたフェースシールド内側突部を、フェースシールドガイド板の左右下端部付近の外面側に穿設されたフェースシールドガイド板凹部に落し込んで契合させることにより、下方へ引き出されたフェースシールドを所望のチルト角に保持させることができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、上記フェースシールド内側突部と上記フェースシールドガイド版凹部とを対応させてそれぞれ任意の位置に設定することにより、上記フェースシールドは任意の引き出し位置において所望のチルト角を保持できることを特徴とする請求項1記載のヘルメットのフェースシールド装着装置を提供する。
【0011】
この構成によれば、フェースシールドの内面側に付設されたフェースシールド内側突部とフェースシールドガイド板の外面側に穿設されたフェースシールドガイド版凹部とを、それぞれ任意の位置に設置することにとより、フェースシールドは任意の引き出し位置においてチルト角を保持することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、上記フェースシールド内側突部と上記フェースシールドガイド板凹部は、それぞれ、該フェースシールドのスライド方向に沿って複数箇所に設けられ、対応する位置に設けられた該フェースシールド内側突部と該フェースシールドガイド版凹部とを契合させることにより、該フェースシールドは多段の引き出し位置においてチルト角を保持できることを特徴とする請求項1記載のヘルメットのフェースシールド装着装置を提供する。
【0013】
この構成によれば、フェースシールド内側突部とフェースシールドガイド板凹部は、それぞれ、フェースシールドのスライド方向に沿って複数箇所に設けられているので、対応する位置に設けられたフェースシールド内側突部とフェースシールドガイド版凹部とを契合させることにより、フェースシールドは多段の引き出し位置においてチルト角を保持することができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明は、ヘルメットのフェースシールドを下方へ引き出したときにフェースシールド内側突部をフェースシールドガイド板凹部に落し込むことにより、フェースシールドを所望のチルト角に保持させることができるので、下方へ引き出したフェースシールドをヘルメット装着者の顔面から適度に離すことができる。その結果、ヘルメット装着者のメガネが邪魔になることもなくなるし、息苦しさを感じることもなくなる。また、ヘルメット装着者の吐息によってフェースシールドが曇るおそれもなくなる。さらには、フェースシールドが装着者の口の部分から離れているので、吐息が顔面に戻ってきて不快に感じることもなくなるし、ヘルメット装着者が声を出して作業指示を行うときにその声が外部に通り易くなる。また、フェースシールドのチルト角は、フェースシールド内側突部とフェースシールドガイド板凹部とによって位置決めされて固定されるので、作業中にフェースシールドのチルト角がずれるおそれはなくなる。すなわち、ヘルメット装着者の使用状況や顔の形状などによって、フェースシールドと顔面との空間距離を最適に離すことができるので、フェースシールド付きヘルメットの使い勝手が一段と向上する。
【0015】
請求項2記載の発明は、フェースシールド内側突部とフェースシールドガイド板凹部とをそれぞれ任意の位置に設置することにより、フェースシールドは任意の引き出し位置でチルト角を保持することができるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、フェースシールド内側突部の付設位置とフェースシールドガイド板凹部の穿設位置を多様に変えたヘルメットをそれぞれ用意しておけば、それぞれのヘルメット装着者の好みに応じたフェースシールドの引き出し位置においてチルト角を保持させることができる。
【0016】
請求項3記載の発明は、フェースシールド内側突部とフェースシールドガイド板凹部は、それぞれ、フェースシールドのスライド方向に沿って複数箇所に設けられているので、請求項1記載の発明の効果に加えて、ヘルメット装着者の好みに応じて、フェースシールドの引き出し位置を多段に変えながら、所望の引き出し位置においてチルト角を保持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るフェースシールド装着装置を適用し、かつ、フェースシールドを使用位置に下降スライドさせた状態で示すヘルメットの側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るフェースシールド装着装置を適用し、かつ、フェースシールドを格納位置に上昇スライドさせた状態で示すヘルメットの側面図。
【図3】フェースシールドを使用位置に下降スライドさせた状態でヘルメット本体内側から見たヘルメットの斜視図。
【図4】フェースシールドを格納位置に上昇スライドさせた状態でヘルメット本体内側から見たヘルメットの斜視図。
【図5】フェースシールド装着装置の分解斜視図。
【図6】ヘルメット本体を取り除いた状態で側面視した、フェースシールドガイド板からフェースシールドを下方へ引き出した状態を示す側面図。
【図7】ヘルメットを取り除いた状態で側面視した、フェースシールドガイド板からフェースシールドを下方へ引き出して該フェースシールドを前方へ押し出した状態を示す側面図。
【図8】ヘルメット本体を取り除いた状態で側面視した、フェースシールドをフェースシールドガイド板の奥部へ収納した状態を示す側面図。
【図9】ヘルメット本体を取り除いた状態で側面視した、フェースシールドガイド板からフェースシールドを下方へ引き出した状態を示す側面図。
【図10】ヘルメットを取り除いた状態で側面視した、フェースシールドガイド板からフェースシールドを下方へ引き出して該フェースシールドを前方へ押し出した状態を示す側面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、ヘルメットの使用状況やヘルメット装着者の好みに応じて、ヘルメット本体の前面のフェースシールドと顔面との間の空間距離を適切な状態に保持することができるようにするという目的を達成するために、ヘルメット本体の前部内面に沿ってフェースシールドを上下方向に進退出可能に取り付けたヘルメットのフェースシールド装着装置であって、前記フェースシールドを下方へ引き出して前方へ押し出したとき、該フェースシールドの左右上端部付近の内面側に付設されたフェースシールド内側突部と、フェースシールドガイド板の左右下端部付近の外面側に穿設されたフェースシールドガイド板凹部とを契合させることにより、該フェースシールドは真下方向に対する俯角を示す所望のチルト角を保持することができるように構成したことによって実現した。
【実施例】
【0019】
以下、本発明に係るヘルメットのフェースシールド装着装置について、図1乃至図10を参照しながら好適な実施例を説明する。
【0020】
図1はフェースシールドを使用位置に下降スライドさせた状態で示すそのヘルメットの側面図、図2はフェースシールドを格納位置に上昇スライドさせた状態で示すそのヘルメットの側面図、図3はフェースシールドを使用位置に下降スライドさせた状態でヘルメット本体内側から見たヘルメットの斜視図、図4はフェースシールドを格納位置に上昇スライドさせた状態でヘルメット本体内側から見たヘルメットの斜視図である。また、図5は、フェースシールド装着装置の分解斜視図である。
【0021】
なお、以下の説明において、図1の上下方向の上側をフェースシールド12の上昇スライド方向(または格納位置方向)、上下方向の下側をフェースシールド12の下降スライド方向(または使用位置方向)とし、且つ、図1の紙面の表裏方向をヘルメット10の左右方向として説明する。
【0022】
図1〜図5において、ヘルメット10は、ヘルメット本体11と、フェースシールド12と、該フェースシールド12を保持しているフェースシールド装着装置13と、図示しないハンモック等の内装材等とにより概略構成されている。尚、ハンモックは、ヘルメット本体11に加わる外力を間接的に受けてヘルメット装着者の頭部に衝撃を与えることがないように、外力を吸収緩和する作用を有する部材であり、また、よく知られた一般的な部材である。
【0023】
前記ヘルメット本体11は、ヘルメット10の本体を塑性するシェル(殻体、帽体)であり、適宜の塑性加工素材、例えばHDPE(high density PE:高密度ポリエチレン)等の合成樹脂を素材として熱可塑成型して製作することができる。
【0024】
前記フェースシールド12は、透明その他の光透過性の素材の合成樹脂を成形して形成されるものである。該フェースシールド12は、ヘルメット装着者の顔面に合うように顔面中央を頂部として湾曲している面として形成されている。また、前記フェースシールド装着装置13は、フェースシールドガイド板14とスライド板部15とロック部材16により概略構成されている。
【0025】
次に、フェースシールド装着装置13の構造についてさらに詳細に説明する。該フェースシールド装着装置13を構成する前記フェースシールドガイド板14は、合成樹脂を成形して弾性変形可能な板状に形成されているものであり、中央部には上下方向に延びるガイド板部14aが形成され、該ガイド板部14aの下部左右両側にはそれぞれ左右方向外方へ延びる取付板部14b,14bが該ガイド板部14aと一体的に形成されている。
【0026】
また、該フェースシールドガイド板14は、ヘルメット本体11の前部中央部内面において、ガイド板部14aを上下方向に向けるとともに、左右の取付板部14b,14bをそれぞれヘルメット本体11の開口部近傍内面に這わせ、かつ、該ヘルメット本体11の内面側に設けられている係止部18,18に、左右の取付板部14b,14bに形成されている取付穴17,17を係合させて取り付けられる。なお、該フェースシールドガイド板14をヘルメット本体11に取り付けるとき、該フェースシールドガイド板14とヘルメット本体11内面との間には、前記フェースシールド12と前記スライド板部15の差し込みを可能にする隙間が設けられる。
【0027】
また、前記ガイド板部14aには、ヘルメット本体11の内側を向いた面(後面)に、上下方向に延びる左右一対の案内溝19,19と、該案内溝19,19との間で、かつ、上下方向に適宜の間隔を置いて複数の突状歯20a,20a…を形成してなるラック20が設けられている。なお、案内溝19,19とラック20との間にはスリット21,21が設けられ、該ラック20全体に前後方向の弾力性を持たせている。
【0028】
前記スライド板部15は、フェースシールド12の上端側に、該上端側からさらに上方に向かって延長するようにして該フェースシールド12から延設されて該フェースシールド12と一体的に形成されている。該スライド板部15の後面側には、前記フェースシールドガイド板14の前記左右の案内溝19,19に対応して左右一対のスライド脚22,22が後方に突出して設けられている。
【0029】
該各スライド脚22,22は、それぞれ案内溝19,19内を通って前記フェースシールドガイド板14の裏面(前面)側から表面(後面)側に貫通し、その先端部が該フェースシールドガイド板14の表面から突出するように形成されており、また、該フェースシールドガイド板14の表面から突出した先端部側には、それぞれ内側を向いて開口された係合溝24,24を画成して、下面視下向きL字状に形成された係止部25,25が設けられている。さらに、各係止部25,25の上下中央部には、それぞれ左右外側から内側中央部に向かって幅が徐々に狭くなるようにして切欠形成されてなる切欠部23,23が設けられている。
【0030】
前記ロック部材16は、合成樹脂を成形して形成されている。該ロック部材16は、フェースシールドガイド板14の表面(後面)側において、前記フェースシールドガイド板14の案内溝19を貫通して裏面(前面)側から表面側に突出している前記スライド脚22,22の係合溝24,24に係合されて、該スライド脚22,22の抜け止めロックを行うための部材である。該ロック部材16は、前記スライド脚22,22の係合溝24,24に上下方向及び左右方向からスライド挿入可能な係止片26及び弾性ロック爪部27を各々左右両側に有している。また、該ロック部材16の中央部には、後面視上向きコ字状のスリット30を設けて形成された、上方から下方に向かって延びる片持ち状の弾性係止片28が設けられている。該弾性係止片28はフェースシールドガイド板14のラック20と対応しており、先端部にはラック20に圧接される係止爪28aが一体に形成されている。なお、ロック部材16の係止片26及び弾性ロック爪部27は、ロック部材16のロック部を形成している。
【0031】
このように構成されたフェースシールド装着装置13は、フェースシールド12をヘルメット本体11に取り付ける場合、まず、該ヘルメット本体11の内面に取り付けられているフェースシールドガイド板14と該ヘルメット本体11の間の隙間から、該シールドガイド板14の裏面側にフェースシールド12と一体化されているスライド板部15を差し込み、かつ、該スライド板部15のスライド脚22,22をフェースシールドガイド板14の表面側に案内溝19,19を貫通させて突出させる。次いで、ロック部材16を上または下方向よりスライドさせて、フェースシールドガイド板14の表面側に突出しているスライド脚22の係合溝24,24にロック部材16の係止片26,26及び弾性ロック爪部27,27をそれぞれ挿入させる。これにより、ロック部材16をスライド脚22,22に対してロック状態で取り付けることができる。また、該スライド脚22,22にロック部材16を取り付けた状態では、該ロック部材16における弾性係止片28の係止爪28aがフェースシールドガイド板14のラック20の面に圧接されており、この圧接でフェースシールド12が不用意に上下方向へ移動するのを抑える。
【0032】
これにより、フェースシールド12がヘルメット本体11の内面に取り付けられる。この取付状態で、フェースシールド12を下方向にスライドさせると、スライド脚22,22が案内溝19,19の下端に当接して移動が規制される使用位置まで、該フェースシールド12を引き出すことができる。図1及び図3は、フェースシールド12がこの使用位置に配置された状態を示している。反対に、フェースシールド12を上方向にスライドさせると、スライド脚22,22が案内溝19,19の上端に当接して移動が規制される格納位置まで、該フェースシールド12を収納することができる。図2及び図4は、フェースシールド12がこの格納位置に配置された状態を示している。また、その使用位置と格納位置の中間位置では、弾性係止片28の係止爪28aがラック20の歯20a,20a間に圧接係合されて、その中間位置での停止を維持することができる。
【0033】
以上のようにして、フェースシールド装着装置13がヘルメット本体11の内面に装着された状態において、フェースシールド12は、フェースシールド装着装置13のフェースシールドガイド板14に沿って自在にスライドし、ヘルメット本体11の内部から下方(すなわち、ヘルメット装着者の顔の部分)へ引き出したり、ヘルメット本体11の内部へ収納したりすることができる。
【0034】
ここで、フェースシールド12をヘルメット本体11から下方(ヘルメット装着者の顔の部分)へ引き出したときに、ヘルメット装着者の好みや使用状態に合わせてフェースシールド12のチルト角(すなわち、フェースシールド12の真下方向に対する俯角)を固定させる機構について図面を参照しながら説明する。尚、以下に示す図面では、ヘルメット本体11の内部図面として説明を分かりやすくするために、ヘルメット本体11の部分を省略して、フェースシールド装着装置13のフェースシールドガイド板14とフェースシールド12との相対関係のみを図示することにする。
【0035】
図6は、ヘルメット本体を取り除いた状態で側面視した、フェースシールドガイド板からフェースシールドを下方へ引き出した状態を示す側面図である。また、図7は、ヘルメットを取り除いた状態で側面視した、フェースシールドガイド板からフェースシールドを下方へ引き出して該フェースシールドを前方へ押し出した状態を示す側面図である。すなわち、図7は、フェースシールドガイド板からフェースシールドを下方へ引き出し、該フェースシールドをヘルメット装着者の顔面から持ち上げて(チルトさせて)所望のチルト角を設けた状態を示している。尚、図6、図7ではフェースシールドガイド板14とフェースシールド12との相対関係のみを示すために、フェースシールドガイド板14の詳細な内部構成の図示は省略されている。
【0036】
図6に示すように、フェースシールドガイド板14の左右下端部付近の外面側にはフェースシールドガイド板凹部32が穿設され、且つ、フェースシールド12の左右上端部付近の内面側にはフェースシールド内側突部31が付設されている。また、フェースシールド12の左右上端部付近の内面側で、前記フェースシールド内側突部31よりやや中央部寄りの位置にはフェースシールド隙間保持突部33が付設されている。
【0037】
このような構成において、図示しないヘルメット本体の内部に収納されて固着されたフェースシールドガイド板14からフェースシールド12をスライドさせて下方へ引き出すと、図6に示すように、フェースシールド12は地面に対してほぼ垂直な方向を向く状態となる。該フェースシールド12はこの状態でヘルメット装着者の顔面を保護することができるが、フェースシールド12がヘルメット装着者の顔面に密着する状態となっているので、ヘルメット装着者のメガネが邪魔になったり、息苦しくなったり、あるいは吐息によってフェースシールド12が曇ったりすることがある。また、フェースシールド12がヘルメット装着者の口の部分に接近するため、吐息が顔面に戻ってきて不快に感じることもあるし、ヘルメット装着者が声を出して作業指示を行うときにその声が外部に通り難いこともある。
【0038】
そこで、フェースシールド12を顔から離すように前方へ押し出すと、フェースシールドの左右上端部付近の内面側に付設されたフェースシールド内側突部31が図の矢印aの方向へ移動して、フェースシールドガイド板14の左右下端部付近の外面側に穿設されたフェースシールドガイド板凹部32に落し込まれる。すなわち、フェースシールド内側突部31がフェースシールドガイド板凹部32に契合することによって、図7に示すように、フェースシールド12が顔面から離れる方向(前方)へチルトされた(持ち上げられた)状態で保持され、該フェースシールド12に所望のチルト角(すなわち、フェースシールド12の垂直方向に対する俯角)が形成されて固定される。
【0039】
図7に示すように、下方へ引き出されたフェースシールド12が前方へ押し出されることによってフェースシールド内側突部31がフェースシールドガイド板凹部32に契合され、フェースシールド12は所望のチルト角を保持した状態で固定される。従って、ヘルメット装着者の作業中において、フェースシールド12は該ヘルメット装着者の顔面から持ち上げられて適切な空間距離が保持される。これによって、ヘルメット装着者は、ヘルメット10の最適な着帽状態でフェースシールド12によって顔面を覆いならが所望の作業を行うことができる。
【0040】
尚、フェースシールドガイド板14からフェースシールド12を進退出させるとき、フェースシールドガイド板14とフェースシールド12とが面接触して相対移動すると接触面積が大きいために、摩擦抵抗が大きくなってフェースシールド12をスライドするときに進退出させ難くなる。そこで、図6に示すように、フェースシールド12の左右上端部付近の内面側であって、フェースシールド内側突部31よりやや中央部寄りの位置にフェースシールド隙間保持突部33を付設し、このフェースシールド隙間保持突部33を介してフェースシールド12とフェースシールドガイド板14とを点接触させることにより、フェースシールド12をフェースシールドガイド板14から低い摩擦抵抗で進退出させることができる。尚、フェースシールド12の外面側に突部を設けて、該フェースシールド12とヘルメット本体の内面とを点接触させてフェースシールド12をスライドさせる技術は既に知られている。
【0041】
図8は、ヘルメット本体を取り除いた状態で側面視した、フェースシールドをフェースシールガイド板の奥部へ収納した状態を示す側面図、図9は、ヘルメット本体を取り除いた状態で側面視した、フェースシールガイド板からフェースシールドを下方へ引き出した状態を示す側面図、図10は、ヘルメットを取り除いた状態で側面視した、フェースシールガイド板からフェースシールドを下方へ引き出して該フェースシールドを前方へ押し出した状態を示す側面図である。尚、図8、図9、図10では、フェースシールドガイド板14の内部構成も図示されている。
【0042】
図8に示すように、フェースシールド12は、フェースシールドガイド板14のラック20に沿ってスライドして図示しないヘルメット本体の奥部へ収納される。フェースシールド12をヘルメット装着者の顔面側へ引き出すときは、図9に示すように、フェースシールド12をフェースシールドガイド板14のラック20に沿って下方へ引き出せばよい。このとき、フェースシールド12の内面側に付設されたフェースシールド隙間保持突起33がフェースシールドガイド板14の表面に点接触してスライドされるので、フェースシールド12を小さい摩擦抵抗で容易に引き出すことができる。尚、特に図示されていないが、フェースシールド12の外面側に設けた突起によって、該フェースシールド12とヘルメット本体の内面とを点接触でスライドさせることにより、フェースシールド12の進退出を一層容易にしている。
【0043】
次に、ヘルメット装着者の好みに応じてフェースシールド12を顔面から前方へ押し出す場合は、図10に示すように、ヘルメット装着者が手でフェースシールド12を前方へ押し出すと、フェースシールド内側突部31がフェースシールドガイド板凹部32に自動的に落し込まれるので、フェースシールド12から手を離しても該フェースシールド12は所定のチルト角を保持した状態となり、ヘルメット装着者は、顔面から最適な空間距離を保持させたフェースシールド12によって顔面を覆いながら所望の作業を行うことができる。
【0044】
すなわち、本発明に係るヘルメットのフェースシールドは、ヘルメット本体10の前部内面に装着されたフェースシールドガイド板14に沿って上下方向に進退出できるように構成されていて、フェースシールド12を下方へ引き出して前方へ押し出したとき、該フェースシールド12の左右上端部付近の内面側に付設されたフェースシールド内側突部31と、フェースシールドガイド板14の左右下端部付近の外面側に穿設されたフェースシールドガイド板凹部32とを契合させることにより、フェースシールド12を所望のチルト角に保持させることができる。
【0045】
また、フェースシールド内側突部31とフェースシールドガイド板凹部32とを対応させてそれぞれ任意の位置に設定することにより、フェースシールド12を任意の引き出し位置において所望のチルト角に保持させることができる。さらに、フェースシールド内側突部31とフェースシールドガイド板凹部32とを、それぞれ、フェースシールド12のスライド方向に沿って複数箇所に設置すれば、フェースシールド12に付設されたフェースシールド内側突部31とフェースシールドガイド板14に穿設されたフェースシールドガイド板凹部32とを対応する位置で契合させることにより、フェースシールド12を多段の引き出し位置において所望のチルト角に保持させることができる。
【0046】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、保安用のヘルメットとして利用できるのは勿論であるが、その他、あらゆる用途に適用されるヘルメットにも利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 ヘルメット
11 ヘルメット本体
12 フェースシールド
13 フェースシールド装着装置
14 フェースシールドガイド板
14a ガイド板部
14b 取付板部
15 スライド板部
16 ロック部材
17 取付穴
18 係止部
19 案内溝
20 ラック
20a 突状歯
21 スリット
22 スライド脚
23 切欠部
24 係合溝
25 係止部
26 係止片
27 弾性ロック爪部
28 弾性係止片
28a 係止爪
30 スリット
31 フェースシールド内側突部
32 フェースシールドガイド板凹部
33 フェースシールド隙間保持突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメット本体の前部内面に沿ってフェースシールドを上下方向に進退出可能に取り付けたヘルメットのフェースシールド装着装置であって、
前記フェースシールドを下方へ引き出して前方へ押し出したとき、該フェースシールドの左右上端部付近の内面側に付設されたフェースシールド内側突部と、フェースシールドガイド板の左右下端部付近の外面側に穿設されたフェースシールドガイド板凹部とを契合させることにより、該フェースシールドは真下方向に対する俯角を示す所望のチルト角を保持することを特徴とするヘルメットのフェースシールド装着装置。
【請求項2】
上記フェースシールド内側突部と上記フェースシールドガイド板凹部とを対応させてそれぞれ任意の位置に設定することにより、上記フェースシールドは任意の引き出し位置において所望のチルト角を保持できることを特徴とする請求項1記載のヘルメットのフェースシールド装着装置。
【請求項3】
上記フェースシールド内側突部と上記フェースシールドガイド板凹部は、それぞれ、該フェースシールドのスライド方向に沿って複数箇所に設けられ、対応する位置に設けられた該フェースシールド内側突部と該フェースシールドガイド板凹部とを契合させることにより、上記フェースシールドは多段の引き出し位置においてチルト角を保持できることを特徴とする請求項1記載のヘルメットのフェースシールド装着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−122169(P2012−122169A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274648(P2010−274648)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000149930)株式会社谷沢製作所 (48)
【Fターム(参考)】