説明

ベクトルネットワークアナライザ/雑音指数測定

【課題】DUTの雑音指数の予測が、試験セットにおける機械的切換えなしで行われるようにする。
【解決手段】第1、第2の方向性結合器14、18の間にミスマッチ同調器16が接続されたポート1反射率計20と、第3、第5の方向性結合器24、34からなるポート2反射率計32の間にDUT26が配置され、第4の方向性結合器28が低雑音受信器30に接続されている。ミスマッチ同調器16を用いて測定した低雑音受信器30の負荷整合、DUT26の雑音電力出力及びSパラメータを基にしてDUT26の雑音指数を予測する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
能動装置の雑音指数測定は、常々、冗長で、誤りを犯しやすい手順であった。雑音指数受信器および可変ミスマッチをネットワークアナライザと組み合わせることにより、雑音指数測定精度は大幅に改善され、それ以前よりも著しく高速になる。
【0002】
被試験デバイス(DUT)の不整合および雑音プリング(noise pulling)、ならびに雑音測定受信器の雑音寄与の不明さは、すべて、測定における主要な誤差源である。これまで、これらの誤差を除去するために、いくつかの試験セットアップからの測定が必要とされてきた。第1に、DUTが、ネットワークアナライザを用いて、そのSパラメータを特徴付けるために測定され、次いで第2に、DUTが、雑音指数アナライザを用いて、その雑音指数を獲得するために測定される。加えて、入力不整合に起因する増幅器の雑音プリングを求めるために、DUTが、いくつかの既知のミスマッチ(不整合)標準を用いて再測定され、デバイスの雑音パラメータが求められる。これらは時間のかかる測定であり、環境中に存在する人工放射によって容易に妨害される雑音測定に関連して非常に小さな信号レベルを取り扱う場合には、特に面倒である。
【発明の開示】
【0003】
本発明では、雑音電力およびSパラメータの測定が、試験セットにおける機械的切換えなしにほぼ同時に行われるように、雑音受信器がネットワークアナライザブロック図に組み込まれる。加えて、ネットワークアナライザによってSパラメータ校正用に使用される、E−calとして知られる可変ミスマッチ装置が雑音指数測定法において使用され、所望の入力(おそらく50オーム)に接続された場合にDUTの期待される雑音指数性能が求められるように、信号源整合変動の影響が除去される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
(詳細な説明)
図1に、従来技術のブロック図を示す。
【0005】
図2に、本発明のブロック図(10)を示す。第1の信号源12が、第1の方向性結合器14に接続する。スルー状態を有するミスマッチ同調器16(Ecalなど)が、第2の方向性結合器18に接続される。これら2つの結合器14、18、および同調器16は、ポート1反射率計20を実現する。ポート1反射率計の出力は、被試験デバイス(DUT)26の入力に接続する。第3の方向性結合器24が、DUT26の出力に接続する。第4の方向性結合器28が、雑音電力測定のための低雑音受信器30へのDUT26の直接低損失接続を可能にし、さらに、第2の信号源36の基準方向性結合器34への経路も提供する。第3および第5の方向性結合器24、34は、ポート2の反射率計32を形成する。
【0006】
ミスマッチ同調器は、ポート1反射率計内に配置されるものとして図示されているが、第1および第2の方向性結合器の前または後に配置されてもよい。
【0007】
雑音受信器は、第3、第4、および第5の方向性結合器のうちのいずれか1つに接続されていてもよい。第4の方向性結合器は、スイッチで置き換えられてもよい。スイッチが使用されるときには、第3および第5の方向性結合器の前または後に配置され得る。
【0008】
図3に、いくつかの異なる測定器を用いて雑音パラメータ抽出を行う従来技術の方法に対応するプロセス流れ図を示す。
【0009】
ステップ100で、ネットワークアナライザと雑音指数計が校正される。
【0010】
ステップ102で、DUTのSパラメータが測定される。
【0011】
ステップ104で、雑音指数計の負荷整合が、ネットワークアナライザで測定される。
【0012】
ステップ106で、雑音指数計が、雑音源をオンとオフにして、DUTの雑音電力出力を測定する。
【0013】
ステップ108で、DUTの入力ポートがミスマッチ同調器に接続される。
【0014】
ステップ110で、同調器によって提供される様々な不整合においてDUTの雑音電力出力が測定される。
【0015】
ステップ112で、DUTが取り外される。ミスマッチ同調器は、ネットワークアナライザに接続される。前の各ステップで同調器によって生成されたのと同じ不整合の反射係数が測定される。
【0016】
ステップ114で、雑音源がネットワークアナライザに接続される。雑音源がオンとオフである間の反射係数が測定される。
【0017】
ステップ116で、DUTの雑音電力出力を、雑音源からの雑音入力電力および整合の様々な組み合わせに関連付けるデータが収集される。
【0018】
ステップ118で、DUTの雑音パラメータが、雑音モデル・フィッティング・アルゴリズムを用いて抽出される。
【0019】
ステップ120で、50オームの入力終端時におけるDUTの雑音指数が予測される。
【0020】
図4は、図2に示す装置を用いた雑音パラメータ抽出を示す。
【0021】
ステップ200で、装置が、Sパラメータおよび雑音電力の測定のために校正される。
【0022】
ステップ202で、DUTのSパラメータが測定される。
【0023】
ステップ204で、装置のポート2に組み込まれた雑音受信器の負荷整合が測定される。
【0024】
ステップ206で、装置のポート1に組み込まれた同調器によって提供される様々な不整合においてDUTの雑音電力出力が測定される。
【0025】
ステップ208で、DUTの雑音電力出力およびSパラメータを、入力整合の様々な組み合わせに関連付けるデータが収集される。
【0026】
ステップ210で、雑音モデル・フィッティング・アルゴリズムを用いて、DUTの雑音パラメータが抽出される。
【0027】
ステップ212で、50オームの入力終端時におけるDUTの雑音指数が予測される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来技術の雑音指数測定システムを示す簡略化したブロック図である。
【図2】本発明を示す簡略化したブロック図である。
【図3】従来技術による測定方法を示す図である。
【図4】図2に示す装置を用いた測定を示すプロセス流れ図である。
【符号の説明】
【0029】
12:第1の信号源
14:第1の方向性結合器
16:ミスマッチ同調器
18:第2の方向性結合器
20:ポート1反射率計
24:第3の方向性結合器
26:被試験デバイス(DUT)
28:第4の方向性結合器
30:低雑音受信器
32:ポート2反射率計
34:第5の方向性結合器
36:第2の信号源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験デバイスを測定する測定器であって、
第1の信号源と、
前記第1の信号源に接続され、2つの直列接続された方向性結合器を含むポート1反射率計と、
スルー状態を有し、前記ポート1反射率計に接続するミスマッチ同調器と、
ポート2反射率計であって、
第1および第2の方向性結合器と、
前記第1および前記第2の方向性結合器の間に介在する第3の方向性結合器およびスイッチのうちの1方と、
を有するポート2反射率計と
を備え、前記被試験デバイスは、前記ポート1反射率計と前記ポート2反射率計との間に配置され、低雑音受信器が前記ポート2反射率計に接続され、第2の信号源が前記ポート2反射率計に接続される、測定器。
【請求項2】
前記ミスマッチ同調器がECalである、請求項1に記載の測定器。
【請求項3】
前記ミスマッチ同調器が、前記第1の信号源と前記ポート1反射率計との間に配置される、請求項1に記載の測定器。
【請求項4】
前記ミスマッチ同調器が、前記2つの直列接続された方向性結合器の間に配置される、請求項1に記載の測定器。
【請求項5】
前記ミスマッチ同調器が、前記ポート1反射率計と前記被試験デバイスとの間に配置される、請求項1に記載の測定器。
【請求項6】
Sパラメータおよび雑音電力の測定のための測定器を校正するステップと、
被試験デバイス(DUT)のSパラメータを測定するステップと、
前記測定器のポート2に組み込まれた雑音受信器の負荷整合を測定するステップと、
前記測定器のポート1に組み込まれたミスマッチ同調器によって提供される様々な不整合において前記DUTの雑音電力出力を測定するステップと、
前記DUTの雑音電力出力およびSパラメータを、入力整合の様々な組み合わせに関連付けるデータを収集するステップと、
前記DUTの雑音パラメータを抽出するステップと、
前記DUTの雑音指数を予測するステップと
を含む方法。
【請求項7】
前記測定器が、
第1の信号源と、
前記第1の信号源に接続され、2つの直列接続された方向性結合器を含むポート1反射率計と、
スルー状態を有し、前記ポート1反射率計に接続するミスマッチ同調器と、
ポート2反射率計であって、
第1および第2の方向性結合器と、
前記第1および第2の方向性結合器の間に配置された第3の方向性結合器およびスイッチのうちの1方と、
を有するポート2反射率計と、
を備え、前記被試験デバイスは、前記ポート1反射率計と前記ポート2反射率計との間に配置され、低雑音受信器が前記ポート2反射率計に接続され、第2の信号源が前記ポート2反射率計に接続される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ミスマッチ同調器がECalである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ミスマッチ同調器が、前記第1の信号源と前記ポート1反射率計との間に配置される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ミスマッチ同調器が、前記2つの直列接続された方向性結合器の間に配置される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記ミスマッチ同調器が、前記ポート1反射率計と前記被試験デバイスとの間に配置される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記DUTの雑音指数を予測するステップが、50オームの入力終端時でのものである、請求項5に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−304450(P2008−304450A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−50008(P2008−50008)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【Fターム(参考)】