説明

ベニヤレース及び積層板の製造方法

【課題】製造工程も簡易で接着性も安定した、軽量な積層板を得る。
【解決手段】単板積層材15、合板26等の積層板は、一方の板面が平坦面、他方の板面は複数本の凹凸部が延びた凹凸面である平坦・凹凸面ベニヤ単板14を複数枚用い、隣接するベニヤ単板の平坦面と凹凸面とを互に向かい合わせて接着してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベニヤレース、当該ベニヤレースによって削成されたベニヤ単板を用いて積層板を製造する積層板の製造方法及び積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
循環可能な資源である木材を永続的に効率よく利用しようとしていく中で、ベニヤレースで旋削されたベニヤ単板を積層接着してつくる単板積層材(LVL)や合板等の積層板は、低質な原木からも安定した完成品ができる優秀な製品である。ここで単板積層材(LVL)とは接着するベニヤ単板の繊維方向が同方向であるもの、合板とはその繊維方向が直交しているものをいい、積層板はその両者を含む意である。
従来ベニヤレースは、刃先が長手方向に直線状に形成される直線状切削用刃物(以下「直線状刃物」という)を鉋台に取付け、原木を回転駆動するのと同時に刃物を原木に当接させながら前記鉋台を原木の回転軸方向へ移送機構によって移送させることにより、ベニヤ単板(以下「単板」という)を旋削している。そのため削成された単板の表面及び裏面は平坦な面を成し、複数枚の単板を積層接着した積層板は、単板の平坦な面同士を互に向い合わせて接着するため、接着層に隙間がなく、その積層板の木材密度は原木とほぼ変わりないものであった。
従って、従来ベニヤレースで旋削した単板から製造された積層板では、木材の強度や防音、断熱性などの性能を発揮させるため、ある特定の厚みを必要とする場合には、製品が重量化してしまうことが問題となっていた。
【0003】
そこで本出願人は、先に特許文献1に開示する如く、従来のベニヤレースの直線状刃物の代わりに、削成される単板の厚さ方向に対して所定の間隔をおくように相対して厚さ方向と直交する方向へ互い違い状に連続する凹刃および凸刃を有した凹凸状切削用刃物(以下「凹凸状刃物」という)を鉋台に取付けて、表面及び裏面に溝部が互い違い状に現れる所定厚さの単板(以下この単板を「凹凸単板」という)を削成した後、これらの複数枚の凹凸単板を互いに繊維方向が平行となる方向で凸部と凸部が対向して一致するように積層接着して単板積層材を製造する方法、あるいは繊維方向が直交する方向で積層接着して合板を製造する方法を提案した。
この発明により単板の削成工程において、削成と同時に溝部を単板の表面及び裏面に形成することができるため、溝部の作成工程を増すことはなく効率性がよい。又かかる凹凸単板を用いて合板や単板積層材を製造することによって、内部に空隙を構成することができ、合板や単板積層材を軽量化できるという成果を挙げた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−15612号公報
【特許文献2】特開平2−220805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明は、軽量化された合板や単板積層材を効率よく製造するという十分な効果を上げたが、その製造工程に於いては以下に記述するいくつかの問題を引き起こしている。
単板積層材の製造においては、複数枚の凹凸単板の繊維方向を互に一致させると共に、向い合う単板の凸部の位置を一致させるように積層しなければならないが、乾燥前に削成し形成した凸部同士の間隔が、各単板の乾燥収縮による収縮量の差異によって乾燥後においては異なってしまい、向い合う凸部の位置がずれるという問題が発生している。
詳述すると、原木からの凹凸単板を旋削する工程においては、乾燥の効率性と単板の切削性を考慮し、60%から200%の高含水率の原木から単板を旋削すると同時に、表面及び裏面の凹凸部を形成している。つまり、凹凸単板の凹凸部の寸法は、高含水率の状態で決められている。一方、単板の接着の工程に於いては、十分な接着力を得るために含水率を所定値になるまで下げた低含水率の単板を用いている。そのため、旋削工程から接着工程に至るまでに単板を乾燥する工程が設けられている。
【0006】
このように単板を乾燥させることは接着性能のためだけではなく、製品の軽量化はもとより、製品後の変色や腐朽の防止、更には収縮や変形の防止などの効果があり、単板を加工する上で重要な工程とされている。
一般に木材の乾燥による収縮率は、樹種によって異なるが、例えばスギの場合は、接線方向(円周方向)6.6%、半径方向(放射方向)2.7%、繊維方向0.2%と言われている。しかし、この収縮率は成熟材の正常な部分(以下正常材とする)の値であり、樹木の髄を中心としたある一定の大きさ(スギでは直径15cm程といわれている)の部分は未成熟材と呼ばれ、接線方向(円周方向)の収縮率は小さいが、繊維方向の収縮率は大きく、正常材の2倍から3倍にもなる。さらに、成熟材や未成熟材に限らず樹木の中には生育段階の環境の変化により発生した異常材が存在し、異常材の代表と言われる「あて材」の部分は、繊維方向の収縮率が正常材の5倍から10倍にもなると言われている。
そのため、高含水率の状態で削成された凹凸単板を乾燥すると、その材が正常材か、「あて材」かによって乾燥収縮率が異なるため、凹凸単板の繊維方向に形成された凹凸部の寸法に差異が生じてしまう。例えば、ベニヤレースでの毛引き寸法を2000mmとして高含水率の原木から凹凸単板を削成した後乾燥すると、正常材部分のものは乾燥収縮率が0.2%となり1996mmの仕上がりとなるが、「あて材」部分のものは乾燥収縮率が1%となり1980mmとなってしまい、その寸法差は16mmにもなる。これらの単板を用いて単板積層材をつくると次のような問題が起こる。
【0007】
図1は、特許文献1の凹凸単板を凸部と凸部が対向して一致するように3枚重ね合わせた単板積層材21の斜視図で、矢印A方向から見た正面図の左右端部と中央部を拡大した図を図2に示す。22は正常材の凹凸単板で、23は「あて材」の凹凸単板を示す。図2(a)は正常材22を3枚重ねた場合で、図2(b)は2枚の正常材22の間に「あて材」23を配置した場合を示す。図2(a)の正常材22の同士の場合は、凸部と凸部が対向している部分が左端から右端にわたって一致している。それに対して、図2(b)の場合は、「あて材」23の長さが正常材23より16mm(寸法差L10)短いため、仮に凸部と凸部の間隔L9を32mmとすると、左端の凸部を合わせると右端では凸部と凹部が対向する状態になってしまい、凸部と凸部とを突合せできず、接着することができない。また、間隔L9を大きくすることによりずれ量の割合を低減することができるが、この場合には板厚方向の強度が弱くなってしまう。
更に、「あて材」の程度の軽い場合や未成熟部などの乾燥収縮率が1%に満たない場合においても、対向する凸部の位置のずれにより凸部同士の接触面積が少ないために、接着不良や弱体接着をまねき、単位面積当たりの荷重が増すことによって接着の加圧の際に単板が板厚方向に潰れてしまうという問題も起きている。
一方、複数枚の凹凸単板を用いた合板の製造に於いては、凹凸単板の繊維方向を互に直交する方向で積層し接着する。よって、向い合った凸部の列の交差する部分でしか接着できないことになり、これ又接着面積が小さく接着の安定性が低いという欠点がある。
更には、通常、合板や単板積層材の表裏面は、その利用の都合上平坦な面が求められており、そのために積層構成においては表裏面には平坦な面の単板が必要になる。ところが特許文献1の発明では、一度凹凸状刃物を鉋台に装着すると凹凸単板しか削成することができないため、表面が平坦な単板を削成するためには、刃物を直線状刃物に取り換えるか、あるいは直線状刃物を装着したベニヤレースを別途設備するか、あるいは表裏面が平坦な単板を別途購入するか等しなければならず無駄が多かった。
【0008】
本発明は、このような技術背景のもと、軽くて強度のある積層板の製造工程で起きている前記のような問題を解決するために開発されたものであり、その目的は、一方の板面が平坦面、他方の板面は削成方向に複数の凹凸部が延びた凹凸面である平坦・凹凸面ベニヤ単板を削成し、一方の平坦・凹凸面単板の平坦面と他方の平坦・凹凸面単板の凹凸面とを互に向い合わせて積層接着することにより、製造工程も簡易で接着性も安定した、軽量な積層板を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、少なくとも、削成される原木の回転軸方向へ移送機構によって移送される2つの鉋台と、それぞれの鉋台に取付けられた切削用刃物とからなり、前記移送機構を、2つの切削用刃物により各別に削成するベニヤ単板の単板厚の合計の距離移送させることによって、2つの切削用刃物により同一又は異なる単板厚の帯状のベニヤ単板を同時に削成するベニヤレースであって、前記切削用刃物の一つを刃先が長手方向に直線状に形成される直線状切削用刃物に、もう一つを、刃物の厚み方向に凹凸状に形成された凹刃と凸刃とを刃物の長手方向に交互に配置し且つ各凹刃と凸刃の刃先が前記長手方向に凹凸状に形成される凹凸状切削用刃物とし、更に当該凹凸状刃先の起伏幅が凹刃、凸刃とも同一で且つ両起伏幅の合計が前記ベニヤ単板の単板厚よりも小さいことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、平坦・凹凸面帯状ベニヤ単板の製造方法であって、前記請求項1記載のベニヤレースを用いて、削成される原木から、一方の板面が平坦面、他方の板面は削成方向に複数本の凹凸部が延びた凹凸面である帯状のベニヤ単板を製造することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、平坦・凹凸面ベニヤ単板の製造方法であって、前記請求項2記載の帯状ベニヤ単板を所定長さに切断して、一方の板面が平坦面、他方の板面は凹凸面であるベニヤ単板を製造することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、平坦・凹凸面ベニヤ単板であって、前記請求項3記載の平坦・凹凸面ベニヤ単板の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、積層板の製造方法であって、前記請求項4記載の平坦・凹凸面ベニヤ単板を複数枚用いて積層板を製造するにあたり、積層板を構成する少なくとも2枚の平坦・凹凸面ベニヤ単板を、一方のベニヤ単板の平坦面と他方のベニヤ単板の凹凸面とを互に向い合わせて接着することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、積層板の製造方法であって、前記請求項5記載の積層板の製造方法において、接着する任意の1枚の平坦・凹凸面ベニヤ単板の凹凸面に、両板面が平坦面である板状体のいずれかの平坦面を接着することによって、積層板の表裏両面に平坦面が表われるよう複数のベニヤ単板を積層接着したことを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、積層板の製造方法であって、前記請求項5記載の積層板の製造方法において、接着する任意の2枚の平坦・凹凸面ベニヤ単板を、一方のベニヤ単板の凹凸面と他方のベニヤ単板の凹凸面とを互に向い合わせて接着することによって、積層板の表裏両面に平坦面が表われるよう複数の平坦・凹凸面ベニヤ単板を積層接着したことを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、単板積層材の製造方法であって、前記請求項6又は請求項7記載の積層板の製造方法において、少なくとも接着する任意の2枚の平坦・凹凸面ベニヤ単板の繊維方向を互に同一にして接着することを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、単板積層材であって、前記請求項8記載の単板積層材の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、単板積層材であって、前記請求項9記載の単板積層材において、単板積層材を構成する両最外層のベニヤ単板が交走木理をほぼ同一部位に揃えた対のベニヤ単板であることを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、合板の製造方法であって、前記請求項6又は請求項7記載の積層板の製造方法において、少なくとも接着する任意の2枚の平坦・凹凸面ベニヤ単板の繊維方向を互に直交させて接着することを特徴とする。
請求項12に記載の発明は、合板であって、前記請求項11記載の合板の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
請求項13に記載の発明は、合板であって、前記請求項12記載の合板において、合板を構成する両最外層のベニヤ単板が交走木理をほぼ同一部位に揃えた対のベニヤ単板であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1,2に記載の発明によれば、直線状刃物と凹凸状刃物とをそれぞれ装着した2台の鉋台が同時に原木を旋削することにより、一方の面は平坦な面で他方の面は複数本の凹凸部が延びた凹凸面である平坦・凹凸面帯状ベニヤ単板を得ることができた。
請求項3,4に記載の発明によれば、一方の面は平坦な面で他方の面は複数本の凹凸部が延びた凹凸面である平坦・凹凸面ベニヤ単板を得ることができた。
請求項5に記載の発明によれば、凸部の接触面積が安定することにより、板厚方向の強度も安定し、製品の不良率が低減した。この問題の解消により、今まで使用することができなかった未成熟材や曲がり材などに多く含まれる「あて材」などの低質原木も有効に使用できるようになった。
請求項6に記載の発明によれば、請求項5の効果に加えて、両板面が平坦面である板状体を一枚用いることで、積層接着した状態でその表裏両面に平坦面が表われる。
請求項7に記載の発明によれば、請求項5の効果に加えて、積層接着した状態でその表裏両面に平坦面が表われるよう、任意の2枚の平坦・凹凸面ベニヤ単板の接着向きを凹凸面同士とすることによって、従来別途設備で切削するか、購入する必要のあった両板面が平坦面である板状体を用いなくても、1種類の平坦・凹凸面ベニヤ単板のみで表裏両面が平坦な合板や単板積層材を製造することが可能となった。
請求項8,9に記載の発明によれば、請求項6または7の効果に加えて、従来必要であった凸部と凸部を突き合わせる手間のかかる作業が無くなり、単に凹凸面と平坦面を合わせればよいために作業効率が向上した。また、各単板の収縮量の差異による接着不良や弱体接着の問題も解消した。
請求項11,12に記載の発明によれば、請求項6または7の効果に加えて、それぞれの接着面積が2倍以上に増加し、接着性能が格段に向上した。
請求項10,13に記載の発明によれば、現在使用されることなく原木の伐採地に放置されている低質原木からも十分に、高い歩留まりで、反りやひねりの無い、木材の性質を生かしつつも軽量化された合板や単板積層材の製造を効率的に行うことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】3枚の凹凸単板を凸部と凸部が対向して一致させた単板積層材の斜視図(従来例)
【図2】図1中矢印A方向から見た面の左右端部と中央部の拡大図
【図3】本発明に係るベニヤレースの原木を旋削中の側断面説明図
【図4】直線状切削用刃物5の斜視図
【図5】凹凸状切削用刃物6の斜視図
【図6】凹凸状切削用刃物6の説明図
【図7】旋削中のスピンドルと各切削用刃物5,6の位置関係を示した説明図
【図8】平坦・凹凸帯状ベニヤ単板2a,2bの各断面図
【図9】2台の鉋台の移送量fを示した説明図
【図10】切削工程の後工程の説明図
【図11】平坦・凹凸面ベニヤ単板3プライの単板積層材15の積層状態説明図
【図12】単板積層材15の正面図
【図13】単板積層材15をホットプレスと熱風発生器で熱圧締する状態を示す説明図
【図14】平坦・凹凸面ベニヤ単板の正常材24と「あて材」25の積層状態説明図
【図15】平坦・凹凸面ベニヤ単板3プライの合板26の積層状態説明図
【図16】合板26をホットプレスと熱風発生器で熱圧締する状態を示す説明図
【図17】合板26の接着面積を示した説明図
【図18】凹凸単板3プライの合板28の斜視図(従来例)
【図19】合板28の接着面積を示した説明図
【図20】単板積層材29の積層状態説明図
【図21】単板積層材29の斜視図
【図22】合板30の積層状態説明図
【図23】合板30の斜視図
【図24】単板積層材31の積層状態説明図
【図25】単板積層材31の斜視図
【図26】合板32の積層状態説明図
【図27】合板32の斜視図
【図28】実施例4のベニヤレースの原木を旋削中の側断面説明図
【図29】実施例4のベニヤレースと2台の定尺切断装置の構成説明図
【図30】実施例4のベニヤレースと1台の定尺切断装置の構成説明図
【図31】実施例1のベニヤレースの変更例の説明図
【図32】突刺回転駆動ロールを用いた変更例の説明図
【図33】保持ロールとプレッシャーロールを用いた変更例の説明図
【図34】単板積層板54の積層状態説明図
【図35】合板55の積層状態説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照しながら、本発明の実施の一形態について説明する。ただし、以下の説明はあくまでも本発明の例示にすぎず、以下の記載によって発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
図3は、本発明に係るベニヤレースによって原木を旋削している状態を示した側断面説明図である。原木1は、一対のスピンドル3によって両木口を挟んで支持され、駆動用モータ9によってスピンドル3と共に矢印B方向に回転駆動されている。
2台の鉋台4a,4bは、スピンドル3の回転軸を対称軸として一方の鉋台4aを約180°回転移動したときに他方の鉋台4bにほぼ重なるような回転対称性の有る位置関係に配置され、また、それぞれがスピンドル3の回転軸(原木の回転軸と同じ)方向に向け進退自在に設置されている。
【0014】
移送機構10は、駆動用モータ9と、駆動伝達装置8a,8bと、送りネジ7a,7bで構成されている。駆動用モータ9は、スピンドル3の回転駆動と2台の鉋台4a,4bの移送駆動をする。送りネジ7a,7bは、ボールネジや台形ネジ等で成り、2台の鉋台4a,4bをスピンドル3の回転軸方向(鉋台4aは矢印C方向、鉋台4bは矢印D方向)へ移送する。駆動伝達装置8a,8bは、クラッチ等の動力の伝達を断続する装置と、替ギヤ方式等により減速比が変更可能な減速機とで構成される。原木1を旋削するときは、クラッチの動力の伝達を繋ぎ、駆動用モータ9から得た回転駆動力により、クラッチと減速機を介して送りネジ7a,7bを回転駆動し、各鉋台4a,4bを移送量fで移送する。この移送機構10の減速比により、後述する旋削される単板の厚みにより予め決められた、スピンドル3の1回転当たりに移送する各鉋台4a,4bの移送量fを設定している。
原木1が回転駆動されると同時に、2台の鉋台4a,4bがスピンドル3の回転軸方向へ移送され、2台の鉋台4a,4bにそれぞれ固定された切削用刃物5,6により、単板2a,2bが旋削される。
【0015】
切削用刃物5,6は、その刃先5a,6a(切削用刃物6の刃先6aについては、後述する仮想刃先)がスピンドル3の回転軸と平行となるように各鉋台4a,4bに固定されている。図4に切削用刃物5の斜視図を示す。切削用刃物5は従来ベニヤレースで使われている、刃先が直線状の直線状切削用刃物(以下「直線状刃物」という)5である。
一方、図5に切削用刃物6の斜視図を示す。切削用刃物6は、刃物の厚み方向に凹凸状に形成された凹刃と凸刃とを刃物の長手方向に交互に配置した凹凸状切削用刃物6である。図6は、凹凸状切削用刃物(以下「凹凸状刃物」という)6の(a)上面図、(b)正面図と側面図、(c)背面図、(d)G部拡大図を示す。図6(d)の太い実線で描いた線が上面から見た刃先6aの形状を表している。刃先6aは、刃幅をL1とした凸刃部6bと刃幅をL3とした凹刃部6cとで成り、刃物の長手方向に渡って凸刃部6bと凹刃部6cとを交互に連続した凹凸状となっている。又凸刃部6bと凹刃部6cは仮想刃先6e(細い2点鎖線)(切削用刃物6の刃先が直線状であったと仮定した刃先)からの起伏幅が同一になっており、起伏幅の合計が凹凸差L5である。凸刃6部bと凹刃部6cの間は、L2,L4の幅に対して凹凸差L5の傾斜刃部6dを形成している。本実施例では、L1を10mm、L2を6mm、L3を10mm、L4を6mm、L5を5mmとした。従って前記起伏幅は2.5mmとなる。
【0016】
次に、図7に旋削中のスピンドル3と切削用刃物5,6の位置関係を示す。仮にスピンドル3の回転軸芯の点をP0、切削用刃物5の刃先の点をP1、切削用刃物6の凸刃部6bと凹刃部6cの刃先の点をP2とP3とする。またP2とP3の中間点(仮想刃先の点)をP4、起伏幅をS3とする。
スピンドル3に対する切削用刃物5,6の原木1の円周方向の位置は、スピンドル3の回転軸芯P0から各鉋台4a,4bの移送方向(矢印C,D)に平行に引いた基準線(細い一点鎖線)より、間隔S0(本実施例では0.5mm)だけ原木1の回転方向(矢印B)側にずれた個所に各刃物5,6の刃先の点P1,P4が位置するように備えられる。また、旋削中の各鉋台4a,4bの移送方向の位置は、P0(スピンドル3の回転軸芯の点)からP1(切削用刃物5の刃先の点)までの距離S1と、P0(スピンドル3の回転軸芯の点)からP4(切削用刃物6の刃先の点P2とP3の中間点)までの距離S2とが常に等しくなる位置関係を常に保ちながら旋削する。
【0017】
次に、切削された平坦・凹凸面帯状単板2a,2bについて説明する。図7の平坦・凹凸面帯状単板2a,2bの各断面、E−E断面とF−F断面を図8に示す。平坦・凹凸面帯状単板(以下「平凸帯状単板」という)2a,2bは、一方の板面が平坦面、他方の板面は削成方向に複数本の凹凸部が延びた凹凸面となっている。図8(a)の平凸帯状単板2aは、凸部の幅が凹凸状刃物6の凹刃部6cのL3寸法によって決定され、凹部の幅は凸刃部6bのL1寸法によって決まる。一方、図8(b)の平凸帯状単板2bは、凸部の幅が凹凸状刃物6の凸刃部6bのL1寸法によって決定され、凹部の幅は凹刃部6cのL3寸法によって決まる。また、平凸帯状単板2a,2bの凹凸差は、凹凸状刃物6の凹凸差L5(本実施例では5mm)に相当する。
【0018】
次に、図9にて2台の鉋台4a,4bの移送量fについて説明する。本来、2台の鉋台を有するベニヤレースにおける鉋台の移送量は、各別に削成する単板の単板厚の合計の値となるが、本発明においては削成される単板の一方の面が凹凸面であるため、何をもって単板厚というのか疑義が生じる。後述するように当該単板を積層接着して製品とする場合は平坦な面から凸部の頂点までの距離が実質的な単板厚(以下「実質単板厚」とする)となるが、移送量を定める場合には平坦面から凹凸部の中間点までの距離を単板厚(以下「移送単板厚」とする)とする。即ち仮想刃先によって削成した単板厚に相当する。具体的には図8(b)の平凸帯状単板2bを表裏反転させ、図8(a)の平凸帯状単板2aに凹凸面同士を対向させ重ねた状態を図9に示す。この重ね合わせた状態の単板2cは、仮想的に凹凸状刃物6を使わずに、直線状刃物5のみで旋削した2枚の単板を重ね合わせたと考えることができる。そのため、この凹凸面同士を重ね合わせた状態の帯状単板2cの厚みL7が、鉋台4bの移送量fとなる。つまり、スピンドル3の1回転当りの2台の鉋台4a,4bの移送量fは、切削したい平凸帯状単板2a,2bの凹凸部の凹凸差に関係なく、平凸帯状単板2aと2bの凹凸面同士を重ね合わせた状態の単板2cの厚みL7の値を設定する。ただし、図9より明らかなように移送量fは、凹凸状刃物6の凹凸差L5よりも大きくなくてはならない。
よって本実施例では移送量fを10mmとしたため、平凸帯状単板2a,2bの凹凸面同士を重ね合わせた状態の厚みL7は10mmとなり、(L5+L6+L6)=L7より、L6は2.5mmとなり、実質単板厚(L5+L6)は7.5mm、移送単板厚(L5/2+L6)は5mmの平凸帯状単板2a,2bとなる。
【0019】
次に、この切削工程の後工程について図10にて説明する。ロータリーレースで旋削された平凸帯状単板2a,2bは、通常の合板を製造するのと同様に、回転刃11とアンビルロール12から成る定尺切断装置13によって、単板の繊維と直交する方向の長さが所望の長さL8となるように定尺切断され、複数枚の平坦・凹凸面ベニヤ単板(以下「平凸単板」という)14となる。その後、接着工程で接着剤の要求する含水率にするため乾燥装置(図示せず)で乾燥をする。
【0020】
次に、これらの工程を経て得られた平凸単板を複数枚積層接着して積層板を製造する工程を説明する。
本発明は、基本的に前記工程を経て得られた平凸単板を任意の複数枚積層接着して、各積層単板の繊維方向を互に同一にした単板積層材又は各積層単板の繊維方向を互に直交させた合板を製造するものであり、その際、一方の単板の平坦面と他方の単板の凹凸面とを互に向い合わせて接着することを特徴とする。この接着方法を以下「平凸接着」という。
図11は、3枚の平凸単板14を互いの繊維方向を同一にして、「平凸接着」をすべく配置した3プライの単板積層材15の積層状態を示す。図11の矢印G方向から見た圧締状態の単板積層材15の正面図を図12に示す。最上層の平凸単板15aと2層目の平凸単板15bのそれぞれの凹凸面側の凸部に、塗布装置(図示せず)にて熱硬化性接着剤16を塗布し重ね合わせて、ホットプレス18で接着剤16の硬化に要する所定時間熱圧締する。接着剤16は2層目に位置する平凸単板15bの表裏両面に塗布すると、塗布回数が少なく効率が良いが、接着に必要のない凹部にまで塗布してしまうため、接着剤のコスト削減のためには凹凸面側の凸部にのみ接着剤16を塗布するほうが望ましい。
【0021】
ホットプレス18は、蒸気や電気ヒーターなどを熱源として上熱盤18aと下熱盤18bを熱硬化性接着剤16が硬化するために必要な所望の温度(本実施例では135℃、熱硬化性接着では通常110℃〜140℃)に保ちつつ、所定の圧力(本実施例では0.8MPa、熱硬化性接着では通常0.8〜1.2MPa)で単板積層材15を熱圧締し、接着剤を硬化させる。熱圧締は、ホットプレスのみで行ってもよいが、図13に示すように、ホットプレスの熱圧締と同時に平凸単板15aと平凸単板15b又は平凸単板15bと平凸単板15cの凹凸部によってできた空隙17に熱風発生器19の熱風20を吹き込むことにより、より短い時間に均一で安定した接着剤の硬化を達成でき、単板積層材15の安定した接着を得ることができる。
【0022】
従来の凹凸単板の凸部と凸部が対向して一致するように重ね合わせて単板積層材21を製造する方法においては、図2(b)に示すように、正常材の凹凸単板22と正常材の5倍から10倍も繊維方向の乾燥収縮率が大きい「あて材」の凹凸単板23とで積層した場合、乾燥による収縮量が異なるために、対向する凸部と凸部を突き合わせる作業が困難である問題や、対向する凸部と凸部のずれにより接着面積が減少し、積層接着された単板積層材21の接着不良や弱体接着を招くなどの問題が挙げられていた。
それに対して本発明では図14に示すように、平凸単板の正常材24と平凸単板の「あて材」25を積層接着する場合は、乾燥収縮量の差があったとしても接着面積は変わることなく一定で、安定した接着性を得ることができる。また、従来必要であった凸部と凸部を対向させる手間のかかる工程を省くことができ、効率的に単板積層材を製造することが可能となった。このような効果は、「あて材」に限らず樹木の中心部分には必ず存在する未成熟材においても同様の効果を発揮する。
【実施例2】
【0023】
図16は、3枚の平凸単板14を互いの繊維方向を直交させて「平凸接着」すべく配置した3プライの合板26の積層状態を示す。合板の場合は積層する単板の繊維方向を互に直交させるから、縦横のサイズが異なる2種類の平凸単板を重ね合わせることになる。図15の実施例においては、最上層の平凸単板26aと最下層の平凸単板26cは繊維方向に長く、2層目の平凸単板26bは繊維方向と直交する方向に長い単板となる。本発明にかかるベニヤレースによって製造される平凸単板は単板の繊維方向と直交する方向に凹凸部が形成される。故に本実施例における2層目の平凸単板26bのように単板の繊維方向に短く、繊維方向と直交する方向に長いサイズの平凸単板を製造するには、長さの短い(繊維方向のサイズに見合う長さの)原木を削成するか、逆に長さの長い(繊維方向のサイズの2倍の長さに見合う長さの)原木を削成して半分の長さに切断する等、いずれにしても別工程によって製造された2種類の平凸単板を用意することになる。3枚の平凸単板26a〜26cを接着、加圧する工程は、前記単板積層材15の製造工程と同様であるので省略する。
【0024】
次に合板26の接着の安定性について説明する。図17は合板26の上面図で、最上層の平凸単板26aと2層目の平凸単板26bの接着している面の部分に斜線ハッチングを記した図である。一方、従来技術において示した3枚の凹凸単板28a,28b,28cを繊維方向が互いに直交する方向で積層接着した合板28の斜視図を図18に示す。そして合板26と同様に、上面図に最上層の単板28aと2層目の単板28bの接着している面の部分に斜線ハッチングを記したものを図19に示す。従来合板28では、図19に示すように凹凸単板28aの凸部列と28bの凸部列の交差している正方形の部分しか接着していなのに対して、本発明の合板26では図17に示すように、平凸単板26aの凸部列全面が接着するため、接着面積が2倍以上となり、安定した強固な接着が可能となる。また、本発明の合板26では凸部分に塗布した接着剤全てが有効に接着するのに対して、従来合板28では塗布した接着剤の4割程度しか有効に接着に寄与していないため非効率的である。
【実施例3】
【0025】
図20は、前記図11に示した単板積層材の最下層の平凸単板29cの凹凸面に、両板面が平坦面である板状体を「平凸接着」して4プライの単板積層材29を製造する積層状態を示す。ここに両板面が平坦面である板状体とは、単板はもとより、合板、MDF、パーティクルボードなどの木質系板状体を総称し、本実施例では単板を用いた例を示す。平凸単板29a,29b,29cの凸部分に塗布装置(図示せず)にて接着剤16を塗布し、平凸単板29a,29b,29cと両板面が平坦面の単板29dの繊維方向が互に一致する向きで、3枚の平凸単板29a,29b,29cをそれぞれ「平凸接着」し、さらに平凸単板29cと単板29dとを「平凸接着」した後、ホットプレスで接着剤16の硬化に要する所定時間熱圧締して、単板積層材29を製造する。かかる製造方法によって単板積層材29の両最外層の単板29a,29dの外側に平坦面が表われることになる。図21に単板積層材29の斜視図を示す。
【実施例4】
【0026】
図22は前記図15に示した合板の最下層の平凸単板30cに、平凸単板30cとは繊維方向が異なる平凸単板30d及び両板面が平坦面である板状体としての単板30eをそれぞれ「平凸接着」して5プライの合板30を製造する積層状態を示す。板状体については、本実施例においても前記と同様に単板を用いた例とする。又2層目、4層目の平凸単板30b、30dは前記同様別途製造用意する。平凸単板30a,30b,30c,30dの凸部分に塗布装置(図示せず)にて接着剤16を塗布し、4枚の凹凸平坦単板30a,30b,30c,30d及び両板面が平坦面である単板30eの繊維方向が交互に直交する向きで、且つそれぞれの平凸単板30a,30b,30c,30d及び単板30eを「平凸接着」した後、ホットプレスで接着剤16の硬化に要する所定時間熱圧締して、合板30を製造する。かかる製造方法によって合板30の両最外層の単板30a,30eの外側に平坦面が表われることになる。図23に合板30の斜視図を示す。
【0027】
前記2つの実施例図20及び図22においては、積層板の表裏両面に平坦面が表われるよう、両板面が平坦面である単板を最外層の単板の一つに用いる例を示したが、図34及び図35に示す単板積層板54又は合板55のように、両板面が平坦面である単板54c,55cを両最外層の単板54a,54e又は55a,55eの内側に位置する単板(3プライ、5プライの積層板の場合は中心に位置する単板が望ましい)に用いて、その両平坦面の両側に平凸単板54b,54d又は55b,55dを「平凸接着」し、積層板54,55の両最外層の単板の外側に平坦面が表われるようにしてもよい。
【実施例5】
【0028】
前記4つの実施例においては、積層板の表裏両面に平坦面が表われるよう、両板面が平坦面である単板を用いて積層接着したが、同様の目的のために、任意の2枚の平凸単板の凹凸面同士を互に向い合わせて接着し、少なくともいずれか一方の平凸単板の平坦面に別の平凸単板を「平凸接着」して、両最外層の単板の外側に平坦面が表われる積層板を製造することができる。図24は6プライの単板積層材、図26は5プライの合板を示す。図24において、平凸単板31a,31b,31c,31e,31fの凸部分に塗布装置(図示せず)にて接着剤16を塗布し、各平凸単板の繊維方向が互いに一致する向きで、且つ中央2枚の平凸単板31c,31dのみ凹凸面を向い合わせ、それらの外側の平凸単板31a,31b,31e,31fをそれぞれ「平凸接着」した後、ホットプレスで接着剤16の硬化に要する所定時間熱圧締し、単板積層材31を製造する。図25に単板積層材31の斜視図を示す。
さらには、少なくとも単板積層材31の反りやひねりに大きな影響を与える最外層に配置された平凸単板31aと31fを、単板繊維の交走木理(繊維の配向性)をほぼ同一部位に揃えた対のベニヤ単板とすることにより、積層された積層板は乾燥あるいは接着時の熱による伸縮により発生した内部応力が中立軸を中心にほぼ対称に保たれ、繊維の配向性が通直でない曲がり材などの通常使用できない材料からも、反りやひねりのない平坦な単板積層材を作ることができる。
【0029】
次に、図26は、縦横の長さの違う2種類の平凸単板を用いた5プライの合板の積層状態を示す。平凸単板32a,32b,32c,32eの凸部分に塗布装置(図示せず)にて接着剤16を塗布し、各平凸単板32a,32b,32c,32d,32eの繊維方向が互に直交する向きで、且つ中央2枚の平凸単板32c,32dのみ凹凸面を向い合わせ、それらの外側の平凸単板32a,32b,32eをそれぞれ「平凸接着」した後、ホットプレスで接着剤16の硬化に要する所定時間熱圧締し、合板32を製造する。図27に合板32の斜視図を示す。
また単板積層材31と同様に、少なくとも合板32の最外層に配置された平凸単板32aと32eが、単板繊維の交走木理(繊維の配向性)をほぼ同一部位に揃えた対のベニヤ単板を用いることにより、積層された積層板は乾燥あるいは接着時の熱による伸縮により発生した内部応力が中立軸を中心にほぼ対称に保たれることにより、繊維の配向性が通直でない曲がり材などの通常使用できない材料からも、反りやひねりのない平坦な合板を作ることができる。
また、単板積層材29,31と合板30,32の熱圧締においては、ホットプレスのみで行ってもよいが、凹凸面によってできた空隙に熱風発生器の熱風を吹き込むことにより、より短い時間に均一で安定した接着剤の硬化を達成できる。
単板積層材29,31と合板30,32は、木材の大きな特徴である軽くて強い特性や防音、断熱性などの性能を持ちつつ、凹凸面によって内部に空隙が形成され密度の低い性能を有する。更に表裏両面が平坦な面で構成されているため、壁や床下などの面材としても有効に使うことができる。
【実施例6】
【0030】
実施例1においては、2台の鉋台4a,4bの位置関係をスピンドル3の回転軸を対称軸として一方の鉋台4aを約180°回転移動したときに他方の鉋台4bにほぼ重なるような回転対称性の有る位置関係とすることにより、切削抵抗のうち原木を撓ませる方向の成分が互いに打ち消しあうため、原木を撓ませることもなく、安定した状態で切削することができ、良質な単板を得ることができる。しかし乍ら、2台の鉋台4a,4bは、設計上接触することなく配置可能であれば図28に示すような構成にしてもかまわない。つまり、2台の鉋台4a,4cの位置関係をスピンドル3の回転軸を対称軸として一方の鉋台4aを任意の角度θ(°)回転移動したときに他方の鉋台4cにほぼ重なるような回転対称性の有る位置関係としてもよい。ただし、その場合は原木を旋削するときの切削用刃物の刃先の軌道である渦巻き曲線の関係上、スピンドル3の回転軸芯の点P0から各切削用刃物5,6の刃先の点P1,P4までの距離S4,S2は、下記の式の関係を保ちながら鉋台を移送しなければならない。
S2−S4=(1/2−θ/360)×f
(f:原木1回転当たりの各鉋台の移送量)
【0031】
実施例1に記述した約180°の回転対称性の有る位置関係の場合は、スピンドル3の回転軸芯の点P0から各切削用刃物5,6の刃先の点P1,P4までの距離S1とS2が等しく、位置関係が単純なため初期センティングが簡易で、機械の保守において優位であるという利点があるが、図10に示すように旋削した単板の搬送方向が反対向きのため、定尺切断装置13などの後処理を行う機械の設置面積が大きくなってしまう難点がある。それに対して図28に示すように回転角度θ(°)の範囲を0<θ<110とした回転対称性の有る位置関係としたときは、単板の搬送方向が同方向に設置することができるため、図29,図30に示すような構成も可能となる。
図29について詳述すると、スピンドル3の回転軸を対称軸として一方の鉋台4aを90°回転移動したときに他方の鉋台4cにほぼ重なるような回転対称性の有る位置関係に配置した2台の鉋台4aと4cに、凹凸状刃物6と直線状刃物5を固定して原木1を旋削し、平凸帯状単板2a,2cを同方向に向けて搬送し、回転刃11とアンビルロール12から成る定尺切断装置32a,32bによって単板の繊維と直交する方向の長さが所望の長さL8となるよう定尺切断し、複数枚の平凸単板33a,33bを製造する。
【0032】
上記構成において、定尺切断装置32bの切断開始のタイミングを定尺切断装置32aより凹凸状刃物6の刃先から各定尺切断装置の切断位置までの距離の差L11だけ遅らすことにより、切断された平凸単板33a,33bは、実施例3に記述した単板繊維の交走木理(繊維の配向性)をほぼ同一部位に揃えた対の単板とすることができる。距離の差L11は、定尺切断装置32a切断開始時の凹凸状刃物6の刃先から定尺切断装置32bの切断位置までの距離(2π×S2×θ/360)+L10と、凹凸状切削用刃物6の刃先から定尺切断装置32aの切断位置までの距離L9の差分であるので、距離の差L11=(2π×S2×θ/360)+L10−L9となる。
【0033】
また、図30のように旋削し、原木1から旋削された平凸帯状単板2a,2cを同方向に向けて搬送し、重ね合わせた後に、定尺切断装置34によって所望の長さL8となるよう定尺切断し、複数枚の平凸単板35a,35bを製造するという構成でもよい。この場合でも、凹凸状刃物6の刃先から定尺切断装置34の切断位置までの距離L12(単板2aの搬送経路)と、凹凸状刃物6の刃先から定尺切断装置34の切断位置までの距離(2π×S2×θ/360)+L13(単板2cの搬送経路)とが、ほぼ等しくなるように重ね合わせた後、定尺切断することにより、平凸単板35a,35bは実施例3に記述した単板繊維の交走木理(繊維の配向性)をほぼ同一部位に揃えた対のベニヤ単板とすることができる。
以上のような構成をとることにより、単板繊維の交走木理(繊維の配向性)をほぼ同一部位に揃えた対の平凸単板を容易に取得することができ、現在使用されることなく原木の伐採地に放置されている低質原木からも十分に、高い歩留まりで、反りやひねりの無い、木材の性質を生かしつつも軽量化された合板や単板積層材の製造が効率的に行うことが可能となった。
【0034】
次に実施例の変更例を説明する。
1.実施例1のベニヤレースでは駆動用モータ9の駆動力で、原木1の回転駆動と駆動伝達装置8a,8bを介して2台の鉋台4a,4bの移送駆動を行う構成をとったが、駆動伝達装置8a,8bの代わりにそれぞれに駆動用モータを取り付ける構成であっても良い。
詳述すると、図31に概略説明図を示すように、インバータ制御されたインダクションモータ等のスピンドル駆動用モータ36によって、原木1はスピンドル3と共に回転駆動され、エンコーダ等の回転位置検出器37によってスピンドル3の回転が検出される。2台の鉋台4a,4bは、それぞれサーボモータ等の鉋台移送モータ38a,38bによって移送駆動され、エンコーダ等の位置検出器39a,39bによって位置検出される。制御器40は、回転位置検出器37によって検出されたスピンドル3の回転信号と位置検出器39a,39bによって検出された2台の鉋台4a,4bの位置信号を入力し、2台の鉋台4a,4bが予め設定された移送量fでスピンドル3へ向け移送する位置を演算し、鉋台移送モータ38a,38bを制御する。
【0035】
2.実施例1のベニヤレースではスピンドル3により原木1の回転駆動をしているが、原木の中心部分の強度が低い(腐って穴があいている原木など)材種では、図32に示すように、インダクションモータなどの突刺ロール駆動モータ42a,42bで回転駆動される突刺回転駆動ロール41a,41bで、各切削用刃物5,6の刃先直前の原木1の外周部を回転駆動する構成をとってもよい。突刺回転駆動ロール41a,41bは、各切削用刃物5,6の刃先線とほぼ平行に備えられ、周囲に多数の突刺体を有する突刺駆動部材を軸中心線方向に間隔を於いて多数配置して構成されている。また、切削時に問題となる裏割れの軽減を目的として、多数の突刺駆動部材の間隔に、原木1の外周部を加圧する分割状のプレッシャー部材43a,43bを配置してもよい。
また、突刺回転駆動ロール41a,41bからのトルクで十分である原木(切削抵抗が小さいか或いは、直径が小さい場合など)のときは、スピンドル3からの回転駆動力は必要なく、回転自在で原木の重量分のみを支える構成であってもよい。その場合、スピンドル3の代わりに、原木1の下面に沿いながら原木1の重量分を下側から保持する回転自在の保持ロール53を使った構成でもよい。
【0036】
3.図33に示すように、スピンドル3に代わって原木1の下面に沿いながら原木1の重量分を下側から保持する回転自在の保持ロール53と、インダクションモータなどのプレッシャーロール駆動モータ45a,45bで回転駆動され、各切削用刃物5,6の刃先直前の原木1と単板との境界付近の原木1の表面を加圧しながら回転駆動力を与えるプレッシャーロール44a,44bを具備する構成であってもよい。
【0037】
4.2台の鉋台4a,4b又は4a,4cの移送機構はモータ駆動によるネジの位置制御としたが、油圧シリンダをサーボ弁などで制御する方式でもよい。要は、必要な駆動力で鉋台を位置制御できる機構であれば良い。
【0038】
5.実施例1のベニヤレースでは、削成される平凸帯状単板2a、2bの単板厚は同じ場合を説明したが、異なる単板厚の平凸帯状単板も切削することができる。図7を用いて詳述すると、移送単板厚T1の平凸帯状単板2a、移送単板厚T2の平凸帯状単板2bを削成するためには下記の式の関係を保ちながら各鉋台を移送量f(f=T1+T2であることは前記実施例と同様)で移送すればよい。
S2−S1=(T2−T1)/2
また図28のように、2台の鉋台4a、4cの位置関係をスピンドル3の回転軸を対称軸として一方の鉋台4aを任意の角度θ(°)回転移動したときに他方の鉋台4cにほぼ重なるような回転対称性の有る位置関係とした場合は、下記の式の関係を保ちながら各鉋台を移送量fで移送すればよい。
S2−S4=T2−(T1+T2)×θ/360
更に、複数枚の平凸単板を積層接着して積層板を製造するにあたり、単板厚の異なる平凸単板を選択して使用することができる。むしろ中心部を構成する平凸単板は比較的脆弱な単板を使用することが多く、この場合単板厚は大となり、一方、最外層の平凸単板は木目の美しい良質な単板を使用することが多く、この場合単板厚は小となることが一般的である。故に前記各積層板の実施例において構成する各平凸単板及び板状体の厚みは適宜自由に選択することができる。
【0039】
6.凹凸状刃物6は、図6により凸刃部6bと凹刃部6cと傾斜刃部6dによって構成されているとしたが、凸刃部6bと凹刃部6cのみの構成であってもよい。また、刃物基材から加工して形成された刃物としているが、替刃式の刃物であってもよく、要は刃物の厚み方向に凹凸状に形成された凹刃と凸刃とを刃物の長手方向に交互に配置し且つ各凹刃と凸刃の刃先が前記長手方向に凹凸状に形成される刃物であればよい。
【0040】
7.単板積層材または合板の接着において接着剤16は、耐水性、耐候性の面からみて尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性接着剤が好ましいが、使用用途に応じて適切なもの(水性高分子−イソシアネート系、レゾシノール系、酢酸ビニル樹脂系など)を選択しても構わない。
【符号の説明】
【0041】
1:原木
2a,2b:平坦・凹凸面帯状ベニヤ単板
3:スピンドル
4a,4b:2台の鉋台
5:直線状切削用刃物
6:凹凸状切削用刃物
7a,7b:送りネジ
8a,8b:駆動伝達装置
9:駆動用モータ
10:移送機構
11:定尺切断装置
12:アンビルロール
13:定尺切断装置
14:平坦・凹凸面ベニヤ単板
15:3プライの単板積層材
16:接着剤
17:空隙
18:ホットプレス
19:熱風発生器
20:熱風
25:平坦・凹凸面ベニヤ単板の「あて材」
26:平坦・凹凸面ベニヤ単板14からなる3プライの合板
27:空隙
28:3プライの平坦・凹凸面ベニヤ単板の繊維方向を互いに直交する方向で積層接着した合板
29:3枚の平坦・凹凸面ベニヤ単板14と1枚の両板面が平坦面であるベニヤ単板を積層した単板積層材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、削成される原木の回転軸方向へ移送機構によって移送される2つの鉋台と、それぞれの鉋台に取付けられた切削用刃物とからなり、前記移送機構を、2つの切削用刃物により各別に削成するベニヤ単板の単板厚の合計の距離移送させることによって、2つの切削用刃物により同一又は異なる単板厚の帯状のベニヤ単板を同時に削成するベニヤレースであって、
前記切削用刃物の一つを刃先が長手方向に直線状に形成される直線状切削用刃物に、もう一つを、刃物の厚み方向に凹凸状に形成された凹刃と凸刃とを刃物の長手方向に交互に配置し且つ各凹刃と凸刃の刃先が前記長手方向に凹凸状に形成される凹凸状切削用刃物とし、更に当該凹凸状刃先の起伏幅が凹刃、凸刃とも同一で且つ両起伏幅の合計が前記ベニヤ単板の単板厚よりも小さいことを特徴とするベニヤレース。
【請求項2】
前記請求項1記載のベニヤレースを用いて、削成される原木から、一方の板面が平坦面、他方の板面は削成方向に複数本の凹凸部が延びた凹凸面である帯状のベニヤ単板を製造する平坦・凹凸面帯状ベニヤ単板の製造方法。
【請求項3】
前記請求項2記載の帯状ベニヤ単板を所定長さに切断して、一方の板面が平坦面、他方の板面は凹凸面であるベニヤ単板を製造する平坦・凹凸面ベニヤ単板の製造方法。
【請求項4】
前記請求項3記載の平坦・凹凸面ベニヤ単板の製造方法によって製造された平坦・凹凸面ベニヤ単板。
【請求項5】
前記請求項4記載の平坦・凹凸面ベニヤ単板を複数枚用いて積層板を製造するにあたり、積層板を構成する少なくとも2枚の平坦・凹凸面ベニヤ単板を、一方のベニヤ単板の平坦面と他方のベニヤ単板の凹凸面とを互に向い合わせて接着することを特徴とする積層板の製造方法。
【請求項6】
前記請求項5記載の積層板の製造方法において、接着する任意の1枚の平坦・凹凸面ベニヤ単板の凹凸面に、両板面が平坦面である板状体のいずれかの平坦面を接着することによって、積層板の表裏両面に平坦面が表われるよう複数のベニヤ単板を積層接着したことを特徴とする積層板の製造方法。
【請求項7】
前記請求項5記載の積層板の製造方法において、接着する任意の2枚の平坦・凹凸面ベニヤ単板を、一方のベニヤ単板の凹凸面と他方のベニヤ単板の凹凸面とを互に向い合わせて接着することによって、積層板の表裏両面に平坦面が表われるよう複数の平坦・凹凸面ベニヤ単板を積層接着したことを特徴とする積層板の製造方法。
【請求項8】
前記請求項6又は請求項7記載の積層板の製造方法において、少なくとも接着する任意の2枚の平坦・凹凸面ベニヤ単板の繊維方向を互に同一にして接着する単板積層材の製造方法。
【請求項9】
前記請求項8記載の単板積層材の製造方法によって製造された単板積層材。
【請求項10】
前記請求項9記載の単板積層材において、単板積層材を構成する両最外層のベニヤ単板が交走木理をほぼ同一部位に揃えた対のベニヤ単板であることを特徴とする単板積層材。
【請求項11】
前記請求項6又は請求項7記載の積層板の製造方法において、少なくとも接着する任意の2枚の平坦・凹凸面ベニヤ単板の繊維方向を互に直交させて接着する合板の製造方法。
【請求項12】
前記請求項11記載の合板の製造方法によって製造された合板。
【請求項13】
前記請求項12記載の合板において、合板を構成する両最外層のベニヤ単板が交走木理をほぼ同一部位に揃えた対のベニヤ単板であることを特徴とする合板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2011−37080(P2011−37080A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185116(P2009−185116)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000155182)株式会社名南製作所 (77)
【Fターム(参考)】