説明

ベルトコンベア及びそれを備えた搬送装置並びに破砕システム

【課題】板状物を搬送ベルト上で滑らせることなく確実に搬送する。
【解決手段】軸心が互いに平行となるように所定の間隔で配置された駆動ロール3a及び従動ロール3bと、駆動ロール3a及び従動ロール3bに走行可能に巻き掛けられた無端状の搬送ベルト5とを備え、駆動ロール3aの回転動作により、搬送ベルト5を走行させて搬送ベルト5上に載置した板状物Gを搬送するベルトコンベア7において、搬送ベルト5の板状物載置面に、搬送過程で板状物Gの搬送方向上流端部に当接する当接部6aを有し、当接部6aで板状物Gを搬送方向に押進する複数の押進爪6をベルト長さ方向に所定の間隔で突設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガラス基板などの板状物を搬送するベルトコンベア及びそれを備えた搬送装置並びに破砕システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガラス基板などの板状物を破砕するシステムとして、回転軸が互いに平行な駆動ロール及び従動ロールに無端状の搬送ベルトが巻き掛けられたベルトコンベアからなる搬入コンベアと、搬入コンベアの搬送方向下流側で上下方向に近接配置された一対の引込みローラと、一対の引込みローラの引込み方向下流側に配置され外周に複数の破砕刃が突設された破砕ローラとを備えた破砕システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような破砕システムでは、搬入コンベアにより一対の引込みローラ間に板状物を搬入し、それら一対の引込みローラの互いに逆向きの回転動作により破砕作業位置まで板状物を引き込み、破砕ローラの回転に伴う破砕刃の衝撃によって板状物を破砕するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記破砕システムなどで用いられる一般的なベルトコンベアでは、搬送ベルトが自重又は板状物の重さにより駆動ロールと従動ロールとの間で下方に撓みやすい。これにより、搬送ベルトと板状物との接触面積が減少するため、それら搬送ベルトと板状物との間に充分な摩擦力が得られず、板状物が搬送ベルト上で滑りやすい。
【0005】
そして、搬入コンベアにより搬送された板状物は、上記搬送ベルトの撓みに起因して水平面に対して傾き、その先端が一対の引込みローラの間に対し上下にずれるため、それら一対の引込みローラの間に正常に供給されない場合がある。この場合において、搬送ベルトと板状物との間の摩擦力が比較的低いことに起因して、各引込みローラの回転動作によるそれら一対の引込みローラの間への押さえ込み力が板状物に充分に作用しないため、板状物はその先端が引込みローラに支えて搬送ベルト上で滑ってしまい一対の引込みローラの間に進入せず、板状物を正常に破砕できないことがある。さらには、板状物の進行方向が歪み、搬入コンベアから板状物が脱落することもある。その結果、破砕システムの処理効率が低下してしまう。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、板状物を搬送ベルト上で滑らせることなく確実に搬送することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、搬送過程においてベルト走行に伴い板状物を搬送方向に押進するようにしたものである。
【0008】
具体的には、本発明は、軸心が互いに平行となるように所定の間隔で配置された駆動ロール及び従動ロールと、上記駆動ロール及び従動ロールに走行可能に巻き掛けられた無端状の搬送ベルトとを備え、上記駆動ロールの回転動作により、上記搬送ベルトを走行させて該搬送ベルト上に載置した板状物を搬送するベルトコンベアを対象とし、以下の解決手段を講じたものである。
【0009】
すなわち、第1の発明は、上記搬送ベルトの板状物載置面に、搬送過程で上記板状物の搬送方向上流端部に当接する当接部を有し、該当接部で上記板状物を搬送方向に押進する複数の押進爪がベルト長さ方向に所定の間隔で突設されていることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によると、各駆動ロールの回転動作により搬送ベルトを走行させてその搬送ベルト上に載置した板状物を搬送する過程で、板状物の搬送方向上流端部に押進爪が当接して引っ掛かり、その押進爪により、板状物がベルト走行に伴って搬送方向に押進されるので、板状物が搬送ベルト上で滑らず、板状物を確実に搬送することが可能になる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明のベルトコンベアにおいて、上記複数の押進爪が、上記板状物の搬送方向の長さよりもベルト長さ方向に短い間隔で設けられていることを特徴とする。
【0012】
上記の構成によると、搬送ベルト上に板状物を載置したときに板状物に対して搬送方向上流側に押進爪が近接配置されやすくなるため、搬送過程において搬送ベルト上で板状物に滑りが生じた際に、その板状物は、複数の押進爪が板状物の搬送方向の長さよりもベルト長さ方向に長い間隔で設けられた場合のように搬送ベルト上を長距離に亘って滑ることなく、すぐに押進爪に当接して押進されることとなる。したがって、板状物の搬送ベルト上での滑りが良好に防止され、板状物を迅速且つ確実に搬送することが可能になる。
【0013】
第3の発明は、第1又は第2の発明のベルトコンベアにおいて、上記各押進爪は、ベルト幅方向の全体に亘って設けられ、且つ上記当接部が板状物載置面から起立する平坦面で構成されていることを特徴とする。
【0014】
上記の構成によると、搬送ベルトの幅全体に亘る押進爪の平坦な当接部により板状物が押進されるため、ベルト幅方向の一部に押進爪が円形突起状などに設けられた場合に比べて、板状物を搬送方向に押すベルト幅方向の押進爪面積が増大する。そのことにより、板状物の進行方向が歪むことが防止され、より一層に安定した板状物の搬送を行うことが可能になる。
【0015】
第4の発明は、第1から第3の発明のいずれか1つのベルトコンベアにおいて、上記板状物が、表示パネル用のガラス基板であることを特徴とする。
【0016】
上記の構成のように、被搬送物である板状物が表示パネル用のガラス基板であるベルトコンベアとして好適に使用され、表示パネルの廃棄システムなどにおける基板搬送用のコンベアとして適宜採用することが可能である。
【0017】
さらに、本発明は、ベルトコンベアを備えた搬送装置も対象としている。
【0018】
すなわち、第5の発明は、第1から第4の発明のいずれか1つのベルトコンベアを備えた搬送装置において、上記ベルトコンベアが上記板状物の搬送方向と交差する方向に複数並設されていることを特徴とする。
【0019】
上記の構成によると、大型の板状物を搬送する搬送装置を、その板状物のサイズに合わせた幅広の搬送ベルトを用いることなく、板状物に対して幅狭の搬送ベルトを有するベルトコンベアの組み合わせで簡単に構成できる。
【0020】
第6の発明は、第5の発明の搬送装置において、上記板状物の搬送方向と交差する方向に並設された2つのベルトコンベアを1組の第1搬送ユニットとして、該第1搬送ユニットが上記板状物の搬送方向に所定の間隔をあけて複数組設けられ、上記複数組の第1搬送ユニットのうち上記板状物の搬送方向に隣り合う第1搬送ユニットの間にも、該各第1搬送ユニットの隣り合うベルトコンベアの間に位置するように上記ベルトコンベアが配設されていることを特徴とする。
【0021】
上記の構成によると、比較的長い距離に亘って板状物を搬送する搬送装置を、搬送距離に対して短いベルトコンベアの組み合わせで簡単に構成できる。
【0022】
第7の発明は、第5の発明の搬送装置において、上記板状物の搬送方向と交差する方向に並設された複数のベルトコンベアを1組の第1搬送ユニットとして、該第1搬送ユニットが上記板状物の搬送方向に所定の間隔をあけて複数組設けられ、上記複数組の第1搬送ユニットのうち上記板状物の搬送方向に隣り合う第1搬送ユニットの間にも、該第1搬送ユニットと同じ構成の第2搬送ユニットが配設され、上記第2搬送ユニットの各ベルトコンベアは、上記各第1搬送ユニットの隣り合うベルトコンベアの間に位置するように配設されていることを特徴とする。
【0023】
上記の構成によると、比較的長い距離に亘って板状物を搬送する搬送装置を簡単に構成できることに加え、第1及び第2搬送ユニットに板状物を配置した際に板状物が搬送方向と交差する方向にずれていても、板状物をその幅方向に複数箇所に亘って支持した状態で安定した搬送を行うことが可能になる。
【0024】
第8の発明は、第6又は第7の発明の搬送装置において、上記第1搬送ユニットの隣り合うベルトコンベアの間に位置するベルトコンベアは、上記駆動ロール及び従動ロールのうち、一方が上記板状物の搬送方向上流側の上記第1搬送ユニットにおける隣り合うベルトコンベアの間、他方が上記板状物の搬送方向下流側の上記第1搬送ユニットにおける隣り合うベルトコンベアの間にそれぞれ配設されていることを特徴とする。
【0025】
上記の構成によると、第1搬送ユニットの隣り合うベルトコンベアの間に位置するベルトコンベアの搬送ベルトは板状物の搬送方向に隣り合う第1搬送ユニットの間に亘って掛け渡されており、それら両第1搬送ユニットの間で第1搬送ユニットにおける各ベルトコンベアの押進爪により板状物が押進されない箇所では、第1搬送ユニットの隣り合うベルトコンベアの間に位置するベルトコンベアの押進爪により板状物が押進される。このため、単に複数組の第1搬送ユニットを板状物の搬送方向に設けただけの場合には、板状物の搬送方向に隣り合う第1搬送ユニットの間において押進爪により板状物が押進されない箇所が発生し、板状物の滑りを防止できない箇所が残るのに対し、搬送装置全体に亘る各所で板状物の滑りを防止し、長距離搬送においてもその板状物を確実に搬送することが可能になる。
【0026】
そして、本発明は、ベルトコンベア又は搬送装置を備えた破砕システムも対象としている。
【0027】
すなわち、第9の発明は、板状物を破砕する破砕装置を備え、上記破砕装置は、側壁上部に引込み口を有する破砕作業室内における上部空間の引込み口側に上下方向に互いに近接配置された一対の引込みローラと、上記破砕作業室内の上記引込み口から見て奥部で上記一対の引込みローラの後方に隣設された破砕ローラとを有し、上記一対の引込みローラの互いに逆向きの回転動作により上記板状物を挟みながら上記破砕ローラ側に引込み、該破砕ローラの回転動作により上記板状物を破砕するように構成され、上記破砕作業室の引込み口外側には、第1から第4の発明のいずれか1つのベルトコンベア又は第5から第8の発明のいずれか1つの搬送装置が上記一対の引込みローラの間に上記板状物を搬入するように設置されていることを特徴とする。
【0028】
上記の構成によると、搬送ベルトの下方への撓みに起因して、搬送ベルトと板状物との接触面積が減少すると共に、ベルトコンベア又は搬送装置により搬送された板状物が水平面に対して傾き、その先端が一対の引込みローラの間に対し上下にずれた状態で一対の引込みローラに供給されたとしても、搬送ベルトに設けられた押進爪によりベルト走行に伴って板状物が押進されるため、各引込みローラの回転動作によるそれら一対の引込みローラの間への押さえ込み力が板状物に充分に作用し、板状物は両引込みローラにより滞りなく破砕ローラ側に引き込まれる。そのことにより、板状物が効率良く正常に破砕されるため、この破砕システムの処理効率を向上させることが可能になる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、搬送過程において板状物を搬送方向に押進する複数の押進爪が搬送ベルトの外周に所定の間隔で設けられているので、板状物が搬送ベルト上で滑ること防止でき、板状物を確実に搬送することができる。その結果、ベルトコンベア又はそれを有する搬送装置を備えた処理システム、例えば破砕システムにおける処理効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態1の破砕システムを概略的に示す断面図である。
【図2】実施形態1の搬入コンベアの全体を概略的に示す上面図である。
【図3】(a)は実施形態1の搬送ベルトの要部を示す部分斜視図であり、(b)は実施形態1の押進爪の変形例を示す搬送ベルトの部分斜視図である。
【図4】実施形態2の搬入コンベアの全体を概略的に示す上面図である。
【図5】実施形態2の搬入コンベアの変形例を概略的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではない。
【0032】
《発明の実施形態1》
図1は、実施形態1に係る破砕システム1の概略構成図を示す。この実施形態1では、破砕対象である被破砕物として、液晶表示パネルなど、各種表示パネルを構成する板状のガラス基板Gを例示する。このガラス基板Gは、表示パネルの製造過程で発生する規格外のものなどであり、廃棄や再利用のためなどに破砕されるが、これに限らず、市場にて廃棄された表示装置などの解体処理により発生するガラス基板も含む。また、ガラス基板の他に、金属以外の板状物で破砕可能な材質であればよく、プラスチック材や建築材(石膏ボード、パーティクルボードなど)をも被破砕物としても含む。後述の実施形態においても同様である。
【0033】
被破砕物としてのガラス基板Gは、例えば、マザーガラスと呼ばれる大型のガラス基板の貼合体から複数の表示パネルを製造する多面取りの製造方法において、マザーガラスを分断する際に切り落とされた端材や、製造工程中に破損したり検査段階で不良と判断されたマザーガラスなどの大型の基板である。当該ガラス基板Gは、例えば、長さが1000mm〜4000mm程度、幅が1000mm〜4000mm程度、厚さが0.4mm〜1.1mm程度のサイズであり、可撓性を有している。
【0034】
上記破砕システム1は、搬送装置である搬入コンベア2と、搬入コンベア2の搬送方向下流側に設置された破砕装置10とを備え、上記搬入コンベア2の上流端には、複数のコロ31を並列に配置してなるコロコンベアからなる移送コンベア30が水平に連続するように並設されている。
【0035】
上記搬入コンベア2の概略構成図を図2及び図3に示す。図2は搬入コンベア2の全体を示す上面図であり、図3は搬入コンベア2の要部を示す部分斜視図である。なお、図2中の矢印はガラス基板Gの搬送方向(以下、基板搬送方向という)を示している。
【0036】
搬入コンベア2は、軸心が互いに平行となるように基板搬送方向に所定の間隔をあけて回転可能に配置された駆動ロール3a及び従動ロール3bに、無端状の搬送ベルト5が走行可能に巻き掛けられた複数のベルトコンベア7を備え、これら複数のベルトコンベア7が基板搬送方向と直交する方向に並設されて構成されている。このように複数のベルトコンベア7で搬入コンベア2が構成されていることにより、大型のガラス基板Gを搬入する搬入コンベア2を、そのガラス基板Gのサイズに合わせた幅広の搬送ベルトを用いることなく、ガラス基板Gに対して幅狭の搬送ベルト5を有するベルトコンベア7の組み合わせで簡単に構成できる。
【0037】
搬入コンベア2における駆動ロール3a同士及び従動ロール3b同士は回転中心軸が互いに一致しており、これら各駆動ロール3a及び各従動ロール3bに同様の長さの搬送ベルト5がそれぞれ巻き掛けられている。そして、上記各駆動ロール3aの図1で反時計回りの回転動作により、各搬送ベルト5を走行させて、移送コンベア30から移送されて各搬送ベルト5上に載置されたガラス基板Gを破砕装置10側に搬送するようになっている。
【0038】
ここで、上記各駆動ロール3aは、互いに同期して回転するように構成されている。具体的には、図示は省略するが、例えば、各駆動ロール3aの側方にそれら各駆動ロール3aと一体に回転する従動プーリ、搬入コンベア2の下方に各従動プーリに対応する複数の駆動プーリがそれぞれ設けられており、それら対応する各従動プーリ及び駆動プーリに伝動ベルト(例えば、タイミングベルトなど)がそれぞれ巻き掛けられている。さらに、各駆動プーリには各々の回転軸を構成するシャフト部材が一体的に設けられており、そのシャフト部材をモータにより回転駆動させ、各駆動プーリから各従動プーリに伝動ベルトを介して同一のシャフト部材からの回転動力を伝達することにより、各駆動ロール3aが互いに同期して回転するようになっている。
【0039】
上記各搬送ベルト5は、図1に示すように、駆動ロール3aと従動ロール3bとの間で自重により下方に撓んでいる。これら各搬送ベルト5のガラス基板載置面には、ゴム又は樹脂製の複数の押進爪6が、ガラス基板Gにおける搬送方向の長さ(以下、単にガラス基板Gの長さという)よりも短い間隔、例えばガラス基板Gの長さに対して20分の1から4分の1程度の長さ間隔でベルト長さ方向に突設されている。
【0040】
これら各押進爪6は、図3(a)に示すように、ベルト幅方向の全体に亘って延びる縦断面三角形の三角柱状に設けられており、搬送過程でガラス基板Gの搬送方向上流側(以下、単に上流側という)端部に当接する当接部6aを有している。この当接部6aは、ガラス基板載置面から垂直又は略垂直な鋭角をなすように起立する矩形状の平坦面で構成され、基板搬送方向に臨んでいる。このような複数の押進爪6が設けられた搬送ベルト5上にガラス基板Gが完全に載置されると、搬送ベルト5が下方に撓んでいることに加え、ガラス基板Gは可撓性を有しているのでその上流側端部が下方に撓りガラス基板Gの上流側に配置された押進爪6の当接部6aに臨む状態となる。そして、これら複数の押進爪6により、ガラス基板Gの搬送過程において、そのガラス基板Gを搬送方向に押進するようになっている。
【0041】
つまり、各搬送ベルト5の撓みに起因して、各搬送ベルト5とガラス基板Gとの接触面積は減少するが、搬送過程でガラス基板Gに滑りが生じたとしても、そのガラス基板Gの上流側に配置した押進爪6がガラス基板Gの上流側端部に当接して引っ掛かり、その押進爪6により、ガラス基板Gがベルト走行に伴って搬送方向に押進される。これにより、ガラス基板Gが搬送ベルト5上で滑ることを防止でき、そのガラス基板Gを確実に搬送することができる。
【0042】
しかも、上記複数の押進爪6は、ガラス基板Gの長さに対して十分に短い間隔で配置されているので、各搬送ベルト5上にガラス基板Gを載置したときにそのガラス基板Gに対して上流側に押進爪6が近接配置されやすく、搬送過程において各搬送ベルト5上でガラス基板Gに滑りが生じた際に、すぐにガラス基板Gを押進爪6に当接させて押進することができ、ガラス基板Gを迅速に搬送できる。
【0043】
さらに、各搬送ベルト5の幅全体に亘る押進爪6の平坦な当接部6aによりガラス基板Gが押進されるので、ベルト幅方向の一部にのみ押進爪が設けられた場合に比べて、ガラス基板Gを搬送方向に押すベルト幅方向の押進爪面積が増大する。これによって、ガラス基板Gの進行方向が歪むことを良好に防止でき、より一層に安定したガラス基板Gの搬送を行うことができる。
【0044】
なお、本実施形態では、搬送ベルト5の下方への撓みに加えて可撓性を有するガラス基板Gの上流側端部の撓りによって、ガラス基板Gの上流側端部が押進爪6の当接部6aに臨む状態となるとしているが、被破砕物が可撓性の小さい撓り難い板状物であっても、搬送ベルト5の自重による下方への撓みにより、その板状物の上流側端部は押進爪6の当接部6aに臨む状態となる。
【0045】
また、本実施形態では、複数の押進爪6がガラス基板Gの長さの20分の1から4分の1程度の長さ間隔で設けられているとしているが、本発明はこれに限らず、複数の押進爪6は、搬送ベルト5の撓みやガラス基板Gの撓りにより、ガラス基板Gの上流側端部が押進爪6の当接部6aに対面状態となることが可能であれば、さらに短い間隔で設けられていてもよく、逆にさらに広い間隔で設けられていてもよい。
【0046】
また言うまでもないが、本実施形態において、各押進爪6は、ベルト幅方向に延びる三角柱状に形成されているとしているが、図3(b)に示すように、当接部6aが半楕円形の半ドーム状に形成されていてもよく、他の種々の形状を採用することも可能である。さらに、各押進爪6の当接部6aは、基板載置面に対して垂直又は略垂直な鋭角をなすように形成されているとしているが、基板載置面に対して略垂直な鈍角をなしていても構わない。
【0047】
上記破砕装置10は、図1に示すように、内部が外部と遮断された破砕作業室13を備え、その破砕作業位置13の一方(図1中右側)の側壁13a上部には、ガラス基板引込み用の引込み口15が形成され、その引込み口15に上記搬入コンベア2の下流端が臨み、ガラス基板Gを上記移送コンベア30で搬入コンベア2に移送した後、その搬入コンベア2で破砕作業室13の引込み口15に向かって搬入するようになっている。
【0048】
上記破砕作業室13内における上部空間Sの引込み口15側には、上下方向に互いに近接配置された一対の上側及び下側引込みローラ17,19が回転可能に設けられ、これら上側及び下側引込みローラ17,19のうち下側引込みローラ19は、外周上端が上記搬入コンベア2の搬送ベルト5上面と略同一の高さに位置付けられ、上側引込みローラ17は、下側引込みローラ19の上方にその下側引込みローラ19とでガラス基板Gを挟んで引込み可能な間隔をあけて配置されている。そして、上記上側引込みローラ17が図1で時計回りに、上記下側引込みローラ19が図1で反時計回りに互いに逆向きに回転することで、上記搬入コンベア2で引込み口15前に搬入されたガラス基板Gを挟みながら破砕作業室13内に引き込むようにしている。
【0049】
上記破砕作業室13内の上記引込み口15から見て奥部(図1中左側)で上記上側及び下側引込みローラ17,19の後方には、回転軸方向に延びる破砕刃21aを外周面に周方向に間隔をあけて複数有する破砕ローラ21が回転可能に隣設され、その破砕ローラ21の下方には回収シュート23が配置され、その回収シュート23の下方には回収ボックス25が配置されている。そして、上記上側及び下側引込みローラ17,19により破砕作業室13内に引き込まれたガラス基板Gを上記破砕ローラ21の図1で時計回りの回転動作により破砕刃21aで衝撃を与えて破砕し、破砕されて小片化された破砕片(カレット)gを上記回収シュート23を経て回収ボックス25内に落下させて回収するようになっている。
【0050】
なお、上記破砕ローラ21として、打撃式破砕機をイメージして説明したが、外周面に破砕刃を複数有する一軸破砕機や二軸破砕機を用いてもよい。
【0051】
上記構成の破砕システム1によると、搬入コンベア2により搬送中のガラス基板Gが、各搬送ベルト5の撓みに起因して水平面に対して傾き、その先端が一対の引込みローラ17,19の間に対し上下にずれた状態で一対の引込みローラ17,19に供給されたとしても、各搬送ベルト5に設けられた押進爪6によりベルト走行に伴いガラス基板Gが押進されるため、各引込みローラ17,19の回転動作によるそれら一対の引込みローラ17,19間への押さえ込み力がガラス基板Gに充分に作用し、ガラス基板Gは両引込みローラ17,19により滞りなく破砕ローラ21側に引き込まれる。そのことにより、ガラス基板Gを効率良く正常に破砕できるため、破砕システム1の処理効率を向上させることができる。
【0052】
《発明の実施形態2》
図4は、実施形態2に係る搬入コンベア2の全体を概略的に示す上面図である。この実施形態2では、搬入コンベア2の構成が実施形態1と異なる他は実施形態1と同様に構成されているので、構成の異なる搬入コンベア2についてのみ説明し、同一の構成箇所は、図1から図3に基づく実施形態1の説明に譲ることにして、その詳細な説明を省略する。なお、図4中の矢印も図2と同様に基板搬送方向を示し、後に参照の図5についても同様である。
【0053】
実施形態2の搬入コンベア2は、基板搬送方向に所定の間隔をあけて複数組設けられた第1搬送ユニット9aと、基板搬送方向に隣り合う第1搬送ユニット9aの間にそれぞれ設けられた第2搬送ユニット9bとにより構成されている。これら各第1搬送ユニット9a及び各第2搬送ユニット9bは、基板搬送方向と直交する方向に所定の間隔で並設された複数のベルトコンベア7a,7bを1組として構成されている。
【0054】
第2搬送ユニット9bの各ベルトコンベア7bは、各第1搬送ユニット9aの隣り合うベルトコンベア7aの間に位置するように配設されている。具体的には、第2搬送ユニット9bの各ベルトコンベア7bは、駆動ロール3aが上流側の第1搬送ユニット9aにおける隣り合うベルトコンベア7aの間に設けられる一方、従動ロール3bが下流側の第1搬送ユニット9aにおける隣り合うベルトコンベア7aの間に設けられ、搬送ベルト5が基板搬送方向に隣り合う第1搬送ユニット9aの間に亘って掛け渡されている。
【0055】
なお、図4では、3組の第1搬送ユニット9a及び2組の第2搬送ユニット9bを有する搬入コンベア2を図示したが、これに限らず、搬入コンベア2は、第1搬送ユニット9aが2組設けられ、それら第1搬送ユニット9aの間に第2搬送ユニット9bが1組だけ設けられていてもよく、4組以上の第1搬送ユニット9a及びそれに伴う3組以上の第2搬送ユニット9bを有していてもよい。
【0056】
また、3つのベルトコンベア7aからなる第1搬送ユニット9a及び2つのベルトコンベア7bからなる第2搬送ユニット9bを図示したが、これに限らず、第1搬送ユニット9aが4つ以上のベルトコンベア7a、それに伴い第2搬送ユニット9bが3つ以上のベルトコンベア7bによりそれぞれ構成されていてもよい。
【0057】
この実施形態2の搬入コンベア2の構成によると、比較的長い距離に亘ってガラス基板Gを搬送する搬入コンベア2を、搬送距離に対して短いベルトコンベア7a,7bの組み合わせで簡単に構成できる。
【0058】
さらに、第1及び第2搬送ユニット9a,9bに板状物を配置した際にガラス基板Gが基板搬送方向と交差する方向にずれていても、ガラス基板Gをその幅方向に複数箇所に亘って支持した状態で安定した搬送を行うことができる。
【0059】
そして、基板搬送方向に隣り合う第1搬送ユニット9aの間でそれら両第1搬送ユニット9aにおけるベルトコンベア7aの押進爪6によりガラス基板Gが押進されない箇所においても、第2搬送ユニット9bにおけるベルトコンベア7の押進爪6によりガラス基板Gが押進されるので、各搬送ベルト5上でのガラス基板Gの滑りを搬入コンベア2全体の各所で防止でき、長距離搬送においてもガラス基板Gを確実に搬送することができる。その他は上記実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
<実施形態2の変形例>
この実施形態2における搬入コンベア2の変形例を図5に示す。
【0061】
上記構成では、搬入コンベア2が第1搬送ユニット9a及び第2搬送ユニット9bにより構成されているとしているが、本発明はこれに限らず、搬入コンベア2は、第2搬送ユニット9bを備えてなくてもよく、各第1搬送ユニット9aが2つのベルトコンベア7aで構成され、基板搬送方向に隣り合う第1搬送ユニット9aの間にそれら各第1搬送ユニット9aの隣り合うベルトコンベア7aの間に位置するように単体でベルトコンベア7bが配置されていてもよい。
【0062】
このように搬入コンベア2が構成されていても、比較的長い距離に亘ってガラス基板Gを搬送する搬入コンベア2を簡単に構成できると共に、長距離搬送においてもガラス基板Gの確実な搬送を行うことができる。その他は上記実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明は、例えばガラス基板などの板状物を搬送するベルトコンベア及びそれを備えた搬送装置並びに破砕システムについて有用であり、特に、板状物を搬送ベルト上で滑らせることなく確実に搬送することが要望されるベルトコンベア及びそれを備えた搬送装置並びに破砕システムに適している。
【符号の説明】
【0064】
G ガラス基板(板状物)
1 破砕システム
2 搬入コンベア(搬送装置)
3a 駆動ロール
3b 従動ロール
5 搬送ベルト
6 押進爪
6a 当接部
7,7a,7b ベルトコンベア
9a 第1搬送ユニット
9b 第2搬送ユニット
17 下側引込みローラ
19 上側引込みローラ
21 破砕ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心が互いに平行となるように所定の間隔で配置された駆動ロール及び従動ロールと、
上記駆動ロール及び従動ロールに走行可能に巻き掛けられた無端状の搬送ベルトとを備え、
上記駆動ロールの回転動作により、上記搬送ベルトを走行させて該搬送ベルト上に載置した板状物を搬送するベルトコンベアであって、
上記搬送ベルトの板状物載置面には、搬送過程で上記板状物の搬送方向上流端部に当接する当接部を有し、該当接部で上記板状物を搬送方向に押進する複数の押進爪がベルト長さ方向に所定の間隔で突設されている
ことを特徴とするベルトコンベア。
【請求項2】
請求項1に記載のベルトコンベアにおいて、
上記複数の押進爪は、上記板状物の搬送方向の長さよりもベルト長さ方向に短い間隔で設けられている
ことを特徴とするベルトコンベア。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のベルトコンベアにおいて、
上記各押進爪は、ベルト幅方向の全体に亘って設けられ、且つ上記当接部が板状物載置面から起立する平坦面で構成されている
ことを特徴とするベルトコンベア。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のベルトコンベアにおいて、
上記板状物は、表示パネル用のガラス基板である
ことを特徴とするベルトコンベア。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のベルトコンベアを備えた搬送装置において、
上記ベルトコンベアが上記板状物の搬送方向と交差する方向に複数並設されている
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項5に記載の搬送装置において、
上記板状物の搬送方向と交差する方向に並設された2つのベルトコンベアを1組の第1搬送ユニットとして、該第1搬送ユニットが上記板状物の搬送方向に所定の間隔をあけて複数組設けられ、
上記複数組の第1搬送ユニットのうち上記板状物の搬送方向に隣り合う第1搬送ユニットの間にも、該各第1搬送ユニットの隣り合うベルトコンベアの間に位置するように上記ベルトコンベアが配設されている
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
請求項5に記載の搬送装置において、
上記板状物の搬送方向と交差する方向に並設された複数のベルトコンベアを1組の第1搬送ユニットとして、該第1搬送ユニットが上記板状物の搬送方向に所定の間隔をあけて複数組設けられ、
上記複数組の第1搬送ユニットのうち上記板状物の搬送方向に隣り合う第1搬送ユニットの間にも、該第1搬送ユニットと同じ構成の第2搬送ユニットが配設され、
上記第2搬送ユニットの各ベルトコンベアは、上記各第1搬送ユニットの隣り合うベルトコンベアの間に位置するように配設されている
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の搬送装置において、
上記第1搬送ユニットの隣り合うベルトコンベアの間に位置する上記ベルトコンベアは、上記駆動ロール及び従動ロールのうち、一方が上記板状物の搬送方向上流側の上記第1搬送ユニットにおける隣り合うベルトコンベアの間、他方が上記板状物の搬送方向下流側の上記第1搬送ユニットにおける隣り合うベルトコンベアの間にそれぞれ配設されている
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項9】
板状物を破砕する破砕装置を備え、
上記破砕装置は、側壁上部に引込み口を有する破砕作業室内における上部空間の引込み口側に上下方向に互いに近接配置された一対の引込みローラと、上記破砕作業室内の上記引込み口から見て奥部で上記一対の引込みローラの後方に隣設された破砕ローラとを有し、上記一対の引込みローラの互いに逆向きの回転動作により上記板状物を挟みながら上記破砕ローラ側に引込み、該破砕ローラの回転動作により上記板状物を破砕するように構成され、
上記破砕作業室の引込み口外側には、請求項1から4のいずれか1項に記載のベルトコンベア又は請求項5から8のいずれか1項に記載の搬送装置が上記一対の引込みローラの間に上記板状物を搬入するように設置されている
ことを特徴とする破砕システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−121781(P2011−121781A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283273(P2009−283273)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】