説明

ベルト下ゴム部材用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】低発熱化を図りながら押出成形性を改良する。
【解決手段】タイヤショルダー部(8)におけるベルト(7)の端部とカーカスプライ(5)との間でタイヤ周方向に延在するパッド状又はテープ状のベルト下ゴム部材(9)を備えた空気入りタイヤにおいて、該ベルト下ゴム部材(9)に、天然ゴムを主成分とするジエン系ゴム100重量部に対して、カーボンブラック単独又はカーボンブラックと該カーボンブラックよりも少量のシリカとからなる充填剤を10〜50重量部含有するとともに、リグニンスルホン酸塩を前記充填剤に対して2〜15重量%含有するゴム組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、特にタイヤショルダー部においてベルト端部とカーカスプライとの間に配されるベルト下ゴム部材に用いられるゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラックやバスなどの大型車に用いられる大型ラジアルタイヤ(重荷重用空気入りラジアルタイヤとも称される。)のショルダー部は、種々の部材が複雑に組み合わされて構成されている。そのような部材として、ベルト端部とカーカスプライとの間でタイヤ周方向に延在するゴム部材であるベルト下パッドがある。
【0003】
ベルト下パッドは、ベルトやカーカスプライの隣接部材であるため、耐接着破壊性やせん断応力が求められるとともに、走行中にベルトとカーカスプライの両方から撓みと歪み屈曲を受けて熱が蓄積しやすいために低発熱性、即ち発熱しにくいという特性も求められる。
【0004】
一般に、ゴム組成物の低発熱化は、カーボンブラックやオイルの配合量を減量することで可能となる。しかしながら、ベルト下パッドは、そもそもポリマー比率が高いゴム部材であるため、カーボンブラックやオイルの配合量を減らすとゴム組成物中のポリマー分が更に増えてしまう。そのため、ベルト下パッドを押出成形した際に、押し出し物の形状においてスウェルや表面肌などが悪くなり、押出成形性が低下してしまうという問題がある。
【0005】
ところで近年では、地球環境に優しい材料がゴム組成物にも求められるようになっている。例えば、セルロース・ヘミセルロースとともに木材の主要成分であるリグニンは、パルプ生産時に副生される蒸解溶出液を原料として得られる自然界に豊富に存在する物質であり、リグニンの誘導体であるリグニンスルホン酸塩の利用が試みられている。
【0006】
従来、リグニンスルホン酸塩をゴム組成物に配合する技術として、下記特許文献1には、特定のスチレンブタジエンゴムとポリブタジエンゴムからなるゴム成分に対しシリカとともにリグニンを配合して、リグニンによりシリカの分散性を向上させる点が開示されている。また、下記特許文献2には、ジエン系ゴムにシリカとともにリグニンスルホン酸塩を配合することにより、シリカ配合のゴム組成物のモジュラス向上、転がり抵抗の低減及び加硫速度の改善を図ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−119739号公報
【特許文献2】特開2008−308615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように従来技術において、リグニンスルホン酸塩は、充填剤として分散性に劣るシリカを主とした配合系において、その分散性を改善するために用いられており、カーボンブラックを主とした充填剤としかつポリマー比率の高い配合系において、リグニンスルホン酸塩を充填剤に対して所定比率で配合することにより、低発熱化を図りながら、押出成形性を改良できることは知られていなかった。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、タイヤショルダー部においてベルト端部とカーカスプライとの間に配されるベルト下ゴム部材を形成するゴム組成物において、低発熱化を図りながら押出成形性を改良することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、空気入りタイヤのショルダー部におけるベルト端部とカーカスプライとの間でタイヤ周方向に延在するパッド状又はテープ状のベルト下ゴム部材を形成するためのゴム組成物であって、天然ゴムを主成分とするジエン系ゴム100重量部に対して、カーボンブラック単独又はカーボンブラックと該カーボンブラックよりも少量のシリカとからなる充填剤を10〜50重量部含有するとともに、リグニンスルホン酸塩を前記充填剤に対して2〜15重量%含有することを特徴とするベルト下ゴム部材用ゴム組成物を提供するものである。
【0011】
本発明はまた、タイヤショルダー部におけるベルト端部とカーカスプライとの間でタイヤ周方向に延在するパッド状又はテープ状のベルト下ゴム部材を備えた空気入りタイヤにおいて、ベルト下ゴム部材に前記ゴム組成物を用いた空気入りタイヤを提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、充填剤としてカーボンブラックを主とした配合系において、リグニンスルホン酸塩を前記充填剤に対して所定比率で配合したことにより、タイヤショルダー部においてベルト端部とカーカスプライとの間に配されるベルト下ゴム部材につき、低発熱化を図りながら、押出成形性を改良することができる。そのため、低発熱性によりタイヤの低燃費性や耐久性向上を図りつつ、該タイヤの製造時における加工性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る空気入りタイヤの半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ(1)を示したものである。このタイヤ(1)は、トレッド部(2)と、左右一対のビード部(3)と、トレッド部(2)とビード部(3)との間に介在する左右一対のサイドウォール部(4)とよりなり、トレッド部(2)の径方向内側に配されたカーカスプライ(5)が、そこから両側のサイドウォール部(4)を経てビード部(3)でビードコア(6)の内側から外側に巻き上げられることにより係止されている。また、トレッド部(2)におけるカーカスプライ(5)の径方向外側にスチールコードよりなる複数枚のベルト(7)が配されている。
【0015】
タイヤ(1)のショルダー部(8)において、ベルト(7)のタイヤ幅方向端部と、そのタイヤ半径方向内側のカーカスプライ(5)との間には、両者の隙間を埋めるように断面略三角形状をなすベルト下パッド(9)が設けられている。ベルト下パッド(9)は、ベルト(7)の端部のタイヤ半径方向内側面と、カーカスプライ(5)のタイヤ半径方向外側面とに隣接するゴム部材であり、タイヤ周方向の全周にわたって設けられている。
【0016】
なお、この実施形態では、断面略三角形状をなすベルト下パッド(9)について説明するが、本発明においてベルト下ゴム部材としては、このようなパッド状のものには限られず、ベルト端部とカーカスプライとの間に配されるテープ状のものであってもよい。
【0017】
本実施形態の空気入りタイヤ(1)では、上記ベルト下パッド(9)に、天然ゴムを主成分とするジエン系ゴム100重量部に対して、カーボンブラックを主成分とする充填剤を10〜50重量部含有するとともに、リグニンスルホン酸塩を前記充填剤に対して2〜15重量%含有するゴム組成物が用いられる。
【0018】
上記ゴム組成物において、ゴム成分として用いられるジエン系ゴムは、天然ゴム(NR)を主成分とするものである。すなわち、ジエン系ゴムは、天然ゴム単独、又は、天然ゴム50重量%以上とジエン系合成ゴム50重量%以下とのブレンドゴムからなる。天然ゴムとブレンドして用いることのできるジエン系合成ゴムとしては、特に限定されず、例えば、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレンゴム、ブタジエン−イソプレンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、ニトリルゴムなどが挙げられる。
【0019】
上記ゴム組成物において充填剤は、カーボンブラックを主成分とする。すなわち、充填剤は、カーボンブラック単独、又は、カーボンブラックとそれより少量のシリカとからなる。カーボンブラックを主成分とすることにより、引張特性などの補強性及び耐疲労性のバランスを確保することができる。一方、シリカは必須成分ではないが、シリカを配合することでゴム組成物の低発熱性を更に改善することができる。
【0020】
上記充填剤の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対して10〜50重量部であり、より好ましくは20〜45重量部であり、更に好ましくは25〜40重量部である。充填剤の配合量が10重量部未満では補強性に劣り、逆に50重量部を超えると良好な低発熱性を発揮することができない。カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対して10〜50重量部であり、より好ましくは25〜40重量部である。また、シリカの配合量は、カーボンブラックの配合量よりも少なく、ジエン系ゴム100重量部に対して20重量部以下、即ち0〜20重量部であることが好ましく、より好ましくは0〜15重量部である。
【0021】
上記カーボンブラックとしては、窒素吸着比表面積が25〜100m/gであるものが好ましく用いられる。このような粒径の比較的大きなカーボンブラックを用いることにより、低発熱性を向上することができる。このようなカーボンブラックとしては、HAF、FEF、GPF、SRFクラス(ASTMグレード)のものを用いることができる。カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、50〜100m/gであることが好ましく、より好ましくは70〜90m/gである。なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2に準拠して測定される値である。
【0022】
上記シリカとしては、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸),乾式シリカ(無水ケイ酸),ケイ酸カルシウム,ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、中でも湿式シリカが好ましい。なお、シリカを配合する場合、シランカップリング剤を併用してもよい。シリカとしては、窒素吸着比表面積が250m/g以下であるものが好ましく用いられる。このような粒径の大きなシリカを用いることにより、加工性を維持することができるとともに、低発熱性を向上することができる。なお、窒素吸着比表面積の下限は特に限定されないが、180m/g以上であることが好ましい。なお、シリカの窒素吸着比表面積はISO 5794に記載のBET法に準拠し測定される。
【0023】
上記ゴム組成物にはリグニンスルホン酸塩が配合される。リグニンスルホン酸塩は、スルホン基、カルボキシル基、フェノール性水酸基等の官能基を有することから、これらが充填剤であるカーボンブラックとの間で何らかの相互作用をすることで、押出成形性を改良し、低発熱性の効果を発揮するものと考えられる。また、リグニンスルホン酸塩は、ポリフェノール構造を有するため、後記メチレン受容体としてのフェノール類化合物やフェノール系樹脂との親和性もよく、このことも押出成形性や低発熱性の改良に寄与しているものと推測される。
【0024】
リグニンスルホン酸塩としては、リグニンスルホン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、又はそれらの変性体が挙げられ、これらの少なくとも一種を含んで使用されることが好ましい。塩の具体例としては、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、バリウム塩などが挙げられ、これらの混合塩でもよい。
【0025】
リグニンスルホン酸塩は、充填剤に対して所定の比率で配合され、即ち、上記充填剤に対して、2〜15重量%にて配合される。この配合量が2重量%未満では、押出成形性の改良効果がほとんどなく、逆に15重量%を超えると、充填剤に対して過剰投入となり、低発熱性の効果が損なわれる。リグニンスルホン酸塩の配合量は、より好ましくは、充填剤に対して、2〜10重量%である。
【0026】
市販のリグニンスルホン酸塩の中には、単糖類や多糖類などの糖類を含有するものがあり、本発明ではそのような糖類を含有するものを用いてもよい。糖類としては、木材成分のセルロース、またセルロースの構成単位であるグルコース、またはグルコースの重合体、例えば、ヘキソース、ペントース、マンノース、ガラクトース、リボース、キシロース、アラビノース、リキソース、リボース、タロース、アルトロース、アロース、グロース、イドース、デンプン、デンプン加水分解物、デキストラン、デキストリン、ヘミセルロースなどをそれぞれ挙げることができる。糖類は、例えば、リグニンスルホン酸塩100重量部に対して、50〜80重量部にて組み合わせることができる。
【0027】
上記ゴム組成物には、メチレン受容体とメチレン供与体とからなる接着樹脂を配合することが好ましい。メチレン受容体の水酸基とメチレン供与体のメチレン基とが硬化反応することで、ベルトやカーカスプライとの接着強度を向上することができる。
【0028】
メチレン受容体としては、フェノール類化合物、又はフェノール類化合物をホルムアルデヒドで縮合したフェノール系樹脂が用いられる。該フェノール類化合物としては、フェノール、レゾルシンまたはこれらのアルキル誘導体が含まれる。アルキル誘導体には、クレゾール、キシレノールといったメチル基誘導体の他、ノニルフェノール、オクチルフェノールといった比較的長鎖のアルキル基による誘導体が含まれる。フェノール類化合物は、アセチル基等のアシル基を置換基に含むものであってもよい。
【0029】
また、フェノール類化合物をホルムアルデヒドで縮合したフェノール系樹脂には、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂(即ち、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂)、クレゾール樹脂(即ち、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂)等の他、複数のフェノール類化合物からなるホルムアルデヒド樹脂が含まれる。これらは、未硬化の樹脂であって、液状又は熱流動性を有するものが用いられる。
【0030】
これらの中でも、ゴム成分や他の成分との相溶性、硬化後の樹脂の緻密さ及び信頼性の見地から、メチレン受容体としてはレゾルシン又はレゾルシン誘導体が好ましく、特には、レゾルシン、又はレゾルシン−アルキルフェノール−ホルマリン樹脂が好ましく用いられる。
【0031】
これらフェノール類化合物又はフェノール系樹脂の配合量としては、ジエン系ゴム成分100重量部に対して0.5〜2重量部であることが好ましい。
【0032】
上記メチレン供与体としては、ヘキサメチレンテトラミン又はメラミン誘導体が用いられる。該メラミン誘導体としては、例えば、メチロールメラミン、メチロールメラミンの部分エーテル化物、メラミンとホルムアルデヒドとメタノールの縮合物等が用いられ、その中でもヘキサメトキシメチルメラミンが特に好ましい。
【0033】
ヘキサメチレンテトラミン又はメラミン誘導体の配合量としては、上記メチレン受容体であるフェノール類化合物又はフェノール系樹脂の配合量の0.5〜2倍重量部であることが好ましい。
【0034】
上記ゴム組成物には、上述した各成分の他に、タイヤ工業において通常に用いられる軟化剤、亜鉛華、ステアリン酸、ワックス、老化防止剤、加硫促進剤、加硫剤、加硫助剤などの各種配合剤を、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じ適宜配合し用いることができる。
【0035】
上記ゴム組成物は、ジエン系ゴムに充填剤とリグニンスルホン酸塩を含む各種配合剤を配合しバンバリーミキサー、ロール、ニーダーなどの各種混練機を使用して常法に従い作製することができる。このようにして得られたゴム組成物は、押出成型機を用いて所定の形状に押し出され、これを上記ベルト下パッド(9)を形成する部材として生タイヤ(グリーンタイヤ)に組み込んで、常法に従い加硫成形することにより、上記空気入りタイヤ(1)を製造することができる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0037】
バンバリーミキサーを使用し、下記表2に示す配合に従い、各成分を添加混合して、ベルト下パッド用ゴム組成物を調製した。リグニンスルホン酸塩としては、下記表1に示すリグニンスルホン酸ナトリウム塩(リグニンスルホン酸塩1,2)を用いた。
【0038】
【表1】

【0039】
リグニンスルホン酸塩を除く表2中の各成分の詳細は以下の通りである。
【0040】
・天然ゴム:RSS#3
・カーボンブラック:キャボットジャパン(株)「ショウブラックN330T」(窒素吸着比表面積:75m/g)
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」(窒素吸着比表面積=205m/g)
・オイル:(株)ジャパンエナジー製「JOMOプロセスP−200」
・レゾルシン誘導体:住友化学工業(株)製「スミカノール620」(レゾルシン−アルキルフェノール−ホルマリン樹脂)
・メラミン誘導体:三井サイテック(株)製「サイレッツ963L」(ヘキサメトキシメチルメラミン)。
【0041】
各ゴム組成物には、共通配合として、ジエン系ゴム100重量部に対し、亜鉛華(三井金属鉱業(株)製「亜鉛華3号」)5重量部、ステアリン酸(花王(株)製「ルナックS25」)2重量部、老化防止剤6C(フレキシス社製「サントフレックス6PPD」)2重量部、硫黄(細井化学工業(株)製「粉末硫黄150メッシュ」)4重量部、及び、加硫促進剤CZ(大内新興化学工業(株)製「ノクセラーCZ−G」)1重量部をそれぞれ配合した。
【0042】
得られた各ゴム組成物について、押出成形性を評価するとともに、150℃×30分で加硫した試験片について、引張特性と低発熱性を評価した。各評価方法は以下の通りである。
【0043】
・押出成形性:ASTM D2230−96に準拠して、プラストミル(東洋精機社製)に押し出し機を取り付け、ASTM法、いわゆるガーベイダイを用いて、シリンダー温度:100℃、ダイ温度:100℃、ヘッド温度:100℃、スクリュー回転数:45rpmに設定して押出成形を行い、各ゴム組成物の押し出し物の外観を評価することにより行った。評価は、採点法Aにより行い、押し出し物におけるスウェル(押出形状に対する膨らみ)、エッジ(押出形状における鋭角部の形状変化)、表面肌(押し出し物の表面の滑らかさ)、及びコーナー(押出形状における角部の形状変化)の各状態を、1段階(押出成形性悪い)〜4段階(押出成形性良い)で評価した。
【0044】
・引張特性:JIS K6251に準拠した引張試験(ダンベル3号)を行って、M300(300%伸び時における引張応力、MPa)の値を求め、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、M300が大きいことを示す。
【0045】
・低発熱性:東洋精機製の粘弾性試験機を使用し、周波数10Hz、静歪み10%、動歪み1%、温度60℃の条件で損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が小さいほどtanδが小さく、発熱しにくいこと、即ち低発熱性に優れることを示す。
【0046】
【表2】

【0047】
結果は表2に示すとおりであり、コントロールである比較例1に対し、カーボンブラックを減量した比較例2では、低発熱性は改良されたものの、引張特性が低下し、また、押出成形性が損なわれていた。逆にカーボンブラックを増量した比較例3では、押出成形性は改良されたものの、低発熱性が悪化した。また、オイルを添加した比較例4でも、押出成形性は改良されたものの、低発熱性が悪化した。一方、リグニンスルホン酸塩の配合量が多すぎる比較例5では、押出成形性は改良されたものの、低発熱性が損なわれた。リグニンスルホン酸塩の配合量が少なすぎる比較例6では、押出成形性及び低発熱性の双方で改良効果は認められなかった。
【0048】
これに対し、リグニンスルホン酸塩を、カーボンブラックを主とした充填剤に対して所定の比率で配合した実施例1〜5であると、引張特性を損なうことなく、また低発熱性を向上しながら、押出成形性が改良されていた。そのため、これらのゴム組成物を用いてベルト下パッドを形成すれば、押出成形性に優れることから、タイヤ製造時における加工性を向上することができ、また、低発熱性に優れることから、タイヤの低燃費性や耐久性向上に寄与することができる。
【0049】
なお、実施例4は、比較例1に対してカーボンブラックの配合量が少ないため、引張特性に劣るが、カーボンブラックの配合量が同等の比較例2との対比では、引張特性を維持しつつ、低発熱性と押出成形性が改良されていた。また、実施例5は、カーボンブラックとシリカの併用であるため、比較例1に対しては引張特性が劣るが、充填剤が同等の比較例7との対比では、引張特性を維持しつつ、低発熱性と押出成形性が改良されていた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、各種空気入りタイヤに適用することができ、特に、トラックやバスなどに用いられる重荷重用空気入りタイヤに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…空気入りタイヤ、2…トレッド部、3…ビード部、4…サイドウォール部
5…カーカスプライ、6…ビードコア、7…ベルト
8…ショルダー部、9…ベルト下パッド(ベルト下ゴム部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤのショルダー部におけるベルト端部とカーカスプライとの間でタイヤ周方向に延在するパッド状又はテープ状のベルト下ゴム部材を形成するためのゴム組成物であって、
天然ゴムを主成分とするジエン系ゴム100重量部に対して、カーボンブラック単独又はカーボンブラックと該カーボンブラックよりも少量のシリカとからなる充填剤を10〜50重量部含有するとともに、リグニンスルホン酸塩を前記充填剤に対して2〜15重量%含有する
ことを特徴とするベルト下ゴム部材用ゴム組成物。
【請求項2】
フェノール類化合物又はフェノール類化合物をホルムアルデヒドで縮合したフェノール系樹脂と、そのメチレン供与体としてのヘキサメチレンテトラミン又はメラミン誘導体を更に含有することを特徴とする請求項1記載のベルト下ゴム部材用ゴム組成物。
【請求項3】
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が25〜100m/gであり、前記シリカの窒素吸着比表面積が250m/g以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のベルト下ゴム部材用ゴム組成物。
【請求項4】
タイヤショルダー部におけるベルト端部とカーカスプライとの間でタイヤ周方向に延在するパッド状又はテープ状のベルト下ゴム部材を備えた空気入りタイヤであって、前記ベルト下ゴム部材に、請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−241368(P2010−241368A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94826(P2009−94826)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】