説明

ベルト式無段変速装置

【課題】変速比が最大又は最小時であっても原動プーリから従動プーリに安定して動力を伝達することができるベルト式無段変速装置を提供する。
【解決手段】ベルト式無段変速装置1は、原動プーリ2に原動プーリ小径部23aから拡径する原動プーリ拡径部24を備えると共に、従動プーリ3に従動プーリ小径部33aから拡径する従動プーリ拡径部34を備える。これによって、伝動ベルト4が原動プーリ小径部23a又は従動プーリ小径部33aに位置していても、両プーリの小径部側では伝動ベルト4の伝動面全体と密接させて、伝動ベルト4から両プーリにかかる面圧を略均一にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円錐プーリと伝動ベルトとを用いて変速比を無段階に変化させることができるベルト式の無段変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、原動プーリとしての円錐台形状の円錐プーリ及び従動プーリとしての円錐台形状の円錐プーリ間に巻き掛けられることにより、原動プーリから従動プーリに動力を伝達する伝動ベルトとを備えたベルト式無段変速装置が知られている(例えば特許文献1参照)。このベルト式無段変速装置は、原動プーリと従動プーリとを平行に配設すると共に両プーリのテーパ方向を逆にしており、それによって、伝動ベルトの巻き掛け位置を両プーリの回転軸方向に移動させることで両プーリにおいてベルトが巻き掛けられている箇所の径、いわゆる巻き掛け径を変化させて、原動プーリの巻き掛け径に対する従動プーリの巻き掛け径の比、つまり変速比を無段階に変化させるものである。
【特許文献1】特開2000−136057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうした円錐プーリを備えたベルト伝動装置における伝動ベルトとしては、原動プーリ及び従動プーリの傾斜したプーリ面に対してそれぞれ密接することができると共に、その回転軸方向に滑らかに移動することができるように、伝動ベルトの伝動面を、プーリ幅方向の中央に向かってそれぞれ逆向きに傾斜した第1傾斜面と第2傾斜面とで構成することにより、その横断面においてベルト幅方向にV字形状となるようにする場合がある。
【0004】
しかしながら、伝動ベルトの伝動面をV字形状に形成した場合には、伝動ベルトと原動プーリ又は従動プーリとは第1及び第2傾斜面の一方とのみ接しており、伝動ベルトと両プーリとの間の面圧は、伝動ベルトの幅中央(つまり、V字の頂点)が高く、そこから幅方向側端部(つまり、V字の端部)に向かって次第に低くなるようなベルト幅方向に不均一な分布を持つことになる。このようなベルト幅方向に不均一な面圧分布は、巻き掛け径が小さくなるほど顕著になるため、伝動ベルトが、原動プーリ又は従動プーリにおいて径が相対的に小さい箇所に巻き掛けられているときには、動力を安定して伝達することができなくなる。つまり、前記ベルト式無段変速装置では、変速比(従動プーリの径/原動プーリの径)を最小すると従動プーリの巻き掛け径が最小になるので、原動プーリから従動プーリに安定して動力を伝達することができなくなる一方、変速比を最大にすると原動プーリの巻き掛け径が最小になるので、原動プーリから従動プーリに安定して動力を伝達することができなくなる。換言すれば、前記ベルト式無段変速装置において、最大減速したときや、最大増速のときには、原動プーリから従動プーリに安定して動力を伝達することができなくなる虞がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、円錐プーリと伝動ベルトとを用いて無段変速するベルト式無段変速装置において、変速比が最大又は最小時であっても原動プーリから従動プーリに安定して動力を伝達させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のベルト式無段変速装置は、第1回転軸方向の一側から他側に向かって縮径するように所定の勾配角にされたプーリ面を含む縮径部を有すると共に、前記第1回転軸周りに回転駆動される原動プーリと、前記第1回転軸と平行な第2回転軸周りに回転自在に支持されると共に、前記第2回転軸の他側から一側に向かって縮径するように、前記原動プーリにおける前記勾配角と同じ勾配角にされたプーリ面を含む縮径部を有する従動プーリと、前記原動プーリと前記従動プーリ間に巻き掛けられて該原動プーリと該従動プーリとを連結すると共に、前記原動プーリから前記従動プーリへと動力を伝達する伝動ベルトと、前記伝動ベルトを前記回転軸方向に往復移動させることによって、変速比を無段階に変更する伝動ベルト制御手段と、を備えたベルト式無段変速装置である。
【0007】
そして、第1の発明では、前記原動プーリ及び従動プーリはそれぞれ、前記縮径部において最小径の端部に連続すると共に、前記回転軸方向に前記勾配角と同じ勾配角で拡径する拡径部をさらに有し、前記伝動ベルトにおいて、前記原動プーリ及び前記従動プーリのプーリ面に巻き掛けられる伝動面は、そのベルト幅方向の一側部から前記勾配角と同じ角度でベルト幅方向の中央に向かって傾斜する第1傾斜面と、前記ベルト幅方向の他側部から前記勾配角と同じ角度で前記ベルト幅方向の中央に傾斜する第2傾斜面とを備えることにより、横断面略V字形状となるように形成されている。
【0008】
この構成によると、原動及び従動プーリの縮径部に連続して拡径部を設けているため、原動及び従動プーリにおいてベルト巻き掛け径が最小となる箇所では、伝動ベルトが巻き掛けられる面が略V字状を成すようになる。
【0009】
一方、伝動ベルトの伝動面は、第1傾斜面と第2傾斜面とによって横断面略V字形状となるように形成されている。
【0010】
このため、伝動ベルトが原動プーリの縮径部における小径の端部に位置している場合(つまり、変速比(従動プーリの径/原動プーリの径)が最大の場合)には、伝動ベルトは、原動プーリに対して、第1傾斜面と第2傾斜面とのそれぞれが縮径部及び拡径部のそれぞれに密接するようになる。こうして、原動プーリ側では、最小径の部分に伝動ベルトが巻き掛けられているものの、伝動ベルトの伝動面において幅方向の全面が原動プーリに対し密接することになるため、伝動ベルトと原動プーリとの間の面圧分布がベルト幅方向に略均一になる。その結果、変速比が最大のときに、原動プーリから従動プーリへと安定して動力を伝達することができる。
【0011】
逆に、伝動ベルトが従動プーリの縮径部における小径の端部に位置している場合(つまり、変速比が最小の場合)には、伝動ベルトは、従動プーリに対して、第1傾斜面と第2傾斜面とのそれぞれが、縮径部及び拡径部のそれぞれに密接する。こうして従動プーリ側では、最小径の部分に伝動ベルトが巻き掛けられているものの、伝動ベルトの伝動面において幅方向の全面が従動プーリに対し密接することになるため、伝動ベルトと従動プーリとの間の面圧分布がベルト幅方向に略均一になる。その結果、変速比が最小のときに、原動プーリから従動プーリへと安定して動力を伝達することができる。
【0012】
そうして、伝動ベルトが原動プーリ及び従動プーリの最小径の部分以外の箇所に巻き掛けられているとき(変速比が最大及び最小でないとき)には、伝動ベルトの第1及び第2傾斜面の何れか一方が、原動及び従動プーリの縮径部におけるプーリ面に対して密接することになるため伝動効率の低下を防止しつつ、伝動ベルトの移動が滑らかになる。
【0013】
また、伝動ベルトが原動プーリ又は従動プーリの最小径の部分に位置している場合に、伝動ベルトと原動プーリ及び従動プーリとの間の面圧分布がベルト幅方向に略均一になるので、伝動ベルト内部の歪みが解消されて、その結果、伝動ベルトの寿命を延ばす効果もある。
【0014】
第2の発明では、第1の発明において、前記伝動ベルトの伝動面は、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との交線が前記ベルト幅方向の中央になるように形成されている。
【0015】
こうすることで、伝動ベルトから原動プーリ及び従動プーリにかかる面圧をベルト幅方向により一層、均一にすることができる。その結果、伝動ベルトが原動プーリ又は従動プーリの最小径の部分に位置している場合に、原動プーリから従動プーリにより安定して動力を伝達することができる。
【0016】
第3の発明では、前記原動プーリ及び従動プーリはそれぞれ、前記縮径部において最小径の端部から当該端部と同一径で前記回転軸方向に延びる同径部をさらに有しており、前記伝動ベルトにおいて、前記原動プーリ及び前記従動プーリのプーリ面に巻き掛けられる伝動面は、そのベルト幅方向の一側部から前記勾配角と同じ角度で前記ベルト幅方向の内方に向かって傾斜する第1傾斜面と、前記ベルト幅方向の他側部から前記勾配角と同じ角度で前記ベルトの幅方向の内方に向かって傾斜する第2傾斜面と、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との間でベルト幅方向に平坦に形成される平坦面とを備えている
この構成によると、原動及び従動プーリの縮径部に連続して同径部を設けているため、原動及び従動プーリにおいてベルト巻き掛け径が最小となる箇所では、伝動ベルトが巻き掛けられる面が回転軸方向に水平に延びるようになる。
【0017】
一方、伝動ベルトの伝動面は、第1傾斜面と第2傾斜面との間に、前記水平に延びるプーリ面に、密接可能な平坦面が設けられている。
【0018】
このため、伝動ベルトが原動プーリの縮径部における小径の端部に位置している場合(つまり、変速比が最大の場合)には、伝動ベルトは、原動プーリに対して、第1傾斜面及び第2傾斜面は原動プーリに接しず、平坦面が原動プーリの同径部に密接するようになる。こうして、原動プーリ側では、最小径の部分に伝動ベルトが巻き掛けられているものの、伝動ベルトの平坦面と原動プーリ同径部とが密接することになり、伝動ベルトと原動プーリとの間の面圧がベルト幅方向に略均一になる。その結果、原動プーリから従動プーリへと安定して動力を伝達することができる。
【0019】
逆に、伝動ベルトが従動プーリの縮径部における小径の端部に位置している場合(つまり、変速比が最小の場合)には、伝動ベルトは、従動プーリに対して、第1傾斜面及び第2傾斜面は従動プーリに接しず、平坦面が従動プーリの同径部に密接する。こうして、従動プーリ側では、最小径の部分に伝動ベルトが巻き掛けられているものの、伝動ベルトの平坦面と従動プーリ同径部とが密接することになり、伝動ベルトと従動プーリとの間の面圧がベルト幅方向に略均一になる。その結果、原動プーリから従動プーリへと安定して動力を伝達することができる。
【0020】
そうして、伝動ベルトが原動プーリ及び従動プーリの最小径の部分以外の箇所に巻き掛けられているとき(変速比が最大及び最小でないとき)には、伝動ベルトの第1及び第2傾斜面の何れか一方が、原動及び従動プーリの縮径部におけるプーリ面に対して密接することになるため伝動効率の低下を防止しつつ、伝動ベルトの移動が滑らかになる。
【0021】
また、伝動ベルトが原動プーリ又は従動プーリの最小径の部分に位置している場合に、伝動ベルトと原動プーリ及び従動プーリとの間の面圧分布がベルト幅方向に略均一になるので、伝動ベルト内部の歪みが解消されて、その結果、伝動ベルトの寿命を延ばす効果もある。
【0022】
第4の発明では、前記原動プーリ及び従動プーリはそれぞれ、前記縮径部において最小径の端部に連続すると共に、当該端部と同一径で前記回転軸方向に延びる同径部と、該同径部の連続すると共に、前記回転軸方向に前記勾配角と同じ勾配角で拡径する拡径部とをさらに有し、前記伝動ベルトにおいて、前記原動プーリ及び前記従動プーリのプーリ面に巻き掛けられる伝動面は、そのベルト幅方向の一側部から前記勾配角と同じ角度で前記ベルト幅方向の内方に向かって傾斜する第1傾斜面と、前記ベルト幅方向の他側部から前記勾配角と同じ角度で前記ベルト幅方向の内方に向かって傾斜する第2傾斜面と、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との間でベルト幅方向に平坦に形成される平坦面とを備えている。
【0023】
この構成によると、前記第1及び第3の発明を組み合わせているため、伝動ベルトが原動プーリの縮径部における小径の端部に位置している場合(つまり、変速比が最大の場合)には、伝動ベルトは、原動プーリに対して、第1傾斜面と第2傾斜面と平坦面とのそれぞれが、原動プーリの縮径部と、拡径部と同径部とのそれぞれに密接するようになる。こうして、伝動ベルトと原動プーリとの間の面圧分布がベルト幅方向の全域に亘ってさらに均一化する。その結果、原動プーリから従動プーリへと安定して動力を伝達することができる。
【0024】
また同様に、伝動ベルトが従動プーリの縮径部における小径部の端部に位置している場合(つまり、変速比が最小の場合)には、伝動ベルトは、従動プーリに対して、第1傾斜面と第2傾斜面と平坦面とのそれぞれが、従動プーリの縮径部と拡径部と同径部とのそれぞれに密接する。そうして、伝動ベルトと従動プーリとの間の面圧分布がベルト幅方向に略均一になり、原動プーリから従動プーリへと安定して動力を伝達することができる。
【0025】
また、前記と同様に、伝動ベルト内部の歪みが解消されて、その結果、伝動ベルトの寿命を延ばす効果もある。
【0026】
第5の発明では、第3又は4の発明において、前記伝動ベルトの前記伝動面は、前記平坦面が前記ベルト幅方向の中央になるように形成されている。
【0027】
こうすることで、伝動ベルトから原動プーリ及び従動プーリにかかる面圧をベルト幅方向により一層、均一にすることができる。その結果、伝動ベルトが原動プーリ又は従動プーリの小径部に位置している場合に、原動プーリから従動プーリにより安定して動力を伝達することができる。
【0028】
第6の発明では、第1ないし第5の発明において、前記原動プーリと従動プーリとの間のベルトスパン長さは、前記伝動ベルトの幅の25倍以下に設定されている。
【0029】
こうすることで、例えばベルト幅が狭すぎたり、ベルトスパン長さが長すぎたりして、伝動ベルトの横剛性が低くなることに起因して伝動ベルトがねじれた場合に生じ得る、伝動ベルトの原動プーリ又は従動プーリからの脱落を防止することができる。
【0030】
第7の発明では、第1ないし6の何れかの発明において、前記伝動ベルト制御手段は、前記伝動ベルトに対して張力を付与するように当該伝動ベルトの背面に押し当てられると共に、前記第1及び第2回転軸方向に往復移動可能に設けられた伝動制御プーリによって構成され、前記伝動制御プーリは、前記伝動ベルトが巻き掛けられるプーリ本体と、前記プーリ本体を前記第1及び第2回転軸と平行な第3回転軸周りに回転自在に且つ、所定の枢軸周りに揺動自在に支持する支持手段と、を備え、前記枢軸は、前記第3回転軸方向に沿って見て軸荷重の方向に対して前記プーリ本体の回転方向前側に所定の傾倒角で傾倒しており、前記傾倒角は、0度を超え90度を超えない角度範囲に設定されている。
【0031】
こうすることで、伝動制御プーリはプーリ本体が枢軸回りに揺動自在に支持されているため、当該伝動制御プーリが静止しているときには、伝動ベルトの片寄り走行や蛇行を防止する機能を有する。従って、無段変速機を一定の変速比で駆動しているときには、伝動ベルトが安定して走行する。
【0032】
一方、伝動制御プーリは、回転軸方向に伝動ベルトに対して相対的に移動させたときには、当該伝動ベルトを、伝動制御プーリに追従するように回転軸方向に移動させることが可能になる。従って、伝動ベルトを回転軸方向に往復移動させて、無段変速機の変速比が変更される。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本ベルト式無段変速装置では、伝動ベルトが原動プーリ又は従動プーリにおける最小径の部分に巻き掛けられていても、伝動効率を低下させることなく、原動プーリから従動プーリに安定して動力を伝達させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
(実施形態1)
本発明のベルト式無段変速装置1は、図1に示すように、図示省略の原動機によって原動プーリ回転軸C1周りに回転駆動される原動プーリ2と、該原動プーリ回転軸C1と平行に配設される従動プーリ回転軸C2周りに回転自在に支持される従動プーリ3と、該従動プーリ3と原動プーリ2間に巻き掛けられて原動プーリ2と従動プーリ3とを連結すると共に、原動プーリ2から従動プーリ3へと動力を伝達する伝達ベルト4と、該伝達ベルト4の両プーリへの巻き掛け位置を制御する伝動ベルト制御手段としての伝動制御プーリ5とを備えている。この原動プーリ回転軸C1が第1回転軸とされている一方、従動プーリ回転軸C2が第2回転軸とされている。
【0035】
原動プーリ2は、図1に示すように、原動軸21と、該原動軸21に嵌め込まれて、該原動軸21と回転一体に形成される原動プーリ本体部22とを備えている。
【0036】
原動プーリ本体部22は、図2に示すように、原動プーリ回転軸C1方向にテーパ状に形成されるプーリ面を有する原動プーリ縮径部23と、該原動プーリ縮径部23の径が相対的に小さい原動プーリ小径部23aから拡径する原動プーリ拡径部24とを有している。換言すれば、原動プーリ小径部23aで原動プーリ縮径部23と、該原動プーリ縮径部23とはテーパ方向が逆の原動プーリ拡径部24とが連結されている。そうして、原動プーリ縮径部23の勾配角αと原動プーリ拡径部24の勾配角βとは同じにされている。また、原動プーリ本体部22は、原動軸21を挿通することができるように中空にされている。
【0037】
従動プーリ3は、図1に示すように、従動軸31と、該従動軸31に嵌め込まれて、該従動軸31と回転一体に形成される従動プーリ本体部32とを備えている。
【0038】
従動プーリ本体部32は、図2に示すように、原動プーリ本体部22と同一形状を有しており、従動プーリ回転軸C2方向にテーパ状に形成されたプーリ面を有する従動プーリ縮径部33と、該従動プーリ縮径部33の径が相対的に小さい従動プーリ小径部33aから拡径する従動プーリ拡径部34とを有している。そうして、従動プーリ縮径部33の勾配角と従動プーリ拡径部34の勾配角は、勾配角αと同じにされている。また、従動プーリ本体部32は、従動軸31を挿通することができるように中空にされている。
【0039】
伝動ベルト4は、図3に示すように、原動プーリ2及び従動プーリ3のプーリ面に巻き掛けられる伝動面と、該伝動面と厚み方向に相対する背面を含む平ベルトである。
【0040】
前記伝動面及び背面の内、伝動面は、ベルト幅方向の一端から伝動ベルト4から勾配角αと同じ角度でベルト幅方向内方下向きに傾斜する第1傾斜面41と、ベルト幅方向の他端から勾配角αと同じ角度でベルト幅方向中央に向かって下向きに傾斜する第2傾斜面42とで形成されている。換言すれば、伝動ベルト4の伝動面は、伝動ベルト4の横断面で見て、下向きに凸のV字状に形成されている。このV字の頂点、すなわち第1傾斜面41と第2傾斜面42との交線は、伝動ベルト4の幅中央に位置している。
【0041】
伝動制御プーリ5は、図4に示すように、伝動ベルト4が巻き掛けられる円筒状の伝動制御プーリ本体部51と、該伝動制御プーリ本体部51をベアリング52によって回転自在に支持する筒状の軸部材53と、該軸部材53及び伝動制御プーリ本体部51を揺動自在に支持する支持手段54とを備えている。
【0042】
支持手段54は、支持ロッド541とピン542とを備えて構成されている。
【0043】
支持ロッド541は、図示は省略するが、伝動制御プーリ5をその回転軸方向に変位させる変位機構に対して取り付け支持される取付部541aと、該取付部541aの一端に続いて設けられ軸部材53の筒孔に挿入された支持部541bとからなる。
【0044】
支持部541bは、断面円形ロッドの直径方向に対応する部位をD字状にカットして形成されたものであり、このDカットによって図6に示すように、互いに平行になった平坦な摺動面541c,541cが形成されている。従って、支持部541bは、相対向する平坦な摺動面541c,541cと、該摺動面541c,541cの側縁同士を結ぶ両側の円弧面とを備えて、断面形状が略長方形状とされている。
【0045】
一方、軸部材53の筒孔は、支持ロッド541の支持部541bの断面形状に対応して断面略長方形状に形成されている。すなわち、軸部材53の内面には、支持ロッド541の摺動面541c,541cが摺動自在に接触する平坦な摺動面53a,53aが相対向するように形成され、また、この摺動面53a,53aの両側縁を結ぶ両側の円弧面が形成されている。
【0046】
支持手段54のピン542は、支持ロッド541の支持部541bに形成された貫通孔に嵌められ、該ピン542の両端は軸部材53に形成された支持孔に嵌められている。また、ピン542は、伝動制御プーリ本体部51の中央付近に配置され、支持ロッド541の摺動面541cに直交している。
【0047】
そうして、支持ロッド541の支持部541bの両側の円弧面と軸部材53の筒孔の両側の円弧面との間に、ピン542を軸として軸部材53が伝動制御プーリ本体部51と共に揺動することを許容する隙間55,隙間55が形成されている。従って、伝動制御プーリ本体部51は、伝動制御プーリ回転軸C3周りに回転自在に且つ、該伝動制御プーリ回転軸C3に直交する枢軸C4周りに揺動自在に支持される。
【0048】
以上のように構成される原動プーリ2、従動プーリ3、伝達ベルト4及び伝動制御プーリ5を次のように配設することでベルト式無段変速装置1が形成される。すなわち、図1,図5に示すように、原動プーリ2とテーパ方向を逆にして平行に従動プーリ3を配設し、原動プーリ2と従動プーリ3間に伝動ベルト4を巻き掛けることにより、原動プーリ2と従動プーリ3とを駆動連結する。
【0049】
そうして、原動プーリ2と従動プーリ3との間に伝動制御プーリ5を配設し、該伝動制御プーリ5を伝動ベルト4の背面に対して押しつけることにより、該伝動ベルト4に張力を付与する。尚、図1,図5においては、伝動制御プーリ5のプーリ本体部51のみを図示し、その他の部位の図示は適宜省略している。このとき、伝動制御プーリ5は、図6に示すように、伝動ベルト4の張力によって軸部材53に加わる荷重、いわゆる軸荷重のL方向を基準としてピン542をベルト走行方向Aの手前側に傾倒させて、或いは、そのピン542を軸荷重Lの方向に対して直交するように配設される。また、この伝動制御プーリ5は、前述したように、変位機構により回転軸方向に、往復移動可能に構成されており、この伝動制御プーリ5の変位によって、後述するように、伝動ベルト4が回転軸方向に往復移動するようになる。
【0050】
尚、原動プーリ回転軸C1と従動プーリ回転軸C2との距離が、伝動ベルト4の幅の25倍よりも大きいと伝動ベルト4がねじれて各プーリから脱落する虞があるため、その距離が25倍以下になるように原動プーリ2及び従動プーリ3を配設することが好ましい。
【0051】
本ベルト式無段変速装置は、以上のように構成されており、次に本ベルト式無段変速装置の動作について説明する。
【0052】
ベルト式無段変速装置1は、図示省略の原動機により、原動プーリ2が回転駆動された状態で、伝動ベルト4の上側から伝動制御プーリ5を押しつけることより、伝動ベルト4に張力を付与して、原動プーリ2から従動プーリ3に動力を伝達する。
【0053】
ここで、例えば、図5において実線で示す、伝動ベルト4が巻き掛けられた位置が原動プーリ2の径と従動プーリ3の径とが同じ位置、つまり変速比(従動プーリの径/原動プーリの径)が1の状態にあるときには、伝動ベルト4は、原動プーリ2に対しては第1傾斜面41のみが密接し、従動プーリ3に対しては第2傾斜面42のみが密接するため、それぞれ伝動ベルト4の幅方向の半分の部分のみがプーリ2,3に密接することになるものの、この位置では、原動プーリ2及び従動プーリ3の径が比較的大きいため、動力伝達が安定して行われる。
【0054】
そして、この変速比が1の状態から、増速させる場合には、まず、図示省略の変位機構により伝動プーリ制御装置5を従動プーリ小径部33a側(図5の左側)に移動させる。
【0055】
このとき、図7の2点鎖線で示すように、伝動ベルト4が伝動制御プーリ本体部51の中央から端部(図7の右側)に相対的に片寄る。そうすると、伝動制御プーリ本体部51に加わる軸荷重Lは、ピン542の位置から伝動制御プーリ本体部51の片側にずれて軸部材53に作用するようになる。これにより、軸部材53にピン542を中心とする回転モーメントが働き、この軸部材53が伝動制御プーリ本体部51と共にピン542の周りに回転変位する。
【0056】
すなわち、図6において、仮に軸荷重の方向がピン542と平行であるとしたとき(つまり、図6のL0の方向のとき)は、伝動ベルト4が伝動制御プーリ本体部51の中央からその片側によったとしても、このピン542周りの回転モーメントは発生しない。これに対して、軸荷重の方向がピン542の方向に対して角度ζだけ傾いたLになると、伝動ベルト4が伝動制御プーリ本体部51の中央からその片側に寄ったときに、その分力L1によってピン542周りの回転モーメントが発生し、軸部材53は回転変位することになる。角度ζは、軸荷重Lの方向を基準とするピン542の傾倒角に相当する。
【0057】
そうして、図6の2点鎖線に示すように、軸荷重Lによって、伝動制御プーリ本体部51が傾倒したピン542周りに回転変位することにより、伝動制御プーリ本体部51は、図7の2点鎖線で示すように、伝動ベルト4が相対的に片寄ってきた側の端部が反対側の端部に比べてベルト走行方向Aの先側になるようにこの伝動ベルト4に対して斜交い状態になり、また、図8の2点鎖線に示すように、軸荷重Lの分力L1によって、伝動制御プーリ本体部51は、伝動ベルト4が片寄ってきた側の端部が反対側の端部に比べて軸荷重Lの方向に高くなるように傾斜する。
【0058】
これにより、伝動ベルト4には、伝動制御プーリ本体部51が斜交い状態になることによる戻し力(片寄りを戻す力)と、伝動制御プーリ本体部51が傾斜することによる戻し力とが働き、伝動ベルト4は伝動制御プーリ本体部51上でピン542の位置へと移動する。つまり、伝動制御プーリ5を移動させると、伝動ベルト4には伝動制御プーリ本体部51上でピン542の位置に戻ろうとする力が働くため、伝動ベルト4は、伝動制御プーリ5に追従して、従動プーリ小径部33a側に移動する。
【0059】
伝動制御プーリ5に追従して移動した伝動ベルト4が従動プーリ小径部33a(図5の左側の1点鎖線の位置)に達すると、図5に示すように、伝動ベルト4の第1傾斜面41と従動プーリ拡径部34及び第2傾斜面42と従動プーリ縮径部33のそれぞれが密接し、伝動ベルト4と従動プーリ3との間の面圧分布が、伝動ベルト4の幅方向に略均一となる。すなわち、従来の無段変速装置であれば、従動プーリには拡径部が形成されていなかったため、伝動ベルト4の第1傾斜面41は従動プーリとは接しない一方で、第2傾斜面42のみが従動プーリと接することになる。このため、伝動ベルト4から従動プーリにかかる面圧が、伝動ベルト4の幅中央(つまり、V字の頂点)から幅方向端部(つまり、V字の端部)に向かって次第に低くなり、面圧分布が不均一になる結果、原動プーリ2から従動プーリ3へと安定して動力を伝達することができなかった。これに対し、本実施形態の構成では、従動プーリ3に拡径部34を設けているため、従動プーリ3側では、最も小さい径の部分に伝動ベルト4が巻き掛けられているものの、図5の拡大図において示すように、伝動ベルト4の伝動面全体で従動プーリ3に密接することになり、伝動ベルト4から従動プーリ3にかかる面圧がベルト幅方向に略均一になる。その結果、原動プーリ2から従動プーリ3へと安定して動力を伝達することができる。
【0060】
また、従動プーリ小径部33aにおける伝動ベルト4と従動プーリ3との接触面積が、従来のベルト式無段変速装置に比べて、第1傾斜面41と従動プーリ拡径部34とが密接する分だけ増加するので、より安定して動力を伝達することができる。
【0061】
次に、図5において実線で示す、前記変速比が1の状態から、減速させる場合には、まず、図示省略の変位機構により伝動プーリ制御装置5を原動プーリ小径部23a側(図5の右側の1点鎖線の位置)に移動させる。これによって、前記とは逆に、伝動ベルト4が伝動プーリ制御装置5に追従して原動プーリ小径部23a側に移動する。
【0062】
そうして、伝動ベルト4が原動プーリ小径部23aに達すると、従来の無段変速装置であれば、伝動ベルト4の第2傾斜面42は原動プーリ2に接しずに、第1傾斜面41のみが原動プーリ2と密接して、伝動ベルト4から原動プーリ2にかかる面圧が、伝動ベルト4の幅中央(つまり、V字の頂点)から幅方向端部(つまり、V字の端部)に向かって次第に低くなり、その結果、原動プーリ2から従動プーリ3へと安定して動力を伝達することができなくなるところ、実施形態1に係るベルト式無段変速装置1では、図5に示すように、伝動ベルト4が原動プーリ小径部23aに位置していても、伝動ベルト4の第1傾斜面41と原動プーリ縮径部23及び第2傾斜面42と原動プーリ拡径部24のそれぞれが密接することになり、伝動ベルト4から原動プーリ2にかかる面圧が、伝動ベルト4の幅方向に略均一となる。従って、従動プーリ3側では、比較的大きい径の部分に伝動ベルト4が巻き掛けられているので、伝動ベルト4から従動プーリ3にかかる面圧は比較的均一になる一方、原動プーリ2側では、比較的小さい径の部分に伝動ベルト4が巻き掛けられているものの、伝動ベルト4の伝動面全体と密接することで伝動ベルト4から原動プーリ2にかかる面圧がベルト幅方向に略均一になり、原動プーリ2から従動プーリ3へと安定して動力を伝達することができる。
【0063】
また、原動プーリ小径部23aにおける伝動ベルト4と原動プーリ2との接触面積が、従来のベルト式無段変速装置に比べて、第2傾斜面42と原動プーリ拡径部24とが密接する分だけ増加するので、より安定して動力を伝達することができる。
【0064】
従って、本発明の実施形態1にかかるベルト式無段変速機1では、変速比が最大又は最小時であっても安定して動力を伝達することができる。
【0065】
また、伝動ベルト4から原動プーリ2又は従動プーリ3にかかる面圧がベルト幅方向に略均一になるため、ベルト内部の歪みが解消され、その結果、伝動ベルト4の寿命を延ばす効果もある。
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係るベルト式無段変速装置101について説明する。
【0066】
この実施形態2に係るベルト式無段変速装置101は、原動プーリと従動プーリと伝動ベルトの構成が実施形態1と異なる。そこで、実施形態1と同様の構成については適宜説明を省略し、実施形態1と異なる構成を中心に説明する。
【0067】
ベルト式無段変速装置101は、図1に示すように、図示省略の原動機によって原動プーリ回転軸C5周りに回転駆動される原動プーリ102と、該原動プーリ回転軸C5と平行に配設される従動プーリ回転軸C6周りに回転自在に支持される従動プーリ103と、該従動プーリ103と原動プーリ102間に巻き掛けられて原動プーリ102と従動プーリ103とを連結すると共に、原動プーリ102から従動プーリ103へと動力を伝達する伝達ベルト104と、該伝達ベルト4の両プーリへの巻き掛け位置を制御する伝動ベルト制御手段としての伝動制御プーリ5とを備えている。この原動プーリ回転軸C5が第1回転軸とされている一方、従動プーリ回転軸C6が第2回転軸とされている。
【0068】
原動プーリ102は、図1に示すように、原動軸121と、該原動軸121に嵌め込まれて、該原動軸121と回転一体に形成される原動プーリ本体部122とを備えている。
【0069】
原動プーリ本体部122は、図9に示すように、原動プーリ回転軸C5方向に勾配角γのテーパ状に形成される原動プーリ縮径部123と、該原動プーリ縮径部123の径が相対的に小さい原動プーリ小径部123aから該原動プーリ小径部123aと同一径で原動プーリ回転軸C5方向に延びる原動プーリ同径部124とを有している。また、原動プーリ本体部122は、原動軸121を挿通することができるように中空にされている。
【0070】
従動プーリ103は、図1に示すように、従動軸131と、該従動軸131に嵌め込まれて、該従動軸131と回転一体に形成される従動プーリ本体132とを備えている。
【0071】
従動プーリ本体132は、図9に示すように、原動プーリ本体122と同一形状を有しており、従動プーリ回転軸C6方向に勾配角γのテーパ状に形成される従動プーリ縮径部133と、該従動プーリ縮径部133の径が相対的に小さい従動プーリ小径部133aから該従動プーリ小径部133aと同一径で従動プーリ回転軸C6方向に延びる従動プーリ同径部134とを有している。また、従動プーリ本体部132は、従動軸131を挿通することができるように中空にされている。
【0072】
伝動ベルト104は、図10に示すように、伝動面と、背面と、を含む平ベルトであり、その内の伝動面は、ベルト幅方向の一端から勾配角γと同じ角度でベルト幅方向の中央に向かって下向きに傾斜する第1傾斜面141と、ベルト幅方向の他端から勾配角γと同じ角度でベルト幅方向の中央に向かって下向きに傾斜する第2傾斜面142と、第1傾斜面141と第2傾斜面142との間で平坦に形成される平坦面143とで形成されている。この平坦面143のベルト幅方向中央は、伝動ベルト4の幅中央に位置している。
【0073】
本実施形態のベルト式無段変速装置101は、以上のように構成されており、次に本ベルト式無段変速装置101の動作について説明する。
【0074】
例えば、図11において実線で示す、伝動ベルト104が巻き掛けられた位置が原動プーリ102の径と従動プーリ103の径とが同じ位置、つまり変速比が1の状態から、増速させる場合には、まず、図示省略の変位機構により伝動プーリ制御装置5を従動プーリ小径部133a側(図11の左側)に移動させる。これによって、原動プーリ102側では、伝動ベルト104の第2傾斜面142及び平坦面143は原動プーリ102とは接しずに第1傾斜面141と原動プーリ縮径部123とが密接する一方、従動プーリ103側では、第1傾斜面141及び平坦部143は従動プーリ103とは接しずに第2傾斜面142と従動プーリ縮径部133とが密接しながら、伝動ベルト104は伝動プーリ制御装置5に追従して移動する。
【0075】
そうして、伝動ベルト104が従動プーリ小径部133aから従動プーリ同径部134(図11の左側の1点鎖線の位置)に達すると、従動プーリ103側では、第1傾斜面141及び第2傾斜面142は従動プーリ103と接しずに平坦面143と従動プーリ同径部134とが密接する一方、原動プーリ102側では、第2傾斜面142及び平坦面143は原動プーリ102と接しずに、第1傾斜面141と原動プーリ縮径部123とが密接する。このようにして、伝動ベルト104と従動プーリ103とは従動プーリ回転軸C6と平行な平坦面同士で密接するため、伝動ベルト104から従動プーリ103にかかる面圧が、ベルト幅方向の中央において、その幅方向に略均一になる。従って、原動プーリ102側では、比較的大きい径の部分に伝動ベルト104が巻き掛けられているので、伝動ベルト104から原動プーリ102にかかる面圧は比較的均一になる一方、従動プーリ103側では、比較的小さい径の部分に伝動ベルト104が巻き掛けられているものの、伝動ベルト104の平坦面146と従動プーリ同径部134とが密接することになり、伝動ベルト104から従動プーリ103にかかる面圧がベルト幅方向に略均一になる。その結果、原動プーリ102から従動プーリ103へと安定して動力を伝達することができる。
【0076】
次に、図11において実線で示す、前記変速比が1の状態から、減速させる場合には、まず、図示省略の変位機構により伝動プーリ制御装置5を原動プーリ小径部123a側(図11の右側)に移動させる。これによって、前述したように、伝動ベルト104が伝動プーリ制御装置5に追従して移動する。
【0077】
そうして、伝動ベルト104が原動プーリ小径部123aから原動プーリ同径部124(図11の右側の1点鎖線の位置)に達すると、原動プーリ102側では、第1傾斜面141及び第2傾斜面142は原動プーリ102と接しずに平坦面143と原動プーリ同径部124とが密接する一方、従動プーリ103側では、第1傾斜面141及び平坦面143は従動プーリ103と接しずに、第2傾斜面142と従動プーリ縮径部133とが密接する。このようにして、伝動ベルト104と原動プーリ102とは原動プーリ回転軸C5と平行な平坦面同士で密接し、伝動ベルト104から原動プーリ102にかかる面圧がベルト幅方向に略均一になる。従って、従動プーリ103側では、比較的大きい径の部分に伝動ベルト104が巻き掛けられているので、伝動ベルト104から従動プーリ103にかかる面圧は比較的均一になる一方、原動プーリ102側では、比較的小さい径の部分に伝動ベルト104が巻き掛けられているものの、伝動ベルト104の平坦面143と原動プーリ同径部124とが密接することになり、伝動ベルト104から原動プーリ102にかかる面圧がベルト幅方向の中央において、その幅方向に略均一になる。その結果、原動プーリ102から従動プーリ103へと安定して動力を伝達することができる。
【0078】
従って、本発明の実施形態2にかかるベルト式無段変速機101では、変速比が最大又は最小時であっても安定して動力を伝達することができる。
【0079】
尚、伝動ベルト104の寿命を延ばす効果があるのは、言うまでもない。
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係るベルト式無段変速装置201について説明する。
【0080】
この実施形態3に係るベルト式無段変速装置201は、原動プーリと従動プーリの構成が実施形態2と異なる。そこで、実施形態2と同様の構成については適宜説明を省略し、実施形態2と異なる構成を中心に説明する。
【0081】
ベルト式無段変速装置201は、図1に示すように、図示省略の原動機によって原動プーリ回転軸C7周りに回転駆動される原動プーリ202と、該原動プーリ回転軸C7と平行に配設される従動プーリ回転軸C8周りに回転自在に支持される従動プーリ203と、該従動プーリ203と原動プーリ202間に巻き掛けられて原動プーリ202と従動プーリ203とを連結すると共に、原動プーリ202から従動プーリ203へと動力を伝達する伝達ベルト104と、該伝達ベルト104の両プーリへの巻き掛け位置を制御する伝動ベルト制御手段としての伝動制御プーリ5とを備えている。この原動プーリ回転軸C7が第1回転軸とされている一方、従動プーリ回転軸C8が第2回転軸とされている。
【0082】
原動プーリ202は、図1に示すように、原動軸221と、該原動軸221に嵌め込まれて、該原動軸221と回転一体に形成される原動プーリ本体部222とを備えている。
【0083】
原動プーリ本体部222は、図12に示すように、原動プーリ回転軸C7方向にテーパ状に形成される原動プーリ縮径部223と、該原動プーリ縮径部223の径が相対的に小さい原動プーリ小径部223aから該原動プーリ小径部223aと同一径で原動プーリ回転軸C7方向に延びる原動プーリ同径部224と、該原動プーリ同径部224の原動プーリ小径部223aとは逆側の端部から拡径する原動プーリ拡径部225とを有している。換言すれば、原動プーリ同径部224によって、原動プーリ縮径部223と、該原動プーリ縮径部223とはテーパ方向が逆の原動プーリ拡径部225とが連結されている。そうして、原動プーリ縮径部223の勾配角δと原動プーリ拡径部225の勾配角εとは同じに設定されている。また、原動プーリ本体部222は、原動軸221を挿通することができるように中空にされている。
【0084】
従動プーリ203は、図1に示すように、従動軸231と、該従動軸231に嵌め込まれて、該従動軸231と回転一体に形成される従動プーリ本体部232とを備えている。
【0085】
従動プーリ本体部232は、図12に示すように、原動プーリ本体部222と同一形状を有しており、従動プーリ回転軸C8方向にテーパ状に形成される従動プーリ縮径部233と、該従動プーリ縮径部233の径が相対的に小さい従動プーリ小径部233aから該従動プーリ小径部233aと同一径で従動プーリ回転軸C8方向に延びる従動プーリ同径部234と、該従動プーリ同径部234の従動プーリ小径部233aとは逆側の端部から拡径する従動プーリ拡径部235とを有している。換言すれば、従動プーリ同径部234によって、従動プーリ縮径部233と、該従動プーリ縮径部233とはテーパ方向が逆の従動プーリ拡径部235とが連結されている。そうして、従動プーリ縮径部233の勾配角と従動プーリ拡径部235の勾配角は、勾配角δと同じにされている。また、従動プーリ本体部232は、従動軸231を挿通することができるように中空にされている。
【0086】
また、伝動ベルト104の第1傾斜面141側のベルト幅方向の端部から平坦面143への角度及び第2傾斜面142側のベルト幅方向の端部から平坦面143への角度はそれぞれ、勾配角δと同じにされている。また、伝動ベルト104の平坦部143の幅は、原動プーリ202及び従動プーリ203における同径部224,234の幅と略同じに設定されている。
【0087】
本実施形態のベルト式無段変速装置201は、以上のように構成されており、次に本ベルト式無段変速装置201の動作について説明する。
【0088】
例えば、図13において実線で示す、伝動ベルト104が巻き掛けられた位置が原動プーリ202の径と従動プーリ203の径とが同じ位置、つまり変速比が1の状態から、増速させる場合には、まず、図示省略の変位機構により伝動プーリ制御装置5を従動プーリ小径部233a側(図13の左側)に移動させる。これによって、原動プーリ202側では、伝動ベルト104の第2傾斜面142及び平坦面143は原動プーリ202とは接しずに第1傾斜面141と原動プーリ縮径部223とが密接する一方、従動プーリ203側では、第1傾斜面141及び平坦部143は従動プーリ203とは接しずに第2傾斜面142と従動プーリ縮径部233とが密接しながら、伝動ベルト104は伝動プーリ制御装置5に追従して移動する。
【0089】
そうして、伝動ベルト104が従動プーリ小径部233aから従動プーリ同径部234(図13の左側の1点鎖線の位置)に達すると、従動プーリ203側では、第1傾斜面141と従動プーリ拡径部235、第2傾斜面142と従動プーリ縮径部233、及び平坦面143と従動プーリ同径部234とがそれぞれ密接する一方、原動プーリ202側では、第2傾斜面142及び平坦面143は原動プーリ202と接しずに、第1傾斜面141と原動プーリ縮径部223と密接する。従って、原動プーリ202側では、比較的大きい径の部分に伝動ベルト104が巻き掛けられているので、伝動ベルト104から原動プーリ202にかかる面圧は比較的均一になる一方、従動プーリ203側では、比較的小さい径の部分に伝動ベルト104が巻き掛けられているものの、伝動ベルト104の伝動面全体で密接することになり、伝動ベルト104から従動プーリ203にかかる面圧がベルト幅方向に略均一になる。その結果、原動プーリ202から従動プーリ203へと安定して動力を伝達することができる。
【0090】
次に、図13において実線で示す、変速比が1の状態から、減速させる場合には、まず、図示省略の変位機構により伝動プーリ制御装置5を原動プーリ小径部223a側(図13の右側)に移動させる。これによって、前述したように、伝動ベルト104が伝動制御プーリ制御装置5に追従して移動する。
【0091】
そうして、伝動ベルト104が原動プーリ小径部223aから原動プーリ同径部224(図13の右側の1点鎖線の位置)に達すると、原動プーリ202側では、第1傾斜面141と原動プーリ縮径部223、第2傾斜面142と原動プーリ拡径部225、及び平坦面143と原動プーリ同径部224とがそれぞれ密接する一方、従動プーリ203側では、第1傾斜面141及び平坦面143は従動プーリ203に接しずに、第2傾斜面142と従動プーリ縮径部233とが密接する。従って、従動プーリ203側では、比較的大きい径の部分に伝動ベルト104が巻き掛けられているので、伝動ベルト104から従動プーリ203にかかる面圧は比較的均一になる一方、原動プーリ202側では、比較的小さい径の部分に伝動ベルト104が巻き掛けられているものの、伝動ベルト104の伝動面全体で密接することになり、伝動ベルト104から原動プーリ202にかかる面圧がベルト幅方向に略均一になる。その結果、原動プーリ202から従動プーリ203へと安定して動力を伝達することができる。
【0092】
従って、本発明の実施形態3にかかるベルト式無段変速機201では、変速比が最大又は最小時であっても安定して動力を伝達することができる。
【0093】
尚、伝動ベルト204の寿命を延ばす効果があるのは、言うまでもない。
【0094】
また、実施形態1ないし実施形態3のベルト式変速装置は、伝動ベルト4,104を、例えば原動プーリ2に設けたフランジに当てることによって伝動ベルト4の脱落を防止するものではなく、伝動制御プーリ5から伝動ベルト4に働く戻し力によって、その伝動ベルト4の走行位置を制御するものである。そのため、伝動ベルト4の寿命の低下はない。尚、伝動制御プーリ本体部51には、フランジを設けてもよい。これは、伝動制御プーリ本体部51の回転を停止した状態でその伝動制御プーリ本体部51を原動プーリ又は従動プーリの回転軸方向に移動させた際に、伝動ベルト4が脱落することを防止することに有効である。また、伝動ベルト制御手段としては、伝動ベルト4を移動させることができればよく、伝動制御プーリ5である必要はない。しかしながら、伝動制御プーリ5は、前述したように、伝動ベルト4を回転軸方向に容易に往復移動させることができる一方で、無段変速装置を一定の変速比で駆動させるときには、伝動制御プーリ5を静止させることによって、平ベルトからなる伝動ベルト4を、蛇行等を生じることなく安定して走行させることができるため、本実施形態に係る無段変速装置におけるベルト制御手段として極めて有効である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上説明したように、本発明は、円錐プーリと伝動ベルトとを用いて無段変速を実現するベルト式無段変速装置において、変速比が最大又は最小の時でも原動プーリから従動プーリに安定して動力を伝達させることができるため、例えば二輪車や四輪車等の乗物を含む各種装置に利用できる点で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明に係るベルト式無段変速装置の側面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る原動プーリ又は従動プーリの斜視図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る伝動ベルトの横断面を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る伝動制御プーリを示す一部断面にした側面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速装置の変速方法を説明する図である。
【図6】本発明に係る伝動制御プーリの使用状態を示す正面図である。
【図7】同使用状態において、伝動制御プーリ本体部に対して伝動ベルトが相対的に片寄ったときの図6のVII矢視図である。
【図8】同使用状態において、伝動制御プーリ本体部に対して伝動ベルトが相対的に片寄ったときの図6のVIII矢視図である。
【図9】本発明の実施形態2に係る原動プーリ又は従動プーリの斜視図である。
【図10】本発明の実施形態2及び実施形態3に係る伝動ベルトの横断面を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施形態2に係るベルト式無段変速装置の変速方法を説明する図である。
【図12】本発明の実施形態3に係る原動プーリ又は従動プーリの斜視図である。
【図13】本発明の実施形態3に係るベルト式無段変速装置の変速方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0097】
1,101,201 ベルト式無段変速装置
2,102,202 原動プーリ
22,122,222 原動プーリ本体部
23,123,223 原動プーリ縮径部
23a,123a,223a 原動プーリ小径部
24,225 原動プーリ拡径部
124,224 原動プーリ同径部
3,103,203 従動プーリ
32,132,232 従動プーリ本体部
33,133,233 従動プーリ縮径部
33a,133a,233a 従動プーリ小径部
34,235 従動プーリ拡径部
134,234 従動プーリ同径部
4,104 伝動ベルト
41,141 第1傾斜面
42,142 第2傾斜面
143 平坦面
5 伝動制御プーリ(伝動ベルト制御手段)
51 伝動制御プーリ本体部
53 軸部材
54 支持手段
C1,C5,C7 原動プーリ回転軸(第1回転軸)
C2,C6,C8 従動プーリ回転軸(第2回転軸)
C4 枢軸
α,β,γ,δ,ε 勾配角
ζ 傾倒角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転軸方向の一側から他側に向かって縮径するように所定の勾配角にされたプーリ面を含む縮径部を有すると共に、前記第1回転軸周りに回転駆動される原動プーリと、
前記第1回転軸と平行な第2回転軸周りに回転自在に支持されると共に、前記第2回転軸の他側から一側に向かって縮径するように、前記原動プーリにおける前記勾配角と同じ勾配角にされたプーリ面を含む縮径部を有する従動プーリと、
前記原動プーリと前記従動プーリ間に巻き掛けられて該原動プーリと該従動プーリとを連結すると共に、前記原動プーリから前記従動プーリへと動力を伝達する伝動ベルトと、 前記伝動ベルトを前記回転軸方向に往復移動させることによって、変速比を無段階に変更する伝動ベルト制御手段と、を備えたベルト式無段変速装置であって、
前記原動プーリ及び従動プーリはそれぞれ、前記縮径部において最小径の端部に連続すると共に、前記回転軸方向に前記勾配角と同じ勾配角で拡径する拡径部をさらに有し、
前記伝動ベルトにおいて、前記原動プーリ及び前記従動プーリのプーリ面に巻き掛けられる伝動面は、そのベルト幅方向の一側部から前記勾配角と同じ角度でベルト幅方向の中央に向かって傾斜する第1傾斜面と、前記ベルト幅方向の他側部から前記勾配角と同じ角度で前記ベルト幅方向の中央に傾斜する第2傾斜面とを備えることにより、横断面略V字形状となるように形成されていることを特徴とするベルト式無段変速装置。
【請求項2】
請求項1に記載のベルト式無段変速装置において、
前記伝動ベルトの伝動面は、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との交線が前記ベルト幅方向の中央になるように形成されていることを特徴とするベルト式無段変速装置。
【請求項3】
第1回転軸の一側から他側に向かって縮径するように所定の勾配角にされたプーリ面を含む縮径部を有すると共に、前記第1回転軸周りに回転駆動される原動プーリと、
前記第1回転軸と平行な第2回転軸周りに回転自在に支持されると共に、前記第2回転軸の他側から一側に向かって縮径するように、前記原動プーリにおける前記勾配角と同じ勾配角にされたプーリ面を含む縮径部を有する従動プーリと、
前記原動プーリと前記従動プーリ間に巻き掛けられて該原動プーリと該従動プーリとを連結すると共に、前記原動プーリから前記従動プーリへと動力を伝達する伝動ベルトと、 前記伝動ベルトを前記回転軸方向に往復移動させることによって、変速比を無段階に変更する伝動ベルト制御手段と、を備えたベルト式無段変速装置であって、
前記原動プーリ及び従動プーリはそれぞれ、前記縮径部において最小径の端部から当該端部と同一径で前記回転軸方向に延びる同径部をさらに有しており、
前記伝動ベルトにおいて、前記原動プーリ及び前記従動プーリのプーリ面に巻き掛けられる伝動面は、そのベルト幅方向の一側部から前記勾配角と同じ角度で前記ベルト幅方向の内方に向かって傾斜する第1傾斜面と、前記ベルト幅方向の他側部から前記勾配角と同じ角度で前記ベルトの幅方向の内方に向かって傾斜する第2傾斜面と、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との間でベルト幅方向に平坦に形成される平坦面とを備えていることを特徴とするベルト式無段変速装置。
【請求項4】
第1回転軸方向の一側から他側に向かって縮径するように所定の勾配角にされたプーリ面を含む縮径部を有すると共に、前記第1回転軸周りに回転駆動される原動プーリと、
前記第1回転軸と平行な第2回転軸周りに回転自在に支持されると共に、前記第2回転軸の他側から一側に向かって縮径するように、前記原動プーリにおける前記勾配角と同じ勾配角にされたプーリ面を含む縮径部を有する従動プーリと、
前記原動プーリと前記従動プーリ間に巻き掛けられて該原動プーリと該従動プーリとを連結すると共に、前記原動プーリから前記従動プーリへと動力を伝達する伝動ベルトと、 前記伝動ベルトを前記回転軸方向に往復移動させることによって、変速比を無段階に変更する伝動ベルト制御手段と、を備えたベルト式無段変速装置であって、
前記原動プーリ及び従動プーリはそれぞれ、前記縮径部において最小径の端部に連続すると共に、当該端部と同一径で前記回転軸方向に延びる同径部と、該同径部の端部に連続すると共に、前記回転軸方向に前記勾配角と同じ勾配角で拡径する拡径部とをさらに有し、
前記伝動ベルトにおいて、前記原動プーリ及び前記従動プーリのプーリ面に巻き掛けられる伝動面は、そのベルト幅方向の一側部から前記勾配角と同じ角度で前記ベルト幅方向の内方に向かって傾斜する第1傾斜面と、前記ベルト幅方向の他側部から前記勾配角と同じ角度で前記ベルト幅方向の内方に向かって傾斜する第2傾斜面と、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との間でベルト幅方向に平坦に形成される平坦面とを備えていることを特徴とするベルト式無段変速装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載のベルト式無段変速装置において、
前記伝動ベルトの前記伝動面は、前記平坦面が前記ベルト幅方向の中央になるように形成されていることを特徴とするベルト式無段変速装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載のベルト式無段変速装置において、
前記原動プーリと従動プーリとの間のベルトスパン長さは、前記伝動ベルトの幅の25倍以下に設定されていることを特徴とするベルト式無段変速装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載のベルト式無段変速装置において、
前記伝動ベルト制御手段は、前記伝動ベルトに対して張力を付与するように当該伝動ベルトの背面に押し当てられると共に、前記第1及び第2回転軸方向に往復移動可能に設けられた伝動制御プーリによって構成され、
前記伝動制御プーリは、前記伝動ベルトが巻き掛けられるプーリ本体と、前記プーリ本体を前記第1及び第2回転軸と平行な第3回転軸周りに回転自在に且つ、所定の枢軸周りに揺動自在に支持する支持手段と、を備え、
前記枢軸は、前記第3回転軸方向に沿って見て軸荷重の方向に対して前記プーリ本体の回転方向前側に所定の傾倒角で傾倒しており、
前記傾倒角は、0度を超え90度を超えない角度範囲に設定されていることを特徴とするベルト式無段変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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