説明

ベルト用帆布及びそれを使用したベルト

【課題】黒色摩耗粉の発生を防ぎ、燃焼しても塩素の発生しないベルト用帆布及びそれを使用した歯付きベルトを提供する。
【解決手段】白色の非塩素系ゴム糊で被覆され、表面にゴム層6が形成されたことを特徴とするベルト用帆布4である。帆布4とベルト本体2との間に白色のゴム層6が介在するので、ベルト本体2の黒ゴムがしみ出しにくく、黒色摩耗粉の発生を防止することができる。また、ゴム糊が非塩素系材料からなるので、燃焼しても塩素系ガスが発生せず、環境に配慮したものとすることができる。また、ディップ処理により簡単にゴム層6を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト用帆布及びそれを使用したベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯付きベルトは、摩耗などから保護するために伸縮性のある帆布によってベルトの歯部が被覆されているが、歯部の黒色ゴムが帆布から帆布表面にしみ出して、摩耗粉が発生してしまう。その摩耗粉は黒いため目立ってしまう。
【0003】
そこで、歯部の黒色ゴムのしみ出しを防ぐために、帆布をRFLで処理したものがある。また、特許文献1には、帆布の歯ゴムとの接着面側に白色ゴムを塗布したものが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−229142号公報(請求項1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、RFLで処理する方法によると、黒色ゴムのしみ出しを完全に防げず、黒色摩耗粉の発生を完全に抑えることはできない。また、帆布に白色ゴムを塗布する方法によると、工程が増えるのでコストが増えてしまう。また、その白色ゴムには塩素を含むため、燃焼させると塩素系ガスが発生してしまい、大気汚染の原因となる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、黒色摩耗粉の発生を防ぎ、燃焼しても塩素の発生しないベルト用帆布及びそれを使用した歯付きベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、白色の非塩素系ゴム糊で被覆され、表面にゴム層が形成されたことを特徴とするベルト用帆布である。ゴム層は、ディップ処理により帆布の両面に形成されるが、ベルト本体との接合面のみの片面に形成してもよい。非塩素系ゴム糊とは、ゴム糊を構成する配合材料である基材、接着剤、充填剤、可塑剤、安定剤などに塩素系化合物を含まないものよりなるものである。非塩素系ゴム糊に使用されるゴムの例としてはこれに限定されるものではないが、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)等が挙げられる。このように、ゴム糊が非塩素系材料からなるので、燃焼しても塩素系ガスが発生せず、環境に配慮したものとすることができる。
【0008】
また、ゴム糊を白色にするためには、通常入れられるカーボンブラックの代わりに、シリカや酸化チタン等の白色材料を配合すればよい。このような白色のゴム層を表面に形成したベルト用帆布を使用したベルトは、帆布とベルト本体との間に白色のゴム層が介在することになるので、ベルト本体の黒ゴムがしみ出しにくく、黒色摩耗粉の発生を防止することができる。例え、白色のゴム層から摩耗粉が発生しても白色であるので、目立ちにくい。
【0009】
非塩素系ゴム糊は、樹脂系接着剤を含有するのが好ましい。樹脂系接着剤を含有することにより、ゴム糊の接着力が高くなるので、ベルト本体とベルト用帆布との接着性が向上する。そのため、走行中のベルト本体からの白色ゴムのはがれが抑制され、ベルト本体の黒ゴムの摩耗粉の発生を防止できる。
【0010】
樹脂系接着剤としては、フェノール樹脂または無水マレイン酸変性液状ポリブタジエン、アクリル酸変性液状ポリブタジエン、ウレタン変性液状ポリブタジエン、カルボン酸変性液状ポリブタジエン及びマレイン酸変性ポリイソプレンよりなる群から選ばれる少なくとも一種を含めばよいが、これらに限定されるものではない。
【0011】
非塩素系ゴム糊の23℃における粘度が、100〜200cpsであるのが好ましい。この範囲内であれば、ゴム糊の接着力が高くなり、ベルト本体とベルト用帆布との接着性が向上する。
【0012】
また、ゴム層は、これに限定されるものではないが、ディップ処理により形成するのが好ましい。ディップ処理によれば、簡単にゴム層を形成することができる。
【0013】
上記の構成のベルト用帆布はベルト本体に接合されるが、ベルト本体に歯部が形成されている場合は、その歯部に接合するものとする。また、本ベルト用帆布は、これに限定されるものではないが、ベルト本体に歯部を形成した歯付きベルト、平ベルト、リブベルトなどの種々のベルトに適用することができる。また、ベルトの用途としても、伝動ベルト、搬送ベルトを問わず適用可能であり、さらに、有端ベルト、無端ベルトを問わず適用可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、帆布とベルト本体との間に白色のゴム層が介在するので、ベルト本体の黒ゴムがしみ出しにくく、黒色摩耗粉の発生を防止することができる。また、そのゴム層を非塩素系ゴム糊で形成しているので、燃焼しても塩素系ガスが発生せず、環境に配慮したものとすることができる。また、帆布表面へのゴム層形成方法がディップ処理によるので、簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態の歯付きベルトの側面図、図2は帆布のディップ処理工程を示す図である。図1に示すように、本実施形態のベルト1は、伝動用歯付きベルトであって、平板状で環状のベルト本体2と、その内周面側においてベルト長さ方向に等ピッチで形成された歯部3と、白色の非塩素系ゴム糊でディップ処理が施され、歯部3の歯面及び歯溝に亘って装着された帆布4と、ベルト本体2にその長手方向に延設して埋設された複数本の心線5とを備えてなるものである。
【0016】
ベルト本体2及び歯部3を構成する素材は、これに限定されるものではないが、例えば、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム、又はこれらに適宜添加剤を加えたゴムなどのゴム材料や、あるいは弾性合成樹脂などのゴム状弾性材からなる。なお、燃焼時の塩素系ガスの発生を防止するために、非塩素系ゴムを用いるのが好ましく、また、帆布との接着性を向上させるために、後述する非塩素系ゴム糊のゴム成分と同一の素材を用いるのが好ましい。
【0017】
帆布4は、ベルト本体2及び歯部3がプーリーなどと接触して摩耗するのを防ぐと共に、これらの強度を保持するために、歯山及び歯溝に接着されるものである。帆布4には、バイアス等の伸縮性を有するものが好適であって、6―6ナイロンなどの合成繊維布が使用されるが、これに限定されるものではなく、ポリエステル、アラミド、PBO(ポリ−p−フェニレンベンゾオキサゾール)のような合成繊維、又は、綿のような天然繊維からなる布を用いてもよい。
【0018】
また、帆布4は、白色の非塩素系ゴム糊でディップ処理が施される。ゴム糊は、非塩素系ゴムを主成分とし、その他の配合材料にも塩素系化合物を含まない接着剤である。このようなゴム糊を使用すれば、燃焼しても塩素系ガスが発生せず、環境に配慮したものとすることができる。
【0019】
非塩素系ゴムとしては、ゴムを構成する配合材料である基材、接着剤、充填剤、可塑剤、安定剤などに塩素系化合物を含まないものであれば限定されるものではないが、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)が挙げられる。
【0020】
また、ゴム糊には、通常配合されるカーボンブラックの代わりに、シリカや酸化チタン等の白色材料が配合されることにより、白色にされる。このような白色のゴム糊によるディップ処理により、帆布4の周囲に白色のゴム層6が形成され、白色のゴム層6が帆布4とベルト1の歯部3との間に介在することとなる。したがって、このゴム層6によりベルト本体の黒ゴムがしみ出しにくくなり、例え、ゴム層6がしみ出して摩耗粉が発生したとしても、その摩耗粉が白色であるので目立ちにくくなる。
【0021】
心線5は、ガラス繊維を撚り合わせたガラス心線からなり、歯部3の歯底付近に位置するようにベルト本体2に埋設され、歯付きベルトに作用する引張力を受け持つようになっている。なお、心線5は、アラミド繊維、カーボン繊維、スチール繊維、PBO繊維又はポリエステル繊維製であってもよい。
【0022】
上記構成の歯付きベルト1の製造方法を説明する。まず、帆布4のディップ処理方法について説明する。図2に示すように、帆布4を白色の非塩素系ゴム糊の入れられたディップ槽7に浸漬することにより、ディップ処理を施し、その後乾燥工程を経ることにより、帆布4の両面にゴム層6が形成される。
【0023】
次に、この帆布4を使用した歯付きベルト1の製造方法を説明する。まず、ベルトの歯部3に対応する歯溝が形成された金型の外周面に、上記の非塩素系ゴム糊でディップ処理した帆布4を環状に縫合したものを被せ、その外側に心線5及び未加硫ゴムシートをこの順で巻き付け、未加硫ゴムシートの両端部を重ね合わせる。
【0024】
次いで、未加硫ゴムシートの外側に筒状のシェルバッグを被せて加硫釜内で加熱加圧することにより、未加硫ゴムシートの一部を金型の歯溝に流入させつつ、未加硫ゴムシートを加硫成形して歯付ベルトスラブを構成する。この歯付ベルトスラブをシェルバッグ及び金型から取り外し、背面研磨、印刷及び所定幅への裁断を施して歯付ベルト1の製造が完了する。
【0025】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で多くの修正又は変更を加えることができるのは勿論である。例えば、上記実施形態においては伝動ベルトについて説明したが、これに限らず搬送ベルトに本発明を適用してもよい。また、ベルトは無端・有端、歯部の有無を問わず適用できることは勿論である。
【実施例】
【0026】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。表1は、NBRを主成分としたゴム糊のゴム成分の配合(ゴムN−1、ゴムN−2、ゴムN−3)と、EPDMを主成分としたゴム糊のゴム成分の配合(ゴムE)を示す。表2は、ベルト及びベルト用帆布のゴム糊処理液の構成、ゴム糊処理液の23℃における粘度(cps)、EPDMゴム又はNBR(HNBR)(ベルト本体2)に対するゴム糊の処理帆布接着力(N/25mm)、ベルトを100h走行させた後の黒色摩耗粉の量を示す。実施例及び比較例の帆布4は、表2の構成のゴム糊を用いたディップ処理により、両面に白色のゴム層が形成されている。比較例のゴム糊は、接着剤を含有していない。
【0027】
なお、ベルトの走行試験は、ベルト周長489mm、ベルト幅10mm、歯数163で、表2の構成からなる歯付ベルトを、水平に配された2つのプーリーに張架して、100h走行させて行った。2つのプーリーは、それぞれ歯数20であり、回転数3000rpm、トルク29N・cmの条件で回転させた。そして、試験機の下に敷かれた白色の紙に脱落した摩耗粉の量を目視にて観察した。黒色摩耗粉の量は、「多い」、「少ない」、「無し」の3段階で判定し、「多い」場合には×、「少ない」場合には〇、「無し」の場合には◎で表す。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
表2から分かるように、本歯付きベルトは、黒色摩耗粉の発生量を低く抑えることができることが分かる。また、本歯付きベルト1は、ゴム糊のEPDMゴム又はNBRゴムに対する接着力が高いことが分かる。特に、ゴム糊の粘度が100〜200cpsの場合に接着力が高い。したがって、帆布4とベルト本体2又は歯部3との間の接着力が十分にあるので、帆布4がベルト本体2又は歯部3からはがれることなどの不具合を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態の歯付きベルトの側面図
【図2】帆布のディップ処理工程を示す図
【符号の説明】
【0032】
1 歯付きベルト
2 ベルト本体
3 歯部
4 帆布
5 心線
6 ゴム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色の非塩素系ゴム糊で被覆され、表面にゴム層が形成されたことを特徴とするベルト用帆布。
【請求項2】
前記非塩素系ゴム糊に使用されるゴムが、NBR、HNBR又はEPDMであることを特徴とする請求項1記載のベルト用帆布。
【請求項3】
前記非塩素系ゴム糊は、樹脂系接着剤を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のベルト用帆布。
【請求項4】
前記樹脂系接着剤は、フェノール樹脂または無水マレイン酸変性液状ポリブタジエン、アクリル酸変性液状ポリブタジエン、ウレタン変性液状ポリブタジエン、カルボン酸変性液状ポリブタジエン及びマレイン酸変性ポリイソプレンよりなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項3記載のベルト用帆布。
【請求項5】
前記非塩素系ゴム糊の23℃における粘度が、100〜200cpsであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のベルト用帆布。
【請求項6】
前記ゴム層は、ディップ処理により形成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のベルト用帆布。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のベルト用帆布が、ベルト本体に接合されたことを特徴とするベルト。
【請求項8】
前記ベルト本体は、NBR、HNBR又はEPDMが使用されたことを特徴とする請求項7記載のベルト。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−300267(P2006−300267A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−125521(P2005−125521)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(000115245)ゲイツ・ユニッタ・アジア株式会社 (101)
【Fターム(参考)】