説明

ベルト用心線供給装置

【課題】 複数本の心線を互いに平行となるように埋設したベルトを成形するために、当該ベルトの成形金型に対し前記心線を所定の張力を付与しながら繰り出す心線供給装置において、心線の張力のバラツキを効果的に抑制できる簡素な構成を提供する。
【解決手段】 この心線供給装置60は、回転自在に支持されるとともに前記心線3を平行巻きに巻回したロール41に対し、スラスト方向の圧接力Fによって摩擦制動する摩擦制動手段を備える。具体的には、この摩擦制動手段は、互いに対向する制動面47・48をそれぞれ形成した一対のスラストリング45・46と、前記スラストリング45・46の一方を他方に向けて付勢するバネ51と、を含む。また、前記バネ51の弾性力を調整するスリーブ部材49からなる制動力調整手段を更に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の心線を互いに平行となるように埋設したベルトを成形するために、当該ベルトの成形金型に対し前記心線を所定の張力を付与しながら繰り出すベルト用心線供給装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の心線供給装置としては、例えば特許文献1に開示されるものがある。この特許文献1の心線供給装置は、互いに撚りが逆のコード(心線)を巻き付けたボビンを取り付ける2基の繰出装置を備え、このボビンは可変速モータによって繰出速度を制御できるように構成されている。
【0003】
そして、2基の繰出装置に対応してテンション付与装置がそれぞれ設置されており、各テンション付与装置は、定置プーリーと、上下動するダンサープーリーと、このダンサープーリーの下方に垂下されたウェイトからなる。そして、上記ダンサープーリーの移動方向と移動量は電気的信号に変換され、制御装置に入力されるようになっている。そしてコードは、このテンション付与装置を通過することで所定の張力を付与され、更に、タコジェネレータやテンション計測プーリーを経た後、ピッチ送りされながら金型上へ並べて複数回巻かれ、巻装されていく。
【0004】
そして前記制御装置は、前記タコジェネレータが繰出速度を測定して発生する電気的信号に同期するように前記可変速モータを制御するが、前記ダンサープーリーが上下動すると、それに応じて上記ボビンを回転させる可変速モータの回転速度を制御するように構成されている。これにより、コードの繰出しに伴うボビンの外径減少を補うようにボビンの回転速度が増加するため、コードの繰出時のテンションを一定に保持することができる。この結果、ベルトの捻れや曲がりを誘発するコードのテンションのバラツキが抑制される。
【特許文献1】特開平5−229028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の構成は、2基の繰出装置から繰り出される2本のコードを金型にピッチ送りしながら巻いていく構成であるため、例えば100本分以上のコードを金型に巻くのは時間が掛かり、生産効率を低下させる要因になっていた。一方、上記のテンション付与装置を付設した繰出装置を100本分以上設置するのは設備コストが極めて高くなり、また、心線の経路が極めて複雑となるため、実用的とは言いがたい。
【0006】
また、特許文献1の構成は金型の外周長でベルトの長さが決定されてしまうため、所謂フリースパンベルトの製造に適用するのは不可能である。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、心線の張力のバラツキを効果的に抑制できる簡素な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の観点によれば、複数本の心線を互いに平行となるように埋設したベルトを成形するために、当該ベルトの成形金型に対し前記心線を所定の張力を付与しながら繰り出すベルト用心線供給装置において、回転自在に支持されるとともに前記心線を巻回するロールに対し、スラスト方向の圧接力によって摩擦制動する、摩擦制動手段を備えるベルト用心線供給装置が提供される。
【0010】
この構成により、心線の繰出しに伴い回転するロールに対し、スラスト方向に圧接される部材同士の間で発生する摩擦制動によってブレーキ力を積極的に付与する構成が実現される。従って、ロールの回転中にブレーキ力を安定的に付与して心線の繰出張力を安定化させることができ、また、各心線ごとに付与される張力のバラツキを低減することができる。更には、部材同士を単にスラスト方向に圧接することで摩擦制動力を得る単純な構成であるから、複数の心線の1本ごとに設けられる心線供給装置の簡素な構成が実現され、ベルト製造装置全体を極めて簡素かつ安価に構成できる。
【0011】
前記のベルト用心線供給装置においては、前記摩擦制動手段は、前記スラスト方向に互いに対向する制動面を形成した少なくとも一対の制動部材と、対をなす前記制動部材のうち少なくとも一方を他方に向けて付勢するバネと、を含むことが好ましい。
【0012】
この構成により、ごく簡単な構成で心線に対し適度な繰出張力を付与することができる。また、バネの安定した付勢力によって制動部材同士を圧接することから、ロールに対するブレーキ力のバラツキを小さくでき、この意味でも心線の張力のバラツキを小さくできる。
【0013】
前記のベルト用心線供給装置においては、以下のように構成することが好ましい。前記制動部材は樹脂製のリング状に構成して、前記ロールと軸線を一致させる支軸を挿通させるように構成する。前記バネは前記支軸を挿通させるコイルバネ状に構成する。
【0014】
この構成により、心線の張力バラツキ抑制のための簡素かつコンパクトな構成を実現することができる。また、この樹脂製の制動部材として規格品や市販品を複数の心線供給装置間で統一して利用することで、心線供給装置ごとの制動部材の摩擦係数のバラツキを極めて小さくでき、心線の張力バラツキの抑制効果を一層向上することができる。
【0015】
前記のベルト用心線供給装置においては、前記摩擦制動手段の摩擦制動力を調整する制動力調整手段を更に備えることが好ましい。
【0016】
この構成により、複数の心線供給装置間で張力のバラツキを少なくするように各心線供給装置の制動力を調整することで、張力のバラツキを一層低減することができる。
【0017】
前記のベルト用心線供給装置においては、以下のように構成することが好ましい。前記摩擦制動手段は、前記スラスト方向に互いに対向する制動面を形成した少なくとも一対の制動部材と、対をなす前記制動部材のうち少なくとも一方を他方に向けて付勢するバネと、を含むように構成する。前記制動力調整手段は、前記バネの弾性力を調整するバネ押さえ部材を含んで構成されている。
【0018】
この構成により、ごく簡単な構成で心線に対し適度な繰出張力を付与することができる。また、バネの安定した付勢力によって制動部材同士を圧接することから、ロールに対するブレーキ力のバラツキを小さくでき、この意味でも心線の張力のバラツキを小さくすることができる。更に、心線の繰出時に付与される張力を、バネ押さえ部材によるバネの弾性力の調整により容易に変更することができる。
【0019】
前記のベルト用心線供給装置においては、以下のように構成することが好ましい。前記制動部材は樹脂製のリング状に構成して、前記ロールと軸線を一致させる支軸を挿通させるように構成するとともに、前記バネは前記支軸を挿通させるコイルバネ状に構成する。また、前記バネ押さえ部材は、前記制動部材と反対側で前記バネに接触するとともに、前記支軸に対する軸方向の取付位置を変更可能に構成されている。
【0020】
この構成により、心線の張力バラツキ抑制のための簡素かつコンパクトな構成を実現することができる。また、この樹脂製の制動部材として規格品や市販品を複数の心線供給装置間で統一して利用することで、心線供給装置ごとの制動部材の摩擦係数のバラツキを極めて小さくでき、心線の張力バラツキの抑制効果を一層向上することができる。更に、心線の繰出時の張力の調整を、バネ押さえ部材の取付位置を変更する簡単な作業によって行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る心線供給装置を用いた伝動ベルト製造装置の模式図である。図2は心線供給装置の構成を示す軸断面図である。
【0022】
図1に示すポリウレタン製歯付ベルト1の製造装置20は所謂フリースパンベルトの製造装置として構成されており、成形部21と、心線供給部23と、巻取部25と、を主要な構成として備えている。前記成形部21には成形金型ロール26が備えられており、この成形金型ロール26にポリウレタン樹脂を流しながら回転させることにより、ポリウレタン製歯付ベルト1を成形するように構成されている。
【0023】
成形部21は、前記成形金型ロール26のほか、3個のロール27〜29と、無端状のスチールバンド31とを有している。成形金型ロール26の外周には、所定のピッチで歯型が形成されている。また、3個のロール27〜29は成形金型ロール26の近傍に配設されるとともに、これらのロール27〜29及び成形金型ロール26にはスチールバンド31が巻回されている。
【0024】
また、成形金型ロール26の外周近傍には押出ノズル43が配置され、この押出ノズル43から、加熱され流動化されたポリウレタン樹脂を押し出すように構成されている。これにより、成形部21は、成形金型ロール26とスチールバンド31の圧力により、複数本の心線3・3・・・を樹脂に沿わせながら回転し、上記の歯付ベルト1を成形するように構成されている。
【0025】
巻取部25の詳細な構成は図示しないが、モータで駆動される図略の巻取ロールを備え、成形部21で成形された歯付ベルト1を前記巻取ロールに巻き取ることが可能に構成されている。この巻取部25で巻き取られた歯付ベルト1は、所望の長さに切断された後、両端同士を接合して無端状とされ、検査後に出荷される。
【0026】
心線供給部23は、1つにつき1本の心線3を巻回したロール41を多数支持するクリールスタンド36と、これらロール41・41・・・から繰り出された複数の心線3・3・・・を脱脂液に浸漬する脱脂槽37と、脱脂された心線3を接着液に浸漬する接着剤処理槽38と、処理後の心線3を加熱乾燥させるオーブン装置39と、心線3に所定の張力を付与する張力付与装置40と、を順に備えている。上記の張力付与装置40は、例えば、繰出時の心線3の張力の1倍から4倍程度となるべく張力を付与できるように構成することができる。
【0027】
なお、上記の心線3は、例えばポリエステル、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、或いはガラス繊維、カーボンファイバー、アラミド繊維、金属繊維等からなる低伸度の高強力ロープを使用することができる。これらの心線3は、複数本が歯付ベルト1の長手方向に沿って互いに平行となるよう整列しながら埋設されるものであり、歯付ベルト1における抗張体層を形成するように構成されている。クリールスタンド36において、前記ロール41は、歯付ベルト1に埋設される心線3・3・・・の本数分だけ備えられている(図1では10本分の場合を示す)。
【0028】
なお、クリールスタンド36における1つ1つのロール41には心線供給装置(プレテンション装置)60がそれぞれ設けられており、1つのロール41に対応する心線供給装置60の詳細な構成を図2に示す。この図2において、1本の心線3を平行巻きに多数回巻回したロール41は、クリールスタンド36に着脱自在に支持される。クリールスタンド36にロール41を掛けたとき、ロール41は支軸44まわりに回転自在とされる。
【0029】
このロール41の軸方向両側には円板部材42・42が固定され、この円板部材42・42はロール41を挟むように、ロール41の側面に取り付けられている。この円板部材42・42は適宜の厚みの鉄製の板に構成されている。
【0030】
前記支軸44は、2枚のスラストリング(制動部材)45・46を挿通するように備えられている。本実施形態では、前記スラストリング45・46としては、例えばテフロン(登録商標)、UHMW、ナイロン等の樹脂製のものを採用している。これらスラストリング45・46は軸方向に並べて一対で設けられ、互いにスラスト方向に対向する面には、平坦な制動面47・48を形成している。
【0031】
一方のスラストリング45はロール41側(円板部材42)に固定され、他方のスラストリング46は支軸44に対し軸方向移動自在かつ相対回転不能に取り付けられている。また、前記制動面47・48は、ロール41の回転軸線に垂直な平面状に構成されている。
【0032】
支軸44の前記スラストリング45・46と反対側の端部には、キャストナイロン製の支持部材52が設置されている。また、ロール41の回転を円滑化して回転騒音を低減するためのスポンジ53が、両円板部材42・42で挟まれた内側に備えられている。
【0033】
また、前記支軸44の一端側(スラストリング45・46を配置した側)には筒状のスリーブ部材(バネ押さえ部材、制動力調整手段)49が設けられ、このスリーブ部材49は支軸44上を軸線方向に移動自在とされるとともに、このスリーブ部材49に螺入される固定ボルト50によってその位置を固定されている。そして、一側のスラストリング46とスリーブ部材49との間にはコイル状のバネ51が押し縮められた状態で弾設されており、制動面47・48同士を相互に圧接させる付勢力を一側のスラストリング46に対して加えている。なお本実施形態においては、前記スラストリング45・46及びバネ51が摩擦制動手段に相当する。
【0034】
このコイル状のバネ51は、前記支軸44を内部に挿通させるように螺旋状に構成されている。また、前記スリーブ部材49は、固定ボルト50を緩めることで支軸44の軸線方向に沿って移動させることが可能であり、移動後の位置で固定ボルト50を締め付けることで、スリーブ部材49を新しい位置で再び固定することが可能になっている。
【0035】
この構成で、成形金型ロール26等の回転により心線3・3・・・が引き取られるのに伴い、クリールスタンド36においてそれぞれの心線3を巻回するロール41が回転しようとするが、このロール41の回転に対し、スラストリング45・46の制動面47・48間で発生する摩擦力が抗する。即ち、バネ51によってスラストリング45・46同士をスラスト方向の圧接力Fで圧接させることで、ロール41の回転に対し適度のブレーキ力を積極的に付与し、心線3に張力を発生させるように構成しているのである。本実施形態では、複数の心線3・3・・・のそれぞれについて上記のような心線供給装置60によって張力を発生させるので、心線3・3・・・ごとの張力のバラツキを低減することが可能になっている。
【0036】
しかも、前記圧接力Fは、固定ボルト50を緩めて支軸44に対するスリーブ部材49の固定位置を変更してバネ51の圧縮量を変更することで、容易に変更することができる。従って、前記ロール41の回転に抗するブレーキ力の変更が容易であり、繰り出される心線3に付与する張力が所望となるように簡単に調整することができる。
【0037】
また、心線3の張力を調整する心線供給装置60が上記のように簡素であり、複数のロール41・41・・・のそれぞれに1対1で付設される構成であるため、設備コストを上記のとおり低減できると同時に、前記特許文献1の構成と比較して、心線3・3・・・の供給経路を極めて簡素とすることができる。
【0038】
また、上記のような製造装置20では、心線3の繰出速度は通常は1分間に1メートル前後と比較的遅いため、スラストリング45・46の部分での摩擦熱の発生も小さく、極端に温度が上昇する心配もない。
【0039】
なお、本願の発明者は、90本の心線3・3・・・を成形金型ロール26へ供給する場合において、各心線3を前述のバネ51を有しない従来の構成でロール41から繰り出した場合と、上記の実施形態の心線供給装置60(図2)でロール41から繰り出した場合とで、各心線3のテンションを実際に測定して比較した。なお、両場合とも、張力付与装置40で張力が付加された後の心線3・3・・・の張力が平均1kgfとなるように調整した。
【0040】
上記の実験の結果、従来の構成では、張力付与装置40を通過した90本の心線3・3・・・の平均テンションは1.02kgfであったが、90本の心線3のそれぞれについて測定した張力の最大値は1.60kgf、最小値は0.70kgfとなった。従って、最大値から最小値を減じたバラツキの範囲Rは0.90kgfであった。
【0041】
一方、上記の実施形態の構成(図2)では、平均テンションをほぼ同様に0.96kgfとした場合において、90本の心線3のそれぞれの測定張力の最大値は1.12kgfであり、最小値は0.80kgfであった。従って、バラツキの範囲Rは0.33kgfとなり、従来の構成よりもバラツキの範囲Rが小さいことが確認された。
【0042】
上記の実験結果を考察すると、従来の構成ではロール41から心線3を繰り出した時点で複数の心線3・3・・・の間で張力のバラツキが相当に生じており、これが張力付与装置40で増幅された結果、上記のような大きな張力のバラツキが現れたものと考えられる。一方、上記の実施形態の構成(図2)では、ロール41から繰り出された時点でのバラツキがもともと小さいので、張力付与装置40を通過して成形部21に供給される時点での張力のバラツキも小さく抑えることができていると考えられる。
【0043】
以上の実験でも明らかであるように、本実施形態の心線供給装置60を用いることにより、成形部21へ供給される張力の心線3ごとのバラツキを顕著に小さくできることが判る。この結果、製造された歯付ベルト1の捻れや曲がりを低減し、品質の高い歯付ベルト1を製造することができる。
【0044】
以上に示すように、本実施形態の歯付ベルト1の製造装置20は、複数本の心線3・3・・・を互いに平行となるように埋設した歯付ベルト1を成形するように構成されている。そして、この製造装置20において心線供給部23の心線供給装置(プレテンション装置)60は、当該歯付ベルト1の成形金型ロール26に対し前記心線3を所定の張力を付与しながら繰り出すように構成されている。そして、この心線供給装置60は、回転自在に支持されるとともに前記心線3を巻回したロール41をスラスト方向の圧接力Fによって摩擦制動する摩擦制動手段(スラストリング45・46等)を備えている。
【0045】
即ち本実施形態では、心線3の繰出しに伴い回転するロール41に対し、スラスト方向の圧接力Fをもって圧接される部材(スラストリング45・46)同士の間で発生する摩擦制動によって、ブレーキ力を積極的に付与する構成が実現される。従って、ロール41の回転中にブレーキ力を安定的に付与して心線3の繰出張力を安定化させることができ、また、各心線3ごとに付与される張力のバラツキを低減することができる。更には、スラストリング45・46同士を単にスラスト方向に圧接することで摩擦制動力を得る単純な構成であるから、多数本の心線3・3・・・の1本ごとに設けられる心線供給装置60の簡素な構成が実現され、心線供給部23ひいては製造装置20全体を極めて簡素かつ安価に構成できる。
【0046】
また、前記のベルト用心線供給装置においては、前記摩擦制動手段は、スラスト方向に互いに対向する制動面47・48を形成した一対のスラストリング45・46と、一方のスラストリング46を他方のスラストリング45に向けて付勢するバネ51と、を備える。
【0047】
これにより、ごく簡単な構成で心線3の繰出し時において適度な張力を付与することができる。また、バネ51の安定した付勢力によって制動面47・48同士を圧接することから、ロール41のブレーキ力のバラツキを小さくでき、この意味でも心線3の張力のバラツキを小さくすることができる。
【0048】
また、前記スラストリング45・46は樹脂製のリング状に構成して、前記ロール41と軸線を一致させる支軸44を挿通させるように構成している。また、前記バネ51は前記支軸44を挿通させるコイルバネ状に構成している。これにより、心線3・3・・・の張力バラツキ抑制のための簡素かつコンパクトな構成を実現することができる。また、この樹脂製のスラストリング45・46としては、予め市販されているもの(例えば、規格品)を複数の心線供給装置60・60・・・の間で統一して利用することもできる。こうすることで、心線3・3・・・のそれぞれの心線供給装置60におけるスラストリング45・46の摩擦係数のバラツキを極めて小さくでき、心線3・3・・・の間の張力バラツキを小さくすることができる。
【0049】
また、前記の心線供給装置60は、前記圧接力Fの大きさを変更することで前記摩擦制動手段の摩擦制動力を調整する制動力調整手段(スリーブ部材49)を更に備えている。従って、複数の心線供給装置60・60・・・間で張力のバラツキを少なくするように各心線供給装置60の制動力を調整することで、張力のバラツキを一層低減することができる。
【0050】
また、本実施形態において前記制動力調整手段は、前記バネ51の圧縮量を変更して弾性力を調整するスリーブ部材49を含んで構成されている。これにより、心線3の張力調整のための簡素かつコンパクトな構成を実現することができる。
【0051】
更に、前記スリーブ部材49は、前記スラストリング45・46と反対側で前記バネ51に接触するとともに、前記支軸44に対する軸方向の取付位置を変更可能に構成されている。これにより、心線3の張力調整を、スリーブ部材49の取付位置を変更する簡単な作業によって行うことができる。
【0052】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することもできる。
【0053】
○スラストリング45・46を、ロール41の一側に一対、他側に一対、計二対設けるように変更することもできる。この場合、バネ51はロール41の一側にのみ設けても良いし、両側に設けても良い。
【0054】
○バネ51としては、コイルバネ状とすることに代えて、例えばリング状の板バネに構成することができる。また、バネ押さえ部材としてのスリーブ部材49は、支軸44を挿通させる筒状のものとすることに代えて、例えば支軸44に刻設した雄ネジに螺合するナットとして構成することができる。
【0055】
○ロール41に対する心線3の巻き方としては、平行巻きとするほか、綾巻きとする構成に変更することもできる。ただし、綾巻きよりも平行巻きとする方が、繰出時のテンションを安定化でき、綾落ちによるテンションの急激な変動の心配もないために極めて好ましい。
【0056】
○ポリウレタン製歯付ベルト1の原料に関し、上記の構成では熱可塑性ポリウレタン樹脂を使用したが、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性スチレン系樹脂、熱可塑性オレフィン系樹脂、又は塩化ビニール樹脂等を用いたものに変更することができる。また、歯付ベルト1に埋め込まれる心線3・3・・・の本数は任意である。
【0057】
○上記の構成は、成形部21に歯面帆布を供給して、タイミングベルトの歯部を歯面帆布が覆うタイミングベルトを製造する構成に変更することができる。また、上記の成形部21に背面帆布を供給して、タイミングベルトの背面を背面帆布が覆うように構成することができる。この場合の歯面帆布及び背面帆布としては、例えばマルチフィラメント糸を用いて、平織、綾織、朱子織等で織成されたものを用いることができる。
【0058】
○上記の心線供給装置60は、上記のようにフリースパンベルトの製造装置20用とする代わりに、例えば特許文献1に示すように、心線をピッチ送りしながら金型に複数回巻装していく構成のベルト製造装置用に変更することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係る心線供給装置を用いた伝動ベルト製造装置の模式図。
【図2】心線供給装置の構成を示す軸断面図。
【符号の説明】
【0060】
1 歯付ベルト
20 歯付ベルトの製造装置
26 成形金型ロール(成形金型)
41 ロール
44 支軸
45・46 スラストリング(制動部材、摩擦制動手段の一部)
47・48 制動面
49 スリーブ部材(バネ押さえ部材、制動力調整手段)
51 バネ(摩擦制動手段の一部)
60 心線供給装置
F 圧接力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の心線を互いに平行となるように埋設したベルトを成形するために、当該ベルトの成形金型に対し前記心線を所定の張力を付与しながら繰り出すベルト用心線供給装置において、
回転自在に支持されるとともに前記心線を巻回するロールに対し、スラスト方向の圧接力によって摩擦制動する、摩擦制動手段を備えることを特徴とするベルト用心線供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載のベルト用心線供給装置であって、
前記摩擦制動手段は、前記スラスト方向に互いに対向する制動面を形成した少なくとも一対の制動部材と、対をなす前記制動部材のうち少なくとも一方を他方に向けて付勢するバネと、を含むことを特徴とするベルト用心線供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載のベルト用心線供給装置であって、
前記制動部材は樹脂製のリング状に構成して、前記ロールと軸線を一致させる支軸を挿通させるように構成するとともに、
前記バネは前記支軸を挿通させるコイルバネ状に構成したことを特徴とするベルト用心線供給装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか一項に記載のベルト用心線供給装置であって、前記摩擦制動手段の摩擦制動力を調整する制動力調整手段を更に備えることを特徴とするベルト用心線供給装置。
【請求項5】
請求項4に記載のベルト用心線供給装置であって、
前記摩擦制動手段は、前記スラスト方向に互いに対向する制動面を形成した少なくとも一対の制動部材と、対をなす前記制動部材のうち少なくとも一方を他方に向けて付勢するバネと、を含むように構成し、
前記制動力調整手段は、前記バネの弾性力を調整するバネ押さえ部材を含んで構成されていることを特徴とするベルト用心線供給装置。
【請求項6】
請求項5に記載のベルト用心線供給装置であって、
前記制動部材は樹脂製のリング状に構成して、前記ロールと軸線を一致させる支軸を挿通させるように構成するとともに、前記バネは前記支軸を挿通させるコイルバネ状に構成し、
また、前記バネ押さえ部材は、前記制動部材と反対側で前記バネに接触するとともに、前記支軸に対する軸方向の取付位置を変更可能に構成されていることを特徴とするベルト用心線供給装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−347121(P2006−347121A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179325(P2005−179325)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】