説明

ベルト部材、画像形成方法及び画像表面処理装置

【課題】トナーのオフセットが生じることなく、離型性に優れ、高光沢な画像を得ることができるベルト部材、画像形成方法及び画像表面処理装置を提供する。
【解決手段】少なくとも画像担持体Pに担持されたトナー層を、密着させた状態で加熱、加圧した後、冷却を行うことによって画像を形成する画像形成方法において使用されるベルト部材11であって、基材111と、基材111上に設けられた離型層112と、を備え、トナー層と接触する離型層側からのナノインデンテーションにより測定される表面硬度が0.35〜2[GPa]であり、かつ、トナー層と接触する離型層側の接触角が80〜130[°]である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト部材、画像形成方法及び画像表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
写真画像やポスター等に代表されるプリント画像は、従来からの銀塩写真方式やグラビヤ印刷等の印刷方式に加え、最近ではデジタル処理技術等の発展により、インクジェット装置や電子写真方式の画像形成装置で作製することも可能になってきた。このような画像形成装置で作製された写真画像やポスター等のプリント物の中には、画像担持体全面に均一な光沢面を形成した仕上がりのものが求められることもある。
このような背景から電子写真方式においても均一な光沢面を形成する技術が検討されるようになった。具体的には、有色トナーの他にクリアトナーを用いて、クリアトナーの現像量を制御することにより、画像全面にムラのない均一な光沢度を有するプリント物を作製する技術がある(例えば、特許文献1参照)。また、光沢付与装置と呼ばれる装置等で均一な高光沢を有するプリント物を作製する装置も登場している。この装置は、電子写真方式のプリンタ等に接続させ、プリンタで作製した有色トナーとクリアトナーからなるトナー層をベルト部材に接触させた状態で加熱加圧する。そして、トナー層の面をベルト部材に接触させた状態で冷却してトナー層を固化させ、最後にベルト部材からプリント物を剥離することによって均一な高光沢の画像を提供している(例えば、特許文献2参照)。
また、表面に熱可塑性樹脂からなる受像層が形成された記録シートを用いて、定着時には、ベルト部材を用いて記録シートの加熱・加圧によって軟化された受像層にトナー像を埋め込むようにして、画像の表面段差を低減させるとともに、ベルト部材と記録シートの受像層を密着させた状態で冷却してから剥離することにより、均一な高光沢の画像を提供している(例えば、特許文献3参照)。
これらはいずれも冷却剥離方式と呼ばれるもので、加熱されたトナー層もしくは記録シートの受像層をベルト部材に密着させたまま冷却し、固化した状態で剥がすことでベルト部材の形状をトナー層または記録シートの受像層に写し取らせることにより、均一な高光沢を有するプリント物が得られるものである。
一方、このようなベルト部材そのものについても例が提示されている。例えば、特許文献4では、ベルト部材の表面にフッ素系樹脂が分散されたフルオロカーボンシロキサンゴムを主成分とした離型層を形成することで、長期に亘って安定した高光沢なプリント物が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−7174号公報
【特許文献2】特開2002−341619号公報
【特許文献3】特開2004−191678号公報
【特許文献4】特開2007−163902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献4に記載のベルト部材の場合には、ベルト部材の離型層が弾性を持っており硬度が低いために、離型層が変形しやすく、そのため、トナー層と密着しやすくなることから、離型層とトナー層の付着力が大きくなり、離型性が悪くなる。その結果、ベルト部材の表面にトナーがオフセットし易く、高光沢な画像が得られないという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、トナーのオフセットが生じることなく、離型性に優れ、高光沢な画像を得ることができるベルト部材、画像形成方法及び画像表面処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明によれば、少なくとも画像担持体に担持されたトナー層を、密着させた状態で加熱、加圧した後、冷却を行うことによって画像を形成する画像形成方法において使用されるベルト部材であって、
基材と、前記基材上に設けられた離型層と、を備え、
前記トナー層と接触する離型層側からのナノインデンテーションにより測定される表面硬度が0.35〜2[GPa]であり、かつ、前記トナー像と接触する離型層側の接触角が80〜130[°]であることを特徴とするベルト部材が提供される。
【0006】
請求項2の発明によれば、前記離型層が、フッ素樹脂又はポリシロキサン又はフッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体の中の少なくとも1種と、アクリル化合物と、をラジカル重合により共重合させたものであることを特徴とする請求項1に記載のベルト部材が提供される。
【0007】
請求項3の発明によれば、前記離型層が、フッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体と、アクリル化合物と、をラジカル重合により共重合させたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のベルト部材が提供される。
【0008】
請求項4の発明によれば、前記アクリル化合物が、不飽和二重結合を複数含む多官能アクリレートであることを特徴とする請求項2又は3に記載のベルト部材が提供される。
【0009】
請求項5の発明によれば、少なくとも画像担持体に担持されたトナー層を、請求項1〜4のいずれか一項に記載のベルト部材に密着させた状態で、加熱、加圧した後、冷却を行うことによって画像を形成する画像形成方法が提供される。
【0010】
請求項6の発明によれば、前記トナー層の最上層が、クリアトナーが供給されたトナー層であることを特徴とする請求項5に記載の画像形成方法が提供される。
【0011】
請求項7の発明によれば、少なくとも画像担持体に担持されたトナー層を密着させる請求項1〜4のいずれか一項に記載のベルト部材と、
前記ベルト部材に前記トナー層を密着させた状態で加熱、加圧する加熱加圧手段と、
加熱、加圧した後、冷却を行う冷却手段と、を備えたことを特徴とする画像表面処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基材と、基材上に設けられた離型層と、を備え、トナー層と接触する離型層側からのナノインデンテーションにより測定される表面硬度が0.35〜2[GPa]であり、かつ、トナー層と接触する離型層側の接触角が80〜130[°]であるので、トナー層と接触する離型層側の硬度が高くなることから、ベルト部材の表面の微小な変形を抑えることができる。そのため、従来に比べてベルト部材とトナー層との接触面積を少なくすることができ、ベルト部材とトナー層との付着力を従来に比べて低減することができる。また、接触角を大きくすることによって表面エネルギーを低くし、これによってもベルト部材とトナー層との付着力を低減することができる。その結果、ベルト部材へのトナーのオフセットを生じることなく、離型性に優れ、高光沢な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ベルト部材を備えた画像表面処理装置の概略図である。
【図2】ベルト部材の構造を示す模式図であり、図2(a)、(b)は、符号11aにおける要部断面図である。
【図3】ナノインデンテーション法による測定装置の一例を示す模式図である。
【図4】ナノインデンテーション法で得られた典型的な荷重−変位曲線を示す。
【図5】画像表面処理装置を内蔵した画像形成装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のベルト部材及び画像形成方法について説明する。
図1は、本発明のベルト部材を備えた画像表面処理装置の概略図、図2は、ベルト部材の構造を示す模式図である。
図1に示すように、画像表面処理装置1は、画像担持体P上に担持されたトナー層をベルト部材11に密着させた状態で加熱、加圧し、冷却することによって平滑で高光沢な画像を形成するものである。
本発明で言う「トナー層」とは、画像担持体上にカラートナーもしくはクリアトナーのうち少なくとも1種が供給され形成された層のことを言う。中でも、トナー層の最上層、すなわちベルト部材と接触する層が、クリアトナーによって形成される層であることが好ましい。また、さらに好ましくは、該クリアトナー層が下層のカラートナー層の有無に関わらず、画像担持体の全面に形成されていることが好ましい。
【0015】
本発明で言う「画像担持体」とは、トナー像を形成、保持する部材である。画像担持体としては、例えば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙、あるいはコート紙等の塗工された印刷用紙、市販の和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布等が挙げられる。
本発明で言う「クリアトナー」とは、光吸収や光散乱の作用により着色を示す着色剤(例えば、着色顔料、着色染料、黒色カーボン粒子、黒色磁性粉等)を含有しないトナー粒子のことである。また、本発明で言うクリアトナーは、クリアトナーを構成する樹脂やワックス、外添剤の種類や添加量により透明度が若干低下するものものあるが、実質的に無色透明のものである。
また、本発明で使用可能なクリアトナーの作製方法は、特に限定されるものではなく、公知の電子写真方式の画像形成方法に使用されるトナーの製造方法を適用することができる。すなわち、混練、粉砕、粉級肯定を経てトナーを作製するいわゆる粉砕法や、重合性単量体を重合させ、同時に、形状や大きさを制御しながら粒子を形成するいわゆる重合法によるトナー製造方法を適用することができる。
【0016】
まず、画像表面処理装置1に用いられるベルト部材11について説明する。
ベルト部材11は、無端形状をなしており、図2(a)に示すように、基材111と、基材111上に設けられた離型層112と、を備え、離型層112にトナー層が接触するようになっている。
なお、図2(b)に示すように、基材111と、離型層112との間に弾性層113を設けても良い。
【0017】
本発明のベルト部材11は、離型層112側(トナー層に接触する側)のナノインデンテーションにより測定される表面硬度が、0.35〜2[GPa]であり、好ましくは0.5〜1[GPa]である。ナノインデンテーション法により測定した表面硬度を0.35[GPa]以上とすることで高い離型性が発現され、2[GPa]以下とすることで画像への追随性が良好となる。
表面硬度とは、ナノインデンテーションによって測定され、先端形状がダイヤモンドチップからなる圧子を薄膜や材料の表面に押し込み、その時の圧子にかかる荷重Pと圧子の下の射影面積Aから求められる離型層の硬さである。
【0018】
詳細には、ナノインデンテーション法による硬度の測定方法は、微小なダイヤモンド圧子を薄膜に押し込みながら荷重と押し込み深さ(変位量)の関係を測定し、測定値から塑性変形硬さを算出する方法である。
【0019】
特に1μm以下の薄膜の測定に対して、基体の物性の影響を受けにくく、また、押し込んだ際に薄膜に割れが発生しにくいという特徴を有している。一般に非常に薄い薄膜の物性測定に用いられている。
【0020】
図3は、ナノインデンテーション法による測定装置の一例を示す模式図である。図3において、31はトランスデューサー、32はダイヤモンドCube corner Tip圧子、11はベルト部材、111は基材、112は離型層を示す。
この測定装置はトランスデューサー31と先端形状が正三角形のダイヤモンドCube corner Tip圧子32を用いて、μNオーダーの荷重を加えながらナノメートルの精度で変位量を測定することができる。この測定には例えば市販のHysitron社製「Triboscope」を用いることができる。
図4は、ナノインデンテーション法で得られた典型的な荷重−変位曲線を示す。
【0021】
上記測定装置を用いて、基材111上に形成した離型層112の硬度を測定する。本発明での測定条件は以下の通りである。
(測定条件)
測定機:Hysitron社製「Triboscope」
測定圧子:先端形状が正三角形のダイヤモンドCube corner Tip圧子
測定環境:20℃、60%RH
測定試料:5cm×5cmの大きさにベルトを切断して測定試料を作製
最大荷重設定:20μN
押し込み速度:最大荷重20μNに5secで達する速度で、時間に比例して加重を印加する。
なお、測定は各試料ともランダムに10点測定し、その平均値をナノインデンテーション法により測定した表面硬度とする。
【0022】
また、本発明では、離型層112側(トナー像に接触する側)の接触角が80〜130[°]である。中でも、接触角90〜110[°]がより好ましい。
本発明で言う接触角とは、ベルト部材11の離型層112の純水に対する接触角を言う。接触角は純水に対する接触角を接触角計(CA−DT−A型:協和界面科学社製)を用いて20℃50%RHの環境下で測定する。測定はベルト部材11の離型層112の任意の10箇所を測定し、この平均値を本発明の接触角としたものである。
【0023】
ベルト部材11の厚さとしては、20〜250μmが好ましい。この範囲であれば、搬送等の操作性、および熱伝導性とも良好な状態が得られる。
【0024】
図2(b)に示す弾性層113は、ベルト部材11に適度な弾性を付与するとともに基材111と、離型層112の双方に良好な接着性を発現するものであれば、特に限定されるものではなく、公知の樹脂材料の使用が可能である。弾性層113に使用可能な代表的な樹脂材料としては、たとえば、シリコーンゴム等があり、シリコーンゴムの具体例としては、ジメチルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム等がある。これらのシリコーンゴムは、加熱加硫型(HTV)のものや室温硬化型(RTV)のものであってもよい。
【0025】
基材111は、熱伝導性を有するとともにある程度の可撓性を有することが好ましい。
また、基材111は、弾性層113あるいは離型層112との間に良好な接着性を有することに加え、適度な熱伝導性、熱容量、機械的強度を有するものであることが求められる。このような性能を有するものとしては、たとえば、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂等の耐熱性樹脂シートがある。また、ニッケル、アルミニウム、ステンレス等の金属シートの使用も可能である。これらの中でも、熱伝導性や膨張性等の熱特性の観点から、ポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂等の耐熱性樹脂シートが好ましく、さらに、加工や入手の容易性の観点からポリイミド樹脂が特に好ましい。
【0026】
基材111の厚さは、適度な機械的強度と可撓性を発現させる観点から、20〜200μmの範囲であることが好ましく、さらに、良好な熱伝導性を発現させる観点から20〜100μmの範囲にすることがより好ましい。すなわち、基材111の厚さを前記範囲内にすることにより、画像表面処理装置用のベルト部材11としての使用に必要な機械的強度と、画像担持体上のトナー層との均一な接触が可能な可撓性を発現させる。また、画像担持体上に供給されたトナー層の所定時間内で迅速に加熱、溶融するとともに、溶融したクリアトナーを所定時間内で迅速に冷却、固化する良好な熱伝導性を発現する。そして、特に、画像担持体の全面にクリアトナーを供給した場合には、供給されたクリアトナーを均一にムラなく加熱、冷却することを可能にして、高い光沢度を有し、かつ、ムラのない均一な仕上がりの光沢面を画像担持体全面に形成することを確実に行えるようにしている。
【0027】
基材111は、遠心成形法等の公知のベルト部材形成方法により作製可能である。ベルト部材用の基材作製方法の代表的なものの1つである遠心成形法について簡単に説明する。まず、回転する円筒形状の成形型内部に溶剤に溶解させた樹脂溶液をスプレーやノズルを用いて流し込む。そして、この成形型を高速回転させ、回転により生ずる遠心力の作用で樹脂溶液を拡げて均一な膜にし、この膜を固化させる。このような手順で無端形状(ベルト形状)の成形体を作製するもので、比較的均一な厚みを有するベルト形状の基材を作製する上で有利な方法である。
【0028】
離型層112の厚さは、0.1〜50μmが好ましく、特に0.5〜10μmが好ましい。
離型層112の材料としては、本発明の特徴である低表面エネルギー性、すなわち水に対する接触角が80〜130[°]の範囲を満たすために、例えばフッ素樹脂やポリシロキサンなどの材料が好適に用いられる。また、それらの硬度を本発明の所望の範囲に調整するために、その他の化合物を併用することができ、例えばアクリル化合物等と共重合して用いることが好ましい。
具体的には、フッ素樹脂又はポリシロキサン又はフッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体の中の少なくとも1種(以下、Xと称する)と、アクリル化合物(以下、Yと称する)と、をラジカル重合により共重合させたものであることが好ましい。中でも、フッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体と、アクリル化合物と、をラジカル重合により共重合させたものであることがさらに好ましい。また、(X)と(Y)の共重合における(Y)の比率は5〜95質量%が好ましく、より好ましくは5〜50質量%である。
以下、フッ素樹脂又はポリシロキサン又はフッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体の中の少なくとも1種(X)について説明する。
【0029】
《フッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体》
フッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体は、以下(A)〜(D)を共重合したものである。
(A)ウレタン結合を解してラジカル重合性不飽和結合を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(単にラジカル重合性フッ素樹脂と称することがある)2〜66重量%
(B)下記一般式(1):
【化1】

(式中、R1は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、R2、R3、R4、R5、及びR6は互いに同一でも異なっていてもよい水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、nは2以上の整数である。)
で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン及び/又は、下記一般式(2):
【化2】

(式中、R7は水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、R8、R9、R10、R11、及びR12は互いに同一でも異なっていてもよい水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、pは0〜10の整数であり、qは2以上の整数である。)
で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン4〜40重量%
(C)分子内に1個のラジカル重合性二重結合と少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するラジカル重合性単量体1〜50重量%
(D)成分(A)、(B)、及び(C)以外のラジカル重合性単量体(以下、単に非反応性ラジカル重合性単量体と称することがある)4〜93重量%
(但し(A)〜(D)成分は、それらの和が100重量%となる値をとる)
【0030】
ラジカル重合性フッ素樹脂(A)の具体例としては、例えば水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−a)とイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−b)を反応させることによって得ることができる。
前記の水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−a)は、その構成成分として少なくとも水酸基含有単量体部分とポリフルオロパラフィン部分とを含むものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ルミフロンLF−100、LF−200、LF−302、LF−400、LF−554、LF−600、LF−986N(旭硝子社製)、セフラルコートPX−40、A606X、A202B、CF−803(セントラル硝子社製)、ザフロンFC−110、FC−220、FC−250、FC−275、FC−310、FC−575、XFC−973(東亞合成社製)、ゼッフルGK−510(ダイキン工業社製)又はフルオネートシリーズ(大日本インキ化学工業社製)等を挙げることができる。前記の水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−a)は、単独で使用するか又は2種類以上を混合して使用することができる。
また、イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−b)は、イソシアネート基とラジカル重合性を有する部分とを含むものであれば特に限定されるものではないが、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、又はm−若しくはp−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートの1種又は2種以上を用いるのが好ましい。
【0031】
また、片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)の具体例としては、例えばサイラプレーンFM−0711(数平均分子量1000;チッソ社製)、サイラプレーンFM−0721(数平均分子量5000;チッソ社製)、サイラプレーンFM−0725(数平均分子量10000;チッソ社製)、X−22−174DX(数平均分子量4600;信越化学工業社製)等を挙げることができる。これらを単独または2種類以上を混合して使用することができる。
【0032】
また、分子内に1個のラジカル重合性二重結合と少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するラジカル重合性単量体(C)の具体例としては、例えばパーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン、1−メトキシ−(パーフルオロ−2−メチル−1−プロペン)、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロデシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルデシル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらを単独または2種類以上を混合して使用することができる。
【0033】
また、成分(A)、(B)、及び(C)以外のラジカル重合性単量体(D)、即ち、前記の非反応性ラジカル重合性単量体(D)とは、ラジカル重合の際の条件下で、前記のラジカル重合性フッ素樹脂(A)とラジカル重合以外の反応をしない官能基を有していてもよいということを意味する。具体的には、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、又はビニルトルエン等のスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、又はベンジル(メタ)アクリレート等の炭化水素基をもつ(メタ)アクリレート系単量体;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、又は分岐状モノカルボン酸のビニルエステル(ベオバ:シェル化学社製)等のビニルエステル系単量体;アクリロニトリル、又はメタクリロニトリル等のアクリロニトリル系単量体;エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、又はシクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、又はジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;ビニルピリジン、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、4−(N、N−ジメチルアミノ)スチレン、又はN−{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}ピペリジン等の塩基性窒素含有ビニル化合物系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、又は3,4−エポキシビニルシクロヘキサン等のエポキシ基含有ビニル化合物系単量体;(メタ)アクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、マレイン酸、4−ビニル安息香酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、又はモノ{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシッドホスフェート等の酸性ビニル化合物系単量体;p−ヒドロキシメチルスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、ポリエチレングリコール若しくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、又はこれらのε−カプロラクトン付加物、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、若しくはシトラコン酸のようなα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とε−カプロラクトンとの付加物、前記のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類、又は前記のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、分岐状カルボン酸グリシジルエステル(カージュラE;シェル化学社製)のようなエポキシ化合物との付加物等の水酸基含有ビニル化合物系単量体;ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルメチルジメトキシシラン等のシラン化合物系単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、又はクロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン系単量体;その他マレイミド、ビニルスルホン等を挙げることができる。これらを単独または2種類以上を混合して使用することができる。
【0034】
フッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体の製造方法は、上記(A)〜(D)を公知慣用の任意の重合法によって製造することができ、中でも溶液ラジカル重合法又は非水分散ラジカル重合法によるものが好ましい。
【0035】
重合の際に用いられる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、又は芳香族炭化水素の混合溶剤(ソルベッソ100;エッソ石油社製)等の芳香族炭化水素化合物;n−ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ミネラルスピリット、又はケロシン等の脂肪族、脂環族炭化水素化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、又はブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル系化合物;アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトン等のケトン系化合物;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール系化合物等を挙げることができ、これらの溶剤は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
上述の重合は、公知慣用の種々のラジカル重合開始剤、例えば、アゾ系化合物又は過酸化物系化合物のようなラジカル重合開始剤を用いて、常法により実施することができる。重合時間は特に制限されないが、通常1〜48時間の範囲が選ばれる。また、重合温度は通常30〜120℃、好ましくは60〜100℃である。前記の重合は、更に必要に応じて公知慣用の連鎖移動剤、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、又はα−メチルスチレンダイマー等を添加したり、公知慣用のレドックス触媒を添加して実施することもできる。
フッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体の分子量は特に限定されるものではないが、その重量平均分子量が、ポリスチレン換算のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、好ましくは約5,000〜2,000,000、より好ましくは約10,000〜1,000,000の範囲である。5,000未満とすると造膜性、耐候性、又は耐薬品性が低下し、2,000,000を越えると重合時にゲル化する危険がある。
【0037】
《フッ素樹脂》
フッ素樹脂としては、例えば上記(A)成分の重合体よりなるものである。製造方法としては上記フッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体の製造方法から(B)成分を除いたものであり、例えば上記(A)のみ、又は(A)+(C)、又は(A)+(D)、又は(A)+(C)+(D)が挙げられる。
【0038】
《ポリシロキサン》
ポリシロキサンとしては、例えば上記(B)成分の重合体よりなるものである。製造方法としては上記フッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体の製造方法から上記(A)と上記(C)成分を除いたものであり、例えば上記(B)のみ、又は(B)+(D)が挙げられる。
【0039】
《アクリル化合物(Y)》
アクリル化合物(Y)としては、特に限定されるものではなく、公知のアクリル系ラジカル重合性単量体を使用することができる。その中でも、分子構造中にカルボン酸エステル構造を有するメタクリル酸エステル系単量体やアクリル酸エステル系単量体が好ましい。特に、複数のメタクリル酸あるいはアクリル酸と多価アルコールとがエステル結合で結合した構造を有するラジカル重合性単量体が好ましく、共重合体の架橋構造化により表面層の硬度を向上させることができる。以下に、架橋構造が形成可能な複数のメタクリル酸あるいはアクリル酸と多価アルコールとがエステル結合で結合した構造を有するラジカル重合性単量体の具体例を示す。
【化3】

架橋構造の形成が可能なラジカル重合性単量体には、上記化合物の他に以下に示す公知の多官能性ビニル類もある。多官能性ビニル類の具体例を以下に挙げる。すなわち、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等である。架橋構造の形成が可能なラジカル重合性単量体の一分子中に有するラジカル重合可能な部位の数、すなわち官能基数としては、3〜6官能のものがより好ましい。
上記のアクリル化合物は単一もしくは2種類以上を混合して使用することができる。
【0040】
次に、ベルト部材11の離型層112の形成方法について説明する。
離型層112の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば、以下の方法で形成することができる。
すなわち、前述のフッ素樹脂又はポリシロキサン又はフッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体の中の少なくとも1種よりなる(X)と、アクリル化合物(Y)に重合開始剤を添加し、濃度を調整して有機溶媒に溶解させて塗布液を作製する。前記塗布液をベルト部材の基材上に塗布して乾燥させた後、紫外線光を照射してラジカル重合を行い、前記共重合体を含む表面層を形成する方法等がある。
前記塗布液を作製する際に使用可能な溶剤としては、例えば、以下の公知の有機溶剤が挙げられ、これらを単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することが可能である。
すなわち、
(1)芳香族炭化水素化合物;トルエン、キシレン、または、市販の芳香族炭化水素混合溶剤(たとえば「ソルベッソ100(エッソ石油社製)」等
(2)脂肪族、脂環族炭化水素化合物;n−ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ミネラルスピリット、ケロシン等
(3)エステル系化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等
(4)ケトン系化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン等
(5)アルコール系化合物;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等
また、前記塗布液をベルト部材の基材上に塗布して乾燥させた後、紫外線光を照射してラジカル重合を行い、前記共重合体を含む表面層を形成する場合、公知の光ラジカル重合開始剤を常法に使用して重合反応を行うことが可能である。ここで、公知のラジカル重合開始剤としては、たとえば、アルキルフェノン系重合開始剤、アシルフォスフォンオキサイド系重合開始剤等の光重合開始剤が用いられる。
【0041】
次に、上述のベルト部材11を備えた画像表面処理装置1について説明する。
図1に示すように、画像表面処理装置1は、画像担持体P上に担持されたトナー像をベルト部材11に密着させた状態で加熱、加圧し、冷却して、画像担持体P上に平滑かつ高光沢な画像を形成する装置である。ここでは、トナー像が、カラートナー層上の全面にクリアトナーが供給されたトナー像である場合を例に挙げて説明する。
【0042】
<画像表面処理装置>
画像表面処理装置1は、プリンタや印刷装置等の画像形成装置に接続させて使用することが可能である。クリアトナー層の形成の有無、およびその方法は特に限定されるものではなく、またクリアトナーは画像支持体の一部、もしくは全面に形成されていてもよいが、ここでは例として画像支持体にクリアトナー層を全面に形成する方法について説明する。画像担持体P上へのクリアトナー層の形成は、先ず、プリンタ等の画像形成装置により画像形成された側の画像担持体全面に供給されているクリアトナーを定着ローラ等により加熱、溶融させる。続いて、溶融状態のクリアトナーを介して画像担持体Pをベルト部材11に密着させ、この状態で画像担持体Pを搬送しながらクリアトナーを冷却、固化させる。画像担持体全面に形成されたクリアトナー層を固化後、画像担持体Pをベルト部材11より剥離する。このようにして、画像担持体全面に均一な光沢面を有するプリント物を作成することができる。
【0043】
画像表面処理装置1は、少なくとも以下の構成を有するものである。
(1)画像担持体全面に層状にクリアトナーが供給されている状態の画像担持体Pを加熱
し、同時に加圧する加熱加圧装置10
(2)加熱加圧装置10により溶融したクリアトナー面と接触し、クリアトナー面との間
に接着面を形成して画像担持体Pを搬送するベルト部材11
(3)ベルト部材11に接着した状態で搬送されている画像担持体Pに冷却用のエアを供
給する冷却ファン12と13
(4)冷却ファン12と13より供給されるエアの作用で冷却され、クリアトナー面が固
着した画像担持体Pを搬送する搬送ロール14より構成されるものである。
【0044】
以下、各構成について具体的に説明する。なお、ベルト部材11については前述したとおりであるので、説明を省略する。
【0045】
加熱加圧装置10は一定速度で駆動する一対のロール101と102との間に、クリアトナーを供給した画像担持体Pを挟持して搬送し、搬送した画像担持体Pを加熱加圧するものである。すなわち、画像担持体Pの全面に供給されたクリアトナーは、加熱加圧装置10による加熱により溶融し、かつ、溶融したクリアトナーは加圧により均一な厚みを有する層になる。ここで、一対のロール101と102の一方または両方の中心に熱源を設けることにより、画像担持体全面に供給したクリアトナーを溶融させるように加熱することができる。また、2つのロール101と102はロール間で溶融したクリアトナーを確実に加圧できる様、圧接している構造を採ることが好ましい。
【0046】
画像表面処理装置1は、消費電力量や作業効率の観点から、例えば、加熱加圧装置10を構成するロール101を加熱ロールとし、ロール102を加圧ロールとする構成とすることで十分な加熱と加圧が行える。ロール101と102の一方または両方の表面には、シリコーンゴム層あるいはフッ素ゴム層を配置することができ、加熱と加圧を行うニップ領域の幅を1mm〜8mm程度の範囲にすることが好ましい。
【0047】
加熱ロール101は、たとえば、アルミニウム等の金属製の基体表面に、シリコーンゴ
ム等からなる弾性体層を被覆してなり、所定の外径に形成されたものである。加熱ロール
101の内部には、加熱源としてたとえば300〜350Wのハロゲンランプを配設して
おき、当該加熱ロール101の表面温度が所定温度となる様に内部から加熱する。
【0048】
加圧ロール102は、たとえば、アルミニウム等の金属製の基体表面に、シリコーンゴ
ム等からなる弾性体層を被覆してなり、さらに、当該弾性体層表面にPFA(テトラフル
オロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)製のチューブ等による離
型層を被覆して、所定の外径に形成されたものである。加圧ロール102の内部にも、加
熱源としてたとえば300〜350Wのハロゲンランプを配設することができ、当該加圧
ロール102の表面温度が所定温度になる様に内部から加熱する。
【0049】
画像形成面全面にクリアトナーが供給されている画像担持体Pは、加熱加圧装置10の
加熱ロール101と加圧ロール102で形成される圧接部(ニップ部)に搬送され、この
とき、クリアトナーが供給されている面が加熱ロール101側になるように搬送される。そして、加熱ロール101と加圧ロール102との圧接部を通過する間に、クリアトナーは加熱、溶融すると同時に、カラートナー層上にクリアトナー層として融着する。
【0050】
次に、冷却ファン12と13について説明する。図1に示す画像表面処理装置1は、ベルト部材11内面側の加熱ロール101と剥離ロール103との間に冷却ファン12、ベルト部材11の外面側の加圧ロール102と搬送ロール14の間に冷却ファン13を有する。ここで、ベルト部材11の外面は、溶融したクリアトナー面を介して画像担持体Pと接着し、接着面を形成した状態で画像担持体Pの担持搬送を行う面のことである。
【0051】
画像表面処理装置1は、前述の加熱加圧装置10により所定厚さで溶融しているクリアトナー層を介して画像担持体Pをベルト部材11の外面に密着させ、この状態で画像担持体Pを搬送すると同時にクリアトナー層を冷却して固化させる。冷却ファン12、13は、クリアトナー層を介してベルト部材11に密着して搬送されている画像担持体Pにエアを供給して搬送中の画像担持体Pを強制的に冷却する。画像表面処理装置1は、冷却ファン12、13にそれぞれ連接させて冷却用のヒートシンクあるいはヒートパイプを配設させることができる。この様な冷却用のヒートシンクあるいはヒートパイプにより溶融状態にあるクリアトナー層の冷却と固化を促進させることができる。
【0052】
上記冷却ファン12、13による強制冷却により、ベルト部材11に搬送中の画像担持
体Pのクリアトナー層の固化を促進させる。そして、画像担持体P上のクリアトナー層は、画像担持体Pが搬送補助ロール14や剥離ロール103が配置されているベルト端部付近に到達するまでに冷却、固化が完了している。そして、画像担持体Pはベルト端部でベルト部材11面より剥離される。
【0053】
まず、ベルト部材11の搬送方向が変化するベルト端部付近まで搬送されてきた画像担持持体Pは、まだクリアトナー層を介してベルト部材11に密着している。この状態で搬送補助ロール14が搬送中の画像担持体Pの裏面に接触して保持する。搬送補助ロール14が画像担持体Pを裏面より保持している状態でベルト部材11は剥離ロール103の配置されている個所に到達し、ここでベルト部材11の搬送方向は従動ロール104側の方向(図の上方)に変更させられる。このとき、画像担持体Pは自身の剛性(腰)によりベルト部材11より剥離され、搬送補助ロール14に重力が移動することによりベルト部材からの剥離が促進されて画像表面処理装置1より分離、排出される。
【0054】
以上の手順により、図1に示す画像表面処理装置1は、画像を形成した側の画像担持体全面にムラのない均一な光沢面を形成することができる。すなわち、前述の画像形成方法は以下の工程よりなる。
(1)画像担持体全面に供給されたクリアトナーを加熱、溶融させる。
(2)溶融状態のクリアトナーを介して画像担持体Pをベルト部材11に密着させ、この
状態で搬送しながらクリアトナーを冷却、固化させる。
(3)クリアトナーが十分に固化した段階で画像担持体Pをベルト部材11より剥離させる。
(4)ベルト部材11より剥離された画像担持体Pは画像表面処理装置外に排出される。
【0055】
そして、本発明では前述した構成のベルト部材により、ベルト部材11が剥離ロール103により搬送方向を変えるまでクリアトナー層の密着性を保持し安定した搬送を実現させ、剥離時にはじめて離型性をタイミングよく発現できるようにしている。
【0056】
なお、図1に示す画像表面処理装置1は、搬送補助ロール14と剥離ロール103により、画像担持体Pをベルト部材11から剥離しているが、剥離ロール103以外の剥離手段を用いることも可能である。たとえば、剥離ロール103に代えて、剥離爪をベルト部材11と画像担持体Pの間に配置させ、画像担持体Pをベルト部材11より剥離することも可能である。
【0057】
上記画像表面処理装置1は、プリンタや印刷装置等の画像形成装置に接続させて使用するとしたが、画像表面処理装置1は、例えば、図5に示す画像形成装置2に内蔵されていても良い。この画像形成装置2は、電子写真方式によるフルカラー画像形成が行え、かつ、形成したカラートナー層上にクリアトナー層を形成する装置である。画像形成装置2は、通常「タンデム型カラー画像形成装置」とも呼ばれるものである。以下に、図5の画像形成装置2について説明する。
画像形成装置2の本体上部には、画像読取装置21が設けられている。また、画像形成装置2はクリアトナーや、Y、M、C、Kのトナーの色毎に、露光及び現像を行うユニットuS、uY、uM、uC、uKを備えている。ユニットuS、uY、uM、uC、uKは、それぞれ露光装置u1、現像装置u2、感光体u3、帯電部u4、クリーニング部u5、1次転写ローラu6を含んでいる。1次転写ローラu6は感光体u3に圧接されている。
【0058】
さらに、画像形成装置2は中間転写ユニット22、2次転写ローラ23、画像表面処理装置1、給紙部25を備えている。中間転写ユニット22は、複数のロールにより巻回され、回動可能に支持された中間ベルト2aと、クリーニング部2bとを含む。2次転写ローラ23は中間ベルト2aに圧接されている。
画像形成時には、帯電部u4により感光体u3の帯電が行われると、露光装置u1により露光が行われ、感光体u3上に画像信号に基づく静電潜像が形成される。次いで、現像装置u2により現像が行われ、感光体u3上にトナーが付着されてトナー画像が形成されると、当該トナー画像は感光体u3の回転及び1次転写ローラu6の作用により中間ベルト2a上に転写される。この露光、現像、転写の工程を、中間ベルト2aの回動に合わせて、各色のユニットuS、uY、uM、uC、uKが順次繰り返すことにより、中間ベルト2a上にクリアトナー層及び各色のカラートナー層が重ねられ、フルカラー印刷物が形成される。
【0059】
一方、給紙部25からは用紙が搬送され、2次転写ローラ23の位置まで当該用紙が搬送されると、2次転写ローラ23の作用によって中間ベルト2aから用紙上にクリアトナー層及びカラートナー層が一括して転写される。その後、用紙は画像表面処理装置1に搬送されて加熱、加圧及び冷却により画像担持体上にクリアトナー層及びカラートナー層が固定され定着されると、最終的に外部に設けられているトレイ24に排出される。このようにして、画像形成が終了すると、クリーニング部u5、22により感光体u3や中間ベルト2aに残存するトナーが除去されるようになっている。
【0060】
<画像形成方法>
本発明の画像形成方法は、画像担持体に担持されたトナー層を、前述したベルト部材に密着させた状態で加熱、加圧した後、冷却を行うことによって画像を形成する画像形成方法である。
前記トナー層とは、モノクロトナー層、カラートナー層、クリアトナー層の少なくとも1層以上であれば構わないが、ベルト部材に接触するトナー層の最上層がクリアトナーであることが好ましい。
また、前記トナー層の画像担時体上での定着状態としては、トナーが溶融し画像担時体に定着していても、付着している未定着状態でも構わない。
トナー層が、多層形成である場合には、トナー層最上層以下のトナー層が定着状態である状態が好ましい。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記文中に「部」と記載されている箇所があるが「質量部」と表すものである。
1.ベルト部材1〜14の作製
<実施例1>
1−1.フッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体(X−1)の作製
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、セフラルコートCF−803(A-a-1)(セントラルガラス社製、1554部)、キシレン(233部)、2−イソシアナトエチルメタクリレート(A-b-1)(6.3部)を入れ、乾燥窒素雰囲気下80℃に加熱した。80℃で2時間反応し、サンプリング物の赤外吸収スペクトルによりイソシアネートの吸収が消失したことを確認した後、反応混合物を取り出し、不揮発分が50%のラジカル重合性フッ素樹脂(A−1)を得た。
続いて機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、上記のラジカル重合性フッ素樹脂(A−1)(36.2部)、メチルメタクリレート(D−1)(11.6部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(D−2)(4.9部)、サイラプレーンFM−0721(B−1)(チッソ社製、10.5部)、ライトエステルFM−108(C−1)(共栄社化学社製、7.7部)、メタクリル酸(D−3)(0.4部)、キシレン(1.5部)、酢酸n−ブチル(60.2部)、パーブチルO(日本油脂社製、0.3部)を入れ、窒素雰囲気中で90℃まで加熱した後、90℃で2時間保持した。パーブチルO(0.1部)を追加し、更に90℃で5時間保持することによって、不揮発分が40%で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による重量平均分子量が168000である目的とするグラフト共重合体の溶液を得た。これを化合物(X−1)とした。
【0062】
1−2.離型層形成用塗布液の作製
上述の化合物(X−1)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(Y−1)を以下の比率でメチルエチルケトンに溶解させて「離型層形成用塗布液1」を調製した。すなわち、
化合物(X−1) 5質量部
化合物(Y−1) 5質量部
メチルエチルケトン 100質量部
として塗布液を調製した。
【0063】
1−3.ベルト部材1の作製
前記「離型層形成用塗布液1」中に、市販の重合開始剤「イルガキュアー369(チバ・ジャパン社製)」10部を添加して、「離型層形成用塗布液1」を調製した。前記重合開始剤を添加した「離型層形成用塗布液1」を、厚さ50μmの市販のポリイミドフィルム上に、反応後の厚さが10μmとなる様に浸漬塗布して離型層を形成した。前記浸漬塗布後、当該ポリイミドフィルムを窒素気流下で120℃に加熱するとともに市販のメタルハライドランプ(ランプ出力4kW)を用いて5分間紫外線照射を行い「離型層形成用塗布液1」に含有される前記化合物を重合させて硬化反応を行った。
このようにして、厚さ10μmの離型層を形成した。なお、離型層とメタルハライドランプとの距離を100mmに設定して処理を行った。
以上の手順により設けられた離型層を有するポリイミドフィルムを「ベルト部材1」とする。
なお、作製したベルト部材1について、表面硬度を、上述したナノインデンテーションにて測定を行ったところ、0.8[GPa]であった。また、接触角についても上述の接触角計を用いて測定を行ったところ、105[°]であった。
【0064】
<実施例2>
1−2.離型層形成用塗布液の作製
上述の化合物(X−1)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(Y−1)を以下の比率でメチルエチルケトンに溶解させて「離型層形成用塗布液2」を調製した。すなわち、
化合物(X−1) 0.5質量部
化合物(Y−1) 9.5質量部
メチルエチルケトン 100質量部
として塗布液を調製した。
【0065】
1−3.ベルト部材2の作製
実施例1の「(3)ベルト部材1の作製」において、「離型層形成用塗布液1」を「「離型層形成用塗布液2」に変更した以外は同様にして「ベルト部材2」を作製した。ベルト部材2の表面硬度及び接触角は表1の通りである。
【0066】
<実施例3>
1−2.離型層形成用塗布液の作製
上述の化合物(X−1)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(Y−1)を以下の比率でメチルエチルケトンに溶解させて「離型層形成用塗布液3」を調製した。すなわち、
化合物(X−1) 9.5質量部
化合物(Y−1) 0.5質量部
メチルエチルケトン 100質量部
として塗布液を調製した。
【0067】
1−3.ベルト部材3の作製
実施例1の「1−3.ベルト部材1の作製」において、「離型層形成用塗布液1」を「「離型層形成用塗布液3」に変更した以外は同様にして「ベルト部材3」を作製した。ベルト部材3の表面硬度及び接触角は表1の通りである。
【0068】
<実施例4>
1−1.低表面エネルギー成分(X−2)の作製
実施例1の1−1.フッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体(X−1)の製造において、ラジカル重合性フッ素樹脂(A−1)の部数を(26.2部)、メチルメタクリレート(D−1)の部数を(22.6部)と変更した以外は同様にしてフッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体を作製した。これを化合物(X−2)とした。
【0069】
1−2.離型層形成用塗布液の作製
上述の化合物(X−2)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(Y−1)を以下の比率でメチルエチルケトンに溶解させて「離型層形成用塗布液4」を調製した。すなわち、
化合物(X−2) 5質量部
化合物(Y−1) 5質量部
メチルエチルケトン 100質量部
として塗布液を調製した。
【0070】
1−3.ベルト部材4の作製
実施例1の「1−3.ベルト部材1の作製」において、「離型層形成用塗布液1」を「「離型層形成用塗布液4」に変更した以外は同様にして「ベルト部材4」を作製した。ベルト部材4の表面硬度及び接触角は表1の通りである。
【0071】
<実施例5>
1−1.低表面エネルギー成分(X−3)の作製
実施例1の1−1.フッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体(X−1)の製造において、ラジカル重合性フッ素樹脂(A−1)の部数を(46.2部)、メチルメタクリレート(D−1)の部数を(1.6部)と変更した以外は同様にしてフッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体を作製した。これを化合物(X−3)とした。
【0072】
1−2.離型層形成用塗布液の作製
上述の化合物(X−3)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(Y−1)を以下の比率でメチルエチルケトンに溶解させて「離型層形成用塗布液5」を調製した。すなわち、
化合物(X−3) 5質量部
化合物(Y−1) 5質量部
メチルエチルケトン 100質量部
として塗布液を調製した。
【0073】
1−3.ベルト部材5の作製
実施例1の「1−3.ベルト部材1の作製」において、「離型層形成用塗布液1」を「「離型層形成用塗布液5」に変更した以外は同様にして「ベルト部材5」を作製した。ベルト部材5の表面硬度及び接触角は表1の通りである。
【0074】
<実施例6>
1−1.低表面エネルギー成分(X−4)の作製
実施例1の1−1.フッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体(X−1)の製造において、ラジカル重合性フッ素樹脂(A−1)、ライトエステルFM−108(C−1)を添加せず、サイラプレーンFM−0721(B−1)の部数を27.3部、メチルメタクリレート(D−1)の部数を30.1部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(D−2)の部数を12.7部、メタクリル酸(D−3)の部数を1.0部と変更した以外は同様にしてポリシロキサンを作製した。これを化合物(X−4)とした。
【0075】
1−2.離型層形成用塗布液の作製
上述の化合物(X−4)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(Y−1)を以下の比率でメチルエチルケトンに溶解させて「離型層形成用塗布液6」を調製した。すなわち、
化合物(X−4) 5質量部
化合物(Y−1) 5質量部
メチルエチルケトン 100質量部
として塗布液を調製した。
【0076】
1−3.ベルト部材6の作製
実施例1の「1−3.ベルト部材1の作製」において、「離型層形成用塗布液1」を「「離型層形成用塗布液6」に変更した以外は同様にして「ベルト部材6」を作製した。ベルト部材6の表面硬度及び接触角は表1の通りである。
【0077】
<実施例7>
1−1.低表面エネルギー成分(X−5)の作製
実施例1の1−1.フッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体(X−1)の製造において、サイラプレーンFM−0721(B−1)を添加せず、メチルメタクリレート(D−1)の部数を(22.1部)と変更した以外は同様にしてフッ素樹脂を作製した。これを化合物(X−5)とした。
【0078】
1−2.離型層形成用塗布液の作製
上述の化合物(X−5)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(Y−1)を以下の比率でメチルエチルケトンに溶解させて「離型層形成用塗布液7」を調製した。すなわち、
化合物(X−5) 5質量部
化合物(Y−1) 5質量部
メチルエチルケトン 100質量部
として塗布液を調製した。
【0079】
1−3.ベルト部材7の作製
実施例1の「1−3.ベルト部材1の作製」において、「離型層形成用塗布液1」を「「離型層形成用塗布液7」に変更した以外は同様にして「ベルト部材7」を作製した。ベルト部材7の表面硬度及び接触角は表1の通りである。
【0080】
<実施例8>
1−2.離型層形成用塗布液の作製
実施例1で使用した化合物(X−1)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(Y−2)を以下の比率でメチルエチルケトンに溶解させて「離型層形成用塗布液8」を調製した。すなわち、
化合物(X−1) 5質量部
化合物(Y−2) 5質量部
メチルエチルケトン 100質量部
として塗布液を調製した。
【0081】
1−3.ベルト部材8の作製
実施例1の「1−3.ベルト部材1の作製」において、「離型層形成用塗布液1」を「「離型層形成用塗布液8」に変更した以外は同様にして「ベルト部材8」を作製した。ベルト部材8の表面硬度及び接触角は表1の通りである。
【0082】
<実施例9>
1−2.離型層形成用塗布液の作製
実施例1で使用した化合物(X−1)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(n=3)(Y−3)を以下の比率でメチルエチルケトンに溶解させて「離型層形成用塗布液9」を調製した。すなわち、
化合物(X−1) 5質量部
化合物(Y−3) 5質量部
メチルエチルケトン 100質量部
として塗布液を調製した。
【0083】
1−3.ベルト部材9の作製
実施例1の「1−3.ベルト部材1の作製」において、「離型層形成用塗布液1」を「「離型層形成用塗布液9」に変更した以外は同様にして「ベルト部材9」を作製した。ベルト部材9の表面硬度及び接触角は表1の通りである。
【0084】
<比較例1>
1−2.離型層形成用塗布液の作製
実施例1で使用した化合物(X−1)、化合物(Y−1)を以下の比率でメチルエチルケトンに溶解させて「離型層形成用塗布液10」を調製した。すなわち、
化合物(X−1) 0.05質量部
化合物(Y−1) 9.95質量部
メチルエチルケトン 100質量部
として塗布液を調製した。
【0085】
1−3.ベルト部材10の作製
実施例1の「1−3.ベルト部材1の作製」において、「離型層形成用塗布液1」を「「離型層形成用塗布液10」に変更した以外は同様にして「ベルト部材10」を作製した。ベルト部材10の表面硬度及び接触角は表1の通りである。
【0086】
<比較例2>
1−2.離型層形成用塗布液の作製
実施例1で使用した化合物(X−1)、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性アクリレート(n≒2.5)Y−4を以下の比率でメチルエチルケトンに溶解させて「離型層形成用塗布液11」を調製した。すなわち、
化合物(X−1) 5質量部
化合物(Y−4) 5質量部
メチルエチルケトン 100質量部
として塗布液を調製した。
【0087】
1−3.ベルト部材11の作製
実施例1の「1−3.ベルト部材1の作製」において、「離型層形成用塗布液1」を「離型層形成用塗布液11」に変更した以外は同様にして「ベルト部材11」を作製した。ベルト部材11の表面硬度及び接触角は表1の通りである。
【0088】
<比較例3>
1−3.ベルト部材12の作製
実施例1の「1−3.ベルト部材1の作製」において、「離型層形成用塗布液1」を下記の「離型層形成用塗布液12」に変更した以外は同様にして「ベルト部材12」を作製した。ベルト部材12の表面硬度及び接触角は表1の通りである。
化合物(X−5) 10質量部
メチルエチルケトン 100質量部
【0089】
<比較例4>
1−3.ベルト部材13の作製
実施例1の「1−3.ベルト部材1の作製」において、「離型層形成用塗布液1」を下記の「離型層形成用塗布液13」に変更した以外は同様にして「ベルト部材13」を作製した。ベルト部材13の表面硬度及び接触角は表1の通りである。
化合物(Y−1) 10質量部
メチルエチルケトン 100質量部
【0090】
<比較例5>
1−4.ベルト部材14の作製
ポリイミド基材上に、弾性層としてフルオロカーボンシロキサンゴム前駆体組成物であるSIFEL610(信越化学工業(株)製)と、さらに、離型層としてフッ素微粒子であるPTFEとをフッ素系溶媒に分散させて調整した塗布液を浸漬塗布することによって厚さが略50μmの塗膜を形成した。その後、一次加硫、二次加硫過程を経て、表面硬度が0.29[GPa]である離型層が形成された「ベルト部材14」を得た。接触角は131[°]であった。
【0091】
2.クリアトナー1及びクリアトナー現像剤1の作製
多段重合法による樹脂微粒子の作製工程と乳化会合法による凝集、融着工程を経て、「
クリアトナー1」を作製した。
【0092】
2−1.「樹脂微粒子3」の作製
下記に示すように、三段階の重合反応を経て、すなわち多段重合法により「樹脂微粒子3」を作製した。
【0093】
(1)第一段重合
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器にポリオキシエチ
レン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部とイオン交換水3000質量部を投
入し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら温度を80℃に昇温させた。
【0094】
昇温後、過硫酸カリウム(KPS)5質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた
開始剤溶液を添加し、液温を75℃にして、下記化合物を含有する単量体混合液を1時間
かけて滴下した。滴下後、75℃にて2時間加熱、撹拌して重合反応を行うことにより、
「樹脂微粒子1」の分散液を作製した。前記「樹脂微粒子1」の重量平均分子量を前述の
ゲルパーミエーションクロマトグラフ法で測定したところ60,000であった。
【0095】
なお、単量体混合液は、下記化合物を含有するものである。すなわち、
スチレン 567質量部
n−ブチルアクリレート 165質量部
メタクリル酸 68質量部
(2)第二段重合
次に、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器にポリオキ
シエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部とイオン交換水1270質量
部を投入し、温度を80℃に加熱した。加熱後、前記「樹脂微粒子1」を固形分換算で4
0質量部と、下記化合物を含有する単量体混合液を添加し、循環経路を有する機械式分散
装置「クリアミックス(エム・テクニック(株)製)」を用いて1時間混合分散処理して
乳化粒子分散液を調製した。
【0096】
なお、単量体混合液は、下記化合物を含有するもので、80℃に加温してWEP−5を
溶解させている。すなわち、
スチレン 123質量部
n−ブチルアクリレート 45質量部
メタクリル酸 20質量部
n−オクチルメルカプタン 0.5質量部
WEP−5 82質量部
続いて、上記乳化粒子分散液中に、過硫酸カリウム(KPS)5質量部をイオン交換水
100質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した後、80℃で1時間加熱、撹拌して重合
反応を行うことにより、「樹脂微粒子2」の分散液を作製した。
【0097】
(3)第三段重合
次に、上記「樹脂微粒子2」の分散液中に過硫酸カリウム(KPS)10質量部をイオ
ン交換水200質量部に溶解させた開始剤を添加した後、液温を80℃にして、下記化合
物を含有する単量体混合液を1時間かけて滴下した。
【0098】
単量体混合液は、下記化合物を含有するものである。すなわち、
スチレン 390質量部
n−ブチルアクリレート 143質量部
メタクリル酸 37質量部
n−オクチルメルカプタン 13質量部
上記単量体混合液を滴下後、80℃の温度下で2時間加熱、撹拌して重合反応を行った
後、28℃まで冷却して、「樹脂微粒子3」を作製した。
【0099】
2−2.「クリアトナー1」の作製
(1)凝集・融着工程
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、
「樹脂微粒子3」 450質量部(固形分換算)
イオン交換水 1100質量部
ドデシル硫酸ナトリウム 2質量部
を投入、撹拌した。反応容器内の温度を30℃に調整後、5モル/リットルの水酸化ナト
リウム水溶液を添加して、pHを10に調整した。
【0100】
次に、塩化マグネシウム・6水和物60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水
溶液を撹拌の下で30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置後に昇温を開始し、こ
の系を60分間かけて85℃まで昇温させ、85℃に保持させたまま上記「樹脂微粒子3
」の凝集、融着を継続した。この状態で「マルチサイザー3(ベックマンコールター社製
)」を用いて形成されている粒子の粒径測定を行い、粒子の体積基準メディアン径が6.
7μmになったときに、塩化ナトリウム200質量部をイオン交換水860質量部に溶解
させた水溶液を添加して凝集を停止させた。
【0101】
凝集停止後、熟成処理として液温を95℃にして加熱撹拌を8時間行って凝集させた「
樹脂微粒子3」間での融着を進行させて「トナー母体粒子1」を形成した。熟成処理の後
、液温を30℃に冷却し、塩酸を使用して液中のpHを2に調整して撹拌を停止した。
【0102】
(2)洗浄、乾燥工程
上記工程を経て作製した「トナー母体粒子A」をバスケット型遠心分離機「MARKII
I 型式番号60×40(松本機械(株)製)」で固液分離し、「トナー母体粒子A」のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機でろ液
の電気伝導度が5μS/cmになるまで40℃のイオン交換水で洗浄した後「フラッシュ
ジェットドライヤ(セイシン企業(株)製)」に移し、水分量が0.5質量%になるまで
乾燥処理を行って「トナー母体粒子1」を精製した。
【0103】
(3)外添剤添加工程
作製した「トナー母体粒子1」100質量部に対して下記外添剤を以下の量添加し、ヘ
ンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)で外添処理を行うことによりクリアトナーを作製した。
【0104】
ヘキサメチルシラザン処理したシリカ(平均一次粒径12nm、疎水化度68)
1.0質量部
n−オクチルシラン処理した二酸化チタン(平均一次粒径20nm、疎水化度63)
0.3質量部
なお、ヘンシェルミキサによる外添処理は、撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35
℃、処理時間15分の条件の下で行った。
【0105】
以上の手順により、「クリアトナー1」を作製した。なお、上記手順で作製した「クリ
アトナー1」は、体積基準メディアン径が6.7μm、前記測定方法による軟化点温度が
120℃、分子量60,000以上の比率が20%のものであった。
【0106】
2−3.「クリアトナー現像剤1」の調製
前記「クリアトナー1」に対して、メチルメタクリレート樹脂を被覆してなる体積平均
粒径40μmのフェライトキャリアを、クリアトナー濃度が6質量%になるように混合し
、2成分現像剤の形態をとる「クリアトナー現像剤1」を調製した。
【0107】
3.評価実験
3−1.評価条件
実施例1〜9、比較例1〜5において、図5に示す構成の画像表面処理装置に上記「ベルト部材1〜14」をそれぞれ搭載するとともに、当該画像表面処理装置を内蔵した図5に示す画像形成装置に上記「クリアトナー現像剤1」を供給した。なお、図5の画像形成装置は、カラートナー層の画像形成も行えるが、ここではカラートナーの現像及び露光を行うユニットuY、uM、uC、uKは作動させずに、クリアトナーの現像及び露光を行うユニットuSのみを作動させた。
【0108】
評価に使用する画像担持体は、市販の「OKトップコート+(坪量157g/m2、紙厚131μm)(王子製紙(株)製)」を使用した。
上記画像担持体上に、電子写真方式の画像形成装置である「bizhub C353
(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)」(市販品)を用いてカラートナー画像層の形成を行った。画像は日本画像学会のテストチャートNo.7を使用した。この様にして画像担持体上にカラートナー画像層を形成した評価用画像担持体を、図5の画像形成装置の給紙部に装填し、カラートナー画像を形成した担持体全面上に、上記「クリアトナー現像剤1」を供給してクリアトナー層を最上層に形成させた。
ここで、本発明の構成を満たす「ベルト部材1〜9」を用いて評価したものを「実施例1〜9」、本発明の構成から外れる「ベルト部材10〜14」を用いて評価したものを「比較例1〜5」とした。
また、実施例10として、図5に示す構成の画像表面処理装置に上記「ベルト部材1」を搭載するとともに、当該画像表面処理装置を内蔵した図5に示す画像形成装置のuSに上記「クリアトナー現像剤1」を供給し、さらにuY、uM、uC、uKに「bizhub C353」の各色トナーを充填し、日本画像学会のテストチャートNo.7を現像し、図1の装置にて、カラートナー層、クリアトナー層を一括定着して評価したものを実施例10とした。
【0109】
なお、画像表面処理装置は、下記仕様に設定した。すなわち、
(a)クリアトナーの現像量:4g/m2
(b)加熱、加圧ロールの仕様
・加熱ロール:外径100mm、厚さ10mmのアルミニウム製基体
・加圧ロール:外径80mm、厚さ10mmのアルミニウム製基体上に厚さ3m
mのシリコーンゴム層を配置したもの
・加熱ロール及び加圧ロールの内部にハロゲンランプを各々配置したもので、加
熱ロールの表面温度は155℃、加圧ロールの表面温度は115℃に設定(サーミスタに
より温度制御)
・加熱ロールと加圧ロールのニップ幅:11mm
(e)剥離ロール位置での転写材温度:50℃になるように設定
(f)加熱、加圧ロールニップ部より剥離ロール位置までの距離:620mm
(g)画像担持体搬送速度:220mm/秒
(h)画像担持体搬送方向:A4サイズの上記画像担持体を横方向に搬送させる
(i)評価環境:常温常湿環境(温度20℃、相対湿度50%RH)
【0110】
3−2.光沢度
本発明で言う「光沢度」とは、所定条件の下でクリアトナー層を形成した転写材表面に光を照射した時に得られる転写材表面の反射の程度を定量したものである。
【0111】
実施例では、上記「ベルト部材1〜14」を搭載した画像形成装置で作製した画像上に形成された光沢面の光沢度をグロスメーター「GMX−203(村上色彩技術研究所社製)」を用いて測定、評価した。測定角度を20°に設定し、「JIS Z8741 1983方法2」に基づいて行った。光沢度のプリント物を用いて評価を行った。光沢度の値が60以上のものを合格とし、80以上になったものは特に優れているものとした。なお、光沢度は、プリント物の中央部と四隅の5点の平均値とした。光沢度の結果を下記表1に示した。
【0112】
3−3.離型性
画像剥離後の離型層へのトナーオフセットを以下の3段階で目視評価し、その結果を下記表1に示した。2以上を合格とした。
3:全くオフセットがないもの
2:ごくわずかにオフセットが見られるもの
1:オフセットが多く見られるもの
【0113】
【表1】

【0114】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜10は比較例1〜5に比べて光沢度が高く、また、離型性に優れていることが認められる。
【符号の説明】
【0115】
1 画像表面処理装置
2 画像形成装置
11 ベルト部材
111 基材
112 離型層
P 画像担持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも画像担持体に担持されたトナー層を、密着させた状態で加熱、加圧した後、冷却を行うことによって画像を形成する画像形成方法において使用されるベルト部材であって、
基材と、前記基材上に設けられた離型層と、を備え、
前記トナー層と接触する離型層側からのナノインデンテーションにより測定される表面硬度が0.35〜2[GPa]であり、かつ、前記トナー層と接触する離型層側の接触角が80〜130[°]であることを特徴とするベルト部材。
【請求項2】
前記離型層が、フッ素樹脂又はポリシロキサン又はフッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体の中の少なくとも1種と、アクリル化合物と、をラジカル重合により共重合させたものであることを特徴とする請求項1に記載のベルト部材。
【請求項3】
前記離型層が、フッ素樹脂/ポリシロキサン共重合体と、アクリル化合物と、をラジカル重合により共重合させたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のベルト部材。
【請求項4】
前記アクリル化合物が、不飽和二重結合を複数含む多官能アクリレートであることを特徴とする請求項2又は3に記載のベルト部材。
【請求項5】
少なくとも画像担持体に担持されたトナー層を、請求項1〜4のいずれか一項に記載のベルト部材に密着させた状態で、加熱、加圧した後、冷却を行うことによって画像を形成する画像形成方法。
【請求項6】
前記トナー層の最上層が、クリアトナーにより形成されていることを特徴とする請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
少なくとも画像担持体に担持されたトナー層を密着させる請求項1〜4のいずれか一項に記載のベルト部材と、
前記ベルト部材に前記トナー層を密着させた状態で加熱、加圧する加熱加圧手段と、
加熱、加圧した後、冷却を行う冷却手段と、を備えたことを特徴とする画像表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−93621(P2012−93621A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242154(P2010−242154)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】