説明

ベローズ型伸縮管継手

【課題】従来のRFコンタクト付きベローズの問題を解消し得る、新たな構造を有するベローズ型伸縮管継手を提供すること。
【解決手段】管状の金属製編組体2を、金属製ベローズ1の内部に挿通し、該編組体2の内部の管状の通路を、当該ベローズ型伸縮管継手の内部の管路とする。ベローズ1の両端部にはフランジ部材31、32を接合し、編組体2の両端部には口金21、22を接合し、該口金21、22を、フランジ部材31、32にそれぞれ接合することで、ベローズと編組体とをそれぞれの両端で互いに固定するのが好ましい態様である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製ベローズを含んで構成された伸縮管継手に関するものであり、とりわけ、放射光施設における加速器や蓄積リングを構成する真空ビームダクト(または、真空チャンバー)などの特殊な管路同士を連結するための、伸縮管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SPring−8(財団法人高輝度光科学研究センター)や、大強度陽子加速器計画(日本原子力研究開発機構、高エネルギー加速器研究機構)における3GeVシンクロトロンなどの大型放射光施設では、粒子を加速させるための加速器や蓄積リングの粒子通路として真空ビームダクトが構築される。環状に構築された加速器の場合、真空ビームダクトは全長1〜2kmにもおよぶ長大な管路となる。
【0003】
真空ビームダクトは、アルミニウム合金などからなる所定長さの剛体管同士を多数連結して構成される。その剛体管同士の連結部には、管同士の連結作業を容易にし、かつ、管路の長手方向の熱伸縮を吸収するために、金属製ベローズを有して構成されたベローズ型伸縮管継手が用いられる。
【0004】
このとき、一般的なベローズ型伸縮管継手をそのまま用いて、ベローズの内面のひだを真空ビームダクトの内面として露出させてしまうと、該ひだの凹凸によってダクトの内面の連続性が損なわれ、インピーダンスが増大し、高周波成分が誘起するなど、管路内を通過する荷電粒子に悪影響を及ぼしてしまう。
そこで、従来では、金属製ベローズの内面を金属片で覆ったRF(Radio Frequency)コンタクト付きベローズと称される特殊な伸縮管継手が用いられ、内部を通過する粒子への影響を低減させている(特許文献1〜3など)。
【0005】
図4は、従来のRFコンタクト付きベローズの構造の一例(特許文献3の図1に示されたものと同じ構造のもの)を、より分かり易いように示した図である。
同図に示すように、蛇腹管である金属製ベローズ200の両端には、2つのフランジ部材(特許文献3では「筒体」)101、102が接合され、該ベローズの内部には、RFコンタクト300が挿通され、ベローズの内側のひだが管路内に露出しないように該ひだを覆っている。同図の例では、RFコンタクトは、テーパ状を呈しており、この連結部分において管路の内径が変化しているが、単なる円筒状を呈する場合もある。
【0006】
RFコンタクト300は、導電性および弾性を有する金属薄板からなる筒状物であって、該RFコンタクトの一方(図の右側)の端部300aは、フランジ部材102に固定されている。また、該RFコンタクトの他方の端部300bは、図4に示すように、多数の切り込み301によって多数の片持ち状の金属片(フィンガー)302へと分割され、個々のフィンガー302は、片持ち状の板バネとして機能する。他方のフランジ部材101からは、内筒400が張り出しており、前記フィンガー302の自由端部は、この内筒の胴体外周面に、適度な接触圧をもって接触する構成となっている。
このような構成によって、ベローズが伸縮しても、フィンガーの自由端部は、内筒に接触した状態のまま、内筒に対して移動することができる。よって、ベローズの伸縮性は損なわれることなく、該ベローズの内面のひだは覆われ、かつ、2つのフランジ部材101、102が電気的に接続されて、発生する壁電流を問題無く流すことができる。
【0007】
しかしながら、本発明者等が、上記のような従来のRFコンタクト付きベローズを詳細に検討したところ、次に述べる問題が存在していることがわかった。
即ち、従来のRFコンタクト付きベローズの構造では、2つのフランジ部材同士の電気的な接続を良好に保たなければならないために、片持ち状の金属片であるフィンガーの先端(自由端)を、相手の内筒に対して常に所定の接触圧にて接触させなければならない。
そのため、フィンガーの形状、板厚のばらつき、素材自体の弾性のばらつき、組立て寸法のばらつきなど、接触圧に影響する全ての要素を厳しく管理する必要がある。例えば、フィンガーは、図4で説明したように、1枚の薄い金属板に多数のスリットを入れることによって櫛のような一体構造として形成されているが、スリットによって分けられた個々のフィンガーが規定の復帰力を有しているかどうか、1つ1つ検査する必要がある。またそのために、もとの金属板も1枚ずつ測定しなければならない。さらには、両側のフランジ部材の偏心など、継手装置全体の組立ても、フィンガーの接触圧に影響するため、本来の伸縮管継手以上の部品精度や組立て精度が求められる。
【特許文献1】特開平6−68987号公報
【特許文献2】特開2004−55399号公報
【特許文献3】実用新案登録第3101173号公報
【特許文献4】特開2004−332927号公報
【特許文献5】特公平1−52095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上記のような従来のRFコンタクト付きベローズの問題を解消し得る、新たな構造を有するベローズ型伸縮管継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行なった結果、従来のRFコンタクト付きベローズのような、金属製ベローズ内に多数の片持ち状の金属片を橋渡す構造を排除し、その代りに管状の金属編組体をベローズ内に挿通し、ベローズの内面のひだを編組面で覆い、その管状の金属編組体の内部の通路を管路とするという構成に想到し、上記課題を解決するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、次の特徴を有するものである。
(1)金属製ベローズと、管状の金属製編組体とを有するベローズ型伸縮管継手であって、管状の金属製編組体が、金属製ベローズ内に挿通され、該金属製編組体内の管状の通路が、当該ベローズ型伸縮管継手の内部の管路となっていることを特徴とする、ベローズ型伸縮管継手。
(2)金属製ベローズが、金属管から成形されてなるダイヤフラム型の成形ベローズである、上記(1)記載のベローズ型伸縮管継手。
(3)当該ベローズ型伸縮管継手が、両端側に外部接続用のフランジ部材を有しており、金属製ベローズの両端部が、それぞれの側のフランジ部材に接合されており、
金属製編組体の両端部には、それぞれ、口金が接合されており、
該両端部の口金が、それぞれの側のフランジ部材に接合されている、上記(1)または(2)記載のベローズ型伸縮管継手。
(4)当該ベローズ型伸縮管継手が、加速器の真空ビームダクトの管路を構成する剛体管士を連結するために用いられるものである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のベローズ型伸縮管継手。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、従来のRFコンタクト付きベローズ内で用いられていた金属製のバネ板であるフィンガーを排除し、その代りに、バネ性を持たない金属編組体を用いて蛇腹面を覆っている。従来のフィンガーは、スリットが多数入っているものの、滑らかな金属面である。これに対して、本発明では、一見すると滑らかな金属面とは程遠い、図2に示すような金属編組面を、真空ビームダクト内に露出させている。しかし、金属編組体は、ベローズ内面のひだを覆い、荷電粒子の通路の内壁面を構成するうシールドとして十分好ましい効果を示している。
本発明では、従来のフィンガーのばね性に依存した接触構造自体を根本的に排除し得るので、従来のように接触圧を適正に保つための過剰な精度が求められるということもなくなる。
【0012】
また、本発明者らの研究によれば、従来のRFコンタクト付きベローズの構造では、フィンガーが相手の筒に接触した状態で、一種の摺動を繰り返すので、摩耗によって微細な金属粉が発生し、荷電粒子の通過に悪影響を与えることもわかった。
これに対して、本発明では、管状の金属製編組体を従来のフィンガーの代わりに用いることで、フィンガーの接点が相手方の筒面に擦れながら移動するという接点構造を排除することを可能にしている。
即ち、本発明の好ましい態様では、管状の金属製編組体が、金属製ベローズ内に同軸状(必要に応じ、意図的に偏心させてもよい)に挿通されており、その両端部は、フランジ部材などを介してまたは直接的に、ベローズの両端に固定されている。
金属製編組体は、両端を固定されても、自体の柔軟性によってベローズの柔軟性を損なうことがない。しかも、該編組体は、当該ベローズ型伸縮管継手の両端を電気的に確実に接続し、金属粉を発生させることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明によるベローズ型伸縮管継手の具体的な態様例を参照しながら、本発明を説明する。
図1は、当該ベローズ型伸縮管継手の構造の一例を概略的に示した断面図である。同図に示すように、当該ベローズ型伸縮管継手は、金属製ベローズ(以下、単に「ベローズ」とも呼ぶ)1と、管状の金属製編組体(以下、単に「編組体」とも呼ぶ)2とを有して構成される。編組体2は、ベローズ1内に挿通されている。同図の例では、編組体2は、テーパ状を呈しており、この部分において管路の内径が変化しているが、同じ内径の管同士を連結する場合には、円筒状を呈するものであってもよい。
編組体2をベローズ内にはめ込んだことによって、ベローズ内の中心から内壁面を見たとき、内面の蛇腹は編組体によって全面的に覆われており、該編組体2の内部の管状の通路Aが、ベローズ1の内部の管路に取って代わり、当該ベローズ型伸縮管継手の管路となっている。
このベローズ型伸縮管継手を、真空ビームダクトの伸縮管継手として用いることで、加速された荷電粒子は、編組体内の通路Aを真空ビームダクトの一部として通過する。
【0014】
当該ベローズ型伸縮管継手の主要部分の寸法仕様は、従来のベローズ型伸縮管継手と互換性があるように決定してよい。それらの仕様の例を以下に挙げるが、それらの仕様は本発明を限定するものではなく、当該ベローズ型伸縮管継手が用いられる設備や要求に応じたものを適宜製作すればよい。
当該ベローズ型伸縮管継手の両端面間の自然長L1は、30mm〜500mm程度が伸縮管継手としては汎用的であり、例えば、3GeVシンクロトロンなどの大型放射光施設の真空ビームダクトへの用途では、L1は、100mm〜200mm、特に100mm〜120mm程度が有用である。
【0015】
当該ベローズ型伸縮管継手の内部管路の断面形状は、円形が一般的であるが、特許文献1のように、長円形などであってもよい。内部管路の断面形状が円形である場合、その口径(図1の寸法D1、D2など)は、例えば、80mm〜600mmが挙げられ、上記した大型放射光施設の真空ビームダクトへの用途では、160mm〜500mm程度である。
【0016】
当該ベローズ型伸縮管継手に用いるベローズの全長は、通常、両端部に種々のフランジ部材が設けられるので、特定はされないが、例えば、ベローズ型伸縮管継手の両端面間の自然長L1が上記のように100mm〜120mmの場合、ベローズの全長は60mm〜80mm程度が挙げられる。尚、ベローズの中間部分に金属管を挿入し(即ち、金属管の両端部だけをベローズとし)、管に比べて高価なベロースの占める割合を低くしてもよい。
【0017】
ベローズ自体は、従来公知のものを用いてよいが、真空ビームダクトへの用途では、高真空に耐え、繰り返しの伸縮にも耐えるものが好ましい。
ベローズを自体の中心軸線に沿って切断したときに見える蛇腹部分の山と谷の断面形状は、特許文献1の図1、2に示されたようなU字状、特許文献4の図2に示されたようなV字状、特許文献5の図1、2に示されたような、概してはV字状であるが谷底から山の頂点に向かう壁部が波打っている形状(波打ちV字状)などが挙げられる。
断面形状が前記のV字形状や波打ちV字状であるベローズのなかでも、一本の金属管から成形されたものは、ダイヤフラム型成形ベローズまたはプレスアップベローズなどと呼ばれ、繰り返しの伸縮によく耐え、内部の高圧や高真空にも耐える好ましいものである。
【0018】
ベローズの断面形状が前記のV字形状や波形V字状である場合、そのV字の内側の角度(波形V字状では平均的な角度)は、断面形状がU字状のベローズに比べて、ベローズの単位長さ当たりの山の数がより多くなるように、鋭角であることが好ましい。
例えば、内径20mm〜400mm、外径31mm〜440mmであるようなベローズならば、管の中心軸に沿って山の数を数えると、長さ10mm当たりの山の数は5〜10程度となる。
【0019】
ベローズの材料は、特に限定されず、ステンレス、アルミニウム、チタンなどが挙げられるが、真空ビームダクトへの用途の場合には、アルミニウム、チタンが好ましい材料として挙げられる。
【0020】
ベローズの肉厚は、材料や、内径、求められる使用条件などによっても異なるが、例えば、真空ビームダクトへの用途として、当該ベローズ型伸縮管継手の口径が50mm〜500mmの場合には、ベローズの肉厚は、0.1mm〜1.0mm程度が例示され、特に0.15mm〜0.3mm程度が好ましい値として挙げられる。
【0021】
本発明に用いられる編組体は、従来、ベローズの外側の被覆として用いられていた「ブレード(braid)」とも呼ばれる金属製の管状編組体を用いることができる。
編組体の編組構造は、図2に示すように、複数の金属素線を並列配置して1束とし(1束中の素線の数を「持数」と呼ぶ)、その束を複数本用い(用いた束の本数を「打数」と呼ぶ)、真空ビームダクトの口径となるように、交角θにて管状に編んだ構造である。
編組技術については、従来公知のブレードの製造技術を参照してよい。
真空ビームダクトへの用途の場合には、金属素線の束を編む際には、図2に示すように、隙間が生じないように密に編むことが好ましいが、要求に応じて、意図的に隙間を設けてもよい。
【0022】
編組体は、必要な層数だけ重ね合わせてもよい。同一層内では、素線径は同一とすることが好ましいが、異なる層同士の間では、素線径は異なっていてもよい。
金属素線の材料としては、ステンレス鋼、チタンが好ましいものとして挙げられる。
金属素線の径は、0.1mm〜1.0mm、特に0.2mm〜0.4mmが好ましい値として挙げられる。
編組パターン(持数、打数、交角)は、特に限定はされないが、一例を挙げると、金属素線径が0.3mmの場合には、持数4本〜28本、打数24本〜128本、交角θは、50度〜120度、好ましくは60度〜100度である。
【0023】
本発明では、編組体の内部の通路が、荷電粒子の通路となるので重要である。ベローズは、その蛇腹の内面が編組体の外面に接しないように、適度な大きさのものを選択することが好ましい。
編組体の外面とベローズの内面との間の隙間の距離〔(ベローズの内径−編組体の外径)÷2〕は、内部管路の口径によっても異なるが、5mm〜20mm程度であれば、編組体の外面とベローズの内面とが擦れ合って金属粉を発生させるということがなく、また、当該ベローズ型伸縮管継手の柔軟性が損なわれることもない。
【0024】
本発明は、ベローズ型伸縮管継手であるから、その両端側には、外部の管路と接続するためのフランジ部材を適宜設けておくことが好ましい態様である。ここでいうフランジ部材とは、単純な円板状のフランジのみならず、外部管路との接続のための継手構造を含むものである。
例えば、図1の例では、フランジ部材31は、外部の管路と接続するための外側フランジ31aと、ベローズや編組体の端部を接合するための内側フランジbとを有している。
【0025】
本発明では、従来のRFコンタクト付きベローズにおけるフィンガーの接触構造(接点の摺動)によって金属粉が発生することをさらなる解決課題としている。そして、ベローズ内でのあらゆる摺動を排除することは、編組体を管内に導入した本発明だけが達成し得る好ましい態様である。
よって、本発明では、次に例示するように、編組体の両端部と、ベローズの両端部とを、それぞれ互いに固定しておくことを推奨する。
【0026】
編組体の端部をベローズの端部に固定するための構造には、特に限定はなく、例えば、溶接やろう付けによって、編組体の端部をベローズの端部に直接的に接合してもよい。しかし、一般形状のベローズと編組体とを用いる場合、両者を直接的に接合することは形状的に手間がかかり、その近傍では、両者の擦れ合いも生じる。
そこで、口金やフランジなどを介在させて、編組体とベローズとを固定することが容易で好ましい態様となる。ただし、ベローズの端部を口金のように変形させて、編組体を直接接合し易い形状としてもよい。
図1の例では、ベローズ2の両端部が、それぞれの側のフランジ部材31、32に接合されており、一方、編組体2の両端部には、それぞれ、口金21、22が接合されており、該口金21、22が、それぞれに、フランジ部材31、32に接合されている。
口金の形状は、単純な円筒形であってもよいが、接合や組立てのために種々の鍔や突起部、凹部を設けてよい。
これによって、当該ベローズ型伸縮管継手には、従来の接点のような摺動部分が無くなるが、ベローズの柔軟性はなんらも損なわれない。
【0027】
図3は、編組体2の両端部に口金21、22を接合したものを示す斜視図である。編組体と口金とを接合(または固定)するには、種々の溶接法(タングステン・イナート・ガス・アーク溶接(TIG溶接)など)、ろう付け、カシメ、クランプ板やリングを用いた挟み込みなど、公知の接合・固定技術を用いてよく、口金の胴体外周面や内周面に対して、局所的にまたは全周にわたって接合・固定をすればよい。
ベローズの端部とフランジ部材との接合や、編組体の口金とフランジ部材との接合も、前記と同様に、公知の接合技術を用いてよい。
【0028】
口金21、22や、フランジ部材の材料としては、ステンレス鋼、アルミニウム、チタンが好ましいものとして挙げられる。
【0029】
当該ベローズ型伸縮管継手の伸縮ストロークの上限、下限を規制するために、ベローズの胴体外側に管軸に沿って、両フランジ部材同士の間にタイロッド(シャフト)を摺動可能に橋渡しし、上限、下限を規制するストッパーを構成してもよい。
【0030】
当該ベローズ型伸縮管継手は、加速器の真空ビームダクトの管路を構成する剛体管士を連結するのに好ましく用いられる。
【実施例】
【0031】
実施例1
加速器の真空ビームダクト構築の実験において、本発明によるベローズ型伸縮管継手を実際に製作し、剛体管同士の連結に用いた。
本実施例で示す例は、連結すべき剛体管の一方の口径(大口径側)が320mm、他方の口径(小口径側)が250mmであり、ベローズ型伸縮管継手において口径を縮小する構造である。以下に、このベローズ型伸縮管継手の仕様を挙げる。
【0032】
〔ベローズ型伸縮管継手全体の仕様〕
両端部のフランジ部材を含めた両端面間の自然長L1:114mm
小口径側の内径D1:257mm
大口径側の内径D2:330mm
【0033】
〔ベローズ〕
材料:チタン2種
山谷の断面形状:U字形
内径340mm、外径381mm、ベローズの肉厚(平均)0.3mm、自然長さ102mm、山の数9。
〔フランジ部材〕
材料:チタン2種
ベローズとフランジ部材との接合法:TIG溶接
【0034】
〔編組体〕
素線材料:チタン1種、素線径:0.3mm、持数24、打数128、交角θ約80度、層数1。
〔口金〕
材料:チタン2種
形状:円筒形
小口径側:内径=D1、肉厚2mm、長さ20mm
大口径側の内径=D2、肉厚2mm、長さ20mm
編組体と口金との接合法:TIG溶接
【0035】
〔組立てと評価〕
編組体の両端部に口金を接合して図3の形態とし、これを、図1に示すように、ベローズ内に挿入した状態で、口金21をフランジ部材31にTIG溶接し、他方の口金22をフランジ部材32にTIG溶接した。また、ベローズ1とフランジ部材31、32とを、TIG溶接で接合した。
これらの組立ては、接触信頼性を問われるような構造が無いために、簡単で確実であった。また、各部の部品も、真空ビームダクト構築に求められる本来の加工精度でよく、過剰な検査を行なわねばならないような部分自体がなかった。
当該ベローズ型伸縮管継手を真空ビームダクトに組み込んだところ、管路の熱伸縮を柔軟に吸収し、編組面が荷電粒子に悪影響を与えることもなく、金属粉を発生させることもなかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によって、従来のRFコンタクト付きベローズが有していた接点摺動の問題が根本的に解消され、簡単な構造で、金属粉の発生も無い好ましい伸縮管継手を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明によるベローズ型伸縮管継手の構造の一例を概略的に示した断面図である。同図では、管路の中心軸線の上側だけを描いており、下側は省略している。
【図2】本発明で用いる編組体の編組構造を例示する模式図である。
【図3】本発明において、編組体の両端部に口金を接合した状態のものを示す斜視図である。
【図4】従来のRFコンタクト付きベローズの構造の一例を概略的に示した断面図である。同図では、図1と同様、管路の中心線の上側だけを描いている。
【符号の説明】
【0038】
1 金属製ベローズ
2 管状の金属製編組体
A 金属製編組体の内部の管状の通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製ベローズと、管状の金属製編組体とを有するベローズ型伸縮管継手であって、
管状の金属製編組体が、金属製ベローズ内に挿通され、該金属製編組体内の管状の通路が、当該ベローズ型伸縮管継手の内部の管路となっていることを特徴とする、ベローズ型伸縮管継手。
【請求項2】
金属製ベローズが、金属管から成形されてなるダイヤフラム型の成形ベローズである、請求項1記載のベローズ型伸縮管継手。
【請求項3】
当該ベローズ型伸縮管継手が、両端側に外部接続用のフランジ部材を有しており、金属製ベローズの両端部が、それぞれの側のフランジ部材に接合されており、
金属製編組体の両端部には、それぞれ、口金が接合されており、
該両端部の口金が、それぞれの側のフランジ部材に接合されている、請求項1または2記載のベローズ型伸縮管継手。
【請求項4】
当該ベローズ型伸縮管継手が、加速器の真空ビームダクトの管路を構成する剛体管士を連結するために用いられるものである、請求項1〜3のいずれかに記載のベローズ型伸縮管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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