説明

ベローズ組立体の連結構造

【課題】 連結された複数個のベローズが横向き、あるいは、縦向きに配置された場合であっても、これら複数個のベローズが自重により垂れ下がってしまうことがなく、略均等に伸縮させることができ、しかも構造が容易なベローズ組立体の連結構造を提供する。
【解決手段】ラックアンドピニオンにより、ベローズを支持するベローズガイドを略同比率で伸縮させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベローズ組立体の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造装置において使用されるベローズは、伸縮量を多く確保するために、複数個のベローズを連結して使用することが行われている。
このように複数個のベローズを連結して用いると、場合によっては外部真空や縮長時に座屈を生じさせたり、連結部分が撓んでしまう虞がある。これを防止する目的で、ベローズの連結部分に、例えば、スペーサを配設することが行われている。(特許文献1)
ところが、特許文献1のように、連結部分に単にスペーサを介装した場合には、ベロー
ズを縦向きに配置すると、自重により均等に伸縮しなかったり、また、高速で伸縮された際に、伸縮量が設定値を上回って、いわゆる過伸縮が生じることがあった。
【0003】
一方、特許文献2のように、ベローズを支持する支持体をガイド棒のねじ山に沿って案内するものも提供されている。このような構造であれば、ベローズの配設向きに係らず、所定のピッチで複数個のベローズを伸縮させることが可能になる。
【0004】
しかしながら、ねじ山に沿って案内するものは、構造が複雑になるという問題があった。
【特許文献1】実開平05−17226号公報
【特許文献2】特開2000−136907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような実情に鑑み、連結された複数個のベローズが横向き、あるいは、縦向きに配置された場合であっても、これら複数個のベローズが自重により垂れ下がってしまうことがなく、略均等に伸縮させることができ、しかも構造が容易なベローズ組立体の連結構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係るベローズ組立体の連結構造は、
複数個のベローズが、フランジ状のベローズガイドに挟まれる態様で順次連結されることにより所定長さのベローズ組立体が構成され、
互いに隣接しあう2つの前記ベローズガイド間に、ラックアンドピニオンによる力の伝達機構が構成され、
前記ベローズ組立体の移動側の端部から力が加えられた場合に、
前記力の伝達機構を介して前記ベローズ組立体の固定側の端部に同時に力が伝達されることにより、前記複数個の前記ベローズが略均等に伸縮されるようにしたことを特徴としている。
【0007】
係る構成による本発明によれば、ラックとピニオンとの組み合わせにより、移動側の端部に加えられた力を、固定側の端部に、同時にかつ均等に伝達することができる。過伸縮が生じることはない
さらに、本発明では、前記力の伝達機構は、前記ベローズ組立体の外周に対して、略等間隔に配設されていることが好ましい。
【0008】
このような構成であれば、連結された複数個のベローズの外周域に略均等に力を作用さ
せることができるので、座屈を引き起こす変形を防止することができる
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るベローズ組立体の連結構造によれば、ラックアンドピニオンにより、入力側すなわち移動側の端部から固定側の端部に至るまで、同時かつ均等に力が作用するので、複数のベローズを略均等に、かつスムーズに伸縮させることができる。
【0010】
しかも、その構造は容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に示した実施例を参照しながら本発明について説明する。
図1は、本発明の一実施例によるベローズ組立体の連結構造を示したものである。このベローズ組立体の連結構造2では、6個のベローズB1〜B6が、7つのベローズガイドG1〜G7の間に、それぞれ支持されている。
【0012】
すなわち、ベローズガイドG1とベローズガイドG2との間にベローズB1が、ベローズガイドG2とベローズガイドG3との間にベローズB2が、ベローズガイドG3とベローズガイドG4との間にベローズB3が、ベローズガイドG4とベローズガイドG5との間にベローズB4が、ベローズガイドG5とベローズガイドG6との間にベローズB5が、ベローズガイドG6とベローズガイドG7との間にベローズB6が、それぞれ支持されている。
【0013】
一方、これら7つのベローズガイドG1〜G7は、周面に形成されたフランジ部にラックL1〜L7をそれぞれ有している。これらラックL1〜L7のうち両端部のラックL1、L7および、これより一つ内方に入った位置のラックL2、L6は、これらが支持されるベローズガイドG1、G7およびベローズガイドG2、G6との間で、L字を形成するように、棒状部分の端部がベローズガイドのフランジ部に固結されている。また、ラックL3、L5および中央のラックL4は、それぞれベローズガイドG3,G5およびG4との間でT字を形成するように、棒状部分の中間部がベローズガイドのフランジ部に固結されている。なお、ラックL1、L7およびラックL2、ラックL6は、略同一長さであるが、他のラックL3、L5およびラックL4の長さの略半分の長さに設定されている。
【0014】
ベローズガイドG1〜G7のうち、両側が2つのベローズガイドに挟まれる態様のベローズガイドG2〜G6は、両端部にそれぞれ1つのラックとピニオンを有しており、これらは連結体の全体として見た場合に、ラックとピニオンが交互になるように配置されている。すなわち、ラックL1とラックL3の間にピニオンP1が配置され、ラックL3とラックL5の間にピニオンP3が配置され、ラックL5とラックL7の間にピニオンP5が配置され、ラックL2とラックL4の間に、ピニオンP2が配置され、ラックL4とラックL6の間にピニオンP4が配置されている。
【0015】
なお、ベローズB1〜B6は、断面が円環状であっても、角形であってもよいが、図1の構造では、ベローズおよびベローズガイドが円環状のものを例示している。そして、ベローズ連結体の内部を中心線A−A方向で仮に上の部分と下の部分に仕切ったとすると、図1から明らかなようにラックL3、ラックL5、ラックL7のグループと、ラックL2、ラックL4、ラックL6のグループが、対称関係をなすように配置されている。
【0016】
このようなベローズ組立体における力の伝達について、先ず概要を説明し、その後、詳細な力の伝達について説明する。
先ず、ベローズ組立体は、全体が固定側に向かって同時に移動するものであるため、以下の説明の中で方向を示す記載は、隣接するものから見たときの変化を示している。
【0017】
すなわち、本実施例では、ベローズガイドG1からベローズガイドG7に向かって左向きの力Fを移動すると、ベローズ組立体の中心線A−Aを境に上の部分においては、ラックL1では左側、ラックL3では右側、ラックL5では左側、ラックL7では右側にそれぞれ力が作用する。また、中心線A−Aの下の部分においては、ラックL2では左側、ラックL4では右側、ラックL6では左側の力がそれぞれ作用する。最終の固定端に配置されたベローズガイドG7は、移動することはないため、ラックとピニオンとの関係で、これらラックL1〜L7の移動は、ピニオンを介してそれぞれ同時に起こり、ラックL1〜ラックL7までの全体の長さは、図2に示したように、ベローズガイドG1の移動量と比
例して短くなる。これにより、相隣接する2つのベローズガイドG1,G2間、相隣接するベローズガイドG2,G3間、相隣接するベローズガイドG3、G4間、相隣接するベローズガイドG4,G5間、相隣接するベローズガイドG5,G6間、相隣接するベローズガイドG6,G7間は、同じ比率で同時に伸縮する。したがって、2つのベローズガイドに固定された各ベローズB1、B2、B3、B4、B5、B6は、同時に同じ割合で伸縮することになる。
【0018】
以下、詳細な力の伝達について説明する。
先ず、移動側のベローズガイドG1側から固定側のベローズガイドG7側に向かって力Fが作用すると、この力FによりラックL1が左方向にスライドし、このスライドによりピニオンP1が時計方向に回転する。
【0019】
ピニオンP1はベローズガイドG2に取付けられているため、ピニオンP1の時計方向の回転により、ラックL3がラックL1と反対方向すなわち右方向にスライドする。
ラックL3はベローズガイドG3に取付けられているため、ベローズガイドG1とベローズガイドG2の間隔と、ベローズガイドG2とベローズガイドG3の間隔が同時に等比率で伸縮する。これにより、ベローズB1とベローズB2も等比率で伸縮する。
【0020】
ベローズB1とベローズB2の伸縮により、ベローズガイドG2に固定されたラックL2が左方向にスライドしてピニオンP2を時計方向に回動させる。
ピニオンP2は、ベローズガイドG3に取付けられているため、ピニオンP2の時計方向の回転により、ラックL4もラックL2と同じ量だけ、反対方向すなわち右方向にスライドする。
【0021】
ラックL4はベローズガイドG4に取付けられているため、ベローズガイドG2とベローズガイドG3の間隔と、ベローズガイドG3とベローズガイドG4の間隔が等比率で伸縮する。これにより、ベローズB3も、ベローズB1とベローズB2と同様、同時に等比率で伸縮する。以下、同様にして、ベローズガイドG1に加えられた力Fで、各ベローズを同時に、等比率で伸縮させることができる。
【0022】
以上説明したように、本発明に係るベローズ組立体の連結構造2では、各ベローズの連結部分は、ベローズガイドによって連結されており、しかも、これらのベローズガイドには、ベローズの側面を覆うようにラックが一体に取付けられているため、多数のベローズを組付けた場合であっても、これらが垂れ下がってしまうこともない。また、連結体を縦方向に配置した場合であっても、ラックとピニオンで、周囲が囲繞されるので、これらが自重で垂れ下がってしまうことはない。また、ベローズ連結体に急激な力が作用することがあっても、ラックとピニオンの関係で、移動端から固定端に至るまで力が同時に伝達されるので、過伸縮が生じるようなことない。
【0023】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されるものではない。たとえば、上記実施例では、ラックL1、L3、L5、L7のグループと
、ラックL2、L4、L6のグループとは、中心線Aを境に対称形をなすように配置しているが、これらを2組配置して90°置きにラックアンドピニオンを配置することもできる。
【0024】
本実施例においてベローズ6個の際の一例を詳述したが、本発明のベローズ組立体の連結構造における、移動端から固定端に至るまでの力の伝達機構の最小構成単位は、ベローズがn個の場合、ベローズガイドの最小必要数はn+1個であり、ラックの最小必要数はn個、ピニオンの最小必要数はn−1個である。
【0025】
また、ラックとピニオンとの組み合わせは、上記の構成に限定されない。要は,ラック
とピニオンとの関係で、複数個並べられたベローズガイドを同時にかつ同じ比率で移動させる構造であれば、他の態様を採用することもできる。図3はベローズガイドを3個、ベローズを2個とした場合の例を示している。
【0026】
この実施例では、3個のベローズガイドG1、G2、G3の間に2個のベローズB1、B2が連結されている。そして、移動端であるベローズガイドG1にはラックL1が、固定端であるベローズガイドG3にはラックL2が、それぞれ取り付けられている。また、中間部のベローズガイドG2には、ピニオンP1が取り付けられている。
【0027】
ベローズガイドG1からベローズガイドG3に向かって力Fが作用すると、その力FによりラックL1が左方向に移動し、このスライドによりピニオンP1が時計方向に回転する。ピニオンP1はベローズガイドG2に取り付けられているため、ピニオンP1の時計方向の回転により、ベローズガイドG2はラックL2に対して相対的に左方向に移動する。これにより、ベローズB1とベローズB2とが同時に同比率で伸縮する。
【0028】
このようなベローズ連結体であっても、ラックL1,L2およびピニオンP1からなる力の伝達機構が、ベローズ組立体の外周に略等間隔に配設されることが好ましい。例えば、図示したように、中心線A−Aに対して、上下対称位置に同様にラックとピニオンとを配設することもできる。また、外周に対して90°置きに配置することもできる。
【0029】
このような構造であっても、上記実施例と同様に、複数個のベローズを同比率で伸縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は本発明の一実施例に係るベローズ組立体の連結構造を示した概略側面図である。
【図2】図2は、図1に示したベローズ組立体の連結構造の移動側から固定側に向かって力を加えた場合の伸縮状態を示した概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の他の実施例に係るベローズ組立体の連結構造を示した概略側面図である。
【符号の説明】
【0031】
2 連結構造
B1、B2、B3、B4、B5、B6 ベローズ
F 力
G1、G2、G3、G4、G5、G6、Gx ベローズガイド
L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、Ly ラック
P1、P2、P3、P4、P5、Pz ピニオン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のベローズが、フランジ状のベローズガイドに挟まれる態様で順次連結されることにより所定長さのベローズ組立体が構成され、
互いに隣接しあう2つの前記ベローズガイド間に、ラックアンドピニオンによる力の伝達機構が構成され、
前記ベローズ組立体の移動側の端部から力が加えられた場合に、
前記力の伝達機構を介して前記ベローズ組立体の固定側の端部に同時に力が伝達されることにより、前記複数個の前記ベローズが略均等に伸縮されるようにしたことを特徴とするベローズ組立体の連結構造。
【請求項2】
前記力の伝達機構は、前記ベローズ組立体の外周に対して、略等間隔に配設されていることを特徴とする請求項1に記載のベローズ組立体の連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−29479(P2006−29479A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210474(P2004−210474)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【出願人】(000111801)バルカーセイキ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】