説明

ベンゾイミダゾール化合物及びその使用

この発明は、一般に置換ベンゾイミダゾール化合物、具体的には、メチル 2−((2−(2,6−ジフルオロ−4−(メチルカルバモイル)フェニル)−5−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)メチル)モルホリン−4−カルボキシラート及びその塩に関する。この発明はまた、こうした化合物を含んでなる医薬組成物及びキット、こうした化合物の使用(例えば、処置方法及び薬剤製剤を含む)、こうした化合物の製造方法、及びこうした方法において使用される中間体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ベンゾイミダゾール化合物及びその使用
関連特許出願の相互参照
この特許は米国特許仮出願番号第61/262,263号(2009年11月18日出願)に対する優先権の利益を主張する。上記特許出願の全テキストがこの特許に参照によって組み込まれるものとする。
【0002】
この発明は、一般に、置換ベンゾイミダゾール化合物、特にメチル 2−((2−(2,6−ジフルオロ−4−(メチルカルバモイル)フェニル)−5−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)メチル)モルホリン−4−カルボキシラート及びその塩に関する。この発明はまた、こうした化合物を含んでなる医薬組成物及びキット、こうした化合物の使用(例えば、処置方法及び薬剤製剤を含む)、こうした化合物の製造方法、及びこうした製造に使用される中間体に関する。
【背景技術】
【0003】
P2Xプリン受容体(P2X purinoreceptors)は、細胞外アデノシン三リン酸(ATP)によって活性化されるイオンチャネルのファミリーである。プリン受容体は様々な生物学的機能、特に痛みの感受性に関する機能に関与している。P2X3受容体サブユニットは、このファミリーのメンバーである。これは最初にラット後根神経節からクローニングされた。非特許文献1。ラット及びヒトの双方のP2X3のヌクレオチド及びアミノ酸配列は現在知られている。非特許文献2; 3。
【0004】
P2X3は、膀胱容量反射を制御している求心路に関与していることが報告されている。それ故、P2X3を阻害することは、過活動膀胱などの尿貯留及び排尿障害を処置する治療的潜在能力を有している可能性がある。非特許文献4。
【0005】
P2X3はまた、侵害受容性小径感覚ニューロン(すなわち、疼痛又は損傷によって刺激されるニューロン)に選択的に発現され、このことは疼痛感受性における役割に合致している。そしてP2X3受容体をブロックすると、慢性炎症及び神経障害性疼痛の動物モデルにおいて鎮痛性があることが報告されている。非特許文献5。それ故、P2X3レベル又は活性を減少させる方法は、疼痛を患っている対象における痛覚をモジュレートするのに有用であると考えられている。
【0006】
様々な他の障害もまた、P2X3活性を有する化合物を使用すると処置可能であることが論議されている。例えば、特許文献1参照。
【0007】
P2X3はまた、P2X2とP2X2/3ヘテロダイマーを形成することができ、これはP2Xプリン作動性リガンド依存性イオンチャネルファミリー(P2X purinergic ligand-gated ion channel family)の別のメンバーである。P2X2/3は、感覚ニューロンの末端(中枢及び末梢)に高度に発現される。非特許文献6。最近の研究の結果によれば、P2X2/3はまた、膀胱感覚ニューロンにおいて優勢に(P2X3を超えて)発現され、そして膀胱充満及び侵害受容の感知において役割を果たしている可能性があることが示唆されている。非特許文献7。
【0008】
上記のことに鑑みると、P2X3及び/又はP2X2/3に関連する様々な障害を処置するために有用で、かつ安全でありうる、新規なP2X3及び/又はP2X2/3受容体リガンド、特にアンタゴニストに対するニーズが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO 2008/136756
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Chen et al., Nature, vol. 377, pp. 428-431 (1995)
【非特許文献2】Lewis, et al., Nature, vol. 377, pp. 432-435 (1995)
【非特許文献3】Garcia-Guzman, et al., Brain Res. Mol. Brain Res., vol. 47, pp. 59-66 (1997)
【非特許文献4】Cockayne, et al., Nature, vol. 407, pp. 1011-1015 (2000)
【非特許文献5】Jarvis, et al., PNAS, 99, 17179-17184 (2002)
【非特許文献6】Chen, et al., Nature, vol. 377, pp. 428-431 (1995)
【非特許文献7】Zhong, et al., Neuroscience, vol. 120, pp. 667-675 (2003)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、とりわけ、ベンゾイミダゾール化合物;ベンゾイミダゾール化合物を使用する処置方法(例えば、種々の疾患を処置するためのベンゾイミダゾールの使用及び薬理学的ツールとしてのベンゾイミダゾールの使用);薬剤を製造するためのベンゾイミダゾール化合物の使用;ベンゾイミダゾール化合物を含んでなる組成物(例えば、医薬組成物);ベンゾイミダゾール化合物の製造方法;及びこうした製造方法中で使用される中間体を含んでなる。
【0012】
簡潔に述べれば、この発明は、1つには、式Iの化合物又はその塩を対象とする。式Iは下記に該当する:
【化1】

【0013】
この発明はまた、1つには、式Iの化合物又はその製薬学的に許容される塩を含んでなる医薬組成物を対象とする。一般に、こうした組成物は、追加的に製薬学的に許容される不活性な成分(不活性な成分はこの特許では時々まとめて“担体(carriers)、希釈剤(diluents)、又は賦形剤(excipients)”と称される)を含んでなる。この組成物は更に1つ又は複数の他の成分を含むことができる。例えば、この組成物は、更に1つ又は複数の追加の担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含むことができる。この組成物はまた(又は代替的に)、1つ又は複数の追加の活性成分を含むことができる。例えば、こうした組成物は1つより多い式Iの化合物の塩を含むことができる。この組成物はまた、例えば、代替的又は追加的に、式Iの化合物又はその塩以外の1つ又は複数の活性成分を含むことができる。
【0014】
この発明はまた、1つには、式Iの化合物又はその塩を含んでなるキットを対象としている。
【0015】
この発明はまた、1つには、薬剤として使用するための式Iの化合物又はその製薬学的に許容される塩を対象としている。
【0016】
この発明はまた、1つには、医薬組成物(又は“薬剤(medicament)”)を製造するための式Iの化合物又はその製薬学的に許容される塩の使用を対象とする。一般に、こうした組成物は、これに加えて、製薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含んでなる。この組成物は、更に1つ又は複数の別の成分を含むことができる。例えば、この組成物は、更に1つ又は複数の更なる担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含むことができる。この組成物はまた(又は代替的に)、1つ又は複数の追加の活性成分を含むことができる。例えば、こうした組成物は、1つより多い式Iの化合物の塩を含むことができる。この組成物はまた、例えば、代替的又は追加的に、式Iの化合物又はその塩以外の1つ又は複数の活性成分を含むことができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、この薬剤は動物(例えば、ヒト)におけるP2X3活性(特に過剰な活性)に関連する状態を処置するのに有用である。
【0018】
いくつかの実施形態では、この薬剤は動物(例えば、ヒト)におけるP2X2/3活性(特に過剰な活性)に関連する状態を処置するのに有用である。
【0019】
いくつかの実施形態では、この薬剤は動物(例えば、ヒト)における疼痛を処置するのに有用である。
【0020】
いくつかの実施形態では、この薬剤は動物(例えば、ヒト)における尿路障害(urinary tract disorder)を処置するのに有用である。
【0021】
この発明はまた、1つには、このような処置を必要とする動物(例えば、ヒト)における障害を処置する方法を対象とする。こうした方法は、式Iの化合物又はその製薬学的に許容される塩を動物に投与することを含んでなる。このような方法は、式Iの化合物又はその製薬学的に許容される塩だけを投与することを包含する。こうした方法は、更に追加の成分も投与することを包含する。例えば、式Iの化合物又はその製薬学的に許容される塩は、通例、1つ又は複数の担体、希釈剤、又は賦形剤をも含んでなる医薬組成物の一部分として投与されるであろう。式Iの化合物又はその製薬学的に許容される塩はまた、1つ又は複数の追加の活性成分と共に投与することもできる。例えば、1つより多い式Iの化合物の製薬学的に許容される塩を投与することができる。代替的又は追加的に、式Iの化合物又はその製薬学的に許容される塩以外の1つ又は複数の活性成分を投与することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、この障害は、P2X3活性(特に、過剰な活性)に関連する障害を含んでなる。
【0023】
いくつかの実施形態では、この障害は、P2X2/3活性(特に、過剰な活性)に関連する障害を含んでなる。
【0024】
いくつかの実施形態では、この障害は疼痛を含んでなる。
【0025】
いくつかの実施形態では、この障害は尿路障害を含んでなる。
【0026】
一般に、式Iの化合物又はその塩を、ただ1つの活性成分として投与して、標的障害を処置するときには、式Iの化合物又はその製薬学的に許容される塩の投与量は、動物における標的障害を処置するのに治療的に有効である。対照的に、式Iの化合物又はその製薬学的に許容される塩を1つ又は複数の他の活性成分と組み合わせて投与するときは、式Iの化合物又はその塩の量、及び他の活性成分(複数を含む)の量(複数を含む)は、一緒になって哺乳動物における標的障害を処置するのに治療的に有効である。
【0027】
出願人の発明の更なる利益は、この明細書を読むことから当技術分野の当業者であれば明白であろう。
【0028】
例示的実施形態の説明
この例示的な実施形態の説明は、単に当技術分野の当業者に出願人の発明、この発明の原理、及びこの発明の実際の適用を知らせることのみを意図しており、その結果、当技術分野の当業者は、特定の用途の要件に最も適することができるように極めて多くの形で本発明を改作し、かつ利用することができる。この説明及び具体的な実施例は、この発明の実施形態を示しており、単に例示するだけの目的のために意図されている。それ故、この発明は、この明細書中に述べられている例示的な実施形態に限定されることはなく、そして様々に修正されうる。
【0029】
上記に示したごとく、この発明は、1つには、式Iの化合物又はその塩を対象としている。式Iは下記:
【化2】

に該当する。
【0030】
この化合物はキラル炭素を含む。式Iは、この構造に該当するキラル異性体の双方、並びにキラル異性体の任意の混合物を包含することを意図している。こうした異性体の混合物は、例えば、ラセミ混合物、すなわち、化合物の約50%がS−異性体の形態であり、そして混合物の約50%がR−異性体の形態である混合物がありうる。
【0031】
S−エナンチオマー〈すなわち、(S)−メチル 2−((2−(2,6−ジフルオロ−4−(メチルカルバモイル)フェニル)−5−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)メチル)モルホリン−4−カルボキシラート〉は、式(II):
【化3】

の構造に該当する。
【0032】
そしてR−エナンチオマー〈すなわち、(R)−メチル 2−((2−(2,6−ジフルオロ−4−(メチルカルバモイル)フェニル)−5−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)メチル)モルホリン−4−カルボキシラート〉は、式(III):
【化4】

の構造に該当する。
【0033】
いくつかの実施形態では、式(I)の単一のキラル異性体が、例えば、キラルクロマトグラフィー分離を用いて、異性体の混合物(例えば、ラセミ体)からそれを分離することによって得られる。他の実施形態では、単一のキラル異性体は、例えば、キラルな出発物質から直接合成によって得られる。後者は下記の実施例中で説明されている。
【0034】
それぞれの式II及びIIIにおいては、キラル炭素の置換基の1つの方向が黒いくさび又は破線のくさびで描かれている。反対方向を向いている置換基は水素である。この表記法は従来から行なわれている有機化学命名規則に合致している。
【0035】
従って、式IIは別の方法では下記:
【化5】

の式II−1で描かれる。
【0036】
同様に、式IIIは、別の方法では下記:
【化6】

の式III−1で描かれる。
【0037】
式Iの化合物の意図される塩には、酸付加塩と塩基付加塩のどちらも含まれる。塩は異なる温度及び湿度での安定性、又は水、油、又は他の溶媒中での望ましい溶解性などの1つ若しくは複数の化学的又は物理的特性によって有利でありうる。いくつかの例では、塩は化合物の単離又は精製を促進するために用いることができる。いくつかの実施形態(特に、その塩が動物に投与することが意図されている場合、又はその塩が動物に投与することを意図している化合物又は塩を製造する際に使用するための試薬である場合)では、この塩は製薬学的に許容可能である。
【0038】
一般に、酸付加塩は、種々の無機又は有機酸を用いて製造することができる。こうした塩は通例、当技術分野で知られている種々の方法を用いて、例えば、化合物を酸(例えば、化学量論量の酸)と混和することによって形成することができる。この混和は水、有機溶媒(例えば、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリル)、又は水性/有機混合物中で行うことができる。通例、酸付加塩を形成するのに使用することができる無機酸の例には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸、及びリン酸が含まれる。有機酸の例には、例えば、脂肪族、脂環式(cycloaliphatic)、芳香族、アラリファティック(araliphatic)、複素環、カルボキシル基を持つ(carboxylic)、及びスルホン基を持つ群の有機酸が含まれる。有機塩の具体的な例には、コール酸塩、ソルビン酸塩、ラウリン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、ジグルコン酸塩(digluconate)、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸(tartaric acid)(及びその誘導体、例えば、ジベンゾイル酒石酸塩)、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、グルクロン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、ピルビン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、安息香酸塩、アントラニル酸(anthranilic acid)、メシル酸塩、ステアリン酸塩、サリチル酸塩、p−ヒドロキシ安息香酸塩、フェニル酢酸塩、マンデル酸塩(及びその誘導体)、エンボン酸塩(パモエート(pamoate))、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パントテン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、スルファニル酸塩、シクロヘキシルアミノスルホン酸塩、アルギン酸(algenic acid)、β−ヒドロキシ酪酸(β−hydroxybutyric acid)、ガラクタル酸塩、ガラクツロン酸塩(galacturonate)、アジピン酸塩、アルギン酸塩(alginate)、酪酸塩、樟脳酸塩(camphorate)、カンファースルホン酸塩(camphorsulfonate)、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、グリコヘプタノエート(glycoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パルモエート(palmoate)、ペクチネート(pectinate)、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、及びウンデカノエート(undecanoate)が含まれる。いくつかの実施形態では、この塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、又はp−トルエンスルホン酸塩を含む。
【0039】
式Iの化合物及びその塩は、形成することができるあらゆる互変異性体を包含していることが意図されている。“互変異性体(tautomer)”は、水素原子の移動に起因する平衡状態で存在するあらゆる他の構造異性体であり、例えば、アミド−イミド酸互変異性がある。
【0040】
式Iの化合物又はその塩のアミンは、N−オキシドを形成する場合がありうることを想定している。こうしたN−オキシドは、式Iの化合物及びその塩によって包含されていることが意図されている。N−オキシドは一般に、アミンを過酸化水素又は過酸(例えば、ペルオキシカルボン酸)などの酸化剤で処理することによって形成させることができる。例えば、Advanced Organic Chemistry, by Jerry March, 4th Edition, Wiley Interscience参照。N−オキシドはまた、アミンを、例えば、ジクロロメタンなどの不活性溶媒中でm−クロロ過安息香酸(MCPBA)と反応させることによって製造することができる。L. W. Deady, Syn. Comm., 7, pp. 509-514 (1977)参照。
【0041】
式Iの化合物又はその塩は、ある種の温度である種の溶媒中、分離可能なアトロプ異性体を形成する場合がありうることを想定している。式Iの化合物及びその塩はこうしたアトロプ異性体をすべて包含していることを意図している。アトロプ異性体は一般に、例えば、キラルLCを用いて単離することができる。
【0042】
式Iの化合物及びその塩は、同位体標識された(又は“放射標識された(radio-labeled)”)式Iの化合物又はその塩の誘導体をすべて包含していることを意図している。こうした誘導体は、1つ又は複数の原子が自然界に通例見出される原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子で置き換えられている、式Iの化合物又はその塩の誘導体である。組み入れることができる放射性核種の例には、2H(ジュウテリウムとして“D”とも書かれる)、3H(トリチウムとして“T”とも書かれる)、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、及び18Fが含まれる。使用される放射性核種は、この放射標識された誘導体の特定の応用によって決まることになる。例えば、インビトロ受容体標識及び競合アッセイの場合には、3H、又は14Cがしばしば有用である。放射線イメージング応用(radio-imaging applications)の場合には、11C、又は18Fがしばしば有用である。いくつかの実施形態では、この放射性核種は3Hである。いくつかの実施形態では、この放射性核種は、14Cである。いくつかの実施形態では、この放射性核種は、11Cである。そしていくつかの実施形態では、この放射性核種は、18Fである。
【0043】
式Iの化合物及びその塩は、式Iの化合物及びその塩の固体状態形態をすべて包含していることが意図されている。式Iの化合物及びその塩はまた、式Iの化合物及びその塩の溶媒和(例えば、水和)及び非溶媒和の形態をすべて包含していることが意図されている。
【0044】
式Iの化合物及びその塩はまた、式Iの化合物又はその塩が、例えば、化学的に化合物又は塩にカップリングしているか、あるいは物理的にそれに結合していることによってカップリング相手にリンクしているカップリング相手を包含していることが意図されている。カップリング相手の例には、標識又はレポーター分子、支持基質(supporting substrate)、担体又は輸送体分子、エフェクター、薬物、抗体、又はインヒビターが含まれる。カップリング相手は、式Iの化合物又はその塩に、ヒドロキシル、カルボキシル、又はアミノ基などの化合物のしかるべき官能基を介して共有結合的にリンクしうる。他の誘導体には、リポソームと式Iの化合物又はその塩を製剤化することが含まれる。
【0045】
この発明は、1つには、動物、特に哺乳類における種々の障害を処置する方法を提供する。哺乳類には、例えば、ヒトが含まれる。哺乳類にはまた、例えば、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコ、及びウマ)、家畜動物(例えば、ウシ及びブタ);実験室動物(例えば、マウス及びラット);及び野生、動物園及びサーカス動物(例えば、クマ、ライオン、トラ、類人猿、及びサル)が含まれる。
【0046】
下記の実施例6に示されているように、式Iの化合物のキラル異性体はP2X3をモジュレートし、そして特にP2X3に対するアンタゴニストとして機能することが認められた。従って、式Iの化合物及びその塩は、P2X3及び/又はP2X2/3をモジュレートして、P2X3及び/又はP2X2/3によって媒介される(又は、さもなければP2X3及び/又はP2X2/3に関連する)種々の状態を処置するのに使用することができるものと考えられている。式Iの化合物及びその塩は、1つ又は複数の次の特徴を示すものと考えられている:望ましい効力、望ましい有効性、望ましい貯蔵安定性、広範囲の患者に対する望ましい忍容性、及び望ましい安全性。
【0047】
式Iの化合物又はその塩は、例えば、疼痛を処置するのに使用することができるものと考えられている。こうした疼痛は、例えば、慢性疼痛、神経障害性疼痛、急性疼痛、背部痛、癌疼痛、関節リウマチによって引き起こされる疼痛、偏頭痛、及び内臓痛でありうる。
【0048】
式Iの化合物又はその塩はまた、尿路障害を処置するのに使用することができるものと想定される。こうした障害には、例えば、過活動膀胱(尿失禁とも呼ばれている)、骨盤過敏症、及び尿道炎が含まれる。
【0049】
式Iの化合物又はその塩はまた、胃腸障害を処置するのに使用できるものと想定される。こうした障害には、例えば、便秘、及び機能性胃腸障害(例えば、過敏性腸症候群、又は機能性ディスペプシア)が含まれる。
【0050】
式Iの化合物又はその塩はまた、癌を処置するのにも使用することができるものと想定される。
【0051】
式Iの化合物又はその塩はまた、心臓血管障害を処置し、又は心筋梗塞後の心臓保護のために使用することができるものと想定される。
【0052】
式Iの化合物又はその塩はまた、免疫調節剤として、特に自己免疫疾患(例えば、関節炎)を処置する場合;皮膚移植、臓器移植、又は同様の外科的ニーズの場合;膠原病の場合;アレルギーの場合に、又は抗腫瘍剤又は抗ウイルス剤として有用でありうることが想定される。
【0053】
式Iの化合物又はその塩はまた、多発性硬化症、パーキンソン病、及びハンチントン舞踏病を処置するのに使用されうることが想定される。
【0054】
式Iの化合物又はその塩はまた、うつ病、不安症、ストレス関連障害(例えば、心的外傷後ストレス障害、パニック障害、社交恐怖、又は強迫性障害)、早発射精、精神病、外傷性脳損傷、脳卒中、アルツハイマー病、脊髄損傷、薬物嗜癖(例えば、アルコール、ニコチン、オピオイド、又は他の薬物乱用の処置)、又は交感神経系障害(例えば、高血圧症)を処置するのに有用でありうることが想定される。
【0055】
式Iの化合物又はその塩はまた、下痢を処置するのに使用されうることが想定される。
【0056】
式Iの化合物又はその塩はまた、例えば、咳又は肺水腫などの肺障害を処置するのに有用でありうることが想定される。
【0057】
式Iの化合物又はその塩はまた、例えば、カンナビノイド受容体の変性又は機能不全がそのパラダイムに存在するか、あるいはそのパラダイムに関与している疾患を処置するのに使用されうることが想定される。これには、例えば、陽電子射出断層撮影(PET)などの診断手法及び撮像応用において、式Iの化合物又はその塩の同位体標識されたバージョンの使用が必要である場合がありうる。
【0058】
式Iの化合物又はその製薬学的に許容される塩は、経口的、口腔内、膣内、直腸内、吸入を介して、吹送を介して、鼻内、舌下、局所的、又は非経口的(例えば、筋肉内、皮下、腹腔内、胸腔内、静脈内、硬膜外、髄腔内(intrathecally)、脳室内、又は関節内への注入により)に投与することができることが想定される。
【0059】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はその塩は、経口投与される。
【0060】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はその塩は、静脈内投与される。
【0061】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はその塩は、筋肉内投与される。
【0062】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はその塩は、薬剤(すなわち、医薬組成物)を製造するのに使用される。一般に、医薬組成物は、治療的に有効な量の化合物又は塩を含んでなる。式Iの化合物又はその塩を含んでなる医薬組成物は、広範囲に変動しうる。式Iの化合物又はその塩は、単独で(すなわち、他の活性又は不活性成分を加えることなく)投与しうることが想定されるけれども、この医薬組成物は通例、そうしないで1つ又は複数の追加の活性成分及び/又は不活性成分を含むであろう。この発明の医薬組成物中に存在する不活性成分は、時として、まとめて“担体(carriers)、希釈剤(diluents)、及び賦形剤(excipients)”と呼ばれる。医薬組成物を製造する方法並びに担体、希釈剤、及び賦形剤の使用については、当技術分野において周知である。例えば、例として、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PA, 15th Edition, 1975を参照されたい。
【0063】
式Iの化合物又はその製薬学的に許容される塩を含んでなる医薬組成物は、広範囲に異なりうる。例えば、この組成物は、経口的、直腸内、鼻内、局所的、口腔内、舌下、膣内、吸入、吹送、又は非経口投与を含めて、種々の適切な投与ルート及び投与手段のために製剤化することができることが想定される。こうした組成物は、例えば、固体、水溶性又は油性の溶液、懸濁液、エマルション、クリーム、軟膏、ミスト、ゲル、鼻用スプレー、座剤、微細粉末、及び吸入のためのエアロゾル又はネブライザーの形でありうることが想定される。いくつかの実施形態では、この組成物は、経口投与できる固体又は液体投与形態を含む。
【0064】
固体形態組成物には、例えば、粉末、錠剤、分散性顆粒、カプセル、カシェ剤(cachets)、及び座剤が含まれうる。固体担体は1つ又は複数の物質を含むことができる。こうした物質は通例不活性である。担体はまた、例えば、希釈剤、矯味矯臭剤、可溶化剤、滑沢剤、保存剤、安定剤、懸濁剤、結合剤、又は崩壊剤として機能することができる。これはまた、例えば、封入材料として機能することもできる。適切な担体の例には、多くの場合、製薬グレードのマンニトール、乳糖、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、乳糖、糖(例えば、グルコース及びスクロース)、ペクチン、デキストリン、スターチ、トラガント、セルロース、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウム)、サッカリンナトリウム、低融点ワックス、及びカカオ脂が含まれる。
【0065】
粉末では、担体は通例、微細に分割した活性成分と混和した状態で存在する微細に分割した固体である。錠剤では、活性成分は通例、望ましい結合特性を有する担体と適切な割合で混和し、所望の形及び大きさに圧縮成型する。
【0066】
座剤組成物を調製する場合には、低融点ワックス(例えば、脂肪酸グリセリドとカカオ脂の混合物)を通例最初に溶融させ、引き続いて例えば、撹拌してその中に活性成分を分散させる。次いで溶融した均質の混合物を適切な大きさの型に注ぎ、そして冷却させ、固化させる。座剤組成物に存在しうる非刺激性の賦形剤の例には、例えば、カカオ脂、グリセロゼラチン、水添植物油、種々の分子量のポリエチレングリコールの混合物、及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステルが含まれる。
【0067】
液体組成物は、例えば、式Iの化合物又はその塩を、例えば、水、水/プロピレングリコール溶液、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、又はエタノールなどの担体中に溶解又は分散させることによって調製することができる。いくつかの実施形態では、経口投与用水溶液は、式Iの化合物又はその塩を可溶化剤(例えば、ポリエチレングリコール)と共に水中に溶解させることによって調製することができる。例えば、着色剤、矯味矯臭剤、安定剤、及び増粘剤も加えることができる。いくつかの実施形態では、経口使用水性懸濁剤は、微細に分割した形の式Iの化合物又はその塩を、例えば、1つ又は複数の天然、合成ゴム、樹脂(natural synthetic gums, resins)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又は他の懸濁剤などの粘性物質と一緒に、水中に分散させることによって製造することができる。所望であれば、液体組成物はまた、例えば、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤などの他の非毒性の助剤としての不活性成分を含むことができ、例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミンナトリウムアセタート(triethanolamine sodium acetate)、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミンオレアート(triethanolamine oleate)などがある。こうした組成物はまた、例えば、1つ又は複数の医薬用佐薬などの他の成分を含むことができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、この医薬組成物は、約0.05%〜約99%(重量)の式Iの化合物又はその塩を含んでなる。いくつかのこうした実施形態では、例えば、この医薬組成物は、約0.10%〜約50%(重量)の式Iの化合物又はその塩を含んでなる。
【0069】
いくつかの実施形態では、この医薬組成物は、約0.05%〜約99%(重量)のS−異性体(すなわち、式IIの化合物)又はその塩を含んでなる。いくつかのこうした実施形態では、例えば、この医薬組成物は、約0.10%〜約50%(重量)のS−異性体又はその塩(複数を含む)を含んでなる。
【0070】
いくつかの実施形態では、この医薬組成物は、約0.05%〜約99%(重量)のR−異性体(すなわち、式IIIの化合物)又はその塩を含んでなる。いくつかのこうした実施形態では、例えば、この医薬組成物は、約0.10%〜約50%(重量)のR−異性体又はその塩(複数を含む)を含んでなる。
【0071】
いくつかの実施形態では、その組成物中、少なくとも約50%(重量)の組成物がS−異性体又はその塩(複数を含む)である組成物が調製される。いくつかのそうした実施形態では、その濃度は、約70%(重量)より多いか、約85%(重量)より多いか、約90%(重量)より多いか、約95%(重量)より多いか、約98%(重量)より多いか、約99%(重量)より多いか、あるいは約99.5%(重量)より多い。こうした組成物は、例えば、ひとつの医薬組成物、又は医薬組成物を調製する際に使用される組成物でありうる(例えば、投与前に担体、希釈剤、又は賦形剤中に分散される組成物)。
【0072】
いくつかの実施形態では、その組成物中、少なくとも約50%(重量)の組成物がR−異性体又はその塩(複数を含む)である組成物が調製される。いくつかのそうした実施形態では、その濃度は、約70%(重量)より多いか、約85%(重量)より多いか、約90%(重量)より多いか、約95%(重量)より多いか、約98%(重量)より多いか、約99%(重量)より多いか、あるいは約99.5%(重量)より多い。こうした組成物が、例えば、ひとつの医薬組成物、又は医薬組成物を調製する際に使用される組成物でありうる(例えば、投与前に担体、希釈剤、又は賦形剤中に分散される組成物)。
【0073】
いくつかの実施形態では、この発明の医薬組成物におけるS−異性体(又はその塩(複数を含む))とR−異性体(又はその塩(複数を含む))のモル比は、約1:1であり、すなわち、該組成物はラセミ混合物を含んでなる。
【0074】
いくつかの実施形態では、この発明の医薬組成物における式IのS−異性体(又はその塩(複数を含む))のR−異性体(又はその塩(複数を含む))に対するモル比は、約70:30より大きい。いくつかのこうした実施形態では、この比は、約85:15より大きいか、約90:10より大きいか、約95:5より大きいか、約98:2より大きいか、約99:1より大きいか、あるいは約99.5:0.5より大きい。
【0075】
いくつかの実施形態では、この発明の医薬組成物における式IのR−異性体(又はその塩(複数を含む))のS−異性体(又はその塩(複数を含む))に対するモル比は、約70:30より大きい。いくつかのこうした実施形態では、この比は、約85:15より大きいか、約90:10より大きいか、約95:5より大きいか、約98:2より大きいか、約99:1より大きいか、あるいは約99.5:0.5より大きい。
【0076】
式Iの化合物又はその塩が、障害を処置するための単独療法として投与されるときには、“治療的に有効な量(therapeutically effective amount)”とは、
障害の症状又は他の有害な作用を減少させるか、あるいは完全に軽減させる;障害を治癒させる;障害の進行を後退させるか、完全に停止させるか、又は遅延させる;障害が悪化するリスクを減少させる;あるいは障害が開始するリスクを遅延させるか、又は減少させるのに十分な量である。
【0077】
最適な投与量及び投与頻度は、処置される具体的な状態及びその重篤度;患者の種類(species of the patient);具体的な患者の年齢、大きさ及び体重、食生活、及び全身健康状態;脳/体重比;患者が服用している可能性がある他の薬物;投与経路;製剤;並びに医師、(ヒト患者の関連)、獣医師(非ヒト患者の関連)、及び当技術分野の当業者に周知である他の様々なファクターに左右されるであろう。
【0078】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はその塩の最適な量は、少なくとも1日当たり約10pg/kg(体重)であると想定される。いくつかの実施形態では、最適な量は、1日当たり約100mg/kg(体重)以下である。いくつかの実施形態では、最適な量は、1日当たり、約10pg/kg〜約100mg/kg(体重)である。いくつかの実施形態では、最適な量は、1日当たり、約0.01〜約10mg/kg(体重)である。いくつかの実施形態では、最適な量は、1日当たり、約2〜約20mg/kg(体重)である。いくつかの実施形態では、最適な量は、1日当たり、約2.5〜約8mg/kg(体重)である。更に他の実施形態では、最適な量は、1日当たり、約0.8〜約2.5mg/kg(体重)である。
【0079】
この医薬組成物は、1つ又は複数の単位投与剤形でありうると想定される。従って、この組成物は、適切な量の活性成分を含んでいる単位投与量に分割することができる。この単位投与剤形は、例えば、カプセル、カシェ剤、又は錠剤単独であってもよいし、それとも、それは包装の形の適切な数のこうしたもののいずれかであってもよい。あるいは、この単位投与剤形は、パッケージが別々の量の組成物を含んでいるパッケージ製剤であることができ、例えば、パケット化錠剤、カプセル、又はバイアル若しくはアンプル中の粉末などがある。単位投与剤形は、例えば、薬学の分野でよく知られている種々の方法によって調製することができる。
【0080】
投与量は1日に1回投与してもよいし、あるいは、例えば、1日当たり2〜4回のように分割用量で投与してもよいことが想定される。いくつかの実施形態では、投与量は経口投与剤形の形で一般に認められている製薬プラクティスを用いて、単位投与につき約5〜約250mgを1つ又は複数の不活性又は活性成分と混和することによって、従来行なわれているように製剤化される。
【0081】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はその塩は、1つ又は複数の他の医薬活性化合物と、共に(concurrently)、同時に(simultaneously)、順次、又は別々に投与する。いくつかのこうした実施形態では、他の医薬活性化合物(複数を含む)は、以下から選択される:
【0082】
(i)抗うつ剤、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、1つ又は複数のアゴメラチン、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エルザソナン、エスシタロプラム、フルボキサミン、フルオキセチン、ゲピロン、イミプラミン、イプサピロン、マプロチリン、ミルタザピン(mirtazepine)、ノルトリプチリン、ネファゾドン、パロキセチン、フェネルジン、プロトリプチリン、ラメルテオン、レボキセチン、ロバルゾタン、セレギリン、セルトラリン、シブトラミン、チオニソキセチン、トラニルシプロミン(tranylcypromaine)、トラゾドン、トリミプラミン、ベンラファキシン並びにその同等物及び医薬的に活性な異性体(複数を含む)及び代謝物(複数を含む)。
【0083】
(ii)抗精神病薬、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、1つ又は複数のクエチアピン及びその医薬的に活性な異性体(複数を含む)及び代謝物(複数を含む);並びにアミスルプリド、アリピプラゾール、アセナピン、ベンジソキシジル(benzisoxidil)、ビフェプルノックス、カルバマゼピン、クロザピン、クロルプロマジン、デベンザピン、ジベンザピン、ジバルプロエクス(divalproex)、ドロペリドール、デュロキセチン、エスゾピクロン、フルフェナジン、ハロペリドール、イロペリドン、ラモトリジン、リチウム、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、オランザピン、パリペリドン、ペルラピン、ペルフェナジン、フェノチアジン、フェニルブチルピペリジン、ピモジド、プロクロルペラジン、リスペリドン、セルチンドール、スルピリド、スプロクロン、スリクロン、チオリダジン、チオチキセン、トリフルオペラジン、トリメトジン、バルプロエート、バルプロ酸、ゾピクロン、ゾテピン、ジプラシドン、及びその同等物。
【0084】
(iii)抗不安剤、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、1つ又は複数のアルネスピロン、アザピロン系、ベンゾジアゼピン系、バルビツール酸系、例えばアジナゾラム、アルプラゾラム、バレゼパム、ベンタゼパム、ブロマゼパム、ブロチゾラム、ブスピロン、クロナゼパム、クロラゼペート、クロルジアゼポキシド、シプラゼパム、ジアゼパム、ジフェンヒドラミン、エスタゾラム、フェノバム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、フォサゼパム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、メプロバメート、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、レクラゼパム、スリクロン、トラカゾレート、トレピパム、テマゼパム、トリアゾラム、ウルダゼパム、ゾラゼパム、並びにそれらの同等物及び医薬的に活性な異性体(複数を含む)及び代謝物(複数を含む)。
【0085】
(iv)抗痙攣剤、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、1つ又は複数のカルバマゼピン、オキスカルバゼピン、バルプロエート、ラモトロギン(lamotrogine)、ガバペンチン、トピラマート(topiramate)、フェニトイン、エトスクシミド(ethoxuximide)、並びにそれらの同等物及び医薬的に活性な異性体(複数を含む)及び代謝物(複数を含む)。
【0086】
(v)アルツハイマー治療薬、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、ドネペジル、ガランタミン、メマンチン、リバスチグミン、タクリン、並びにそれらの同等物及び医薬的に活性な異性体(複数を含む)及び代謝物(複数を含む)。
【0087】
(vi)パーキンソン病治療薬及び錐体外路系症状の処置のための薬剤、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、1つ又は複数のレボドパ、カルビドパ、アマンタジン、プラミペキソール、ロピニロール、ペルゴリド、カベルゴリン、アポモルフィン(apomorphine)、ブロモクリプチン、MAOB阻害剤(例えば、セレジン及びラサギリン(rasagiline))、COMT阻害剤(例えば、エンタカポン及びトルカポン)、α−2阻害剤、抗コリン作働性薬(例えば、ベンズトロピン(benztropine)、ビペリデン、オルフェナドリン(orphenadrine)、プロシクリジン、及びトリヘキシフェニジル)、ドーパミン再取り込み阻害剤、NMDAアンタゴニスト、ニコチンアゴニスト、ドーパミンアゴニスト、及び神経型一酸化窒素合成酵素阻害剤、並びにそれらの同等物及び医薬的に活性な異性体(複数を含む)及び代謝物(複数を含む)。
【0088】
(vii)脳卒中治療薬、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、1つ又は複数のアブシキシマブ、アクティベース(activase)、ジスフェントンナトリウム(disufenton sodium)、シチコリン、クロベネチン、デスモテプラーゼ、レピノタン、トラキソプロジル、並びにそれらの同等物及び医薬的に活性な異性体(複数を含む)及び代謝物(複数を含む)。
【0089】
(viii)尿失禁治療薬、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、1つ又は複数のダラフェナシン、ジサイクロミン(dicyclomine)、フラボキサート(falvoxate)、イミプラミン、デシプラミン、オキシブチニン、プロピベリン、プロパンテリン(propanthedine)、ロバルゾタン、ソリフェナシン、アルフゾシン(alfazosin)、ドキサゾシン、テラゾシン、トルテロジン、並びにそれらの同等物及び医薬的に活性な異性体(複数を含む)及び代謝物(複数を含む)。
【0090】
(ix)不眠症治療薬、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、1つ又は複数のアロバルビタール、アロニミド、アモバルビタール、ベンゾクタミン、ブタバルビタール、カプリド、クロラール(chloral)、クロペリドン、クロレタート(clorethate)、デクスクラモール、エスタゾラム、エスゾピクロン(eszopicline)、エスクロルビノール(ethchlorvynol)、エトミデート(etomidate)、フルラゼパム、グルテチミド、ハラゼパム、ヒドロキシジン、メクロクアロン(mecloqualone)、メラトニン、メフォバルビタール、メタクアロン(methaqualone)、ミダフルル(midaflur)、ミダゾラム、ニソバマート(nisobamate)、パゴクロン、ペントバルビタール、ペルラピン、フェノバルビタール、プロポフォール(propofol)、クアゼパム、ラメルテオン、ロレタミド、スプロクロン、テマゼパム、トリアゾラム、トリクロホス(triclofos)、セコバルビタール、ザレプロン、ゾルピデム、ゾピクロン、並びにそれらの同等物及び医薬的に活性な異性体(複数を含む)及び代謝物(複数を含む)。
【0091】
(x)気分安定剤、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、1つ又は複数のカルバマゼピン、ジバルプロエクス、ガバペンチン、ラモトリジン、リチウム、オランザピン、クエチアピン、バルプロアート(valproate)、バルプロ酸、ベラパミル、並びにそれらの同等物及び医薬的に活性な異性体(複数を含む)及び代謝物(複数を含む)。
【0092】
(xi)肥満症を処置するための薬剤、例えば、オルリスタット(orlistat)、シブトラミン、リモナバン(rimonabant)など、並びにそれらの同等物及び医薬的に活性な異性体(複数を含む)及び代謝物(複数を含む)。
【0093】
(xii)ADHDを処置するための薬剤、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、1つ又は複数のアンフェタミン、メタンフェタミン、デキストロアンフェタミン、アトモキセチン、メチルフェニデート、デクスメチルフェニデート(dexmethylphenidate)、モダフィニル、並びにそれらの同等物及び医薬的に活性な異性体(複数を含む)及び代謝物(複数を含む)。
【0094】
(xiii)薬物乱用障害、依存、及び離脱を処置するのに使用される薬剤、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、1つ又は複数のニコチン置換療法(例えば、ガム、パッチ、及び鼻腔スプレー);ニコチン性受容体アゴニスト、部分アゴニスト、及びアンタゴニスト、(例えば、バレニクリン);アカンプロセート(acomprosate);ブプロピオン;クロニジン;ジスルフィラム;メタドン(methadone);ナロキソン;ナルトレキソン;並びにそれらの同等物及び医薬的に活性な異性体(複数を含む)及び代謝物(複数を含む)。
【0095】
いくつかの実施形態では、他の医薬活性成分(複数を含む)は、非定型抗精神病薬を含む。非定型抗精神病薬には、例えば、オランザピン(ジプレキサ(Zyprexa)という商品名で販売されている)、アリピプラゾール(エビリファイ(Abilify)という商品名で販売されている)、リスペリドン(リスパダール(Risperdal)という商品名で販売されている)、クエチアピン(セロクエル(Seroquel)という商品名で販売されている)、クロザピン(クロザリル(Clozaril)という商品名で販売されている)、ジプラシドン(ジオドン(Geodon)という商品名で販売されている)、及びオランザピン/フルオキセチン(シンビアックス(Symbyax)という商品名で販売されている)が含まれる。
【0096】
いくつかの実施形態では、他の医薬活性成分は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(又は“セロトニン特異的再取り込み阻害薬(serotonin-specific reuptake inhibitor)”又はSSRI”)を含む。こうした薬剤には、例えば、フルオキセチン(例えば、プロザック(Prozac)という商品名で販売されている)、パロキセチン(例えば、パキシル(Paxil)という商品名で販売されている)、シタロプラム(例えば、セレクサ(Celexa)という商品名で販売されている)、ダポキセチン(dapoxetine)、メセンブリン、エスシタロプラム(excitalopram)(例えば、レクサプロ(Lexapro)という商品名で販売されている)、フルボキサミン(例えば、ルボックス(Luvox)という商品名で販売されている)、ジメリジン(例えば、ゼルミド(Zelmid)という商品名で販売されている)、及びセルトラリン(例えば、ゾロフト(Zoloft)という商品名で販売されている)が含まれる。
【0097】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はその塩は、放射線療法との併用療法の一部として投与される。
【0098】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はその塩は、化学療法との併用療法として投与される。こうした化学療法には、1つ又は複数の下記のカテゴリーの抗腫瘍剤が含まれうる:
【0099】
(i)抗増殖剤/抗新生物剤、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、アルキル化剤、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、テモゾロミド(temozolamide)、及びニトロソウレア類;代謝拮抗薬、例えば、ゲムシタビン及び抗葉酸剤(例えば、フルオロピリミジン類(5−フルオロウラシルやテガフールなど)、ラルチトレキセド、メトトレキサート(methotrexate)、シトシンアラビノシド、及びヒドロキシウレア);抗腫瘍性抗生物質、例えば、アントラサイクリン系(例えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシンC、ダクチノマイシン、及びミトラマイシン);抗有糸分裂薬、例えば、ビンカアルカロイド系、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、及びビノレルビン、タキソイド類(例えば、タキソールおよびタキソテール(taxotere))、及びポロキナーゼ阻害剤;及びトポイソメラーゼ阻害剤、例えば、エピポドフィロトキシン類(例えば、エトポシド及びテニポシド)、アムサクリン、トポテカン、及びカンプトテシン。
【0100】
(ii)細胞増殖抑制剤、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン(droloxifen)、及びヨードキシフェン);抗アンドロゲン剤、例えば、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、及び酢酸シプロテロン;LHRHアンタゴニスト;LHRHアゴニスト、例えば、ゴセレリン、リュープロレリン、及びブセレリン;プロゲストゲン、例えば、酢酸メゲストロール;アロマターゼ阻害剤、例えば、アナストロゾール、レトロゾール、ボラゾール、及びエキセメスタン;及び5α−レダクターゼ阻害剤、例えば、フィナステリド。
【0101】
(iii)抗浸潤剤(Anti-invasion agents)、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、c−Srcキナーゼファミリー阻害剤、例えば、4−(6−クロロ−2,3−メチレンジオキシアニリノ)−7−[2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エトキシ]−5−テトラヒドロピラン−4−イルオキシキナゾリン(AZD0530,国際特許出願公開WO 01/94341)、N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−{6−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル]−2−メチルピリミジン−4−イルアミノ}チアゾール−5−カルボキサミド(ダサチニブ,BMS−354825,J. Med. Chem., vol. 47, pp. 6658-6661 (2004))、及びボスチニブ(SKI−606);メタロプロテイナーゼ阻害剤、例えば、マリマスタット;ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター受容体作用阻害剤;及びヘパラナーゼに対する抗体。
【0102】
(iv)増殖因子作用阻害剤、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、増殖因子抗体;増殖因子受容体抗体、例えば、抗erbB2抗体 トラスツズマブ(ハーセプチン(HerceptinTM)、抗EGFR抗体 パニツムマブ、抗erbB1抗体 セツキシマブ(エルビタックス(Erbitux),C225)、及びStern et al., Critical reviews in oncology/haematology, vol. 54, pp. 11-29 (2005)によって開示されている増殖因子抗体又は増殖因子受容体抗体;チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、上皮増殖因子ファミリー阻害剤(例えば、EGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害剤、例えば、N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(ゲフィチニブ,ZD1839)、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミン(エルロチニブ、OSI−774)、及び6−アクリルアミド−N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−(3−モルホリノプロポキシ)−キナゾリン−4−アミン(CI 1033)、及びerbB2チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、ラパチニブ);肝細胞増殖因子ファミリー阻害剤;インスリン増殖因子ファミリー阻害剤;血小板由来増殖因子ファミリー阻害剤、例えば、イマチニブ及びニロチニブ(AMN107);セリン/トレオニンキナーゼ阻害剤、例えば、Ras/Rafシグナル伝達阻害剤(例えば、ソラフェニブ(BAY 43−9006)のようなファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、チピファルニブ(R115777)、及びロナファルニブ(SCH66336));MEK及び/又はAKTキナーゼを介する細胞シグナル伝達阻害剤;c−kit阻害剤;ablキナーゼ阻害剤、PI3キナーゼ阻害剤;Plt3キナーゼ阻害剤;CSF−1Rキナーゼ阻害剤;IGF受容体(インスリン様増殖因子)キナーゼ阻害剤);オーロラキナーゼ阻害剤、例えば、AZD1152、PH739358、VX−680、MLN8054、R763、MP235、MP529、VX−528、及びAX39459;及びサイクリン依存性キナーゼ阻害剤、例えば、CDK2及びCDK4阻害剤。
【0103】
(v)抗血管新生剤、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、血管内皮増殖因子の作用を阻害する薬剤、例えば、抗血管内皮細胞増殖因子抗体 ベバシズマブ(アバスチン(AvastinTM))及びVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、バンデタニブ(ZD6474)、バタラニブ(PTK787)、スニチニブ(SU11248)、アキシチニブ(AG−013736)、パゾパニブ(GW 786034)、及び4−(4−フルオロ−2−メチルインドール−5−イルオキシ)−6−メトキシ−7−(3−ピロリジン−1−イルプロポキシ)キナゾリン(AZD2171,国際特許出願公開WO 00/47212中の実施例240);国際特許出願公開WO 97/22596、WO 97/30035、WO 97/32856、及びWO 98/13354中に開示されている化合物;及び他のメカニズムによって作用する化合物、例えば、リノミド、インテグリンαvβ3作用の阻害剤、及びアンギオスタチン。
【0104】
(vi)血管損傷剤、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、コンブレタスタチンA4、及び国際特許出願公開WO 99/02166、WO 00/40529、WO 00/41669、WO 01/92224、WO 02/04434、及びWO 02/08213中に開示されている化合物。
【0105】
(vii)エンドセリン受容体アンタゴニスト、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、ジボテンタン(ZD4054)及びアトラセンタン。
【0106】
(viii)アンチセンス療法、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、上記に列挙した標的を対象とするもの、例えば、ISIS 2503(抗rasアンチセンス)。
【0107】
(ix)遺伝子療法アプローチ、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、異常なp53、BRCA1又はBRCA2などの異常な遺伝子を置き換える手法;GDEPT(遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法)手法、例えば、シトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼ、又は細菌性ニトロレダクターゼ酵素を用いるもの:及び多剤耐性遺伝子療法などの化学療法又は放射線療法に対する患者の耐容性を増大させる手法。
【0108】
(x)免疫療法アプローチ、これには以下のものを含むことを意図している:例えば、患者腫瘍細胞の免疫原性を増大させるエクスビボ及びインビボ手法、例えば、サイトカイン(例えば、インターロイキン2、インターロイキン4、又は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)によるトランスフェクション;T細胞アネルギーを減少させる手法;トランスフェクトされた免疫細胞を用いる手法、例えば、サイトカインによってトランスフェクトされた樹状細胞;サイトカインによってトランスフェクトされた腫瘍細胞株を用いる手法;及び抗イディオタイプ抗体を用いる手法。
【0109】
式Iの化合物又はその塩は、全身麻酔又は監視下鎮静管理の間に使用する鎮痛剤としても有用でありうることもまた意図されている。種々の特性を有する薬剤と組み合わせて、しばしば麻酔状態を維持するのに必要な作用のバランス(例えば、記憶喪失(amnesia)、無痛覚症、筋弛緩、及び鎮静)を達成するのに使用される。こうした組み合わせには、例えば、1つ又は複数の吸入麻酔薬、催眠薬、抗不安薬、神経筋遮断薬、及び/又はオピオイドが含まれうる。
【0110】
組み合わせ療法が使用されるいくつかの実施形態では、組み合わせるとき、式Iの化合物又はその塩の量及び他の医薬的に活性な薬剤(複数を含む)の量は、動物患者における標的障害を処置するのに治療的に有効である。このような状況下では、この組み合わせの量は、組み合わせるときにもしそれらが、症状又は障害の他の有害な作用を減少させるか、あるいは完全に軽減させ;障害を治癒させ;障害の進行を食い止め、完全に停止させるか、あるいは遅らせ;障害が悪化するリスクを減少させ;又は障害の発症のリスクを遅らせるか、若しくは減少させるのに十分である場合には、“治療的に有効な量(therapeutically effective amount)”である。通例、こうした量は、例えば、式Iの化合物若しくはその塩のこの特許に述べられている投与量範囲、及び他の医薬的に活性な化合物(複数を含む)の、承認されているか、あるいはそうでない場合には公表されている投与量範囲(複数を含む)から出発することによって当技術分野の当業者によって決定されうる。
【0111】
組み合わせ療法で使用されるときには、式Iの化合物又はその塩及び他の活性成分は、単一の組成物、完全に分離した組成物、又はその組み合わせの形で投与することができることを意図している。また、この活性成分は、共に、同時に、順次、又は分離して投与することができることを意図している。この組み合わせ療法の具体的な組成物(複数を含む)及び投与頻度(複数を含む)は、例えば、投与ルート、処置される状態、患者の種類、単一の組成物に組み合わせたときの活性成分の間の可能性のある相互作用、それらを動物患者に投与するときの活性成分間での相互作用、及び医師(ヒト患者の場合)、獣医師(非ヒト患者の場合)、及び当技術分野における他の当業者に知られている他の種々のファクターを含む、様々なファクターに左右されるであろう。
【0112】
この発明はまた、1つには、式Iの化合物又はその塩を含んでなるキットを対象としている。いくつかの実施形態では、このキットは更に、例えば、(a)式Iの化合物又はその塩を投与するための器具;(b)式Iの化合物又はその塩を投与するための使用説明書;(c)担体、希釈剤、又は賦形剤(例えば、再懸濁剤);及び(d)追加の活性成分などの、1つ又は複数の追加のコンポーネントを含んでなり、こうしたものは、式Iの化合物又はその塩と同一及び/又は異なる投与形態でありうる。いくつかの実施形態では(特にキットが式Iの化合物又はその塩を動物患者に投与する際に使用することを意図しているとき)、この塩は製薬学的に許容される塩である。
【発明を実施するための形態】
【0113】
実施例
次の実施例は、単に本発明の実施形態を説明しているものであり、いかなることがあっても以下のこの開示に制限されるものではない。
【0114】
次の実施例中のいくつかの例では、化合物の構造は化合物名に連動している。一般に、こうした名前は、ISIS/Draw又はChemDraw 9.0.7内のAutoNom 2000を用いての構造から作成されている。AutoNom(Automatic Nomenclature)及びChemDrawは、ボタンを押すと、体系的なIUPAC(国際純正応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry))化学名が、構造が引きだされるように指定されるプログラムを含んでいる。但し、いくつかの例では、この化学名はマニュアルで修正されて、IUPAC命名規約に適合することを確実にする。化合物の構造と名前の間に相違がある場合には、その化合物は、別途文脈で指示しない限り構造によって特定化されるべきである。
【0115】
化合物製造
下記の実施例1〜5は、式Iの化合物又はその塩及びこうした化合物を製造する中間体の製造を説明している。有機合成の分野の当業者であれば、こうした実施例だけを、あるいは当技術分野の一般的知識と組み合わせて読んだ後、所望される方法を適応させ、利用することができることが当然であると考えられる。当技術分野の一般的知識には、例えば、以下が含まれる:
【0116】
A)保護基を用いる従来から行なわれている手順及び適切な保護基の例については、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis, T.W. Green, P.G.M. Wuts, Wiley-Interscience, New York (1999)中に記載されている。
【0117】
B)様々な有機合成反応を論じているレファレンスには、例えば、Advanced Organic Chemistry, March 4th ed, McGraw Hill (1992);及びOrganic Synthesis, Smith, McGraw Hill, (1994)などの有機合成のテキストブックが含まれる。こうしたものにはまた、例えば、R.C. Larock, Comprehensive Organic Transformations, 2nd ed., Wiley-VCH: New York (1999); F.A. Carey; R.J. Sundberg, Advanced Organic Chemistry, 2nd ed., Plenum Press: New York (1984); L.S. Hegedus, Transition Metals in the Synthesis of Complex Organic Molecules, 2nd ed., University Science Books: Mill Valley, CA (1994); L. A. Paquette, Ed., The Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley: New York (1994); A.R. Katritzky, O. Meth-Cohn, CW. Rees, Eds., Comprehensive Organic Functional Group Transformations, Pergamon Press: Oxford, UK (1995); G. Wilkinson; F.G A. Stone; E.W. Abel, Eds., Comprehensive Organometallic Chemistry, Pergamon Press: Oxford, UK ( 1982); B.M. Trost; I. Fleming, Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press: Oxford, UK (1991); A.R. Katritzky, CW. Rees Eds., Comprehensive Heterocyclic Chemistry, Pergamon Press: Oxford, UK (1984); A.R. Katritzky; CW. Rees, E.F.V. Scriven, Eds., Comprehensive Heterocyclic Chemistry II, Pergamon Press: Oxford, UK (1996); C. Hansen; P.G. Sammes; J.B. Taylor, Eds., Comprehensive Medicinal Chemistry: Pergamon Press: Oxford, UK (1990)が含まれる。これに加えて、合成方法論及び関連トピックについての繰り返し見られるレビューには、下記が含まれる: Organic Reactions, John Wiley: New York; Organic Syntheses; John Wiley: New York; The Total Synthesis of Natural Products, John Wiley: New York; The Organic Chemistry of Drug Synthesis, John Wiley: New York; Annual Reports in Organic Synthesis, Academic Press: San Diego CA; 及び Methoden der Organischen Chemie (Houben-Weyl), Thieme: Stuttgart, Germany。
【0118】
C)ヘテロ環化学を論じているレファレンスには、例えば、一例として、Heterocyclic Chemistry, J.A. Joule, K. Mills, G.F. Smith, 3rd ed., Cheapman and Hall, p. 189-225 (1995); 及び Heterocyclic Chemistry, T.L. Gilchrist, 2nd ed. Longman Scientific and Technical, p. 248-282 (1992)が含まれる。
【0119】
D)CAS Online 又は SciFinderを用いてサーチすることができるケミカル・アブストラクトを含む合成変換のデータベース;及びSpotFireを用いてサーチすることができるHandbuch der Organischen Chemie (Beilstein)。
【0120】
下記の化合物製造例中の出発物質はすべて、商業上入手可能であるか、あるいは文献中に記載されている。空気感受性及び湿気感受性液体及び溶液は、シリンジ又はカニューレを介して移され、そしてゴム隔膜を通して反応容器に導入する。商業グレードの試薬及び溶媒が更なる精製をせずに使用された。用語“減圧下で濃縮(concentration under reduced pressure)”及び“減圧下で蒸発させた(evaporated under reduce pressure)”又は“真空中で濃縮した(concentrated in vacuo)”とは、およそ15mmHgでビュッヒロータリーエバポレーター(Buchi rotary evaporator)を使用したことを意味する。
【0121】
マイクロ波加熱は、推奨されるマイクロ波管中、指示された温度でCEM Discover LabMate又はBiotage Initiator Systemで行なわれた。
【0122】
カラムクロマトグラフィー(フラッシュクロマトグラフィー)が、テキスト中
で述べられている場合には、32〜63ミクロン、60Å、シリカゲル前充填カートリッジ(バイオタージ(Biotage)又はイスコ(ISCO)システム)、又はガラスカラム及び大気圧を用いて行なわれた。分取HPLC又はLCMS(高pH又は低pH)は、Waters X-bridge Prep C18 OBD(カラムサイズ:30×50mm;粒子サイズ:5μm;移動相A:水 10mM NH4HCO3(pH10)又は0.1%TFAを含む水;及び移動相B:MeCN)を用いて行なわれた。
【0123】
質量分析スペクトルは、陽イオン又は陰イオンモードで作動するエレクトロスプレーイオン源(ES)を備えたシングル四重極型質量分析計(Single-Quad mass spectrometers)、あるいは陽イオン及び陰イオンモードで作動する大気圧化学イオン化(APCI)イオン源を用いて設定された三連四重極質量分析計(Triple-Quad mass spectrometer)を用いるレコーダーであった。この質量分析計は、スキャン時間 0.3秒、m/z 100〜1000でスキャンした。
【0124】
1H NMRスペクトルは、300MHz、400MHzで、Varian NMRスペクトルメータで、あるいは500MHzでBruker Avance 500 NMRスペクトルメータで記録した。
【0125】
別途明記しない限り、HRMS分析は、Zorbax C-18カラム[カラムサイズ:30×4.6mm;粒子サイズ:1.8μm,グラジエント:5〜95% B(4.5分);流速:3.5mL/分;温度:70℃,溶離剤A:0.05%TFA(H2O中);及び溶離剤B:0.05%TFA(CH3CN中)]を用いて、アジレントMSD−TOF質量分析計(Agilent MSD-TOF mass spectrometer)及びアジレント1100ダイオードアレイディテクター(Agilent 1100 Diode Array Detector)付きアジレント1100 HPLC(Agilent 1100 HPLC)で行なわれた。
【0126】
実施例1
3,5−ジフルオロ−4−ホルミル安息香酸の製造
【化7】

2−メチルテトラヒドロフラン(4.35L)中の3,5−ジフルオロ安息香酸(291g,1.84mol)の溶液に、室温でTMEDA(604mL,4.03mol)を加えた。この結果生じた溶液を−78℃に冷却した。その後、n−BuLi(2.5M(ヘキサン中))(1.77L,4.43mol)滴下し、その間この混合物の温度を−65℃未満のままにした。次いでこの混合物を−78℃で1.5時間撹拌した。無水MeOCHO(239mL,3.88mol)を、温度を−65℃未満に維持する速さで滴下した。この結果生じた溶液を室温に暖め、次いで18時間撹拌しながら室温を維持した。次いでこの混合物を0〜5℃に冷却し、そして過剰の塩基を6M HCl水溶液(2.2L,13.2mol)でクエンチした。その後相分離し、そして水層を2−メチルテトラヒドロフランで3回(3×500mL)抽出した。有機相を集め、これを飽和塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮した。残留物を還流下で酢酸エチル(350mL)中に溶解し、そして室温に冷却した。次いでヘキサン(480mL)を加え、その結果生じた混合物を更に−15℃に冷却した。固形物をろ過によって集め、ヘキサンでリンスし、そして機械的真空下で乾燥すると、表題化合物が固形物として生じた(122g,35%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.63-7.70 (m, 2 H), 10.23 (s, 1 H); MS m/z 187.17 [M+H]+ (ESI)。
【0127】
実施例2
3,5−ジフルオロ−4−ホルミル−N−メチルベンズアミドの製造
【化8】

ジクロロメタン(1.5L)及びN,N−ジメチルホルムアミド(2.0g,27mmol)中の3,5−ジフルオロ−4−ホルミル安息香酸(120g,645mmol)の氷冷溶液に、オキサリルクロリド(90g,709mmol)を、この混合物が内部温度10℃を超えない速さで滴下した。その結果生じた混合物を0.5時間、同じ温度で撹拌し、室温に暖め、そして更に1.5時間撹拌した。次いでこの溶液を0℃に冷却し、そしてメチルアミン水溶液(40%,168mL,1.94mol)を、この混合物が内部温度7℃を超えない速さで滴下した。その後、この混合物をHCl水溶液(2M,335mL,670mmol)でクエンチし、そして室温に暖めた。有機層を分離し、塩水(500mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮した。この結果生じた残留固形物をMTBE(500mL)中に入れ、そしてその結果生じた混合物を0.5時間加熱・還流し、室温に冷却し、そして18時間撹拌した。その後、この混合物を0℃に冷却し、ろ過し、ペンタンでリンスし、そして真空下で乾燥すると、表題化合物が固形物として生じた(103g,80%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ ppm 3.03 (d, J = 4.86 Hz, 3 H), 6.37 (br s, 1 H), 7.36-7.42 (m, 2 H), 10.36 (s, 1 H); MS m/z 200.06 [M+H]+ (ESI)。
【0128】
実施例3
(S)−メチル 2−((2−(2,6−ジフルオロ−4−(メチルカルバモイル)フェニル)−5−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)メチル)モルホリン−4−カルボキシラートの製造
【化9】

【0129】
パートA
(S)−tert−ブチル 2−((1,3−ジオキソイソインドリン−2−イル)メチル)モルホリン−4−カルボキシラートの製造
【化10】

(R)−tert−ブチル 2−(ヒドロキシメチル)モルホリン−4−カルボキシラート(750g,3.45mol)に、トリエチルアミン(577mL,4.14mol)及びトルエン(6000mL)を加えた混合物を、N2下、3℃で撹拌した。2.5時間にわたって、温度15℃未満に維持してメタンスルホニルクロリド(321mL,4.14mol)を加えた。添加が完了したとき、温度を35℃に上昇させ、そして水(2000mL)を加えた。この相を10分間にわたって混合させ、次いで静置させた。水相を除去し、そして水(1500mL)を加えた。この相を再び10分間にわたって混合し、次いで水相を除去した。トルエン(4000mL)を容器に加え、そして2000mLの蒸留液を50℃、減圧下で除去した。次いで温度を20℃に下降させ、フタルイミドカリウム(864g,4.66mol)及びテトラブチルアンモニウムブロミド(111g,0.35mol)を加えた。この混合物を108℃で4時間撹拌し、次いで20℃に冷却した。水(1000mL)及び5%NaOH水溶液(2500mL)を加えた。その結果生じた混合物を10分間撹拌した。次いでこの相を静置し、そして水相を除去した。水(2000mL)を加え、そしてその結果生じた混合物を更に10分間撹拌した。次いで水相を除去した。総量7Lの蒸留液を60〜85℃の範囲の温度で、減圧下で除去した。この容器を65℃に冷却し、そしてヘプタン(3000mL)を加えた。温度を更に25℃に降下させ、そしてこの溶液を表題化合物の結晶試料を加えシーディングした。この混合物を結晶化が順調に進行するまで1時間撹拌した。ヘプタン(2500mL)を加えた後、この混合物を10℃に冷却し、次いで更に24時間撹拌した。その後、この混合物をろ過し、そして固形物をヘプタン中の10%トルエン冷却溶液800mLで洗浄し、そして45℃で16時間、機械的真空オーブンのもとで乾燥すると、(S)−tert−ブチル 2−((1,3−ジオキソイソインドリン−2−イル)メチル)モルホリン−4−カルボキシラート(614g,51%)が固形物として生じた。
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 1.38 (s, 9 H), 2.69 (br. s., 1 H), 2.92 (br. s., 1 H), 3.37 (td, J=11.51, 2.76 Hz, 1 H), 3.60 (dd, J=13.75, 4.53 Hz, 1 H), 3.63-4.01 (m, 5 H), 7.66 (dd, J=5.32, 3.03 Hz, 2 H), 7.79 (dd, J=5.04, 3.07 Hz, 2 H)。
【0130】
パートB
(S)−tert−ブチル 2−((2−(2,6−ジフルオロ−4−(メチルカルバモイル)フェニル)−5−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)メチル)モルホリン−4−カルボキシラートの製造
【化11】

(S)−tert−ブチル 2−((1,3−ジオキソイソインドリン−2−イル)メチル)モルホリン−4−カルボキシラート(50g,144.35mmol)、エタノールアミン(43.7mL,721.76mmol)、及び2−メチルテトラヒドロフラン(250mL)の混合物を、N2下で、40℃で6時間撹拌した。その後、温度を25℃に降下させた。次いで撹拌を更に16時間継続した。水(250mL)中の5%NaOH溶液を、引き続いて2−メチルテトラヒドロフラン(200mL)を加えた。この混合物を10分間撹拌し、次いで静置した。水相を除去し、2−メチルテトラヒドロフラン(250mL)で抽出した。有機物を集め、これを水(100mL)と塩水(100mL)の混合物で洗浄した。その結果生じた混合物を減圧下で濃縮し、次いでジメチルスルホキシド(110mL)、炭酸カルシウム(12.51g,125.03mmol)、及び4−フルオロ−3−ニトロトルエン(15.37mL,125.03mmol)を加えた。この混合物を110℃で20時間撹拌後、これを47℃に冷却し、そして亜ジチオン酸ナトリウム(65.3g,375.09mmol)、3,5−ジフルオロ−4−ホルミル−N−メチルベンズアミド(24.9g,125.03mmol)、及びエタノール(330mL)を加えた。次いでこの混合物を80℃で26時間撹拌し、そして35℃に冷却した。この混合物を珪藻土ろ過し、そしてエタノール(50mL)で2回洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮し、そしてこの結果生じた溶液を反応器中に戻した。EtOAc(250mL)と水(150mL)を加え、そしてこの混合物を5分間撹拌した。次いでこの相を分離させた。この水相をEtOAc(200mL)で抽出し、そして有機相を集め、これを水(75mL)と塩水(75mL)の混合物で洗浄した。有機相を丸底フラスコに移し、そして減圧下で濃縮すると泡状物が生じ、次に45℃で、機械的真空下で乾燥すると表題化合物が生じた(58.4g,117mmol,81%)。
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 1.39 (s, 9 H), 2.38 (t, J=11.59 Hz, 1 H), 2.50-2.57 (m, 3 H), 2.72 (d, J=10.01 Hz, 1 H), 3.00 (d, J=4.65 Hz, 3 H), 3.23 (br. s., 1 H), 3.49-3.82 (m, 4 H), 3.82-4.15 (m, 2 H), 7.23 (d, J=8.20 Hz, 1 H), 7.36-7.49 (m, 3 H), 7.63 (s, 1 H), 8.96-9.06 (m, 1 H)。
【0131】
パートC
(S)−メチル 2−((2−(2,6−ジフルオロ−4−(メチルカルバモイル)フェニル)−5−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)メチル)モルホリン−4−カルボキシラートの製造
【化12】

(S)−tert−ブチル 2−((2−(2,6−ジフルオロ−4−(メチルカルバモイル)フェニル)−5−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)メチル)モルホリン−4−カルボキシラート(58.3g,116.5mmol)とMeOH(65mL)の混合物を、HCl(4.0N水溶液)(300mL,1200mmol)を加えながら、20℃で時間撹拌した。その結果生じた混合物を6時間撹拌し、次いでジクロロメタン(300mL)を加えた。この相を5分間にわたって混合し、次いで静置した。有機相を除去し、そしてジクロロメタン(600mL)を加えた。この混合物を、25℃未満の温度を維持しながら、25%NaOH水溶液(300mL)を20分にわたって加えて、15℃で撹拌した。この相を静置し、そして水相を除去し、ジクロロメタン(300mL)で抽出した。有機相を集め、これを減圧下で750mLの容量まで濃縮した。その結果生じた混合物を5℃に冷却し、そしてジイソプロピルエチルアミン(20.3mL,116.38mmol)を加えた。次に、クロロギ酸メチル(9.9mL,128.02mmol)を、温度を15℃未満に維持しながら10分間にわたって加えた。20分後、この混合物を水(200mL)を加えることによってクエンチした。この混合物を20℃で撹拌した。次いでこの相を静置し、そして水層を除去した。有機相を減圧下で濃縮し、そしてMeOH(400mL)を加えた。この混合物を、水(500mL)を加えながら、濁った混合物が形成されるまで40℃で撹拌した。この混合物を60℃に加熱し、次いで43℃に冷却し、その時点で表題生成物に起源する種晶を加えた。次いで温度を36℃に降下させ、そしてこの混合物を16時間撹拌した。次いで温度を20℃に降下させ、そして撹拌を更に16時間継続した。固形物をろ過によって回収し、MeOH/水の1:9溶液(50mL)で洗浄し、そして45℃で16時間、機械的真空で乾燥すると、(S)−メチル 2−((2−(2,6−ジフルオロ−4−(メチルカルバモイル)フェニル)−5−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)メチル)モルホリン−4−カルボキシラート(33.9g,63%)が生じた。
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 2.47 (br. s., 1 H), 2.55 (s, 3 H), 2.79 (br. s., 1 H), 3.02 (d, J=4.65 Hz, 3 H), 3.25 (br. s., 1 H), 3.53-3.86 (m,6 H), 3.87-4.15 (m, 3 H), 7.24 (d, J=8.12 Hz, 1 H), 7.39 (d, J=8.20 Hz, 1 H), 7.46 (d,
J=8.51 Hz, 2 H), 7.65 (s, 1 H), 8.73 (br. s., 1 H)。
【0132】
この生成物を高pHグラジエント法(移動相:0〜95% B;A:5%CH3CN中の10mM NH4OAcを含むH2O,B:CH3CN;9分(ランタイム);X-Bridge C18;カラムサイズ:3.00×100mm;及び粒子サイズ:3.5μm)を用いる分析HPLC MSで分析した。Rt=4.03分。MS(ESI)m/z 計算値(C2424244)459.48[M+H]+
実測値459.2。
【0133】
実施例4
(R)−tert−ブチル 2−(アミノメチル)モルホリン−4−カルボキシラートの製造
【化13】

【0134】
パートA
(S)−tert−ブチル 2−((メチルスルホニルオキシ)メチル)モルホリン−4−カルボキシラートの製造
【化14】

メタンスルホニルクロリド(12mL,0.15mol)を、0℃でCH2Cl2(172mL)及びトリエチルアミン(23.4mL,0.17mol)中の(S)−tert−ブチル 2−(ヒドロキシメチル)モルホリン−4−カルボキシラート(28g,0.13mmol)の溶液に加えた。その結果生じた混合物を0℃〜室温の温度で1.5時間撹拌した。次いでこの混合物を水(35mL)で希釈すると、相分離した。水層をCH2Cl2(3×20mL)で抽出した。有機層を集め、これを塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、そしてシリカゲル・パッドろ過し、これをCH2Cl2でリンスした。ろ液を減圧下で濃縮すると、油状物としての表題生成物(37.7g,99%)になった。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ ppm 1.55 (s, 9 H), 2.77-2.91 (m, 1 H), 2.97-3.09 (m,
1 H), 3.14-3.15 (m, 3 H), 3.57-3.67 (m, 1 H), 3.73-3.81 (m, 1 H), 3.85-4.10 (m, 3 H), 4.31 (d, J = 4.79 Hz, 2 H)。
【0135】
パートB
(R)−tert−ブチル 2−((1,3−ジオキソイソインドリン−2−イル)メチル)モルホリン−4−カルボキシラートの製造
【化15】

フタルイミドカリウム(28.4g0.15mol)を、DMF(256mL)中の(S)−tert−ブチル 2−((メチルスルホニルオキシ)メチル)モルホリン−4−カルボキシラート(37.7g,0.13mmol)の溶液に加えた。その結果生じた混合物を110〜115℃で16時間撹拌し、次いで室温に冷却し、そして水(500mL)中に注いだ。水層をCH2Cl2(3×250mL)で抽出した。次いで有機層を集め、これを塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、そして減圧下で濃縮した。残留物をヘキサン(200mL)中に希釈し、次いでEt2O(100mL)をゆっくり加えながら激しく撹拌した。この油状物は固形物となり、これをブフナーロートでろ過した。フィルターケーキをヘキサンで洗浄し、そして減圧下で乾燥した。母液を濃縮し、そして粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(10〜60% EtOAc(ヘキサン中))によって精製すると、固形物の第二番目の収量物が生じた。双方の固形物を集めると、表題化合物(38.9g,88%)が得られた。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ ppm 1.45 (s, 9 H), 2.68-2.82 (m, 1 H), 2.91-3.04 (m, 1 H), 3.44 (dt, J = 11.45, 2.81 Hz, 1 H), 3.63-3.79 (m, 3 H), 3.82-4.03 (m, 3 H), 7.70-7.78 (m, 2 H), 7.84-7.88 (m, 2 H)。
【0136】
パートC
(R)−tert−ブチル 2−(アミノメチル)モルホリン−4−カルボキシラートの製造
【化16】

エタノールアミン(250mL)中の(R)−tert−ブチル 2−((1,3−ジオキソイソインドリン−2−イル)メチル)モルホリン−4−カルボキシラート(37.9g,0.11mol)の溶液を、室温で16時間撹拌した。その後、この混合物を水(500mL)中に注いだ。水層をEtOAc(3×250mL)で抽出し、次いで有機層を集め、これを塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、そして減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(100%EtOAc、次いで0〜10%MeOH(CH2Cl2中)(1%NH4OHを含む))によって精製すると、表題化合物(17.2g,73%)が油状物として生じた。
HRMS(ESI)m/z 計算値(C102023)217.15[M+H]+,実測値
217.28。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ ppm 1.28 (s, 2 H), 1.46 (s, 9 H), 2.56-2.70 (m, 1 H),
2.73-2.76 (m, 2 H), 2.85-2.98 (m, 1 H), 3.30-3.39 (m, 1 H), 3.52 (td, J = 11.61, 2.82 Hz, 1 H), 3.78-3.95 (m, 3 H)。
【0137】
実施例5
(R)−メチル 2−((2−(2,6−ジフルオロ−4−(メチルカルバモイル)フェニル)−5−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)メチル)モルホリン−4−カルボキシラートの製造
【化17】

【0138】
パートA
(R)−tert−ブチル 2−((2−アミノ−4−メチルフェニルアミノ)メチル)モルホリン−4−カルボキシラートの製造
【化18】

MeOH(14mL)中の(R)−tert−ブチル 2−(アミノメチル)モルホリン−4−カルボキシラート(0.715g,3.31mmol)、DIPEA(0.577mL,3.31mmol)、及び1−フルオロ−4−メチル−2−ニトロベンゼン(0.513g,3.31mmol)の混合物を、マイクロ波反応装置中、140℃で30分間加熱し、次いで室温に冷却した。酢酸(1.9mL,33.1mmol)を、引き続いて亜鉛(2.162g,33.1mmol)を加えた。その結果生じた混合物を室温で90分間撹拌すると、(R)−tert−ブチル 2−((2−アミノ−4−メチルフェニルアミノ)メチル)モルホリン−4−カルボキシラート生成物(1.06g)が生じ、これは更に精製することなく次の工程で使用した。この生成物を高pHグラジエント法(移動相:5〜95% B;A:10mM NH4CO3及び0.375% NH4OH v/vを含むH2O;B:CH3CN;2.25分(ランタイム);X-Bridge C18;カラムサイズ:2.1×30mm;及び粒子サイズ:5μm)を用いる分析HPLC MSで分析した。MS m/z 322.4[M+H]+(ESI),Rt 1.80分。
【0139】
パートB
(R)−4−(1−((4−(tert−ブトキシカルボニル)モルホリン−2−イル)メチル)−5−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)−3,5−ジフルオロ安息香酸の製造
【化19】

メタノール(15.0ml)中の(R)−tert−ブチル 2−((2−アミノ−4−メチルフェニルアミノ)メチル)モルホリン−4−カルボキシラート(600mg,1.87mmol)、3,5−ジフルオロ−4−ホルミル安息香酸(347mg,1.87mmol)及び酢酸(0.534ml,9.33mmol)の混合物を、室温で1.5時間撹拌した。次いでこの混合物を減圧下で濃縮し、そして残留物をEtOAcとヘプタンの混合物で溶離するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製すると、(R)−4−(1−((4−(tert−ブトキシカルボニル)モルホリン−2−イル)メチル)−5−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)−3,5−ジフルオロ安息香酸(750mg,82%)が油状物として生じた。この油状物を高pHグラジエント法(移動相:5〜95% B;A:10mM NH4CO3及び0.375% NH4OH v/vを含むH2O;B:CH3CN;2.25分(ランタイム);X-Bridge C18;カラムサイズ:2.1×30mm;粒子サイズ:5μm)を用いる分析HPLC MSで分析した。MS m/z 488.4[M+H]+(ESI),Rt 1.56分。
【0140】
パートC
(R)−tert−ブチル 2−((2−(2,6−ジフルオロ−4−(メチルカルバモイル)フェニル)−5−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)メチル)モルホリン−4−カルボキシラートの製造
【化20】

(R)−4−(1−((4−(tert−ブトキシカルボニル)モルホリン−2−イル)メチル)−5−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)−3,5−ジフルオロ安息香酸(750mg,1.54mmol)を、N2下、DMF(30.00mL)中のDMT−MM(408mg,1.69mmol)に加えた。この結果生じた懸濁液を30分間撹拌した。その後、無水エタノール(0.458mL,1.69mmol)中のメチルアミン33%(重量)溶液を加え、そしてこの混合物を3時間撹拌した。次いでこの混合物を減圧下で濃縮し、この結果生じた残留物を、EtOAc中に溶解し、そして水及び塩水で順次洗浄した。有機層をMgSO4上で乾燥し、ろ過し、そして減圧下で濃縮した。この粗製物を、ショート高pHシャローグラジエント法(short high pH shallow gradient method)(移動相:30〜50%B;A:10mM NH4CO3及び0.375% NH4OH v/vを含むH2O;B:CH3CN;10分(ランタイム);XBridge C18 Prep OBD,Waters逆相カラム;カラムサイズ:30×50mm;及び粒子サイズ:5μm)を用いる分取HPLC MSで精製した。これによって、(S)−tert−ブチル 2−((2−(2,6−ジフルオロ−4−(メチルカルバモイル)フェニル)−5−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)メチル)モルホリン−4−カルボキシラートが油状物(1.4g,>100%収率)として得られ、これは更に精製することなく次の工程で使用した。この油状物を高pHグラジエント法(移動相:5〜95% B;A:10mM NH4CO3及び0.375% NH4OH v/vを含むH2O;B:CH3CN;2.25分(ランタイム);X-Bridge C18;カラムサイズ:2.1×30mm;粒子サイズ:5μm)を用いる分析HPLC MSで分析した。MS m/z 501.4[M+H]+(ESI),Rt 1.85分。
【0141】
パートD
(S)−3,5−ジフルオロ−N−メチル−4−(5−メチル−1−(モルホリン−2−イルメチル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)ベンズアミド・トリフルオロ酢酸塩の製造
【化21】

(R)−tert−ブチル 2−((2−(2,6−ジフルオロ−4−(メチルカルバモイル)フェニル)−5−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)メチル)モルホリン−4−カルボキシラート(770mg,1.54mmol)をDCM(10.0mL)中に溶解した。その後、TFA(2.00mL)を0℃でこの混合物に加えた。この結果生じた混合物を室温で1時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。粗(S)−3,5−ジフルオロ−N−メチル−4−(5−メチル−1−(モルホリン−2−イルメチル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)ベンズアミド・トリフルオロ酢酸塩生成物(790mg)は、更に精製することなく次の工程で使用した。これを高pHグラジエント法(移動相:5〜95% B;A:10mM NH4CO3及び0.375% NH4OH v/vを含むH2O;B:CH3CN;2.25分(ランタイム);X-Bridge C18;カラムサイズ:2.1×30mm;粒子サイズ:5μm)を用いる分析HPLC MSで分析した。MS m/z 401.3[M+H]+(ESI),Rt 1.37分。
【0142】
パートE
(R)−メチル 2−((2−(2,6−ジフルオロ−4−(メチルカルバモイル)フェニル)−5−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)メチル)モルホリン−4−カルボキシラートの製造
【化22】

DCM(10.00mL)中の(S)−3,5−ジフルオロ−N−メチル−4−(5−メチル−1−(モルホリン−2−イルメチル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)ベンズアミド・トリフルオロ酢酸塩(150mg,0.37mmol)、クロロギ酸メチル(0.058mL,0.75mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.072mL,0.41mmol)の混合物を室温で30分間撹拌した。次いでこの混合物を減圧下で濃縮し、そして残留物をショート高pHシャローグラジエント法(移動相:30〜50%B;A:10mM NH4CO3及び0.375% NH4OH v/vを含むH2O;B:CH3CN;10分(ランタイム);XBridge C18 Prep OBD,Waters逆相カラム;カラムサイズ:30×50mm;粒子サイズ:5μm)を用いる分取HPLC MSで精製した。これによって、(R)−メチル 2−((2−(2,6−ジフルオロ−4−(メチルカルバモイル)フェニル)−5−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)メチル)モルホリン−4−カルボキシラート(41.7mg,24%収率)が固形物として得られた。この固形物を高pHグラジエント法(移動相:5〜95% B;A:10mM NH4CO3及び0.375% NH4OH v/vを含むH2O;B:CH3CN;2.25分(ランタイム);X-Bridge C18;カラムサイズ:2.1×30mm;及び粒子サイズ:5μm)を用いる分析HPLC MSで分析した。MS m/z 459.3[M+H]+(ESI),Rt 1.58分。
1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ ppm 2.50 (s, 3 H) 2.54 (dd, J=4.49, 3.71 Hz, 1 H) 2.69 - 2.84 (m, 1 H) 2.96 (s, 3 H) 3.25 (td, J=11.91, 2.73 Hz, 1 H), 3.55 -
3.64 (m, 2 H), 3.66 (s, 3 H), 3.74 (d, J=12.89 Hz, 1 H), 3.96 (d, J=12.89 Hz, 1
H), 4.16 (dd, J=15.23, 7.42 Hz, 1 H), 4.37 (dd, J=15.23, 3.12 Hz, 1 H), 7.26 (dd, J=8.59, 1.17 Hz, 1 H), 7.53 (s, 1 H), 7.58 (d, J=8.59 Hz, 1 H), 7.64 (d, J=8.59 Hz, 2 H)。
HRMS m/z 計算値(C2325244)459.1838[M+H]+,実測値 459.1849。
【0143】
実施例6
インビトロでのヒトP2X3受容体のアンタゴニストとしての化合物の生物学的評価
この発明の化合物のアンタゴニスト特性が、RLE細胞(ラット肝内皮,ATCC)で発現されるhP2X3(ヒトプリン作動性P2X受容体サブタイプ3、クローンAに対するアクセッション番号 AB016608及びクローンBに対するアクセッション番号 NM_002559)の活性化によって誘発される細胞内カルシウムの増加の阻害剤としてアッセイされた。このRLE/hP2X3細胞を、加湿インキュベーター(5%CO2及び37℃)内で10%ウシ胎児血清(Wisent, 090850)、2mM L−グルタミン(Wisent, 609-065-EL)、及び600μg/mL ジェネティシンG−418(Geneticin G-418)(Wisent, 61234)を補充したウイリアム培地1X(William's medium 1X)(Gibco, 12551-032)で増殖した。
【0144】
方法1
1つのアッセイでは、384ウェルプレート中でプレーティングされた、hP2X3を実験の24時間前に所望の最終コンフルエンスを得るのに適切な濃度で安定に発現する凍結保存RLE細胞を用いてFDSS7000(Hamamatsu)によるFluo−4アッセイが行なわれた。細胞プレートをFluo−4で処理し、その後のインキュベーション、それに引き続く洗浄工程を行なった後、2回の添加が行われた。第一の添加は、第二の添加の前に、20分間のプレインキュベートした2mM CaCl2を含むHBSSバッファー中で希釈した試験化合物を含んでいた。第二の添加は2μMのATPを含んでいた。カルシウム動員は、3分の時間の経過にわたってFDSS7000で測定され、そして蛍光カウント数を、解析のためにエクスポートした。これによって、ExcelFitを用いて活性ベースで算出されるpIC50がもたらされた。ヒル係数及び阻害%もまた、決定することができた。
【0145】
方法2
別のアッセイでは、hP2X3を安定に発現するRLE細胞に対して、方法1に類似の手順が使用された。但し、この方法では、hP2X3アゴニストとしてATPの代わりにα,β−メチレンATP(Sigma M6517)が用いられた。
【0146】
方法3
第三のアッセイでは、hP2X3を発現する細胞は培地中に維持され、そして実験の前日、この細胞をポリリジンコート384−ブラックプレート(Becton/Dickinson, 356663)に、ジェネティシン不含ウイリアム培地中50μL/ウェル中に、8000細胞/ウェルでプレーティングし、次いで24時間にわたってインキュベーター中に置いた。実験当日には、この細胞及び試験化合物を次のように調製した。化合物として、α,β−メチレンATP(500nM,終濃度)及びレファレンス化合物(3倍系列で、10回にわたって希釈して)を、所望の終濃度より4倍を超える高い濃度で、hP2X3アッセイバッファー(125mM 塩化コリン,5mM グルコース,0.2g/L BSA,25mM Hepes,5mM KCl,1mM MgCl2,1.5mM CaCl2,pH7.4)中に、あるいは代わりにラットP2X3及びラットP2X2/3アッセイバッファー(HBSS:125mM NaCl,5mM グルコース,0.2g/L BSA,25mM Hepes,5mM KCl,1mM MgCl2,1.5mM CaCl2,pH7.4)中に希釈した。化合物を調製した後、この培地を逆さにして細胞プレートから取り除いた。4μMのカルシウム指示色素、FLUO−4 AM(Molecular Probes F14202)を含んでいる30μLのアッセイバッファーの添加液を、マルチドロップ(Labsystems)を用いて各ウェルに加えた。次いで細胞プレートを室温で30〜40分間インキュベートし、細胞内に色素を取り込ませた。インキュベーションは、Skatron Embla(Molecular Devices)を用いてアッセイバッファー中、細胞を4回洗浄することによって終了させ、そして25μLのアッセイバッファーを各ウェル中に残した。次いで細胞プレートをFLIPRに移した。実験は10秒間にわたってベースライン蛍光読み取りを計ることによって開始し、引き続いて12.5μLの化合物を加え、そして合計280秒間にわたってデータサンプリングした。この実験は、12.5μLのレファレンスアゴニスト(500nMのα,β−メチレンATP)又はバッファーを添加し、50μLの最終アッセイ容量を作成し、そして更に280秒間にわたってデータサンプリングをすることによって終了した。全実験の間中、520〜545nmの発光波長を有するフィルターを用いるCCDカメラを搭載しているFLIPRによって蛍光発光を読み取った。これによって、ExcelFitを用いて活性ベースで算出されるpIC50がもたらされた。ヒル係数及び阻害%もまた、決定することができた。
【0147】
上記の方法を用いて得られたIC50を表1に示す。
【表1】

【0148】
別途指摘がない限り、この特許を読む際には下記の定義が使用されるものとする:
【0149】
この特許中に使用されている化学命名法は、一般にNomenclature of Organic Chemistry, Sections A, B, C, D, E, F, and H, Pergamon Press, Oxford, 1979に述べられた実例及び規則に従っている。
【0150】
用語“製薬学的に許容される(pharmaceutically acceptable)”は、モイエティ(例えば、塩、投与形態、担体、希釈剤、又は賦形剤)を健全な医学判定に従って使用するのに適切であると位置付けるのに使用されている。一般に、製薬学的に許容されるモイエティは、そのモイエティが有しているどんな有害な作用をも上回る1つ又は複数の利益を有している。有害な作用には、例えば、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、並びに他の問題及び合併症が含まれうる。
【0151】
“d”は、二重線を意味する。
“DCM”は、ジクロロメタンを意味する。
“dd”は、二重線の二重線を意味する。
“DMEA”は、ジメチルエチルアミンを意味する。
“DMF”は、N,N−ジメチルホルムアミドを意味する。
“DMSO−d6”は、ジメチルスルホキシド−d6を意味する。
“DMT−MM”は、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリドを意味する。
“ESI”は、エレクトロスプレーイオン化を意味する。
“Et”は、エチルを意味する。
“EtOAc”は、酢酸エチルを意味する。
“EtOH”は、エタノールを意味する。
“Ex”は、実施例を意味する。
“g”は、グラムを意味する。
“hr”は、時間又は時間(複数)を意味する。
1H NMR”は、プロトン核磁気共鳴を意味する。
“HPLC”は、高性能液体クラマトグラフィーを意味する。
“HRMS”は、高分解能質量分析法を意味する。
”L”は、リットルを意味する。
“LCMS”は、液体クロマトグラフィー/質量分析を意味する。
“m”は、多重線を意味する。
“M”は、モル(モルの)(molar)を意味する。
“mL”は、ミリリットルを意味する。
“Me”は、メチルを意味する。
“MeCN”は、アセトニトリルを意味する。
“MeOH”は、メタノールを意味する。
“mg”は、ミリグラムを意味する。
“MHz”は、メガヘルツを意味する。
“min”は、分又は分(複数)を意味する。
“mmol”は、ミリモルを意味する。
“mol”は、モルを意味する。
“MS”は、質量分析法を意味する。
“MTBE”は、メチルtert−ブチルエーテルを意味する。
“N”は、ノルマル(normal)を意味する。
“ppm”は、百万分の1を意味する。
“Pr”は、プロピルを意味する。
“q”は、四重線を意味する。
“qt”は、五重線を意味する。
“Rt”は、保持時間(HPLC)を意味する。
“s”は、一重線を意味する。
“SFC”は、超臨界流体クロマトグラフィーを意味する。
“t”は、三重線を意味する。
“TFA”は、トリフルオロ酢酸を意味する。
“TLC”は、薄層クロマトグラフィーを意味する。
“TMEDA”は、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エチレンジアミンを意味する。
“UV”は、紫外(分光法)を意味する。
“vol”は、体積を意味する。
【0152】
単数でなされた言及はまた、複数を含みうる。例えば、“a”及び“an”は、1つ又は1つより多い、いずれをも意味しうる。
【0153】
この特許(請求項を含む)で、語“含んでなる(comprise,)”、“含んでなる(comprises,)”及び“含んでなる(comprising)”は、限定的ではなく、包含的に解釈されなければならない。この解釈はこうした語が米国特許法のもとで付与されている解釈と同じであることを意図している。
【0154】
この例示的な実施形態の上記説明は、単に当技術分野の当業者に出願人の発明、この発明の原理、及びこの発明の実際の適用を知らせることのみを意図しており、その結果、当技術分野の当業者は、特定の用途の要件に最も適することができるように極めて多くの形で本発明を改作し、かつ利用することができる。それ故、この発明は、上記の実施形態に限定されることはなく、そして様々に修正されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物が以下:
【化1】

に該当する、式Iの化合物又はその塩。
【請求項2】
化合物が式II:
【化2】

に該当する、請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
化合物が式III:
【化3】

に該当する、請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項4】
組成物が請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩と、担体、希釈剤、又は賦形剤を含んでなる、医薬組成物。
【請求項5】
キットが、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物又は塩;並びに
該化合物若しくは塩を動物患者に投与するための器具;
該化合物若しくは塩を動物患者に投与するための使用説明書;
担体、希釈剤、若しくは賦形剤;又は
該化合物若しくは塩以外の医薬活性成分;
を含んでなる、上記キット。
【請求項6】
薬剤として使用するための請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物又はその製薬的に許容される塩。
【請求項7】
動物のP2X3活性に関連する状態を処置するための薬剤の製造における請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物又はその製薬的に許容される塩の使用。
【請求項8】
動物のP2X2/3活性に関連する状態を処置するための薬剤の製造における請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物又はその製薬的に許容される塩の使用。
【請求項9】
動物の疼痛を処置するための薬剤の製造における請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物又はその製薬的に許容される塩の使用。
【請求項10】
動物の尿路障害を処置するための薬剤の製造における請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物又はその製薬的に許容される塩の使用。
【請求項11】
動物が哺乳類である、請求項7〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
哺乳類がヒトである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
治療的に有効な量の請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を動物に投与することを含んでなる、そうした処置を必要とする動物におけるP2X3活性に関連する障害を処置する方法。
【請求項14】
治療的に有効な量の請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を動物に投与することを含んでなる、そうした処置を必要とする動物におけるP2X2/3活性に関連する障害を処置する方法。
【請求項15】
治療的に有効な量の請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を動物に投与することを含んでなる、そうした処置を必要とする動物における疼痛を処置する方法。
【請求項16】
治療的に有効な量の請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を動物に投与することを含んでなる、そうした処置を必要とする動物における尿路障害を処置する方法。
【請求項17】
尿路障害が過活動膀胱を含んでなる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
動物が哺乳類である、請求項13〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
哺乳類がヒトである、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2013−511517(P2013−511517A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539853(P2012−539853)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/SE2010/051269
【国際公開番号】WO2011/062550
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】