説明

ベンゾグアナミン樹脂組成物およびカチオン電着塗料用組成物

【課題】
変色や外観不良の影響を受けやすいメッキ製品(例えば銀メッキ、銅メッキ等)の電着塗装にカチオン型電着塗料を用いて、変色の欠点を解消し、且つ、毒性や、変色の問題が無い、アミノ系樹脂を架橋剤に用いることを目的とする。
【解決手段】
ベンゾグアナミン1モル当たり3.7〜4.0モルの結合ホルムアルデヒド、0.1モル以下のイミノ基、0.2モル以下のヒドロキシメチル基、1.8〜2.0モルのメトキシメチル基、1.3〜1.4モルのブトキシメチル基、0.2〜0.4モルのカルボキシル基を有してなるベンゾグアナミン樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシル基を含有する混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂に関し、特にはカルボキシル基を含有する混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂を架橋剤として用いたカチオン電着塗料用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属の焼付け塗料として、カルボキシル基、水酸基を含むアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等と、アルキル化メラミン樹脂やアルキル化ベンゾグアナミン樹脂等のアルキル化アミノ樹脂を架橋剤としてなる樹脂組成物を用いることは知られている。また、有機溶剤による大気汚染を防止するため、従来の溶剤型から水性塗料に移行していることも知られている。
しかしながら、水性塗料にアルキル化アミノ樹脂を架橋剤として用いる場合、ブチル化アミノ樹脂では、水溶性あるいは水分散性がないため、水性塗料用に使用するのが困難であり、メチル化アミノ樹脂が使用されている。しかしながら、メチル化アミノ樹脂は、その水溶性が大きいということに起因して、排水の処理が難しいという欠点を有している。
【0003】
一方、水性塗料の塗装方法の一つに電着塗装法があり、自動車、家電、建材などの塗装に利用されている。電着塗装は、良く知られているように、塗料浴中に水溶性や水分散性塗料を入れ、これに金属性被塗物体を浸し、この被塗物と浴のタンク又は電極の何れか一方を陽極、他方を陰極として直流電流を通じ、電気メッキのように被塗物面に塗膜を形成させる方法である。更には、電着塗装方法には、被塗物を陽極にする場合をアニオン型、また陰極とする場合をカチオン型と呼んでいる。
アニオン型は被塗物を陽極とし、例えば、アルミサッシのワンコートフィニッシュに用いられており、この電着塗料の架橋剤としては排水の処理面と、架橋剤の電着共進性の点からメチル化アミノ樹脂よりも、混合エーテル化アミノ樹脂が用いられている(例えば引用文献1)。
カチオン型は被塗物を陰極としているので、素材からの溶出が無く、防錆性能の要求が厳しい自動車の下塗り塗装や、変色や外観不良の影響を受けやすいメッキ製品(例えば銀メッキ、銅メッキ等)の塗装に用いられている。
これらの架橋剤には、例えば、ブロックイソシアネートが用いられているが、毒性の問題や、変色の問題があった。
【0004】
ところで、混合エーテル化アミノ樹脂はその弱アニオン性からアニオン型電着塗料の架橋剤としては有効であるが、カチオン型電着塗料の架橋剤としては、その性質(弱アニオン性)から電着共進性が無く、用いられることはなかった。
【0005】
【特許文献1】特開昭54−120641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、変色や外観不良の影響を受けやすいメッキ製品(例えば銀メッキ、銅メッキ等)の電着塗装にカチオン型電着塗料を用いて、変色の欠点を解消し、且つ、毒性や、変色の問題が無い、アミノ系樹脂を架橋剤に用いることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記問題を解決することにあり、工業的に安価で製造でき、且つ、カチオン型電着塗料の架橋剤に使用可能なアミノ系樹脂、特には混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂に、カルボン酸基を導入することにより、変色も無く、電着共進性に優れた架橋剤を提供することにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明における樹脂組成物は、ベンゾグアナミン1モル当たり3.7〜4.0モルの結合ホルムアルデヒド、0.1モル以下のイミノ基、0.2モル以下のヒドロキシメチル基、1.8〜2.0モルのメトキシメチル基、1.3〜1.4モルのブトキシメチル基、0.2〜0.4モルのカルボキシル基を有してなるベンゾグアナミン樹脂組成物であり、カチオン型電着塗料の架橋剤として、高光沢で着色のないメッキ製品を得ることができる樹脂組成物並びにこれを用いたカチオン電着用樹脂組成物である。
【0009】
以下、本発明の樹脂組成物について詳しく説明する。
本発明において使用する混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂は、例えばベンゾグアナミンとホルムアルデヒドを、塩基性条件下で加熱によりメチロールベンゾグアナミンを合成する。ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドのモル比としては、ベンゾグアナミン1モル当たり4〜10モル、好ましくは5〜7モルである。これによりベンゾグアナミン1モル当たり3.7〜4.0モルの結合ホルムアルデヒドを有するメチロール化ベンゾグアナミン樹脂を得る。次に10〜20モル程度のメタノールを用いて酸性条件下でメチル化メチロールベンゾグアナミン樹脂を合成する。更には、2〜4モル程度のn−ブタノールを用いて酸性条件下でエーテル交換してメチルブチル混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂を得る。これら混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂の代表例としては、ニカラックBX−4000(株式会社三和ケミカル製)をあげることができる。
本発明の樹脂組成物は塗料に配合した際に安定性が良くなるよう、0.1モル以下のイミノ基、0.2モル以下のヒドロキシメチル基を有する。イミノ基や、メチロール基が多くなると塗料に配合した際の貯蔵安定性が悪くなるので好ましくない。
【0010】
上記混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂にカルボン酸基を導入する方法としては、カルボン酸基の他に水酸基を有する化合物を使用する。水酸基とカルボン酸基を有する化合物としては、例えば、サリチル酸、α−オキシイソ酪酸、マンデル酸、グリコール酸及び1−オキシ−2−ナフトエ酸を上げることができ、水酸基と2カルボン酸基を有する化合物としては、例えば、2−オキシイソフタル酸、β−オキシグルタル酸、3−オキシフタル酸及びリンゴ酸をあげることができ、2水酸基と2カルボン酸基を有する化合物としては、例えば、酒石酸をあげることができるが、混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂との反応のし易さの観点からは、水酸基とカルボン酸基を有する化合物を用いることが好ましく、中でもサリチル酸が好適に用いられる。
【0011】
混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂と水酸基とカルボン酸基を有する化合物の反応温度としては、110〜130℃、反応時間としては、10〜30時間の条件であり、上記ベンゾグアナミン樹脂と水酸基とカルボン酸基を有する化合物の反応モル比としては、上記ベンゾグアナミン樹脂1モルに対して0.2〜0.4モル、好ましくは0.3〜0.4モルを用いることが好ましい。水酸基とカルボン酸基を有する化合物が0.4モル以上と過剰では、電着塗膜が肌荒れを生じるので好ましくなく、0.2モルより過小では、電着共進性が低くなり、物性面で性能がでなくなるので好ましくない。
【実施例】
【0012】
以下に実施例などを挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例などによりなんら限定されるものではない。
【0013】
製造例1
2リットルの3口フラスコに、ニカラックBX−4000(株式会社三和ケミカル社製メチルブチル混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂)426g(1モル)とサリチル酸48.3g(0.35モル)を仕込み、120℃、18時間反応しブチルセロソルブで不揮発分80%に稀釈してカルボキシル基含有メチルブチル混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂を得た。
【0014】
製造例2
2リットルの3口フラスコに、ニカラックBX−4000(株式会社三和ケミカル社製メチルブチル混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂)426g(1モル)とサリチル酸69.0g(0.5モル)を仕込み、120℃、10時間反応しブチルセロソルブで不揮発分80%に稀釈してカルボキシル基含有メチルブチル混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂を得た。
【0015】
塗料製造例1
特開昭62−146969号公報の実施例1の条件に従い、重合して不揮発分66.7%のアクリル系共重合体カチオン電着塗料を得た。
【0016】
〔実施例1〕
塗料製造例1のアクリル系共重合体156部に、製造例1のベンゾグアナミン樹脂41g、メチルイソブチルケトン2部及びイソプロパノール23部を加え、更に1N−塩酸6ml及び酢酸1部を加え、約1時間攪拌することにより、中和せしめた後、イオン交換水1101部を加えて、不揮発分10%のカチオン電着塗料を得た。
【0017】
〔比較例1〕
製造例1のベンゾグアナミン樹脂の替わりに製造例2の樹脂を用いた以外は実施例1と同様に操作し、不揮発分10%のカチオン電着塗料を得た。
【0018】
〔比較例2〕
製造例1のベンゾグアナミン樹脂の替わりにニカラックBX−4000(株式会社三和ケミカル社製メチルブチル混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂)33g、メチルイソブチルケトン10部を用いた以外は実施例1と同様に操作し、不揮発分10%のカチオン電着塗料を得た。
【0019】
性能試験
6cm×10cmの黄銅板を陰極に用いて実施例1、比較例1及び比較例2で作製された塗料中において、下記電着条件にて陰極電着塗装を行い、水洗、乾燥、焼付けを行った。
電着条件:電圧50V、時間1分、浴温25℃、陽極カーボン板、極間距離10cm、
焼付け条件;175℃×25分間
試験結果は表1に示したが、比較例2の塗料は、電着共進性が無かったので表には示さなかった。
【0020】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0021】
ベンゾグアナミン1モル当たり3.7〜4.0モルの結合ホルムアルデヒド、0.1モル以下のイミノ基、0.2モル以下のヒドロキシメチル基、1.8〜2.0モルのメトキシメチル基、1.3〜1.4モルのブトキシメチル基、0.2〜0.4モルのカルボキシル基を有してなるベンゾグアナミン樹脂組成物をカチオン型電着塗料の架橋剤として用いることにより、高光沢で着色のないメッキ製品を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンゾグアナミン1モル当たり3.7〜4.0モルの結合ホルムアルデヒド、0.1モル以下のイミノ基、0.2モル以下のヒドロキシメチル基、1.8〜2.0モルのメトキシメチル基、1.3〜1.4モルのブトキシメチル基、0.2〜0.4モルのカルボキシル基を有してなるベンゾグアナミン樹脂組成物。
【請求項2】
上記ベンゾグアナミン樹脂組成物が、カチオン電着用架橋剤であることを特徴とする請求項1に記載のベンゾグアナミン樹脂組成物。
【請求項3】
ブトキシメチル基がn−ブトキシメチル基である請求項1又は2に記載のベンゾグアナミン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載のベンゾグアナミン樹脂組成物を用いたカチオン電着塗料。

【公開番号】特開2008−239680(P2008−239680A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78676(P2007−78676)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】