説明

ベンゾジアゼピン構造のRSV阻害剤を含む安定な非経腸製剤

本発明は、非経腸投与するために適当な、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に対して活性であるベンゾジアゼピン化合物の医薬製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非経腸投与するために適当な、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に対して活性であるベンゾジアゼピン化合物の医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
RSVは全ての年齢の患者における呼吸器疾患の主な原因である。成人において、それは穏やかな風邪の症状を引き起こす傾向がある。学齢児童において、それは風邪および気管支咳そう(bronchial cough)を引き起こし得る。乳児および幼児において、それは細気管支炎(肺のより細い気道の炎症)、肺炎、中耳感染症(中耳炎)を引き起こし得るし、また、小児期喘息を発症し得る。RSVは乳児および幼児における最も一般的な呼吸器病原体であり、非常に多数の乳児を重度のRSV疾患により入院させる必要が生じ、約1−2%の乳児が死亡する。未熟児、慢性肺疾患を有する乳児、免疫障害がある乳児および或る種の心臓疾患を有する乳児は、重度のRSV疾患となる危険性が高い。
【0003】
WO2004/026843はRSVに対して活性なある種のベンゾジアゼピン誘導体を記載している。RSV感染を適切に処置するためには、非経腸経路の投与が望ましい。したがって、ベンゾジアゼピンRSV阻害化合物の非経腸製剤、特に静脈内投与用製剤を開発する必要性がある。しかしながら、WO2004/026843に記載されているベンゾジアゼピンRSV阻害化合物は、水中での溶解性および安定性が不良であり、かつRSV処置における高投与量の必要性が、ベンゾジアゼピンRSV阻害化合物の非経腸医薬製剤の開発を著しく困難にしている。
【発明の概要】
【0004】
今回、本発明によって、ベンゾジアゼピンRSV阻害化合物およびベータ−シクロデキストリン、例えば、ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンを含む安定な非経腸医薬製剤が得られることを見出した。
【0005】
発明の要旨
1つの局面において、本発明は、ベンゾジアゼピンRSV阻害化合物またはその薬学的に許容される塩、例えば、(S)−1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアのベシレート塩、およびベータ−シクロデキストリン、例えば、ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン(HPbCD)を含む非経腸投与に適当な医薬組成物を提供する。さらなる局面において、本発明は、(a)ベンゾジアゼピンRSV阻害化合物、水性溶媒、所望により非揮発性共溶媒および増量剤を含む溶液(該溶液は好ましくは揮発性溶媒なしである)を形成し;そして、(b)薬学的に許容されるケーキを形成するために該溶液を凍結乾燥する、工程を含む薬学的に許容されるケーキを製造する方法を提供する。また、(a)有効量のベンゾジアゼピンRSV阻害化合物;(b)ベータ−シクロデキストリン(該ベータ−シクロデキストリンはケーキの約50から99重量%を構成する)(c)所望により、非揮発性共溶媒を含む薬学的に許容されるケーキを提供する。さらなる局面において、本発明は、適当な容器中に本発明の薬学的に許容されるケーキを含む単一の投与形態を提供する。1つの態様において、薬学的に許容されるケーキが水性溶液中で再構成される単一の投与形態を提供する。さらなる局面において、必要である患者におけるウイルス感染、例えば、RSV感染を処置する方法であって、水性溶液中で、ベンゾジアゼピンRSV阻害化合物またはその薬学的に許容される塩およびベータ−シクロデキストリンを含む医薬製剤を必要である患者に非経腸投与することを含む方法を提供する。1つの態様において、該製剤は本発明の再構成された薬学的に許容されるケーキである。さらなる態様において、該患者はRSV感染を有する乳児または幼児である。
【0006】
発明の詳細な説明
本発明の医薬組成物は、ウイルス感染の処置のために、ヒト、特に乳児および幼児に非経腸投与するために適当である。
【0007】
本発明の非経腸製剤は、下記構造(I):
【化1】

〔式中、置換基はWO04/026843(この内容を出典明示により本明細書に包含させる)に記載されているとおりである〕を有する、薬学的に有効量のベンゾジアゼピン化合物またはそのその薬学的に許容される塩を含む。RSVに対して活性なベンゾジアゼピン化合物はWO04/026843に記載されており、以下“ベンゾジアゼピンRSV阻害化合物”と称する。
【0008】
本発明のために特に興味深いベンゾジアゼピンRSV阻害化合物は、(S)−1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア(式(Ia):
【化2】

によっても現すことができる)である。
【0009】
他の好ましいRSV阻害化合物は(S)−4−メタンスルホニル−2−メトキシ−N−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ベンズアミドまたは(S)−2−クロロ−4−モルホリン−4−イル−N−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ベンズアミドを含む。
本発明の好ましい態様において、RSV阻害化合物はベシレート塩の形態である。式Iaの化合物のベシレート塩は、US特許出願第60/802836号に記載されているように非晶形態または結晶形態であってよい。ベンゾジアゼピンRSV阻害化合物の合成経路は、例えば、WO2004/026843に記載されており、(S)−1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアのベシレート塩および結晶形態はUS特許出願第60/802836号に記載されているとおりに製造することができる。
【0010】
本明細書で使用される“薬学的有効量”なる用語は、治療結果、とりわけウイルス感染、例えば、RSV感染の阻害を達成するために宿主に投与することを含むために必要な量を意味する。本明細書で使用される“ガレヌス製剤”“医薬製剤”または“製剤”なる用語は、活性成分および患者に適用するために適当にさせるさらなる賦形剤を含む医薬組成物を意味し、通常、完成した製剤である。“製剤”および“医薬組成物”なる用語は、これらの用語の文脈に依存して本明細書で互換的に使用することができる。
【0011】
今回、本発明によって、ベータ−シクロデキストリン化合物を含むベンゾジアゼピンRSV阻害化合物の非経腸製剤が特に、例えば、安定性および溶解性に対して有利な特性を有することを見出した。本明細書で使用されるベータ−シクロデキストリン化合物なる用語は、ベータ−シクロデキストリン、および、特に、ベータ−シクロデキストリン誘導体、例えば、メチル−ベータ−シクロデキストリン、ジメチル−ベータ−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン、グリコシル−ベータ−シクロデキストリン、マルトシル−ベータ−シクロデキストリン、スルホン化−ベータ−シクロデキストリン、スルホン化アルキルエーテル−ベータ−シクロデキストリン(例えば、Cアルキル)を含む。このような製剤は、また、乳児および幼児への投与に対して適当であることを見出した。したがって、本発明の製剤は、少なくともベンゾジアゼピンRSV阻害剤、および好ましくはヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン(HPbCD)、スルホブチルエーテルベータ−シクロデキストリン(SBEbCD)またはメチルベータ−シクロデキストリン(MbCD)、より好ましくはHPbCDであるベータ−シクロデキストリン化合物を含む。HPbCDは、例えば、US3’459’731に記載されているように酸化プロピレンのベータ−シクロデキストリンへの付加により製造できる。HPbCDは、また、例えば、Cavitron 82003、Cavitron 82004またはCavitronとしてCargillTM Pharmaceutical Exipientsから市販されている(www.cargillexcipients.com)。SBEbCDおよびMbCDは、例えば、Shandong Xinda Fine Chemical Co., Ltdから市販されている。ベータ−シクロデキストリン化合物は、水性非経腸製剤の10重量%から60重量%、好ましくは25重量%から50重量%または15重量%から30重量%の量で存在し得る。さらなる好ましい態様において、ベータ−シクロデキストリン化合物は、水性溶液中で少なくとも10重量%、少なくとも15重量%または少なくとも18重量%の量で存在する。製剤が凍結乾燥されたケーキの形態である場合、ベータ−シクロデキストリン化合物は、50%から99.9%、好ましくは60%から99.5%、さらに好ましくは70%から99%の量で存在する。より好都合には、ベータ−シクロデキストリンは90%から99%、例えば、約98%の量で存在する。
【0012】
好ましい態様において、該非経腸製剤は静脈内投与に対して適当である。投与に対するこの形態の即時型反応は、特にRSV感染を有する乳児および幼児における緊急事態において非常に望ましい。さらに、吸収過程が関連しないため、活性剤の投与量または血中濃度をよりよい精度および速度で得ることができる。本明細書で使用される“乳児”なる用語は、誕生から約2歳の子供または赤ん坊を意味する。本明細書で使用される“幼児”なる用語は、約2から10歳、好ましくは10歳以下、8歳以下または6歳以下の子供を意味する。
【0013】
本発明の非経腸製剤は、例えば、水性溶液の形態であってよい。“水性溶液”なる用語は、活性成分、ベータ−シクロデキストリンおよび任意の医薬賦形剤を有する溶液を意味し、主な溶媒として水を使用して溶解されている。水は、適当なバッファー、例えば、リン酸バッファー、酢酸バッファー、クエン酸バッファー、乳酸バッファーまたはマレイン酸バッファーでpHを安定させるために緩衝され得る。バッファーは、好ましくはPHを望ましい値に調節するために適当な量、例えば、10mMから100mMの濃度で存在する。“水性溶液”は、さらに水混和性有機溶媒(複数も可)を含み得る。有機共溶媒が使用されるとき、それは、全溶液の10重量%まで、例えば、0.5から10%の量で使用されることが好ましい。適当な溶媒は、当分野で一般的に使用されている水混和性溶媒、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、グリセロール、tween 20、tween 80およびエタノールである。
【0014】
静脈内投与のために適当な非経腸製剤は、しばしば、体液、例えば、血液とほぼ同じ浸透圧を有するように製剤される。したがって、本発明の非経腸製剤は製剤の浸透圧が体液と同じにする効果を有する等張剤を含み得る。本発明の1つの局面において、水溶液または水性溶液中で活性剤としてベンゾジアゼピンRSV阻害化合物、例えば、(S)−1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア、ベータ−シクロデキストリン、例えば、HPbCまたはSBEbCD、バッファーおよび等張剤を含む非経腸製剤を提供する。該等張剤は当分野で一般的に使用されるいずれかのもの、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、グリシン、塩化ナトリウム、デキストランおよびグルコースから選択され得る。該等張剤は非経腸製剤が体液と同じ浸透圧となる量で使用され得る。望ましい効果を達成するために必要な正確な量は、例えば、非経腸製剤中の活性剤の濃度などの因子に依存し、そして、当業者が何ら発明的思考を使用せず、一般的な知識のみを使用して決定し得る通常の実験の範囲の問題である。等張剤の選択は、好ましくは活性剤の特性、例えば、安定性を考慮する。
【0015】
本発明の非経腸製剤のpHは、一般的に約4から9の範囲、またはさらに好ましくは約6から8の範囲で維持される。さらなる態様において、該pHは約4から約6の範囲である。
【0016】
本発明の非経腸製剤は、必要な安定性および治療効果を提供するために、静脈内投与のために適当な一般的に非経腸製剤で使用される他の賦形剤を含み得る。賦形剤は、キレート剤または抗酸化剤としてEDTA、例えば、アルファ−トコフェロール、BHT、BHAおよび非経腸静脈内投与用製剤の製造において一般的に使用される他の何らかの賦形剤を含み得る。抗酸化剤は当分野で既知の何らかの化合物から選択され得る。使用される他の適当な賦形剤の量は通常の実験のみを使用して決定できる。
【0017】
得られた非経腸製剤は、不活性雰囲気下で維持され、例えば、また、不活性雰囲気下で移送管により、適当な容器に移され得る。必要なとき、水以外の溶媒および他の成分が当分野で既知の医療グレードの成分および溶媒から選択され得る。本発明の非経腸製剤は容器中に包装され得る。容器は種々の材料で製造されたものから選択され得る。ガラス容器が使用され得るが、プラスチック容器、例えば、プラスチック輸液用バッグを使用することが好ましい。本発明の1つの態様において、有効量のベンゾジアゼピンRSV阻害化合物およびベータ−シクロデキストリン、例えば、HPbCD、SBEbCDまたはMbCD、所望により、さらに医薬組成物で一般的に使用される賦形剤、例えば、上記のものを含む、非経腸投与、例えば、静脈内投与のために適当な単一の投与形態を提供する。該単一の投与形態は、少なくとも0.5mg/ml、好ましくは少なくとも1mg/ml、さらに好ましくは少なくとも2mg/mlのベンゾジアゼピンRSV阻害化合物を含む。単回投与において、好都合には、10mg、20mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mgまたは250mgが必要である患者に投与される。
【0018】
本発明のさらなる局面において、本発明の非経腸製剤が製造する方法を提供される。該方法は、ベンゾジアゼピンRSV阻害化合物およびベータ−シクロデキストリンおよび、所望により、他の薬学的に許容される賦形剤、例えば、酸化防止剤に、水性溶液、例えば、等張溶液を、非経腸製剤と非反応性または実質的に非反応性である物質で製造した適当な容器中で、添加しまたは混合する工程を含む。
【0019】
本発明の1つの局面において、該ガレヌス製剤を凍結乾燥する。凍結乾燥(または“フリーズ−ドライ”として周知)は、溶液から水を取り除いて粒状固体または粉末を形成する方法である。該方法は溶液を凍結させ、次に減圧下で昇華により全ての水または湿気を取り除くことにより実施する。凍結乾燥は、再構成されて注射により患者に投与される医薬、例えば、非経腸薬剤を開発するために特に有効である。本発明の1つの態様において、ベンゾジアゼピンRSV阻害化合物を増量剤(bulking agent)および/または非揮発性共溶媒の存在下で薬学的に許容されるケーキに凍結乾燥する。
【0020】
本明細書で使用される“増量剤”なる用語は、医薬組成物に体積を提供する成分を意味する。増量剤の例は、マンニトール、トレハロース、ラクトース、スクロース、ポリビニルピロリドン、スクロース、グリシン、シクロデキストリン、デキストラン、固体PEGおよびそれらの誘導体および混合物を含むが、これに限定しない。本発明の増量剤として特に有用なものは、ベータ−シクロデキストリン、例えば、HPbCD、MbCDまたはSBEbCDである。
【0021】
当業者は理解しているとおり、製剤のいくつかの成分は1つ以上の機能を果たすことができる。マンニトールは、例えば、等張剤として使用することができるが、また、凍結乾燥に対する増量剤として作用し得る。
【0022】
本明細書で使用される、非揮発性共溶媒は、25℃で0.50mmHg以下の蒸気圧を有する物質を意味する。非揮発性共溶媒の目的は、溶液を形成するために、難水溶性の治療化合物の水への溶解を容易にするためである。非揮発性共溶媒の例は、アルキレングリコール、例えば、液体PEG MW200−800、プロピレングリコール、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトールおよびキシリトール;ポリオキシエチレン;直鎖状ポリオール、例えば、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよびメトキシポリエチレングリコール;およびそれらの混合物を含むが、これに限定しない。
【0023】
界面活性剤が、また、所望により、医薬組成物中で使用することができる。界面活性剤の例は、脂肪酸およびスルホン酸アルキル;塩化ベンゼトニウム、例えば、Lonza, Inc. (Fairlawn, NJ)のHYAMINE 1622;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば、Uniqema(Wilmington, DE)のTWEEN Series;および天然界面活性剤、例えば、タウロコール酸ナトリウム、1−パルミトイル−2−Sn−グリセロ−3−ホスホコリン、レシチンおよび他のリン脂質を含む。このような界面活性剤は、例えば、製剤の再構成中、凍結乾燥した粒子の凝集を最小にする。これらの界面活性剤は約0.001%から約5%w/vで含み得る。
【0024】
適当なベンゾジアゼピンRSV阻害化合物の薬学的に許容される凍結乾燥されたケーキを製造するために、適当な量、例えば、好都合には治療有効量のベンゾジアゼピンRSV阻害化合物を水または水性溶媒、非揮発性共溶媒(任意の)および増量剤と混合して溶液を形成する。該溶液は、例えば、約1%から約60%(w/v)、例えば、20%から約50%または30から50%、例えば、40%の濃度の増量剤を含む。本発明の好ましい増量剤は、ベータ−シクロデキストリン、例えば、HPbCD、SBEbCDまたはMbCDである。さらに、該溶液は、所望により、例えば、約0.01%から約30%(w/v)、例えば、約0.1%から約20%、例えば、約1%から約10%の濃度の非揮発性共溶媒を含む。所望により、また、界面活性剤を、加えることができる。得られた溶液は一般的に均一であり、光学的に透明である。該溶液は、比較的に高い蒸気圧を有する何らかの溶媒、例えば、低級アルコール、例えば、エタノール、イソプロパノールまたはtert−ブタノールを含まない。溶液中のベンゾジアゼピンRSV阻害化合物の濃度は、好ましくは少なくとも0.1mg/ml、好ましくは少なくとも0.5mg/ml、さらに好ましくは少なくとも1mg/mlである。一般的に、ベンゾジアゼピンRSV阻害化合物の濃度は、1mg/mlから50mg/ml、例えば、2mg/mlから8mg/mlである。さらなる好ましい態様において、凍結乾燥前の該溶液は、10%から60%、例えば、30%から50%のベータ−シクロデキストリン中で、1mg/mlから10mg/ml、例えば、4mg/mlから7mg/mlのベンゾジアゼピンRSV阻害化合物(遊離塩基と当量)を含む。さらなる賦形剤、例えば、非揮発性共溶媒または界面活性剤が存在し得るが、1つの好ましい態様において、該溶液はさらなる賦形剤を含まない。
【0025】
混合後、溶液を凍結乾燥に適した容器、例えば、ガラス製バイアルに充填する。凍結乾燥サイクルは、一般的に、凍結工程、1次乾燥工程および2次乾燥工程を含む。凍結工程において、溶液を冷却する。凍結工程中の温度は、組成物中の全ての成分が完全に凍結するように選択される。例えば、適当な凍結温度は約−40℃である。製剤中の水は結晶氷となる。凍結状態の製剤の残部は結晶、非晶またはそれらの組合せであり得る。1次乾燥工程において、凍結中に形成された氷を減圧下に準環境温度(凍結温度より高いが)での昇華により除去する。例えば、昇華するために使用される庫内圧は約40milliTorrから400milliTorrであってよく、温度は−30℃から−5℃である。1次乾燥工程中、製剤は、製剤の崩壊温度(“T”)以下で、固体状態で維持されなければならない。該Tは、それ以上の温度では凍結乾燥ケーキがフリーズドライ中に巨視的構造を失い、崩壊する温度である。非晶生成物に対するガラス転移温度(“T”)または結晶生成物に対する共融温度(“T”)は、Tとほぼ同じ温度である。そして、最大凍結濃縮溶液に対するT(“T’”)は、1次乾燥中の組成物が安全である最高温度であるため、凍結乾燥サイクルの開発に重要である。1次乾燥の後、昇華により除去することができなかった残留液体を2次乾燥、すなわち、脱着により除去する。2次乾燥中の温度は凡そ環境温度またはそれ以上である。凍結乾燥後、医薬組成物はケーキとなる。このようなケーキは薬学的に許容されるものでなければならない。本明細書で使用される“薬学的に許容されるケーキ”は、非崩壊の固形医薬製品であって、ある種の望ましい特性、例えば、薬学的許容されること、長期間安定であること、短時間で再構成できること、エレガントな外観および再構成後に形成される最初の溶液の特性を維持できること、などの特性を有するものを意味する。薬学的に許容されるケーキは、固体、粉末または粒状物質であってよい。薬学的に許容されるケーキは、また、ケーキの5重量%までの水分を含んでよい。
【0026】
凍結乾燥工程中、非揮発性共溶媒、増量剤は、何れも医薬組成物から昇華されない。最終の薬学的に許容されるケーキにおいて、該ケーキは、例えば、約0%から約90%(w/w)、例えば、約5%から約80%(w/w);例えば、約10%から約70%;例えば、約20%から約60%(w/w)の非揮発性共溶媒を含む。さらに、該ケーキは、例えば、約10%から約99%(w/w);例えば、約20%から約70%(w/w);例えば、約30%から約60%(w/w)の増量剤を含む。増量剤がベータ−シクロデキストリンであるとき、該ケーキは、好都合には約50%から約99.5%(w/w)、例えば、約80%から約99.5%(w/w)、例えば、約95%から約99%(w/w)のベータ−シクロデキストリンを含む。医薬組成物または薬学的に許容されるケーキは、適当には投与単位あたり0.1mgから100mgの治療化合物、例えば、投与単位あたり0.1mg、1mg、5mg、10mg、20mg、25mg、50mgまたは100mgを含む。本明細書で使用される“薬学的に許容されるケーキ”は、非崩壊の固形医薬製品であって、ある種の望ましい特性、例えば、薬学的許容されること、長期間安定であること、短時間で再構成できること、エレガントな外観および再構成後に形成される最初の溶液の特性を維持できること、などの特性を有するものを意味する。薬学的に許容されるケーキは、固体、粉末または粒状物質であってよい。薬学的に許容されるケーキは、また、ケーキの5重量%までの水分を含んでよい。
【0027】
薬学的に許容されるケーキは、例えば、即用的に再構成することができる。全ての必要な成分(例えば、バッファー、等張剤)がケーキに存在するとき、再構成するために滅菌脱イオン水を使用し得る。あるいは、等張溶液、例えば、BaxterのPlasma−Lyte A(登録商標)またはBaxterのRinger Acetate Solutionを再構成するために使用し得る。再構成された溶液は、一般的に約0.5mg/mlから約10mg/ml、例えば、1mg/mlから4mg/mlのベンゾジアゼピンRSV阻害化合物(遊離塩基当量)を含む。好ましくは、再構成された溶液は少なくとも0.5mg/ml、少なくとも1mg/mlまたは少なくとも2mg/mlのベンゾジアゼピンRSV阻害化合物を含む。再構成された溶液は、一般的に5%から50%、例えば、10%から40%、例えば、20%から30%のベータ−シクロデキストリン、例えば、HPbCD、MbCDまたはSBEbCDを含む。再構成された溶液のpHは、好ましくは4から8、例えば、4.5から7、例えば、約5である。
【0028】
本発明の製剤は、ウイルス感染を処置するために有用である。好ましい態様において、該感染は、WO2004/026843に記載されているウイルス感染、特にRSVまたはインフルエンザウイルス、メタ肺炎ウイルス、麻疹、パラインフルエンザまたはおたふくかぜのウイルス感染である。したがって、本発明は、必要である患者、特にRSV感染を有する乳児または幼児のウイルス感染、特にRSV感染を処置するための方法であって、5から50%、好ましくは10から40%または20%から30%のベータ−シクロデキストリン(例えば、HPbCDまたはSBEbCD)を含む再構成された溶液中に有効量のベンゾジアゼピンRSV阻害化合物を含む製剤を非経腸的に(例えば、静脈内に)投与することを含む方法を提供する。
【0029】
さらなる態様において、ウイルス感染、特にRSV感染を処置するための薬剤を製造するための、ベンゾジアゼピンRSV阻害化合物およびベータ−シクロデキストリン、好ましくはHPbCDを含む、非経腸投与のために適当な医薬組成物の使用を提供する。好ましい態様において、本発明は、小児用薬剤、すなわちRSV感染を有する乳児または幼児を処置するために有用な薬剤を提供する。
【0030】
下記実施例は本発明を説明することを意図しており、これを限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0031】
実施例1
6mg/mlの(S)−1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア(遊離塩基当量)を下記のように40%のHPbCDに溶解する:
a.洗浄した混合用容器に、必要とされる計算量のWFIの90%を加え、
b.a)にシクロデキストリンを徐々に加え、全てのシクロデキストリンが溶解するまでプロペラスターラーで混合し、
c.b)に(S)−1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアベンゼンスルホン酸塩一水和物を徐々に加え、少なくとも1時間または透明な溶液が得られるまでプロペラスターラーで混合し、
d.残りのWFIを加えてバッチ容量とし、
e.0.22ミクロンフィルターを使用して溶液を濾過し、
f.6Rのバイアルに2.2mlの溶液を充填し、
g.バイアルにリオ型ゴム栓を半挿入し、
h.バイアルを凍結乾燥機に入れ、
i.表1の各工程に従って凍結乾燥サイクルを開始し、
j.サイクルの最後に棚を撤去し、完全に密栓し、
k.バイアルを取り出し、キャップを装着する。
【0032】
2.2mlまでの過剰充填により、各バイアル意図された19.19mgの(S)−1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアベンゼンスルホン酸塩一水和物を含む。
表1:凍結乾燥サイクル
【表1】

チャンバー圧力は滅菌濾過窒素を使用して制御する。該圧力はキャパシタンス・マノメーターにより測定する。
白色またはわずかに黄色がかった凍結乾燥したケーキまたは粒状物を得る。
【0033】
実施例2:
実施例1の凍結乾燥したケーキを3.8mlのRinger−Acetate SolutionまたはPlasma−Lyte A(登録商標)solution(pH6−8、Baxterから市販されている)で再構成し、20%のHPbCD中に(S)−1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア3mg/mlを含む溶液4.4mlを得る。無菌操作により、3.8mlの再構成された溶液を取り出し(シリンジを使用する)、凍結乾燥されたケーキを含むバイアルに導入する。全ての個体が溶解するまで、バイアルを回転させるか、または撹拌する。再構成された溶液は、透明で、無色からわずかに黄色がかった色である。再構成された溶液を静脈内注入できる。再構成された溶液のpHは約5である。
【0034】
実施例3:
(S)−1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア(遊離塩基当量)6mg/mlを、15mMリン酸バッファーpH7を含む40%のHPbCDに溶解する。この溶液の凍結乾燥されたケーキを3.8mlの5%のデキストロース溶液で再構成し、20%のHPbCD中に(S)−1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア3mg/mlを含む溶液4.4mlを得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性溶液中にベンゾジアゼピンRSV阻害化合物またはその薬学的に許容される塩およびベータ−シクロデキストリンを含む、非経腸製剤。
【請求項2】
RSV阻害化合物が(S)−1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアである、請求項1に記載の非経腸製剤。
【請求項3】
ベータ−シクロデキストリンがHPbCD、SBEbCDまたはMbCDである、請求項1または2に記載の非経腸製剤。
【請求項4】
10%から50%のHPbCDおよび少なくとも0.5mg/mlのRSV阻害化合物を含む、請求項3に記載の非経腸製剤。
【請求項5】
(a)ベンゾジアゼピンRSV阻害化合物;
(b)ベータ−シクロデキストリン(該ベータ−シクロデキストリンはケーキの約10から99.5重量%を構成する)
(c)所望により、非揮発性共溶媒
を含む薬学的に許容されるケーキ。
【請求項6】
(a)ベンゾジアゼピンRSV阻害化合物、水性溶媒、所望により非揮発性共溶媒および増量剤を含む溶液(該溶液は好ましくは揮発性溶媒を含まない)を形成し;そして、
(b)薬学的に許容されるケーキを形成するために該溶液を凍結乾燥する、
工程を含む薬学的に許容されるケーキを製造する方法。
【請求項7】
増量剤がベータ−シクロデキストリンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
増量剤がHPbCD、SBEbCDまたはMbCDである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
適当な容器中に少なくとも1種の請求項6、7または8に記載の薬学的に許容されるケーキを含む単一の投与形態。
【請求項10】
少なくとも1種の薬学的に許容されるケーキが水性溶液中で再構成される、請求項9に記載の単一の投与形態。
【請求項11】
水性溶液が等張溶液である、請求項10に記載の単一の投与形態。
【請求項12】
水性溶液がRinger−Acetate solutionまたはPlasmalyte Aである、請求項10または11に記載の単一の投与形態。
【請求項13】
ウイルス感染の処置をするための薬剤を製造するための、ベンゾジアゼピンRSV阻害化合物およびベータ−シクロデキストリンを含む医薬組成物の使用。
【請求項14】
薬剤がRSV感染を処置するための小児用薬剤である、非経腸投与するために適当な請求項13に記載の医薬組成物の使用。
【請求項15】
薬剤が薬学的に許容されるケーキの形態である、請求項13または14に記載の医薬組成物の使用。
【請求項16】
薬剤が少なくとも1種の再構成された薬学的に許容されるケーキである、請求項15に記載の医薬組成物の使用。
【請求項17】
必要である患者のウイルス感染を処置するための方法であって、請求項1、2、3または4に記載の製剤、または、少なくとも1つの請求項5に記載の再構成された薬学的に許容されるケーキを非経腸的に投与することを含む方法。
【請求項18】
ウイルスがRSVであり、そして患者がRSV感染を有する乳児または幼児である、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2010−510311(P2010−510311A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538399(P2009−538399)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/024246
【国際公開番号】WO2008/063634
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】