説明

ベンゾトロポロン誘導体および炎症反応の緩和

本発明は、ネオテアフラベートBおよびEGCGCaをはじめとする、一般式:
【化1】


によって表される新規ベンゾトロポロン誘導体を提供する。本発明のベンゾトロポロン誘導体は、有効な抗酸化剤および抗炎症剤である。また本発明は、高収率でベンゾトロポロン化合物を合成する新規方法と、ベンゾトロポロン含有化合物を用いて炎症性疾患を治療する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾトロポロン成分を含有する化合物、抗酸化剤および抗炎症薬剤としてのその使用、並びにかかる化合物を製造する新規方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの薬剤が、抗酸化剤および抗炎症剤として使用することを目的として開発されてきている。これらの薬剤、特に抗炎症剤には眠気、胃腸障害などの副作用があり、長期間これらの薬剤を連続投与した場合、問題が生じる。このような副作用があることから、安全で、かつ副作用を生じない、長期間投与可能な天然物由来の抗酸化剤および抗炎症薬剤が強く求められている。
【0003】
茶(Camellia sinensis (L.) Kuntze)は、世界で最もポピュラーな飲料の1つである。茶葉は、フラボノイド類(カテキン類を含む)とその誘導体に富んでいることが知られているが、これらはポリフェノール類である(少なくとも1個のヒドロキシル基を含有する1つの芳香族環からなる化合物は、モノフェノールとして分類されている。従って、ポリフェノールは、複数の芳香族環と2個以上のヒドロキシル基からなるものである。)。
【0004】
緑茶と紅茶のポリフェノール類に抗炎症活性、抗癌活性、および抗心血管疾患活性があることが多くの研究で証明されている(Vinson, 2000, Biofactors 13: 127-132; Weisburgerら, 2002, Food & Chemical Toxicology, 40: 1145-1154)。これらの生物活性は、活性酸素種(ROS)およびフリーラジカルを除去することによる抗酸化活性に起因するものと考えられる。テアフラビン類は紅茶における重要な生物学的活性成分の1つと考えられており、また緑茶のカテキン類も同様に重要な成分である。実際、混合物としてのテアフラビンの生物活性について記載している報告が多数ある。しかし、たとえ、世界中で茶が大量に毎日消費されているとしても、個々の茶成分の生物活性や薬剤としてのその使用に関して得られる情報は限られている。
【0005】
先行技術文献は多数あるが、それらには、一部が本発明でも記載されているような化学構造式を持った化合物が記載されている(Coxonら, 1970, Tetrahedron Letters, 60: 5241-5246; Leungら, 2001, The Journal of Nutrition, 2248-2251; Lewisら, 1998, Phytochemistry, 49: 2511-2519; Linら, 1999, European Journal of Pharmacology, 376: 379-388; Millerら, 1996, FEBS Letters, 392: 40-44; Obandaら, 2001, Food Chemistry, 75: 395-404; Shirakiら, 1994, Mutat. Res., 323: 29-34; Tanakaら, 2001, J. Agric. Food Chem, 49: 5785-5789; Tanakaら, 2002, J. Agric. Food Chem, 50: 2142-2148; Wanら, 1997, J. Sci. Food Agric., 74: 401-408; Wisemanら, 1997, Critical Reviews in Food Science and Nutrition, 37: 705-718; Yangら, 1997, Carcinogenesis, 18: 2361-2365)。これらの先行技術文献には、茶から単離されたポリフェノール化合物の化学的性質が記載されている。これらの化合物のうち、いくつかの化合物にはベンゾトロポロン成分が含まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、抗酸化活性および抗炎症活性を有する薬剤調製物を発見して炎症性疾患治療のための本質的な物質を同定するよう努力した。本発明者らは、共通成分としてベンゾトロポロンを含有する本発明の化合物が抗炎症活性を有すること、また、シンプルで独自の合成方法を用いることにより本発明の化合物を調製することができることを見い出した。
【0007】
本発明は、長期投与であっても安全性が高く、毎日消費される食品、飲料および/または化粧品の一部として利用可能な、フリーラジカル除去と炎症性疾患のための治療剤および予防剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その一般的な態様においては、本発明は、構造中にベンゾトロポロン成分を含み、かつ有効性のある抗炎症性作用を示し得る種々の化合物を開示する。さらに、驚いたことに、H2O2の存在下でペルオキシダーゼを用いることにより、ピロガロール単位含有分子(エピガロカテキンまたはエピガロカテキンガレート等)とカテコール単位含有分子(エピカテキンまたはエピカテキンガレート等)とを酸化カップリングさせることで、実質的に純粋な化合物を高収率で合成することができることを見い出した。
【0009】
特定の態様では、本発明は、一般式:
【化1】

【0010】
によって表される、ベンゾトロポロン含有化合物およびベンゾトロポロン誘導体を開示する。
【0011】
本発明の文脈においては、「ベンゾトロポロン含有化合物」という用語は、広い範疇の化合物、すなわち、当技術分野で既に公知のものと当技術分野で公知でないものとを意味する。本明細書で使用する「ベンゾトロポロン誘導体」という用語は、本明細書に記載されている新規化合物のみを意味し、および/または当技術分野で公知でない化合物のみを意味する。本明細書の効果を有するこれらの化合物は、当業者により製造され得る。従って、ベンゾトロポロン誘導体とは、本発明で考察した広い部類の化合物の一部である。
【0012】
一実施形態では、本発明は、1種以上のベンゾトロポロン誘導体と、場合により担体、希釈剤または賦形剤を含む、炎症性疾患の緩和および/または哺乳動物における抗酸化剤としての使用に有用な組成物を提供する。本発明のベンゾトロポロン含有化合物は、天然産物から抽出されるものであってもよく、あるいは合成的に調製されたものであってよい。また本組成物は、炎症性疾患の緩和および/または哺乳動物における抗酸化剤としての使用を目的とした生理活性成分としての薬剤成分または栄養補助食品成分またはこれらの成分の組み合わせを含み得る。
【0013】
別の実施形態では、ベンゾトロポロン含有化合物を含む組成物を投与することにより哺乳動物における炎症性疾患の進行を治療または軽減する方法を提供する。
【0014】
本発明のベンゾトロポロン含有化合物は、経口送達または非経口送達(例えば、局所投与等)に適した形態で製造することができる。経口投与の場合、本発明のベンゾトロポロン含有化合物は、薬理学的作用を発現させるのに十分な血中濃度を維持するように投与することが可能である。1日当たりの経口投与回数は、特に、本発明の化合物は毒性があったとしても最小限であるという事実を踏まえ、所望の通り設定することができる。
【0015】
さらに別の実施形態では、シンプルで調節が容易であって再現可能なベンゾトロポロン誘導体の合成方法を提供する。特にこの合成は、ペルオキシダーゼおよびH2O2の存在下で、ピロガロール単位含有子をカテコール単位含有分子と反応させることを包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一態様では、本発明は、ベンゾトロポロン含有化合物(すなわち、ベンゾトロポロン環状構造を有する化合物)を含む組成物を対象とする。ベンゾトロポロンは、多くの天然産物の共通成分である。例えば、茶で発見されたテアフラビン類はベンゾトロポロン核を含んでいる。紅茶から得ることができる主要な4つのテアフラビン類は、テアフラビン、テアフラビン-3-ガレート、テアフラビン-3'-ガレート、テアフラビン-3,3'-ジガレートである。紅茶から得ることができる他のベンゾトロポロン含有化合物は、エピテアフラビン酸、エピテアフラビン酸-3'-O-ガレート、イソテアフラビン、テアフラベートA、テアフラベートB、イソテアフラビン-3'-O-ガレート、およびネオテアフラビン-3-O-ガレートである。
【0017】
テアフラビン類は、それらの親フラボノール(すなわち、カテコールまたはジヒドロキシル化B環単位、およびピロガロールまたはトリヒドロキシル化B環単位)をキノンへ酵素的に酸化し、次いでそれらを縮合することによって得ることができる。例えば、テアフラビンは、(-)-エピカテキンと(-)-エピガロカテキンの酸化および縮合産物である化学化合物である。本発明のベンゾトロポロン含有化合物の一部の親フラボノールを下記の表1に示す。
【表1】

【0018】
本発明のベンゾトロポロン含有化合物は、茶抽出物から単離されるものであり、かつ/または特定の前駆体化合物(例えば、ピロガロール単位含有分子およびカテコール単位含有分子)の化学酸化によって合成されるものである。
【0019】
有用であって、本発明で詳しく検討した好ましいベンゾトロポロン含有化合物は、以下のとおりである。
【0020】
第1群:テアフラビン類(紅茶テアフラビンの一般的な構造):化合物番号1、2、3、4、5、6
1. テアフラビン
2. テアフラビン3-ガレート
3. テアフラビン3'-ガレート
4. テアフラビン3,3'-ジガレート
5. ネオテアフラビン
6. ネオテアフラビン3-ガレート
【化2】

【化3】

【0021】
第2群:テアフラベート(ベンゾトロポロン構造がエステル基を含有する):化合物番号7、8、9
7. テアフラベートA
8. テアフラベートB
9. ネオテアフラベートB
【化4】

【化5】

【0022】
第3群:テアフラビン酸(ベンゾトロポロン構造がカルボキシル基を含有する):化合物番号10、11、12、17
10. テアフラビン酸(CGA)
11. エピテアフラビン酸
12. エピテアフラビン酸3-ガレート
17. プルプロガリンカルボン酸
【化6】

【化7】

【化8】

【0023】
第4群:カテコール由来ベンゾトロポロン:化合物番号13、14、15、16
13. EGCCa
14. EGCGCa
15. GACa
16. プルプロガリン
【化9】

【化10】

【化11】

【0024】
第5群:ピロガロールと、茶カテキン、カテコールおよびカフェ酸との相互作用生成物:化合物18、19、20、21、22
【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【0025】
第6群:クロロゲン酸またはカフェ酸とカテキンとの相互作用生成物:化合物23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33
【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【0026】
第7群:プルプロガリン、プルプロガリンカルボン酸およびGACaの誘導体または他のベンゾトロポロン分子(OH基のHがアセテート、メチル、エチル、プロピルまたは高級アルキル基と置換されているもの)、例えば、化合物34、35および36
【化22】

【化23】

【化24】

【0027】
上記で挙げた化合物のうち、一部の化合物は、文献で既に報告されているように当業者には既に知られており、また一部の化合物は新規であって、当業者には知られていないものである。例えば、化合物9(第2群)または化合物14(第4群)、あるいは第5群〜第7群で挙げた化合物は新規である。
【0028】
別の態様では、本発明は、実質的に純粋なベンゾトロポロン含有化合物を高収率で効率的に生産することができる、シンプルで容易に調節でき且つ再現可能な独自の製造方法を対象とする。例えば、先行技術である公知の方法で得られるものに少なくとも匹敵するテアフラビンの収率は、本発明の方法に従い最もシンプルな形態で達成されている。具体的には、例えば、テアフラビン3-ガレートの場合、出発原料(親フラボノール)が各々1グラム(ECおよびEGCGが各々1g)であると、本方法により少なくとも0.2gのテアフラビン3-ガレート収量を得ることができる。本方法は、1個または複数のピロガロール単位含有分子および/または1個または複数のカテコール単位含有分子のH2O2の存在下におけるペルオキシダーゼ触媒カップリングを含む。
【0029】
例えば、本発明の方法に従って第1群〜第4群の化合物1〜17を調製するには、ペルオキシダーゼ酵素を含有する適切な緩衝液中に親フラボノールを溶解する。この混合物に酵素基質、H2O2を添加し、反応混合物を適当な溶媒により抽出する。抽出物をカラム分離に供し、適当な溶媒系で溶出するとベンゾトロポロン含有化合物が高収率で得られる。これらの化合物の合成に関する具体的な詳細は、本明細書の別の箇所に記載している。これらの実施例から、当業者は、本発明の様々なベンゾトロポロン含有化合物またはベンゾトロポロン誘導体を合成するために、どのように親化合物(または親フラボノール)および適切な試薬および条件を選択するかについて理解するであろう。
【0030】
例えば、上に挙げた化合物18〜23を調製するには、次の方法を用いることができる。まず、適当な1種または複数の親フラボノールを、西洋ワサビペルオキシダーゼと1.0mlの3.13%H2O2を含有するアセトン-pH5.0クエン酸リン酸塩緩衝液(1:10、v/v、50mL)の混合物中に溶解させる。次いで、撹拌しながら、H2Oに溶解したピロガロールの氷冷溶液を約45分間滴下添加する。この反応混合物を酢酸エチル(50ml×3)で抽出する。濃縮後、残渣をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(40%)で溶出させる。各事例における適切な親化合物は次のとおりである:EC(化合物18に対して)、ECG(化合物19に対して)、カテキン(化合物20に対して)、カテコール(化合物21に対して);カフェ酸(化合物22に対して)、およびクロロゲン酸(化合物23に対して)。
【0031】
同様に、例えば、上に挙げた化合物24〜33の調製には、次の方法を用いることができる。まず、適当な複数の親フラボノールを、西洋ワサビペルオキシダーゼを含有するアセトン-pH5.0クエン酸リン酸塩緩衝液(1:10、v/v、50mL)の混合物中に溶解させる。次いで、撹拌しながら、2.0mlの3.13%H2O2を45分間に4回添加する。この反応混合物を酢酸エチル(50ml×3)で抽出する。濃縮後、残渣をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(40%)で溶出させる。
【0032】
各事例における適切な親化合物は次のとおりである:クロロゲン酸およびガーリック酸(化合物24に対して)、クロロゲン酸およびEGC(化合物25に対して)、クロロゲン酸およびEGCG(化合物26に対して)、クロロゲン酸およびECG(化合物27に対して);クロロゲン酸およびEGCG(化合物28に対して)、カフェ酸およびECG(化合物29に対して)、カフェ酸およびEGCG(化合物30に対して)、カフェ酸およびEGC(化合物31に対して)、カフェ酸およびEGCG(化合物32に対して)、カフェ酸およびガーリック酸(化合物33に対して)。
【0033】
上に挙げた化合物34の調製については、まず、プルプロガリンを室温で一晩、ピリジン中で無水酢酸と反応させる。次いで、真空で溶媒を蒸発させた後、残渣をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(40%)で溶出させて本化合物を得る。
【0034】
上に挙げた化合物35の調製については、まず、メタノールに溶解したGACaの溶液を濃塩酸で酸性化する。次いで、混合物を撹拌、加熱して30分間還流し、次いで、酢酸エチルで抽出する。蒸発させた後、残渣を室温で一晩、ピリジン中で無水酢酸と反応させる。溶媒を真空で蒸発させた後、残渣をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(40%)で溶出させて本化合物を得る。
【0035】
上に挙げた化合物36の調製については、まず、メタノールに溶解させたプルプロガリンの溶液を濃塩酸で酸性化する。次いで、混合物を撹拌、加熱して30分間還流し、次いで、酢酸エチルで抽出する。蒸発させた後、残渣を室温で一晩、ピリジン中で無水酢酸と反応させる。溶媒を真空で蒸発させた後、残渣をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(40%)で溶出させて本化合物を得る。
【0036】
本発明の態様では、病気またはその症状(例えば、炎症)の治療または予防に有用な薬剤または栄養補助剤を含む組成物が開示される。また本発明の組成物は、抗酸化剤としても使用することができる。本組成物中の薬剤または栄養補助剤は、生理活性物質として少なくとも1種のベンゾトロポロン化合物またはその誘導体を含む。本組成物は、液体、固体または粉末の形態に製剤化し、それを必要とする哺乳動物(ヒトを含む)に投与することができる。
【0037】
本明細書で用いられる薬剤とは、合成的に生成された生理活性化合物であり、この場合、合成的に生成された生理活性化合物に対して構造上同一で、天然由来の類似体は存在しない。あるいは、薬剤は、食品または食品添加物または栄養補助食品以外の、天然起源(例えば、植物および植物生産物)に由来した生物活性化合物である。本明細書で検討した栄養補助食品は、疾病の予防および/または治療をはじめとする、健康効果または医療効果の向上を提供する食品または食品添加物または栄養補助食品を意味する。栄養補助食品は、1種以上の食物(食品)成分、例えば、ミネラル、ビタミン、ハーブ、もしくはハーブエキス、炭水化物、脂肪、タンパク質、またはこれらの成分の組み合わせを補給するために用いられものである。
【0038】
本発明の組成物中で用いられる薬剤または栄養補助剤は、本組成物中の生物活性化合物としてのベンゾトロポロン化合物またはその誘導体に加えて、特定の病気を治療または予防するために従来用いられている化合物(例えば、イブプロフェン、アスピリン、NSAID類、ビタミンE、および/またはオレンジピール抽出物または他のハーブエキス;WO01/21137号を参照されたい。なおこの公報の内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)をさらに含み得る。また本発明で用いられる薬剤および栄養補助食品は、ベンゾトロポロン含有化合物の対応する塩をさらに含むが、これは、薬剤または栄養補助食品と同様の作用を実質的に達成する。本発明の実施形態では、本組成物における栄養補助剤は、場合により、特定の病気の治療または予防を目的とした本組成物中の薬剤の効力を改善するために使用され得る。同様に、本組成物における薬剤は、場合により、特定の病気の治療または予防を目的とした本組成物中の栄養補助剤の効力を改善するために使用され得る。あるいは、薬剤および栄養補助食品を組み合わせて、好適な製剤へ加工することができる。
【0039】
既に記載した通り、本発明の組成物は、生理活性物質として、有効量の少なくとも1種のベンゾトロポロン化合物またはその誘導体を含む。一実施形態では、1種以上のベンゾトロポロン化合物またはその誘導体が本組成物中で用いられる。それらは、少なくとも1種のベンゾトロポロン化合物またはその誘導体が炎症性疾患の治療または予防に有効な量で存在するという条件において、0から全有効量に及ぶ範囲の量、あるいは0から全有効比率または有効量以下の量に及ぶ範囲の量で存在する。例えば、1つの組成物は、ベンゾトロポロン含有化合物または誘導体として、有効量のEC、ピロガロール(すなわち、上述の化合物18)を含み得る。さらに、例えば、本組成物は、追加のベンゾトロポロン含有化合物または誘導体として、ネオテアフラベートBおよび/またはEGCGCaを含み得る。この追加のベンゾトロポロン含有化合物または誘導体は、0から抗炎症化合物または抗酸化剤として有効な量の一部もしくは全量で存在し得る。追加のベンゾトロポロン含有化合物の存在は、本組成物の効果に影響を及ぼさないが、これら化合物は、本組成物中のベンゾトロポロン含有化合物または誘導体の効果を改善することができる(または相乗的に作用することができる)。
【0040】
別の態様では、本発明はまた、本明細書に記載したベンゾトロポロン含有化合物を含む組成物の抗酸化活性も開示する。酸素ラジカル吸収能力(ORAC)アッセイ(フリーラジカル除去能力の測定法である)は、酸素ラジカル吸収能力を測定するのに簡単で感度のよい方法である。このアッセイは、食品や栄養補助食品の成分の抗酸化活性を測定するためにこれまで広く用いられてきている。ORACアッセイは、Caoら, 1993, Free Radical Biol. Med. 14: 303-311によって開発された。このアッセイでは、β-フィコエリトリン(β-PE)を蛍光指示タンパク質として使用し、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド(AAPH)をペルオキシラジカル発生剤として使用した。β-PEは、紅藻類で発見された光合成タンパク質である。β-PEは、その識別可能な励起と放射波長(Ex.540nm、Em.565nm)のため、蛍光プローブとして使用されてきた。しかし、蛍光プローブとしてβ-PEを使用した場合、ある欠点がある。活性酸素種がβ-PEを攻撃すると、β-PEは蛍光を容易に消失する可能性がある。さらに、ORAC値は、ポリフェノールとタンパク質の間で起こり得る相互作用によって影響を受ける可能性がある。近年、Ouら, 2001, J. Agric. Food Chem., 49: 4619-4626は、蛍光プローブとしてβ-PEの代わりにフルオレセインを用いる改良型ORAC方法を報告した。従って、本発明の化合物の抗酸化活性を試験するためのORACアッセイでは、蛍光プローブとしてフルオレセインを用いる。
【0041】
本発明のさらに別の態様では、本発明は、本明細書に記載したベンゾトロポロン含有化合物を含んでいる組成物を用いて、動物における炎症を予防および/または治療する方法を対象とする。緑茶と紅茶のポリフェノールには抗炎症活性があることが、かなりの疫学的証拠とともに、多くの研究から明らかになっている。本発明のベンゾトロポロン含有化合物の抗炎症活性(または抗浮腫)は、12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセテート(TPA)を用いて、TPA-誘発炎症性皮膚浮腫アッセイにより試験することができる。皮膚にTPAを適用するとオルニチンデカルボキシラーゼ活性が誘導され、それによって、当該部位で、ポリアミンレベルおよび表皮過形成、および炎症、並びに炎症促進サイトカイン(例えば、IL-1β)とプロスタグランジン(プロスタグランジンE2)の産生が高まる。ベンゾトロポロン含有化合物は、皮膚組織(例えば、マウスの耳)にTPAを局所適用する前後に、あるいはそれと同時に適用することができる。
【0042】
実際、12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセテート(TPA)-誘発浮腫とオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)活性に対するいくつかの紅茶ポリフェノール類(テアフラビン、テアフラビン-3-ガレートとテアフラビン-3'-ガレートの混合物、テアフラビン-3,3'-ジガレートを含む)、および緑茶ポリフェノール(-)-エピガロカテキン-3-ガレート(EGCG)の抑制作用が最近研究されている(Liangら, 2002, Nutrition and Cancer 42(2): 217-223)。実験マウスに対してこれらのポリフェノール類を局所適用した場合、TPA誘発耳浮腫と皮膚表皮のODC活性が抑制された。
【0043】
3種類のテアフラビンと抗炎症活性との構造-活性相関を説明するため、当分野で一般に認められている可能性が2つある。
(a) TF-3分子は13個のOH(フェノール)基を有し、TF-2は10個のOH基を有し、TF-1は7個のOH基を有していることから、OH基が多くなるほど抗炎症活性が強くなる。
(b) TF-3は2個のガレート基を含み、TF-2は1個のガレート基を含み、TF-1はガレートを含まないことから、ガレート基が多くなるほど抗炎症活性が強くなる。
【0044】
しかしながら、本発明者らは思いがけず、この説明が妥当でないことと、重要であるのはベンゾトロポロン単位または部分の存在であり、これがまさに抗炎症特性を付与するものであり得ることを見出した。例えば、OH基の数と抗炎症活性との間に関係はないことが判明した。EGCCaなどの没食子性の基を含んでいない化合物の多くがテアフラビンモノガレートに匹敵する活性を示した。下記の実施例Vを参照されたい。本発明の抗炎症剤のうち、ベンゾトロポロン誘導体が好ましい。
【0045】
本発明の方法において有用な組成物は、任意の適切な手段または経路によって、動物(特に哺乳動物、好ましくはヒト)に投与することができる。経口投与が好ましいが、非経口投与および局所投与などの他の投与経路を用いることができる。本発明の化合物は、単独で投与可能であるか、あるいは、投与方法に応じて製薬上許容可能な担体または希釈剤と混合することができる。例えば、経口投与の場合、本発明の化合物は、粉末としてその純粋な形態で投与可能であり、あるいは、標準的な製薬上の慣例に従って、錠剤、カプセル剤、ロゼンジ、シロップ剤、エリキシル剤、溶液、懸濁液等の剤形で投与することができる。
【0046】
経口送達または局所送達を問わず、本発明の化合物および誘導体を含む組成物の効果は、動物モデル系で認められている技術(Salaら, 2003, European Journal of Pharmacology 461(1): 53-61; Ukiyaら, 2001, Journal of Agricultural and Food Chemistry 49(7): Huangら, 2003, Protective effect of dibenzoylmethane on chemically- and UV light-induced skin, inflammation, sunburn lesions, and skin carcinogenesis in mice, In: Food Factors in Health Promotion and Disease Prevention, F. Shahidi, C.-T. Ho, S. WatanabeおよびT. Osawa. Washington, D.C, American Chemical Society: 196-207; Huangら, 1988, Cancer Research. 48: 5941-5946)を使用することによって、本明細書で明らかにしている。以下の実施例の節で記載しているベンゾトロポロン含有化合物の抗炎症活性に関する詳細を参照されたい。実施例から理解され得るように、本発明のベンゾトロポロン含有化合物は、実際、in vivoにおいて有効である。
【0047】
ベンゾトロポロン化合物または誘導体の日用量は適切に決定され、特に限定されるものではない。しかし、ほとんどの場合、治療を要する患者に対する有効量は、1日当たり、0.1mg/kg体重〜300mg/kg体重であろう。いずれの場合においても、本発明の活性化合物は、治療した患者においていかなる重篤な副作用を起こすことなく、所望の治療効果を達成する治療上の有効量で投与される。各活性化合物に関する治療上の有効量は、当業者には明らかなように、使用する化合物の活性、緩和しようとする疾患の重症度、治療する患者の全体重、投与経路、治療する患者の年齢および感受性等(これらに限定されるものではない)の各種要因に応じて変わり得る。投与量は、種々の要因が経時的に変化した場合に調節する。
【実施例】
【0048】
以下の実施例により本発明をさらに説明する。下記の実施例は、別段の詳細な記載がない限り、当業者に周知であって、慣用である標準の技術を用いて行った。本実施例は例示であって、本発明を限定するものではない。
【0049】
I. テアフラビン混合物の合成
テアフラビンの混合物は、酵素的酸化法を使用し、それらの親フラボノールから合成した。
具体的には、濾過後、未精製緑茶ポリフェノール(1.8g、80%のカテキンを含有する市販の試料)をセファデックスLH-20カラムに直接入れ、まず95%のエタノールで溶出させて非カテキンフラボノイド類を除去し、次いで、アセトンでそのカラムを溶出して茶カテキン(1.34g)の混合物を得た。この茶カテキン類を4mgの西洋ワサビペルオキシダーゼを含有するpH5の緩衝液(50mL)中に溶解させた。撹拌しながら、3.0mLの3.13%H2O2を1時間に5回添加した。カテキンと未精製ペルオキシダーゼを含有する酵素反応溶液は、酸化反応中に赤みがかった溶液へと変化した。この反応混合物を酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。濃縮後、残査(0.97g)をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(35%〜50%)で溶出した。350mgのテアフラビン混合物を得た。
【0050】
II. 茶カテキン類の調製
濾過後、未精製緑茶ポリフェノール(10g)をセファデックスLH-20カラムに直接入れ、95%エタノールで溶出させて3種類のカテキン、すなわち、エピカテキンガレート(ECG)、エピガロカテキン(EGC)およびエピガロカテキンガレート(EGCG)を得た。各カテキンは、メタノール-水溶媒系で溶出させるRP C-18カラムを通してさらに精製した。
【0051】
III. 純粋ベンゾトロポロン含有化合物の合成
種々のベンゾトロポロン含有化合物は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(H2O2の存在下)またはポリフェノールオキシダーゼを用いることによって、ピロガロール単位含有分子(例えば、エピガロカテキン)とカテコール単位含有分子(例えば、エピカテキン)の酵素的酸化カップリングによって合成した。
【0052】
以下の分析手順を用いた。薄層クロマトグラフィーは、Sigma-AldrichシリカゲルTLCプレート(厚さ250μm、粒子径2〜25μm)上で行い、スポットはUV照射により検出し、エタノール溶液に溶解した5%(v/v)H2SO4を用いてスプレーした。1H NMRスペクトルは、Varian 600の機器(Varian Inc., Palo Alto, CA)によって得た。化合物は、内部標準としてTMSを用いてCH3OH-d4中で分析した。APCI-質量スペクトルは、データ分析用のDigital DECPC XL 560コンピューターを備えたMicromass Platform IIシステム(Micromass Co., Beverly, MA)で記録した。
【0053】
A. ペルオキシダーゼ触媒によるベンゾトロポロン含有化合物の合成
以下の17種類のベンゾトロポロン含有化合物は、H2O2の存在下、西洋ワサビペルオキシダーゼによって触媒されるピロガロール単位含有分子とカテコール単位含有分子との反応によって合成した。
【0054】
1. テアフラビン
EC(1g)およびEGC(1g)を、4mgの西洋ワサビペルオキシダーゼを含有したアセトン-pH5.0クエン酸リン酸塩緩衝液(1:10、v/v、50mL)の混合物中に溶解させた。撹拌しながら、2.0mlの3.13%H2O2を45分間に4回添加した。この反応混合物を酢酸エチル(50ml×3)によって抽出した。濃縮後、残査をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(40%)で溶出した。250mgのテアフラビンを得た。
1H NMR (CD3OD, 600 MHz): δH 7.97 1H s, 7.85 1H s, 7.34 1H s, 6.02 1H d, J=2.4 Hz, 5.99 1H d, J=2.4 Hz, 5.97 1H d, J=2.4 Hz, 5.96 1H d, J=2.4 Hz, 5.64 1H brs, 4.91 1H brs, 4.45 1H d, J=2.4 Hz, 4.32 1H brs, 2.98 1H dd, J=4.8, 16.8 Hz, 2.94 1H dd, J=4.8, 16.8, 2.84 1H brd, J=16.8 Hz, 2.82 1H brd, J=16.8 Hz; 13C NMR (CD3OD, 150 MHz): δC 185.1, 158.1, 158.0, 157.6, 157.5, 157.3, 156.6, 155.1, 150.9, 146.1, 134.4, 131.2, 129.0, 126.6, 123.7, 121.9, 118.3, 100.3, 99.8, 96.8, 96.1, 96.0, 81.2, 77.1, 66.7, 65.6, 30.0, 29.4 ppm。
【0055】
2. テアフラビン3-ガレート
EC(1)およびEGCG(1g)を4mgの西洋ワサビペルオキシダーゼを含有したアセトン-pH5.0クエン酸リン酸塩緩衝液(1:10、v/v、50mL)の混合物中に溶解させた。撹拌しながら、2.0mlの3.13%H2O2を45分間に4回添加した。この反応混合物を酢酸エチル(50ml×3)によって抽出した。濃縮後、残査をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(45%)で溶出した。220mgのテアフラビン3-ガレートを得た。
1H NMR (CD3OD, 600 MHz): δH 7.91 1H s, 7.80 1H s, 7.38 1H s, 6.80 2H s, 6.02 1H d, J=1.8 Hz, 6.00 1H d, J=2.4 Hz, 5.99 2H s, 5.78 1H brs, 5.55 1H brs, 5.11 1H s, 4.16 brd, J=2.4 Hz, 3.07 dd, J=4.8, 16.8 Hz, 2.99 dd, J=4.2, 16.8, 2.91 brd, J=16.8 Hz, 2.83 brd, J=16.8 Hz; 13C NMR (CD3OD, 150 MHz): δC 185.6, 167.4, 158.0, 157.9, 157.8, 157.3, 156.4, 156.3, 155.4, 151.2, 146.4, 146.3, 139.9, 133.5, 131.3, 128.7, 125.7, 123.8, 121.9, 121.0, 117.0, 110.1, 100.2, 99.3, 96.9, 96.8, 96.2, 95.8, 79.8, 77.0, 69.0, 65.7, 30.1, 27.1 ppm。
【0056】
3. テアフラビン3'-ガレート
ECG(1g)およびEGC(1g)を4mgの西洋ワサビペルオキシダーゼを含有したアセトン-pH5.0クエン酸リン酸塩緩衝液(1:10、v/v、50mL)の混合物中に溶解させた。撹拌しながら、2.0mlの3.13%H2O2を45分間に4回添加した。この反応混合物を酢酸エチル(50ml×3)によって抽出した。濃縮後、残査をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(45%)で溶出した。110mgのテアフラビン3'-ガレートを得た。
1H NMR (CD3OD, 600 MHz): δH 7.88 1H s, 7.87 1H s, 7.37 1H s, 6.84 2H s, 6.06 d, J=2.4 Hz, 6.00 1H d, J=2.4 Hz, 5.98 1H d, J=2.4 Hz, 5.97 d, J=2.4 Hz, 5.87 brs, 5.81 1H brd J=3.0 Hz, 4.94 1H brs, 4.33 1H brs, 3.09 1H dd, J=4.8, 17.4 Hz, 2.96 1H dd, J=4.8, 16.8, 2.88 1H brd, J=17.4 Hz, 2.86 dd, J=2.4, 16.8 Hz; 13C NMR (CD3OD, 150 MHz): δC 185.6, 167.2, 158.0, 157.9, 157.8, 157.7, 157.0, 156.6, 156.0, 155.5, 151.1, 146.2, 139.7, 134.8, 130.3, 128.8, 125.9, 123.0, 121.9, 120.9, 118.3, 99.8, 99.6, 96.8, 96.7, 95.8, 95.7, 81.2, 75.8, 68.3, 66.5, 29.3, 27.2 ppm。
【0057】
4. テアフラビン3,3'-ジガレート
ECG(1g)およびEGCG(1g)を4mgの西洋ワサビペルオキシダーゼを含有したアセトン-pH5.0クエン酸リン酸塩緩衝液(1:10、v/v、50mL)の混合物中に溶解させた。撹拌しながら、2.0mlの3.13%H2O2を45分間に4回添加した。この反応混合物を酢酸エチル(50ml×3)によって抽出した。濃縮後、残査をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(45%)で溶出した。100mgのテアフラビン3,3'-ジガレートを得た。
1H NMR (CD3OD, 600 MHz): δH 7.79 1H s, 7.76 1H s, 7.47 1H s, 6.88 2H s, 6.80 2H s, 6.07 1H d, J=2.4 Hz, 6.03 2H d, J=2.4 Hz, 6.00 1H d, J=2.4 Hz, 5.86 1H brs, 5.76 1H m, 5.67 1H m, 5.21 1H s, 3.17 1H dd, J=4.8, 16.8 Hz, 3.09 1H dd, J=4.8, 17.4, 2.91 2H m。
【0058】
5. ネオテアフラビン
C(カテキン)(0.8g)およびEGC(0.8g)を4mgの西洋ワサビペルオキシダーゼを含有したアセトン-pH5.0クエン酸リン酸塩緩衝液(1:10、v/v、50mL)の混合物中に溶解させた。撹拌しながら、2.0mlの3.13%H2O2を45分間に4回添加した。この反応混合物を酢酸エチル(50ml×3)によって抽出した。濃縮後、残査をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(45%)で溶出した。120mgのネオテアフラビンを得た。
1H NMR ((CD3)2CO, 600 MHz): δH 8.26 1H s, 7.46 1H s, 7.63 1H s, 6.06 d, J=2.4 Hz, 6.03 d, J=2.4 Hz, 5.96 d, J=2.4 Hz, 5.95 d, J=2.4 Hz, 5.62 d, J=7.8 Hz, 5.01 1H s, 4.39 1H m, 4.15 1H m, 2.97 dd, J=5.4, 15.6 Hz, 2.91 dd, J=4.2, 16.8, 2.84 dd, J=1.2, 16.8 Hz, 2.66 dd, J=9.6, 15.6 Hz; 13C NMR ((CD3)2CO, 150 MHz): δC 184.8, 157.6, 157.5, 157.4, 157.0, 156.7, 156.6, 154.4, 150.5, 146.2, 134.8, 132.2, 130.8, 128.6, 122.3, 121.6, 119.2, 100.7, 99.2, 96.4, 96.3, 95.6, 95.4, 81.5, 79.1, 69.5, 66.6, 30.0, 29.3 ppm。
【0059】
6. ネオテアフラビン3-ガレート
C(1g)およびEGCG(1g)を4mgの西洋ワサビペルオキシダーゼを含有したアセトン-pH5.0クエン酸リン酸塩緩衝液(1:10、v/v、50mL)の混合物中に溶解させた。撹拌しながら、2.0mlの3.13%H2O2を45分間に4回添加した。この反応混合物を酢酸エチル(50ml×3)によって抽出した。濃縮後、残査をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(45%)で溶出した。170mgのネオテアフラビン3-ガレートを得た。
1H NMR (CD3OD, 600 MHz): δH 8.04 1H s, 7.59 1H s, 7.49 1H s, 6.92 2H s, 6.01 2H d, J=2.4 Hz, 5.98 1H d, J=2.4 Hz, 5.97 1H d, J=2.4 Hz, 5.67 1H brs, 5.56 1H brd, J= 6.6 Hz, 5.11 1H s, 4.22 1H m, 3.03 1H dd, J=4.8, 17.4 Hz, 2.92 1H brd, J=16.8 Hz, 2.83 1H dd, J=4.8, 16.8, 2.66 dd, J=8.4, 16.8; 13C NMR (CD3OD, 150 MHz): δC 185.8, 167.4, 158.0, 157.9, 157.8, 156.7, 156.5, 155.3, 151.6, 146.9, 146.2, 139.9, 134.0, 132.0, 130.4, 127.7, 122.3, 121.0, 117.6, 110.2, 100.6, 99.2, 96.9, 96.7, 95.9, 95.6, 80.5, 77.1, 69.9, 68.8, 28.5, 27.0 ppm。
【0060】
7. テアフラベートA
ECG(0.85g)を2mgの西洋ワサビペルオキシダーゼを含有したpH5.0緩衝液(1:10、v/v、50mL)中に溶解させた。撹拌しながら、1.5mlの3.13%H2O2を30分間に3回添加した。この反応混合物を酢酸エチル(50ml×3)によって抽出した。濃縮後、残査をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(45%)で溶出した。60mgのテアフラベートAを得るとともに、600mgのECGを回収した。
1H NMR (CD3OD, 600 MHz): δH 8.33 1H s, 7.81 1H s, 7.65 1H s, 6.87 1H dd, J=1.8, 7.8 Hz, 6.85 1H d, J=1.8 Hz, 6.80 2H, s, 6.53 1H d, J=7.8 Hz, 6.15 1H d, J=2.4 Hz, 6.11 1H d, J=2.4, 6.09 1H d, J=2.4 Hz, 5.98 1H, d, J=2.4 Hz, 5.69 1H brs, 5.64 1H brs, 5.52 1H, brd, J= 3.6 Hz, 5.11 1H s, 3.32 dd, J=4.8, 18.0 Hz, 3.10 dd, J=4.8, 18.0 Hz, 3.05 dd, J=1.8, 16.8 Hz, 2.91 d, J=16.8; 13C NMR (CD3OD, 150 MHz): δC 186.8, 167.8, 167.3, 158.2, 158.1, 158.0, 157.9, 157.2, 157.1, 155.3, 149.5, 146.4, 146.3, 146.0, 140.0, 133.5, 131.2, 126.6, 124.8, 122.9, 122.6, 121.0, 119.0, 116.4, 115.8, 114.2, 110.2, 100.0, 99.4, 97.3, 97.2, 96.5, 96.4, 78.0, 75.6, 72.1, 68.9, 27.3, 26.7 ppm。
【0061】
8. テアフラベートB
EC(0.5g)およびECG(0.5g)を2mgの西洋ワサビペルオキシダーゼを含有したアセトン-pH5.0クエン酸リン酸塩緩衝液(1:10、v/v、50mL)の混合物中に溶解させた。撹拌しながら、2.0mlの3.13%H2O2を45分間に4回添加した。この反応混合物を酢酸エチル(50ml×3)によって抽出した。濃縮後、残査をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(45%)で溶出した。200mgのテアフラベートBを得た。
1H NMR (CD3OD, 600 MHz): δH 8.26 1H s, 7.88 1H s, 7.59 1H s, 6.87 1H dd, J=1.8, 7.8 Hz, 6.86 1H d, J=1.8 Hz, 6.55 1H d, J=7.8 Hz, 6.16 1H d, J=2.4 Hz, 6.08 1H d, J=2.4, 6.05 1H d, J=2.4 Hz, 5.98 1H, d, J=2.4 Hz, 5.66 1H brs, 5.46 1H brs, 5.08 1H s, 4.14 1H brs, 3.34 dd, J=4.8, 16.8 Hz, 3.21 dd, J=4.8, 16.8 Hz, 3.17 dd, J=3.6, 16.2 Hz, 2.88 d, J=16.8; 13C NMR (CD3OD, 150 MHz): δC 186.4, 167.8, 158.3, 158.0, 157.9, 157.7, 157.4, 157.1, 154.9, 151.8, 149.5, 146.3, 146.0, 134.8, 132.3, 131.3, 126.5, 124.4, 123.7, 122.4, 119.2, 116.3, 115.8, 114.4, 100.7, 99.5, 97.2, 97.1, 96.6, 96.5, 78.1, 77.0, 72.1, 66.7, 30.0, 26.7 ppm。
【0062】
9. ネオテアフラベートB
C(0.5g)およびECG(0.5g)を2mgの西洋ワサビペルオキシダーゼを含有したアセトン-pH5.0クエン酸リン酸塩緩衝液(1:10、v/v、50mL)の混合物中に溶解させた。撹拌しながら、2.0mlの3.13%H2O2を45分間に4回添加した。この反応混合物を酢酸エチル(50ml×3)によって抽出した。濃縮後、残査をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(45%)で溶出した。90mgのネオテアフラベートBを得た。
1H NMR (CD3OD, 600 MHz): δH 8.77 1H s, 7.64 1H s, 7.61 1H s, 6.88 1H d, J=1.8 Hz, 6.82 1H dd, J=1.8, 8.4 Hz, 6.64 1H d, J=8.4 Hz, 6.03 1H d, J=2.4 Hz, 5.98 1H d, J=2.4, 5.96 2H brs, 5.58 1H brs, 5.38 1H brd, J=7.2 Hz, 5.04 1H s, 4.07 1H m, 3.03 dd, J=4.8, 16.8 Hz, 2.95 brd, J=16.8, 2.91 dd, J=4.8, 16.8 Hz, 2.66 dd, J=3.6, 16.2 Hz; 13C NMR (CD3OD, 150 MHz): δC 186.6, 167.7, 157.9, 157.7, 157.3, 157.0, 156.8, 154.7, 152.3, 149.8, 146.0, 145.8, 135.0, 134.3, 131.2, 128.8, 124.0, 122.5, 119.0, 116.2, 115.8, 114.4, 101.2, 99.2, 97.0, 96.8, 96.1, 95.9, 79.7, 78.0, 72.0, 69.6, 29.6, 26.6 ppm。
【0063】
10. テアフラビン酸(CGA)
C(0.5g)および没食子酸(0.5g)を2mgの西洋ワサビペルオキシダーゼを含有したアセトン-pH5.0クエン酸リン酸塩緩衝液(1:10、v/v、50mL)の混合物中に溶解させた。撹拌しながら、2.0mlの3.13%H2O2を45分間に4回添加した。この反応混合物を酢酸エチル(50ml×3)によって抽出した。濃縮後、残査をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(45%)で溶出した。60mgのテアフラビン酸と20mgのプルプロガリンカルボン酸を得た。
1H NMR (CD3OD, 600 MHz): δH 9.00 1H s, 7.82 1H s, 7.66 1H s, 5.98 1H d, J=2.4 Hz, 5.91 1H d, J=2.4, 5.43 1H brd, J=7.2 Hz, 4.21 1H, m, 2.94 dd, J=4.8, 16.2 Hz, 2.64 dd, J=4.8, 16.2 Hz; 13C NMR (CD3OD,150 MHz): δC 186.6, 170.3, 157.9, 157.6, 156.6, 154.7, 152.2, 149.3, 139.5, 134.4, 132.2, 128.9, 125.0, 122.7, 116.5, 100.7, 96.8, 96.1, 80.0, 69.1, 29.3 ppm。
【0064】
11. エピテアフラビン酸
エピカテキン(EC)(0.5g)および没食子酸(1g)を2mgの西洋ワサビペルオキシダーゼを含有したアセトン-pH5.0クエン酸リン酸塩緩衝液(1:10、v/v、50mL)の混合物中に溶解させた。撹拌しながら、2.0mlの3.13%H2O2を45分間に4回添加した。この反応混合物を酢酸エチル(50ml×3)によって抽出した。濃縮後、残査をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(45%)で溶出した。70mgのエピテアフラビン酸と25mgのプルプロガリンカルボン酸を得た。
1H NMR (CD3OD, 600 MHz): δH 8.60 1H s, 7.95 1H s, 7.80 1H s, 6.09 1H s, 6.00 1H s, 5.88 1H s, 5.77 1H m, 3.17 1H dd, J=4.8, 17.4 Hz, 2.94 1H d, J=17.4 Hz; 13C NMR (CD3OD, 150 MHz): δC 186.5, 170.1, 158.2, 157.7, 157.2, 155.0, 151.6, 149.2, 134.2, 132.2, 126.7, 125.2, 123.4, 122.6, 116.2, 99.2, 96.8, 96.1, 77.0, 66.4, 30.0 ppm。
【0065】
12. エピテアフラビン酸3-ガレート
ECG(0.5g)および没食子酸(1g)を2mgの西洋ワサビペルオキシダーゼを含有したアセトン-pH5.0クエン酸リン酸塩緩衝液(1:10、v/v、50mL)の混合物中に溶解させた。撹拌しながら、2.0mlの3.13%H2O2を45分間に4回添加した。この反応混合物を酢酸エチル(50ml×3)によって抽出した。濃縮後、残査をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(45%)で溶出した。20mgのエピテアフラビン酸3-ガレート、40のテアフラベートAおよび10mgのプルプロガリンカルボン酸を得た。
1H NMR (CD3OD, 600 MHz): δH 8.64 1H s, 7.84 1H s, 7.83 1H s, 6.83 2H s, 6.02 1H d, J=2.4 Hz, 5.98 1H d, J=2.4, 5.61 1H s, 4.37 1H, m, 3.03 1H dd, J=4.8, 16.8 Hz, 2.87 d, J=16.8 Hz; 13C NMR (CD3OD, 150 MHz): δC 186.5, 170.1, 167.1, 158.0, 156.9, 155.1, 151.7, 148.9, 146.2, 139.8, 132.8, 131.6, 126.8, 122.6, 122.5, 120.8, 116.3, 110.0, 99.3, 96.9, 96.0, 75.7, 68.6, 27.2 ppm。
【0066】
13. EGCCa
EGC(1g)およびカテコール(1.5g)を2mgの西洋ワサビペルオキシダーゼを含有したアセトン-pH5.0クエン酸リン酸塩緩衝液(1:10、v/v、50mL)の混合物中に溶解させた。撹拌しながら、2.0mlの3.13%H2O2を45分間に4回添加した。この反応混合物を酢酸エチル(50ml×3)によって抽出した。濃縮後、残査をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(45%)で溶出した。226mgのEGCCaを得た。
1H NMR (C5D5N, 600 MHz): δH 8.15 1H s, 7.99 1H s, 7.66 1H d, J=8.4 Hz, 7.41 1H d, J=8.4 Hz, 6.75 1H brs, 6.74 1H brs, 5.23 1H s, 4.76 1H, s, 3.67 d, J=16.2 Hz, 3.44 dd, J=3.6, 16.2 Hz; 13C NMR (C5D5N, 150 MHz): δC 184.9, 158.8, 157.2, 151.8, 151.4, 147.8, 134.6, 134.5, 132.0, 126.4, 123.3, 121.2, 119.9, 119.8, 99.9, 97.1, 96.0, 81.8, 66.6, 30.3 ppm。
【0067】
14. EGCGCa
EGCG(1g)およびカテコール(1.5g)を2mgの西洋ワサビペルオキシダーゼを含有したアセトン-pH5.0クエン酸リン酸塩緩衝液(1:10、v/v、50mL)の混合物中に溶解させた。撹拌しながら、2.0mlの3.13%H2O2を45分間に4回添加した。この反応混合物を酢酸エチル(50ml×3)によって抽出した。濃縮後、残査をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(45%)で溶出した。230mgのEGCGCa(エピガロカテキノカテコールガレート)を得た。
1H NMR (C5D5N, 600 MHz) : δH 8.01 1H s, 7.97 1H s, 7.54 1H d, J=8.4 Hz, 7.29 1H d, J=8.4 Hz, 6.74 1H d, J=2.4 Hz, 6.70 1H d, J=2.4, 6.18 1H s, 5.38 1H, s, 3.71 d, J=17.4 Hz, 3.51 dd, J=3.0, 17.4 Hz; 13C NMR (C5D5N, 150 MHz): δC 185.0, 166.8, 159.0, 158.8, 156.9, 155.4, 151.9, 148.1, 147.7, 141.4, 134.5, 133.0, 131.6, 126.4, 123.2, 121.2, 120.8, 118.8, 110.4, 98.9, 97.5, 96.0, 80.1, 69.1, 27.5 ppm。
【0068】
15. GACa
没食子酸(2g)およびカテコール(2g)を4mgの西洋ワサビペルオキシダーゼを含有したアセトン-pH5.0クエン酸リン酸塩緩衝液(1:10、v/v、50mL)の混合物中に溶解させた。撹拌しながら、2.0mlの3.13%H2O2を45分間に4回添加した。この反応混合物を酢酸エチル(50ml×3)によって抽出した。濃縮後、残査をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(45%)で溶出した。400mgのGACaを得た。
1H NMR (C5D5N, 600 MHz): δH 8.08 1H brs, 7.68 1H dd, J=1.2, 8.4 Hz, 7.56 1H d, J=8.4 Hz, 7.19 1H s; 13C NMR (C5D5N, 150 MHz): δC 186.0, 169.6, 154.8, 152.6, 150.5, 140.0, 130.2, 128.8, 125.6, 123.0, 121.6, 117.9 ppm。
【0069】
16. プルプロガリン
ピロガロール(1g)およびカテコール(1.5g)を2mgの西洋ワサビペルオキシダーゼを含有したアセトン-pH5.0クエン酸リン酸塩緩衝液(1:10、v/v、50mL)の混合物中に溶解させた。撹拌しながら、2.0mlの3.13%H2O2を45分間に4回添加した。この反応混合物を酢酸エチル(50ml×3)によって抽出した。濃縮後、残査をセファデックスLH20カラムに供し、アセトン-水溶媒系(45%)で溶出した。300mgのプルプロガリンを得た。
1H NMR (C5D5N, 600 MHz): δH 7.35 1H d, J=11.4 Hz, 7.29 1H s, 7.24 1H d, J=9.6 Hz, 6.66 1H dd, J=9.6, 11.4 Hz; 13C NMR (C5D5N, 150 MHz): δC 183.4, 156.3, 154.0, 153.3, 137.1, 135.1, 134.4, 123.8, 116.8, 116.2, 112.0 ppm。
【0070】
17. プルプロガリンカルボン酸
1H NMR (CD3OD, 600 MHz): δH 8.17 1H s, 7.66 1H s, 6.94 1H s; 13C NMR (CD3OD, 150 MHz): δC 184.0, 170.0, 156.6, 154.4, 153.2, 152.2, 137.8, 134.2, 125.9, 123.0, 116.3, 114.5 ppm。
【0071】
上述の合成した17種類の化合物のうち、ネオテアフラベートB(化合物9)とEGCGCa(化合物14)は、当技術分野では知られていない新規化合物である。残りの化合物については当技術分野で公知である。すなわち、化合物1〜8と10〜12は紅茶から同定されており、化合物13と15〜17は化学的酸化法によるものが報告されている。しかしながら、先行技術で公知の化合物は、ペルオキシダーゼ触媒による酸化反応以外の方法によって合成されたものである。
かくして、17種類の異なるベンゾトロポロン含有化合物は、ペルオキシダーゼ/H2O2系によって合成された。
【0072】
B. ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)触媒によるベンゾトロポロン含有化合物の合成
未精製ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)は、地元市場から購入したフルーツのバナナから単離した。簡単に説明すると、新鮮なバナナ(400g)を100mMの冷却リン酸緩衝液(pH7.0、4℃)800mLでホモゲナイズした。ホモゲナイズしたこの溶液を20分間4℃にて遠心分離にかけた(10,000g)。透明な上清を、氷浴中に入れたフラスコへ慎重に回収した。次いで、同量の冷却アセトン(一晩、冷凍庫中に入れておいたもの)を、撹拌しながらその回収溶液中へゆっくりと添加した。得られたタンパク質の沈殿物を4℃で遠心分離によって回収した(10,000g、20分間)。遠心分離後、上清を廃棄し、得られたペレットを3回、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)で慎重に洗浄した。次いで、同一緩衝液でそのペレットを溶解させ、凍結乾燥した。
【0073】
酵素活性は比色法によって測定した。酵素反応溶液は、0.1Mのカテコール溶液2mL、リン酸緩衝液(50mM、pH7.0)1mL、および酵素溶液20μlから構成されていた。酵素活性は、5分間(25℃)、420nmで吸光度を増加させながら測定した。PPO活性は、毎分吸光度を0.001増加させる酵素量として定義した。
【0074】
PPO触媒による酸化反応では、以下のパラグラフに記載したように、9種類の化合物が合成された。この節で呼称されている化合物の番号は、実施例の節の上述の第III部、Aに記載されている化合物の番号に対応する。
【0075】
1. テアフラビンの酵素的酸化と単離
EC(1g、3.5mmol)およびEGC(1g、3.3mmol)を、未精製PPO酵素2gと共に、クエン酸リン酸塩緩衝液(50mM、pH5.0)200mL中に溶解させた。撹拌しながら6時間、室温にて、酵素的酸化を行った。次いで、反応溶液を、同量の酢酸エチルで3回分離した。次いで、有機層を減圧下で濃縮した。得られた残査をセファデックスLH-20カラムクロマトグラフイーに供し、エタノール〜エタノール中20%アセトンの勾配で溶出させた。回収した14画分(各約90mL)のうち、8〜10の画分を合わせ、減圧下で濃縮した。得られた残査をRP-18シリカゲルカラムでさらに精製し、40%〜50%のメタノール水溶液の勾配で溶出させた。溶出中、38画分(各約13mL)を回収した。それらのうち、10〜17の画分を合わせ、減圧下で濃縮し、凍結乾燥させた。これによって、深い赤みがかった色調の化合物1(280mg)を得た。
【0076】
同様の酵素反応と単離手順に従い、ECとEGCGの反応から化合物2を得た。EGCとECGの酵素的酸化、ECGとEGCGの反応によって、それぞれ、化合物3および化合物4が得られた。
【0077】
2. 茶カテキン(ECおよびECG)と没食子酸の酵素反応
EC(1.160g、4.0mmole)および没食子酸(0.520g、4.0mmole)をクエン酸リン酸塩緩衝液(50mM、pH5.0)100mL中に溶解し、未精製PPO酵素1.2gを撹拌しながらこの反応溶液に添加した。酵素的酸化を3.5時間室温にて行った。反応後、この溶液を同量の酢酸エチルで3回抽出した。次いで、酢酸エチル抽出物を真空で濃縮した。次いで、得られた残査をセファデックスLH-20に供し、エタノール〜エタノール中20%アセトンの勾配で溶出させた。回収した168の画分(各約15mL)のうち、47〜52の画分を合わせ、減圧下でそれを濃縮した。得られた残査をRP-18シリカゲルカラムに供し、20%〜50%のメタノール水溶液の勾配で溶出させ、化合物5を得た。次いで、セファデックスLH-20から単離された72〜85の画分を合わせ、それをRP-18カラムクロマトグラフイーに供し、10%〜50%のメタノール水溶液の勾配で溶出させて化合物6を単離した。
【0078】
ECG(0.66g)および没食子酸(0.26g)をクエン酸リン酸塩緩衝液(50mM、pH5.0)50mL中に溶解し、未精製PPO酵素1.2gをこの反応溶液へ溶解させた。酵素的酸化を5時間室温にて行った。次いで、同量の酢酸エチルを用いて3回この反応溶液を抽出した。次いで、有機層を減圧下で濃縮した。得られた残査をセファデックスLH-20に供し、エタノール〜エタノール中20%アセトンの勾配で溶出させた。回収した128の画分(各約15mL)のうち、18〜20の画分を合わせ、減圧下でそれを濃縮した。得られた残査をRP-18シリカゲルカラムでさらに精製し、20%〜50%のメタノール水溶液の勾配で溶出させ、化合物7を得た。37〜48の画分を合わせ、それをさらに精製するためRP-18カラムクロマトグラフイーに供し、10%〜30%のメタノール水溶液の勾配で溶出させて化合物8を得た。90〜108の画分を合わせ、RP-18カラムクロマトグラフイーに供し、40%〜50%のメタノール水溶液の勾配で溶出させて化合物9を得た。
【0079】
IV. 酸素ラジカル吸収能(ORAC)アッセイ
酸素ラジカル吸収能(ORAC)アッセイを実施し、個々のテアフラビンおよびエピテアフラビン酸の抗酸化活性を試験した。すべての試薬は75mMリン酸緩衝液(pH5.5)中で調製した。反応混合物は、フルオレセイン溶液(8.16×10−5mM)3mL、500μLのAAPH(153mM)、および500μLの試料溶液またはブランクからなっている。AAPHを添加してすぐに、放射および励起波長をそれぞれ515nmおよび493nmとして、HitachiモデルF-3010蛍光分光光度計を用いて1分毎に蛍光を測定した。ORAC値は、試験化合物の存在下のフルオレセインの蛍光減衰曲線下面積を標準トロロックス(Trolox)とブランクによって生成される面積と比較することによって算出した。曲線下の正味面積とORAC値は、Caoら(Caoら、1993)によって提供された式によって算出した。
【0080】
ORAC相対値(トロロックス当量)は、次の方程式で算出した。
ORAC相対値 = [(AUC試料−AUCブランク)/(AUCトロロックス−AUCブランク)]×(トロロックスのモル濃度/試料のモル濃度)
曲線下の面積(AUC)は、次の方程式に従って算出した。
AUC = 1+f1/f0+f2/f0+f3/f0+f4/f0......+f119/f0+f120/f0
f0は0分で計測される最初の蛍光であり、fiは時間iで計測される蛍光である。
【0081】
種々の濃度(0〜4μM)におけるトロロックスのペルオキシルラジカル吸収活性を示す蛍光消光曲線を基準として用いた(データは示さず)。蛍光消光曲線の正味面積は、トロロックス濃度の増加に比例して増加した。テアフラビンとEGCGの蛍光消光曲線を試験した(データは示さず)。試験した同一濃度(0.5μM)では、テアフラビンがEGCGよりも高い抗酸化活性を有していることがORAC値(表2)から明らかであった。また、エピテアフラビン酸およびEGCGの蛍光消光曲線も試験した(データは示さず)。エピテアフラビン酸のORAC値は、これらの化合物がEGCGよりもわずかに高い抗酸化活性を有していることを示した。
【表2】

【0082】
V. ベンゾトロポロン含有化合物の抗炎症活性
TPA(12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセテート)で誘発した耳浮腫のアッセイを実施し、皮膚炎モデルにおけるベンゾトロポロン含有化合物の抗炎症作用を証明した。アセトン20μlとアセトン20μl中ベンゾトロポロン含有化合物を用いて、雌CD-1マウス(24〜25日齢)を20分間局所的に処理し、その後、アセトン20μlまたはアセトン20μl中TPA(1nmol)を局所適用した。次いで、5時間後、すべてのマウスを頸椎脱臼によりsacrificeした。耳パンチ(直径6mm)を得て秤量した。
【0083】
下記の表3にその結果を示す。種々のベンゾトロポロン含有化合物が、強い抑制作用を示した。
【表3】

【0084】
これらの結果は、Liangら, 2002, Nutrition and Cancer 42(2): 217-223による最近の報告書からは予測されないものである。Liangは、紅茶中の主要な3種類のテアフラビンについて抗炎症活性を比較した。彼らが試験した3種類の化合物は、TF-1(すなわちテアフラビン、上記実施例の化合物1)、TF-2(すなわち、テアフラビン3-ガレートおよびテアフラビン3'-ガレートの混合物、上記実施例の化合物2および化合物3の混合物)、ならびにTF-3(すなわちテアフラビン3,3'-ジガレート、上記実施例の化合物4)であった。Liangが使用した抗炎症試験法は、本発明で使用した方法と同じであった。Liangらの報告(Liangらの文献の表1を参照)によれば、TF-3の抗炎症活性がTF-2より強く、またTF-2がTF-1よりも強いはずであることは明らかである。
【0085】
また、TPA誘発耳浮腫アッセイを実施し、皮膚炎モデルにおける長期炎症(擬似慢性炎症)に対するベンゾトロポロン含有化合物の効果も証明した。雌CD-1マウス(3〜4週齢)をCharles River Breeding Laboratories(Kingston, NY)から購入した。テアフラビン関連化合物は上述のようにして調製した。このテアフラビン混合物は、実質的にテアフラビン(約33重量%)、テアフラビン-3-ガレート(約17重量%)、テアフラビン-3'-ガレート(約17重量%)、およびテアフラビン-3,3'-ジガレート(約33重量%)からなっていた。アセトン、12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセテートおよび他の化学物質は、Sigma Chemicals(St. Louis, MO)から購入した。1mL当たり、0.4MのNaCl、0.05%のTween-20、0.5%のウシ血清アルブミン、0.1mMのフェニルメチルスルホニルフルオライド、0.1mMのベンゼトニウム、10mMのEDTA、および20KIアプロチニンを含有するリン酸緩衝生理食塩水を用いて、マウスの耳組織試料をホモゲナイズした。
【0086】
マウスはそれぞれ6〜7匹の6つの群に分けた。すべての試験化合物はアセトン中に溶解させた。アセトンは炎症を誘発しないことから、溶媒(ネガティブ)コントロールとして利用した。またTPAコントロール群は、マウス耳において最大の炎症誘導を示すために保持した。
【0087】
CD-1マウスの両耳を、20μLのアセトン(溶媒コントロール群)、TPA(TPAコントロール)または20μLアセトン中の試験化合物で20分間処理し、次いで、マウス耳にアセトン(溶媒コントロール)または0.4nmolのTPAを局所適用した。この処理は、3.5日間、1日に2回続けた(合計7回の処理)。処理期間が終了した時点でマウスを頸椎脱臼によりsacrificeし、両耳をパンチした。パンチした耳(直径6mm)を別々に秤量し、マウス耳の炎症レベルを計測した。
【0088】
各群から得たパンチ耳を合わせ、リン酸緩衝生理食塩水でホモゲナイズした。得られたホモジェネートを遠心分離にかけ、酵素免疫検定法(ELISA)を用いて、上清を様々な炎症性バイオマーカーのレベルについて試験した。
【0089】
炎症の程度は、パンチ耳の重量と、ロイコトリエンB4(LTB4)およびインターロイキン-6(IL-6)などの炎症の重要なバイオマーカーを測定することにより計測した。パンチ耳の重量(図1)、並びに炎症性バイオマーカー、すなわち、IL-6(図2)およびLTB4(図3)に示されるように、テアフラビン混合物、EGCCaおよびEGCGCaは、耳の炎症を抑制した。データは、TPA誘発マウス耳浮腫(TPA処理)に対して標準化した。
【0090】
この明細書に記載したすべての刊行物、特許および特許出願は、本発明が関係する当業者の水準を示している。これらのすべての刊行物、特許および特許出願の内容は、各刊行物、特許または特許出願が参照によって詳しく個別に組み入れられることを示唆するように、その同じ範囲について参照により本明細書に組み入れるものとする。
【0091】
上述の本発明は、理解を明瞭にするために、具体例および実施例によってかなり詳細に記載しているが、特定の変更および改変が添付の特許請求の範囲内で実施できることは明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】CD-1マウスの耳におけるTPA誘発炎症に対するテアフラビン混合物(TFs)、EGCCaおよびEGCGCaの効果を示す図である。
【図2】CD-1マウスの耳におけるTPA誘発炎症とインターロイキン-6(IL-6)の産生に対するTFs、EGCCaおよびEGCGCaの効果を示す図である。
【図3】CD-1マウスの耳におけるTPA誘発炎症とロイコトリエンB4(LTB4)の産生に対するTFs、EGCCaおよびEGCGCaの効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
【化1】

(式中、R1は、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基であるか、または、インドリル基、フェニル基、ベンジル基、ピリジニル基、ピロリル基およびチオフェニル基からなる群から選択される複素環基であり;
式中、R2は、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基であるか、または、インドリル基、フェニル基、ベンジル基、ピリジニル基、ピロリル基およびチオフェニル基からなる群から選択される複素環基であり;
式中、R3は、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基であるか、または、インドリル基、フェニル基、ベンジル基、ピリジニル基、ピロリル基およびチオフェニル基からなる群から選択される複素環基である)
によって表されるベンゾトロポロン誘導体。
【請求項2】
誘導体がネオテアフラベートBまたはその塩もしくはエステルである、請求項1に記載のベンゾトロポロン誘導体。
【請求項3】
誘導体がEGCGCa(エピガロカテキノカテコールガレート)またはその塩もしくはエステルである、請求項1に記載のベンゾトロポロン誘導体。
【請求項4】
薬剤もしくは栄養補助食品またはその組み合わせを含む組成物であって、前記薬剤または栄養補助食品が抗炎症剤または抗酸化剤としての効果があり、前記薬剤、栄養補助食品またはその組み合わせが、活性成分として、有効量の請求項1に記載のベンゾトロポロン誘導体を含む、前記組成物。
【請求項5】
ベンゾトロポロン誘導体がネオテアフラベートBまたはEGCGCaではないことを条件として、薬剤または栄養補助食品がネオテアフラベートBもしくはEGCGCaまたはその塩もしくはエステルを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
薬剤または栄養補助食品がネオテアフラベートBまたはその塩もしくはエステルを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
薬剤または栄養補助食品がEGCGCaまたはその塩もしくはエステルを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
ネオテアフラベートBまたはEGCGCaが、抗炎症剤または抗酸化剤として有効な十分量で存在する、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
活性成分として、有効量の請求項1に記載のベンゾトロポロン誘導体またはその製薬上許容可能な塩を含有する抗炎症剤。
【請求項10】
炎症性疾患の治療方法であって、それを必要とする対象に、炎症性疾患を治療するのに有効な量の精製ベンゾトロポロン誘導体を含む組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項11】
投与する組成物中の前記ベンゾトロポロン誘導体が、1日当たり体重1kgにつき約0.5〜約1000mgの用量である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
投与する組成物中の前記ベンゾトロポロン誘導体が、1日当たり体重1kgにつき約1〜約500mgの用量である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ベンゾトロポロン誘導体を局所投与する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ベンゾトロポロン誘導体を経口投与する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記ベンゾトロポロン誘導体を非経口投与する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
炎症性疾患の進行を治療または軽減する方法であって、それを必要とする対象に、ベンゾトロポロン誘導体と製薬上許容可能な担体、獣医学上許容可能な担体、栄養補助食品担体および食品からなる群から選択される担体とを含む組成物を投与することを含み、前記対象がヒトまたは家畜動物である、前記方法。
【請求項17】
担体が製薬上許容可能な担体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
対象がヒトである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
担体が食品である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
組成物が栄養補助食品である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
患者のフリーラジカルを中和する方法であって、かかる治療を必要とする患者に、ベンゾトロポロン誘導体、またはテアフラビン、テアフラビン-3-ガレート、テアフラビン-3,3'-ガレート、エピテアフラビン酸、エピテアフラビン酸ガレートおよびEGCGからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む薬剤または栄養補助剤を含んでなる有効量の組成物を投与することを含み、前記化合物が精製されており、かつ少なくとも約0.5%の濃度で存在する、前記方法。
【請求項22】
ベンゾトロポロン誘導体が少なくとも約0.5%の濃度で存在する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
組成物が、まだ選択されていない第2のベンゾトロポロン誘導体をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
第2のベンゾトロポロン誘導体が、ネオテアフラベートBもしくはEGCGCaまたはその塩もしくはエステルである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
組成物が薬剤を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
組成物が栄養補助剤を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
ペルオキシダーゼおよびH2O2の存在下において、ピロガロール単位含有分子をカテコール単位含有分子と反応させることによりベンゾトロポロン誘導体を合成する方法。
【請求項28】
反応分子がエピカテキン(EC)およびエピガロカテキン(EGC)である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
反応分子がエピカテキン(EC)およびエピガロカテキンガレート(EGCG)である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
反応分子がエピカテキンガレート(ECG)およびエピガロカテキン(EGC)である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
反応分子がエピカテキンガレート(ECG)およびエピガロカテキンガレート(EGCG)である、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
反応分子がカテキン(C)およびエピガロカテキン(EGC)である、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
反応分子がカテキン(C)およびエピガロカテキンガレート(EGCG)である、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
反応分子がエピカテキンガレート(ECG)である、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
反応分子がECおよびECGである、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
反応分子がCおよびECGである、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
反応分子がCおよび没食子酸である、請求項27に記載の方法。
【請求項38】
反応分子がECおよび没食子酸である、請求項27に記載の方法。
【請求項39】
反応分子がECGおよび没食子酸である、請求項27に記載の方法。
【請求項40】
反応分子がEGCおよびカテコールである、請求項27に記載の方法。
【請求項41】
反応分子がEGCGおよびカテコールである、請求項27に記載の方法。
【請求項42】
反応分子が没食子酸およびカテコールである、請求項27に記載の方法。
【請求項43】
反応分子がピロガロールおよびカテコールである、請求項27に記載の方法。
【請求項44】
反応分子がピロガロール類である、請求項27に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−504168(P2007−504168A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524941(P2006−524941)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/028164
【国際公開番号】WO2005/021479
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(505031163)ウエルジェン,インコーポレーテッド (2)
【出願人】(506067914)ラトガーズ,ザ ステイト ユニバーシティー オブ ニュージャージー (1)
【Fターム(参考)】