説明

ベンゾピラノン化合物、その組成物および癌の治療または予防方法

本発明は、ベンゾピラノン化合物、ベンゾピラノン化合物を含む組成物、および、有効量のベンゾピラノン化合物を投与することを含む、癌を治療もしくは予防するため、または癌細胞もしくは新生物細胞の増殖を抑制するための方法に関する。ベンゾピラノン化合物は、式(I)を有し、またはその薬学的に許容される塩である。
【化1】


〔式中、Rはハロゲン、トリフルオロメチルまたはC1−6アルキルである。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2002年10月15日出願の米国仮出願第60/418,469号の利益を主張し、その全文を参照により本明細書に援用する。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、癌を治療または予防するためのベンゾピラノン化合物、ベンゾピラノン化合物を含む組成物、およびベンゾピラノン化合物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.発明の背景
2.1 癌
癌は、所定の正常組織に由来する異常細胞数の増大、その異常細胞による隣接組織の侵襲、または悪性細胞の局所的リンパ節および遠隔位へのリンパ節もしくは血液による拡散(転移)を主な特徴としている。臨床データおよび分子生物学的研究は、癌がわずかな前新生物変化で開始し、特定の条件下で新生物へと進行しうる多段階の過程であることを示している。新生物病変は、クローン性で進化し、特に新生物細胞が宿主の免疫監視を回避する条件下では、侵襲、増殖、転移および不均一性の能力が増大する(Roitt, I., Brostoff, J and Kale, D., Immunology, 17.1-17.12 (3rd ed., Mosby, St. Louis, Mo. , 1993))。
【0004】
癌のわずかに数種のみであるが以下に説明する。
【0005】
他の種の癌の特徴は、医療従事者には周知であり、医学文献に記載されている。
【0006】
2.2 脳癌および脳転移
毎年約10,000件の脳腫瘍が発生し、また毎年約4000件の脊髄腫瘍が発生する(Kornblith et al.(1985), Cancer : Principles and Practice of Oncology, 2nd Ed., DeVita, V., Hellman, S., Rosenberg, S., eds., J.B. Lippincott Company, Philadelphia, Chapter 41 :Neoplasms of the Central Nervous System)。中枢神経系(CNS)腫瘍は若年患者において最も多く発生する充実性腫瘍の群である(同上)。神経膠腫が全原発性CNS腫瘍の約60%を占め、最も多く発生する脳原発性腫瘍は星状細胞腫、髄膜腫、乏突起膠腫および組織細胞リンパ腫である(同上)。神経膠腫は通常脳の大脳半球に起るが、視神経、脳幹または小脳などの他の部分でも起ることがある(Brain Tumor Society; www/tbts.org/primary.htm)。
【0007】
神経膠腫は、それが発生する膠細胞のタイプによって分類される。最も多く発生する膠細胞のタイプは星状細胞腫である。この腫瘍は、星状細胞と呼ばれる星状膠細胞から発生する。星状細胞腫にはその悪性度によって悪性度の等級がつけられている。悪性度IおよびIIの星状細胞腫とも呼ばれる低悪性度星状細胞腫は悪性度が最も低く、ゆっくりと増殖し、多くの場合手術により完全に除去することができる。悪性度III星状細胞腫とも呼ばれる中悪性度星状細胞腫はより速く増殖し、より悪性である。悪性度III星状細胞腫は、手術とそのあとの放射線療法および一部化学療法で治療される。悪性度IV星状細胞腫とも呼ばれる高悪性度星状細胞腫は、速く増殖し、近隣の組織を浸潤し、非常に悪性である。悪性度IV星状細胞腫は通常手術とそのあとの放射線療法と化学療法の組み合せで治療される。多形性膠芽腫は悪性度IV星状細胞腫であり、これは最も悪性なもので、致命的な原発性脳腫瘍である(同上)。
【0008】
歴史的には、星状細胞腫の治療では、腫瘍除去の手術とそのあとの放射線療法が行なわれてきた。化学療法を放射線療法の前か後に行なってもよい(Kornblith et al.(1985), Cancer :Principles and Practice of Oncology, 2nd Ed., DeVita, V., Hellman, S., Rosenberg, S., eds., J.B. Lippincott Company, Philadelphia, Chapter 41: Neoplasms of the Central Nervous System)。同じ手術手法および手術原理が多形性膠芽腫と悪性度の低い脳腫瘍に行なわれてきたが、多形性膠芽腫瘍の完全除去はより難しいものであった。
【0009】
悪性度IVの星状細胞脳腫瘍があると診断された患者の予後は統計的によくない。悪性度Iの星状細胞を治療した人は普通再発することなく10年以上生存できるが、悪性度IV星状細胞腫瘍をもつ患者の平均生存期間は手術処置から15週間である。悪性度IV星状細胞腫瘍の腫瘍増殖能力が高いため、手術のみの治療の1年後では患者のたったの5%が生存し、2年後ではほぼ0%の生存率である。手術による処置と組み合せた放射線治療では治療2年後の生存率は約10%に上がる。しかしながら、実際5年より長く生存する患者はいない(同上)。
【0010】
2.3 現行の癌治療
現在のところ、癌療法は、患者の新生物細胞を根絶するために、手術、化学療法、および/または放射線治療を必要とする(たとえば、Stockdale, 1998, "Principles of Cancer Patient Management", Scientific American: Medicine, vol. 3, Rubenstein and Federman, eds., Chapter 12, Section IVを参照されたい)。これらの手法はすべて、患者にとって顕著な欠点を伴う。たとえば、手術は、患者の健康によっては禁忌になることもあるし、または患者に受け入れがたいこともある。さらに、手術では、新生物組織を完全に除去しえない可能性もある。放射線療法は、照射される新生物組織が正常組織よりも放射線に対して高い感受性を呈する場合にのみ効果があり、しかも放射線療法は、多くの場合、重篤な副作用を引き起こす可能性がある(上掲文献参照)。化学療法に関しては、新生物疾患の治療に利用可能なさまざまな化学療法剤が存在する。しかしながら、さまざまな化学療法剤が利用可能であるにもかかわらず、化学療法は多くの欠点を有する(たとえば、Stockdale, 1998, "Principles Of Cancer Patient Management" Scientific American Medicine, vol. 3, Rubenstein and Federman, eds., Ch. 12, sect. 10を参照されたい)。ほとんどすべての化学療法剤は有毒であり、化学療法は、重度の悪心、下痢、骨髄抑制、免疫抑制などを含めて、顕著でかつ多くの場合危険な副作用を引き起こす。このほか、多くの腫瘍細胞は、多剤耐性により化学療法剤に対して耐性があるかまたは耐性を獲得する。
【0011】
脳腫瘍の治療にはニトロソ尿素化学療法薬が通常使われる。この化合物の鍵となる特性は、それが血液−脳関門を横断することができるという能力である。この化合物のうち1−3−ビス−2−クロロエチル−1−ニトロソ尿素(BCNU, カルムスチンとも呼ばれる)が臨床的に最初に使われた。手術および/または放射線治療と組み合せたBCNUの使用は有効であることが示されているが、多形性膠芽腫脳腫瘍を治すには至っていない。さらに、長期に亘るニトロソ尿素治療による合併症が報告されている(Cohen et al.(l976), Cancer Treat. Rep. 60, 1257-1261)。この合併症には肺線維症、肝障害、腎不全、およびニトロソ尿素治療に伴う二次性腫瘍の症例が含まれる。
【0012】
癌治療にエストロゲン受容体モジュレータータモキシフェンおよびラロキシフェンを使う研究も行なわれている。タモキシフェンは、再発性悪性神経膠腫の治療を行なうヒト臨床試験で使われている(Couldwell et al. (1996), Clin. Cancer Res. 2,619-622)。ラロキシフェンは、ネズミモデルにおいて尾腫瘍の肺への転位を抑制することが報告されている(Neubauer et al. (1995), Prostate 27,220-229)。
【0013】
手術、放射線療法および化学療法の治療計画は悪性度IVの星状細胞脳腫瘍をもつ患者の寿命をそこそこ長くするチャンスを与えるものであるが、それぞれの療法に伴うリスクは多い。治療の恩恵は少なく、治療により患者の残っている短い寿命のクオリティが大きく低下することがある。
【0014】
従って、上記した伝統的療法の欠点を克服する抗癌性化合物および治療方法に対して当技術分野で明確なニーズが依然としてある。
【0015】
本出願明細書の第2節における参考文献の記載および引用は、その参考文献が本出願に対して先行技術となるということを認めるものではない。
【発明の開示】
【0016】
3.発明の概要
本発明は、式(I):
【化1】

【0017】
〔式中、Rはハロゲン、トリフルオロメチルまたはC1−6アルキルである。〕
の化合物およびその薬学的に許容される塩に関する。
【0018】
式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩(それぞれ「ベンゾピラノン化合物」である)は、患者における癌の治療または予防に有用である。
【0019】
本発明はまた、有効量のベンゾピラノン化合物および薬学的に許容される担体またはビヒクルを含む組成物に関する。該組成物は、患者における癌の治療または予防に有用である。
【0020】
本発明はさらに、癌の治療または予防を必要とする患者に、有効量のベンゾピラノン化合物を投与することを含む癌の治療または予防方法に関する。
【0021】
本発明はまたさらに、癌細胞または新生物細胞と有効量のベンゾピラノン化合物とを接触させることを含む癌細胞または新生物細胞の増殖を抑制する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
4.発明の詳細な説明
4.1 定義
本明細書で使用する用語「C1−6アルキル」とは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の非環式炭化水素鎖を意味する。代表的な直鎖C1−6アルキルとしては、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−n−ブチル、−n−ペンチルおよび−n−ヘキシルが挙げられる。代表的な分枝鎖C1−6アルキルとしては、−イソプロピル、−sec−ブチル、−イソブチル、−tert−ブチル、−イソペンチル、−ネオペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、3−エチルブチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、および3,3−ジメチルブチルが挙げられる。
【0023】
本明細書で使用する用語「C1−4アルキル」とは、1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の非環式炭化水素鎖を意味する。代表的な直鎖C1−4アルキルとしては、−メチル、−エチル、−n−プロピルおよび−n−ブチルが挙げられる。代表的な分枝鎖C1−6アルキルとしては、−イソプロピル、−sec−ブチル、−イソブチル、および−tert−ブチルが挙げられる。
【0024】
本明細書で使用する用語「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。
【0025】
本明細書で使用する用語「予防する」「予防している」および「予防」には、患者における癌の再発、拡張または発症を防止することが含まれる。
【0026】
本明細書で使用する用語「治療する」「治療している」および「治療」には、原発性、局所性または転移性癌組織の根絶、除去、改変または調節、ならびに癌の拡散の最小化または遅延が含まれる。
【0027】
本明細書で使用する用語「患者」とは、動物、例えば限定するものではないが、ヒト、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギまたはモルモットなどの動物を意味し、一実施形態においては哺乳動物、別の実施形態ではヒトを意味する。特定の実施形態において、患者は、幼児期、青年期または成人でありうる。
【0028】
本明細書でベンゾピラノン化合物に関して使用する用語「有効量」とは、癌の治療または予防に有効なベンゾピラノン化合物の量を意味する。
【0029】
本明細書で使用する用語「薬学的に許容される塩」としては、限定されるものではないが、式(I)の化合物の酸性基の塩または塩基性基の塩が挙げられる。本質的に塩基性である本方法および組成物において包含される化合物は、各種の無機および有機酸と様々な塩を形成することができる。そのような塩基性化合物の薬学的に許容される酸付加塩を生成させるのに用いることができる酸は、非毒性の酸付加塩、すなわち薬理学上許容される陰イオンを含む塩を生成するものであり、例えば、限定するものではないが、硫酸、クエン酸、マレイン酸、酢酸、シュウ酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、過リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サルチル酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩))の塩が挙げられる。上記した酸に加えて、アミノ部分を含む本方法および組成物において包含される化合物は、各種のアミノ酸と医薬上または化粧品上許容される塩を生成することもできる。本質的に酸性である本方法および組成物において包含される化合物は、各種の薬理学上または化粧品上許容される陽イオンと塩基塩を生成することができる。そのような塩の例としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、特にカルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウムリチウム塩、亜鉛塩、カリウム塩、および鉄塩が挙げられる。
【0030】
本明細書で使用する略語「DMAP」とは4−ジメチルアミノピリジンを意味する。
【0031】
本明細書で使用する略語「DMF」とはジメチルホルムアミドを意味する。
【0032】
本明細書で使用する略語「NBS」とはN−ブロモスクシンイミドを意味する。
【0033】
本明細書で使用する略語「AIBN」とは2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを意味する。
【0034】
本明細書で使用する略語「DME」とはジメチルエーテルを意味する。
【0035】
本明細書で使用する略語「DIAD」とはジイソプロピルアゾジカルボキシレートを意味する。
【0036】
本明細書で使用する略語「CDI」とは1,1’−カルボニルジイミダゾールを意味する。
【0037】
本明細書で使用する略語「MTBE」とはメチルt−ブチルエーテルを意味する。
【0038】
本発明は、本発明の非限定的実施形態の例示を目的とする以下の詳細な説明、および実施例を参照することによりより十分に理解することができる。
【0039】
4.2 ベンゾピラノン化合物
上述したように、本発明は、式(I):
【化2】

【0040】
〔式中、Rはハロゲン、トリフルオロメチルまたはC1−6アルキルである。〕
のベンゾピラノン化合物、およびその薬学的に許容される塩に関する。
【0041】
一実施形態において、Rはハロゲンである。
【0042】
別の実施形態において、Rはトリフルオロメチルである。
【0043】
別の実施形態において、RはC−Cアルキルである。
【0044】
別の実施形態において、RはC−Cアルキルである。
【0045】
具体的なベンゾピラノン化合物を以下の表1に示す。
【化3】

【0046】
【表1】

【0047】
4.3 ベンゾピラノン化合物の取得方法
ベンゾピラノン化合物は、当業者により公知の方法ならびに本明細書に開示する合成経路によって調製することができる。例えば、ベンゾピラノン化合物は以下の一般的な反応スキーム1または反応スキーム2によって合成することができる。
【化4】

【0048】
反応スキーム1により、Rがフルオロである式(I)のベンゾピラノン化合物が得られる。
【化5】

【0049】
反応スキーム2により、Rがフルオロ以外である式(I)のベンゾピラノン化合物が得られる。
【0050】
ベンゾピラノン化合物のいくつかは、水または他の有機溶媒と溶媒和物を形成することもある。そのような溶媒和物も同様に本発明の範囲内に含まれる。
【0051】
4.4 ベンゾピラノン化合物の治療および予防用途
ベンゾピラノン化合物の活性により、ベンゾピラノン化合物は獣医学およびヒト医学において有利なことに有用である。特に、ベンゾピラノン化合物は、癌の治療または予防に有用である。
【0052】
一実施形態において、癌は、頭部、頚部、眼、口腔、咽喉、食道、胸部、骨、肺、大腸、直腸、胃、前立腺、乳房、卵巣、精巣もしくは他の生殖器、皮膚、甲状腺、血液、リンパ節、腎臓、肝臓、膵臓、および脳または神経系の腫瘍である。
【0053】
別に実施形態において、癌は転移したものである。特定の実施形態において、転移した癌は、肺(小細胞および非小細胞のいずれも)、乳房、原発腫瘍不明、黒色腫または結腸を起源とする。
【0054】
別の実施形態において、癌は原発性脳腫瘍である。
【0055】
特定の実施形態において、本発明において治療または予防対象の癌としては、限定されるものではないが、原発性頭蓋内中枢神経系腫瘍が挙げられる。原発性頭蓋内中枢神経系腫瘍には、例えば多形性膠芽腫、悪性星状細胞腫、乏突起膠腫、上衣細胞腫、低悪性度星状細胞腫、髄膜腫、間葉腫瘍、下垂体腫瘍、シュワン細胞腫などの髄鞘腫瘍、中枢神経系リンパ腫、髄芽細胞腫、未分化神経外胚葉性腫瘍、神経細胞腫瘍および神経細胞/膠細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫瘍、または脈絡叢腫瘍が含まれる。
【0056】
他の実施形態において、本発明において治療または予防対象の癌としては、限定されるものではないが原発性脊髄腫瘍、例えばシュワン細胞腫、髄膜腫、上衣細胞腫、肉腫、星状細胞腫、神経膠腫、血管腫瘍、脊索腫および類表皮腫などが挙げられる。
【0057】
他の実施形態において、本発明において治療または予防対象の癌としては、限定されるものではないが、脳転移に寄与する原発性腫瘍、例えば肺(小細胞および非小細胞のいずれも)、乳房、原発腫瘍不明、黒色腫または結腸である。
【0058】
獣医学的用途のために動物、あるいは臨床的用途のためにヒトなどの患者に投与する場合、ベンゾピラノン化合物は単離された形態でありうる。「単離された」とは、投与の前に、ベンゾピラノン化合物を、合成有機化学反応の混合物、または天然の生成物源、例えば植物、組織培養、細菌ブロスなどの他の成分から分離することを意味する。一実施形態において、ベンゾピラノン化合物は、通常の方法、例えば抽出とそのあとのクロマトグラフィー、再結晶、あるいは他の通常の方法により単離する。単離された形態では、ベンゾピラノン化合物は、単離されたものの少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%が単一のベンゾピラノン化合物である。「単一ベンゾピラノン化合物」とはベンゾピラノン化合物の1つのエナンチオマーまたは1つのラセミ化合物を意味する。
【0059】
ベンゾピラノン化合物は有利には組成物の形態、一実施形態においては医薬組成物の形態で投与する。これらの組成物は都合のよい経路、例えば注入またはボーラス注射により、上皮内層または粘膜・皮膚内層(例えば、口腔内粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を通しての吸収により、あるいは対流補強型医薬送達系[convection-enhanced drug delivery system]を介して投与することができ、また別の有効薬物と一緒に投与することもできる。投与は全身的または局所的であってよい。各種の送達系が知られており、例えばリポソーム、マイクロ粒子、マイクロカプセル、カプセルの中への封入であり、本発明のベンゾピラノン化合物を投与するのに用いることができる。一部の実施形態では、本発明の1以上のベンゾピラノン化合物が患者に投与される。投与の方法には、限定するものではないが、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、脳内、腟内、経皮、直腸からの、吸入による、あるいは耳、鼻、目、または皮膚への局所的な投与がある。特定の投与方法は担当の医師の判断に委ねられるものであるが、ある程度はその癌の所定の部位によって決まると考えられる。
【0060】
一実施形態において、ベンゾピラノン化合物は、別の治療剤または予防剤と組み合わせて投与される。特定の実施形態において、治療剤または予防剤は化学療法剤である。
【0061】
別の実施形態においては、1以上のベンゾピラノン化合物を、治療を必要とする部分に局所的に投与するのが望ましい場合がある。これは、例えば、限定するものではないが、手術の際の局所注入、局所適用(例えば手術の後の創傷包帯剤と組み合せて)により、注射により、カテーテルにより、坐剤により、あるいは埋め込み(そのような埋め込みは多孔質、非多孔質、またはゼラチン状物質であり、シアラスチック[sialastic]膜などの膜またはファイバーである)により行なうことができる。1つの実施形態では、原発性脳腫瘍または転移性脳腫瘍の部位(または以前の部位)での直接注射による投与である。
【0062】
一部の実施形態では、1以上のベンゾピラノン化合物を中枢神経系の中に、脳室内注射および髄鞘内注射などの好適な経路により導入するのが望ましいと考えられる。脳室内注射は、例えばオマヤレザバーなどのレザバーに取り付けられた脳室内カテーテルによって容易に行なうことができる。
【0063】
経肺的投与も用いることができ、例えば、吸入器または噴霧器および、エアロゾル化剤が入った製剤を使用することにより、あるいはフルオロカーボンまたは合成肺界面活性剤中の灌流を介して行なうことができる。一部の実施形態では、ベンゾピラノン化合物は、慣用の結合剤およびトリグリセリドなどの担体を用いて坐剤として製剤化することができる。
【0064】
1つの実施形態では、ベンゾピラノン化合物は対流補強型医薬送達系を介して投与される。もう1つの実施形態では、ベンゾピラノン化合物は、米国特許第5,720,720号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているもののような対流補強型医薬送達系を介して投与される。対流補強型医薬送達では、灌流カテーテルの先端を組織(例えば、脳組織)内に配置し、灌流を行なっている間カテーテルの先端から正の圧力勾配を維持しながらカテーテルを通して医薬(例えば、ベンゾピラノン化合物)を供給することが行なわれる。カテーテルは、医薬を送達し、医薬の送達の最初から最後まで所望の圧力勾配を維持するポンプに連結されている。医薬送達速度は典型的には、灌流距離が約1cm以上で約0.5〜約4.0ml/分である。この方法は、脳および他の組織、特に充実性神経組織に医薬を送達するのに特に有用である。一部の実施形態において、対流補強型医薬送達は、ベンゾピラノン化合物を、高分子量極性分子例えば増殖因子、酵素、抗体、タンパク質複合体および遺伝子ベクターと組み合せて脳または他の組織に送達するのに有用である。これらの実施形態では、注入量は最大約15.0ml/分とすることができる。
【0065】
もう1つの実施形態では、本発明のベンゾピラノン化合物は小胞、特にリポソームで送達することができる(Langer, Science 249: 1527-1533 (1990); Treat et al. , in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein and Fidler (eds. ), Liss, New York, pp. 353-365 (1989); Lopez-Berestein, 同書, pp. 317-327; 総論的にも同書; を参照されたい)。
【0066】
なおもう1つの実施形態では、ベンゾピラノン化合物は制御放出系で送達することができる。1つの実施形態では、ポンプを使用することができる(Langer, 上記書物; Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14: 201 (1987); Buchwald et al., Surgery 88: 507 (1980); Saudek et al. , N. Engl. J. Med. 321: 574 (1989)を参照されたい)。もう1つの実施形態では、ポリマー性物質を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds. ), CRC Pres. , Boca Raton, Florida (1974); Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball (eds. ), Wiley, New York(1984) ; Ranger and Peppas, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23: 61 (1983); を参照されたい、またLevy et al. , Science 228: 190 (1985); During et al. , Ann. Neurol. 25: 351 (1989); Howard et al. , J. Neurosurg. 71: 105 (1989)も参照されたい)。なおもう1つの実施形態では、ベンゾピラノン化合物の標的(例えば、脳)の近傍に制御放出系を配置することができ、その結果全身性投与量のほんの一部の投与でよいことになる(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, supra[上記書物], vol. 2, pp.115-138 (1984)を参照されたい)。Langer(Science 249: 1527-1533 (1990))によるレビュー(総論)で議論されている他の制御放出系を使用することもできる。
【0067】
本組成物は、患者に好適に投与するための形態を提供するよう、ベンゾピラノン化合物の有効量を、一実施形態では精製された形態で、適切な量の薬学的に許容される担体と一緒に含ませる。
【0068】
一実施形態において、用語「薬学的に許容される」とは、連邦または州政府の規制当局により認可されていること、あるいは合衆国薬局方または、動物における、より特定的にはヒトにおける使用に対して一般に認められている薬局方に掲載されていることを意味する。用語「担体」は、ベンゾピラノン化合物と一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを意味する。そのような医薬担体は液体(例えば、水や油)であってよく、例えばラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などの石油、動物、植物由来のものまたは合成されたものが挙げられる。医薬担体は、生理食塩水、ガムアカシア、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素などであってよい。さらに、補助剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤および着色剤を使用することもできる。患者に投与する場合、ベンゾピラノン化合物および薬学的に許容される担体は滅菌していてよい。ベンゾピラノン化合物を静脈内投与する場合は水が有用な担体である。生理食塩水溶液ならびにデキストローゼ水溶液およびグリセロール水溶液も液体担体として、特に注射用溶液に用いることができる。好適な医薬担体としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、メリケン粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、ドライミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどの賦形剤も挙げられる。本組成物は、所望であれば、少量の湿潤化剤または乳化剤、あるいはpH緩衝剤を含有することもできる。
【0069】
本組成物は、溶剤、懸濁液剤、乳液剤、錠剤、丸薬、ペレット剤、カプセル剤、液体を含んでいるカプセル剤、粉剤、持続放出型製剤、坐剤、エアロゾル剤、スプレー剤の剤形または使用するのに好適な他の剤形をとることができる。1つの実施形態では、薬学的に許容される担体はカプセルである(例えば、米国特許第5,698,155号を参照)。好適な医薬担体の他の例は、E. W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0070】
1つの実施形態において、ベンゾピラノン化合物は定型の手順に従ってヒト静脈内投与用の医薬組成物として製剤化される。典型的には、静脈内投与用ベンゾピラノン化合物は滅菌等張性緩衝水溶液中の溶液である。必要な場合は、本組成物は可溶化剤を含んでいてもよい。静脈内投与用の組成物は場合によっては注射の部位における痛みをやわらげるための局部麻酔薬(例えばリグノカイン)を含んでいてもよい。通常、各成分は、例えば、有効成分の量を表示したアンプルまたはサシェットなどの密封容器中の乾燥凍結粉末または無水濃縮物として単位用量剤形で別々にまたは一緒にして提供される。ベンゾピラノン化合物を灌流により投与する場合は、例えば滅菌医薬用水または生理食塩水が入った灌流ボトルを用いて投与することができる。ベンゾピラノン化合物を注射により投与する場合は、成分を投与の前に混ぜることができるよう滅菌注射用の水または生理食塩水のアンプルを提供する。経口投与用組成物は、例えば錠剤、ロゼンジ、水性または油性懸濁液、顆粒、粉末、乳液、カプセル、シロップ、またはエリキシルなどの形態であってよい。経口投与される組成物には、医薬として口当たりのよい製剤を提供するために例えばフルクトース、アスパルテームまたはサッカリンなどの甘味剤;ハッカ、ウインターグリーン油またはチェリー油などの香味剤;着色剤;および保存剤などの1以上の任意付加的な試剤が入っていてもよい。さらに、錠剤形態または丸薬形態の場合は、本組成物に、消化管中での崩壊および吸収を遅らせるためのコーティングを行なうことによって、長時間の持続作用を提供することもできる。浸透圧活性推進化合物[osmotically active driving compound]を包み込んでいる選択透過膜もまた経口投与されるベンゾピラノン化合物には好適である。これの以降のプラットフォームにおいて、カプセルを取り囲む環境からの流体をこの推進化合物が吸収し、膨潤してアパチャーから医薬または医薬組成物を押し出す。これらの送達プラットフォームは、瞬時放出製剤のスパイク状投与プロファイル(形状)に対して基本的に0次の投与プロファイルを提供することができる。モノステアリン酸グリセロールまたはステアリン酸グリセロールなどの時間遅延物質を用いることもできる。経口用の組成物には、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を入れることができる。そのような担体は好ましくは医薬用のものである。
【0071】
癌の治療または予防に有効であるベンゾピラノン化合物の量は標準的な手法により決定することができる。さらに、インビトロまたはインビボアッセイを場合によっては用いて至適用量範囲を特定するのに役立たせることもできる。有効な投与量は、投与の経路や疾病または疾患の程度にも依存するものであり、医師の判断および各患者の状況によって決定されるべきである。しかしながら、ベンゾピラノン化合物の有効経口投与量の一般的な範囲は、約0.5mg/日〜約5000mg/日、一実施形態では約500mg/日〜約3500mg/日、別の実施形態では約1000mg/日〜約3000mg/日、別の1つの実施形態では約1500mg/日〜約2500mg/日、また別の1つの実施形態では約2000mg/日である。もう1つの実施形態では、静脈内投与用の有効量は経口投与用量の約10%であり、対流補強型医薬投与用の有効量は経口投与用量の約1%である。当然、多くの場合化合物の1日の投与量を少しずつ、1日のいくつかの時間に投与するのが実用的である。しかしながら、これらのいずれの場合においても、投与されるベンゾピラノン化合物の量は、有効成分の溶解度、用いる製剤、投与の経路などの因子に依存するものである。座剤は、通常約0.5重量%〜約10重量%の範囲の有効量のベンゾピラノン化合物を含有する。経口用組成物は約10%〜約95%のベンゾピラノン化合物を含有しうる。本発明のいくつかの実施形態においては、経口投与用の好適な有効用量は通常体重1キログラム当りベンゾピラノン化合物約10〜500mgである。他の実施形態では、有効な経口用量は体重1キログラム当り約10〜100、100〜300、300〜900、または900〜1500mgである。他の実施形態では、有効な経口用量は体重1キログラム当り約100〜200、200〜300、300〜400または400〜500mgである。本発明の他の特実施形態においては、経口投与に有効な用量範囲は通常体重1キログラム当りベンゾピラノン化合物1〜7500マイクログラムである。他の実施形態では、有効な経口用量は体重1キログラム当り約1〜10、10〜30、30〜90、または90〜150マイクログラムである。他の実施形態では、有効な経口用量は体重1キログラム当り約150〜250、250〜325、325〜450、450〜1000または1000〜7500マイクログラムである。有効用量は、インビボ実験システムまたは動物モデル実験システムから導かれる用量−応答曲線から外挿することもできる。そのような動物実験およびシステムは当技術分野では周知である。
【0072】
本発明はまた、1以上のベンゾピラノン化合物が充填された1以上の容器を含んでいるパックまたはキットも提供する。このような容器(1個または複数個)に場合によっては関係するのが、医薬または生物学的生成品の製造、使用または販売を規制する政府の当局が定める様式の注意書きであり、この注意書きはヒトへの投与に対する上記製造、使用または販売当局による認可を反映しているものとする。特定の実施形態においては、上記キットには、ベンゾピラノン化合物の前に、その後にまたは同時に投与することができる1以上の他の化学療法薬を入れておくこともできる。
【0073】
ベンゾピラノン化合物は好ましくはヒトでの使用に先立ち所望の治療または予防の活性についてインビトロで、そしてそのあとインビボでアッセイする。例えば、インビトロアッセイを用いて、ある特定のベンゾピラノン化合物の投与がよいのか、それともベンゾピラノン化合物の組み合せの投与がよいのかを決定することができる。
【0074】
1つの実施形態においては、患者の組織サンプルを培地中で増殖させ、そしてベンゾピラノン化合物と接触させるあるいはそれを投与し、組織サンプルへのそのようなベンゾピラノン化合物の作用結果を観察し、非接触の組織と比較を行なう。他の実施形態においては、細胞培養の細胞をベンゾピラノン化合物と接触させるあるいはそれを投与する細胞培養モデルを用い、そのようなベンゾピラノン化合物の組織サンプルへの作用結果を観察し、非接触の細胞培養との比較が行なわれる。通常、非接触細胞と比較して接触細胞の増殖または生存が少ないと、そのベンゾピラノン化合物は癌患者を治療するのに有効であることを示す。そのようなベンゾピラノン化合物はまた動物モデルシステムを用いて有効でありまた安全であることを示すこともできる。
【0075】
ベンゾピラノン化合物は、薬学的に許容される塩の形態で投与しうる。薬学的に許容される塩は、有機化学では常識であるようにベンゾピラノン化合物の遊離塩形態を上記で説明したような好適な酸と反応させることで都合よく生成される。塩は、中程度の温度で高い収率で生成され、ベンゾピラノン化合物の塩形態を合成の最終工程において適切な酸性洗浄液から単に単離することで製造される。この塩形成性酸は、アルカノール(メタノール、エタノールもしくはイソプロパノール等)、ケトン(アセトン等)またはエステル(酢酸エステル等)などの無水または水含有有機溶媒中に溶解されていてもよい。これに対して、ベンゾピラノン化合物の遊離塩基形態が望まれている場合は、塩基性の最終洗浄工程から単離される。塩酸塩を生成させる代表的な手法では、遊離塩基を適切な溶媒に溶解させ、その溶液をモレキュラーシーブのようなものの上で十分乾燥させ、そのあとそれを通して塩化水素ガスをバブリングさせる。
【0076】
4.5 追加の治療
有効量のベンゾピラノン化合物の投与を含む癌の治療または予防方法は、さらに有効量の別の治療の適用(投与)を含んでもよい。他の治療としては、限定されるものではないが、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、骨髄移植、幹細胞置換療法、別の生物学的治療および免疫療法が挙げられる。
【0077】
一実施形態において、本発明の方法は、血管形成阻害剤、例えば限定されるものではないが、以下:アンギオスタチン(プラスミノーゲン断片)、抗血管形成アンチトロンビンIII、Angiozyme、ABT−627、Bay12−9566、ベネフィン、ベバシズマブ、BMS−275291、軟骨由来阻害剤(CDI)、CAI、CD59補体断片、CEP−7055、Col3、コンブレタスタチンA−4、エンドスタチン(コラーゲンXVIII断片)、フィブロネクチン断片、Gro−ベータ、ハロフジノン、ヘパリナーゼ、ヘパリン六糖断片、HMV833、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、IM−862、インターフェロンα/β/γ、インターフェロン誘導性タンパク質(IP−10)、インターロイキン−12、Kringle5(プラスミノーゲン断片)、マリマスタット、抗炎症性ステロイド(限定されるものではないが、デキサメタゾンなど)、メタロプロテアーゼインヒビター(TIMP)、2−メトキシエストラジオール、MMI270(CGS27023A)、MoAb IMC−1C11、ネオバスタット、NM−3、Panzem、PI−88、胎盤リボヌクレアーゼインヒビター、プラスミノーゲン活性化因子インヒビター、血小板因子−4(PF4)、プリノマスタット、プロラクチン16kD断片、プロリフェリン関連タンパク質(PRP)、PTK 787/ZK 222594、レチノイドSolimastat、スクアラミン、SS3304、SU5416、SU6668、SU11248、テトラヒドロコルチゾール−S、テトラチオモリブデート、サリドマイド、トロンボスポンジン−1(TSP−1)、TNP−470、トランスフォーミング増殖因子β(TGF−b)、バスキュロスタチン、バソスタチン(カルレティキュリン断片)、ZD6126、ZD6474、ファルネシルトランスフェラーゼインヒビター(FTI)、およびビスホスホネート(例えば、アレンドロネート、エチドロネート、パミドロネート、リセドロネート、イバンドロネート、ゾレドロネート、オルパドロネート、イカンドロネート、またはネリドロネートなど)の投与をさらに含む。
【0078】
他の治療は、抗癌剤の投与でありうる。有用な抗癌剤としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:アシビシン、アクラルビシン、アコダゾールヒドロクロリド、アクロニン、アドゼレシン、アルデスロイキン、アルトレタミン、アンボマイシン、アメタントロンアセテート、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アントラマイシン、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アザシチジン、アゼテパ、アゾトマイシン、バチマスタット、ベンゾデパ、ビカルタミド、ビサントレンヒドロクロリド、ビスナフィドジメシレート、ビゼレシン、硫酸ブレオマイシン、ブレキナルナトリウム、ブロピリミン、ブスルファン、カクチノマイシン、カルステロン、カラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルムスチン、カルビシンヒドロクロリド、カルゼレシン、セデフィンゴール、クロラムブシル、シロレマイシン、シスプラチン、クラドリビン、クリスナトールメシレート、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デシタビン、デキソルマプラチン、デザグアニン、デザグアニンメシレート、ジアジコン、ドセタキセル、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、プロピオン酸ドロモスタノロン、デュアゾマイシン、エダトレキセート、塩酸エフロルニチン、エルサミトルシン、エンロプラチン、エンプロメート、エピプロピジン、塩酸エピルビシン、エルブロゾール、エルビタックス、エソルビシンヒドロクロリド、エストラムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、エタニダゾール、エトポシド、リン酸エトポシド、エトプリン、塩酸ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フロクリジン、リン酸フルダラビン、フルロウラシル、フルロシタビン、フォスキドン、フォストリエシンナトリウム、ゲムシタビン、塩酸ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシンヒドロクロリド、イフォスファミド、イルモフォシン、ImiDsTM、インターロイキンII(組換えインターロイキンIIまたはrIL2を含む)、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンα−n1、インターフェロンα−n3、インターフェロンβ−Ia、インターフェロンγ−Ib、イプロプラチン、塩酸イリノテカン、酢酸ランレオチド、レトロゾール、酢酸ロイプロリド、塩酸リアロゾール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、ロソキサントロンヒドロクロリド、マソプロコール、マイタンシン、メクロレタミンヒドロクロリド、メゲストロールアセテート、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルカプトプリン、メトトレキセート、メトトレキセートナトリウム、メトプリン、メツレデパ、ミチンドミド、マイトカルシン、マイトクロミン、マイトギリン、マイトマルシン、マイトマイシン、マイトスペル、ミトタン、塩酸ミトキサントロン、ミコフェノール酸、ノコダゾール、ノガラマイシン、オルマプラチン、オキシスラン、パクリタキセル、ペガスパルガーゼ、ペリオマイシン、ペンタムスチン、硫酸ペプロマイシン、ペルホスファミド、ピポブロマン、ピポスルファン、ピロキサントロンヒドロクロリド、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、塩酸プロカルバジン、ピューロマイシン、塩酸ピューロマイシン、ピラゾフリン、リボプリン、ログレチミド、サフィンゴル、サフィンゴルヒドロクロリド、SelCidTM、セムスチン、シムトラゼン、スパルフォセートナトリウム、スパルソマイシン、塩酸スピロゲルマニウム、スピロムスチン、スピロプラチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌル、タリソマイシン、テコガランナトリウム、テガフル、テロキサントロンヒドロクロリド、テモポルフィン、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、チアミプリン、チオグアニン、チオテパ、チアゾフリン、チラパザミン、クエン酸トレミフェン、トレストロンアセテート、トリシリビンホスフェート、トリメトレキセート、グルクロン酸トリメトレキセート、トリプトレリン、ツブロゾールヒドロクロリド、ウラシルマスタード、ウレデパ、バプレオチド、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、ビネピジンスルフェート、ビングリシネートスルフェート、ビンロイロシンスルフェート、酒石酸ビノレルビン、ビンロシジンスルフェート、ビンゾリジンスルフェート、ボロゾール、ゼニプラチン、ジノスタチン、ゾルビシンヒドロクロリドが挙げられる。他の抗癌剤としては、限定されるものではないが、20−エピ−1,25ジヒドロキシビタミンD3、5−エチニルウラシル、アビラテロン、アクラルビシン、アシルフルベン、アデシペノール、アドゼレシン、アルデスロイキン、ALL−TKアンタゴニスト、アルトレタミン、アムバムスチン、アミドックス、アミフォスチン、アミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アンドログラホリド、血管形成阻害剤、アンタゴニストD、アンタゴニストG、アンタレリックス、抗背側化形態形成タンパク質−1、抗アンドロゲン、前立腺癌、抗エストロゲン、抗ネオプラストン、アフィジコリングリシネート、アポトーシス遺伝子調節因子、アポトーシス制御因子、アプリン酸、アラ−CDP−DL−PTBA、アルギニンデアミナーゼ、アスラクリン、アタメスタン、アトリムスチン、アキシナスタチン1、アキシナスタチン2、アキシナスタチン3、アザセトロン、アザトキシン、アザチロシン、バッカチンIII誘導体、バラノール、バチマスタット、BCR/ABLアンタゴニスト、ベンゾクロリン、ベンゾイルスタウロスポリン、βラクタム誘導体、β−アレチン、ベタクラマイシンB、ベツリン酸、bFGF阻害剤、ビカルタミド、ビサントレン、ビサジリジニルスペルミン、ビスナフィド、ビストラテンA、ビゼレシン、ブレフレート、ブロピリミン、ブドチタン、ブチオニンスルフォキシミン、カルシポトリオール、カルホスチンC、カンプトテシン誘導体、カナリポックスIL−2、カペシタビン、カルボキサミド−アミノ−トリアゾール、カルボキシアミドトリアゾール、CaRest M3、CARN 700、軟骨由来阻害剤、カルゼレシン、カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS)、カスタノスペルミン、セクロピンB、セトロレリックス、クロールン、クロロキノキサリンスルホンアミド、シカプロスト、シス−ポルフィリン、クラドリビン、クロミフェン類似体、クロトリマゾール、コリスマイシンA、コリスマイシンB、コンブレタスタチンA4、コンブレタスタチン類似体、コナゲニン、クラムベシディン816、クリスナトール、クリプトフィシン8、クリプトフィシンA誘導体、キュラシンA、シクロペンタントラキノン、シクロプラタム、シペマイシン、シタラビンオクホスフェート、細胞溶解因子、サイトスタチン、ダクリキシマブ、デシタビン、デヒドロジデムニンB、デスロレリン、デキサメタゾン、デキシフォスファミド、デクスラゾキサン、デクスベラパミル、ジアジコン、ダイデムニンB、ジドックス、ジエチルノルスペルミン、ジヒドロ−5−アザシチジン、ジヒドロタキソール、9−、ジオキサマイシン、ジフェニルスピロムスチン、ドセタキセル、ドコサノール、ドラセトロン、ドキシフルリジン、ドロロキシフェン、ドロナビノール、デュオカルマイシンSA、エブセレン、エコムスチン、エデルフォシン、エドレコロマブ、エフロルニチン、エレメン、エミテフル、エピルビシン、エプリステリド、エストラムスチン類似体、エストロゲンアゴニスト、エストロゲンアンタゴニスト、エタニダゾール、リン酸エトポシド、エキセメスタン、ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フィルグラスチム、フィナステリド、フラボピリドール、フレゼラスチン、フルアステロン、フルダラビン、フルオロダウノルニシンヒドロクロリド、フォルフェニメックス、フォルメスタン、フォストリエシン、フォテムスチン、ガドリニウムテキサフィリン、硝酸ガリウム、ガロシタビン、ガニレリックス、ゼラチナーゼ阻害剤、ゲムシタビン、グルタチオン阻害剤、ヘプスルファム、ヘレギュリン、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ヒペリシン、イバンドロン酸、イダルビシン、イドキシフェン、イドラマントン、イルモフォシン、イロマスタット、イミダゾアクリドン、イミキモド、免疫賦活ペプチド、インスリン様増殖因子−1受容体阻害剤、インターフェロンアゴニスト、インターフェロン、インターロイキン、イオベングアン、ヨードドキソルビシン、イポメアノール、4−、イロプラクト、イルソグラジン、イソベンガゾール、イソホモハリコンドリンB、イタセトロン、ジャスプラキノリド、カハラリドF、ラメラリン−Nトリアセテート、ランレオチド、レイナマイシン、レノグラスチム、硫酸レンチナン、レプトールスタチン、レトロゾール、白血病阻害因子、白血球αインターフェロン、ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン、ロイプロレリン、レバミソール、リアロゾール、直鎖ポリアミン類似体、親油性二糖ペプチド、親油性白金化合物、リソクリナミド7、ロバプラチン、ロムブリシン、ロメトレキソール、ロニダミン、ロソキサントロン、ロバスタチン、ロキソリビン、ルルトテカン、ルテチウムテキサフィリン、リソフィリン、溶解ペプチド、マイタンシン、マンノスタチンA、マリマスタット、マソプロコール、マスピン、マトリリシン阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、メノガリル、メルバロン、メテレリン、メチオニナーゼ、メトクロプラミド、MIF阻害剤、ミフェプリストン、ミルテフォシン、ミリモスチム、ミスマッチ二本鎖RNA、ミトグアゾン、ミトラクトール、マイトマイシン類似体、ミトナフィド、ミトトキシン線維芽細胞増殖因子−サポリン、ミトキサントロン、モファロテン、モルグラモスチム、モノクローナル抗体、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、モノホスホリル脂質A+ミオバクテリウム細胞壁sk、モピダモール、多剤耐性遺伝子阻害剤、多発性腫瘍抑制因子1−をベースとする治療、マスタード抗癌剤、マイカペルオキシドB、マイコバクテリア細胞壁抽出物、ミリアポロン、N−アセチルジナリン、N−置換ベンズアミド、ナファレリン、ナグレスチップ、ナロキソン+ペンタゾシン、ナパビン、ナフテルピン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ネモルビシン、ネリドロン酸、中性エンドペプチダーゼ、ニルタミド、ニサマイシン、一酸化窒素モジュレーター、ニトロキシド酸化防止剤、ニトルリン、O6−ベンジルグアニン、オクトレオチド、オキセノン、オリゴヌクレオチド、オナプリストン、オンダンセトロン、オンダンセトロン、オラシン、経口サイトカイン誘導物質、オルマプラチン、オサテロン、オキサリプラチン、オキザウノマイシン、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、パクリタキセル誘導体、パラウアミン、パルミトイルリゾキシン、パミドロン酸、パナキシトリオール、パノミフェン、パラバクチン、パゼリプチン、ペガスパルガーゼ、ペルデシン、ペントサン多硫酸ナトリウム、ペントスタチン、ペントロゾール、ペルフルブロン、ペルホスファミド、ペリリルアルコール、フェナジノマイシン、酢酸フェニル、ホスファターゼ阻害剤、ピシバニル、塩酸ピロカルピン、ピラルビシン、ピリトレキシム、プラセチンA、プラセチンB、プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤、白金複合体、白金化合物、白金−トリアミド複合体、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニゾン、プロピル ビス−アクリドン、プロスタグランジンJ2、プロテアソーム阻害剤、プロテインAをベースとする免疫モジュレーター、プロテインキナーゼC阻害剤、微細藻類のプロテインキナーゼC阻害剤、プロテインチロシンホスファターゼ阻害剤、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤、プルプリン、ピラゾロアクリジン、ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート、rafアンタゴニスト、ラルチトレキセド、ラモセトロン、rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、
ras阻害剤、ras−GAP阻害剤、脱メチル化レテリプチン、レニウムRe186エチドロネート、リゾキシン、リボザイム、RIIレチナミド、ログレチミド、ロヒツキン、ロムルチド、ロキニメックス、ルビギノンB1、ルボキシル、サフィンゴル、サイントピン、SarCNU、サルコフィトールA、サルグラモスチム、Sdi 1ミメティックス、セムスチン、セネセンス由来阻害剤1、センスオリゴヌクレオチド、シグナル伝達阻害剤、シグナル伝達モジュレーター、一本鎖抗原結合タンパク質、シゾフィラン、ソブゾキサン、ナトリウムボロカプテート、ナトリウムフェニルアセテート、ソルベロール、ソマトメジン結合タンパク質、ソネルミン、スパルフォン酸、スピカマイシンD、スピロムスチン、スプレノペンチン、スポンジスタチン1、スクアラミン、幹細胞阻害剤、幹細胞分裂阻害剤、スチピアミド、ストロメリシン阻害剤、スルフィノシン、過剰活動性血管活性腸管ペプチドアンタゴニスト、スラジスタ、スラミン、スワインソニン、合成グリコサミノグリカン、タリムスチン、タモキシフェンメチオジド、タウロムスチン、タザロテン、テコガランナトリウム、テガフル、テルラピリリウム、テロメラーゼ阻害剤、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テトラクロロデカオキシド、テトラゾミン、タリブラスチン、チオコラリン、トロンボポエチン、トロンボポエチンミメティック、チマルファシン、チモポエチン受容体アゴニスト、チモトリナン、甲状腺刺激ホルモン、スズエチルエチオプルプリン、チラパザミン、チタノセンビクロリド、トプセンチン、トレミフェン、全能性幹細胞因子、翻訳阻害剤、トレチノイン、トリアセチルウリジン、トリシリビン、トリメトレキセート、トリプトレリン、トロピセトロン、ツロステリド、チロシンキナーゼ阻害剤、チルホスチン、UBC阻害剤、ウベニメックス、泌尿生殖器洞由来増殖阻害因子、ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト、バプレオチド、バリオリンB、ベクター系、赤血球遺伝子治療、ベラレソール、ベラミン、ベルジン、ベルテポルフィン、ビノレルビン、ビンキサルチン、ビタキシン、ボロゾール、ザノテロン、ゼニプラチン、ジラスコルブおよびジノスタチンスチマラマーが挙げられる。一実施形態において、抗癌剤は、有効量のサリドマイドまたはトポイソメラーゼインヒビターの投与の前、後または同時に投与することができる5−フルオロウラシルまたはロイコボリンである。
【0079】
他の治療としては、γ線、X線および癌細胞を破壊する他の放射線源を用いることを含む放射線療法でありうる。いくつかの実施形態において、放射線療法は、遠隔照射放射線療法、または遠隔照射源から放射線をあてる遠隔療法として適用する。他の実施形態において、放射線療法は、放射線照射源を癌細胞または腫瘍塊の近傍の体内に配置する、体内治療または近接照射法として行う。
【0080】
4.6 癌および新生物細胞の阻害と疾病
ベンゾピラノン化合物は、当技術分野で知られている各種のアッセイ、あるいは本明細書で説明されるアッセイを用いてインビトロおよびインビボにおいて腫瘍細胞の細胞増殖、細胞転移および/または腫瘍形成を抑制することを実証することができる。そのような活性は、インビトロアッセイにおいて本発明のベンゾピラノン化合物を腫瘍細胞と接触させることで実証することができる。通常、腫瘍細胞を様々な濃度のベンゾピラノン化合物に暴露し、そのあと生存細胞を対照と比較して測定する。そのようなアッセイでは癌細胞系の細胞、あるいは患者からの細胞が使用される。そのような生存および/または増殖を評価するのには当技術分野で周知の多くのアッセイを用いることができる。例えば、細胞増殖は、(H)−チミジンの取り込みを、直接細胞計数により、またプロト癌遺伝子(例えば、fos、myc)または細胞周期マーカー(Rb、cdc2、cyclin A、D1、D2、D3、Eなど)などの既知の遺伝子の転写、翻訳または活性における変化を検出することによりアッセイすることができる。そのようなタンパク質およびmRNAならびに活性のレベルは当技術分野で周知のどの方法によっても決定することができる。例えば、タンパク質は、市販されている抗体(例えば、Santa Cruz Inc.からは多くの細胞周期マーカーが市販されている)を用いてウエスタンブロットまたは免疫沈降などの知られている免疫診断法により定量化することができる。mRNAは、当技術分野において周知で常套的となっている方法により、例えばノーザン分析、RNase保護、または逆転写との関係におけるポリメラーゼ連鎖反応などにより定量化することができる。細胞の生死判別は、当技術分野で知られているトリパンブルー染色またはその他の細胞の死または生のマーカーを用いて評価することができる。分化は、形態などにおける変化に基づいて視覚的に評価することができる。
【0081】
ベンゾピラノン化合物はまた、当技術分野で知られている各種のアッセイ、あるいは本明細書で説明されるアッセイを用いてインビトロおよびインビボにおいて神経膠腫の細胞増殖、細胞転移および腫瘍形成を抑制することを実証することができる。そのような活性は、インビトロアッセイにおいてベンゾピラノン化合物を神経膠腫の腫瘍細胞と接触させることで実証することができる(Haroun, R. I.etal., J. Neurooncol. 58: 115-23 (2002);Sharma A. et al., J. Mol. Neurosci. 17: 331-9(2001);Iwadate Y. etal., Int.J. Mol. Med.10 : 187-92 (2002))。
【0082】
本発明では、限定するものではないが、以下のような当技術分野で知られている様々な手法による細胞周期分析および細胞増殖分析を記載しておく。
【0083】
1つの例としては、ブロモデオキシウリジン(BRDU)の取り込みを、増殖細胞を同定するアッセイとして用いることができる。BRDUアッセイは、BRDUを新たに合成されるDNA中に取り込むことによりDNA合成を行なっている細胞集団を同定する。新たに合成されるDNAはこのあと抗BRDU抗体を用いて検出することができる(Hoshino et al., 1986, Int. J. Cancer38, 369; Campana et al. , 1988, J. Immunol. Meth. 107, 79を参照されたい)。
【0084】
細胞増殖は(H)−チミジンの取り込みを用いて調べることもできる(例えば、Chen, J. , 1996, Oncogene 13: 1395-403; Jeoung, J. , 1995, J. Biol. Chem. 270: 18367-73を参照されたい)。このアッセイはS相DNA合成の定量的な特性決定を可能とする。このアッセイでは、DNAを合成する細胞は(H)−チミジンを新たに合成されるDNA中に取り込む。取り込みはこのあと当技術分野の標準的な手法により例えばシンチレーションカウンター(例えば、Beckman LS 3800 Liquid Scintillation Counter)で放射性同位元素をカウントすることにより測定することができる。
【0085】
増殖細胞の核抗原(PCNA)検出も細胞増殖を測定するのに用いることができる。PCNAは増殖細胞において特に細胞周期の初期G1相およびS相において発現が増大している36キロダルトンのタンパク質であり、それゆえ増殖細胞に対するマーカーとして役立ち得る。陽性の細胞は抗PCNA抗体を用いる免疫染色により同定される(Li et al. , 1996, Curr. Biol. 6: 189-199; Vassilev et al., 1995, J. Cell Sci. 108: 1205-15を参照されたい)。
【0086】
細胞増殖は、細胞集団のサンプルを時間に対して計数(例えば、日毎の細胞計数)することで測定することができる。細胞は血球計と光学顕微鏡(例えば、HyLite hemacytometer, Hausser Scientific)を用いて計数することができる。細胞数を時間に対してプロットして目的の集団についての増殖曲線を求めることができる。好ましい実施形態では、この方法で計数される細胞に最初に色素トリパンブルー(Sigma)が混ぜられ、そうすると生存細胞はこの色素を排出するので集団中の生存細胞として計数される。
【0087】
細胞のDNA計数および/または分裂指数は、例えば細胞のDNA倍数値に基づいて測定することもできる。例えば、細胞周期のG1相にある細胞は普通2NのDNA倍数値を有している。DNAが複製しているが有糸分裂までは進行していない細胞(例えば、S相にある細胞)は2Nより大きく最大4NのDNA含量の倍数値を示すと考えられる。倍数値および細胞周期速度はヨウ化プロピジウムアッセイを用いてさらに測定することができる(例えば、Turner, T. , et al. , 1998, Prostate 34: 175-81)を参照されたい)。あるいは、DNA倍数は、コンピュータ化されたマイクロデンシトメトリー染色システムでのDNAフォイルゲン染色(これは化学量論量でDNAに結合する)の定量化により決定することもできる(例えば、Bacus, S. , 1989, Am. J.Pathol. 135 : 783-92を参照されたい)。もう1つの実施形態では、DNA含量は染色体展開の標本によって分析することができる(Zabalou, S. , 1994, Hereditas. 120: 127-40; Pardue, 1994, Meth. Cell Biol. 44: 333351)。
【0088】
細胞周期のタンパク質(例えば、CycA. CycB, CycE, CycD, cdc2, Cdk4/6, Rb, p21, p27など)の発現は、細胞または細胞集団の増殖状態に関する重要な情報を提供する。例えば、抗増殖シグナル経路における同定はp21CiPlの誘発によって示され得る。細胞中のp21発現レベルの増大は細胞周期G1への進入を遅延させる(Harper et al. , 1993, Cell 75: 805-816; Li et al. , 1996, Curr. Biol. 6: 189-199)。P21誘発は、市販されている(例えば、Santa Cruz)特定の抗p21抗体を用いて免疫染色により同定することができる。同様にして、細胞周期タンパク質は、市販の抗体を用いてウエスタンブロット分析により調べることができる。もう1つの実施形態では、細胞集団は細胞周期タンパク質の検出の前に同期化される。細胞周期タンパク質は、目的のタンパク質に対する抗体を用いてFACS(蛍光活性化細胞ソーター)分析により検出することもできる。
【0089】
細胞周期の長さまたは細胞周期の速さにおける変化の検出を用いて、ベンゾピラノン化合物による細胞増殖の抑制を測定することもできる。1つの実施形態では細胞周期の長さは細胞集団(例えば、本発明の1以上のベンゾピラノン化合物と接触させたまたは接触させていない細胞を用いて)の倍加時間により決定される。もう1つの実施形態では、FACS分析を用いて細胞周期進行の相が分析されるあるいはG1、S、およびG2/Mの画分が精製される(例えば、Delia, D. et al. , 1997, Oncogene 14: 2137-47を参照されたい)。
【0090】
細胞周期チェックポイント(1個または複数個)の経過、および/または細胞周期チェックポイント(1個または複数個)の誘導は、本明細書に記載されている方法により、あるいは当技術分野で知られている方法により調べることができる。限定するものではないが、細胞周期チェックポイントは、ある特定の細胞の事象がある特定の順序で起ることを確実にするための機構である。チェックポイント遺伝子は、前の事象が先に完了することなく後の事象が起ることを可能とする突然変異により定義される(Weinert, T. , and Hartwell, L. , 1993, Genetics, 134: 63-80)。細胞周期チェックポイント遺伝子の誘導または抑制は、例えばウエスタンブロット分析、あるいは免疫染色などにより評価することができる。細胞周期チェックポイントの経過は、特定の事象が先に起ることなく(例えば、ゲノムDNAの完全な複製なしに有糸分裂に進行すること)細胞がチェックポイントを進行するということによってさらに評価することができる
特定の細胞周期タンパク質発現の作用に加えて、細胞周期に関与するタンパク質の活性および翻訳後修飾は細胞の制御および増殖状態において不可欠の機能を有しうる。本発明では、関係する、当技術分野で知られている方法により検出される翻訳後修飾(例えばリン酸化反応)アッセイを記載しておく。例えば、リン酸化チロシン残基を検出する抗体は市販されており、ウエスタンブロット分析に用いてそのような修飾があるタンパク質を検出することができる。もう1つの例では、ミリスチン化などの修飾を薄層クロマトグラフィーまたは逆相h.p.l.c.で検出することができる(例えば、Glover, C., 1988, Biochem. J. 250: 485-91; Paige, L. , 1988, Biochem J. ; 250: 485-91を参照されたい)。
【0091】
シグナル伝達および細胞周期タンパク質および/またはタンパク質複合体の活性には多くの場合キナーゼ活性が介在する。本発明では、ヒストンH1アッセイなどのアッセイによるキナーゼ活性の分析を記載しておく(例えば、Delia, D. et al. , 1997, Oncogene 14: 2137-47を参照されたい)。
【0092】
ベンゾピラノン化合物は、当技術分野で周知の方法を用いてインビトロで培養細胞における細胞増殖を改変することを実証することもできる。原発性脳腫瘍および転移性脳腫瘍に対する細胞培養モデルの特定的な例としては、限定するものではないが、以下の米国特許:第6,194,158号;第6,051,376号;および第6,071,696号に記載されているものが挙げられる。
【0093】
ベンゾピラノン化合物はインビトロで細胞転移(または悪性表現型への進行)を抑制することを実証することもできる。この実施形態では、転移細胞表現型をもつ細胞を1以上のベンゾピラノン化合物と接触させて、転移表現型に関連する特性(インビボでの腫瘍形成性能力に関連するインビトロ特性のセット)例えば、限定するものではないが、軟寒天におけるコロニー形成、より丸みのある細胞形態、緩い基層付着、接触抑制の喪失、足場依存性の喪失、プラスミノーゲンアクチベーターなどのプロテアーゼの放出、糖輸送の増大、血清要求の減少、または胎児抗原の発現などにおける変化について検査する(Luria et al. , 1978, General Virology, 3d Ed. , John Wiley & Sons, New York, pp. 436-446を参照されたい)。
【0094】
浸潤性が喪失することまたは付着力が低下することを利用してベンゾピラノン化合物の抗癌作用を実証することもできる。例えば、転移性癌形成の臨界的な側面は、前癌細胞または癌細胞が疾患の原発部位から離れて第2の部位で新しい増殖コロニーをつくる能力である。細胞が周辺部位に侵入する能力は癌状態への可能性を反映するものである。浸潤性の喪失は、例えばE−カドヘリン介在細胞−細胞付着の誘導などの当技術分野で知られている様々な手法によって測定することもできる。そのようなE−カドヘリン介在付着は表現型の逆転および浸潤性の喪失を生じることができる(Hordijk et al. , 1997, Science 278: 1464-66)。
【0095】
浸潤性の喪失はさらに細胞移動の抑制によっても調べることができる。各種の二次元および三次元の細胞マトリックスが市販されている(Calbiochem-Novabiochem Corp. San Diego, CA)。マトリックスを横断するまたはその中への細胞移動は、コマ撮り写真もしくはビデオ撮影の顕微鏡により、あるいは細胞移動の測定を可能とする当技術分野における方法により調べることができる。関係する実施形態において、浸潤性の喪失は、肝細胞成長因子(HGF)に対する応答により調べられる。HGF誘発細胞分散は、Madin−Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞などの細胞の浸潤と相関している。このアッセイは、HGFに応答して細胞分散活性を喪失した細胞集団を識別する(Hordijk et al. , 1997, Science 278: 1464-66)。
【0096】
あるいは、浸潤性の喪失は走化性チャンバー(Neuroprobe/Precision Biochemicals Inc. Vancouver, BC)を通過する細胞移動により測定することもできる。そのようなアッセイでは、化学誘引剤がチャンバーの一方の側(例えば、底部チャンバー)でインキュベートされ、細胞が、反対側(例えば、頂部チャンバー)を隔てるフィルター上に塗布される。細胞が頂部チャンバーから底部チャンバーへ通過するためには、細胞はフィルター中の小さい穴を通って活発に移動しなければならない。移動した細胞数のチェッカーボード分析をこのあと浸潤性と相関させることができる(例えば、Ohnishi, T. , 1993, Biochem. Biophys. Res. Commun. 193 : 518-25を参照されたい)。
【0097】
ベンゾピラノン化合物はまたインビボで腫瘍形成を抑制することを実証することもできる。腫瘍形成および転移性拡散などの高増殖性疾患の膨大な数の動物モデルが当技術分野では知られている(Table 317-1, Chapter 317,"Principals of Neoplasia,"in Harrison's Principals of Internal Medicine, 13th Edition, Isselbacher et al. , eds. , McGraw-Hill, New York, p. 1814, and Lovejoy et al. , 1997, J. Pathol. 181: 130-135を参照されたい)。原発性脳腫瘍および転移性脳腫瘍についての特定的な例が以下の米国特許:第5,894,018号;第6,028,174号;および第6,203,787号(参照により本明細書に援用する)に記載されている。さらに、多数の癌のタイプに適用可能な汎用動物モデルが報告されており、限定するものではないが、p53−欠失マウスモデル(Donehower, 1996, Semin. Cancer Biol. 7: 269-278)、Minマウス(Shoemaker et al. , 1997, Biochem. Biophys. Acta, 1332: F25-F48)、ネズミにおける腫瘍に対する免疫応答(Frey, 1997, Methods, 12: 173-188)などが挙げられる。
【0098】
例えば、ベンゾピラノン化合物を実験動物、好ましくは腫瘍が発達しやすい実験動物に投与し、そうしてこの実験動物をこのあと腫瘍形成の発生の低下についてベンゾピラノン化合物を投与していない対照との比較において調べることができる。あるいは、ベンゾピラノン化合物を腫瘍のある実験動物(例えば、悪性の、新生物細胞または転位細胞の導入により、あるいは発癌物質の投与により腫瘍が誘発された動物)に投与して、そのあとその実験動物における腫瘍を腫瘍後退についてベンゾピラノン化合物を投与していない対照動物との比較において調べることができる。
【0099】
以下の実施例は本発明を理解する上において助けとなるよう記載するものであって、本明細書に記載され、特許請求の範囲に記載されている本発明を限定するものではない。
【0100】
以下の実施例は、本発明の非限定的な態様である。
【実施例1】
【0101】
実施例1および2は代表的なベンゾピラノン化合物の合成に関する。
【化6】

【0102】
DMF(100mL)中の4−クロロフェニル酢酸溶液(11.05g、64.8mmol)を約15分かけてCDI(13.13g、81mmol)で数部ずつ処理し、気体の発生が停止するまで混合物を攪拌した。4−フルオロ−2−ヒドロキシアセトフェノン(5.0g、32.4mmol)を添加し、続いて炭酸カルシウム(15.7g、113.6mmol)および4−DMAP(約1g)を添加した。反応混合物を約80℃で約10時間加温した後、室温に冷却した。水(200mL)を添加し、水相を酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせ、濃縮し、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、約3.5g(38%)のベンゾピラノン中間体を得た。
【0103】
CCl(20mL)中のベンゾピラノン中間体の溶液(1.85g、6.8mmol)をNBS(1.33g、7.5mmol)およびAIBN(0.09g、0.5mmol)で処理し、約15時間にわたり還流して混合物を加熱した。反応混合物を濃縮し、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィ(酢酸エチル/ヘキサン)を用いて精製し、約2.6g(92%)のブロモメチル−ビンゾピラノンを得た。
【0104】
ブロモメチル−ベンゾピラノン(1.0g、2.72mmol)および4−ヒドロキシフェニルボロン酸(0.56g、4.1mmol)のTHF(30mL)溶液を、2M炭酸ナトリウム(5mL)および(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)−ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン複合体(0.1g、0.14mmol)で処理した。反応混合物を約6時間かけて還流で加熱した後、室温に冷却した。粗生成物はフラッシュクロマトグラフィ(酢酸エチル/ヘキサン)を用いて精製し、約0.30g(30%)のフェノールベンゾピラノンを得た。
【0105】
フェノールベンゾピラノン(0.28g、0.74mmol)、トリフェニルホスフィン(0.28g、1.1mmol)および1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン(0.13g、1.1mmol)のTHF/CHCI(1:1,8mL)溶液をDIAD(0.22g、1.1mmol)で処理し、反応混合物を室温で約6時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、粗生成物はフラッシュクロマトグラフィ(塩化メチレン/メタノール)を用いて精製し、約35mg(10%)の13−(4−クロロフェニル)−7−フルオロ−4−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−ベンジル]−クロメン−2−オンを得た。
【実施例2】
【0106】
【化7】

【0107】
雰囲気下で、3位をR(上記定義の通り)で置換されたフェノール、および4−ヒドロキシフェニル酢酸(1.2当量)をクロロベンゼン中に懸濁する。三フッ化ホウ素ジエチルエーテル(3当量)を約5分で約20〜約25℃にて添加する。懸濁液を約80℃に加熱し、約4〜5時間攪拌した後、一晩かけて冷却する。
【0108】
沈殿した固形物をN圧を用いて濾過し、ろ液を冷水(約0〜約5℃)に注ぐことにより直接急冷する(わずかに発熱性)。得られるろ過固形物をCHClで洗浄する。飽和水性炭酸ナトリウムを約10〜約15分以内にろ液に添加し、発砲を観察する。得られる固体は約20℃で一晩攪拌する。懸濁液をろ過し、HOおよびMTBE(3回)で洗浄し、N圧下で一晩乾燥させる。得られる生成物を約40℃にて真空下で乾燥することで、一定量を達成する。
【0109】
4−クロロフェニル酢酸(2当量)をDMFに溶解し、約18℃で攪拌する。CDI(2当量)を透明な緑色/黄色溶液にゆっくりと約15分以内に添加する。CDI添加の間に気体の発生(CO)が観察される。混合物を約55℃に加熱し、約25分間この温度で攪拌し、約10℃に冷却する。KCO(2当量)、DMAP(0.2当量)および直前のパラグラフの生成物を、この黄色/褐色懸濁液に添加し、懸濁液を約94〜約96℃に加温し、約1時間攪拌する。
【0110】
COをろ過し、DMFで洗浄する。ろ液を強く攪拌しながら冷水に注ぎ、混合物をさらに約1〜2時間攪拌する。懸濁液を約0〜約5℃冷却し、固形物をろ別する。ろ過固形物はMTBEと1.5M HClの間に分布する。水相をMTBEで抽出する。有機相を合わせ、飽和NaHCO水溶液で洗浄する。有機相を約1.5〜1.7M溶液(0.6〜0.65L/mol)になるまで濃縮し、EtOAcで希釈する。得られる懸濁液を約55℃に加熱し、約15分攪拌し、約3〜4時間かけて約0℃に冷却する。得られる生成物をろ過し、冷MTBE/EtOAc5:1(約20〜約25℃)で洗浄し、Nを一晩流出して乾燥させる。
【0111】
直前のパラグラフの生成物(1当量)、トリフェニルホスフィン(2当量)、および1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン(3当量)のTHF/CHCI溶液をDIAD(1.8当量)で処理し、反応混合物を室温で約6時間攪拌する。溶媒を除去し、粗精製物はフラッシュクロマトグラフィで精製し、7−置換3−(4−クロロフェニル)−4−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−ベンジル]−クロメン−2−オン化合物を得る。
【0112】
本発明は、本発明のいくつかの態様を説明することを目的としたこれら実施例に開示されている特定的な実施形態により範囲が限定されるものであってはならず、機能的に同等であるどのような実施形態も本発明の範囲内に入る。実際、本明細書で示されたまた本明細書で記載された実施形態に加えての本発明の様々な改変は当業者には明らかなものであり、そのようなものは添付の特許請求の範囲内に入る。
【0113】
多数の文献を引用したが、それらの全開示内容は参照により本明細書中に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
【化1】

〔式中、Rはハロゲン、トリフルオロメチルまたはC1−6アルキルである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
がハロゲンである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
ハロゲンがフルオロである、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
がC1−6アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
1−6アルキルがメチルである、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
1−6アルキルがエチルである、請求項4記載の化合物。
【請求項7】
1−6アルキルがn−プロピルである、請求項4記載の化合物。
【請求項8】
1−6アルキルがイソプロピルである、請求項4記載の化合物。
【請求項9】
1−6アルキルがt−ブチルである、請求項4記載の化合物。
【請求項10】
がトリフルオロメチルである、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
請求項1記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体またはビヒクルを含む医薬組成物。
【請求項12】
癌の治療または予防を必要としている患者に、下記式:
【化2】

〔式中、Rはハロゲン、トリフルオロメチルまたはC1−6アルキルである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む、患者における癌の治療または予防方法。
【請求項13】
がハロゲンである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
ハロゲンがフルオロである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
がC1−6アルキルである、請求項12記載の方法。
【請求項16】
1−6アルキルがメチルである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
1−6アルキルがエチルである、請求項15記載の方法。
【請求項18】
1−6アルキルがn−プロピルである、請求項15記載の方法。
【請求項19】
1−6アルキルがイソプロピルである、請求項15記載の方法。
【請求項20】
1−6アルキルがt−ブチルである、請求項15記載の方法。
【請求項21】
がトリフルオロメチルである、請求項12記載の方法。
【請求項22】
癌が原発性脳腫瘍である、請求項12記載の方法。
【請求項23】
癌が、頭部、頚部、眼、口腔、咽喉、食道、胸部、骨、肺、大腸、直腸、胃、前立腺、乳房、卵巣、精巣もしくは他の生殖器、皮膚、甲状腺、血液、リンパ節、腎臓、肝臓、膵臓、脳または神経系の腫瘍である、請求項12記載の方法。
【請求項24】
癌が原発性頭蓋内中枢神経系腫瘍である、請求項12記載の方法。
【請求項25】
原発性頭蓋内中枢神経系腫瘍が、多形性膠芽腫、悪性星状細胞腫、乏突起膠腫、上衣細胞腫、低悪性度星状細胞腫、髄膜腫、間葉腫瘍、下垂体腫瘍、シュワン細胞腫などの髄鞘腫瘍、中枢神経系リンパ腫、髄芽細胞腫、未分化神経外胚葉性腫瘍、神経細胞腫瘍および神経細胞/膠細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫瘍、または脈絡叢腫瘍である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
癌が原発性脊髄腫瘍である、請求項12記載の方法。
【請求項27】
原発性脊髄腫瘍が、シュワン細胞腫、髄膜腫、上衣細胞腫、肉腫、星状細胞腫、神経膠腫、血管腫瘍、脊索腫または類表皮腫である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
癌が転移したものである、請求項12記載の方法。
【請求項29】
転移した癌が、肺(小細胞および非小細胞のいずれも)、乳房、原発腫瘍不明、黒色腫または結腸を起源とする、請求項28記載の方法。
【請求項30】
癌細胞または新生物細胞と、下記式:
【化3】

〔式中、Rはハロゲン、トリフルオロメチルまたはC1−6アルキルである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量とを接触させることを含む、癌細胞または新生物細胞の増殖を抑制する方法。
【請求項31】
がハロゲンである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
ハロゲンがフルオロである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
がC1−6アルキルである、請求項30記載の方法。
【請求項34】
1−6アルキルがメチルである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
1−6アルキルがエチルである、請求項33記載の方法。
【請求項36】
1−6アルキルがn−プロピルである、請求項33記載の方法。
【請求項37】
1−6アルキルがイソプロピルである、請求項33記載の方法。
【請求項38】
1−6アルキルがt−ブチルである、請求項33記載の方法。
【請求項39】
がトリフルオロメチルである、請求項30記載の方法。

【公表番号】特表2006−515275(P2006−515275A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−545432(P2004−545432)
【出願日】平成15年10月15日(2003.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2003/032932
【国際公開番号】WO2004/035002
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(504135550)シグナル ファーマシューティカルズ,エルエルシー (21)
【Fターム(参考)】