説明

ペクチンフィルム

ペクチンフィルムを処理して、その溶解特性を変更する。より詳細に述べると、出発のペクチンの分子量を低下させることにより、より迅速に溶解するフィルムを作成することができる。このペクチンフィルムの用途には、薬物送達およびブレスフィルムが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2002年9月16日に出願され、それが本明細書に参照として組入れられている、米国特許仮出願第60/410,811号、名称「ペクチンフィルム」の優先権を請求するものである。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、迅速な溶解速度を有する、低分子量ペクチンフィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
水溶性ポリマーから形成されたフィルムは、薬物および口臭消臭剤のような経口活性物質を含む、様々な医薬化合物を投与するために使用することができる。このようなポリマーの例は、米国特許である米国特許出願第6,419,903号;米国特許出願第6,284,264号;米国特許出願第6,177,096号;および、米国特許出願第5,948,430号に開示されている。
【0004】
ポリマー溶液は、適当な表面上に流涎され、その後乾燥され、フィルムを形成する。より詳細に述べると、フィルムは、高濃度ポリマー溶液または「ドープ」の混合、その後の活性物質の、可塑剤および他の成分と一緒の添加により形成される。薄いフィルムまたは造形品が流涎され、および最終製品はこのフィルムまたは造形品の乾燥から生じる。
【0005】
ペクチンおよび他の水溶性ポリマーの使用は、周知であり、例えば米国特許出願第6,197,331号を参照のこと。ペクチン溶液は、高メトキシル型ペクチン、低メトキシル型ペクチン、および低メトキシル-アミド化型ペクチンを含む、多くの種類のペクチンから作成することができる。通常ペクチン溶液は、高濃度のペクチン(3質量%〜15質量%ペクチン固形物と同じ量)で析出される。ペクチンは、適当な金属またはポリマー表面に流涎され、空隙を伴わない、平滑フィルムを析出し、これは表面から最小の損傷で取り外すことができる。乾燥は、室温風乾、ヒートベルト乾燥、およびMylarもしくは類似のプラスチックベルト上でのリフラクティブウインドウ乾燥(refractive window drying)のような、いずれか適当な技術により実行することができる。
【0006】
しかし、ペクチンは、口内または水溶液中では容易に溶解しない。従って、ペクチンは一般に口腔内での薬剤または経口活性物質の迅速放出には使用されない。
【発明の開示】
【0007】
発明の簡単な概要
ペクチンが、水性媒質中および口内でより迅速に溶解するように、ペクチンの溶解速度を変更することができることが発見された。特にペクチン溶液は、ペクチン溶液をフィルム流涎およびより迅速な溶解に適するようにする方法で、分子量を低下させるように処理することができる。ペクチン分子量の修飾は、ペクチン溶液固形物の増加をもたらし、および一旦フィルムが形成された後のフィルムの溶解を補助する。これは次に、溶解速度の増大をもたらし、より良い香味特性およびより少ないゴム状の食感(gummy mouthfeel)を伴うペクチンも提供する。
【0008】
従って本発明は、少なくとも1種の活性物質を口腔へ送達するための、経口で消費できるフィルム組成物であり、ここでフィルムが口腔内で迅速に溶解可能であり、固有粘度が約2.5dl/g以下、好ましくは約1.8dl/g以下の高または低メチルエステルペクチン、および少なくとも1種の活性物質を含有する組成物に関する。
【0009】
迅速に溶解可能なペクチンフィルムは、例えば薬物送達およびブレスフィルムに有用である。本発明に従い形成されたペクチンフィルムは、調節可能な溶解速度を有し、流涎用「ドープ」を作成するのに良好な水和を有し、および不快な臭気または香味を有さない。加えてこれらのフィルムは、一貫して強力および柔軟であり、香味または芳香を遮蔽せず、および活性物質と相溶性がある。即時-放出型組成物の適用は容易であり、複雑ではない。
【0010】
本発明は、ペクチンが、約2.5dl/g以下、好ましくは約1.8dl/g以下の固有粘度を有することからも明らかなように、低分子量を有する高メチルエステル(「HM」)ペクチンである、迅速に溶解するペクチンフィルムに関する。いずれか適当なHMペクチンを使用することができる。
【0011】
本発明は更に、ペクチンが、約2.5dl/g以下、好ましくは約1.8dl/g以下の固有粘度を有することからも明らかなように、低分子量を有する低メチルエステル(「LM」)ペクチンである、迅速に溶解するペクチンフィルムに関する。いずれか適当なLMペクチンを使用することができる。好ましくはLMペクチンは、アミド化されたLM(「LMA」)ペクチンである。
【0012】
本発明は更に、約4.9dl/g以上の固有粘度を有することからも明らかなように、分子量を有するペクチンを得る工程;約2.5dl/g以下、好ましくは約1.8dl/g以下の固有粘度を有することからも明らかなように、ペクチンの分子量を低下させるために、ペクチンの分子(molecular weight)を分解し、低分子量ペクチンを形成する工程;および、低分子量ペクチンからフィルムを形成する工程を含む、迅速に溶解するペクチンフィルムを作成するプロセスに関する。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、口内で経口的に迅速に溶解し、および香料のような、医薬的または経口的な活性物質を放出するフィルムに関する。このフィルムは、低下した分子量を有するペクチンおよび1種または複数の医薬的または経口的活性成分を含有する。
【0014】
ペクチンの分子量が低下した場合に、ペクチンで調製されたフィルムは、水性媒質中および口内でより迅速に溶解することがわかっている。有利なことに、この分子量の低下は、最初のペクチン溶液が、管理できる限界内の粘度を維持しながら、より高い固形物ローディング(higher solids loading)で調製されることを可能にする。より高い濃度のペクチンは、フィルム形成時により少ない水を除去することを意味する。
【0015】
同じく有利なことに、ペクチンの分子量の低下は、比較的高い分子量ポリマーから作製されるもののそれよりもより柔軟または可塑性であるフィルムの形成を可能にする。より小さいおよびより柔軟なポリマー鎖は一般に、より柔軟であり、および「U」字型またはヘアピン型に曲げた場合に破壊されないフィルムを可能にする。
【0016】
このことは、高湿条件下で、フィルムを粘着性および互いに他着するようにするポリエチレングリコール(PEG)およびグリセリンのような追加の可塑剤の必要性を低下させる。少量の可塑剤は、フィルムの伸張性を増強し、その結果その強度を増大することができるが、より多量は、フィルムを過剰に軟化させる。
【0017】
一般に、より高い粘度を有するポリマーは、より強力なフィルムを生じるであろう。同じくより規則的構造を伴うものは、高い引張り強さを持つフィルムを形成するであろう。必要とされるものを超える強度は、そのような強力なフィルムは、緩徐に溶解しおよび活性物質をより遅い速度で放出する傾向があるので望ましくない。フィルムの分子量が余りにも低い場合は、このフィルムは、ショ糖により製造されたフィルムのように脆くなることがある。
【0018】
フィルムの機能に重要なことは、フィルム溶解が適切な速度で実行されることである。本発明のプロセスは、フィルムが非常に迅速かつ完全に溶解することができるように、ペクチンの粘度を修飾する。より迅速に溶解するフィルムは、フィルム中に含まれた活性物質をより迅速に放出するであろう。このことは、例えば初期の高い効果を伴う香味にとって望ましい。
【0019】
固有粘度からも明らかなようにそれらの分子量を低下させるように処理されたペクチン溶液から調製されたフィルムは、口内でより迅速に溶解し、および未処理のペクチンにより調製されたフィルムの場合よりもはるかに迅速に香味を放出する。迅速な溶解および香味の放出は、ブレスフィルムなどの適用において、特に重要である。比較的遅い速度の溶解は、ペクチンの遙かに少ない分解によるかまたは別の高分子量ポリマーの添加により得ることができる。0.1%と少量のキサンタンガムがペクチンに添加される場合、その溶解速度は、注目に値する程度に遅くなる。
【0020】
低下した分子量のペクチンで製造されたフィルムは、先行技術のフィルムよりもより強力な香味を有し、およびこの香味は、貯蔵期間、高レベルで維持される。更にペクチンは、米国薬局方(USP)の等級で入手可能であり、および世界中で規制の障壁がほとんどない。一部の競合製品、例えばゼラチン、改質デンプンおよび合成ポリマーには、より多くの規制の障壁がある。
【0021】
このペクチンフィルムは、高メトキシル型ペクチン、低メトキシル型ペクチン、および低メチルエステルアミド化型ペクチンを含む、多くの種類のペクチンから形成することができる。好ましくは、高メトキシルペクチンが使用される。ペクチンのガラクツロン酸残基は、部分的にエステル化され、メチルエステルとして存在する。エステル化度は、エステル化されたカルボキシル基の割合(%)として定義される。エステル化度(「DE」)が50%を上回るペクチンは、高メチルエステル(「HM」)ペクチンまたは高エステルペクチンと称され、DEが50%よりも低いものは、低メチルエステル(「LM」)ペクチンまたは低エステルペクチンと称される。果実および野菜において認められるほとんどのペクチンは、HMペクチンである。
【0022】
様々な技術を用い、ペクチン溶液の分子量を低下させることができる。これらの一部は、高圧でのホモジナイゼーションのような機械的手段、ペクチンpHの適当な塩基または苛性アルカリ、例えば水酸化ナトリウムによる中和、または例えば5%過酸化水素などの過酸化物のような様々な酸化剤によるものを含む。ペクチナーゼのような、ポリマー骨格を切断するようにデザインされた酵素も有用であり得る。低下した分子量および改善された溶解度を伴う望ましいペクチンを得るために、分子量を低下させるための酸化剤の選択は、問題のプロセス、それらの成分の経費、および他の要因により指示される。
【0023】
水酸化ナトリウムのようなアルカリ物質によるペクチンの中和は、ペクチンの分子量を低下させる有効な方法である。「β脱離」と称されるプロセスは、ペクチン溶液のpHがその正常な範囲3〜4から6〜8へ上昇した場合に生じる。この反応は、ペクチンを重合しているグリコシド連結の切断を生じる。35℃またはそれよりも高い温度での5分またはそれ以降、ペクチンの分子量は、このプロセスにより測定できるように低下される。この反応は、ペクチンのHM(高メトキシル)度でより迅速に進行する。ペクチンの分子量を低下させるのに好ましい条件は、出発ペクチン溶液濃度5〜10質量%で、50〜65℃、pH値6.5〜7.5である。このプロセスは、ある期間実行することができるが、最も好ましい時間は15〜30分間である。出発値3〜4からのpHの調節は、10%NaOH溶液により実行される。他のアルカリ物質も使用することができる。pHを変更するために使用される具体的物質ではなく、このpHの変化が、この反応の引き金を引く。得られる分子量の低下は、出発ペクチンと比べ、増大された溶解度を持つフィルムを生じる。
【0024】
HMペクチンは、圧力5,000psi(3.45x107Pa)でホモジナイザーを5回通過することによるホモジナイズにより分解することができる。あるいはHMペクチンは、酸化剤、好ましくは5%過酸化水素の使用により分解することができる。HMペクチンは、Worthington Biochemical社(730 Vassar Ave Lakewood, NJ, 08701)から入手可能なアスペルギルス・ニガーから作成されたペクチナーゼのような、解重合酵素の使用によっても分解することができる。LMペクチンまたはLMAペクチンも、機械的、化学的または酵素的手段を用い分解することができる。
【0025】
ペクチン分子量の分解度は、固有粘度測定法により決定されても良い。十分に分解されているペクチンは、0.05M、pH3.75クエン酸緩衝液システム中で測定した場合に、固有粘度2.5dl/g未満、好ましくは1.8dl/g未満を有するであろう。
【0026】
ひとつの適当なHMペクチンは、迅速に溶解するフィルムの使用において、pH6.5への中和により分解されているD Slow Set(CP Kelco ApS社から入手可能)である。出発の固有粘度は約4.9dl/gであり、および最終製品は、固有粘度1.8dl/gを有する。この用途で使用される標準のプルランは、固有粘度0.9dl/gを有する。
【0027】
得られるフィルムは、瞬間湿潤性を有し、このことはこのフィルムを粘膜組織に塗布された直後に軟化させ、その結果患者が口内で長期間悪い感触を経験することを防ぐ。このフィルムは、通常のコーティング、カッティング、スリッティングおよびパッケージングの操作に適している引張り強度も有する。
【0028】
図1は、フィルム製造操作のひとつの態様を示している。最初にポリマー溶液またはドープが調製され、よく混合され、高ポリマーローディングを得る。混合タンク(1)は、温度制御することができ、および第二のサージタンクは、このシステムにポンプ注入され、連続操作を可能にすることができる。
【0029】
混合工程に続けて、この溶液は、ベルト(2)のような、取り外し可能な支持体(carrier)上に流涎(均等に分配)される。マニホールド、ブレード、ノズル、および/または他の適当な装置を用い、このポリマーを流涎することができる。この支持体の材料は、表面張力を有さなければならず、そのことはこのフィルム溶液が、フィルム材料と支持体材料の間に破壊性結合を形成するために、浸漬することなく、意図された支持体幅を超えて、均等に広がることを可能にする。適当な支持体材料の例は、ガラス、ステンレス鋼、テフロンおよびポリエチレン-含浸紙を含む。
【0030】
できる限り高いポリマーローディングで流涎溶液またはドープを有することが、望ましい。これにより乾燥プロセスにおいて除去されるべき水はより少ない量残留し、このことはカールが少なくおよびより迅速に乾燥するフィルムにつながる。更に速乾性は、香味のような揮発性成分を保存するであろう。ペクチンは、適切に処理される場合は濃度10%またはより高くに調製されてもよい。ベルト上のフィルム流涎に使用されるシステムに応じて、ドープの理想的粘度は、5,000cpから50,000cpを超える値までの範囲であることができる。ドープは、ベルト上に配置する前に加熱されても良く、このことは、粘度を低下し、乾燥時間を短縮し、および材料の取り扱いを容易にする。
【0031】
この流涎フィルムは、均一な厚さでありおよび最終フィルムよりもかなり厚くなければならない。それが乾燥するにつれて、フィルムは、断面がより薄くなり始めるので、左右にはそれほど大きくは収縮されない。例えば、最終厚さ0.0015インチ(1.5ミル)(3.81x10-2mm)および10%ドープの固形物ローディングであるフィルムは、初期フィルム厚さ約0.012(12ミル)(0.30mm)を有さなければならない。
【0032】
この組成物は、取り外し可能な支持体上に流涎され、および乾燥される。フィルムの乾燥は、フィルムを構成している成分に有害な影響を及ぼさない、乾燥炉、乾燥ターミナル、真空乾燥器、またはいずれか他の適当な乾燥装置を用い、高温で実行することができる。
【0033】
この図において、ベルト上の流涎フィルムは、加熱区画(3)を通過する。熱は、蒸気または赤外照射などのいずれか適当な様式で加えることができる。流涎フィルムおよびベルトは、下側もしくは上側からまたは両側に均等に加熱することができる。典型的には、フード(4)または他の集成装置をベルト上で使用し、水分を除去し、および乾燥時の環境を制御する。乾燥は、反射式赤外装置などによりモニタリングされることが好ましいであろう。過熱は貯蔵後のフィルムのカールを引き起こすので、これは避けなければならない。乾燥した場合の製品の水分活性は、約0.3〜0.5(30%〜50%RH)でなければならない。その後ベルト上の流涎フィルムは、冷却区画(5)を通過してもよい。フィルムをベルトから取り外す準備のために、冷却を、加熱工程後使用することができる。
【0034】
その後フィルムを、いずれか適当な方法で、支持体から取り外す。この図において、フィルムは、掻取ブレード(6)により、ベルトから取り外される。ベルトからの清潔な取り外しは、順調な運転操作に必須である。取り外しを補助するために、乾燥を開始する前に、界面活性剤をベルトに塗布してもよい。加えてペクチンは低い粘度および高いポリマーローディングを有するので、取り外しは比較的容易である。過剰な量の可塑剤は、フィルムのベルトへの他着を引き起こすので、避けるべきである。
【0035】
一旦取り外されると、フィルムは、ストリップ形に切断されおよびローラに巻き付けることができる。フィルムは、ダイ打抜きまたはスリッチング-ダイ打抜きにより、単位量に分割することもできる。分割されたフィルムは、一般に幅約15〜約30mmおよび長さ約20〜約50mmのストリップである。このフィルムは、約10〜約200μm、好ましくは約25〜75μmの範囲の厚さを有する。
【0036】
このフィルムは、口内に配置されるように成形されおよびそのようなサイズであることが好ましい。フィルムは、柔軟であり、および口中表面、通常は口蓋または舌に付着し、および迅速に、典型的には2分未満で、好ましくは15秒から1分の間で溶解する。溶解速度は、フィルムの厚さで制御することができる。
【0037】
本発明のペクチンフィルムは、未処理のペクチンよりも、少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも35%早い溶解速度を有する。典型的には改善は、25〜50%の改善を範囲とする。
【0038】
低分子量ペクチンおよび他の水溶性ポリマーを用い、様々な医薬化合物、例えば薬物および口臭消臭剤を投与することができる。
【0039】
フィルムは更に、水、追加の皮膜形成剤、可塑剤、香味剤、防臭剤(antimalodor agent)、界面活性剤、乳化剤、着色剤、甘味剤および香料を含有することができる。
【0040】
香味剤は、天然および合成の香味などの、当業者に公知のものを含む。これらの香味料は、合成香油および香味芳香剤、ならびに/または油、含油樹脂、および植物、葉、花、果実などからの抽出物、ならびにそれらの組合せから選択することができる。代表的香油は以下を含む:スペアミント油、シナモン油、ペパーミント油、丁子油、月桂樹油、タイム油、ニオイヒバ油、ニクズク油、セージ油、苦扁桃油。これらの香味剤は、個別にまたは混合して使用することができる。通常使用される香味は、ペパーミントのようなミント、人工バニラ、シナモン誘導体、および様々な果実香味を含み、個別にまたは混合してのいずれかで使用される。一般に、米国科学アカデミー(NAS)による「Chemicals Used in Food Processing」刊行物(publication)1274の63-258頁に記載されているもののような、いずれかの香味料または食品添加物を使用することができる。使用される香味剤の量は、通常香味の種類、個別の香味、および望ましい強さのような要因を優先的に施す物質である。一般に香味料は、約2.0〜約20質量%および好ましくは約5〜約10質量%の範囲の量で、本発明のフィルムに混和される。
【0041】
本発明の実践に有用な甘味剤は、天然および合成の両方の甘味剤を含む。適当な甘味剤は、キシロース、リボース、グルコース(デキストロース)、マンノース、グラトース(glatose)、フルクトース(レブロース)、スクロース(砂糖)、マルトースなどの単糖、二糖および多糖のような水溶性甘味剤、可溶性サッカリン塩、すなわちサッカリンのナトリウムまたはカルシウム塩などの水溶性人工甘味剤、L-アスパラギン酸誘導された甘味剤であるL-アスパルチル-L-フェニルアラニンメチルエステル(アスパルターム)などのシクラーメート塩ジペプチドベースの甘味剤またはスクラロースのような他の甘味剤を含む。
【0042】
本発明の組成物は、着色剤または色素を含むこともできる。着色剤は、所望の色を作成するのに有効量で使用され、ならびに食品、薬剤および化粧品の用途に適した天然の食用着色剤および色素を含む。これらの着色剤は、FD&C色素およびレーキとして公知である。前述の用途範囲に適用可能な材料は、好ましくは水溶性であり、および5,5-インジゴスズジスルホン酸二ナトリウム塩であるFD&C Blue No.2を含む。同様に、Green No.3として公知の色素は、15種のトリフェニルメタン色素を含み、4-[4-N-エチル-p-スルホベンジルアミノ)ジフェニル-メチレン]-[1-N-エチル1-N-スルホニウムベンジル)-2,5-シクロ-ヘキサジエンイミン]一ナトリウム塩である。FD&CおよびD&C色素の全てならびにそれらに対応する化学構造の完全な列挙は、「Kirk-Othrner Encyclopedia of Chemical Technology」第5巻、857-884頁に見ることができ、この本文は本明細書に参照として組入れられている。
【0043】
活性のある(active)口臭消臭剤を、本発明のフィルム組成物に混和し、本発明の口臭消臭用ストリップを形成することができる。これらの活性成分は、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛および/またはαイオノンを含む。これらの物質は、口臭を遮蔽しおよび細菌性硫黄化合物が原因の揮発分の臭気を低下させるように機能する。これらの物質は、本発明のフィルム組成物に、約0.1〜約2.0質量%、および好ましくは約0.15〜約0.5質量%の濃度で混和される。
【0044】
一般に、特定の組成物に望ましい甘味剤のレベルを提供するために、有効量の甘味剤が使用され、これは選択された甘味剤により変動する。この量は通常組成物の約0.01%〜約2質量%である。
【0045】
実施例1
CP Kelco社のD Slow Setペクチンの14%濃度の溶液を、脱イオン水中に65℃で混合することにより調製した。一旦完全に溶解した後、このペクチン溶液を、10%NaOHでpH値6.5に中和した。これは、この溶液を非常に薄くする作用を有した。可塑剤(グリセリン1%およびPEG-200 0.5%)を、2.3%香油および0.4%サッカリンナトリウムと共に添加した。この溶液を、プラスチック(硬質ポリスチレン)表面上に、ドクターブレード装置を用いて流涎した。最初のフィルムは、厚さ0.018インチ(0.46mm)であり、常温常湿で24時間経過後これは厚さ0.0015インチ(3.81x10-2mm)に乾燥した。
【0046】
実施例2
本実施例の溶液は、標準の酸性pHからほぼ中性へと中和した。このことは、ペクチンの分子サイズの低下を引き起こし、作成される溶液がより高い固形レベルを持つようにすることができ、フィルムへ流涎されるドープの出発材料の調製時には利点である。修飾されたペクチンから製造されたフィルムも、水に曝された場合により迅速に溶解される。これは、より良い食感をもたらし、より迅速に感知される香味を生じる。
【0047】
図2に示したように、この溶液は、混合タンク(7)内で調製される。ペクチン粉末は、振動供給装置(8)および漏斗(9)を用い、タンクの開放上端に添加される。このタンクは、混合速度を調節するために、可変振動数駆動装置を装備され、ならびにポンプ(10)を用い、ペクチン溶液が循環される。ポンプは、速度を制御するために可変振動数駆動モーターにより駆動される大きい容積移送式(positive displacement)であることが好ましい。
【0048】
コロイドミル(11)は、ミルのインレットに追加された注入Tと共に使用される。苛性アルカリが、可変振動数駆動装置により、容積移送式ポンプ(12)を用い、混合T中に添加される。
【0049】

* 20ガロン(76L)で測定
** NaOHの品質が概算され、使用量は、pH測定により指示される
50〜60分間の試行温度のために予想される蒸発による喪失は考慮しない
【0050】
20ガロン(76L)の水道水が、温度約55℃+/-3℃で、混合タンクに追加される。混合タンクの速度は、約25Hzに設定される。ペクチン11kgが、振動供給装置を用い、混合タンクに徐々に添加される。このペクチンは、ミキサー中のボルテックスに添加される。水がコロイドミルを通過させられ、この水にクエン酸ナトリウムが添加される。この混合速度は、ペクチンが添加されるにつれて次第に増加する。ミキサーは、約7または8分間で、約60Hzに達しなければならない。
【0051】
約12分後、典型的にはペクチン合計11kgの約8〜9kgが溶液中にあるが、この混合液は、高い粘度のために、最早良く循環しない。少量の苛性アルカリを添加し、ペクチン供給を停止し、NaOH容積移送を開始し、40〜45%に速度を設定することにより、粘度が低下される。約2分間で、粘度はペクチンを再度添加するのに十分に低下した。NaOH容積移送を続け、40〜45%に設定する。
【0052】
ペクチンおよびNaOHを添加し、NaOHは、粘度を、溶解しているペクチンが増加するのとほぼ同じ割合で降下する(約14分間)。粘度は、ミキサーが混合することができるほぼ最大値に維持されることが理想である。NaOHは、この時点で生成物を過度に薄くするのに十分に高い速度で添加されてはならない。
【0053】
約22分後、全てのペクチンが内部にあり、その温度は約58〜60℃であり、粘度は非常に高く、ミキサーが混合することができるほぼ最大値でなければならない。残りの苛性アルカリは、pHを最終点に調節するために添加される。
【0054】
生成物の容積移送は、コロイドミルを通過する流量を増大するように、20Hzに設定される。その圧力は、20psi(1.38x105Pa)を超えてはならない。苛性アルカリ容積移送の供給速度は、約55〜60%に増大される。生成物は、黄色または緑色では全く認められず、このことは苛性アルカリ添加の速度が余りにも高いことを示している。
【0055】
タンク内のまたはコロイドミルの出口からの物質のpHは、好ましくは平面型pH電極を用い、モニタリングされる。pHは最初は5未満でなければならず、ほとんどの苛性アルカリの添加についてゆっくり上昇するであろう。ミルから出る物質は、常に7.5よりも低いpHに維持されなければならない。この期間中、ミキサーの速度は、このプロセスのほぼ最後にミキサー速度が約15Hzであるまで低下される必要がある。温度は約60〜63℃でなければならない。
【0056】
このプロセスが完了に近くなると、pHは急激に上昇し始める。約30分後、タンクのpHは約6.5に達し、苛性アルカリポンプは停止されなければならない。メチルパラベンが添加され、均一性を保証するために、2〜3分間混合される。この生成物は、60メッシュ篩を用いスクリーニングされ、熱い間に容器に貯蔵される。
【0057】
これらの供給装置は、スクリューフィーダーまたは振動供給装置のような、いずれか適当な供給装置であってよい。容積移送式ポンプは、蠕動ポンプまたは漸進式(progressive)キャビティポンプのような、いずれか適当なポンプであって良い。
【0058】
苛性アルカリは、ミルの高剪断下以外は、ペクチンと接触してはならない。高い流量は、ミルを通して望ましく、その結果苛性アルカリの添加は段階的であり、およびペクチンの単独単位容量が塩基で過剰処理されることはない。流量は、ミキサーが約2分位で「停止する」ように設定されるべきである。好ましくはそのエンドポイントは、粘度により決定され、pHによってではない。クエン酸は、このプロセスの最後に添加され、pHを約5に低下し、最早分解が生じないことを確認することができる。
【0059】
本発明の適当なペクチンフィルムは、先の実施例において使用されたものについて、総体的および具体的に説明された本発明の構成要素および/または操作条件を置き換えることにより、得ることができる。
【0060】
本発明は、本発明を実行する上で現在好ましい様式を含む具体的実施例について説明されているが、当業者は、これらは、本発明の精神および範囲内である、前述のシステムおよび技術の多くの変動および入れ替えがあることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】ペクチンフィルムを調製するひとつの態様を示す。
【図2】ペクチン溶液の固有粘度を低下させるひとつの態様を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の活性物質を口腔へ送達するための経口で消費できるフィルムであって、口腔内で迅速に溶解可能であり、かつ固有粘度が約2.5dl/g以下のペクチンと、少なくとも1種の活性物質とを含有する組成物から製造されているフィルム。
【請求項2】
固有粘度が約1.8dl/g以下である、請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
ペクチンが高メチルエステルペクチンである、請求項1記載のフィルム。
【請求項4】
ペクチンが低メチルエステルペクチンである、請求項1記載のフィルム。
【請求項5】
ペクチンが、フィルム乾量を基に約20〜約80質量%の濃度で存在する、請求項1記載のフィルム。
【請求項6】
活性物質が香味剤である、請求項1記載のフィルム。
【請求項7】
活性物質が薬剤である、請求項1記載のフィルム。
【請求項8】
口腔内で迅速に溶解可能である、少なくとも1種の活性物質を口腔へ送達するための経口で消費できるフィルムを製造するための組成物であって、固有粘度が約2.5dl/g以下のペクチンと、少なくとも1種の活性物質とを含有する組成物。
【請求項9】
固有粘度が約1.8dl/g以下である、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
ペクチンが高メチルエステルペクチンである、請求項8記載の組成物。
【請求項11】
ペクチンが低メチルエステルペクチンである、請求項8記載の組成物。
【請求項12】
活性物質が香味剤である、請求項8記載の組成物。
【請求項13】
活性物質が薬剤である、請求項8記載の組成物。
【請求項14】
口臭消臭物質を口腔に送達するための方法であって、口腔内で迅速に溶解可能であり、固有粘度が約1.8dl/g以下のペクチンと少なくとも1種の活性物質とを含有する、経口で消費できるフィルム組成物を調製する工程、およびフィルムを口腔内に配置する工程を含む、方法。
【請求項15】
固有粘度が約1.8dl/g以下である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
迅速に溶解するペクチンフィルムの製造プロセスであって、固有粘度が約4.9dl/g以上の第一のペクチン溶液を分解し、固有粘度が約2.5dl/g以下の第二のペクチン溶液を得る工程、および第二のペクチン溶液からフィルムを形成する工程を含む、プロセス。
【請求項17】
固有粘度が約1.8dl/g以下である、請求項16記載のプロセス。
【請求項18】
活性成分を第一または第二のペクチン溶液に添加する工程を更に含む、請求項16記載のプロセス。
【請求項19】
第一のペクチン溶液が、ホモジナイゼーションにより分解される、請求項16記載のプロセス。
【請求項20】
ホモジナイゼーションが、圧力約5,000psi(3.45x107Pa)である、請求項16記載のプロセス。
【請求項21】
第一のペクチン溶液が、酸化剤により分解される、請求項16記載のプロセス。
【請求項22】
酸化剤が5%過酸化水素である、請求項21記載のプロセス。
【請求項23】
第一のペクチン溶液が、解重合酵素により分解される、請求項16記載のプロセス。
【請求項24】
酵素がペクチナーゼである、請求項23記載のプロセス。
【請求項25】
第一のペクチン溶液が、pHの上昇により分解される、請求項16記載のプロセス。
【請求項26】
pHが、水酸化ナトリウムにより上昇する、請求項25記載のプロセス。
【請求項27】
pHが、約6〜約8に上昇する、請求項25記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−506448(P2006−506448A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−571957(P2004−571957)
【出願日】平成15年9月3日(2003.9.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/025847
【国際公開番号】WO2004/024111
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(501190918)シーピー ケルコ ユー.エス.インク. (3)
【Fターム(参考)】