説明

ペグ化ナノ粒子

本発明は生物分解性ポリマー、好ましくはビニルメチルエーテルと無水マレイン酸(PVM/MA)とのコポリマー、およびポリエチレングリコールまたはその誘導体を含んでなるナノ粒子に関する。これらのナノ粒子は製造が容易でありかつ優れた生体接着(bioadhesion)、大きさ、およびζ電位特性を提供して活性分子の投与に適するようにする。それらの製造に用いられるポリエチレングリコールの種類を選択することによって、これらのナノ粒子の特性を適当に調節して、輸送される薬物の種類および/または医薬処方物の投与方法に従って好都合に用いることができる。ペグ化(pegylation)は問題の二種類の高分子を短時間培養するだけで、高い毒性を有する有機溶媒または長くかつ面倒な合成工程の使用に頼らざるを得ない必要性なしに行われる。さらに、ペグ化(pegylated)工程は生物活性分子を封入する方法に結びつけることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は生物分解性ポリマーとポリエチレングリコールを基材とするペグ化(pegylated)ナノ粒子、それらを含む処方物でペグ化(pegylated)ナノ粒子を製造する方法、および薬物投与系としてのそれらの使用に関する。
【0002】
発明の背景
近年、生物分解性のポリマー性ナノ粒子が新規な薬物投与系として提案されてきている。それらが提供する最も重要な性質の一つは、組込まれた薬物の制御放出である。これにより、大きな治療効果が得られ、患者にとって投与がより苦痛の無いものとなり、かつ過剰摂取を防止することができる。さらに、様々な物理化学的特性を有する薬物を包含することができ、体液中でのそれらの安定性を向上させることができる。この事実は、一般に、抗原、タンパク質、および高分子の場合に極めて重要である。さらに、ナノ粒子の大きさが小さいため、ナノ粒子は経口、非経口、および点眼のような様々な経路を通る薬物の投与に適している(Kreuter, Adv. Drug Del. Rey., 7 (1991) 71-86、Gref et al., Science, 263 (1994) 1600-1603、Zimmer and Kreuter, Adv. Drug Del. Rev., 16 (1995) 61-73)。
【0003】
経口投与は、最も好都合かつ一般に普及している薬物の投与経路である。しかしながら、ある種の活性分子の生物学的利用能(bioavailability)は、(i) 薬物分子の特性および医薬形態によって、および(ii) タンパク質分解酵素、蠕動運動、および全身前代謝(presystemic metabolism)の存在のような消化管に存在する生理的条件によって変化する。ナノ粒子のようなコロイド系が、これらの障害のいくつかを克服するために提案されてきた。これらの担体は本質的に大きな比表面積を有しており、これによって生物学的支持体(消化管粘膜)とのそれらの相互作用が促進される。薬物の放出制御によってもまた、生物学的半減期が短い分子の効果を時間的に延長することができる。一方、ナノ粒子はパイアー斑細胞およびリンパ組織小胞によって取り込まれることができる(Hodges et al., J. Drug Target., 3 (1995) 57-60、 Florence, Phann. Res., 14 (1997) 259-266)。この現象により薬物をリンパ経路に向け、ワクチンの場合にはその抗原提示を促進することができる。しかしながら、通常のナノ粒子は経口投与によるそれらの使用に関して、いくつかの重大な欠陥を有しており、(i) 消化液中ではある程度不安定であり、(ii) 腸管吸収の程度が低く、(iii) 消化管粘膜で非特異的に親和性を示したり、接着したりするのである。
【0004】
ナノ粒子の非経口投与は、制御された全身性の放出を提供し、それは(i) 経口の生物学的利用能(bioavailability)が低い薬物、(ii) 生物学的血漿中での半減期が短い薬物、(iii) 安定性が限定されている薬物に適する。非経口のナノ粒子のもう一つの重要な利点は、ある種の臓器に薬物を蓄積できることである。しかしながら、ナノ粒子はその静脈内投与の後に、単核食細胞系(MPS)のマクロファージによって速やかに認識されて、取り込まれ、血液循環から除去される。この現象により、制御放出の機能が限定され、そしてMPS以外の組織における薬物蓄積の可能性は限定されてしまう。
【0005】
制御放出系の点眼投与には眼病の治療に著しい利点があるが、全身的効果を得ることもできる。しかしながら、点眼投与は、鼻涙管への排出および涙液希釈による処方物の前角膜部分からの速やかな消失と関連している。これら過程は、投与薬物の極めて低い割合のものだけが角膜を通り眼内組織に到達することができる(5%未満)、という事実を生じさせる。この流出は、この経路によって処方物を投与した場合の全身的効果の発生の原因である。多数の研究によって、ナノ粒子の使用により、結膜における薬物の量を増加させ、かつ溶液および軟膏のような通常の眼科用形態と比較してその生物学的利用能(bioavailability)を増加させることができることが明らかにされてきた(Gurny et al., J. Controlled Rel., 6 (1987) 367-373、 Deshpande et al., Crit. Rev. Ther. Drag Carrier Syst., 15 (1998) 381-420)。コロイド系は、その粘度が低いことにより、視力への影響を回避する、単純な液滴として投与することができる。使用頻度は、ナノ粒子からの薬物が徐放性であるため少なくすることができる。しかしながら、ナノ粒子もまた吸収部位から速やかに消失する。
【0006】
したがって、ナノ粒子が様々な前記投与方法にとって潜在的に有用であるにもかかわらず、その使用を困難にする問題点が未だにある。ポリマーマトリクスおよびそれらの表面の特性を変更することによって、前記問題点のいくつかを解決することができる。
【0007】
この観点から、ナノ粒子と、適当なポリマーとの会合または適当なポリマーによるコーティングによりナノ粒子の物理化学的特性を変更することができ、またこれによりナノ粒子の分布および生物学的媒質との相互作用を間接的に変更することができる。可能な方法はペグ化(pegylation)またはステルシー(stealthy)ナノ粒子の入手、として知られるナノ粒子へのポリエチレングリコール(PEG)の結合である。
【0008】
経口投与によるそれらの使用に関して、ポリエチレングリコールの通常のナノ粒子への会合により、それらを消化液中での酵素による攻撃から保護することができる。これはポリエチレングリコールのタンパク質を撥ね付ける能力のためである(Gref et al., Science, 263 (1994) 1600-1603)。この方法は、管腔に存在するムチンや他のタンパク質とのそれらの相互作用を最小限にすることもできる。同様の方法は、眼用ナノ粒子の開発に応用されてきている。Frestaらは、ポリエチレングリコールでコーティングしたポリ(アルキルシアノアクリレート)微小球にアシクロビルを投与したところ、その眼からの吸収が著しく増加することを観察した(Fresta et al., J. Phann. Sci., 90 (2001) 288-297)。この現象は、コーティングしたナノ粒子と角膜上皮との相互作用が一層大きくなることによって説明される。
【0009】
静脈内投与されたポリエチレングリコールでコーティングした様々なナノ粒子は、循環時間が長くなることが明らかにされている(Gref et al., Science, 263 (1994) 1600-1603、 Sto1nik et al., Phann. Res., 11 (1994) 1800-1808、 Bazile et al., J. Phann. Sci., 84 (1995) 493-498 )。ポリエチレングリコールでコーティングしたポリ(乳酸)(PLA)ナノ粒子は、アルブミンまたはポロキサマーでコーティングした場合(t 1/2=2-3分間)より、非常に長い血漿中半減期(t l/2=6時間)を有する(Verrecchia et al., J. Controlled Rel., 36 (1995) 49-61)。ナノ粒子の表面上に親水性ポリエチレングリコール鎖が存在すると、(オプソニンとして知られる)血中タンパク質との相互作用が著しく減少する。これらのタンパク質は食作用を促進して、ナノ粒子と食細胞との間に「橋」を形成する(Frank & Fries, Iminunol. Today, 12 (1991) 322-326)。しかしながら、ポリエチレングリコールの親水性特性が、オプソニン化に対する効率的耐性を提供する唯一の重要な因子ではない。ポリビニルアルコールのような他の親水性ポリマーは、ナノ粒子のオプソニン化に対する防御能力の低いことが明らかにされている(Leroux et al., Life Sci., 57 (1995) 695-703)。したがって、ペグ化(pegylation)によって提供される立体安定性も、PEG鎖の柔軟性の高さおよび特異的構造形成のような他の物理化学的特性によるものであろう(Mosquiera et al., Biomaterials, 22 (2001) 2967-2979)。
【0010】
この新規な方法の主な課題は、ナノ粒子の表面へのポリエチレングリコールの結合の安定性である(Peracchia et al., Life Sci., 61 (1997) 749-761)。ポリエチレングリコールのタンパク質を撥ね付ける能力は、鎖の配置、鎖の電荷、鎖の長さ、および鎖の柔軟性によって変化する(Torchillin, J. Microencaps., 15 (1998) 1-19)。ナノ粒子の表面を変更する方法は主として物理吸着(Sto1nik et al., Adv. Drug Del. Rev., 16 (1995) 195-214)または共有結合(De Jaeghere et al., J. Drug Target., 8 (2000) 143-153)によって行われる。しかしながら、単純な吸着は相互作用が不安定なためにコーティングが速やかに失われる欠点を有する。共有結合を好ましいと考えることにより、ほとんどのペグ化(pegylated)ナノ粒子は、乳酸またはグリコール酸とのポリエチレングリコールコポリマーを用いて調製されてきた。しかしながら、この共重合過程ではいくつかの触媒と特異的な化学的条件を用いる必要がある(Beletsi et al., Int. J. Parm., 182 (1999) 187-197)。さらに、有機合成に用いられる毒性のある有機溶媒(塩化メチレン、トルエンなど)には問題がある。
【0011】
したがって、経口投与で安定であり、親水性コーティングを保持し、かつ消化管で良好な生体接着(bioadhesive)特性および特異性を有するナノ粒子を得る必要性がなお存在している。それらは毒性がなく、生物分解性であり、かつ有効であるために生成が容易でなければならない。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は上述した欠点を解決するナノ粒子を提供することである。すなわち経口投与において安定性および特異性を有し、粘膜と相互作用するための良好な生体接着特性を有し、広汎な活性分子を運ぶことができ、制御した方法で活性分子を放出し、特に非経口投与される際に血液系からのその消失を防止するナノ粒子を提供することである。
【0013】
生物分解性ポリマーおよびポリエチレングリコールによって形成されたナノ粒子はこれらの問題点を解決することが確認された。ポリビニルメチルエーテル、無水マレイン酸、およびポリエチレングリコールのコポリマーによって形成されるナノ粒子は生成が容易であり、それらを活性分子の投与に適するようにする優れた生体接着、大きさ、およびζ電位特性を提供することが特に見出された。さらに、それらを生成するのに用いられるポリエチレングリコールの種類を選択することによって、これらのナノ粒子の特性を適切に変え、それは運ばれる薬物の種類および/または医薬処方物の投与方法に従って有利に用いることができることも見出された。
【0014】
したがって、第一の態様では本発明は生物分解性ポリマーと、ポリエチレングリコールまたはその誘導体とを含んでなる生物活性分子を運ぶためのペグ化(pegylated)ナノ粒子に関する。一変化態様では、生物分解性ポリマーは、ビニルメチルエーテル・無水マレイン酸(PVM/MA)コポリマーである。
【0015】
ポリエチレングリコールの分子量は好ましくは400-35,000Daである。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、これら二種類の単位を含むブロックまたは無作為コポリマー、それらの混合物、またはそれらの誘導体の群から選択される場合には、ポリアルキレングリコールは良好な結果を提供する。ポリエチレングリコールの少なくとも一個の末端水酸基は場合によってアルコキシ、アクリレート、メタクリレート、アルキル、アミノ、リン酸塩、イソチオシアネート、スルフヒドリル、メルカプト、または硫酸基によって置換されているのが好ましい。
【0016】
本発明の一変化態様では、ポリエチレングリコールと生物分解性ポリマーの重量比は1:2-6であり、好ましくは1:2-4であり、さらに好ましくは約1:4である。
【0017】
本発明のペグ化(pegylated)ナノ粒子は、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドのような活性分子を組込むことができる。それらの活性に関してはとりわけ抗腫瘍薬または腫瘍に対する抗原、または中枢神経系の保護薬または糖質コルチコイド、またはワクチン接種に対する抗原または免疫療法に対するアレルゲンであってもよい。
【0018】
もう一つの態様にあっては、本発明は、前記のペグ化(pegylated)ナノ粒子を含んでなる医薬組成物に関する。一変化態様では処方物は経口投与用である。もう一つの変化態様では、処方物は非経口投与または粘膜(例えば、眼の粘膜)を介して投与するためのものである。
【0019】
したがって、本発明のペグ化(pegylated)ナノ粒子は医薬の製造に用いることができる。これは場合によって凍結乾燥形態であってもよい。
【0020】
もう一つの態様では、本発明は、記載されているペグ化(pegylated)ナノ粒子の製造方法に関し、その方法は、ポリマーおよびポリエチレングリコールを有機溶媒中で同時にインキュベートした後、ポリマーを水性アルコール溶液で脱溶媒和する工程を含んでなる。一変化態様では生物分解性ポリマーの濃度は0.001-10%(w/v)であり、ポリエチレングリコールの濃度は0.001-5%(w/v)である。有機相/水性アルコール溶液の相比は場合によって1/1-1/10の範囲である。
【0021】
この方法は、さらに有機溶媒の除去および/または精製の追加工程、ならびに架橋剤の使用によりペグ化(pegylated)ナノ粒子を安定化する工程を含んでもよい。生物活性分子は、ポリマーとポリエチレングリコールの有機溶媒中での同時インキュベートの工程で組込むことができ、または既に形成されたナノ粒子の水性懸濁液で組込み、それらの会合が起こるようにすることができる。
【発明の具体的説明】
【0022】
ビニルメチルエーテル・無水マレイン酸(PVM/MA)コポリマーのような生物分解性ポリマーのナノ粒子の様々なポリエチレングリコールによる修飾およびコーティングによって、経口投与において物理化学的、生体接着、および特異性特性を有するナノ粒子を得て、特殊な薬物担体として極めて興味深い系にそれらを転換することができることを意外にも見出した。これらのナノ粒子の特性は、用いられるポリエチレングリコールの種類および調製方法によって有利に調節することができる。本発明のペグ化(pegylated)ナノ粒子は、それらを経口または点眼投与した後の粘膜での滞留時間を伸ばすことができる。これらナノ粒子は、吸収間口(windows)の狭い薬物の投与にとって興味深いものであり、したがって、それらの生物学的利用能(bioavailability)を向上させる。これらナノ粒子は、系の血漿循環時間を増加させ、その血漿循環時間中に薬物が抑制的に徐放されるので、毒性の高い薬物(例えば、細胞増殖抑制薬)にとって適当な運び屋でもある。また、ペグ化(pegylated)ナノ粒子は、単核食細胞系(MPS)による認識および除去を防止し、静脈内投与後の薬物の循環を長くすることができる。
【0023】
「ナノ粒子」という用語は大きさが1.0μm未満、好ましくは10-900nmの範囲の球または同様な形態を表すのに用いる。
【0024】
前記のように、一態様では本発明は生物分解性ポリマーから形成されるペグ化(pegylated)ナノ粒子に関する。ナノ粒子を形成する当該技術分野で知られている生物分解性ポリマーを用いることができる。これらのポリマーとしては、特にポリ乳酸およびポリグリコール酸のようなポリヒドロキシ酸、およびそれらのコポリマー(例えば、PLGA)、ポリ無水物、ポリエステル、および多糖類、例えばキトサンが挙げられる。本明細書における「生物分解性」という用語は、イン・ビボ療法の場合、ポリマーがpH6-9および25℃-40℃の温度の生理学的溶液に暴露されると、所望な応用に許容可能な時間で溶解または分解するポリマーを表す。
【0025】
本発明の一変化態様では、無水物形態でのビニルメチルエーテルと無水マレイン酸のコポリマー(PVM/MAまたはGantrez AN)は生物分解性ポリマーとして用いられる。このコポリマーの分子量は好ましくは100-2400KDaであり、さらに好ましくは200-2000KDaである。本発明の一変化態様では、分子量が180-250KDaのPVM/MAコポリマーが好ましい。
【0026】
このコポリマーは、その毒性が低く(LD50=8-9g/kg 経口)かつ生体適合性に優れていることにより医薬技術に広く用いられるため好都合である。量およびその価格に関しても入手が容易である。このポリマーは毒性がかなり高い通常の有機試薬(グルタルアルデヒドおよびカルボジイミド誘導体)に頼ることなしに、その無水物基により様々な親水性物質と反応することができる(Arbos et al., J. Controlled Rel., 83 (2002) 321-330)。ポリマーは水性溶媒には不溶性であるが、Gantrez ANの無水物基が加水分解してカルボキシル基を生じる。解離は遅く、解離が起こる条件に依存する。PVM/MA中の官能基の生物学的利用能(bioavailability)により、ヒドロキシル(-OH)またはアミン(NH2)のような求核基を有する分子の共有結合が水性溶媒中でインキュベートするだけで起こる。
【0027】
このコポリマーの非ペグ化(Non-pegylated)ナノ粒子およびそれらの調製は、本出願人によるWO 02/069938号に記載されており、この出願の内容はその開示の一部として本明細書に引用される。ビニルメチルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマーのナノ粒子は、ポリマーの有機溶液に(ポリマーの溶液と相溶性の)第一の極性溶媒を加えることによってポリマーを脱溶媒和した後、第二の非溶媒液体、この場合には水性アルコール溶液、を加えることによって容易に調製される。場合によって架橋剤を加えることができる。このポリマーのペグ化(pegylated)ナノ粒子の調製は後記するが、それらは極めて容易に調製できることが見出された。
【0028】
本発明の説明において、「ポリエチレングリコール」という用語は、二または三個の炭素原子、場合によって分岐アルキレン基によって連結されたエーテル基を含む、水に可溶性の任意の親水性ポリマーであると理解される。したがって、この定義は分岐した、または分岐していないポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびこれら二種類の単位を含むブロックまたはランダムコポリマーをも包含する。この用語は末端水酸基の誘導体も包含し、これは修飾(一方の末端または両端)により、アルコキシ、アクリレート、メタクリレート、アルキル、アミノ、リン酸塩、イソチオシアネート、スルフヒドリル、メルカプト、および硫酸基を導入することができる。ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールはアルキレン基に置換基を有することができる。置換基が存在する場合には、これらの置換基は好ましくはアルキル基である。
【0029】
ポリエチレングリコールは、薬物の経口投与、非経口投与、および局所投与について承認されている水溶性ポリマーである(FDA)。ポリエチレングリコールは、アルカリ性媒質中に、反応開始剤として水、モノエチレングリコール、またはジエチレングリコールの存在下で、エチレンオキシド(EO)またはプロピレンオキシド(PO)を重合させることによって生成される。(1,2-エポキシドポリマー: エチレンオキシドポリマーおよびコポリマー、ポリマー科学および工学の百科事典("1,2-Epoxide Polymers: Ethylene Oxide Polymers and Copolymers" in Encyclopedia of Polymer Science and Engineering)」、 Mark, H.F.(監修), Jonh Wiley and Sons Inc., 1986, pp. 225-273)。所望な分子量(通常は製造過程で粘度を測定することによって制御される。)に達したならば、触媒を酸(乳酸、酢酸など)で中和することによって重合反応を終了する。結果物は極めて単純な構造:
HO - (CH2-CH2-O)n - H
(式中、(n)はEOモノマーまたは単位の数である)を有する直鎖のポリマーである。これらの単位はあるいはプロピレン基を含む。
【0030】
技術的にはこれら全ての生成物はポリ(オキシアルキレン)と呼ぶべきであるが、平均分子量(または分子質量)が200-35,000の間である生成物はポリエチレングリコール(PEG)として知られている。このポリエチレングリコールという用語は、通常は、これらの分子の物理化学的特性に対する水酸基末端基の影響がかなり大きいことを示すのに用いられる。PEGという用語は、通常は数値と組み合わせて用いられる。医薬業界ではこの数は平均分子量を示し、一方化粧品産業ではPEGという文字に伴う数は分子を形成する重合したEO単位を表す(「医薬賦形剤便覧(Handbook of Pharmaceutical Excipients)」, Rowe R.C.、 Sheskey P.J.、 Weller P.J. (監修), 第4版, Pharmaceutical Press and American Phannaceutical Association, ロンドン, 英国, 2003)。PEGは様々な薬局方に記載されているが、その名称は異なっている(「国際的調和: ポリエチレングリコール(PEG)(International Hannonisation: Polyethylene glycol (PEG))」: Pharmeuropa 1999, 11, 612-614)。Rowev R.C.、 Sheskey P.J.、 Weller P.J.監修のPharmaceutical Press(ロンドン, 英国)およびthe American Pharmaceutical Association(ワシントン, 米国)によって刊行された「医薬賦形剤便覧」(第4版)によれば、ポリオキシエチレングリコールはポリエチレングリコール、マクロゴール類(macrogols)、マクロゴール(macrogol)、またはPEGとも呼ばれている。英国薬局方はポリエチレングリコールおよびマクロゴール類を用いており、欧州薬局方(Ph Eur)はポリエチレングリコールおよびマクロゴールを用いているが、米国薬局方(USP)はポリエチレングリコール(類)を用いている。
【0031】
分子量が400未満のPEGは室温で不揮発性の液体である。PEG 600は融点が17-22℃であるが、平均分子量が800-2000のPEGは低融点を有する糊状材料である。分子量が3000を上回る場合にはPEGは固体であり、PEG 35000までは市販されている。一方、分子量が増加するとPEGの融点は増加するが、沸点は60℃の最大値まで増加する。同様に、分子量が増加するとその水への溶解度は減少する。いずれにせよPEG 35000についてはほぼ50%(m/m)の量を水に溶解させることができる。
【0032】
毒物学的観点から、PEGはむしろ毒性がなくかつ免疫原性もないと考えられる(Hermansky S.J et al., Food Chem. Toxic., 1995, 33, 139-140、「PEGの安全性評価に関する最終報告(Final Report on the Safety Assessment of PEGs)」: J.A. C. T., 1993, 12, 429-457、 ポリエチレングリコール、 21 CFR 172.820, FDA)。WHOによって定義された許容可能な一日摂取量は10mg/kgの重量である(ポリエチレングリコール、食品添加物に関するFAO/WHO合同専門家委員会の第二十三回目の報告、世界保健機関、ジュネーブ、技術報告シリーズ1980, 648, 17-18)。
【0033】
ポリエチレングリコール誘導体は、それらの水溶性、生理学的不活性、低毒性、および非常に様々な条件下で安定であるような、慣用されてきたPEGと同様の利点を有する。これらの誘導体は非常に様々な生成物を包含し、-NH2(最も反応性のもの)、フェノール、アルデヒド、イソチオシアネート、-SH基などの水酸基を置換する官能基を特徴としている。下記に本発明で用いることができるポリエチレングリコール誘導体を示すことができる:
ポリオキシエチレンエステル: PEGモノメチルエーテルモノスクシンイミジルコハク酸エステル、PEGモノメチルエーテルモノカルボキシメチルエーテル、PEGアジピン酸、PEGジステアリン酸塩、PEGモノステアリン酸塩、PEGヒドロキシステアリン酸塩、PEGジラウリン酸塩、PEGジオレイン酸塩、PEGモノオレイン酸塩、PEGモノリシンオレイン酸塩、PEGヤシ油エステル。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル: PEGモノメチルエーテルまたはメトキシPEG (mPEG)、PEGジメチルエーテル。
その他: ポリ(エチレングリコールテレフタレート)、ポリオキシエチレン誘導体、およびソルビタンエステルおよび脂肪酸、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー、エチレンオキシドとアクリルアミドとのコポリマー。
PEG誘導体: O,O'-ビス-(2-アミノエチル)ポリエチレングリコール(DAE-PEG 2000)、O,O'-ビス-(2-アミノプロピル)ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール。
【0034】
本発明の一変化態様では、ポリエチレングリコールは分岐しておらず、水酸基が置換されていない。この変化態様では、用いられるポリエチレングリコールの分子量は好ましくは400-35,000Daである。分子量が400Da未満である場合にはペグ化(pegylation)が効率的に起こらないことが見出された。したがって、本発明の好ましい一変化態様では、ペグ化(pegylated)ナノ粒子の製造に用いられるポリエチレングリコールは分子量が400KDa以上であり、さらに好ましくは1000KDa以上であり、1500-10,000KDaの値が特に好ましく、2000-5000KDaが好ましい。
【0035】
したがって、本発明の一変化態様では、ポリエチレングリコール2000(PEG 2000)が用いられる。ポリマーに関するPEG 2000の量は好ましくは1:2-6であり、約1:4の比の値が良好な結果を提供する。例えば、約0.25mg PEG 2000/mgポリマーは効率的にペグ化(pegylation)される。この場合には、ナノ粒子に会合した量は約55.0μg/mgナノ粒子である。これらのナノ粒子は球形および約300nmの大きさを有することを特徴とする。
【0036】
本発明のもう一つの変化態様では、ペグ化(pegylated)ナノ粒子の製造に用いられるポリエチレングリコールは、例えばメチルエーテル誘導体により阻害された末端水酸基を有する。これによりその親水性が減少し、ナノ粒子の構造を変化させることさえできる。この場合には、ポリエチレングリコール鎖の大部分がその内部に包含され、わずかな部分だけがナノ粒子の表面に位置する。この特殊性により水酸基を阻害することによって、または下記のような他の官能基を導入することによって、ナノ粒子の特徴を調節することができる。ナノ粒子の内部にあるm-PEGの場合には、その機能は、ポリマーマトリクスの多孔性を変えることによって薬物の放出を変えることである。
【0037】
好ましい一変化態様では、ポリエチレングリコールメチルエーテル2000(mPEG 2000)が用いられる。ポリマーに関するmPEG 2000の量は、好ましくは1:2-6であり、約1:4の比の値、例えば約0.25mg mPEG 2000/mgポリマーが良好な結果を提供する。この場合にはナノ粒子に会合した量は約35.5μg/mg ナノ粒子である。これらのナノ粒子は球形および約300nmの大きさを有することを特徴とする。
【0038】
本発明のもう一つの変化態様では、用いられるポリエチレングリコールはアミノ基のような水酸基とは異なる末端官能基を有する。これらのアミノ基もまた順に置換されかつ官能基を有していてもよい。好ましい一変化態様ではアミノ基は-NH2である。これらの基を有するとナノ粒子の経口投与は腸管の一定の区分に蓄積し、これにより特異的投与が可能となる。
【0039】
したがって、一変化態様では、ペグ化(pegylated)ナノ粒子の製造に用いられるポリエチレングリコールはO,O-ビス-(2-アミノエチル)ポリエチレングリコール2000 (DAE-PEG 2000)である。この場合、ペグ化(pegylated)ナノ粒子の構造は「刷毛(brush)」型構造ではないと考えられ、鎖が両端で結合して「ループ」型形状を生じているからである。ポリマーに関するDAE-PEGの量は好ましくは1:4未満である。好ましい一変化態様では0.25mg DAE-PEG 2000/mgポリマー以下である。この場合には、ナノ粒子に会合した量は約90.6μg/mgナノ粒子である。これらのナノ粒子は球形および約500nmの大きさを有することを特徴とする。
【0040】
もう一つの変化態様では、ペグ化(pegylated)ナノ粒子の製造に用いられるポリエチレングリコールはアミノ基およびアルキル基の分岐を有する。これらの置換基を有する場合には刷毛(brush)型構造を形成する傾向があり、末端の一方はナノ粒子の内部になり、他方は外側になる。
【0041】
したがって、用いられるポリエチレングリコールがO,O'-ビス-(2-アミノプロピル)ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール2000(DAP-PEG 2000)である場合には、ナノ粒子は球形および約360nmの大きさを有することを特徴とする。この場合にはポリマーに関するDAP-PEGの量は好ましくは0.25mg DAP-PEG 2000/mgポリマー以下であり、ナノ粒子に会合した量は67.6μg/mgナノ粒子である。
【0042】
様々な種類の官能基を有する前記の群に対応するポリアルキレングリコールのいくつかの化学構造を以下に例示する。
a) H(OCH2CH2)nOH
b) H3C(OCH2CH2)nOH
c) H2N(CH2CH2O)nCH2CH2NH2
d) H2NCHCH3CH2(OCHCH3CH2)(OCH2CH2)n(OCH2CHCH3)NH2
【0043】
具体例は下記のものが挙げられる。
a) ポリエチレングリコール400、1000、または2000(PEG 400、PEG 1000、またはPEG 2000)、
b) ポリエチレングリコールメチルエーテル2000(mPEG 2000)、
c) O,O'-ビス-(2-アミノエチル)ポリエチレングリコール2000(DAE-PEG 2000)、
d) O,O'-ビス-(2-アミノプロピル)ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(DAP-PEG 2000)
【0044】
実施例によって確かめられている前記の説明から分かるように、ポリエチレングリコールの種類を選択することによって、生成する系の特徴を随意に調節することができる。異なる種類のポリエチレングリコールの混合物を用いると、さらに変動性因子が加わる。実際的観点から、このことはそれぞれの活性分子およびそれぞれの投与方法にとって最も適当な系を適合させ、選択するのに重要である。
【0045】
生物分解性ポリマーとポリエチレングリコールのナノ粒子、好ましくはビニルメチルエーテルと無水マレイン酸(PVM/MA)のコポリマーおよびポリエチレングリコールの製造方法は、例えばWO 02/069938号に記載の溶媒置換法に基づいている。
【0046】
本発明の一変化態様では、ペグ化(pegylated)ナノ粒子は、(i) 有機相における二種類のポリマーの同時培養(例えば、PVM/MAおよびPEG)、および(ii) 生物分解性ポリマーナノ粒子とポリエチレングリコール水溶液の培養の二つの異なる方法によって調製される。これらの方法は表面にPEGが会合しているPVM/MAナノ粒子の調製に有効である。第一の変法(ポリマーの同時培養)が好ましく、この方法によりPEGが良好な程度で会合するからである。
【0047】
第一の方法はアセトンなどの有機溶媒に生物分解性ポリマーおよびポリエチレングリコールを同時に溶解することを包含する。混合物のインキュベートは室温で所定の時間攪拌下で行われる。生物分解性ポリマーの濃度は、好ましくは0.001-10%(w/v)であり、ポリエチレングリコールまたはその誘導体の濃度は0.001-5%(w/v)である。
【0048】
例えばエタノールのような、ポリマーの溶液と相溶性の極性溶媒の所定量を、場合によってこの溶液に加える。
【0049】
WO 02/069938号に記載されているように、架橋剤を場合によって用いて、ナノ粒子の安定性を向上させることもできる。用いることができる架橋剤としては、ジアミノ化分子(例えば、1,3-ジアミノプロパン)、多糖類または単糖類、タンパク質、および一般にはGantrez無水物基と反応することができる官能基を有する任意の分子が挙げられる。本発明の方法においてPEGを加える場合には、架橋が同時に起こるので架橋は必要でない。指示された生成物の架橋が所望な場合には、それらを極少量加えなければならない。
【0050】
最後に、同様の容積の第二の非溶媒液体、好ましくは水性アルコール溶液を加える。一変化態様では医薬級水(WFIの精製水、出願明細書に従う)を用いる。有機相/水性アルコール溶液の比は好ましくは1/1-1/10の範囲である。ナノ粒子が即座に媒質中に形成され、乳白懸濁液の外観を有する。
【0051】
有機溶媒は減圧下での蒸発のような任意の適当な方法によって除去され、ナノ粒子は安定な水性懸濁液に残る。
【0052】
ナノ粒子は遠心分離、超遠心分離、接線濾過、または蒸発であって、真空の使用を含むような通常の手段によって精製される。
【0053】
最後に、それらを所望により凍結乾燥して長期間の保管や保存を行うことができる。スクロースまたはマンニトールのような通常の凍結防止剤を用いて、好ましくは0.1-10重量%の濃度で凍結乾燥を促進させることができる。
【0054】
第二の方法は、生物分解性ポリマーをアセトンのような有機溶媒に溶解することを包含している。所定容積のエタノールのような水性アルコール溶液、および最後に同容の水を次にこの溶液に加える。ナノ粒子が即座に媒質中に形成され、乳白懸濁液の外観を有する。有機溶媒は前記記載の方法、例えば減圧下での蒸発によって除去され、ナノ粒子は安定な水性懸濁液に残る。次にナノ粒子をポリエチレングリコールの水溶液中でインキュベートする。インキュベートは所定の時間攪拌しながら行う。次いで、ナノ粒子を遠心分離によって精製し、最後に前記と同じ方法を用いて凍結乾燥する。
【0055】
本発明は、前記のペグ化(pegylated)ナノ粒子と、場合によって活性分子とを含んでなる医薬組成物にも向けられる。適当な医薬製剤は、腸溶性処方物、好ましくは輸液のような経口および非経口処方物、および点眼処方物のような局所処方物について当業者に知られているものである。これらの処方物は、それぞれの処方物について適当な賦形剤を含んでなる。例えば、錠剤またはカプセル形態の経口処方物の場合には結合剤、崩壊剤、滑沢剤、充填剤、腸溶性コーティングなどが必要に応じて包含される。経口処方物は好都合には本発明のペグ化(pegylated)ナノ粒子の混合、乾式造粒または湿式造粒、および組込みによって調製される。
【0056】
本発明の一態様では、ペグ化(pegylated)ナノ粒子は生体の粘膜に接近する経路(経口投与、直腸投与、経鼻投与、経膣投与、および点眼投与など)によって投与される。
【0057】
ペグ化(pegylated)ナノ粒子を非経口投与する場合には、それらは会合した生物活性分子および/または通常のナノ粒子の分布を変更するのに用いられる。非経口処方物の場合には、ナノ粒子の滅菌懸濁液または凍結乾燥物、および生理食塩溶液のような再構成担体が用いられる。低温保存剤、pH調節剤、および界面活性剤のような賦形剤を必要に応じて配合することができる。
【0058】
前記のペグ化(pegylated)ナノ粒子およびそれらの処方物は、生物活性分子の投与の基材として用いることができる。活性分子は予防または治療目的で、対象、好ましくはヒト、に投与される任意の化合物であると理解される。勿論のことであるがこの用語はタンパク質、ペプチド、または核酸などのような高分子化合物も包含する。ペグ化(pegylated)ナノ粒子は、会合した生物活性分子の分布を変更するのに用いられる。
【0059】
一変化態様では、活性分子はDNA、RNA、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドによって形成される群に由来する。もう一つの変化態様では活性分子はタンパク質またはペプチドに由来する。
【0060】
抗腫瘍薬または腫瘍の抗原性薬によって形成される群、中枢神経系の保護薬または糖質コルチコイドによって形成される群などに由来する活性分子を配合することができる。あるいは、活性分子はワクチン接種の抗原、または免疫療法のアレルゲンである。
【0061】
本発明の一変化態様では、ペグ化(pegylated)ナノ粒子はワクチンアジュバントとして用いることもできる。
【0062】
本発明のナノ粒子への薬物の配合はWO 02/069938号に記載されているように、ナノ粒子の形成前にポリマー溶液に配合することによって、または既に形成されたナノ粒子の水性懸濁液に後でそれを加えることによって行うことができる。例えば、薬物の性状によっては下記の方法を用いることができる:
a) 疎水性薬物: 有機相(アセトン)へ添加、および攪拌(機械、磁気、または超音波攪拌)を行いながら可変時間(一時間まで)、PVMMAおよびPEGと合同培養/溶媒和。
b) 親水性薬物: 有機相(アセトン)へ添加、および希薄アセトン懸濁液を得るまで攪拌(機械、磁気、または超音波攪拌)を行いながら可変時間(一時間まで)、PVMMAおよびPEGと合同培養。この方法はタンパク質モデル(卵白アルブミン、44kDaのタンパク質)を封入するのに良好に用いられてきた。配合は効率的であり、タンパク質モデルを高率で封入することができた。
c) 親水性薬物: 水相へ添加して、予備成形したナノ粒子と培養(これは実施例で用いる二種類の蛍光マーカー(FITCおよびRBITC)を封入するのに用いられる場合である)。
【0063】
本発明を、以下において、本発明のいくつかの非限定的および例示的例によって説明する。
【実施例】
【0064】
いくつかの手法を用いて新規なナノ粒子の物理化学的特性を決定した。ナノ粒子の大きさおよびζ電位はゼータマスター(Zetamaster)装置(モルヴァン(Malvern)、 英国)で測定する。ナノ粒子の形状はリンタングステン酸で試料を作成した後に透過型電子顕微鏡法(Zeiss、ドイツ)によって観察することができる。
【0065】
実施例1:
ポリエチレングリコール2000 (PEG-NP)を用いるペグ化(pegylated)ナノ粒子の調製
二つの方法を試験した:
有機相での二種類のポリマーの混合。
予備成形したナノ粒子のPEGによるコーティング。
【0066】
ペグ化(pegylated)ナノ粒子の製造方法の収率はこの工程の終了時およびペグ化(pegylated)ナノ粒子の凍結乾燥後に重量を測定することによって得られる。製造収率はPVM/MA-コポリマーおよびポリエチレングリコールの初期質量に関して計算した百分率で表される。ナノ粒子に会合したポリエチレングリコールの量は比色法(Labsystems iEMS Reader MF)によって測定され、用いた初期量とナノ粒子の調製中に得られた上清中に見出される量との差として計算される。
【0067】
1.1. 有機相でのポリエチレングリコールのビニルメチルエーテルおよび無水マレイン酸コポリマーへの会合
この方法は有機相でのPVM/MAおよびPEG 2000の同時培養によって行われる。
【0068】
その目的のためPVM/MA 100mgを有機溶媒(アセトン)5mlに溶解させる。次いで、PEG 2000をこの溶液(10-50mg)に加える。混合物を磁気攪拌しながら一時間反応させる。次いでエタノール10mlおよび蒸留水10mlをこの相に加える。生成する混合物を5分間均質化させる。有機溶媒を減圧下での留去し(Buchi R-144、スイス)、形成されたナノ粒子の懸濁液を濃縮する。この懸濁液を遠心分離(17000rpmで20分間、二回)(Sigma 3K30、ドイツ)によって精製する。上清を集めて分析評価し、一方残渣をスクロース水溶液(5%(w/v))に再懸濁させる。ナノ粒子懸濁液を最後にGenesis 12EL装置(Virtis、米国)で凍結させ、凍結乾燥させる。
【0069】
得られるナノ粒子は通常のナノ粒子と同様に球状である(図1b)。これらのペグ化(pegylated)ナノ粒子の特性を表1に示す。PEG 2000のナノ粒子への会合により個体群の多分散が増加する。ポリエチレングリコールの量が増加すると(1:2の比)、大きさおよび特に多分散が非常に高くなることが観察された。ナノ粒子の表面電位を観察するとペグ化(pegylated)ナノ粒子は一層低い負の値を示している。これらの結果はポリエチレングリコール鎖がナノ粒子の表面に存在することを示唆している。PEG 2000:PVM/MA比が1:4(w/w)未満ではナノ粒子に会合したPEGの量は一定の約50μg/mgに保持されることを最後に示さなければならない。
【0070】
【表1】

【0071】
1.2. 予備成形したナノ粒子へのポリエチレングリコールの会合
PVM/MA 100mgを有機溶媒(アセトン)5mlに溶解させる。次に、エタノール10mlおよび蒸留水10mlをこの溶液に攪拌しながら加える。生成する混合物を5分間均質化させる。次に、ナノ粒子懸濁液をいずれの溶媒も除去されるまで減圧留去する。水性ナノ懸濁液の容積を水で5mlに調節し、PEG 2000 10-25mgを含む水溶液5mlを加える。ポリエチレングリコール中でのナノ粒子の培養はマグネティックスターラーを用いて一時間行う。懸濁液を遠心分離(17000rpmで20分間、二回)(Sigma 3K30、ドイツ)によって精製する。上清を除いて、残渣をスクロース水溶液(5%(w/v))に再懸濁する。ナノ粒子懸濁液を最後にGenesis 12EL装置(Virtis、米国)で凍結させ、凍結乾燥させる。
【0072】
ナノ粒子に会合したポリエチレングリコールの量は前記で示した比色法によって測定される。結果はこの方法によればナノ粒子に会合したPEGの量は実施例1.1に記載の方法(有機相での培養)における量よりかなり低いことを示している(図2)。この結果の理由は水に対するポリエチレングリコールの親和性が高く、したがって予備成形した粒子におけるコポリマーの加水分解により生じるカルボキシル基との効果的会合が得られないからである。有機相でのコポリマーとポリエチレングリコールの同時培養によりペグ化(pegylated)ナノ粒子を得る方法は予備成形したナノ粒子のPEGでの単なるコーティングより効率的であると結論づけれる。
【0073】
1.3. ペグ化(pegylated)ナノ粒子の物理化学的特性に対するPEGの分子量の影響
工程を実施例1.1に記載のPVM/MAと所望なポリエチレングリコール(PEG 400、PEG 1000、またはPEG 2000)の同時培養によって行う。
【0074】
その目的のため、PVM/MA 100mgを有機溶媒(アセトン)5mlに溶解させる。次に、PEG(400、1000、または2000)25mgを加える。混合物は磁気攪拌を行いながら一時間反応させる。次いで、エタノール10mlおよび蒸留水10mlをこの相に加える。生成する混合物を5分間均質化させる。有機溶媒を減圧留去し(Buchi R-144、スイス)、ナノ粒子懸濁液を濃縮する。懸濁液を遠心分離(17000rpmで20分間、二回)(Sigma 3K30,ドイツ)によって精製する。上清を除去し、残渣をスクロース水溶液(5%(w/v))に再懸濁させる。ナノ粒子懸濁液を最後にGenesis 12EL装置(Virtis、米国)で凍結させ、凍結乾燥させる。
【0075】
PEG(400、1000、または2000)およびmPEG 2000(実施例2)の量を、比色法によって測定する。その目的のため、ヨウ素溶液(ヨウ素10mg/ml、ヨウ化カリウム20mg/ml)15μlをナノ粒子精製段階中に得られた上清1mlに加える。PEG (またはmPEG)とヨウ素の間に得られた複合体の吸光度をλ540nmで比色法によって観察する(Sims & Snape, Anal. Biochem., 107 (1980) 60-63)。
【0076】
表2は得られたナノ粒子の物理化学的特性に対するPEGの分子量の影響を示している。これらの結果により、低分子量ポリエチレングリコールはこれらのナノ粒子のペグ化(pegylation)には適さないと結論づけれる。液体であるPEG400の場合には会合は得ることができず、PEG 1000の場合には会合は極めて低い。これらの結果は粒子の表面電荷の研究から確かめることもできる。PEG 400またはPEG 1000で修飾したナノ粒子のζ電位はPEG 2000でペグ化(pegylated)した粒子のζ電位より常に負の値が大きく、コーティングしていない粒子のそれと同様である。PEG 2000によるペグ化(pegylation)は遙かに効率的であると結論づけれる。
【0077】
【表2】

【0078】
実施例2:
ポリエチレングリコールメチルエーテル2000(mPEG-NP)を用いるペグ化(pegylated)ナノ粒子の調製
この方法は有機相でのPVM/MAとmPEGの同時培養によって行われる。
【0079】
その目的のため、コポリマーPVM/MA 100mgを有機溶媒(アセトン)5mlに溶解させる。次いで、ある量のmPEG 2000をこの溶液に加える(10-50mg)。混合物を磁気攪拌しながら一時間反応させる。次いで、エタノール10mlおよび蒸留水10mlをこの相に加える。生成する混合物を5分間均質化させる。有機溶媒を減圧留去し(Buchi R-144、スイス)、ナノ粒子懸濁液を濃縮する。この懸濁液を遠心分離によって精製する(17000rpmで20分間、二回)(Sigma 3K30、ドイツ)。上清を除いて、残渣をスクロース水溶液(5%(w/v))に再懸濁する。ナノ粒子懸濁液を最後にGenesis 12EL装置(Virtis、米国)で凍結させ、凍結乾燥を行う。
【0080】
図1(c)はmPEG 2000をコーティングしたナノ粒子は球状であり、かつ表面は滑らかであることを示している。表3はmPEG 2000のナノ粒子に対する会合の程度、およびナノ粒子の大きさ、多分散、および表面電荷に対する影響を示している。これらの結果はmPEG 2000の初期量が増加すると、ナノ粒子に会合した割合が若干増加することを示している。
【0081】
mPEGの存在が特に高濃度(mPEG/PVM-MA比が0.25を上回る)でナノ粒子個体群の多分散を増加する。一方、ナノ粒子の負電荷は用いられるmPEGの量が増加すると減少する。しかしながら、多量のmPEGを用いるときに観察されるかなりの偏差はmPEG 2000鎖の表面分布が均質でないことを示唆している。
【0082】
【表3】

【0083】
実施例3:
O,O'-ビス-(2-アミノエチル)ポリエチレングリコール2000を用いるペグ化(pegylated)ナノ粒子の調製(DAE-PEG-NP)
この方法は有機相でのPVM/MAおよびDAE-PEG 2000の同時培養により行われる。
【0084】
その目的のため、所定量のDAE-PEG(5mg、10mg、25mg、または35mg)を有機溶媒(アセトン)5mlに溶解させる。次いで、PVM/MA 100mgを磁気攪拌を行いながらこの溶液に加える。生成する混合物を磁気攪拌しながら一時間反応させる。エタノール10mlおよび蒸留水10mlを攪拌しながらこの有機相に加える。生成する混合物を5分間均質化する。有機溶媒を減圧留去し(Buchi R-144、スイス)、ナノ粒子懸濁液を濃縮する。懸濁液を遠心分離によって精製する(17000rpmで20分間、二回)(Sigma 3K30、ドイツ)。上清を除き、残渣をスクロース水溶液(5%(w/v))に再懸濁する。最後に、ナノ粒子懸濁液をGenesis 12EL装置(Virtis、米国)で凍結させ、凍結乾燥させる。
【0085】
試薬Micro BCA(商標) Protein Assay Reagent Kit (Pierce, 米国)をナノ粒子精製段階で得られる上清に加えた後、DAE-PEGおよびDAP-PEG(実施例4)の量を測定する。この試薬はこれらのポリエチレングリコールのアミノ基と相互作用して、着色複合体を生じることができる。その目的のため試薬150μlを同容の上清に加える。37℃で二時間培養した後、吸光度をλ570nmで比色法によって測定する。
【0086】
図1(d)はDAE-PEG 2000でコーティングしたナノ粒子は球状であることを示している。表4はDAE-PEG 2000の会合の程度、およびナノ粒子の大きさ、多分散および表面電荷に対するその影響を示している。これらの結果はDAE-PEG 2000の量(5-35mg)を増加すると、ナノ粒子に結合した賦形剤の量が増加することを示している。用いるDAE-PEG 2000の量が25mgを上回ると、ナノ粒子は形成されない。
【0087】
大きさを分析する際、会合度が増加すると大きさが一層大きく、かつ多分散が一層大きいナノ粒子を生成することが観察される。したがって、DAE-PEGナノ粒子を25mgで生成する場合には生成する粒子の大きさは500nmを上回りかつ多分散は極めて高くなる。一方、コーティングしていないナノ粒子と比較してコーティングしたナノ粒子の負の表面電荷の減少が観察される。これらのデータはDAE-PEG 2000鎖がナノ粒子の表面に存在していることを示唆している。
【0088】
【表4】

【0089】
実施例4:
O,O'-ビス-(2-アミノプロピル)-プロピレングリコール-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール2000 (DAP-PEG-NP)を用いるペグ化(pegylated)ナノ粒子の調製
この方法は有機相でのPVM/MAおよびDAP-PEG 2000の同時培養によって行われる。
【0090】
その目的のため、所定量のDAP-PEG 2000(10-50mg)を有機溶媒(アセトン)5mlに溶解させる。次いで、ビニルメチルエーテルと無水マレイン酸のコポリマー100mgを攪拌しながらこの溶液に加える。生成する混合物を磁気攪拌しながら一時間反応させる。次いで、エタノール10mlおよび蒸留水10mlをこの相に攪拌しながら加える。生成する混合物を5分間均質化させる。有機溶媒を減圧留去し(Buchi R-144、スイス)、ナノ粒子懸濁液を濃縮する。懸濁液を遠心分離によって精製する(17000rpmで20分間、二回)(Sigma 3K30、ドイツ)。上清を除いて、残渣をスクロース水溶液(5%(w/v))に再懸濁する。ナノ粒子懸濁液を最後にGenesis 12EL装置(Virtis、米国)で凍結させ、凍結乾燥を行う。
【0091】
図1(e)はDAP-PEG 2000でコーティングしたナノ粒子は球状でありかつ表面が滑らかであることを示している。表5はこれらのナノ粒子の一般的特性を示している。これらの結果はDAP-PEG 2000の量が増加すると、ナノ粒子に結合したその量が増加することを示している。しかしながら、用いられるDAP-PEG 2000の量が35mgを上回ると、ナノ粒子は形成されない。
【0092】
会合度が増加するとナノ粒子の大きさが大きくなりかつ多分散も大きくなることが観察される。ζ電位の観察ではコーティングしたナノ粒子について得られる負の値は顕著に減少することを示している(値は0に近い)。これらの結果はDAP-PEG 2000鎖は好ましくはナノ粒子の表面にあることを示唆している。
【0093】
【表5】

【0094】
実施例5:
ペグ化(pegylated)ナノ粒子の工程収率および構造の検討
図3はナノ粒子に変換されるPVM/MAの割合および工程の総収率におけるポリエチレングリコールの種類の影響を示している。一般にナノ粒子に変換されるコポリマーの割合は約73%である。ナノ粒子をPEGまたはmPEGで修飾すると、粒子に変換されるPVM/MAの割合はあまり変更されないことが観察される。しかしながら、DAE-PEGまたはDAP-PEGを用いるナノ粒子のペグ化(pegylation)は工程収率を減少させる。
【0095】
ポリエチレングリコールのナノ粒子への会合は元素分析法によって確かめられる(Leco CHN-900、米国)。この手法によればそれらは他成分(例えば、PEG)に会合する場合には、酸素組成、水素組成、または窒素組成の変化を示すことがある。
【0096】
表6は様々な種類のペグ化(pegylated)ナノ粒子のC、H、O、およびNの元素組成を示している。通常のナノ粒子(NP)と比較して、いずれのペグ化(pegylated)ナノ粒子も水素(H)の割合が増加し、その酸素含量は相対的に減少することを示している。一方、DAE-PEG NPおよびDAP-PEG NPは非改質ナノ粒子では観察されない窒素の存在を示している。
【0097】
【表6】

【0098】
ペグ化(pegylated)ナノ粒子5mgを重水素化ジメチルスルホキシド0.5mlに溶解した後、ポリエチレングリコールの位置(ナノ粒子の内部または表面)を核磁気共鳴(1H-NMR)(Bruker 400 Ultrashield(商標)、ドイツ)によって分析した。PEGおよびmPEGを有するペグ化(pegylated)ナノ粒子のスペクトルを6400回掃引を行った後に得て、DAE-PEG-NPおよびDAP-PEG-NPのスペクトルは12800回の掃引の後に得た。スペクトルはポリエチレン単位の典型的な水素ピーク(3.51ppm, -OCH2CH2-)および水酸基の水素ピーク(PEGおよびmPEGの場合)、またはDAE-PEGおよびDAP-PEGのアミノ基の水素ピーク(4.58ppm)を示している(図4)。ペグ化(pegylated)ナノ粒子のスペクトルおよび遊離ポリエチレングリコールのスペクトルにおけるこれら二つのピークの面積の値の比を計算する。これらの比の値からペグ化(pegylated)ナノ粒子のポリエチレングリコール鎖の配置についての情報を得ることができる。
【0099】
水酸基の水素ピーク(4.58ppm)はPEG 2000を有するペグ化(pegylated)ナノ粒子のスペクトルに現れることが観察される(図5a)。表7は二つの前記ピーク(3.51ppmおよび4.58ppm)の面積、およびPEG-NPおよび遊離PEGについてのピークの比を示している。ナノ粒子についてのこれら二本のピークの比は遊離PEG 2000についてのものより約二倍大きいと計算される。これらのナノ粒子の場合にはこれらのデータは水酸基の比は2分の1であり、したがって、これらの(スペクトルには現れない)官能基のかなりの数がコポリマーの無水物基に結合していると結論づけられる。これらの観察結果によれば、PEG 2000鎖のわずかな部分がナノ粒子内部に包含され、PEG鎖のほとんどはナノ粒子の表面に配置されている。この事実により表1に示されるζ電位データで確かめられる。
【0100】
表7はm-PEG-NPおよび遊離mPEG 2000についての二つのピークの面積を表すデータを示す。ペグ化(pegylated)ナノ粒子およびmPEG 2000についての二つのピークの比は同様であることが観察される(177対217)。これらの結果は二つの場合(ナノ粒子および遊離PEG)におけるmPEG水酸基の比は同様であり、わずかな割合がコポリマーの無水物基と反応することを示している。これらの粒子の構造はPEG-NPの構造とは異なっていると結論づけられる。この場合には一層大きな割合のmPEG鎖が内部に包含され、そのごく僅かな部分のみがナノ粒子表面にある。したがって、mPEG鎖の表面分布は均質でなく、これらの粒子のζ電位の分析で観察された大きな偏差と一致する(表3)。
【0101】
【表7】

【0102】
表8はDAP-PEG-NPおよび遊離DAP-PEG 2000についてのピークの面積を表すデータを示している。DAP-PEG 2000スペクトルではその鎖の両端にある二つの異なるアミノ基の水素に対応する二つのシグナル、δ=4.55ppmの二重線とδ=4.45ppmにおけるもう一つのものがある(図6b)。DAP-PEG 2000を有するペグ化(pegylated)ナノ粒子のスペクトルでは、これらのアミノ基の水素がなく(図6a)、この種のポリエチレングリコールの全てのアミノ基はナノ粒子を形成するポリマーの無水物基と反応することを示している。さらに、DAP-PEG鎖は二つの末端アミノ基におけるナノ粒子の表面に結合し、表面コーティングは完全である。これはこれらの粒子のζ電位(約0)によって支持される(表5)。
【0103】
【表8】

【0104】
DAE-PEG 2000の場合には二つのピークの間で同じ比を計算することはできないが、4.58ppmのピークは(濃度および行った掃引回数から独立して)強度が極めて低くかつ解像度が低いからである(図7b)。いずれにせよ、このピークはナノ粒子のスペクトルならびにDAE-PEG 2000のスペクトルに現れることを観察することができる。したがって、DAE-PEG鎖の一部が粒子の内部に包含されていると結論づけれる。しかしながら、それらのほとんどはこのポリエチレングリコールの鎖の末端のみに結合した表面にある。
【0105】
これらのデータに関して、ペグ化(pegylated)ナノ粒子は異なる構造を有すると結論づけれる。異なる処方物について提案された構造を図8に示す。PEG 2000、DAE-PEG、およびDAP-PEGのようなある種のポリエチレングリコールは展開したナノ粒子の表面を改質する。PEG-NPおよびDAE-PEG-NPの場合にはコーティングによって「刷毛(brush)」型構造を生じるが(図8aおよび図8c)、DAP-PEGの場合には鎖が両端で結合して「ループ」型形態を生じる(図8d)。ナノ粒子表面の改質が観察されない唯一の場合は、mPEG 2000を用いる場合である。mPEGはほとんどがナノ粒子の内部に見出される(図8b)。
【0106】
実施例6:
ラットの消化管におけるペグ化(pegylated)ナノ粒子の生体接着特性の検討
この研究は動物実験に関する欧州法(86/609/EU)に従いナバラ大学の倫理委員会の規則に従って行った。
【0107】
この分析に用いるペグ化(pegylated)ナノ粒子をローダミンBイソチオシアネートで蛍光標識する。その目的のため、ナノ粒子はPVM/MAおよび異なる種類のポリエチレングリコール(実施例1.1、2、3、および4の方法に従う)の同時培養によって形成される。次いで、エタノール10mlおよび蒸留水10mlをこの相に攪拌しながら加える。生成する混合物を5分間均質化する。有機溶媒を減圧留去し(Buchi R-144、スイス)、ナノ粒子懸濁液を濃縮する。水性ナノ懸濁液の容積を水で9mlに調整し、1mLのローダミンBイソチオシアネート水溶液(1.25mg/ml)を加える。蛍光マーカーのあるナノ粒子を攪拌しながら5分間培養する。次に、蛍光改質したナノ粒子懸濁液を遠心分離によって精製する(17000rpmで20分間、二回)(Sigma 3K30,ドイツ)。上清を除いて、残渣をスクロース水溶液(5%(w/v))に再懸濁する。最後に、ナノ粒子懸濁液をGenesis 12EL装置(Virtis、米国)で凍結させ、凍結乾燥させる。
【0108】
表9はこの分析に用いられるローダミンBイソチオシアネートで蛍光標識した処方物の特性を示している。
【0109】
【表9】

【0110】
得られたナノ粒子(10mg)を水1mlに分散させた後、雄ラット(Wistar系、体重220.0g)に経口投与する。経口投与の後、動物を様々な時期(0.5、1、3、および8時間後)に頸部脱臼によって屠殺する。腹腔を開き消化管を抽出する。その部分を下記の解剖学的部分である胃、小腸、および盲腸に分割する。それぞれの切片を腸間膜に沿って縦に開き、食塩リン酸緩衝液(pH=7.4、0.15M)で洗浄して、非接着ナノ粒子画分を除去する。さらに、それぞれの切片を2cmの長さの部分に切断し、3M水酸化ナトリウム1mlで24時間消化する(Arbos et al., Int. J. Pharm., 242 (2002) 129-136)。次いで、ローダミンをメタノール2mlで除去し、試料を4000rpmで10分間遠心分離する。上清(1ml)を水3mlで希釈し、ローダミンの量をλex=540nmおよびλem=580nmにおいて蛍光分光光度法(GENios, オーストリア)によって測定する。粘膜に接着したナノ粒子の画分はこの方法によって推計することができる。
【0111】
消化管の様々な部分におけるペグ化(pegylated)ナノ粒子の特異的分布を図9に示す。全ての処方物は胃粘膜への顕著な初期接着を示した。投与の30分後にこの臓器へ接着した用量の割合はPEG-NPについての13%とDAP-PEG-NPについての9%の範囲であった。全てのペグ化(pegylated)ナノ粒子処方物はまた小腸のI3部分に対していくらかの親和性を示したが、PEG-NPおよびDAE-PEG-NPは小腸に接着した量を用量の約20%に保持するための投与から三時間後の最も効率的な処方物であることが示された。最後に、投与から八時間後の接着ナノ粒子のピークは小腸の最後の部分(PEG-NPについて)または盲腸(mPEG-NPおよびDAP-PEG-NP)に見出された。粘膜に接着したナノ粒子の相対的に有意な画分(約10%)はPEG-NPおよびDAP-PEG-NPの場合にも定量することができた。PEG 2000およびmPEG 2000でコーティングしたナノ粒子は極めて均質な分布を示し、消化管の全ての部分に八時間分布すると断言することができる(図9aおよび9b)。DAE-PEGを有するペグ化(pegylated)ナノ粒子は好ましくは小腸の中間部分に接着し(図9c)、DAP-PEG 2000で改質したナノ粒子は主として腸管の末端領域に蓄積する(図9d)。これらの結果は本明細書で展開したナノ粒子は特異的薬物放出を提供することができることを意味する。
【0112】
生体接着パラメーター(Arbos et al., Int. J. Pharm., 242 (2002) 129-136): それぞれの処方物の接着曲線をラットの消化管粘膜におけるペグ化(pegylated)ナノ粒子の接着画分を経時的に表すことによって得た。下記の生体接着パラメーター、すなわちAUCadh、kadh、およびMRTadhはこの曲線から計算される。kadhは接着画分の除去速度を表し、WinNonlinバージョン1.5プログラム(Scientific Consulting, Inc.)によって計算した。AUCadhまたは経時的な接着画分を表す曲線の下の面積(時間に対して接着したマーカーの量の形態で表示)は、tZ(最終試料採取点)に対する台形法によって評価し、生体接着現象の強度を定量化することができる。最後に、MRTadhはナノ粒子の接着画分の平均滞留時間であり、これにより限界として最終試料採取点を用いて接着相互作用の相対的時間を評価することができる。
【0113】
図10は八時間の完全な消化管におけるペグ化(pegylated)ナノ粒子の生体接着プロファイルを示す。全てのペグ化(pegylated)ナノ粒子は非改質粒子(NP)のプロファイルとは異なる生体接着プロファイルを示す。NPの最大生体接着はその経口投与の30分後に起こり、その後速やかに減少する。対照的に、ペグ化(pegylated)ナノ粒子は一般に生体接着相互作用を展開する初期能力が小さい。しかしながら、接着能力は少なくとも三時間保持される。したがって、組成物の投与の三時間後には消化管粘膜に接着したナノ粒子の量はPEG-NPについては投与量の25%およびDAP-PEG-NPについては16%の範囲であり、いずれの場合にも実験対照(NP)を上回る。一方、PEG-NPについて得たプロファイルは特に興味深いものである。これらのナノ粒子は投与の一時間後に最大接着を示し(投与量の約32%)、投与の三時間後には粘膜に接着した粒子の水準は初期水準と同じである。残りのペグ化(pegylated)ナノ粒子の場合にはそれらの初期接着は少なくとも三時間保持される。
【0114】
生体接着パラメーターはナノ粒子の接着特性に関してさらに詳細なデータを提供することができる(表10)。前記のように粘膜と相互作用するペグ化(pegylated)ナノ粒子の初期能力(Qmax)は、非コーティング粒子(NP)についてのものより低い。しかしながら、ペグ化(pegylated)ナノ粒子の曲線の下の生体接着面積(AUCadh)の方が高く、これは接着強度がより大きいことを意味している。この現象は特にPEG-NPの場合に観察され、AUCadhはNPについての1.6倍である。さらに、全てのペグ化(pegylated)ナノ粒子処方物は非コーティング粒子と比較して、接着画分の除去の程度が低く(kadh)かつ滞留時間(MRTadh)が長くなる。したがって、DAP-PEG-NPは通常の粒子より接着画分の除去が遅く、これらのナノ粒子の生体接着電位が長く継続することを示唆している。全てのペグ化(pegylated)ナノ粒子は消化管における滞留時間(MRTadh)が長いことが観察される。接着画分の平均滞留時間(MRTadh)に関して、全てのペグ化(pegylated)ナノ粒子がNPよりかなり大きな平均滞留時間を示すことは特に興味深いことである。したがって、これらのナノ粒子は通常の粒子より17-48分間の長い滞留時間を示す。
【0115】
【表10】

【0116】
実施例7:
消化管粘膜におけるペグ化(pegylated)ナノ粒子の観察
消化管粘膜におけるペグ化(pegylated)ナノ粒子を蛍光顕微鏡法および光学顕微鏡法によって観察する。その目的のため、ペグ化(pegylated)ナノ粒子をローダミンBイソチオシアネート(RBITC)およびフルオレセインイソチオシアネート(FITC)のような蛍光分子で標識した。ラットで経口投与の後、腸の様々な部分を集めて、前記のように食塩リン酸緩衝液(pH=7.4、0.15M)で洗浄する。
【0117】
第一の場合には(RBITCで標識したナノ粒子を含む)腸の切片をTissue-Tek(登録商標)O.C.T.媒質(Sakura、オランダ)で固定し、ドライアイスと2-メチルブタンによって冷凍する。次に、切片を低温(-22℃)のクライオスタット(Leica、ドイツ)中で5μmの切片に切断する。得られた切片をポリ-L-リシン(Sigma、スペイン)でコーティングしたスライドに載せ、蛍光顕微鏡(O1ympus CH-40、日本)下で観察する。
【0118】
一方、腸切片(FITCで標識したナノ粒子を含む)をホルマリン溶液(4%)で24時間固定する。固定後、組織をパラフィンに包埋し、その後3μmの切片に切断する。これらの切片をVectabond(Vector Labs、米国)でコーティングしたスライドに載せる。次いで、得られた切片をパラフィン除去し、再水和し、内因性ペルオキシダーゼを過酸化水素溶液(3%)を加えることによって10分間固定する。次に、支持体を蒸留水で洗浄し(5分間)、クエン酸緩衝液(pH=6.0、0.01M)に入れ、マイクロ波で加熱し(最大出力で15分間、および最低出力で15分間)、水および最後にTris食塩緩衝液(TBS)(pH=7.36、NaCl 0.5M、0.05M, )で洗浄する。非特異的標識を防止するため、切片を通常のヤギ血清(1:20、DAKO、米国)と共に室温にて30分間、次いで特異的抗血清(1:100 モノクローナル抗FITC、M0878、DAKO、米国)と共に4℃で24時間培養する。Tris食塩緩衝液(TBS)で洗浄した後、試料をペルオキシダーゼで標識したデキストランにカップリングしたヤギ抗マウスIg二次抗体と共に培養する。試料をTBSで洗浄し、ペルオキシダーゼ活性をジアミノベンジジン溶液を用いて展開する。切片をヘマトキシリンで弱く引き立たせ、脱水し、DPXに載せる。試料を最後に光学顕微鏡(Nicon Eclipse E 800M、日本)下で観察する。
【0119】
図11は小腸上皮細胞におけるPEG-NPの存在を示している。この粒子は一般に細胞の先端区画にあるが(図11a)、小腸上皮細胞の間を透過したある画分を観察することができる(図11b)。
【0120】
腸細胞におけるナノ粒子の強力な透過は光学顕微鏡法によって観察することができる(図12)。蛍光顕微鏡法と同様に細胞の先端区画での分布を観察する。一方、図12bも基底外側区画における分布も示す。細胞核のいくつかはマーカーまたは標識したナノ粒子を含み、これらのナノ粒子の使用は様々な生物活性分子の核への送達を促進する上で興味深いものであると想定することができる。
【0121】
最後に、図13はパイアー斑細胞におけるこれらの系の分布を示している。これらのナノ粒子がパイアー斑の「ドーム」として知られる部分で濃縮させると思われることを観察することは特に興味深いことである。このドームは単球-マクロファージ系の細胞が蓄積する部分であることを特徴としている。これにより、経口ワクチンの開発および免疫療法におけるこれらのペグ化(pegylated)ナノ粒子の重要性を断言することができる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】図1は様々な種類のナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す: (a) NP、(b) PEG NP、(c) mPEG NP、(d) DAE-PEG NP、(e) DAP-PEG NP。尺度は150nmである。
【図2】図2は用いた方法に従いPEG 2000 (mg/mg)の会合を示す: PEGおよびPVM/MAの有機相(OP)中での同時培養、またはナノ粒子のPEGの水溶液(AP)との培養。
【図3】図3はナノ粒子に転換されたPVM/MAの割合(PVM/MA-e)および工程収率に対するポリエチレングリコールの種類の効果を示す。
【図4】図4はPEG 2000を有するペグ化(pegylated)ナノ粒子(上段)、および遊離PEG 2000(下段)の核磁気共鳴スペクトルを示す。4.58ppmのピーク(水酸基の水素イオン)の増幅像を枠内に示す。
【図5】図5はDMSO(5mg/0.5ml)に溶解した(a) PEG 2000を有するペグ化(pegylated)ナノ粒子、および(b) 遊離PEG 2000の核磁気共鳴スペクトルの詳細図を示す。
【図6】図6はDMSO(5mg/0.5ml)に溶解した(a) DAP-PEG 2000を有するペグ化(pegylated)ナノ粒子、および(b) 遊離DAP-PEG 2000の核磁気共鳴スペクトルの詳細図を示す。
【図7】図7はDMSO(5mg/0.5ml)に溶解した(a) DAE-PEG 2000を有するペグ化(pegylated)ナノ粒子、および(b) 遊離DAE-PEG 2000の核磁気共鳴スペクトルの詳細図を示す。
【図8】図8は核磁気共鳴およびζ電位値から様々なペグ化(pegylated)ナノ粒子について提案された構造を示す: a) PEG-NP、b) mPEG-NP、c) DAE-PEG-NP、d) DAP-PEG-NP。
【図9】図9はペグ化(pegylated)ナノ粒子をラットに経口投与した後の消化管におけるそれらの分布を示す: (a) PEG-NP、(b) mPEG-NP、(c) DAE-PEG-NP、および(d) DAP-PEG-NP。x軸は接着したナノ粒子(NP)の量(mg)を表し、y軸は消化管の様々な部分を示し(St: 胃、I1, I2, I3, I4: 腸の部分、Ce: 盲腸)、z軸は投与後の時間(時)を表す。
【図10】図10は10mgの一回用量を経口投与した後の全消化管における様々なペグ化(pegylated)ナノ粒子の生体接着曲線(NP、mg)を示す。t: 時間(時)。
【図11】図11はPEG 2000を有するペグ化(pegylated)ナノ粒子(PEG-NP)10mgの経口投与の二時間後における回腸の一部の蛍光顕微鏡像を示す。a) 回腸絨毛: 矢印は上皮の先端区画を示す、b) 上皮細胞: 矢印は腸細胞間の蛍光を示す。尺度は20μmである。
【図12】図12はPEG 2000を有するペグ化(pegylated)ナノ粒子(PEG-NP)10mgの経口投与の二時間後における回腸切片の光学顕微鏡像を示す。a) 全体像(倍率は135培)、およびb) 拡大詳細像(倍率は530培)。L: 管腔、 E: 腸細胞、 GC: 粘液生成細胞、 黒矢印: 腸細胞核、 白矢印: 粘膜下組織における毛細血管。
【図13】図13はナノ粒子10mgの経口投与の二時間後における、回腸のパイアー斑におけるPEG-NPの位置を示す。a) パイアー斑の全体像(倍率は135培)、 b) 拡大詳細像(倍率は530培)、 PP: パイアー斑、 FAE: 小胞関連上皮、 黒矢印: ナノ粒子が包含されるパイアー斑ドーム細胞。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物分解性ポリマーと、ポリエチレングリコールまたはその誘導体とを含んでなる、生物活性分子を運搬するためのペグ化(pegylated)ナノ粒子。
【請求項2】
前記生物分解性ポリマーが、ビニルメチルエーテル・無水マレイン酸(PVM/MA)コポリマーである、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記コポリマーの分子量が100-2400KDa、さらに好ましくは200-2000KDa、特に好ましくは180-250KDaである、請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記ポリエチレングリコールまたはその誘導体の分子量が400-35,000Daである、先行する請求項のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記ポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、これら二種類の単位を含むブロックまたはランダムコポリマー、それらの混合物、またはそれらの誘導体からなる群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項6】
前記ポリエチレングリコールが、好ましくはアルコキシ、アクリレート、メタクリレート、アルキル、アミノ、リン酸塩、イソチオシアネート、スルフヒドリル、メルカプト、または硫酸基で修飾された少なくとも一個の末端水酸基を有する、先行する請求項のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項7】
前記ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコールメチルエーテル2000、O,O'-ビス-(2-アミノエチル)ポリエチレングリコール2000、O,O'-ビス(2-アミノプロピル)プロピレングリコール-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール2000、またはそれらの混合物からなる群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項8】
ポリエチレングリコールと前記生物分解性ポリマーの重量比が1:2-6、好ましくは1:2-4、さらに好ましくは約1:4である、先行する請求項のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項9】
活性分子としてタンパク質またはペプチドを含んでなる、先行する請求項のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項10】
DNA、RNA、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドからなる群から選択される化合物を活性分子として含んでなる、先行する請求項のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項11】
抗腫瘍薬または腫瘍に対する抗原を活性分子として含んでなる、先行する請求項のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項12】
中枢神経系の保護薬、または糖質コルチコイドを活性分子として含んでなる、先行する請求項のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項13】
ワクチン接種に対する抗原、または免疫療法に対するアレルゲンを活性分子として含んでなる、先行する請求項のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項14】
請求項1−13のいずれか一項に記載のペグ化(pegylated)ナノ粒子を、賦形剤、担体、またはアジュバントと共に含んでなる、医薬組成物。
【請求項15】
生物体の粘膜へ接近できる経路によって投与される、好ましくは経口投与、直腸投与、経鼻投与、経膣投与、または点眼投与するための、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
経口投与用の、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
点眼投与用の、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
薬剤の製造のための、請求項1−13のいずれか一項に記載のナノ粒子の使用。
【請求項19】
請求項1−13のいずれか一項に記載のペグ化(pegylated)ナノ粒子を含んでなる、凍結乾燥生成物。
【請求項20】
前記ポリマーと前記ポリエチレングリコールとを有機溶媒中で同時にインキュベートした後、前記ポリマーを水性アルコール溶液で脱溶媒和する工程を含んでなる、請求項1−13のいずれか一項に記載のペグ化(pegylated)ナノ粒子の製造方法。
【請求項21】
前記生物分解性ポリマーの濃度が0.001-10%(w/v)であり、前記ポリアルキレングリコールの濃度が0.001-5%(w/v)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記有機相/水性アルコール溶液比が1/1-1/10の範囲である、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記有機溶媒の除去および/または精製の工程をさらに含んでなる、請求項20−22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記活性分子を、前記ポリマーと前記ポリエチレングリコールとを有機溶媒中で同時にインキュベートする工程において加える、請求項20−23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記活性分子を既に形成したナノ粒子の水性懸濁液に加える、請求項20−23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
場合によって凍結防止剤の存在下での、好ましくはスクロースまたはマンニトールの存在下での、凍結乾燥工程をさらに含んでなる、請求項20−25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記生物分解性ポリマーが、前記ビニルメチルエーテル・無水マレイン酸(PVM/MA)コポリマーであり、好ましくは分子量が100-2400kDaである、請求項20−26のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−534729(P2007−534729A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510054(P2007−510054)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【国際出願番号】PCT/ES2005/000226
【国際公開番号】WO2005/104648
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(500522965)インスティトゥト シエンティフィコ イ テクノロジコ デ ナバッラ,ソシエダ アノニマ (4)
【Fターム(参考)】