説明

ペプチドの製造方法

【課題】アミノ酸リガーゼの基質特異性の制約を克服することのできる、N末端に酸性アミノ酸を含むペプチドの新規な製造方法の提供。
【解決手段】(A)特定のアミノ酸配列からなるNTA1タンパク質等のN末端アミダーゼ活性を有するタンパク質と、N末端にアミド基含有アミノ酸を含むペプチドとを用意するステップと、(B)前記N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質と、前記N末端にアミド基含有アミノ酸を含むペプチドとを含む反応液中で、前記N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質を前記N末端にアミド基含有アミノ酸を含むペプチドに対して作用させるステップとを含む、N末端に酸性アミノ酸を含むペプチドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドの製造方法に関し、より具体的には、N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質を利用する、N末端に酸性アミノ酸を含むペプチドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性アミノ酸は、中性付近のpHにおいて複数のカルボキシル基が解離することにより負に帯電する。この特性を利用して、ペプチドのN末端に酸性アミノ酸を付与することによりペプチドの細胞内への取込、生体内への移行等を制御する試みが行われる。また、中性付近のpHにおいて正に帯電する塩基性アミノ酸と酸性アミノ酸との間に静電引力が生ずることを利用して、N末端に酸性アミノ酸を含み、かつ、C末端に塩基性アミノ酸を含むペプチドが、ナノファイバーの原料として提案されている。N末端に酸性アミノ酸を含むペプチドはこのような特性を有するために有用であり、その効率的な製造方法を開発する必要性がある。
【0003】
ペプチドの大量合成方法としては、固相法又は液相法のような化学的合成法と、酵素合成法と、発酵法とが知られている。このうちアミノ酸残基数が2個〜数個の短鎖ペプチドについては化学的又は酵素的合成法が主に用いられている。
【0004】
化学的合成法は、官能基の保護及び脱保護等の操作が必要であり、またラセミ体の副生を防止するには光学活性中間体を使用する必要があるため、経済的、効率的な方法とはいえない。特に酸性アミノ酸の場合には、2つのカルボキシル基のうち側鎖に結合したカルボキシル基を保護し、α位の炭素に隣接したカルボキシル基は活性化試薬と結合させる必要があり、短鎖ペプチドの大量合成を行ううえで問題となる。
【0005】
ペプチドの酵素的合成法としては、タンパク質分解酵素の逆反応を利用する方法(非特許文献1)、エステル転移酵素を利用する方法(非特許文献2)、耐熱性アミノアシルt−RNA合成酵素を利用する方法(特許文献1)、非リボゾームペプチドシンセターゼ(NRPS)を利用する方法(非特許文献3)、ジペプチド合成酵素を利用する方法(特許文献2)等が知られている。
【特許文献1】特開昭58−146539号公報
【特許文献2】WO2007/074858号公報
【非特許文献1】J.Biol.Chem.,119,707−720(1937)
【非特許文献2】J.Biotechnol.,115,211−220(2005)
【非特許文献3】Chem.Biol.,7,373−384(2000)
【0006】
これらのペプチドの酵素的合成法のうち、タンパク質分解酵素の逆反応を利用する方法には、基質となるアミノ酸の官能基の保護及び脱保護を要し、ペプチド形成反応の効率化が困難であるという問題点がある。エステル転移酵素を利用する方法にも、一方の基質となるアミノ酸を誘導体化(エステル化)する必要があり、反応の工程数が増大するという問題点がある。耐熱性アミノアシルt−RNA合成酵素を利用する方法には、目的産物以外の副生成物生成の阻止が困難であるという問題点がある。NRPSを利用する方法は、補酵素4’−ホスフォパンテテインの供給が必要であるなど効率的ではない。これらは上述した化学的合成法と共通する問題点である。
【0007】
これに対し、アミノ酸リガーゼは、保護基を持たないアミノ酸のα位のカルボキシル基でのペプチド結合をATP分解と共役して触媒することができる。そこで、アミノ酸リガーゼを利用するペプチド合成法には、前記化学的合成法及び酵素的合成法の問題点がないため、効率的なペプチドの大量合成法として有望である。
【0008】
しかし、アミノ酸リガーゼを利用するペプチド合成法には酵素の基質特異性のために合成可能なアミノ酸の種類に制約がある。これまでに知られたアミノ酸リガーゼは、L−グルタミン酸及びL−アスパラギン酸のカルボキシル末端にL−メチオニン以外の天然L−アミノ酸との間でペプチド結合を形成させることができない。したがって、酸性L−アミノ酸をN末端に含む任意のペプチドを前記アミノ酸リガーゼによって直接合成することは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、化学的合成法及び酵素的合成法の問題点を解消するために、酸性L−アミノ酸のカルボキシル末端にペプチド結合を行わせる反応を含まない、N末端に酸性アミノ酸を含むペプチドの新規な製造方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はN末端に酸性アミノ酸残基を含むペプチドの製造方法を提供する。本発明のペプチドの製造方法は、(A)N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質と、N末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチドとを用意するステップと、(B)前記N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質を前記N末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチドに対して作用させて前記アミド基含有アミノ酸残基を脱アミド化するステップとを含む。
【0011】
本発明のペプチドの製造方法において、前記N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質は、(A)(1)配列番号2のアミノ酸配列からなるNTA1タンパク質と、(2)配列番号2のアミノ酸配列に1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質と、(3)配列番号2のアミノ酸配列と99%、98%、95%、90%、85%又は80%以上の相同性を示すアミノ酸配列からなり、かつ、N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質と、(4)配列番号1のヌクレオチド配列と99%、98%、95%、90%、85%又は80%以上の相同性を示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質と、(5)配列番号1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションをするポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質と、(6)特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質に連結した融合タンパク質とからなるグループから選択される場合がある。
【0012】
本発明のペプチドの製造方法において、前記アミド基含有アミノ酸残基はL−アスパラギン残基又はL−グルタミン残基の場合がある。
【0013】
本発明のペプチドの製造方法において、前記N末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチドは、以下の化学式(I)で表される化合物の場合がある。
【化1】

上記化学式(I)において、AA0はAsn又はGlnを表し、AA1はいずれかのL−アミノ酸残基又はその誘導体を表し、R1、R2、・・・Rn(nは1又は2以上の自然数)はいずれかのL−アミノ酸残基又はその誘導体か、D−アミノ酸残基又はその誘導体かを表す。
【0014】
本発明のペプチドの製造方法において、前前記N末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチドはジペプチド又はトリペプチドか、これらの誘導体かの場合がある。
【0015】
本発明の製造方法において、前記N末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチドは、Asn−Ala、Asn−Asn、Asn−Gln、Asn−Gly、Asn−His、Asn−Met、Asn−Trp、Asn−Val、Gln−Ala、Gln−Cys、Gln−Gln、Gln−Gly、Gln−Leu、Gln−Met、Gln−Phe、Gln−Ser、Gln−Thr、Gln−Val又はGln−Gly−Proか、これらの誘導体かの場合がある。
【0016】
本明細書において「タンパク質」、「ペプチド」、「オリゴペプチド」又は「ポリペプチド」とは、2個以上のアミノ酸がペプチド結合で連結した化合物である。「タンパク質」、「ペプチド」、「オリゴペプチド」又は「ポリペプチド」は、メチル基を含むアルキル基、リン酸基、糖鎖、及び/又は、エステル結合その他の共有結合による修飾を含む場合がある。また、「タンパク質」、「ペプチド」、「オリゴペプチド」又は「ポリペプチド」は、金属イオン、補酵素、アロステリックリガンドその他の原子、イオン、原子団か、他の「タンパク質」、「ペプチド」、「オリゴペプチド」又は「ポリペプチド」か、糖、脂質、核酸等の生体高分子か、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニル、ポリエステルその他の合成高分子かを共有結合又は非共有結合により結合又は会合している場合がある。
【0017】
本明細書でアミノ酸を表す場合、L−アスパラギン、L−グルタミン等の化合物名で表す場合と、Asn、Gln等の慣用の3文字表記で表す場合とがある。化合物名で表す場合には、アミノ酸のα炭素に関する立体配置を示す接頭辞(L−又はD−)を用いて表す。慣用の3文字表記で表す場合には、該3文字表記は特に断りのない限りL体のアミノ酸を表す。本明細書において、アミノ酸は、アミノ基とカルボキシル基とが少なくとも1個の炭素原子を介して結合した化合物であって、ペプチド結合により重合することが可能ないずれかの化合物を指す。本明細書におけるアミノ酸は、生体内でメッセンジャーRNAからリボゾームで合成されるタンパク質の翻訳に用いられる20種類のL−アミノ酸とこれらの立体異性体であるD−アミノ酸とを含むがこれらに限定されない、いずれかの天然又は非天然のアミノ酸を含む場合がある。
【0018】
また、本明細書でペプチドを表す場合、ペプチドを構成するアミノ酸残基は、慣用の3文字表記で示され、ハイフンで結んで表される。例えば2個のアミノ酸の3文字表記がハイフンで結ばれて表される場合には、左側のアミノ酸のカルボキシル基と右側のアミノ酸のアミノ基とがペプチド結合したジペプチドであることを表す。したがってAsn−Alaは、L−アスパラギンのカルボキシル基とL−アラニンのアミノ基とがペプチド結合したジペプチドであって、L−アスパラギンのアミノ基とL−アラニンのカルボキシル基は修飾されていないことを意味する。
【0019】
本発明のタンパク質は、本発明のタンパク質のアミノ酸配列をエンコードするヌクレオチド配列からなるDNAを、無生物発現系か、宿主生物及び発現ベクターを使用する発現系かで発現させることにより産生される。前記宿主生物は、大腸菌、枯草菌等のような原核生物と、酵母、菌類、植物、動物等のような真核生物とを含む。本発明の宿主生物及び発現ベクターを使用する発現系は、細胞や組織のような生物の一部か、生物の個体全体かの場合がある。本発明のタンパク質は、N末端アミダーゼ活性を有することを条件として、無生物発現系又は宿主生物及び発現ベクターを使用する発現系の他の成分が混在する状態で本発明のペプチドの製造方法に使用されてもよく、あるいは、精製された状態で本発明のペプチドの製造方法に使用されてもよい。
【0020】
本明細書において、N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質とは、ペプチドのアミノ末端のアミノ酸残基の側鎖のアミド基を脱アミド化する酵素活性(以下、「N末端アミダーゼ活性」という。)を有するいずれかのタンパク質をいう。本発明のN末端アミダーゼ活性を有するタンパク質は、いかなる生物種に由来するタンパク質であってもよい。本発明のN末端アミダーゼ活性を有するタンパク質は出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeのN末端アミダーゼ酵素NTA1をコードする遺伝子(Locus:Z49562)の産物を含むが、これに限られない。
【0021】
配列番号1のヌクレオチド配列は、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeのN末端アミダーゼ酵素NTA1をコードする遺伝子(Locus:Z49562)のヌクレオチド配列である。配列番号1のヌクレオチド配列は、GenBankのデータベースにアクセッション番号Z49562 Y13136として登録されている。
【0022】
配列番号2に記載のアミノ酸配列は、配列番号1に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによりエンコードされN末端アミダーゼ活性を有するNTA1タンパク質のアミノ酸配列である。配列番号2のアミノ酸配列は、UniProtKB/Swiss−ProtのデータベースにP40354として登録されている。
【0023】
本明細書においてヌクレオチド配列の相同性は、本発明のヌクレオチド配列と、比較対象のヌクレオチド配列との間でヌクレオチド配列が一致する部分が最も多くなるように整列させて、ヌクレオチド配列が一致する部分のヌクレオチドの数を本発明のヌクレオチド配列のヌクレオチドの総数で割った商の百分率で表される。同様に、本明細書においてアミノ酸配列の相同性は、本発明のアミノ酸配列と、比較対象のアミノ酸配列との間で配列が一致するアミノ酸残基の数が最も多くなるように整列させて、配列が一致するアミノ酸残基の数の合計を本発明のアミノ酸配列のアミノ酸残基の総数で割った商の百分率で表される。本発明のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の相同性は、当業者に周知の配列整列プログラムCLUSTALWを使用することにより算出することができる。
【0024】
本明細書において「ストリンジェントな条件」とは、Sambrook、J.及びRussell、D.W.、Molecular Cloning A Laboratory Manual 3rd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)に説明されるサザンブロット法で以下の実験条件で行うことを指す。比較対象のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドをアガロース電気泳動によりバンドを形成させた上で毛管現象又は電気泳動によりニトロセルロースフィルターその他の固相に不動化する。6X SSC及び0.2% SDSからなる溶液で前洗浄する。本発明のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを放射性同位元素その他の標識物質で標識したプローブと前記固相に不動化された比較対象のポリヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーション反応を6X SSC及び0.2% SDSからなる溶液中で65°C、終夜行う。その後前記固相を1X SSC及び0.1% SDSからなる溶液中で65°C、各30分ずつ2回洗浄し、0.2X SSC及び0.1% SDSからなる溶液中で65°C、各30分ずつ2回洗浄する。最後に前記固相に残存するプローブの量を前記標識物質の定量により決定する。本明細書において「ストリンジェントな条件」でハイブリダイゼーションをするとは、比較対象のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを不動化した固相に残存するプローブの量が、本発明のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを不動化した陽性対照実験の固相に残存するプローブの量の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%以上であることを指す。
【0025】
本明細書において「N末端アミダーゼ活性」とは、N末端にアミド基含有アミノ酸を含むペプチドに対して作用し、前記N末端のアミド基含有アミノ酸の脱アミド化反応を行う能力である。
【0026】
本明細書において「脱アミド化」又は「脱アミド化反応」とは、以下の化学式1に示すアミド基含有アミノ酸のアミド基が加水分解され、カルボキシル基及びNH3が生成されることにより、アミド基含有アミノ酸が酸性アミノ酸に変換される反応である。
【0027】
【化2】

【0028】
本明細書において「アミド基含有アミノ酸」とは、アミノ酸の側鎖にアミド基を含むアミノ酸である。アミド基含有アミノ酸は、L−アスパラギン、D−アスパラギン、L−グルタミン、D−グルタミン等を含むがこれらに限定されない。好ましくは前記アミド基含有アミノ酸はL−アスパラギン又はL−グルタミンである。
【0029】
本明細書において「酸性アミノ酸」とは、アミノ酸分子内に2個以上のカルボキシル基を含むアミノ酸である。前記酸性アミノ酸は、L−アスパラギン酸、D−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、D−グルタミン酸、L−2−アミノアジピン酸、D−2−アミノアジピン酸、L−2−アミノピメリン酸、D−2−アミノピメリン酸等を含むがこれらに限定されない。好ましくは前記酸性アミノ酸はL−アスパラギン酸又はL−グルタミン酸である。
【0030】
本発明のN末端アミダーゼ活性を有するタンパク質は、(1)配列番号2のアミノ酸配列からなるNTA1タンパク質と、(2)配列番号2のアミノ酸配列に1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質と、(3)配列番号2のアミノ酸配列と99%、98%、95%、90%、85%又は80%以上の相同性を示すアミノ酸配列からなり、かつ、N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質と、(4)配列番号1のヌクレオチド配列と99%、98%、95%、90%、85%又は80%以上の相同性を示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質と、(5)配列番号1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションをするポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質と、(6)特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質に連結した融合タンパク質とからなるグループから選択される場合がある。
【0031】
本発明の融合タンパク質は、特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質のアミノ末端又はカルボキシル末端に連結したものである。
【0032】
本発明の特異的結合タグペプチドは、前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質を調製する際に、発現したタンパク質の検出、分離又は精製をより容易に行うことを可能にするために、他のタンパク質、多糖類、糖脂質、核酸及びこれらの誘導体、樹脂等と特異的に結合するポリペプチドである。特異的結合タグと結合するリガンドは、水溶液中に溶解した遊離状態の場合も固体支持体に不動化される場合もある。そこで、本発明の融合タンパク質は固体支持体に不動化されたリガンドに特異的に結合するため、発現系の他の成分を洗浄除去することができる。その後、遊離状態のリガンドを添加したり、pH、イオン強度その他の条件を変えることにより、固体支持体から前記融合タンパク質を分離して回収することができる。本発明の特異的結合タグは、Hisタグ、mycタグ、HAタグ、インテインタグ、MBP、GSTその他これらに類するポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。本発明の特異的結合タグは、融合タンパク質がN末端アミダーゼ活性を保持することを条件としていかなるアミノ酸配列を有してもかまわない。
【0033】
本明細書において、「N末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチド」とはペプチド鎖のN末端アミノ酸残基がアミド基含有アミノ酸残基であるペプチドを指し、「N末端に酸性アミノ酸残基を含むペプチド」とはペプチド鎖のN末端アミノ酸残基が酸性アミノ酸残基であるペプチドを指す。本明細書において、N末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチドと、該ペプチドから本発明の製造方法によって生産されるN末端に酸性アミノ酸残基を含むペプチドとは、2個のアミノ酸残基から構成される(ジペプチド)場合と、3個のアミノ酸残基から構成される(トリペプチド)場合と、4個又は5個のアミノ酸残基から構成場合と、6、7、8又は9個のアミノ酸残基から構成される場合と、少なくとも10個のアミノ酸残基から構成される場合と、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも50個又は少なくとも100個のアミノ酸残基から構成される場合とを含むが、これらに限定されない。また本明細書において、N末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチドと、該ペプチドから本発明の製造方法によって生産されるN末端に酸性アミノ酸残基を含むペプチドとは、本発明のN末端アミダーゼ活性を阻害しないことを条件として、L−アミノ酸の他、D−アミノ酸、非天然型アミノ酸等であってもよい。また本明細書において、N末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチドと、該ペプチドから本発明の製造方法によって生産されるN末端に酸性アミノ酸残基を含むペプチドとは、カルボキシル末端にオキソ酸を含むデプシペプチドであってもよい。さらに本明細書において、N末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチドと、該ペプチドから本発明の製造方法によって生産されるN末端に酸性アミノ酸残基を含むペプチドとは、その構成アミノ酸残基の側鎖か、あるいは、カルボキシル末端かが共有結合によって誘導体化又は修飾される場合がある。誘導体化は、例えばアミノ基に対してN−フェニルアセチル基、ヒドロキシル基に対して4,4'−ジメチトキシトリチル(DMT)基というように当業者に周知の保護基で誘導体化される場合があり、他の「タンパク質」、「ペプチド」、「オリゴペプチド」又は「ポリペプチド」か、糖、脂質、核酸等の生体高分子か、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニル、ポリエステルその他の合成高分子かと結合される場合がある。本明細書において、N末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチドと、該ペプチドから本発明の製造方法によって生産されるN末端に酸性アミノ酸残基を含むペプチドとは、天然樹脂、合成樹脂、金属、複合材料その他の固体支持体に結合又は吸着している場合がある。
【0034】
本発明のN末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチドの誘導体は、該ペプチドのN末端のアミド基含有アミノ酸残基以外のアミノ酸残基、すなわち、N末端を第1のアミノ酸残基とするとき、第n番目のアミノ酸残基(nは2又は3以上の自然数)がエステル基その他の原子団によって修飾される場合がある。前記エステル基は、例えば、メチルエステル、エチルエステルその他の脂肪族エステルか、芳香族エステルかを含む場合がある。また、前記N末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチドの誘導体は、C末端のアミノ酸残基のカルボキシル基にオキソ酸又はその誘導体が結合する場合がある。
【0035】
本発明の製造方法におけるN末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチドは、固相法又は液相法のような化学的合成法と、酵素合成法と、発酵法のような生物学的合成法とのような当業者に周知の方法を使用して調製される。前記N末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチドは、実質的に特定のアミノ酸配列からなる単一のペプチド分子種の場合の他、天然タンパク質含有材料から加水分解処理を施された複数のアミノ酸配列のペプチド分子種の混合物の場合がある。前記N末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチドの誘導体は、前記加水分解処理を施される前に誘導体化される場合と、前記加水分解処理を施された後に誘導体化される場合とがある。前記ペプチド分子種の混合物を加水分解処理は、ペプチダーゼ、プロテアーゼ等を用いる酵素的方法や、酸加水分解等の化学的方法によって行われる場合がある。前記加水分解処理に用いられる酵素は、精製タンパク質の場合の他、当該酵素を発現する細胞か、該細胞由来の細胞成分又は粗抽出物であって前記酵素活性を有するものかの場合がある。
【0036】
本発明の製造方法のステップ(B)の脱アミド化反応のインキュベーション温度は15〜40°C、好ましくは20〜35°C、最も好ましくは25〜30°Cの場合があるがこれらに限定されない。インキュベーション時間は5時間以上、好ましくは10〜40時間、最も好ましくは25〜35時間の場合があるがこれらに限定されない。
【0037】
本発明の製造方法のステップ(B)は、反応液を加熱し本発明のタンパク質を失活させることにより停止される場合がある。
【0038】
本発明の製造方法により取得されるN末端に酸性アミノ酸を含むペプチドは、イオン交換樹脂その他の担体への特異的吸着、薄層クロマトグラフィ法、高速液体クロマトグラフィ法その他のクロマトグラフィ法、有機溶媒による抽出、結晶化等の当業者に周知の方法により回収される。また、前記ペプチドは、HPLC又はHPLC/MSのような当業者に周知の分析技術を使用して生産量又は純度が評価される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下の実施例によって本発明について詳細な説明を行なうが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【実施例1】
【0040】
1.NTA1タンパク質の取得
1−1.方法
(遺伝子増幅の鋳型)
Saccharomyces cerevisiae S288C由来のYKO parental strainであるBY4741(Open Biosystems)を使用した。BY4741はその遺伝子型(MATαhis3Δ1 leu2Δ1 met15Δ0 ura3Δ0)から明らかなとおり一部の遺伝子が破壊されている。しかし目的遺伝子nta1はインタクトに保たれていることから、遺伝子増幅の鋳型DNAの出所として使用した。
【0041】
(目的遺伝子の抽出及び増幅)
Saccharomyces cerevisiaeからのゲノムDNAの抽出とRNA除去とは、ISOPLANT II(Nippongene)を使用し、製品添付のプロトコールに従って行なった。Saccharomyces cerevisiaeのnta1遺伝子にはイントロンが含まれていないことから、ゲノムDNAを鋳型としてPCR法によりnta1遺伝子を増幅した。ポリメラーゼは、KOD−plus−DNA Polymerase(TOYOBO)を製品添付のプロトコールに従い使用した。PCR反応のアニーリング温度は53°Cに設定した。プライマーの配列は表1配列番号3及び4に示される。プライマーの配列は、目的とするタンパク質のC末端にHisタグが付加されるように設計した。PCR産物の精製にはillustra GFX PCR DNA and Gel Band Purification Kit(GE Healthcare)を使用した。
【0042】
【表1】

【0043】
(組換えプラスミドの取得)
PCR産物及びベクターpET−21a(+)を、制限酵素NdeI及びXhoI(Nippongene)を使用して切断した。これらを、DNA ligation kit ver.2.1(Takara)を使用して連結した。ライゲーション産物の精製にはillustra GFX PCR DNA and Gel Band Purification Kit(GE Healthcare)を使用した。精製後のライゲーション産物を、エレクトロポレーション法により遺伝子クローニング用の宿主E.coli JM109へ導入した。E.coli JM109形質転換体からの抽出により、目的長の組換えプラスミドpET21−NTA1(+1)を取得した。プラスミドの抽出にはillustra plasmid Prep Mini Spin Kit(GE Healthcare)を使用した。
【0044】
(nta1遺伝子の導入及び発現)
取得した組換えプラスミドをエレクトロポレーション法により遺伝子発現用の宿主大腸菌Rosetta λ(DE3)に導入し、遺伝子発現用組換え大腸菌Rosetta λ(DE3)/pET21−NTA1(+1)を取得した。前記組換え大腸菌を、アンピシリン50μg/mL及びクロラムフェニコール30μg/mLを添加したLB培地中で培養した。前記組換え大腸菌を、まず3mLのLB培地を使用して37°C、120rpmで5時間シード培養した。前記シード培養液1mLを、100mLの新しいLB培地へ植菌し、37°C、120rpmで2時間培養した後、終濃度0.1mMとなるようにIPTGを添加し、25°Cで20時間培養を継続した。培養終了後、約1300×g、10分間の遠心分離により菌体を回収した。回収した菌体を、1回目は培養液と等量の、2回目は半量の50mM Tris−HCl(pH8.0)を使用して2回洗菌を行なった。
【0045】
(酵素タンパク質の精製(Ni2+アフィニティークロマトグラフィー))
集洗菌した菌体のペレットを、50mM Tris−HCl(pH8.0)10mLに懸濁し、10分間の超音波破砕を行なった。破砕した菌体を、17700×gで30分遠心分離し、上清を回収して無細胞抽出液とした。この無細胞抽出液を、10mLの結合バッファー(50mM Tris−HCl(pH7.4)、500mM NaCl、20mM イミダゾール)で平衡化したHisTrap HP 1mLカラム(GE Healthcare)へ供し、吸着したタンパク質を同じく結合バッファー10mLで洗浄した。その後、5mLの溶出バッファー(50mM Tris−HCl(pH7.4)、500mM NaCl、500mMイミダゾール)で溶出し、1mLずつのフラクションに分画した。2番目及び3番目のフラクションから各1mLを、1番目のフラクションから0.5mLを回収して脱塩カラムPD−10(GE Healthcare)へ供し、3.5mLの50mM Tris−HCl(pH8.0)へ溶出することで、精製酵素を取得した。
【0046】
1−2.結果
上述の方法により取得されたHisタグ融合型NTA1タンパク質をコードするヌクレオチド配列と、該Hisタグ融合型NTA1タンパク質のアミノ酸とをそれぞれ配列番号5及び6に示す。配列番号5のヌクレオチド配列を有する遺伝子の導入及び発現と、発現したタンパク質のアフィニティー精製とにより、配列番号6のアミノ酸からなるNTA1タンパク質を取得することができた。取得されたNTA1タンパク質を、以下の実験に使用した。
【実施例2】
【0047】
2.NTA1酵素によるアミド基含有アミノ酸の脱アミド化
2−1.方法
50mM Tris−HCl(pH8.0)バッファー中に、12.5mMのアスパラギン又はグルタミンと、0.1mg/mLのNTA1酵素とを含む反応液を調製した。これらの反応液を30°Cで20時間インキュベーションすることにより脱アミド化反応を行なった。反応終了後、10分間煮沸した後に遠心分離(約21,000×g、10分、4°C)を行い、上清を回収した。この上清100μLをFDAA(1−フルオロ−2,4−ジニトロフェニル−5−アラニンアミド)により誘導体化し、メタノール770μLで希釈して総量1mLとした上で、HPLC分析に供した。HPLC分析条件は、HITACHI TECHICAL DATA シートNo.131(4.グラジエントモードでの測定例)に従った。
【0048】
2−2.結果
上述の反応の結果得られたアスパラギン酸及びグルタミン酸の生成量は共に0.1mM以下(収率0.8%以下)であった。この結果から、NTA1タンパク質は単一アミノ酸としてのアスパラギン又はグルタミンの脱アミド化反応を行なう能力が低いことが確認された。NTA1タンパク質がタンパク質のN末端のアスパラギン又はグルタミンの脱アミド化反応を触媒する酵素であることは既に報告がある。しかし本実施例の結果によれば、NTA1タンパク質の基質特異性、すなわち、遊離のアスパラギン又はグルタミンとか、N末端にアスパラギン又はグルタミンを含む短鎖のペプチドとかを基質として脱アミド化反応を触媒することができるかどうかは前記報告から予測することはできないことが明らかである。
【実施例3】
【0049】
3.NTA1酵素によるアミド基含有アミノ酸を含むジペプチドの脱アミド化
3−1.方法
50mM Tris−HCl(pH8.0)バッファー中に、12.5mMのAsn−Val又はGln−Glyと、0.1mg/mLのNTA1酵素とを含む反応液を調製した。これらの反応液を30°Cで20時間インキュベーションすることにより脱アミド化反応を行なった。反応終了後、反応液を10分間煮沸した後に遠心分離(約21,000×g、10分、4°C)を行い上清を回収した。この上清100μLをFDAAにより誘導体化し、メタノール770μlで希釈して総量1mLとした上で、HPLC分析に供した。HPLC分析条件は、HITACHI TECHICAL DATA シートNo.131(4.グラジエントモードでの測定例)に従った。
【0050】
3−2.結果
上述の反応及びHPLC分析の結果、Asn−Valを基質とする反応からは6.8mMのAsp−Val(収率54%)が、Gln−Glyを基質とする反応からは2.2mMのGlu−Gly(収率18%)の生成が確認された。
【0051】
また別の実験において、TLC分析により、Gln−Glnを基質とする反応の結果Glu−Glnと考えられるスポットが出現することが確認されている。
【0052】
さらに別の実験において、HPLC/MS分析により、Asn−Ala、Asn−Asn、Asn−Gln、Asn−Gly、Asn−His、Asn−Met、Asn−Trp、Gln−Ala、Gln−Cys、Gln−Gly、Gln−Leu、Gln−Met、Gln−Phe、Gln−Ser、Gln−Thr又はGln−Valを基質とする反応の結果、Asp−Ala、Asp−Asn、Asp−Gln、Asp−Gly、Asp−His、Asp−Met、Asp−Trp、Glu−Ala、Glu−Cys、Glu−Gly、Glu−Leu、Glu−Met、Glu−Phe、Glu−Ser、Glu−Thr又はGlu−Valに相当するm/zピークがそれぞれ生成することが確認された。
【0053】
これらの結果からNTA1タンパク質は、N末端にL−アスパラギン又はL−グルタミンを含む種々のジペプチドにおいてN末端のL−アスパラギン又はL−グルタミンの脱アミド化反応を行なう能力を有することが確認された。
【実施例4】
【0054】
4.NTA1酵素によるアミド基含有アミノ酸を含むトリペプチドの脱アミド化
4−1.方法
50mM Tris−HCl(pH8.0)バッファー中に、12.5mMのGln−Gly−Proと、0.1mg/mL又は0.2mg/mLのNTA1酵素とを含む反応液を調製した。これらの反応液を30°Cで20時間インキュベーションすることにより脱アミド化反応を行なった。また陰性対照として、12.5mMのGln−Gly−Proを前記バッファー中に含むがNTA1酵素は含まない反応液も調製し、酵素を含む反応液と同様に30°Cで20時間インキュベーションした。インキュベーションの終了後、各反応液についてHPLC/MS分析を行った。
【0055】
4−2.結果
HPLC/MS分析の結果を図1に示す。陰性対照の反応液のMSチャート(図1−A)では基質であるGln−Gly−Proに対応するm/zピーク([m+H]=301)が主に確認された。それに対して0.1mg/mLのNTA1酵素で反応を行った反応液のMSチャート(図1−B)と、0.2mg/mLのNTA1酵素で反応を行った反応液のMSチャート(図1−C)とからは、NTA1酵素の使用濃度が高くなるにつれて脱アミド化生成物であるGlu−Gly−Proに対応するm/zピーク([m+H]=302)が顕著になっていくことが確認された。この結果からNTA1タンパク質は、N末端にアミド基含有アミノ酸を含むトリペプチドにおいてN末端のアミド基含有アミノ酸の脱アミド化反応を行なう能力を有することが確認された。
【実施例5】
【0056】
5.N末端にアミド基含有アミノ酸を含むペプチドに対するNTA1酵素の脱アミド化反応の反応性と、該ペプチドのアミノ酸残基数との関係
5−1.方法
50mM Tris−HCl(pH8.0)バッファー中に、12.5mMのGln、Gln−Gly又はGln−Gly−Proと、0.1mg/mL又は0.2mg/mLのNTA1酵素とを含む反応液を調製した。これらの反応液を30°Cで20時間インキュベーションすることにより脱アミド化反応を行なった。また陰性対照として、12.5mMのGln、Gln−Gly又はGln−Gly−Proを前記バッファー中に含むがNTA1酵素は含まない反応液も調製し、酵素を含む反応液と同様に30°Cで20時間インキュベーションした。インキュベーションの終了後、前記反応液についてTLC分析を行った。TLCではsilica gel 60(Merck)を使用し、酢酸:1−ブタノール:水=1:3:1の展開液を使用して分析した。
【0057】
5−2.結果
TLC分析の結果を図2に示す。Glnを基質とする反応液の分析結果(レーン1−4)では、酵素反応後液においても基質由来のスポットが主に観察されGluと考えられるスポットは僅かに確認されたのみであった(レーン3及び4)。Gln−Glyを基質とする反応液の分析結果(レーン5−8)では、酵素反応後液において基質由来のスポットの上部にGlu−Glyと考えられるスポットが確認された(レーン7及び8)。Gln−Gly−Proを基質とする反応液の分析結果(レーン9−12)では、酵素反応後液において基質由来のスポットはほぼ消失し、その上部にGlu−Gly−Proと考えられるスポットが確認された(レーン11及び12)。この結果から、基質であるN末端にアミド基含有アミノ酸を含むペプチドにおけるアミノ酸残基の数が多いほど、NTA1酵素の脱アミド化反応の反応性が高いことが示唆された。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1−A】インキュベーション後の、Gln−Gly−Proを含むがNTA1酵素は含まない反応液(陰性対照)のMSチャート。
【図1−B】Gln−Gly−Proを基質として0.1mg/mLのNTA1酵素で反応を行なった反応液のMSチャート。
【図1−C】Gln−Gly−Proを基質として0.2mg/mLのNTA1酵素で反応を行なった反応液のMSチャート。
【図2−A】Gln、Gln−Gly又はGln−Gly−Proを基質としてNTA1酵素で反応を行なった反応液のTLC分析結果を示すクロマトグラム。
【図2−B】図2−Aのクロマトグラムの各レーンの試料の処理条件を示す表。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質と、N末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチドとを用意するステップと、
(B)前記N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質を前記N末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチドに対して作用させて前記アミド基含有アミノ酸残基を脱アミド化するステップとを含むことを特徴とする、N末端に酸性アミノ酸残基を含むペプチドの製造方法。
【請求項2】
前記N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質は、(1)配列番号2のアミノ酸配列からなるNTA1タンパク質と、(2)配列番号2のアミノ酸配列に1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質と、(3)配列番号2のアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すアミノ酸配列からなり、かつ、N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質と、(4)配列番号1のヌクレオチド配列と80%以上の相同性を示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質と、(5)配列番号1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションをするポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、N末端アミダーゼ活性を有するタンパク質と、(6)特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質に連結した融合タンパク質とからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記アミド基含有アミノ酸残基はL−アスパラギン残基又はL−グルタミン残基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記N末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチドは、以下の化学式(I)で表される化合物であることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【化1】

上記化学式(I)において、AA0はAsn又はGlnを表し、AA1はいずれかのL−アミノ酸残基又はその誘導体を表し、R1、R2、・・・Rn(nは1又は2以上の自然数)はいずれかのL−アミノ酸残基又はその誘導体か、D−アミノ酸残基又はその誘導体かを表す。
【請求項5】
前記N末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチドは、ジペプチド又はトリペプチドか、これらの誘導体かであることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記N末端にアミド基含有アミノ酸残基を含むペプチドは、Asn−Ala、Asn−Asn、Asn−Gln、Asn−Gly、Asn−His、Asn−Met、Asn−Trp、Asn−Val、Gln−Ala、Gln−Cys、Gln−Gln、Gln−Gly、Gln−Leu、Gln−Met、Gln−Phe、Gln−Ser、Gln−Thr、Gln−Val又はGln−Gly−Proか、これらの誘導体かであることを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。

【図1−A】
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【図1−B】
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【図1−C】
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【図2−B】
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【図2−A】
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【公開番号】特開2009−278928(P2009−278928A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135073(P2008−135073)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】