説明

ペプチド又は蛋白質標識用の蛍光色素、及び該蛍光色素を利用した標識方法

【課題】標識操作が簡便であり、迅速かつ可逆的標識が可能であり、しかも一般性の高い標識法を可能とする蛍光色素、及びそれを利用した標識方法などを提供することを課題とする。
【解決手段】 金属錯体を形成し、金属配位性ペプチドに対する特異的結合能を発揮する配位子と、蛍光団とがリンカーを介して結合された発光色素が提供される。発色団は、配位子が形成する金属錯体における中心金属に対して配位能を有する。発色団が金属に配位することで蛍光が消光する。金属配位性ペプチドの添加により、発色団は金属に配位しなくなり、蛍光が増大(回復)する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペプチド又は蛋白質を標識することに利用される蛍光色素、及びそれを利用した標識方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
生命科学は、1940年代以降、組織や細胞から蛋白質を抽出、単離しその生理活性を明らかにしようとする生化学研究によって大きく発展してきた。そして1980年代以降急速に進歩した分子生物学は蛋白質をコードする遺伝子の構造や働きを明らかにし、また異種生物で組換え蛋白質を大量に発現させ調製することを可能にした。このような遺伝子操作技術を基盤とする分子生物学は、ヒトをはじめとする高等生物の全遺伝子構造を明らかにしようとする壮大な試みに進展し、2003年にはヒトゲノムの全ゲノム構造が明らかにされた。しかし、全遺伝子の約半数は機能が不明の蛋白質をコードしていると言われており、これらの中には多様な生命現象あるいは疾病発症機構の解明につながる蛋白質、また創薬の標的となる蛋白質が多数含まれていると考えられる。
近年、DNAチップやプロテインチップなど蛋白質全体を対象とし、総合的な解析を目指したプロテオミクス研究を中心に、非常に多くの重要な知見が得られてきている。
しかし、これらの方法は、個々の蛋白質の機能に関しては限定された基本情報が得られるに過ぎず、更なる機能解析には、異なる戦略が必要とされる。その戦略の1つに、生きた細胞内で蛋白質を蛍光標識し観察する蛍光イメージングがある。
蛍光イメージングとは、観察したい分子に蛍光標識を付与することによって、分子の分布や動態を可視化する技術のことをいう。生きた細胞内で蛋白質を蛍光ラベル化する技術は、細胞内現象を探索する重要なツールとなりうる。
【0003】
近年、最も良く利用されている方法は、蛍光性蛋白質(Green Fluorescent Protein;GFP)を用いる手法(非特許文献1、2)であり、非常に多くの知見が得られてきている。
本手法の特徴は、目的蛋白質の遺伝子にGFPの遺伝子を導入するだけで、蛍光を発する融合蛋白質を細胞内でつくり出すことができる点にある。現在では、様々な変異体が作製され、色の種類も増え、多角的な観察が可能になってきている。しかし一方で、GFPは283アミノ酸(27kDa)からなる巨大分子であるため、導入することにより蛋白質本来の構造や機能が変化したり、特定のオルガネラに局在する可能性があるなど様々な問題点が指摘されており、その応用性は限定されているのが現状である。
【0004】
先に述べたGFPの問題点は分子サイズであった。目的蛋白質の性質をなるべく変化させないためには低分子による標識が望ましいが、従来の蛍光有機試薬は、特異性に欠け、蛋白質ラベル化前後で蛍光強度が変化しないものがほとんどであった。そのため細胞内蛋白質をラベル化するには、in vitroでの蛋白質精製、ラベル化、再精製、細胞内導入といった煩雑な操作が必要とされていた。このような問題を払拭する目的で、in vivoでの標識を目指した手法が、いくつか報告されている。
Tsienらの蛍光性有機ヒ素化合物(FlAsH)(非特許文献3、4)は、それ自身無蛍光であるが、目的蛋白質に遺伝的に導入された特定のペプチド配列(Cys-Cys-X-X-Cys-Cys)と選択的に結合し、蛍光を発するという優れた性質を持つ。しかし、内在性チオールとの非特異的な結合を避けるために、過剰のエタンジチオールで処理する必要性がある、蛍光発現原理がいまだ未解明なため光に不安定である等多くの問題点が存在する。また、FlAsH自身に毒性の高いヒ素が含まれているということも大きな欠点である。従って、膜蛋白質のラベル化等いくつかの応用例が存在するにとどまっている。
また、Bertozziらは、Staudinger Ligationを用いた手法(非特許文献5)を発表している。この方法は、アジド基を持つ非天然型アミノ酸を目的蛋白質に導入し、それ自身は無蛍光だがアジド基と選択的に反応して蛍光を示す分子を添加して蛋白質を修飾するというものである。この方法は特異性も高く、蛋白質の特定のアミノ酸残基を修飾できるという特徴を有するが、目的蛋白質に非天然型アミノ酸をin vivoで導入する難易度の高い特殊な技術を必要とし、一般性が高い方法とはいえない。また、蛍光色素の反応性官能基であるホスフィンは酸化されやすく、酸化されてしまうと標識不可能となり安定性に問題がある。
【0005】
【非特許文献1】Tsien, R. Y. Ann. Rev. Biochem, 1998, 597, 509-544
【非特許文献2】Miyawaki, A. 実験医学別冊 GFPとバイオイメージング
【非特許文献3】Griffin, B. A.; Adams, S. R.; Tsien, R. Y. Science, 1998, 281, 269-272
【非特許文献4】Adams, S. R.; Campbell, R. E.; Gross, L. A.; Martin, B. R.; Walkup, G. K.; Yao. Y.; Tsien, R. Y. J. Am. Chem. Soc., 2002, 124, 6063-6076
【非特許文献5】Lemieux, G. A.; Graffenried, C. L.; Bertozzi, C. R. J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 4708-4709
【非特許文献6】Hochuli, E.; Bannwarth, W.; Dobeli, H.; Gentz, R.; Stuber, D. Biotechnology, 1988, 6, 1321-1325
【非特許文献7】Ueda, E. K. M.; Gout, P. W.; Morganti, L. J. Chromatogr., A, 2003, 988, 1-23
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、既存の蛋白質ラベル化法は多くの重要な知見を提供しているものの、上述のような問題点を有し、汎用性の高いものは存在していないのが現状である。
上記の化学的修飾法は、蛍光色素を用いる化学的手法と遺伝子工学的手法を組み合わせた新しい蛍光標識技術であり、近年盛んに研究が行われている。中でもFlAsHのように、「ペプチドタグを導入した蛋白質」と「ペプチドタグに選択的に結合する蛍光性分子」を用いた手法は、標識操作が簡便であり、迅速かつ可逆的標識が可能なことから非常に有用な方法といえる。そこで本発明は、この手法の特長を活かし更に一般性の高い標識法を可能とする蛍光色素、及びそれを利用した標識方法などを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
蛋白質と小分子間の選択性の高い相互作用として、His tagと呼ばれる6分子のHisからなる短いペプチド配列とNi-NTA(ニトリロ三酢酸)錯体との相互作用(非特許文献6、7)に着目した。His Tagを付与した蛋白質はNi-NTA錯体と選択的かつ強固に結合することが知られており、この原理は蛋白質精製法(IMAC法)として、現在汎用されている。すなわち多くの蛋白質において、His Tagは蛋白質本来の機能には影響を与えないことが示唆される。
このHis TagとNi-NTA錯体の相互作用を利用した蛋白質ラベル化法は、既にいくつか報告されている。しかしながら、いずれもNi-NTA錯体に蛍光団(フルオレセイン、シアニン、ローダミン)を結合させただけで、His Tag認識による蛍光強度変化はみられない。このため、in vivoでの蛋白質ラベル化は困難である。
そこで本発明者らは、特定のペプチド配列と相互作用して初めて蛍光性を示すような蛍光色素の開発を目的として、以下のようなコンセプトに基づき蛍光色素の分子設計を行なった。
まず、ヒドロキシクマリンを蛍光団として有するカルセインブルー(後述の参考文献13、14)(キレート滴定金属指示薬)の蛍光消光原理に着目し、His tag等の金属配位性ペプチドに対して特異的結合性を有する金属錯体部位(配位子)と、金属イオンに対する配位能を有する蛍光団を併せ持つ蛍光色素をデザインした。このデザインの有効性を検証するため、具体的な蛍光色素として、合成が容易で分子サイズが小さいヒドロキシクマリンを蛍光団として選択し、これにNTA(ニトリロ三酢酸)を様々な長さのリンカーで結んだ化合物をデザインした。合成した蛍光色素の金属応答性を検証したところ、金属イオンの添加によって蛍光強度の減少が観察された。即ち、合成した蛍光色素が、金属イオン添加によって錯形成し、蛍光が減弱することが明らかとなった。次に、Hisが連続した配列のペプチド数種を用いて、これらの蛍光色素のペプチド添加時の蛍光応答性を検証したところ、ペプチド蛍光色素間の特異的な相互作用による蛍光強度の増大が観察された。さらに、金属イオンと蛍光色素の錯形成状態に関する実験によって、ペプチド添加による蛍光強度の増大は蛍光団のヒドロキシ基が遊離したことにより生じたことが裏付けられた。
以上の検証によって、本発明者らが採用した蛍光色素のデザインの有効性を確認できた。即ち、金属配位性ペプチドに対して特異的結合性を有する配位子と、金属イオンに対する配位能を有する蛍光団をリンカーで結合した構造を持つ蛍光色素が金属配位性ペプチドをターゲットとした標識物質として有効であることが明らかとなった。また一方で、金属に配位できる部分を有するリンカーを用いることが蛍光応答性に有利に作用することも判明した。
本発明は主として以上の知見ないし成果に基づくものであり、以下の蛍光色素などを提供する。
[1]金属錯体を形成し、金属配位性ペプチドに対する特異的結合能を発揮する配位子と、
リンカーを介して前記配位子に結合した蛍光団であって、前記配位子が形成する金属錯体における中心金属に対して配位能を有する蛍光団と、
を含む蛍光色素。
[2]前記配位子が、金属配位性官能基を複数有することを特徴とする、[1]に記載の蛍光色素。
[3]前記配位子が、ニトリロ三酢酸、イミノニ酢酸、トリス(カルボキシメチル)エチレンジアミン、及びジエチレントリアミンテトラ酢酸からなる群より選択されるいずれかの配位子であることを特徴とする、[2]に記載の蛍光色素。
[4]前記金属配位性ペプチドが、6分子のヒスチジンからなるHis tag、又はHis tagを構成するヒスチジンの一部を金属配位性アミノ酸で置換してなるペプチドであることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載の蛍光色素。
[5]前記蛍光団が水酸基、カルボキシ基又はアミノ基を有することを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載の蛍光色素。
[6]前記蛍光団が、ヒドロキシクマリン誘導体、アミノクマリン誘導体、フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体、BODIPY誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフラン誘導体及びポルフィリン誘導体からなる群より選択されるいずれかの蛍光団であることを特徴とする、[5]に記載の蛍光色素。
[7]前記リンカーが、金属配位性原子又は官能基を含有することを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかに記載の蛍光色素。
[8]前記リンカーが、炭素数3〜5のアルキルアミンであることを特徴とする[7]に記載の蛍光色素。
[9]以下のいずれかの化学式で表される化合物からなることを特徴とする、[1]に記載の蛍光色素。
【化1】

【化2】

【化3】

[10][1]〜[9]のいずれかの蛍光色素を主成分とする、ペプチド又は蛋白質標識用試薬。
[11][1]〜[9]のいずれかの蛍光色素によって標識されたペプチド又は蛋白質。
[12]前記配位子が金属錯体を形成する条件下、[1]〜[9]のいずれかの蛍光色素と、金属配位性ペプチド、又は金属配位性ペプチドを一部として含む蛋白質と、を接触させるステップを含む、ペプチド又は蛋白質の標識方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の第1の局面はペプチド又は蛋白質の標識に利用される蛍光色素に関する。本発明の蛍光色素は金属配位性のペプチド(以下、「標的ペプチド」ともいう)を特異的に認識して配位結合を形成する。これによって標的ペプチドが蛍光標識されることになる。ポリペプチド又は蛋白質の一部として標的ペプチドが存在していてもよく、このような場合には本発明の蛍光色素によってポリペプチド又は蛋白質が標識されることになる。このように本発明の蛍光色素は、標的ペプチドが内在するポリペプチド等の標識化に利用できる。例えば遺伝子工学的手段などを利用して標的ペプチドを導入することによって所望の蛋白質を本発明の蛍光色素で標識することが可能である。勿論、本来的に標的ペプチドを内在する蛋白質であれば、このような導入操作を経ることなく本発明の蛍光色素で標識することが可能である。
尚、本明細書において用語「ペプチド」とは、複数個のアミノ酸がペプチド結合で繋がった構造を有する分子をいう。従って、それを表さないことが明らかな場合を除いて、用語「ペプチド」はオリゴペプチド、ポリペプチド、及び蛋白質を包含する。例外的な場合の一つは「標的ペプチド」であり、この場合のペプチドはオリゴペプチド又はポリペプチドを表す。
【0009】
本発明の蛍光色素は、標的ペプチドに結合した状態と結合していない状態の間で蛍光応答性が異なるようにデザインされたものであり、金属錯体を形成する配位子と蛍光団とがリンカーを介して結合した構造を備える。配位子は金属錯体を形成して金属配位性ペプチドに対する特異的結合能を発揮する。配位子が金属配位性官能基を複数有していることが好ましい。強固な金属錯体を形成することで、金属配位性ペプチドに対する結合能が高まることが期待できるからである。金属配位性官能基を複数有する配位子の例として、ニトリロ三酢酸、イミノニ酢酸、トリス(カルボキシメチル)エチレンジアミン(tris(carboxymethyl)ethylenediamine)及びジエチレントリアミンテトラ酢酸(diethylenetriaminetetraacetic acid)を挙げることができる。本発明の好ましい一形態ではニトリル三酢酸が配位子として選択される。
【0010】
上記の通り、配位子は金属配位性ペプチドに対して特異的に結合する。換言すれば、金属配位性ペプチドが本発明の蛍光色素の標的ペプチド(蛍光色素が結合する対象)となる。金属配位性ペプチドの代表例は6分子のヒスチジンからなるHis tagであるが、良好な金属配位性を有する限りHis tagに限られるものではない。例えば、His tagを構成するヒスチジンの一部を金属配位性アミノ酸で置換してなるペプチド(説明の便宜上、「一部置換His tag」という)であれば良好な金属配位性を期待できる。また、His tag又は一部置換His tagに一個以上のアミノ酸を付加して構成されるペプチドであっても同様に良好な金属配位性を期待できる。尚、「金属配位性アミノ酸」とは例えばシステインやグルタミン酸である。但し、「金属配位性アミノ酸」は天然型アミノ酸に限らず非天然型アミノ酸であってもよい。
【0011】
本発明の蛍光色素を構成する蛍光団は、後述のリンカーを介して配位子に結合している。蛍光団は、配位子が形成する金属錯体における中心金属に対して配位能を有する。この特性によって、配位子が金属錯体を形成した際、金属錯体の中心金属に対して蛍光団が配位し、これによって蛍光の消失ないし減弱が起きる。一方、配位子が標的ペプチド(金属配位性ペプチド)に結合すると、標的ペプチドの配位の影響を受けて蛍光団の配位が外れ、それによって蛍光団が遊離し蛍光の回復ないし増大が生ずる。このように本発明の蛍光色素では、蛍光団が金属に配位することで蛍光が消光しているが、金属配位性ペプチドの添加により蛍光団の配位が外れ蛍光が増大(回復)する。
金属配位能を発揮するために蛍光団は配位性原子又は官能基(水酸基やアミノ基など)を有する。蛍光団の具体例を示せば、ヒドロキシクマリン誘導体、アミノクマリン誘導体、フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体、BODIPY誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフラン誘導体及びポルフィリン誘導体である。
【0012】
リンカーは、配位子と蛍光団を連結するとともに、スペーサーとして機能する。リンカーが金属配位性原子又は官能基を含有することが好ましい。金属配位性原子等を含有したリンカーによれば、配位子が金属錯体を形成した際にリンカーの一部が金属配位することによって、蛍光団が金属配位し易くなるとともに蛍光色素の構造が安定化する。リンカーに含有される金属配位性原子等はこのような機能を発揮するが、その数が多いと却って蛍光団の金属配位を阻害し、また蛍光色素が好ましい構造を形成することの妨げにもなる。そこで、リンカーに含有される金属配位性原子等の数は通常一つであることが好ましい。
リンカーの好ましい一例は炭素数3〜5のアルキルアミンである。このリンカーでは窒素原子が金属配位することによって上記の如き機能を発揮する。また、このリンカーによれば蛍光団と配位子との距離が適当なものとなり、蛍光団が金属配位し易くなる。
【0013】
本発明の蛍光色素の具体的構造の例を以下に示す。これらの化合物では、配位子としてのニトリル三酢酸(NTA)に、特定の鎖長のアルキルアミンを介して、発色団としてのヒドロキシクマリンが結合している。
【化4】

【化5】

【化6】

【0014】
本発明の蛍光色素は、単独で又は他の成分と組み合わされた状態で、ペプチド又は蛋白質標識用試薬として利用される。当該試薬の使用によって、蛍光標識されたペプチド又は蛋白質を得ることができる。
本発明の蛍光色素による標識方法は典型的には次の通りとする。即ち、蛍光色素中の配位子が金属錯体を形成する条件下、蛍光色素と、標的ペプチド又は標識ペプチドを一部として含む蛋白質とを接触させる。ここでの接触操作は試験管内(in vitro)に限らず、細胞内や組織内(in vivo)で行っても良い。
【実施例】
【0015】
1.蛍光色素の設計
特定のペプチド配列と相互作用して初めて蛍光性を示すような蛍光色素の開発を目的として、以下のようなコンセプトに基づき蛍光色素の分子設計を行なった。
まず、ヒドロキシクマリンを蛍光団として有するカルセインブルー(参考文献13、14)(キレート滴定金属指示薬)の蛍光消光原理に着目した。カルセインブルーは、蛍光性の物質であるが、銅、ニッケル、コバルト等様々な金属が配位することで蛍光強度の減少がみられるため、金属の蛍光検出試薬として市販されている化合物である。この蛍光消光は、ヒドロキシクマリンの有するヒドロキシ基が金属イオンに配位することで起こると考えられている。そこで本発明者らは、蛍光団と金属錯体部位を併せ持つ蛍光色素をデザインした(図1)。蛍光団として合成が容易で分子サイズが小さいヒドロキシクマリンを選択し、NTA(ニトリロ三酢酸)を様々な長さのリンカーで結んだ化合物をデザインした。リンカーは、NTA、蛍光団のヒドロキシル基以外に金属に配位できる原子(X)を挟んでリンカー1及びリンカー2とした。リンカーの長さを調節することにより6つの配位子が金属イオンに配位し、安定な八面体構造を形成すると考えた。
設計した蛍光色素は図2のようなメカニズムで蛍光を発現すると期待した。金属イオン添加により、蛍光団のヒドロキシ基が金属イオンに配位し、蛍光は減弱された状態になる。続いて、His Tagを導入した蛋白質を加えるとHis Tagのイミダゾール基が金属イオンに配位し、蛍光団のヒドロキシ基は金属配位から外れ蛍光団が遊離し蛍光が増大すると期待した。
具体的には、市販のアミノ酸誘導体を原料として、リンカーの長さの異なる3種の蛍光色素を合成することとした(図3)。
【0016】
2.蛍光色素の合成
設計した蛍光色素は、金属錯体を形成するNTA部分(NTAアミン)とヒドロキシクマリン誘導体のカップリングにより合成した。
(1)各種NTAアミン合成
NTAC-2については、グルタミン酸誘導体をDPPAによるCrutius転位を経て、同様に合成した(図4)。また、NTAC-3及びNTAC-4のNTA部分は、側鎖のアミノ基をZ化したオルニチン及びリシンから合成した(図5)。
【0017】
(2)8-Bromomethyl-7-hydroxycoumarin methyl esterの合成(参考文献19)
ギ酸メチルと酢酸エチルより得られたβ-ケトエステルと2-Methylresorcinolを縮合させクマリン誘導体を合成した。続いてヒドロキシ基をアセチル基で保護した後、8位のメチル基をブロモ化した(図6)。
【0018】
(3)NTAアミンと8-Bromomethyl-7-hydroxycoumarin methyl esterの反応
NTA-4アミンと8-Bromomethyl-7-hydroxycoumarin methyl esterを塩基存在下、直接カップリングさせた(図7)。
図8の表に示す通り、塩基、溶媒、温度、反応時間を種々検討したが、目的化合物は得られなかった。分解の原因として、塩基性条件下で、NTA-4アミンのアミノ基がNTA部分のカルボン酸を攻撃してしまったのではないかと考えた。
そこで、NTA-4アミンのアミノ基をNs(ニトロベンゼンスルホニル)基(参考文献20)で保護、活性化させた後、8-Bromomethyl-7-hydroxycoumarin methyl esterとカップリングさせることとした(図9)。しかし、カップリング反応自体があまり進行せず、生成物の精製も困難となったため、このスキームによる合成は断念した。
【0019】
(4)7-Hydroxycoumarin-8-carbaldehydeの合成
NTAアミンとのカップリングにイミン形成反応を利用しようと考え、7-Hydroxycoumarinからの直接ホルミル化を種々検討した(図10)。
本化合物は文献既知であり、文献にも合成法が報告されていたが、文献通りの方法(参考文献21)(entry 1、図11の表)では目的化合物がほとんど得られなかった。文献でも収率が10%以下であることから、他の合成法を種々検討したところ、パラホルムアルデヒドによるホルミル化(参考文献22)(entry 5、図11の表)で低収率ではあるが、1段階で目的化合物を得ることができた。
【0020】
(5)NTAアミンと7-Hydroxycoumarin-8-carbaldehydeのカップリング
NTAアミンに7-Hydroxycoumarin-8-carbaldehydeを添加して、イミンを形成させた後、還元して、目的化合物を得た(図12)。
【0021】
(6)塩基による加水分解
得られたエステル体を水酸化リチウムで加水分解(参考文献23)してニトリロ三酢酸体を得た(図13)。全て反応の進行はHPLCで確認し、カラムでの精製が困難であったため、HPLCで精製した。
【0022】
3.認識ペプチドの合成
蛍光色素が認識するペプチド配列として、Hisが連続した配列のペプチド数種をデザインし(図14、15)、図16に示す一般的なFmoc固相合成法に従い合成した。カップリング反応の進行は、毎回Kaiser testで確認した。また、一部のペプチドについては自動合成機を利用し合成した。
His連続配列ペプチドのN末端には、水溶性向上のためにアルギニンを付与した。また、ペプチドのN末端をアセチル化したもの(Ac-Arg2His6-NH2)とアセチル化していないもの(H-Arg2His6-NH2)の両方を合成した。さらに、Ni-NTA錯体との結合がさらに強固なものになることを期待し、His連続配列をさらに伸長したペプチド(Ac-Arg3His12-NH2)も合成した。
また、アルギニンを持たず、His連続配列のみから成るペプチド(H-His6-NH2)とそのN末をアセチル化したペプチド(Ac-His6-NH2)も合成した(図15)。
通常、一般的なFmoc固相合成法においては、His誘導体としてFmoc-His(Trt)-OHが使用される。しかし、Hisを非常に多く含むためか、TFA処理による固相からの切り出し、及び脱保護時に多量の固体が析出し、収率も18%と非常に低い結果が得られた。そこで、より脱保護の容易なFmoc-His(Mtt)-OH(参考文献24)を使用したところ、TFA処理時に目立った固体析出はみられず、後処理をスムーズに行なうことができた(図17)。また、収率も30%前後とかなり向上した。
【0023】
4.蛍光色素の金属応答検討
一般にNTA(ニトリロ三酢酸)は、様々な金属イオンに配位することが知られている。たとえば、Co2+-NTA及びCu2+-NTAは、Ni2+-NTAと同様にヒスタグ導入蛋白質の精製用に市販化(参考文献8、25)されている。またGa3+-NTA及びFe3+-NTAは、リン酸化蛋白質(参考文献26〜28)に対する親和性を持ち、その精製にも用いられている。そこで、錯形成に重要なd軌道に電子を有する遷移金属イオン(9種)及びその対照として、アルカリ金属イオン(4種)、アルカリ土類金属イオン(3種)、さらにその他の金属イオン(5種)の計21種について、蛍光色素の金属応答について検討した。また、蛍光色素のほかにデザインの基盤とした金属指示薬(Calcein blue)でも金属応答を検討した。合成したヒドロキシクマリン誘導体はpH = 8.0付近で安定した強い蛍光を有するため、pH = 8.0の緩衝液で検討した。結果は、図18〜21に示した。
蛍光測定は、小スケールで利用でき、迅速な評価が可能な96穴マイクロプレートを用い、マルチラベルカウンターで行なった。
<測定条件>
フィルター:ex. 355 nm, em. 460 nm
測定時間:1.0 s
励起光出力(CW-lamp energy):2944
使用機器:Wallac 1420 ARVO MX
使用した金属イオン
アルカリ金属:LiCl, NaCl, KCl, RbCl,
アルカリ土類金属: CaCl2, SrCl2・6H2O, BaCl2・2H2O
遷移金属:Cr(OAc)3, MnCl2・4H2O, FeCl3・6H2O, CoCl2, NiCl2・H2O, CuSO4, ZnCl2,
CdCl2・5/2H2O, HgCl2,
その他:MgCl2, Ga2(SO4)3, InCl3・4H2O, Pb(NO3)2, CeCl3,
蛍光試薬
NTAC-2, NTAC-3, NTAC-4, Calcein blue
【0024】
考察
いずれも、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンでは、蛍光の減弱はみられなかったが、遷移金属イオンのいくつかで大幅な蛍光の減弱がみられた。このうち、Pb2+については、添加時に沈殿が生成したために蛍光が減弱したと考えられる。また、Fe3+についても、塩基性条件下で水酸化鉄コロイドとなり蛍光減弱した可能性が考えられる。沈殿生成による蛍光の減弱は変化が直線的で、濃度依存性がみられた。また、これら2種の金属イオンでは、金属配位部位を持たない4-methylumbelliferoneでも蛍光が減弱していることから、金属配位によらない蛍光減弱と考えられる。
一方、蛍光の減弱幅が大きかったコバルト、ニッケル、銅は、金属イオン10当量以上で、蛍光の減弱が飽和に達している。これは、金属指示薬(Calcein blue)の蛍光変化と同様の挙動であり、蛍光色素が金属に配位して錯体を形成したのではないかと推測される。
金属イオン添加により蛍光強度が最大で100分の1まで減少した。His Tag配列との結合により蛍光回復がみられれば、十分な蛍光強度差が得られると考えられる。
【0025】
5.金属-蛍光色素錯体のペプチド添加時の蛍光応答
前節で、合成した蛍光色素3種全てが、いくつかの金属イオン添加によって錯形成し蛍光が減弱することが明らかとなった。そこで、金属添加により蛍光が減弱した状態で、His連続配列を有するペプチドを添加し、蛍光の回復がみられるか検討を行った。金属種としては、蛍光減弱の幅が最も大きく、His連続配列と親和性を有すると考えられる3種の金属(コバルト、ニッケル、銅)を選択した。
前節の結果より、蛍光減弱が最大に達するのは金属イオンを過剰量(10当量)添加した時であった。しかし、蛍光色素と金属イオンは1対1の比で錯形成すると考えられる(6.を参照)ので、蛍光プローブとしての利用を考えると、金属イオン過剰量よりも1当量及び2当量添加時の変化が重要になる。そこで、蛍光色素に対して1当量、2当量、10当量の金属イオン存在下、各種ペプチドを添加して蛍光強度変化を検討した。また、Mn+-NTAとの相互作用(参考文献29、30)が知られているBSA(ウシ血清アルブミン)を添加し蛍光強度変化を検討した。さらに、蛍光強度増大の選択性を確認するために、連続しないHis2残基を有するAngiotensin I(H-Asp-Arg-Val-Tyr-Ile-His-Pro-Phe-His-Leu-OH)を添加して蛍光強度変化を検討した。結果は、図22〜29(一部の結果は図示せず)に示した。ここでは、金属イオン非添加時の蛍光強度を100%とした比蛍光強度を縦軸に示した。
蛍光測定は、前節と同様に96穴マイクロプレートを用い、マルチラベルカウンターで行なった。
<測定条件>
フィルター:ex. 355 nm, em. 460 nm
測定時間:1.0 s
励起光出力(CW-lamp energy):2944
使用機器:Wallac 1420 ARVO MX
使用した金属イオン
遷移金属:CoCl2, NiCl2・H2O, CuSO4
蛍光試薬
NTAC-2, NTAC-3, NTAC-4
【0026】
(1)Ac-Arg2His6-NH2での検討結果
銅を特に1及び2当量添加した時に、蛍光強度が増大した。またコバルト及びニッケルについてもNTAC-2のみ、わずかに蛍光強度増大がみられた。
(2)H-Arg2His6-NH2での検討結果
銅添加時は金属イオン濃度に関わらず、全ての場合について蛍光強度が100%まで回復した。また、コバルトについてもほぼ全ての場合に蛍光強度の増大がみられ最大10倍程度まで回復した。
(3)Ac-Arg3His12-NH2での検討結果
銅を1及び2当量添加した時のみ、全てについて蛍光強度が増大した。またコバルト及びニッケルについてもNTAC-2のみ、わずかに蛍光強度増大がみられた。His配列をのばすことで、NTAとの親和性が増すのではないかと期待したが、Ac-Arg2His6-NH2添加時とほとんど差がなく、むしろ蛍光強度増大は若干弱くなった。
(4)Ac-His6-NH2での検討結果
銅を特に1及び2当量添加した時に、蛍光強度が増大した。またコバルト及びニッケルについてもNTAC-2のみ、わずかに蛍光強度増大がみられた。
(5)H-His6-NH2での検討結果
銅とコバルトについては、全てにおいて蛍光強度が100%まで回復した。ニッケルについても最大で5倍程度まで回復した。NTACの種類によらず金属イオン10当量では、蛍光強度増大の立ち上がりがおそく、ペプチドを大過剰添加しないと蛍光強度は増大しなかった。
(6)BSAでの検討結果
銅を添加したものは全ての場合について、大幅な蛍光強度の増大がみられ、最大で80%まで回復した。またNTAC-2については、ニッケル及びコバルトでも大幅に蛍光強度が増大した。
(7)Angiotensin Iでの検討結果
金属1当量、2当量添加時の全ての場合について、蛍光強度の増大はみられなかった。
【0027】
考察
特に銅イオン添加時は、(1)〜(6)全ての場合について蛍光増大がみられた。また、(5)のような最も単純なペプチド配列をもつペプチド(H-His6-NH2)では、銅及びコバルトで100%まで蛍光強度は回復した。His連続配列を持たないペプチドであるAngiotensin Iでは、ほとんど蛍光強度変化がみられなかったことから、His連続配列が蛍光色素と選択的に相互作用し蛍光強度が増大していると考えられる。一方で、(1)と(2)及び(4)と(5)のように、ペプチドのN末端保護の有無で選択性に差がみられた。これは、ペプチドのN末端と蛍光色素との何らかの相互作用を示唆している。今後、側鎖にアミノ基を持つアミノ酸を含むHis連続配列ペプチド等でさらに検討する必要性があると思われる。また、Cu2+, Ni2+, Co2+以外の金属を用いた検討も進めていく。
【0028】
6.蛍光色素と金属イオンの錯形成状態の検討
上記の実験結果より、ペプチド添加によりいくつかの系で蛍光強度増大がみられることが分かった。この蛍光強度増大は蛍光団のヒドロキシ基が遊離したことにより起こると推測されるが、蛍光色素自身が金属から遊離した可能性も考えられる。そこで、金属イオンと蛍光色素の錯形成状態について検討することとした。実際に、蛍光色素の金属イオン応答から、金属と蛍光色素の組成を推定し、結合定数を算出した。合成した3種の蛍光色素のうちNTAC-3及びNTAC-4とNiとの結合についての結果を図30に示す。
以下全ての蛍光強度測定にはHitachi F4500を使用した。
・NTAC-3について
(モル比法によるニッケル錯体の組成推定)
測定方法:50 mM Tris buffer(pH = 8.0)中でNTAC-3 5.0μMに対してNiSO4・6H2Oを1μM, 2μM, 4μM, 5μM, 6μM, 7μM, 8μM, 9μM, 10μM, 11μM, 12μM, 15μM, 20μM, 25μM, 30μM,となるように添加した。
測定条件:Ex. 365nm, Em. 455nm, 温度 25℃, slit width 5/5 nm
ホトマル電圧 700 V
(連続変化法によるニッケル錯体の組成推定)
測定方法:50 mM Tris buffer(pH = 8.0)中でNTAC-3とNiSO4・6H2Oの濃度の和が10μMとなるように混合した。具体的にはNTAC/Ni2+のモル濃度を次の通りに変化させた。(10μM/0μM, 9/1, 8/2, 7/3, 6/4, 5/5, 4/6, 3/7, 2/8, 1/9, 0/10)
測定条件:Ex. 365nm, Em. 455nm, 温度 25℃, slit width 5/5 nm
ホトマル電圧 700 V
【0029】
・NTAC-4について
(モル比法によるニッケル錯体の組成推定)
測定方法:50 mM Tris buffer(pH = 8.0)中でNTAC-4 5.0μMに対してNiSO4・6H2Oを1μM, 2μM, 3μM, 5μM, 7μM, 10μM, 15μM, 20μM, 30μM,となるように添加した。
測定条件:Ex. 365nm, Em. 450nm, 温度 25℃, slit width 5/5 nm
ホトマル電圧 700 V
(連続変化法によるニッケル錯体の組成推定)
測定方法:50 mM Tris buffer(pH = 8.0)中でNTAC-4とNiSO4・6H2Oの濃度の和が10μMとなるように混合した。具体的にはNTAC/Ni2+のモル濃度を次の通りに変化させた。(10μM/0μM, 9/1, 8/2, 7/3, 6/4, 5/5, 4/6, 3/7, 2/8, 1/9, 0/10)
測定条件:Ex. 365nm, Em. 455nm, 温度 25℃, slit width 5/5 nm
ホトマル電圧700 V
【0030】
結果
モル比法の実験結果からBensesi-Hildebrand式に従い結合定数を算出したところ、以下のような値となった。
NTAC-3: 2.00 × 105 M-1
NTAC-4: 2.05 × 105 M-1
【0031】
考察
2種類の錯体の組成決定法(モル比法、及び連続変化法)の結果から、NTAC-3、NTAC-4共に、ニッケルイオンと1対1の金属錯体を形成することが推察された。また、結合定数算出より、2種類の蛍光色素で結合定数に大きな違いはないことが分かった。また、結合定数の値より、蛍光色素とニッケルイオンの結合はかなり強いと推定され、ペプチド添加により容易に蛍光色素から金属イオンが外れてしまう可能性は低いと考えられる。
【0032】
7.まとめ
特定ペプチド配列を認識する蛍光試薬の開発を目標として、蛍光色素の設計、合成、及びその機能を検討した。
(1)蛍光色素の設計及び合成について
蛍光団とHis Tag認識部位(NTA)を併せ持つ蛍光色素を3種類(NTAC-2, NTAC-3, NTAC-4)合成した。NTAアミンと蛍光団アルデヒドとのイミン形成反応を利用した還元的アミノ化によるカップリングは、様々な蛍光団とNTAアミンのカップリングに応用できると考えられる。
(2)蛍光色素の金属応答について
多くの遷移金属の添加により、蛍光色素の蛍光強度の減弱がみられた。沈殿生成がみられたもの以外は、金属配位部位を持たない4-methylumbelliferoneでは、蛍光減弱がみられなかった。このことから、金属と蛍光色素の錯体が生成し、蛍光が減弱したと考えられる。また、NTAC-3及び、NTAC-4については、金属イオンと1対1の錯体を強固に形成することが明らかとなった。この結果は、想定した錯形成による蛍光減弱メカニズムを支持するものである。
(3)蛍光色素のペプチド配列認識について
His連続配列を含むペプチド数種の添加により、金属による蛍光消光の回復がみられるか検討した。いくつかの系で、蛍光強度の回復がみられ、特に、His連続配列のみを持つペプチド(H-His6-NH2)では、金属種によらず大きな蛍光強度の回復がみられた。また、ペプチド配列のN末端の修飾の有無が蛍光強度変化に大きく影響を与えるということもわかった。Angiotemsin Iで蛍光強度増大が全くみられなかったため、蛍光強度増大には、His連続配列及びN末端のアミノ基の双方が関与していると考えられる。
【0033】
以下、上記の各実験に使用した機器や原料等、化合物の合成方法、測定条件、及び機器条件などを記す。
機器分析
核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)は、日本電子JNM GSX-400 (400 MHz, FT型)を使用して測定した。化学シフト値は、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準物質としてδ値(ppm)を示し、分裂様式は以下の略号で表した。(s; singlet, d; doublet, t; triplet, q; quartet, m; multiplet) また、Fast Atom Bombardment Mass spectrum(FAB-MS)は、日本電子JMS-LCmate、Matrix Assisted Laser Desorption Ionization Time of Flight Mass Spectrum(MALDI-TOF-Mass)は、SHIMADZU AXIMATM-CFRを使用して測定した。Electrospray Ionization Mass Spectrum(ESI-MS)は、Bruker FT MS APEX IIを使用して測定した。Electron Impact Mass Spectrum(EI-MS)は、名古屋市立大学薬学部に測定を依頼した。High Performance Liquid Chromatography(HPLC)は、SHIMADZU SIL-10AP, LC-6AD, SIL-10Avp, SPD-M10Avp, FRC-10A ver.3を使用した。
【0034】
原料
反応溶媒は全て蒸留したものを用いた。THFはNaから、CH2Cl2、DMF、toluene、benzeneはCaH2から、Methanol、EthanolはMgとI2から蒸留した。CH3CN、1,2-dichloroethaneは、単蒸留した。他の全ての試薬は、市販のものを購入し、精製せずに使用した。
【0035】
カラムクロマトグラフィー
カラムクロマトグラフィーに用いたシリカゲルは、Fuji Silysia BW200、フラッシュクロマトグラフィーでは、Fuji Silysia BW300を使用した。
【0036】
化合物の合成
NTAC-4の合成
・N-ε-Benzyloxycarbonyl-L-lysine methyl ester (1)
【化7】

dist. MeOH (50 mL) を100 mL ナスに入れ、ice salt bath 中で冷却しながら、塩化チオニル (4.54 mL, 63.2 mmol)をゆっくり加えた後、N-ε-benzyloxycarbonyl-L-lysine(5.0 g, 17.8 mmol)を加えゆっくり室温まで戻し、そのまま一晩撹拌した。TLCで反応終了を確認後、減圧留去し黄色のオイルを得た。これを少量の dist. MeOH に溶かした後、dist. Et2O (約30 mL)を加えて再沈殿させ、吸引ろ取し、塩酸塩である白色固体 (4.67 g)を得た。この塩酸塩をsat. NaHCO3 (250 mL)に溶かし、CH2Cl2 (100 mL×3回)で抽出した。CH2Cl2層を 無水MgSO4で脱水後、減圧留去した。
褐色オイル (収量 3.75 g, 収率 71%)
〈機器データ〉
H-NMR (400 MHz, CDCl3,) :δ 1.41-1.55 (m, 8H, 3CH2 and NH2), 3.20 (m, 2H, CH2), 3.45 (s, 1H, CH), 3.72 (s, 3H, OCH3), 4.79 (br s, 1H, NHCO), 5.30 (s, 2H, Ph-CH2-O), 7.30-7.38 (m, 5H, Ph)
MS ( FAB) : 295 (M+1)
TLC MeOH/CH2Cl2 (1/9) Rf = 0.60
【0037】
・N-ε-Benzyloxycarbonyl-N-α-bis(2-ethoxy-2-oxoethyl)-L-lysine methyl ester (2)
【化8】

N-ε-Benzyloxycarbonyl-L-lysine methyl ester (3.0 g, 10.2 mmol)を200 mLの3頚ナスに入れ dist. CH3CN (80 mL)に溶かし、Ethyl bromoacetate (10.1 mL, 102 mmol)、炭酸カリウム (28.2 g, 204 mmol)を加え、20時間加熱還流した。反応液を吸引濾過後、ろ液を減圧留去した。混合物オイルをフラッシュシリカゲルカラム (EtOAc:n-Hexane = 1:2)で精製した。
淡黄色オイル (収量 3.63 g, 収率 76%)
〈機器データ〉
H-NMR (400 MHz, CDCl3) :δ1.24 (t, J = 7.1 Hz, 6H, 2CH3CH2), 1.29-1.40 (m, 2H, CH2), 1.47-1.55 (m, 2H, CH2), 1.60-1.66 (m, 2H, CH2), 3.16-3.22 (m, 2H, CH2-N), 3.42 (t, J = 7.6 Hz, 1H, CH), 3.62 (d, J = 3.2 Hz, 4H, 2CO-CH2-N), 3.68 (s, 3H, OCH3), 4.13 (q, J = 7.1 Hz, 4H, 2CH3CH2), 4.70 (br s, 1H, CONH), 5.09 (s, 2H, Ph-CH2-O), 7.31-7.36 (m, 5H, Ph),
MS ( FAB) : 467 (M+1)
TLC EtOAc/n-Hexane (1/2) Rf = 0.20
【0038】
・N-α-Bis(2-ethoxy-2-oxoethyl)-L-lysine methyl ester (3)
【化9】

N-ε-Benzyloxycarbonyl-N-α-bis-(2-ethoxy-2-oxoethyl)-L-lysine methyl ester (5.00 g, 10.72 mmol)を 500 mLの3頚ナスに入れdist. MeOH (150 mL)に溶かし、10% Pd/C (500 mg)を加え、H2雰囲気下一晩激しく撹拌した。Pd/Cをセライト濾過後、ろ液を減圧留去した。
淡黄色オイル (収量 3.02 g, 収率 85%)
〈機器データ〉
H-NMR (400 MHz, CDCl3) :δ1.26 (t, J = 7.1 Hz, 6H, 2CH3CH2), 1.30-1.35 (m, 2H, CH2), 1.42-1.50 (m, 4H, 2CH2), 1.66-1.74 (m, 2H, CH2), 2.56 (t, J = 6.8 Hz, 1H, CH2NH2), 2.68 (t, J = 6.8 Hz, 1H, CH2NH2), 3.40-3.49 (m, 1H, CH), 3.64-3.70 (m, 7H, 2CO-CH2-N, OCH3), 4.14 (q, J = 7.1 Hz, 4H, 2CH3CH2)
MS (FAB) : 333 (M+1)
【0039】
・N-α-bis(2-ethoxy-2-oxoethyl)-N-ε-(2-Nitrobenzenesulfonyl)-L-lysine methyl ester (4)
【化10】

N-α-Bis(2-ethoxy-2-oxoethyl)-L-lysine methyl ester (600 mg, 1.81 mmol)を100 mL2口ナスに入れ dist.CH2Cl2 (10 mL)に溶かした。Ar雰囲気下、Et3N (252μL, 1.81 mmol)を加え、氷浴中で2-Nitrobenzenesulfonyl chloride (401 mg, 1.81 mmol) in dist.CH2Cl2 (10 mL)を5分間かけて加えた。5分後、室温に戻して撹拌した。20時間後、1N-HClで反応を停止した後、CH2Cl2 (7 mL×3回)抽出、brine (10 mL×3回)洗浄し、CH2Cl2層を 無水MgSO4で脱水後、減圧留去した。
淡黄色オイル (収量 755.1 mg, 収率 81%)
〈機器データ〉
H-NMR (500 MHz, CDCl3) :δ1.25 (m, 6H, 2CH3CH2), 1.36-1.72 (m, 6H, 3CH2), 3.10 (q, J = 6.6 Hz, 2H, CH2), 3.38 (t, J = 7.6 Hz, 1H, CH), 3.55-3.72 (m, 7H, 2CO-CH2-N, OCH3), 4.05-4.16 (m, 4H, 2CH3CH2), 5.41 (s, 1H, NH), 7.73-7.80 (m, 2H, Ph 4位, 6位), 7.82-8.00 (m, 1H, Ph 3位), 8.04-8.14 (m, 1H, Ph 5位)
MS ( FAB) : 518 (M+1)
TLC Acetone/n-Hexane (1/1) Rf = 0.57
【0040】
・8-N-[5-(Bis-ethoxycarbonylmethylamino)-5-ethoxycarbonylpentyl]aminomethyl-7-hydroxy coumarin (5)
【化11】

8-Formyl-7-hydroxycoumarin (590 mg, 3.10 mmol)と酢酸 (355μL, 6.20 mmol), dist. dichloroethane (10 mL)を50 mLのナスに入れ dist. 1,2-dichloroethane (10 mL)に溶かしたN-α-Bis(2-ethoxy-2-oxoethyl)-L-lysine methyl ester (1.55 g, 4.65 mmol)を滴下し、室温下で2時間撹拌した。NaBH3CN (214 mg, 4.65 mmol)を加え室温下でさらに一晩撹拌した。氷浴下、水を加えて撹拌し溶媒を減圧留去した。混合物オイルをシリカゲルカラム (MeOH:CH2Cl2 = 5:95)で精製した。
淡黄色オイル (収量 667 mg, 収率 43%)
〈機器データ〉
H-NMR (400 MHz, CDCl3) :δ1,24 (t, J = 7.3 Hz, 6H, 2CH3CH2), 1.43-1.84 (m, 6H, 3CH2), 2.02 (s, 1H, NH), 2.92-3.02 (m, 2H, CH2NH2), 3.54-3.62 (m, 1H, CH), 3.54-3.62 (m, 4H, 2CO-CH2-N), 3.67 (s, 3H, OCH3), 4.11 (q, J = 7.3 Hz, 4H, 2CH3CH2), 4.41 (s, 2H, Ph-CH2-NH), 5.31 (s, 1H, OH), 6.15 (d, J = 9.4 Hz, 1H, CH), 6.98 (d, J = 8.6 Hz, 1H, CH), 7.30 (d, J = 8.6 Hz, 1H, CH), 7.61 (d, J = 9.4 Hz, 1H, CH)
MS (FAB) : 507 (M+1)
TLC MeOH/CH2Cl2(1/9) Rf = 0.33
【0041】
・8-N-[5-(Bis-carboxymethylamino)-5-carboxypentyl]aminomethyl-7-hydroxycoumarin (6)
【化12】

8-N-[5-(Bis-ethoxycarbonylmethylamino)-5-ethoxycarbonylpentyl]aminomethyl-7-hydroxycoumarin (100 mg, 0.20 mmol)を30% CH3OH/H2O (10 mL)に溶かし、氷浴下 1N-LiOH (1.20 mL, 1.20 mmol)滴下し、室温にて撹拌、HPLCで反応を追跡した。2時間後、30% CH3COOHで反応を停止し、HPLCで分取精製した。
無色固体 (収量 33.8 mg, 収率 31%)
(精製条件)column: Inertsil ODS-3, flow: 3 mL/min, Detection: 325 nn, Eluent : 0.1%TFA/H2O (eluent A), 0.1%TFA/CH3CN (eluent B); linear gradient from 13% to 15% eluent B over 20 min
〈機器データ〉
H-NMR (400 MHz, CD3OD):δ1.33-1.68 (m, 6H, 3CH2), 2.90-2.94 (m, 2H, CH2NH), 3.35-3.39 (m, 1H, CH), 3.53 (s, 4H, 2CO-CH2-N), 4.21 (s, 2H, Ph-CH2-NH), 5.90 (d, J = 9.2 Hz, 1H, CH), 6.57 (d, J = 8.6 Hz, 1H, CH), 7.26 (d, J = 8.6 Hz, 1H, CH), 7.69 (d, J = 9.2 Hz, 1H, CH)
【0042】
NTAC-3の合成
・N-δ-Benzyloxycarbonyl-L-ornithine methyl ester (7)
【化13】

dist. MeOH (1.0 mL) を20 mL ナスに入れ、ice salt bath 中で冷却しながら、塩化チオニル (0.11 mL, 1.50 mmol)をゆっくり加えた後、N-δ-benzyloxycarbonyl-L-ornithine (100 mg, 0.38 mmol)を加えゆっくり室温まで戻し、そのまま一晩撹拌した。TLCで反応終了を確認後、減圧留去し黄色のオイルを得た。これを少量の dist. MeOH に溶かした後、dist. Et2O (5.0 mL)を加えて再沈殿させ、吸引ろ取し、塩酸塩である白色固体 (106 mg, 0.33 mmol)を得た。この塩酸塩をsat. NaHCO3 (10 mL)に溶かし、CH2Cl2 (6 mL×4回)で抽出した。CH2Cl2層を 無水MgSO4で脱水後、減圧留去した。
無色オイル (収量 57.6 mg, 収率 62%)
〈機器データ〉
H-NMR (400 MHz, DMSO) :δ1.38-1.58 (m, 4H, 2CH2), 1.74(s, 2H, -NH2), 2.97 (m, 2H, CH2), 3.50 (s, 1H, CH), 3.60 (s, 3H, OCH3), 5.00 (s, 2H, Ph-CH2-O), 7.27-7.38 (m, 5H, Ph),
MS (FAB) : 281 (M+1)
TLC AcOEt/n-Hexane (2/3) Rf = 0.10
【0043】
・N-δ-Benzyloxycarbonyl-N-α-bis(2-ethoxy-2-oxoethyl)-L-ornithine methyl ester (8)
【化14】

N-δ-Benzyloxycarbonyl-L-ornithine methyl ester (2.54 g, 9.08 mmol)を 300 mLの3頚ナスに入れ dist. CH3CN (50 mL)に溶かし、Ethyl bromoacetate (10.1 mL, 90.8 mmol)、炭酸カリウム (25.1 g, 181.0 mmol)を加え、20時間加熱還流した。反応液を吸引濾過後、ろ液を減圧留去した。混合物オイルをシリカゲルカラム (EtOAc:n-Hexane = 2:3)で精製した。
淡黄色オイル (収量 3.72 g, 収率 91%)
〈機器データ〉
H-NMR (400 MHz, CDCl3) : δ 1.22-1.33 (m, 6H, 2CH3CH2), 1.68-1.74 (m, 4H, 2CH2), 3.23-3.24 (m, 2H, CH2-N), 3.43 (m, 1H, CH), 3.62 (s, 3H, OCH3), 4.12 (m, 4H, 2CO-CH2-N), 4.24 (m, 4H, 2CH3CH2) 4.70 (s, 1H, CONH), 5.08 (s, 2H, Ph-CH2-O), 7.30-7.36 (m, 5H, Ph)
MS (FAB) : 453 (M+1)
TLC AcOEt/n-Hexane(2/3) Rf = 0.30
【0044】
・N-α-Bis(2-ethoxy-2-oxoethyl)-L-ornithine methyl ester (9)
【化15】

N-δ-Benzyloxycarbonyl-N-α-bis-(2-ethoxy-2-oxoethyl)-L-ornithine methyl ester (3.72 g, 8.21 mmol)を 100 mLの2頚ナスに入れdist. MeOH (20 mL)に溶かし、10% Pd/C (500 mg)を加え、H2雰囲気下激しく撹拌した。Pd/Cを濾過後、ろ液を減圧留去した。
淡黄色オイル (2.61 g, 収率 quant.)
〈機器データ〉
H-NMR (400 MHz, CDCl3) : δ1.28 (m, 6H, 2CH3CH2), 1.62-1.85 (m, 4H, 2CH2), 2.84-3.12 (m, 1H, CH), 3.48-3.78 (m, 6H, CH2NH2, 2CO-CH2-N), 4.12-4.27 (m, 7H, 2CH3CH2, OCH3), 8.27 (br s, 2H, NH2)
MS ( FAB) : 319 (M+1)
【0045】
・8-N-[4-(Bis-ethoxycarbonylmethylamino)-4-ethoxycarbonylbutyl]aminomethyl-7-hydroxycoumarin (10)
【化16】

8-Formyl-7-hydroxycoumarin (860 mg, 4.52 mmol)と酢酸 (518μL, 9.04 mmol),dist. dichloroethane (20 mL)を100 mLのナスに入れ dist. 1,2-dichloroethane (20 mL)に溶かしたN-α-Bis(2-ethoxy-2-oxoethyl)-L-ornithine methyl ester (2.16 g, 6.78 mmol)を滴下し、室温下で6時間撹拌した。6時間後、NaBH3CN (426 mg, 6.78 mmol)を加え室温下でさらに一晩撹拌した。氷浴下、水を加えて撹拌し溶媒を減圧留去した。混合物オイルをシリカゲルカラム (MeOH:CH2Cl2 = 5:95)で精製した。
淡黄色オイル (収量 1.226 g, 収率 55%)
〈機器データ〉
H-NMR (500 MHz, CDCl3) :δ1,28 (t, J = 7.0 Hz, 6H, 2CH3CH2), 1.27-2.19 (m, 4H, 2CH2), 3.06-3.3.14 (m, 2H, CH2NH), 3.53 (m, 1H, CH), 3.55-3.65 (m, 4H, 2CO-CH2-N), 3.74 (s, 3H, OCH3), 4.20 (q, J = 7.0 Hz, 4H, 2CH3CH2), 4.43 (d, J = 14.0 Hz, 1H, Ph-CH2-NH), 4.57 (d, J = 14.0 Hz, 1H, Ph-CH2-NH), 6.21(d, J = 9.5 Hz, 1H, CH), 7.04 (d, J = 8.5 Hz, 1H, CH), 7.38 (d, J = 8.5 Hz, 1H, CH), 7.65 (d, J = 9.5 Hz, 1H, CH)
MS (FAB) : 493 (M+1)
TLC MeOH/CH2Cl2 (1/9) Rf = 0.37
【0046】
・8-N-[4-(Bis-carboxymethylamino)-4-carboxybutyl]aminomethyl-7-hydroxycoumarin (11)
【化17】

8-N-[4-(Bis-ethoxycarbonylmethylamino)-4-ethoxycarbonyl-butyl]aminomethyl-7-hydroxycoumarin (100 mg, 0.20 mmol)を30% CH3OH/H2O (10 mL)に溶かし、氷浴下 1N-LiOH (1.22 mL, 1.22 mmol)を滴下し、室温にて撹拌、HPLCで反応を追跡した。2時間後、30% CH3COOHで反応を停止し、HPLCで分取精製した。
白色固体 (収量 49.0 mg, 収率 45%)
(精製条件)column: Phenomenex Luna 10u C18(2), flow: 3 mL/min, Detection: 325 nn, Eluent : 0.1%TFA/H2O (eluent A), 0.1%TFA/CH3CN (eluent B); linear gradient from 15% to 17% eluent B over 20 min
〈機器データ〉
H-NMR (500 MHz, CD3OD) :δ1.86-2.32 (m, 4H, 2CH2), 3.34-3.37 (m, 2H, CH2NH), 4.07-4.11 (m, 1H, CH), 3.96-4.04 (m, 4H, 2CO-CH2-N), 4.83 (d, J = 14.3 Hz, 1H, Ph-CH2-NH), 4.96 (d, J = 14.3 Hz, 1H, Ph-CH2-NH), 6.26 (d, J = 9.5 Hz, 1H, CH), 6.91 (d, J = 8.6 Hz, 1H, CH), 7.51 (d, J = 8.6 Hz, 1H, CH), 7.90 (d, J = 9.5 Hz, 1H, CH)
【0047】
NTAC-2合成
・N-α-tert-Butoxycarbonyl-L-glutamic acid γ-benzyl ester α-methyl ester (12)
【化18】

N-α-tert-Butoxycarbonyl-L-glutamic acid γ-benzyl ester (12.0 g, 35.5 mmol)をdist. DMF (120 mL)に溶かし、300 mLナスに入れた。粉末にした炭酸カリウム (7.36 g, 53.3 mmol)を加えた。氷浴下、ヨウ化メチル (4.4 mL, 71.0 mmol)を30秒かけて少しずつ加えた。0 ℃で3時間撹拌し、水 (50 mL)を加え反応を停止した。AcOEt (60 mL×4回)で抽出し、sat. NaHCO3 (6 mL×3回)で洗浄、Brine(60 mL×3回)で洗浄後、無水Na2SO4で脱水した。シリカゲルカラム (AcOEt)で原点のみ除去後、減圧留去した。
無色のオイル(収量 12.5 g, 収率 quant.)
〈機器データ〉
H-NMR (400 MHz, CDCl3) :δ1.43 (s, 9H, Boc), 1.94-2.03 (m, 2H, CH2), 2.19-2.49 (m, 2H, CH2), 3.71 (s, 3H, CH3), 4.34-4.35 (m, 1H, CO-CH-NH), 5.11 (s, 2H, CH2Ph), 5.25 (s, 1H, NH),7.30-7.38 (m, 5H, Ph)
MS (FAB) : 352 (M+1)
TLC AcOEt/n-Hexane (2/3) Rf = 0.57
【0048】
・N-α-tert-Butoxycarbonyl-L-glutamic acid α-methyl ester (13)
【化19】

500 mLの2口ナスにN-α-tert-Butoxycarbonyl-L-glutamic acid γ-benzyl ester α-methyl ester (12.5 g, 35.5 mmol)を入れ、dist. MeOH (120 mL)に溶かし、10% Pd/C (1.00 g)を入れ、水素雰囲気下一晩激しく撹拌した。Pd/Cを濾過後、濾液を減圧留去した。
白色固体 (収量9.28 g, 収率 quant.)
〈機器データ〉
H-NMR (400 MHz, CD3OD) :δ1.49 (s, 9H, Boc), 2.10-2.43 (m, 4H, 2CH2), 3.71 (s, 3H, CH3), 4.96-4.99 (m, 1H, CO-CH-NH)
MS (FAB) : 262 (M+1), 284 (M+Na)
【0049】
・Methyl (2S)-2-N-tert-butyloxycarbonyl-4-N-benzyloxycarbonyl-2,4-diaminobutanoate (14)
【化20】

N-α-tert-Butoxycarbonyl-L-glutamic acid α-methyl ester (9.73 g, 35.5 mmol), DPPA (15.3 mL, 71.0 mmol), Et3N (9.9 mL, 71.04 mmol)をdist. benzene (50 mL)にとかし、benzylalchol (7.35 mL, 71.0 mmol)を加え100mL2口ナスに入れ、Ar雰囲気下15時間加熱還流した。溶媒を留去後、シリカゲルカラム (AcOEt:n-Hexane = 1:4)で精製した。
淡黄色オイル (収量 7.08 g, 収率 54%)
〈機器データ〉
H-NMR (400 MHz, CDCl3) :δ1.43 (s, 9H, Boc), 1.67-1.72 (m, 1H, CH2), 2.04-2.16 (m, 1H, CH2), 3.06-3.07 (m, 1H, CH2), 3.46-3.48 (m, 1H, CH2), 3.70 (s, 3H, CH3), 4.37 (m, 1H, CO-CH-NH), 5.06-5.13 (m, 2H, CH2Ph), 5.42 (br s, 1H, NH), 5.56 (br s, 1H, NH), 7.17-7.36 (m, 5H, Ph),
MS (FAB) : 367 (M+1)
TLC AcOEt/n-Hexane (2/3) Rf = 0.32
【0050】
・Methyl (2S)-4-N-benzyloxycarbonyl-2,4-diaminobutanoate (15)
【化21】

Methyl (2S)-2-N-tert-butyloxycarbonyl-4-N-benzyloxycarbonyl-2,4-diaminobutanoate (7.08 g, 19.3 mmol)をdist. CH2Cl2 (30 mL)に溶かし、-20℃に冷却下、TFA(20 mL)を滴下した。1時間室温で撹拌後、溶媒を留去した。氷冷下、sat. NaHCO3 (300 mL)を加え、CH2Cl2 (100 mL×3回)で抽出し、無水MgSO4で脱水後、溶媒を留去した。
淡黄色オイル(収量 3.97 g, 収率 77%)
〈機器データ〉
H-NMR (400 MHz, CDCl3) :δ1.65-1.72 (m, 1H, CH2), 1.97-2.02 (m, 1H, CH2), 3.28-3.34 (m, 1H, CH2), 3.44-3.52(m, 2H, CH2, CH), 3.71 (s, 3H, CH3), 5.10 (s, 2H, CH2Ph), 5.52 (br s, 1H, NH), 7.30-7.37 (m, 5H, Ph)
MS (FAB) : 267 (M+1)
【0051】
・Methyl (2S)-4-N-benzyloxycarbonyl-2-N-Bis(2-ethoxy-2-oxoethyl)-2,4-diaminobutanoate (16)
【化22】

Methyl (2S)-4-N-benzyloxycarbonyl-2,4-diaminobutanoate (3.97 g, 14.9 mmol)を100 mLの2頚ナスに入れ dist. CH3CN (60 mL)に溶かし、Ethyl bromoacetate (16.5 mL, 0.15 mol)、炭酸カリウム (20.6 g, 0.15 mol)を加え、20時間加熱還流した。反応液を吸引濾過後、ろ液を減圧留去した。混合物オイルをフラッシュシリカゲルカラム (EtOAc:n-Hexane = 1:4)で精製した。
淡黄色オイル (収量 3.63 g, 収率 56 %)
〈機器データ〉
H-NMR (400 MHz, DMSO) :δ1.17 (t, 6H, J=7.1 Hz, 2CH3CH2), 1.68-1.74 (m, 4H, 2CH2), 2.48-2.50 (m, 2H, CH2-N), 3.48 (m, 1H, CH), 3.56 (s, 3H, OCH3), 3.59 (s, 4H, 2CO-CH2-N), 4.05 (q, 4H, J=7.1 Hz, 2CH3CH2), 5.01 (s, 2H, Ph-CH2-O), 7.01 (br s, 1H, CONH), 7.31-7.35 (m, 5H, Ph)
MS (FAB) : 439(M+1)
TLC AcOEt/n-Hexane (2/3) Rf = 0.48
【0052】
・Methyl (2S) 2-N-Bis(2-ethoxy-2-oxoethyl)-2,4-diaminobutnoate (17)
【化23】

Methyl (2S)-4-N-benzyloxycarbonyl-2-N-Bis (2-ethoxy-2-oxoethyl)-2,4?diaminobutanoate (1.33 g, 3.04 mmol)を 100 mLの2頚ナスに入れdist. MeOH (30 mL)に溶かし、10% Pd/C (150 mg)を加え、酢酸2滴滴下後、H2雰囲気下一晩激しく撹拌した。Pd/Cを濾去後、ろ液を減圧留去した。
淡黄色オイル (収量 0.849 g, 収率 92%)
〈機器データ〉
H-NMR (400 MHz, CDCl3) :δ1.28 (t, 6H, J=7.0 Hz, 2CH3CH2), 2.09-2.44 (m, 2H, CH2), 3.25-3.43 (m, 2H, CH2), 3.49-3.59 (m, 1H, CH), 3.68-3.79 (m, 7H, 2CH2, OCH3), 4.21 (q d, 4H, J=7.0 Hz, J=2.4 Hz, 2CH3CH2)
MS (FAB) : 305 (M+1)
【0053】
・N-[3-(Bis-ethoxycarbonylmethylamino)-3-ethoxycarbonylpropyl]-7-hydroxy-8-aminomethyl coumarin (18)
【化24】

8-Formyl-7-hydroxycoumarin (100 mg, 0.53 mmol)と酢酸 (60.2μL, 1.05 mmol), dist. THF (3.0 mL), 活性化したモレキュラーシーブ4オングストローム(約10粒)を100 mLのナスに入れ、dist. THF (2.0 mL)に溶かしたMethyl (2S)-2-N-Bis(2-ethoxy-2-oxoethyl)-2,4-diaminobutyrate (2.16 g, 6.78 mmol)を滴下し、Ar雰囲気下、一晩撹拌した。NaBH3CN (426 mg, 6.78 mmol)を加えさらに4時間撹拌した。モレキュラーシーブ濾去後、氷浴下、水を加え反応を停止した。溶媒を減圧留去後、混合物オイルをフラッシュシリカゲルカラム (MeOH:CH2Cl2 = 5:95)で精製した。
淡黄色オイル (収量 79.7 mg, 収率 37%)
〈機器データ〉
H-NMR (500 MHz, CDCl3) :δ1.23-1.27 (m, 6H, 2CH3CH2), 2.05-2.41 (m, 2H, CH2), 3.34-3.38 (m, 2H, CH2NH), 3.50 (m, 1H, CH), 3.58-3.74 (m, 7H, 2CO-CH2-N, OCH3), 4.13-4.19 (m, 4H, 2CH3CH2), 4.38 (d, J = 13.2 Hz, 1H, Ph-CH2-NH), 4.63 (d, J = 13.2 Hz, 1H, Ph-CH2-NH), 6.20 (d, J = 9.5 Hz, 1H, CH), 7.03 (d, J = 8.0 Hz, 1H, CH), 7.39 (d, J = 8.0 Hz, 1H, CH), 7.66 (d, J = 9.6 Hz, 1H, CH)
MS (FAB) : 479 (M+1)
TLC MeOH/CH2Cl2 (1/9) Rf = 0.23
【0054】
・8-N-[3-(Bis-carboxymethylamino)-3-carboxypropyl]aminomethyl-7-hydroxycoumarin (19)
【化25】

8-N-[3-(Bis-ethoxycarbonylmethylamino)-3-ethoxycarbonylpropyl]aminomethyl-7-hydroxycoumarin (113 mg, 0.23 mmol)を30% CH3OH/H2O (10 mL)に溶かし、氷浴下 1N-LiOH (1.43 mL, 1.43 mmol)滴下し、室温にて撹拌、HPLCで反応を追跡した。2時間後、30% CH3COOHで反応を停止し、HPLCで分取精製した。
白色固体 (収量 32.6 mg, 収率 26%)
(精製条件)column: Inertsil ODS-3, flow: 3 mL/min, Detection: 325 nn, Eluent : 0.1%TFA/H2O (eluent A), 0.1%TFA/CH3CN (eluent B); linear gradient from 18% to 20% eluent B over 20 min
〈機器データ〉
H-NMR (400 MHz, DMSO) :δ1.71-2.13 (m, 2H, CH2), 3.02-3.16 (m, 2H, CH2NH), 3.51 (s, 4H, 2CO-CH2-N), 3.76-3.80 (m, 1H, CH), 4.53-4.57 (m, 2H, Ph-CH2-NH), 6.23 (d, J = 9.6 Hz, 1H, CH), 6.87 (d, J = 8.4 Hz, 1H, CH), 7.52 (d, J = 8.4 Hz, 1H, CH), 7.95 (d, J = 9.6 Hz, 1H, CH), 10.78 (s, 1H, OH)
【0055】
クマリン合成
・7-Hydroxy-8-methylcoumarin (20)
【化26】

dist. EtOAc (50 mL)を300 mLの3口ナスに入れ、氷浴上でNaOMe (10.9 g, 0.22 mol)を溶かした。氷浴下、dist.HCOOMe (7.48 mL, 0.121 mol)を15分かけて滴下し、室温に戻して14時間撹拌した。14時間後、Ar置換して2-Methylresorcinol (5.00 g, 40.3 mmol) in dist. EtOAc (15 mL)を加え、60℃で6時間撹拌した。3N-HClで酸性にして生じた沈殿を吸引濾取しデシケーターで乾燥させた。
淡黄色固体 (収量 3.17 g, 収率 45%)
〈機器データ〉
H-NMR (400 MHz, DMSO): δ 2.10 (s, 3H, CH3), 5.97 (d, J = 9.2 Hz, 1H, 3位), 6.70 (d, J = 8.6 Hz, 1H, 6位), 7.23 (d, J = 8.6 Hz, 1H, 5位), 7.80 (d, J = 9.2 Hz, 1H, 4位),
MS (FAB) : 176 (M+), 177 (M+1)
TLC AcOEt/n-Hexane (2/3) Rf = 0.32
【0056】
・7-Hydroxy-8-methylcoumarin methyl ester (21)
【化27】

7-Hydroxy-8-methylcoumarin (3.17 g, 18.0 mmol)を20mLナスに入れ、無水酢酸(10.0 mL, 106 mmol)を加え、30分間還流した。50℃くらいまで冷やして激しく撹拌している氷水 (約50 mL)に注ぎ、生じた白い沈殿を吸引濾取し、氷水で洗浄した。CH2Cl2 (100 mL)に溶かして、Brineで (30 mL×3回)洗浄後、MgSO4脱水後、減圧留去した。
茶色固体 (収量 3.33 g, 収率 85%)
〈機器データ〉
H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 2.29 (s, 3H, CH3), 2.37 (s, 3H, OCOCH3), 6.40 (d, J = 9.4 Hz, 1H, 3位), 7.01 (d, J = 8.4 Hz, 1H, 6位), 7.35 (d, J = 8.4 Hz, 1H, 5位), 7.69 (d, J = 9.4 Hz, 1H, 4位),
MS (FAB) : 219 (M+1)
TLC AcOEt/n-Hexane (1/2) Rf = 0.33
【0057】
・8-Bromomethyl-7-hydroxycoumarin methyl ester (22)
【化28】

7-hydroxy-8-methylcoumarin methyl ester (3.02 g, 13.8 mmol), NBS (2.70 g, 15.2 mmol), BPO (0.334 g, 1.38 mmol), CaCO3 (0.276 g, 2.76 mmol)を300 mLの4口ナスに入れ、四塩化炭素 (100 mL)を加え、ハロゲンランプ照射下、8時間還流した。沈殿を吸引濾去し加熱した四塩化炭素で洗浄した。濾液を減圧留去し、フラッシュシリカゲルカラム (EtOAc:n-Hexane = 1:3)で精製した。
淡黄色固体 (収量 1.50 g, 収率 37%)
さらにこの得られた固体をEtOHで再結晶した。
無色針状晶 (収量 81.8 mg, 収率 20%)
〈機器データ〉
H-NMR (400 MHz, CDCl3) :δ2.43 (s, 3H, OCOCH3), 4.97 (s, 2H, CH2), 6.44 (d, J = 9.6 Hz, 1H, 3位), 7.13 (d, J = 8.4 Hz, 1H, 6位), 7.38 (d, J = 8.4 Hz, 1H, 5位), 7.70 (d, J = 9.6 Hz, 1H, 4位)
MS (FAB): 298 (M+1), 300 (M+3)
TLC AcOEt/n-Hexane (1/2) Rf = 0.27
【0058】
・7-Hydroxycoumarin-8-carbaldehyde (23)
【化29】

7-Hydroxycoumarin (324 mg, 2.0 mmol)、 (HCHO)n (448 mg, 14 mmol)、塩化マグネシウム (571 mg, 3.0 mmol)、Et3N (1.12 mL, 8.0 mmol)、dist. CH3CN(10 mL)をナスに入れ、10時間加熱還流した。1N-HClで反応を停止し減圧留去した。CH2Cl2 (10 mL×3回)で抽出し、Brine (10 mL×3回)で洗浄、無水MgSO4で脱水後、溶媒を留去した。フラッシュシリカゲルカラム (EtOAc:n-Hexane = 1:3)で精製した。
白色固体 (収量 50.5 mg, 収率 13%)
〈機器データ〉
H-NMR (400 MHz, CDCl3) :δ6.34 (d, J = 9.6 Hz, 1H, 3位), 6.90 (d, J = 8.8 Hz, 1H, 6位), 7.61 (d, J = 8.8 Hz, 1H, 5位), 7.67 (d, J = 9.6 Hz, 1H, 4位), 10.61 (s, 1H, CHO), 12.24 (s, 1H, OH)
MS (FAB) : 191 (M+1)
MS (EI) : 190 (M+)
TLC AcOEt/n-Hexane (2/3) Rf = 0.37
【0059】
ペプチド合成
His残基数の異なる3種類のペプチドを一般的なFmoc固相合成法により合成した。(詳細は本文参照)
H-Arg2His6-NH2 (H-RRHHHHHH-NH2)
Ac-Arg2His6-NH2 (Ac-RRHHHHHH-NH2)
Ac-Arg3His12-NH2 (Ac-RRRHHHHHHHHHHHH-NH2)
H-His6-NH2 (H-HHHHHH-NH2)
Ac-His6-NH2 (Ac-HHHHHH-NH2)
固相:Rink Amide Resin (load 0.59 mmol/g) (His6個のペプチド合成に使用)
TentaG S RAM (load 0.26 mmol/g) (His12個のペプチド合成に使用)
Fmoc-アミノ酸:Fmoc-His(Mtt)-OH, Fmoc-Arg(Pbf)-OH
カップリング試薬:HBTU, HOBT
また、H-Arg2His6-NH2, H-His6-NH2, Ac-His6-NH2については、Applied Biosystemsの自動合成機ABI431Aを使用した。全てのペプチドは、固相からの脱離後、エーテル沈殿した後、HPLCにて精製を行ない、MALDIで目的物の生成を確認した。
【0060】
蛍光強度測定
・蛍光色素の金属応答検討
測定方法:50 mM Tris buffer(pH 8.0)中で各種NTAC及びCalcein blue 5μMに対して金属イオンを1μM, 5μM, 10μM, 50μM, 500μMとなるように添加した。(全量200μL)
測定条件:Ex.355 nm, Em.460 nm, 露光時間1.0 s
stock solution
金属イオン水溶液 : 10μM, 50μM, 100μM, 500μM, 5 mM
NTAC水溶液:50μM
Calcein blue水溶液 : 50μM
Tris-buffer : 500 mM(pH = 8.0に調製)
金属種 (21種) : MgCl2, CaCl2, BaCl2・2H2O, LiCl, RbCl, KCl, NaCl, NiCl2・H2O,
CoCl2, ZnCl2, CuSO4, MnCl2・4H2O, CdCl2・5/2H2O, HgCl2, Pb(NO3)2,
Cr(OAc)3, CeCl3, InCl3・4H2O, FeCl3・6H2O, SrCl2・6H2O, Ga2(SO4)3
【0061】
・金属-蛍光色素錯体のペプチド添加時の蛍光応答
(ペプチド添加)
測定方法:50 mM Tris buffer(pH 8.0)中で各種NTAC 5μMに対して金属イオンを5μM, 10μM, 50μMにし、ペプチドを2μM, 5μM, 10μM, 50μM, 500μM, 1mMになるように添加した。 (全量100μL)
測定条件:Ex.355 nm, Em.460 nm, 露光時間1.0 s
stock solution
ペプチド水溶液 : 20μM, 50μM, 100μM, 500μM, 5 mM, 10 mM
金属イオン水溶液 : 50μM, 100μM, 500μM
NTAC水溶液:50μM
Tris-buffer : 500 mM(pH = 8.0に調製)
金属種 (3種) : NiCl2・H2O, CoCl2, CuSO4
ペプチド : H-Arg2His6-NH2 (H-RRHHHHHH-NH2)
Ac-Arg2His6-NH2 (Ac-RRHHHHHH-NH2)
Ac-Arg3His12-NH2 (Ac-RRRHHHHHHHHHHHH-NH2)
H-His6-NH2 (H-HHHHHH-NH2)
Ac-His6-NH2 (Ac-HHHHHH-NH2)
(BSA添加)
測定方法:50 mM Tris buffer(pH 8.0)中で各種NTAC 5μMに対して金属イオンを5μM, 10μM, 50μMにし、BSAを2μM, 5μM, 10μM, 50μM, 500μM, 1mMになるように添加した。 (全量100μL)
測定条件:Ex.355 nm, Em.460 nm, 露光時間1.0 s
stock solution
BSA水溶液 : 4μM, 10μM, 20μM, 100μM, 1mM, 2mM
金属イオン水溶液 : 50μM, 100μM, 500μM
NTAC水溶液:50μM
Tris-buffer : 500 mM(pH = 8.0に調製)
金属種 (3種) : NiCl2・H2O, CoCl2, CuSO4
(Angiotensin I添加)
測定方法:50 mM Tris buffer(pH 8.0)中で各種NTAC 5μMに対して金属イオンを5μM, 10μMにし、Angiotensin Iを2μM, 5μM, 10μM, 50μM, 100μM, 500μMになるように添加した。 (全量100μL)
測定条件:Ex.355 nm, Em.460 nm, 露光時間1.0 s
stock solution
Angiotensin I水溶液 : 20μM, 50μM, 100μM, 500μM, 1 mM, 5 mM
金属イオン水溶液 : 50μM, 100μM
NTAC水溶液: 50μM
Tris-buffer : 500 mM(pH = 8.0に調製)
金属種 (3種) : NiCl2・H2O, CoCl2, CuSO4
【0062】
・蛍光色素と金属イオンの錯形成状態の検討
・NTAC-3について
(モル比法によるニッケル錯体の組成推定)
測定方法:50 mM Tris buffer(pH = 8.0)中でNTAC-3 5.0μMに対してNiSO4・6H2Oを1μM, 2μM, 4μM, 5μM, 6μM, 7μM, 8μM, 9μM, 10μM, 11μM, 12μM, 15μM, 20μM, 25μM, 30μM,となるように添加した。
測定条件:Ex. 365 nm, Em. 455 nm, 温度 25 ℃, slit width 5/5 nm
ホトマル電圧 700 V
stock solution
NTAC-3水溶液?: 1.0mM
金属イオン水溶液 : 3.0 mM (NiSO4・6H2O)
Tris-buffer : 50 mM(pH = 8.0に調製)
(連続変化法によるニッケル錯体の組成推定)
測定方法:50 mM Tris buffer(pH = 8.0)中でNTAC-3とNiSO4・6H2Oの濃度の和が10μMとなるように混合した。具体的にはNTAC/Ni2+のモル濃度を次の通りに変化させた。(10μM/0μM, 9/1, 8/2, 7/3, 6/4, 5/5, 4/6, 3/7, 2/8, 1/9, 0/10)
測定条件:Ex. 365 nm, Em. 455 nm, 温度 25 ℃, slit width 5/5 nm
ホトマル電圧 700 V
stock solution
NTAC-3水溶液: 1.0mM
金属イオン水溶液 : 3.0 mM (NiSO4・6H2O)
Tris-buffer : 50 mM(pH = 8.0に調製)
【0063】
・NTAC-4について
(モル比法によるニッケル錯体の組成推定)
測定方法:50 mM Tris buffer(pH = 8.0)中でNTAC-4 5.0μMに対してNiSO4・6H2Oを1μM, 2μM, 3μM, 5μM, 7μM, 10μM, 15μM, 20μM, 30μM,となるように添加した。
測定条件:Ex. 365 nm, Em. 450 nm, 温度 25 ℃, slit width 5/5 nm
ホトマル電圧 700 V
stock solution
NTAC-4水溶液:1.0mM
金属イオン水溶液 : 3.0 mM (NiSO4・6H2O)
Tris-buffer : 50 mM(pH = 8.0に調製)
(連続変化法によるニッケル錯体の組成推定)
測定方法:50 mM Tris buffer(pH = 8.0)中でNTAC-4とNiSO4・6H2Oの濃度の和が10μMとなるように混合した。具体的にはNTAC/Ni2+のモル濃度を次の通りに変化させた。(10μM/0μM, 9/1, 8/2, 7/3, 6/4, 5/5, 4/6, 3/7, 2/8, 1/9, 0/10)
測定条件:Ex. 365 nm, Em. 455 nm, 温度 25 ℃, slit width 5/5 nm
ホトマル電圧 700 V
stock solution
NTAC-4水溶液: 1.0mM
金属イオン水溶液 : 3.0 mM (NiSO4・6H2O)
Tris-buffer : 50 mM(pH = 8.0に調製)
【0064】
・結合定数の算出
モル比法の実験結果からBensesi-Hildebrand式に従い結合定数を算出した。
金属をM、配位子(蛍光色素)をL、結合定数をKMLとすると、1対1の錯形成の場合、結合定数は次のように示される。ただしFmaxを配位子のみの蛍光強度、Fminを最大蛍光減弱時の蛍光強度とし、初濃度[M]0, [L]0とする。
【化30】

さらに、平衡状態を示す3つの式は以下の通り。
【化31】

(kL, kMLは、蛍光量子収率などを含む比例定数)
これらの式を解くと下の式のようになる。
【化32】

[L]0一定条件下、[M]0を変化させ、F, Fmax, Fminを測定し、Figure s1のようにプロットの傾きから、結合定数(KML)を求めた(図31)。
【0065】
参考文献
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29) Porath, J.; Carlsson, J.; Olsson, I.; Belfrage, G. Nature, 1975, 258, 598-599
30) Sulkowski, E. Trends Biotechnol., 1985, 3, 1-7
【0066】
略語
NTA : Nitrilotriacetic acid、IMAC : Immobilized Metal Chelate Chromatography、DPPA : Diphenyl phosphorazidate、Ac2O : Actetic anhydride、TFA : Trifluoroacetic acid、NBS : N-Bromosuccinimide、BPO : Benzoyl peroxide、DMF : N,N-Dimethylformamide、THF : Tetrahydrofran、AcOH : Acetic acid、Fmoc : 9-Fluorenylmethoxycarbonyl、Trt : Trityl、Mtt : Methyltrityl、HBTU : O-(Benzotriazole-1-yl)-N,N,N’,N’-tetramethyluronium hexafluorophosphate、HOBT : N-Hydroxybenzotriazole、DIPEA : Diisopropylethylamine、DCM : Dichlromethane、TIPS : Triisopropylsilane、TEA : Triethylamine、BSA : Bovine serum albumin
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によればペプチドや蛋白質の標識に利用できる蛍光色素が提供される。本発明の蛍光色素は、生細胞内で目的蛋白質の分布や動態を可視化する手段として有用である。一方、本発明の蛍光色素で標識化すれば目的蛋白質を選別することができる。従って、発明の蛍光色素を蛋白質の調製ないし精製の目的で利用することも可能である。例えば、組換え蛋白質の産生を確認することや組換え蛋白質を精製することに本発明の蛍光色素の利用が図られる。さらに、本発明の蛍光色素は、蛋白質の特定部位を標識化することへの利用が期待される。従って本発明は、蛋白質の立体構造解析(例えばフォールディング状態の検出や分析、特定の立体構造の検出等)の手段としても有用といえる。
【0068】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】蛍光色素デザイン。
【図2】蛍光色素のデザインと蛍光発現原理。
【図3】設計した蛍光色素。
【図4】NTA-2アミンの合成(参考文献15〜17)。
【図5】NTA-3アミン及びNTA-4アミンの合成(参考文献18)。
【図6】8-Bromomethyl-7-hydrocoumarin methyl esterの合成スキーム(参考文献19)。
【図7】NTAアミンと8-Bromomethyl-7-hydrocoumarin methyl esterの反応スキーム。
【図8】NTAアミンと8-Bromomethyl-7-hydrocoumarin methyl esterの反応条件の検討結果。
【図9】NTAアミンと8-Bromomethyl-7-hydrocoumarin methyl esterの反応スキーム。
【図10】7-Hydroxycoumarinのホルミル化。
【図11】7-Hydroxycoumarin-8-carbaldehydeの合成条件の検討結果。
【図12】NTAアミンと7-Hydroxycoumarin-8-carbaldehydeのカップリング反応。
【図13】エステル体の加水分解によるニトリロ三酢酸体の生成。
【図14】合成したペプチドの構造式。
【図15】合成したペプチドの配列。
【図16】一般的なFmoc固相合成法の手順。
【図17】Hisモノマーの構造式。
【図18】NTAC-2 (5μM)に金属イオン添加時の蛍光強度変化。A)遷移金属イオン、A’) Aの拡大図、B)アルカリ金属及びアルカリ土類金属イオン、C)その他の金属イオン。50 mM Tris buffer(pH = 8.0)。
【図19】NTAC-3 (5μM)に金属イオン添加時の蛍光強度変化。A)遷移金属イオン、A’) Aの拡大図、B)アルカリ金属及びアルカリ土類金属イオン、C)その他の金属イオン。50 mM Tris buffer(pH = 8.0)。
【図20】NTAC-4 (5μM)に金属イオン添加時の蛍光強度変化。A)遷移金属イオン、A’) Aの拡大図、B)アルカリ金属及びアルカリ土類金属イオン、C)その他の金属イオン。50 mM Tris buffer(pH = 8.0)。
【図21】Calcein blue (5μM)に金属イオン添加時の蛍光強度変化。A)遷移金属イオン、A’) Aの拡大図、B)アルカリ金属及びアルカリ土類金属イオン、C)その他の金属イオン。50 mM Tris buffer(pH = 8.0)。
【図22】Ac-Arg2His6-NH2添加時のNTAC-2の比蛍光強度変化。A)金属イオン(5μM)+peptide、B)金属イオン(10μM) +peptide、C)金属イオン(50μM) +peptide、全てNTAC-2 (5μM),50 mM Tris-Buffer(pH = 8.0)。
【図23】H-Arg2His6-NH2添加時のNTAC-2の比蛍光強度変化。A)金属イオン(5μM)+peptide、B)金属イオン(10μM) +peptide、C)金属イオン(50μM) +peptide、全てNTAC-2 (5μM),50 mM Tris-Buffer(pH = 8.0)。
【図24】Ac-Arg3His12-NH2添加時のNTAC-2の比蛍光強度変化。A)金属イオン(5μM)+peptide、B)金属イオン(10μM) +peptide、C)金属イオン(50μM) +peptide、全てNTAC-2 (5μM),50 mM Tris-Buffer(pH = 8.0)。
【図25】Ac-His6-NH2添加時のNTAC-2の比蛍光強度変化。A)金属イオン(5μM)+peptide、B)金属イオン(10μM) +peptide、C)金属イオン(50μM) +peptide、全てNTAC-2 (5μM),50 mM Tris-Buffer(pH = 8.0)。
【図26】H-His6-NH2添加時のNTAC-2の比蛍光強度変化。A)金属イオン(5μM)+peptide、B)金属イオン(10μM) +peptide、C)金属イオン(50μM) +peptide、全てNTAC-2 (5μM),50 mM Tris-Buffer(pH = 8.0)。
【図27】H-His6-NH2添加時のNTAC-3の比蛍光強度変化。A)金属イオン(5μM)+peptide、B)金属イオン(10μM) +peptide、C)金属イオン(50μM) +peptide、全てNTAC-3 (5μM),50 mM Tris-Buffer(pH = 8.0)。
【図28】BSA添加時のNTAC-2の比蛍光強度変化。A)金属イオン(5μM)+peptide、B)金属イオン(10μM) +peptide、C)金属イオン(50μM) +peptide、全てNTAC-2 (5μM),50 mM Tris-Buffer(pH = 8.0)。
【図29】Angiotensin添加時のNTAC-2の比蛍光強度変化。A)金属イオン(5μM) + peptide, B)金属イオン(10μM) + peptide。全てNTAC-2 (5μM), 50 mM Tris-Buffer(pH = 8.0)。
【図30】金属錯体形成様式の検討。A)NTAC-3モル比法、B)NTAC-3連続変化法、C)NTAC-4モル比法、D)NTAC-4連続変化法。
【図31】A)NTAC-3, B)NTAC-4の結合定数算出。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属錯体を形成し、金属配位性ペプチドに対する特異的結合能を発揮する配位子と、
リンカーを介して前記配位子に結合した蛍光団であって、前記配位子が形成する金属錯体における中心金属に対して配位能を有する蛍光団と、
を含む蛍光色素。
【請求項2】
前記配位子が、金属配位性官能基を複数有することを特徴とする、請求項1に記載の蛍光色素。
【請求項3】
前記配位子が、ニトリロ三酢酸、イミノニ酢酸、トリス(カルボキシメチル)エチレンジアミン、及びジエチレントリアミンテトラ酢酸からなる群より選択されるいずれかの配位子であることを特徴とする、請求項2に記載の蛍光色素。
【請求項4】
前記金属配位性ペプチドが、6分子のヒスチジンからなるHis tag、又はHis tagを構成するヒスチジンの一部を金属配位性アミノ酸で置換してなるペプチドであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光色素。
【請求項5】
前記蛍光団が水酸基、カルボキシ基又はアミノ基を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光色素。
【請求項6】
前記蛍光団が、ヒドロキシクマリン誘導体、アミノクマリン誘導体、フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体、BODIPY誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフラン誘導体及びポルフィリン誘導体からなる群より選択されるいずれかの蛍光団であることを特徴とする、請求項5に記載の蛍光色素。
【請求項7】
前記リンカーが、金属配位性原子又は官能基を含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の蛍光色素。
【請求項8】
前記リンカーが、炭素数3〜5のアルキルアミンであることを特徴とする請求項7に記載の蛍光色素。
【請求項9】
以下のいずれかの化学式で表される化合物からなることを特徴とする、請求項1に記載の蛍光色素。
【化1】

【化2】

【化3】

【請求項10】
請求項1〜9のいずれかの蛍光色素を主成分とする、ペプチド又は蛋白質標識用試薬。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかの蛍光色素によって標識されたペプチド又は蛋白質。
【請求項12】
前記配位子が金属錯体を形成する条件下、請求項1〜9のいずれかの蛍光色素と、金属配位性ペプチド、又は金属配位性ペプチドを一部として含む蛋白質と、を接触させるステップを含む、ペプチド又は蛋白質の標識方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図30】
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【図31】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2007−231124(P2007−231124A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53956(P2006−53956)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(506218664)公立大学法人名古屋市立大学 (48)
【Fターム(参考)】