説明

ペプチド組成物,及びその使用

組織を再生させ、創傷を修復するための組成物が、他の適用のなかでも特に記載される。

【発明の詳細な説明】
【発明の説明】
【0001】
この出願は、2008年1月22日に出願された米国仮出願弟61/022,747号の出願日の優先権を主張する出願であり、その全体の内容が本明細書中に参照によって、その全体において援用される。
【0002】
[発明の背景]
細胞外基質 (ECM)は、生物のシステム内の細胞を囲み、支持する複雑な構造上の実体である。哺乳類の組織において、ECMは、腱, 軟骨, 骨 または皮膚の真皮などの結合組織で最も一般的に見つけられる。
【0003】
ECMは、組織の発生(generation)および創傷の修復(repair)をガイドする。また、幾つかの医学的なコンディションは、不完全に作られたECM(例えば、壊血病); 絶えずデグラデーションされるECM(例えば、歯周病, 非治癒の潰瘍); または劣化しているECMまたは減少したECM産生(例えば、老齢の組織)に起因する。ECMが重要であることから、組織の発生, 創傷の修復, 疾患および加齢の治療, および美容上の使用における使用のためEMCを供給する療法の開発が促されている。
【0004】
[発明の概要]
本発明は、細胞(例えば、線維芽細胞)における細胞外基質 (ECM) タンパク質の産生を刺激する能力のあるペプチドを特徴づけ、これらは組織および皮膚のための発生因子(generating agent)として利用できる、同様に、美容用に利用できる。
幾つかの側面において、本発明の開示は、アミノ酸配列 YAIGYSC (配列番号6)を含む単離されたペプチドを提供する。幾つかの態様において、前記ペプチドは、ECM タンパク質(例えば、フィブロネクチン, テネイシン, コラーゲン, プロコラーゲン,又はその組み合わせ)の産生を刺激する。
幾つかの側面において、本発明の開示は、配列番号6と実質的に相同または同一の単離されたペプチドを提供する。
幾つかの側面において、本発明の開示は、配列番号1または配列番号3と実質的に相同な単離されたペプチドを提供する。
別の側面において、本発明の開示は、本発明で記載されるペプチドを含む美容用組成物(例えば、一または二以上の美容用に許容される賦形剤と組み合わせた)を提供する。
【0005】
別の側面において、本発明の開示は、本発明で記載されるペプチドを含む薬学的組成物(例えば、一または二以上の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせた)を提供する。
【0006】
本発明はさらに以下に記載されるが、本発明がアミノ酸配列 YAIGYSC (配列番号6)と少なくとも 70% 同一(例えば、少なくとも 75%, 80%, 85%, 90%, 95%または100% 同一)であるアミノ酸配列からなる又は該配列を含む単離されたペプチドを包含することを我々は注意する。前記ペプチドは、線維芽細胞における一または二以上の細胞外基質タンパク質の産生を刺激できる(即ち、それらがインビボまたは組織培養における産生を刺激する能力がある)。単離されたペプチドは、アミノ酸配列 YAIGYSCKDYK (配列番号 1)と少なくとも 70% 同一(例えば、少なくとも 75%, 80%, 85%, 90%, 95%または100% 同一)であるアミノ酸配列からなりえる又は該配列を含みえる。また、係るペプチドは、細胞(例えば、線維芽細胞内)における一または二以上のECM タンパク質の産生を刺激できる。単離されたペプチドは、アミノ酸配列 APLWILSTDYDNYAIGYSC (配列番号 3)と少なくとも 70% 同一(例えば、少なくとも 75%, 80%, 85%, 90%, 95%または100% 同一)であるアミノ酸配列からなりえる又は該配列を含みえる。また、係るペプチドは、細胞(例えば、線維芽細胞内)における一または二以上のECM タンパク質の産生を刺激できる。単離されたペプチドは、アミノ酸配列 APLWILSTDYDNYAIGYSCKDYK (配列番号 5)と少なくとも 70% 同一(例えば、少なくとも 75%, 80%, 85%, 90%, 95%または100% 同一)であるアミノ酸配列からなりえる又は該配列を含みえる。また、係るペプチドは、細胞(例えば、線維芽細胞内)における一または二以上のECM タンパク質の産生を刺激できる。
【0007】
単離されたペプチドは、参照配列(例えば、配列番号6, 配列番号1, 配列番号3,または配列番号5)から一または二以上のアミノ酸の置換, 付加,または欠失を含むことにより異なるアミノ酸配列からなりえる又は該配列を含みえる。例えば、単離されたペプチドは、配列番号6により表されるペプチドから四アミノ酸まで置換, 付加, および/または欠失することにより異なることができる。参照配列(reference sequence)と異なるペプチドは、一または二以上の ECM タンパク質の線維芽細胞における産生を刺激する能力がある。他の単離されたペプチドは、配列番号 1と六アミノ酸まで置換, 付加, および/または欠失することにより異なることができ、一または二以上の ECM タンパク質の線維芽細胞における産生を刺激する能力がある。他の単離されたペプチドは、配列番号 5と十二 アミノ酸まで置換, 付加, および/または欠失することにより異なることができ、一または二以上の細胞外基質タンパク質の線維芽細胞における産生を刺激する能力がある。
【0008】
本発明は、さらに本発明で記載されるペプチド〔例えば、YAIGYSC (配列番号6)と少なくとも 70% 同一であるアミノ酸配列からなる又は該配列を含むペプチド〕を含む薬学的組成物を包含する。前記薬学的組成物は、薬学的に許容される担体(例えば、水に基づく希釈剤)を含んでもよく、液体または軟膏の形態であってもよい。前記薬学的組成物は、さらに創傷治癒因子(wound healing agent)を含んでもよい。前記薬学的組成物は、経口, 筋肉内, 静脈内, 皮下, 局所, 肺内(pulmonary), 鼻腔内, 頬内, 直腸内, 舌下, 皮内, 腹腔内またはクモ膜下腔内(intrathecal)の使用のために製剤化されてもよい。
【0009】
本発明の方法は、本願に記載される一または二以上の薬学的組成物を被験者(例えば、ヒト患者)の細胞に投与することによる、被験者における細胞死 および/または 組織変性を減少させる方法を包含する。被験者は、疾患, 外傷,または加齢などにより生じる細胞死 および/または 組織の発生を経験していると同定されていてもよい。前記方法は、さらに創傷治癒因子を投与することを含んでもよい。
【0010】
本発明の方法は、本願に記載される一または二以上の薬学的組成物を被験者(例えば、ヒト患者)に投与することによる、被験者における創傷を治癒させる及び/又は組織を再生させる方法を包含する。前記方法は、さらに治療が必要な患者を同定する工程, 任意でさらに創傷治癒因子を投与することを含んでもよい。
前記組成物の任意は、治療上の有効量で投与されえる。
医薬の調製における本願に記載される単離されたペプチドの使用は本発明の範囲内である。医薬は、細胞死および/または組織変性を減少させるため或いは創傷の治癒および/または組織の再生のためであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】MTT (3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)で試験した細胞の生存度における四つのペプチドの影響を示している棒グラフである。
【図2】1 % FBSを補充した培地において120 時間インキュベーションした内皮細胞の生存度におけるペプチド CNF011.05Bの影響をMTTで試験して示している折れ線グラフである。
【図3】1 % FBSを補充した培地において120 時間インキュベーションした内皮細胞の生存度におけるペプチド CNF011.05Dの影響をMTTで試験して示している折れ線グラフである。
【図4】1 % FBSを補充した培地においてインキュベーションした好中球の生存度におけるペプチド CNF011.05D プラス L-NAMEの影響をフローサイトメトリーで試験して示している棒グラフである。
【図5】1 % FBSを補充した培地においてインキュベーションした初代内皮細胞の生存度におけるペプチド CNF011.05D プラス L-NAMEの影響をフローサイトメトリーで試験して示している棒グラフである。
【図6】好中球によるNO2産生におけるペプチド CNF011.05D プラス L-NAMEの影響をGriess 反応の使用で測定して示している棒グラフである。
【図7】ペプチド CNF011.05Dを0.35 μg および 5 μgでインキュベーションした際のフィブロネクチンを産生している線維芽細胞のパーセントを示している。
【図8】ペプチド CNF011.05Dを0.35 μg および 5 μgでインキュベーションした際のテネイシンを産生している線維芽細胞のパーセントを示している。
【図9】ペプチド CNF011.05Dを0.35 μg および 5 μgでインキュベーションした際のプロコラーゲンを産生している線維芽細胞のパーセントを示している。
【0012】
[発明の詳細な記述]
本発明の開示は、ECM タンパク質(特に フィブロネクチン, テネイシン, コラーゲン, および プロコラーゲン)の産生を刺激するため有用な新規のペプチドを記載する。係るペプチドを用いる方法, 係るペプチドを作出する方法, および係るペプチドを含んでいるキットおよび組成物が本出願に記載される。
前記ペプチドを使用して、細胞外基質タンパク質(特に、フィブロネクチン, テネイシン, コラーゲン, および プロコラーゲン)を産生させうる。前記ペプチドは、病気の、傷害された、又は失われた組織〔例えば、創傷, 外傷, 外科的な処置または組織のインプラント, 骨疾患, 美容上の欠陥, 軟骨疾患, 歯周部の疾患, 光または時間にともなう加齢, 循環性の障害, 糖尿病, 感染性の疾患による皮膚の創傷などが原因のもの〕を発生させるなどの様々な有用な目的のために使用しえる。前記ペプチドは、組織の疾患, 外傷,または加齢による組織変性(例えば、組織構造の欠陥または組織欠損)の予防のために使用しえる。前記ペプチドは、創傷の修復のために使用しえる。前記ペプチドは、瘢痕(scarring)を減少させる創傷の修復(例えば、非治療と比較して治癒後の瘢痕組織または高密度な線維性の結合組織の減少)のために使用しえる。また、それらをコラーゲンまたはECM 成分の機能不全が関与する異なる疾患に使用しえる。
使用の記載および本発明の態様は、例示の目的でのみ記載され、限定されることは意図されない。
【0013】
定義
「細胞外基質(Extracellular Matrix)」またはECM は、生物のシステム(living systems)内の細胞を囲み、支持する複雑な構造上の実体(entity)である。哺乳類の組織において、ECMは、腱, 軟骨, 骨 及び皮膚の真皮(dermis)などの結合組織で最も一般的に見つけられる。ECM は、それに居住する細胞により産生され、維持される。
「細胞外基質 タンパク質」またはECM タンパク質は、一または二以上のフィブロネクチン, ラミニン, ビトロネクチン, テネイシン, エンタクチン, トロンボスポンジン, エラスチン, ゼラチン, コラーゲン, フィブリリン, メロシン, アンコリン, コンドロネクチン, 連結タンパク質(link protein), 骨のシアロタンパク質(bone sialoprotein), オステオカルシン, オステオポンチン, エピネクチン, ヒアルロネクチン, ウンドゥリン(undulin), エピリグリン, およびカリニンである。それらの細胞外基質タンパク質としての特徴は当業者が決定できるので、将来発見される可能性がある現在未知の細胞外基質タンパク質をも前記用語は包含する。
「実質的に相同(Substantially Homologous)」は、BLASTアルゴリズム, (Altschul et al., JMB 215:403-410 (1990)), Smith & Watermanの相同性アルゴリズム(Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)), Needleman & Wunschの相同性アルゴリズム(JMB 48:443 (1970)), 及びPearson & Lipmanの類似性探索法(PNAS USA 85:2444 (1988))などの配列比較アルゴリズムを使用して、最大類似度に関して比較または整列させた場合に、アミノ酸配列(例えば、配列番号 1により表されるアミノ酸配列)と少なくとも 70% (例えば、70%, 75%, 80%, 82%, 85%, 86%, 87%, 88%, 89%, 90%, 91%, 92%, 93%, 94%, 95%, 96%, 97%, 98%, 99%) 同一であるアミノ酸配列を含むペプチドを参照する。幾つかのコンピュータ・プログラムは、これらのアルゴリズム〔例えば、GAP, BESTFIT, FASTA, および TFASTA (Wisconsin Genetics Computer Group, USA)〕を実行できる。
【0014】
外傷
組織には、穿通性外傷(penetrating trauma), 熱傷外傷(burn trauma)および鈍的外傷(blunt trauma)を含む種々の傷害が持続する可能性がある。これらの傷害の全てによって、特化した細胞が創傷部位に移動することで特徴づけられる治癒の反応に関与する規則的な順序のイベントが進行しはじめる。組織が破壊された場合、特化した細胞が細胞外基質タンパク質(例えば、コラーゲン)を創傷部位に沈着させ、これは欠陥を修復し、解剖的な構造 および 機能を回復するため必要である。非常に僅かな細胞外基質タンパク質が沈着する場合、創傷は弱く、裂開(dehisce)するだろう。
【0015】
治癒および治癒カスケード(Healing Cascade)は、炎症相, 増殖相, およびリモデリング相(remodeling phase)の三つの相からなる。炎症相は創傷形成の間に暴露されたコラーゲンにより開始され、血液凝固タンパク質が活性化される。その後すぐに、炎症細胞が創傷に遊走する。血小板(第一の応答細胞)は、フィブロネクチンを含む幾つかのタンパク質を放出し、出血を制御し、他の細胞を化学誘引する。好中球(第二の応答細胞)は、細菌を殺し、外来性の細片(debris)を除去する。白血球およびマクロファージ(後期の応答細胞)は、創傷を清浄(debride)するコラゲナーゼ, およびコラーゲン産生および線維芽細胞による血管形成を刺激するサイトカインを含む幾つかのタンパク質を放出する。
【0016】
増殖相(proliferative phase)は、上皮化(epithelialization), 血管形成, 肉芽組織形成, および コラーゲン沈着を含む。上皮化において、基底膜がインタクト(第一度の熱傷におけるような)である場合、上皮細胞は通常創傷に遊走する。それが破壊される場合(第二度および第三度の熱傷におけるような)、末梢からの上皮細胞が創傷を再上皮化する。血管形成において、内皮細胞は創傷に遊走し、毛管が形成される。肉芽組織形成(granulation tissue)および コラーゲン沈着において、線維芽細胞は分化し、基底物質〔例えば、細胞外基質タンパク質 (例えば、プロコラーゲン)〕を創傷に沈着させる。
成熟相(maturational phase)は、新しい細胞外基質のクロスリンクおよび 組織化(例えば、コラーゲンの特異的な酵素デグラデーション)で特徴づけられる。
【0017】
創傷の治療は、以下の二つの主要なカテゴリーに分類される:
(1) 一次的な目的: 創傷の物理的な閉鎖が関与し、通常は縫合(sutures), テープ, ステープル(staples), バンデージ(bandages)などによる。一次的な目的の間の治癒の主な機構は、コラーゲン, プロテオグリカン および付着タンパク質(attachment proteins)が沈着して新しい細胞外基質が形成される結合組織マトリックス沈着である;および
(2) 二次的な目的: 創傷は開放のまま、収縮により治癒される; 細胞およびマトリックスの間の相互作用により創傷の中心に向かって細胞および組織の移動が生じる。
本願に記載されるペプチドを用いて再生および修復できる組織の例には、神経組織, 皮膚, 脈管組織(vascular tissue), 心臓組織, 心臓周囲組織(pericardial tissue), 筋肉組織, 眼球組織, 歯周部組織, 結合組織、例えば、 骨, 軟骨, 腱, および靭帯, 器官組織(organ tissue)、例えば、腎臓 組織, および肝臓組織, 腺組織、例えば、膵臓組織, 乳房組織, および副腎組織, 泌尿器組織、例えば、膀胱組織および輸尿管組織, および消化性組織(digestive tissue)、例えば、腸組織が含まれる。
【0018】
加齢
老化組織(例えば、皮膚)は、ECMの劣化またはECMの産生の減少, およびECMの基礎の劣化(deterioration)で特徴づけられる。これらの特性によって、組織構造の欠陥へと導かれる。老化組織(Aged tissue)は、弱く、若い皮膚よりも弾性および可動性が少ない。そして、スタミナを失い、老化した皮膚は波紋(例えば、しわ)を生じる。
しわ(および瘢痕)の治療は、主に充填剤を組織の欠陥または所望の領域に近い皮膚の真皮層に注入することを伴う。充填剤の例には、ミネラル油, 脂肪(fat), ウシのコラーゲン, およびヒトのコラーゲンが含まれる。全ての充填剤は、周知の事項である。例えば、ヒトのコラーゲンは、しわを減らすために部分的に有効であるが、痛みをともなう大きい針で反復して注射して身体のコラーゲン吸収を補償する必要がある。
【0019】
ペプチド
本発明は、細胞外基質 (ECM) タンパク質(例えば、フィブロネクチン, テネイシン, コラーゲン, 及びプロコラーゲン)の産生を刺激する能力があり、組織または皮膚の発生を生じる又は促進する因子として及び創傷修復因子として利用できるペプチドを記載する。
本発明のペプチドは、配列 YAIGYSC (配列番号6), YAIGYSCKDYK (配列番号1), APLWILSTDYDNYAIGYSC (配列番号3),またはAPLWILSTDYDNYAIGYSCKDYK (配列番号5)からなる又は含むペプチドを含む。配列番号1からなるペプチドは、本発明において「CNF011.05D ペプチド」と参照される。
配列番号6と実質的に相同なペプチド;および高ストリンジェント条件下で配列番号6のペプチドとハイブリダイズする核酸によりコードされるペプチドも含まれる。
配列番号1と実質的に相同なペプチド;および高ストリンジェント条件下で配列番号1のペプチドとハイブリダイズする核酸によりコードされるペプチドも含まれる。
配列番号3と実質的に相同なペプチド;および高ストリンジェント条件下で配列番号3のペプチドとハイブリダイズする核酸によりコードされるペプチドも含まれる。
【0020】
本発明に使用される「高ストリンジェント条件下でハイブリダイズする(hybridizes under high stringency conditions)」の用語は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄のための条件を記載する。ハイブリダイゼーション反応を実施するためのガイダンスは、文献〔Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6〕に見つけられ、この文献は本発明に参照によって援用される。高ストリンジェントのハイブリダイゼーション条件は、6X SSC を約 45℃でのハイブリダイゼーション、続いて、0.2X SSC, 0.1% SDS を65℃での一または二以上の洗浄,または実質的に類似する条件を含む。
【0021】
配列番号5の配列から一, 二, 三, 四, 五, 六, 七, 八, 九, 十, 十一, 十二, 十三, 十四, 十五, 十六, 十七, 十八, 十九, 二十, 二十一,または二十二の酸の置換, 付加,または欠失により異なるアミノ酸配列を含有(contain)する, から本質的になる(consist essentially of),又はからなる(consist of)ペプチドも含まれる。これらは、内部または末端(例えば、NまたはC末端)などの任意のポジションであってもよい。
ペプチドのN- および/または C- 末端を修飾して、安定性を増加させること、例えば、デグラデーション(例えば、タンパク分解性のデグラデーション)を減少させることができる。
例えば、ペプチドの同定または精製を助けるため、前記ペプチドを修飾してエピトープタグ〔例えば、His (例えば、6x Hisまたはポリ-His), Myc, HA, GST, MBP, VSV, チオレドキシン, ベータガラクトシダーゼ, FLAG, 蛍光タンパク質(例えば、GFP)タグなど〕を含ませることができる。切断部位(例えば、Xa因子 プロテアーゼ, エンテロキナーゼ, トロンビン, TEV プロテアーゼ, PRESCISSION TM プロテアーゼ, インテイン 1またはインテイン 2,またはシグナル ペプチダーゼなどのための認識部位)は、任意でタグおよびペプチド配列の間に配置してタグをペプチドから切断できる。係る技術は、当該技術分野において知られている。Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Inc. New York, NYも参照されたい。
【0022】
ペプチド調製
本願に記載されるペプチドは、生物系において調製できる又は化学的に合成できる。
ペプチドを生物系において生産するため、ペプチドを組換えDNA技術で生産できる。例えば、本願に記載されるペプチドをコード化している核酸配列を含んでいる発現ベクター〔例えば、配列番号5で表されるペプチドは核酸配列 gca-ccg-ctg-tgg-att-ctt-tct-act-gat-tac-gac-aac-tat-gct-atc-ggc-tac-tcc-tgc-aaa-gac-tac-aag (配列番号7)または前記遺伝コードによる関連する配列によりコードされてもよい; 配列番号6, 配列番号1, 及び配列番号3により表されるペプチドは配列番号7から由来する核酸配列または前記遺伝コードによる関連する配列によりコードされてもよい〕は、生物系(例えば、細菌, 酵母, 植物, 昆虫,または哺乳類の発現系)に導入でき、標準技術を用いて発現できる。次に、前記ペプチドは、生物系(例えば、細胞または培養培地から)から標準の精製技術(例えば、前記ペプチドの物理的または化学的な特性に基づいた分離技術または親和性精製技術を用いて)を用いて精製される。係る技術は、当該技術分野において知られている。例えば、Current Protocols in Molecular Biology 3rd ed., John wiley and Sons, Inc, New York, NYを参照されたい。
【0023】
前記ペプチドは、例えば、液相または固相の合成法を用いて化学的に合成できる。係る技術は当該技術分野において標準のものであり、例えば、文献〔Atherton, E., Sheppard, R.C. Solid Phase peptide synthesis: A practical approach. IRL Press, Oxford, England, 1989; Stewart J.M., Young, J.D. Solid phase peptide synthesis, 2nd edition, Pierce Chemical Company, Rockford,1984; Carpino (J. Am. Chem. Soc. 115:4397-4398 (1992))〕を参照されたい。ペプチドは、一つのアミノ酸のカルボキシル基またはC-末端を別のアミノ酸のアミノ基またはN-末端とカップリングすることにより合成される。
【0024】
美容組成物
開示のペプチドは、例えば、皮膚を処置するため被験者に投与する美容組成物として製剤化されてもよい。前記ペプチドは、単独で又は別の化粧品と同じ組成物に又は別々の組成物として組み合わせて投与できる。
典型的には、美容組成物は、美容用に許容される担体を含む。本発明に使用される「美容用に許容される担体(cosmetically acceptable carrier)」には、任意および全ての固形, 半固形および液体のシックナー(thickeners); 賦形剤, 希釈剤; UV濾過性を有する物質; 香料(perfumes); 美容用の基剤; および美容用の製剤が含まれる。
美容組成物は、種々の形態であってもよい。これらには、例えば、液体, 半固形(semi-solid)および固形の剤形、例えば、液体溶液(liquid solutions), 粉剤, ポマード(pomades), ゲル, クリーム, 接着剤(adhesives), などが含まれる。
【0025】
薬学的組成物
開示のペプチドは、例えば、組織の発生または皮膚の修復をするため被験者に投与する薬学的組成物として製剤化されてもよい。前記ペプチドは、単独で又は別の医薬品と同じ組成物に又は別々の組成物として組み合わせて投与できる。
典型的には、薬学的組成物は、薬学的に許容される担体を含む。本願に使用される「薬学的に許容される担体」は、任意の及び全ての生理的に適合性の溶媒, 賦形剤, 分散媒, 被覆剤(coatings), 抗菌剤および抗真菌剤, 等張および吸収遅延剤, リポソーム, 微小粒子(microparticles), ミクロスフェア, ナノスフェアなどを含む。
薬学的組成物は、酸付加塩(acid addition salt)または塩基付加塩(base addition salt)などのペプチドの薬学的に許容される塩を含んでもよい〔例えば、Berge et al. J. Pharm. Sci. 66:1-19 (1977)を参照されたい〕。
薬学的製剤は、確立された技術であり、例えば、文献〔Gennaro (ed.), Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th ed., Lippincott, Williams & Wilkins (2000) (ISBN: 0683306472); Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 7th Ed., Lippincott Williams & Wilkins Publishers (1999) (ISBN: 0683305727); および Kibbe (ed.), Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association, 3rd ed. (2000) (ISBN: 091733096X)〕にさらに記載される。
【0026】
一態様において、賦形剤は、塩類溶液, 塩化ナトリウム, リン酸二ナトリウム七水和物(sodium dibasic phosphate heptahydrate), リン酸一ナトリウム(sodium monobasic phosphate), および安定化剤を含む。
薬学的組成物は、種々の形態であってもよい。これらには、例えば、液体, 半固形(semi-solid)および固形の剤形、例えば、液体溶液〔例えば、注射可能および注入可能(infusible)な溶液〕, 分散剤または懸濁剤, 錠剤, 丸剤, 粉剤, 坐剤, ゲル,または軟膏が含まれる。好適な形態は、投与の及び治療適用(therapeutic application)の意図されるモードに依存しえる。
薬学的組成物は、局所的投与(例えば、創傷の部位で)のため製剤化されてもよい。局所的投与には、例えば、皮膚上(epicutaneous), 鼻腔内, 吸入性(inhalational), および膣の投与が含まれる。組成物は、創傷の部位などの皮膚(例えば、熱傷, 水疱,または切傷のための), 唇, 歯茎, 歯, 口腔, 眼, 耳, 爪床,または咽頭, などに投与されえる。局所的投与のための組成物は、クリーム, ゲル, ローション,または軟膏剤, などに存在しえる。
【0027】
特定の態様において、薬学的に許容される担体は、インプラント, およびマイクロカプセル化された送達システムを含む急速な放出またはデグラデーション(例えば、徐放製剤を調製するため)に対するペプチドを防御しえる。生分解性, 生体適合性のポリマーを使用でき、例えば、エチレン酢酸ビニール(ethylene vinyl acetate), ポリアンヒドライド(polyanhydrides), ポリグリコール酸, コラーゲン, ポリオルソエステル, およびポリ乳酸である。係る製剤の調製のための多くの方法は、権利化されるか又はまたは一般に知られている(例えば、 Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978)。
【0028】
特定の態様において、薬学的組成物は、創傷治癒因子で調製しえる。本願に使用される「創傷治癒因子(wound healing agent)」には、創傷の修復, 組織の発生を促進する,または組織の変性を予防(prevent)または阻害する任意の及び全ての因子が含まれる。創傷治癒因子の例には、細胞外基質 (ECM) タンパク質, ECMの構造要素(例えば、タンパク質, 糖タンパク質, プロテオグリカン 及びグリコサミノグリカン), 成長因子および分化因子〔Adams et al., Development 117:1183-1198 (1993) およびKreis et al. (eds.), "Guidebook to the Extracellular Matrix and Adhesion Proteins," Oxford University Press (1993) (以下「Kreis等」という)を参照されたい〕, および足場の材料(例えば、米国出願第20030211793号)の産生を刺激する因子が含まれる。Adams等および Kreis等の教示は本明細書中に参照によって援用され、これらは分化および発生を制御する成長因子およびECM 成分を記載している。
【0029】
成長因子および分化因子の例には、上皮成長因子, 線維芽細胞成長因子, インシュリン成長因子, 神経成長因子, 肥満細胞刺激因子(mast cell-stimulating factor), 血小板由来成長因子, トランスフォーミング成長因子-d, 血小板由来成長因子, スキャッター因子(scatter factor), 肝細胞成長因子 および シュワン細胞成長因子が含まれるが、これらに限定されない。
ペプチドを創傷治癒因子と組み合わせた場合、二つの因子は別々または共に製剤化できる。
【0030】
投与
ペプチドは、被験者(例えば、ヒト被験者)に種々の方法で投与できる。多くの適用に関して、投与の経路は、静脈内の注射または輸液 (IV), 動脈内の注射, 皮下注射 (SC), 腹腔内(IP), 心臓内注射, 骨内輸液, 皮内注射, 腹腔内の輸液または注射, 硝子体内注射(intravitreal injection), 筋肉内注射, クモ膜下腔内注射, 関節内注射,または硬膜外投与(epidural administration)の一つなどの非経口的な経路である。幾つかの好適な態様において、ペプチドは、腸内の経路(例えば、経口的に)で投与される。ペプチドは、局所的(例えば、硬膜外, 鼻内, 吸入, 経膣, など) (例えば、クリーム, ゲル, ローション,または軟膏剤において)などで、創傷の部位などの皮膚または唇または歯茎または口腔または咽頭などに局所に投与できる。幾つかのケースにおいて、投与は、細胞外基質を必要とする部位に直接的であってもよい。
【0031】
ペプチドは、局所的にまたは全身性に投与できる。
ペプチドを、例えば、注射, 輸液, 拡散(diffusion), インプラント, 局所的適用,または経口送達(oral delivery)で投与できる。
ペプチドを、定用量として、またはμg/kgまたはmg/kgの用量で投与できる。
用量を選択して、ペプチドに対する抗体の産生を減少または回避できる。
ペプチドの投与の経路および/またはモード(mode)も、例えば、筋電図検査, 神経伝導試験, 誘発電位試験, 磁気共鳴映像法, 神経学的な検査, X線, および/または特定の障害と関連する標準パラメータ、例えば、背痛を評価する判定基準などを用いて被験者を評価またはモニタリングして、個々のケースで対応できる。
【0032】
投薬計画(Dosage regimens)を調整して、治療の応答または組み合わせの治療効果などの所望の応答を提供することができる。一般に、ペプチド(および任意で本願に記載されるものなどの第二の因子)の任意の組み合わせの用量(別々の又は共製剤化された)は、被験者にペプチドを生物が利用可能な量で提供するために使用できる。例えば、0.1 μg/kg-10 mg/kg, 1 μg/kg-1 mg/kg, 1 μg/kg-100 μg/kg, 5 μg/kg-500 μg/kg, 0.1-100 mg/kg, 0.5-100 mg/kg, 1 mg/kg-100 mg/kg, 0.5-20 mg/kg,または1-10 mg/kgの範囲の用量を投与できる。他の用量も使用できる。
【0033】
本願に使用される単位剤形(Dosage unit form)または「定用量(fixed dose)」は、処置される被験者のための投薬の単位として適した物理的に別々の単位を参照する; 各単位は、必要とされる薬学的担体と関連して及び任意で他の因子と関連して所望の治療上の効果を生じるために計算された活性化合物の既定量(predetermined quantity)を含有する。単一のまたは複数の投薬が、与えられてもよい。代わりに,または加えて、ペプチドは、連続的な輸液を介して投与されてもよい。
【0034】
ペプチドは、例えば、一日に一回または二回,または約一ないし四回/週,または好ましくは毎週, 隔週,または毎月、例えば、約 1 ないし 10 週の間,またはそれ以上長く(被験者に長いコースの治療が必要とされる場合)投与できる。特定の因子が被験者を効率的に治療するため必要とされる投薬およびタイミングに影響する可能性があり、これには疾患または障害の重症度, 製剤, 送達の経路, 以前の治療, 一般的な健康および/または被験者の齢, 存在する他の疾患, および被験者が経験した他の治療が含まれるが、これらに限定されないことを当業者は認識する。そのうえ、被験者を治療的な有効量のペプチドで治療することには、単一の治療が含まれてもよい又は好ましくは一連の治療が含まれてもよい。また、動物モデルを使用して、有用な用量(例えば、初回量または計画)を決定できる。例えば、動物試験を使用して、ペプチドにより促進された細胞外基質がどの程度長く持続するかを測定できる。
【0035】
被験者が組織のダメージ, 疾患,または外傷による組織変性(例えば、組織構造の欠陥 加齢または組織欠損)のリスクがある場合、ペプチドを、例えば、予防的な措置として組織変性を生じる可能性があるイベントの前または間に投与できる。係る予防的な治療の持続時間は、ペプチドの単一の投薬であってもよい。或いは、前記治療は、例えば、被験者における欠損を最小化するため、イベントの前, イベントの間, および/またはイベントの後の時間から連続(例えば、複数の投薬)してもよい。例えば、組織欠損のリスクがある被験者は、組織欠損の発生を予防するため又は経験した組織欠損の量を減少させるため、組織変性を生じえるイベント前の数時間または数日をペプチドで治療されてもよい。
【0036】
薬学的組成物は、本出願に記載されるペプチドの「治療上の有効量(therapeutically effective amount)」を含んでもよい。係る有効量は、投与された因子(例えば、ペプチド)の効果,または因子の組み合わせの効果(一をこえる因子が使用される場合)に基づいて決定できる。治療上の有効量の因子は、被験者における痛み, 病的状態, 年齢, 性, および重量, および被験者において所望の応答を惹起する因子の能力(例えば、創傷の修復)などの因子に応じて変動しえる。また、治療上の有効量は、任意の化合物の毒性または有害な効果を治療的に有益な効果が上回るものである。
【0037】
本出願に使用される「被験者(subject)」は、傷害された, 罹患した,または失われた組織を発生または修復する細胞外基質を修復, 再構築,または置換する必要がある任意の生物体であってもよく、例えば、哺乳類、例えば、ヒト, 農場の動物(例えば、ウマ, ロバ, ラバ, ウシ, 雌ウシ, 雄ウシ, ヒツジ, ブタ, など), 飼いならされたペット(例えば、イヌ, ネコ, ラット, マウス, ウサギ, ハムスター, モルモット, ケナガイタチ, など),または動物園の動物(例えば、キリン, ライオン, トラ, クマ, シマウマ, サル, ゴリラ, クジラ, イルカ, など)である。
【0038】
インビトロ使用
ペプチドは、例えば、プロテーゼ(prostheses)またはインプラントを作って傷害された又は罹患した組織を置換する又は細胞(例えば、宿主細胞)で占められた場合にリモデルされて機能的な組織となる足場を提供する研究のためのモデル系としてインビトロで使用されてもよい。
【0039】
装置およびキット
前記ペプチドを含む薬学的組成物は、医学的な装置で投与できる。装置は、例えば、一または二以上の前記ペプチドを含む薬学的製剤を保存するためのハウジングを含んでもよく、一または二以上の単位用量のペプチドを送達するため備えてもよい。装置は、さらに本出願に記載される組織発生または創傷修復因子などの第二の因子を、前記ペプチドを含む単一の薬学的組成物として又は二つの別々の薬学的組成物として投与するため構成されてもよい。
【0040】
例えば、薬学的組成物は、針なしの皮下注射装置(例えば、米国特許第5,399,163; 5,383,851; 5,312,335; 5,064,413; 4,941,880; 4,790,824;または4,596,556号);移植片, モジュール,またはポンプ(例えば、米国特許第 4,487,603; 4,447,233; 4,447,224号); 皮膚投与装置(例えば、米国特許第 4,486,194号), および浸透性薬物送達システム(例えば、米国特許第 4,439,196号)で投与できる。多くの他の装置, インプラント, 送達システム, およびモジュールも知られている。
【0041】
ペプチドを、キットに提供できる。一態様において、キットは、(a) 本出願で記載されるペプチドを含む組成物を含有する容器, および任意で(b) 情報資料(informational material)を含む。情報資料は、本発明で記載される方法および/または治療上の利点に関するペプチドの使用について記述的に説明する販売の又は他の資料であってもよい。
一態様において、キットは、組織の発生または創傷の修復のための第二の因子(例えば、本発明に使用される別の因子)を含む。例えば、キットは、前記ペプチドを含む組成物を含有する第一の容器, 第二の因子を含む第二の容器, および任意で情報資料を含む。
前記ペプチドに加えて、キットにおける組成物は、他の構成成分(例えば、溶媒または緩衝剤, 安定化剤,または保存剤)を含んでもよい。ペプチドは、液体, 乾燥または凍結乾燥の形態などの任意の形態で提供でき、好ましくは実質的に純粋および/または無菌である。前記因子が乾燥形態として提供される場合、再構成は一般に適切な溶剤を付加することによる。溶剤(例えば、滅菌水または緩衝剤)は、任意でキットに提供できる。
キットは、任意で組成物の投与に適切な装置(例えば、シリンジまたは他の適切な送達装置)を含む。装置は、一つまたは両方の因子でプレロード(pre-loaded)されて提供できる。或いは、空であってもよいがローディング(loading)に適切である。
【0042】
[例]
本発明の例は、表 1に示される合成ペプチドを利用し、これらはORPEGEN ファルマ (Germany)により合成された。
【0043】
【表1】

【0044】
[例1]
細胞生存度における効果
細胞生存度(% 生存度)に関する試験を、血清を減少させた条件で、MTT (3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウム ブロマイド) 比色アッセイ(Mosmann,1983)を用いて実現した。結果を図1から3に示す。
【0045】
図 1は、RPMI 1640に1 % FBSを伴うもので共に 48 時間インキュベーションした場合の内皮細胞 (HUVEC)の細胞生存度(% 生存度)におけるペプチド (5 μg/ml)の効果を示す。対照は、RPMI 1640 に1 % FBS を伴うもの(ペプチドなし)においてインキュベーションした細胞を有する。
図 2は、RPMIに1% FBSを補充したもので共に 120 時間インキュベーションした場合の内皮細胞の細胞生存度(% 生存度)における異なる濃度のCNF011.05Bの効果を示す。
図 3は、RPMIに1% FBSを補充したもので共に 48 時間インキュベーションした場合の内皮細胞の細胞生存度(% 生存度)における異なる濃度のCNF011.05Dの効果を示す。
【0046】
ペプチド CNF011.05B および CNF011.05D (5 μg/ml)が、ウシ胎児血清 (FBS)の欠乏により誘導されたアポトーシス条件下で細胞生存度を(おそらく、プログラム細胞死 および アポトーシスを阻害する機構を通じて)増大することを前記結果は実証する。
細胞生存度における増大(augmentation)によって創傷の修復におけるCNF011.05B および CNF011.05Dの使用が支持される、というのも、係る増大が(1)創傷における細胞生存度を増加でき、(2)創傷におけるマトリックス欠損を予防できる(Gilbert et. al., Tissue Eng., 2009, Jan 2., electronic PubMed submission)からである。このような細胞生存度における増大によって、これらのペプチドの組織の発生および組織変性の予防における使用も支持される。
【0047】
[例2]
一酸化窒素(NO)の産生
ウィスター系ラットからの好中球または初代培養の内皮細胞は、血清の減少した培地(1%)においてCNF011.05D (3.0 μg/mL)および/または 1M L-NAME, NO合成酵素のインヒビター(従って、NOのインヒビターであり、結果的に代謝産物 NO2 産生を生じる)の存在下で培養された。24 時間後、細胞生存度を、FITC アネキシン V (1:500) および プロピジウム ヨウ化物 (10 μl の 50 mg/ml)でフローサイトメトリー分析を用いて測定した。好中球 (図 4)および初代内皮細胞(図 5)の両方の生存度がペプチド CNF011.05D 単独で増加し、この増加がL-NAMEの存在で減退(diminished)した。
【0048】
一酸化窒素(NO)の測定
好中球をCNF011.05D (1.5 μg/ml)で18 時間培養し、培養に分泌されたNO 代謝産物 NO2の産生をGriess 反応を使用し、550 nmの吸光度を測定して評価した。図 9は、ペプチド CNF011.05Dが処理した細胞においてNO2の産生(従って、NO の産生)を増加させたことを実証した。
NO産生の誘導によって、創傷の修復におけるCNF011.05Dの使用が支持される、というのも(1) 創傷における細胞が治癒および治癒カスケードの増殖期の間にNOを産生する〔Witte and Barbul, Am. J. Surg. 183:406-12 (2002)〕; および (2) 創傷におけるNOが治癒を増大する、例えば、治癒に重要な創傷における血管形成を増加し、炎症細胞を創傷へリクルートする〔Zhu et.al., J. Burn Care Res. 29:804-14 (2008)〕からである。
【0049】
[例3]
細胞外基質タンパク質の産生
ヒト繊維芽細胞は、10 から40 歳の範囲にわたる5人の正常なアフリカ系ブラジル人女性のドナー(それぞれ 2/05, 3/05, 4/05, 6/05 および 8/05と称される)からの耳垂の皮膚断片(0.5 x 0.5 cm)から獲得された。自由で随意的な同意の後に、ドナーは外科的な環境において切除バイオプシーに供試された。
6代目(6th)のサブカルチャーからの細胞を、無菌培養プレートに配置し、CNF011.05D を 0.35 μg および 5 μgの濃度で培養培地中で 4 日インキュベーションした。対照群は、塩類溶液(CNF011.05Dの溶媒)がCNF011.05の代わりに加えられた同じ条件下で培養された線維芽細胞からなる。
間接的な免疫蛍光を、(1) 抗-フィブロネクチン(cellular) mAb または 抗-ヒト テネイシン mAb (Sigma-USA); および (2) Alexa Fluor 488 (Molecular Probes-USA)を用いて行った。
【0050】
フィブロネクチンの産生
試験したサンプルは、FBN-CN (塩類溶液で処理した細胞), FBN-0.35 (CNF011.05Dを0.35 μgで処理した細胞), およびFBN-5 μg (CNF011.05D を5 μgで処理した細胞)である。
フィブロネクチンの産生に対する間接的な免疫蛍光からの結果は、図 7に示され、CNF011.05Dを0.35μgで培養された線維芽細胞によるフィブロネクチンの産生における有意な増強(p<0.001)を実証する。
【0051】
テネイシンの産生
試験したサンプルは、CN (塩類溶液で処理した細胞), TN-0.35 (CNF011.05Dを0.35 μgで処理した細胞), およびTN-5 μg (CNF011.05D を5 μgで処理した細胞)である。
図 8におけるテネイシンの産生に対する間接的な免疫蛍光からの結果は、 CNF011.05D を0.35 μgで培養された線維芽細胞によるテネイシンの産生における有意な差(p<0.001)を示した。
【0052】
プロコラーゲンの産生
試験したサンプルは、%procol/対照(塩類溶液で処理した細胞), %procol/0.35 (CNF011.05Dを0.35 μgで処理した細胞), および%procol/5 μg (CNF011.05D を5 μgで処理した細胞)である。
図 9におけるプロコラーゲン(procollagen)の産生に対する間接的な免疫蛍光からの結果は、 CNF011.05D を0.35 μgで培養された線維芽細胞によるプロコラーゲンの産生における有意な差(p<0.001)を示した。
【0053】
[例4]
真皮におけるコラーゲンの産生
コラーゲンのレベルを、CNF011.05Dを単一皮下用量, 二皮下用量, および四皮下用量の異なる投与後に試験した。
【0054】
表 2
CNF011.05D (0.30μg) (グループ AE および BE)または塩類溶液(グループ AD および BD)の単一皮下用量後の動物の真皮におけるコラーゲンのパーセント。値は、最終的な用量の1, 2,または12 週後で得られた。
【表2】

【0055】
表 3
二皮下用量 (0.30μg) (グループ AE および BE)または塩類溶液(グループ AD および BD)の後の動物の真皮におけるコラーゲンのパーセント。用量は一週間離れて与えられ、値は最終的な用量の1 週または12 週後に得られた。
【表3】

【0056】
表 4
四皮下用量 (0.30μg) (グループ AE および BE)または塩類溶液(グループ AD および BD)の後の動物の真皮におけるコラーゲンのパーセント。連続的な用量は一週で与えられ、値は最終的な用量の4 週後に得られた。
【表4】

【0057】
[例5]
ラットにおける創傷治癒
パンチでの創傷のサイズおよび顕微鏡像を、ラットで単一用量のCNF011.05Dの後に評価した。ラットは6-から-8 週齢のウィスター系ラットであり、麻酔し、後部の背側を操作した。毛のクリッピング(clipping)およびスクラブ滅菌(scrub sterilization)に続いて、創傷を各ラットに6mmのバイオプシーパンチを用いて作った。傷つけ、そして滅菌ガ―ゼでの乾燥に続いて、創傷を(1) バンデージ(標準の看護)した又は(2) CNF011.05Dの適用(塩類溶液中で235nM)に続いてバンデージした。3, 7, 14, および 21日で評価した創傷を獣医が評価し、創傷が傷つけ後に正常に治癒したかどうか, および創傷のサイズをcm2で記録した。
【0058】
表 5
パンチでの創傷のサイズをタイムポイントごとに8 ラットを手術した後の異なる時間で表 5に示す。CNF011.05Dは、創傷のサイズの速い速度での減少を実証する。
【表5】

【0059】
21日でのタイムポイントは、閉鎖した創傷および瘢痕を示した。CNF011.05Dで治療した創傷は、標準の看護(陰性対照)で治療した創傷と比較して、サイズおよび色が減少した瘢痕を有していた。
【0060】
[例6]
ブタにおける創傷治癒
肉芽組織形成〔治癒 (カスケード)の増殖期のマーカー〕のレベルを、CNF011.05Dまたは陽性対照(Bacaplermin ゲル 0.01%)の日々の投与の後にパンチした創傷において評価した。傷をつけた動物は、20週齢のドメスティック ヨークシャー交雑ブタ(Domestic Yorkshire Crossbred pigs)であり、麻酔し、後部の背側を操作した。毛のクリッピングおよびスクラブ滅菌に続いて、8つの完全な深さの創傷(8 full thickness wounds)を各ブタに8 mmのバイオプシーパンチを用いて作った。
【0061】
傷つけ、そして滅菌ガ―ゼでの乾燥に続いて、創傷を異なる治療(表 5 および 6を参照されたい)に適用し、続いてバンデージした。長期の手術後のモニタリングには、14 日の手術部位の日々の検査が含まれる。日々の検査には、創傷の清浄, 同じ治療の再適用〔標準の看護または陽性対照またはCNF011.05D (1x)またはCNF011.05D (100x)〕に続く再バンデージが含まれる。1, 4, 7, 10, および14日で評価した創傷を獣医が評価し、創傷が傷つけ後に通常に治癒したかどうか, および創傷全体を充填する肉芽組織の最初の出現を記録した。
【0062】
表 6
傷つけ、滅菌ガ―ゼで乾燥し、 (1) 四つの創傷に包帯を適用した(標準の看護); (2) 四つの創傷に陽性対照を適用し、包帯を適用した; (3) 六つの創傷にCNF011.05D (1x) (1.57 μg/mlの塩類溶液の1ml)を適用し、包帯を適用した;および (4) 六つの創傷にCNF011.05D (157 μg/mlの塩類溶液の1ml) (100X) を適用し、包帯を適用した。
創傷全体を充填する肉芽組織が最初に出現した創傷は、表 6のイエス(Yes)の列に指摘した。CNF011.05D (1x) および CNF011.05D (100x)によって、標準の看護(陰性対照)よりも速い速度での完全な充填が実証された。
【表6】

【0063】
表 7
傷つけ、滅菌ガ―ゼで乾燥し、 (1) 二つの創傷にCNF011.05D (1x) 〔1.57 μg/ml ヒドロキシエチル セルロース/グリセリン (20%/80%)軟膏の1ml〕を適用し、包帯を適用した;および (2) 二つの創傷にCNF011.05D (100x) 〔157 μg/ml ヒドロキシエチル セルロース/グリセリン (20%/80%)軟膏の1ml〕を適用し、包帯を適用した。
創傷全体を充填する肉芽組織が最初に出現した創傷は、表 7のイエス(Yes)の列に指摘した。CNF011.05Dの軟膏によって、標準の看護(陰性対照)または塩類溶液のCNF011.05D (表6)よりも速い速度での完全な充填が実証された。
【表7】

【0064】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列: YAIGYSC(配列番号6)と少なくとも 70% 同一であるアミノ酸配列を含む単離されたペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドであって、一または二以上の細胞外基質タンパク質の線維芽細胞における産生を刺激する能力があるペプチド。
【請求項3】
請求項1に記載のペプチドであって、アミノ酸配列 YAIGYSC (配列番号6)を含むペプチド。
【請求項4】
請求項1に記載のペプチドであって、アミノ酸配列: YAIGYSCKDYK (配列番号1)と少なくとも 70% 同一であるアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項5】
請求項4に記載のペプチドであって、一または二以上の細胞外基質タンパク質の線維芽細胞における産生を刺激する能力があるペプチド。
【請求項6】
請求項4に記載のペプチドであって、アミノ酸配列 YAIGYSCKDYK (配列番号1)を含むペプチド。
【請求項7】
請求項1に記載のペプチドであって、アミノ酸配列: APLWILSTDYDNYAIGYSC (配列番号3)と少なくとも 70% 同一であるアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項8】
請求項7に記載のペプチドであって、一または二以上の細胞外基質タンパク質の線維芽細胞における産生を刺激する能力があるペプチド。
【請求項9】
請求項7に記載のペプチドであって、アミノ酸配列 APLWILSTDYDNYAIGYSC (配列番号3)を含むペプチド。
【請求項10】
請求項1に記載のペプチドであって、アミノ酸配列: APLWILSTDYDNYAIGYSCKDYK (配列番号5)と少なくとも 70% 同一であるアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項11】
請求項10に記載のペプチドであって、一または二以上の細胞外基質タンパク質の線維芽細胞における産生を刺激する能力があるペプチド。
【請求項12】
請求項10に記載のペプチドであって、アミノ酸配列 APLWILSTDYDNYAIGYSCKDYK (配列番号5)を含むペプチド。
【請求項13】
配列番号6のアミノ酸配列と四アミノ酸まで置換, 付加, または欠失することにより異なるアミノ酸配列を含み、一または二以上の細胞外基質タンパク質の線維芽細胞における産生を刺激する能力がある単離されたペプチド。
【請求項14】
配列番号1のアミノ酸配列と六アミノ酸まで置換, 付加, または欠失することにより異なるアミノ酸配列を含み、一または二以上の細胞外基質タンパク質の線維芽細胞における産生を刺激する能力がある単離されたペプチド。
【請求項15】
配列番号5のアミノ酸配列と十二 アミノ酸まで置換, 付加, または欠失することにより異なるアミノ酸配列を含み、一または二以上の細胞外基質タンパク質の線維芽細胞における産生を刺激する能力がある単離されたペプチド。
【請求項16】
請求項1に記載のペプチドを含む薬学的組成物。
【請求項17】
薬学的に許容される担体を含む、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の薬学的組成物であって、前記薬学的に許容される担体が水に基づく希釈剤である薬学的組成物。
【請求項19】
請求項16に記載の薬学的組成物であって、液体または軟膏の形態である薬学的組成物。
【請求項20】
創傷治癒因子を含む、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
請求項16に記載の薬学的組成物であって、経口, 筋肉内, 静脈内, 皮下, 局所, 肺内, 鼻腔内, 頬内, 直腸内, 舌下, 皮内, 腹腔内またはクモ膜下腔内の使用のために製剤化される薬学的組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の薬学的組成物であって、局所的な使用または真皮の使用のために製剤化される薬学的組成物。
【請求項23】
被験者における細胞死を減少させる方法であって、請求項16に記載の薬学的組成物を前記被験者の細胞に投与することを含む方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、細胞死が疾患, 外傷,または加齢により生じる方法。
【請求項25】
被験者における組織変性を減少させる方法であって、請求項16に記載の薬学的組成物を前記被験者に投与することを含む方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、さらに創傷治癒因子を投与することを含む方法。
【請求項27】
被験者における組織を再生させる方法であって、請求項16に記載の薬学的組成物を前記被験者に投与することを含む方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、さらに創傷治癒因子を投与することを含む方法。
【請求項29】
被験者における創傷を治癒させる方法であって、請求項16に記載の薬学的組成物を前記被験者に投与することを含む方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、さらに創傷治癒因子を投与することを含む方法。
【請求項31】
医薬の調製における請求項1〜15の何れか一項に記載の単離されたペプチドの使用。
【請求項32】
創傷の治療のための医薬の調製における請求項1〜15の何れか一項に記載の単離されたペプチドの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−510060(P2011−510060A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543605(P2010−543605)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際出願番号】PCT/IB2009/050237
【国際公開番号】WO2009/093189
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(504362008)
【出願人】(508072899)バイオラブ・サヌス・ファーマセウティカ・エルティーディーエー. (6)
【出願人】(507062314)
【Fターム(参考)】